プロインタビュアー吉田豪×元AVクイーン穂花

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 そのインタビューの巧みさを、松尾スズキが「言葉の風俗嬢」と喩えたことがある。日本で恐らく唯一、プロインタビュアーにしてプロ書評家という肩書を持ち、「現在のサブカル界最重要人物」と目される男、吉田豪。彼の地上波初の冠番組が7月6日にスタートする。タイトルは『プロインタビュアー吉田豪の元○○な人々』(関西テレビ)。  ゲストの一人、元AVクイーン穂花(ほのか)は、今年1月に自叙伝『籠』(主婦の友社)を上梓。幼少時の誘拐や性的虐待を赤裸々に告白した同書を、吉田は書評などで絶賛している。控室で、収録を終えたばかりの2人を直撃した。 ──元モーニング娘。の加護亜依さんや元X JAPANのベーシストTAIJIさんなど、ゲストは全部で6人いらっしゃいますね。 吉田豪(以下、吉田) 人選会議を何度かしましたが、ダメだった人も何人かいて(笑)。田代まさしさんとか、久々に地上波解禁行きましょうよって言ったんですがダメでしたね。実現性のある面白い人を探しましょうという流れになりました。 穂花 (笑)。 ──穂花さんをゲストに招かれた理由は、今年発売された自叙伝『籠』の印象が強かったからでしょうか。 吉田 それに尽きますね。雑誌に書評を書いて、ラジオでも喋りました。ただ一つ誤解があって、僕が『何度も叫びました』って言ったのをアナウンサーの人が『何度も泣いたそうです』って。泣いてはいないんだけどなぁ。 穂花 そう、それを聞いて泣いたんだなぁと思って(笑)。 吉田 泣いてはないです。シャウトです。「なんでーーー!」って。 ──吉田さんの書評を読んで興味を持った方も多かったようですね。 yoshidagou02.jpg 吉田 最初にツイッターでつぶやいたんですけど、ツイッターで僕があんなに商売に影響を与えた瞬間は初めてでしたね。買った本の話とかよくするんですけど、みんなそんなに動かないんですよ。でも、彼女の本のことをつぶやいたら「僕も買った」っていう人が結構出てきて。口コミ力がすごく効く本だった。 ──衝撃が伝わりやすい本だったと......。 吉田 帯裏に書いてあることだけで、衝撃的じゃないですか。 ──番組内のインタビューで、穂花さんに一番聞いてみたかったのはどういうことでしょうか? 吉田 本の内容を知らない方に興味を持ってもらうことを前提に聞きました。彼女の場合は本でほぼ出し尽くしているし、本に書いていないことは当然書きたくない事情があるのだろうし、言いたくないなら踏み込まないようにしようと。踏み込まなかったんですけど、ギリギリのところでやっぱりホワイトボードに「性的虐待をしたのは誰だか聞いて!」という指示が出ましたね。 穂花 そうそうそう(笑)。 吉田 でるなぁ、大人の世界はと思いながら(笑)。 穂花 「話せないです」って(笑)。 吉田 「話せないです」の一言が、テレビ的には欲しいんですよ。話せないっていうのを端から分かった上で聞かないのではなくて......。 穂花 聞いた上で「話せない」って話す。 吉田 そこが面白いですよね。ボクの本業とは違う。ひと手順加わるというか。 ──テレビはやり取りを見せないといけないと。 吉田 本業のインタビューだと、こちらからある程度エピソードをふって答えてもらうんですけど、テレビはほんのきっかけだけでいいんですよ。エピソードは全部、本人の口から喋ってる風じゃないと。前にインタビュー番組をやっていた時も、「吉田さんは何も知らない風でやってください」って言われて。 穂花 何も知らないって。 吉田 悲しい立場だなあって。 ──綿密な下調べで有名な吉田さんが......。 吉田 聞いて「ええ、そうなんですかー!」って驚かなきゃいけない。今回の番組にしても、ラジオになるかもしれないって話もあるので、服装を具体的にディテールまで話してくださいっていうのもあって。なかなかそんな(笑)。 穂花 そうですよね。今日初めましてですもんね。いつもどんなファッションだか分からないのに。 吉田 「とってもセクシーで」って言えばいいのか、「そんなにセクシー過ぎるわけでもなく」って言えばいいのか。表現しづらいじゃないですか。大変なんですよ(笑)。 ──お互いに、初対面の印象はいかがですか? 穂花 吉田さんの椅子を持って構えているプロフィール写真の印象が強かったんですけど(笑)、会ってみるとソフトな男の人だなって。もっとガツガツくるタイプなのかと思ったら、全然逆でした。 吉田 「どうですか! ここだけの話!」みたいな感じだと(笑)。 穂花 はい(笑)。リアクションにしても「ええ! まじっすかー!!」って感じだと思ったら、「ああ、そうですかー」って(笑)。 吉田 あの本読んだ後でそれできる人はいないですよ。これは傷つけちゃいけない人だって。真綿で包むようにやらなくちゃいけない。新たなトラウマを与えちゃいけないって思いますから。 穂花 あと、色が白い! honoka03.jpg 吉田 それよく言われますね。プロフィールのモノクロの写真だと陰影がくっきりついているから(笑)。 ──吉田さんは、穂花さんの印象は? 吉田 本を読んだ印象そのまんまに近いですけど、ものすごくしんどい経験をさらっと話されることが衝撃でした。何事もなかったかのように。 ──外見の印象は? 吉田 女優顔ですよね。こういう言い方って誤解を与えるかもですけど、AV感がない。 穂花 ありがとうございます。......なんて答えていいか分からないですけど(笑)。ありがとうなのかな(笑)。 吉田 ありがとうでいいのかどうか(笑)。 ──穂花さんは、自叙伝の発売からそろそろ半年が経ちますが、その後の反響はいかがですか? 穂花 ラジオ(TBSラジオ『穂花のホントだよ』)で聞いてくれたリスナーの方が買ってくれたりとか。あと、同じ境遇の女性が、「力になりました」って意見をくださって、うれしかったですね。 ──手紙やメールでですか? 穂花 ブログのコメントでも。あ、でも最近公式ブログ(穂花流ガールズトーク)が消えてしまって。アメブロに確認したら「誰かが消した」って。 吉田 ハッカー的な? 穂花 どうやってIDとパスワードを知られてしまったのか......。だからもう一回立ち上げなきゃって。 吉田 まだまだ波乱は続く感じですよね。 穂花 ちょいちょいある。またかって(笑)。 吉田 これは小さな波ですよね(笑)。 穂花 なんかちょっとかわいいじゃない、ってくらいですね(笑)。 ──『元○○な人々』の放送が始まる頃には、ブログが復活していることを願います! ありがとうございました。 (取材・文=小川たまか[プレスラボ]) ●『元○○な人々』 現在のサブカル界最重要人物! 最強のインタビュアーといわれる吉田豪の地上波初! 冠番組が実現! 数々の「元○○」な著名人をターゲットに吉田豪がディープなインタビューで迫る! "元○○"な人達の波乱万丈な人生の赤裸々告白を目撃せよ! 業界初! 関西テレビ深夜、クロージング枠を特設! 【放送】 2010年7月6日(火)START 関西テレビ 毎週火曜日~日曜日(週6日) 深夜・クロージング前枠・毎約5分 ■放送内容:1人のゲストインタビューをおよそ2週間、1回約5分×12日間に分けて放送。 全6人のゲストで、3カ月(12週間)に渡り、全72回放送予定。 ●吉田豪(よしだ・ごう) 1970年生まれ。徹底的な事前調査で知られるサブカル界随一のプロ書評家&インタビュアー。時に本人すら忘れているエピソードを持参することも。滅多にインタビューを受けることのない大物の取材を獲得することもあり、各方面から「吉田豪にならインタビューを受ける」と指名されることも多い。現在も雑誌『AERA』『B.L.T.』『BUBKA』『クイック・ジャパン』など多数の連載を抱え、20代~30代の男性を中心に人気を集めている。主な著書は『バンドライフ』『hon-nin列伝セキララなオンナたち』『人間コク宝』『吉田豪のセメント!! スーパースター列伝』『元アイドル1&2』『男気万字固め』ほか。テレビ・ラジオ出演も多数。
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世界が爆笑した洋画『ハングオーバー』 日本では劇場未公開寸前だった舞台裏

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音楽・映画ライターのわたなべりんたろう氏。
『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(08)の
日本での劇場公開を求め、署名活動を行なった。
 製作費3,500万ドルという控えめな予算ながら、2009年6月に公開されるや全米興収2億7,700ドルの特大ヒットを記録。米国のコメディ映画史上最大のヒット作となったワーナー映画『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』が、7月3日(土)より日本でも公開される。米国だけでなく世界27カ国で第1位を記録した爆笑コメディだが、実は日本での公開をめぐって劇中さながらのドタバタ劇があった作品なのだ。洋画コメディは日本では当たらないという映画業界の風潮に加え、知名度のあるスター俳優が出演していないことから、日本では劇場未公開のまま3月にDVDが発売されることがワーナー・ホーム・ビデオから発表されていた。『バス男』『スーパーバッド 童貞ウォーズ』に続いて、『ハングオーバー』もDVDスルーかとコメディ愛好家たちが嘆く中、立ち上がった男がいた。欧米では大ヒットしたものの日本ではやはりDVDスルーが決まっていた英国産コメディ『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(08)の日本での劇場公開を求めてネット上で署名運動を展開した映画ライターのわたなべりんたろう氏だ。『ハングオーバー』はいかにして日本での劇場公開に至ったのか。劇場公開が決まる前の1月14日、劇場公開が決まった後の6月22日の2度にわたって、わたなべ氏へのインタビューを行なった。 ■今の日本は"文化的鎖国状態"!? ──練りに練られた脚本で、展開が予測できない爆笑ストーリー。でもってダメ男たちの友情にホロリとさせられる。こんなに面白い映画が日本では劇場未公開扱い(1月14日時点)とは残念です。 わたなべりんたろう(以下、わたなべ) ノンスター映画のコメディということで、日本でのヒットは難しいだろうという判断だったようです。キャストはこの作品が全米で大ヒットしたことで、今ではみんな売れっ子になっているんですけどね。花婿の義弟を演じたザック・ガリフィアナキスはスタンダップコメディ出身でジョン・ベルーシの後継者的な存在ですが、髭づらでメタボ体型。確かに、日本ではまず人気が出ないタイプです(苦笑)。コメディというとその国の文化事情を知ってないと笑えないという印象があるけれど、『ハングオーバー』は唐突にトラが出てきたりするフィジカルなギャグばかりなので、全世界共通で笑える内容です。それにストリッパー役のヘザー・グラハムがすごくいい。米国で人気が再燃しています。出演オファーを蹴ってしまったリンジー・ローハンは悔やんでいるそうです。まぁ、低予算映画ということで、米国でも公開前はここまで大ヒットすることは予測されてなかったわけですけどね。 ──わたなべさんは劇場公開についてワーナー側と交渉されたんでしょうか?
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世界で大ヒットした『ハングオーバー』がようや
く日本でも公開。ラスベガスで独身さよなら
パーティーを開いたダメ男たちがハメを外しす
ぎ、ハングオーバー(二日酔い)に。消えた
花婿は結婚式までに見つかるのか?
(c)2008WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
わたなべ ワーナー・エンターテイメント・ジャパン内にも「未公開はもったいない」と考えている人はいました。映画評論家の町山智浩さんがPRを努めたこともあって、『ハングオーバー』が日本でプレミア上映された昨年9月の「第2回したまちコメディ映画祭in台東」のオールナイトイベント"復活! 映画秘宝ナイト"はチケットが売り切れるほどの人気でしたし。それで、わたしが11月末に「日本では公開しないんですか?」と確認したところ、「日本での公開は200%ない」という返事でした。それならばと、12月1日からダメもとでサイト上での署名活動(映画『ハンオーバー』劇場公開を絶対求める会)を始めたんです。こんなに面白い映画が世界中でヒットしているのに、日本だけ公開されないという状況はどうなんだと。 ──日本では若者の洋画離れが進んでいます。 わたなべ 日本では、コメディ映画を劇場で観て、みんなで大笑いしようという習慣がない。それに加え、若者たちの洋画離れが進み、洋画系の配給会社は苦しい状況。ムービーアイ、ワイズポリシーなど洋画を手掛けていた配給会社が次々と潰れています。若者の洋画離れは一説には、ゆとり教育の弊害なんじゃないかとも言われているようです。読みづらい字幕よりも吹き替え版のほうを好む。知らない外国の俳優が出ている洋画よりもテレビドラマの劇場版を選ぶ。若い人たちはそういう保険のついた、安心して観ることのできる作品を好むようになっている。ケータイ小説のような予定調和的な世界に感動している。これはすごく怖ろしいことですよ。日本の文化状況は、まるで"鎖国状態"に向かっているように感じるんです。音楽業界もそうですが、近年の映画業界はすごく内向きのマーケティングに偏っています。 ──1本のコメディ映画をめぐる問題ではなく、日本の文化全般にまつわる問題でしょうか? わたなべ 日本の音楽シーンで言えば、少し前にあった現象では洋楽をパクったような3年遅れぐらいのR&Bを平気でやっていた。国内でディーバとか言っても、海外ではまったく通用しないと思います。日本の音楽シーンは世界の動きを知らずに、音楽格差が生まれています。若い人たちも携帯配信で音質の悪いものを聴いて、それで良しとしている。CDが売れなくなるのは当然だと思います。音楽業界がファンを育てていくことを怠っていたツケが来ているんじゃないですか。映画業界も似たような状態でしょう。例えば、『スパイダーマン』シリーズをヒットさせたサム・ライミ監督の『スペル』(09)なんて爆笑もののホラーコメディなんですが、日本では若い人たちには作品の面白さが全然届かずに不発で、もう少し入ってもよかった。ある種の文化格差が生じてきているように思います。 ──80~90年代は各国の多彩なインディペンデント系作品がミニシアターで盛んに上映されていましたが、今はスター俳優の主演した恋愛映画じゃないと公開されにくい状況。 わたなべ でも、アクションコメディ『ホット・ファズ』は日本でもヒットしました。わたしが宣伝に協力した、売れないヘビメタバンドのドキュメンタリー映画『アンヴィル!  夢を諦めきれない男たち』(09)もロングランになりました。ノンスター映画でも本当に面白い作品なら、口コミで人が入ります。面白い映画はきちんと宣伝して一定期間公開すれば、観客に伝わります。それなのに安全パイの作品しか公開しないというのはどうでしょう? 日本の文化の層の薄さを感じさせます。 ──『ホテル・ルワンダ』(06)に続き、『ホット・ファズ』もネット上での署名活動から劇場公開に結びついたわけですが、『ハングオーバー』が劇場公開される見込みは......? わたなべ 厳しいです。山を動かすぐらいの覚悟ですね。無理を承知でやってます。何もやらないで後悔するよりは、やって後悔しようということです。もう後悔しつつありますけど(苦笑)。別にワーナーとケンカするためにやってるんじゃないんです。ネットを使って署名運動ができ、日本で公開したい作品があるならやろうよということです。ボクだけじゃなくて、みんな各自が思うものの署名活動をやればいいんじゃないかと思います。自分の意見を言うことを怖がっている人が多いように思いますね。正直、『ホット・ファズ』で署名活動をやって完全燃焼したので、2度はやるつもりはなかった。一銭にもなりません。 ──個人での署名運動は大変ですか? わたなべ 大変です。『ホット・ファズ』のときは完全なボランティアでした。寝ないでメールを送り、ブログを更新する生活。ネット喫茶にこもって集中して作業していたら、床ずれができました(笑)。日本版DVDが出たときに解説を書いて、その原稿料を規定額分もらっただけです。今回の『ハングオーバー』も知り合いのミュージシャンら著名人にコメントをお願いしていますが、サンプルを送ったり試写会で観てもらって、それからタイミングを見て、コメントを頼まなくてはいけない。時間がかかるし、注いだ熱量に対する見返りはないんです(苦笑)。ただ、やるべき価値のあることなら、やってみるべきだということですね。 ■ツイッターは宣伝スタイルを変えるか?  さて、わたなべ氏が署名活動はしんどいとこぼしたここまでが1月14日のインタビュー。日本での劇場公開は絶体絶命かと思われた『ハングオーバー』だが、このインタビューのすぐ後にミラクルが起きたのだ。1月18日に発表されたゴールデングローブ賞で『ハングオーバー』は見事に作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。このニュースが報じられた直後、DVDの発売を延期して日本でも劇場公開することが発表された。以下は6月22日に行なった、わたなべ氏への電話インタビューの内容だ。 ──本来は3月のDVD発売に合わせて映画業界に一石を投じるインタビュー記事としてアップする予定でしたが、記事をお蔵入りさせたままご無沙汰していました。『ハングオーバー』、まさかの日本での劇場公開おめでとうございます。
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『キリング・ミー・ソフトリー』(02)の
ヘザー・グラハムが、"いい女"っぷりで泣
かせる。
わたなべ ありがとうございます。 ──ぶっちゃけなところ、『ハングーバー』の日本での公開に、署名運動はどれだけの効果があったと思いますか? わたなべ もちろん、ゴールデングローブ賞受賞が大きな要因でしょう。日本での劇場公開が米国のワーナー本社からの指示なのか、ワーナー・エンターテイメント・ジャパンの判断かは分かりません。でも、署名運動をしたことで日本でも『ハングオーバー』を観たいという人たちがいることを具体的な数字でアピールできたことが基盤になっていると思います。ただゴールデングローブ賞を受賞しただけで、日本で公開されたかどうかは分かりません。実際、『ハングオーバー』の日本での公開にあたり、署名のために著名人たちが寄せてくれたコメントが活用されるなどもしています。 ──とりあえず、『ハングオーバー』は日本での劇場未公開を回避できましたが、日本における洋画の状況が根本的に変わってきたわけではありませんよね? わたなべ そうです。ですから、『ハングオーバー』が洋画の配給状況が変わる上での試金石になればと思いますね。『ハングオーバー』がヒットすれば、配給会社も多少なりとも洋画コメディに対する認識が変わるんじゃないですか。ノンスターのSF映画『第9地区』はヒットしています。日本映画ですが、テレビ局を絡めずに作った『告白』のようなエッジの効いた作品も当たっている。今までとは違った作品を観たいと思っている人は多いということでしょう。テレビ局主導の映画に対する反動もあると思います。それに映画の宣伝スタイルも変わりつつあるんじゃないかと思います。クエンティン・タランティーノ監督の戦争映画『イングロリアス・バスターズ』(09)は公開直前にタランティーノやブラッド・ピットらが大挙来日してキャンペーンを行ないましたが、観客動員できたのは第1週だけで、その後は続かなかった。テレビなどを使って公開直前に派手に宣伝する大作映画とは別に、ツイッターなどのネットでの口コミ的な宣伝が適した作品もあるんじゃないですか。『ハングオーバー』もツイッターで署名活動を広げたわけです。 ──ネットでの署名活動は『ハングオーバー』で打ち止めにしたいと前回は話していましたが......。 わたなべ 署名運動は大変なので、できれば他の人にやってほしい(苦笑)。『ハングオーバー』はすでに『ハングオーバー2』の撮影が年内に予定され、日本でも早々に劇場公開されることが確定しています。でも、まだこれから日本で劇場公開されるかどうか微妙な作品がけっこうあるんですよ。『ホット・ファズ』のエドガー・ライト監督の新作『スコット・ピルグリムvs.ザ・ワールド』ですが、これも日本での公開はまだ予定されていないと言われています。暴力シーン満載ながら笑える米国映画の話題作『キック・アス』も難しい状況。『40歳の童貞男』(06)で知られるジャド・アバトー監督の最新作『ファニー・ピープル』(09)は米国の人気コメディアンであるアダム・サンドラーとセス・ローゲンが主演したヒット作ですが、日本での公開の見通しは付いてませんしDVDも出ていないんです。とくにエドガー監督の『スコット・ピルグリム-』は撮影中のトロントを訪問して、エドガー監督にも会ってきているので、もし日本での公開が決まらず、他に署名活動を始める人がいなければ、やらざるを得ないかもしれませんね......(苦笑)。 ──『ハングオーバー』の日本公開に当たり、最後にひと言お願いします。 わたなべ 日本での公開が決まってからも署名数はまだ増えているんです。現在、署名数は2,481人です。公開初日の土曜、日曜はみんなで劇場に集まって盛り上がりたいですね。コメディって、ひとりでDVDで観るよりも、劇場でみんなで腹を抱えて笑うことで、もっと面白くなるもの。それに第1週の土日に観客動員できれば、その後の公開期間も伸びますしね。エンドロールで明かされる画像の数々は爆笑すること間違いなしです。  さて、『ハングオーバー』が公開される7月3日は、フジテレビ製作の『踊る大捜査線THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』も全国公開される。脚本重視のノンスターの洋画と国内興行記録を塗り替えたテレビ局主導の人気シリーズがぶつかり合う形だ。全国10館のみでの上映となる『ハングオーバー』は観客動員数では圧倒的に不利だが、満足度や1館あたりの動員率でどのような数字を残せるか。これからの映画興行を占う上で、非常に興味深い対決となりそうだ。 ● 『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』 2日後に結婚式を控えた親友・ダグ(ジャスティン・バーサ)のためにバチェラーパーティーをラスベガスで開くフィル(ブラッドリー・クーパー)たち悪友仲間。だが、ハメを外しすぎて悪酔いし、誰も昨晩の記憶がない。ホテルにダグの姿はなく、代わりになぜか赤ちゃんとトラがいた! 監督/トッド・フィリップス 脚本/ジョン・ルーカス&スコット・ムーア 出演/ブラッドリー・クーパー、エド・ヘルムズ、ザック・ガリファアナキス、ヘザー・グラハム、ジャスティン・バーサ、ジェフリー・タンバー 配給/ワーナー・ブラザーズ映画 7月3日(土)よりシネセゾン渋谷ほか全国ロードショー <http://wwws.warnerbros.co.jp/thehangover/> ● わたなべ・りんたろう 1967年生まれ。映画・音楽ライター。「週刊朝日」映画欄の星取り表など執筆。ルワンダ紛争の実情を描いた『ホテル・ルワンダ』(06)の日本での公開を求める署名活動に参加。『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(08)では"映画『Hot Fuzz』の劇場公開を求める会"を主催し、2890人の署名を集めた。
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【関連記事】 存在感で光る若手女優・安藤サクラ「俳優って地味な仕事だと思います」 吉田恵輔監督の溢れ出すフェチ感覚!「焼肉を焼く女子の髪の匂いに惹かれる」 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張

存在感で光る若手女優・安藤サクラ「俳優って地味な仕事だと思います」

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『トルソ』の他にも、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』
『SRサイタマノラッパー2』と出演作が相次ぐ安藤サクラ。
カメラの視線を自然と集めてしまう不思議な魅力の持ち主なのだ。
 若手女優の中で、今もっとも注目の存在なのが、安藤サクラ。『風の外側』(07)で主演デビューとまだキャリアは浅いが、『愛のむきだし』(09)ではカルト教団の幹部・コイケを怪演し、話題を呼んだ。『俺たちに明日はないッス』(08)ではヌードシーンも厭わない女優魂を見せるなど、観客の視線を常に釘付けにしている。そんな逸材を若手監督たちも放っておくはずがなく、6月には『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』が立て続けに公開。さらに『愛のむきだし』で共演した渡辺真起子と姉妹役を演じた『トルソ』が7月10日(土)より公開される。姉の元カレと交際しておきながら、姉の部屋に転がり込むという図々しくも憎めない妹ミナを演じている。これまでの出演作だけでなく、父親である奥田瑛二をはじめとする安藤家のこともぶしつけながら尋ねると、独特の言語感覚でホワホワ~ンと答えてくれたのだ。 ──最新作『トルソ』、姉妹間の心の葛藤がまざまざと描かれていて、思わず作品世界に引き込まれました! 安藤サクラ(以下、安藤) カメラマンでもある山崎裕監督が本当にすごいんです。私が気がついてないような"女"の部分を、カメラに映し出してしまうんです。山崎さんじゃないと撮れない作品だと思います。私、ふだんの山崎さんも大好きなんですけど、カメラを持って被写体を追いかける山崎さんは、人間とは違う別の生き物になるんです。本人が気がついてない部分まで映し出してしまう怪物みたいな存在なんです。 ──日本民俗学に出てくる妖怪サトリみたいじゃないですか。 安藤 あはは、山崎さんは妖怪なのかなぁ(笑)。渡辺真起子さんは山崎さんのことを猛獣と呼んでいましたけどね。私が何もしなくても、山崎さんが勝手に撮ってしまうんです。だから『トルソ』に出てくるヒロコとミナの姉妹は、山崎さんの目から見た女性像なんですかね。 ──山崎監督は『俺たち明日はないッス』のカメラマンでしたね。セーラー服姿の安藤さんの妖しさが強烈でした。でも『トルソ』は台詞が少なく、表情や佇まいで内面を表現するのは難しかったでしょ?
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『愛のむきだし』『クヒオ大佐』(09)
で共演した満島ひかりと共に若手女優
として注目される。「ひかりとは
仲良し。ライバルってよく言われます
が、そんな意識はないです(笑)」
安藤 現場では、山崎さんと真起子さんに頼り切っていました。撮影前は台本読みながらいろいろ考えるんですけど、結局、撮影現場に入ると関係なくなっちゃうんです。なので、今回はミナという役を考えたというよりも、現場で姉役の真起子さんとの関係性がどうなっていくのかということに慎重になりながら作っていきました。 ──サクラさん自身もお姉さん(映画『カケラ』の安藤モモ子監督)がいますね。 安藤 はい。妹って、姉に甘えたり、自分の言いたいことを言っちゃったりする、うざったさってありますよね。私が演じたミナも相当うざいです(笑)。『トルソ』の場合は異父姉妹という設定なので、一緒に生まれ育った姉妹とは違う、別々の女の子と女の子が姉妹になったという独特の関係だと思いますけど。えっ、姉と同じ人を好きになったことがあるか? ない!(きっぱり) ないですよ、ありえない。まず、どっちかに好きな人がいたら、それを知った時点で、その人は好きになれません。うちの姉妹はすっごい仲良しなんです。誰よりも大切な関係。お姉ちゃんさえいれば、彼氏は必要ないやと思ったこともあるぐらいです。だいたい、姉妹と付き合おうなんて人は、気持ち悪い......。姉妹で同じ人と付き合うことはありえません! ──完全否定されたので、話題を変えたいと思います。公開中の『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』でも母性を感じさせる女性・カヨちゃんを好演しています。「自分でブスと言うのはいいけど、好きな人からブスと言われるのはイヤ」というカヨちゃんの台詞、すっごく印象に残るんですけど。 安藤 うれしいです。ありがとうございます。大森立嗣監督が母性的なキャラクターを考えていたので、体重を7~8kg増やしました。「デブになれ」とまでは言われてないんですけど、見た目で安心感を与えられるようにということで太ったんです。昨年の6~7月に撮影した作品ですけど、その前後に出演した作品は、フツーにデブになってます(笑)。でも、自分から進んで太る機会なんて、あまりないことなんで、面白がって太りました。 ──すべてを受け入れる24歳! スクリーンに映し出されるサクラさんは、男の考えることなんか全部お見通しだよと言わんばかりの、経験豊富な女性に見えますよ。
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男嫌いで、男性型の人形"トルソ"と静かに暮
らすOL・ヒロコ(渡辺真起子)のマンション
に、妹のミナ(安藤サクラ)が転がり込んで
きた。父親や恋人という"男"をめぐって、2人の
本音がぶつかり合う。
(c)2009"Torso"Film Partners
安藤 え! 経験なんて、人並み以下だと思いますよ! でもお芝居を通して自分自身が学べることや経験できることは沢山あります。だからいろんな役を演じられるのは、すごく幸せなことですよ。あれ、今、気づいたんですが、私、下のチャックが開いてました。うわ~、さっきの撮影中も開けたままだったかも。どーしよう!? ──スクリーンだけでなく、ふだんのサクラさんの言動からも目が離せません(笑)。出演のオファーが殺到してるんじゃないですか? 安藤 (落ち着き直して)そんなことないです。オーディションも一時期はけっこう受けていたんですが、全然ダメでした。オーディション会場に入った瞬間に、「君はないから」と鼻で笑われたこともあります。あんまりオーディション落ちるんで、思いっきりぶりっ子して「こんにちは。安藤サクラです♪」(にっこり笑う)とかもやってみたけど、やっぱりダメでした(苦笑)。オーディションに受かった数少ない作品が『俺たちに明日はないッス』なんです。初めてオーディションに受かって、すっごくうれしかった。 ──決して順風満帆な女優道ではないんですね。デビュー作『風の外側』は実の父親である奥田瑛二監督作、しかもクランクイン4日前に主演女優が降板して急遽バトンタッチ、さらにヌードシーンもあるという大変なハードルでした。 安藤 うちの父と一緒に仕事をするというのが、何よりも試練でしたね。その後、何本か映画に出させていただきましたが、あの現場はかなりしんどかった。最初は台詞のない指揮者の予定だった私が急遽主演することになり、父は理不尽なくらい厳しく当たりました。でも、デビュー作で厳しい目に遭ってよかったと今は思いますね。 ──まさに我が子を千尋の谷に突き落とす獅子のようですね。 安藤 どうでしょう(笑)。私が小さい頃は、父は忙しくてほとんど家にいない状況だったんです。『風の外側』の撮影が終わってから、ようやく父と打ち解けた感じですね。小さい頃は、たまに父が家にいても、地味な格好でぼ~としてるだけだから、「俳優って地味な仕事だな」と思ってすごく憧れてました。他の人が「俳優は華やかな仕事」とか言ってるのを聞いて、急に恥ずかしくなっちゃたんですが。今は地味だけど華やかに見られる仕事だなっていう認識になりました。 ──子どもの頃は「1+1=3」と奥田瑛二さんから教えられていたそうですね? 安藤 そうですね。よく分からないんですけど、たまに家にいると私に向かって「1+1はなんだ?」って聞いてくるんです。それで「2」と答えると怒るんです(苦笑)。その代わり、小学校で先生に言われた色と違う色に絵を塗ったりすると誉められたりしましたね。それでよく、母(エッセイストの安藤和津)は学校に呼び出されてました。そのときは母から「絵を違う色に塗るのは構わないけど、先生の言っていることも理解するようにしようね」って言われたのを覚えてます。
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──学生時代はアルバイトに励んでいたとか。 安藤 はい、小学3年生以降はしょっちゅう先生から呼び出しをくらうダメな子になり、現在まで来てしまいました。授業中、みんなと同じようにじっと黒板を観てられないです(苦笑)。でも、アルバイトしてるときの私はけっこー輝いてたと思います(笑)。高校に入学してすぐにジョナサンで働き始めました。その後もいろいろやりましたね。最近もインド料理店で小遣いを稼いでたんですが、楽しかったです。 ──俳優にとってオフの過ごし方は大事。 安藤 すべてが大事ですね。なんだろう、いつも素直に生きたいなと思いますね。朝が来て、昼が来て、夜が来て、その間に何が起きても、すべてのことを素直に感じて生きていきたい。でも、それって難しいです。 ──いろいろ考えて女優業に取り組んでいるんですね~。 安藤 さっき話したような育てられ方をしたせいか分からないんですけど、私ってすごく感覚で動いてしまうんです。でも目に見えないフワフワしたところばかり見ていたら、結局は自分は現実の人間なんで、すごく辛くなるんです。だから、目に見えないことも大事だけど、同じように目に見える現実も大事なんだって考えるようにしています。これって小さい頃に母が言ったことと同じことだなって。目に見えるものも、見えないものも素直に感じながら生きていくことが今の私のテーマですね。誰かが書いた脚本があって、監督が演出する。でも、それを表現するのは自分という肉体。なので自分の体に正直に、仕事も日常生活も素直にきちんと過ごしたいなと思ってます。 ──七光りであぐらをかいている二世タレントとは、ひと味もふた味も違うなぁ。 安藤 う~ん、父と私は正反対のタイプですね。父がひとつの役から違う役に変わるのに苦労してる姿を見てきましたが、父は決して器用な俳優ではないなと思います。父は完全な反面教師。逆に私がこれから子どもを産んで、子育てするようになったら母の気持ちが理解できるようになるでしょうね。まぁ、なんだかんだいっても俳優は外へ出ていく仕事なんで、七光りでも注目されるのはいいんじゃないかと思います。でも父は父、私は私なんで、それ以上にガンバらなくちゃいけないこともあると覚悟してます。まだ、私ほどのキャリアで、「女優です」とは言えません。だから、まずは生きることに正直でいたいなって思ってます。  こちらの質問に対して、間を置きながらじっくり考えてから話す姿は、好感が持てるのだ。また独特の存在感は、若い頃の桃井かおりを彷彿させるではないか。安藤さんちのサクラさん、これからがとっても楽しみな逸材ですぞ。 (取材・文=長野辰次) torso_sub03.jpg 『トルソ』 監督・撮影・脚本/山崎裕 脚本/佐藤有記 出演/渡辺真起子、安藤サクラ、ARATA、蒼井そら、石橋蓮司、山口美也子 配給/トランスフォーマー 7月10日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー(初日舞台挨拶あり)ほか全国順次公開。<http://www.torso-movie.com/> ●あんどう・さくら 1986年東京都生まれ。奥田瑛二監督作『風の外側』(07)のヒロイン役で映画デビュー。『俺たちに明日はないッス』(08)、『罪とか罰とか』(09)、『愛のむきだし』(09)などの話題作に出演。現在公開中の『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』ではアジアン・フィルム・アワードにノミネート。『SRサイタマノラッパー2女子ラッパー☆傷だらけのライム』では得意のダンスを披露している。
愛のむきだし ゾクゾクします。 amazon_associate_logo.jpg
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脈打つビート! 弾けるパッション! 脱力系映像作家・坂本渉太『真・野球ドラマー外伝』

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新進気鋭の脱力系映像作家・坂本渉太氏。
 本日からスタートする、ニコニコ動画公式チャンネル「サイゾーテレビ」。そのなかで、アニメーション『真・野球ドラマー外伝』を担当する坂本渉太は、関西で活躍する脱力系映像作家。チャットモンチーや関西出身のバンド・neco眠る、BOGULTAなどのPVを手掛けている、いま大注目の若手クリエーターだ。坂本渉太とは、一体どんな人物なのか。彼の作品を紹介していきつつ、彼の映像の魅力に迫る!  坂本渉太を知っているか?  関西で人気の盆踊り系ダブバンドneco眠るの「ENGAWA DE DANCEHALL」や、同じく関西のハードコアエレクトロバンドBOGULTAの「メッ政治」といった、オモロー系バンドのPVを手がけ、その映像から繰り出される超脱力ビームで、観る者の戦闘能力を限りなくゼロにしてしまう気鋭の映像作家である。  どんな感じに力が奪われてしまうのかは、映像を観ていただくしかないのだが、とにかく、どんなに苦しい気持ちで悩んでいたとしても、そんなことど~でもよくなってしまうのだ。 ──まずは、映像を作り始めたきっかけを教えてください。映像よりは音楽の方が先だったんですよね?
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坂本渉太(以下、坂本) そうです。ずっと自分で音楽を作っていて、中学くらいの時は便所の音を録音して「作曲や!」と、学校で友達に聞かせたりしていました。高校ではバンドでドラムを担当していて、大学の時は一人でパソコンで曲を作ってましたね。アニメーションも特に勉強してなくて、全部独学なんです。 ──映像の動きにすごく躍動感があるのは、ドラムをやっていたからなんでしょうか? 坂本 たぶん、そうでしょうね。アニメーションをやろうと思っていても、ストーリーがあんまり思いつかなくって。だから音をひたすら聞いて、それに合わせて動きや面白いシーンを考える。絵コンテや下絵とかは一切描かないで、ペンタブで直接パソコンに描いていきます。ひたすら曲を聞きまくって、字コンテというかプロットを起こしていくんです。メロディの構成に合わせた動きとか話とか。 ──すごいですね。では、作品別に話を聞いていきたいんですが、neco眠るの「ENGAWA DE DANCEHALL」は、どういう設定から入っていったんですか? 坂本 これは、泣いた赤鬼と『まんが日本昔ばなし』と『座頭市』がモチーフなんですけど、 農民や飛脚ばっかりが出てくる感じにしたかった(笑)。全員バカな顔して、楽しいぜ、みたいな。あとneco眠るはメロディが(パートごとに)かっちり分かれているので、シーンごとに分けてストーリーを作っていきました。全体的には、neco眠るのライブの爆発的な楽しさを表現したんですけど、隠れテーマが「世界平和」なんです。鬼っていう異種が出てくるでしょ? そいつと仲良くなるっていうのがテーマで、この映像を作ってる時は本気で「世界よ、平和になれ」と祈りながら作りました(笑)。それと、自分の中での強烈なまでのバカな気持ちを大事にしました。みんなのアホ面とか餅が光るとかね。 ──鳩も出てくるし、鯛も出てくるし、そして最後はみんなで踊って大団円ですもんね、確かにみんな平和に満ちています(笑)。ではBOGULTAの「メッ政治」はメンバーからは何かリクエストがあったんですか? 坂本 BOGULTAの時はメンバーから「暴走族っぽく」っていうリクエストがあったんですが、何回曲を聞いてみても暴走族っぽく聞こえなくて、ああいう映像になりました。これも完成するまでメンバーには見せなかったんですが、後でメンバーに「泣いた!」って言われましたよ。でも、途中から暴走族でもなんでもなくなってますよね。
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「カジカジ」連載中の4コマ漫画
『新・もちおフレンド』より
──この登場するキャラクターの面白い動きは、坂本さんの好みなんですか? 坂本 実は、技術的な問題なんですよ。アフターエフェクトを使ってるんですが、自分のレベルだとああいう動きしか出せないんです。アニメーションみたいな滑らかな動きにめっちゃ憧れてるんですけど、技術的に無理!(笑)まあ、でも美大生とか絵が上手い人やったら死ぬほどいるんで、それだったら下手なまんまでもオモロイ方がいいやって思って。あと全然関係ないんですけど、ロックなヤツらって人前でめっちゃ情熱的な感じでやるじゃないですか。そして女の子にモテるじゃないですか! それで、ちきしょ~って、俺だって作ってる時はめっちゃ情熱的に作ってるっつーの! めっちゃ感情爆発させてるっつーの! って思いながら作ってるんですけど。 ──これからどんな作品を作っていきたいですか? 坂本 映像じゃなくても何でもいいんです。漫才でもラップでもパペットアニメでも(笑)。とにかく人を笑わせるものを作りたい。あとは、3歳児が見ても分かるようなものを作りたいっていう気持ちがあります。現代アートって、見てもよく分からない部分があるじゃないですか。サブカルもあんまり好きじゃない。だから、誰が見てもわかるドメジャーなものが好き。そういう意味では、NHKの『みんなのうた』の映像は一度やってみたいですね。 ──一緒に仕事してみたい人はいますか? 坂本 仲里依紗さんがいいですね。彼女の仕事がきたら何でもやります! ギャルっぽい感じが好きなんですよ。俺もギャルがめっちゃ好きで、でもギャル好きっていうよりは、ギャルが持ってるものとかがカッコいいって思って。仲里依紗もそのノリ。彼女ってセレブ好きでしょ? そういうところがいい。だから、Chim↑Pomのエリィさんとかも好きなんです。でも、面白かったら本当にどんな人でもいいです。だから、最初の仕事でneco眠るやBOGULTAという、日本のミュージシャンの中でもトップクラスに面白いバンドのPVをつくれてよかったです。 ──ニコニコ動画のアニメーションは、どのようなものになるんですか? 坂本 ニコニコでは、『真・野球ドラマー外伝』という、応援団長とヤンキーと秀才の3人が登場する青春アニメをやろうと思っています。30秒~1分くらいのOP曲があって、本編があって、ED曲という構成でアニメ番組っぽくまとめられたらと考えてます。 (取材・文=上條桂子)  そんな坂本さんのアニメーション『真・野球ドラマー外伝』は月2回放送予定! 今回は、そのオープニングを少しだけお見せいたします。 ●さかもと・しょうた 1981年奈良県生まれ。大学在学中から映像作品を作り始める。09年11月に初の作品集DVD『THE DVD』(de-flagment)をリリース。SPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDS 2010 ALTERNATIVE部門ノミネート(neco眠る「ENGAWA DE DANCEHALL」)、ロサンゼルス映画祭2010 music video部門正式招待(neco眠る「ENGAWA DE DANCEHALL」、BOGULTA「メッ政治」、AUDIO FOOD「dumdumdum」)。現在、関西のファッションン情報誌「カジカジ」に4コマ漫画を連載中。また、オンラインオンデマンドTシャツショップ「TEE Party」に参加。ブログ <http://www.shotasakamoto.com/>
THE DVD 笑い死にます。 amazon_associate_logo.jpg
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京女は幽霊よりも怖い? 京言葉で綴るスプラッタ怪談『京都怪談 おじゃみ』

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第4回『幽』怪談文学賞授賞式の様子。
 ちょっと前まで肌寒かったのに、梅雨入りした途端蒸し暑くなりましたね。暑い季節といえば、アレですよ、アレ。怪談ですよ。ってことで、以前ここでもご紹介した(参照記事)「幽」怪談文学賞受賞者である、神狛しずさんにインタビューをしてみました。京都を舞台に、一人称の京言葉で綴られる『京都怪談 おじゃみ』は、上品さを感じさせる幻想的な作品ながらも、体の中からゾクっとくる怖さがあります。  幽霊も怖いけど、京都の女性も怖いですよ~。 田辺青蛙(以下、田辺) 小説に専念しようと、お仕事を辞められたそうですが、どれくらいのペースで新人賞に応募しましたか? 神狛しず(以下、神狛) 公募ガイドの情報をもとにいろいろ。月に百枚程度は書くように心がけていました(使いものになるか否かは別として)。「おじゃみ」を書いていた頃は公募ガイド社のYA文学短編小説賞(最終候補作にとどまりました)にも出したり、やはり(仕事を)辞めたばかりなのでどんどん書いていましたが、そのうちに、専念してもダメなときは全く書けないということも思い知りましたし、開き直りました。一年間の平均で言えば、応募(童話やショートショートは除く)は二カ月に一本程度。あまり筆が早いほうではないと思います。 田辺 十分速いと思いますよ。私は短いのばかり書いているので、百枚って聞くと、うわってなってしまいます(汗)。さて、受賞の連絡を聞いた時、どう思われましたか? 神狛 一瞬ポカン、としました。「最終に残っていますよ」という連絡は昨年の7月にいただいていたのですが、発表の日とされていた11月9日にはセールスの電話ばかりかかってきて。ああ、駄目だったんだな、ともう諦めて夕食を食べ始めたところだったので。 田辺 ふむふむ、そうだったのですか。で、受賞作となった「おじゃみ」に出てくる、我が子に火を付けて清々しているようなトンデモないお母さんのモデルはいるんですか? 神狛 トンデモ母さんにモデルがいたら、それこそトンデモないはずなのですが、テレビのニュースを観ていたら、世の中には結構たくさんいました。嗚呼、トンデモない。「おじゃみ」ちゃんは、うちのシーズーの女の子の頭のかたちから(アイデアを得ました)。あんこが詰まっていそうな顔をしているんですよ。あと、我が家の壁裏に鼬が入り込んで大変だった時期があって、夜な夜なゴトゴト気味悪くて眠れなかった経験もヒントに。 田辺 イケズな京都人が作中に沢山出てきますが、実際にそのような人に会うことはありますか? 神狛 いいえ、京都の方はほんまに優しいですよ。着物も、街角で見知らぬ方が笑顔でササッ、とおはしょりを整えてくださったり、帯の歪みを直して「ひやぁ、素敵やわぁ」と褒めてくださったり。皆様、怖がらないで京都へ来てください。  ただ、地獄耳だとキズつくこともあるかも知れません。でも、こういうことは全国共通の日常だと思いますよ? 京都(特定地域)の「聴こえよがし」が絶妙なだけで......。 田辺 そ、そうなのですか。私は生まれが大阪で育ちが京都なんですが、それゆえに京都の微妙なニュアンスっていうか、何か言葉遣いとかが肌に合わなかったんですよ。「あらぁ、安物がよぅ似あわはってええねぇ~」みたいなノリが怖い! って私の話になってしまってすみません。確かに「聴こえよがし」だけが絶妙なだけかもしれませんね......。作品を京都弁で書こうと思われた理由は何かあるんですか? 神狛 標準語で書いているつもりが方言だったり、自分のスピーチの録画を観たら、標準語で話していたつもりだったのに、イントネーションが思いきり訛っていたりして。それで、「ええい」と(放言丸出しで)地元近くの伝説の地を舞台にしたミステリーを書いたら賞をいただいたので、やはり自然体がいいのかなと思いまして。でも、京都と言っても<中の人>ではないので、普段はそんなに激しい京都弁では喋っていません。 田辺 そうなのですか。京都在住の私でも、綺麗な京言葉だなーと思って読んでいました。 「虫籠窓」は京都の古い町家が舞台ですが、実際に住まれたことはありますか? 神狛 ありません。京都の田舎の山奥、築三十五年の木造日本家屋に鼬や鼠や百足と一緒に暮らしております。町家は市内に出ると、カフェやギャラリーになっているところがあって憧れますが、実際に住んでいる方のお話を聞くと、ぼっかぶり(ゴキブリ)が多くて大変だそうです。 田辺 授賞式のお着物は何か作品と関連はありますか?「前妻さん」はお着物が幽霊の正体ですが、その発想はどこからですか? 神狛 京都だし、着物で......じゃあ「おじゃみ」っぽく小豆色で......という安直な理由です(普段から着物が好きでよく着ています)。弘法さん(毎月21日)にいっぱい古着物が出ていて、こういう古い着物には前の持ち主の気持ちなんか宿っていそう......と思ったのが「前妻さん」の地になっています。25日は天神さんですが、着物では怖くて行けません。 田辺 京都人の着物を見る目は厳しいですよね。最後に、次回作についてお聞きしたいのですが、今後も京都を舞台として怪談を書かれるんですか? 神狛 そうですね、今はいただけるお仕事を精一杯こなしつつ、新たな展開も見せられたらいいなと思っています。怪談以外にも書きたいお話はたくさんありますし、怪談も、せっかく入口に立たせていただいた分野ですので、ますます深くダイブしていきたいな、と。京都には書き尽くせないほど、いい舞台がありますから。 (取材・文=田辺青蛙) ●かみこま・しず 京都府京都市生まれ。現在、府下五里五里の里(城陽市)在住。同志社大学神学部卒業。図書館勤務を経て、 2008年、別名にて第6回北区内田康夫ミステリー文学賞大賞受賞。2009年、「おじゃみ」で第4回『幽』怪談文学賞短編部門大賞受賞。犬好き。愛犬は二匹のシーズー。 tanabe_prof.jpgたなべ・せいあ 「小説すばる」(集英社)「幽」(メディアファクトリー)、WEBマガジン『ポプラビーチ』などで妖怪や怪談に関する記事を担当。2008年、『生き屏風』(角川書店 )で第15回日本ホラー小説大賞を受賞。綾波レイのコスプレで授賞式に挑む。著書の『生き屏風』、共著に『てのひら怪談』(ポプラ社)シリーズ。2冊目の書き下ろしホラー小説、『魂追い』(角川書店)も好評発売中。
『京都怪談 おじゃみ』 第4回『幽』怪談文学賞・短編部門大賞受賞の京都怪談。京都を舞台に展開される、おんなの想いがつまった6つの短編怪談。古民家に暮らす妻、由緒ある家に嫁いだ若奥様、古くからの町家で祖母・母と暮らす妙齢の女性、京都の大学生、女子高の生徒......。さまざまな「京おんな」の生きざまを描く6つの怪談物語。 amazon_associate_logo.jpg
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日本唯一の"霊柩車研究家"が語る、 霊柩車の変化にみる日本人の死生観

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都内を走る東礼自動車の霊柩車。
 誰もが一度は乗るであろう、けれども、ほとんど気にかけることのない存在「霊柩車」。子どもの頃は、霊柩車が通ったら親指を隠せ! なんていう迷信をにわかに信じていたりしたが、最近では見かけることすらもほとんどなくなってしまったような気がする。そんな霊柩車を研究し続け、過去には数少ない霊柩車の専門書『The 霊柩車』(祥伝社)なる本まで上梓した経験もある庶民文化研究所所長の町田忍さんにお話をうかがった。 ――そもそも町田さんが霊柩車に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか? 「庶民文化研究所としてさまざまな文化を調べているんですが、まず銭湯について研究していたのが先でした。20年以上前になるんですが、たまたま銭湯を撮影していたらその横を霊柩車が通ったんです。銭湯の入り口のデザインと霊柩車のデザインが同じ『唐破風(からはふ)』という様式だったんです。その共通点を発見したのがきっかけで、霊柩車についても調べ始めました」 ――霊柩車の歴史について教えてください。
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現在の霊柩車の原型である『輿』。
(資料提供:東礼自動車)
「大正時代の始めに、大阪でアメリカから輸入した霊柩車を使用したことから始まります。そこに日本伝統の『輿(こし)』を合体し、車に乗せたのが始まりです。和洋折衷文化ですよね」 ――一口に霊柩車と言っても、地域によっていろいろな形があるのが驚きです。全国各地の霊柩車を取材されたのでしょうか? 「大きく分けて、北陸、中部、関東、関西の四つに特徴的な霊柩車があります。その地域の霊柩車は見て回りましたね」 ――さまざまな霊柩車を見た中でも、町田さんの印象に残っている霊柩車はどの地域のものですか?
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全国でも珍しい朱色の富山の霊柩車。
翼のある麒麟が四方を守る。
「北陸にある朱色の霊柩車ですね。もともとは黒い霊柩車だったんですが、昭和57年に葬儀屋さんが考え出したんです。あとは、金沢で見たすごく豪華なクライスラーの霊柩車ですね。豪華さでいうと北陸が最も進んでいます」 ――東京の霊柩車はどうでしょうか? 「東京の霊柩車は地味ですね。東京もかつては豪華絢爛な霊柩車があったんですけど派手すぎて人気が出ないんです。どうしても白木造りのタイプの方が人気になります」  かつては霊柩車の代名詞だった「宮型」と呼ばれる日本伝統の霊柩車。しかし、近年では都市部を中心に「洋型霊柩車」と呼ばれるシックなデザインの霊柩車が主流になりつつある。その主役交代の逆転劇には、日本人が持つ死生観の変化が大きく影響しているという。
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洋型の霊柩車。
――どうして宮型は衰退してしまっているんでしょうか? 「火葬場の近くに人家が立ち始めたのが原因でしょうね。田んぼの真ん中に火葬場を建てていたのに、その周りに人家が建ち始める。そうすると住民から苦情が来るんですよ。霊柩車を毎日見るのは嫌だって。それで、一見して霊柩車と分かる宮型よりも、分かりにくい洋型霊柩車の方が主流になっていったんです」 ――確かに芸能人の出棺風景などでも最近は洋型霊柩車が多いですね。 「昭和天皇が洋型を使ったのも影響があるでしょうね。それまでは洋型はキリスト教の人しかほとんど使用しなかったんです。美空ひばりや松田優作は宮型でした。X JAPANのhideの時は洋型を使用していましたね」 ――今後、宮型が復活していくということはないんでしょうか? 「ますます洋型が主流になっていくと思います。宮型はメンテナンスが非常に大変だし、職人さんの技術も必要になるんです。今では宮型でも白木ではなくフィギュアなどに使用するFRPを素材にして装飾を施した霊柩車もあります」 ――宮型の派手な装飾を見ていると、単純に悲しいという感情だけではない日本人の死生観を見ることができるような気がします。
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(上)京都・大阪地方を走る白木造りの霊柩車。
(下)彦根で使用されている珍しいトラック
ベースのもの。全金属製。
「例えば北陸地方で根強い浄土真宗は、死ぬ=生まれ変わるという極楽浄土の死生観です。塩をまくこともないし、間引きもしない文化だったんです。だから『富山の薬売り』をしたりして口減らしのために仕事を外に求めていたんですね。東京の銭湯も北陸の人がやっていることが多いんです。生まれ変わることはおめでたいという感覚が強いので、朱色の霊柩車が受け入れられる土壌があるんでしょうね」 ――そういった仏教特有の死生観が失われつつあるんでしょうか? 「死を見ないようにするという傾向も一因でしょうね。昔は土葬をしたり、死体を洗ったりして、死者を身近に見ていました。けれども今はなるべくそういう部分を見せないようにしていますよね」 ――そう考えると、洋型の普及はちょっと寂しい部分もあります 「宮型は残してほしいですね。宮型霊柩車はただの葬式の道具ではないんです。源流をたどれば日本人の美意識、宗教観、死生観のシンボルでもあり、大衆文化の象徴なんです。霊柩車の、車に輿を合体させるという和洋折衷の方法は、大陸文化を受け入れてきた日本の歴史と通じるところもあります」 ――最後に、芸人の鳥肌実さんも霊柩車を所有していますが、霊柩車研究家として町田さんも霊柩車を持ちたいとは思われますか? 「余裕があれば新車を買ってみたいですね。中古は......ちょっと怖いよね」 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) machidasinobu.jpg ●まちだ・しのぶ 1950年東京生まれ。学生時代はヒッピーとしてヨーロッパ各地を放浪。卒業後、警視庁警察官勤務を経て、庶民文化における見落とされがちな風俗意匠を研究。その研究対象は多岐にわたり、銭湯、正露丸、チョコレート、ペコちゃん、コアラのマーチ、蚊取り線香、ハエ取り紙など150以上にのぼる。す。主な著書に『銭湯遺産』(戎光祥出版)、『昭和なつかし図鑑』(講談社)、『東京ディープ散歩』(アスペクト)などがある。現在、文化放送「団塊世代倶楽部」(毎週土曜・午前11:00~)とライブストリーミングサイト「DOMMUNE」に不定期出演中。
The霊柩車―日本人の創造力が生んだ傑作 霊柩車と銭湯とフーゾクは、極楽への入り口なんだそうです。 amazon_associate_logo.jpg
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吉田恵輔監督の溢れ出すフェチ感覚!「焼肉を焼く女子の髪の匂いに惹かれる」

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塚本晋也組で長年、照明を担当していた吉田恵輔監督。
「塚本監督には鍛えられましたね。塚本監督はロケハン段階から、すごく厳しい。
その影響で、ボクも現場ではうるさい人間なんです」
 すべての男子が気になって気になって仕方がない存在、それは"女子校生"! 日本映画界期待の新鋭・吉田恵輔監督は、仲里依紗と宮迫博之がW主演した『純喫茶磯辺』(08)、ゆうばりファンタスティック映画祭オフシアター部門グランプリを受賞した『なま夏』(06)、劇場デビュー作『机のなかみ』(07)と、どの作品も見事なほど"女子校生とオジさん"がモチーフになっている。最新作『さんかく』はAKB48の小野恵令奈が初ヒロインを飾った、ちょっと痛い恋愛コメディ。小悪魔的な魅力を振りまく女子中学生・桃(小野恵令奈)に翻弄される30男・百瀬(高岡蒼甫)と桃の姉・佳代(田畑智子)の3人が織りなす恋愛トライアングルストーリーなのだ。"えれぴょん"こと小野恵令奈のピチピチした健康的なお色気には、百瀬ならずとも男なら誰しもバタバタと悶え苦しむはず。エロ目線で女子校生を追いかけつつ、ダメダメな人々の生態をチャーミングに描く天才・吉田監督のユニークなフェティッシュ観を聞きほじったぞ。 ──『なま夏』『机のなかみ』『純喫茶磯辺』、そして新作『さんかく』と、どの作品も傑作コメディですね。自分の才能が怖くなりませんか? 吉田恵輔監督(以下、吉田) まぁ、それは観た人によって印象は違うんじゃないですか(笑)。でも、自分では気に入った作品が作れているなとは思います。人様の評価は分からないけど、まず自分が恥ずかしくないものを作れればいいなと思ってます。この間、『崖の上のポニョ』(08)を撮った宮崎駿監督のドキュメンタリー(『宮崎駿の仕事』)を観ていたら、宮崎監督がまったく同じことを言ってたんです。「とにかく、恥ずかしくないものを作りたい」と。「その通り!」と思いました(笑)。 ──気分は、もう巨匠・宮崎駿と同レベル? 吉田 宮崎監督と言えば、神様みたいな存在だと思ってたんですが、意外とちっちゃいことで悩んでいるし、スタッフに八つ当たりしてる。「あぁ、自分と変わらないなぁ」と思ったんです。
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中学・高校時代はヤンキーだったという吉田監督。
「200万円かけてバイクを改造しました。自分
はカッコいいつもりだったけど、ご近所は
うるさくて大迷惑だったでしょうね」
──巨匠の偉大さではなく、器の小ささに共感した? 吉田 そうです。でも同時に不安にもなりました。自分は小さなことで悩んでいるけど、いつかは解消されるのだろうと思ってたんですが、日本でいちばんの巨匠が小さいことで悩んでいる。あぁ、これはダメだなぁ。悩みは一生付いてくるんだなぁと。 ──宮崎監督と同じように、吉田監督も一貫して少女を撮り続けているという共通項が......。 吉田 いや、ボクは別に狙っているわけじゃないんです。女子校生以外のシナリオもいろいろ書いているんですよ。まだ映画化されてないだけで。でも、なぜか映画化されるのは少女とオジさんの話ばかりなんです(苦笑)。『純喫茶磯辺』の後に違った路線のものを撮る予定だったんですが、映画会社のムービーアイが倒産してしまって、『さんかく』が先に完成したんです。いくつかあった企画の中で、本当は『さんかく』が映画になるかどうかいちばん危ない内容だったんですけどね。 ──下手したら、カン違い野郎の犯罪ストーリーになりかねないストーリー。 吉田 そうそう(笑)。脚本だけ読むと、百瀬はいくらでも変態っぽい気持ち悪いキャラになっていた。けっこう賭けでした。高岡蒼甫くんが百瀬を演じてくれたことで、映画として悪くないぞというものになりましたね。 ──ひとつ屋根の下で暮らすことになった桃に対する百瀬の目線が妙にエロいですよ。 吉田 最初はそんなにエロいものを考えてなかった。もっとコメディコメディしたものになるはずだったんです。でも、小野(恵令奈)ちゃんが妙に肉々しい感じがして、撮るものが変わっていったように思いますね。そのつもりがなくても、何となくそうなってしまった(笑)。
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30歳のダメ男・百瀬(高岡蒼甫)と恋人・
佳代(田畑智子)とその妹・桃(小野恵令奈)
の恋愛トライアングル。笑えるけど、当事者の
立場に立つと「こりゃ、辛いわ~」とシミ
ジミしてしまうディープな人間ドラマでも
あるのだ。(c)2010「さんかく」製作委員会
──風呂上がりの桃の髪の匂いを嗅いだり、足の裏に刺さった画鋲を取ってあげたり、百瀬のフェティッシュさが満載じゃないですか。 吉田 確かにそうですね。なんで、そんなシーンばっかり自分は書いたんだろう? よく分からないですけど(笑)。でも、焼肉屋に行くと、よく女の子が「いやーん、髪の毛が焼肉臭くなっちゃったぁ」なんて自分の髪を嗅ぐ仕草を見ると、「あぁ、オレにも嗅がせてくれれば、ときめくのになぁ」と思っちゃいますね。まぁ、実際には嗅がせてもらいませんけど(笑)。百瀬のやってることは、日頃、自分が考えていることですね。 ──これまでの吉田監督作品の主人公は、監督の分身のようですね。 吉田 まったく、その通りです(笑)。でも百瀬だけじゃなくて、田畑智子さんが演じた桃の姉・佳代も自分の分身ですね。『純喫茶磯辺』で言えば、宮迫さんもそうだし、仲里依紗もボクの分身。2人を振り回す麻生久美子さんの役が今回の場合は小野ちゃんですね。 ──AKB48の小野恵令奈が生き生きとした立ち振る舞い。吉田監督からの"小悪魔"的な演出もあった? 吉田 いや、「今回の桃は、こういうキャラクターに」みたいな演出はほとんどしてないですね。演出したというより、キャラクターに合った女の子を見つけてきたって感じですね。ふだんから、小野ちゃんは生々しい感じがするように感じたんです。あまり芸能人っぽくないというか。仲里依紗のときもそうでしたが、こーゆータイプの女の子はネコと同じで、向こうからエサを食べにくるのをじっと待つみたいな感じですね。 ──あぁ、仲里依紗も小野恵令奈も、キレイなお人形さんタイプじゃなくて、奔放な生命力を感じさせるタイプですね。 吉田 そうなんです。撮影中はそりゃ楽しかったですよ。もう完全に百瀬目線になっていましたから。順撮りで撮影していたんですが、百瀬と佳代が同棲するアパートを桃が去るシーンを撮った後は、監督であるボクがしばらく焦燥感に駆られていましたから(苦笑)。ほんと、桃ちゃんみたいなタイプの子がいたら、ボクはときめくし、でも執着心の強い佳代みたいな女性も「めんどくさいな」と思いつつも、やっぱりいいかもと感じている部分があるわけなんです。 ──めんどくさいんだけど、そこがまたちょっと愛らしいかも、という吉田監督の独特の恋愛観が作品の後半で展開されていきます。 吉田 うん、何故かよく当たるんですよ、そーゆー女性に(笑)。なんか、プライベートで面倒くさい女の子、仲間うちの評判の良くない女の子と付き合ってしまうんですよ。どうもダメな人が寄ってきてしまう。ボクも相当ハズレだと思うんですけど、ハズレ同士でクジを引き合ってしまうんですかね(笑)。
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田舎で暮らす中学3年生の桃(小野恵令奈)
は、姉・佳代が恋人・百瀬と同棲する
東京のアパートでひと夏過ごすことに。
桃の放つフレッシュなお色気がたまらんです。
──噂の女の子と付き合ってみて、「あれ、噂とは違うじゃん」みたいな意外な一面に惹かれる? 吉田 いやー、「やっぱり噂通りだ、いや噂以上だな」ということが多いですね(笑)。でも、それさえも、愛おしく感じる時期があって、次第に「うーん、やっぱり無理!」となってしまう(苦笑)。多分、元カノがボクの映画を観たら「あっ、これって私のことじゃん」と思うでしょうね。名前も使ったりしています。まぁ、映画に出てくるキャラクターは何人かの集合体なんですけどね。 ──『純喫茶磯辺』は宝くじが当たって店を開いたけど、あっという間に潰れてしまった実在のカフェのエピソードがベースだそうですね。『さんかく』も現実のエピソードが織り交ぜてある? 吉田 えぇ、さすがに付き合っている彼女の妹に手を出したことはないですけど、彼女の女友達に興味が向いてしまうなんてことはありますよね。そういうボク自身の実体験がベースですかね。彼女がいるのに、女友達に気持ちが行くなんてサイテーなヤツですよね。まぁ、今はもうボクも大人になりましたから(笑)。そういう自分自身に対する反省の気持ちを込めて撮った作品なんです。 ──どーゆー反省の仕方なんですか(笑)。 吉田 ははは。なんかボクの周りって、ネタになる知り合いが多いんです。佳代がマルチ商法の健康食品にハマるのも、友達の実話ですね。台所に健康食品がどんどん山積みになっていくんですよ、誰も買わないから。その光景がとても切なくて、「いつか映画にしよう」と考えていたんです。佳代が別れた百瀬に追いすがって待ち伏せ行為をしてしまうのも友人の話。携帯電話の番号を変えて連絡のとれなくなった元カノのことを心配して、アパートの前で待っているんですよ。ボクもそれに付き合ってるわけです(笑)。傍から見れば立派なストーカーなんですが、本人は純真そのもので連絡が取れなくなったことを本気で心配してるんです。そーゆー思い込みの激しい友人が多いんです。面白いなと思ったことはメモしてます。ネタ帳のストックがすごくたくさんありますよ。ネタ帳を開いて、「あっ、これ今度のシナリオに使えるな」とかやってます。 ──悲劇と喜劇が同時に存在する、吉田監督ならではの世界。 吉田 どうでしょう? 自分では作品のスタイルとか気にしてないんです。でも、観た人によって印象が違うのって好きですね。同じシーンを観て、泣く人もいれば大笑いしてる人もいるみたいな作品は面白いなと思います。今回の『さんかく』も、モデルになった人たちは自分のイヤな部分を見せつけられるみたいで落ち込むかもしれませんけど、その一方では「超ウケる~!」って大笑いする人もいるでしょうね。 ──ちなみに少年時代の吉田監督は、どんな子だったんですか? 吉田 すごいフツーの子ですよ。と、自分では思ってたんですが、最近になって周囲に言われて、どうもそうじゃないことが判明しました(笑)。社宅に住んでて自分では友達がいっぱいいたつもりだったんですが、実はボクと一緒に遊ぶ子がいなかったんで、姉が「うちの弟とも遊んであげて」と頼んでいたらしい(苦笑)。友達がいっぱいいたつもりだったけど、みんな姉と遊びたくて集まっていたんです。「えっ、実はオレ、嫌われていたの?」って最近になって気づいたんです。そういえば、小学校でもクラスのみんなは休み時間にいつも全員でサッカーやってたんですが、自分だけひとり遊びに夢中になって6年間を過ごしてたんです。自分ではすごくフツーのつもりだったんですけどね。 ──誰の視点で見るかで、まるで世界が変わってくる。まさに吉田監督作品そのものですね。さて、"期待の星"吉田監督は今後、どのような道を進むんでしょうか? 吉田 何でもいいんですけどねー。面白ければ、何でもいい。自分に恥ずかしくない作品を作れればね。宮崎駿監督みたいな巨匠にはなれませんよ。宮崎監督のドキュメンタリーを観たばかりなんで、100m走の世界記録保持者ボルトの走りっぷりを見せられたようなもんです。世界は無理。国内でとりあえず、がんばりま~す。  と、謙遜しまくる吉田監督。ちなみに吉田監督はスタンリー・キューブリック監督の『ロリータ』(62)、キム・ギドク監督の『弓』(05)といった"少女とオジさん"の作品が好きらしい。『ロリータ』が公開されたのはキューブリック34歳のとき、『弓』はキム・ギドク45歳のとき。吉田監督は現在35歳。吉田監督がこれからどんな傑作を残していくのか、楽しみではないか。6月26日公開の『さんかく』も"巨匠"への片鱗ぶりが充分に堪能できる超傑作ですぞ。 (取材・文=長野辰次) 『さんかく』 監督・脚本・照明/吉田恵輔 出演/高岡蒼甫、小野恵令奈、田畑智子、矢沢心、大島優子、太賀、大堀雅秋 配給/日活 6月26日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋テアトルダイヤほか全国順次公開 <http://www.sankaku-movie.com> ●よしだ・けいすけ 1975年埼玉県出身。東京ビジュアルアーツ在学中から塚本晋也監督の製作現場に参加し、『バレット・バレエ』(99)、『六月の蛇』(02)、『悪夢探偵』(07)などの照明を担当する。自主製作作品『なま夏』(06)はゆうばりファンタスティック映画祭オフシアター部門でグランプリ受賞。『机のなかみ』(07)で劇場デビュー。『純喫茶磯辺』(08)に主演した仲里依紗にヨコハマ映画祭最優秀新人賞、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞をもたらした。深夜ドラマ『BUNGO 日本文学シネマ』(TBS系)では梶井基次郎原作『檸檬』の演出を担当。
純喫茶磯辺 愛しきダメ親子。 amazon_associate_logo.jpg
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「いいものを出せば必ず返ってくる」【チャン・リーメイ】100%のプロレス・マインド

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──元祖フリーアイドルで声優のルンルンこと宍戸留美さんが、自らカメラマンとして可愛い声優さんたちの写真を撮り、さらにアイドルライターの私(小明)がインタビューする不思議な連載の3回目です! ニーハオです! 小明です! 今日はチャン・リーメイさんにお会いするんで、久しぶりに中国語の練習をしちゃいましたよ。 チャン 小明さんは中国語、できますか? ──だいたい中1で習う英語くらいのレベルですかね......。 チャン じゃあ、私よりできるか同じくらい(笑)。母が日本人で、父が台湾人なんですけど、今、(中国語を)勉強中なんですよ。私が一番得意なのは片言なので。ワタシハ、ニホンハジメテデ......。 ──おお! 本物っぽい!! 以前は「豊原里美」っていうお名前で活躍されてましたけど、どうして中国の芸名に変えたんでしょうか? チャン よく知ってますね(笑)。どっちも本名なんですよ。当時は、その事務所の社長と相談して「豊原里美......ちょっとパンチがないよね」「私、いいの(名前)持ってますよ!」って(笑)。字数を見て、チャンとリーメイの間に「・」を入れれば大丈夫だってことで。 ──モーニング娘。の「。」みたいな。字数って関係ありましたか? shishido_mato02.jpg チャン ありました! チャン・リーメイに変えてから、すぐに声優の仕事が決まりましたもん! それから声優の仕事は全部チャン・リーメイでやってます。 ──すごい! 私、字数占いとかやるといつも「凶」ですよ! 改名される前はグラビア活動やタレント活動が主で、声優さんはされてなかったですよね。どういうきっかけで声優業界に? チャン もっと芝居をガッツリやりたいっていうのがあって。もともと私は舞台をやっていて、いつも活動の根底には舞台があるんです。声優のお仕事を始めたきっかけも、小劇場に出ていたときに、ちょうど得意分野の片言の女子アナ役をやっていたんです。そしたら、観に来たお客様から「片言の中国人の女の子の役があるんですけど、オーディションを受けてくれませんか?」って。その人、セッテイング会社の人だったんですよね。 ──え!! 客席から!? どこにチャンスが落ちているかわからないですね! チャン ホントですよ! それで受かったのが『家庭教師ヒットマン REBORN!』なんですよ。 ──イーピン役はそういう風に決まったんですね、すごい! ところで、チャンさんのブログって、基本お仕事のことや美味しいもの、綺麗なお花の写真が載っていたり、すごく清涼感あふれる感じなんですけど、その中にちょいちょいプロレスに対する熱い記事が出てきますよね。 チャン ちょいちょいプロレス(笑)。どっち側に行ったらいいのか分からない感じ、いいでしょ(笑)。私の舞台にもプロレスラーさんが普通に観に来るっていう。 ──すごい交友関係ですよね。「SMASH」の大原はじめさんが普通に観に来ててビビリました。 チャン 私も試合の日は、翌日に仕事がなければ声が枯れるまで応援してます! ──チャン・リーメイが客席で応援してたら、外見も声もえらい目立ってしまうんじゃ......。 チャン 目立つみたいです。プロレスラーさんってご自分で物販をやられてたりするから、だんだん仲良くなれてくるんですよ(笑)。面白い人がいると、やっぱり仲良くなりたいですよね。 ──私は「西口プロレス」くらいしか知らないんですけど、確かに面白い人が多いです(違う)。 チャン ですよね! 切れますよね、頭が! ホント賢いと思います。私、女優になっていなかったらデスマッチの女子プロレスラーになっていたと思います。私、女子プロレスを観たときに、「私、なっていたかも......」って思ったんですよ。 ──えっ!? なんでまた! shishido_mato03.jpg チャン うん。もし、女優になっていなくて、大学に普通に通っていて、「私はなんのために生きているんだろう」って思っている時に試合を観ていたら、多分なっていた。......でも、私は今女優だからそんな甘っちょろいこと言えるんですけど、プロレスラーの方は、毎日血反吐を吐くような下積み時代がありますから、耐えられるかどうか分からないですけど......(深刻に)。 ──めちゃくちゃちゃんと考えている! レスラーさんは本当に大変ですよね、すごい人気の選手でも全然食べられなかった話とか聞きますし。ブログにも「プロレスラーの方々を見ていると、私もこういう役者になりたい、と強く思います」って書かれていましたね。プロレスラーのような女優って、どのような......? チャン そうですね、人気商売ですし、プロレスラーの人って自分をプロデュースするんですよ。キャラクターを自分で毎日必死で考えて......どんな人でも、そうじゃないといけないと思うんですよね。それがデフォルメされているのがプロレス、みたいな。 ──深い!! そんなチャンさん宅には覆面レスラーのウルティモ・ドラゴンのサインが家宝として飾られているとか。 チャン アハハ、そうです、そうです。日本刀とかもありますよ。 ──何故!? さらに『魁! 男塾』を愛読していたりとか、渋いです! チャン あはは。読んでます。だから、日本刀の横に『魁! 男塾』が全部並んでて。 ──と、とんでもないお部屋ですね! 私、てっきりお花とかが飾られているのかと......。 チャン あはは、お花もありますよ。あとキティちゃんがすごく好きなんで、バラバラですね(笑)。それで、『魁!! 男塾』(集英社)の横には『伝染るんです。』(小学館)があって。 ──吉田戦車さん! チャン 大好きでー。あれは傑作ですよ! あと、『自虐の詩』(光文社)がある。 ──業田良家さんの! 泣きますよね、あれ。あんなに泣ける四コマはないです。感情移入とかしますか? チャン 感情移入? 『伝染るんです。』に? ──かわうそに感情移入は難しいでしょ! 『自虐の詩』は主人公が「私は私が嫌いよ!」っていう暗い描写が多いじゃないですか。 チャン 泣きますね......。 ──ツイッターにも、「学生時代に瀬戸内寂聴さんと山田詠美さんに救われた」って書いていて。また極端だな、と思いながら読んでいたんですけれど。 チャン あはははは! 高校生の時はもっとストイックな人だったので、もうホントに、「私は孤独だ!」みたいな。 ──お友達があんまりいなかったんですか? チャン お友達はいっぱいいたんですけど、そんな中でも、なんかこう孤独感があって。 ──趣味が合わなかったとか? チャン 趣味は合わなくても、友達ってなんとかなるじゃないですか。その下にある根本的な繋がりみたいなものがあれば。そういう友達はたくさんいたんですけど、やっぱり高校生の時って、それですら頼れないときってあるじゃないですか。 ──あ、ちょっと分かります。 チャン ネ。そうだったので、いっぱい本を読んでいたんですよ。学校の勉強は一切しなかったんですけど、山田詠美さんの本はすっごい読んでましたね。一度お会いしたいなぁ。寂聴さんも面白くって好きですよ。 shishido_mato17.jpg ──孤独な学生時代から、今の明るいチャン・リーメイになれたきっかけってありますか? チャン 出会いですね、人との。それまでに出会った人たちに恵まれてましたね、私は。「ああ、こういう風に生きればいいんだ」とか。なんか、表現していると空っぽになっちゃうときってあるじゃないですか。「なんのためにやっているんだろう」とか、「これをやるために生まれてきているのかな」とか、誰でも思うときがあると思うんですけど、やっぱり、「あ、私は人を元気にするためにやってるんだ!」っていうのが、どっかーん!! ってきたんですよ。ここ1、2年で。 ──けっこう最近じゃないですか! チャン アッハッハッ だから楽になりましたね。 ──迷路から抜けたんですね! じゃあ、今は悩みを持ったり、不安になることはもうあんまり無いんでしょうか? チャン ありますよ。「お客さん入るかなー?」とか。 ──客入り! えらい具体的ですな。 チャン アハハ。基本的に悩まないです。「何とかしてもらえる」っていうのがあるので、「これやりたい」っていうのがあったら、だいたい半年か1年後くらいにはできるじゃないですか。 ──ほ......ほう? チャン できますよね? 今まで、実際そうなってきたから、大丈夫なんだろうなって。 宍戸 こないだ、「ワンマンライブやる」って、曲が1曲もないの言い出して、それでマネジャーもみんなもすっごいびっくりして(笑)。 チャン そう、そしたらワ~って人が集まってきて、ぜんぜん引っ張ってってもらえたんですよ。 ──すごい! 私はだいたい口に出す前に不安を覚えてしまい込みます。 チャン そうそう、やるって言っちゃうとね、不安を覚えちゃうから、「悩む暇があったらなんかいろいろやったほうが早い」っていうのを、村上龍さんと中田英寿さんの対談で言っていて、「あ、そーだなー」と思ったんです。 ──おお。ぐるぐる悩んで結局行動しない派には痛いほどの正論......。 チャン 経験談なんですけど、いいものを出しいてると、いいものが返ってくるっていうのは当たり前なんですけど、みんなそれを信用できてないと思うんですよね。だから、「いいもの出しすぎたら返ってこないんじゃないか」と思っちゃったりとか。 ──利用されるだけされて痛い目見るんじゃ......とか思います。 チャン そうそう。でも、いいもの出したら返ってくるって信頼して、100%信頼して出すと、必ずいいものだけが"バッ!"と返ってくるんですよね。 ──なるほどー、なんだか自分の心の汚れ方が分かりました......。チャンさんは今後の活動での目標はありますか? チャン 『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出るっていうのがとりあえずの目標です! ──おお~!! あの『徹子の部屋』に!!  チャン 言えば叶いますからねっ。 ──申し訳ないくらいに、徹子さんとツテがありません! まずは『マツコの部屋』(フジテレビ系)とかじゃダメですか? チャン え? マツコの......部屋? なんですか? ──いや、なんでもないです! 応援してます! ありがとうございましたー! (撮影=宍戸留美/取材・構成=小明) shishido_mato04.jpg ●ちゃん・りーめい Love&Light所属 テレビアニメ『家庭教師ヒットマンリボーン』、『遊戯王5D's』、BS朝日ドラマ『CLUB104』レギュラー出演中。舞台、声優、ライブと活躍の場を広げている。 7月2日(金)60~70年代のアメリカンPOPSを独自の世界観でカヴァーするバンド「MATOMANIA」のボーカルとして南青山曼荼羅に出演。 時間/19:30~ 料金/4,000円 曼荼羅HPhttp://www.mandala.gr.jp/aoyama.html 8月16日~新宿シアターサンモールにて舞台『SHUFFLE』にも出演。 ●ししど・るみ 1973年福岡生まれ。フランス語歌詞タイトル(フェール ラムール)「faire l' amour」を発表後、昨年、パリでのライブツアーも成功させる。同曲が今年秋公開の映画『死刑台のエレベーター』挿入歌に決定!!先日「宍戸留美デビュー20周年記念スペシャルライブを開催!」 Ustream にて生中継~アクセス数世界1位にランクイン! ライブ情報 「宍戸留美★ひとりひとりにサリュー~3ヶ月ワンマンライブ~」 7月14日(水) 下北沢 風知空知 http://www.fu-chi-ku-chi.jp/node/196 ★特別企画!! USBをお持ち頂いたご来場者さまに毎月1曲プレゼント!! START/21:00 前売/¥3,000+1D 予約方法 風知空知電話予約 03-5433-2191(17時~26時) 詳細は→http://ameblo.jp/sundaliru/ ●あかり 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/
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老人が若者の未来を奪う!? 『嫌韓流』の山野車輪が『若者奴隷時代』で唱える新たな対立軸

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衝撃の問題作を発表した山野車輪氏。
 「横暴かつ傲慢な新老人・暴走老人という害悪」「モンスター・シルバーの出現」「ジジババを殺らなきゃオレたちはこのままなのか!?」──ショッキングな見出しが躍るブ厚い漫画本。表紙には、憎々しげな表情の高齢者と、奴隷のように鎖でつながれた若い男女。漫画家・山野車輪が描いた『「若者奴隷」時代』(晋遊舎)が話題になっている。  山野車輪と言えば、社会問題にまでなった『マンガ嫌韓流』(同)の作者。日韓問題について韓国を激しく批判的に描いて話題になり、当の韓国でも大手メディアが大々的に報じ、ネット上では作品に基づく論戦が連日激しく繰り返された。  そんな山野氏が今回テーマに挙げたのは、保守対リベラルによる左右対立ならぬ、高齢者と若者世代による「上下対立」だ。日本では手厚すぎる高齢者福祉の弊害で現役世代が苦しめられているとし、昨今耳にする「格差社会」の正体が、実は高齢者と若者の間にある「世代間格差」であると説いているのだ。  しかしながら、老人福祉については今後益々公費を投入して制度の充実化を図らなければならないというのが、どちらかと言えば一般的な社会認識。『「若者奴隷」時代』は時代に逆行した暴論なのか? 今なぜこのテーマなのか? 作者の山野氏に聞いた。 ──そもそもこの本を書こうと考えたきっかけは。 山野車輪氏(以下、山野) もともとは一般的な「格差社会」について描こうと、雇用情勢や賃金などの日本の労働市場の実態について調べていたんです。調べるうちに、現役世代が苦しんでいる一方で、高齢者が手厚く守られすぎている構図が見えてきた。若者の厳しい現状など関係なく、高齢者は年金を受け取り、人生を謳歌している。その実態に非常に違和感があったんですね。実は「格差」とは富裕層と貧困層ではなく、世代間にこそ存在するのだと。 ──そういうことを言うと「年寄りを批判するのはけしからん」という声がきませんか? 山野 これまで若者論は多く語られてきましたが、高齢者についてはほとんど正面から論じられてきませんでした。今や5人に一人が高齢者であるにも関わらず、です。あっても「お年寄りは弱者」とステレオタイプに決めつける歪んだ認識ばかりです。しかし、高齢者優遇と若者冷遇を続けてきた結果、若者は家庭を持つという人並みの幸せさえも享受できない時代になってしまった。明らかに「若者奴隷」の時代なんです。そのことに多くの国民は気づいていない。 ──「高齢者福祉の否定だ」という批判意見に対しては? 山野 高齢者は「弱者」だからとにかく否定してはいけない、否定すると即高齢者差別である、とする風潮は非常に問題があると思います。現在の高齢者を時代の中での大きな塊として冷静に見ると、若者や未来の子どもたち世代と比較して裕福な世代であると言わざるを得ない。他の世代の富をむさぼって長生きができている。一方で若者や将来世代は上の世代から富を奪われるばかりで、他の世代からの所得移転もない。現在も、おそらく将来的にも福祉の恩恵にあずかれないでしょう。こうした制度で本当にいいのかということを、全世代で議論すべきときにきています。 若者は、上の世代から世代間闘争を仕掛けられている以上、争いを避けるのではなく、露払いをすべきなのです。 ──昨年の夏にホリエモンこと堀江貴文氏が、「若者を捨てない政治」の方法論として、年金に代わる新しい社会福祉制度「ベーシックインカム(最低限所得保障)」の導入を唱えました。これは、年金制度を廃止して公務員をなくし、そのお金ですべての国民に8万円前後の一定金額を給付するというものです。 山野 僕は一つの考え方だと思います。一人あたり支給額8万円はともかく、5万円としても、日本人の人口1億2,000万人として60兆円の財源があれば可能です。現在、年金制度に47兆円、公務員の人件費に30兆円が使われていますから、公務員の賃金を半分に減らして15兆円浮かせば、それだけで62兆円捻出できます。もちろん机上の計算ですが、「とても無理!」という話ではないわけです。最低限の安心は確保しつつ、より豊かな生活を営みたければ働けばいいという考え方ですね。 ──『若者奴隷時代』の反響はどうでしょう。賛否どちらが多いですか。 山野 実感としては真っ二つに割れている感じです。若い層からも「年寄りを批判するとはけしからん」という批判がきますし。「まずは自分の親を撲殺してから言え」なんていう過激な批判もありました。 ──読売テレビの『たかじんのそこまで言って委員会』では講師として出演されたそうですが。 山野 収録中、緊張しすぎてずっと地に足つきませんでした(笑)。私はテレビに出演したことがないどころか、人前で公演をしたことすらなかったんです。そんな私が、関東圏以外全国放送の超優良視聴率番組で、講師として話さなければならないというトンデモな話なんですよ。最初はテレビ慣れするために、コメンテーターの一人とか、地方の番組とかの慣らし運転でもできればよかったんですけど......。無茶と言えば無茶な話なんですが、逃げずにやらなければと思い、出演してみました。パネラーの皆さんは予想に反して優しかったですよ。 ──率直に申し上げて、よくこの企画が通りましたね(笑)。取次店がよくウンと言ったなと......。 山野 版元は「こんなの売れない」と、全然乗り気じゃなかったです。部数もそうとう絞られました。他に高齢者批判本がないので、出版データがないんですね。しかも、高齢者批判は日本人のメンタリティに反しますし、若者層もいずれは自分が高齢者になるから批判しづらい。批判すると即、「差別者」のレッテルを貼られる。だから売れないだろうと。 ──今、高齢者層に対して仰りたいことはありますか。 山野 自分たちのことは自分たちでがんばってほしい。「年をとったら若い者が面倒見てくれる」と甘えてばかりでなく、自己責任でやってもらいたいですね。そして、未来ある子孫の幸せを多少なりとも考えてほしい。それが率直な思いです。 (文=浮島さとし) ※山野氏が『若者奴隷時代』について語っている動画はこちらで見ることができます。 <http://www.ustream.tv/recorded/6403745?lang=ja_JP>
「若者奴隷」時代 "若肉老食(パラサイトシルバー)"社会の到来 老子もあの世でびっくりです。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「よしりんと戦争勃発!」佐藤優ロングインタビュー(前編) 「よしりんと戦争勃発!」佐藤優ロングインタビュー(後編) 「小林よしのり vs 佐藤優」──論争ではなく"戦争"が勃発!?

「マンガを正当なビジネスにしたい」マンガ家・佐藤秀峰 爆弾発言の裏にある思い(後編)

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前編はこちら ――マンガの新たな表現の場を求めて、立ち上げられた『漫画 on Web』について、改めて説明をお願いします。立ち上げたきっかけを教えてください。 佐藤 紙媒体が斜陽化していて、次のメディアを考えたのがきっかけです。自分でサイトを作るのは、金も労力もかかるのですごく面倒で、誰かに作って欲しかったんですけど、誰も作ってくれないんですよね。出版社が動いてくれたら楽だったのに全然動かないから、結局自分で作りました。 ――出版社が作っても莫大なマージンを取りそうですよね。現在アクセス数は1日どの程度でしょう? 佐藤 詳細は言えませんが、アクセスは1日数千。日刊サイゾーで取り上げられて、「Yahoo!トップニュース」になった時で数万ですね。収支は、赤字ではないんですが、平均でランニングコストとサイト用のスタッフ1人の人件費を払って利益が多少出る程度ですね。売り上げも月に数十万円。100万円はいかないですね。昨年9月の有料サービスを開始して、最初は一気にポイント(マンガの閲覧はポイント制で300ポイント315円から)を買ってくれて、初日は10万円売り上げたんですが、そのまま100万円まで行くかと思ったら、落ち着いちゃいましたね。 ――サイトには読者の掲示板もありますが、読者の反応はいかがですか? 佐藤 「意外と読める」という人もいれば、「紙の方がいい」という人も。デジタルになって初めて僕のマンガを読んだ方もいて、年配の方から「マンガコーナーに行って自分がマンガを選んでいる姿が恥ずかしい。それがパソコンだと誰にも探すところを見られなくて30年ぶりにマンガ読んだ」という意見もありました。僕自身はネットで読むことに抵抗はなくて、机の前にパソコンモニターがあって、一日中、メールや資料をパソコンで見ながら作品を描いているので、不便じゃない。でも、マンガを読むためだけにパソコン立ち上げると考えると面倒かもしれませんね。 ――『漫画 on Web』には、『ダービージョッキー』『日本沈没』のマンガ家・一色登希彦、『森繁ダイナミック』のマンガ家・桃吐マキルさんも参加されています。出展者はDEBUTコースなら月額5,250円のみと低料金ですね。 佐藤 システムは正直にやっています。出展するマンガ家さんからは売り上げの手数料は1円ももらってないし、掲載は審査もしていないので誰でもOK。誰でも自由に登録して使ってくださいという形式で、小説も写真集も出展可能です。1話あたりの値段や、読者が閲覧できる期間は、作家さんが自由に決められて、1回購入で最大366日閲覧可能。僕の作品は366日ですね。『ブラックジャックによろしく』は旧作は1話10円。マンガは1冊10話としたら、1冊100円で妥当な値段かと。新作は1話30円で1冊分に相当する10話買うと300円。紙の本より安くないと意味がないし、BOOK OFFと同じ値段じゃないと競合しない。出展はこちらから営業は一切していないので、興味を持ってくれた方に自由に使ってもらえる魅力的なシステムにしたいですね。 ――『漫画 on Web』では、佐藤先生のアシスタントも作品を発表されていますね。テーマを基にネームの出来を競う"ネーム対決"を行っています。 佐藤 アシスタントにはプロになって欲しい。マンガ家は一代限りの才能なので、僕の才能がなくなったら会社も潰れ、みんな雇えなくなってしまう。長く面倒は見られないので、アシスタントには最長3年で辞めてもらうという契約にしています。プロになって辞めてくれるのが一番ですが、3年やって才能の芽が出なければ、若いうちに田舎に帰るのもいいんじゃないかと思うし。 ――佐藤先生のアシスタントからプロになった方もいらっしゃるんでしょうか? 佐藤 去年は5人辞めて、4人連載を持っています。吉田貴司は「モーニング・ツー」(講談社)で『フィンランド・サガ(性)』を、梅澤功二朗は「ヤングジャンプ」(集英社)で『ヤナガオート』を連載中。白鳥貴久は「ヤングキング」(少年画報社)で『タイガーズ』連載して、携帯コミックでも活躍。まぁびんこと藤井五成は「月刊スピリッツ」(小学館)で『DRAGON JAM』が始まりました。こんなにアシスタントがマンガ家になっているのは日本でウチだけだと思います。 ――それは佐藤先生に若手を育成するメソッドがあるのでは? satoshuho_sashikae.jpg 佐藤 才能を拘束しないで、ある程度のお金とゆとりを与えることですかね。週5日、1日12時間拘束で働いてもらいますが、年に2~3カ月有給休暇がある。その間も給料払うけど、「しっかり自分の作品描いてね」と言っています。ボーナスも4カ月分出してます。 ――そんな好待遇を記事にしたら、アシスタント応募殺到しますよ(笑)。佐藤先生にとってマンガ家のプロになる条件は? 佐藤 描くことだけ。雑誌に載ってる人は、描いてる人ですよ。描かないで載る人は一人もいない。マンガ家になれたのは、いっぱい描いた人だけです。なれなかった人は途中で描くの辞めますからね。プロになるまで描いたからなれた。ちゃんと考えながら1,000枚原稿描けば絶対なれますよ。その前にみんな諦めちゃうだけ。 ●改めて問う、佐藤秀峰にとってマンガを描くことの意味とは? ――では、改めてお伺いします。佐藤先生にとってマンガとは何でしょうか? 佐藤 「マンガとは?」ってあんまり聞かれないですよ......(長い沈黙)。マンガはなくてもいいものだと思うんです。マンガのない国もいっぱいあるし、マンガを読まなくても日常過ごしている日本人もいっぱいいる。描くのは好きだけど、ほかのマンガはまったく読まないし、斜に構えてる感じじゃなくて、あってもなくてもいいものだと思う。でも、なんであるか分からない......改めて聞かれるとマンガってなんだろう......(さらに長い沈黙)。実は、仕事してることに罪悪感もあるんですよ。例えば、『ブラックジャックによろしく』でテーマにしている医者だったら、医療がない時代も人は生きて繁殖して、人類は続いてきた。だから「医者ってどこまで必要なのかな?」と考えると分からなくなってしまう。長生きしたいし、病気で苦しんで、治療して楽になったらありがたい存在だけど、自分が医者だったら、結局病気の人からお金を吸い上げて生きている気持ちになる。マンガってなくてもいいものだと思うし、無駄な出費を誰かにさせて暮らしているわけで、無駄なものにお金を使わせている。これを続けてどういう意味があるんだろうと思うこともあります。 ――医者の話は極論だとしても、人は無駄なものに対価を払いませんよ。先生の作品に「本当に救われた」「感動した」という読者の声も届くのでは? 佐藤 感動してくれればうれしいですけど、その人のために描いてないですからね。その人に会ったことないし、その人の顔を思い浮かべて描いたわけじゃないから。「この仕事は何なんだろう」と思いますね。 ――では、誰のために描いてるんですか? 佐藤 当然自分のためだと思います。生活のため、表現欲を満たすため。そのために誰かに何かを伝える言葉だから相手が必要。 ――例えばスティーブン・キングは「すべての小説を夫人に向けて書いている」と聞いたことがあります。また、伊集院光は深夜ラジオで「中2の自分に向かって話している」と語っていました。佐藤先生にとっての想定読者は? 佐藤 自問自答している感じ。でも、自分の作品も基本的には読み返さない。描いていて、整合性取るためには読むけど、それ以外は読まないですね。 ●作品発表は『漫画 on Web』へ 『ブラよろ』の結末は...... ――今後は、『漫画 on Web』メインで、今後は完全に"脱・出版社"の方向で、大手出版社の仕事は受けないつもりなのですか? 佐藤 印税に頼るのはギャンブルなので、制作費をカバーできる正当な原稿料をもらえれば出版社でも描くし、もらえなければやらない。ビジネスパートナーになってくれるのであれば、仕事をするだけです。今の状況では、『漫画 on Web』が一次使用で、それを「原稿料払うので雑誌に載せたい」という話があれば二次使用としてはいいかなと思う。契約の仕方ですね。発表の形態もiPadには期待を寄せているので、今後、7月中を目途に『漫画 on Web』をiPadに対応させてから、その次に翻訳して、海外版もできればと考えています。 ――次回作は、「週刊マンガTIMES」(芳文社)に掲載されて休載中の『特攻の島』ですか? 佐藤 『特攻の島』は途中なので、そこまでは雑誌でやります。『新ブラックジャックによろしく』が終わったら、一カ月程度休んでからやろうと思ってます。掲載期間は、1年から2年ですね。その次の作品もネームはできているので描きたいんですけど。さすがにそれはまだ詳しいことは言えないです。常に描きたいことはいっぱいあるけど、形にするのに苦労します。描きたいことを出し切るには、かなりの時間が必要で、描きたいことがなくなるということは今のところない。 ――描いてみたいテーマはありますか? 佐藤 ジャンルで描きたいものはないんですよ。だから編集者が提案してきたものを受け入れちゃうんですよ。どんな食材を持ってきても、おいしく料理できますよって感じ。マグロしか扱えないとかそういう風になりたくない。どうせ僕が描くと泥臭い感じになるんで。でも、泥臭い風にしかならないけど、なんでもできます、となりたいかな。 ――一色登希彦さんのマンガ家としての半生をマンガにするという企画がお二人のTwitterでのやりとりから始まって、その基となる一色さんへのインタビューをUSTREAMで配信されました。 佐藤 一色さんとのマンガは、『漫画 on Web』ですぐにやりたいと思ってます。取材があまり必要じゃない自分の知ってる世界を書けたらいいなと思ったけど、話を聞いたら意外と大変で......。おそらく「表現者とは何か?」という話になる予定です。 ――では最後に、残り2回となった『新ブラックジャックによろしく』はどのような幕引きとなるのでしょうか? 佐藤 最後回のために取材してきた題材があるので、それを描こうと思っています。医療マンガもまだ描こうと思えば描けます。愛情を持って描いてきたので、寂しい気持ちもありますね......。最終回は"マンガでは誰も描いたことがない終わり方"になると思います。 * * *  佐藤先生の日記での告白に、「激怒」「マジギレ」「暴露」......そんな見出しを付けてきた我々だが、直接生で聞いた先生の声は穏やかで冷静、しかしながらマンガへの強い信念が随所にほとばしっていた。「マンガとは?」という質問に、言葉を選び、熟慮して答えていただいたその様は『ブラックジャックによろしく』の自問自答する主人公・斉藤英二郎そのもの。たゆたう心情をありのままに表現するその姿勢こそが、作品にリアリティを生んでいるように思われた。大手出版社への挑戦状とも言える『漫画 on Web』の未来と、掲載誌を変え、8年にわたって連載されてきた『ブラックジャックによろしく』の"誰も描いたことがない"着地点に期待したい。 (取材・文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>) ●佐藤秀峰(さとう・しゅうほう) 1973年12月8日生まれ。大学在学中よりマンガ家を志し、福本伸行、高橋ツトムのアシスタントを経て、1998年「ヤングサンデー」に掲載の『おめでとォ!』でデビュー。同年開始の『海猿』はNHK BSハイビジョンでTOKIO・国分太一でドラマ化され、さらに伊藤英明主演で映画化、フジテレビ系でドラマ化、今年9月18日には3作目の映画公開も控える。また、02年、「モーニング」に『ブラックジャックによろしく』を連載、03年に妻夫木聡主演でTBS系でドラマ化。単行本1~13巻の累計発行部数は1000万部を突破。07年、「ビッグコミックスピリッツ」に移籍し、『新ブラックジャックによろしく』と改題。09年、オンラインコミックサイト『漫画 on Web』(http://mangaonweb.com/)を立ち上げ、マンガの新天地を模索している。
新ブラックジャックによろしく 8 「世界を変えるのはいつでもたった一人の情熱だ」(Amazonより引用) amazon_associate_logo.jpg
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