「一人一人の言葉に耳を傾けて欲しい」 『FREAKOUT』知的障害者バンドの記録

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鬼才・故石井輝男監督の愛弟子でもある矢口将樹監督。
監督二作目となる本作に込めた思いとは?(取材場所:K's cinema)
 静岡県富士宮市・超教派弘願寺の二代目住職・角田大龍氏が、「頭脳警察」「裸のラリーズ」などの伝説のバンドを支えたミュージシャンたち、そして知的障害を持った3人の僧侶と結成したバンド「ギャーテーズ」。彼らを追ったドキュメンタリー映画『FREAKOUT』が3月5日から公開される。  世界共通語である"音楽"を軸に描かれた本作だが、僧侶たちが生活する寺の創設者である在日朝鮮人・和上が帰国したことをきっかけに、それぞれの歯車が狂い出す。苦境に喘ぐ寺の再建の過程で、和上とバンドのリーダーである大龍との確執が表面化していく。単なる考え方の違いではなく、日韓日朝問題という歴史的背景も複雑に絡み合い、双方の主張は平行線をたどる。はたして、この映画に込められたメッセージとは何なのか? 監督である矢口将樹氏にお話を伺った。 ――監督がギャーテーズを知ったきっかけを教えてください。 「一緒に映画をやっていた友人から『面白そうな題材がある』と教えてもらったことがきっかけです。それで、当時(2002年頃)、病気で入院していたバンドのリーダー・大龍さんに会いに行きました。"障害者"であり"お坊さん"がバンドをやっていれば、ドキュメンタリーとして何かしら形になるんじゃないか、とりあえずやってみようという感じで撮影を始めました」
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――実際に障害者たちが生活する環境に身を置いて、どのように感じられましたか? 「最初はかなりキツい場所をイメージしていたんですが、全然普通だったので驚かされました。みんな普通に会話することもできるし、魅力的な人ばかりです。僕たちが話すよりもまっとうでしたね」 ――「まっとう」というのは? 「頭で考えたことが、ダイレクトに言葉として出てくるんです。それがすごいなと思いました。自分の言葉として、日本語をここまでちゃんと話せる人たちに、それまであまり接したことがなかったんです」 ――フィルムが進むにつれて、障害者バンドから、だんだんと日本と韓国、朝鮮との関係も描かれるようになっていきますね。始めからそちらの問題も取り上げようと考えられていたんでしょうか? 「いえ、もともと朝鮮人住職はいなくて、そういう寺(在日朝鮮人のためのお寺)だということは全然知らなかったんです。撮り始めた当初は『ちょっと面白くないな』と思いながら撮影していたんですが、住職が帰ってきたあたりから、バンドよりもこの住職にシフトした方が面白いなと思ったんです」
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(c) TRICKSTER FILM 
――寺の再建をめぐって、この「和上」という朝鮮人住職と大龍さんとの確執が表面化していく過程で、和上はともするとヒールとして描かれてしまいそうですが、映画の中ではヒールとしてではなく、とても人間くさい人物として扱われているように思います。 「彼にとって日韓日朝問題は、多くの日本人のように『しょうがない』という一言で片付けることはできない問題なんです。それは、自分自身を否定してしまうことになってしまう。明確に提示しているわけではありませんが、日本と韓国、朝鮮のために尽くした人がいるということを少しでも分かってもらえれば」 ――ただ、和上の姿を見ていると、やはり日本と韓国、朝鮮の埋まらない溝を感じてしまいます。 「当時は北朝鮮に対するネガティブな報道が多い時期だったんですが、和上という人物は、そんなマスコミが作るイメージそのものだったんです。韓国や北朝鮮の方は、日本が過去にいかにひどいことをしたかと問いつめる。けれども、戦争を知らない世代の日本人はどうすればいいのか分からない。実際、僕が和上からその質問を突きつけられたときも、結局、彼らがどうして欲しいのか分かりませんでした。和上という人間はとても日韓日朝問題に対して熱い人物ですが、同時に日本のことが好きで、ギャーテーズのことが好きで、みんなと楽しくやりたい人だったと思うんです。けれども、最終的には個人としてのスタンスよりも、国のスタンスを優先しなければならない。そういうジレンマは可哀想だなと思いましたね」 ――完成から8年の歳月を経て無事公開の運びとなったわけですが、公開にあたっての心境は?
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(c) TRICKSTER FILM 
「ちょうど02年、03年の頃は拉致被害者が帰国し、日朝問題が注目されていたので、そのようなタイムリーな時期に公開できればよかったとは思います。完成から2、3年は毎日のように、何とか公開できないかと悶々としていましたね。ただ、そういった感情すらなくなった頃に劇場公開の話が具体化したので、『ラッキー』という感じです。実はこの作品は、大学生の頃に初めて撮ったものなんです。公開が決まって、だいぶ直さなきゃならないんだろうなと思いながら見直したんですが、結局1カット削っただけでした。撮影は下手ですが、編集に関してはこれはこれでいいかな、と」 ――障害者と日朝問題のどちらが、メッセージとしてより残ってほしいですか? 「別にどちらも打ち出したくないし、テーマにしているわけでもありません。登場人物のバックグラウンドが障害者や在日っていうだけで、あまり難しく考えてほしくないんです。それよりも、一人一人の言葉をしっかりと聞いてほしいなと思います。みんな本当に言葉に魅力がある人たちなんです」 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]/撮影=佐久間ナオヒト) ●やぐち・まさき 1978年長野県生まれ。武蔵野美術大学油絵科卒。鬼才・故石井輝男監督に師事し、遺作となった「盲獣VS一寸法師」(04年公開)にスタッフとして参加。05年石井監督の急逝後、同作の撮影風景を収めた「石井輝男FAN CLUB」(撮影・熊切和嘉)を監督。石井監督の最晩年の姿、演出風景が一挙に映るこの貴重なドキュメンタリーは06年に短期公開されたが、 今や幻の作品となっている。本作「FREAKOUT」が監督第二作目。新進気鋭の若手監督である。映像制作チームTRICKSTERFILM所属。現在は映画だけでなく、テレビや舞台、ライブなど、さまざまなジャンルの映像制作に携わっている。 fo05.jpg ●『FREAKOUT』 監督・撮影・編集/矢口 将樹  撮影/菅原 養史、松本 真樹 出演:ギャーテーズ 角田 大龍(Syn Key)、小山 大僑(Vo)、大久保 弘順(Vo)、荒川 大愚(Cl)、高橋 ヨーカイ(Bass ex.裸のラリーズ)、棟居 イズミ(G)、石塚 俊明(Ds from 頭脳警察)、寺田 佳之(Per)、松本 ケンゴ(G from フリーキーマシーン)、釋 弘元 宣伝・配給/ふーてんき 製作/TRICKSTER FILM 公式サイト<http://www.freakout-movie.com> 3/5より新宿K's cinema、渋谷アップリンクにて公開 公開記念イベント開催決定!! ●『FREAKOUT』公開記念!! トーク&ライブ ギャーテーズの角田大龍氏が参戦し、ギャーテーズ秘蔵ライブ映像とともにその軌跡を語ります。また、松江哲明監督と山下敦弘監督のトークや、スペシャルゲストによるミニライブもあり。 ※登壇者は諸事情により当日変更となる場合も御座います。予め御了承ください。 【日時】3月6日(日)OPEN12:00 //START13:00 【場所】ネイキッドロフト(新宿)<http://www.loft-prj.co.jp/naked/> 【出演】角田大龍(ギャーテーズ)、松谷健(CAPTAIN TRIP RECORD 代表)、小林健二(アーティスト)、山下敦弘監督(『リンダリンダリンダ』『天然コケッコー』他)松江哲明監督(『童貞。をプロデュース』『ライブテープ:他)、松本章(ふーてんき音楽・ライター)、ほかスペシャルゲスト来場予定。 【チケット】前売1,300円/当日1,500円(共に飲食代別) 前売りはローソンチケット【L:36779】&ネイキッドロフトHP にて発売中!! ●『FREAKOUT』公開記念ライブ  映画の公開を記念して、ギャーテーズ出演のライブイベント決定! 詳細は近日発表。 【日時】3月23日(水) 【場所】下北沢ガーデン <http://www.gar-den.in/pc/index.php>
盲獣VS一寸法師 異色のキャストです。 amazon_associate_logo.jpg
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二郎とマラソンは"似て蝶"!? 生粋のジロリアンが語るラーメン二郎の経営学

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多いときには月20杯、二郎のラーメンを食べるという、
筋金入りのジロリアン・牧田氏。
 ラーメン狂がお気に入りの店を語るときは、得てしてアツく前のめりになりがち。中でも、"ラーメン二郎"をこよなく愛する人々の、傾倒ぶりときたらない。皆さんの周囲にも、ラーメン二郎をソウルフードにしている"ジロリアン"がいるのではないだろうか。  信州大学経営大学院で教鞭をとる、経営学者の牧田幸裕さんも、そんなジロリアンのひとり。二郎好きが高じて、書籍『ラーメン二郎にまなぶ経営学』(東洋経済新報社)まで出してしまったのだ。そんな牧田氏に溢れんばかりの二郎愛を語ってもらった。 ――"ラーメン二郎"と"経営学"とは唐突ですね? 牧田幸裕氏(以下、牧田) いえ、実はラーメン二郎は経営学を解説するのに非常に良いモデルなんです。一般的に商売のやり方は、お客様を広く薄く取るか、もしくは、狭く深く取るか、の大きく分けて2つ。後者を経営学では"差別化"と言います。二郎は、この"差別化"に成功しているいいケースなんですよ。二郎を使って、差別化の説明をすれば、経営学に慣れ親しんでない方々にも入りやすいのではないか、と思って書きました。 ――経営学の本というよりは、二郎の素晴らしさをあの手この手で説かれているようで、牧田さんの愛情がひしひしと伝わってきました。 牧田 光栄です。本の執筆のときは、まず二郎を食べに行き、その高いテンションのまま書いていました。そうすると、ついつい暑苦しい文章になってしまうんですが(笑)。執筆時は月に20杯は二郎を食べていたので、まさに"ロイヤル・ジロリアン"(=牧田氏の造語。月に20杯、年間で約20万円を二郎につぎこむ人の意)でした。 ――それほどまでに愛する二郎との、出会いのきっかけとは? 牧田 社会人1年目、全然自分の力が通用しなくて、自信を失っていたんです。そのときにふらっと入ったラーメン屋が二郎だった。二郎のことを何も知らずに大盛りを頼んだら、とんでもない大きさのラーメンが出てきて、僕はラーメンにすら勝てないのか、と思ったんです。ですが、ラーメンなんかにまで負けてなるものか、と悔しい気持ちをバネに完食。この二郎大盛りに打ち勝ったのが、東京に出てきたときの初めての成功体験だったわけです。目の前のラーメンは、"いただくモノ"であって、決して"戦うモノ"ではないのですが。
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"ロイヤル・ジロリアン"とは牧田氏の
造語で、月に15~20回二郎に通う人を
指すらしい。彼らが年間二郎に費やす
金額はおよそ20万円!
――"戦い"と言いたくなるほど、食べ切るのが大変なんですか? 牧田 店舗によって差がありますが、麺の量は「小」で200~300グラム、「大」で400~500グラムありますからね。ちなみに、他のラーメン屋はだいたい120~150グラムです。また、二郎の店から出てくる人を観察していたところ、疲れている人が妙に多い、ということに気付いたんです。ラーメンを食べているだけなのに、疲れるとはどういうことだ、と。でも、みんなどこか爽やか。まるで、マラソンを走り終わったあとの高橋尚子選手のように、達成感がにじみ出たほほえみを浮かべているんですよ。つまり、二郎を食べている間はまさにマラソンで、自分を信じて頑張って食べ切ることに喜びを見出す文化がある。これが、二郎独特の"差別化"のひとつなわけです。 ――ラーメン二郎を食べるのは、スポーツのようなものなのですね。マラソンということは、個人競技なのでしょうか? 牧田 チームスポーツの要素も持っているかと思います。周囲のお客さんとの"同志愛"のようなものを感じるんですよね。例えば、他のラーメン屋では気にならないのに、二郎では、周囲の人がラーメンをズルズルとすする音が気になる。その音を聞くことで、心の中で『お互い頑張って食べてるな』と励まされる。こうして、偶然同じ日、同じ時間、同じ店に居合わせた何人かが、チームになって頑張ってる、という状況が生まれるんですよ。この、店内のジロリアンとの独特な連帯感も、二郎の提供価値になっていますね。 ――"ロイヤル・ジロリアン"のようなベテランさんがたくさんいる中で、初心者はどう振る舞えばいいのでしょう。二郎でのお作法をうまくこなせるのか、不安です。 牧田 おそらく、初めての人が面食らう関門は、"トッピングコール"でしょうね。「野菜ましまし、カラカラ、アブラ、ニンニク」などと言うのですが、ジロリアンの間では"呪文"と呼ばれています。食券を出したら、トッピングコール(=呪文)を突然聞かれるので、ボーっとしないこと。また、呪文は流暢に言えなくてもいいので、ゆっくりと自信を持って言うことです。ベテランのジロリアンは早口でペラペラと唱えるけど、それができないからって焦らなくても大丈夫。緊張のあまり噛んでしまうこともあるかもしれませんが、周りのジロリアンもそんな初々しい姿を見て、「自分にもそういう時代があったよなぁ」なんて昔を振り返るはずですよ。  結局、"経営学"ではなく"二郎"の話に終始してしまったが、これこそがラーメン二郎の経営戦略でもある、と牧田氏は言う。「二郎の顧客が、二郎の良さを周囲に口コミで広める。つまりこれは、経営学で言う"コミュニティマーケティング"に成功している、ということです」。  そんなジロリアン兼経営学者・牧田氏に、初心者にもオススメの二郎はどの店舗かを聞いたところ、「こればっかりは主観になってしまいますが、僕は三田本店と目黒店がお気に入り。でも、人によって好みが分かれる部分ですから、ぜひ自分にとっての最高の二郎を探して食べ歩いて下さい。"二郎クエスト"です! スライムは出てきませんがね(笑)」とのこと。モンハンもいいけど、今度は二郎でも狩りに行こうかしら、なんて。 (取材・文=朝井麻由美) ●まきた・ゆきひろ 1970年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科修了。アクセンチュア戦略グループ、サイエント、ICGなど外資系企業のディレクター、ヴァイスプレジデントを歴任。2003年IBMビジネスコンサルティングサービスへ移籍。インダストリアル事業本部クライアント・パートナー。主にエレクトロニクス業界、消費財業界を担当。IBMでは4期連続最優秀インストラクター。2006年信州大学大学院経済・社会政策科学研究科助教授。07年より現職。著書に『フレームワークを使いこなすための50問』(東洋経済新報社)、雑誌連載など多数。
ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣 ある意味、二郎入門書。 amazon_associate_logo.jpg
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日本では上映不可の問題作が解禁!バイヤーが語る洋画買い付け裏事情

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シャルロット・ゲンズブールがカンヌ映画祭主演女優賞を受賞した
『アンチクライスト』。美しい森の中で、大変なことが起きてます。
(c)Zentropa Entertainments 2009
 ビョーク主演の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)がカンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞したことから、日本では感動作としてよもやの大ヒットを記録したラース・フォン・トリアー監督。その後に発表した『ドッグヴィル』(03)、『マンダレイ』(05)を観れば分かるように、本来は人間の心の暗黒面を執拗にえぐり出し、観てる側が「もう勘弁してください」と涙目で逃げ出したくなってしまうサディスティックな作風が持ち味の監督なのだ。2009年のカンヌ映画祭でシャルロット・ゲンズブールが主演女優賞を受賞した新作『アンチクライスト』は、題名からも察せられるよう、敬虔なキリスト教信者なら卒倒しそうなアブノーマルな内容。セックスの最中に幼い息子を事故死させてしまった夫婦(ウィレム・デフォー、シャルロット・ゲンズブール)が心理治療のために森の中の山小屋で過ごすが、息子を死なせてしまったショックから立ち直れない妻は精神状態がさらに悪化。妻は事故の根源となった性欲を嫌悪するあまり、夫の局部をブン殴るわ、気を失った夫の足にドリルで穴を空けるわ、さらには自分の女性器をハサミで......。観てる側は「ほんと、もう勘弁してください」と涙目で許しを乞いたくなる強烈さ。しかも、おしゃべりするキツネが登場するシュールな展開。オー・アンビリーバボー!  カンヌでも物議を醸した本作は、日本での公開は無理だろうと囁かれていたが、果敢にも手を延ばしたのが近年、マニアックな作品を次々と買い付けているキングレコードだ。同社の第三クリエイティブ本部映像制作部に所属するバイヤー兼セラーの内田顕子さんに、『アンチクライスイト』をはじめとする逸品の数々の買い付けにまつわるエピソードを語ってもらった。 ──『アンチクライスト』がプレミア上映されたカンヌ映画祭での反響はどうだったんでしょうか? 内田 2009年5月のカンヌ映画祭コンペ部門で、無修正版の上映を観たんですが、上映前から"性描写がすごいらしい""かなり痛い内容みたいだ"と大変な評判になっていました。確かに性器が写し出されたり、痛いシーンが多く、ダメな人たちはスクリーンから目を逸らしていましたね。上映終了後は大ブーイングが起き、でも一方では拍手も湧き、まさに賛否両論状態。常に問題作を発表し続けるラース・フォン・トリアー監督らしい反響でした。個人的にも決してキライな作品ではなかったですね(笑)。日本からは他社のバイヤーも多数、カンヌに来ていたんですが、バイヤーみんなが思ったことは「すごい映画。でも、日本の税関を通すのが難しいだろうな」という心配でした。 ──映倫の審査の前に、まず税関でのチェックで引っ掛かるわけですね。 内田 そうです。税関で検査を受け、輸入の許可を受ける保税試写というのが行なわれ、その許可が下りないとそもそも日本に輸入できないんです。性器の映っているシーンにボカシを入れることで、通関することはできたんですが、もうひとつの問題が、日本での配給権がかなり高額で手が出せなかったということです。アスキングプライスといって、セラー側が提示価格を設定するんですが、日本のマーケットは大きく見られていて、以前は"製作費の10%"を要求されたほどで、今でもかなりの高額なんです。最近は日本での洋画不況を海外のライセンス会社の方たちも理解してくれていて、値段は低くなってきてはいるんですが、それでも当初はキングレコードが出せるような金額ではなく、2009年の冬の時点で一度は諦めたんです。
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セックスの最中に子どもを死なせてしまったことから、
妻(シャルロット・ゲンズブール)は情緒不安定に。セラピストの
夫(ウィレム・デフォー)はショック療法で妻を救おうとするが......。
──1度は諦めた作品でも最終的にはゲットできたのは、内田さんのバイヤーとしての情熱と交渉力の賜物ですね。 内田 そんな格好いいものではなく、ひたすら粘り腰です(苦笑)。ラース・フォン・トリアー監督の新作ですし、これだけの衝撃を与える作品はそうありません。これは、ぜひ日本で公開したいという思いですね。税関を通すのが難しそうな内容だったこともあり他社も買い控えたため、いくつかの映画祭のマーケットを経て、だんだんと値段が下がっていったので、会社の了解をもらって再度交渉したんです。ライセンス側からは、「最初の値段から、ずいぶんと下がったことで、製作側から不満が出ている。日本での配給権料、もう少しどうにかならないか」という話にもなったんですが、キングレコードが"ホラー秘宝"という形で近年はホラーやバイオレンス映画の配給実績があることをアピールし、ようやくキングレコードで配給することが決まったんです。それが2010年の3月。映画祭やマーケットで担当者に会う度に交渉し、さらに電話やメールでもずいぶんやりとりを続けましたね。初上映から1年近く交渉し続けたことになります(笑)。 ■R18、でもノーカットでの日本公開に ──ラース・フォン・トリアー監督は、『ドッグヴィル』『マンダレイ』に続く"アメリカ三部作"の完結編『ワシントン』の興行的見通しがつかず、製作が白紙になっています。また『アンチクライスト』は鬱病の治療の一環として製作されたとか。デンマーク在住のトリアー監督の海外での評価は、実際のところはどうなんでしょうか? 内田 確かに、いろいろと気難しい監督のようですね。でも、欧州では、やはり巨匠扱いです。日本では『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が当たりましたが、基本的にトリアー作品は、人間が感じる心的な痛みを美しい映像の中で描くものですね。『アンチクライスト』では、それに加えて物理的な痛みも描いています。映画祭でトリアー監督の独創的な新作が発表されるのを、業界関係者はみんな楽しみにしています。今年2月のベルリン映画祭では、現在製作中の『Melancholia』のフッテージ映像が、バイヤー限定試写で上映されるなど、やはり注目度の高い監督です。『Melancholia』は地球最後の1日をどのように過ごすか、複数の登場人物を追った内容みたいですね。これも楽しみです。 ──今回の『アンチクライスト』は、日本ではR18指定での公開。キングレコードではレイティングを下げようとは考えなかった? 内田 過激なシーンをカットして、レイティングを下げようという意見は社内ではまったく出ませんでした。映倫の審査でR18になってもノーカット版で上映しようという方向でまとまっていましたね。海外でも、だいたいR18かそれ以上になっています。宗教的な問題から、日本以上に厳しい扱いになっている国もあるようです。ライセンス側からは性器部分を見せないようにしたインターナショナル版を使ってもいいとも打診されましたが、そこは迷うことなくオリジナル版に近い形での上映に決めましたね。 ■"ホラー秘宝"で爆走するキングレコード ──『アメリ』(01)などのミニシアター系作品が日本で大ヒットしたことで、日本での配給権料が高騰したと言われていますが、最近はどうなのでしょうか? 内田 日本では洋画離れの状況になっていることは、海外のセラーの方たちも理解しています。映画祭を幾つか経ることで、作品の値段は段々と下がっていくわけですが、映画祭受賞作や人気監督の作品でも売れ残っていることが増えていますから。以前は"プリバイ"と言って、監督名やキャスト名、簡単なあらすじが発表された段階で、日本のバイヤーは買うことがありましたが、最近は買い控える会社が多いですね。かなりの人気キャストの場合は別ですが。日本のアスキングプライスが年々下がってきていることなどもあり、最近はまた各社とも買い付けを再開してきています。今後はキングレコードも大変になるかもしれません(苦笑)。 ──それにしても最近のキングレコードは、フレンチ"哲学"ホラー『マーターズ』(08)、実在の事件を基にしたカルト作家ジャック・ケッチャム原作のバイオレンス映画『隣の家の少女』(07)など、強烈な作品を次々と買い付けていますね。 内田 当社のDVDレーベル"ホラー秘宝"を担当しているディレクターの趣味なんです。決して、私がホラー大好きというわけではないんです(苦笑)。『隣の家の少女』は彼がジャック・ケッチャムの小説の大ファンなので、「じゃあ、こんな"どストライク"な作品があるよ」と私から『隣の家の少女』を紹介して、買い付けたものです。『マーターズ』は「あまりにも凄惨すぎるホラー」と海外での評判を聞いていて、私は見ないようにしていたんです(笑)。幾つかの映画祭で観る機会があったんですが、スルーしていました。ところが、スペインで開かれているファンタスティック系のシッチェス・カタロニア映画祭で上映中に気分の悪くなった観客が救急車で運び出されるというハプニングが起き、映画祭関係者がみんな『マーターズ』の話題ばかり口にするようになり、私がまだ観てないと言うと「なんで観てないんだ!?」と責められたんです(苦笑)。映画祭での熱気や関係者たちの評判に突き動かされて、私からディレクターに勧めた形ですね。ホラーやバイオレンス映画って、なかなか評価される機会がないんですけど、「これは、どうやって撮ったんだろう」と思うような斬新な演出の作品や他にはないようなテーマを扱っている作品に出会うと、「日本にも、この作品の凄さを伝えたい。"ホラー秘宝"が取り上げなくて、どうする!」とつい思ってしまうんです(笑)。でも、ただ単にエログロだったり、人がバンバン死ねばいいってわけじゃないですね。やはり、作品として面白いかどうかなんです。 ■バイヤーが選んだ強烈映画ベスト3とは? ──1年間を通して、世界中の映画祭を観て回っている内田さんの目から観て、「これは強烈だった!!」という作品は何でしょうか? ベスト3を教えてください。
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韓国から、またまたハードコアな傑作が上陸! 
キム・ギドク監督の助監督を務めた新人チャン・
チョルス監督の『ビー・デビル』。これもR18指定。
3月26日(土)よりシアターN渋谷ほかにて全国順次公開
(c)2010 Jeonwonsa Film Co.All Rights Reserved
内田 昨年のカンヌ映画祭で観た作品ですが、韓国のバイオレンス映画『ビー・デビル』。いわゆる韓流ドラマを私は全然観てないのですが、最近の韓国のバイオレンス映画は目を見張ります。『ビー・デビル』は保守的な島で虐げられてきたヒロインが夫や島民に次々と襲いかかるという内容です。女性の私が観て、ヒロインが逆襲に出る後半はスカッとしました(笑)。3月26日(土)から日本でも公開されるので期待してください。いちばんの衝撃作は、『マーターズ』かな。『マーターズ』のパスカル・ロジェ監督は、米国資本で『ヘルレイザー』(87)のリメイク版を監督する予定でしたが、降板しています。欧州で成功した監督は、米国で大予算の作品に起用されることも多いですが、米国側からR指定ではなくPG指定に脚本を直すように言われ、米国から引き上げてくるケースもあります。自分が撮りたい作品を撮らせてくれないのであればクリエイティビティを重視してくれる欧州で撮りたいと考える監督もいるようで、私もそれには賛成というようなニュアンスですね。
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暴力か芸術かで、本国フランスで論争となった残
酷ホラー『マーターズ』。マーターズ(殉教者)
の意味がわかるラストは強烈すぎ!
(c)2008Eskwad-Wild Bunch-TCB films
 逆に最近の米国はリメイクものが多くて、あまり刺激的な作品が出てきてないんじゃないかな。あくまでの私の見解ですが、最近の米国映画はホラー秘宝に見合うような、触手をそそられるようなものが少ないように感じます。あと1本は、やはり『アンチクライスト』ですね。強烈な作品で賛否両論あると思いますが、あまり難しく考えすぎずに、ホラーやサイコサスペンスとして楽しんでもいいし、男と女の哀しいラブストーリーとして観てもいいと思います。カンヌでは、しゃべるキツネが登場するシーンでは劇場内で笑いが起きていましたし、いろんな楽しみ方をしてほしいですね。 ──最後の質問です。内田さんがバイヤーというお仕事の喜びを感じるのは、どんなときでしょうか? 内田 自分が「これだ!」と思った作品を、地道に交渉を続けることで予算内で買い付けできたときですね。それで、宣伝スタッフの頑張りで日本の劇場でも多くの人に観てもらえると、よかったなぁ~と思えるんです。自分が手掛けた作品が日本で反響が起きると、本当にうれしいですよ。それって、「素晴らしい作品だ」という賞賛の声じゃなくて、逆に「なんで、こんな作品を公開するんだ!」というお叱りの声でもいいんです。『アンチクライスト』も、観た方たちの間でケンケンガクガクの意見が飛び交ってくれるとサイコーですね(笑)。 (取材・文=長野辰次) anchikuraisuto003.jpg『アンチクライスト』 監督・脚本/ラース・フォン・トリアー 出演/ウィレム・デフォー、シャルロット・ゲンズブール 配給/キングレコード+iae R18+ 2月26日(土)より新宿武蔵館、シアターN渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開中 http://www.antichrist.jp
マーターズ [DVD] 恐い! amazon_associate_logo.jpg
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日本映画界期待の新鋭・石井裕也監督「今の時代は、面白いだけじゃダメ」

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1983年生まれの石井裕也監督。
「"中の下"って、バブル以降に育ったボクらの世代に共通する意識。
思った以上に、共感してくれた人が多かった」
 上がる上がるよ消費税、金持ちの友達一人もいない 来るなら来てみろ大不況、そのときゃ政府を倒すまで 倒せ倒せ政府~♪  シジミ工場の社歌とは到底思えない、アナーキーかつ本音むきだしな歌詞で各地の劇場で爆笑を呼んだ石井裕也監督の商業デビュー作『川の底からこんにちは』。劇中でヒロインが口にする「どうせ、中の下ですから」という台詞は、長引く不況にあえぐ今の日本社会の気分とマッチして、本作はスマッシュヒットに。現在28歳の石井監督は本作で「第53回ブルーリボン賞」監督賞を最年少で受賞。さらに、昨年10月にはヒロインを演じた満島ひかりとの入籍を発表したことでも話題を呼んだ。2月26日(土)に『川の底からこんにちは』がDVDリリースされるのを記念して、日本映画界期待の石井監督が日刊サイゾーに登場。気になるあのことも聞いちゃいました。 ――石井監督、この度は入籍に受賞、おめでとうございます! 石井裕也監督(以下、石井) ありがとうございます。
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石井裕也監督の作品では"疑似家族"が描かれる
ことが多い。「ボクは血の繋がりはさほど気に
しない。でも、人と人との繋がりには興味が
ありますね」。
――大阪芸術大学の卒業制作『剥き出しにっぽん』(05)がPFFグランプリを受賞して注目されていた石井監督にとって、『川の底からこんにちは』は念願の商業デビュー作。PFFスカラシップ作品として、企画をプレゼンして製作費を獲得したわけですね。 石井 そうです。ボクの場合は、企画書ではなく、完成した脚本をプロデューサーに読んでもらったんですが、最初の脚本はお蔵入りしました(苦笑)。どん底状態の主人公が開き直ってスゴ味を発揮するというストーリーは『川の底――』と同じだったんですが、最初の脚本では39歳のグラビアアイドルが主人公で、かなりヤバい人という設定でした。生理的にエグい描写もあり、プロデューサーから「これはヤメてくれ」とダメ出しされましたね。けっこう時間をかけて書いた脚本でしたが、今考えるとお蔵入りして良かったと思います(笑)。その後、主人公が男になったり、女になったりして、今の形に収まったんです。 ――39歳のグラビアアイドルのサバイバルものとは強烈ですね(笑)。"中の下"というモチーフは最初からあったんですか? 石井 いえ、最初は考えていませんでした。その後、東京で派遣OLやっていたヒロインが故郷でシジミ工場を建て直すというストーリーに落ち着いたんですが、脚本を書きながらプロデューサーと「何かが足りないよね」という話になったんです。「今は面白いだけじゃ勝てない時代だよね」「面白さに、+αが必要じゃない」と。そこで、すでにヒロインの「私、中の下ですから」という台詞は脚本に書いていたので、これじゃないかと。「これをフックにしていけば、ただの面白いだけの作品じゃなくて、もうひとつ上のステージに行けるんじゃないか」と話したんです。それから"中の下"という価値観を前面に押し出した形ですね。プロデューサーからの指摘は重要でした。 ――これまでも独特なパワーとテイストを放っていた石井作品を、より際立たせたのがヒロイン・佐和子役の満島ひかりさん。おふたりの出会いは? 石井 最初は、この作品の顔合わせですね。主演俳優のキャスティングはプロデューサーに頼んでいたんです。それでプロデューサーから「この人、主演にするから」と言われ、じゃあ一度会おうと。 ――初対面の場で満島さんから「私を使わないと後悔しますよ」と言われたそうですね?
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流れに流されて生きてきた佐和子(満島ひかり)
は父の入院をきっかけに、倒産寸前のシジミ
工場を継ぐことを決意。ひと癖ふた癖ある従業
員たちを束ねられるか?
石井 はい、言われました(笑)。顔合わせの席は、ちょっとお互いにケンカ腰でしたね。いや、ケンカ腰という表現は良くないなぁ(苦笑)。でも、まぁ、フツーじゃねぇなぁと。他の作品でも俳優と顔合わせしましたけど、フツーは初対面から、そういう暴挙に走る人はいませんよね。さすがに、開口一番の言葉が「後悔しますよ」じゃないです。それじゃあ、まんまドラマですよ(笑)。 ――日刊サイゾーでも『愛のむきだし』(09)で満島さんをインタビューしましたが(参照記事)、非常にユニークな方ですね。いつも、あんな感じなんですか? 石井 いや、逆にボクは取材の場で彼女がどんな感じなのかは知りませんから(笑)。 ●石井作品はコンテなし、カット割りもなし! ――ヒロイン・佐和子を演じた満島さんの「中の下ですから」とつぶやく前半のイケてない感じから、社歌をきっかけにシジミ工場を建て直そうとする開き直りぶりへの跳躍がお見事。前半のダメダメ感を漂わせている細かい仕草は、石井監督の演出? 石井 そうですね。前半のキャラクターづくりに関しては細かく演出しました。後半のブチ切れ演技は彼女が得意なことは分かっていたので、東京でのOL生活を前半に撮影して、彼女のテンションをなるべく抑えるように細かく演出しました。逆に後半は、演出はラフなものにしています。前半と後半で演出の仕方は変えましたね。前半抑えていた彼女が後半に感情を爆発させるシーンは、狙い通りに行ったと思います。でも、彼女が開き直る朝礼の場面はこの作品のキモになるものだったので、うまく撮影できるかどうかものすごく心配で、怖くて怖くてたまらなかったんです。 ――満島さんはハードルとなるシーンを鮮やかにクリアして、石井監督の期待に応えてみせたわけですね。佐和子がやる気のない従業員たちに啖呵を切る朝礼シーンは名場面ですが、必ずしも石井監督のイメージの通りではないんでしょうか? 石井 もちろん違います。でも、自分のイメージを強要するのは違うとボクは思うんです。映画って、やっぱりみんなで作るものですから。ボクのイメージと違うから、ここはこう直してくれと言うのは違うんじゃないか。こうした方がもっと面白くなるから、こうしてくれという言い方ですね。ボクはコンテを描かないし、カットも割らないし、脚本の読み合わせもしない。とりあえず、現場に行ってから1回やってみようと。そこから、「あぁ、やっぱりダメか」と悩みながら、細かく細かく撮り直して、現場でできるMAX状態に持っていくんです。朝礼のシーン、ボクはすんなりと2テイクぐらいで撮り終えたつもりだったんですが、DVDの特典のメイキング映像を見ていたら、かなりテイク数を重ねているのが分かって、自分でも驚きました。あんまり細かくテイクし直しているので、彼女(満島ひかり)は退屈しかかってましたね(苦笑)。
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叔父さん(岩松了)から連絡をもらい、5年
ぶりに故郷に帰ってきた佐和子(満島ひかり)。
工場の跡取りと知り、バツイチ子持ちの恋人
(遠藤雅)が強引に付いてきた。
――DVDの特典映像も要チェックですね。石井監督が作詞した「木村水産 新社歌」が大変なインパクト。あの社歌はどのようにして生まれたんですか? 石井 普段はダメな人たちが一生懸命になる姿を描きたかったんです。ボクとしては有意義なことを一生懸命やるよりも、どうでもいいことを懸命にやることのほうが尊いように思えるんです。歌詞はすんなり書けました。歌詞の内容が反体制的であるとも言われましたが、ボクとしてはもちろん風刺的な意味合いはありますが、ナンセンスの範疇に入るものだと思っています。意味のないことをみんなが集まって、熱中していることが感動を呼ぶんじゃないでしょうか(笑)。個人的に社歌とか校歌とかって好きなんです。無意味なものが好き。それに映画なら、歌ったり踊ったりしたほうがいいなと。楽しいじゃないですか。まぁ、下手にやると映画そのものを壊してしまうので、あの社歌がギリギリのレベルだったと思います。あの社歌に振り付けを入れたらアウトだったでしょうね。 ●シンボルとしての汚物、そして疑似家族について ――無意味なことへの情熱が感動を呼ぶ、ですか。石井監督の作品と言えば、『剥き出しにっぽん』もそうでしたが、肥だめやウンコがよく出てきますよね。 石井 はい(笑)。自主制作時代のボクの作品に出てきたウンコは、すべて小児趣味的なものでしたね(苦笑)。海外の映画祭などでも、記者会見や質疑応答などで、「お前の作品に出てくるウンコにはどんな意味があるんだ?」とよく訊かれます。そのときは、まぁ、ボクもマジメに答えるようにしているんですが、さすがにもう短絡的にウンコを出すことはやめようと考えています(笑)。でも、今回の場合は、小輪廻というか、湖とシジミの関係、人間の生と死の関係を含めて、すべては循環しているという意味付けがあったんですけどね。ある種、人の嫌悪感を煽るウンコをまき散らしながらも、ひとつの希望に結実する物語を思い付き、これで行けるなと思ったんです。言葉を換えれば、クソみたいな世の中にも、ほんのちょっとした希望を見つけることができる映画にしたかったんです。 ――自主制作時代は無意味にウンコを出していたけど、商業作品ではきちんと辻褄のあったウンコを出すようになったわけですか。 石井 そうです(笑)。普段は目を背ける人間の汚い部分に目を向けることで、それでも"人間って、やっぱりいいじゃん"と思えるものにしたかったんです。ウンコは言わば、そういう人間の汚い部分のメタファーですね。今回はうまくシンボルになったと思います。でも、まぁ、もういい加減、汚物ネタは本当にやめようと思います(笑)。 ――でも、そういう泥臭さ、人間臭さは、熊切和嘉監督や山下敦弘監督らを輩出した大阪芸術大学出身者のいわば芸風でもありますよね? 石井 そうですね。ボクは熊切監督や山下監督のことは知らずに大阪芸術大学に入ったんですけどね。でも、ボクに"ダイゲイ論"を語らせると、ウルサイですよ(笑)。大阪芸術大学のある南大阪って、遊ぶ場所がなくて、物づくりに励むしかないんですよ。また、地理的に閉鎖的なこともあり、縦の繋がりが強くて、校風というか"ダイゲイ精神"みたいなものが脈々と受け継がれているのは確かですね。それに大学の近くの街で16mmカメラを回していたら、外部の人間が見たら似たような作品にどうしてもなってしまう。ちょっと退廃的でブルージーな感じになるんです(苦笑)。
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工場の経営だけでなく、父親の忠男(志賀
廣太郎)の看病や血の繋がらない加代子の世話
にも追われる佐和子だが、逆に忠男や加代子
に励まされている自分に気づく。
――なるほど。もう少し、石井監督の作風について聞かせてください。『川の底――』のヒロイン・佐和子は寄る辺なき存在から、疑似家族、そして最後には拡大家族の中心へと成長していきます。石井監督の作品は、駆け落ちや血の繋がらない人たちが疑似家族を形成していく物語が多いように思いますが......。 石井 ボクは昔から幼友達や同級生たちでグループを作っちゃうんです。けっこう家族的な繋がりを持つグループで、誰かが他のヤツにバカにされたら、みんなでやり返しに行くみたいな感じなんですよ。ボクが子どもの頃に母親が亡くなり、片親で育ったというのがあるのかもしれません。「石井は疑似家族を作ろうとしているんじゃないか」と友人に指摘されたことがあって、それって当たっているかもしれないなと思いましたね。自分では自分のことを分析したりしないので、自分のことは分からないもの。映画の中でも無意識に描いているのかも知れません。家族の在り方を問う、みたいなことは考えてないですけど、人と人の繋がりに興味あるのは確かですね。駆け落ちに関しては、2つ興味があるんです。1つは駆け落ちに失敗してしまった人に興味が湧くんです(笑)。それと2つめは、理想論なのかもしれませんが、恋とか愛のために、それ以外のものを全部捨てられる心意気ってスゴいなぁと。自分は大切なものを1つだけ選ぶことすら難しいのに、それ以外のものは全部捨ててしまうなんて到底無理。憧れますね。 ――石井監督は、実生活で新しい家庭を持ったわけですね。満島さんとの馴れ初めについて、少し聞かせてください。『川の底――』の製作期間中にどちらかからアクションがあったんですか? 石井 製作中は一切、そういうことはありませんでしたよ。う~ん、その件は『川の底――』の売りにはしてないので、ノーコメントってことにしてもらえませんか(笑)。 ――では今後、満島さんを起用した作品の予定は考えています? 石井 いやいや、それはないんじゃないかと思います。一緒に仕事......、というのは今はちょっと考えられないですね(苦笑)。  石井監督、プライベートな部分にまで踏み込んでスミマセン。でも、作品論に関しては雄弁な石井監督が、奥さまの話題になるとしきりに照れているのが印象的でした。石井監督の言葉をそのまま受け取ると、新鋭監督と話題のミューズとのコラボレーションが満喫できるのは『川の底からこんにちは』だけということに当面はなりそう。数々の奇跡を生み出した『川の底からこんにちは』、見逃すと後悔しますよ! (取材・文=長野辰次) kawanosoko_sub4.jpg ●『川の底からこんにちは』 監督・脚本/石井裕也 出演/満島ひかり、遠藤雅、相原綺羅、志賀廣太郎、岩松了、稲川実代子、菅間勇、猪股俊明、牧野エミ 発売元/IMAGICA TV 販売元/紀伊國屋書店 2月26日(土)DVDリリース 作品公式サイト <http://kawasoko.com> ●いしい・ゆうや 1983年埼玉県出身。大阪芸術大学の卒業制作として『剥き出しにっぽん』(05)を監督。PFF2007グランプリ&音楽賞を受賞。長編第2作『反逆次郎の恋』(06)はゆうばり国際ファンタスティック映画祭などに入選。大阪市の映像文化振興事業として、長編第3作『ガール・スパーク』(07)を制作。長編第4作『ばけもの模様』(07)は香港国際映画祭アジアン・デジタル・アワードにノミネート。さらに香港で開催されたアジアン・フィルム・アワードにて、アジアで最も期待される若手監督に贈られる第1回エドワード・ヤン賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭、および香港国際映画祭にて、上記4作品の特集上映も行なわれ、反響を呼んだ。第19回PFFスカラシップ作品として『川の底からこんにちは』が2010年に公開。同年、『君と歩こう』(09)も公開された。『川の底からこんにちは』(09)はブルーリボン賞監督賞、ヨコハマ映画祭新人監督賞&主演女優賞、モントリオールファンタジア映画祭最優秀作品賞&最優秀女優賞など多数受賞。新作『あぜ道のダンディ』(10)は2011年公開予定。
川の底からこんにちは こんにちは。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 園子温『愛のむきだし』で満島ひかりが"むきだし状態"に! 2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を

6,000円で映画を作る方法を教えます!斬新な"純愛ゾンビ映画"『コリン』

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キヤノンのデジカメを愛用するマーク・プライス監督。
「以前使っていた旧型のキャノンは壊れてしまって、
今はロンドンの映像博物館に収蔵されているんだ」。
映画史を塗り替えた超低予算映画『コリン』、早くも殿堂入り。
 手元に6,000円あったら、あなたならどーする? キャバクラに行けば、軽くビールを飲んだだけで、あっという間に消えてしまう金額ですよ。ところが、イギリスのマーク・プライス監督は、なんと45ポンド、日本円にして約5,800円で長編映画『コリン LOVE OF THE DEAD』を完成させたのだ。低予算映画と言えば、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99)が製作費600万円、『パラノーマル・アクティビティ』(07)が同135万円なので、プライス監督の『コリン』がいかに激安プライスで作られているかが分かる。しかも、『ブレア』や『パラノーマル』がフェイクドキュメンタリー形式であるのに対して、『コリン』は正統派ゾンビ映画にして、泣ける純愛ドラマでもあるのだ。何といっても、ゾンビ化した青年を主人公に現代社会の空虚さを描くというアイデアが素晴らしい。  どーすれば、6,000円足らずで、感動作ができたのかと言うと、まずコリン役の主演俳優アラステア・カートンはプライス監督とは旧知の仲で、無償での友情出演。押し寄せるゾンビの大群は、Face BookやMySpaceでエキストラを募集。みんな汚れてもいい服で現場に集まり、白塗りメイクのゾンビ役を嬉々として楽しんだそうだ。カメラは自前の中古のデジカメ。編集や音入れも自前のパソコンで仕上げている。6,000円は撮影用の小道具として必要だった"カナテコ"と、監督が使い回しの撮影テープをうっかり忘れたために新規で購入したミニDVテープ数本。それとエキストラをもてなすための紅茶とビスケット代(英国人らしいなぁ)。では、プライス監督にいかにして6,000円で"泣けるゾンビ映画"を作ることができたのか、その極意を語ってもらおう。 ――6,000円でよくこれだけ高品質な劇映画が作れましたね。6,000円と言えば、かわいい女の子がいる店でビールを数杯飲んだら消えちゃう金額ですよ。
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『コリン』が各国で配給され、ギャラ
をめぐる問題は起きてないか聞いてみ
ると、「みんな、喜んでくれているよ。
大ヒットしたわけではないんで、ボク
が得た報酬はまだわずか。新機材と
次回作に回しているんだ」とのこと。
プライス あはは、確かにそうだね。まぁ、人によってはその方が有意義と感じるかもしれないよね(笑)。 ――プライス監督は商業映画のスタッフを経験することなく、市販のDVDの特典映像を教科書代わりにしてきたそうですね。しかも、ピーター・ジャクソン監督のデビュー作『バッド・テイスト』(87)にインスパイアされたと聞いています。一体、あのC級SF映画のどこが参考になったんでしょうか? プライス 『バッド・テイスト』のどこかが具体的に参考になったというわけじゃないんだ。あの作品全体からインスピレーションを受けたんだ。まぁ、要するに、とにかく友達を掻き集めて、何でもいいから撮り始めれば、映画はできちゃうもんだということだね(笑)。映画製作には意気込みが大事だってことを、あの作品からは学んだよ。もともとボクは小さい頃から映画作りに興味があったんだけど、DVDの特典のメイキング映像を見ることで、映画製作には演出部や制作部があることなど、いろんな知識を身に付けたんだ。インディペンデント映画を作る人間にとっては、DVDの登場は画期的なことだったと思うよ。 ――それにしても、ゾンビを主人公にするという『コリン』の独創的なアイデアはどのようにして生まれたんでしょうか? プライス 昔からゾンビ映画が好きで、いろいろ見ていたんだ。ザック・スナイダー監督が、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』(78)をリメイクした大作『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04)なんかも観たよ。もちろんお金があれば、あんな大作映画を作ってみたいけど、何しろ予算がなかったからねぇ(苦笑)。それで、今までになかったような独自のアイデア、独自の視点によるゾンビ映画を作ろうと考え、その中で『コリン』のアイデアが浮かんだんだ。それから、主演のアラステア・カートンも呼んで、2人で意見を出し合いながら作り上げていったんだ。 ●夜勤バイトしながら、週3日ペースでの撮影 ――運送会社で夜勤のアルバイトをしながら、勤務中に脚本を書き上げたそうですね。上司から怒られるなんてことは......?
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ロンドンの小さなアパートで恋人と慎ましくも
幸せに暮らしていたコリン(アラステア・カートン)
だが、親友に噛まれてゾンビ化。薄れゆく記憶
の中、廃墟となったロンドンをさまよい歩く。
(c)2008 NOWHER FAST FILM PRODUCTION
プライス 夜勤の電話番だったんだけど、基本的に夜間はお客さんから電話が掛かってくることはまずなくて、ボクともう一人いたスタッフはずっと暇だったんだ。上司からは「眠くなるだろうから、本とか持ってきて読んでいいよ」と言われたので、「本の代わりにパソコンを持ってきてもいいですか?」と聞いて「いいよ」ということだったので、深夜に脚本を書き上げることができたんだ。撮影は週3日の休みを利用して、じっくりと進めたんだよ。夜勤中は脚本だけでなく、撮影した映像の編集作業もやったよ。運送会社からお金をもらいながら、コツコツと自分の映画を作ることができたってわけさ。エンドクレジットには、スペシャルサンクスとして会社の名前をクレジットしているよ(笑)。 ――創作活動に理解のある素晴らしい職場でしたね(笑)。『コリン』は完成までに18カ月要したそうですが、それだけの長期間、よくキャストやスタッフをキープできたものだと思います。 プライス スタッフといっても、ボクが撮影・演出・録音・照明・編集・音響......とほとんどひとりでやったんだ(笑)。なので、ボク以外に長期間拘束したスタッフはいないんだよ。キャストに関しては、コリン役のアラステアにはがっつりと働いてもらったけど、姉役のデイジー・エイトケンズや恋人役のタット・ウォーリーの撮影は3~5日程度で済んだからね。他のゾンビたちは撮影の度にweb上で募集して、集まってもらったんだ。なので、18カ月フルで働いたのは、ボクだけなんだよ。 ――アイデアと情熱さえあれば、映画はできちゃうんですね。とは言え、撮影現場にトラブルは付き物。予算がない中で、どのようにクリアしたんでしょうか? プライス 確かに撮影現場では、毎日のように予想外のトラブルが起きるもの。でも、その度にクリエイティブな方法で、問題を解決していったんだ。例えば、後半にコリンたちがゾンビ狩りの集団に襲われる乱闘シーンがあるけど、あのシーンでコロコロと転がる手作り爆弾が、どうも爆弾に見えないということで、火を点けようということになったんだ。でも、うまく火を点けることができなかった。そこで、最初に登場するゾンビ役のリー・クロコームは視覚効果と1人2役を請け負ってくれていたんだけれど、彼がトイレットペーパーの紙の芯を使うことで火の点く爆弾を考え出してくれたんだ。そのように、参加してくれたみんなが面白い作品を作るために、問題が起きる度にアイデアを出してくれた。ナイスなアイデアを出してくれたリー・クロコームには何かご褒美をあげようということになり、コリンが顔中血まみれになるシーンで、リー・クロコームは口いっぱいに血のりを含んで、コリンの顔にプハーッと吹きかけたんだ(笑)。 ●シロップとバナナが生み出した惨劇シーン ――愉快な現場だなぁ! 作品内容についても教えてください。ゾンビになったコリンが実家で監禁され、窓の外で家族会議が行なわれているシーンは、無性に切なかったです。『コリン』には宗教の無力化、モラルや家族制度の崩壊といった現代社会の問題点が映し出されているように思います。監督にとって、ゾンビとは何かのメタファーなのでしょうか?
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ゾンビとなったコリンは、姉の手によって
実家に監禁される。窓の外では家族が泣き悲しん
でいるが、コリンにはもう人間としての意識
はない。家族が壊れていく様を、コリンはただ
じっと見つめる。
プライス ヤァ、その通りだよ! 『コリン』で描いたものは、離散する一家、崩壊する家族のメタファーなんだ。そしてそれは、ボクの永遠のテーマでもあるんだ。今後もいろんな作品で、いろんな角度から、このテーマを追っていくつもりだよ。『コリン』のDVDの特典に付く短編『MIDNIGHT』も寓話的な家族を描いているんだ。現在、製作中の新作長編でも、どこか不健康で問題を抱えた家族が描かれることになるよ。 ――『コリン』はフィクションドラマですが、その中には監督が現代社会に感じているリアリティーが投影されているようですね。 プライス そうなんだ、『コリン』で描かれている家族像はとても身近でリアルなものなんだ。自分の家族は幸いにも仲がよく、離散には至っていないけど、子どもの頃に友達の両親が次々と離婚して、家族がバラバラになっていく様子をすぐ近くで見てきたんだ。そのことから、自分の家族もいつかバラバラになってしまうのではないかという恐怖心を、幼いながらに抱えて育ったんだ。『コリン』にはボクの少年時代の心理が映し出されているのかもしれないね。 ――では、監督にとって、映画づくりにいちばん大切なものは何か教えてください。 プライス とにかく、アイデアがいちばん! そして、しっかりとしたストーリーと豊かで奥の深いキャラクターが必要。どちらかが欠けても、いい映画にはならないんじゃないかな。いくらストーリーが面白くても、キャラクターがまるで共感できない、つまらない人間ばかりだったら、つまらない映画になってしまうからね。その逆もしかり。最終的に、その2つがそろった映画は、必ず面白い映画になるとボクは信じているよ。その2つさえクリアしていれば、どんなに安い機材でも、中古のカメラでも、まったく問題ないんじゃないかな。 ――血のりは必需品じゃない? プライス あはは、血のりもあれば、越したことはないよね(笑)。でも『コリン』は見た人が感じているほど、大量の血のりは使ってないんだよ。血みどろのグロテスクなシーンが多いように感じるかもしれないけど、音響効果でうまくごまかしているんだ(笑)。血のりも、すべて手づくりだよ。血のりの主成分は、合成着色料やシロップ。血にもっとトロトロした質感を出したいときは、血のりの中に剥いたバナナをぐちゃぐちゃにして混ぜて、思いっきり壁にぶつければOK。うまく血や内蔵が飛び出したシーンを撮ることができたんだ(笑)。 ――血の惨劇シーンは、シロップとバナナで作られたんですねぇ。『コリン』に触発されて、「自分も映画を」と思うユーザーは少なくないと思います。最後にひと言、メッセージを。 プライス ボクの映画を見て「自分も何か作りたい」と思ってもらえることが、サイコーにうれしいことだね。ぜひ、日本の若者にも『コリン』を見て、刺激を受けてほしいな。テクノロジーに関しては、今の時代は最も恵まれた環境にあると思うよ。それこそ、今は携帯電話でHDのハイデフニション映像が撮れる時代。友達を呼び出せば、すぐにでも映画を撮ることができるってわけ。ボクの次回作は『THUNDER CHILD』という第二次世界大戦を舞台にしたホラー映画なんだけど、予算を集めるために時間が少しばかり掛かっているところ。でも、ただ待っているだけではつまらないので、『コリン』の配給報酬で購入したキヤノンの7Dで別の新作を作っているんだ。機材が高かった昔と違って、今はもう言い訳はできない時代。映画を作りたい人は、今すぐ始めましょう! (取材・文=長野辰次) korin03.jpg 『コリン LOVE OF THE DEAD』 製作・監督・脚本・撮影・編集・録音/マーク・プライス 特殊メイクアップ効果/ミシェル・ウェッブ 視覚効果/リー・クロコーム、ジャスティン・ヘイルズ 出演/アラステア・カートン、デイジー・エイトケンズ、タット・ウォーリー、リアンヌ・ペイメン、ケイト・エルダーマン、ケリー・オーウェン、リー・クロコーム、ジャスティン・ミッチェルーデイヴィ 配給/エデン 3月5日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開 2月26日(土)~3月4日(金)には〈東京国際ゾンビ映画祭2011〉も開催 <http://www.colinmovie.jp> ●マーク・プライス監督 1979年イギリスのサウス・ウェールズ生まれ。9歳の夏にスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(75)を観て、夏休み中ずっとビデオを見続けて、すべての映像・台詞・効果音を丸暗記した。90年代前半、ピーター・ジャクソン監督のデビュー作『バッド・テイスト』(87)のメイキング映像『グッド・テイスト~メイド・バッド・テイスト』を観て、映画製作の決意を固める。2001年にスォンジー大学に入学し、CD-ROMのオーサリング、ウェブ・デザイン、3Dアニメーション、映像や音楽制作に関する基礎を学ぶ。04年にロンドンで上演された舞台『BASH』の舞台用映像を手掛け、俳優アラステア・カートンと出会う。マークが監督した短編『MIDNIGHT』(05)にアラステアは主演。さらにマークが運送会社の夜勤中に脚本を書き上げた『コリン』にも無償で主演した。その後、短編『THE END...』(10)を発表。現在は『コリン』同様に夜勤中に脚本を書き進めた、第二次世界大戦を舞台にしたホラー『THUNDER CHILD』を製作中。こちらにもアラステは主要な役で出演。ハリウッドほか海外から作品のオファーが殺到している。
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【関連記事】 "血染めの哲学者"キム・ジウン監督、日韓でR18指定となった衝撃作を語る 金子修介監督の新境地『ばかもの』男は、女と失敗の数だけ成長する "メジャーの壁"知らずの筧昌也監督が新作ドラマでは"表現の壁"もスルー!

"血染めの哲学者"キム・ジウン監督、日韓でR18指定となった衝撃作を語る

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2月9日、キム・ジウン監督はインタビュー終了後、
主演のイ・ビョンホンと共にジャパンプレミアの舞台挨拶に参加。
ジウン監督は舞台俳優だっただけに、ビョンホンと並んでも存在感あり。
 お前が深淵を覗き込む時、深淵もまたお前を覗き込んでいるのだ。  哲学者フリードリヒ・ニーチェの代表作『善悪の彼岸』の一節だが、イ・ビョンホンとチェ・ミンシクという韓流2大スターが競演する『悪魔を見た』は、このニーチェの言葉をモチーフにした深淵なるバイオレンス映画となっている。敏腕捜査官のスヒョン(イ・ビョンホン)は結婚を間近に控えていたが、婚約者が快楽殺人鬼ギョンチョル(チェ・ミンシク)によってバラバラ死体にされてしまう。復讐を誓うスヒョンは違法捜査の末にギョンチョルを見つけ出し、半殺し状態に。だが、スヒョンはギョンチョルを殺さずに、小型マイク付きのGPSを呑み込ませて野に放つ。そして、ギョンチョルが再び性犯罪を起こそうとする度に、寸止めでなぶりものにするのだった......。『オールド・ボーイ』(03)などで知られる韓国きっての演技派ミンシクの怪演に加え、国際的スターであるビョンホンが善悪の見境を失い、復讐鬼へと冷酷に変貌する様を演じ切っている。女性たちが次々と快楽殺人の犠牲となる過激シーンが満載。また、ギョンチョルと犯罪者仲間との談笑場面がカニバリズムを連想させることなどから、韓国の映像物等級委員会(日本の映倫的組織)は問題箇所を含む複数シーンのカットを指示。製作側はトータル1分30秒の部分的なカットに応じることで、なんとかR-18指定という形で公開に至った問題作なのだ。『クワイエット・ファミリー』(98)でデビュー以降、『反則王』(99)、『箪笥』(03)、『甘い生活』(05)、『グッド・バッド・ウィアード』(08)など多彩なヒット作を生み出してきたキム・ジウン監督が日刊サイゾーの単独インタビューに応じてくれた。単なるバイオレンス映画に収まらない、韓流映画の究極の形に触れてみてほしい。
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婚約者を殺された国家情報院捜査官のスヒョン
(イ・ビョンホン)は、快楽殺人鬼ギョン
チョルへの"倍返し"の復讐を誓う。だが、ギョン
チョルを追い詰める過程で、犠牲者が続出する
ことに。
──本作はニーチェの著書『善悪の彼岸』がモチーフになっていますが、ニーチェの言葉をモチーフにしたバイオレンス映画という発想はどのようにして生まれたのでしょうか? ジウン もともとは自分のアイデアから始まった作品ではないんです。2010年に米国で映画を撮る企画があり、その準備を進めていたんですが、そのプロジェクトが延期となり、1年間ブランクができてしまったんです。普通は監督が俳優をキャスティングするものですが、この映画は逆でした。チェ・ミンシクがボクを監督にキャスティングしたんです(笑)。ミンシクに会って、渡された脚本を読んでみると、荒削りのストーリーの中に本能的で原色に満ちたパワーを感じたんです。従来の復讐劇とは違う、新しい何かがあるように感じました。そして、それをどう映画化するか悩んでいたときに、ニーチェの言葉を思い出したのです。それが"怪物と闘う者は自らが怪物と化さぬよう心せよ。お前が深淵を覗き込む時、深淵もまたお前を覗き込んでいるのだ"です。この言葉は、この作品を端的に表していると考えたんです。この深淵なニーチェの言葉を、そのまま登場人物たちの台詞として使うのではなく、映像としてどう表現するのかを考えながら製作を進めました。 ──殺人鬼役のチェ・ミンシクとは、ジウン監督のデビュー作『クワイエット・ファミリー』以来の付き合い。さすがの大熱演ですね。でも、よく国際的スターでもあるイ・ビョンホンがこれだけの問題作に出演をOKしたなと感心しました。 ジウン ははは、イ・ビョンホンが最初に抱いていたイメージとは違う作品になったかもしれませんね(笑)。ビョンホンとは、ある映画の試写で出会ったんです。彼も『G.I.ジョー2』の撮影が延期になって、ボクと同じように1年間ほど時間を持て余していたんです。本当の偶然です。そこでお互いの近況を話しているうちに、「今、こんな作品の準備を進めているところなんだ。普通の復讐劇とはちょっと違う、悪魔より恐ろしい存在になる男の物語だよ」とビョンホンに話したところ、彼は興味を示し、「脚本を読みたい」というので、手渡したんです。それで脚本を読み終えたビョンホンは即座に出演をOKしました。ビョンホンが演じるスヒョンという男は、とても難しい複雑なキャラクターです。ギョンチョルという"純粋な悪"と闘うために、"歪んだ正義"を掲げるという亀裂の生じた男です。しかし、ビョンホンは非常に上質な演技で、しかも情緒的に、この役を的確に演じてくれました。 ■復讐がもたらす快感と悪魔化する恐怖の狭間
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怨恨や金銭目的ではなく、快楽のために殺人を
重ねるギョンチョル(チェ・ミンシク)。本能
の赴くままに生きるギョンチョルは、スヒョン
が考えていた以上にタフで、ずる賢い。
──他人事としてこの作品を見れば、イ・ビョンホンとチェ・ミンシクの対決は、まるで2大怪獣の激突を見ているかのような面白さがあります。でも、パワフルな展開に、瞬く間に作品世界に飲み込まれました。2人が遭遇する中盤以降は、まるで自分の足元がグラグラとぐらつき、床が抜けたような奇妙な感覚に襲われました。 ジウン それは、興味深いですね。ある意味、ギョンチョルは悪の象徴。生きていると運悪く、ギョンチョルのような"絶対悪"に遭遇してしまう可能性もあるわけです。平凡な人間が絶対悪に出会ってしまった場合、どのように絶望し、破滅していくのかをこの作品では描きたかったんです。床が抜けるように感じたと言われましたが、ある意味、スヒョンが足を踏み入れた世界は2度と元には戻れない世界でもあるわけです。 ──スヒョンがギョンチョルと出会って以降の世界は、この世ではないし、あの世でもない。かといって、まだ本当の地獄ではない。ダンテの『神曲』に出てくる"煉獄(れんごく)"を思わせました。 ジウン "煉獄"とは天国と地獄の境界にあるものですよね? 人間にとって人生のある瞬間には、どっちに転ぶか分からない危うい瞬間があると思います。その危うさを、この映画の中に感じたのかも知れませんね。監督であるボクもこの作品を撮っている間は、ずっと悩み続けました。自分なら、どんな復讐をするのか。そして、復讐を遂げることで得られる快感と底なし沼から抜け出せなくなるのではないかという恐怖を感じていたんです。快感と恐怖の両極の間で揺れ動き続けたんです。この映画には、自分が感じたそんな心理状態が反映されているのかも知れません。復讐で得られる快感が強ければ強いほど、罪の意識も強まり、自分は悪魔になってしまうのではないかという恐ろしさから抜け出せなくなっていくんです。
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『悪魔を見た』の撮影現場で、快楽殺人鬼役の
チェ・ミンシクに演出するキム・ジウン監督
(写真左)。韓国、そして日本でもR-18
指定となった犯罪ドラマだ。
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──『復讐者に憐れみを』(02)をはじめとする"復讐三部作"を手掛けたパク・チャヌク監督とは同世代で、懇意にしていると聞いています。 ジウン えぇ、パク・チャヌク監督も『悪魔を見た』を見てくれました。パク・チャヌク監督は「ギョンチョルがGPS入りのカプセルを飲み込むことで、スヒョンや観客はギョンチョルと一心同体化するという側面がある」と話してくれました。確かにGPSを通じて、スヒョンはギョンチョルと行動を共にし、マイクで肉声を聞き続けることで、悪魔と次第に一体化していくわけです。パク・チャヌク監督はとてもうまく、この作品のテーマ性を指摘してくれました。 ■"復讐劇"と韓国の国民性との関係とは? ──観客は、殺人鬼ギョンチョルに恐怖や怒りを感じると同時に、スヒョンに追い詰められても追い詰められてもサバイバルし続けるギョンチョルの旺盛な生命力に驚きも覚えます。 ジウン すべての人間は、普段の生活の中で、社会的なタブーに抵触しそうになる煩わしさや抑圧を感じているのではないでしょうか。また、そういったものを突き破りたいという欲望を持っているはずです。人間に欲望があるとすれば、ギョンチョルは過度に欲望を持った人間です。もし、ギョンチョルに生命力を感じたなら、それは人間が本来持っている欲望の形態がギョンチョルに投影されているということでしょうね。また、この物語では、2人の主人公のうち、一人は命を奪われ、もう一人は心の闇を抱えたまま生きながらえることになります。この映画を見た人は、悪魔的存在が罰せられるのを見て、安堵感を覚えるでしょう。それは、自分の中にも潜んでいる悪魔性に気づいた観客を安心させている行為でもあるんです。でも、これは天使が悪魔に勝利する物語ではありません。この映画は、ある意味では悪魔が勝利する物語です。この映画のラストは、悪魔によって導かれた結果なんです。いや、どうも固い話を続けてしまいましたね(苦笑)。といっても、この映画は、決して重いテーマを重たいまま伝えようとしたものではありません。ゴアスリラーというジャンルが与える強烈なイメージ、ジャンル映画がもたらす快感というものを極限状態にまで描き切ることで、これまでになかった面白い映画を作ろうとしたものです。日本のみなさんには、楽しんで見てもらいたいですね(笑)。
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韓国で問題となった犯罪者が集う山荘シーン。
国際的スターのイ・ビョンホンは、『甘い生活』
『グッド・バッド・ウィアード』で組んだキム・
ジウン監督に全幅の信頼を寄せている。手前の
人物の手にはアイスピックが......。
──まだまだ聞きたいことがあるのですが、そろそろタイムアップのようです。パク・チャヌク監督も"復讐三部作"で世界的に知られています。韓国からこれほどまでに、強烈な"復讐もの"の傑作が次々と生み出されているのは、なぜでしょうか? 韓国特有の国民性と関係するのでしょうか? ジウン (しばらく考えてから)......その質問に関しては、ボクは正しい答えを持ち合わせていません。ただ、韓国の歴史を振り返ってみると、普段の韓国人は平和を愛する温和な性格だと思うのですが、幾度も外国からの侵略を受けて、いろいろなものを奪われ、失ってきた歴史があります。そのような歴史の中で、復讐心を抱えたこともあるでしょう。でも、これはきちんとしたデータに基づいて言っていることではありません。映画監督として間違いなく言えることは、"復讐もの"というジャンルはドラマとしての面白さ、強靭なプロットを持ち得るということです。それに加えて、韓国の観客は、パワフルな演出やストーリーを好むという傾向があるということですね。 ──ジウン監督は恐怖と闘いながらの撮影だったということですが、R-18指定になって観客動員にダメージを受けることは怖くありませんでしたか? ジウン えぇ、それは大変な恐怖でした(苦笑)。韓国ではR-18指定になったことから、『悪魔を見た』は残酷な映画だという噂が国中に広まり、興行的に打撃を受けたことは事実です。映画監督として自分の作品がR-18指定を喰らったということは、ギョンチョルから肉体的暴力を受けることよりも、ずっとずっと痛い経験でしたよ(笑)。  こちらの発したナイーブな質問に対しても、真摯に、またユーモアを交えて答えてくれたキム・ジウン監督。さすが、バイオレンス映画にニーチェの言葉を隠し味に使う知性派監督である。血まみれの暴力シーンを通して、人間の心の中の深淵なる闇を見据えた韓流映画の究極形『悪魔を見た』。息詰まるラストシーンで、あなたは本当の"悪魔"の姿を目撃するはずだ。 (取材・文=長野辰次) ●『悪魔を見た』 監督/キム・ジウン 出演/イ・ビョンホン、チェ・ミンシク、オ・サナ、チョン・グックァン、チョン・ホジン、キム・ユンソ、チェ・ムソン、キム・インソ 配給/ブロードメディア・スタジオ 2月26日より丸の内ルーブルほか全国ロードショー +R-18 <http://isawthedevil.jp> ●キム・ジウン監督 1964年生まれ。舞台俳優としてキャリアをスタート。つかこうへいの戯曲『熱海殺人事件』の韓国版『熱い海』で舞台演出家デビュー。懸賞金付きの脚本コンクールへの投稿生活を経て、ソン・ガンホ、チェ・ミンシクらが出演したブラックコメディー『クワイエット・ファミリー』(98)で監督デビューを果たす。続くソン・ガンホ主演のアクションコメディー『反則王』(99)も韓国で大ヒット。オムニバスホラー『THREE/臨死』(02)に参加後、韓国の古典的怪談をサイコサスペンスに脚色した『箪笥』(03)を発表。この作品はハリウッドリメイクされた。イ・ビョンホンとは『甘い生活』(05)、『グッド・バッド・ウィアード』(08)でコンビを組んでいる。旧満州を舞台にした西部劇『グッド・バッド・ウィアード』はカンヌ映画祭コンペ部門に選出。新しいジャンルを切り開く革新性と興行的な側面を両立させる希有な監督として、国際的な評価を得ている。
超訳 ニーチェの言葉 流行ってるみたいで。 amazon_associate_logo.jpg
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DMMライブトーク出演の注目グラドルの吉木りさ 知られざる半生を告白!!

yoshikirisa022201.jpg  "黄金の尻"を持つとも評されるグラビアアイドル・吉木りさ。1月27日には最新DVD『セキララ*彼女3』を発売し、グラドル界を席巻している彼女が、2月24日のDMMライブトークに生登場!! そこで彼女の人生を変えた"トーク"を通して、吉木りさの半生に迫る!! ――大ブレイク間違いナシと言われている吉木さんですが、どんなご家庭で育ってこられたんですか? 吉木 両親の話では、二人が付き合っている時に父が自転車で一人で日本一周に出かけて、月に一度は手紙を送っていたんです。でも、半年経っても帰ってこなくて、母が警察に連絡しようとしていたら、父が真っ黒に日焼けして帰ってきたんですよ。父は日本一周でガリガリでフラフラになりながら、そこで、母に「結婚してくれ!」って指輪を出してプロポーズしたそうです。 ――なんてドラマティックですね~。そんなご両親から生まれた、吉木さんは子どもの頃はどんなお子さんでした? yoshikirisa022202.jpg 吉木 3人兄弟の末っ子で、人見知りでした。姉と兄の後ろをいつも付いて回ってました。中学時代は、ネクラだったんですけど(笑)。漫画家になろうと思っていたぐらい絵ばっかり描いていた妄想少女でした。そこから、姉から借りた同人誌を読んでから一気に"腐女子"になってしまって......。美少年同士の美しくて、ちょっとエッチな愛にのめりこんでしまいました。 ――吉木さんのBL(ボーイズ・ラブ)好きは有名ですよね(笑)。漫画にハマりながらも、芸能界にも興味があったんですか? 吉木 小さい頃から歌手や女優にもあこがれていて、オーディションを受けたいなと思っていたら、高校1年生の春に原宿で今の事務所の方にスカウトされました。そこから、演歌デビューという話になって、演歌の先生に2年間ほどみっちり指導してもらいました。女性の先生で普段は優しい方なんですけど、教えるときは人相が変わるぐらいの熱血指導でしたね。私は日本民謡をずっと習っていて、日本民謡はビブラートを出さないので、歌い方を根本から変えるのが大変でした。練習のおかげで、08年12月に坂本冬美さんの「夜桜お七」のカバーでデビューしました。 yoshikirisa022203.jpg ――その後にグラビアに進出されたんですか? 吉木 グラビアは高校2年生のときに一度DVD1枚を出したんですけど、当時は両親が厳しくて「グラビアなんてとんでもない」と言っていたんです。でも、20歳になってからは「もう20歳なんだからいいんじゃない?」って一気にコロっと態度が変わって、『キャンパスナイトフジ』(フジテレビ)に出るようになってから本格的に始めました。 ――ご自分のグラビアをどのように見てらっしゃいますか?  吉木 全然私はナイスバディではないんですけど、普通にどこにでもいるような体型が、親近感が沸くのかなって思います。私、自分のヒップにコンプレックスがあって、大きいお尻は女の子はイヤなんですよ。なので、お尻を撮るのは最初は抵抗があったんですけど、カメラマンさんから「そこがいいんだよ!」って言われて、逆にインパクトがあるんだと価値観が変わりました。今は大きいお尻が好きになりつつあります。 ――DVDなどのイベントで、ファンの方と直接トークする機会もあると思いますけど、どんなことをファンの方からは言われますか? 吉木 「グラビアを見ると元気になれます」とか、「今日も一日がんばろうって思えます」「心がほっとします」と言ってもらえると本当にうれしいです。自分が活動することで、ファンの方が少しでも元気が出れば、うれしいし、仕事に誇りが持てる。励みになるので、ありがたいです」 yoshikirisa022204.jpg ――逆に言われて嫌なことはありますか? 吉木 DVDはセクシーなので、「毎度お世話になってます」って言われると、困っちゃいます(笑)。 ――グラドルとして注目されながら、再び歌手活動も行われますね。3月2日には、yoshiki*lisa名義で、アニメ『GOSICK -ゴシック-』(テレビ東京系)オープニングテーマの「Destin Histoire」をシングルとしてリリースされるそうで......。 吉木 アニメが大好きなので、本当にうれしいです。ロック調のカッコイイ曲で、歌詞の世界観は奥深いので、『GOSICK』にすごく合ってると思います。今後は、グラビアもがんばりたいし、舞台もやらせていただいているので女優業ももっとやりたいです。歌手としてもライブをしたいと思っています。いろんな方面でどこまで自分が成長できるのかチャレンジしていきたいです。 ――そんな多方面で活躍必至の吉木さんとネット上で交流できるのが、DMMライブトークですね。 吉木 前回は、芸人の弾丸ジャッキーさんと大喜利をしたんですが、視聴者の方とのチャットでリアルな感想が見られて、楽しかったです。見ている方と一緒に作っているような番組ですね。今回も、チャットをしている方と、ドンドン絡んでいきたいと思います。 ●DMM.comライブトーク 生放送で有名人とコミュニケーションできる新感覚エンターテインメント。無料番組も多数あり、旬のアイドルや注目のアーティストと、リアルタイムでチャットできる。 http://dbirth.dmm.co.jp/

気鋭の社会学者が提案する「売春業のライセンス化」と「自由な社会」とは?

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 僕たちはある程度自由な社会に生きている。でも、もっと自由なことがあってもいいと思ったり、さすがにそれは自由すぎるだろう、と思ったりすることもある。では「本当に自由な社会」とは、どんな社会なのだろうか? 社会哲学を専門とする北海道大学の橋本努准教授は、さまざまな社会問題を通して、「自由社会の再設計」を具体的に提案している。それをまとめ、閉塞的な斯界で話題や議論を呼んでいるのが、近著『自由の社会学』(NTT出版)だ。  今回、橋本准教授に、本書の中でも提案されている「売春業のライセンス化」という画期的なビジョンから見える、自由社会のデザインを聞いてみた。 ――まずは、本書を執筆する経緯について教えてください。 橋本 偉大な社会思想家というのは、必ず"社会はこうあるべきだ"ということを具体的に提言しているんですが、凡俗の思想研究者たちは、"自分ならどう考えるか"について語らないですね。だからなんとなく、社会思想というのは役立たない学問だと思われている。そういう状況に違和感を抱いていたので、この際、私自身が政策的なことを体系的に考えてみよう、と。大胆ですが、いろいろと練っています。最近、サンデル教授の「ハーバード大学白熱講義」が流行っていますよね。「どんな社会がいいか」という、サンデルが投げかける問いに、私も自分なりの答えを出しているつもりです。 ――本書の中では、より自由な社会を実現するために、いくつかの具体的な社会問題について提起されています。たとえば「戦争の民営化」や「ムハンマドの風刺画問題」など。その中でも、私が斬新だと感じたのが、「売春業のライセンス化」についてです。確かに売春業を合法とすることは、一般市民に「より社会が自由になったな」と感じさせる身近な例だとは思いますが、同じく市民からの道徳的な反感が強いように思います。 橋本 ええ、まずは不可能だという前提がありますね。しかし現実には、オーストラリアやニュージーランドで、売春業の経営者にライセンスを与える形で、売春の合法化が行われています。なぜ、そのようにするのかといえば、非合法でも実際には、日本中で売春は行われているわけです。非合法でもこんなにやっている人がいるなら、合法化して、きっちり取り締まるほうがいい、ということです。 ――合理的に考えれば、そうだろうなと思える一方、体を売るという不道徳な行為を国家が認めるというのは抵抗があります。 橋本 最近、マンガなどの激しい性描写をどのように規制するのか、ということが問題になっていますね。東京都は、青少年の育成に悪影響を与えると思われる作品に対して、ゾーニングによる規制をし、大阪府はそれを一律に取り締まる方向で検討しているという。東京では、ある程度不道徳なマンガを売ったり、読んだりしてもよいわけですが、大阪では、一切認められないようになるかもしれません。道徳感覚というのは、地域によっても違うし、また時代によっても違ってくるでしょう。国家が売春を認めるかどうかに抵抗があるなら、地方自治体に判断を委ねてもよいでしょう。 ――売春によって社会が荒廃する、というような意見も出てきそうですが、社会統治の面ではいかがでしょうか? 橋本 本当に全部自由化して、ゾーニングもライセンスもすべてなくせば、確かに荒廃するでしょうね。ですが、年齢を制限して、ゾーンを限定して、ライセンスを取りにくくし、しかもライセンスの数を規制すれば、本当にそれが天職だと思える人しか、売春しなくなると思います。たとえば、主婦や女子高生がお小遣い稼ぎにやることは、倫理的にも法的にも認められないでしょう。 ――お小遣い稼ぎに体を売ることができないように、システム的に規制することは可能でしょうか? 橋本 たとえば、シンガポールでは自動車の数を規制するために、ナンバープレートの数を決めています。だから、自動車を新しく買おうと思ったら、ナンバープレートを購入しなければならない。ナンバープレートには、市場価格が付いていて、たくさんの人が自動車に乗りたいと思えば、ナンバープレートの価格は上昇します。それと同じように、売春業のライセンスの数を決めるような法律を作れば、たとえ資格試験に合格しても、売春を開業できないことになるでしょう。このように、荒廃しないための方法は、いろいろと考えられます。 ――具体的に、ライセンス取得のための試験とは、どんなものですか? 橋本 試験の難しさでいえば、車の普通免許を取るよりは難しくしたほうがいいでしょうね。具体的な試験内容ですが、例えば、労働法や市民権論、性の歴史、性に関する医学、フェミニズム、社会学、ディベート術などを3カ月以上にわたって勉強してもらうような形にすれば、性を売る人は、問題が起きたときに自分を守るための、豊かな知識を得るでしょう。 ――そのほか、ライセンス化することのメリットはありますか? 橋本 ライセンスというのは、一つの専門的な承認です。売春業のような、世間では白い目で見られる職業でも、これを「卓越」した能力を必要とする仕事として認めてあげる。そうすれば、売春者でもプライドを持って生活できるでしょう。こうして排除された人を社会的に包摂するのです。 ――その場合の「卓越」とはなんでしょうか? 橋本 たとえば、パラリンピックでがんばっている障がい者たちの姿を見ると、私たちもそこから、何か受け取るものがありますよね。普通の人でも、やればできるのではないか、と。そういった「ガッツ」を与えてくれる。虐げられたり排除されたりしても、人は誇りをもって生きていくことができるんだ、と。自由な社会というのは、限界状況にいても、倫理規範に従わなくても、いい人生だなと言える、そういう社会だと思います。限界状況にいる人たちの卓越は、普通の人々にとっても、自由に生きるための感染力となるでしょう。 ――リバタリアン(自由尊重主義)の人たちも売春の合法化を主張しますが、彼らとの大きな違いは何でしょうか? 橋本 社会が、排除される側にプライドを与えたいと思うかどうかです。リバタリアンの人は、何でも自由にすればいい、という感じで、プライドなどをケアしようとは思わないでしょう。卓越などどうでもいい、と。 ――本書の出版後の反響はどうですか? 橋本 とりあえず周囲に評価されてよかったです。私の具体的な提案に納得しているとかではなく、さまざまな具体的問題に一貫した応答を試みている、という意味ですが。思想界の先輩で森村進先生(法哲学者・一橋大学教授)という方がいるのですが、その先生がリバタリアンの本を出したときには、反発もありました。そこまで自由はいらないよ、という。それが10年ぐらい経って、森村先生の本は、日本発の独創的な思想として評価されるようになってきた。本書も10年後にはそう評価されたいですね。思想というのは、みんなに納得してもらうよりも、みんなの思考を喚起することに役割がある。そういう役割を引き受けたいです。本書は「そこでまで自由はいるのか!」みたいな問題をたくさん示しています。選挙権を売ったり、赤ちゃんを売ったりしてもいいんじゃないか、とか。突っ込みどころ満載ですので、批判していただけるとうれしいです(笑)。  * * *  著者も、思想系の本をたまに読むことがある。しかし、議論があまりに抽象的すぎて理解できないことが多い。本書は、理論編と多くの具体例を用いた実践編とに分かれており、幅広い方々が楽しむことができるのではないか。"自由な社会とは何か?"と頭に浮かんだ方は一読をお薦めする。 (文=本多カツヒロ) ●橋本努(はしもと・つとむ) 1967年東京生まれ。北海道大学大学院経済学研究科准教授。専門は、社会哲学。横浜国立大学経済学部卒業。東京大学綜合文化研究科相関社会科学専攻、課程博士号取得。著書に、『帝国の条件――自由を育む秩序の原理』(弘文社)、『自由に生きるとはどういうことか――戦後日本社会論』(ちくま新書)、『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社メチエ)など多数。
自由の社会学 (真横から見る現代) 自由っていったいなんだ。 amazon_associate_logo.jpg
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「悩んだら、バーッっときてグワーン!」【中川里江】1回泣いて全部忘れるヒロインサイド

nakagawarie001.jpg  元祖フリーアイドルで声優のルンルンこと宍戸留美さんが、自らカメラマンとして可愛い声優さんたちの写真を撮り、さらにアイドルライターの私(小明)がインタビューする不思議な連載の9回目です! 今回はルンルンも出演しているアニメ『はなかっぱ』で主演を務める声優の中川里江さんです! ――はじめまして、小明です! 取材前には必ずブログやツイッターをチェックするようにしているんですけれど、中川さんはどちらもやられてないんですね。  普段からあんまりプライベートの話をしないので......。スタッフさんにも「なんでしないの?」って聞かれるんですけど、自分のことを語るのが恥ずかしんですかね~? 仕事のことならまだしも、私生活になると「誰か読みたい人いるか?」って思っちゃう。ファンの方がいれば喜ばれるのかな、とは思うんですけど、多分いないだろうしな......。 ――ネガティブ! そんなことないですよ!  あと、単純に「やってみよう!」って思ったことがないのかも。もしツイッターやっても、つぶやくこともないし......。 ――普段、どんな生活を送っているんですか......? 業界に入られて、もう11年とかですよね。  あっ、それはウィキペディア情報ですね? あれは全部嘘です(きっぱり)。 ――えっ! じゃあ私が見てきた情報は?  ええ、嘘です。自分で見てびっくりしたんですから。あれは誰が書いているんだろう? 私、何も言ってないもの。 nakagawarie002.jpg ――ちなみにウィキペディアだと出身は高知県の四万十市になってるんですが......。  四万十市という市があるのも知らなかった。 ――それも嘘!?  本当の生まれは大阪で、育ちが高知です。どっから出てきたのか......四万十市って何!? ――じゃあ、年齢は? 32歳になってますが......?  嘘です! 「なんでサバ読んでるの?」って聞かれて気まずいんですけど、自分でもなんでそうなってるのか......。本当の年齢はゴニョゴニョ(自主規制)。 ――......ほう!? それはまた......ええっ!?  面白いからウィキペディアはあのままでいいんじゃないかなぁ。えへへ。 ――所属事務所のリンクもなくって、今まで3つほど事務所を移られていますけど、現状はフリーなんですか?  あ、3つ目は倒産なんですよ。今はそこで一緒にやっていたマネージャーさんと一緒にやっていて。 ――なるほど。しかし倒産とはキツイですね。  倒産しちゃたときはつらかった~。 ――ひどい! 我々にとって事務所が倒産っていうのは、失業とほぼイコールですもんね。主役の『はなかっぱ』があって良かった! ただでさえ安定しない職業なのに、たまったもんじゃないですね......。悩んだり落ち込んだり、辞めようかなって思ったことはありますか?  そんなに長くは悩まないんですよ。悩んでも、思いっきりガーンッときて、バーッっときて、グワーンッて感じかな。 nakagawarie003.jpg ――なんか『ハッとして! Good』みたいでアッパーな感じですけど、つまり、落ち込むだけ落ち込んで一気に回復するって感じですか? どうやって?  映画を観たり、本を読んだりして、一回泣くとすっきりするし、何もなくともガーっと泣いたり。ストレスが溜まっていたり、割と高ぶっていると、台本取りに行く道すがら泣いてたりします。それで発散できますよ~! ――明るく話されてますけど、それ、傍から見るとけっこう心配ですよ! ちなみに、なぜ声優を志されたんですか?  そんなにかしこまった理由はないんですけど、幼い頃から映画が好きっていうのが大きいですかね。それで色々読んだりするのが好きで、ワークショップに行ったのがきっかけで、この世界に入ることになったんです。でも、私、OLさんとかをしていたので、デビューはかなり遅いんですよ。 ――すごい! OLをしながらワークショップに通って、ついに声優になったんですね!  いや~、ほんの少しですけど。 ――え?  それも声優ではなくナレーション。その時の演出家さんからオーディションのお話を頂いたのがきっかけです。だから、声優の学校にも行ってなくて。あんまり得意じゃないんですかね~、学校に行くのは。 ――お気持ちわかります! 色んな役をやられてきた上で、ついにNHKの子供番組で主役が決まった時はどういう気持ちでしたか?  「よくぞ、私を! チャレンジャーだな!(笑)」と、絶叫するほど嬉しかった!!!勉強になることと面白いことがいいバランスであって、ベテランさんもいれば新人さんもいて、宍戸留美ちゃんと私がいて......今までになかった感覚を味わってます。楽しいんですよ、毎回笑いを抑えるのが大変!
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――主役を演じるにあたって、何か変わったことはありますか?  『はなかっぱ』をやるまでそんなに意識してなかったんですけど、主役をやることで、今まで以上に全体を見つつ、現場と作品をもっと俯瞰的に見て、自分を出しつつ、他の人のコラボも楽しんで、邪魔もしないように......と、いろいろ考えるようになりましたね~。 ――座長みたいですね! そういえば、中川さんは仕事の現場では女の部分を一切出さずにやってらっしゃるとか。  一切出さないです。うまく言えないんですけど、仕事場でそういうのを出すのが好きじゃないんですよね......。 ――芸能関係だと、どうしても偉い人に色っぽく「私を使って!」っていうアピールをする人はいますよね。それも一つの入り口ではあるんですが......。中川さんの女の一面はいつ出してるんですか?  事務所関係の人にも一切出さない。というか、面倒くさいから一切出さないの。......出せる物が無い......のか?(笑) ――徹底してますね! じゃあ、こういうグラビアみたいなお仕事をする時は?  いや~、すっごい写真が苦手で、あんまり写ったこともないな~。集合写真にいやいや写るくらいだな~。 ――確かに、中川さんの画像を検索しても、本当に集合写真くらいしか出てこなくて、「どの人が中川さんなんだろう......?」って感じでしたよ!  アハハハ! いや~緊張するので避けていたんですけど、みんなに「写していいですか?」って頼まれると、「嫌ですね!」とは言えないので......。写真なんて、前に宍戸留美ちゃんに撮ってもらって以来で、その時の写真をまだ宣材写真に使ってます。そのくらい撮ってない。 ――じゃあ、今日は撮影の間だけ女スイッチを入れていただいて......。  え~、それはどうかな(笑)。 ――色っぽいの期待してます! 今日はありがとうございました! (撮影=宍戸留美/取材・構成=小明) ●なかがわ・りえ 12月26日生まれ。大阪府出身。代表作に『はなかっぱ』はなかっぱ役、『タユタマ -Kiss on my Deity-』鵺役、『毎日かあさん』毎日ぼうや役等、様々な作品に出演。アニメーション以外でもナレーション等で活躍中。 ●ししど・るみ 1973年11月6日、福岡県生まれ。1990年にアイドルデビュー、18歳でフリーアイドルになり現在まで様々な分野で活動。フランス、ドイツ等でもライブを行い音楽活動で高い評価を得ている。 7年ぶりのニューアルバム『CHERBOURG→BRIGHTON』も世界へ向けて配信中!! http://www.majix.jp/artist_content/187 USTREAMでの音楽番組司会「宍戸留美x津田大介Oil in Life」も必見!! <ライブ情報> 3月18日(金)CLUB Que 「贈る言葉」 出演:宍戸留美/サード・クラス/富士中学校ブラスバンド部 start18:30 チケットぴあ(Pコード:130-683) 問:CLUB Que03-3412-9979 公式HP http://rumi-shishido.com/ ●あかり 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
はなかっぱ ~僕、はなかっぱ~ 大人が見てもおもしろいですよー。 amazon_associate_logo.jpg
【声優 on FINDER!】バックナンバー 【vol.08】「"声優"の仕事の幅広さにびっくり」【稲村優奈】10年に詰まったスクランブルデイズ 【vol.07】「ビキニを着たこともないんです」【蝦名恵】3カ月目のヴァージン・シュート 【vol.06】「生き急いだ分、戻ってやり直しができると思う」【江里夏】10歳で見たデイドリーム 【vol.05】「何でも出来るって、とりあえず言っちゃう」【矢野明日香】360度のワークフィールド 【vol.04】「考えてると、寝ちゃうんです......」【窪田涼子】東経135度のモラトリアム 【vol.03】「いいものを出せば必ず返ってくる」【チャン・リーメイ】100%のプロレス・マインド 【vol.02】「いつもどこかで、なんとかなるさ」【片岡あづさ】22歳のセカンドフェーズ 【vol.01】「Twitter始めるまで、いつも泣いてた」【宍戸留美】20年目のセルフポートレート

Kダブシャインさんの至言「宇多丸は、Kダブをシャインさせない」(後編)

IMG_0162.jpg前編はこちらから ──そ、それはそれでトラウマ! あと、よくテレビや雑誌で「親に殴られて育つと、子どももそういう大人になる」みたいに言われるのが大嫌いで。医学的、科学的に証明されてるのかもしれないし、確かにそういう負のスパイラルがあるのは分かるけど、「お前はもう既に失敗したレールの上を歩いていて、もうずっとその上を歩くしかないんだ」って言われてる気がして、すっごい悔しいんです。 K それは変えられるし、親だって人間だしさ。それこそ親が俺たちを育ててる頃なんて、今の俺たちと同い年ぐらいだったりするわけだから、幼いわけじゃん? 自制心なんて利かない部分はいっぱいあるわけだから、それが分かってると、許せるというか、理解できるようになるし。 ──もちろん許すし、理解してるつもりでいるけど、たまに「虐待された子どもはどうせ~」とか「片親は~」みたいに言う人がいると、人のことでもすごく腹が立ってしまう。なんで自分の人生を創ろうと頑張ってる人に、上からわざわざ「不幸!」ってレッテルを貼りたがるんだろう。「なんだよ! 不幸にならなきゃいけないのかよ!」って、すごくムカつくんです。 K 俺は鈍感だったのか、人からそういう陰口みたいなのがあっても、全然気になんなかったんだと思う。例えば「あそこは家がちゃんとしてない」とか「親が片親で~」とか「躾がちゃんとできてない」って言われても、「お前らに何が分かるんだ?」って思ってたし。親も、俺に対してはちょっと狂ったようなところもあって......。例えば俺が問題を起こして、外で怒られたり苦情が来たりすると、「恥ずかしい。恥ずかしくて近所歩けない。あんた殺して私も死ぬ!」って、何年も日常的に言われ続けてたから、最後は「殺されてたまるか!」ってなってたもんね。「寝てるうちに殺してやる」ってよく言われたから、「寝るのこえーな......」と思いながら、寝ちゃうんだよね、中学生だから。で、起きると殺されてなくて、「なんだよ、本気じゃねえじゃん」って。 ──お母さんもいろいろ追い詰められてたんでしょうけど、病弱で死ぬか生きるかの幼少期を経て、またスリリングな思春期を過ごされましたね......。ちなみに、幼少期はどういう病気だったんですか? K 腎臓が悪くて、それが合併症を起こして、みたいな。もともと未熟児で生まれてきちゃったから体力もなくて、負のスパイラルが重なって病気になってたんだけど、医学の力と俺の生命力で、小学校2年生くらいにはもう何にも病気しなくなった。おかげで自分の力を過信して、だいぶ悪さはしましたけどね。死ななかったから楽しまなきゃって(笑)。 ──楽しみすぎです! アメリカに留学したのはいつですか? K 高一の終わりくらい。 ──そんな早くから? KKKとかがいた場所に留学したんですよね? なんだってまたそんな治安の悪い場所に......。 K だってまあ、こっちに居場所がない感じになっちゃって。 ──寝てる間に殺されるから? K そう(笑)。いや、家も親も好きだったけど、ずっと一緒に住んでるのが窮屈だったし。国内で学校行きながら一人暮らしは無理そうでも、「海外に行きたいんだ」って言えば、なんとか脱出できるかなって思って。なんとなくこの場所も飽きたかな~って感じで、行っちゃいました。 ──8年もアメリカにいたんですよね。8年って相当じゃないですか。なのに会話にもラップにも全然英語を入れないですよね。長く英語圏にいた人って、ちょいちょい会話の途中で流暢な横文字が出たりするじゃないですか。 K あれは、あんまり良くないと思う。その人たち同士のコミュニケーションがそれで円滑にいくならいいけど、日本語として表記したときに、あんまりカッコよく見えないなと思って。ちっちゃいころからずっと外国にいて、本当に"ちゃんぽん"でしかしゃべれない人もいるけど、そういうの、なんかこう言葉として物足りないというか、未熟。一貫性がないから。だったら、英語を外来語として日本語に変化させて日本語の中に入れてればいいんだけど、途中から英語になって、また日本語になって......っていうのは、俺は言語として破綻してるって思うのね。 ──英語が入ってると、「その単語なんて意味だっけ?」とか「あれ? 今のは日本語? 英語?」って混ざっちゃって、聴いてるだけだとちんぷんかんぷんになったりします......。 K インター出身の人たちが話してると、ただ頭の中で訳すのがめんどくさいから、使いやすい言葉を記号のように混ぜて使ってるんだなって思うけど、日本語ラップとか、音楽業界で英語の歌詞を混ぜてる人って、たぶん9割が英会話自体できないし、ヒアリングもそんなできないと思うのね。俺の分析だと、洋楽って、曲中の1.5割くらい英語の殺し文句みたいなのが入ってて、そこがタイトルだったり分かりやすい言葉だったりするでしょ? そこだけなんとなく頭に入ってるから、自分の曲でも1.5割くらい英語のフレーズを入れて、日本語の部分の発音を曖昧にして、なんとなく曖昧にさせてカッコいいと思ってるんじゃないかな。 ――おお、すごい。納得しました。 K でしょ? だから英語のヒアリングができない人でもそこそこ分かる「アイガッチャ」とかをピックアップして、自分の歌詞にも入れてるんじゃないかなって。聴いてると、たぶん本当にそんな感じなんですよね。だから、ちょっと英語が分かる立場から英語のラップと、日英のちゃんぽんのラップを聴くのとじゃ、もう言葉としても、英語のほうが断然聴きやすいし、日本語と英語と混ぜてんのに何にもなってないっていうのが、正直、「ダセーな」って思う。で、こうやって正直なこと言うと、みんなに嫌われる(笑)。 ──あはは! でも、そのせいかKダブさんのラップはかなり聴きやすくって頭にすっと入ります! 『それでも生きる子どもたちへ』のテーマソングだった『ソンはしないから聞いときな』の歌詞で、「なんだってやれる」「なんだってなれる」って、Kダブさんが言うじゃないですか。あれを聴いて、私は子どもの時から「どうせ......どうせ......」って性格だったから、いろんなことにチャレンジしないまま、こうして歳を取っていって、一つ一つ道が消えてって、私は今まで何をしてたわけ? って、情けなくて涙が出そうに......。 K あれは大人に向けてる歌じゃないからね(笑)。大人にはたぶん、もっと現実とか真実とかを突きつけなきゃいけないんだけど、子どもたちが今の世の中を見たら、おそらく俺が子どもの頃よりもよっぽど不安が多いんじゃないかなって。実際、景気とか雇用とか、どんどん道は狭まってるわけだし。でも、それを「そういうもんだから」って言って諦めちゃったら、子どもは子どもらしくなくなっちゃう。皆がやりたいことをやれてるわけじゃないけど、本気で信じて貫いてきた人は、やれてることもいっぱいあるじゃない? 全員は無理だと思うけど、ある程度は叶う。大人たちが子どもに対して無関心になってきた今の時代、子どもたちにはそれくらいの"おまじない"は必要かなって。子どものうちから斜に構えて、「やったってどうせ何もうまくいかねえよ」ってなったら、それこそ愚連隊みたいになっちゃうよ。 ──愚連隊とまではいかずとも、なんだか残念な大人になってしまいました......。私の場合、もう子どもとか親とかを守らなきゃいけない歳なのに、まだこうして誰かに「助けてー!」みたいなことを言ってばかりで、もう自己嫌悪で「うわああああ!」ってなりますわー。 K みんなそうだと思うよ。俺もそうだし。でも、心無い大人が多いから、そいつらが何もしないんだったら、口で言えることだけは言おうかなって。俺、来年のテーマがたぶん「親孝行」になると思うんだけど、どうやれば親孝行ができるんだろう。残りの短いタイムリミットの中で。 ──親孝行、難しいですよねぇ。一人っ子ですか? K 一人っ子。 ──荷が重いですな! うちは姉が先に子どもを作ってくれたし、母も父が亡くなって故郷に戻るので、孫に関してのプレッシャーからはかなり逃れました! K 階段から落とされたお父さん亡くなったの? ......「私にも一回つき落とさせて!」って、小明の恨みが!! ――普通に寿命ですよ!! K あはは。でも、次女だからいいよね。俺はひとり息子だし、俺には全然安心してないから、ちょっと景気が悪くなると、「あんた大丈夫なの? 続けていけんの?」って言われるから、嫁もらって、子ども作って、おばあちゃんにっていう感じにしてあげたいけどねぇ。 ──子ども好きだし、結婚の予定はないんですか? K うーん、しようとしても、女の子に途中下車されちゃうみたいな。したいですけどね。宇多丸とどっちが先かな。(※宇多丸さんは2011年2月10日に入籍を発表しました) ──宇多丸さんはラジオで彼女や同棲の話もオープンにしてて、若干リーチかかってる気がしますね。 K ね。俺ちょっと今度言ってやろうかと思って。女ができて芸風が変わってきたっていうのが最近の俺の不満で。女できて、地上波も出てるでしょ? ──『1924』(フジテレビ)、見てますよ! 宇多丸さん、自然に司会されてますよね。 K ちょっとリセットし始めてるんだよね。地上波向けというか、マス向けの自分を。 ──『ウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)もギャラクシー賞取りましたしね。 K あの辺りからねぇ、ちょっとねぇ? ──あはは! これからも仲良く頑張ってください! 今日はありがとうございました! (取材・構成=小明) ●Kダブ・シャイン(けーだぶしゃいん) 1968年、東京都生まれ。93年に友人だったZEEBRAらと共にラップグループ「キングギドラ」を結成し、95年にデビュー。96年からはソロ活動も活発に行っている。近譜は2枚目となるベストアルバム『自主規制』(ワーナーミュージック・ジャパン)。 ●小明(あかり) 1985年栃木県生まれ。02年史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
自主規制 最強のメッセージソング集。 amazon_associate_logo.jpg
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