
(c)2009 ARP - MEDIA ASIA ALL RIGHTS RESERVED.
【関連記事】 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 担当判事が冤罪を訴える"袴田事件" 映画『BOX』は司法判決を覆せるか? デビュー作『鉄男』の衝撃から20年! 塚本晋也監督の変わらない製作スタイル

――マンガ家の心情を理解している編集者はいなかったですか?
佐藤 前の「スピリッツ」の担当はすごく好きな人で、その人は「編集者は才能にたかるハイエナで、おこぼれを頂戴しようとして才能の周りにくっついてる人間だと常に自覚しておくべき。ただハイエナにはハイエナのプライドがある」と言ってましたね。「編集者が(マンガを)作ってるというのは思い上がりだと自分は思ってる」と。要は、どこまで相手の立場を尊重できるかだと思う。
――マンガ家と編集者の関係というと、現在「週刊少年ジャンプ」(集英社)連載中の原作・大場つぐみ、作画・小畑健の『DEATH NOTE』コンビによる『バクマン。』や、土田世紀のマンガ『編集王』でもその内幕が描かれています。佐藤先生は読まれてらっしゃいますか?
佐藤 『バクマン。』は読んでないんですが、『編集王』はアシスタントのころに読んでいて、「これからこんな編集者と付き合っていくのか、でも、ここまで悪い人たちはいないだろう」という思っていたら、もっと悪かったという(一同笑)。熱血な編集者もいるんですけど、どこかで、会社に呑まれるんですよ。作家の味方をしても、「じゃあ辞めるのか」となったら、やっぱり給料とっちゃう。1回負けると角が取れて、かわいくなっちゃう。
――『海猿』は編集部との表現の方向性をめぐる対立から、連載終了を申し入れたと明かされています。
佐藤 『海猿』の場合は、海上保安官の仕事は、海上の治安の維持という海の平和を保つ仕事。溺れてる人がいたら助けるけど、悪いヤツがいたら時には銃を撃たないといけない。同じ人間が、ある時は命を救い、ある時は人を殺すという矛盾や葛藤を描きたかったんですけど、それは編集部が描かせてくれないわけですよ。「だったらやる意味ないや」と思って、結局止めちゃいましたね。
――編集部は、正義のヒーローにしようとした。
佐藤 そうですね。単純に人助けをして「かっこいい」「感動した」という話を延々描いてくれと言われると無理ですね。それは僕の表現したいことじゃない。描けと強制されると無理でした。そもそも『海猿』は「ヤングサンデー」の編集者が、当時、映像制作会社に所属していた小森陽一(『海猿』には原案取材としてクレジット)さんと知り合いになって、お互い海が好きということで、海上保安庁の話を描こうとしていた。そこで小森さんが原作を文章で書いて企画会議に出して、「原作としては使えないけど、海上保安庁というのは珍しい」ということで、企画だけが残っていたんです。それを編集者が「佐藤君、描いてみないか」と持ってきて、話を受けたんです。なので、僕は小森さんの書いた原作を読んでいないのですが、小森さんは自分が原作者だと思っていらっしゃるようで、そこからお互い齟齬があったんですよね。
――『ブラックジャックによろしく』では、編集者の取材内容にミスがあり、抗議が来てから作品に編集者の名前がクレジットされるようになりました。実際、取材はどのようにされていたのでしょうか?
佐藤 『ブラックジャックによろしく』は、まず「モーニング」で描きませんかという話だけがあって、最初は、ヤクザモノはどうだろうとか、いろいろ案はあったのですが、前作の『海猿』が海上保安官だったので、"命の現場"の話が向いているということで、医者になったんです。特に医療に興味があったわけではないです。取材は、打ち合わせで決めた内容を、編集者だけが医療関係者などに取材に行くときもあれば、僕が同行する場合もありました。がん編の途中までは、取材は編集者が主導ですね。つまり、それまでの取材の内容については、彼らの仕事の成果だと思っていますし、彼らが評価されるべきです。逆に言うと、僕にはその当時の取材内容について、責任が取れないし、編集者も、取材の内容については自分たちが保証するという取り決めでやってきたはずです。がん編の途中からと、精神科編以降は、取材も僕が主導ですね。
――編集者だけが取材に行った内容を掲載した際にクレームが来たんですか?
佐藤 クレームは大小いろいろあるのですが、訴訟に発展しかけた最も大きなクレームについてはそうでしたね。その時も、取材の責任は誰にあるかということで、まずは作品を作る上で役割を決めようという話はしました。データがあっても、それをどう組み込んで、ストーリーを作っていくかは別の作業。編集者がデータを調べると、なぜか"自分の原作"だと思ってしまう。なので、編集者が勝手に台詞を変えて、僕が「なんで台詞を変えるんだ」と言っても通じない。編集者は「原作者と同じ仕事してる」と思い込んでいて、「だっていいものにしようと思ってる」と言うんですが、そこに意識のズレがある。物語を作るのは僕の役目。編集者に作家の領域に踏み込まれると違いますよね。僕はマンガに、そのとき伝えたい思いや表現したい内容がないと描けない。そのためにデータを利用もするし、データは物語を作る材料の一部に過ぎません。編集者の意向でそもそも表現したいことを曲げるのは、本末転倒です。
――どんないい食材を持ってこられても、結局は調理人の腕次第ですよね。データだけがあっても、それを物語に盛り込んで生かすのは、作家の特殊技能によると思います。
佐藤 データもそうだし、言葉一つとっても、言葉だけがあって物語ができるんじゃなくて、言葉はストーリーにハマるパズルの一つ。物語を作ったことない人は、それがわからなくて、出来上がった物語の中に、自分が調べたデータや言った言葉が混ざってると、自分が作ったものだと思ってしまう。編集者だけでマンガを作っているのなら、作家をバンバン取り替えて、編集主導で100万部ヒットを連打すれば、講談社も黒字になるんじゃないかと思うんですけど。現実は違うわけですよ。それがわからないみたいですね。
●100万部売れても一生は暮らせない
――ギャラの話もサイトでされていて、『ブラックジャックによろしく』を講談社で描いていた頃、原稿料がページ単価2万3,000円で、アシスタントへの人件費や事務所の賃貸料を考慮すると、原稿料だけでは赤字だったと明かされています。
佐藤 ビジネスですからお金の話は最初にしないといけないし、それができない雰囲気があること自体がおかしい。それをサイトで書いたら問題があるというのがわからない。アルバイトも時給がいくらかわかってから働くのが普通ですよね。編集者に原稿料の話をしても「編集長しか原稿料はわからないので、担当の私は知らない。決定権がない」と言われてしまう。ギャラを明確にせず、契約書もないままマンガを描くのはおかしいので、5~6年前からは契約の専門家を立てるようになりました。マンガ家でもそこまでやる人は少ないでしょうね。そもそも、契約書を交わさないといけないという概念がない。
――原稿料だけでは赤字だったとしても、コミックスの印税ではガッポリ儲かっているんじゃないんですか?
佐藤 全然そんなことないんですよ。100万冊売れるマンガなんて全体の0.1パーセント以下。有限会社 佐藤漫画製作所という会社組織にしているんですが、零細企業の社長としては全然儲かってない。100万部ヒットといっても1冊500円で印税が5,000万。年4冊出して2億。それって、すごいわけではない。年商2億ですからね。僕の年収じゃない。アシスタント含めて5~6人いる企業ではたいしたことないですよ。しかもそれが全体の0.1パーセントで、平均だけで見れば、悪い商売ですよ。その上、単行本の出ない漫画家のほうが圧倒的に多いですから。トップになった人は桁が違うぐらい儲からないと職業として魅力がない。100万部ヒットを出すと一生遊んで暮らせるというぐらいじゃないとマンガ家は夢がないですよね。半分税金で持っていかれるし。
――でも、マンガは何巻も出せますし、映像化の際のロイヤリティやグッズ収益などのキャラクタービジネスもウマみがあると思いますが。
佐藤 それはごくごく一部ですよ。言うほど儲からないですって。キャラクタービジネスで儲かるのは、漫画がアニメ化され、ゲーム化され、キャラクターグッズが飛ぶように売れる人ということになりますが、そういう人って何人もいないですよ。『ワンピース』の尾田栄一郎さんとか、『ドラゴンボール』の鳥山明さんとか、本当に限られた何人かですよ。実写ドラマ化されても、キャラクターグッズなんて出ないです。『海猿』の場合、最初の映画化では単行本の増刷がかかったんですけど、次の映画化では単行本はまったく増刷がかかりませんでしたし、テレビドラマの場合、1本30万円弱の原作使用料が入るだけです。映画が70億ヒットと言われても、僕にはロイヤリティは1円も発生しません。決められた原作使用料が1回支払われるだけです。それじゃおかしいということで、次回作ではロイヤリティが発生する契約を結んでいます。子どもの頃は週刊マンガ雑誌に連載してる人は全員大金持ちだと思ってましたけど、まさか原稿料だけでは、赤字でやっているとは思わなかったですね。
* * *
話す内容はラジカルながら、ギャラの話も冷静に臆することなく明かしてくれた佐藤先生。後半では、マンガの新たな可能性を探る『マンガon web』の現状、たゆたう気持ちをありのまま表現していただいた佐藤先生のマンガ観、さらに次回作の構想にも迫る。マンガ界震撼の後編もお楽しみに。
(後編につづく/取材・文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>)
●佐藤秀峰(さとう・しゅうほう)
1973年12月8日生まれ。大学在学中よりマンガ家を志し、福本伸行、高橋ツトムのアシスタントを経て、1998年「ヤングサンデー」に掲載の『おめでとォ!』でデビュー。同年開始の『海猿』はNHK BSハイビジョンでTOKIO・国分太一でドラマ化され、さらに伊藤英明主演で映画化、フジテレビ系でドラマ化、今年9月18日には3作目の映画公開も控える。また、02年、「モーニング」に『ブラックジャックによろしく』を連載、03年に妻夫木聡主演でTBS系でドラマ化。単行本1~13巻の累計発行部数は1000万部を突破。07年、「ビッグコミックスピリッツ」に移籍し、『新ブラックジャックによろしく』と改題。09年、オンラインコミックサイト『漫画 on Web』(http://mangaonweb.com/)を立ち上げ、マンガの新天地を模索している。
新ブラックジャックによろしく 8
「世界を変えるのはいつでもたった一人の情熱だ」(Amazonより引用)
浪川 ありがとうございます(笑)。だからコラボレーションという言葉なんですよね。確かにみんなの目は「声優」「モデル」「女優」「ミュージシャン」という部分に向いているんですけど、それってみんなが勝手に決めているだけだと思います。例えば世間には「声優が実写をやっている」という風に見えるのかもしれないけど、こちらとしては表現する、何かをみんなに伝えたいというのを分かち合って映画にしただけなんです。
──声優が実写映画を撮るという事は、そういった世間の目に対する反骨精神にも繋がるわけですか?
浪川 なんで声優と芸能人で分けなきゃいけないんだろう、と。僕だって映画をやっています。(主演の)宮野(真守)君だって実写で普通に仕事をしていますし、舞台だってやる。他にも劇団を持っている方もたくさんいらっしゃいます。だったらまず声優と舞台俳優を分けることもないと思いますし、お前はどっちだって聞かれたら「別にどっちでもいいじゃない」みたいな感覚です。
──とはいえ、市場が声優と芸能人を明確にわけようとしている部分もあるじゃないですか。そういう現状に対してどう感じているのかを聞いてみたいんですが。
浪川 正直に言いますと、僕も若かったのかもしれないけど、昔は声優と呼ばれるのが本当に大嫌いだったんです。でも声優だって人の心を動かすことができるんです。それに俳優さんがアニメや洋画に声を当てることがあってもいいと思うんです。僕なんてしょっちゅう比べられますよ。僕よりも全然若い役者さんが吹き替えを断ったら代わりに僕がやるとか、そういうことをいっぱい経験しています。「何で芸能人が吹き替えをやるの?」という声もあります。じゃあ声優陣もバラエティーなり、ドラマなり映画なりに出ればいいじゃないかと。考え方がそれぞれあるとは思うんですけど、そういう状況に対して誰かが何かをやらなきゃいけないんだったら、俺がやってやるって思って映画を撮ったんですよ。そういう意味では反骨心かもしれないですね。
──でも映画となると、「評価してやるぞ!」って気持ちで観るお客さんも多いですから、怖いところもありますよね。
浪川 そうなんです。映画には評論家がいるように、「評価」しに来る方が多いじゃないですか。これは確かに声優をやっていると感じない感覚かもしれない。でも、その「評価される」という感覚が、もう楽しくてしょうがないですね。アニメには好きとか嫌いとかはあっても、あまり「評価」というのは聞きませんものね。
──今後、再び自分で映像をプロデュースしたいというような願望はありますか?
浪川 またこういう風にできるかどうかも分からないですし、やりたいって言って簡単にできるものでもないのですが......。もし次に自分がやるとしたらやっぱり切なさを追いかけるものをやってみたいですね。ただ、今回悔しい想いをした箇所もそれなりにあって、それが抜けきらないから似たようなテイストの映画がまた撮りたいって思ってしまうのかもしれない。だから、今は軽々しく「次はこれがやりたい」なんて言えないですね。それは『Wonderful World』を作ったスタッフや出演者に失礼ですから。
(取材・文=有田シュン)
●『Wonderful World』
監督/浪川大輔 脚本/川添法臣 出演/宮野真守、上原歩、平田裕香、森久保祥太郎、杉田智和、甲斐田裕子、夢人(彩冷える)、ヒロシ、小山剛志、長沢美樹、斎賀みつき、勝杏里、大浦冬華、関智一、浪川大輔、藤原啓治、山寺宏一、内海賢二 配給/エバーグリーンプロジェクト 映画公開情報は公式サイト<http://www.wild-strawberry.com/movie/wonderful/>
●浪川大輔(なみかわ・だいすけ)
1976年4月2日生まれ。85年より「グループこまどり」に所属し、子役声優としてデビュー。以降洋画、アニメ、ゲームなど多数の作品に参加。アニメでは『君に届け』風早翔太役、『ヘタリア』シリーズのイタリア役といった話題作を主演する他、洋画吹き替えの現場でも、イライジャ・ウッド、レオナルド・ディカプリオの声を担当する人気男性声優。6月23日にはCDデビューも果たし、歌手としての活動もスタートする。
君に届け VOL.1
風早クンです。


・「ハマザキカク」最新刊
『即席麺サイクロペディア』(著:山本利夫 )
世界一の即席麺コレクターによるカップラーメン大全。懐かしいものから超ヘンテコリンなものまで1046個のカップ麺を収録。これを見ずにカップ麺の歴史は語れない!
定価:1785円/6月19日発売
●濱崎誉史朗フェア「Cool Ja本~世界で通用する日本本~」
日本の趣都、秋葉原で最大規模の書店という条件を活かし、ヨドバシカメラを訪れる外国人をターゲットに、日本が世界に誇れる本をおよそ100冊選び抜いた、「日本語が読めなくてもウケる本」フェア。普段、本を全く読まない、活字離れ著しい若者、特にオタクにも興味を持ってもらえるラインナップ。6月30日まで有隣堂ヨドバシAKIBA店にて絶賛開催中。
<http://www.shahyo.com/ext02/coolJapon.html>
アイデアのつくり方
濱崎さんのバイブル。








Ad Plugin made by Free Wordpress Themes