「STAP細胞騒動」の主人公・小保方晴子氏が、再びメディアに姿を現した――。
2014年、「STAP細胞」研究を発表し、一躍時の人となった独立行政法人理化学研究所の元研究員・小保方氏。その後、STAP論文にさまざまな研究不正があるのではという疑義が浮上し、論文には「改ざん」「ねつ造」と判断できる箇所があると認定されるに至った。小保方氏は、それに反論する形で会見を行い「STAP細胞はあります!」と力強く宣言したものの、STAP細胞を再現できなかったことから論文は撤回、あわせて早稲田大学の博士論文にも不正が発覚して博士号を取り消され、またES細胞の窃盗容疑で告発(不起訴)されるなどの騒動も勃発。さらには上司にあたる副センター長・笹井芳樹氏が自殺するという惨事まで招き、14年を代表する大事件として、各メディアが盛んに報道合戦を繰り広げていた。
小保方氏は、同年末に理研を退職。16年には、STAP騒動の内幕を記した手記『あの日』(講談社)を発表し、同年「あなたの受けたマスコミを通してのもの凄いバッシングには涙がでました」という瀬戸内寂聴氏からの申し出によって、「婦人公論」(中央公論新社)で対談を行うと、その後、同誌にて連載「小保方晴子日記」をスタートした。そして先月、連載をまとめたエッセイを発売するに至り、久しぶりに同誌に近影を寄せたのだが、世間の反応は意外なものだった。
「小保方さん、めちゃくちゃ美人になった!」「別人みたい」「STAP細胞で若返ったの?」……そんなコメントがネット上を飛び交ったのは、写真家・篠山紀信氏撮影の近影が、以前に比べて垢抜けた姿で、確かに「可愛くなった」といえるルックスだったから。さらには、彼女が着用していたGUCCIのワンピースが20万円を超える高級品だということも取り沙汰されている状況だ。
外見ばかりが注目されているこの復活劇は、小保方氏にとって最良のものだったのだろうか? 今回、企業不祥事発覚時の記者会見対応などの“クライシスマネジメント(危機管理)サポート”を行う会社ブライト・ウェイ代表で、レピュテイション(※)・コンサルタントの高祖智明氏に取材を行った。再起を図る方法として、小保方氏の戦略はどう評価できるのか、意見を聞いた。
※レピュテイション:評判
まず高祖氏は、今回「婦人公論」に登場した経緯、またその登場の仕方ついて、「自ら望んで出たのか、それとも周囲から場を与えられたのか」「自己プロデュースなのか、それとも周りからの演出なのか」が気になったという。というのも、そもそも彼女は、騒動を通して“マスコミによって”持ち上げられ、落とされた印象が強いからだそうだ。
「小保方さんが最初に注目されたとき、“リケジョの星”とかなり持ち上げられ、“割烹着”も話題になりましたよね。ただ、彼女はユニットリーダーだったものの、ポスドクであり、理研での立場はそこまで高くなかった。それだけに『マスコミ向けに使われたのかな』と感じていたんです。そして、論文の不正が取り沙汰されると、一転してマスコミから大バッシングされることに。世間的には、やはりSTAP細胞発表でメディアに取り上げられていたときの彼女、また、STAP論文に不正はないと主張した会見での彼女が、強く印象付けられていると思います。そこにきて、笹井氏が自殺したことで“悪者”となり、ブラウン管から姿を消したというイメージなのでは」
ある意味、マスコミに振り回されたといえる小保方氏。ワイドショーは研究内容や、その事実うんぬんではなく、小保方氏個人に着目し、そのキャラクターや転落劇を追っていたフシがあるという。「婦人公論」への登場の仕方も、小保方氏が主導したのではなく、そうした世間の関心を引くよう、出版社サイドが仕掛けたとも考えられるようだ。
高祖氏は、小保方氏がメディアに再び登場した件について、「荻野目慶子さんを思い出しました」と語る。1990年、荻野目の当時の愛人であった映画監督・河合義隆氏が、彼女の自宅で首吊り自殺をするという大事件が起こった。92年には、その監督が撮影したヌード写真集『SURRENDER―荻野目慶子写真集』(講談社)が発売され、事件の影響もあってか、売り上げは好調だったという。
「当時、私も『評判がいいし、どんな内容だろう』と編集者としての興味もあり、1冊購入して持ち帰りました。テーブルに置いて別な事をしていたら、それを見つけた妻がいきなり激怒しまして。ヌード写真だからではなく、『不倫相手の監督を自殺に追いやった女のヌードを見たいのか?』という理由で怒っていたんです。結局、写真集は一度もページを開かないまま書店に返品しました。小保方さんは笹井さんと愛人関係などではなかったと思われますが、“騒動に関わった人物が自殺した”という事実を知っている人が、小保方さんの再登場をどう受けとめるのか。荻野目慶子写真集に対する妻の反応を思い出すと、『婦人公論』への今回の登場の仕方は、違和感を覚えます」
篠山氏撮影の美しさが際立つ小保方氏の写真については、「それを受け止める側の気持ちを、考えていないのではないかと思った」そうだ。
「マスコミで報じられている小保方さんしか知らない人にとっては、『なんでまた出てきたの?』『しかもこんなに作りこんで』と感じるのでは。それに、『婦人公論』は女性が読者ですよね。男性誌であれば、ルックス重視の写真というのも理解できるのですが……。そもそも、何を目的に登場したのかが、よくわからないんです。『新しい自分になります』という意味で出てきたのなら、目標なり、なりたい自分像なりがあるはずなのですが、それが誌面から見えてきませんでした」
小保方氏は『小保方晴子日記』において小説を書いていることを明かし、また誌面に寄せた手記では、今後について「社会貢献をしていきたい」と語っていたが、「社会貢献をしたかったら、あの写真ではない。“外観が美しくなった自分を見てね”というのは違いますよね。例えば、ドキュメンタリー・報道系の写真家が日常における小保方さんを撮っていたらどうだったのだろう、と考えてしまいます」という。
小保方氏の写真には、読者や、誌面を取り上げたワイドショーを見る視聴者が、どう思うかという重要な視点が抜けていると高祖氏は語る。それゆえに、「出版社の炎上商法なのではないかとすら感じる」そうだ。
「3月に発売された本は“日記”ですよね。騒動から時間がたち、小説でも手記でもなく“日記”って、読まれるのかなと思いました。なので、世間に興味を持たせるために、あえて出版社が強く外観を打ち出したという見方もできます。小保方さんは現在、出版社の人以外に、身近に仕事の話ができる人はいるのでしょうか? 相談相手は家族くらいしかいないのではと思うのですが、それゆえに、出版社側の誘導に“引っ張られた”気もするんです。もっとたくさんの人からアドバイスをもらえれば、また違う再登場の仕方もあったのでは」
小保方氏というより、出版社サイドの思惑が見え隠れする中、当事者である彼女自身も、「再登場にあたって自己分析できていたのか気になる」という。
「STAP細胞騒動で研究の世界から“干された”自分が、また人前に出る――それは再び研究者として活動するためなのか、何か別のことをやりたくて出てきたのか。婦人公論の記事では『私がここまで元気になれたのは婦人公論の読者の方々のおかげです。元気になった姿を見ていただくことで、感謝の気持ちをお伝えできればと思い、今日この場に出る決意をいたしました』とあります。篠山さんに写真を撮ってもらえるのですから、大変なインセンティブとも言えます。しかし、自分が世間からどう見られているのか、どういう印象を持たれているのか。そういった点を、小保方さんは考えられたのか疑問に思います。文字だけではなくビジュアルが世に出るとき、世間の注目が集まることを想像できていなかったのでしょう。現状の自己分析ができていないと、再登場の方向性を間違えるのは当然です」
改めて小保方氏の写真について「『もう一度私らしく』 と登場した写真は、私には言われないとわからないレベルでルックスが変わった。 過去の小保方晴子を捨てて、研究とは別の世界で生きるつもりなら、 騒動の記憶がつきまとう名前も変えて(改めて)出てきてもよかったのに」と語っていた高祖氏。小保方氏が、 今後どのような形で“社会貢献”をしていくのか、注目していきたい。
高祖智明(こうそ・ともあき)
ブライト・ウェイ代表、レピュテイション(※)・コンサルタント。1981年、リクルートに入社し、「ケイコとマナブ」など、数々の情報誌の編集・創刊に携わる。95~98年福岡ドーム広報宣伝部長を経て99年より現職。99年より現職。育児ポータルサイト「こそだて」プロデュース、育児情報誌「miku」プロデュースも行っている。
ブライト・ウェイ公式サイト

