熱く、冷酷で、チャーミングな男たちが銃弾と踊る『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』

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ジョニー・トー監督作品と言えば、
やっぱりアンソニー・ウォン!
 男は、出された飯を美味そうに平らげなければならない。男は、拳銃の扱いに慣れていなければならない。男は、信頼できる友の前では少年のように笑って見せなければならない。そして男は、死んでも約束を守らなければならない──。『ザ・ミッション 非情の掟』(00)『エグザイル/絆』(06)で日本でもスマッシュヒットを飛ばした香港映画界の俊英、ジョニー・トー監督が描くのは、いつだってそんな男たちである。  そんなトー監督の最新作が、現在公開中の『冷たい雨に撃て、悲しみの銃弾を』だ。従来の"トー組"キャストに加え、フランスからジョニー・アリディを主演に迎えた本作もまた、男たちの侠義に彩られた、暑苦しいまでに重厚な復讐譚に仕上がっている。  『男たちの挽歌』シリーズに端を発した香港ノワールの正統な継承者でありながら、サム・ペキンパーばりのソリッドなガンアクションで魅せるトー作品、その主要キャストであり続ける俳優アンソニー・ウォンに話を聞いた。 ──『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』拝見しました。ジョニー・トー監督『ザ・ミッション 非情の掟』『エグザイル/絆』から続く3部作という捉え方でよろしいでしょうか。 アンソニー・ウォン(以下、アンソニー) それは監督に聞いてください。僕は監督の希望通りに動くのが仕事なので、特に過去の作品を意識することはないよ。確かに、役名は続いているけどね。ジョニー・トーの作品にはあまりにも数多く出演させてもらっているし、(この作品の役名である)クワイのようなキャラクターを僕に根付かせてくれたのもトー監督だからね。彼には本当に感謝しているよ。 ──今回はフランス人のジョニー・アリディがキャストに加わり、制作もフランス主導で行われたと聞いています。先に上げた2作と比べて、どんな印象を持たれましたか?
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アンソニー 僕にとっては、まったく今までの香港作品と変わりありません。僕は与えられた仕事にベストを尽くすだけ。この作品は、舞台も香港とマカオ、つまり地元だし、撮影もここ。アリディの参加はとても刺激的だったけど、彼が我々に馴染んでくれたと言ったほうがいいかもしれないね(笑)。 ──監督の演出法についても聞かせてください。トー監督の撮影ではほとんどNGカットがなく、一発撮りで撮ったシーンはすべて使うという話を聞きました。そんな監督の撮影スタイルを、演者の側からはどう見ていますか? アンソニー 確かに独特のスタイルだよね。だけど、僕自身は監督のイメージ通りに演技をすることが仕事なわけだから、何も問題はないよ。その代わりというわけじゃないけど、トー監督は細かい演技の仕方については僕らに自由を与えてくれるんだ。だって、その場の思いつきで台本を書き換えたりすることもあるくらいだからね(笑)。役者のイメージもちゃんと聞いてくれる監督だよ。まぁ、僕らの意見が反映されることはあまりないのだけれど(笑)。 ──ジョニー・トー作品はバイオレンスの演出に長けた映画ですが、昨今、世界中でバイオレンス作品に対する風当たりが強くなっています。青少年に悪影響を与えるとして、表現が規制される例も。ウォンさんはそうした「映画のなかの暴力」が観客に与える影響、また「映画のなかで暴力を描くこと」の社会的な意味についてどのようにお考えでしょうか。過去の主演作では『八仙飯店之人肉饅頭』(92)という、ものすごいバイオレンス映画もありましたが......。 アンソニー その作品についてはあまり語りたくないんだ。申し訳ない。暴力シーンの影響についてだけど、青少年というくくりの正確なところにもよると思うよ。あくまで映画は映画だし、出来上がった物の与える影響も確かにあるとは思うけれど......僕らは作品が出来上がる過程の駒でしかないし、それが仕事だからね。 ──では、ウォンさんの好きな映画を教えてください。 アンソニー うーん、ありすぎて困るね(笑)。ひとつ上げるとすれば『ベン・ハー』(59)かな......。それと、映画ではないけれど、最近香港で上演されたミュージカル『シカゴ』にすごく感動したよ。 ──最後に。今作『復仇』(原題)は『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』というタイトルで日本公開されています。とても素敵なタイトルだと思いますが、ウォンさんの印象を聞かせてください。 アンソニー 素晴らしい名前だね。オリジナルの名前よりもいいと思うよ! (取材・文=編集部) ●『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』 監督:ジョニー・トー 脚本:ワイ・カーファイ 出演:ジョニー・アリディ/アンソニー・ウォン/ラム・カートン/ラム・シュー/サイモン・ヤム/シルヴィー・テステュー 提供:ファントム・フィルム/アスミック・エース エンタテインメント 配給:ファントム・フィルム 宣伝:スキップ (c)2009 ARP - MEDIA ASIA ALL RIGHTS RESERVED 公開中 http://judan-movie.com/
ザ・ミッション 非情の掟 すべてはここから始まった。 amazon_associate_logo.jpg
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「マンガを正当なビジネスにしたい」マンガ家・佐藤秀峰 爆弾発言の裏にある思い(前編)

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 電子書籍デバイス「iPad」「Kindle」の誕生により、過渡期を迎える出版業界。隆盛を誇るマンガ雑誌も2007年に「月刊少年ジャンプ」(集英社)、08年に「週刊ヤングサンデー」(小学館)が休刊し、その後、新雑誌が創刊されるなど各社再編が相次いでいる。そんな中、"脱出版社"に向けて、作品を1話10円から販売するオンラインコミックサイト『漫画 on Web』で新たなマンガの可能性を模索するのが『海猿』『ブラックジャックによろしく』で名を馳せるマンガ家・佐藤秀峰氏。  昨年2月に公式サイトを立ち上げ、『ブラよろ』が「モーニング」(講談社)から「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)へ移籍した顛末のほか、編集部によるネームの無断改変、必要経費の実情、アシスタントからの賃上げ要求までも暴露。さらに広告用のマンガを描くも代理店の不義理な対応から掲載を拒否し、ギャラ540万円の受け取りを放棄した話や、編集者の不手際から『新ブラよろ』のコミックス9巻のカバーイラスト執筆をボイコットするなど、サイトの日記で爆弾発言を連発している。  『新ブラよろ』の雑誌掲載があと2話で最終回となる中、佐藤氏に突撃インタビューを行った。編集部との長年にわたる軋轢やマンガ界の内情、『漫画 on Web』への手ごたえと出版界の未来、プロのマンガ家になる方法、さらに次回作のプランも告白してくれた。前後編でマンガ界の禁断の真実に肉薄する。 ――佐藤先生の"暴露"が世間では大きな反響を呼んでいます。ここまで内情を晒すことに抵抗はなかったのでしょうか? 佐藤秀峰(以下、佐藤) 僕は起こっている出来事を普通に話しているだけなんですよ。今までは発言する場所がなかったのが、ホームページという発言の場ができたから言ってるだけ。怒りがたまっていて、恨みを晴らすためにやってるわけでもないんです。ニュースサイトで記事にされる場合は、"ブチギレ"とか"暴露"と見出しを付けられちゃうんですけど(笑)、僕は平熱なんです。「原稿料の話は外じゃ絶対言っちゃいけない、それは業界のタブー」という空気が支配しているのがむしろおかしい。僕が何か言うと「みんなが黙ってきたのに、何言ってるんだ」というような反応がある方が変。僕はこういうことを普通に話せる空気が欲しいだけ。 ――「単行本の表紙カバーを描いてもギャラが出ない」という話も読者には衝撃的でした。カバーをボイコットする話では、『ムショ医』で知られるマンガ家である佐藤智美夫人と夫婦喧嘩をして、出版社に対して「あいつら、レ○プしといて、『オレが女にしてやった』って言うような奴らだぜ......」と日記で発言。その後、奥さんが部屋から出て行ったところで終わったので、そのまま離婚の危機を迎えるのかと思いましたよ。 佐藤 単行本の表紙は、僕が知る限りどこの出版社もほぼ100パーセント、ギャラが出ませんね。日記を書くときは業界の人より、マンガをあまり知らない一般の方が読むことを想定して、面白おかしく伝えたいという気持ちがあるんです。カバーの話も事実を列挙して説明文を書いても面白くないので、奥さんと喧嘩した様子を実況中継風に書いたほうが読者の興味を引いて読んでもらえるんじゃないかという"演出"です。マンガのストーリーを作るのと同じで、冒頭に衝撃的な事件があって、状況説明のシーンが始まって、まただんだん盛り上がっていく感じ。実は深刻な夫婦喧嘩じゃなくて、奥さんには日記を書くときも相談して、「(喧嘩の時に)レイプって言葉は使ってなかったよ」と言われて「でもそう思ってたんだ」と言ったら、「じゃあ書いてもいいんじゃない」ということで使いました。さらに「一日、日記を空けた方が引きがあるよ」と言われて、文章は先に作っといて、一日空けてから結末は書きました。 ●マンガ界に伝わる都市伝説「編集者は3人新人をつぶして一人前」 ――マンガ編集者の間では、「編集者は3人新人をつぶして一人前」という話もあるそうで......。 佐藤 実際、担当編集者に言われたんですよ。「入社したときに先輩の編集者から編集者の心得として三つ言われたことがある。一つ目が、"編集者は3人新人をつぶして一人前"。二つ目が、"作家に絶対謝るな"。三つ目が、"大物作家とタクシーに乗るときは、作家を奥に入れろ。新人の場合は出口側に座らせろ"」。だから、マンガ家と編集者は根本的に感覚が違うわけですよ。僕らマンガ家は、表現者で自分の表現がしたいのに、編集者は自分たちが"マンガを描かせてる"と思ってるから話が通じない。僕らからすればマンガを多くの人に見せたくて、有名な雑誌に載って、より人目に付くところに発表したいと考える。そのために出版社がパートナーとして存在している、という順番。創作意欲が大前提。でも、編集者は、雑誌を埋めるためのコンテンツが必要で、そこにどの作家を選んで何を描かせるかと考える編集者の企画主導。その点が折り合いつかないことがよくある。それで、自分を傲慢とも思わないでそれが当然だと思ってる。若い頃は、なんで大学出てマンガを描いたこともない人間に、いきなり作品の批評されて「出直して来い」と言われないといけないのかと思ってましたね。何を分かって批評してるんだろう、と。 ss02.jpg ――マンガ家の心情を理解している編集者はいなかったですか? 佐藤 前の「スピリッツ」の担当はすごく好きな人で、その人は「編集者は才能にたかるハイエナで、おこぼれを頂戴しようとして才能の周りにくっついてる人間だと常に自覚しておくべき。ただハイエナにはハイエナのプライドがある」と言ってましたね。「編集者が(マンガを)作ってるというのは思い上がりだと自分は思ってる」と。要は、どこまで相手の立場を尊重できるかだと思う。 ――マンガ家と編集者の関係というと、現在「週刊少年ジャンプ」(集英社)連載中の原作・大場つぐみ、作画・小畑健の『DEATH NOTE』コンビによる『バクマン。』や、土田世紀のマンガ『編集王』でもその内幕が描かれています。佐藤先生は読まれてらっしゃいますか? 佐藤 『バクマン。』は読んでないんですが、『編集王』はアシスタントのころに読んでいて、「これからこんな編集者と付き合っていくのか、でも、ここまで悪い人たちはいないだろう」という思っていたら、もっと悪かったという(一同笑)。熱血な編集者もいるんですけど、どこかで、会社に呑まれるんですよ。作家の味方をしても、「じゃあ辞めるのか」となったら、やっぱり給料とっちゃう。1回負けると角が取れて、かわいくなっちゃう。 ――『海猿』は編集部との表現の方向性をめぐる対立から、連載終了を申し入れたと明かされています。 佐藤 『海猿』の場合は、海上保安官の仕事は、海上の治安の維持という海の平和を保つ仕事。溺れてる人がいたら助けるけど、悪いヤツがいたら時には銃を撃たないといけない。同じ人間が、ある時は命を救い、ある時は人を殺すという矛盾や葛藤を描きたかったんですけど、それは編集部が描かせてくれないわけですよ。「だったらやる意味ないや」と思って、結局止めちゃいましたね。 ――編集部は、正義のヒーローにしようとした。 佐藤 そうですね。単純に人助けをして「かっこいい」「感動した」という話を延々描いてくれと言われると無理ですね。それは僕の表現したいことじゃない。描けと強制されると無理でした。そもそも『海猿』は「ヤングサンデー」の編集者が、当時、映像制作会社に所属していた小森陽一(『海猿』には原案取材としてクレジット)さんと知り合いになって、お互い海が好きということで、海上保安庁の話を描こうとしていた。そこで小森さんが原作を文章で書いて企画会議に出して、「原作としては使えないけど、海上保安庁というのは珍しい」ということで、企画だけが残っていたんです。それを編集者が「佐藤君、描いてみないか」と持ってきて、話を受けたんです。なので、僕は小森さんの書いた原作を読んでいないのですが、小森さんは自分が原作者だと思っていらっしゃるようで、そこからお互い齟齬があったんですよね。 ――『ブラックジャックによろしく』では、編集者の取材内容にミスがあり、抗議が来てから作品に編集者の名前がクレジットされるようになりました。実際、取材はどのようにされていたのでしょうか? 佐藤 『ブラックジャックによろしく』は、まず「モーニング」で描きませんかという話だけがあって、最初は、ヤクザモノはどうだろうとか、いろいろ案はあったのですが、前作の『海猿』が海上保安官だったので、"命の現場"の話が向いているということで、医者になったんです。特に医療に興味があったわけではないです。取材は、打ち合わせで決めた内容を、編集者だけが医療関係者などに取材に行くときもあれば、僕が同行する場合もありました。がん編の途中までは、取材は編集者が主導ですね。つまり、それまでの取材の内容については、彼らの仕事の成果だと思っていますし、彼らが評価されるべきです。逆に言うと、僕にはその当時の取材内容について、責任が取れないし、編集者も、取材の内容については自分たちが保証するという取り決めでやってきたはずです。がん編の途中からと、精神科編以降は、取材も僕が主導ですね。 ――編集者だけが取材に行った内容を掲載した際にクレームが来たんですか? 佐藤 クレームは大小いろいろあるのですが、訴訟に発展しかけた最も大きなクレームについてはそうでしたね。その時も、取材の責任は誰にあるかということで、まずは作品を作る上で役割を決めようという話はしました。データがあっても、それをどう組み込んで、ストーリーを作っていくかは別の作業。編集者がデータを調べると、なぜか"自分の原作"だと思ってしまう。なので、編集者が勝手に台詞を変えて、僕が「なんで台詞を変えるんだ」と言っても通じない。編集者は「原作者と同じ仕事してる」と思い込んでいて、「だっていいものにしようと思ってる」と言うんですが、そこに意識のズレがある。物語を作るのは僕の役目。編集者に作家の領域に踏み込まれると違いますよね。僕はマンガに、そのとき伝えたい思いや表現したい内容がないと描けない。そのためにデータを利用もするし、データは物語を作る材料の一部に過ぎません。編集者の意向でそもそも表現したいことを曲げるのは、本末転倒です。 ――どんないい食材を持ってこられても、結局は調理人の腕次第ですよね。データだけがあっても、それを物語に盛り込んで生かすのは、作家の特殊技能によると思います。 佐藤 データもそうだし、言葉一つとっても、言葉だけがあって物語ができるんじゃなくて、言葉はストーリーにハマるパズルの一つ。物語を作ったことない人は、それがわからなくて、出来上がった物語の中に、自分が調べたデータや言った言葉が混ざってると、自分が作ったものだと思ってしまう。編集者だけでマンガを作っているのなら、作家をバンバン取り替えて、編集主導で100万部ヒットを連打すれば、講談社も黒字になるんじゃないかと思うんですけど。現実は違うわけですよ。それがわからないみたいですね。 ●100万部売れても一生は暮らせない ――ギャラの話もサイトでされていて、『ブラックジャックによろしく』を講談社で描いていた頃、原稿料がページ単価2万3,000円で、アシスタントへの人件費や事務所の賃貸料を考慮すると、原稿料だけでは赤字だったと明かされています。 佐藤 ビジネスですからお金の話は最初にしないといけないし、それができない雰囲気があること自体がおかしい。それをサイトで書いたら問題があるというのがわからない。アルバイトも時給がいくらかわかってから働くのが普通ですよね。編集者に原稿料の話をしても「編集長しか原稿料はわからないので、担当の私は知らない。決定権がない」と言われてしまう。ギャラを明確にせず、契約書もないままマンガを描くのはおかしいので、5~6年前からは契約の専門家を立てるようになりました。マンガ家でもそこまでやる人は少ないでしょうね。そもそも、契約書を交わさないといけないという概念がない。 ――原稿料だけでは赤字だったとしても、コミックスの印税ではガッポリ儲かっているんじゃないんですか? 佐藤 全然そんなことないんですよ。100万冊売れるマンガなんて全体の0.1パーセント以下。有限会社 佐藤漫画製作所という会社組織にしているんですが、零細企業の社長としては全然儲かってない。100万部ヒットといっても1冊500円で印税が5,000万。年4冊出して2億。それって、すごいわけではない。年商2億ですからね。僕の年収じゃない。アシスタント含めて5~6人いる企業ではたいしたことないですよ。しかもそれが全体の0.1パーセントで、平均だけで見れば、悪い商売ですよ。その上、単行本の出ない漫画家のほうが圧倒的に多いですから。トップになった人は桁が違うぐらい儲からないと職業として魅力がない。100万部ヒットを出すと一生遊んで暮らせるというぐらいじゃないとマンガ家は夢がないですよね。半分税金で持っていかれるし。 ――でも、マンガは何巻も出せますし、映像化の際のロイヤリティやグッズ収益などのキャラクタービジネスもウマみがあると思いますが。 佐藤 それはごくごく一部ですよ。言うほど儲からないですって。キャラクタービジネスで儲かるのは、漫画がアニメ化され、ゲーム化され、キャラクターグッズが飛ぶように売れる人ということになりますが、そういう人って何人もいないですよ。『ワンピース』の尾田栄一郎さんとか、『ドラゴンボール』の鳥山明さんとか、本当に限られた何人かですよ。実写ドラマ化されても、キャラクターグッズなんて出ないです。『海猿』の場合、最初の映画化では単行本の増刷がかかったんですけど、次の映画化では単行本はまったく増刷がかかりませんでしたし、テレビドラマの場合、1本30万円弱の原作使用料が入るだけです。映画が70億ヒットと言われても、僕にはロイヤリティは1円も発生しません。決められた原作使用料が1回支払われるだけです。それじゃおかしいということで、次回作ではロイヤリティが発生する契約を結んでいます。子どもの頃は週刊マンガ雑誌に連載してる人は全員大金持ちだと思ってましたけど、まさか原稿料だけでは、赤字でやっているとは思わなかったですね。  * * *  話す内容はラジカルながら、ギャラの話も冷静に臆することなく明かしてくれた佐藤先生。後半では、マンガの新たな可能性を探る『マンガon web』の現状、たゆたう気持ちをありのまま表現していただいた佐藤先生のマンガ観、さらに次回作の構想にも迫る。マンガ界震撼の後編もお楽しみに。 (後編につづく/取材・文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>) ●佐藤秀峰(さとう・しゅうほう) 1973年12月8日生まれ。大学在学中よりマンガ家を志し、福本伸行、高橋ツトムのアシスタントを経て、1998年「ヤングサンデー」に掲載の『おめでとォ!』でデビュー。同年開始の『海猿』はNHK BSハイビジョンでTOKIO・国分太一でドラマ化され、さらに伊藤英明主演で映画化、フジテレビ系でドラマ化、今年9月18日には3作目の映画公開も控える。また、02年、「モーニング」に『ブラックジャックによろしく』を連載、03年に妻夫木聡主演でTBS系でドラマ化。単行本1~13巻の累計発行部数は1000万部を突破。07年、「ビッグコミックスピリッツ」に移籍し、『新ブラックジャックによろしく』と改題。09年、オンラインコミックサイト『漫画 on Web』(http://mangaonweb.com/)を立ち上げ、マンガの新天地を模索している。
新ブラックジャックによろしく 8 「世界を変えるのはいつでもたった一人の情熱だ」(Amazonより引用) amazon_associate_logo.jpg
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声優・浪川大輔がメガホンをとった実写映画『Wonderful World』に込めた熱い想い

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 声優たちが多数出演する。しかも、監督を務めるのも声優。そんな前代未聞の実写映画『Wonderful World』が6月19日より公開される。  アニメ本編のみならず、アニメソングのヒットや毎週のように開催されるライブやイベントの盛り上がりから、以前にもまして注目を浴びる機会が増えた声優。そんな彼らと、モデルの上原歩、女優の平田裕香、ミュージシャンの夢人(彩冷える)、お笑い芸人のヒロシなど各方面で活躍する芸能人を「コラボレーション」させ、一本の映画に仕上げたのが、自身も同作に俳優として出演し、監督も務めた声優・浪川大輔だ。  なぜ、実写映画を撮ろうと思ったのか。声優として活躍する彼の胸の内に隠された、その真意を語ってもらった。 ──初の監督ということで、苦労したことも多かったと思いますが。 浪川大輔(以下、浪川) まず、何をやっていいのかが分からないというのが、一番苦しかったです。自分が何が分からないのかも分からない。あとは知識の無さ。カメラの種類とか照明の種類一つにしても、どういう画角で撮ればどういう風に映るのか、本当に分からない状態からスタートして、やりながら覚えるという感じでした。でも補ってくれた役者さんやスタッフさんがいて、何とか完成までこぎつけました。最近知った言葉なんですけれど、「諦めた時が失敗である」みたいな言葉を見た時に、「諦めなければ失敗じゃないんだ」と思って。本当に忍耐強さと辛抱強さを鍛えられた一年でした。 ──声優、モデル、ミュージシャンといった今まで映画とは違うフィールドで活躍していた人たちが映画を作る、というトピックに対する周りの反応はどうでしたか? 浪川 やっぱり初めて何かやる、それも今まであまり着目されてない所を狙っていく隙間産業的なものを始めると、それを叩く人や「そんなのうまく行くわけがない」って言う人は当然いるんです。でも誰かが新しいことをやってきたから今いろいろな職業が今あるんじゃないか、と思いますから。また周りの応援してくれる声や、助けてくれる仲間のために何か形にしたかった。終わった今、格好つけて言うと(笑)。 ──映画としては、ご自身も「荒削りな部分もある」と以前言われていましたし、正直「声優の撮る映画ってどうなんだろう」という気持ちも世間にはあるとは思います。ただ個人的な感想ですが、いざ観てみたらそういう冠なんて必要ないくらい面白い映画だと思いました。 ww02.jpg 浪川 ありがとうございます(笑)。だからコラボレーションという言葉なんですよね。確かにみんなの目は「声優」「モデル」「女優」「ミュージシャン」という部分に向いているんですけど、それってみんなが勝手に決めているだけだと思います。例えば世間には「声優が実写をやっている」という風に見えるのかもしれないけど、こちらとしては表現する、何かをみんなに伝えたいというのを分かち合って映画にしただけなんです。 ──声優が実写映画を撮るという事は、そういった世間の目に対する反骨精神にも繋がるわけですか? 浪川 なんで声優と芸能人で分けなきゃいけないんだろう、と。僕だって映画をやっています。(主演の)宮野(真守)君だって実写で普通に仕事をしていますし、舞台だってやる。他にも劇団を持っている方もたくさんいらっしゃいます。だったらまず声優と舞台俳優を分けることもないと思いますし、お前はどっちだって聞かれたら「別にどっちでもいいじゃない」みたいな感覚です。 ──とはいえ、市場が声優と芸能人を明確にわけようとしている部分もあるじゃないですか。そういう現状に対してどう感じているのかを聞いてみたいんですが。 浪川 正直に言いますと、僕も若かったのかもしれないけど、昔は声優と呼ばれるのが本当に大嫌いだったんです。でも声優だって人の心を動かすことができるんです。それに俳優さんがアニメや洋画に声を当てることがあってもいいと思うんです。僕なんてしょっちゅう比べられますよ。僕よりも全然若い役者さんが吹き替えを断ったら代わりに僕がやるとか、そういうことをいっぱい経験しています。「何で芸能人が吹き替えをやるの?」という声もあります。じゃあ声優陣もバラエティーなり、ドラマなり映画なりに出ればいいじゃないかと。考え方がそれぞれあるとは思うんですけど、そういう状況に対して誰かが何かをやらなきゃいけないんだったら、俺がやってやるって思って映画を撮ったんですよ。そういう意味では反骨心かもしれないですね。 ──でも映画となると、「評価してやるぞ!」って気持ちで観るお客さんも多いですから、怖いところもありますよね。 浪川 そうなんです。映画には評論家がいるように、「評価」しに来る方が多いじゃないですか。これは確かに声優をやっていると感じない感覚かもしれない。でも、その「評価される」という感覚が、もう楽しくてしょうがないですね。アニメには好きとか嫌いとかはあっても、あまり「評価」というのは聞きませんものね。 ──今後、再び自分で映像をプロデュースしたいというような願望はありますか? 浪川 またこういう風にできるかどうかも分からないですし、やりたいって言って簡単にできるものでもないのですが......。もし次に自分がやるとしたらやっぱり切なさを追いかけるものをやってみたいですね。ただ、今回悔しい想いをした箇所もそれなりにあって、それが抜けきらないから似たようなテイストの映画がまた撮りたいって思ってしまうのかもしれない。だから、今は軽々しく「次はこれがやりたい」なんて言えないですね。それは『Wonderful World』を作ったスタッフや出演者に失礼ですから。 (取材・文=有田シュン) ●『Wonderful World』 監督/浪川大輔 脚本/川添法臣 出演/宮野真守、上原歩、平田裕香、森久保祥太郎、杉田智和、甲斐田裕子、夢人(彩冷える)、ヒロシ、小山剛志、長沢美樹、斎賀みつき、勝杏里、大浦冬華、関智一、浪川大輔、藤原啓治、山寺宏一、内海賢二 配給/エバーグリーンプロジェクト 映画公開情報は公式サイト<http://www.wild-strawberry.com/movie/wonderful/> ●浪川大輔(なみかわ・だいすけ) 1976年4月2日生まれ。85年より「グループこまどり」に所属し、子役声優としてデビュー。以降洋画、アニメ、ゲームなど多数の作品に参加。アニメでは『君に届け』風早翔太役、『ヘタリア』シリーズのイタリア役といった話題作を主演する他、洋画吹き替えの現場でも、イライジャ・ウッド、レオナルド・ディカプリオの声を担当する人気男性声優。6月23日にはCDデビューも果たし、歌手としての活動もスタートする。
君に届け VOL.1 風早クンです。 amazon_associate_logo.jpg
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「欲情したときは、○○って言っちゃうんです♪」 夕樹舞子ちゃんが見せるちょっとツンデレな姿!

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ファンのアツい声に応えて、ついに復帰!
 1995年にAVデビューして以来、90年代を代表するAV女優として人気を博した夕樹舞子ちゃん。その人気は日本だけに留まらず、台湾や香港などアジア全域でも「アジアの女神」として多くの男たちを悩殺。98年からはストリップに進出し、その官能的なボディを我々の間近で見せ続けてくれた。  そんな舞子ちゃんが昨年、実に11年ぶりにAV復帰したといううれしいニュースが! 久々にテレビ画面で見た舞子ちゃんは、以前と変わらない大きな瞳のロリフェイスに、華奢なのにプリプリなダイナマイトバディ......と、もう大興奮です!  そして来たる6月18日(金)、話題沸騰中の「DMMライブチャット」に舞子ちゃんが登場! 生でおしゃべりできるなんて滅多にない機会ということで、さっそく直撃インタビューしてきました♪ ──今日はよろしくお願いします! 舞子ちゃんは昨年、AV復帰されましたね。ファンとしては首を長~くして待っていたわけですが、復帰したきっかけは何だったんですか? 夕樹 私は98年からストリップの舞台に立っていたんですが、AVは10年以上撮っていなかったんです。でも未だにどこに行っても、いろんな方が「AV女優の夕樹さん」と言ってくださって、逆に申し訳ないなあって(笑)。それと、私がデビューした当時って、AVはものすごく時間をかけてとても丁寧に撮っていたんですが、今のAVって、簡単に撮影しちゃうものが多いなあと思って。だから、昔みたいにじっくり時間をかけた、綺麗なアダルトの世界を残していきたいと考えて、復帰しました。 ──やはりファンの皆さんは喜ばれたのでは? 夕樹 皆さんに「おかえりなさい」と言ってもらえてうれしかったです。 ──アジアにもファンが多いですが、反響は? 夕樹 ありましたね。先日、浜劇ストリップに出演中に、台湾からのファンの人が応援にかけつけてくれたり! ──わざわざ台湾からですか! それはうれしいですね! さて、チャットの話に移りますが。6月18日にDMMのチャットにご出演する予定ですが、いまの心境は? 夕樹 どんな人が遊びに来てくれるかドキドキします。でも下ネタはちょっと苦手なので、緊張......かな。 ──下ネタが苦手なの? 夕樹 そうなんです。普段下ネタをまったく話さないんです。この前初めて「クンニ」という言葉を知ったくらいで......。 ──ええー! 撮影でもやりますよね? 夕樹 もちろん行為自体は分かってましたが、「クンニ」がそのことを指すとは知らなくて......。後輩に驚かれました(笑)。 ──いやはや、僕も驚きです......。では逆に、下ネタ以外で話してみたいことは? 夕樹 盛り上がるカラオケの曲について語り合いたいなあ。男の人とカラオケデートとかしたい♪ ──男性にカラオケデートで歌ってほしい曲は? 夕樹 ミスチルか桑田さん! でも、私は歌がうまくないので、男の人にもそこまで歌唱力を求めません。それよりも適度に盛り上げてくれたり、アップな曲が続いたら次はしっとりとしたバラードを歌ってくれるような、空気を読める男性が好きです♪ ──素敵ですね! 夕樹さんとデートしたら楽しそうだなあ。 夕樹 ホントですかあ。でも私、昔から男の人にうまく甘えらないんですよ、恥ずかしくて。わがままを言ったり、「ばっかじゃないの!」「キモイ!」とか言っちゃって。素直になれないんです......。 ──つまりツンデレってことですよね? 夕樹 うん、周りからよく「ツンデレだ」って言われます。だから、自分から男の人を誘ったりできないんですよ。仕方ないので、エッチしたいときは、「なんかムカつく!」と言って相手を挑発します。私が「ムカつく」と言ったら欲情してる証です(笑)。 ──マジですか! じゃあ、18日のチャットでも、もし「ムカつく」という言葉が出てきたら......。 夕樹 エッチしたいって意味です(笑)。しかも私、雨の日ってすごく欲情するんですよ。だから1年のうち梅雨の6月は、一番ムラムラしちゃう。当日雨だったら本当に「ムカつく」とか言っちゃうかもしれませんね。そしたら会いにきて♪ ──当日は雨を降るように期待しています! 夕樹 はい♪ 当日はセクシーな恰好をしてお待ちしているので楽しみにしていてくださいね。 ──本日はありがとうございました! ●DMMライブチャット <http://dbirth.dmm.co.jp/hit.html?ID=ht01-2> ●ゆうき・まいこ 誕生日/1月30日 血液型/B型 サイズ/T:158 B:84 W:58 H:85 公式サイト<http://yuukimaiko.livedoor.biz/
【独占】復活 夕樹舞子 待ってました! b_samplem_l.gif
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「文系離れが国を滅ぼす」カリスマ編集者・濱崎誉史朗が語る書籍への希望

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「私は企画魔的な編集者だと思うんです」  そう語るのは、社会評論社の編集者・濱崎誉史朗氏。以前、日刊サイゾーでも書評を掲載した『エロ語呂世界史年号』、『ニセドイツ』、『いんちきおもちゃ大図鑑』など、一癖もふた癖もある書籍を担当した敏腕編集者である。彼の作る本は一言で言えば、"珍書・奇書"。変な言い方をすれば「ヘンな本」ばかりだ。日本中の高層ビルの写真をひたすら収めたもの、アジア産の珍奇なおもちゃを集めたもの、エロい語呂で覚える歴史参考書、世界中の時刻表をまとめたもの......。彼の担当した書籍の持つ独自の着眼点と統一感から、出版関係者、書店員の間でも編集者・濱崎誉史朗ファンはじわりじわりと増加中。これまでも彼の担当した書籍を大々的にフィーチャーした「ハマザキカク」というブックフェアが2度開催され、現在も有隣堂ヨドバシAKIBA店において3回目のブックフェアが開催中である。  毎日最低一つは企画を考え、この半年でおよそ550もの企画案を出したというアイデアマン濱崎氏が、出版というメディアを通じて訴えたいこととは何なのだろうか。 ■アイデアの種 ──毎日一つは企画を立てているという話を聞いたのですが、毎日アイデアを生み出す原動力は何なのでしょうか。 「テクニック的なものもあるのですが、それよりも元々私は愉快犯的な気質があるんです。それはたぶん孤独心から来ているんじゃないかな。もっと注目を浴びたいとか思っちゃう。あとは天邪鬼なところもあって、他の人と極端に差別化を図ろうと工夫するところがあるんですね。そういった性格的な部分がベースになっていると思います」 ──アイデアを思いつくために心がけていることはありますか? 「本を読んでいます。月に60冊くらい。昔、自分はそこそこのアイデアマンだと思っていたんですけど、でもこれだけじゃいけないと思い、たくさん本を読んで修行しましたね。物事の概念自体に気づくためにも、元々いろんなことを知ってないといけないから。例えば、こういう本はもう出ているかどうかと分かるためには、自分が想像できる概念の幅を誰よりも広くしないといけない。アイデア力というものは、読書量に比例すると思います」 ■本を「作る」ということ ──濱崎さんは書籍を企画し、執筆者を探し、自ら組版、装丁、帯コピー、時にはポップまで作られます。
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「著者のみなさんから、まるで共著みたいってよく言われるんですよ。著者に質問攻めにして刺激を与えたりして、著者と二人でけっこうハイな状況になって作ったりするんですね。普通の出版社の本と違って、私の企画ってすごい"濱崎臭"がするって言われるんですけど、それは私がたぶん著者と一心同体で作っているからだと思います。それに......うちは小出版だからそんなに大量に部数が刷れないんですよ。でも私が作りたいのはカラーの本だし、大部数配本したい。そうするとコストを相当抑えて、価格を低下させないといけないんです。外注するとやっぱりお金がかかるわけで、そうすると全部自分でやるしか無いっていうのが、決定的な理由です。それに、自分でいろいろやった方が本に愛着が湧くからですね」 ──書籍への愛着。「紙媒体」というものに、やはりこだわりはあるのでしょうか。近年、電子書籍というものが注目されていますが。 「まだ自分の中で結論が出ていないんです。ただ、自分がやっていることがいくらすごくて自信があってネット上で話題になっても、一瞬で忘れられちゃうんですよね。昔、デスメタルをやっていて、ネット上でそこそこ話題になっていたんですが、どうも不完全燃焼だったんです。でも、ちゃんとCDになった時に初めて達成感を憶えたし、他人に伝えることができた。結局、一般の人でも認めてくれるものにするには、普通のCDとか本にして固形物として売り物にしなくては自己愛は満たされないんですね。だから電子書籍とかWeb媒体だと、それほど自分の創作意欲が刺激されないんじゃないでしょうか。もしかしたらそうではないという人もいるのかもしれないけれども」 ──固形物でないとモチベーションを維持できない。 「電子書籍ってどこでも読めるとか、安いとか、読む人の利便性ばかり取り沙汰されるんですが、そこには作っている人の気持ちが抜け落ちていると思います。やっぱり作っている人の創作意欲、やりがいってのもあって、それが鈍ると多分素人のゴミみたいなのがはびこって、誰も見向きしなくなってしまう。ネットにはネットの美学とか、リアクションとか速報性があると思いますけど、私はやはり本にはネットにはない美点があるし、紙というメディアにこだわりがあります」 ■文系オタクを作っていきたい ──濱崎さんが出版を通じて表現したいことって何なのでしょう?
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現在開催中のフェアの様子。見えづらいですが、
パネルはご本人です。
「今、理系離れが進んでいるって言われていますけど、実際は文系離れも危機的な状況だと思っています。文系離れが国を滅ぼすって、本当に思うんですよ。みんな、マルクス主義も哲学も経済のことも案外分かっていなくて。アメリカの首都も分からないって人もいるじゃないですか。そうなってくると、この時代日本国内だけ完結できるわけでもなくて、やっぱり国際社会で通用しない。そういう基礎教養とかを高めていかないといけない。そうしないとものも考えなくなっていく。だから文系オタクをかっこよくプロデュースしていきたい。かっこいい文系オタクを作っていきたいんです」 ──文系を再評価したい。 「例えば数学オリンピックで順位が下がったとか、スーパーコンピュータが何位だとかで理系は目に見えやすい形で表れているから、助成金だ、産業だってすぐにビジネスとかにも結びつけて"理系離れが~"ってキャンペーンされていたりするんですが、文系離れも相当激しいと思っています。日本人のIQが全体的に下がっていて、文系、理系両方馬鹿になっていっているのかもしれない。私が自分の職務として考えているのが、日本人の知性の低下をちょっと予防していくこと、だと思っています」 ──知識を獲得していく楽しさ、というものを取り戻さないといけないということでしょうか。 「そうですね。Wikipedia的な、断片的な情報で充足しちゃっている人って意外と多いと思います。そこで満足しちゃって、それ以上知ろうと思わない。本って買った以上は最後まで読まないともったいないと思うじゃないですか。でもWebサイトとかだと、飽きれば読むのをやめちゃうし、表面的なものしか見ないっていうのが多いんじゃないかな。自分もそうなんですけどね。さらっと見るだけ(笑)」 ──今後はどういう活動をしていきたいですか? 「ラジオに出たいし、テレビにも出たい。前はそうやってどんどん出ていくことがはしたないって思っていたんですよ。自己顕示欲と自己愛の塊で見苦しいから、って。だけど、社会評論社の宣伝になって、社会の好奇心とか知性を高められるなら、別にそれは自己愛でも何でもないんじゃないか。大人として振舞っていればいいんだって思うようになったんです」 (取材・文=有田シュン) ●はまざき・よしろう 社会評論社の変集者。父の仕事の関係で、幼少期をフィリピン・チュニジア・イギリスなどで過ごす。慶應大学法学部政治学科を卒業後、IT企業に就職するも性に合わず退職。その後、日本有数の左翼出版社・社会評論社に転職する。『超高層ビビル』『いんちきおもちゃ大図鑑』『ニセドイツ』など、数々のマニアックな本を手掛けている sokuseki.jpg ・「ハマザキカク」最新刊 『即席麺サイクロペディア』(著:山本利夫 ) 世界一の即席麺コレクターによるカップラーメン大全。懐かしいものから超ヘンテコリンなものまで1046個のカップ麺を収録。これを見ずにカップ麺の歴史は語れない! 定価:1785円/6月19日発売 ●濱崎誉史朗フェア「Cool Ja本~世界で通用する日本本~」 日本の趣都、秋葉原で最大規模の書店という条件を活かし、ヨドバシカメラを訪れる外国人をターゲットに、日本が世界に誇れる本をおよそ100冊選び抜いた、「日本語が読めなくてもウケる本」フェア。普段、本を全く読まない、活字離れ著しい若者、特にオタクにも興味を持ってもらえるラインナップ。6月30日まで有隣堂ヨドバシAKIBA店にて絶賛開催中。 <http://www.shahyo.com/ext02/coolJapon.html
アイデアのつくり方 濱崎さんのバイブル。 amazon_associate_logo.jpg
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『もしドラ』とAKB48の相関関係 岩崎夏海が明かすAKB48大ブレイクの真相(後編)

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岩崎氏も大島優子の逆転Vにはビックリ!?
前編はこちら ――AKB48の人気の重大なファクターの一つが握手会。やはり、ブレイクしてもなお、"会いに行けるアイドル"であることにこだわって、幕張メッセや東京ビッグサイトの会場を借りてまでも行うのは驚異です。 岩崎 握手会がこれほど受けるとは実は思っていなかったんですよ。開催しているうちにファンの受けがいいというのが分かって、握手会の役割が強まっていったんですね。そもそも、秋元さんは"握手会"なんて言葉も知らなかったと思いますね。握手のためにCDを100枚買うなんてスタッフもレコード会社も想像だにしたことがなかったと思いますよ。1人で2枚買うことすらも考えてなかったかのではないですかね。 ――活動初期の花やしきイベント、「軽蔑していた愛情」発売当時の水泳大会のほか、最近のチームシャッフル、移籍先が決まってなかった正規メンバー全員の所属事務所発表など、さまざまな仕掛けや"サプライズ"もAKB48の話題性の一つだと思います。 岩崎 既成概念を作らないのを心がけていましたよね。"AKB48らしさ"ができた瞬間に終わる、と。それは、ほかの歌手の方とお付き合いしていく中で、秋元さんの歌詞に「これは私が歌うべき歌詞じゃないわ」とおっしゃる方もいる。それでも秋元さんは手直しするんですが、そういう言い方をする歌手はつぶれていきますね。AKB48は変化していくこと、らしさを作らないことが大事。「あれは止めておいたほうがいい」と周りが言うことがよくあるんですが、それで失敗があっても、失敗を恐れてはすぐ飽きられる。終わるのは早いですからね。常に細心の注意を払って、裏切りを続けていかなきゃいけないという脅迫観念にも似た思いがあると思います。意外なことですが、おニャン子クラブは2年半しか活動していない。AKB48はすでにその倍やってますからね。長く続けることにこだわっている。 ――では、そのサプライズの中でも、特に「選抜総選挙」はエポックメイキングで、世間を圧倒しました。初めてこの企画を聞かれた時はどう思われました? 岩崎 まさに、秋元さんらしいなと思いましたね。ファンの間でメンバーをランク付けする"AKB48ソート"があるのを秋元さんはご存知なんですよ。アンケートサイトにメンバー人気ランキングのような投票があるのも知っていると思います。そんな中、選抜が固定していることに批判が多く、「なんで前田敦子がセンターなんだ?」という声があるのも把握していて、秋元さんもファンに委ねた場合の順位を見てみたかったのでは。そのため、昨年の選挙で、運営が選んだ選抜と大差なくて秋元さんが一番ほっとしたんじゃないでしょうかね。 ――今年の「選抜総選挙」はまさかの大島優子1位という波乱の展開となりました。感想を教えていただけますか? 岩崎 優子の1位は2位からの躍進ですから、一般的に言えば「まさか」というほどではないかと思いますが、それでもやっぱり「まさか」という思いはありますね。というのも優子はどちらかというとマイナー志向というか、野球で言えば"月見草"と言われた野村克也さんみたいな魅力を持っている存在。僕にとってもそれが魅力なのですが、"ひまわり"と言われた長嶋茂雄さん的な魅力を持っている前田には、人気では敵わないだろうと思っていたからです。だから、僕は今でもなぜ優子が人気があるのか、1位になったのか、本当のところは分からないくらいなんです。それでも、優子が「アイドルの仕事というのは人気を得ることもそのうちの一つ」と考え、昨年の2位のという順位を受け、1位を目標にあらゆる努力を惜しまなかったことは想像に難くありません。今回の結果は、その努力のたまものと考えると、彼女の生き方には心から頭の下がる思いです。また、AKB48全体にとって今回の選挙は、「不動の1位に変動があった」という意味でとても歓迎すべき事態だと思います。変化していくこと、成長していくことが、AKB48のみならずあらゆるものにとって大きな魅力の一要素でありますから、今回の順位変動は、さらに多くのファンの関心・興味を引きつけることになるのではないでしょうか。 ――前田と優子はライバル同士でありながら同じ太田プロ所属で、仲も良く、信頼関係があります。その点はどう見ていらっしゃいますか? 岩崎 前田と優子は何から何まで全く違うので、"ライバル"というのはピンと来ません。でも、2人とも女優志望だし、1位2位を2年連続で争うところだけ共通しているのが面白いですね。その意味では、強烈な刺激を与え合っている存在だとも思います。違うけど競い合う部分があるというのは、同じ事務所の同僚としては、理想的な関係ではないでしょうか。2人が同じ事務所というのは、もちろん秋元さんはそれを考慮してそうしたのだと思いますけど、とても運が良かったことだと思います。 ――さて、今後のAKB48はどのようになっていくと推察されますか? 岩崎 中興の祖というか、現状を大きく変化させる新メンバーが出てくると、もっと変わっていくと思いますね。現時点では、女優の堀北真希さんのような映画、連続ドラマで主演を張れるような存在が出てきていない。今なら前田でそれができるかもしれないけど、それよりも新メンバーでそのぐらいの人気・実力のある子が出てきてほしい。今のAKB48の状況は、上がつかえていますからね。その序列を秋元さんは本当に崩したくてしょうがないと思いますよ。 ――『マジすか学園』(テレビ東京系)の「世代交代は近いぜ!」ですね。やっぱり、渡辺麻友か松井珠理奈あたりが次世代のセンターになるんでしょうか? あるいは、最近では、9期研究生が前座ガールズや、「プレイボーイ」「ヤングジャンプ」(集英社)の表紙に起用されています。 岩崎 渡辺は一番特別な存在かな。秋元さんは、珠理奈を前田を追い抜かすぐらいの存在にしたかったけど、現時点では、まだファンがそこまでのいい反応していないようですね。前田もいきなりトップに立たされて、苦労もしていたと思います。でも、チャンスがあれば、秋元さんは本当に序列が崩れることを期待していますよ。 ――最後に改めて、ここまで人々を魅了し、そして、魅きつけて離さないAKB48とは一体なんなんでしょうか? 岩崎 AKB48は、言うなれば、子どもたちのリアリティー。AKBには、本当に人間的にいい子が多い。これほどよくできた子たちが同時多発的に集まるって信じられないぐらい。学級委員になるような子が、AKB48には10人ぐらいいる。そこが現代の時代を反映してるように思います。今の子どもたちは家庭や社会のさまざまな状況の中で、"いい子"であらざるを得ない。特に高橋を見ている中で、今の時代が何かということを学ばせてもらいました。現代の世相を反映した、世相を映す鏡とも言えますね。 ――メンバーたちは、歌手、女優、モデル、タレントなど異なる夢を持っていて、将来なりたい方向性は異なるけれど、共に歌い、踊る中で絆を深め、切磋琢磨される姿に魅かれるファンも多いと思います。 岩崎 それは初めから意図していたわけではなく、結果的にそういう子たちが集まってきて、特に優子は、「AKBに入ったら刺激的なメンバーがたくさんいて、抜けられないなと思った。ここでがんばろうと思った」と話していました。切磋琢磨しようと思って入ってきたわけじゃないけど、結果的にそうなる状況になって、それに揺るがない子たちが残ってますね。高橋は人間的にできている反面、負けず嫌いで、コンペティティブ(競争心が強い)。前回の総選挙のベスト10の選抜メンバーで負けず嫌いじゃない子は一人もいないですよ。絶対自分が一番だと思ってるけど、だからといって他人を蹴落とそうとは思っていない。蹴落とそうとしたら、自分も足引っ張られますからね。 ――そんなメンバーたちが『もしドラ』の"マネジメント"の発想に触れれば、さらに成長できると思います。『もしドラ』は、AKB48へのメッセージでもあるのでしょうか? 岩崎 峯岸を始めとして、何人かは本を読んでくれているみたいですね。スタッフとして近くにいた僕が作家として世に出られたのは、彼女たちのおかげでもある。僕自身が高橋、優子、秋元才加らを見ていて、「負けられない」と思って奮起して書いた部分もあります。僕もAKB48のライバルでありたい。このままだと抜かされそうで、偉そうなことが言えなくなるぐらいの危機感すら抱いていますね。 (取材・文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>) ●岩崎夏海(いわさき・なつみ) 1968年7月生まれ。東京藝術大学美術学部建築科卒。大学卒業後、作詞家・秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)などテレビ番組に制作に参加。AKB48のプロデュースにも携わり、ゲームやウェブコンテンツの開発会社を経て、2009年4月、株式会社吉田正樹事務所に入社。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』出版を機に、現在は所属作家として活動中。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら AKBとドラッカーがつながるとは......。 amazon_associate_logo.jpg
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『もしドラ』とAKB48の相関関係 岩崎夏海が明かすAKB48大ブレイクの真相(前編)

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師匠はあの秋元康氏!
 高校野球の物語に"経営の神様"ピーター・ドラッカーの"マネジメント"の概念を巧みに織り込んだ大胆な発想で、60万部を超えるベストセラーとなった『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)の著者・岩崎夏海氏。作詞家・プロデューサーの秋元康氏の事務所にかつて所属し、放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』(フジテレビ系)などにも参加した彼だが、アイドルグループ・AKB48に立ち上げ当初から2007年までプロデュースに携わっていたことを知る人は少ないだろう。そこで今回、3作連続でシングルチャート1位を記録し、"時代の寵児"となったAKB48の大ブレイクの真相を岩崎氏に直撃。秋元氏のそばにいたからこそ語れるヒットまでの道程、AKBメンバーたちの知られざる素顔、さらに話題をさらった選抜総選挙の印象、『もしドラ』とAKB48の関連性も語っていただいた。その模様を前後編に分けてお届けする。 ――岩崎さんはAKB48に関わられていた当時は、AP(アシスタントプロデューサー)としてクレジットされていましたが、具体的にどのようなことをされていたのでしょうか? 岩崎夏海(以下、岩崎) 秋元さんの補佐役ですね。秋元さんは、総合プロデューサーなので、その仕事は多岐にわたっていて、作詞はもちろんのこと、公演の楽曲の選定、衣装のアドバイス、振付師に踊りのイメージを伝える、レコード会社とのプロモーションの打ち合わせ、事務所との折衝、コンサート、テレビの打ち合わせなど、すべて一度は秋元さんが目を通します。その全般で、秋元さんの側近として現場にはすべていましたね。特に僕は、ネットに強かったので、ファンの公演の感想やリアクションを、ブログや2ちゃんねるにどんなことを書いているかをリサーチして伝えていました。その後、07年の年末に秋元康事務所を辞めることになったのですが、その12月31日、AKB48初の『紅白歌合戦』(NHK総合)出演を果たしました。最後に『紅白』によって、AKB48が一つ先のステップに進んだ瞬間を目撃できたのは非常に印象的でしたね。 ――秋元先生の事務所には17年在籍されたそうですが、改めてその間に見た秋元先生の人物像とは? 岩崎 秋元さんは顧客指向が強い方ですね。作詞家、プロデューサーとしての力量は、世間では評価されていますが、僕からすればまだまだ評価が低いぐらい。アイドルを女の子中心に見るのは当然ですが、アイドルを輝かせるために、歌詞がどれだけの役割を果たすのか考えると、秋元さんの力が大きいはずです。 ――秋元先生は現在、AKB48の3チーム、さらにSKE48、SDN48があり、各公演が16曲で合計80曲、さらにノースリーブス、渡り廊下走り隊など別働ユニットもあり、年間100曲程度AKB48関連の作詞をしていますね。そこまでの原動力は何だと推察されますか? 岩崎 秋元さんは、例えるなら競走馬。競争心がものすごく強いと思います。実は、長年ヒットアイドルを作れなかったことに忸怩たる思いがあり、いつかそれをやり遂げるようとされていたのでは。80年代のおニャン子クラブ以降、推定少女(秋元氏が作詞を担当)、チェキッ娘(秋元康事務所として番組制作に参加)があっても、おニャン子に匹敵するものが作れなかった。だから、直接聞いたことはありませんが、モーニング娘。がヒットしていた状況に悔しい思いはあったと思いますよ。 ――では、今回の本題であるAKB48がここまで大ブレイクを成し遂げた理由は一体何なんでしょうか? 岩崎 理由は、いくつかあると思いますが、窪田さん(AKB48運営会社・AKSの窪田康志社長)というパートナーの存在が大きいと思います。AKB48は、秋元さんが資金を出すわけではないので、やはりパートナーが必要。パートナー次第で秋元さんのクリエイティブを生かすも殺すもできるんです。そのためこれまでに、パートナー次第で失敗したプロジェクトも多々あります。でも、窪田さんは基本的に制作にはノータッチで、秋元さんに全幅の信頼を置いて、お任せになっている。なかなかそう割り切ってできる人はいないですよね。お金を出す人は自分の意見を反映させたがるし、秋元さんもスポンサーには強く出れないので、その方のご意見をお聞きしてモノ作りをする。そうすると、混じりっけのあるものができてしまう。 ――やはり、スポンサーになると口を出したくなりますよね。 岩崎 秋元さんはクリエーターとしては超一流で歴史に残る方だと思いますが、失礼ながらプロデューサーとして秋元さんは一流ではあるけど、超一流ではないと思います。自分で資金を調達する部分は苦手なところがあると思います。それを一緒にやってくれるパートナーが参加したのが非常に大きい。 ――そのほか、やはりAKB48は常時1,000曲あるとされているストックの中から選んでいるという楽曲の良さもほかのアイドル、アーティストと一線を画す点では? 岩崎 そう。楽曲のすばらしさ。やはり歌詞がいいので、メンバーたちは歌詞の意味を感じ取って、その歌詞に影響されて、テンションが上がったり、感性が研ぎ澄まされていったと思います。特に「夕陽を見ているか?」(名曲の呼び声高い07年10月発売の6thシングル)は、『もしドラ』のモチーフにもしたメンバーの峯岸みなみの当時の心境とシンクロしていて、峯岸は「歌うたびに涙が出た」と言ってましたね。涙を流しながらAKB48劇場の公演で歌うというのは、観ているファンに対しても何らかのインプレッションを与えたでしょうし、そんな感情の連鎖がメンバーの感性をさらに研ぎ澄ませて、成長させたと思います。チームB3rdの「初日」もすばらしい楽曲。当時、菊地あやかが「先輩たちには負けたくない」と話していて、普段そんなこと言う子じゃないので、どうしたのかと思っていたら、初日の歌詞にその内容があり、やはり秋元さんの歌詞はメンバーに多大な影響与えるようです。それから、チームKの3rd公演『脳内パラダイス』がチームKに与えていた影響は計り知れないですね。 ――K3rdは、楽器ができるメンバーが多いことから生まれたバンド形式の「友よ」で始まり、ユニットでも「泣きながら微笑んで」「MARIA」「君はペガサス」など各メンバーの個性を多大に反映した楽曲が次々に生まれましたね。 岩崎 あの公演から特に、Kは体育会系の特別なチームワークを持ち、Kのスタンスが確立されたことで、チームA独自のカラーが生まれて、チ-ムBは"末っ子だけど元気"という路線も生まれたと思います。『脳内パラダイス』がAKBに与えた影響は大きかったですね。各チームの公演によって印象は違いますが、それもAKBの一つのドラマを作っています。秋元さんはいろんな可能性を試されるので、間口を広げるための狙いの一つですね。 ――メンバーそれぞれの個性もAKB48の大きな魅力だと思います。 岩崎 僕が一番尊敬するメンバーは高橋みなみですね。高橋がいなかったら、AKB48ってどうなっていたんだろう? と考えるんですよ。高橋の役割を担うメンバーはいたのかもしれないけど、高橋ぐらいの高いレベルでリーダーシップを発揮できたかはわからない。AKBの濃いファンならわかると思いますけど、彼女の存在がAKBというアイドルに与えた意味は大きい。僕自身が芸能界を見ていて、「この人には敵わない。イメージの遥か上を行く」と思ったのは、とんねるずの石橋貴明さんと高橋だけしかいない。それほどスゴイ存在。ひまわり2nd公演で、当時研究生として加入したばかりだった宮崎美穂が高橋のアンダーで、最初宮崎は踊れなくて、高橋がミラーになって(自分の踊りを左右反転させて)、振り付けを教えていたんです。あの姿は壮絶でしたね。そこまで熱心に後輩の練習に付き合うのは高橋ぐらい。それは「今、AKBの公演を成立させるためには、宮崎をちゃんと踊らせるしかない」「ファンにAKB48として恥ずかしいものを見せるわけにはいかない」という高橋の強固な使命感が集約された行動だったと思います。 ――高橋の存在は『もしドラ』にも、影響を及ぼしたそうですね。 岩崎 これはインタビューでも初めてお話するんですが、前田敦子が握手会で嫌なことがあって、一人で、控え室で泣いているときがあったんですよ。そこに、遅れて高橋が入ってきて、泣いている前田を見つけると、隣に座って、何をするでもなく、何か聞くわけでもなく、前田の髪をただなでていた。女の子は泣いている女の子を見ると、こうやって慰めるんだと強いインプレッションになりました。それを今回、『もしドラ』で、夕紀が文乃を慰めるシーンで使いました。まさに前田と高橋を見なければ、書けなかったシーンですね。その文乃は実は、渡辺麻友がモデル。渡辺は今でこそ堂々としていますが、AKB48加入当初は、子鹿のようにビクビクしていて、誰かに何か言われると「え? あ? ハイ」みたいな調子。それが印象的で。実は渡辺は誰よりも負けず嫌いだと思うんですが、それなのにそんなオドオドした面も持っているのが面白いなと思っていました。 ――これは、渡辺のファンには衝撃だと思います。今ではアニヲタキャラ全開で、総選挙でも向上心むき出しのコメントが印象的でしたが、「僕の太陽」「夕陽を見ているか?」では、チームBから彼女だけが選抜に選ばれて、確かに子鹿のようになっていましたね。ほかにも、メンバーがモデルになっていたりするんでしょうか? 岩崎 夕紀は大島優子がモデル。優子は、ダンスの面でも病気になるようなギリギリのところまで自分を追い込むんですよね。力の加減を一番知らない。その部分がファンに魅力として映ってると思うけど、本人はそんなことは意識してはいない。彼女も競走馬みたいなものですね。やるからには一生懸命やらざるを得ないという特性を持っている。秋元才加も高橋も努力家で知られていますが、リミットを越えてまでは、がんばりはしない。優子だけが限界を軽々と超えて、あとでバッタリ倒れる。彼女のそこまで命を完全燃焼させるかのような生き方にも感銘を受けましたね。火の玉が飛んでいくような優子の生き方そのもの。主人公・みなみは峯岸みなみの弱いところに共感を抱いて描いていて、その3人だけはメンバーから『もしドラ』のモチーフにしました。  * * *  『もしドラ』とAKB48の意外な関係性も次々につまびらかになっていった岩崎氏のインタビュー。さらに、後半では、AKB48名物のサプライズの真相、"政権交代"が実現した総選挙から見る今後の展開、そして、岩崎氏だから知るメンバーたちの真の魅力にも迫っていく。AKB48ファン必読の後半をお楽しみに。 (後編に続く/取材・文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>) ●岩崎夏海(いわさき・なつみ) 1968年7月生まれ。東京藝術大学美術学部建築科卒。大学卒業後、作詞家・秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)などテレビ番組に制作に参加。AKB48のプロデュースにも携わり、ゲームやウェブコンテンツの開発会社を経て、2009年4月、株式会社吉田正樹事務所に入社。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』出版を機に、現在は所属作家として活動中。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら すげぇよ、AKBって。 amazon_associate_logo.jpg
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激白Wインタビュー『宇宙ショーへようこそ』のヒミツを語り尽くす(後編)

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(C)A-1 Pictures/「宇宙ショーへようこそ」製作委員会
前編はこちら ■テーマは友情と成長 ──この作品のテーマはなんですか。 舛成 テーマは友情と成長ですね。友情に関しては、子どもたちのピュアな友情と、過去のいろんなモノを背負った大人たちの友情が描いてある。 ──大人の話で言うと、人間いいことも悪いこともある。時には悪い人間になってしまうこともあるという、人生の難しいところまで描いてありますね。 舛成 たぶん映画をたくさんご覧になっている方には、今回表現している部分だけでそこまで汲みとっていただいていると思うんですよ。でも分からない人には、分からないと言われるレベルでしか描写していないんです。キャラクターの会話だけで納得させられるようなスパイスは効かせてあるんですが。 ──そうしたちょっと分かりにくい大人の友情と、分かりやすい子どもの友情が交錯するわけですね。ポチが初めに子どもたちと出会う冒頭の田舎の場面は、匂い立つようにとてもリアルで驚かされました。どんな狙いがあるんでしょうか。 舛成 なんであそこまでリアルにやるかというと、基本的に絵空事だからなんですよ。でもそこで、子どもたちはリアルに宇宙を体験しているんだという方向に持って行きたいんですね。そうすると、冒頭の地球篇をリアルに描いて、この子どもたちは本当にこの村で生きているんだということを描いておかないといけない。そのあとに続くファンタジーが絵空事になってしまうので。 ──おっしゃるように、宇宙に出て行くことでストーリーは飛躍するんですが、子どもたちの月世界体験に、初めての海外旅行的な意味合いを込めたことはありますか? 共感できるリアルな描写もありますが。
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(C)A-1 Pictures/「宇宙ショーへようこそ」
製作委員会
舛成 シナリオの段階から入っていますね。僕が最初からやりたいと言っていたのが「月でバイトする」ということ。子どもが初めて自力で働いて、初めて給料をもらう、という。給料をもらったあと、みんなが誇らしげな顔をしているんですよね。あそこが一番好きなシーンかもしれない(笑)。 ──異文化交流と勤労体験と。 舛成 そうそう、ふたつ入っているっていう。 ──そんな子どもたちの描き方がステロタイプじゃないなと思ったんですが。 石浜 実際に子どもたちひとりひとりのバックグラウンドとか、それまでその子たちが考えてきたことを、舛成さんに細かく訊いて進めていきました。服装や髪型も、こういうふうに生きてきたからいまこうなんだっていうのを、きちんと話し合い進めたんで、ステロタイプじゃないというニュアンスが出ているんだと思います。 舛成 最近の子どもたちの様子を見ていてびっくりしたのが、子どもが大人なんですよ。言ってることがびっくりするくらい大人なことがある。もう、なんか普通に愛の告白をしているようなガキンチョがいたりするわけですよ(笑)。 石浜 政治家に文句言ったりね。 舛成 そう。でも、よくよく突き詰めてみると、言っていることは子どもなんですけどね。パッパッと出てくるセリフのチョイスがびっくりするくらい大人な瞬間があって。周(あまね)はそれがポン、と出ちゃうんだけど、でも目の前のバッタには飛びつくんですよね(笑)。 ──ここでちょっと変化球の質問なんですが、最近、非実在青少年問題が大きくなってきています。ややもすると問題視されるので、フェミニンな要素のある描写をどのくらいの濃度で抑えるのかというのも、難しかったんじゃないかと思うんですが。 石浜 そのキャラクターが持つ魅力と思えば、抑えるということではなく、魅力として前面に押し出そうという気合はありましたよ。それが仮にフェミニン......フェミニンにつながり得るものだとしても、あくまでキャラクターの持つ魅力、という描き方をしました。 舛成 ただ、そうは言っても、やはり全く無視をしていたというわけでもないです。夏紀は最初ミニスカートの設定だったんですが、これはダメだろうと。夏紀は何も気にしないで動いちゃう子なので、ショートパンツに変更しました。「私がかわいい」と自覚した上での絵作りだとマズイと思うんですよ。ただ、今回出てくる女の子の所作は、「私がかわいい」と思ってのことではないんですよね。たぶん倫子は気にしていると思うんですけど。 石浜 だから「決めポーズ」がないんですね。倫子だけがそれは解禁、ちょっとした決めポーズが唯一できるキャラクターとして描いています。 ──でもそれも、現実の女の子が、ちょっと意図的にかわいこぶってみる、という範囲の調整ですよね。きちんとケレン味はあるんだけど、アニメ的な小芝居はさせていない。 舛成 『かみちゅ!』や『R.O.D』のときもそうなんですけど、画面を通して媚を売らない。本当にそこにいるように(ノンフィクション的に)描くんです。アイドル映画は、アイドルの子がこの役をやっている、というのがバレバレなことをやるじゃないですか。そうはしたくない、という。
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 よくできた映画は、ブサイクなんだけど、最後になるとかわいく思えてくる作り方をする。そういう感覚なんだと思うんですよ。わざとかわいく撮らなくても済む。結果、かわいくなっていく。 ──話は尽きないんですが、お時間が来たようです。最後にこれから映画をご覧になるファンの方、これから観る気になってほしい読者のみなさんに、一言ずついただけますか。 石浜 死ぬ気で作っている映画で、絶対面白いはずなので、とにかく観れば大丈夫です。舛成さんを知らない人もぜひ来ていただきたいと思います。 舛成 人生に疲れている方に(笑)。 石浜 そんな効果が(笑)。 舛成 ちょっと自分探しをしたいと思っている人は、観ると新しい発見があるかもしれません。 石浜 キャッチコピーみたいですね。 舛成 本当、観た人の感想を聞くと、ひとりひとり感動するポイントが違うんですよ。オレはここが好きだったんだけど、この人はここが好きらしい。そして互いに相手が好きなところを否定する必要がない。そういう作りになっています。 ──見どころがいっぱいですね。舛成さんは何回観て欲しいと思ってますか。 舛成 たくさん観てほしいけれども、実は一回でも十分なんですよ。一回観て、面白かったと心に残しておいてくれれば、それで十分ですね。「観てない」って言われるのが一番辛いですから(笑)。 (取材・文・写真=後藤勝) ●舛成孝二(ますなり・こうじ) アニメーション映画監督、脚本家、演出家。島根県出身。OVA『R.O.D -READ OR DIE-』テレビシリーズ『R.O.D -THE TV-』を経てテレビシリーズ『かみちゅ!』を監督し、第9回(平成17年度)文化庁メディア芸術祭アニメ部門優秀賞を受賞。アニメ監督としての評価を確立した。映画の教養とセンスを基礎に据えた画面構成に定評がある。『宇宙ショーへようこそ』が初の劇場作品となる。 ●石浜真史(いしはま・まさし) アニメーター。東京都出身。OVA『R.O.D -READ OR DIE-』テレビシリーズ『R.O.D -THE TV-』でキャラクターデザインと作画監督を務め、舛成作品の一翼を担う存在となる。他作品に忙殺されて『かみちゅ!』ではオープニング制作にとどまったが、『宇宙ショーへようこそ』では再びキャラクターデザインと作画監督を担当。舛成監督を世界に担ぎ出すという誓いを守るべく必死に働き、作品を完成に導いた。とにかく巧い。 ●『宇宙ショーへようこそ』 美しい自然に囲まれた村川村。唯一の小学校に通う生徒は全学年を合わせて5人だけだった。夏休み恒例の「子どもだけ合宿」で学校に集まった5人は、謎のミステリーサークルと、ケガを負い倒れている一匹の犬を見つける。しかし、人の言葉を解し、話しだす犬に子どもたちは仰天する。なんと犬は犬ではなく、惑星プラネット・ワンから来訪した犬型宇宙人のポチだったのだ。2100万光年のかなたから飛来したポチの事情を聞いた5人は、この出会いをきっかけに、人類史上最大の宇宙旅行へと旅立つことになる。過疎の村の子どもたちと一匹の宇宙人は、銀河で何と遭遇するのだろうか──。 6月26日(土)から新宿バルト9、シネ・リーブル池袋ほかで全国ロードショー。 <http://www.uchushow.net/>
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激白Wインタビュー『宇宙ショーへようこそ』のヒミツを語り尽くす(前編)

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石浜真史氏(左)と舛成孝二監督(右)。
 A-1 Pictures第1回劇場作品にして、文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞作『かみちゅ!』のスタッフが結集した長編アニメーション『宇宙ショーへようこそ』(以下、『宇宙ショー』)。第60回ベルリン国際映画祭に招待されて話題を呼んだが、さらに試写を観た人々によって評価は高騰の一途。6月26日の公開を前に期待は募るばかりだ。  早くも大傑作の呼び声高い『宇宙ショー』のツボを、監督の舛成孝二、キャラクターデザイン・作画監督の石浜真史が語り尽くした。  ふたりの言霊を携えて劇場へと脚を運んでもらうべく、そのすべてを開陳します。 ■企画の端緒 ──5年をかけて完成しました。いまの率直なお気持ちを聴かせていただけますか。 舛成孝二監督(以下、舛成) いやもう、ほっとしました。よかった(笑)。本当によかった、完成したよって(笑)。みんな一時期、本当に「これ、どうなるんだろう」って思っていたから(笑)。とにかくコンテが終わるまで地獄でした。 石浜真史(以下、石浜) ベルリン国際映画祭に招待されて監督が本当に喜んでいたので、うれしかったですね。最初に場面設計の竹内志保さんと、「ふたりとも全てを捧げて舛成孝二を世界に担ぎ出そう」という誓いを立てたんです。それが果たせたかなと、安心できました。本当に世界に行ったんだ、と感動しました。 ──男の約束ですね。舛成監督は石浜さんを、現在のようなお仲間として『R.O.D』の頃から捉えていたんですか?
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(C)A-1 Pictures/「宇宙ショーへようこそ」
製作委員会
舛成 そうですね。ちょうど『かみちゅ!』の頃は、(石浜は)ほかの作品が決まっていたので、OPだけ頼んだんです。で、ほかの仕事から(石原を)かっさらって、こちらで描かせてしまったという(笑)。 ──石浜さんは舛成監督をどのようにご覧になっていましたか? 石浜 丹念にキャラクターを描く人だな、人望があって、才能のある人がたくさん集まるんだな、という印象がありましたね。でも実際に組んでみると、一度やると「疲れた」って言って逃げていく人が多いんだなということも感じました(笑)。少しスパンを置いてまた参加するという人が意外と多かった。 ──つまり休養が必要なんですね。 舛成 そう(笑)。疲れる、しんどい、と。で、外の作品を味わうと「なんか物足りない」と言って戻ってきて。 ──そういう手間暇かける作り方だと、結果を出さないと次がないんじゃないですか。『かみちゅ!』の成功があって『宇宙ショー』ができたのでは。 舛成 そうそうそう。『かみちゅ!』がありがたいことにうっかり賞を頂きまして、あれがなきゃ劇場作品はやってないですよ。「ちょっと僕ら賞もらったんで、劇場やってもいいですか」ぐらいの(調子で仕事を取ることができた)。本当は2年前に「実は、A-1 Pictures劇場用第一作でこういうのを作っていました」と言ってドーン! と披露しようと思っていたら、5年目まで来ちゃったという(笑)。 ──(笑)。その間、石浜さんは拘束されていたんですか? 石浜 そうですね。それはしょうがない。 ──なんか、すごく辛そうな顔してますよ。 石浜 そうでもないですよ。僕はたぶん、辛い思いをしていないほうだと思います。ちゃんと楽しめる立場にいたので。 舛成 今回、描ける(技術がある)人はたぶん、楽しめているんですよ。まだ引き出しの少ない子たちは本当、血反吐を吐いている感じでやっていました。今回は『かみちゅ!』とアプローチの仕方が違ったんですが、若い子は同じようにやって、全部、叩かれちゃった。でも最初、イメージボードを描いているときに『宇宙ショー』の描き方を覚えてもらって、本番に入るときには、うまくなっていきましたけどね。 ■絵作りの謎 ──『かみちゅ!』と『宇宙ショー』の絵作りのコンセプトの違いを教えていただけますか。 舛成 カメラのレンズのチョイスが決定的な違いとしてありますね。『かみちゅ!』は一眼の標準レンズで、がっちり撮っている。広角気味に撮って、フレーミングして、広角を抑えているぐらいの作り方。写真のレイアウトをそのまま使う、そこにキャラクターを立たせる、ということなので、「写真として」見たものを描けばいい、という描き方をしていたんですよ。
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(C)A-1 Pictures/「宇宙ショーへようこそ」
製作委員会
 『宇宙ショー』にはそういう概念が一切なくて、周(あまね)の家なら周の家で、こういう絵が欲しいからこういうものを描いて、という要求をした。昔のアニメではよくやっていたことなんですけど、手前が広角気味なんだけど、奥が望遠みたいな。一画面でレンズがふたつあるっていう描き方をするんですよ。若い子はそういうアプローチを知らなかったりするので、戸惑うこともあるんですよね。 ──なるほど。石浜さんはそうした絵作りのなかで、具体的にどんなお仕事をしていたんですか。 石浜 今回はものを発明するセクションにいるクリエイターの数が多かったので、最低限、絵自体をまとめるという仕事はしたつもりなんですが、逆にいうと、最低限にこだわってまとめた感じはあるかもしれないです。 舛成 基本はキャラクターをブラさない、ということをやってくれて。絵だけじゃなくて、動き方とか芝居も全部コントロールしてもらっているんですよ。でも実は、今回は絵のコントロールというものをやってもらっていない。面影(めんかげ)をつけるという以外はコントロールをせず、ごった煮でいろんなものがあっていい。そのなかで唯一ブレないようにやるのがキャラクターだけだった。 石浜 絵が似ている・似ていない、じゃないですね。そのキャラクターが性格に準じてちゃんと動いているか、というところだけに集中してやりました。 ──なるほど。あと、これ言っちゃっていいのか分からないですが、湯浅政明さんのパートがまんま『マインド・ゲーム』な感じなんですけど、あれは劇中の"宇宙ショー"(宇宙で放送されている人気番組)だからということで、あえて違和感を演出したんですか。 舛成 そうです。僕がやっちゃうと、他のシーンの延長線上にしかならないのかなぁと。僕はどっちかというと固定カメラが多い人間なので、あんなふうにカメラを振ったり、キャラクターを動かすということが、パッと思いつかないんですよ。なので、ここは「オレじゃない誰か」というのだけが最初にあったんです(笑)。 石浜 面白いアプローチですよね。要は、(劇中の)宇宙ショーを撮っているのは舛成さんではないので、違う人を持ってこないと宇宙ショーにはならないというところから始まって。湯浅さんは本当、適任だったという。 舛成 だから基本、絵コンテは全部僕が描いているんだけど、唯一あそこはやっていないんですよ。僕の演出プランがまったく入っていない状態のフイルムがこの映画であそこだけなんですよね。 (後編へつづく/取材・文・写真=後藤勝) ●舛成孝二(ますなり・こうじ) アニメーション映画監督、脚本家、演出家。島根県出身。OVA『R.O.D -READ OR DIE-』テレビシリーズ『R.O.D -THE TV-』を経てテレビシリーズ『かみちゅ!』を監督し、第9回(平成17年度)文化庁メディア芸術祭アニメ部門優秀賞を受賞。アニメ監督としての評価を確立した。映画の教養とセンスを基礎に据えた画面構成に定評がある。『宇宙ショーへようこそ』が初の劇場作品となる。 ●石浜真史(いしはま・まさし) アニメーター。東京都出身。OVA『R.O.D -READ OR DIE-』テレビシリーズ『R.O.D -THE TV-』でキャラクターデザインと作画監督を務め、舛成作品の一翼を担う存在となる。他作品に忙殺されて『かみちゅ!』ではオープニング制作にとどまったが、『宇宙ショーへようこそ』では再びキャラクターデザインと作画監督を担当。舛成監督を世界に担ぎ出すという誓いを守るべく必死に働き、作品を完成に導いた。とにかく巧い。 ●『宇宙ショーへようこそ』 美しい自然に囲まれた村川村。唯一の小学校に通う生徒は全学年を合わせて5人だけだった。夏休み恒例の「子どもだけ合宿」で学校に集まった5人は、謎のミステリーサークルと、ケガを負い倒れている一匹の犬を見つける。しかし、人の言葉を解し、話しだす犬に子どもたちは仰天する。なんと犬は犬ではなく、惑星プラネット・ワンから来訪した犬型宇宙人のポチだったのだ。2100万光年のかなたから飛来したポチの事情を聞いた5人は、この出会いをきっかけに、人類史上最大の宇宙旅行へと旅立つことになる。過疎の村の子どもたちと一匹の宇宙人は、銀河で何と遭遇するのだろうか──。 6月26日(土)から新宿バルト9、シネ・リーブル池袋ほかで全国ロードショー。 <http://www.uchushow.net/>
かみちゅ! 1 R30? amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 『マイマイ新子と千年の魔法』地味すぎるアニメ映画が起こした小さな奇跡 Production I.G×XEBEC ハイクオリティ手描きロボットアニメ『ブレイク ブレイド』起動!! 竹達彩奈&巽悠衣子との握手を求めて日曜の昼下がりにファンが殺到!

担当判事が冤罪を訴える”袴田事件” 映画『BOX』は司法判決を覆せるか?

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常に時代に向き合った作品を撮り続ける高橋伴明監督。
最新作『BOX』は現在も係争中の"袴田事件"、
そして裁判員制度の是非を問い掛ける問題作だ。
「裁判員は一審しか参加しないから責任が軽いという考えは大きな間違い。
事件から間のない一審がいちばん重要なんです」と真摯に語る。
 朴訥なひとりの男が、元プロボクサーという理由で殺人事件の容疑者となった。警察と検察による長時間に及ぶ取り調べの結果、男は容疑を認めるが、裁判に入ると一転して無罪を主張。自白以外に決め手がなく、裁判が長引く中、一度捜査している場所から1年後に有力な手掛かりが忽然と現われた。あまりにも怪しい新証拠。しかし、裁判の判決は、有罪そして死刑宣告。男は高等裁判所、最高裁判所へと控訴するも、ことごとく却下され、死刑が確定した。これが1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で起きた一家4人刺殺放火事件「袴田事件」のあらましだ。これはフィクションではなく、現実の事件である。  さらに、07年に衝撃的なニュースが報じられた。静岡地裁での一審を担当し、判決文を書いた元判事が「袴田巌さんは無罪だと思う。私は無罪を主張したが、合議の結果1対2で死刑判決が決まった」と裁判の内幕を告白。獄中の袴田死刑囚と家族への謝罪を表明したのだ。  現在も未決のこの冤罪事件を題材にした劇映画が、『BOX 袴田事件 命とは』。『TATOO〈刺青〉あり』(82)、『光の雨』(01)など骨太な作品で知られる高橋伴明監督が、自分が無罪と信じる男に死刑判決を下すことになったエリート判事、そして今なお留置所で死刑執行の恐怖と闘い続けている袴田死刑囚のそれぞれの苦闘を描いた問題作だ。なぜ高橋監督は、この作品を撮ることになったのか。また、この映画は社会に対し、どのような波紋を投げ掛けるのだろうか? ──伴明監督のようなベテラン監督にとっても、この映画は特別な作品ではないでしょうか? 高橋伴明監督(以下、伴明) どういう意味で、特別だと思う? ──映画というフィクションによって、司法判決というリアルな現実を覆そうという大変な野心作だと思います。 伴明 うん、そういう意味では、確かに特別な作品かもしれない。最近はいろんなものにチャレンジしようと、『丘を越えて』(08)『禅 ZEN』(09)とさまざまなタイプの作品を撮っていたんだけど、その中でも今回の『BOX』はよりハードルの高い挑戦だったかもしれない。まぁ、損得勘定で考えたら、引き受けない仕事だよね(苦笑)。今回の企画は『獅子王たちの最后』(93)の脚本家・夏井辰徳くんから声を掛けられたわけだけど、ちょうど裁判員制度が始まるということで、強く思うことがあったわけです。人が人を裁くということは、どういうことなのかと。そう考えると、これは"作るべき作品"だと感じたんです。
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──劇中でも描かれていますが、警察・検察側が用意した証拠は明らかに怪しいものばかり。小刀で一家4人を短時間で惨殺できるのか、また事件から1年後に犯行現場に隣接する工場から、血の付いた衣服が都合よく発見されるのも奇妙ですよね。 伴明 そう、袴田事件に関する裁判資料やノンフィクション本をいろいろ読んだんだけれども、あの事件はおかしなことだらけ。でも、当時の裁判構造の中で、警察側、検察側、裁判官側がそれぞれ使命感、正義感に基づいて動いた結果、あの判決を招いてしまった。当時のニュースを見たボクは、「一家4人を刺し殺した上に、放火するとは、なんて酷いヤツだ」と思ったわけです。当時の一般大衆の抱いた感情の落としどころでもあった。もし、あの裁判が無罪ということになっていたら、世論は大変な騒ぎになっていたでしょう。 ──犯人がいないことには収まらなかった? 伴明 そういうことです。冤罪を生み出す、整合性のある道筋があったということです。冤罪の多くは、そういう構造から生まれているんです。「死刑になることが分かっていて、無実の人間が自白するなんてありえない」と思う人もいるでしょうけど、人間ってもうどうでもいいから早くその場を済ませて楽になりたいと思うものなんです。ボクもね、学生運動やっていた頃は、よく警察にパクられたけど、目の前の面倒なことを早く終わらせたいと考えるものなんです。袴田事件は生まれるべくして生まれた"冤罪"ですよ。 ──殺人事件の再現シーン、取り調べシーンが生々しい迫力。かなり気を遣った撮影だったのでは? 伴明 今回、主任判事だった熊本典道さんには撮影前に挨拶だけはしましたが、事件の関係者にはなるべく会わないように努めました。やっぱりね、関係者に会うと情に引き込まれる危険がありますし、「こういうことは言ってない」とか言われる可能性もあるわけです。映画としての自由度は守りたかった。殺人事件の再現シーンは、あえて新井浩文演じる主人公が最初は犯人に見えるような演出です。当時はみんな、彼が犯人だと信じ込んでいたわけです。その後の取り調べシーンは、さじ加減が難しかった。静岡県警は拷問で有名なところで、昔は容疑者に焼きごてを当てたなんて言われているくらいで、袴田事件の実際の取り調べは映画で描いたよりもっと厳しかったと言われています。でも、警察側も凶悪犯を挙げるという正義感があってのこと。取り調べシーンは、これじゃあ自白しても仕方ないなぁと思わせる程度にとどめました。自分は袴田さんは無罪だと思っています。でも、この映画は観た人によって、「やっぱり、犯人はあいつだ」と意見が分かれてもいい。映画を観た人に考えてほしいのは、裁判の在り方そのものなんです。
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熱血刑事(石橋凌)によって追い詰められて
いく元ボクサーの袴田(新井浩文)。身に
覚えのない証拠が裁判に提出されていく。
(c)BOX製作プロジェクト2010
──無罪と信じる男に死刑の判決文を書いた熊本判事を『光の雨』の萩原聖人、独房の中で死の恐怖と闘い続ける袴田死刑囚を新井浩文がそれぞれ熱演。 伴明 萩原聖人は悩むキャラが似合うんだよね。それにアイツは、ああ見えてプレッシャーにすごく強い。かなりの長台詞を「1カットで撮りたい」と言うと、現場で集中力を発揮してくれる。あと、アイツももう女の子にキャーキャー言われる年齢じゃなくなったでしょ。派手さがなくなったのがいいよね。今回の映画のキャスティングは、人気とか知名度で決めたくなかった。そりゃ、配給や宣伝スタッフは、宣伝しやすい人気俳優を使ってほしいのかもしれないけど(苦笑)。新井浩文は前から使ってみたかった俳優。彼の持っている空気感が好きだね。いかにも犯人に見えそうだし(笑)。 ──ちなみに今回の撮影日数は? 伴明 3週間です。ボクもスケジュールを聞いたときは「えっ」と驚きました。長ければいいもんじゃないけど、勢いだけで撮れる作品ではないので最低でも1カ月は欲しかった。裁判所のシーンなどはセットの組み替えに時間がかかるしね。当然、順撮りなんかやってられない。萩原聖人も新井浩文も、そんな非常に限られた時間の中で、大変な集中力を発揮してくれた。 ──事件だけを描くのではなく、袴田死刑囚(36年生まれ)と熊本元判事(38年生まれ)が生まれた当時の世界大戦に突入していく日本の世情から、一転して教科書を黒塗りさせられた終戦直後の教育といった社会背景から追っている点が、伴明監督らしいなと感じます。
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"袴田事件"を主任判事として担当した熊本(萩原聖人)
。無実の人間に死刑を宣告したことに苦しみ、
裁判官を辞職。その後も悩み続け、家庭は崩壊していく。
伴明 そこはボクがこだわったところです。この事件は昭和という時代が生み出した犯罪だと思うし、昭和という時代の判決だったんじゃないかと思うんです。結局、日本は意識構造も社会構造も戦前から、そして戦後も変わっていないわけですよ。そこでね、構造に問題があるということを感じてもらえればいい。「じゃあどうする?」という答えは出ませんよ。すべては人間がやっていることですから。人間の抱く感情や正義感、使命感といったものをひとつに無理にまとめようとするほうが、いびつなことですよ。人は神ではないので、○か×かを見極めるのは非常に難しい。ただ、あの事件が現代に起きていたら、違った判決になっていたはず。逆に平成時代だから起きる、違う形の冤罪もあるでしょう。 ──ずばり、この映画が公開されることで、司法決定に影響を与えることはできますか? 伴明 正直に言って、それはなかなか難しい。でも、今も再審請求している人たちを、映画監督という自分の立場から応援することができるということです。ボクは袴田事件は冤罪だと思っています。しかし、司法判決を覆すのは容易なことではない。はたして映画にそこまでの力があるのか......。でもね、この映画を観た人は、新しく始まった裁判員制度も含めて、司法制度について意識が高まるはず。そこから変わっていくしかないんですよ。  30歳で逮捕された袴田死刑囚は約44年にわたって拘束され、今も東京留置所に収監中だ。長い拘束生活と死の恐怖から精神に異常をきたし、09年からは姉が保佐人となっている。袴田死刑囚は現在74歳。再審請求が認められ、冤罪が晴れる機会は来るだろうか。いつゴングが鳴るのか分からない、果てしない闘いを袴田死刑囚は強いられている。 (文=長野辰次) ●『BOX 袴田事件 命とは』 監督・脚本/高橋伴明 脚本/夏井辰徳 出演/萩原聖人、新井浩文、葉月里緒菜、村野武範、保阪尚希、ダンカン、須賀貴匡、中村優子、雛形あきこ、大杉蓮、國村隼、志村東吾、吉村実子、岸部一徳、塩見三省、石橋凌ほか 配給/スローラーナー 5月29日(土)より渋谷ユーロスペース、銀座シネパトスほか全国順次ロードショー ■袴田事件 1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で発生した強盗殺人放火事件。同市の味噌製造工場の専務宅から出火し、焼け跡から一家4人の死体が発見された。その裁判で死刑が確定したのが袴田巌(36~)死刑囚。袴田死刑囚は冤罪を訴え、再審を請求しているが、09年5月現在、最高裁判所に出した再審請求は棄却されている。 ●たかはし・ばんめい 1949年奈良県出身。早稲田大学第二文学部中退後、ピンク映画で活躍。『TATOO〈刺青〉あり』(82)で一般映画に進出。主な監督作に『DOOR』(88)、『ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ~』(90)、『獅子王たちの夏』(91)、『獅子王たちの最后』(93)、『愛の新世界』(94)、『光の雨』(01)、『火火』(05)、『丘を越えて』(08)、『禅 ZEN』(09)など。
はけないズボンで死刑判決―検証・袴田事件 STOP! 冤罪! amazon_associate_logo.jpg
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