「二十年経ってやっと自分の写真になった」 森山大道が見た東南アジア

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「次はメキシコシティを撮りたい」と語る森山氏。御年72歳とはとても思えない。
「僕は街頭スナップ写真家だから」  写真家・森山大道氏は、自身のことをそう呼ぶ。モノクロでコントラストが強く、ギラっと締まった印象的な黒。粒子の粗さ、躍動感、ダイナミックな構図。犬、子ども、人、野菜、動物、商店......。街のあらゆる存在が森山氏の撮影対象となり、一枚一枚の写真から街の呼吸が伝わってくる。世界中の街を歩き回り、その姿をカメラに収めてきた森山氏。今回上梓した写真集『THE TROPICS』は、自身が二十数年前に撮影した、タイ・ベトナム・ラオスなど東南アジアの写真をまとめた一冊。なぜ、当時の写真をこの時期に本にまとめたのか。写真集出版の経緯と併せて、森山氏の街の歩き方について、写真についてお話を伺った。 ──まずは、写真を撮影された当時のお話をお伺いしたく。なぜ東南アジアに行かれることになったのでしょう? 森山大道氏(以下、森山) 最初は、僕の写真学校の教え子だった写真家の瀬戸正人くんという人がいて。彼はタイ生まれということもあって、よくタイに行っていて、その話を聞いていたんです。本の後書きにも書いたんだけど、当時の僕は北方思考を持っていて、何かと北に行きがちだった。だけど、瀬戸くんからの話を聞いて、南の方にも少しだけ惹かれる思いがあって、まずは行きたいという気持ちが湧いてきたんですね。僕は暑いところが好きじゃなかったんだけど(笑)。撮りたいというよりも、行きたいと。 ──東南アジアに降り立った時の印象はどうでしたか? 森山 まあ、当然のように面白かったわけ(笑)。何が面白かったかというと、常に僕が興味あるのは「人間が渾然といる場所」。街を歩いていると、子どもがゴロゴロたくさんいて、犬も猫もごちゃごちゃいる、人もいる生活もある。その雑多にいろいろなものが混在している感じが面白くなっちゃったの。もちろん街を歩くときにはカメラを持って撮影していたけれど、積極的に撮って本を出そうとは思っていなかった。でも、歩けば歩くほど面白くなっちゃって、たくさん撮ってしまった。最初にタイに行った後も、瀬戸くんに案内してもらってタイやラオス、ベトナムにも行って、結構撮りました。だけど、写真集を作るとか、自分の表現として発表しようとは思えなかった。 ──撮りたいけど本にはしたくないと。なぜそう思われたのでしょう? daidomoriyama02.jpg 森山 変な話だけどさ、面白い写真が撮れ過ぎるの(笑)。それは妙な感じで、自分の身体にきちんと入っていないっていうのかな。あの当時はまだ面白いとか珍しいとか、そういう気分で撮っていたから自分の撮った写真の実感みたいなものがなくて、写真と僕がまだ繋がっていなかった。当時、僕は渋谷の宮益坂に小さなプライベートギャラリーを持っていて、そこでプライベートに20~30点展示するという、小さな展覧会をやりました。それで、自分の中で東南アジアは一回終わっていたんです。 ──久々にネガを見て、このように写真集にまとめようと思われたのは何かきっかけがあったのでしょうか? 森山 ネガのケースにはタイトルが書かれているから、写真を整理する度にその文字を見ていて。中身を見たい気もするけど、なんとなくそのままにしてしまうってことを繰り返していて。ある時ふとネガを見て、写真から伝わってくる印象が変わって見えたんです。二十年以上の時間を経て自分と対面しているから、当時の自分の心情みたいなものがどこか薄れていて、写された対象だけが浮かび上がってきた。つまり写されたものだけが、しっかりと定着されていたように思えた。そんな風に自分の写真を見られるようになった。それで、東南アジアの写真集を作ってみようと、講談社の方に相談して実現しました。 ──写真って改めて見るとその当時の思い出が蘇ると言いますが、森山さんのそれはちょっと違うのでしょうか。時間を経て改めて見た時に、感情がなくなって写真を客観的に見られる。物質として写真が残るというのが面白いなと。 森山 全ての写真、特にスナップ写真というのは、最終的にはすべて記録として収れんされるんです。撮った時は撮った時の勢いや温度感があるけど、時間が経つと違った見方ができる。自分が撮ったものでも、再び出会った時に、違うコンテキストを見出すことができる。その構造が写真の一番の強度で面白いところだと思う。 ──撮影時に街に向かっていく時はどんなお気持ちなのでしょう? 森山 現場にいるときには暑いしさ、混沌としていて、そんな中で撮影すると既に自分が、ある種感電している状態で、街を探るセンサーみたいになっているから、あんまりいろんなことは考えないよね。身体的な感覚でヒートした状態になっている。もちろん撮る瞬間の思考はあるんだけど圧倒的に体感しながら撮っている。 ──写真を撮るときに街の人とのコミュニケーションはあるのでしょうか? それとも消えた存在になって撮っているのでしょうか? 森山 僕はほとんど対話はしないからね。理想は自分の存在を消したいところだけど、実際はカメラ持ったおじさんが単にいるってことだからね(笑)。小さいカメラを使ったりするくらいで。人間は、カメラのレンズという冷たい機械的なものに結構敏感なんだよね。深夜の新宿歌舞伎町でも、カメラを持って撮っていると、一瞬みんなふっと警戒する。視線を反らされたり、睨まれたりするよね。カメラっていうのはそういうヤバイ装置でさ。
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『THE TROPICS』より (c) Daido Moriyama
──写真を見ていると、ふっと写真家がいない瞬間があると思いました。 森山 写されたもの、その時に写された対象のエッジが際立つんだろうね。さっき話したその時の写真家の思いや気持ちがそぎ落とされて対象だけが浮かび上がってくる。撮るときの理論とか理屈とかはあるかもしれないけど、十年、二十年経つとそんなもんはさっと消えちゃうわけよ。特に街頭スナップ写真の場合は。 ──撮った写真を写真集に組んでいく時の作業というのは、どういう気持ちでページにしていくんですか? 本をめくるというのは時間を伴うものだと思うんですが、そういう時間軸のようなものは意識されてはいないのでしょうか? 森山 僕の場合はすべてではないけれど、基本的にストーリーを作るということはしない。もともとストーリーのある写真を撮っていないからね、街頭のスナップだから。だからページを繰るときの、ある種のインパクトやダイナミズムを大切にしている。時間はほとんど意識していなくて、あんまり重要じゃない。時間軸というよりも、すべてをシャッフルして、街の渾然、渾沌とした感じを見せる。今回はアートディレクターの町口覚さんに全部任せています。僕は数点この写真は入れて欲しいという話をしただけ。町口さんは町口さんで自分の哲学があって、それがとてもうまくいったということですね。 ──撮影される際に、惹かれる土地の特徴みたいなものはあるのでしょうか? 森山 それはね、人間が渾然といる場所。そうすると生活が見えるとかあるからね。圧倒的に街。街以外に興味はないよね。雑多に混在している場所。ということですよね、街であり都市である。そして野良犬がいっぱいいて、子どもがうろうろしているような。最近はそういう街も少なくなったけどね。日本でもちょっとローカルに行くと、街に人がいない。昔はもうちょっと人がいたよね。 ──いま興味のある街はどこでしょう? 森山 やっぱ東京だよ。僕が日本人だということの掛け値を抜かしたとしても、世界的に見ても東京なんじゃないかな。NYから帰ってきても、イタリアから帰ってきても、東京って変な街だねって思う。その「変さ」っていうのは僕にとっては魅力なわけ。今も、来年出そうと思って、東京の町を撮っているけど飽きないな。あと、外国ではメキシコシティに行きたいね。 ──常に好奇心を持って街に向かっていく、森山さんが放つエネルギーみたいなものを私たちは本から受け取っているような気もします。 森山 それは、エネルギーっていうよりも欲望なんじゃない? 僕の中には欲望があるんだよ。そこから出てくるんだよね、撮りたい気分、撮る対象との一瞬の衝突もね。だからスタティックな写真なんか撮ってたら街なんか撮れないのね。街にひっかき回されるからね。そうした外からの刺激を受けながら、それにリアクションしていって写真を撮る。
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『THE TROPICS』より (c) Daido Moriyama
──自分たちが普段生活していると慢心してしまって、外からの刺激に対して敏感に反応できない。写真を撮るという行為を通してそういった刺激に対して敏感になっていくというか。 森山 さっきエネルギーって言ったじゃない。もしそこにエネルギーがあるとしたら、そのエネルギーを作るのは街に出て写真を撮ることなんだよね。その中にしかエネルギーって生まれてこないから。あの、とにかく圧倒的にいろんなものがあるでしょう。だからちょっと理屈っぽくなるけれど、日常ってのは異常が集積している世界だから、どこ見ても異常なわけ。一枚変わればね。そういうところの行ったり来たりが面白い。写真ってのはその人のその時の経験だからさ。また、見る人ですべて解読のコードが変わる。自分の写真でも、見るタイミングによっても見方が変わる。それが面白いんだよね。 ──なるほど。確かに同じ写真でも、自分の精神状態で見方が全然違いますよね。そういう意味でも、この写真集はいろんな見方ができると思います。 森山 そうだね。パラパラとどこから読んでもいいし。だってさ、いろいろと考えてみたってしょうがないじゃない? 僕の写真は昔から難しいって言われていたんだけど、写っているのを見ればいいじゃないって思うわけ。シンプルに感じてもらえればいいと思う。もちろんコンセプチュアルな写真家の作品は、解読するためのコードがあると思うんだけど、スナップはね、目に入った部分だけを見ていればいいんだと思う。この写真集は、現代のタイの人たちにも見てもらいたいなと、現地の人の感想を聞いてみたいね。 ──ありがとうございました。森山さんの精力的な活動を見ているとこちらも元気が出てきます。 森山 だってさ、他に面白いことないじゃない。ごちゃごちゃした街に入っていって写真を撮ることだけがいちばんワクワクできる。ゴールデン街も飽きたしさ、俺、酒飲まなくなっちゃったから。勝手なもんで。写真がつまんなくなって酒が面白くなるよりいいんじゃない(笑)。 (取材・文=上條桂子) ●もりやま・だいどう 1938年大阪府生まれ。高校在学中から商業デザイン会社に勤め、後にフリ-の商業デザイナ-として独立。1960年、22歳の時に写真家・岩宮武二のスタジオに入り、翌61年に上京。細江英公の助手となる。以後「カメラ毎日」や「アサヒグラフ」「アサヒカメラ」などで活躍。「アレ、ブレ、ボケ」と形容されるハイコントラストや粗粒子画面の荒々しい写真表現は60~70年代の日本の写真界に一石を投じた代表作に『日本劇場写真帖』(68)、『狩人』、『写真よさようなら』(72)、『光と影』(82) 『サン・ルゥへの手紙』(90)、 『Daido hysteric』シリーズ(93~97)、『新宿』(02)、『記録』シリーズ(72~)など。 オフィシャルサイト<http://www.moriyamadaido.com/>
THE TROPICS 1980 年~90 年にかけて、東南アジアで撮影されながらも未発表のままお蔵入りしていた写真を集めた写真集。人々の息遣いや臭いまでもが感じられる森山節炸裂の圧倒的で濃密な世界。リアルで過酷な日常、ダイナミックな生命力にあふれた二十 年前のアジアの姿。 定価:本体7,500円(税別)/講談社刊 amazon_associate_logo.jpg
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電子書籍時代に"定期購読専門誌"を創刊! 北尾トロと考える、本と雑誌の未来

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「別に世のため人のために雑誌をやるわけではない。
同業者の後輩が育ち、若い人が出版業界に来てくれないと
読むものがなくなって自分がつまらなくなっちゃうからね」
と北尾氏。
 電子書籍元年と騒がれ、iPadやらキンドルやら出版業界は大騒ぎ。そんな状況にあって、「紙媒体」「定期購読」「ノンフィクション限定」という時代を無視したかのような雑誌「レポ」が創刊された。発行・編集は、ライターとして『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(文春文庫)や『全力でスローボールを投げる』(文藝春秋)など数々の著書を持つ、ノンフィクションライターの北尾トロ氏。はたして、「レポ」は時代へのアンチテーゼなのか? それとも風変わりな視点から社会を見つめる北尾トロ一流の考えがあるのだろうか? ■コンセプトは"手紙" ――「レポ」創刊おめでとうございます。とにかく変わった雑誌、という印象があるんですが、まず「ノンフィクション限定」というスタイルにした理由を教えてください。 「いろいろな理由があるんですが、一つはノンフィクションを書く場所(媒体)が少なくなってきているということですね。だんだん雑誌が減ってきて、ノンフィクションが書ける場所も限られてきているんです。かつてなら、たとえば『別冊宝島』がノンフィクションライターの目標となり、『月刊プレイボーイ』はお金も時間もかけたノンフィクションを掲載していました。あとはエロ本ですね。エロ本の活字ページは、若いライターが好きにできる場所だったんです。雑誌の目的がエロだったから活字はどうでもよかったんですね。そういう場所でかつてはいろんな人がしのぎ合っていたんです」 ――巷では電子書籍が騒がれていますが、どうしてこのタイミングで紙の雑誌を創刊しようと思ったのでしょうか? 「やるなら今だなと思ったんです。あと3年後とか5年後になってしまうと出版業界がどうなっているか分からない。もしかしたら、その時に紙の雑誌はもはやノスタルジーになっているかもしれないですよね。今だったら読者としても出版する側としても、ぎりぎりノスタルジーにならないんじゃないかと思ったんです」 ――定期購読という販売方法も特殊ですね。このような方法を選んだ理由は? 「最初から通販で売る雑誌にしようと考えていました。通販っていうことはポストに届く、それはある種の手紙じゃないかということで『手紙』をコンセプトにしたんです。......ちょっと無理矢理ですが(笑)。けど、手紙というコンセプトなら直接読者とやり取りできますよね。手紙って、届くとうれしいじゃないですか。自分の宛名があって、開封する楽しみがある。本屋で購入するのとは別の楽しみが生まれるんじゃないかと思ったんです。ただ、さすがにそういう販売方法だけでは『ひどい』と言われることも多いので(笑)、定期購読だけではなく各号ごとの通信販売も行う予定です。現実的な問題として、書店との清算といった事務作業が苦手なんですよ。だから通販がメインで、書店は買い切りのみにしようと」 ――「手紙」というコンセプトなら読者との距離も縮まりますね。 「やっぱりダイレクトに届くのが一番いいと思うんです。手紙じゃなくて、例えばTwitterでもDM(ダイレクトメール)のうれしさがある。名指しで送られてくるというのはうれしいんですよ。だから、そんな『手紙』に対して返事を書いてくれる人もいるんじゃないかと期待しています」
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「レポ」は分厚い手紙(本誌)と年間定期購読者への手紙「ちびレポ」がセット。
本誌は年4回発行、「ちびレポ」は本誌発行月以外の月に発行。
年間定期購読者だけには毎月「レポ」からの手紙が届くというしくみ。
■電子書籍に"みんな騒ぎ過ぎ" ――北尾トロ"編集長"としては、雑誌の未来をどう考えていますか? 「マスメディアではない"ミドルメディア"は結構イケるんじゃないかと思っています。広告ではなく、その雑誌を読みたい人が支えるような形です。出版不況と言われていますが、面白いものを作ってしっかりそれが読者に伝われば、500円や1000円をケチるっていうのはないと思うんです」 ――ミドルメディアというのは具体的にどのくらいの規模でしょうか? 「『レポ』で考えると、5,000部から1万部程度ですね。広告なしでもなんとかやっていくために必要な部数が5,000部かな。逆に1万部を超えるといろんな人に喜んでもらわなきゃならならなくなって、雑誌がつまんなくなってしまう気がします。ミドルメディアの範囲で欲張らずにやって行けば、ウェブではできないことができるんじゃないでしょうか? 出版界全体の流れは電子書籍に行くんでしょうが、みんなちょっと騒ぎ過ぎなんじゃないかとは思います。媒体が何であれソフトが命なんだから、紙でいいものを作れない人は、電子書籍をつくってもロクなものはできません」 ――『本』というモノについてはどうでしょうか? 北尾さん自身、愛着もかなりあると思うんですが。 「装丁やデザイン、重さなど、モノとしても魅力的ですね。それは電子書籍とは違うところです。そんな本の魅力を知っている人にとってはしばらく忘れがたい物だと思います。けど、最初から本に触れずに育つ子どもにとっては別。次の世代にとっては趣味的なものになっていくんでしょうね。ただ、本好きな人も、ある一定の数いればいいじゃんと思うんですよね。授業で読み聞かせをしたりしてまで、『本は素晴らしい』と言う必要はないと思うんです。僕自身は本が好きなので、好きな人を集めて、ブックフェスをやったり、『本の町』を作りたいと思っていますが」 ――長野県の高遠町での活動ですね。手応えはどうでしょうか? 「ヨーロッパにたくさんある『本の町』を日本にも作りたいなと思っていたんですが、誰もやらないだろうからちょっとやってみようかと始めてみました。高遠は自然も歴史もあり、町のサイズも歩いて回れる程度のイメージに近い町だったんです。ただ、肝心の本屋がなかったので、まず自分たちで本屋をつくりました。ただ、町の人に『本の町をつくりたい』と話しても何のことだかよく分かってもらえない。だから『高遠ブックフェスティバル』を始めたんです。2年間やってようやくイベントとして独り立ちし始めた感じがしますね。9月に終了したばかりなんですが、町の人にも気に入ってもらってすでに来年の話が始まっています」 ■みんなが集う"場"としての「レポ」 ――ゆくゆくは「レポ」をどういう雑誌にしていきたいと思っていますか? 「今はプロの書き手がメインですが、ゆくゆくはもっとアマチュアというか若い人に参加してもらえるような媒体にしていきたいですね。面白ければ何でも構わないので、ページもじゃんじゃん与えます。やりたい人がいたら誰でも企画を送るなり原稿を送るなりしてほしいですね。その辺はオープンにしたいと思っています。現在も拘置所から"書きたい"と言ってくれている人なんかもいますから」 ――いろんな人を集めてくるという意味で"メディア"としても成立していますね。 「場があればそこに人は集うんです。だからそれはそんなに難しいことではないし特別なことをしているわけでもありません。おそらく今後、この雑誌から本が生まれてくると思うんです。『レポ』に書いたことがきっかけで本を出して世に認められる、そういった場になればいいですね」 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●きたお・とろ 1958年、福岡市生まれ。 ライターとしての数々の執筆活動の他に、インターネット古書店「杉並北尾堂」の運営や、長野県伊那市高遠町での「本の町」プロジェクト、「高遠ブックフェスティバル」の開催など、本に関するあらゆる活動を行う。近著に『テッカ場』(講談社文庫)、『裁判長! 死刑に決めてもいいすか』(朝日文庫)など。
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「レポ」
ライター・北尾トロの編集・発行によるノンフィクション専門の季刊誌。北尾トロの他にも、コラムニスト・えのきどいちろうや漫画家・やまだないと、SM女王様ライター・早川舞などによるノンフィクション14本を掲載。定期購読(年間4,000円+税)か、一部書店のみでの取扱い。 <http://www.repo-zine.com/> ・映画『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 北尾氏の同名ベストセラーエッセイがついに映画化!"愛と感動の裁判映画"の脚本を書くため、三流ライター南波タモツ(設楽統)は、生まれて初めて裁判所に足を踏み入れる。が、法廷では"愛と感動"どころかツッコミどころ満載のワイドショーネタばかり。ある時、美人鬼検事マリリン(片瀬那奈)に、「楽しいでしょうね、他人の人生を高見の見物して!」とキツい言葉を浴びせられ......。 原作/北尾トロ 脚本/アサダアツシ 監督/豊島圭介 出演/設楽統(バナナマン)、片瀬那奈、螢雪次朗、村上航、尾上寛之、鈴木砂羽ほか 配給/ゼアリズエンタープライズ 11月6日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー <http://www.do-suka.jp/>
怪しいお仕事! 個人的にはこれが一番好きです。 amazon_associate_logo.jpg
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『後ろ指さされない刺青は刺青じゃない』 "社会派"彫り師がタトゥーブームを斬る!

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「タトゥーを入れるには何かしらの意味が必要」だと語る、ウダPAOマサアキ氏。
 彫り物が任侠の世界のトレードマークだった時代は今や昔。現在、タトゥーはファッションの一部として若者たちの間に広く浸透している。  しかしその一方で、温泉施設やプールなどでは「タトゥー・刺青お断り」という場合が多い。さらに神戸市では、タトゥーや刺青を入れた海水浴客の海水浴場への入場を規制する条例を来年度より導入することを検討している。また最近では、無資格での医療行為に当たるとして、明石市の彫り師の男が検挙される事件も起きている。  タトゥー愛好者が増加する一方、それを取り巻く行政や社会との溝は深まりつつあるようにも見える。そこで、『タトゥー・セラピー』(東京キララ社)の著者で彫り師のウダPAOマサアキ氏に、現代日本におけるタトゥーのあり方などを聞いた。 ―――そもそも、彫り師になるに至ったきっかけを教えてください。 「もともとBMXのプロライダーだったんですが、ある海外の自転車メーカーにスポンサーについてもらいたくて、そのメーカーのロゴを自分で彫ったのがタトゥーとの出会いなんです。そのときは、コンビニで墨汁を買ってきて、木綿針で彫りました。完成したタトゥーを写真に撮って下手な英文で書いた手紙に同封しメーカーに送ったんですが、返事一つこなかったですね(笑)。下心でタトゥーをしてはいけないんだなと実感しましたよ。でもこれがきっかけで、BMXよりタトゥーの方に興味が芽生えてきて。中古で見つけたタトゥーマシンを買って独学で勉強しはじめて、気がついたら彫り師になっていました」 ――かつてないタトゥーブームですが、彫り師としてはいかがですか? 「彫り師を生業にする者としては喜ぶべきなんでしょうが、とにかくアクセサリーでも買うような感覚で気軽に彫っちゃう人が多すぎますね。うちにもよく来るんですよ。『好きなアーティストと同じタトゥーを彫りたい』なんていうお客がね。中には『海外ブランドのロゴを彫りたい』なんてのもいて......。『お前のスポンサーなのかよ?』と(笑)。うちでは彫る前には必ずカウンセリングをしているんです。10分で終わるときもあるし、2時間続くこともありますが、なぜ彫りたいのか、今後どうしたいのかを聞いています。そこで目的や覚悟が見えない相手には彫らない。ワンポイントのものならまだしも、基本的にタトゥーは消せない。彫ってしまった刺青には嘘はつけない。ブームに乗ってやるものではないですから」 ――タトゥーに対する行政や社会の対応についてどう思われますか? udapao02.jpg 「タトゥー愛好者の中には今の日本の社会環境に不満がある人も多いですが、私ははっきり言って、今のままでいいと思います。タトゥーを理由にプールや温泉で入場を断られて文句を言う奴がいますが、だったらタトゥーなんか最初から入れるなっていう話ですよ。タトゥーって最近ファッション化しすぎてしまいましたが、単に美しいとかカッコいいだけの世界ではない。昔からアウトローたちが入れてきたように、下世話で毒のある世界。そんな社会からはつまはじきにされる彫り物を、自分の生き方を貫く覚悟を彫っていたわけで。それは現代のタトゥーでも変わらないと思うんですよ。だから、ある種の後ろめたさが感じられなくなったら、タトゥーなんて入れる意味はなくなる。プールに入れなかったり、公務員になれなかったりする可能性は、タトゥーを入れるときにすでに承知していたはず。それも覚悟でタトゥーを入れた自分を最後まで貫けって言いたいですね」 ――彫り師に対する警察の取り締まりについてはどう思われますか? 「そもそも彫り師自体、昔からグレーな存在で、昭和の初期などは彫り師は警察の目をはばからなければならない職業だった。しかし、そんなアンダーグラウンドな環境の中で日本の刺青文化は育ってきたわけですよ。今やジャパニーズ・タトゥーは世界的に人気で、日本の彫り師は海外からの引き合いもある。欧米ではタトゥーに対して法律や社会も寛容だし、タトゥー人口も多いのでビジネスライクで考えれば活動しやすいでしょうね。でも、それは日本の彫り師としては何の意味も無い。グレーな存在であることも、日本の彫り物文化のひとつ。法律や社会から公認されてしまっては、彫り師は体に絵を描くイラストレーターと同じになってしまうと思うんです。むしろ私はこのままタトゥーブームが変な方向に進んで、『タトゥーは芸術だ』なんて言われ始めたらどうしようかと、恐々としていますよ(笑)」 ――最後に、これからタトゥーを入れようと思っている人へメッセージをお願いします。 「タトゥーって『真剣な悪ふざけ』だと思うんですよね。何を入れようと自由ですが、自分なりの意味を持って入れてほしいですね。 彫る側としても、その意味が重いほうが『いいモノ彫ってあげなきゃな』って燃えますから。あと、ファーストタトゥーには小さなものを入れる人が多いと思いますが、ワンポイントタトゥーを入れた人のうち7割くらいの人は、『消そうかなぁ』と考えてしまう。だから私は勧めるんですよ、どうせ入れるなら消すことができない大きいのを入れちゃえって。そうすれば、そのタトゥーを前向きに捉えることしかできなくなる。せっかく痛みとともに入れるタトゥーなので、そこから前向きに進む力を得て欲しいと思います」  日本は、タトゥー愛好者にとってまだまだ生きにくい世界。そこであえてタトゥーを入れる際には、あえて逆境を進む覚悟と意味を認識するべきということのようだ。 (取材・文=高田信人) ●うだ・ぱお・まさあき 1973年横浜生まれ。刺青師「秘密刺青処・横濱刺青製作所」にて刺青工「彫まさ」として精進中。86年にBMXと出会い、91年にはプロライダーに。93年より独学でタトゥーを始め、96年に本格的に刺青師として生きることを決意。日本伝統刺青を独自に学び、02年に独立。以降、地元の横浜・桜木町で腕を振るう。他に、ジャパニーズレゲエグループ「FireBall」のロゴデザイン、また「ビッグコミック・スピリッツ」(小学館)に連載中の漫画『闇金ウシジマくん』(小学館)に本人役で登場する。近年では著書『タトゥー・セラピー』を発刊、ライヴストリーミングでトークライヴや音楽の配信を続けるサイト&スタジオ「DOMMUNE」に出演するなど、ジャンルを超えて活動中。「DOMMUNE」次回出演は11月2日19:00~21:00の予定。趣味は「洗い物」。 オフィシャルサイト<http://www.pao-info.net/
タトゥー・セラピー タトゥーはラグジュアリーな遊びなのです。 amazon_associate_logo.jpg
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"救済"の先にあるものとは一体何? 神なき時代の聖書『ヘヴンズ ストーリー』

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瀬々監督は大分県国東半島生まれ。
「三方を山に囲まれた閉鎖的な環境だったんだけど、前方には海が広がっていた。
海の向こうにはこことは違う別世界があるんだと、子どもの頃から
よく考えていましたね」と語る。
前編はこちらから ──熱演したキャストについても聞かせてください。前半のラスト、家族を殺された主人公のサト(寉岡萌希)は、新しい家庭を築こうとしていたトモキ(長谷川朝晴)の「家族を殺された人間は幸せを願っちゃダメかな」という問いに対し、「ダメだと思います」と言い放つシーンがあまりに強烈です。 瀬々 そうですね。前半はサトにその台詞を言わせるために、それまでの時間をかけるという意気込みで作りました。大事な台詞だったんです。寉岡さんはしっかりとあのシーンを演じてくれた。それは、あの年齢の子が持っていた純粋さゆえに言えた台詞でもある。あの年齢だからこそ、成立した台詞だと思うんです。あのシーンの撮影のとき、彼女は高校2年生でまだ16歳だった。いま思えば一年後の彼女があの台詞が言えたかどうか考えると疑問なんです。社会に直面する年齢になれば、もうあの台詞は口にできなくなる。16歳だったから、ギリギリあの台詞を言うことができたんじゃないか。確かに、あのシーンはドキリとするとよく言われます。そこには自分が失ってしまったものがある気がするんです。あの年齢の頃は、誰もが純粋に世界に立ち向かえてたと思うんです。 ──大人が口にすると、「ウソくせぇ」「お前自身はどうなんだ?」とツッコミを受けかねない。 瀬々 そういうことです(苦笑)。 ■『幕末太陽伝』の主人公のように居残ってやれ ──でも、16歳の寉岡萌希さんに復讐を生き甲斐にする主人公を1年にわたって演じさせるのは酷だったのでは?
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コント集団「ジョビジョバ」出身の長谷川朝晴
が犯人への復讐を誓うトモキ役を熱演。一度
は新しい家庭を手に入れたトモキだが、サトと
出会ったことで再び人生が狂っていく。
瀬々 大人は今さら成長しないけど、寉岡さんは1年間続いた撮影を通して女優ということだけじゃなくて、現実の彼女の日常世界の中でもすごく成長していったわけです。あの年代の女子の1年の成長というのは肉体的にも精神的にも大きいと思う。ボクたちの1年間と彼女の1年間は密度が違う(笑)。ボクなんかの10年分の体験を、彼女はこの1年間で凝縮して過ごしたんじゃないかな。彼女はこの映画と1年間向き合ったわけだけど、撮影とは別に日常生活でも様々な体験をしていると思うんです。サトに関するシーンは時間軸に沿って撮影しているんで、前半の「ダメだと思います」というシーンから後半のラストまで1年間リアルに時間が経過していて、16歳のサトと1年後のサトはある意味違う。ボクらの目論みを超えたサトに後半はなっていた。17歳になったサトは、映画の中でもいろんなことを経験し、トモキへの恋愛感情も芽生え、「ダメだと思います」とはもう言えなくなっている。成長するということは純粋さを失っていくことでもあり、ある意味で残酷ですよ。でもそれが人間なんじゃないかと、いい意味で思い知らされた。大人になったボクらは、そんなことも忘れてしまっているんだけど、そのことを思い出させる作品でもありました。最初は"罪と罰"とか大上段に構えていたけど、それよりも人間にとっては成長や老いといった緩やかな時間の経過という問題のほうが大きいんじゃないかと今になって改めて感じています。 ──後半からはトモキの家族を衝動的に殺してしまったミツオ(忍成修吾)が登場。罪を犯すことによって人間的な成長を遂げていくという非常に皮肉的なキャラクターですね。 瀬々 忍成さんはちょっと独特なタイプの役者さんというか、色で言えば真っ白な感じなんですね。真っ白で挑んできて、現場で起きる化学反応に合わせてどんどん変わっていく役者さん。最初は自分の役を「よく分からない」と言っていたけど、現場で「あ~、こういうことなんだ」とつかみながらどんどん演じていく。多分、彼も撮影を通して役と一緒に、成長という言い方が良いかどうか分かりませんが、入り込んでいったんじゃないかと思います。そういう意味では、いちばん大変だったのはトモキ役の長谷川朝晴さんだったと思うんです。彼は他の登場人物に対して全部受けの芝居をしなくちゃいけなかったから、自分の中のものを発露する機会が少なかった。でも、長谷川さんにこの役をやってもらいたいと思ったのは、彼の持っている等身大の感覚だったんです。トモキは全く普通の人が事件の渦中に放り込まれるという役なんで、こちら側というか、学生時代の友達にいそうなタイプが良かったんです。あ、こいつと学生時代一緒に麻雀したことあるみたいな(笑)。長谷川さんはそういう安心感を与えてくれるんですよね。決して目立たない感じではないんだけど、なにか懐かしいというか、それでいて真面目さを持ってる存在感。そこは、やはり独特だと思いますね。
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10代のときに殺人を犯してしまったミツオ
(忍成修吾)は、人形作家の恭子(山崎ハコ)
に引き取られ、束の間の居場所を得る。
だが、恭子は認知症が進行していた。
(c)2010ヘヴンズプロジェクト
──映画初出演となる山崎ハコさんは、若年性アルツハイマーに冒されながらも、行き場所のないミツオを引き取るという重要な役。 瀬々 ハコさんは、やはりアーティストだけあって、出てきただけで彼女の背後に風景が見えてくる。何もしないでも彼女が背負ってきた人生が見えてくる。ハコさんじゃなかったらこの映画自体が全然違ったものになっていたと思います。それだけ、この映画の色を決めてくれたと思います。最後の撮影では、ハコさん、かなり体重を減らしてから撮影に挑んでくれたんです(※体重36kgだったのを34kgに減らした)。アルツハイマー患者の役だったので、記憶を失うのと同時に自分の存在感もなくすよう体重を落としたそうです。「死ぬということはカゲロウのようになることだと思った」と話していましたね。廃墟でのシーンは、ハコさんは何もせずただ車椅子に座っているだけなんですが、表情だけで訴えかけてくるものがあったと思います。 ──家族を奪われたトモキとミツオが互いに復讐し合うという最悪のクライマックスを迎えるわけですが、その最悪の事態を招いたサトは最終的には"救済"されるんでしょうか? 瀬々 ボクは"救済"だとは考えていないんです。川島雄三監督の『幕末太陽伝』(57)という映画がありますよね。あの映画のラスト、肺病に冒されている主人公のフランキー堺が「地獄も極楽もあるもんけえ」と言って街道を走っていく。ボクはあのラストが大好きなんです。自分の人生、生きて生きて生き抜くんだという決意表明。あのラストを見ると自分自身もそうやって現実に挑んでいきたいといつも思う。劇中のサトにも現実に立ち向かう形で終わらせたかった。トモキとミツオはああいう悲しい結末を迎える中で、お互いに許し合ったというか救われたんじゃないかとボクは考えています。では、サトはどうなるのか? 死んだ家族と再会させてあげることが果たして彼女にとっての"救済"になるのか。それは違うと思ったんです。成長していく彼女は、もっと現実に立ち向かっていかなくてはいけない。今の世の中はこんなにも悲惨だけど、その中で生きていかなくてはいけない。自分の居場所を見つけなくてはいけない。もしくは居場所がなくても生きていかなくてはいけない。確かに撮影前は"救済"を考えていました。でも、1年間の撮影を続けることで"救済"の先にあるものを描かなくちゃいけないと考えるようになったんです。 ──『幕末太陽伝』は近世から近代への時代の変換期を描いた作品ですが、本作は20世紀から21世紀、アナログからデジタルへの移行期を描いた作品と言えますね。 瀬々 そうですね。『幕末太陽伝』は一軒の遊郭を舞台にした群像劇だけれども、『ヘヴンズ ストーリー』は西洋的な意味でのヘヴンではなく、"ヘヴン"という大きな屋根の下で暮らす人々の物語と言えるかもしれない。どちらも新しい時代の中でどうやって生きていくかということ。地獄も極楽もあるもんけえ、ですよ(笑)。 (取材・文=長野辰次) ●『ヘヴンズ ストーリー』 脚本/佐藤有記 監督/瀬々敬久 出演/寉岡萌希、長谷川朝晴、忍成修吾、村上淳、山崎ハコ、菜葉菜、栗原堅一、江口のりこ、大島葉子、吹越満、片岡礼子、嶋田久作、菅田俊、光石研、津田寛治、根岸季衣、渡辺真紀子、長澤奈央、本多叶奈、佐藤浩市、柄本明、人形舞台yumehina、百鬼どんどろ 配給/ムヴィオラ PG-12 10月2日(土)より渋谷ユーロスペース、10月9日(土)より銀座シネパトスほか全国順次公開  <http://www.heavens-story.com> ●ぜぜ・たかひさ 1960年大分県出身。京都大学哲学科在学中に、『ギャングよ 向こうは晴れているか』を自主制作。『課外授業 暴行』(89)で商業監督デビュー。"ピンク映画四天王"として話題作を次々と発表する。実在の事件を題材にした『雷魚』『KOKKURI こっくりさん』(97)で一般映画に進出。『トーキョー×エロチカ』(01)では地下鉄サリン事件を背景に描いた。性同一障害者を主人公にした『ユダ』(04)は「映画芸術」ベストテン第1位に。近年は『泪壺』(08)、『フライング・ラビッツ』(08)といったエンターテイメント作やパニック大作『感染列島』(09)などを手掛けた。『ドキュメンタリー 頭脳警察』(09)も上映時間5時間14分という長さで話題を呼んだ。
ドキュメンタリー 頭脳警察 長さでは、負けてない。 amazon_associate_logo.jpg
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"救済"の先にあるものとは一体何? 神なき時代の聖書『ヘヴンズストーリー』

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『ヘヴンズ ストーリー』には瀬々敬久監督自身も出資している。
製作費を捻出するために『フライング・ラビッツ』『感染列島』を引き受けた?
というぶしつけな質問に対して、「違うよ。結果的にはそうなったけど」と
笑って答えた。
 本編時間4時間38分、休憩を含めて上映時間4時間48分という尋常ではない長尺の超シリアスムービー『ヘヴンズ ストーリー』が10月2日(土)より公開される。いかに効率よく客席を回転させるかが求められているシネコン全盛の現代において、上映時間約5時間という非常識とも言える本作を撮り上げたのはピンク映画出身の瀬々敬久監督だ。近年は『フライング・ラビッツ』(08)、『感染列島』(09)とメジャー作品を手掛けていたが、99年に起きた"光市母子殺害事件"をモチーフにした群像劇である本作は、瀬々監督本来のエッジの鋭さがいかんなく発揮されている。映画ファン、映画興行関係者たちを挑発するかのような野心作を完成させた瀬々監督に、その真意のほどを聞いた。 ──全9章に仕立てた構成は巧みで、キャストも熱演しています。とはいえ、約5時間という上映時間は、観客に肉体的にも精神的にも覚悟を強いる作品ですよね? 瀬々 確かにそうですね。今は、パソコンでもケータイでも気軽に映画を見ることができる時代で、映画館で見るだけが映画ではなくなっている。でも、ボクは映画館が好きだし、映画館で育ったと思っているし、映画館で映画を見ることがもっと行なわれてほしい。この映画を見ることが、その人の人生において忘れられないひとコマになってほしいという願いもあります。映画を見ることが、もっと特別な体験であっていいんじゃないかと。 ──園子温監督の『愛のむきだし』(09)も3時間57分の大作でしたが、ラブコメやアクションというエンタメ的要素を交えていました。本作は通り魔に家族を殺された少女が復讐を生き甲斐にして成長していくという超シリアスな人間ドラマ。1日2回だけの上映になると思いますが、興行的な勝算のほどは?
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ヒロインのサトを1年間にわたって演じ続けた
寉岡萌希。家族を通り魔に殺害されるが、
その犯人は自殺したため、サトは怒り
のやり場がない。同じように家族を失い、犯人
への復讐を誓うトモキは、彼女にとって憧れの
存在となる。(c)2010ヘヴンズプロジェクト
瀬々 そこを突かれると弱いんですが......。観客動員的には楽な作品じゃないとは思ってます。そこで、日刊サイゾーさんにも協力してもらいたいわけなんです(笑)。もちろん、ひとりでも多くの人に劇場に来てほしい。でも、例えば、自分が見た作品がすごく良かったと思っても、「キネマ旬報」のその年のベストテンに選ばれることの方が少ないわけですよ。多分、そういう人のほうが多いと思うんですね。その人個人にとっての人生の1本は、必ずしも世間一般の評価とは一致しない。毎回思うんですけど、作品がたとえ万人に受け入れられなくても、たったひとりの心に届くことが出来れば良いと。もちろん、多くの人に見てほしいというのはありますけどね(笑)。 ■ボクはオウム真理教信者と同じ時代に生きた ──瀬々監督はこれまでも札幌テレクラ殺人事件を題材にした『雷魚』(97)、青学生殺人事件を描いた『HYSTERIC』(00)など実在の事件を度々取り上げてきたわけですが、今回は99年に起きた光市母子殺害事件がモチーフ。最初は自主制作として企画を進めていたと聞いています。 瀬々 自主制作のつもりで06年から動き始めたんですけど、最終的にはいろんな方たちが出資してくれたお陰で完成させることができた。でも、製作会社が入っているわけじゃないんで、作り方としては自主制作に近い形ですね。自分自身も出資しています。今、50歳で、29歳でピンク映画の監督としてデビューして、20年近くが経って、そこにはいろんな複雑な気持ちがあるわけです。焦りとか、何やってんだろうとか。それは自分が生きている時代や社会に対してもあるわけです。ピンク映画『課外授業 暴行』で監督デビューした89年前後は昭和から平成に年号が変わり、東西の冷戦が終わったような時代だった。その変化が進んでいって、グローバリゼーションと呼ばれるようになった。ボクは大分出身なんだけど、実家に帰るともう駅前の商店街は消えて、チェーンの量販店が点在するという、どこにでもある風景に変わっている。どんどん変わっていく不安定な社会の中で、みんな確実なものを求めている。そんな日常や世の中、今の社会についてのことも、1本の映画にまとめられないかという考えだったんです。 ──映画の中で描かれるゼロ年代は、瀬々監督がピンク映画から一般映画へと移行していった時期でもありますね。 瀬々 そうです。そういう変化は自分自身の映画作りとも重なっていると思います。ピンク映画をやってた頃は、ピンクは一般映画よりも一段下と見られ、そんなボーダーをぶっ壊してやろう、映画は映画じゃないかという気持ちでやってきた。かつては闘う相手が明確に見えていた時代でもあったんです。でも社会構造が変わり、世の中の均質化が進み、敵の姿が見えにくくなってしまった。映画の世界も当然変わった。ボーダレスな世界を目指して作ってきたんだけど、実際に今、ボーダレスな時代になって果たして本当に幸せな時代になったのかという忸怩たる想いがある。そこでもう一度、ピンク映画を撮っていた頃のように自主映画に近い形でやってみようと。映画界は最近だと『SRサイタマノラッパー』(09)の入江悠さんや、『ライブテープ』(09)の松江哲明くんといったメジャーとかマイナーの枠に捕らわれない若い監督が出てきているけど、50歳のオッサン監督もちょっと挑戦してみようかと(笑)。 ──失礼なことをお尋ねしますが、『フライング・ラビッツ』『感染列島』は本作の製作費を稼ぐために引き受けたんでしょうか? 瀬々 それは違いますよ(爆笑)。メジャーで溜まった鬱憤を晴らすために今回の作品を撮ったなんて言う人もいますけど、『ヘヴンズ ストーリー』のほうが先に企画が進んでいて、たまたまその準備中に2作続けてそういう作品を撮ることになった。まぁ、結果的にはその監督料で今回の製作費が補われているところはありますが(笑)。でも、お金を稼ぐためだけで、大きな資本の作品を撮ろうと思って撮れるもんじゃない。そう甘いもんじゃないです。関係なく一生懸命に撮っています。例えるなら、大きな作品はビルを建てるようなものだと考えています。いろんな業者が参加するし、ビルにはテナント、オフィス、居住者といろんなお客さんが入る。そういうビルを建てる面白さが大きな作品にはありますよね。それに対して、今回は手作りで一軒家をイチから作ったような感じです。 ──『ヘヴンズ ストーリー』もそうですが、『感染列島』では日本を壊滅に追い込む新型ウィルスを"ブレイム"(神罰、責苦)と名付け、性同一障害者を主人公にした『ユダ』(04)というタイトル作もありました。また、『アナーキー・インじゃぱんすけ』(99)のシナリオタイトルは『神さま、あんたただの役立たずじゃないか』だったそうですね。バイオレンスシーンに目が行きがちな瀬々作品ですが、実は宗教的な意味合いを強く感じているのですが......。 瀬々 そんなに熱心にボクの作品を見てくれている人がいたとは意外でした(笑)。実は、言ってしまうと、死ぬのが怖いんです(笑)。『ヘヴンズ ストーリー』の中でも女医さんが言う台詞がありますが、「自分が死んだ後も未来は続いていくんだ」と子どもの頃、よく眠るときに考えたんです。自分がいなくなっても世の中が延々と続くのが無間地獄みたいに思えて、すごく怖かった。ボクは全共闘世代の下の世代で、誤解を恐れず言うならオウム真理教の幹部たちと同世代なんですよ。庵野秀明監督も同世代で、『新世紀エヴァンゲリオン』を見ていても同じ世代に共通する感覚を感じる。今ある、地ベタな世の中とは別に、それを超える別の世界があるんじゃないかとずっと心のどこかで考えてしまう。だからといって、地ベタな現実社会を重要視しないというわけではないんですが。
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岩手県の鉱山跡の廃墟シーンが印象的だ。復讐
心に取り憑かれたトモキ(長谷川朝晴)は、
家族を奪ったミツオ(忍成修吾)を追い詰めていく。
──瀬々作品は"救済"を求める人々の物語といっていい? 瀬々 まぁ、上からの言葉、形而上学でいえば"救済"かもしれないです。でも、もっと分かりやすく、地ベタの言葉でいえば"居場所探し"じゃないかと自分では考えています。さっきも言ったように、社会が変わり、田舎に帰っても風景が変わってしまっている。便利な世の中になったけど、かつての居場所はなくなってしまった。第1章「夏空とおしっこ」で主人公の少女は肉親の死でおしっこが出なくなるんだけど、そういう感性を持つ子どもや若い人は多いんじゃないかと思うんです。精神的にも肉体的にも安心できる場所がない。確かに、この映画でも最初は"罪と罰"とか"救済"といった発想が頭にあったんだけど、いざ実際の役者さんたちと一緒に撮影を続けていくことで、もっと分かりやすく地に足が着いたリアリティーで描こうと思うようになった。もちろん"救済"と受け止めてもらってもいいんですが、自分の中ではそう難しく考えなくても良いと思ってます。 ──カモメ団地、渡り船、鉱山跡の廃墟......と昭和的な美しい風景が印象的。消えつつあるものを映像として記録しようということでしょうか? 瀬々 単純に、いつか無くなるんじゃないかというような風景を見ると切なくなるんです。もちろん変わっていく風景に対する想いはあります。どんどん変わっていくことに対して、どこかで抵抗を感じている。人間はいろんなことをどんどん忘れていきますよね。一連のオウム事件にしても、大震災にしても、もう語る人は普通にはいない。あんなに大変なことが起きたのに、あたかもそんなことはなかったかのようにボクらは何気なく生きている。それは、人間はそうしなくては生きていけないから。でも、そのことに対して、「ちょっと待ってくれ」という気持ちが心の中にあるんですよ。それは大事件だけに限らない。大きい小さいに関係なく、誰しも心の中に忘れてはいけない出来事が眠っているんじゃないかと思うんです。 (後編につづく/取材・文=長野辰次) ●『ヘヴンズ ストーリー』 脚本/佐藤有記 監督/瀬々敬久 出演/寉岡萌希、長谷川朝晴、忍成修吾、村上淳、山崎ハコ、菜葉菜、栗原堅一、江口のりこ、大島葉子、吹越満、片岡礼子、嶋田久作、菅田俊、光石研、津田寛治、根岸季衣、渡辺真紀子、長澤奈央、本多叶奈、佐藤浩市、柄本明、人形舞台yumehina、百鬼どんどろ 配給/ムヴィオラ PG-12 10月2日(土)より渋谷ユーロスペース、10月9日(土)より銀座シネパトスほか全国順次公開  <http://www.heavens-story.com> ●ぜぜ・たかひさ 1960年大分県出身。京都大学哲学科在学中に、『ギャングよ 向こうは晴れているか』を自主制作。『課外授業 暴行』(89)で商業監督デビュー。"ピンク映画四天王"として話題作を次々と発表する。実在の事件を題材にした『雷魚』『KOKKURI こっくりさん』(97)で一般映画に進出。『トーキョー×エロチカ』(01)では地下鉄サリン事件を背景に描いた。性同一障害者を主人公にした『ユダ』(04)は「映画芸術」ベストテン第1位に。近年は『泪壺』(08)、『フライング・ラビッツ』(08)といったエンターテイメント作やパニック大作『感染列島』(09)などを手掛けた。『ドキュメンタリー 頭脳警察』(09)も上映時間5時間14分という長さで話題を呼んだ。
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【関連記事】 主演作『おにいちゃんのハナビ』が公開!谷村美月もお兄ちゃんが欲しかった!? 映画監督・江川達也の"暴走"トーク!? 第2弾映画は"洗脳の怖さ"が発端だった(前編) "歩く伝説"山本又一朗プロデューサー 小栗旬初監督作の舞台裏を存分に語る!(前編)

島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」(後編)

shimadaakari03.jpg前編はこちら中編はこちら  前に北陽のお二人が言っていたんですよ、「私たちは無いけども、『笑っていいとも!』の楽屋に行ったらみんな(アブノーマル線が)あった」って。多分、テレビって変わった人しか出れないと思うんですよね。同じ考えじゃなくて、変わった着眼点で、頭おかしい人じゃないと。小明さんも、ちゃんとしたアブノーマル線があるんで大丈夫です。 ──わーい! アブノーマルで良かった! っていうか、芸能界が特殊すぎますよね。島田さんにもアブノーマル線はありますか?  僕はあんまり。僕は普通だなぁってことやりますから(笑)。KY線の話もそうですけど、本当にアイドルの方とか俳優の方とか、なんでそんなに大したこともオチもない話を、自信満々に長い時間使って、ダウンタウンさんやカメラを相手に話せるんですかね? だから、この業界は変わっていたり、自分のことが本当に好きじゃないとダメなんだろうなって。 ──すごい準備しますよね。流れと盛り上がりどころを把握して、それがスベったときようの話を準備して.......ってしないとカメラの前に立つことが不安じゃないですか。  そうですよね。でも、全然大丈夫な人もいるんですよ。「この前、お風呂に行ったらね、すごい熱くて、うわって、びっくりしちゃった」って、なんにもない話でも堂々と話せるんですよ。俺にはコレできないなぁ。自信ないから。アレは才能って言うか、自分に自信がある。 ──自信がない占いを覚えたとか?  自信がないから、素の自分で行くのが怖いから、何か武器をつくらなきゃって思って、それが占いだったり。ただ、課題としては、自分が用意した話はできるけれども、それ以外も素で話せるようにならなきゃなって思いますね。 ──ちなみに、どうして芸人さんになられてから、更に占いや都市伝説の方面に?  怖い話が好きで、占いも好きで、みんながリアクションをしてくれるからですかね。占いができると、みんながウワーって寄ってきてくれる。芸人は笑ってもらって元気になってもらうけど、占いもその人にいろいろ言って元気になってもらったりもするし、いずれにしろ同じことになるなぁって。結果、どっちもサービス業的な。 ──占いって基本何千円もするじゃないですか。でも、島田さんの場合、現場に行ったら、みんなにタダで見て見てって言われるから大変ですよね。  そうなんですよ、正直。自分が人に頼むんだったら「申し訳ないんですけどお願いできますか?」って了承を得てから行きますけど、やっぱ芸能人って自分に自信を持ってるから、はじめから「お願いしまーす」って来るんですよ。あと、「彼女と友達と家族も」とか。その辺が芸能人にとって大事な部分であり、社会人としては欠落している部分なんじゃないかな。 ──こんなの頼んだら図々しいんじゃ......とか思ってしまいますよね。  でも、彼らは全部スケジュール管理してもらって、現場に行ったらどうぞどうぞって飲み物も用意してもらって、さあ、どうぞって出てくるのが当たり前なわけですからね。 ──ムリムリ、そんな良い対応されたら、この後何をしゃべったら良いのかな、とかを反芻しながらオエッてなったり、扉の向こうにバスローブ着たチョコさんがいたらどうしよう、とか考えてしまう......。扱いは若干ずさんなくらいがちょうどいい。  だからやっぱり特殊な仕事ですよね。 ──普通の神経だと辛そうですね......。あっ、でも、占いってモテるんじゃないですか? 女性芸能人なんてキレイどころばかりだし、どうなんですか? ムヒヒ。  ちょっと見れるとモテると思いますよ。見れすぎると、逆に相談になってしまう。番号を交換すれば「先生」って登録されて、「彼との相性も見てください」みたいな......。だから女性アイドルから僕に来るメールの大半は添付画像で手相が付いていて、時々添付がただのデコメールだったりすると、「どうせスクロールしていったら写真もあるんでしょ?」って見て、写真じゃなかったらうれしい、みたいな。 ──なんかハードルの低い喜びですね。まぁ私はそのメアドも教えてもらってないわけですが。じゃあ、占いやってて、何かいいことは......。  そうですね、僕も人見知りするんですけど、現場で会ったことない人に「島田くん見てよ」って言われると、すごい一気に距離も縮まるし、人見知りの方こそ、占いを覚えたらいいんじゃないかなって思いますけどね。 ──それはちょっといいなぁ! 是非パクドルとしてパクらせていただきたい!  ちょっと! 来月から『占いアイドル小明の~』とかで連載するのはやめてくださいね! ──うふふ。今日はありがとうございました! (取材・構成=小明) ●島田秀平(しまだ・しゅうへい) 1977年、長野川県生まれ。96年から、お笑いコンビ「号泣」のツッコミ担当として活動開始。占い師・菅野鈴子に占いの手ほどきを受け、08年コンビ解散後に、"手相芸人"としてブレイク。近著『全国開運パワースポットガイド決定版!!』(講談社)。 ●小明(あかり) 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
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小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」 【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」 【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」 【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」(中編)

shimadaakari02.jpg前編はこちら ──ご自分の手相ってどんな感じなんですか?  やっぱり毎日手相を見ることによって、目が疲れているっていう線がくっきりと! 本当にもう、眼精疲労がハンパないんですよ! ──そんなのも出るんだ! 確かに、いつもかなり真剣に見てくれますもんね。地道にコツコツの方ですよね。  そうですよ、僕、もう芸歴も15年ですから。 ──初めてお会いしたときは「号泣」の島田さんでしたけど、どうして解散してピンに?  それこそ占いを始める前に、相方が別の仕事に行っちゃったんで、どうしようと思っているときに、たまたま、「占い」ってところがひっかかって、小明さんも知ってる某週刊誌の編集さんから、「16ページやらないか?」ってことで。 ──16ページってすごいですよね......ん? 私、それタイムリーにその編集さんから聞いてた! 私、けっこう島田さんの貴重な人生の分岐点にご一緒してるじゃないですか!  そうです、分岐点はあそこなんですよ。 ──それならもうちょっと仲良くしてくれてもいいと思うんですけど!  だから、僕はすごい仲良いと思ってますよ! もう、ちょっとした同志というか。他に絶対にいないアイドルじゃないですか。 ──他にいないのは需要がないからって気もしますけども......。今、そのアイドル感が薄れてきていて、グラドル時代のお釣りでアイドルを名乗っているから、もうちょっとね、雑誌のグラビアに出たりして、現役感を出したいんです。写真集も自費出版ばかりだし。  グラビアに1回出れば、あと3、4カ月は持ちますからね。自費出版でも良いじゃないですか。大丈夫ですよ。アイドルしてますよ。 ──最近は『欠陥 小明II』っていう、『月刊●●』(新潮社)シリーズのインスパイア作品を作りました。あとは、AKB48に影響されてAKR19(アカリ19歳の略)ってのもはじめたり......。  うわぁ、グラドルより、パクリが得意でパクドルで行けばいいんじゃないですか? いいですよ、パクドル! 他にいないですよ! お金がなくなったら楽屋泥棒も出来る(笑)。 ──まだ捕まるのは嫌です......。  捕まったら「すみません、頭脳線が短いんでちょっと分かんないです」って言えば大丈夫です(笑)! でも、アイドルはやってた方がいいですよね。単純に作家になったら別のものになっちゃうので。 ──未だに「アイドル」っていう下駄を履かせてもらって仕事をしているところがあるので。  僕もそうですよ、占いはたくさんやっている人がいるけど、占い芸人っていないから。 ──じゃ、仲間ですね! 同志よ!  だから、同志ですよ! なので、芸人は辞めないように、時々ライブに出たりしてます。正直滑ったりもしますけど、いいんです。これは『芸人』っていう肩書きを守るためにやっているライブなんで、自分の中では。 ──やだ、ちょっと親近感が湧いてきました......。そのせいか、不思議と島田さんとは何事もスンナリ話せますね。普段は人と話していても「壁がある」とか「何考えているのか分からない」とか言われて、別に何も考えていなかったりするんですけど......。  それって結構ツライですよね、意識してないのに言われちゃうと。 ──私、友達もすごい少ないし、そんなにはいらないと思ってるんですけど、それでも人から好かれたいっていう欲望はあるんですよ。だから日々感じの良い対応をしようと思ってニコニコしてるんですけど、それが逆に壁を感じさせているのかなぁって......多分、『ジョジョの奇妙な冒険』に出てくるスタンドみたいな感じで私の外交を邪魔する奴がいるんですよ。  いや、僕が言えるのは、本当、いいカウンセラー紹介しますんでってことくらいです。 ──わー、手相の管轄外......。  多分サービス精神が旺盛すぎちゃうんじゃないですかね。この人と一緒にいるときは楽しませなくっちゃって、自信があるネタや話をしていると、あんまり「自分」という感じになってないから、自分の本心には話がいかないですよね。 ──そうかも! そしてだんだんその人の興味のありそうな話に移行して、自分の話は終了。それで何かホッとしたりして。無防備に自分の話が出来る人ってすごいと思います。  僕もそうなんですけど、自分の話よりも、「どうなんですか?」って、話を聞いてる方が楽。自分の話になると、「うっ」ってなっちゃって、早口で流して、「で、どうです?」ってすぐ返しちゃう。ちょっと話しながら自分と似てるなぁって思うところも......。 ──本当ですか? 現状で売れっ子の島田さんと似てるなら、私もちょっとは売れそうじゃないですか......。それなのにこの売れなさは、やっぱり芸能界とか向いてないのかな。  いや、そんなことは......(手相を見て)ちょっと気になるのは、この線とこの線がすごい重なっているんですよ。これは離れているとKY線。くっついていると、KYの逆。 ──空気読みすぎる線?  そうですね。芸能界の中だとちょっとね。AKB48とか、みんな離れているんですよ。「私が!」「俺が!」っていう部分が、芸能界って必要じゃないですか。例えば、言い方が悪いかもしれないですけど、「この人は人気者だし、自分がしゃべるよりもこっちがしゃべった方がお客さんもテレビも喜ぶんじゃないかな~」とか、「どうせ私のコメントなんていいんだから黙っとこう」みたいな。 ──わ! 完全にそうです。はしゃぎ慣れてない人間が下手に主張するとイタイことになるから、求められていない時はいかに空気になるかを考えたり、この人はこういう話を持ってるからここでパス投げればいいか、とか。  「あの子こういうネタありますよ」ってパス出して、すごい盛り上がっても、結局テレビを見たときに自分が写ってないんですよね。 ──そうです。巧妙にカットされている。  それを見てくれている人が現場に入ればいいんですけどね。でも正直、そんなに見てくれている人もいないですからね......。 ──何か切ないですね......。もうテレビの中に自分がいるのとかも、想像できない。  でも、小明さんはアブノーマル線もあるんですよ。 ──なんですか、それ。いやらしい。 (後編につづく/取材・文=小明) ●島田秀平(しまだ・しゅうへい) 1977年、長野川県生まれ。96年から、お笑いコンビ「号泣」のツッコミ担当として活動開始。占い師・菅野鈴子に占いの手ほどきを受け、08年コンビ解散後に、"手相芸人"としてブレイク。近著『全国開運パワースポットガイド決定版!!』(講談社)。 ●小明(あかり) 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
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小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」 【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」 【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」 【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」(前編)

shimadaakari01.jpg  モテない、金ない、華もない......負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストに、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第17回のゲストは、『全国開運パワースポットガイド決定版!!』(講談社)を刊行された、島田秀平さんです! [今回のお悩み] 「何に向いているのか分かりません......」 ──わーい! 島田さんだ! お久しぶりです!  お久しぶりです! ──島田さんとはもう何度もご一緒させていただいてるんですけど、いつも誰かの手相を見ていてゆっくりお話できないので、今日はうれしいです! じゃ、さっそく見て下さい、手相(手を出して)!   えっ......今日は対談って聞いてるんですけど。 ──あ、人生相談対談なんです! あの~、対談で毎回いろんな方とお話させてもらうんですけど、やっぱり悩んでばっかりで、もう神頼みより島田頼み、みたいな? 私25歳でアイドルって言ってるんですけど、やっぱりメディアにたまに出ると「元アイドル」って書かれちゃうし、ライターの仕事もうまくいってないし、趣味で仏像の勉強したりゾンビのコスプレしたりしても、それほど仕事に活かせてないし、私生活も酷いもんだし、もう、何に向いてるのかも分からなくて、本当に今後の人生が不安で不安で......。  わー、そういうマジなやつですか? 久しぶりに仲の良い人と楽しく話させてもらおうと思って来たのに......。 ──そんなこと言って、私、島田さんのメールアドレス、パソコンのやつしか知らないですよ。なんで教えてくれないのか、と。  それはパソコンにくれるメールの内容が、「雑誌に島田さんの手相占い載ってましたね、イラッとしました」とかだからですよ! ──だって載ってるのが「モテ線」とか「玉の輿線」とか、私にない線ばっかりなんですよ! 前に見てもらった時も「エロ線がすごい」とか「頭脳線が極端に短い」とか「感情線がぐちゃぐちゃですね」とかだったし!  それ、ただのクレームですからね。だからパソコンのメアドしか教えないんですよ。携帯のメアド教えたらこっちにも来ちゃうじゃないですか。 ──そうやって、あんまり距離を詰めてくれないんですよね。  そんなことないですよ......あっ、ほら、モテ線めちゃめちゃありますよ! ──うそだ。そうやって話をそらしている。だって全然モテてないです。  これも、これもモテ線ですよ。モテてないのは、ホラ、小明さんって頭がおかしいから。 ──サラッと酷いことを言いましたね。でも、結婚とか恋愛とかしたいと思ってます。  こんなに可愛らしいのにずっとないんですか? ── え? えへへ、ないです。恋愛って学生時代が終わると仕方を忘れるじゃないですか。  それは分かります。「メアド聞いたはいいけど、どうやってご飯に誘うんだっけ?」とか。 ──そうです。私は島田さんにメアド聞かれてないけど。そういう手順が分からないから受身になりがちで、そうすると何も起こらず時が過ぎていくのです。  ただ、男性サイドから言わせていただくと、ゾンビにハマッたり仏像の勉強している女性が自分なんかに興味を持つわけない、と思うんですよね。何の話をしたらいいんだろう、みたいな。 ── ああ、なるほど、確かに男性と何を話したらいいかさっぱり分からないんですよ。  それは男性のセリフですよ。男の方がそう思いますよ。 ──控え室とかで男性と二人になることがあっても、すごい不思議な距離感で、沈黙を恐れてお天気の話をしたりして......じゃあ食事でもって空気には絶対ならないです。  一番話題が無い時ですよ、天気と巨人軍の話は。友達とはどういう話をするんですか? ──「不況だよね~」とか、「また連載終わっちゃってさ~」とかですかね。  ......なるほど、趣味なんかは? ──趣味は映画を見たりとかします。  じゃあ、デートで映画も全然あり? ドライブとかは? ──もちろんありです。でもドライブとかは、5、6年はないですね。大学生の頃が最後だったと思うんですけど......。  普通アイドルになったら誘いが増えると思うんですけど、アイドルになった瞬間になくなったわけですね。 ──数少ないファンからの呪怨か何かでしょうか......。それに、そのドライブっていうのも、お付き合いをお断りした彼が「駅まで送ります」って、山奥の大学まで車でやってきて、特に危機感もなく乗せてもらったら、彼が泣き震えながらすごいスピードで首都高を走りだして、あまりにスピードが上がっていくしハンドルさばきも危ういし言語は不明瞭だしで、「あっ、殺される」と思って、刑事ドラマみたいにドアからバッと転がり出たほうがいいのかな......とか思ったりして、非常に怖かったです。その後も何故が髪を剃り落とした彼が家の前に立っていたりと、いろいろスリリングで......それがマイラストドライブですかね。  それはドライブじゃないですね......。なんか凄い話もってますね。 ──この話は『グータンヌーボ』(フジテレビ系)にとっておこうと思ってたんですけど......。  あの番組はそんな番組じゃないですから! それは『世にも奇妙な物語』(同)とか『不可思議探偵団』(日本テレビ系)とかですよ! ──ええー。優香と戯れたいのに......。しかし不思議ですね。やっぱり占いをする方の前だと必要以上に自分のことを話してしまう。そして島田さんは自分の話を全然しませんね。自分が見る方だと、やっぱり見られるのは苦手だったりするんですか?  そうなんですよ。いつも人の話ばっかりなんで、「じゃあ、島田くんの話を聞かせて」って言われると、一気に顔が真っ赤になっちゃって。「あれ? 自分の話ってどうやって話せばいいんだっけ?」ってなりますね。 (中編につづく/取材・文=小明) ●島田秀平(しまだ・しゅうへい) 1977年、長野川県生まれ。96年から、お笑いコンビ「号泣」のツッコミ担当として活動開始。占い師・菅野鈴子に占いの手ほどきを受け、08年コンビ解散後に、"手相芸人"としてブレイク。近著『全国開運パワースポットガイド決定版!!』(講談社)。 ●小明(あかり) 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
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小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」 【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」 【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」 【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

主演作『おにいちゃんのハナビ』が公開!谷村美月もお兄ちゃんが欲しかった!?

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(写真=辰巳千恵/ヘアメイク=松嶋慶太[BEACH]/スタイリスト=松尾由美)
 女優・谷村美月ちゃんがスキンヘッドにまでなって挑んだ力作『おにいちゃんのハナビ』が、9月25日からいよいよ公開される。舞台は、ギネスブックにも掲載されている世界最大の花火「四尺玉」を打ち上げることでも有名な、新潟県小千谷市片貝町の「片貝まつり」。  この映画は、片貝町に暮らすとある兄妹がモデルになっている。成人を迎える兄が、白血病で亡くなってしまった妹に花火を捧げるという痛ましくも美しい実話がベースになっており、その妹役を演じたのが谷村美月ちゃんなのだ。 「白血病と闘う女子高生という役柄なので、髪の毛を剃って臨むことになったのですが、台本を読んだときに惚れ込んでいた役なので、坊主頭にはまったく抵抗なかったですね。むしろ、女優としての覚悟が固まったというか......私としても、いい経験になりました」  自ら病魔と闘いながらも、引きこもりの兄を懸命に支える健気な妹という役どころでしたが、美月ちゃん自身、兄弟とは仲良し? 「私には高校生の弟がいるんですが、仲はいいですよ。私が買ってあげた服とかをちゃんと着てくれるかわいい弟です。でも、昔はお兄ちゃんが欲しかったですね。私が通っていた中学校は上下関係が厳しかったので、同じ学校にお兄ちゃんがいたら心強いのになあとか、よく妄想してました(笑)」  映画では、心温まる兄妹愛とともに、壮大で迫力ある花火シーンが魅力のひとつとなっています。美月ちゃんも花火大会に行ったりしますか?
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2010「おにいちゃんのハナビ」製作委員会
「もちろん子どもの頃から何度も花火大会には行っていますが、今回の映画で片貝まつりを実際に拝見して、花火の持つ真の迫力というものに初めて触れたような気がします。ここの花火は、町民の方たちがスポンサーとなり、一発一発に『家内安全』や『長寿祈願』などの願いを込めて打ち上げているんです。この伝統に片貝町の人々はすごく誇りを持っていて......見ていてとても感動しました」  映画『カナリア』でデビューしたときはわずか14歳だった美月ちゃんも、今年でナント20歳! 時の早さを実感するばかりですが......。 「確かに、いろいろ変化はありましたねえ。東京に出てきて1年半くらい経ちますが、それにともない、仕事への姿勢も変わりました。まだ20歳になった実感はあまりありませんが、お酒を飲めるようになるため、ちょっとずつ梅酒などで練習をしています(笑)。今の楽しみは、来年の成人式で地元の友達とお酒を飲むことです。映画でも、結束力がとても強い片貝町の若者たちが登場しますが、私の地元もすごく仲良しなんですよ。ただ、熱い人が多い片貝町とは逆に、私の地元はわりとクールな人が多いので......お酒を飲んだらどうなるのか、とても楽しみです」  スキンヘッドもいとわない、魂の込もった女優さんかと思いきや、成人式の飲み会に備え、ちょっとずつお酒の練習をする20歳の女の子だったりもする......。このギャップが、美月ちゃんの魅力なのかもしれません。 (文=清田隆之/BLOCKBUSTER) ●谷村美月(たにむら・みつき) 1990年6月18日、大阪府生まれ。初主演作の『カナリア』(05年)でデビュー。抜群の演技力を誇る実力派若手女優で、今秋、『谷村美月写真集 LANKA』(学研パブリッシング)が発売されたほか、『おにいちゃんのハナビ』以外にも『十三人の刺客』『行きずりの街』など多数の映画出演作が公開予定。さらに、10月14日にスタートする『医龍 Team Medical Dragon3』(フジテレビにて毎週木曜22時から放送、ただし初回は21~23時8分の拡大版)、10月18日にスタートする『モリのアサガオ』(テレビ東京にて毎週月曜22時から放送)という2つのドラマ出演も控えている。 ●『おにいちゃんのハナビ』 ギネスブックにも掲載されている世界最大の花火「四尺玉」を打ち上げることで有名な「片貝まつり花火大会」の開催地である新潟県小千谷片貝町。この地に住む太郎(高良健吾)は、引きこもり気味の青年だったが、彼の妹・華(谷村美月)は、そんな太郎の世話を焼き、消極的な兄を優しく見守っている。しかし、華が再び白血病で入院することとなりーー。 監督/国本雅広 脚本/西田征史 出演/高良健吾、谷村美月、宮崎美子、大杉漣ほか 9月25日より、有楽町スバル座ほかにて全国ロードショー 公式サイト<http://hanabi-ani.jp/
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「モチーフは髪の毛と指」 絵本で読む、束芋『惡人』の世界

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現代社会の断片的風景を独特の感性で切り取る現代美術家・束芋。
 手は口ほどにモノを言う。目ではない、手。最近映画も公開され、各地で話題となっている吉田修一の小説『悪人』の挿画を手がけたアーティストの束芋が、同タイトルの画集を上梓した。とある殺人事件の裏側に果てしなく広がる淋しさ、怒り、孤独を丁寧に描き出し「本当の悪人とは誰か?」を問う。束芋が描く手は、なんとまあおしゃべりなことか。触る、抱く、叩く、掴む、指さす、突く、ねじる、握りしめる、締め上げる......。墨とペンで輪郭と影が強調された、表情豊かな「手」は、人の感情の奥底にある暗部をえぐり出し独特なリアリティを放ち私たちに迫ってくる。絵と小説の断章から、小説とはまた違った世界を作り上げた束芋に、作品について、悪人について話を伺った。 ──まず新聞連載が始まった時のことをお尋ねします。最初にリクエストされたこと。それを受けて、ご自身の中で決められたルールのようなものがあれば教えていただきたく。 束芋 わたしが挿絵画家ではないということは、担当の方から吉田(修一)さんに伝わっていて、その上で吉田さんが新聞小説『悪人』に私の絵の雰囲気を選んで下さいました。当初から吉田さんは「絵は絵の世界で自由にやって下さい」と。その言葉があったからこの挿絵のお仕事を受けることに決めました。ルールとしては、連載担当者からの「束芋さんは、男前は描けませんよね」というもっともな言葉を受け、"顔を描かない(特に目を描かない)"という決まりごとを作りました。また、細切れに連載される新聞小説は、第一話を受けて第二話は展開し、そして第三話に続いていく。それを目に見える形にしたいと考え、私が原画を描く際のルールとして横長の和紙に右から左に描いていく。絵は右から左に流れ、時間軸も右から左で、繋がる絵は展開するストーリーを表現し、最終話まで連ねると長い長い絵巻物になるように描いていきました。絵を繋げていくためのモチーフとしては、私の日頃の描く対象物でもある髪の毛と手(指)を使いました。もちろん、毎回の絵は吉田さんの原稿がきてから、小説を読み込んで描きました。自身がその空間にある空気の粒子になった気分でぐるぐる見渡したとき、目につくモチーフや風景を描いています。 ──『悪人』は、誰もが持つ鬱屈とした、行き場のない感情が克明に描かれていて、主役は清水祐一なんだけれども、登場人物すべてに感情移入ができる、不思議な小説でした。純愛小説というよりは社会や哲学の色が強く、ジャーナリズムとは何かということも考えさせられました。束芋さんはこの小説をどうお読みになりましたか? 束芋 私もさまざまな登場人物に感情移入してしまいました。当初は殺された(石橋)佳乃に感情移入していたのですが、この作品の一人をモチーフにしてインスタレーション作品を作りたいと吉田さんにお話して、それをご快諾いただいてから実際に制作に入ったとき、私の興味の対象はストーリーの展開にそれほど絡んできていないように見える金子美保という存在に移行していきました。私は読んでいる間、この金子美保という存在は、私自身と同年代だと勝手に思い込んで読んでいました。  ヘルス嬢として働いていたときも祐一が自分に本気になってきたのを感じて、逃げてしまう彼女。頑張って小料理屋をオープンしたのに、過労で倒れてしまい、店は長期休業。病院で祐一を見て逃げる彼女や、思い切って祐一に声を掛けてみたものの、拒絶される彼女。超えるべきハードルを超えることなく彼女の人生は続いていく。その中途半端さや、フワフワした感じから同世代感を得たのだと思います。『悪人』のストーリーの中では、彼女の人生は点でしか描かれていない。その点と点の間には、祐一と出会ったように、他にもいろいろな出会いがあるのだし、祐一に拒絶されたその後も、彼女の人生は続いていく。そういったことを考えると、彼女の『悪人』の中での扱いは、私自身が出会った多くの女性のようでもあるし、多くの人が出会った私自身のようでもある。吉田さんはヘルス嬢という少し特異な職業を彼女にあてがうことで、"とっても普通の女"を描いたように感じられ、劇的な最後を迎える「悪人」の重要な鍵を握る佳乃よりも、点の存在しかない美保に私は共感するようになっていました。そして私にとって大切な作品となる「油断髪(ゆだんがみ)」(※)ができたのです。  この『悪人』という小説は一人を切り出しても凄い存在感を持ち続けます。だからこそ、全ての人物に感情移入ができ、そして誰が惡人だったのかという強い問いかけを残すのだと思います。感情移入した登場人物の存在により、その問いかけを自分のこととして考えてしまうからこそ、哲学の域にまで及ぶのではないでしょうか。吉田さんのすごさですね。 ──一番印象に残っているシーンを教えてください。また、描写に悩んでしまった、描きにくかったシーンはありましたか? 束芋 印象に残っているシーンは......全部なんです。やっぱり全てのシーンを精一杯描いたので、全て鮮明に思い出せてしまいます。描きにくかったシーンは、ラブホテルのシーンです。性描写が描きにくかったというのではなく、主人公二人がなかなかラブホから出てくれないんです。(10話分近く)最初に書いたように、私はその空間にある空気の粒子になった気分でぐるぐる見渡したとき、目につくモチーフや風景を描いているので、一カ所に複数話も居られると、描けるものが無くなってしまいます。目をよくよくこらして、ぐるぐるぐるぐる回って何とか採取しましたが。 ──絵本の企画というのは、どういった経緯で持ち上がってきたのでしょう? 束芋 元々、全部揃ったら作品集を作りたいという漠然とした思いはありました。2007年に友人が、新聞連載時の絵を切り抜いて文庫本サイズのノートに貼って、「この本に題字を描いて」と持ってきてくれたんです。その文庫サイズの重量感、新聞を切り抜いた感じがものすごく良くて、「こんなの作りたい!」と火がつきました。作っていくうちに、ただの作品集ではなく、絵本にしたいと思い、原画の状態とも新聞連載時とも違う世界を作っていきたいと思い、絵を再構成していき、吉田さんの承諾を得て文章をピックアップし、絵の一部としてレイアウトしていきました。吉田さんのご協力なしでは不可能な企画です。 ──小説に絵があるという連載とは違い、絵と断章からシーンをつないでストーリーを作るのは、映画やアニメーションに近いような気がします。絵本を作っていくにあたって、注意されたところを教えてください。 束芋 絵本としてページをめくる面白さは大切にしました。特に観音のページなどは、二次元の絵が開くという行為で三次元になる瞬間があります。その空間的な広がりを考えることは、とっても楽しませてもらいました。注意したことは、何が一番この絵本「惡人」に合うのかということ。紙質や本の重量感、表紙やカバーの関係性など。普通、本を作るときには当たり前のように誰でも考えることですね。 ──海、涙、血、スープ、珈琲、体液といったような水にまつわるモチーフや物が溶け出していき融合するようなイメージが多かったような気がします。登場人物の心に潜むじっとりとした感情がよく現れていました。液体に対して何か特別な思い入れがあったのでしょうか。 束芋 以前スウェーデンで個展をさせてもらったとき、インタビュアーに同じように聞かれ初めて気がついたのですが、私のインスタレーション作品にも液体が頻繁に登場します。そのとき、考えてみたのですが、液体は流動体であり、その液体の形はその液体の入っている容器の形で決まります。そこに容器を描かなくても、液体の形でそこに存在する見えない物体を感じることができ、液体が動くことによって、その容器に何かが起こったことを意味します。例えば、容器に穴があいたら、液体はその外に流れていく。そしてその外側の容器の形に定着する。また、液体が移動した先にはそれなりの空間が存在することも示唆します。そういった液体の動きを利用して、言葉でも描くことでも表現できなかった何かを表現できるようになったのです。『惡人』の中に登場する液体は必ずしもそういったことを含んでいるわけではありませんが、流動体は何かの媒体として、大いに利用させてもらっています。 (取材・文=上條桂子) (※)の「油断髪」は本年横浜美術館、国立国際美術館で開催された「束芋─断面の世代」にて展示された。 ●束芋(たばいも) 1975年兵庫県生まれ、長野県在住。1999年、京都造形芸術大学卒業。99年、映像インスタレーション《にっぽんの台所》が、キリンコンテンポラリー・アワード99最優秀作品賞を受賞。01年、第1回横浜トリエンナーレで最年少の作家として出品。以後、2002年、サンパウロ・ビエンナーレ、06年、シドニー・ビエンナーレ、07年、ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア 館)など数々の国際展やグループ展に出品。06年、原美術館、パリのカルティエ現代美術館で個展を開催。2010年には、横浜美術館、国立国際美術館で初めての大規模個展を行った。11年のベネチアビエンナーレでは、日本館への出品が予定されている。
惡人 束芋が初めて新聞連載小説の挿絵を担当した吉田修一の代表作『悪人』に描き下ろした作品群を一挙に収録。指、髪の毛、内臓などをモチーフとする独自の作風が、小説のテクストと化学反応することで新たな深化を遂げる。横浜と大阪で開催の大規模な展覧会「断面の世代」で公開されたモノクロの原画を連載時のカラーで再現。 1890円(税込)/朝日新聞出版刊。 amazon_associate_logo.jpg
悪人(上) ブッキーまさかの金髪。 amazon_associate_logo.jpg
悪人(下) ふかっちゃん! amazon_associate_logo.jpg
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