みうらじゅんさんの至言「アイドルライターってなんなの?」(後編)

mj_akari003.jpg
■前編はこちらから ■中編はこちらから ――支配は終わりました?  だいぶ自分でコントロールできるようになって。オナニーだって3回に分けたりするよ。 ――えっ、どういうことですか?  だから、途中でやめたりできるようになったんです。サイコキネシス。「あ、ここら辺でやめとこうかな」って。その前はゲロを使い分けて吐けるようになったんですよ。前に電車とかタクシーでやってえらい金とられたことが何回もあるんで、突発性なことも分けていこうと思って。小さく落としていく、みたいな。 ――コゲロが点々と落ちてるわけですか、器用ですね!  そうです。そのオナニー版ができるようになった。 ――人間はいろんなことができるようになるんですね。  できるんです! 歳を取ったといっても、可能性はあるんです! あと、女の人にも優しいですよ。前は体しか見ていなかったですから。10年くらい前にあなたに会ってたら、すぐに電話番号聞いてましたよ。「なんかいいことあるんじゃないの?」「あの人やらしいこと言うからヤレるんじゃない?」って。 ――でも、今でもみうらさんに抱かれたい女は列をなして待っていると聞きますよ。先日もそんな人に会いましたし。  ......キツイでしょ? その人。 ――サブカルスタンプラリーというか、サブカル界で有名な誰々に行って、次は誰々に行って、ラストはみうらさんでゴール! みたいな感じで頑張ってる方でした。  88カ所回ってきて、全部スタンプ押されて......なるほどな。後腐れなかったらいいんですけどね。後腐れで痛い目にあっているからなぁ。中途半端に優しいところがあるんですよ。そこがたまに傷ですよね、ははは! ――ははは......えーっと、ちなみに、私は芸歴9年目なんですけれど、みうらさんが9年目のころってどんなでしたか?  僕が9年っていうと31歳くらいか。辛かったですよ、どうしたらいいか分からないし、ケツ出しても誰も喜ばないし、悔しいじゃないですか! ――そりゃ、31歳男性にケツ出されても喜ばないですよ!  でも、まだアナルが残ってる。アナルは出していいんだもの、生殖器じゃないから。......アナドルっていうのは、いないんだよ? ――出したくないです。  俺は一人者になれると思うんだ。グラビアでアナルを出したら。アナルでも、いいなと思うアナルと悪いなと思うアナルがあるよ。こちとら長いことAV見てきてるから、「うわ、これはイヤなアナルだな~」とかありますよ。出せばいいってもんじゃないですよ。「こいつのアナル、いいな」っていうアナドルがいれば、いいなって思うな。 ――でも、私はアナルを出したくないです。  まあ、そうですよね。俺が言われてもしないもの。自分がやらないことを人に押し付けるのは良くないですよね。 ――隙間を埋めようとすればいいってものじゃないですよ、みうらさん。  ええ。隙間じゃないけど、芸能界って椅子の数が昔から決まっているでしょ? 僕はサングラスかけているじゃないですか。昔、サングラス席には野坂昭如さんが座っていたんです。んで、その人がいない間に座ってしまえばいいんですけど、何故か席が何席か無いんですよ。んで、ふっと見るとサンプラザ中野くんとかが座ってました。でも、いい歳こいてサングラスの奴がずいぶん欠落してきている。でも、ずっと座ってないと誰かが座っちゃうから退けない。タレントでもいるじゃん? 「○○マニア」と言いながらたいしたことない奴。一線にいるときは言わないけど、落ち込み始めてから言い始める奴。 ――家電芸人とか、餃子の王将芸人とか、「○○芸人」も多いですよね。  だったら辞めて、電器屋とか王将に勤めればいいじゃんって思うんだよ。手ぬるいんですよ。ああいうことを必死に言う奴って、小バカにされるんだって。サブカルの弱いところってすぐ必死になるところだよね。俺はそこが嫌で外れようとしてたんだ。 ――それなのにサブカルキングになってしまいましたね......。  あんなのはまぁ、アレでしょ。風評でしょ。差別されてる。だって、俺、スライドショーで武道館とかやったのにさ。 武道館やっている奴なんてサブカルじゃないじゃん。でも誰も書いてくれないんだ。「今度ロフトプラスワンで発売記念をなんちゃら」とか書いて、「お前はこっちだろ?」って言ってくるんだよ。とりあえずは中野・高円寺から離れないといけない。中野とか高円寺は震源地だもん! そこから半径50kmは全部サブカル。 ――なんたる風評被害!  ああいう場所に若いときから行っていると、そういうにおいが付きますよ。 ――もう付いちゃったかな......。  今だったら脱出できるかも。最終的には杉作J太郎の映画に出なきゃいけなくなるでしょ。でも、それでいいっていう人がやっている世界だから、そういう覚悟ですよね。 ――そんな大きな覚悟、背負えない!! 私はただちょっと知名度を上げたり、たまに明るい場所に出たりしたいだけなんです!!  だから、知名度、アナルで上がるよ。 ――嫌ですよ!! 要するに私を『グラビアン魂』に出してくれってことですよ。  えっ、もしかして、今、交渉に入っているんですか? ――そうです。なんとか頼みます。そこそこ脱げますから!  やっぱりサブカル臭がするのがちょっとなぁ......。サブカルはもういいでしょ、次からはもっと、なんとかヒロとかと対談しなよ。薄めなきゃ、中野の沼のにおいを。 ――ヒロ? 水嶋......かな? あはは! サイゾーには出てくれないですよ(笑)!  それは出ている俺に失礼だろ! あとファンキーモンキーベイビーズとか、EXILEとか、とりあえず全然興味ない人たちがいい。あと、あのブサイクな......(テーブルの雑誌をいじりながら) ――最後、誰!? ちょっと、あからさまに飽きないでください!! (取材・文=小明) ●みうら・じゅん 1958年、京都府生まれ。マンガ家・イラストレーターなど。80年、「ガロ」(青林堂)誌上でマンガ家デビュー。テレビ、ラジオ、スライドショーなど幅広い活動を展開している。DVD『みうらじゅんの正しい保健体育』(キュリオスコープ)発売中。 ●あかり 1985年栃木県生まれ。2002年史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
みうらじゅんの正しい保健体育 [DVD] 「これから始まる授業は、義務教育では決してありません」 性のカリスマ伝道師、みうらじゅん氏による、正しい保健体育の授業が幕を開ける! 累計10万部を突破した幻の名著「正しい保健体育」(イースト・プレス社)がついにDVD化!! 「どうしてセックスしてはいけないの?」「『恥ずかしい』というセンス」「童貞期に学ぶべきこと」――青少年期に誰もが抱える悩みの数々。若者に伝えるべき本当の「セックス」とは何か? 性のカリスマ"みうらじゅん"が放つ、童貞時代を生き抜くスタンダードDVDがついに完成!! 授業を担当するのは、教育実習生の柏木美里先生。赤裸々な「保健体育」の授業を真剣に生徒達に語りかる。 さらに、「正しい保健体育」の中でも重要な「自分塾」という考え。 この自分塾塾長が語るバカバカしいけど"目から鱗"な話も満載。 充実の特典映像は、ノリノリで収録に挑むみうらじゅんによる「自分塾塾長みうらじゅんの『正しいアテレコ』」。 さらには原作者と主演の2人の本音!? が分かる「対談:みうらじゅん×柏木美里 正しい性教育の現場」や、柏木先生の「NGテイク集」などを多数を収録!! 大好評発売中!!2,625円(税込) 2011年/本編48分+特典47分/カラー/16:9/ステレオ 出演: みうらじゅん 柏木美里 福島勝美 ディレクター: 西巻正和   エグゼクティブプロデューサー: 市村亮 発売・販売元: 株式会社キュリオスコープ 販売代理: 有限会社アルドゥール (C)CURIOUSCOPE amazon_associate_logo.jpg
小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第27回】 山路徹さんの至言「バラエティーが怖いようでは戦場に行けないですよ」 【第26回】 浅草キッド・玉袋筋太郎さんの至言「相手がクンニしてる顔を思い浮かべなさい」 【第25回】 前田健さんの至言「自分は赤毛のアンの生まれ変わりだと思ってる」 【第24回】 叶井俊太郎さんの至言「結婚したければ高2で100人斬りの男を探しなさい!」 【第23回】 須藤元気さんの至言「僕の本なんて、ギャグみたいなものですよ」 【第22回】 オアシズ大久保佳代子さんの至言「本当はOLを辞めたくなかったんだよなぁ......」 【第21回】 Kダブシャインさんの至言「宇多丸は、Kダブをシャインさせない」 【第20回】 楳図かずおさんの至言「世界を相手にやっている人は、友達作っちゃうと危ない!」 【第19回】 キングオブコメディさんの至言「いつ辞めてもいいから、続けられるんです」 【第18回】 バカリズムさんの至言「モヤモヤは、そのまま持ち帰って立ち向かいます」 【第17回】 島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」 【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」 【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」 【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」 【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

【キングオブコメディ】──コンビの立場をくつがえすツッコミ高橋"数々の奇行"

kingobcomedy000000.jpg
(写真/磯部昭子=A/M)
「漫才を勉強しようか、って話をしてたんですよ」  破壊力に満ちた今野のキャラとボケによって、見る者の腰を砕いていくキングオブコメディ。2010年の「キングオブコント」で優勝を果たす前から、その折り紙つきの実力でコントの道を驀進していた......と思いきや、高橋の口から意外な言葉が漏れた。 高橋 「漫才に揺れてた時期もありました。ちょっと前にはやったショートネタをやる番組にもあんまり出られなかったし、かといって長いコントを競う大会もないので、自分らのネタを見せる場がなくて。コントだけじゃ難しいかもって考えてたら、『キングオブコント』が始まったんです」 今野 「今思えば、いいタイミングでしたね」 高橋 「これでようやく目指すものができたから、コントを全力でやろうと」  結果、三回目の挑戦にして初の決勝に進出。「誘拐されても平然としている子ども」「教官の言うことを聞かない自動車教習所生徒」という今野の勝手さが際立つキングオブコメディの揺るがない世界観で、審査員席の芸人たちを圧倒。ジャルジャル、しずる、ピースなど、実力と人気の揃った難敵を退け、堂々キングを戴冠したのだった。それから1年......。 高橋 「いや~。僕ら自身何も変わってないですよ」 今野 「ただ環境はちょっと変わりましたね。ネタ見せをしないでテレビ番組に出ることもあったり、ライブでトリになることも多くなったり」 高橋 「いい意味で、芸人としてのハードルは上がったかもしれませんね。あと今までは今野が騒ぐだけのコントだと思われていたのが、『ちゃんとしたネタをやってる』と思ってくれる方が増えたのはありがたいなと」  2人のコントの面白さが認知された最近は、ツッコミの高橋に注目が集まり、芸人として新たな展開を見せている。バナナマン・設楽がテレビやラジオで、高橋の人間性のおかしさに言及し、トークバラエティ『ニコニコキングオブコメディ』のDVDでも、始発が出るまで代々木上原駅の路上で横たわっていたエピソードや、天井がペナントで埋め尽くされた自室の映像など、高橋の奇人ぶりが伝わる事実が数々紹介されている。  「食に対する意地汚さとかすごい。打ち上げの居酒屋でひとり残って、みんなが食べ残したエビの尻尾を吸ってますからね」と今野が指摘すると、「エビも尻尾のミソを一吸いすれば成仏するでしょ?俺は、もったいないという日本人の美徳を啓蒙していきたいんだよ!」と高橋はうなずけない自説を延々と熱弁。コントにおける"まともじゃない人=今野・まともな人=高橋"の構図は完全に逆転している。 今野 「まあ、凄みが出てきましたよね。昔から凄みはあったんですけど、俺だけが知ってたこいつの凄みが、最近になって周りにも伝わってきた」 高橋 「なんだよ凄み凄みって。その言葉、使ったことないだろ」 今野 「昔からいじりたかったんですけど、俺の見た目がいかにもボケなんで、それはヘンじゃないですか。でも最近はこいつのほうが凄みがあるから、いじっても自然に見える」 高橋 「というか、今野がいじられるのを嫌がるんですよね。だから俺がビジネス的な必要性を感じていじられてるだけで」 今野 「えっ!? 駅前で寝てたのもビジネス?」 高橋  「そうだよ、お前が寝ないから寝たんだよ。そういうもんだろ、コンビって!」 (文=鈴木工)
ニコニコキングオブコメディ 冗談にもほどがある! ニコニコチャンネルサイゾーテレビにて放送中の番組がまさかのDVD化!? 番組中で取り上げられた28の疑問を、自ら現場に出向いて検証。さらにその中から3つは特典映像のみでしか見られない仕様となっている。古谷実先生による表紙も必見! amazon_associate_logo.jpg
本日29日22時よりニコ生&USTREAM2元生中継! 「ニコキン生!」キングオブコメディDVD『冗談にもほどがある! 』発売直前生放送スペシャル!! ニコ生→http://live.nicovideo.jp/gate/lv64713213 Ustream→http://www.ustream.tv/user/cyzo_tv ●キングオブコメディ 高橋健一(1971年、東京都出身/ツッコミ/写真左)、今野浩喜(1978年、埼玉県出身/ボケ/写真右)からなるお笑いコンビ。プロダクション人力舎が運営する、スクールJCAの同期生。2000年にコンビ結成。05年に第3回お笑いホープ大賞を受賞、10年にキングオブコント2010で優勝。名実共にキングオブコメディに。現在、テレビのバラエティ番組などで活躍中。単独ライブはチケットの入手が困難なほど人気を集める。 【関連記事】 キングオブコメディさんの至言「いつ辞めてもいいから、続けられるんです」 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 キングオブコメディ 今すべての『誤解』を解く!?

みうらじゅんさんの至言「アイドルライターってなんなの?」(中編)

mj_akari002.jpg
■前編はこちらから  俺の連載だって安いもん。 ――みうらさんで安いなら私はもっとですよ。  高い雑誌はもう無いんじゃない? どこも売れてないでしょう。サイゾーはけっこうくれるでしょ? ――サイゾーは、えーと、今より下がらないのを望むだけです! みうらさんはめちゃめちゃいろんなところで執筆されてますけど、大変じゃないですか? 原稿を断ったりもするんでしょうか?  断るときは「原稿料1億円」とか言っといた方がいいよ、キチガイだと思ってシューッと居なくなるから。 ――私がそんなことしたらキチガイの評判が広まってどこからも仕事もらえないですよ!  キチガイじゃないですもんね。 ――この業界でキチガイって言われる人たちって、みんな振り切れてて才能があるじゃないですか。私は妙に常識的でそっち側ではないし、だからといって優等生みたいにいろいろこなせるタイプでもない。中途半端なんです。だから仕事もパッとしないし、「SPA!」(扶桑社)の『グラビアン魂』にも呼ばれないのかなって......。  ゾンビとかやってたら呼ばないでしょ! ――ゾンビだけど水着でギャップ萌え......みたいのは?  どんどん抜けない方向へいくじゃないですか! ――そうですよね~、もうどうしたらいいか......。自分ではグラビアも頑張りたいと思ってるんですけど、どうも男の人は私にグッと来ないみたいなんですよ。  そういうわけじゃないですよ。あなたは中途半端に頭が良くて、面白いことを考えちゃうんですよ。面白くなくていいですよ。面白くない方がいい。面白くないとチンポは勃ってくるもので、面白いと萎えるんですよ。面白い人はだめですよ、グラビアは。男を勃てなきゃいけないの。 ――男を"立てる"じゃなくて"勃てる"だったんだ......! でも、フリーで6年やっていて、その間グラビアはもちろんAVのオファーすらないっていうのは、よほど男の人のおちんちんが反応しないんだな、と。何が足りないと思いますか?  足りないというか、しゃべりすぎる。男って口が立つ女の人が怖いんだよ。「ほぇ~?」とか言ってヨダレ垂れてるくらいの奴の方がいいんだよ。 ――そんなの若いうちだけじゃないですか! ......(持参した自分エロスクラップを開いて真顔で)抜けませんかね?  いや、抜けないことはないと思う。キレイな人じゃん。何かがそれを阻止してる。邪悪な何かが。 ――邪悪って......。  下地が沼だもの。中野とか「タコシェ」とか行ってるようじゃ。今はその沼で拾った本がいっぱい体に付いてるから、沼の匂いがするんだよ。そういう女性はいっぱい僕のところにも来たよ。割ときれいだった。 ――みんなどうなったんですか?  「こんなはずじゃなかったのに」って言いながら死んでいったよ。 ――死んでいったか......。  面白いこと言ってる奴にはチンポが勃たない。面白い人になっちゃダメ。......でも、前はエロ本の表紙になったりしていたんだから、もう上がりじゃないですか? ――グラビア界での上がりは「ヤングジャンプ」(集英社)とか「ヤングマガジン」の表紙になって、服を着ててもテレビに出られるところですよ! 私はそこに一向に行けずにフェードアウトして、気づいたらゾンビや幽霊になってかわいいアイドルを引き立てていました。その禍々しさたるや、まるで四天王に踏まれる邪鬼ですよ。  でも、そんな風に虐げられるのが好きなんでしょ? アイドルって偶像って意味だから、初めから形は無いじゃないですか。形がないなら、何してもいいんじゃないですか? きっとあなたがアイドルだと思えば、ゾンビだってアイドルなんじゃないですか? ちょっと、あなたは考えすぎていますよね。頭が先にたっちゃうからしんどいんじゃない? ――確かにしんどいです......。  だったら考えない方がいいですよ。もうちょっと自分をバカにした方がいい。「すごいことができるはず」と思っているからしんどいんですよ。えー、できないです!(きっぱり) ――悟りの境地......! 私は今26歳なんですけど、みうらさんは26歳のころからそういう青年だったんでしょうか?  いや、SEXばっかりしてましたよ。SEXができたのがうれしくて。うれしいじゃないですか、ずっとやりたかったから。ははは。 ――いや、ちょっと分からないですけど......。でも『よりみちパン!セ』(理論社)で書かれた『正しい保健体育』もDVDになりましたし、そのころの経験が活きたのかも! あのDVDは勉強になりました。  文化系の性教育でしょ? 体育会系のことはわからないから。あのDVD、誰が見てるんだろう......。 ――みうらさんのファンと主演の柏木美里さんのファンと、あとはすさまじい性欲に苦しんでる若者たちじゃないですか?  若いときは金玉に洗脳されているというか、支配されているので、自分ではどうしようもないんですよね。 (後編につづく/取材・文=小明) ●みうら・じゅん 1958年、京都府生まれ。マンガ家・イラストレーターなど。80年、「ガロ」(青林堂)誌上でマンガ家デビュー。テレビ、ラジオ、スライドショーなど幅広い活動を展開している。DVD『みうらじゅんの正しい保健体育』(キュリオスコープ)発売中。 ●あかり 1985年栃木県生まれ。2002年史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
みうらじゅんの正しい保健体育 [DVD] 「これから始まる授業は、義務教育では決してありません」 性のカリスマ伝道師、みうらじゅん氏による、正しい保健体育の授業が幕を開ける! 累計10万部を突破した幻の名著「正しい保健体育」(イースト・プレス社)がついにDVD化!! 「どうしてセックスしてはいけないの?」「『恥ずかしい』というセンス」「童貞期に学ぶべきこと」――青少年期に誰もが抱える悩みの数々。若者に伝えるべき本当の「セックス」とは何か? 性のカリスマ"みうらじゅん"が放つ、童貞時代を生き抜くスタンダードDVDがついに完成!! 授業を担当するのは、教育実習生の柏木美里先生。赤裸々な「保健体育」の授業を真剣に生徒達に語りかる。 さらに、「正しい保健体育」の中でも重要な「自分塾」という考え。 この自分塾塾長が語るバカバカしいけど"目から鱗"な話も満載。 充実の特典映像は、ノリノリで収録に挑むみうらじゅんによる「自分塾塾長みうらじゅんの『正しいアテレコ』」。 さらには原作者と主演の2人の本音!? が分かる「対談:みうらじゅん×柏木美里 正しい性教育の現場」や、柏木先生の「NGテイク集」などを多数を収録!! 大好評発売中!!2,625円(税込) 2011年/本編48分+特典47分/カラー/16:9/ステレオ 出演: みうらじゅん 柏木美里 福島勝美 ディレクター: 西巻正和   エグゼクティブプロデューサー: 市村亮 発売・販売元: 株式会社キュリオスコープ 販売代理: 有限会社アルドゥール (C)CURIOUSCOPE amazon_associate_logo.jpg
小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第27回】 山路徹さんの至言「バラエティーが怖いようでは戦場に行けないですよ」 【第26回】 浅草キッド・玉袋筋太郎さんの至言「相手がクンニしてる顔を思い浮かべなさい」 【第25回】 前田健さんの至言「自分は赤毛のアンの生まれ変わりだと思ってる」 【第24回】 叶井俊太郎さんの至言「結婚したければ高2で100人斬りの男を探しなさい!」 【第23回】 須藤元気さんの至言「僕の本なんて、ギャグみたいなものですよ」 【第22回】 オアシズ大久保佳代子さんの至言「本当はOLを辞めたくなかったんだよなぁ......」 【第21回】 Kダブシャインさんの至言「宇多丸は、Kダブをシャインさせない」 【第20回】 楳図かずおさんの至言「世界を相手にやっている人は、友達作っちゃうと危ない!」 【第19回】 キングオブコメディさんの至言「いつ辞めてもいいから、続けられるんです」 【第18回】 バカリズムさんの至言「モヤモヤは、そのまま持ち帰って立ち向かいます」 【第17回】 島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」 【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」 【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」 【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」 【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

みうらじゅんさんの至言「アイドルライターってなんなの?」(前編)

mj_akari001.jpg  モテない、金ない、華もない......負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストに、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第28回のゲストは、DVD『みうらじゅんの正しい保健体育』を発売された、みうらじゅんさんです! [今回のお悩み] 「もう芸歴が9年目でして......」 ――まさかみうらじゅんさんに人生相談できる日が来るなんて......感激です! はじめまして、アイドルライターの小明です!  アイドルライターってなんなの? ――昔、エプドルというか、エプロンアイドルというのをやってまして、それから......。  エプロンアイドルってなんなの? ――えーとですね、社長の趣味というか、ちょっと説明が難しいんですが、いろいろと長い道のりがあって......あっ! みうらさんはエロ本をスクラップするのが趣味ですよね!? 私のグラビアなんて絶対に知らないだろうと思って、デビューから今までの私のグラビアをスクラップしてきたので、良かったら!  見せてー! (スクラップをめくりながら)......これ、どこの? ――多分「プレイボーイ」(集英社)かな?  「プレイボーイ」は貼ってると思うんだけどなぁ。これ、「スコラ」(辰巳出版)のホワイトビキニーズ? ホワイトビキニーズも結構とってあるはずですけど、えーと、ちょっと待てよ?(ページがだんだんおかしな着エロへ) ――すみません、なにぶんちっとも売れませんで、えへへ......。  良い感じに落ちましたね、これ! いい落ち方じゃないですか! あ!! これ、貼ってありますね!! ――本当に? やったー!! うれしい!!  おお、これも、これも貼ってあります!! ――感激です!! ピークの時より落ちてからの方が目に止まっていたなんて! どの写真ですか? ......全然顔が写ってないグラビアばかりですけど、うれしいです! ありがとうございます!!  いやいや、ストーリーが付けられるのを貼ってるんですよ。お、これも貼ってあるな。 ――顔がなくてもうれしい! その後は『アイドル墜落日記』という本を洋泉社から出したり、『小明の感じる仏像』(エースデュース)っていう、私が仏像を見に行くだけのDVDを3本ほど出したり......これは恐らくみうらさんの『見仏記』(ジェネオン エンタテインメント)のパクリだと思うんですが......。  アレはあなたか! そうか、そうか。分かった分かった。もう、モロですよね! ――いやぁ、すいませんでした......。  いやいや、仏像は僕のものじゃないですから。 ――で、最近の仕事としては、ゾンビになって「映画秘宝」(洋泉社)の表紙をやらせてもらったり......。  そうか、コレもあなたか! 分かったぞ! いろんなところに手を出し過ぎているな!? ――ええ、まさに......! しかも、私、全部にわかなんですよ。すべてにおいて詳しくないし、すべてブームの後乗り。  1個にした方がいいよぉ。 ――貧乏性なのか、仕事が来たら断れないんです。仏像もまったく知らないけど受けちゃったし、ゾンビはたまたまジョージ・A・ロメロの映画を見たら盛り上がってしまってゾンビのメイクの練習をしていたら仕事が来るようになって......仏像もゾンビも好きなんですけど、うんちくが語れるほどではないという半端さ......。  ちょっと新しくて、ちょっと古いね、やってることが。時代とマッチしすぎてるんだよ。もっと、"天狗"とか訳分かんないこと言わないと。 ――......天狗ですか?  そう、天狗。とりあえずゾンビの田んぼは結構やられてますよ! マイケル・ジャクソンだってやってるんだから! ――でも、こういう姿にならないと雑誌に載れないんです!  確かに、ちょっと変わったことしないとね。もう、どっちかですよね。カルトと言われる路線にズッポリ行くか、今日から辞めるかですよ。 ――今日から辞めた場合、このサイゾーの連載も終わってしまいそうです。食いっぱぐれます。  サイゾーの連載は、こっち寄りなんですか? ――今までお話をうかがったのは、杉作J太郎さんに、玉袋筋太郎さんとか、伊集院さんとか......。  伊集院だって、静じゃないでしょう? 光でしょう? ――もちろん! 「今、あなたは死にたいと思っているけど、それはもう直らないよ」って言われてちょっと楽になりました。  死にたいと思っているの? ――死にたいというか、他人も信じられないし、何より自分が一番信じられない陰鬱な性格で......生きづらいので、いっそ何かを信仰したいくらいです。  I don't believe me! 自分なんて信じちゃダメ! どこか宗教みたいのに入ればいいじゃん、すぐ入れるよ! ――そうかな!? ちょうど本名も青木小明(あお・き・あか・り)な色とりどりで縁起が良さそうですし! でも友だちが少なすぎてどこからも誘われないです。唯一誘われたのは、20歳の誕生日に何もすることがなくてうろうろしていたら、手相の勉強をしている人に声をかけられて、うれしくて見てもらった時くらい。  人としゃべりたいものね......。分かりますよ、僕も気づいたら消火器を買ってたことありますもん。 ――消火器はまだ使えるから良いじゃないですか。私は入会費が64万円と言われて現実に戻りました。勧誘してきた女の子もかわいかったし、安ければ入ってましたよ。  そういうところはかわいい子が多い! みんな美人だとついて行くからね。だから、勧誘する方法としてはうまいよ。あなたも入ったらそうなれるよ。 ――えへへ、そうかな。私を勧誘した人は「定職についてないからローン組めないし貯金もない」というのを察して去って行きましたけど。お金が無い人間に用はないみたい。  それはそうだ、そんな人を救ってる場合じゃないもんね。 ――私、安い仕事しかしてないですし、普通にそんな額ポイッと払えないですよ。 (中編につづく/取材・文=小明) ●みうら・じゅん 1958年、京都府生まれ。マンガ家・イラストレーターなど。80年、「ガロ」(青林堂)誌上でマンガ家デビュー。テレビ、ラジオ、スライドショーなど幅広い活動を展開している。DVD『みうらじゅんの正しい保健体育』(キュリオスコープ)発売中。 ●あかり 1985年栃木県生まれ。2002年史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
みうらじゅんの正しい保健体育 [DVD] 「これから始まる授業は、義務教育では決してありません」 性のカリスマ伝道師、みうらじゅん氏による、正しい保健体育の授業が幕を開ける! 累計10万部を突破した幻の名著「正しい保健体育」(イースト・プレス社)がついにDVD化!! 「どうしてセックスしてはいけないの?」「『恥ずかしい』というセンス」「童貞期に学ぶべきこと」――青少年期に誰もが抱える悩みの数々。若者に伝えるべき本当の「セックス」とは何か? 性のカリスマ"みうらじゅん"が放つ、童貞時代を生き抜くスタンダードDVDがついに完成!! 授業を担当するのは、教育実習生の柏木美里先生。赤裸々な「保健体育」の授業を真剣に生徒達に語りかる。 さらに、「正しい保健体育」の中でも重要な「自分塾」という考え。 この自分塾塾長が語るバカバカしいけど"目から鱗"な話も満載。 充実の特典映像は、ノリノリで収録に挑むみうらじゅんによる「自分塾塾長みうらじゅんの『正しいアテレコ』」。 さらには原作者と主演の2人の本音!? が分かる「対談:みうらじゅん×柏木美里 正しい性教育の現場」や、柏木先生の「NGテイク集」などを多数を収録!! 大好評発売中!!2,625円(税込) 2011年/本編48分+特典47分/カラー/16:9/ステレオ 出演: みうらじゅん 柏木美里 福島勝美 ディレクター: 西巻正和   エグゼクティブプロデューサー: 市村亮 発売・販売元: 株式会社キュリオスコープ 販売代理: 有限会社アルドゥール (C)CURIOUSCOPE amazon_associate_logo.jpg
小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第27回】 山路徹さんの至言「バラエティーが怖いようでは戦場に行けないですよ」 【第26回】 浅草キッド・玉袋筋太郎さんの至言「相手がクンニしてる顔を思い浮かべなさい」 【第25回】 前田健さんの至言「自分は赤毛のアンの生まれ変わりだと思ってる」 【第24回】 叶井俊太郎さんの至言「結婚したければ高2で100人斬りの男を探しなさい!」 【第23回】 須藤元気さんの至言「僕の本なんて、ギャグみたいなものですよ」 【第22回】 オアシズ大久保佳代子さんの至言「本当はOLを辞めたくなかったんだよなぁ......」 【第21回】 Kダブシャインさんの至言「宇多丸は、Kダブをシャインさせない」 【第20回】 楳図かずおさんの至言「世界を相手にやっている人は、友達作っちゃうと危ない!」 【第19回】 キングオブコメディさんの至言「いつ辞めてもいいから、続けられるんです」 【第18回】 バカリズムさんの至言「モヤモヤは、そのまま持ち帰って立ち向かいます」 【第17回】 島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」 【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」 【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」 【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」 【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

「みんなをドキドキさせたい♪」アキバアイドルが"絶対領域"の先まで見せちゃう!?

mosatsu00.jpg
『アキバ妄撮』より(以下、同)
「かわいい女の子の服の下をのぞき見してみたい!」  そんな中学生男子レベルの妄想を叶えるグラビア企画「妄撮」の最新刊『アキバ妄撮』(発行=プレビジョン/発売=角川グループパブリッシング)が発売され、大きな話題を呼んでいる。  モデルとなったのは、アキバ系アイドルの夢眠ねむちゃん。  秋葉原のライブ&バー「ディアステージ」で働きつつ、アイドルユニット「でんぱ組.inc」に所属する他、DJねむきゅんとしてクラブでも活躍しているマルチアイドルだ。  そんな彼女が、ディアステージ、中央通りの交差点、とらのあななど秋葉原を象徴するさまざまなスポットで、鉄壁の衣装の下に隠れた肢体を惜しげもなく見せつけてくれるのである。  「絶対領域」「チラリズム」など、見えそうで見えない侘び寂びの精神を粋とするアキバカルチャーに真っ向から挑んだ彼女に、『アキバ妄撮』に至るまでのエピソードや見どころを聞いてみた。 mosatsu02.jpg ■二次創作の元ネタになりたかった ──ねむちゃんはどういう経緯でアキバカルチャーと出会ったんですか? 「小さい頃からマンガやライトノベルにどっぷり浸かって過ごしていたんですが、自分はオタクだっていう自覚がないまま育っていたんです。その後、たまたま秋葉原に遊びに行ったときにメイド喫茶でメイドさんたちのステージを見て衝撃を受けたりしつつ、美術系の大学に入ったんですが、『美術って何だろう』って行き詰まったときに、メイドさんやファンの方の盛り上がりから受けた衝撃を思い出してアキバに流れ着いたんです」 ──アキバが創作の刺激になったという感じですか? 「そうですね。大学では『創作するぞ』っていう、意識的な人しか創作をしていないイメージなんですが、アキバってそういうことを意識せずとも、『俺の好きなアイドルが何日に誕生日だから、その日のためにシャツを作ってあげよう』みたいに、自然な形で何かを発信したり、創作したりしている人が多いんですよ。遊んだり生きたりするために何かを作る人が多くて、そのピュアなところに心惹かれるものがありました。普通に生活していたら出てこないようなエネルギーが街全体を包んでいて面白いと思いますね」 ──作らざるを得ない人達が集まってる。 mosatus04.jpg 「そうなんです。『創作しないとどうしようもない!』『いろいろ抱えているから出さないといけない!』みたいな強迫観念に駆られて作ってる方もいて、非常に影響を受けました」 ──元々はどんなアートを志していたんですか? 「最初はインタラクティブアートをやっていたんですが、アイドルが歌ってお客さんがそれに反応をするっていうのがすごくインタラクティブなアートだと思ったんです。誰かのために盛り上がったりみんなの幸せを考えてあげるといった、それまで現代美術に感じることのなかった熱だったり、『愛情』というものをアイドルに見出すことができたんです。あと、メディアアートの勉強をしていたんですが、自分がメディアになれるという喜びをアイドルになろうと思った時に感じたんです。何かを表現する誰かのツールになれるっていうのが自分の中でのメディアアートだなって思って活動しています」 ──自分が二次創作の元ネタになりたい、みたいな? 「はい。そういうアキバ的な面白さが『妄撮』というテーマにバッチリはまったと思います」 mosatus05.jpg ■大きな話題を呼んだ『アキバ妄撮』 ──普段は脱いだりしない、身近なアイドルとして活躍しているねむちゃんが、「妄撮」されるのってかなりの冒険だったんじゃないですか? 「最初、周囲から猛反対を受けるだろうなって予想はしていました。私は普通のグラビアアイドルの方と違って、普段は歌ったりディアステージでご飯を運んだりする、本当にファンに近い存在のアイドルなんです。だから極端に言ったら、ファンのみなさんにとっては自分の彼女や女友達が脱いだような感覚だろうから、絶対嫌だと思うだろうってすごく悩んだんです。でも、そこは私が乗り越えなきゃいけない壁だと思ったんです。アキバってそういうキレイなままでいること、絶対領域の向こう側を見せないことが美しさみたいな部分があると思うんですけど、そこで終わってしまったら、その大切さも分からないままだと思ったんです。だから、私がポリシーを持ってやればきっとみんなも分かってくれるって信じて撮影に臨みました。ちなみにディアステージの女の子たちは、みんなオタク気質があるので、『萌える!』って喜んでくれました(笑)」 ──オタク女子的には大絶賛だったんですね。 「そういえば、ある知人のライターさんがブログで『アキバ妄撮』を見て、『知ってる子が脱いでいるのを見るのがすごく嫌だ』と批判してたんですが、この本を買ってくれたある女子高生がその人に激しく抗議してくれていたんです。この子なりに私を守ってくれてるんだって感動したんですけど、そのライターさんも普段は頑張ってる方だからねって思ったり......(苦笑)。でも、そのライターさんも女子高生もきっとピュアな人たちで、そんなピュアな人達を攻撃的にさせることができた。そこまで心を動かすことができた、というのがすごくうれしいんです」 ──確かに、現代美術って問題提起することが目的という側面もありますから、そうやって話題に上った時点で勝ち、みたいなところはありますよね。Twitterでも、『アキバ妄撮』に端を発した「アキバ系アイドルの肌の露出は是か非か」という話題が非常に盛り上がりました。 「はい。だからどの賛否もすごくうれしくて、この作品を作れて本当に良かったなって思います」 mosatsu01.jpg ■真の主役は「秋葉原」! ──アキバを舞台に写真を撮ったことで、秋葉原の見方って変わりました? 「変わりませんね。生活の一部を切り取ってもらったという感覚があるので、アキバを一から見直すというよりは、改めてやっぱ面白い場所だなと再確認しました。女の子とか文化とか、いろんな要素が交差していて......なんだか国っぽいですよね。アキバだけコスプレして街を歩いていても変じゃない。ディズニーランドとかに近いのかも。例えばミッキーの耳をつけて電車に乗ってる人を見ると『あ、舞浜からの帰りなんだ』って思うのと同じように、メイドの服を着て電車に乗っている人を見ると『アキバっぽい』って思っちゃう。そういう街のアイコンというものがあるのは、アキバならではなのかなと思います」 ──ちなみに「妄撮」シリーズって、男子がグッとくるシチュエーションを集めたシリーズですが、実は『アキバ妄撮』は秋葉原という街が主役ですよね。 「そうですね。『妄撮』では場所をテーマにしたことってないですよね。その街らしさっていうのは色んな街にあると思うんですけど、破って見てみたい街なんてアキバしか今は思いつかないですね」 ──では、最後にサイゾー読者の健全な男子に向けてメッセージをお願いします。 「いろいろな楽しみ方ができる本だと思います。アキバに対して距離を感じるオシャレ男子さんにも、反対にオシャレっぽい本だなって抵抗のある方にもすごく面白く見ることのできる仕上がりになっていると思います。ねむはツンデレな方にも対応しているので、『こんなの見たくない』『嫌だ!』とTwitterで書かれた方も、ぜひAmazonをポチっていただければと思います!」 (取材・文=有田シュン) nemutop.jpg ●ゆめみ・ねむ 三重県出身。美大卒。電波ソングや萌え系アニメソングを主に歌う不思議系アイドル。ゲームやマンガが大好きで、特にマンガは1950年代の作品に熱中するなど深い造詣を誇る。「DJねむきゅん」名義でエレクトロとアニソンを結ぶ女性DJとしても活躍中。 公式HP <http://nemu.dearstage.com/> 秋葉原ディアステージ<http://moejapan.jp/dearstage/
アキバ妄撮 ポチっとな。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 童貞時代の複雑な感情が蘇る! エロいけどヌケない写真詩集『思春期』 アキバ系コスプレ×原宿系オシャレファッション=「ネオ・コス展」ってなんだ!? 秋葉原の歌姫・黒崎真音が待望の1stアルバムで鳥肌立てた!?

キャラクター原案・redjuice氏も衝撃の「"鬼"すぎる」制作現場

GC_MainVisual_finish_t2.jpg
(c)ギルティクラウン製作委員会
 10月期からのノイタミナで放映が決定しているテレビアニメ『ギルティクラウン』(フジテレビ系)は、謎の能力を獲得した主人公が、政府と抵抗勢力との争いに巻き込まれて行く、近未来の東京を舞台にしたアクションエンターテインメント。本編公開前から話題となっている同作のキャラクター原案を担当するのが、クリエイター集団・supercellのメンバーでもあるイラストレーター・redjuice氏だ。アニメ制作に携わるのは初となる同氏に、その制作秘話を聞いた。 ――『ギルティクラウン』への参加の経緯を教えていただけますか? redjuice スタッフの方々が多くのイラストレーター、アニメーターの候補者の中から、最終的に絵を見て作品コンセプトとの相性などで選んでいただいたと聞いています。挿入歌を担当されるのはryo(supercell)さんですが、僕はsupercellの括りで参加したわけではなく、それぞれが選ばれたという感じです。ryoさんは場面やシチュエーションに合わせてテーマソングを作ることにかけて天才的なので、この作品にはベストチョイスだと思います。 ――キャラクター原案として『ギルティクラウン』に携わっておられるredjuiceさんですが、今回は実際に制作スタジオに通われているとうかがっています。アニメ制作の現場の空気はいかがですか? redjuice 元々アニメの現場は大変だろうとはずっと思っていたけど、みんな鬼ですね(笑)。魔法のように絵を描いていて、うまいだけでなく仕事への覚悟、気迫がすさまじい。1日8時間以上、365日絵を描き続けることは究極のトレーニングといえますが、それを実践するための集中力やタフさを身に付けるのは並大抵のことではない。普通の人だったら発狂しますよ、本当に。アニメスタジオのスタッフはアーティスト集団であり、職人集団ですね。スタジオに入ると、自然と気が引き締まります。 ――制作に携わる中で、本業であるイラストレーターと、アニメーターの違いは感じますか? redjuice 技術的な部分では、空間の把握力には絶対的な違いがありますね。画面の中の奥行き感を直感で感じ取って、各要素を画面の中に配置できるという資質がアニメではすごく重要なんです。単体のイラストは、常に一瞬しか切り取らない。画面全体の整合性よりも、ドラマティックさが優先され、精密なカメラ設定も必要とされないのが平面構成です。アニメの場合は立体的に動かすので、空間把握を正確にできないといけないので、勉強になります。  僕は自分のオリジナルイラストで描くキャラクターは風景の一部でしかないと思っていますが、アニメのキャラクターはまず個性ありきで、それに違和感のないようにデザインを肉付けしていく。技術的な手法の違いもありますが、イラストとアニメでは思考的なプロセスの違いが大きいです。
c03_Inori_00a-1.jpg
メーンヒロイン・楪いのり
――個性的な数多くのキャラクターが既に公開されていますよね。スタッフの方々からはやはり、メーンヒロインの歌姫にしてレジスタンス組織・葬儀社のメンバーでもある「楪(ゆずりは)いのり」ちゃんが人気だと耳にしました。redjuiceさんはお気に入りのキャラクターはいますか? redjuice お気に入りというか、ヒロインのいのりは別にすると、なぜか一番多く描いたのは葬儀社のオペレーターのツグミです。別にリテークが出たわけではなく、勝手に描いてましたね(笑)。特に指示が出たわけではないのですが、ネコ耳を付けたら、スタッフからは何の疑問もなくOKが出ました。そういう意味では、僕の趣味が詰まってます。  あとは、黒髪ショートメガネ委員長! の草間花音。実は、シナリオにはそもそも存在しなかったのに、勝手にキービジュアルを描いたら即採用されました(笑)。 ――redjuiceさんの熱意に圧倒されたんでしょうか(笑)。そういう、信頼関係というか、共同作業であるアニメ制作では、呼吸の合ったチームワークがやはり必要ですよね。 redjuice もちろんチームワークなしでは成立しない世界です。だから現場にも席をいただいて、多い日で週3日通っていました。空気感を共有している中で作業をするのは1人とは全然違って、好き勝手やっていても監督がまとめてくれるという安心感はあります。なんだかんだでアニメも個人プレーの積み重ねとはいえ、現場で作業をするのは刺激的だし効率的で、そんな感覚的部分も表現に影響していますね。 ──スタンドアローン・コンプレックスですね(笑)。それこそ『攻殻機動隊』制作などで知られるProduction I.Gとのタッグということもあり、本作においては3D技術も注目だといわれています。 redjuice 僕もイラストでCGを使いますが、あくまで3DCGをイラストの味付け程度に使っているだけです。この機会にプロフェッショナルの仕事から学ばせてもらいたいくらい。例えばいのりが連れている「ふゅーねる」くんというロボットがいるんですけど、3DCGでモックアップ(模型)を作って、「これを参考にお願いします」という感じで提出することはあります。やはり、『イノセンス』など押井守監督作品参加をはじめとする、業界トップクラスの3DCGやVFXの技術を持っているチームと一緒に制作できるのは心強いですね。 ──制作はProduciton I.G 6課という、中でも勢いのあるスタジオだというのも大きいですね。「ふゅーねる」くんは、『攻殻機動隊』の「タチコマ」を彷彿とさせます。 redjuice タチコマと同じく、糸を吐きますからね(笑)。実際、「マスコット的ロボットは欲しい」という話はあって、結構タチコマという存在は意識しました。健気なふゅーねるの演技も見所です。 ――最後に、『ギルティクラウン』PRを一言っ! redjuice 今回、アニメの現場で学んだことは多く、楽しいですけど大変です。僕自身のイラストレーターとしての創作にフィードバックされる部分も大きい。スタッフの意気込みも伝わると思いますので、皆さんにも『ギルティクラウン』を楽しんで見てもらえたらうれしいです。 (取材・文 新見直[KAI-YOU/http://kai-you.net/]) ●redjuice ニックネームは「しる」。Webデザイナーとして活躍すると同時に、インディーズCDのジャケットイラストなど徐々に活動の場を広げる。08年、クリエイター集団・supercellのメンバーとして『ワールドイズマイン』のPVイメージイラスト等を手がけて話題となって以降、国内外で高い評価を得る。アニメ制作に携わるのは本作が初となる。 ●『ギルティクラウン』 監督/荒木哲郎 シリーズ構成/吉野弘幸 副シリーズ構成/大河内一楼 キャラクター原案/redjuice 音楽/ryo(supercell) 制作/プロダクションI.G 6課 放映/2011年10月よりフジテレビ<ノイタミナ>にて アポカリプスウィルスの蔓延によって無政府状態となった日本。超国家間で組織された"GHQ"と、レジスタンス組織"葬儀社"の戦いが続いていた。平凡な高校生・集は、ネット上で絶大な人気を誇る歌姫・いのりと出会うが、いのりは"葬儀社"の一員だった。彼女に導かれるうち、集の右手には「王の刻印」が現れる。しかしそれはまた、彼が背負った「罪の王冠(ギルティクラウン)」の物語の始まりでもあった......。
東京マグニチュード8.0 ノイタミナといえば。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 いよいよ最終回!『東京マグニチュード8.0』が描いたリアル(前編) 絶賛と拒否反応が渦巻くハイブリッドアニメ『空中ブランコ』の果てなき挑戦(前編) テレビシリーズに残された数々の謎が明らかに! 劇場版『東のエデン』

フィールドは世界! 劇場、観客すべての概念を覆すにぎやか集団・快快って!?

faifai.jpg
 ダンスをしたり、歌を歌ったり、パーティーを開いたりお化け屋敷をやったり......、快快(ふぁいふぁい)のステージはとにかく多幸感にあふれている。代表作となる『SHIBAHAMA』では、古典落語の「芝浜」をベースに、酒好きな夫と愛情深い妻の人情噺を、新たな解釈で刷新。巨大なスクリーンやガジェットを駆使し、観客を巻き込んだライヴ感あふれる試みで見事なエンターテインメントに仕立て、高い評価を得た。彼らのエンターテインメントは、「踊るあほうに見るあほう同じあほなら踊らにゃソンソン♪」とばかりに観客に迫ってくる。と書いていても、何をやっている集団なのか分からないだろう。快快リーダーの北川陽子さんに、快快とはいったいどんな集団なのか、そしてこれからどこへ向かっていくのか、話をうかがった。 ──まずは快快の成り立ちについて教えてください。 北川陽子(以下、北川) メンバーはみんな美大時代の同級生で、私が「いいな」って思った人をピックアップしたんですよ。セレクトの基準は適当で、オーラがあって、見た目もかわいくて、一緒に遊んでいて楽しそうな人って感じで。そしたら十人くらい集まって、それが今でも続いているという感じです。 ──メンバーを集めてどんなことをやりたいと思っていたんですか? 北川 最初は演劇ですね。今は恥ずかしくて絶対に人には見せられませんが、結構普通の演劇です(笑)。卒業してからのものは、がらっと変わりましたね。 faifai02.jpg ──では、とりあえず劇団と呼べばいいでしょうか? 皆さん普段は何をされているんです か? 北川 そうですね、劇団でいいですよ(笑)。エンターテインメント集団とよく言われますが、意外と真面目に作品を作ってます。メンバーの職業はみんなバラバラです。デザインをやっていたり、出版社に勤めていたり、料理人もいるし、何もしてない子もいますね。外国人もいます。彼女はもともとパパ・タラフマラの研究生で、いろんなヨーロッパの演劇も見た上でうちの芝居が面白かったと言ってくれて。で、そのときに私がちょうど外国人を芝居に出したかったんですよ。それで出演してもらったらすごくよくて、所属することになりました。 ──公演やパフォーマンスをたくさんこなしていると思うんですが、その内容についてはどうやって決めていくんですか? 北川 テーマとスタイルは一貫したものはなくて......。メンバーがそのときいちばん盛り上がっていることをやるんです。それがテーマですね。例えば、震災後、メンバーのみんながものすごく愛に目覚めたんです。そんな感じでみんなの中で高ぶっている気持ちをそのまま公演に入れちゃうんです。ゴールデンウィークに行われた『SHIBAHAMA』の大阪公演では、思いっきり愛に目覚めていました。そんな感じでホットトピックをすごい早さでやるという感じですかね。だから、現代じゃなくて現在美術みたいなものですね。 ──9月には『SHIBAHAMA』のヨーロッパ公演があるんですよね? この芝居は快快の代表作ともいわれていますが、どのような内容なんですか? 北川 ストーリーとしては、落語の「芝浜」のストーリーを分解して3部構成にしました。1部は芝浜を音で再生するというもの。2部は私たちと芝浜の関係をフィールドワークを通して解釈するというもの。みんながそれぞれ街に出てしょうもないことをやってきて、それを実際の芝居に入れ込みました。3部には全部がまとまったひとつの流れもくみつつ、私たちの物語も入ってきます。落語の物語というか、落語という文化についてかなり考えたと思います。こんなに「芝浜」のことをよく考えて、演劇に落とし込むなんて私たちにしかできないんじゃないかと思っています。立川談志さんにもこの作品のDVDを手渡したんですが、見てくれているといいなあ。
faifai03.jpg
7月に行われた「快快-faifai-のOBAKE
!!!!!!」の様子。
──落語の「芝浜」をやりたいと思った経緯はなんだったんですか? 北川 みんなが知っているお話で、それを分解して芝居を作ろうという話があって。たまたま、「芝浜」でいいんじゃないっていう話になった。「お酒」と「財布」と「芝浜」が出てくるっていうのがすごいしっくりときたんです。 ──快快は芝居を作り上げるのもみんなでやるということでしたが、脚本も結構変更されちゃうんですか? 北川 全然変えますね。面白いものは全部取り入れます。他人の意見万歳です。本当はよくないんでしょうけど、公演中も変えていきますね。「芝浜」では、1部と3部は同じで、2部のフィールドワークがその土地によって毎回変わるという構成なんですよ。ベルリン公演では、スペイン人の友達の家で女体盛りパーティーしたり、「FKK」というすべての快楽が味わえる、いわゆる風俗みたいなところに行ったり、他にも公演を見に来てもらわないと言えないようなことをたくさんしましたね。ほんっとに毎回フィールドワークがひどいんですよ(笑)。 ──快快は、観客参加型の芝居をやったり、定型にとらわれないスタイルの作品が多いですが、芝居を作っていく上で心がけていることとか、これはやりたくないとかいうのはあるんですか? 北川 もちろん観客の人たちが見るだけの芝居もやるんですけど。そういうんじゃなくて、もっとプロレスみたいな感じでお客さんとやり合うような演劇をやってみたかったんですよね。また、芝居を作るスタイルにしても、脚本演出をする、ある才能のあるトップの人がいて、その人のツルの一声で動くという世界が、まあ、一般的じゃないですか。でも、私はそうではなくて、みんなで意見を出し合う「場作り」をしていくというか。劇団の名前を「快快」にしたとき、どこでも人に見せられるものができる集団にしたかったんです。街に溶け込むというか。演劇から離れていたとしても、公園でもクラブでも、どこでも呼ばれたら出ることを意識的にしていました。そういうムーブメント作りですね。東京を自分たちが生きやすい場所にしたかったんです。  それは、「見る、見られる」の関係をもっとフラットにしたかったということがありますね。パーティーをやってみたりとか、でもちょっとやりすぎた感はあるんですけどね(笑)。それが一段落したので、次の作品には集中してぎゅぎゅっと面白いのをやろうかなと思っています。と言いつつ、年末にSHIBAHAMAパーティーをやるつもりだし、ベルリンですごく仲良くなったスペイン人アーティストと「KIMOI(きもい)」というイベントをやろうと計画しているし、結局面白いことはやめられませんね。日本がこんな状況になって、メンバーの海外移住も増えてきました。私たちにはやることがあると思います。世界は広い! はばたけ快快です☆ (取材・文=上條桂子/人物写真=後藤匡人) ●ふぁいふぁい 2008年結成。メンバー10人+サポートメンバーによる東京のパフォーマンスチーム。ステージ、ダンスにとどまらず、常にたのしく新しい場を発信している。10年9月、代表作「My name is I LOVE YOU」がスイスの伝統あるZürcher Theater Spektakelにてアジア人初の最優秀賞、「Winners of the ZKB Patronage Prize 2010」を受賞。 公式サイト<http://faifai.tv/faifai-web/>
落語名人会(42)芝浜 オリジナル。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「まだやることが腐るほどある」 本谷有希子が語るこれまでとこれから 「社会的なことはまともに考えてない」チェルフィッチュ・岡田利規の"楽しい"日本の見方 「コンドルズは人間関係で成り立っている」"学ラン集団"が挑む、15周年の集大成公演

NHK『大科学実験』のキーマンに聞く、奥深き科学実験の世界

takikawa.jpg
NPO法人・ガリレオ工房理事長で、
東海大学教育研究所・教育開発研究
所教授の滝川洋二氏。
 昨年3月から放送され、各所で話題を呼んでいるEテレ(NHK教育)の科学教育番組『大科学実験』。わずか10分間という短い枠で、誰もが思わず見入ってしまうとんでもなくスケールの大きな大実験を繰り広げているこの番組のDVDブックが発売された。この番組をはじめ、数々の科学実験番組や書籍の監修を行っているのが、NPO法人「ガリレオ工房」だ。科学の楽しさを伝えるために、身近な材料でできる実験を年間数十件ずつ開発、その事例は1,300件を超える。今回はガリレオ工房の理事長で、たびたびテレビにも出演している滝川洋二氏に、『大科学実験』の裏話や科学の面白さについて話を聞いた。 ―― "実験監修"というのは、どういうお仕事なのですか? 滝川洋二氏(以下、滝川) おもに実験のアイデア出しと、実験中に失敗や何かトラブルにあった際にアドバイスをしています。『大科学実験』では100本くらいの実験を提案し、最終的に26本の実験が採用されました。企画から収録までは平均してだいたい3カ月くらい。長いものでは6カ月かかったものもありました。海外のテレビ局との共同制作だったということもあり、予算は潤沢で、1,000万円くらいかかった実験もあったくらいです。 ――確かにどの実験も、手間とお金がかかっていそうですね。 
kujira01.jpg
NHK『大科学実験』公式サイトより
滝川 たとえば、DVDブックにも入っている「空飛ぶクジラ」は、大きな袋に閉じ込めた空気を太陽の光で温め、人を浮かすことができるかという実験ですが、熱気球で人を持ち上げるという実験は今までにあったし、ただのビニール袋に人がぶらさがっても面白くない。そこで、全長50メートルのクジラ型ソーラーバルーンを作ることにしたんです。とは言っても、いきなり巨大クジラを作るのはとても大変ですから、まずは小さいサイズのクジラを作り、作り方や実験の進め方を確認していきました。ソーラーバルーンを空に飛ばすためには、太陽の光をしっかり当て、風がなくなるのを待たなければなりません。そのため、番組スタッフは6日間くらい山にこもって撮影したそうですよ。実験が大掛かりになればそれだけ面白いのは事実ですが、同時に危険度も増すので、安全性の確保ということはいつも一番に考えています。 ――クジラが飛ぶ前と後で目の表情を変えたり、潮を吹いているように見せるためにバルーン内に紙吹雪を仕込んだりと、細かなところにもすごく手が込んでいますね。 滝川 番組のスタンスとして、ただ大掛かりなことをやるんではなくて、"エンタテインメントとして実験を見せる"ということに注力していましたね。「高速で止まるボール」という実験の時も、ボールが止まった時にボールに描いた顔がちょうど真正面に来るまで何度も撮り直したり、そういう発想は僕らには全然なかったので、とても新鮮でした。
tomaruball.jpg
NHK『大科学実験』公式サイトより
――ガリレオ工房は今年で26年目を迎えるそうですが、そもそも、どういうきっかけで設立されたんですか? 滝川 もともとは、中学・高校の理科の先生の勉強会だったんです。月に1度、例会を開催し、授業に役立つ研究や勉強しようということでスタートしたんですが、理科の授業では実験が大事だ、ということがみんなの共通認識としてありました。ですから、例会では必ず何か実験をやろうと決めたんです。実は米村でんじろうくんも初期メンバーで、彼は毎月、自分で開発した実験を発表していましたね。その後、米村くんはテレビに出るようになってあまり例会には顔が出せなくなってしまったんですが、他のメンバーも実験を開発をするようになって、例会のたびに新しい実験が発表されるようになりました。もともとある実験にひねりを加えていくというのが実験開発の基本なんですが、ひねっていくうちにものすごく新しくなったりすることもあって、それが面白いんです。 ――滝川さんも毎月、新しい実験を発表しているんですか? 滝川 僕も毎月2つくらい発表しています。だいたい100円ショップに行って商品を眺めながら、「これはなにに使えるかな?」と案を練っています。実験を開発するときはまず、自分が面白いと思うかどうかという視点を大切にしています。何かモノを見ると、自然と「これを使ってどんな実験ができるだろう」と考えるようになっているので、すぐに新しい実験が思いつくんですよ。  学校の実験の授業では、試験管やビーカーなど専門用具を使うのが当たり前になっていますが、ガリレオ工房では身近なものでできる実験を開発しています。というのも、自分がやってみようと思った時にいつでも実験ができるということが大切だと思っているんです。今、学校の理科の実験の予算はとても少なくて、中学校では3学年合わせて年間で5万円なんこともザラにある。500人いればひとりあたり100円ですから、下手するとひとつの実験もできないような状況なんです。でも、たとえば100円ショップにある材料を使って実験ができれば、先生のポケットマネーでもできますよね。 ――ガリレオ工房のお仕事のほか、滝川さんは東海大学教育開発研究所で東海大付属高校の先生向けの講義をやっていらっしゃいますが、先生たちにはどのようなことを教えているんですか?
takikawa02.jpg
インタビュー中に滝川氏が披露し
てくれた実験。(上)フライパン
の裏側のアルミ部分に氷を置くと
すぐに溶けてしまうが、紙を1枚
敷くとほとんど溶けない。紙は
アルミに比べて熱を伝える力が
4000分の1くらいなので、なかな
か解けない。(下)塩水を机の上
にこぼして乾かした状態のもの。
塩の結晶ができている。普通、塩
の結晶は立方体だが、これは水の
層が薄いため結晶が縦には成長で
きず横に成長している。
滝川 理科教育というのはただ実験を行うだけではなくて、実験を見て「不思議だなあ」と思った後に、それがなぜなのか、生徒が自分で考えられるように導いてあげることが大切なんです。ですので、そういった授業プログラムを紹介しています。ものを考える力というのは、実験を通して養われます。これは理科に限った話ではありません。今の日本に欠けているのは、"●●は安全だ"というメッセージがあったときに、それをどこまで信じていいのか、自分がどれだけ納得できているのかということを自分で考えたり、判断したりすることができなくなっていることだと思うんです。たとえ結論が出なくても、結論が出ないということに気づくことが大切なんです。 ――ゆとり教育の影響で、ここ何年かは義務教育における理科の授業の時間は縮小されていました。最近では、少し見直されてきているようですが。 滝川 僕はNPO法人「理科カリキュラムを考える会」というところで世界の教科書の研究もしているんですが、たとえばイギリスでは、2006年から中学校の教科書の内容がすごく変わって、社会的に問題になっているけれど結論の出ないテーマを授業の中で扱うようになったんです。理科(科学)は知識の積み上げではありますが、それだけでは解決できない問題もある。たとえば、遺伝子組み換えの食物が安全かどうかという結論はまだ出ていないですよね? でも、現実には市場に出回っている。それを自分や社会はどう対処するのかということをみんながそれぞれ考えていかなければいけないのに、その判断基準を市民がまったく持っていない。国や調査機関が安全だというデータをそのまま鵜呑みにするのではなくて、そのデータをどのようにとらえ、どう判断するのか。自分なりの判断基準を持つことが市民の役割だ、ということを授業の中で教えているんです。今の日本の教育と比べると、だいぶ違いますよね。僕は、科学の一番の目的というのは、よりよい社会を作っていくための市民を育てていくということだと思うんですよね。 ――滝川さんは軽視されがちな理科の授業を見直してもらうきっかけ作りのために、テレビやイベントなどに頻繁に出演されているわけですね。 滝川 理科は楽しい、面白いし、これからの時代に不可欠なものです。自分たちがどういう社会を作っていくか、自分たちの安全をどのように確保するか、そういった判断ができるような基礎知識を個々が身に付けるということが大切です。今の社会はまさに、科学者だけには任せておけない状況ですからね。今日の科学は、いろいろな人の膨大な知識や研究の積み重ねで成り立っています。僕はそのほんの一部に携わり、みんなに紹介しているだけですが、科学の大切さというものが社会にもっと伝わればいいなと思っています。 (取材・文=編集部) ●たきかわ・ようじ 1949年生まれ。埼玉大学理工学部物理学科卒、国際基督教大学博士課程修了。79年から国際基督教大学高等学校教諭、06年から10年まで東京大学教養学部附属教養教育開発機構特任教授。教育学博士。高校教諭時代からNPO活動を通した理科教育の改善に取り組み、この功績で05年文部科学大臣表彰。「青少年のための科学の祭典」2006全国大会実行委員長、NPO法人理科カリキュラムを考える会理事長、NPO法人ガリレオ工房理事長。専門は概念形成研究、科学カリキュラム研究、物理教育。『どうすれば『理科』を救えるのか-イギリス父子留学で気づいたこと』(亜紀書房)、滝川・吉村編『ガリレオ工房の身近な道具で大実験第4集』(大月書店)、『発展コラム式中学理科の教科書第1分野』(講談社)など著書、編著多数。 ガリレオ工房HP<http://www.galileo-sci.org/> NHK大科学実験公式サイト <http://www.daikagaku.jp/
大科学実験DVD-Book 空飛ぶクジラ ナレーションは細野晴臣。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「甘ったるい理科教育に宣戦布告!?」マッドサイエンスで理科を学ぶ『アリエナイ理科ノ実験室』 日本科学未来館に聞く、3.11の教訓とこれからの科学 一歩間違えれば大事故!? 大人が本気で楽しむ『あぶない科学実験』

ダミーサークルで信者を勧誘する教団と、それにハマる市民はなぜ生まれる?

asahara0901.jpg
アーレフ公式サイトより
前編はこちらから    オウム真理教幹部でアーレフの元代表でもあった野田成人氏と、新進気鋭の宗教学者・大田俊寛氏との対談は、宗教学や社会学のあり方と、そこに携わる研究者たちの姿勢に疑義を呈しつつ、「公として、死の扱い方には関知しない」といった国家的な構造が、オウムを生んだ一因という議論に発展していった。後半は、そんなオウムの後継団体であるアーレフ(現アレフ)の信者たちが「なぜ今も教団を離れないのか?」という疑問から、話は展開していった。 ――オウムの中では、「死」というものはどのようにとらえられていましたか? 野田成人氏(以下、野田) 教義の中では、輪廻転生という思想とその再生の過程というように解釈していました。 大田俊寛氏(以下、大田) それに関連して、野田さんにお聞きしたいことがあります。『革命か戦争か』(サイゾー)の中で、アーレフという教団においては、かつての終末予言は魅力を失っているし、人類の救済という大義名分もいまや非現実的なものとなっていると論じられている。ところが、なぜまだアーレフという教団にある程度の数の出家信者が残っているのかと言えば、いま教団や麻原を見捨ててしまうと、自分自身が来世で地獄に堕ちてしまうかもしれないという恐怖感があるからだと書かれています。しかし、現代人の一般的な見方からすれば、地獄に堕ちることが怖くて教団から離れられないというのは、あまりリアリティーが感じられない部分だと思われるのですが。 野田 補足して言うならば、大田さんがご著書で書かれていたように、アーレフという全体主義的な共同体の価値観の中に溶け込んでいたいという願望は、大きな要因としてあると思います。一生懸命やっている信者は、しっかり修行をすれば来世は大丈夫なのだと思っている。教団を離れられない信者は、そういったところを否定しきれないのです。また、事件後に新しく入ってきた信者がアーレフにはいるのですが、彼らは都市化した無機質な、つながりのない群衆の中での孤独にさらされていて、そういった状況から、統一的な全体像をつかむための価値観を求めている部分があります。現状、アーレフには新しい信者も古い信者もいますが、来世で自分は良い世界に行けるか行けないかというのは、信者の中の中心的な興味のひとつであると思います。それだけではありませんが。 ――オウムでは、洗脳する時に、地獄に堕ちるというような、かなり恐ろしい映像を見せていると言われていますが。 野田 過去にはそういうこともしていました。映像を見せていたのは、95年前後ではないでしょうか。 大田 野田さんも、そういう映像を見せられた経験があるのですか? 野田 私は94~95年には幹部でしたので、そういった映像を見た記憶はありません。私が出家したのは、87年の10月頃です。それから、アメリカやドイツへ布教活動に行きました。87年当時は、教団はまだかなりソフトで、麻原への帰依も強要されませんでした。昔は教団で出していた月刊誌があったのですが、その表紙は美人信者だったりしました。ところが、いつのまにか麻原を表紙にして、麻原色を強めていきました。それがどんどん強くなっていったのが、90年代半ばくらいです。 大田 現在、アーレフの信者数は、増加傾向にあるのでしょうか。 野田 辞める人もそこそこいますので、大体、横ばいか少し増えている程度だと思います。私は、アーレフは死んだ宗教だと思っています。新しく入って来る信者は、年齢的には20歳前後で、地下鉄サリン事件が起きた時は4~5歳だったりするので、事件があったことすらよく知らない信者もいます。 大田 新しい信者を惹きつける、一番の魅力になっているものは何でしょうか?
ota02.jpg
大田俊寛氏。
野田 それは端的に言って、麻原です。教団の中では、麻原は10億宇宙にただひとりの存在であると見なされています。宇宙が10億集まった中で、一番の魂だということになっているのです。地下鉄サリン事件のことをどう説明しているのかというと、教団の中で統一的にどうかは分かりませんが、ひとつは「陰謀論」です。事件はやっていないけれども、フリーメイソンによってそう仕立て上げられているとか、そういう説明をしています。だから、本当の救世主である麻原は不当に牢獄に閉じ込められていると。 ――そのような陰謀論が信じられているのですか? 野田 信じる人は信じるし、おかしいと思う人の中には、私のところに相談に来てから、アーレフを辞めていった人もいます。言い方を変えると、いまの宗教が私的領域に追い込まれているので、何でもありという形になってしまっているところがあるのです。 ――偶像として麻原が掲げられているのは分かるのですが、麻原やアーレフが自分たちに何をしてくれるのかということについては、どう考えているのでしょうか。 野田 アーレフの勧誘形態として、自己啓発セミナーで新たに勧誘するということがある。教団の幹部が、セミナーで麻原の役を演じることもあります。もうひとつの要因としては、信仰というものの特性です。信じることそのものが、力を持つことがある。信じることによって、実際に麻原を拝んでいたら仕事が見つかったとか、願いが叶ったとか、「暗示の効果」に近い部分もあります。生きた教祖は教団にはいませんが、アストラル次元でつながっていると教団では言うのです。それを信じて、実際に力を得ている人もいますね。 ――教義はともかく、麻原を信じれば救われると考える人もいるということですが、確かに、いきなり素人に難しい教義の話をするよりは、その方が分かりやすいのかもしれませんね。 野田 教義に惹かれる人も、ある程度はいます。一応、仏教的な戒律を一生懸命守っていますので。何が正しいか、何が間違っているか分からない今の社会の中で、ひとつの指針になるものとして惹かれる人もいます。 大田 地下鉄サリン事件への関与をオウムが正式に認めたのは、95年からかなり時間が経ってからのことですよね。それは現在、内部でも正式に認めているのですか? それとも、先ほどうかがったように、陰謀勢力の仕業と言っているのでしょうか。 野田 結局、教団が公に認めたのは、99年のことです。96年から98年までは、事件への関与を認めるべきかどうか、現役信者や在家信者への影響を考えていました。認めるかどうかの判断は、私が意思決定をしていた部分でもあります。結果的に、表に対しては認めたのですが、信者はほとんど関心の対象としていないようです。あまり考えないようにしているというか、考えても整合性がつかないから、答えようがない。少なくとも出家信者に関しては、修行をしておけば高い世界に行けるからという理由で、その問題を棚上げしています。 大田 その辺りが、外部から見ると腑に落ちないところです。新しい信者が来た際、当然、地下鉄サリン事件とは何だったのか聞かれると思うのですが、納得のいく説明をするのは非常に難しいのではないですか? 野田 そうですね。教団内の信者で、それを整合的に説明できる信者はいないと思います。だから、陰謀論を出してきたり、ともあれ自分はこの修行によって恩恵を受けているのだから、といった形で済ませてしまう。しかしやはり、事件が勧誘のネックになっていることは事実です。ですから、ヨガや仏教のダミーサークルを作って、そこで信頼関係を構築してから、その後でアーレフということを明かします。そこでもちろん、離れていく人もいます。しかし逆に、あんなに悪い教団と思っていたのにイメージと違うということで、中に入って確かめようという人もいます。 ■カリスマ言論人を求める出版界の事情 ――最近では、スピリチュアルなものが盛り上がっています。スピリチュアルなものは新興宗教に入るひとつの入口になると思うのですが、アーレフはそういったものに関わっているのですか? 野田 GREEやmixiなどで、ヨガや潜在意識で能力を開花させるといった、ダミーサークルを作っています。 ――スピリチュアルなものを求めている一般の方についてはどう思いますか?
noda02.jpg
野田成人氏。
野田 今の社会の構造として、死や生の意味付けに関する取り扱いの基準が欠けているという状況があるため、いろいろなものが乱立し、スピリチュアルなものを求めるという現象も生じていると思っています。 ――宗教学者としては、スピリチュアルなものの隆盛をどう思われますか? 大田 やはり、今回の対談で話してきたように、何のために生きているのかというとても大きな問題があります。人は生きている間に、さまざまな喜怒哀楽の感情を経験したり、日々の努力を重ねて必死に生きたりしていますが、そもそも死ねば全てがなくなってしまうのに、なぜこんなに苦労して生きていかなければならないのだろうと、ふと分からなくなる瞬間がある。生きるということは、死ねば全てが無に帰するのではないかという圧倒的な問いの前に、常にさらされているわけです。スピリチュアルなものは、その問いに対して非常に分かりやすく、簡略的で簡便な答えを与えようとしているように思われます。 ――占いなどでは、とても簡便な答えが求められているように感じますね。 大田 スピリチュアルなものが、本当に社会のあり方を変えるのかと言われれば、私にはとても信じられません。資本主義的な社会を生きていく上で、その生きづらさをごまかすというか、生や死の問題について仮初めの幻想的な答えを与えて、生きづらさを一瞬だけ緩和するという機能しかないのではないかという印象を持っています。ただ、一時的にではあれ、それらに触れて救われたように感じる人がいることも否定できないので、ナンセンスの一言で済ませられない部分もありますね。 ――オウムを総括する本を出された大田さんや、大田さんの世代(30代半ば)が今後果たして行く役割とは何でしょうか? 大田 近代のシステムは万能ではないし、野田さんのおっしゃるように、資本主義は陰を生んでいく。それは本質的にぜい弱なシステムであり、いつ崩壊するかも分からないシステムです。しかしだからといって、悩める現代人に対して俺が生き方を教えてやろうとか、こうすればこれまでの問題がすぐに解決できるといったことを軽々に発言しないということが、研究者が今後最も気をつけるべき点だと思います。人々に生き方を教える「カリスマ言論人」になって欲しいという圧力は、研究者や知識人の周囲にとても強く存在しています。それこそ資本主義の問題なのですが、そういうカリスマ言論人の本は部数も伸びるので、出版社側も、一大ブームを起こして本を売りたいという願望があるのでしょう。 ――カリスマ言論人に出てきてほしいという思いは、我々出版に関わる人間には、根強いのかもしれません。 大田 オウム事件のような宗教的問題を含め、ある問題が生じたときには、不安定な社会に生きる一員として、研究者もそういう状況に巻き込まれて生きていかざるを得ません。そして、その問題をどう解決できるのかということはすぐには分からないけれど、その問題自体がどのようにして成立してきたのか、どのような構造を備えているのか明らかにするということが、研究者の役割であると思っています。 ――お2人とも、出版後の反響はどうでしたか? 野田 私は叩かれると思っていたのですが、本はほとんど売れず、あまり反響はなかったですね。ある意味で事件を肯定するようなことも言っていたので、拍子抜けしました。 大田 次の本を書きませんかという依頼はいくつかいただきましたが、肝心の宗教学者からの反応は、一部を除いてほとんどありませんでした。どう考えても、私の本に応答するべき、オウム問題について私より責任の重い先人たちがたくさんいるはずなのですが。  最後に、私の方から申し上げたいことがあります。私は元々、グノーシス主義という古代の宗教を研究していたことから、今でもどこか、古代から現代を見ているところがあります。そういう歴史的な目で見ると、近代というのはとても特殊な時代に思われます。それまで人間社会の規範として存在してきたもの、その運動を制御するリミッターとして機能していたものが外されて、人口が膨大に膨れ上がり、その人口を支えるための政治的・経済的システムが、ここ100~200年の間に急速に複雑化しました。そして、誰も社会の全体がどうなっているのか分からないという、前代未聞の状況が成立してしまった。そういう世界を生きているのだということを、我々はよく自覚する必要があると思います。 ――そういった社会に、どう対処すればいいのでしょうか? 大田 社会がどのような仕組みで動いているのか、そこで生じるさまざまな問題にどのように対応するべきなのかといった事柄に答えを見出すことは、実際には非常に難しく、また当然そこから、「誰か答えを教えてほしい」という社会的欲求が出てくることになります。そして、そうした欲求に答える存在として、「私が答えを教えてあげよう」と称する知識人が輩出され、それと並行する形で、結局のところ人類の行く末はハルマゲドンかユートピアかだという、オウム的な二元論も生まれてきたのです。しかし、複雑な問題や状況に対して、安易な答えを与えることや、それらを単純な二元論にすり替えることは、私はすべて虚偽であると考えています。その意味において、野田さんの提示する「革命か戦争か」という二元論は、オウム的な思考の枠組みを、まだ完全には脱していないところがあるのではないか。むしろ、簡便な答えにすがったり、単純な二元論に陥ったりすることなしに、社会や人間に関わる問題をいかに粘り強く探求し続けることができるのかということが、真の「オウム以後」の課題ではないかと思うのです。 ※ ※ オウム真理教の内側を綴った『革命か戦争か』、オウム真理教事件を外側から総括した『オウム真理教の精神史』(春秋社)。内側と外側を対比させながら、オウムの事件について再度考察してみるのはどうだろうか。 (構成=本多カツヒロ) ●のだ・なるひと 1966年生まれ。1987年東京大学物理学科在学中にオウム真理教に入信・出家。95年教団内で正悟師の地位に就く。以降、幹部として教団運営において指導的役割を果たす。2007年アーレフ代表に就任。09年3月「麻原を処刑せよ」と主張したことによりアーレフから除名。現在はNPO「みどりの家族」を立ち上げ、ホームレスの自立支援や脱会信者の支援に力を注ぐ。独自にオウム事件被害者の賠償問題にも取り組んでいる。 ●おおた・としひろ 1974年生まれ。専攻は宗教学。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻宗教学宗教史学専門分野博士課程修了。博士(文学)。現在、埼玉大学非常勤講師。著書に『グノーシス主義の思想――<父>というフィクション』(春秋社)がある。
オウム真理教の精神史―ロマン主義・全体主義・原理主義 外からの視点。 amazon_associate_logo.jpg
革命か戦争か―オウムはグローバル資本主義への警鐘だった 中からの視点。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 <対談>麻原彰晃四女・松本聡迦×脳機能学者・苫米地英人【1】 学会員も親近感!? "学会系"と噂の企業を直撃!(前編) 宗教にまつわる素朴な疑問を解消『なぜ人は宗教にハマるのか』

自ら「グル」になろうとした中沢新一ら研究者たちの罪と罰

asahara0831.jpg
 オウム真理教による地下鉄サリン事件から、今年で16年が経過した。15年の節目には各出版社もオウム問題を総括すべく、書籍の刊行や雑誌で特集を組むなどしたが、大きな反響もなく、もはや事件は風化したというのが現実ではないだろうか。しかし、オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件は、いまだにきちんとした総括が行われているとは言いがたい。宗教学者の大田俊寛氏は、今年3月に出版された『オウム真理教の精神史 ロマン主義・全体主義・原理主義』(春秋社)において、宗教学者の責務を果たすべく、オウム事件の総括を試みた。今回、その大田氏と、元オウム真理教幹部でアーレフ(現アレフ)の元代表でもあった野田成人氏に対談を行ってもらった。野田氏自身、事件を総括すべく、昨年オウム真理教とアーレフ時代の出来事を克明に綴った『革命か戦争か オウムはグローバル資本主義への警鐘だった』(サイゾー)を上梓している。オウムという存在を、内側と外側から考察してきた2人の言葉から見えてくるものとは? ――野田さんは昨年『革命か戦争か』を出版されましたが、やはり地下鉄サリン事件から15年が経過して、あらためて事件を総括したいとお考えになったのでしょうか? 野田成人氏(以下、野田) 昨年、『革命か戦争か』を出したときには、私はすでにアーレフを辞めさせられていました。事件に関しては、元オウムの幹部としては、平謝りするしかありません。ただ、オウムの中でもいろいろな問題がありましたが、世の中を見ていて、日本社会の構造の問題について書いてみたいと思いました。 ――日本社会の構造の問題というのは? 野田 例えば、非正規雇用の問題であったり、他には僕が学生の頃はコンパが盛んに行われ、酒を一気飲みさせられたり、頭から酒を浴びせられたりしました。こんなことの何が楽しいのかとあきれていました。ちょうどバブルの真っ只中だったこともあり、世間はお金と物であふれていました。そういった物質主義的なところに違和感を覚えていたのも確かです。 ――大田さんは以前に「グノーシス主義」を研究されていますが、グノーシス主義とは何でしょうか? 大田俊寛氏(以下、大田) 一言で言えばグノーシス主義とは、紀元二世紀頃、初期キリスト教に発生した異端的宗派のことです。しばしば「キリスト教の最初にして最大の異端」とも呼ばれています。 ――グノーシス主義やキリスト教神学の研究から、今回出版された『オウム真理教の精神史』のように、考察の対象がオウムという現代宗教へ移ったのはなぜですか? 大田 グノーシス主義をテーマに博士論文を書き終え、非常勤講師として大学の教壇に立つ頃には、私は、宗教学は人文社会系の諸科学の中でも、とても重要度が高い学問であると考えるようになっていました。その理由は、人間が作る社会というのは、必ず何らかの「信用」や「信仰」を基礎にして成り立っているからです。例えば現代の資本主義では、それ自体としてはただの紙切れでしかない「貨幣」という存在への信用や信仰を中心に、社会が成り立っている。社会の構成要素には、必ず信用や信仰の次元が存在します。そして宗教についての学というのは、社会の中心にどのような「信仰」があるのかということを第一義的に明らかにするための学問である。ゆえに本来、社会科学の最も根幹にあるべき学問であると考えています。  ところが、現在の宗教学を見てみると、地下鉄サリン事件当時、東京大学の宗教学の先人たちがひどい振る舞いをしてしまったこともあり、まともに物を考えることができる人であれば、日本の宗教学者の言うことには耳を傾けようとしないという状況が続いています。サリン事件以降、宗教学者は完全に社会的信用を失ってしまったわけです。一方で宗教学の中では、宗教学はディシプリンを必要としない「ゲリラ学」であるといった、根本から誤った認識がいまだに拡がっており、私はこうした考え方が、オウム事件を後押しすることにつながったのではないかと考えています。私自身、一人の研究者として、宗教学の再構築に携わりたいと思っているのですが、その第一歩として、オウム事件を学問的にどう捉えることができるかということをあらためて問題にしてみたいと思いました。
noda01.jpg
野田成人氏。
――今回の対談にあたって、お互いの著作を読んできていただいたのですが、率直な感想はいかがでしょうか? 野田 大田さんの『オウム真理教の精神史』を読んで大変興味深く思ったのは、オウムに対しての今までの批判というのは、オウムは仏教でもチベット密教でもないただの異端であるとか、その異端が勝手にサリン事件を起こしたのだというものが多かった。しかし大田さんは、オウム事件の背景には、近代の体制において、死を扱う宗教というものを私的領域に追い込んでしまったという構造的問題が存在すると言っています。私は、資本主義が生んだ構造的問題からオウムにアプローチしていますが、オウムという存在が、社会が抱えている構造的な矛盾からにじみ出てきたものであると見る点で、共通の捉え方ができるのはないかと思います。そういうことを宗教学者の立場から言っていただけるとありがたいです。 ――大田さんは野田さんの『革命か戦争か』を読んで、どう思われましたか? 大田 オウム真理教の元信者によって書かれたこれまでの著作は、地下鉄サリン事件がどのようにして起こったのかというところで終わっているものが多かった。しかし野田さんの著作では、地下鉄サリン事件の後、教団がどのような紆余曲折を経たのかについて書かれている。具体的には、教団内において麻原信仰への回帰の動きが見られることや、アーレフ内における松本家の支配体制の在り方、そして最終的に野田さんがそこから排除される過程についてなどが克明に記されており、その点でとても価値のある本だと思います。 野田 大田さんの本の帯の、「近代の暗黒面を暴く」というのはいいですね。 大田 この言葉は、編集の方が考えてくれました。野田さんの本では、近代に発展してきた資本主義のシステムが背景にあって、資本主義から排除されたものが巡り巡ってオウムのような集団になったという分析が見られるので、「近代の暗黒面を暴く」という視点において、私の著作と共通性が見られると思います。私自身はこれまで、グノーシス主義やキリスト教教義史といった分野を研究してきましたので、宗教現象を見るときに、そこにある理念や教義が、いつ頃現れてどのように発展していったのかということを歴史的に考えてみるということが、体質として染み込んでいるところがあります。95年以降、オウム真理教に関する論考は膨大に発表されましたが、しかしそれらはどれも歴史的な視点を欠いていました。ゆえに、オウムに対して研究者が行うべき仕事が果たされていない、中でも島田裕巳さんや中沢新一さんに対しては、本来宗教学者としてやるべき仕事をまったく行っていないと考えていたのです。 ■中沢新一の著作は、ネタ本として教団内に転がっていた ――著書の中でも、中沢さんや島田さん、また宮台真司さんについては批判的ですが、学者が本来、オウム事件に関してやるべきこととは何でしょうか? 大田 まず第一に、善悪の価値判断に関わることや、個々人の生き方を左右するようなことを、軽々に発言するべきではないということです。私は中沢さんに対して極めて批判的ですが、彼は事件当時、方向性を見失ったオウム信者たちを今後は自分が引き受け、彼らに生き方の指針を示すといったことを発言した。また、社会学者の宮台真司さんは、『終わりなき日常を生きろ』(筑摩書房)という著作を発表し、麻原の打ち出した方向性は間違っていた、ゆえに今後の主体はこうあるべきだというヴィジョンを、あたかも「新たなグルの指令」のような仕方で発信した。研究者という立場にありながら、「次は俺がお前たちの生き方を示す」といったメッセージを軽薄に発してしまったことには、大きな問題があったと思います。むしろ研究者は、安易に状況に介入するのではなく、その事件や現象がどのような歴史的経緯とメカニズムの上に成り立っているのか、あるいは、それが社会的に蓄積されてきたどのような問題によって生み出されたのかを、可能な限り客観的に説明することに努めるべきであると思います。 ――中沢新一さんの『虹の階梯』(平河出版社)はオウム真理教のネタ本であると言われていますが、実際、オウムの教団内では読まれていたのでしょうか? 野田 教団の中では麻原の書籍以外は読んではいけないのですが、『虹の階梯』だけは転がっていましたね。 ――麻原が『虹の階梯』について直接言及したことはあったのですか? 野田 それはありませんでしたが、教団の中ではネタ本として半ば公になっていたので、みんな参照はしていました。 大田 ポアという言葉をオウムに教えたのは、『虹の階梯』ですからね。 ――ネタ本を書いて、その後、オウムに関する論考を発表していた中沢新一さんの学者としての態度についてはどう思われますか? 大田 宗教学者として、近代における宗教の在り方や問題をどのように捉えるかという、学問的フレームワークを持っているべきだったと思います。しかし中沢さんの経歴を見てみると、そういった学問的フレームワークを十分に時間をかけて習得したという形跡がどこにも見当たらない。研究者としてのアイデンティティーに思い悩んだままネパールに渡り、チベット密教の修行のノウハウを身に付けて日本に帰ってきた。そしてニューアカ・ブーム(1980年代に日本の人文社会系で起こった流行)の一躍を担う人物として、広く世間から受け入れられた。こうして、一研究者としてのエートスや倫理観であるとか、学問的ディシプリンをどの段階でも身に付けることなく、ニューアカ・ブームに引きずられるように「売れっ子知識人」になってしまったのだと思います。 ――本書の中で書かれていますが、そうしたことが、中沢さんがオウム事件を総括していない理由なのでしょうか。 大田 私から見ると、中沢さんは、オウム事件を総括しようにも、そもそも「できない」のではないかと思います。中沢さんはニューアカ・ブームの波に乗って著名な知識人となり、その影響力から、非常に無自覚な仕方でオウムの運動を後押ししてしまったわけですが、そうした経緯全体を客観的に分析するための学問的フレームワークを、彼は持っていないのですから。ゆえにいつまでも、メディアからの言外の欲求に応じるような仕方で発言してしまう。そして学者という立場にありながら、その場その場の状況に流され続けてしまう。 野田 先ほど、宮台さんについても触れました。宮台さんは、ハルマゲドンを待ち望む「男の子的終末観」に対して、ブルセラ女子のように生きることが解決策だ、みたいなことを言っていましたね。
ota01.jpg
大田俊寛氏。
大田 宮台さんはオウム的な終末論に対して、自分が生きる意味を考えたり、歴史に目的を求めたりするような主体はもう古いと訴えました。そして、自分の体を売りたいときに売ってお金を稼ぎ、欲望を叶えていくような、意味に囚われない主体というものをブルセラ少女に仮託し、こうした新しい世代によって「まったり革命」が起こると唱えた。本書の中でも指摘しましたが、こうした発想のベースにあるのは、ポストモダン的なニーチェ主義です。目的なき永劫回帰の流れに身を任せ、意味に縛られていた畜群的主体性を脱却して、超人という新しい主体として生まれ変わるという、ニーチェ主義の焼き直しであると思います。中沢さんや宮台さんの言説の背景にあるポストモダン的なニーチェ主義は、思想史的に見ればまさにオウムと同根であるということを誰かが指摘するべきでしたが、そのような人物は当時どこにもいませんでした。 ――話は戻りますが、大田さんはご著書と野田さんの本には共通性があるとおっしゃっていましたが、野田さんはどう解釈されますか? 野田 私は、死の問題について、『革命か戦争か』でもっと触れたかったのですが、どう考えていいか迷っている部分がありました。そして大田さんの本から、死の問題に関するヒントを得られたと思います。中世以前のキリスト教が支配している社会では、国家を含めたひとつのシステムの中で、死の位置づけが与えられていた。死を含めた、人生の意義づけが成立していた。しかし近代においては、宗教と死の問題が私的領域に追い込まれ、オウムのような宗教が出てきてしまった。近代の社会では、死というものを公の領域から遠ざけている一方、それに対して統一的な見解を見つけ出したいという欲望を反動的に掻き立てたところが、オウムにはあったのではないか。もちろん、中世のキリスト教社会での死の取り扱いが真実かどうかは別問題として、ひとつの基準があった。その基準がないというのは、近代におけるひとつの問題だと思います。 大田 死の問題についてですが、人間とは死者からいろいろなものを継承して生きている存在であるし、それによって社会を成り立たせている存在です。我々が話している言語だって、いま生きている人たちがすべて自分たちで創り上げたものかといえば、決してそうではない。我々より前に生きていた人たちが使っていたものを継承するという形で、言語を使い、生活して、社会を成り立たせているわけです。このように、死者との関係がどのようなものであるかということが、社会を成立させていく上で常に重要な事柄なのです。もちろん物理的に言えば、死者はもうこの世には存在しないので、死後の世界がどういうものか、死者の魂はどうなっているのかということは、宗教学の立場から赤裸々に言ってしまえば、どんなお話を作ってもその真実性を証明することはできないし、あくまでひとつの「フィクション」でしかないのですが。 ――現代では死の問題は、非常にタブー視されているというか、なかなか触れづらい問題ではありますね。 大田 しかし、奇妙なことではあるのですが、死者に関するフィクションを創設し、そのフィクションを中心に据えておかないと、人間の社会はアノミー的状況に晒されてしまう。人類は、歴史が分かる限りでは、もう何万年にもわたって、死者に関するフィクション──それはすなわち「宗教」と言っても良いかもしれませんが──を中心に、社会や歴史を作ってきたわけです。しかし、ヨーロッパというある特定の地域で宗教戦争が数多く起こってしまったために、宗教的な事柄をめぐって争うのはもう止めよう、宗教を社会の中心に据えるのは止めにしようという合意が成立した。これは歴史的に見ると、大変例外的な状態です。そしてそこから、政教分離という非常に特異な社会形成の様式が編み出され、それによって近代という時代が作られたのです。 ――日本も近代化において、政教分離原則を受け入れていますよね。 大田 私は、日本という国家は、近代という仕組みに「過剰適応」してしまったところがあるのではないかと思うのです。欧米では、さまざまな意見や議論があるにせよ、死に関わる問題は最終的にはキリスト教が担うのだという暗黙の了解がある。ところが日本では、近代が成立した歴史的経緯が捨象され、その表面的原理に過剰に適応してしまったところがある。そして、死とは何かという問題については、個々別々に勝手に考えてくださいという状況になってしまった。そこから、麻原が抱いたようなある種の幻想、社会ではとても共有できないような幻想が力を持つという状況が生まれてしまったのではないかと思います。 (構成=本多カツヒロ/後編に続く) ●のだ・なるひと 1966年生まれ。1987年東京大学物理学科在学中にオウム真理教に入信・出家。95年教団内で正悟師の地位に就く。以降、幹部として教団運営において指導的役割を果たす。2007年アーレフ代表に就任。09年3月「麻原を処刑せよ」と主張したことによりアーレフから除名。現在はNPO「みどりの家族」を立ち上げ、ホームレスの自立支援や脱会信者の支援に力を注ぐ。独自にオウム事件被害者の賠償問題にも取り組んでいる。 ●おおた・としひろ 1974年生まれ。専攻は宗教学。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻宗教学宗教史学専門分野博士課程修了。博士(文学)。現在、埼玉大学非常勤講師。著書に『グノーシス主義の思想――<父>というフィクション』(春秋社)がある。
オウム真理教の精神史―ロマン主義・全体主義・原理主義 外からの視点。 amazon_associate_logo.jpg
革命か戦争か―オウムはグローバル資本主義への警鐘だった 中からの視点。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 <対談>麻原彰晃四女・松本聡迦×脳機能学者・苫米地英人【1】 学会員も親近感!? "学会系"と噂の企業を直撃!(前編) 宗教にまつわる素朴な疑問を解消『なぜ人は宗教にハマるのか』