童貞時代の複雑な感情が蘇る! エロいけどヌケない写真詩集『思春期』

cx148_28.jpg
「触れたいのに触れられない」。高校時代のそんな淡い気持ちが蘇る写真集。
(c) Yuki Aoyama
 空に向かって跳ぶサラリーマンたちを収めた写真集『ソラリーマン』(ピエ・ブックス)や、女子高生の淡いフェティシズムを切り取った『スクールガール・コンプレックス』(イーストプレス)などで話題の写真家・青山裕企が、新作写真詩集『思春期』(ピエ・ブックス/谷郁雄氏と共著)を発表した。『スクールガール・コンプレックス』では写真の素材として女子高生を扱っていたが、今回の『思春期』ではより自然な舞台に置かれた女子高生の儚さ、美しさ、エロさなどに切り込んでいる。この、一見オシャレに見える写真集の裏にはどんなドロドロのリビドーが潜んでいるのか!? 青山さんに直撃してみた。 ――青山さんと言えば写真集『ソラリーマン』に代表されるように、おっさんがジャンプしている写真のイメージが強いですが、被写体として女子高生に興味を持つようになったきっかけは? 「もともとジャンプ写真ばっかり撮っていたんですが、2006年にグループ展をやったときのテーマが『変態』だったんですね。人が跳んでる写真って、どちらかというとサワヤカでポップじゃないですか。せっかく『変態』っていうテーマなので、今までと違うことをやろうかなと考えた時に出たのが女子高生だったんですよ」 ――『変態』と言えば女子高生だろうと! 「女子高生にしろサラリーマンにしろ、制服を着ている存在というのに興味があるんですね。都内で電車に乗っていると、サラリーマンや女子高生をよく見かけますけど、どこか無機質で記号っぽく見えるじゃないですか。そういうものを作品にしようと思って撮り始めました」
cx149_13.jpg
(c) Yuki Aoyama
――ちなみに高校時代は共学でしたか。 「共学です。でも制服はブレザーで、市内でワースト3に入るくらいダサかったんですよ。だから高校時代は、それほど制服自体への執着ってなかったと思うんですけどね。まあ体操着とか、夏服のシャツに透けるブラとかはよく見てましたけど」 ――新作写真詩集『思春期』では夏服しか写してないですよね。ブレザーにはそれほど苦い思い出があると。 「まあそこは、肌の露出の関係で冬服だと隠れすぎちゃうっていうのもあるんですけど」 ――高校時代ってモテてましたか。 「中学までは完全にイケてないグループで、当然女子からは全く相手にされてなかったんですけど、高一の春になぜかクラスの女子からアタックされ、こっちが動揺する中、周りの盛り上がりに後押しされて、初めて付き合ったんですよ。でも、その女の子が......表現はよくないですけど、ヤリ手な子で。すぐに他の男子に乗り換えられ、一気に女性不信に陥ってしまいましたね」 ――じゃあ女子高生に対するイメージって、むしろ悪かったりするんですか。 「そんなことがありつつも、ひとりっ子だったこともあり、ずっと同世代の女性と交流がなかったんで、女性に対してものすごい幻想を抱いていて『神聖な存在だ』みたいに思っていました」 ――それ以外に高校時代の恋愛っていうのは......。
cx146_02.jpg
(c) Yuki Aoyama
「大学受験の前日に同じバスに乗ってた女の子に一目惚れしました! しかも、その子が受験当日に同じ教室にいたんですよ。これは運命だと思うじゃないですか。なんとかして声をかけたいけど、そんな話術もない。しかも、実力的に試験には落ちると思ってたんで、今声をかけないと一生会うチャンスがない。そこで試験中ずっと作戦を考えて、終わって教室から出ていったところをつけていって、『財布を落としちゃったんで、帰りの交通費を貸してもらえませんか』って」 ――それは......完全に怪しいですね。 「でも彼女は疑いの目ひとつせずに『いいですよ』って! そこで完全に心を持ってかれましたね。彼女は現役で合格し、僕は浪人して一年後にその大学に入ったんですが、借りたお金を返すという名目で住所を聞き出していたので、その間ずっと文通をしていました」 ――告白はしたんですか。 「大学に入ってしばらくして、授業にも嫌気がさしはじめた頃に、キャンパスでその子と一年ぶりに再会したんですよ。でもそのとき横に知らない男の子がいて......。今考えれば、それだけでカップルって決めつけるなんてどうかしてるんですけど、当時は一年間膨らませ続けた思いでいっぱいいっぱいになっていたので『オレの大学生活はもう終わった!』って思っちゃって。その足で東京駅まで行ってしばらく失踪し、その後休学して旅に出ました(笑)。日本中を自転車で旅したんですけど、実はその時、旅先の風景を写真に収めたいなって思ってカメラを買ったのが、写真を始めたきっかけなんですよ」 ――じゃあ今の活動って、その子に影響された部分が大きいとも言えますね。 「旅に出たのは、それ以外にもいろいろな原因があったんですけどね。運動音痴でモテなくて、自分に自信がなかったっていうのがコンプレックスだったんで、あえて自転車で旅を......みたいな。まあ、制服に対してこだわりを持っている男子っていうのは、こういう感じで学生時代にモテてなかったケースが多いんじゃないかなって思います。制服を着た子と上手くコミュニケーションが取れなかったからこそ、それを引きずっているという」 ――そうですね、ボクも男子校だったんで制服には異常に執着してますからね! 今は撮影のときに上手くコミュニケーション取れてるんですか?
cx148_17.jpg
(c) Yuki Aoyama
「いや、やっぱり撮影するときも恥ずかしくって......。今はちょっと慣れましたけど、知らない女の子とスタジオに入って、制服を着てもらうっていう時点で、もはやプレイですからね。どこか赤面しながら撮ってますよ」 ――思春期のドキドキ感が蘇ってきた、みたいな。 「顔を写さないんで、撮るときにもモデルの子と目が合うことはないっていうのもポイントですね。だからこそじっと見つめられるんですよ。教室で斜め前の女の子を見つめている感じ。しかもブラが透けてたりしたら、必死で目に焼き付けてたじゃないですか、そんな気持ちを写真上で再現したいと思っています。世の中にはエッチな写真って氾濫しているんで、単純に女子高生をいやらしい性的対象としては扱いたくなくて、かといってすごくキレイに芸術的に......っていうだけでもない」 ――好きな子の透けブラを死ぬほど見るけどそれでオナニーはしないぞ、みたいな。 「そういう高校時代の複雑な感情に似ていますね。この写真集を見てエロいって思う人は多いとは思うんですが、でもヌケない。女子高生って、いやらしいものでありつつ、神聖なものでもあると思っているので、そう簡単におかずにはさせないぞっていうのは意識しています」 ――この年になればエロ本でもエロビデオでも平気で買えますけど、この写真集を見るのはちょっと恥ずかしさを感じますからね。 「そんなに露出が強いわけじゃないけど、すごくエロく感じる。それって、当時思ってた淡いエロさが蘇ってるんだと思いますよ」 ――それでは今後、撮っていきたい題材があったら教えて下さい。 「日本的なものですね。サラリーマンとか女子高生っていうのも実に日本らしい存在じゃないですか。海外のサラリーマンがジャンプしてる写真も撮ったことがあるんですけど、格好良すぎるんですよ。スーツの広告みたいで違和感がない。海外もいろいろ巡った結果、やっぱり日本って面白いなって思っています」 (取材・文・写真=北村ヂン) aoyamayuki.jpg ●あおやま・ゆうき 1978年愛知県名古屋市育ち。サラリーマンや女子高校生など"日本社会における記号的な存在"をモチーフとし、自分自身の父親像や思春期観などにユーモアを取り入れながら制作している。07年「キヤノン写真新世紀」優秀賞(南條史生選)受賞。著書に『ソラリーマン』(ピエブックス)『スクールガール・コンプレックス』(イーストプレス)がある。 <http://yukiao.jp/> グループ展『写真三銃士 2010』 会期:11月19日(金)~ 28日(日) 会場:新宿眼科画廊 住所:160-0022 東京都新宿区新宿5-18-11 電話:03-5285-8822 開催時間:12:00 - 20:00(最終日は17:00まで) 休廊日:木曜日 協賛:キヤノン株式会社 * 入場無料 * 写真鼎談(yukaicamera on USTREAM):11月20日(土)16:00 ~17:00 * アーティストレセプション:11月20日(土)17:00 ~20:00 * 写真三銃士写真集「誓約」発売(A5, 白黒, 80ページ, 700円, 100部限定)
思春期 女子高生とは、永遠にイノセントな存在なのです。 ピエ・ブックス刊/定価:1890円 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「甘酸っぱい思い出のシンボル......」僕らの愛したブルマーは今どこに どこまでが個性でどこからが病気? 人には聞けないオタクな悩みを精神科医に直撃! ポップでカワイイ「オムツサイト」 オムツ好き女子よ、集え!!

成長著しい"若手実力派"谷村美月『海炭市叙景』ほか出演作続々と公開!

tanimuramitsuki01.jpg
映画『海炭市叙景』で兄想いの女の子・帆波を演じた谷村美月ちゃん。「帆波は自分の感情をうまく外に出せない女の子。映画で描かれた物語の後、彼女がどうやって生きていくのか考えると、ちょっと切ないですね。見終わった後、深い余韻が残る作品です」
 日刊サイゾーいち押しの若手女優、谷村美月。14歳のときに映画『カナリア』(05)で注目を集め、その後も出演作ごとにひたむきな演技を見せている目が離せない存在なのだ。昨年高校を卒業し、女優業に専念して1年半。この秋だけでも、クリクリ頭を披露した『おにいちゃんのハナビ』、地方出身の新米ADを等身大で演じたコメディ『明日やること ゴミ出し 愛想笑い 恋愛。』、そして東京国際映画祭のコンペ部門に選ばれた『海炭市叙景』と主演作が3本続けて公開。さらにアクション時代劇『十三人の刺客』、ハードボイルドサスペンス『行きずりの街』でも短い出番ながら作品のアクセントになるキャラクターを演じている。加速する20歳、谷村美月の素顔に迫った。 ──この秋は『おにいちゃんのハナビ』『明日やること ゴミ出し 愛想笑い 恋愛。』『海炭市叙景』と主演作が3作続けて公開。スゴいじゃないですか。 谷村美月(以下、谷村) はい、でも撮影したのは昨年とかだったりするので、自分では「あ、この時期に続けて公開されるんだぁ」って感じなんです。確かに昨年は『海炭市叙景』の函館ロケを含めて忙しかった気はしますが、大阪にいたときのほうが高校に通いながらだったので、自分では以前のほうが頑張っていたように思います(笑)。今はお芝居に集中して取り組むことができるので、高校生の頃よりかは随分と楽ですね。 ──三池崇史監督の『十三人の刺客』、阪本順治監督の『行きずりの街』でも味のあるキャラクターを好演。
umitan.jpg
幼い頃に両親を失った颯太(竹原ピストル)
と帆波(谷村美月)の兄妹は、小さな街
で寄り添うように生きてきた。大晦日
の夜、2人は初日の出を見にいくことに。
(c)2010佐藤泰志/『海炭市叙景』製作委員会
谷村 三池監督の『神様のパズル』(08)にも出させていただきましたが、三池監督の作品に出演するのは楽しみ。出番が少なくても、「一体、どんな作品に完成するんだろう」とワクワクしちゃうんです。『行きずりの街』は、私はまだ見てないんです。どうでしたか? ──美月ちゃんがスーパーマーケットで値引き商品を漁ったり、お釣りに手を延ばすシーンは爆笑ものでした。 谷村 よかったぁ。私の出演シーンは、スーパーマーケットの場面だけだったので、カットされていたらどうしようと不安だったんです。 ──以前は、『死にぞこないの青』『おろち』(08)など、人間じゃない変わった役が多かったけど、最近は『海炭市叙景』をはじめ生活感のある普通の女の子の役が増えてきましたね。 谷村 はい、10代の頃は変わった役に偏ってましたね(笑)。今年、20歳になったんですけど、生活感のある役が増えました。どうやって生活感、現実感を出すのか演じ甲斐がありますが、難しくもありますね。 ──大阪の実家を離れて、ひとり暮らし中。日常生活の過ごし方は俳優業に影響する? 谷村 う~ん、少なからず影響するんでしょうね。どうしても撮影に入ると慌ただしくなっちゃいますが、なるべく普段の生活もきちんとしていたいなと思っています。自分の生活を感じる時間を持つようにしたいですね。忙しくても、自分で料理を作って、ご飯を食べて「美味しいな」と感じられる時間を大切にしたいと思うんです。夏場は材料が痛みやすいので控えていましたが、料理はけっこうするんです。母親直伝の煮物は、なかなかの味ですよ(笑)。 ■新人の頃に戻った最新作『海炭市叙景』 ──『海炭市叙景』は5つのエピソードが交差する群像劇。美月ちゃんが出演したオープニングエピソード『まだ若い廃墟』は、仕事もお金もない若い兄妹の生活がリアルに描かれていますよね。
umitan01.jpg
兄の颯太は父も働いていた造船所に勤めていたが、
リストラされてしまう。造船所を守ろうと懸命に
働いていただけにショックは大きかった。
谷村 そうですね、私の出演したシーンの撮影期間は1週間くらいだったんですけれど、熊切和嘉監督をはじめとする一流のスタッフと、地元・函館の方たちがとても居心地の良い現場を用意してくださったので、私はあまり無理に考え込まずに新人に戻ったようなつもりで、ポンと現場にいさせていただきました(笑)。 ──カメラマンはセミドキュメンタリーの傑作『谷村美月17歳、京都着。』(07)を撮った近藤龍人氏。 谷村 やっぱり知っている方がスタッフの中にいると心強いですね。私にとって『京都着。』は特別に親しみのある作品なんです。カメラマンの近藤さんもそうですが、『京都着。』を演出された山下敦弘監督、脚本の向井康介さん、編集の松江哲明さんは、私にとってスタッフというよりも親戚のお兄ちゃんみたいな感じですね(笑)。 ──函館在住の方たちがキャスト、エキストラなどで出演していますが、『海炭市叙景』の作品の中にとても溶け込んでいるのが印象的。 谷村 本当に私もそう思います。函館のみなさんの支えがあっての作品ですね。いつもは「お芝居しなくちゃ」というプレッシャーが現場ではあるんですが、今回は何も背負うことなく過ごすことができた現場だったんです。『海炭市叙景』は自分が主演とは思っていません。なので、エンドロールで私の名前が最初に出たときは「え~!」って思うくらい驚いたんです。そのくらい責任感なく、リラックスして楽しく過ごしました(笑)。 ──朝、寝ているお兄ちゃん(竹原ピストル)をまたいだり、蹴っ飛ばして起こしたりするシーンはとても自然。 谷村 あのシーンが初日だったんですが、そんなことが気にならないくらい自然に蹴っ飛ばしてましたね(笑)。私のアドリブか、熊切監督の指示だったのかは忘れましたけれど、竹原さんとは初日から自然とそういう親しい距離感になれたんです。えっ、実家でも家族をまたいだり、足蹴りする? しませんよ~! 家族とは仲がいいんですが、そんなことしたらぶっ飛ばされます(笑)。そういう意味じゃ、実家にいるとき以上に寛いでいたのかも。普段できないことでも、撮影だと自然にできてしまうのが、不思議ですね。
umitan02.jpg
オール函館ロケ作品。路面電車を軸にして
『まだ若い廃墟』『ネコを抱いた婆さん』
『黒い森』『裂けた爪』『裸足』の5つの
ドラマが交差する
──函館山の展望台から日の出をみんなで拝むシーンは、お正月っぽい雰囲気がすごく出ています。 谷村 実際に山に登って、日の出が出てくるのをみんなで震えながら、でもワクワクしながら待っていたんです。1日目は曇っていてダメでしたが、2日目でうまく撮れました。普段の撮影現場だと時間の都合上、日の出だけ別撮りすることが多いんですが、『海炭市叙景』は実際の日の出を見ながら自然と湧いてくる感情をそのまま撮ろうという幸せな現場でした。お芝居ではない、ライブ的なものがいっぱい映っている映画だと思います。日の出が出てくるのを待つ間、お兄ちゃん役の竹原さんとも家族のこととか仕事のこととか、いろいろ話しましたね。 ──初日の出に願を掛けながら、失業中のお兄ちゃんの顔を何度も覗き込む表情が切ないですよ。熊切監督から表情やタイミングの指示があった? 谷村 ないです、ないです。演技に関しては、まったく自由だったんです。熊切監督はカメラの横でニコニコと私たちのことを見守っているだけでした。ああして、こうしてとは言わない方でしたね。多分、役者がお芝居しやすい現場を作ることをいちばんに考えている監督だと思います。これまでは現場の雰囲気を考えながら芝居することが多かったので、すごく新鮮で、お芝居にだけ集中すればいいという素晴らしい環境でした。私の経験では、映画デビュー作の『カナリア』以来だったかも。でも、これまで自分のことで一杯いっぱいだった私も、どういう現場なのかとか感じられる余裕が多少できてきたのかもしれませんね。 ■大阪時代の、ちょっと恥ずかしい過去? ──『海炭市叙景』は故郷から離れられない人々の群像劇ですが、美月ちゃんにとっての故郷とは? 谷村 大阪で生まれ育ったんですが、私にとっての故郷とは"何も変えられない場所"かなぁ。昔の思い出って、削り取ることができませんよね。幼稚園から小学校まで過ごした街に行く機会があり、昔遊んでいた公園にブランコや滑り台がそのまま残っていたんですが、すごく小さくなっていて不思議な気持ちになりました。自分は大きくなったけれど、思い出は変わらず、そのままなんだなぁって。 ──『スタンド・バイ・ミー』(86)の大人になった主人公みたいですね。故郷を離れて、センチメンタルになった? 谷村 自分でも、ひとり暮らしを始めることでホームシックになったりするのかなぁと楽しみにしていたんです(笑)。でも、舞台の全国公演などの機会に、家族にはよく会っているし、地方ロケに行くことも多いので、いまだに東京に移住したっていう実感がないんですよ。 ──女優・谷村美月の居場所はスクリーン、テレビの画面、舞台の上ということですね。
umitan03.jpg
谷村 ふふふ、そういう風に言われると、すっごくカッコいいですね(笑)。でも、実家を離れたことで、当たり前だと思っていたことがとても大事だったんだと思い知らされています。母の手料理の美味しさや父の存在など改めて実感しています。実家を出たことで、いろいろと見えてきたものがあるように思いますね。 ──NHK大阪制作の朝ドラ『まんてん』(02)で女優デビュー。当時から女優を目指していた? 谷村 はい、ずっと憧れていました。"谷村美月として、もっと世に出たい"という欲があったんです。あの頃の私はすごかったです(笑)。もっともっと上に行きたい、周囲を驚かせてやりたいという気持ちが強かったんです。先日、母と電話で話したんですが、「ずいぶん変わったね」と言われました。母は私のインタビュー記事を全部読んでくれていて、「考え方が変わってきたね」「昔のまま大きくなっていたら、すごくイヤな人になってたよ」と母に言われ、私もそうだなぁと思いました。『カナリア』みたいな役だったらいいんでしょうけれど、何にでもガツガツして、いつも前に出たがる女の子って、作品全体で見たらうっとおしいですよね。近頃は作品全体の中で自分に求められていることを精一杯やればいんだと考えるようになりました。昨年、今年と舞台を経験したことが大きいと思います。でも、雑誌や新聞の記事を読んで、母が娘の成長ぶりを知るっていうのも、この仕事ならではですよね。 ──お母さんは記事を全部ファイルしている!? じゃあ、日刊サイゾーも変な記事は書けませんね。 谷村 はい、お願いします(笑)。 ──大阪時代に「モーニング娘。」のオーディションを受けたって本当? 谷村 自分からは進んでは言いたくない過去なんですけれど、本当です(苦笑)。小学生のときに地元の劇団に入っていたんですが、仕事のことで悩んで、「もっと上の世界を目指したい」と考え、母に相談して「モーニング娘。」のオーディションを受けました。アイドルになるのが、自分のやりたいことをやるための近道だと考えたんです。あの頃の自分は、思い出すと少し照れくさいです。でも、今さら過去は変えられません。いいネタにしていただければと思っています(笑)。 (取材・文=長野辰次) 『海炭市叙景』 村上春樹と並ぶ現代文学の旗手と評されてきた佐藤泰志(1949~90)が故郷・函館市をモデルにして描いた連作短編小説を、『ノン子36歳(家事手伝い)』(08)の熊切和嘉監督が映画化。路面電車が走る地方都市・海炭市では造船所が縮小し、大幅なリストラが行なわれた。職を失った兄妹はなけなしの小銭を集めて、初日の出を見るために山に登ることに。冬の海炭市を舞台に、街で暮らす人々の物語が交差する。 原作/佐藤泰志 監督/熊切和嘉 音楽/ジム・オルーク 出演/谷村美月、竹原ピストル、加瀬亮、三浦誠己、山中崇、南果歩、小林薫、伊藤裕子、黒沼弘巳、大森立嗣、あがた森魚、東野智美、森谷文子、村上淳、西堀滋樹、中里あき 配給/スローラーナー 11月27日(土)より函館先行ロードショー 12月18日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開 <http://www.kaitanshi.com> ●たにむら・みつき 1990年大阪府出身。『カナリア』(05)のヒロイン役で映画デビューを飾り、第20回高崎映画祭新人賞を受賞。05~06年には海賊版撲滅キャンペーンのCFで黒い涙を流し、話題を呼んだ。主な出演映画に『ユビサキから世界を』『かぞくのひけつ』『酒井家のしあわせ』『時をかける少女』(06)、『檸檬のころ』『魍魎の匣』『茶々 天涯の貴妃』(07)、『リアル鬼ごっこ』『神様のパズル』『死にぞこないの青』『おろち』『コドモのコドモ』(08)、『蟹工船』『おと・な・り』『サマーウォーズ』(09)、『ボックス!』(10)ほか多数。主演ドラマに『生物彗星WoO』(06/NHK)、『キャットストリート』(08/NHK)、『太陽と海の教室』(08/CX)、『必殺仕事人2009』(09/ABC)、舞台出演作に『雨の日の森の中』(09)、『2番目、或いは3番目』(10)。現在は連続テレビドラマ『医龍3』(フジテレビ系)、『モリのアサガオ』(テレビ東京系)に出演中。11月には単発ドラマ『心の糸』(NHK総合)、『ストロベリーナイト』(フジテレビ系)がオンエア。11月20日(土)から出演作『行きずりの街』が公開される他、『HESOMORI-へそも り』も公開待機中。
谷村美月17歳、京都着。~恋が色づくその前に~ 初々しい。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 主演作『おにいちゃんのハナビ』が公開!谷村美月もお兄ちゃんが欲しかった!? 着ぐるみ姿は反則級のかわいさ! 谷村美月がネコ役でニャンパラリ "東京国際映画祭"サイゾー流裏ガイド 虫食い、毒ガエルなど味な珍品に注目!

「戦いはいまでも続いている」 爆破テロ犯が振り返る、左翼運動とその思想

ugajin_kouhen.jpg
宇賀神さんの著書『ぼくの翻身』(模索舎)。
前編はこちら  1970年代に東アジア反日武装戦線のメンバーとして、社会を震撼させた「連続企業爆破事件」に関わっていた宇賀神寿一氏。指名手配から7年間にわたる潜伏後、82年に逮捕。90年に懲役18年を言い渡され、03年に刑務所を出所するまで21年間の獄中生活を送った。その後の「救援連絡センター」メンバーとしての活躍は前編の通り。後編では、その「事件」に至るまでの経緯をうかがった。  高校時代から左翼運動に関わり始めた宇賀神氏。在日コリアン問題や下層労働者の問題に取り組み、「東アジア反日武装戦線」に参加。このグループには死刑判決を受けた大道寺将司 、益永利明や無期懲役判決を受けて服役中の黒川芳正、現在も逃亡中の桐島聡らが参加していた。  三菱重工や三井物産、大成建設などの大企業を標的にした連続企業爆破事件では、宇賀神氏は鹿島建設と間組の爆破事件に関与していた。はたして、その事件の裏にはどんな思想があったのだろうか? ――「連続企業爆破事件」では、鹿島建設と間組の件に関わっていますが簡単に概要を説明していただけますか? 「僕らは建設会社を標的としていました。鹿島建設が戦時中に起こした花岡事件を問題視したのがきっかけです。鹿島建設では戦時中、秋田県の花岡鉱山に中国人を強制連行し、過酷な労働により、虐待・殺害しました。敗戦後、建設会社は中国人に賠償するのではなく、逆に自分たちが 国から損害賠償をもらい、戦後は国内の下層労働者を搾取して金儲けをしていたんです。それに対してストップをかけ、企業の責任を追及するために闘いました」 ――しかし、「爆破テロ」という方法以外には考えられなかったのでしょうか? 「いまから考えれば別の方法もあったと思います。当時は『武装闘争』というのが盛んに叫ばれていたんです。当時、僕らが使える武器は爆弾くらいでした。だから、爆弾を使用した武装闘争に流れてしまったんです」 ――連続企業爆破テロは74年〜75年にかけての犯行でした。あさま山荘事件が72年ですから、左翼運動は勢いを弱めていた時期ですよね。 「あさま山荘でのリンチ殺人が発覚して、左翼全体が元気をなくし、武装闘争も下火になりかけていました。しかし、一方ではパレスチナなどで日本赤軍が『テルアビブ空港乱射事件』などを起こしていたんです。それがあさま山荘事件に対するアンチとしての戦い方ではないかと思ったんです」 ――企業に対して爆破テロをすることによって社会全体を変えようと思っていたんでしょうか? 「社会を変えるというよりは、悪いことをしてきた企業の責任を追及することが第一でした。企業活動を阻むことで、そういった悪事を止めようと思っていたんです。だから、左翼革命によって革命社会を実現するという目的ではなかったんです」 ――いま振り返って、宇賀神さんにとって左翼運動とは何だったと思いますか? 「僕自身のきっかけはベトナム反戦でした。いま、ベトナムで殺されかけている人間がいて、自分はどのような行動をするのかというのが問題だったんです。それで、デモや活動に入っていきました。だからはじめから左翼思想によって動いていたという訳ではありませんし、いまでも自分が左翼だったかどうかは分かりませんね」 ――宇賀神さんにとって重要なことは、企業爆破テロと同じように「理想の左翼社会を実現する」ということではなく、「今目の前にある問題を解決したい」ということですよね 「運動のきっかけはヒューマニズムだったんです。社会や企業の不正に対して怒りを感じ、社会を変えようという思いが生まれます。だから左翼を意識しすぎると、その根本となる『何を変えるか』『なぜ変えるのか』という動機が分からなくなってしまうんです」 ――事件を起こしてから30年以上の時間が経ちましたが、変化はありましたか? 「現代にも企業悪はありますよね。ただ、当時は戦争が終わってからそんなに経っていないということもあり、花岡事件に対する思いも強かったんです。最近、鹿島が花岡事件の企業責任を一部認めていましたが、今でも日雇いや野宿労働者に対する排除や虐待は増えているし、昔より良くなったというわけではないでしょう」 ――現在、宇賀神さんの闘争心は何に対して向けられているんでしょうか? 「抑圧であったり、他人が困っているという状況に対して反抗しています。救援連絡センターの活動も同じで、権力からの抑圧状況に対して反抗しているんです」 ――戦いは続いているんですね。 「『戦い』という言葉は恥ずかしいけどね(笑)。現状をなんとか良い方向に変えたいとはいまでも思っています。身近な例で言えば、電車の中に妊婦がいても老人がいても席を譲ろうともしない人が多いですよね。人と人との関係が断ちきられてしまって、一人一人バラバラになっちゃっている。だから、できなくなっちゃったんです」 ――70年代風に言えば『席譲り闘争』ですね(笑)。 「小さいけれどもそこからですよね。今は、人間関係を再構築して繋がり合うということを考えているんです」 ――最後に若い人に対してメッセージをお願いします。 「現状を変えたいと思ったら行動に移さなきゃなりません。現代では行動に移すということをしないですよね。自分より弱い相手に対して、暴力を振るったりするのではなく、国家権力など、強者に向かっていかないとダメだと思います。抑圧状況に対してしっかり反抗していかなきゃならないんです」 (取材・文=萩原雄太[カモメマシーン]) ●うがじん・ひさいち 1952年、東京都出身。東アジア反日武装戦線「さそり」班の元メンバーとして連続企業爆破事件に関与し逮捕される。出所後は人権団体「救援連絡センター」の事務局員として活動。
サウスバウンド 上 近からず遠からず? amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 同性愛、ヤクザとの関与......"懐が深い"左翼本のススメ 赤報隊虚偽告白記事 批判のジャーナリストに"報復"を目論む新潮社の愚 いまこそ団結!?「超左翼マガジン ロスジェネ」は若者の味方です

歯医者にかかるまで半年!? 塀の向こう側の不条理な生活

ugajin_zenpen.jpg
救援連絡センターで発行するビラや月刊誌「救援」。
 シャバで生活していれば、なかなか見えない塀の中の生活。そんな刑務所・拘置所に20年以上にわたって服役していたのが元東アジア抗日戦線の活動家・宇賀神寿一氏だ。社会を震撼させた「連続企業爆破テロ」の実行犯として逮捕された宇賀神氏。出獄後は人権団体「救援連絡センター」の一員として、逮捕者の人権保護に尽力する彼が見た刑務所の生活とは? そして、その問題点とはいったいどこにあるのだろうか? ■歯医者にかかるまで半年かかる......刑務所の医療事情 ――まず、宇賀神さんが所属する『救援連絡センター』の活動について教えてください。 「人権の砦として、警察に不当逮捕された人への弁護士の派遣をはじめ、刑事、民事事件、獄中者の処遇等の相談窓口となっています。死刑制度廃止や民衆抑圧のための法律に反対し、全国の心ある弁護士や仲間とネットワークを組みながら、幅広い活動をしているんです」 ――刑務所での受刑者の処遇についてはさまざまな問題が言われています。具体的にはどのような問題があるのでしょうか? 「まずは医療の問題があります。例えば刑務所では虫歯になっても歯医者にかかるまで半年かかってしまうんです。歯医者といっても外から歯科医を呼びます。頻繁に呼ぶことができないから何カ月に1回ということになってしまう。刑務所の中にも歯医者にかかりたい人は多いんです。だから、順番を待っていると歯医者に診察してもらうまで半年かかってしまうんです。もちろん、虫歯は進行していますから、治療といってもほとんどが抜歯になってしまいます」 ――刑務所の中には医療設備はあるんでしょうか? 「ある刑務所もありますが、ちゃんとした歯科設備まで完備されているところはないですね。行政にも医療予算があってその枠内でしかお金を使うことはできないので治療にも限界があるんです」 ――他の病気についてはどうでしょうか? 「ガンにかかってしまったらまず助かりません。治療環境も劣悪ですし、治療薬もない。元日本赤軍の丸岡修さんは、獄中医療のミスによって、"拡張型心筋症"という難病にかかり、いま瀕死の状態にありますが獄外の専門病院に移されません。監獄当局にとって、囚人を獄外の病院に入れることは考慮外のようです」 ――受刑者専用の医療刑務所は全国にありますよね。そういったところで治療を受けることはできないんでしょうか? 「治療といっても一般社会とは全く違った内容になります。もちろん悪いという意味です。刑務所の職員たちは『悪いことをしたんだから高い金を出して治療させてもらえると思うな』と考える人が多い。中にはそれをはっきりと口に出す職員もいます」 ――衛生面に関してはいかがでしょうか? 「刑務所では衛生管理が徹底されていないので、食中毒がとても多いんです。私のいた刑務所でも毎年食中毒が発生していました。そうすると百何十人にも及ぶ受刑者が一斉に嘔吐や下痢をしてしまいます」 ――その他に処遇の問題はありますか? 「刑務作業中にちょっと脇見をしただけでも懲罰になってしまいます。『怠業』認定されてしまうんです。中には性格の悪い職員もいて、鍵束を持って受刑者の後ろを歩き、それを受刑者の後ろでわざと鳴らすんです。『何だろう?』と思って受刑者が後ろを振り返ればもう『怠業』に認定されてしまうんです。ほとんどいじめのようなものですよね。けど、刑務所は不条理の世界なんです」 ――懲罰の内容は? 「独房に入れられて正座、もしくは安座をさせられました。じーっと座っているだけで動いても行けません。もちろん本を読むこともできませんし、テレビやラジオがあるわけでもない。ただじーっと座って就寝時間になるまで寝転がることも許されません。私はこれを10日くらいやっていたんですが、とても辛かったことを覚えています」 ■再犯が頻発するのは構造的な問題 ――受刑者の数は飽和状態と聞きますが、何の対応もされていないと聞きます。 「3畳くらいの独房に、2人が収容されているという話も聞きます。私のいた頃はそんなことはありませんでした。近年の重罰化の影響で小さい犯罪でもどんどん刑務所に入れるようになっているんです」 ――宇賀神さんが見聞きした中で、最悪の刑務所はどこでしょうか? 「徳島刑務所は長期刑務所と言われる長期刑の囚人が多く入っている刑務所なんですが、ヤクザがとても多いんです。だから刑務官も横柄な対応をするようですね」 ――受刑者の飽和状態とともに、受刑者の高齢化も問題視されていますね。 「刑務所としても高齢者用の処遇をしていますが、やっぱり限界がありますよね。そもそも高齢者が増えた理由は再犯が増えているからなんです。なぜ再犯が多いかと言えばしっかりとした更生教育をしていないからです。日本の刑務所の職業訓練は職業訓練とは言えないようなものです。それを身につけても外で仕事ができるというものではありません」 ――例えばどういったことを訓練するんでしょうか? 「私は椅子を造っていたんですが、椅子の座面のシートをホチキスの大きなもので止めるだけの内容でした。これが職業訓練だったんです。何にもならないですよね(笑)。それよりもパソコンなどを使った作業をさせてもらった方が、出所後の就職に役立ちます。韓国の刑務所では職業訓練もパソコンを使った作業をしているそうです」 ――刑務所は犯罪者を更生させ、社会復帰させる場所ですよね? そんな内容ではただの隔離になってしまうと思うのですが。 「社会にとっての損得を考えても、再犯させることによる損失は大きいと思います。社会復帰できるように職業訓練をするべきだし、職業に就くうえでの考え方を変えていく必要があるんじゃないでしょうか。今は刑務所にいさせて、刑期が来たら出すというだけです。多くの受刑者には身元引受人もありません」 ――作業に対する対価はどれくらいなのでしょうか? 「私の場合、一等工という一番高いランクでしたが時給40円でした。1990年代の話です。当然、出所したところで金もないし。明日から住む場所もない。もちろん食べる金もありません。そうすると万引きや強盗をせざるを得ないんです。いまの刑務所は個人を追い込むような構造になってしまっているので、それを直さないと再犯の問題はどうしようもありません」 ――日本と海外の刑務所とでは違いがあるんでしょうか? 「フランスだったらワインを飲むことができます。また、北欧の刑務所では、女房、恋人が面会に来たら一つの部屋に入ってセックスもできるんです」 ――日本の刑務所では考えられないですね。 「昔はマスターベーションをしたら懲罰にかけられたりしていました。最近では許容されているらしく、黙認でしょうね。布団の中でやっていたりするのはあえてうるさく言われません」 ――オカズには何を使うんでしょうか? 「私が刑務所にいた時は『噂の真相』のアラーキーの写真を見ていましたよ。不思議なことにヘアーは塗り潰されていませんでしたが......(笑)。」 (後編につづく/取材・文=萩原雄太[カモメマシーン]) ●うがじん・ひさいち 1952年、東京都出身。東アジア反日武装戦線「さそり」班の元メンバーとして連続企業爆破事件に関与し逮捕される。出所後は人権団体「救援連絡センター」の事務局員として活動。
刑務所の中 シャバが一番。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 同性愛、ヤクザとの関与......"懐が深い"左翼本のススメ 赤報隊虚偽告白記事 批判のジャーナリストに"報復"を目論む新潮社の愚 いまこそ団結!?「超左翼マガジン ロスジェネ」は若者の味方です

ピースボートにハマる「イマドキの若者」とネットワークビジネスとの関係とは?

furuichi_kinei.jpg
古市憲寿氏。
 街中や居酒屋などで「ピースボート 地球一周の船旅」のポスターを見たことがある人も少なくないだろう。日数や寄港地などによって値段は違うが、なんといっても最低料金99万円(約80日間)で世界一周ができるという点に目が引かれる。そんな「地球一周の船旅」に参加した大学院生がいる。現在、東京大学大学院に在籍している古市憲寿氏だ。  参加したのは2008年5月14日に横浜を出航した「クリッパー・パシフィク号でゆく 第62回ピースボート 地球一周の船旅(この時の最低料金は148万円)」。彼は、この乗船体験と自らの本業である社会学の分析をもとに今年8月に『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想』(光文社新書)を上梓し、その内容は、論壇界隈でちょっとした話題になっている。今回、ピースボートに乗る現代の若者とそこから見える現代の日本について古市氏に話を伺った。 ──ピースボートには、どのような経緯で乗船したのでしょうか? 古市憲寿氏(以下、古市) 知り合いから乗ってみないかと誘われたのがきっかけです。特に、研究対象にしようとは考えていませんでした。ピースボートについては、街中にあるポスターや安く世界一周ができる旅、あとは辻元清美(現・衆議院議員)さんが作った団体だろうから、少しは政治色も強いのかなというイメージぐらいでした。 ──辻元さんは、まだ関わっているのですか? 古市 今は直接関わってはいません。辻元さんが早稲田大学で同級生だった吉岡達也さんが代表を務めているだけです。 ──実際にピースボートに乗船している人たちは、どのような人たちですか? 古市 今回、僕が参加したクルーズでは、乗船者が約900人いたのですが、ほとんどが若者とリタイア後の年配者ですね。20代の若者が約4割でした。特に若い人には、日常に閉塞感を感じる中で「世界一周が自分を変えてくれるかもしれない」と思い乗船してくるタイプが多かったです。あとはリタイアして時間に余裕のある60代以上の年配者の方も4割近くいました。 ──船内での男女関係はどうでしたか? 古市 イメージしていたようなフリーセックス的なことは一切ありませんでした(笑)。若者に関しては、カップルになって、そういうことをする子もいました。ただ、基本的には仲良くはなっていくのですが、恋愛に発展するかといえば、そうでもなくて。高校生の男女のノリを思い浮かべていただければと思います。逆に、男女関係で元気なのは、年配者ですね。年配の方々は、夫婦で乗船する人が多かったのですが、船内で新しいカップルができて、デッキで抱きあったり、キスしているのをよく目撃しました。 ──著書の中で、乗船する若者について、「セカイ型」「自分探し型」「観光型」「文化祭型」と4つに分類していますが、それぞれについて簡単に説明してください。 古市 「セカイ型」は、船の雰囲気にも馴染めていて、ピースボートの理念である世界平和や難民問題などに関心が高く、憲法9条をダンスで表現した"9条ダンス"を踊る子たちです。「文化祭型」は、船の雰囲気には馴染んでいるけれども、ピースボートの理念には共鳴していない。文化祭的なノリで、9条ダンスは踊るけど、憲法9条(の遵守と維持)を訴えたいわけでなくダイエット目的などで踊る層ですね。「自分探し型」は、ピースボートの理念には共鳴するけれども、9条ダンスなどを見て、ちょっと違うなと距離を置いてしまった層で、「観光型」は、ピースボートの理念にも、雰囲気にも馴染んでいない人たちです。大体30歳前後の看護師さんや、正社員で仕事をしていたけれど、仕事が大変で逃げ出すように乗ってきた人たちが多かったです。 ■謎の"9条ダンス"とは? ──"9条ダンス"とは、具体的にどのようなものでしょうか? 古市 憲法9条の理念を主にヒップホップで表現したダンスです。結構、激しいダンスですよ。ピースボート側のロジックでは、憲法9条は日本語で書かれているから、言葉だと国境の壁を越えられないけど、ダンスでなら国境を越えられ、世界中に広がっていくと考えているんです。 ──9条ダンスは、主にどこで踊るのですか? 古市 世界中の寄港地で踊ります。パレスチナなら難民キャンプで、ニューヨークやカナダでは、街中でゲリラ的に踊って署名を求めるんです。突然、ダンスをして、日本の憲法9条に賛同してくださいと。ダンスを見せられたほうからしたら、日本の若い子が踊っているのは分かるけど、まさか憲法9条について踊っているとは思わないですよね。 ──先ほどの4類型のうち、「セカイ型」の若者たちは、ピースボートの掲げる政治性、世界平和に共鳴していて、ピースボート側としては理想的なお客さんだと思います。また、一般的にもピースボートに乗船している若者のイメージに近いと思うんですが、彼らの乗船動機はどういったものですか? 古市 乗船動機はバラバラなのですが、なんとなく大きいことをしたいとか、大人になる前に世界一周をして自分をもっと大きい人間にしたいとか、基本的には漠然としていて、もともと世界平和のために乗船したという人は少なかったです。ピースボートセンターに通っているうちに、今世界で起こっている貧困問題などを聞いて、それに共鳴していくんです(※ピースボートセンターという事務局に通い、ポスター貼りなどの雑務を手伝うとクルーズ参加料が割引される)。 ──彼らの特徴はありますか? 古市 すごく優しくて、無邪気で陽気な感じの若者が多かったです。ただ興味深かったのは、降りてからネットワークビジネスに関わる人が多い気がします。知っている限りでも、僕の乗ったクルーズでは20人ほどが何らかの形で関わっていました。ネットワークビジネスとスピリチュアルと自己啓発には似たところがあり、すごいポジティブシンキングで、私が変われば世界が変わるみたいな発想があるので、納得はできました。 ──船内の若者の中でも政治性を持っている彼らと、若い頃、学生運動に参加していた団塊の世代の年配者とを比較して象徴的な出来事はありましたか? 古市 今回のクルーズでは、エンジントラブルにより旅行日程が遅延したり、部屋の浸水、エレベータの故障、さらには、ニューヨークに寄港した際には、アメリカの湾岸警備隊の検査により、60以上の安全性の問題が指摘され、出港を差し止められるというトラブルがありました。年配の人たちはこうした事態に対して、主催者側に異議申し立てをして、対話や議論によって問題を解決しようとし、要望書を提出しました。それに対し、「セカイ型」の若者は、対話ではなく、ただ泣くだけで、閉じこもってしまうというシーンを目撃しました。共感のコミュニケーションで乗り切ろうとしたのだと思います。 ──共感のコミュニケーションとは? 古市 論理や言葉ではなく感覚によって繋がっていているんです。特に議論をして結論に達するのではなく、「世界平和大事だよね」「そうだよね」みたいな感じで、そこにロジックがあってそうなるわけではなく、なんとなく心情的に共感できるという。だから、彼らはピースボートに共感し一体化しているので、年配者の抗議が自分たちを批判しているように感じて、それで泣いてしまう。つまり、感覚で成立している共同体なので、議論によって解決しようとする年配者とは全く違ったベクトルで動いているのです。だから、意見が違う人には、意味が分からない、何でそういう人たちがいるのだろうと言って閉じこもってしまいます。一見、船でのトラブルへの対処も対立に見えますが、基本的にディスコミュニケーションでした。若者は想えば分かる、年配者は話せば分かるなので通じ合えないです。彼らは、想いが実現する、自分が想えば世界が変わるという考え方の人が多かったと思います。 ──もちろん想うことは大事ですが、実際の行動に移さなければ物事は変わらないと思うのですが。 古市 彼らからしてみれば、「こんなに世界平和と祈っているのに、どうして世界は平和にならないのだろう」なんだと思います。実際に、船内で戦争問題に関して、ディスカッションが行われたことがありました。憲法9条を持つべきか、つまり日本は軍隊を持つべきか持たざるべきかという議論になったとき、海外から攻められたらどうするのかというと、想えば分かる、世界平和を信じていれば分かってくれる、みたいな考え方をする人が多かったです。 ──彼らはそこで思考停止してしまうというか、具体的な行動は一切ない? 古市 彼らも、ピースボート側も具体的には、何も示せていない。ピースボート側も、憲法9条を守りましょうという団体なので、それ以上の道筋を提示してあげられない。 ──船を降りてから、具体的に難民問題や世界平和について行動することもないんですか? 古市 全くではないですが、ないですね。中には1、2人は、ピースボートの事務局のスタッフになる子もいます。この前、下船後、2周年記念パーティーが行われたのですが、政治的な話題や9条ダンスの話題は一切ありませんでした。これから変わっていくのかもしれませんが。結局、世界平和というのは、集まって、盛り上げるための"ネタ"に過ぎなかったとさえ言えるのかもしれません。 ■結局、若者は夢をあきらめた方がいいのか? ──古市さん自身が、ピースボートに乗船して感じたことは? 古市 僕個人としては、人と一緒に長い間過ごすことが苦手だと思っていたのですが、そうでもないことが分かりました。また、僕自身は、統計や研究、本などで非正規雇用やフリーター問題を知っているつもりだったのですが、研究では、若者は一元的に語られ過ぎていると思うようになりました。僕が思っていた以上に、多種多様な人々の顔が見られたことが大きいです。著書でも触れているのですが、僕が当たり前だと思っていた知識が、全く常識ではないことも分かりました。たとえば、「9条ダンス」を踊っているにも関わらず、憲法の制定年月日を知らない。それは1、2年の間違えではなく、1990年などと答えてしまう。他にも、三角錐が何か分からないとか。新聞や雑誌、本だけでなく、マンガすらも読まない人たちもいる。若年層の本を読む冊数は、20年前より増えているんですが、全く読まない人も増えていて、読む人と読まない人というように二極化が進んでいます。本当に身近な人との会話やmixiなどからしか情報を得ていない人も増えていると思います。 ──本を出版してからの反応はいかがですか? 何回か書評で取り上げられ、社会学的分析などについての異論もありましたが。 古市 別に「論壇社会学」に向けて書いてないんです。大きな物語という言葉を使ったけれど、それは補助線の一個として使っただけで、よくよく読んでもらえれば別に理論フレームでもなんでもないことに気づくと思うのですが。そのあたりのことは雑誌「サイゾー」(2010年11月号)で評論家の宇野常寛さんにフォローして頂きました。 ──最後に、本書の主張は「若者をあきらめさせろ」とも取れますが、若者には"あきらめさせた"ほうがいいですか? 古市 別に僕もこの本で「あきらめろ」とは言っていないんです。今のキャリアアップの仕組みも未整備で、セーフティーネットも十分に整っていない社会で、夢だけ見せて頑張れとは言えないし、それは無責任だとも思う。そういう社会は変えていかなくてはならないと思います。と思うと同時に、生活満足度調査を見ると、今の若い子はかつてないほど満足度が高い。こんなに若者の格差が叫ばれているのに、当の若者は満足している。そういうことを考えると、これが成熟した社会のあり方なのかと言われれば、思わなくもないのが難しいところなのですが。  33歳の筆者には、本書に書かれた「想えば叶う」という極端な考え方をする若者が、本当にそれほど存在するのかといった疑問と驚きがあったが、あのピースボートの内部ルポとしても読む価値は十分にあるし、古市さんの軽快な文体も楽しめる。ここに描かれる若者が、若者のうちの大多数ではないことを祈るばかりである。 (構成=本多カツヒロ) ●ふるいち・のりとし 1985年東京都生まれ。慶応義塾大学環境情報学部卒。現在、東京大学大学院総合文化研究科博士課程。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。有限会社ゼント執行役。
希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 現代の縮図。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 老人が若者の未来を奪う!? 『嫌韓流』の山野車輪が『若者奴隷時代』で唱える新たな対立軸 「メディアを疑え! 好奇心を持て!!」"不肖・宮嶋"が若者世代へ送るメッセージとは!? いまこそ団結!?「超左翼マガジン ロスジェネ」は若者の味方です

バカリズムさんの至言「モヤモヤは、そのまま持ち帰って立ち向かいます」(後編)

akarimasuno05.jpg前編はこちら ――若い女子がたくさん集まると、大体面倒くさい揉め事が起きたりしますけど、升野さんも巻き込まれたりしますか?  やっぱりありますよね。でも、会うのが2週間に1回くらいだから、僕のところにあんまり届かないんですよ。で、僕はあんまり関係ないから。お前らが仲悪かろうが知ったことか、カメラ回ってるところでそんなの出したら許さねぇかんなって感じです。ま、いじれるところはいじりますけど。あと、憶測でいじったりします。こことここが仲悪そう、とか(笑)。別に、泣かしちゃっても「いい画撮れた~」と思うし、悪いと思ったことは1度もないから。 ――Twitterでも「ギャーギャー逃げ回っている女を見るのはすごい楽しい」って書かれてましたね。ドS!  大好きですね。ずーっと見ていたい。ドSってよく言われるんですけど、そうなんですかね、僕は思わないんですけど。でも、彼女とか、女の人とかにはまったくないです。だから性的な部分でないところでドSなのかもしれない。 ――ドSというより、いじめっ子体質? おっかない!  はい、いじめられっ子よりはいじめっ子に近かったかも。彼女らには、出来ればずーっとギャーギャー言ってもらいたい(笑)。 ――......えっと、升野さんってお酒を飲まれないですよね。お酒がないと、ストレス発散はどうされてるんですか? モヤモヤした気持ちの行き場なんかはどうしてますか?  持ち帰りますね。立ち向かってます、モヤモヤに。「あー、今日すげーうまくいかなかったなー、モヤモヤする日だー」って思いながら過ごしてます。特に何も無いですね、本当に趣味がないので。......あ、『世界の車窓から』のDVDは買いました。景色が流れるから飽きないんですよ。 ――気持ちは分かるけれど、まるで老後のよう......。パーッと遊んだりとかは?  遊んだり? 後輩連れて、お茶しに行ったりとかですね。で、夜帰って、またモヤモヤして......。何かして、気分って晴れますか? お酒で忘れても、どうせ思い出すじゃないですか。 ――確かに。でも、お酒飲まないと、飲みの席とかでつまらなくないですか?  行かないですよ。っていうか、呼ばれない。 ――あ......友達とかは......?  あんまり友達がいない。プライベートで遊ぶ友達が。近い後輩とかくらい? ――升野さんって、女性の噂もぜんぜん聞かないですね。  はい。僕、本当に聞かないって言われます。 ――なんだか、ものすごくマジメな生活環境じゃないですか!  僕、すごい真面目ですよ! ――こんなに女優さんやタレントさんばかりの職場でそんなはずは......もしや二丁目の人......?  『アイドリング!!!』の人たちにも言われるんですけど、それはない! キャバクラ行ったりしますよ! ――キャバクラに! お仕事の流れで、ですか?  自分から行ったこともありますよ? こないだは自分から行きました。 ――えっ! 意外です! なぜ!?  え!? 女の人と喋りたいからですよ! そうでもしないと喋れないじゃないですか! ――ええー! いくらでも綺麗な人と喋れる環境にいるじゃないですか! いつも楽屋とか休憩時間とか何してるんですか?  あんま話さないですね。楽屋で話すも何も、こういう人たち(『アイドリング!!!』のDVDを指さしながら)としか一緒にならないから、全然面白くないですよ、話も合わないですよ。ドラマの誰々がカッコよかったとか。 ――そこに『架空升野日記』のOLを降臨させても、なんかややこしいことになりそうですしね......。ちなみに、恋をするならどんな人が良いですか?  理想はOLですね~。 ――この業界でOLと出会うには......合コンですかね。  そうですねぇ。でも、合コンに来てる時点で僕はもうダメですね。そういう目でしか見れないですから。必死かこいつ、需要ないからじゃん? って思う。 ――あ、完全に私も同じ考えなんですけど、それだともう絶望的に出会いってないですよね。私、偶然、私の持ってた買い物袋が破けて、ジャガイモがゴロゴロ転がって、それを拾って微笑んでくれる人が理想なんです。  あはは。その人とすぐ結婚したいですね。 ――ずっと待ってるんですけど、なかなかないですね。  なかなかないですねー。 ――ねー。......えっと、升野さんは『アイドリング!!!』では司会としてのいじりに徹しているし、バラエティーでも淡々とネタをこなすし、なかなか素の顔を見せないですよね。今回のDVD『クイズ』でも、コント部分はたんまり出てくるけど、オープニングにもエンディングにも、特典映像にもまったく出てこなくってびっくりしました。  僕、毎回出ないようにしているんですよ。なんか格好つけてるような気がして。ナルシストだなぁと思われるじゃないですか?  ――特典映像で自分のお笑い論を語ったり、オフショットを載せたりは?  大っ嫌いなんですよ。......ダサいじゃないですか? そんなもの、すごい売れている方だとか、ものすごいスターの方がやるのは良いんですけど、もともと地味なのに素顔なんてそんなに変わんないし、需要もないだろうし......。 ――そんなことないですよ! ちなみに、どうして今回のDVDは『クイズ』だったんでしょうか?   特に意味はなく、なんとなく知的っぽく思われたいじゃないですか。 ――すごく知的っぽくない回答ですね。  知的っぽく思われたいんです。文化的な感じで。そうするとわりと長生きできそうな気がしたんで。 ――その感じすごく分かります。文化の香り出したいですよね。  出したい。 ――でも、内容は......特典映像以外、そんなにクイズ関係なかったですよね?  内容は関係ない。そのへんが照れなんでしょうね。『分かってやってる感』を出しちゃう感じ。 ――時事ネタとかを入れるとぐっと文化の香りがしそうですよね。  時事ネタとか、一貫して入れないです。バカがバレるから。 ――私も、下手に時事ネタに乗っかって浅いこと言っちゃって後悔すること、よくあります......。  あります、あります。だから時事ネタとかはダメですね。出来る人はすごいなぁって思います。それなりの情報がないと喋れないですからね。 ――下手したら炎上しちゃうし、手を出さないに越したことはないですよね......。それは置いておいて、Twitterをたくさん更新してくれてうれしいです! 結構エンジョイされてますか?  いや、飽きましたね、皆やるようになったし。毎回いろいろ適当なことを言っていたんですけど、リプライがめんどくさくて......。 ――升野さんのファンの方ってどんな感じなんでしょうか?  冷たいです。審査員目線なんです。 ――あ、アイドルファンも似たところありますよ。私もよく心が折れます。愛があるものはまだいいけど、やっぱり無神経なリプライもあって......。  来ます、来ます。お笑いたくさん見てるからって、てめぇが面白くなった気でいる奴らとか、上からなんですよね。 ――フォロワーも多いから大変ですよね、嫌になりませんか?  僕は、めっちゃブロックするんですよ。僕、ブロックしてなかったらもうちょっとフォロワー多いですよ。ひと言でガッツンガッツンブロックしますから。 ――ひと言でとは早い! 芸人さんは、特に失礼なことを言われる確率が高い気がします。「面白く返せよ(笑)」みたいな。  イラッときますよね。ブロックですよ。もう何万人っていう味方がいるわけですからね、こっちには!......こういうのも記事になるんですか? 前にスチャダラパーのBOSEさんと取材で一緒になったときに、BOSEさんに「サイゾー、結構そのまま載るから余計なこと言わないように気をつけろ」って言われて......。 ――もう遅いです! どうもありがとうございました! (取材・文=小明) ●バカリズム(ばかりずむ) 1975年、福岡県生まれ。本名は升野英知。95年にコンビ「バカリズム」でデビューし、05年よりピンに転向。現在、単独ライブのチケットが最も取りにくい芸人のひとりである。最新DVD『バカリズムライブ「クイズ」』(アニプレックス)好評発売中。 ●小明(あかり) 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
バカリズムライブ「クイズ」 「ネタの発明家」(さまぁ~ず大竹)。 amazon_associate_logo.jpg
小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第17回】 島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」 【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」 【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」 【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」 【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

バカリズムさんの至言「モヤモヤは、そのまま持ち帰って立ち向かいます」(前編)

akarimasuno01.jpg
 モテない、金ない、華もない......負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストに、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第18回のゲストは、DVD『バカリズムライブ「クイズ」』(アニプレックス)が大好評のバカリズムさんです! [今回のお悩み] 「女子力を上げたいのですが......」 ――あわわ、升野さんだ、緊張します。ファンです。  そんな、こんなゴミため芸人に。 ――そんなゴミだなんて! 升野さんが架空のOLになりきって書かれてる『架空升野日記』(辰巳出版)も読みました、何も起きないけど面白い!  ありがとうございます。『架空升野日記』は本当に自信作ですね。理想のOLの姿なんですよ。 ――私も昔から升野さんみたいにOLになりきる時があるんです。頭の中に一つパラレルワールドを作って、その世界の私はOLをしているんです。そこでセクハラ上司と喧嘩したりして、この業界に入ってないバージョンのマイストーリーを妄想しているんですけど、だんだん実際の年齢が妄想の設定年齢を超えてきて、ちょっとしんみりしたりして......。  ......僕は一応ブログをやるためにアレを作ってますから、日常的にはそんなこと考えてないですよ。それは共感できないです。 ――あ、そうですか......。ちなみに、どうして架空の人物で架空のことを書き綴ろうと思ったんですか? 普通にブログ書くよりもめんどくさそうじゃないですか。  日常のちょっとしたこととか、僕なんにも起きないんですよ。ずっと家にいるから友達も少ないし、「今日は誰々と会って~」とかもない。じゃあ、他の人たちがバカバカしくなることをやろうと思って。最初はバカリズムって名前も出さずに匿名でやっていたんで、OLの人たちが来たりしていたんですよ。「分かります!」とか、「どの辺で働いているんですか?」とか、ナンパされたり(笑)。要はネカマなんですよね。 ――私と同じで、完全に趣味ですよ! どの段階で正体をバラしたんですか?  結構早い段階だったと思います。「こんな面白いのに友達しか見てないってどうなんだろう?」と思って。 ――そこから出版まで、かなり長期で続けられてましたよね。私の中ではあのOL、完全に実在してますよ。最近はあんまり更新されてないんで寂しいです。  本が全然売れないからモチベーション下がっちゃって......。あの出版社、何もしてくれなくて。 ――升野さんが司会をしている『アイドリング!!!』(フジテレビ系)の本もたくさん出してる出版社ですよね。写真集と並べてくれればいいのに!  そうですよ、どうでもいいもんは売るくせに! ――どうでもいいとか言っちゃダメ! でも、男性の書く女性像ってもっと夢がありそうなもんですけれど、升野さんが書くのはかなり生活感がある普通のOLで、ご結婚もされてないのに、どうしてこんなにリアルに書けたんでしょうか?  女の人の話を聞くのが好きなんですよ。例えば、『アイドリング!!!』の女の子たちがなんにも面白くない話をしてるじゃないですか。「なに? その情報の言い合いみたいなの」って。あと、女子アナの人たちの会話をずーっと聞いているのが好きなんですよね。それで、居合わせた僕に気を使って話を振ろうとするんですけど、「気にしないで! 僕その話を聞いているのが好きなんで!」って言って、ずっと聞いてるみたいな。そういうところから来ているんじゃないですかね。 ――男子校出身の反動なんでしょうか......。  そう、高校が男子校で、もう男なんて気持ち悪くて嫌だから、専門学校時代は女子グループにいたんです。極力女の子と一緒にいたいと思って、そのグループでお茶とかしながらずっとどうでもいい話を聞いてました。 ――そこで女子力が培われたんですね、女子高上がりの私よりも全然女子力がありますよ! そこで相談なんですけれど、私も女子と仲良くなりたいというか、若干対人関係に難がありまして、女子がグループになった瞬間に恐怖を覚えるというか、だから架空の小説を書いたとしてもうまくいかないのかなーって。人間が見えていないというか、そのへんをぐるっとまとめて......。  どうしたらいいか、と? ――そうです!  知らねえよ!!!! ――ですよねぇー。  僕は自分のことでいっぱいいっぱいなんです! 「どうしよどうしよ」とか、「やばいぞやばいぞ」とか、いっぱい不安を感じながら......。 ――ちなみにどんな不安を抱えられているんですか?  どんな不安? どうやったらもっとタレントとして上手くやっていけるかなぁって......。 ――客観的に見ると、升野さんはすごく上手くやられていると思うんですが......。具体的な目標とかがあったりするんでしょうか。  特には。あんま分かんないですね、10年後とか。目の前のことを1個1個やっていくだけなんで、今くらいの感じでずっとやりたいです。今なんとか食っていけてるんで、もうこれだけで十分。あとはもうちょっとチヤホヤされたり、もうちょっと評価が上がれば......すいません、相談に乗れなくて。だって小明さんの出した本、タイトルが『アイドル墜落日記』って......。ノンフィクション? ――はい。スポットライトが当たらないアイドルの、華のない、辛酸をなめるような生活が良く分かる本なので、是非『アイドリング!!!』の皆さんにも悪いお手本として読んでいただきたいです。  あいつらもいつか書かなくてはいけないですからね。 ――それはなんか縁起が悪いですね......。あの、いつも『アイドリング!!!』を見ていて思うんですけど、升野さんって女の子を「苗字」+「さん」で呼んで、ある程度の距離を保って接するじゃないですか。芸人さんと若い女の子が出ているバラエティー番組って、親しげに下の名前で呼んだり、イチャイチャしたりしてて、「彼らは収録の後SEXしてるに違いない」って思ってしまうので、升野さんのそういう姿勢がとても好きなんです。  あはははは! ないですね! あのー、全然タイプじゃないんですよ、全員。可愛いと思ってないですからね。その、若い子がダメなんですよ。全員若すぎる。 ――私は初期の『アイドリング!!!』の子たちが好きです! キャラが濃くて!  「こいつマジか!?」ってヤツもいましたからね。珍味というか。最初に幼虫だったやつが、どうなるんだろうと思ってたら、そのままでっかく幼虫になったから。「このまんまだぞ、おい!」みたいな。個性溢れてましたね。 ――彼女たち、ゲームで顔面から突風を浴びるとき、酷い顔になるように口を開けて、ちゃんと面白くしようとするじゃないですか。そういう部分にプロ根性を感じてファンになりました。  はい、あれは僕があからさまに開けなかったヤツに変な空気を出すんです。画面では伝わらないかもしれないですけど、「何お前、かわい子ぶってんの?」って。大体そういう子には、その後、トークでも絡みもせずスパって置いていくんですよ。最初は頑張ってどうにかしようとしたんですけど、こっちも怪我するし、もういいやって思って。なんか、イチャイチャしたくないんですよ。調子乗るじゃないですか。 ――スパルタ升野塾! そうやって学んでいくんですね!  まあ、僕が勝手にやっているんですけどね。 (後編につづく/取材・文=小明) ●バカリズム(ばかりずむ) 1975年、福岡県生まれ。本名は升野英知。95年にコンビ「バカリズム」でデビューし、05年よりピンに転向。現在、単独ライブのチケットが最も取りにくい芸人のひとりである。最新DVD『バカリズムライブ「クイズ」』(アニプレックス)好評発売中。 ●小明(あかり) 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
バカリズムライブ「クイズ」 「ネタの発明家」(さまぁ~ず大竹)。 amazon_associate_logo.jpg
小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第17回】 島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」 【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」 【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」 【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」 【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

在日ファンクが目指すのは女の子に「キャー」と言われる"アイドル的"ファンク!?

hamaken_main.jpg
ミュージシャンとしても俳優としても今大注目されているハマケン。
 SAKEROCKのフロントマン・ハマケンこと浜野謙太が、トロンボーンをマイクに持ち替えジェームス・ブラウンばりのシャウトを響かせるバンド、在日ファンク。今年の1月には初のフルアルバム『在日ファンク』(P-VINE Records)を発表し、夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2010」をはじめとする音楽フェスやライブイベントに出演し、大きな話題をさらった。  そんな彼らが満を持して発表する新作は、本日10月20日より3カ月連続でリリースされるコラボレーションシングル。アルバムリリース時のインタビューでは、「SAKEROCKとの距離感に悩んでいて、アイデンティティ確立のため在日ファンクが必要だった」とバンド始動の経緯について自信なさげに語ったハマケン。およそ1年が経過して、その心境はどう変わったのか。また、ドラマ『モテキ』(テレビ東京系)への出演など、役者としても注目を集め始めた現状について話を聞いた。 ──アルバム『在日ファンク』のリリースから1年近く経ちました。以前はまだまだ不安要素も多かったようですが、今はずいぶん状況も変わったのでは? 浜野謙太(以下、浜野) そうですね。BOSE(スチャダラパー)さんと以前話した時に、「いろいろやってみないと分かんないよ」ってアドバイスをもらったことがあって。確かに、実際やってみると、SAKEROCKの活動もリラックスした気持ちでできるようになったんですよ。 ──SAKEROCKでも在日ファンクでも同じ「フロントマン」という立場ですが、やはり歌を歌う在日ファンクとインストバンドのSAKEROCKでは感覚が違う? 浜野 最初、在日ファンクでは面白い部分を出しちゃいけないと思ってたんです。でも「面白いところがない」とか「ツッコミどころがないから見ない」とかネットで批判されて(笑)。そうなると、SAKEROCKとの区別が必要だと思ってたけど、やっぱりどこかに面白い部分は自然と出ちゃうもので。最近は、だんだん在日ファンクなりの面白味の出し方も掴めてきたし、無理に縛らないことで、逆にSAKEROCKでも奇跡的なプレーというか、踊りというか......あ、立ち居振る舞い?(笑)ができることもあったりして。相乗効果がありましたね。
hamaken_inter.jpg
──10月、11月、12月と3カ月連続でコラボレーションシングルがリリースされますが、これはどういう経緯で決まったんですか? 浜野 以前ライブで(サイトウ"JxJx")ジュンさん(YOUR SONG IS GOOD)とかサイプレス上野君(サイプレス上野とロベルト吉野)とコラボレーションをやって、それがすごく楽しかったんですよ。そういう楽しいことが続いて、1回のライブのために新曲作っちゃえるぐらいドンドン曲ができてた時期に、レーベルの担当さんが「3枚連続シングルとかどう?」ってポロッと言ったんで、即答で「それいいッスね!」みたいな。採算的には危ない気もするんですけど(笑)、「言ったからにはやりましょうよ」って。 ──ゲストの3人はすぐに決まったんですか? 浜野 何度も話し合いをして、加護亜依さんとか野村沙知代さんっていうアイデアも出たんですけど(笑)、顔なじみのジュンさん、上野君ときて、最後にROY君(THE BAWDIES)が出てきたら、すごくカッコいい3連チャンでビシっとまとまるんじゃないかと。確固たるイメージを持ってる先輩方だから......ROY君は年下ですけど、アーティストの格としてはたぶん先輩なんで(笑)、そういう先輩方に在日ファンクの型作りを手伝ってもらったような、おすそわけしてもらったような感じがありますね。だからズルいんですよ(笑)。卑怯な3連チャンなんです。 ──アーティストとして"格上"だとおっしゃるTHE BAWDIESを、どのようにに見てきましたか? 浜野 なんでこんな渋い音楽を今やってんだろうなって(笑)。そこは俺も共通するところなので、一緒にファンクをやっても全然大丈夫だと思ったし、気持ちもわかってもらえるだろうなと。「あいつによろしく(在日ファンクとサイトウ"JxJx"ジュン)」と「BAY DREAM ~FROM課外授業~(在日ファンクとサイプレス上野)」はもともとあった曲ですけど、「Escape(在日ファンクとROY)」は、さっき話したドンドン曲を作ってた時期にできた新曲で。かたちにするのは結構難しかったけど、在日ファンクの曲を作る上で何か新しい扉を開けたような、大きな手応えがありました。 ──ちなみに、「Escape」のカップリング「京都」は以前からSAKEROCKのライブで披露されていた曲ですよね? SAKEROCKでやると、あまりに爽やかなソウル風味の歌モノで「異質過ぎて笑っちゃう曲」みたいな扱いでしたけど、在日ファンクがやるとちょっと意味合いが変わって聴こえてしまう。なんか、すごく真面目なんですよね。世間が持つ「ハマケン=面白おかしい人」みたいなイメージが揺らいで、どっちが本当のハマケン像なのかわからなくなるというか。 浜野 あー、うれしいッスね。1stアルバムの取材の時、よく「ZAZEN BOYSがカッコいい」っていう、俺が言わなくてもみんなが知ってるようなことを言いまくってたんですけど(笑)、ZAZEN BOYSの音楽って、まさにカッコいいのか笑っていいのか分かんない世界観だと思うんですよ。それが理想なんです。だから「ハマケン=面白おかしい人」ってイメージは在日ファンクではなくしたい。「京都」はマジメにくだらない曲にしたかったから、わざわざストリングスまで入れましたし(笑)。 ──でも「面白ハマケン」が好きだった人は、これで離れてしまうかもしれないですよね。 浜野 それはもう、1stアルバムを出した段階で十分離れたと思います(笑)。瞬発力で面白いことをするっていうのもいいんですけど、考え抜いて構築して、結局くだらないみたいな......。そういうのを在日ファンクでは目指しているので。 ──この3連チャンシングルが発表されることで新しいファンも増えると思いますが、それによって今までより忙しくなると思うんですが。バンドだけでもたくさん抱えてるのに、さらにタレント仕事、役者仕事と......。忙しくなることへのプレッシャーはないですか?
fankprof.jpg
浜野 いやー、ありますね。 ──"業界視聴率"が非常に高いと言われた『モテキ』(オム先生役を怪演)への出演は、役者業の部分で大きな転換期になり得るのではないかと思います。さらに来年には、映画『婚前特急』に準主役で出演するんですよね? 浜野 実は『婚前特急』は『モテキ』より前に撮ったんですけどね。前からSAKEROCKのライブを見てくれていた前田弘二監督がオーディションに呼んでくれて。 ──おぉ! ちゃんとオーディションを勝ち抜いて(笑)。 浜野 そうなんスよ。吉高由里子さんの事務所もよくOK出しましたよね(笑)。 ──じゃあ今回は「呼ばれたからにぎやかしで出てまーす」的なものではなく、結構マジメに"俳優"をやってるんですね? 浜野 偶然舞い込んだ話ではあったんですけど、たまたまハマリ役で......。まあ、役者業と言っても、たまたま続いただけなんですけどね。この後なんの仕事も来てないですから(笑)。 ──とはいえ、今をときめく吉高由里子の相手役ですから! 浜野 (急にどや顔で)いやー、吉高はなかなか良かったですよ。 ──うわっ、すごい上から目線(笑)。でも本当に「音楽どころじゃない」ぐらいのことになる可能性も、なくはないですよね。最終的に、浜野謙太はどこへ行こうとしているのでしょうか? 浜野 それがどんどん分かんなくなってて......。 ──ははははは。悩みがさらに深まってるじゃないですか。 浜野 『婚前特急』の試写会に行って「俺......役者で売れちゃうかも」とか思いながら、帰ってきて在日ファンクのシングル作ってると「俺は何をやってんだろう」って気持ちになるし。 ──いろんなことをやりながらも「でも俺はミュージシャンだから」みたいな気持ちはないんですか? 浜野 うーん......。でもミュージシャンってちょっと貧乏臭いような気がしてて(笑)。役者とかをやるやらないにかかわらず、専業ミュージシャン的なノリはあまりよくないんじゃないかと。だからそんなに......あ、アイドルにはなりたいですけどね。3連チャンシングルも関ジャニ∞みたいでしょ? ──アイドル!? え? ちやほやされたいの?(笑) 浜野 まぁ、ぶっちゃけそうですね。 ──あえてライバルを挙げるなら誰? 星野源君とか? 浜野 いや、星野君はライバルではないですねー。ライバル......ライバルかぁ......。あ、戦うってことだったら、もう「敵」だと思っているものはいっぱいあります!(笑)誰にも伝わらないと思うんですけど、「Escape」はサムライブルーに対抗した曲なんですよ。「サムライになんかなれないぞ。侍になりたいけどなれないのが、むしろジャパンなんじゃないか!」と思ってるから、そこは戦っていきたい。 ──結構巨大なものを敵認定しますね(笑)。 浜野 メンバーすらそんな曲だと気付いてないですけど(笑)。でもとにかく、貧乏くさくない生き方をしたいですね。1970年代、最盛期を迎えた頃のJBのどこに憧れるかっていうと、突き詰めるとたぶん音だけじゃないんですよ。 ──あの貧乏くささのない、リッチな感じ。 浜野 そうです。リッチな、余裕の塊みたいな。オーサカ=モノレールの中田亮さんが言ってたんですけど、JBは今でこそ「通が聴く音楽」になってるけど、当時は中学生くらいの女の子が「キャー」って言うような大衆音楽だったんだよって。俺はむしろその、大衆音楽のほうに行きたいんですよ。たぶん。 (構成=臼杵成晃/撮影=後藤秀二 ) ●在日ファンク 新しい時代のディープファンクバンド。高祖ジェイムズ・ブラウンから流れを汲むファンクを日本に在りながら(在日)再認識しようと、音、思想、外観あらゆる面から試みるその様は目を覆うものがある。しかし、それこそがまさにファンクなバンドなのだ。公式HP<http://www.zainichifunk.com/【ライブ】 10/24 NESTフェスティバル@渋谷O-EAST 10/31 多摩美術大学芸術祭@多摩美術大学 八王子キャンパス(入場無料) 10/31 自主法政祭@法政大学市ヶ谷キャンパス(入場無料) 11/21 ZAZENBOYS vs. ZAINICHIFUNK@新宿 ロフト
あいつによろしく 10日20日に発売されたがかりのハマケンが番組MCとしてタッグを組んだ盟友サイトウ"JxJx"ジュンをゲストに迎えたコラボシングル第1弾。カップリングには2人の番組から生まれた「スペシャボーイズ・ザ・ワールドのテーマ」も収録。また、11月17日発売のコラボ第2弾「BAY DREAM~FROM課外授業~」にはサイプレス上野、12月22日発売の第3弾「Escape」にはROY(THE BAWDIES)が参加している。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「音楽が一秒で降りて来る瞬間、それは幸福な体験」音楽家・菅野よう子の世界(前編) 「VOCALOID2」とフルカワミキ そして「サイハテ」、ネットとリアルをめぐる冒険 「声だけで泣ける」奇跡のシンガーソングライター・奥華子インタビュー

「生き急いだ分、戻ってやり直しができると思う」【江里夏】10歳で見たデイドリーム

erika_ss0006.jpg  元祖フリーアイドルで声優のルンルンこと宍戸留美さんが、自らカメラマンとして可愛い声優さんたちの写真を撮り、さらにアイドルライターの私(小明)がインタビューする不思議な連載の6回目です! 今回は『アニマル横町』や『しゅごキャラパーティー!』でおなじみの江里夏さん! ──お久しぶりです! 以前、この連載のカメラマンである宍戸留美さんの妹オーディションに、"仕込み"でいらっしゃってましたよね。  仕込みじゃないです! 本気で受かりたくて気合入れて行ったのに! ──ほとんど素人さんの中、姿勢から発声から一人だけあからさまにプロが混じってるから、審査員全員が仕込みだと思って......そんな理由で落選だったんじゃないかと。  声を大にして言いたい。勘違いです! 普通にネットサーフィンをしていて、『宍戸留美妹オーディション』を見つけて、「これだ!」って迷いなく決めて。宍戸さんは本当にカッコいい! ああなりたい! ──あわわ、仕込みと思ってすみませんでした! 江里夏さんはデビューが2005年の『アニマル横町』の主役で、その当時まだ16歳ですよね。現役高校生じゃないですか!  はい、16歳でした。でも、10歳で決断して、小学生の頃から公開オーディションを受けたり、養成所に行ったりいろいろ動いていたので......。 erika_ss0005.jpg ──10歳で!? 志を持たれるのが早いですね~。何かきっかけがあったんですか?  きっかけは、第3次くらいの人生の落ち目に来て......グダグダ悩んでばかりいて......。 ──落ち目、超早いですね。ちなみに第1次や第2次のは? いじめとかでしょうか。  はっきりとした記憶はないんですけど、いじめというか、小学校低学年ぐらいの頃でずっと人間関係で悩んでいて、落ちたり上がったりを繰り返して。で、その時にアニメを見て元気をもらったので、それから毎日発声やったり、走りに行ったり、とにかく鍛えて(笑)。 ──小学生の人間関係は意外と複雑ですからね......。それより、鍛え方がスポ根マンガみたい! 夢見るだけじゃなく行動派なの、尊敬します! erika_ss0004.jpg erika_ss0003.jpg  やれるところはやっておこうと! 養成所も、その時は通信講座しか入れなかったので通信をしばらく続けて。中学生になってから養成所に入り、2年間通ってました。でも、「このままここにいたら売れないな」って思って、辞めたんですよ。 ──わっ、すごい切り替えの速さ!  で、いろんな事務所を受けていたりしたら、とある事務所でボイスサンプルを録ってもらえるって聞いて、とりあえず録ってもらって、それで営業に行こうと思って。 ──その段階でまだ中学~高校生ってことですよね、なんて行動力だ......。  そこで録ってもらいに行ったら、その日のうちに事務所の社長さんに、某声優雑誌の編集者のところに連れていかれて、「この子うちに入るから」って言われて、その1週間後くらいに「面白いオーディションがあるよ」って言われて連れてかれて受けたのが、デビュー作の『アニマル横町』だったんです。 ──小学校から準備運動しまくった成果が存分に発揮されましたね! さぞ、達成感でいっぱいだったことでしょう!  いやいや、「これからだー」って。 ──大人だなぁ。有頂天になったりしないんですか? 私なら即、天狗ですよ。   ある程度はしていたと思います。でも、いろんな人に鼻を折っていただいて(笑)。 ──あはは! デビューされてから、1年間フリーの時期があったじゃないですか? 経歴から見るとトントンとうまいこといっているように見えるんですけれど、やっぱり何かしら事情があったんでしょうか。  その時は......あまり言いたくないんですけど、ちょっと精神的にまいってしまって。思春期と重なってたり、子どもだった部分が多かったので、大人が受け流せることが流せないで溜めてしまって、そういう発散法を知らなくて......。 ──仕事だから大人として扱われるけど、ほんの16、7歳の子どもですもんね。どうしたって溜まりますよ。 1年フリーになってみて、どうでしたか?  その時に自分にとって何が大切か、必要かっていうのが少し分かってきました。 ──そういう時に応援してくれた人とか、関わってくれた人っていうのは大きいですよね~。  大きいです! お説教を頂いたりもしたので、ありがたいなぁって。 ──優しくしてくれる人といい人がイコールではないってのが分かりますよね。  分かりますね~(しみじみと)。 erika_ss0002.jpg ──でも、近年ではアニメやゲームだけじゃなくって、ディズニー映画の吹き替えまでやられて、すごいことですよ!  今後の更なる野望みたいなのはありますか?  今、迷っているのが2つあって......でも、それを絞れないと進めない時があるじゃないですか? 時々、声優以外の違う仕事を持つ人生もアリかなって。 ──えーっ!! 10歳から11年、人生の半分以上が声優業に携わっているわけじゃないですか! それを捨てた場合は、どういう道に?  そしたら、とにかくいろんな物にひとつずつ手を出していこうかな、と。そして自分にハマッたものを突き詰めるか......。26歳までは全力でいって、ダメだったらスローライフを味わおうかな(笑)。 ──私、あと数カ月でその年になりますけど、スローライフのスの字もないや。マズイな、もう少し生き急ごう。しかしながら、江里夏さんは人生のペースが早いですね。若干、生き急いでいませんか?  えへへ。よく言われるんですけど、多分、生き急いだ分、戻ってやり直しができると思うので、それはそれでいいのかなって。人と一緒じゃなくても、順番が逆になろうが、とにかく自分を持っていれば! ──21歳でよくそこまで自分を持てましたね! 私は自分が一番信用できないっす! なんだかお侍さんのようだ。  同じことをこないだ母親から言われました。「あんたは生きるか死ぬかしかないの?」 って(笑)。 ──娘が侍じゃ、母も心配でしょうに。  生きてはいきたいんですよね......。あ、でも、気を抜くときはドバーって抜いてますよ! 1日中寝てたり、ハイキングとか滝巡りをしたり、お友達とお酒飲んだり。 ──私生活はエンジョイされてて良かったです。やっぱり息抜きをちょいちょいしていかないと!  人生、遊んでないとダメなんだって。お手本がお兄ちゃんなんですよ。3歳上の兄がいて、遊ぶところをちゃんと押さえている生き方をしてて、人の使い方もうまいし、「こうやって楽しんで生きていければいいんだ!」って。 ──おお、この年で人の使い方まで......是非使ってください! 今日はありがとうございました! (撮影=宍戸留美/取材・構成=小明) erika_ss0001.jpg ●えりか 神奈川県生まれ。ケンユウオフィス所属。2005年アニメ『アニマル横丁』主役:松崎亜美で声優デビュー。当時16歳。 主な出演作:『しゅごキャラ!どっきどき』(柊りっか役)、『ジュエルペットてぃんくる☆』(チターナ役)、『ぼくチロ!』(チヨ)など ●ししど・るみ 1973年福岡生まれ。今年デビュー20周年! 先日のドイツでのライブも大盛況でした!! ★映画「死刑台のエレベーター」 サントラがポニーキャニオンより発売中!! ★下北沢発インターネット音楽市場【Majix】の9月21日のサイト・オープンにあわせて 宍戸留美2010年の新曲が独占ダウンロード販売スタート。 待望のニュー・アルバムは12月12日午前0時より配信で発売予定。こちらも【Majix】完全独占、宍戸留美の新曲が買えるのはココだけです! http://www.majix.jp/ ★宍戸留美「宍戸留美コンサート2010」 2010年12月12日(日) 下北沢 GARDEN 開演 17:00 / 開場16:00 前売¥4,000 (1ドリンク代込・自由・整理番号付・税込) ■お問合せ 0570-00-3337 サンライズプロモーション東京 ■チケット発売日 9月26日(日)午前10 時発売開始 ■チケット発売所 ・チケットぴあ 0570-02-9999(音声対応/Pコード) http://t.pia.jp ・ローソンチケット 0570-084-003(Lコード) 0570-000-777(音声対応) http://l-tike.com ・イープラス http://eplus.jp 詳細は公式HPまで http://rumi-shishido.com/ http://twitter.com/RumiShishido http://www.myspace.com/rumishishido ●あかり 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
アイドル墜落日記 小明ちゃん、もうすぐ26歳です! amazon_associate_logo.jpg
【声優 on FINDER!】バックナンバー 【vol.05】「何でも出来るって、とりあえず言っちゃう」【矢野明日香】360度のワークフィールド 【vol.04】「考えてると、寝ちゃうんです......」【窪田涼子】東経135度のモラトリアム 【vol.03】「いいものを出せば必ず返ってくる」【チャン・リーメイ】100%のプロレス・マインド 【vol.02】「いつもどこかで、なんとかなるさ」【片岡あづさ】22歳のセカンドフェーズ 【vol.01】「Twitter始めるまで、いつも泣いてた」【宍戸留美】20年目のセルフポートレート

"東京国際映画祭"サイゾー流裏ガイド 虫食い、毒ガエルなど味な珍品に注目!

tiff01.jpg
東京国際映画祭「コンペティション」のプログラミング・ディレクター・矢田部吉彦氏。
フランス生まれのスイス育ちで、元銀行員というユニークな経歴の持ち主だ。
 「第23回東京国際映画祭」が10月23日(土)~31日(日)、六本木ヒルズで開催される。上映作品約200本と国内最大の映画祭だが、「国際映画祭にしてはゲストが地味」「どれが面白い作品か、よく分かんない」などと言われることも。そこで、実際そこんとこどーなのよ、と映画祭スタッフへぶっちゃけインタビューを敢行することに。映画祭のメーン企画である「コンペティション」のプログラミング・ディレクターであり、「WORLD CINEMA」の選定、他にも「日本映画・ある視点」「natural TIFF」の選考にも関わっている矢田部吉彦氏に、映画祭について根掘り葉掘り聞いてみた。これを読めば、映画祭への興味が俄然湧いてくるはず!? ──依田巽チェアマンが「3年で3大映画祭に追いつく」と公約して3年目を迎えましたが、公約は実現できそうでしょうか? 矢田部吉彦氏(以下、矢田部) う~ん、依田チェアマンの発言はですね、公約というよりも、東京国際映画祭(TIFF)として大きな目標を持とう、ということだと受け止めています。なぜ3大映画祭があれほど映画界で敬意を払われているかというと、歴史があるということなんです。カンヌ、ベネチア、ベルリンとどれも60年以上の歴史を持っています。映画祭って、ものすごくお金がかかるし、手間も労力も要する。それを3大映画祭は半世紀以上続けているわけですから、大変なことですよ。TIFFも20回を越え、映画祭としてなかなかの時期にきていると思います。それに3大映画祭と言っても、実際はカンヌの人気が独走している状況で、カンヌの次には9月に開催されるトロント国際映画祭が業界的には重要視されており、もう3大映画祭という括りはあまり意味がないんです。そういう中で、TIFFも先行する映画祭に少しでも追いつこうということで、依田チェアマンは発言されたんだと思っています。 ──「コンペティション」では、第11回『オープン・ユア・アイズ』(97)、第13回『アモーレス・ペロス』(00)がグランプリ受賞、第15回『シティ・オブ・ゴッド』(02)などの秀作が上映されてきましたが、最近のコンペ作品は地味になっていませんか?
tiff03.jpg
「WORLD CINEMA」の『エッセンシャル・
キリング』はヴィンセント・ギャロ主演。
よゐこの濱口しかり、サバイバルに強い男は
女性にモテる?
矢田部 ボク自身は映画を見るにあたって、地味か派手かといった見方はしておらず、クオリティーの高さを求めています。でも、ご指摘のとおり、ボクがコンペティションのセレクションをするようになって4年目ですが、「コンペティション全体は粒ぞろいになったけど、作品は小粒になった」と言われているのは確かです(苦笑)。そこで今年はクオリティーは下げずに、粒の大きめな作品も意識的に選んでいます。ぜひ、世界76国832本の中から選び抜いたコンペティション15作品を1本でも見てほしいですね。理想を言えば、コンペティションの15本すべてTIFFで全世界初上映となるワールドプレミアならいいんですが、現実的にはそれは難しい。10月のTIFFに出品してくれと頼んでも、「いや、9月のベネチア映画祭に出品することが決まっているから」「もう少し待って、2月のベルリン映画祭に出そうと思う」など断られてしまう(苦笑)。そこはまだまだTIFFの弱いところです。そこでトロント国際映画祭はコンペティションを持たない映画祭なので、トロントでワールドプレミア上映される作品を、アジアプレミアという形でTIFFに持ってきたりしています。 ──10月開催という時期が、そもそも厳しいわけですよね? 矢田部 確かにそうです。でも、依田チェアマンが「世界に映画祭は数千ある」と会見で話していたかと思いますが、そう考えると、どの時期にやっても同じですね。1月開催にすれば、もっとベルリン映画祭に作品が流れるし、4月開催ならカンヌ映画祭の影に隠れてしまいます。どの時期にやっても難しい。なら、10月でやれるベストを尽くそうということです。10月は釜山国際映画祭もありますが、作品が重ならないようにしています。釜山のプログラミング・ディレクターとは仲が良いので、作品を奪い合って険悪な関係になるようなことはないです(笑)。11月には同じ東京で、東京フィルメックスも開催されますが、個人的志向に走れば、ボクもフィルメックスのような作品選びになるだろうなぁと思いますね。逆にTIFFはフィルメックスとはテイストや規模感の異なるものを入れようと考えています。フィルメックスのプログラミング・ディレクターはすごく楽しいと思いますよ。コアな映画ファンの期待に応えるシネフィル的な作品を上映するのは、とても楽しい作業。でも映画人口を少しでも増やし、すそ野を広げ、映画業界の人材の循環を活性化させることも映画祭の大事な使命なので、TIFFではその部分を強く意識しています。岡田准一主演の『SP野望編』やデヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』を観に来た人が、ついでにコンペティション作品も見て「へぇ、意外と面白いじゃない」と思ってもらいたいんです。 ■09年の『ザ・コーヴ』に続く話題作はコレだ! ──TIFFというと、どうしてもマジメな作品が上映されているイメージがあるんですが、好奇心旺盛な日刊サイゾーのユーザーが食いつきそうなひねりの効いた作品をぜひ教えてください。 矢田部 分かりました、とんがりミーハーな方たちが興味を持つ作品を選びましょう(笑)。「特別招待作品」では草刈正雄さんが殺し屋に扮した『歌うヒットマン!』はどうでしょうか? ミュージカルで3Dという摩訶不思議さが評判になっていて、前売り券の売れ行きがいいんです(笑)。「WORLD CINEMA」ではロマン・ポランスキー監督の『ゴースト・ライター』は見応えのある政治サスペンスで、『スター・ウォーズ』シリーズのユアン・マクレガーが主演です。ヴィンセント・ギャロ主演の『エッセンシャル・キリング』もお勧めです。テロリスト役のギャロがCIAに追われる逃走劇なんですが、冬山の中で飢えたギャロが木の皮を剥いで食べたり、地面を掘って虫を捕まえて食べたりするサバイバルものです。これなんかサイゾー的にストライクじゃないですか(笑)。 ──ヴィンセント・ギャロが虫を食う! これは見てみたいですねぇ。矢田部ディレクターが直接担当するコンペティションのお勧めも教えてください。 矢田部 コンペティションのどれを見ればいいのか分からないという人に、まず見てほしいのが『サラの鍵』ですね。ユダヤ人のホロコーストを題材にしたものですが、フランスでもフランス人がユダヤ人を迫害していたというリアル・ドラマです。もうひとつ、『ビューティフル・ボーイ』もシビアですが、重厚な人間ドラマです。大学構内で起きた銃乱射事件を加害者である少年の親の立場から描いたもの。『クィーン』(06)でブレア首相をそっくりに演じたマイケル・シーンが熱演しており、ぐいぐい引き込まれます。若手女優で選ぶなら、『わたしを離さないで』。キーラ・ナイトレイも出演していますが、『17歳の肖像』(09)で今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたキャリー・マリガンがメチャメチャかわいいんです。彼女は日本人が好きなタイプでしょう。
tiff02.jpg
「コンペティション」の『わたしを離さないで』。
キャリー・マリガン(手前)は現在25歳だが、
童顔なので10代の学生役にぴったり。
(c)2010 Twentieth Century Fox Film Corporation.
All Rights Reserved.
──童顔のキャリー・マリガンは、ロリ系好きは見逃せませんね。 矢田部 まぁ、そういう下世話な気持ちを持つことが申し訳なくなるような、ピュアな青春ドラマですよ(笑)。カズオ・イシグロの同名小説が原作で、彼女たちの暮らす寄宿学校には秘密が隠されていて、クライマックスにはドンデン返しが待っています。若手女優なら、日本の『海炭市叙景』の谷村美月も素晴らしい演技を見せています。もう1本、日本の作品である『一枚のハガキ』も是非ものです。今年98歳になる新藤兼人監督は「これが最後の作品」と公言しており、来場していただくことになっています。大ベテラン監督の来場は、それ自体がもう事件じゃないですか。 ──昨年、追加上映され大きな波紋を呼んだ『ザ・コーヴ』のような衝撃作はありませんか? 矢田部 毎年『ザ・コーヴ』みたいな作品があるのも考えものですけどね(苦笑)。でも、配給が難しいような問題作でも臆せずに上映するのが映画祭の醍醐味です。そうですねぇ、『ザ・コーヴ』級の衝撃作は、「natural TIFF」の『そのカエル、最凶につき』かな。オーストラリアで害虫駆除のために輸入された外来種のカエルを追ったドキュメンタリーなんですが、最初は100匹程度だったカエルが害虫を食べず、しかも民家を襲撃し、今やオーストラリアの半分を占めるまで異常繁殖した様子を数年掛けて追ったものです。そのカエルは毒性があり、噛んだ犬が死んでしまうほど。毒ガエルが異常繁殖している様子が大スクリーンに映し出されるので、これはかなりの迫力です。カエルが苦手な方は観ないほうがいいでしょうね。
tiff04.jpg
「natural TIFF」の注目作『そのカエル、
最凶につき』。異常繁殖した毒ガエルの
恐怖を描いたドキュメンタリーだ。
(c)Radio Pictures P/L and Screen Australia
■映画祭にまつわる"お金"の話 ──矢田部ディレクターの話を聞いていると、どれも面白そう。チラシやHPの淡々とした味気ない解説文はどうにかなりませんか? 矢田部 限られた文字数では、なかなか作品の面白さを伝えられずにいるかもしれませんね。PRの仕方はTIFFとして考えるようにしますし、ボクももっといろんな機会に宣伝に努めるようにします。 ──近年はすっかり海外のスターの来日が減ってしまい、華やかさに欠ける点はどう考えていますか? 矢田部 ハリウッドスターなどの招聘は映画祭側ではなく、メジャー系の配給会社が作品のプロモーションを兼ねて担当しており、ボクからは何とも言いにくいんですが、大物スターの来日とハリウッドの話題作の日本でのプレミア上映が減ってしまった原因は海賊版防止とセキュリティー対策なんですね。海賊版の流出を防ぐため、日米同時公開が増え、日本での事前のプロモーションができなくなってしまった。この秋にジュリア・ロバーツやトム・クルーズ、キャメロン・ディアスらが来日しましたが、公開直前に来日してテレビ取材だけ受けて帰るというパターンが最近は定着しています。とは言え、映画祭には華やかさは必要です。ゲストの招聘は考え直す時期に来ていますね。配給会社に委ねるのではなく、映画祭が独自のゲストを招くなど検討すべきでしょう。でも、TIFFがプライベートジェットを用意できるのか、いやそのくらいするべきだなどの議論がTIFF内で起きるでしょうね。 ──ウィキペディアに「予算13億円」と記述されていますが、映画祭ってお金が掛かるもんなんですねぇ。 矢田部 13億円!? いやいや、多分その半分ぐらいだと思いますよ。13億円もあれば、もっと豪華な映画祭になっています。プライベートジェットにリッツ級の最高級ホテルを用意すると言えば、来てくれるゲストは増えるでしょう(笑)。TIFFは海外の映画祭と比べても国からの援助の割合は決して多くないんですよ。でも、今のTIFFで13億円も使われていると思われているなら、成功していると言えそうですね(笑)。やはり映画祭はお金が掛かります。シネコンを丸ごと貸し切るわけですし、コンペティションの作品も英語字幕、日本語字幕を付けるのに1本につき100万円程度かかります。フィルムを15本用意するだけで、単純に1,500万円ですからね。 ──04~08年には「黒澤明賞」なる功労賞がありましたが、第1回の受賞者としてスピルバーグ監督に賞金10万ドルを贈っていましたよね。スピルバーグに1,000万円あげても、まったく無意味だったんじゃないですか? 矢田部 「黒澤明賞」にはボクはタッチしていなかったので、詳しいことは分かりませんが、先ほど話した映画祭独自に海外の大物スターを呼ぼうというトライアルのひとつだったんじゃないでしょうか。確かにスピルバーグ監督にとって1,000万円は、ほんのポケットマネーでしょうね。それに、スピルバーグ監督は来日してくれなかった。きっと、担当者は映画祭ギリギリまで来日するよう交渉していたんじゃないかと思います。でも、映画祭に功労賞みたいな賞は今後もあったほうがいいでしょうね。
tiff05.jpg
"生誕70年記念"としてブルース・リー主演作
『燃えよドラゴン』『ブルース・リー死亡遊戯』も上映。
ブルース・リー信者が多数ゲストとして登壇する模様。
(c) 2010 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
──矢田部ディレクターは手堅い銀行員から転職して、映画祭の仕事に関わるようになったわけですが、年間500~800本もの映画を見る今の仕事は大変では? 矢田部 銀行には10年ほど勤めていたんですが、それはもう毎日がイヤでイヤで仕方なく、鬱屈した日々だったんです。映画はずっと好きで、海外駐在中に「こんなに面白い映画があるのに、なんで日本で公開されないんだろう」と思ったのが、この仕事に就いたきっかけですね。でも、「趣味は仕事にしないほうがいいんじゃないか」「今の仕事から逃げ出したいだけじゃないのか」と3年くらい悩みました。それを考えると、今のように映画を見てメシが食えるなんて夢のようです(笑)。自宅で延々とDVDを見るのはちょっとしんどいですけど、出張で海外の映画祭に出向き、朝から夜までずっと映画を見続けるのは楽しくて仕方ないですねぇ。映画祭も組織として動いているので会社員を経験できたことはプラスだと思っていますし、あの鬱屈した10年間があったので、映画祭の仕事を突っ走ることができているように思いますね(笑)。ひとりでも多くの方に映画祭に関心を持ってもらい、劇場で映画を見る楽しさを知ってもらえればと考えています。ぜひ、会場に足を運んでみてください。 (取材・文=長野辰次) ●やたべ・よしひこ フランス生まれ、スイス育ち。日本興業銀行(現みずほ銀行)を退職後、佐藤真監督のドキュメンタリー映画『阿賀に生きる』(92)のプロデュース、フランス映画祭の運営などを経験。東京国際映画祭には2002年から参加し、04~06年は「日本映画・ある視点部門」のプログラミング・ディレクターを担当し、舞台あいさつ、Q&Aなどの司会進行も手掛ける。07年から「コンペティション」のプログラミング・ディレクターに就任。また、海外の映画祭で受賞するなど話題になりながらも日本での公開が決まっていない秀作を集めた「WORLD CINEMA」を発案、企画するなど映画祭の改善、改良に努めている。 ●東京国際映画祭 公益財団法人ユニジャパンが主催する国際映画祭。1985年に第1回が開催され、これまでに『タイタニック』(97)のワールドプレミアが開かれるなどで話題を集めた。依田巽チェアマンが就任した08年から映画祭初日のレッドカーペットがリサイクル素材によるグリーンカーペットに変わり、定着している。映画祭の中心となる「コンペティション」は世界各国から公募された作品の中から厳選された15作品が競い、「東京サクラグランプリ」「審査員特別賞」「最優秀監督賞」「最優秀女優賞」「最優秀男優賞」「最優秀芸術貢献賞」が最終日のクロージング・セレモニーで発表される。今年は10月23日(土)~31日(日)、六本木ヒルズのTOHOシネマズ六本木ヒルズをメーン会場に開催される。 <http://www.tiff-jp.net>
こんなに楽しく面白い世界のファンタスティック映画祭 ファン! タス! ティック! amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 エコ志向は本物? スポンサーの影響は?「東京国際映画祭」ウラオモテ イルカ好きのための妄想映画『ザ・コーヴ』が意外にも欧米プレスから総スカン!? 松江哲明×前野健太「もはや"ハメ撮り"!?」吉祥寺の空を突き抜ける歌声