「もう上しか見えないんです」 アクションもこなす癒やし系美女、水崎綾女の素顔にドキドキ!

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 大きな瞳と厚めのくちびる。セクシーでいて、どこかホッとするような癒やしのオーラも併せ持つ。いま注目の女優、水崎綾女。現在放送中の『特命戦隊ゴーバスターズ』(テレビ朝日系)では、敵の幹部エスケイプ役でおなじみ。ほとんどのスタントを自らこなす、アクション女優だ。話題の映画『ユダ』では3,000人の中からオーディションで主演を射止めるなど、演技力と存在感も作品ごとに増している。  まもなく公開になるオムニバス映画『BUNGO~ささやかな欲望~/見つめられる淑女たち』の一編、『乳房』では、乳房が膨らんでいく夢に悩まされる中学生の寛次が出会う、理髪店の女主人かな江を演じた彼女。その素顔は、女優の仕事に真面目に取り組む、かわいらしい23歳の女性だった。 ――三浦哲郎「乳房」をはじめ、永井荷風や坂口安吾など昭和の文豪の短編を映画化するという、面白い企画のオムニバス映画ですね。 水崎綾女(以下、水崎) オムニバスですけど物語が続いているわけではなく、それぞれ個性のある作品になっているのが、見ていて面白いなと思いましたね。監督もキャストの方たちも豪華なので、そこに入れていただけてありがたかったです。原作の『乳房』は、撮影が終わってから読みました。原作を読むとそっちばかりに気を取られてしまいそうだし、台本にある情報を読み取れなくなってしまうのは嫌だったので。撮影が終わってから読んだら、原作にかなり忠実な脚本だったんだなって、演じた感じに近くてちょっとホッとしましたね。自分の解釈が違っていたとしても、それはそれで面白いと思いますけど。 ――新婚早々に旦那さんが戦地に赴くことになり、ひとりで理髪店を切り盛りしている女主人。演じたかな江について、どう思いましたか? 水崎 戦争はもちろん嫌なことだけど、好きな人と離れ離れになっていることもすごく切ないなぁ、って思いましたね。メールもウェブカメラもある、現在の遠距離恋愛の気持ちでは演じられない。そこはもう、想像力をフル活用して演じました。
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――ひとり暮らしの若い奥さんということで、近所に住む中学生の寛次から意識されるようになります。 水崎 私、5人姉妹の4番目なんです。男の子とあまり接する機会がなかったので、撮影中よりも空き時間のほうが緊張しちゃいました。「何を話したら楽しんでくれるのかな」みたいなことばかり考えていたんですよ。でも、寛次役の影山(樹生弥)くんは本当にあっけらかんとしてて。監督に「(きれいな女の人と一緒にいるんだから)お前、もうちょっとありがたがれよ」っていつも言われてたのがおかしかったですね(笑)。 ――お店で2人きりのときに空襲があり、怯えるかな江が思わず寛次に体を寄せるという、見ていてドキドキするシーンもありました。 水崎 理髪店のシーンは、本物の床屋さんを昭和っぽくして使っているんです。狭い空間の中にスタッフさんがいっぱいいるので、空気が薄くなったのか、本当に2人でハアハア言ってたんですよ(笑)。自然と汗ばんでたこともあり、それが空襲の緊張感を出すのに役立ったかなと思います。寛次に対して大人として振る舞っていても、空襲はやっぱり怖い。あのときだけ年上ということを忘れているような感じ。でも、寛次に悩みを相談されたときの対応はやっぱりお姉さん。その二面性がうまく出せたらいいなと思いました。 ――そんな水崎さんですが、最近はあちこちで見かけるほど大活躍ですね。 水崎 みなさんそう言ってくださるんですけど、私の中では特に忙しくなったとも感じていないんですよ。ここ最近のお仕事がメインキャストが多いので、そう見えるのかもしれないですけど。昔はグラビアのお仕事をたくさんやらせてもらったし、今は女優としていろんな役をいただけているので。そう言われてみたらそうだな、ぐらいの感じなんです。 ――水崎さん自身の意識は、ずっと変わらないんですね。 水崎 私こそ、仕事に関してはあっけらかんとしているのかも(笑)。ひとつひとつの役に一生懸命。この仕事はメインどころだからいつもより頑張る、というのは違うと思うから。この『BUNGO』でも、素敵な役者さんたちが脇を固めていますよね。そっちにスポットが当たればその人が主役にもなり得るわけですし。物語って、誰にスポットが当たっているかの違いだと思う。主役だから頑張る、とかいう気持ちはないんです。 ――プライベートな時間とのバランスは取れていますか?
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水崎 気をつけているのは、プライベートのときは、なるべく仕事を忘れるようにすること。普通の女の子でいることも大事だと思っているんです。ボーッとする時間を増やしたり、自分の好きなことをしたり。家に帰っても台本をずっと開けているかっていったら、そんなことないんです。それぐらい切り替えをちゃんとしないと、けっこう引きずられるタイプ。家に帰ったら仕事のことは忘れて、ゆっくりお風呂に入り、次の日に備える。次の日のセリフを確認する程度ですね。 ――好きな映画のジャンルや俳優さんは? 水崎 プライベートでは、なんにも考えなくても楽しめるような映画が好きなんです。やっぱりアクションが好きなので、ものすごいお金がかかっていそうなハリウッド映画とかをよく見に行きますね(笑)。お仕事として見る場合は、俳優さんに注目することよりは、「この役、素敵だな」って思うことのほうが多いです。 ――これから先、どんな女優さんになっていきたいですか? 水崎 私は今、年を取るのがすごく楽しみなんです。年を重ねていろんな経験を積んだほうが、演技に深みが出る。そう考えると年を取るのがすごく楽しみになるし、10年後も同じように「年を取るのが楽しみ」って思っていたい。過去にもあまりとらわれたくないんです。今なら『BUNGO』での演技が一番いいし、これを経てまた違う作品をやったときは、その作品が最高になっているのが理想的。それは『BUNGO』を経験したからこそできた演技だと思うから。この仕事が大好きなので、10年、20年と続けていきたいなって思います。 ――その年齢の水崎さんにしか、できない役があるでしょうからね。 水崎 もう上しか見えないんです。いろんな役をやって素敵になったら最高だし、もし失敗したとしてもそれもOK。「うまくできなかったな」と思ったとしても、できないってことを知ることができたわけだから。次はうまくできるように頑張れる。 ――前向きですね。昔からそういう性格ですか? 水崎 いえ、全然。10代のときは悩んでばかりでした。1つダメ出しされると10、ときには100へこんじゃう。通知表にも「できるのに気にしすぎです」って、いつも書かれてたぐらい(笑)。前の私は自分に厳しくて、むしろ痛めつけてばかりでした。でも自分の人生だから、自分が主役ですよね。自分がかわいがってあげなくてどうするの、って思ったんです。もちろん今も悩むことはあります。悩んで解決するんだったら、いっぱい悩む。でも、悩んで解決しないことだったら、その自分を放っておいてみる。そうするようにしたら、すごく楽になって、人見知りもなくなりました。最近は、誰かに話すようにもなりましたね。
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――5人姉妹ということで、なんでも言い合う性格なのかなと思ってました。 水崎 4番目なので、昔は「自分は、いらない子なんじゃないか」なんて思っていたこともありました(笑)。相談もあまりしなくて、家族からは「なんでもいつもひとりで決めつけるの」ってよく言われてましたね。でも今は昔より自分に優しくなったし、人を信じられるようになったのかなって思います。 ――今は、家族や姉妹のみなさんとどういう関係ですか? 水崎 今は家族となんでも話せるんですけど、何に出たかとかはあまり話さないので、そのことだけは相変わらず怒られます(笑)。「放送日ぐらい教えてよ」って。でも自分から言うのも、なんか恥ずかしくって。 ――「ブログに書いてあるから見てよ」みたいな? 水崎 うん、そういうタイプなんですよね(笑)。 ――最後に日刊サイゾー読者にメッセージをお願いします。 水崎 『BUNGO』は、日本文学が好きな方も、文豪の作品をあまり読んだことのない方も、幅広い世代の方に楽しんでもらえるオムニバス映画です。私が出演した『乳房』は、男性に思春期を思い出してもらえる一編。思春期を過ぎた男性のみなさんが、あの頃の気持ちを思い出してくれたらうれしいですね。大人のお姉さんの色気にドキドキしてください! (取材・文=大曲智子/撮影=後藤秀二) ●みさき・あやめ 1989年4月26日生まれ、兵庫県出身。グラビアアイドルとして活躍した後、女優として活動の場を広げる。2007年、テレビドラマ『キューティーハニー THE LIVE』(テレビ東京系)でアクションを経験し、アクション女優としての技術も上昇中。現在、『特命戦隊ゴーバスターズ』(テレビ朝日系)、『つるかめ助産院~南の島から~』(NHK)に出演中。立花胡桃の私小説を原作にした主演映画『ユダ』は、2013年1月公開予定。 chibusa.jpg ●『BUNGO~ささやかな欲望~』 ・「見つめられる淑女たち」―『注文の多い料理店』監督:冨永昌敬 出演:石原さとみ 宮迫博之/『乳房』監督:西海謙一郎 出演:水崎綾女/『人妻』監督:熊切和嘉 出演:谷村美月 ・「告白する紳士たち」―『鮨』監督:関根光才 出演:橋本愛 リリー・フランキー/『握った手』監督:山下敦弘 出演:山田孝之 成海璃子/『幸福の彼方』監督:谷口正晃 出演:波瑠 三浦貴大 ※3作品ずつ、2編に分けての上映 9/29(土)より、角川シネマ有楽町ほか全国順次ロードショー (C)「BUNGO ささやかな欲望」製作委員会 公式サイト <http://bungo-movie.jp>

月面ナチスが地球侵略!? 『アイアン・スカイ』はファンからの支援金で完成したネオトンデモ映画

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月からセクシーなナチス党員と共に“第四帝国”が舞い降りて来た!
想定外のドラマが展開されるSF大作『アイアン・スカイ』。
 月の裏側にはナチスの秘密基地があり、人類への逆襲のチャンスを虎視眈々と狙っていた。そして、ついに鉤十字マークの空飛ぶ円盤が大挙してNYを襲撃! オカルト雑誌「ムー」の読者が一斉にヨサコイ節を踊りだしそうなトンデモ感溢れるSF映画、それが9月28日(金)より公開される『アイアン・スカイ』だ。ハリウッド産のSF超大作かと思いきや、そうではない。フィンランド、ドイツ、オーストラリアによる合作映画。おバカ映画のふりをして、米国が牛耳る国際社会を痛烈に風刺した超ブラックコメディなのだ。そして、注目すべき点がもうひとつ。総製作費750万ユーロ(約7.5億円)のうち100万ユーロ(約1億円)は、特別映像を見たファンたちの支援金が占めているという点。ユーザー参加型のニュータイプな映像コンテンツとしても話題となっている。お台場で開かれた「フィンランド映画祭」に参加するためティモ・ヴオレンソラ監督が来日。メタルバンドのボーカルでもあり、ノリのいいティモ監督にいろいろと聞いてきました。 ──はるばる北欧からお疲れさまです! フィンランドというとムーミンかアキ・カウリスマキ監督ぐらいしか知らない日本人にとって、『アイアン・スカイ』みたいな型破りなSF映画の登場には驚きましたよ。 ティモ ハハハ、フィンランドのイメージってだいたいそんな感じだろうね。今でもアキ・カウリスマキ監督はフィンランド映画の最高峰にいる人だよ。そういうフィンランド映画の中にあって、『アイアン・スカイ』は従来のイメージから大きく掛け離れたものだろうね。『レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース』(10)って作品もかなりブラックなコメディだったけど、少しずつフィンランド映画は変わってきているところなんだよ。 ──『アイアン・スカイ』はパッと見、ハリウッドのSFアクション超大作かと思わせますけど、ナチスをネタにした超ブラックな政治コメディであることに途中から気づいて、またまた驚きました。 ティモ そうなんだよ。月にナチスの残党の秘密基地があって地球に攻めてくるというアイデアは脚本家と一緒にサウナ風呂に入っているときに思い浮かんだんだけど、それだけじゃ物足りないと思ったんだ。ただのSF映画にするつもりはなかった。当初からブラックで社会風刺の効いた内容にしようと思っていたんだよ。『博士の異常な愛情』(64)や『スターシップ・トゥルーパーズ』(97)なんかのイメージだね。あの2つの作品もSF映画ではあるけれど、当時の社会情勢を痛烈に皮肉っているよね。
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フィンランドから来日したティモ監督。
知性とエネルギッシュさを感じさせる、身長198cmの大男です。
■現在の社会情勢は、ナチスの時代にそっくり! ──『アイアン・スカイ』には、スタンリー・キューブリックやポール・バーホーベンといった巨匠たちへのオマージュも込められていたんですね。舞台設定は2018年。戦争好きな米国の女性大統領は、不適切発言の多さで知られるサラ・ペイリン共和党議員がモデルですか? ティモ アハハ、やっぱり似てる? いやいや、特定の個人をモデルにしたとは、監督であるボクの口からは言えないよ(笑)。多分、似ているのは偶然じゃないかな〜。米国大統領を痛烈にコキ下ろしている内容から、ボクのことを米国嫌いだと思うかもしれないけど、実はボクは米国のことが大好きなんだ。米国のポップカルチャーに触れて育ってきたわけだし、米国人のおおらかな気質は大好きだよ。でも、米国の外交政策だけは別。“世界の警察”であらんとして、諸外国の問題に次々と介入していく。そういう海外に対する高圧的な外交姿勢は大キライだね。米国に対してはLOVE&HATEな感情を持っているよ。でも、今の国際社会で問題なのは、米国だけじゃないと思う。世界全体の問題じゃないかな。今の国際情勢に関しては、すごい懸念を感じているんだよ。
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これが月の裏側にあるナチスの秘密基地だ。
ハーケンクロイツ型のレトロなデザインが
いい感じ。
──劇中の女性大統領は月面ナチスの地球侵攻を逆利用して支持率アップを狙う。プロパガンダ戦略が巧みだったナチスドイツとメディアを操作する現代の米国は共通点がありますね。 ティモ そうだね、メディアコントロールに力を注いでいる点でもよく似ているよね。今回、ナチスを題材にするにあたって、1930年代のドイツがどういう状況だったのか、すごく調べたんだ。驚くほど、現代と似ている状況だったんだ。政治がメディアを操作していたこともそうだし、経済状態が落ち込んで国民の不満が大きくなっていることもそっくり。これは米国だけでなく、欧州各国にもいえること。ゼノフォビア(外国人嫌い)が増えて、極右やタカ派が台頭してきている。やがて極端な愛国心が高まっていく……。経済危機に陥ったギリシアだけでなく、ボクが暮らしているフィンランドも似たような状況になってきているんだ。 ──ヤバいなぁ、アジアも同じような状況ですよ。ドイツやオーストラリアで撮影された本作。鉤十字の入った軍服や小道具をドイツに持ち込むのが大変だったと聞いています。今でも“ナチス”ネタは欧州ではタブーなんですね。 ティモ 衣装にSSや鉤十字の紋章が縫い付けてあったので、フィンランドからドイツに持ち込む際に大変厳しくチェックされたよ。今でもナチスを連想させるものはドイツ入国の際に拒否されるんだ。ずいぶん多くの書類を申請して、映画の撮影に使うものであることを証明して、ようやく入国できたんだ。でも、それは仕方ないことだろうね。実際に最近のドイツではネオナチというのが出てきて問題になっているんだ。ボクらは許可をもらってフランクフルトで撮影をしたわけだけど、カメラが回っていない間は軍服を着た俳優たちにはコートを上から羽織ってもらうなどの配慮をしたよ。撮影に協力してくれている地元の人たちの感情を逆なでしないように気をつけたんだ。 ■ファンからの支援金は、こうして集まった!
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2018年、米国は女性大統領が就任。戦争さえ
ぶっ始めれば、支持率がぐんぐんアップする
と考える超タカ派。
 インタビュー後半は、『アイアン・スカイ』にまつわるお金の話題について。本作は2008年に公式HPを立ち上げ、特別映像を配信。世界中の映画ファンにサポーターとしての参加を呼び掛けた。1000ユーロ(約10万円)以上の出資者はエンドクレジットで名前が流れ、続いて“戦時国債”という名称でひと口50ユーロ(約5000円)の特典付き募金、1ユーロ(約100円)で冒頭約4分間をいち早く観られる会員を募り、特製Tシャツなども販売。積もり積もって100万ユーロもの資金の調達に成功している。日本でも『フラガール』(06)が大ヒットするなど、邦画バブル期には個人向け映画ファンドがもてはやされたことは記憶に新しい。ところが日本の場合は、資金流用の疑いのあった信託会社が行政処分を受けるわ、映画製作会社が倒産するわ、大変残念な結果に終わっている。その点、『アイアン・スカイ』は純粋に「この映画が観たい」というファンの熱意によって支えられたようだ。そのへんのところ、ティモ監督にじっくり聞いた。 ──ヨーロッパのインディペンデント映画で750万ユーロという製作費もスゴいですけど、一般のファンから募ったファンドが100万ユーロも集まったことは画期的ですね。
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フィンランド映画祭に登壇したティモ監督。
「この映画はファンの熱意が支えてくれた。
みなさんに感謝しています」。
ティモ 製作費が足らなくて、必要に迫られて考え付いたアイデアだったんだけど、結果としては大きなプラスに繋がったね。映画ファンド関係者の間では、ボクらはパイオニア扱いされているよ(笑)。映画ファンからお金が集まっただけでなく、そのことがとても大きな話題となり、ニュースとして取り上げられたしね。大きな宣伝効果もあったと思うよ。“ファンによって作られた映画”であることが、『アイアン・スカイ』の大きな旗印となっているんだ。 ──08年に正式HPを立ち上げて最初のティーザーを流し始めた時点では、製作費はどれだけ集まっていたんですか? ティモ 最初は400万ユーロ。この400万ユーロは投資家たちから募ったもの。ここまでは比較的容易に集めることができたんだ。でも、それ以上はなかなか難しかった。それで、ネット上で一般の人たちにファウンディングを呼び掛けて、100万ユーロ(1000ユーロ以上の出資者たちから集まった額が70万ユーロ、追加募集した“戦時国債”で30万ユーロ)が1年間で集まったんだ。次第に話題となり、それからさらに製作費が集まって、トータルで700万ユーロ以上になったんだ。 ■映画への投資ほど危険なものはなし ──日本でも複数の作品を対象にした映画ファンドがありましたが、失敗に終わっています。『アイアン・スカイ』が成功した理由はどこにあったんでしょうか? ティモ ボクたちが成功した理由のひとつには、数年前からネットコミュニティーと密接な関係を築くことができていたことがあると思うよ。ボクの監督デビュー作『スターレック 皇帝の侵略』(05)はネット上で800万回ダウンロードされたんだ。そういうファンベースがあったことが大きいだろうね。ボクらが次にどんな作品を作るのか、ファンが期待してくれる信頼関係があったんだ。ファンドを募る際に、もちろんボクらはお金の使い道に関しては透明性を心掛けたし、「映画への投資ほど危険なものはありません」と事前にきちんと説明したよ。「この映画は確実に完成するかどうかも分かりません。お金を損したくない人は投資しないほうがいいですよ」とね。「それでも、“助けてやろう”と思う方は是非お願いします」と本当に正直に話したんだ。
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後半はSF映画らしい、迫力あるVFX映像が
満載。月面ナチス軍と地球防衛軍が戦火を
交える!
──お金だけでなく、ティモ監督が作った『アイアン・スカイ』を観たいというファンからの期待や熱気も集まったわけですね。 ティモ そう! そこがいちばん大事なところだったと思うな。お金を集めるだけなら、なんとかなるもの。でも人が持っている熱意は、集めようと思っても集められるものじゃないからね。『アイアン・スカイ』が特別だったのは、そこだったんだ。全体の出資者の中には投資目的の人もいたけど、ボクたちが正直に説明をしたこともあり、「この映画なら大損をすることはないな」と感じて出資してくれた部分もあったみたいだね。 ──映画のクライマックスは、月面ナチス軍の誇る宇宙飛行船ヒンデンブルグ号と米軍の最新宇宙戦艦ジョージ・W・ブッシュ号の激突。ファンからの100万ユーロがなければ、あんなに迫力あるシーンは撮れなかったかも? ティモ そうだね、戦争シーンだけに限らず、全体的にトーンダウンしたものになってしまったんじゃないかな。というか、あの100万ユーロがなければ、この映画は完成していなかったわけだし。日本から出資してくれたファンも含めて、世界中の出資者に大感謝だよ。 ──では最後の質問です。日刊サイゾーは“タブー”が大好きなニュースサイトなんですが、フィンランドにもタブーはいろいろあるんですか? ティモ フィンランドにも、タブーはたくさんあるよ。まず、フィンランドはロシアに対してビミョーな関係にあるんだ。それに、ノキアといえばフィンランドを代表する大企業だけど、最近は経営が厳しくなっている。でも、そういったことは公然とは口にしにくいんだ。あと、フィンランド人は第二次世界大戦の話もしたがらないね(※フィンランドは第二次大戦時は枢軸国側だった)。フィンランド人にとってのいちばんタブーと言えば、1918年に起きた内戦。100年も昔のことだけど、同じフィンランド人同士が戦ったことから、今でもフィンランド人にとって大きな心の傷になっているんだ。これは他の国にも共通することだけど、アルコール依存症や経済不況から来る失業問題も根深いものがあるね。フィンランド映画も少しずつ変わってきて、今まであまり扱わなかったような題材にも取り組むようになってきているところだよ。 ──フィンランドもいろいろ大変なんだ……。ブラックなエンディングは『アイアン・スカイ』だけにしたいものですね。 ティモ ほんと、そう願うよ。『アイアン・スカイ』はボクが考えうるサイテーのシナリオになっているから、世界はそこまでバカじゃないと信じたいね(笑)。 (取材・文=長野辰次) ironsky_5.jpg 『アイアン・スカイ』 監督/ティモ・ヴオレンソラ 音楽/ライバッハ 出演/ユリア・ディーツェ、ゲッツ・オットー、クリストファー・カービー、ウド・キア 字幕翻訳/高橋ヨシキ 字幕監修/町山智浩 PG12 配給/プレシディオ 9月28日(金)よりTOHOシネマズ六本木ほか全国公開 <http://gacchi.jp/movies/iron-sky/> (C)2012 Blind Spot Pictures, 27 Film Productions, New Holland Pictures. ALL RIGHTS RESERVED. ●ティモ・ヴオレンソラ監督 1979年フィンランド出身。SFコメディ映画『スターレック 皇帝の侵略』(05)を7年がかりで完成させ、監督デビューを果たす。トレッキーファンを熱狂させ、インターネット上でカルト的人気を呼んだ。『アイアン・スカイ』はカンヌ映画祭へ出品しようとしたが、惜しくも上映ならず。しかし、2012年2月にドイツのベルリン映画祭でプレミア上映したことで異様に盛り上がり、ネット上にアップされた予告編はわずか4か月で1000万回を突破。フィンランドでは初登場1位の大ヒットを記録した。続編の企画が進む一方、自ら結成したメタルバンドのリードボーカルとしても活動中だ。

「とっとと英語話せるようになって海外に出たいんです」注目の若手女優、二階堂ふみが見据える世界とは

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撮影=佐藤裕之
 二階堂ふみ。もうすぐ18歳を迎えるこの女優について、すでに説明は不要かもしれない。今年1月に公開された園子温監督の『ヒミズ』に、同世代の新進俳優・染谷将太と共にW主演。全身全霊での演技は海を超えて称賛を受け、第68回ヴェネチア国際映画祭で日本人初のマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を染谷と共に受賞。その名を日本中、いや世界中に一気に知らしめた。  しかしそこに甘んじることなく、その後もさまざまなタイプの映画やドラマに果敢に取り組んでいる彼女。9月22日(土)から公開される映画『王様とボク』は、事故によって12年間眠り続けていた青年モリオの突然の目覚めが、周囲を変えていく青春ストーリー。二階堂は、モリオの目覚めに生き方を変えていく幼なじみミキヒコの恋人、キエを演じる。そんな彼女に映画のこと、私生活のこと、そして女優としてのこれからについて、思うままに話してもらった。18歳とは思えない、素直でしっかりとした語り口にも注目してほしい。 二階堂ふみ(以下、二階堂) 私サイゾー大好きなんですよ。イラついてる感じがいいですよね。 ――最高の褒め言葉、ありがとうございます(笑)。いつから読んでくれてるんですか? 二階堂 中学生からです。事務所の人が読んでて、読んでみたら「何これ、超面白い」って。だから今回、日刊サイゾーに載れるのもすごくうれしいです。 ――こちらこそ出ていただいてありがたいです。『王様とボク』、ファンタジーなテイストなのかなと思ったら、ちょっと違いましたね。意外なストーリーの映画でした。 二階堂 そうなんです。生っぽさのある映画ですよね。前田哲監督とは以前ご一緒してたこともあって、またお仕事したいなって。それに、やまだないとさんの原作だったので。 ――二階堂さんが演じたキエという女の子、どう思いましたか? 二階堂 別に不思議な子ではないんですよ。監督が、普通の女の子としての感覚を持っている前提で演じさせてくれたんです。ミキヒコとの関係を一番大事にしながらお芝居をしました。
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――この映画は「大人になりたいか、なりたくないか」がテーマのひとつでした。キエも二階堂さんも、子どもと大人の間にいる年齢ですが。 二階堂 あまり役と自分を照らし合わせたりはしないので、共感することはなかったですけど。私は大人になりたくないとも、大人になりたいとも思わないので。子どもには子どもの良さが、大人には大人の良さがあるので、今のうちに楽しんでおこうって感じですね。 ――二階堂さんは、大人に対するイメージってありますか? 二階堂 ちゃんと常識を持っている人が大人なんじゃないかな、って思います。人に迷惑をかけないというか。 ――となると、世の中には大人ではない人が多い? 二階堂 そうそう。そういう人はね、カスですよ。別に人に迷惑をかけることはあってもいいと思うんです。でもそれを反省しないで何度もやっちゃったり、無差別に人を殺したりする人いるじゃないですか。酔っぱらって人に迷惑かけてばかりの人とか、ああいうだらしない大人には絶対になりたくないなと思いますね。 ――『ヒミズ』以降、世界的に注目されるようになりましたが、それを実感することはありますか? 二階堂 そうですね。でもあの後からどんどん、世界が広がっているような気がします。やりたい監督ともできるようになったり、いろんなところで自分を発信できる場が増えたことは、身をもって感じてます。賞自体もとてもうれしいことでしたし。でも、通過点にしかすぎないですね。確かにあそこで何かが変わったと思うけど、それにすがりつくことなく、どんどん進んでいければなと思います。 ――でも、あれからお仕事は忙しくなったんじゃないですか? 二階堂 いや、あの後は全然ヒマでしたよ。冬休みもグータラしてて、ヒマ人の極みでしたね。ずっと寝てて、あとは映画を見たり本を読んだりしてました。 ――趣味についても聞かせてください。映画がお好きだそうですね。 L1000606.jpg 二階堂 時間があれば映画館に行きますね。映画館派なんです。最近は『ゴッド・ブレス・アメリカ』を見たんですけど、超面白かったです。映画館には、だいたいひとりで行きますね。見終わってから人と討論し合うのとか、好きじゃないんですよ。自分の思想を人に押しつけるのも好きじゃないし。だから、ディベートとかも好きじゃないんです。学校でやるんですけど、「意味わかんない」とか思ってて(笑)。十人十色、いろんな考えを持った人が集まったら、それはそれで面白いだろうなとは思うんですけどね。 ――本やマンガも大好きだとか。 二階堂 マンガよりは本、活字のほうが好きなんです。だから古本屋さんにもよく行きます。今は、室生犀星の『性に目覚める頃』を読んでますね。前に一度読んでるんですけど、こないだ金沢の室生犀星記念館に行ったんですよ。作者の背景を知った後だと感じ方が違ってくるかなって思って、読み直してます。 ――昔の日本文学を読むことが多いんですか? 二階堂 いろんなのを読むけど、比較的そういうのが多いですね。言葉がきれいな文学が好きなので。室生犀星も言葉がきれいだし。現代の小説も読むけど、言葉があまり美しくないものは好きじゃないです。一日に2冊ぐらい読めちゃうときもあれば、じっくり読むときもあるし、マイペースで読んでいますね。橋本治の『二十世紀』とかいまだに全部読めてなくて。 ――部屋には本がたくさんあるんですか? 二階堂 そうなんですよ。こないだ引っ越ししてちょっと捨てたんですけど、読み返したくなる本が多すぎて捨てきれなくて。グータラしてた冬休みなんて、枕の周りが本であふれてました。友達が家に来た時、「相変わらず娯楽の少ない家だね」って言うから、「ゲームがないだけで娯楽がないとか言うんじゃないよ」って。 ――話しているうちに、二階堂さんが18歳ということを忘れそうになりました(笑)。年齢差を超えてお話しできるのがすごい。 二階堂 でも、人とあんまりぶつからないようにしないと、とは思ってますよ。じゃないと、いろいろめんどくさいじゃないですか。私、そこらへんにいる子より、ずっと言うこと聞きますよ(笑)。「これやって」って言われたら、「はい、わかりました」ってちゃんとやるし。 L1000627.jpg ――そうなんですか。じゃあ、意外とストレスがたまってたりして……。 二階堂 大丈夫です。それでもうまいこと発信していくのが、プロだと思ってるので。妥協するところは妥協して、妥協したくないところは絶対に妥協しないっていうポリシーを持っておけば、ブレないんじゃないかな。 ――無理に自分を曲げたり、カッコつけてる感じにも見えないですしね。 二階堂 うん、まっすぐ生きてるつもりですよ。ふふふ。 ――理想の女性像はありますか? 二階堂 高峰秀子さんですね。あとジーナ・ローランズ。その2人を兼ね備えてる女性がいたら最強だなって思います。 ――2人ともスクリーンに映える、真の女優ですね。 二階堂 うん、女優としての理想です。あと、この『王様とボク』で共演した松田美由紀さんも理想の人ですね。精神が強くて、本当に素敵な人でした。美由紀さんのことが好きすぎて、美由紀さんがクランクアップするとき寂しくて泣いちゃったほどです。 ――女優としての、近い未来の目標を教えてください。 二階堂 とっとと英語話せるようになって、海外の監督と仕事しようと思ってます。そのために、まずは英語。それがあれば、壁をぶち抜けると思うので。そういうところからちゃんとやらないと話にならない。ただ「世界に行きたい」なんて誰でも言える。どれだけ実力をつけてそこに近づけるかっていうのは、努力次第だなと思うから。 ――受験勉強の真っ最中だそうですが、大学では何を勉強したいですか? 二階堂 文章を書くのが好きなので、文学部に入って、あと倫理学も学びたいです。ロシアが好きなので、第二外国語でロシア語もとれたら素敵だなって思いますけど……これ、入れたらの話なんですよねぇ(笑)。まずは勉強を頑張ります……。 ――最後にサイゾー読者に向けて、「二階堂ふみ」のPRをお願いします。 二階堂 そろそろ思春期から抜けてきた頃なので、しっとり系の女子を目指したいと思います。またサイゾーに出たいので、応援よろしくお願いします。 (取材・文/大曲智子) ●にかいどう・ふみ 1994年9月21日生まれ、沖縄県出身。ティーン誌のモデルとして活動した後、2009年『ガマの油』(監督:役所広司)で劇場映画デビュー。2011年『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(監督:入江悠)、『指輪をはめたい』(監督:岩田ユキ)などに出演。2012年1月公開の『ヒミズ』(監督:園子温)に染谷将太とW主演。第68回ヴェネチア国際映画祭で、染谷と共に日本人初のマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した。現在放映中のNHK大河ドラマ『平清盛』に出演中。待機作は、『悪の教典』(監督:三池崇史、11月10日公開予定)。 ●『王様とボク』 監督:前田 哲/原作:「王様とボク」やまだないと(イースト・プレス刊)/出演:菅田将暉 松坂桃李 相葉裕樹 二階堂ふみ 中河内雅貴 松田美由紀/配給:ユナイテッド エンタテインメント 9/22(土)ユナイテッド・シネマ、シネマートほか全国順次ロードショー 公式サイト <http://www.o-boku.com>

「嫁が久々に笑ってくれて……」“調子に乗れない芸人”AMEMIYAインタビュー

 7月25日、ピン芸人のAMEMIYAが『日本の歴史はじめました』(双葉社)を出版した。「冷やし中華はじめました」という歌ネタで一世を風靡した彼が、日本の歴史を歌にするという大胆な試みに挑戦。付属のDVDにはAMEMIYAが熱唱する映像も収録されていて、一石二鳥の内容となっている。この本が完成するまでの知られざる苦労について聞いてみた。 ――この本では50個のテーマごとに歴史的事実をもとにした歌が載っていますね。これは受験勉強などの役に立つと思いますか? AMEMIYA まあ、覚えておくと多少は役に立つのかなと思うんですけど、史実が入ってるのは歌の中の前半だけですからね。後半はAMEMIYAの妄想です。豆知識とかではないので、えっ、大丈夫かな、という不安はこの仕事のお話を頂いたときからありましたし、今もありますね。 ――ある意味では、AMEMIYAさんの歌ネタが50本入っている「ネタ本」という感じですよね。 AMEMIYA そういうことになりますね。 ――ということは、ネタを作る苦労は相当あったんじゃないですか? AMEMIYA はい、非常に苦労しました。これをやるというお話を頂いたとき、結構忙しい時期だったというのもあって、50曲作るのに時間が3日ぐらいしかなくて。非常に苦労したんですけど、何とか作って収録に臨んだんですね。そうしたら、最初の10曲ぐらいを録ったときに監督さんに「AMEMIYAさん、このネタってこれでいいですか? もうちょっといけるんじゃないですか?」って言われたんですよ。それで僕も「その言葉を待っていた」って思ったんですよ。やっぱり妥協するわけにはいきませんから。そこからは直しながらやっていったので、朝から始まって夜の9時ぐらいまでに終わる予定だったのが、結局は次の日の朝までかかりましたね。だから、DVDを見ていただくとわかるんですけど、曲によって元気良く声が出ているのもあれば、声がかすれてるところもあるんですよね。そこも楽しんで見ていただければいいかなと。 ――完成したDVDはご自分でもご覧になったんですか? AMEMIYA 久々に僕の部屋に嫁を入れて、一緒に見ましたね。それまであんまり口をきいてくれなかったんですけど、このDVDを見て久々に笑ってくれたので良かったです。これを出すときは本当に不安だったんですよ。「大丈夫かな?」って。自分で一生懸命考えて出してるわけですけど「面白いのかな?」みたいな。 ――他の人がどう思うかわからない、ということですか? AMEMIYA 自分ではそのときは面白いと思って出してるんですけど、その後に「これ、面白いのかな?」みたいな気持ちになりますね。「冷やし中華はじめました」も、最初は面白いかどうかわからなくて。 amemiya002.jpg ――最初から自信があったわけじゃない、と。 AMEMIYA そうですね。『あらびき団』で最初にやらせていただいて、反応を見て、ああ、これは面白いんだなって気付きましたね。ボケもツッコミもないし、そんなにわかりやすい笑いじゃないと思うんですよ。はじめは自分でツッコんでたんです。「12月20日 うちのラーメン屋でもとうとう 冷やし中華はじめました」「いや、遅いわ!」って(笑)。でも、『あらびき団』でやるときにああいう形になって。最初は大丈夫かなあって思ってました。そしたらすごくウケて。そこから徐々に自信をつけていった気がします。 ――それ以降は一気にテレビに出る機会も増えて、最近は充実していたんじゃないですか? AMEMIYA でも、危機感はすごい持ってますね。普通の芸人じゃないって思ってるところがあるんで、あんまり調子に乗れないんですよ。トークも苦手だし、そういうことで笑いを取ってきたタイプじゃないですから。やっぱり自分しかできない何かを作って、自分なりの生き方を確立しないといけないと思うんです。だからとにかく、お仕事をやらせていただくときは全力でやってます。なんか、みんなにもっと安心してAMEMIYAで笑ってほしいんですよ。でも、なかなか笑ってくれないなあ、って思ってますね。 ――まだ試行錯誤している? AMEMIYA そうですね。とにかく一個一個全力でがんばって、この道を極めたいと思ってます。……こんな真面目なこと言ってていいのかな?(笑) (取材・文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●AMEMIYA(あめみや) 1978年、千葉県生まれ。高校卒業後、東京NSCを経てワタナベエンターテインメントに所属。03年からミュージシャンとして活動し、10年にふたたびお笑い活動を再開する。『R-1ぐらんぷり2011』準優勝。

大ブレイク前夜!? “自然界のピラミッドを歪ませる男”武井壮を直撃!!

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 39歳にして100メートルを10秒台で疾走! 驚異の身体能力と、明るく特異なキャラクターが注目を浴び、近頃『うもれびと』や『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』(いずれもフジテレビ系)など、バラエティ番組への出演が続いている武井壮。  大学で始めた陸上では、たった2年半で最も過酷とされている十種競技の日本チャンピオンに。陸上界を離れてからも、独自の運動理論に基づくトレーニングを寝る間も惜しみ重ね続け、肉体を進化させてきたのだという。  それもこれも、彼が繰り返し叫ぶ「目指せ!百獣の王」という無謀なターゲットに向けられたもの。彼はなぜ人生を賭けてまで、その称号にこだわるのか? 自然界のピラミッドを歪ませる男・武井壮を直撃した。 ――あのー、「百獣の王」を目指すとは、一体どういうことなのでしょうか? 武井壮(以下、武井) どういうことってなんすか!(笑) 「百獣の王」って、今はライオンでしょ? その社会的地位を武井壮がゲットしてやろうっていう、極めて純粋なプロジェクトです(真っすぐなまなざしで)。 ――本気なんですね。 武井 本気っすよ! 「百獣の王」目指すために、日々猛烈にトレーニングに明け暮れてますからね。100パー本気っす! ……すいません、興奮しちゃって。 ――いえ。ライオンって、実際に最強なんでしょうか? 武井 あいつ、まあ強いんすけど、イメージ先行っすね。たてがみが冠みたいだから王様っぽいね、っていう。だって、ライオンが牛とかバッファローにツノでパカーンて跳ね上げられてる映像がYouTubeに載ってますし、最強かどうかはね……。 ――武井さんは、ライオンを超えられそうですか? 武井 もう超えましたね。ネット上では。 IMG_0214_.jpg ――どういうことですか? 武井 GoogleやYahoo!JAPANで「百獣の王」って検索してみてください。すると、武井壮がライオンの上に出てくるんですよ。日本における世間のイメージはそうなってるってことですから、これはデカイですよ。もう名刺の肩書に「百獣の王」を名乗ってもOKじゃないかと思うんすけど。ダメっすかね? ――ダメじゃないです。 武井 そもそも僕が「百獣の王」になりたいと思ったのは、世界を平和にしたいからなんですよ。ヤンキーのお兄ちゃんだって、絶対勝てなさそうな奴が歩いてきたら、ビビッて目そらすでしょ? そしたら争いは起きないんですよ。人間同士で殴り合うなんておかしいですから。俺が王になったら、平和になる。そういうことです。それに、昔から「王」にはこだわりがあるんですよ。大学の陸上部で十種競技を選んだのも、「キング・オブ・アスリート」と称されてるからなんです。その競技でキングになったわけですから、その後も王様になりたいなと思って。陸上の後に、ゴルフ留学でアメリカに行ってるんですけど、それもタイガー・ウッズに憧れたわけじゃなくて、「帝王」ジャック・ニクラスに憧れてですから。さらにゴルフの後は、台湾プロ野球のコーチをやってたんですけど、台湾といえば「世界のホームラン王」王貞治がいるでしょ! ――一貫して「王」なわけですね。 武井 人生「王」だらけですよ。30代になって「あとどんな王があるかな?」って考えた時に、「やっぱ『百獣の王』っしょ」と思って。「海賊王」とかもありましたけど、それは『ONE PIECE』(集英社)に寄せ過ぎだろうと思ってやめました。まあ、ゴム人間には負けたくないっすけど(笑)。 ――「百獣の王」になるため、日々、あらゆる動物と戦うシミュレーションをしているそうですが、今、戦ってみたい動物は? 武井 もうねえ、自然界にいる動物たちとは、全部(脳内で)やってるんですよねえ。あとはもう、映画や漫画のキャラクターですよ。とんでもねえ奴がいっぱいいますから、そろそろ視野に入れていかないといけないんじゃないかって思ってます。 ――例えば、どのキャラクターが強そうですか? IMG_0246_.jpg 武井 まあ、悟空(『ドラゴンボール』)は強いっしょ。空飛ぶし、かめはめ波撃ってくるし、大猿になるし。あと『アベンジャーズ』のハルクはヤバイでしょ。建ってるビルをちょっとこするだけでビルが壊れちゃうし、ジャンプしたらビルの上まで跳ぶんですよ。まあ、シミュレーション上では僕が勝ちましたけどね。 ――ハルクに勝てたんですか? 武井 『アベンジャーズ』って、ヒーローが4人いるんで、4対1でやってやったんですよ。マイティ・ソーのハンマーと、キャプテン・アメリカの盾さえ手に入れちゃえば、ハルクにも勝てますよ。 ――なんか納得できないんですけど……。ちなみに、牛とは実際に戦ったことがあるそうですね。その際は、武井さんが倒されてしまったとか。 武井 あれは、牛と対峙してから、後輩にiPadを渡して「戦ってるとこを写真に撮ってくれ。そうじゃない、横向きで撮ってくれ」なんていうやり取りをしてたら、もう牛の顔面が目の前10センチのとこにあったんですよ。そんなの誰だって及び腰になるでしょ。で、そのまま倒されて、ツノでゴリゴリゴリーッて10メートルくらい押し込まれて。ぶっちゃけ死にかけましたよ。 ――負けちゃったわけですね。 武井 いや! 牛の完全な不意打ちですから、ノーコンテストですよ。これをOKとするなら、俺だって木の上で待ち伏せして、のろのろ歩いてる牛の上に飛び降りて、頚椎(けいつい)にズドーンッて肘ぶち込んでやりますよ! だから、むしろ不意打ちを受け切ってから脱出した、オレの勝ちでしょ。 ――実際に見てないので分からないです。ところで、武井さんが唱えている「パーフェクトボディーコントロール」理論とは、なんでしょうか? 武井 自分の身体を頭で思った通りに動かす技術と、いつでも100%の力を出せるコンディションにしておく技術。この2つを融合させたもので、最短で自分のパフォーマンスを高めていくことができる、僕の独自のトレーニング理論ですね。例えば、「目の前の水が飲みたい」と思ったら誰でも飲めるんですけど、「シュートを入れたい」と思っても外れるじゃないですか? それを全部成功させるためには、技術練習をするんじゃなくて、その「○○したい」を実現する能力を高めたほうが早いんですよ。つまり「自分を思い通り動かす能力」です。だから僕は十種競技でも、2年半という短い時間でチャンピオンになれたんです。 IMG_0223_.jpg ――最近は、どんなトレーニングをしているんですか? 武井 もっぱらダッシュが多いですね。100%の力を出すので、パワーもスピードもすべてが上がる、万能なトレーニングなんです。 ――武井さんは、睡眠時間がとても少ないそうですね。 武井 例えば「眠いな~」って時に、自分が憧れてる芸能人が隣にやってきたら、一発で目覚めるでしょ? そんな眠気なんて、「べつに寝てもいいよ」くらいの軽いサインでしかないんです。そんなんでいちいち寝てたら、人生のほとんどを寝てることになっちゃいますよ。どんなに憧れの人が隣に来ても、「もう無理です!」バタンッて寝ちゃうのが睡眠ですよ!  僕はそういう時しか寝ないってことです。 ――みんな簡単に寝過ぎってことですか? 武井 大して運動もしてないのに、「本当の眠りではない眠りをむさぼっている」ってことですね。食べ過ぎと一緒ですよ。僕は「眠いなあ」と思ったらダッシュか腹筋をして、さらに疲れるんです。それから寝て回復すると、昨日の眠気じゃもう眠くなくなる。それがもうずーっと続いてるんで、昔「眠いな」と思ってた地点は、今の僕にとっては、朝起きて歯磨きして「もう眠くてダメだ~」って言ってるのと同じなんですよ。しかも僕はトレーニングをし過ぎて、寝ないでいいボディーが仕上がってますし、「パーフェクトボディーコントロール」によっていつでも絶好調なんで、回復も早いし、ケガもすぐ治るんです。あ、昨日ね、椅子に手をかちあてて、血がドバーッて出て、紫色に腫れ上がったんですけど……(傷を見せながら)。 ――あれ? ほとんど治ってるじゃないですか。 武井 この尋常じゃない回復力! ウルヴァリン(映画『X-メン』等に出てくるキャラクター)か俺か、みたいなとこありますよね。 ――トレーニングで、人間はここまで変われるんですね。武井さんは何歳まで鍛え続けるんですか? 武井 そんなもん、一生ですよ! エンドレス! ――じゃあ、あと40~50年くらいですかね。 武井 いや! 俺、「絶対に死なない」って決めてんすよ! みんな「死ぬ」と思って生きてるから死ぬんですよ。最悪死ぬとしても、ミニマムで200歳までは絶対に生きてやろうと思ってます。ただ、マックスで不死。あるっしょ、不死。 ――話がすごいところに……。 武井 地球上で65億人が暮らしてる中で、「俺は死なないだろう」とふんでるのは俺くらいでしょうね。ってことは、死なない可能性が残されてるのは、現存する人類で俺だけってことですよ。どんなことでも、信じた奴しか叶えられないんです。「十種競技で日本チャンピオンになれる」と信じてたら、実際になれましたから。 ――今日は、貴重なお話ありがとうございました。「百獣の王」目指してこれからも頑張ってください。 武井 オレ地球が大好きなんです! だから世界が一つになって、みんなが仲良く平和に楽しく生きられるように、俺が「百獣の王」になりてえなあ、と思ってるんですよ。世界中の全員に「Oh! king of beast! So Takei~!」と言われる日が来るまで、「百獣の王」一本でいくんで、応援よろしくお願いします! (取材・文=林タモツ) ●たけい・そう 1973年、東京都生まれ。元陸上・十種競技日本チャンピオン。独自の「パーフェクトボディーコントロール」理論をもって、ゴルフ、野球、ボクシング、柔道などさまざまなスポーツにチャレンジし続けている。また、あらゆる動物との戦いをシミュレーションしており、地上最強の“百獣の王”を目指して日々トレーニングに励んでいる。 twitterアカウント @sosotakei / 公式ブログ<http://ameblo.jp/zenkaiman/

アジア人と結婚する「なでしこ姫」増加と「生涯未婚率」上昇のやるせない関係

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『絶食系男子となでしこ姫
国際結婚の現在・過去・未来』
(東洋経済新報社)
 20代半ばを過ぎると、友人の結婚式や結婚式の2次会の案内状が届き、自らの結婚を考える機会が増える読者も多いのではないだろうか。しかし、2010年の国勢調査によると、生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合)は男性が20.1%、女性が10.6%と30年前に比べ男性では約8倍、女性では2倍以上に増えているという。  そんな中、アジア人男性と結婚し、現地で暮らす日本人女性=「なでしこ姫」が増えている。そんな「なでしこ姫」たちへのインタビュー調査をもとに書かれたのが『絶食系男子となでしこ姫 国際結婚の現在・過去・未来』(山田昌弘、開内文乃:著/東洋経済新報社)である。  本書では、「なでしこ姫」や「絶食系男子」(草食系にとどまらず、異性との交際をあきらめたり、そもそも異性との恋愛自体を面倒くさいがる男性)というキャッチーなキーワードを用いながらも、国際結婚を通し、それが日本の社会や経済、ジェンダーの問題とどうつながっているのかを分析している。今回、著者であり、家族社会学、ジェンダー理論、グローバリゼーション論を専門とする開内文乃氏に、現在の結婚難、そして「なでしこ姫」現象について話を聞いた。 ――1980年には30代前半の未婚率は男性が14.3%、女性が7.7%でした。それが2010年では、30代前半の未婚率は男性が47.3%、女性が34.5%と大きく上昇しています。現在の結婚難というのは、やはり経済的要因が大きいのでしょうか? 開内 本書の共著者である中央大学の山田昌弘先生(中央大学文学部教授)がよく言われるように、20代半ばから30代半ばの未婚女性の約4割が期待する結婚相手の年収は600万円ですが、それに該当する未婚の男性は2~3%しかいない。大企業などで働く父親をもつ女性にとって、結婚相手に望む年収は、その父親の年収を基準に考えることが多い。また、86年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、女性が社会に進出し始めました。彼女たちは父親を基準とし、同じような職場環境で働くことを望みます。これは、男性にも同じことがいえます。父親が大企業で働くような家庭で育った男女は、自分の父親の仕事を基準として就職先を考える傾向があるのです。そういった大企業に勤める父親をもつサラリーマン家庭で育つと、結婚にしても、就職にしても、親の期待や育った環境から大きく外れることがなかなかできない。しかしながら、現在のような経済状況のもとでは、男性ですら大企業の父親と同じようなポジションを得ることは厳しい。日本では女性の管理職比率が先進国最低レベルにあるように、女性が父親と同じようなポジションを得ることはさらに難しい状況です。父親と同じような職場環境で働けなかった女性は、せめて結婚後の生活は自らが育ってきた生活環境に近く、また子どもも同じような生活環境で育てたいと考えます。だからこそ、結婚相手には父親と同じくらいの稼ぎを求めるのです。しかし、若い男性側は厳しい経済状況の人が多いので、ミスマッチが起きているのです。 ――2010年に明治安田生活福祉研究所が行った「結婚・出産に関するアンケート」では「結婚後の生活は主に夫が支えるべきだ」という質問では、「YES」と「どちらかというとYES」と答えている独身女性が71.4%を占めています。 開内 特に若い男性は、自分たちを取り巻く経済状況を自覚しているので、結婚相手の女性には結婚後の生活費を稼ぐのを共働きである程度助けてほしいと考えています。しかしながら、女性側が共働きとして考えているのは、衣食住の生活費は男性が稼ぎ、女性はパートタイム労働で足りない分を稼ぐ。パートタイム労働で得た収入は海外旅行や子どもの習い事、家族イベントといった余剰に使いたいのです。このように共働きということだけを考えても、男女間では意識の差があります。こういった意識の差は恋愛だけならば問題ありません。しかし、結婚という未来のビジョンを一緒に描こうとなった時に、この差が問題となってきます。 ――男女の意識の差のほかに、結婚難の要因となっているものはなんでしょうか? 開内 日本では職業においても性役割、つまり男性的職業と女性的職業があります。男性が多い職場と女性が多い職場に分かれてしまう。そうすると、例えば同じ会社内でも、なかなか男女が出会えない。社外での出会いは、適齢期の人たちは仕事が忙しいのでなおさら難しい。そういった構造的な問題も大きな要因のひとつです。意識的にも構造的にも、男女間のミスマッチが起きているのが、結婚難の要因ではないでしょうか。 ■新たな結婚の流れ「なでしこ姫」とは? ――本書では、経済発展している中国や東南アジアの国々の男性と結婚し、現地で暮らす女性を「なでしこ姫」と名付けています。国外における「妻が日本人、夫が外国人」という婚姻件数が88年では約2,000件だったのに対し、その後増え続け、06年には8,000件を超えています。なぜ、そのような結婚が増えているのでしょうか? 開内 適齢期を過ぎても結婚しない男性は、エリートといわれる年収600万円以上の男性にも多い。この手の男性は結婚に非常に慎重なタイプか、結婚のチャンスをものにできないタイプの2つに分かれる。前者は、いつも恋人がいるのに結婚しない男性でしょうか。彼らは冷静で、自分の商品価値をよくわかっている。だから、恋愛は別として、いざ結婚となると自分の人生設計を考慮し、相手を見つけようとしがちです。つまり、恋愛相手と結婚するとは限らない。後者は恋愛経験が乏しく、女性の扱いに慣れていない男性でしょうか。このタイプはエリート男性であっても、30歳を超えると「絶食系男子」になりやすい。身もフタもない話になるのですが、エリート層の男性が本当に結婚する気があるのなら、簡単に結婚相手を見つけられる現状がある。だから、エリート層の男性は、結婚が早いか遅いかに分かれてしまう。理想とされる男性の中で、「婚活」女性の求める人は本当に少ないのです。  また、上昇婚を望む女性は、エリート男性と恋愛をすれば結婚にまで到達できるという幻想が強いことも多い。女性誌に「男性にいかにして愛されるべきか」などの特集が組まれ、愛されさえすれば結婚できると流布されているのが顕著な例です。しかし、アジア人男性と国際結婚するなでしこ姫は、上昇婚を目指す女性とはタイプが異なる。なでしこ姫は「モテない女性だ」と考えている人が多いが、それは違う。なでしこ姫はどちらかというと恋愛経験が豊富で、恋愛が必ずしも結婚に結びつかないことに気づいてしまっている女性です。 ――モテる女性がアジア人を選んでいると? 開内 モテる女性は経験上、モテる男性が必ずしも結婚に向いているわけではないことを知っている。そんな彼女たちが海外へ行き、現地の男性と親しくなった時に、中国や東南アジアの男性というのは、「結婚を前提に付き合ってほしい」と声を掛けてくれることが多い。それまで、恋愛をしても結婚に至らなかった経験のある彼女たちは、「この人は少なくとも結婚はしてくれる」と思うのです。また、中国や東南アジアの男性は上昇志向が強く、リスクをとって這い上がってやろうという気持ちが強い。日本のエリート男性や絶食系といわれる男性のように、リスクヘッジばかりしているのとは正反対です。そこに魅力を感じるのかもしれません。 ――現地で暮らすとなると、アジアとはいえ、日本の両親や友人たちの元からは遠くなりますよね? 開内 社会学では世界の中核都市をグローバル・シティと呼んでいます。例えば、それは香港などです。香港などのグローバル・シティである限り、日本の地方へ行くより移動時間や移動費用などは現実的に抑えられるので、日本に住む両親にも孫の顔を見せられる。だから、結婚生活を維持することができる。また、彼女たちの父親というのは、先ほど話したような大企業勤めのサラリーマンではないことが多いです。そういった家庭環境で育った女性たちは、普通のサラリーマン家庭の保守的な価値観だけが正しいとは考えていない。だからこそ、国際結婚にチャレンジしやすい。また、国際結婚により日本では難しい仕事と家庭の両立を目指すことができる。 ――最近、研究者や技術者などの海外への頭脳流出が話題になっていますが、「なでしこ姫」という現象は頭脳流出、人材流出につながるのでしょうか? 開内 頭脳流出というよりは、国民流出だと思います。「なでしこ姫」はある程度の高い教育を受けている方が多いのですが、頭脳流出というのは、高度な技能を持ったエリートが国外で働くことを選択し、国内の技術が衰退してしまう問題を指します。なでしこ姫の問題はそれとは違う。彼女たちがもし中産階級の男性だったら、ある程度の企業で、ある程度の役割を果たし、日本の社会や経済を動かしていくであろう女性たちです。さらにいえば、日本で結婚していれば、将来、日本の社会や経済を動かしていく子どもを育てるであろう女性たちです。そういった意味で、日本の国力の衰退に関わる国民流出と考えるべきでしょう。 ――そのような日本社会の中核を担っていくような女性たちは、今後も国際結婚をし、海外へ移っていくのでしょうか? 開内 内閣府が行った「結婚・家族形成に関する調査」では、「結婚相手が外国人でも構わない」という質問に男性は28.4%が「YES」と答えたのに対し、女性では46.3%が「YES」と答えました。これを東京の大学で調査すると、約70%の女性が国際結婚に好意的です。また、海外生活を経験したことのあるようなグローバル化したエリート男性は、日本人女性を結婚相手として選ぶことが多く、非常に保守的な考え方の人が多い。ですから、彼らは身近にいるグローバルに活躍する「なでしこ姫」とは結婚しません。そう考えると、日本人女性の国際結婚は増えていくのではないでしょうか。 ――結婚難についての対策はありますか? 開内 本書で、私と山田先生は、ジェンダーに関する問題を「なでしこ姫」や「絶食系男子」というキャッチーなキーワードで読みやすく書きました。しかし、本書で書いたことは社会構造の問題であり、経済や社会保障の問題とも関わってきます。一番の問題となるのは、就職も結婚も難なく手にした「勝ち組」の男性の意識でしょうか。「勝ち組」の彼らはモテ格差も就職格差もジェンダー格差も他人事なので、シビアでいられる。彼らが自分とその仲間以外の問題を見ようとしないなら、日本の恋愛だけでなく、男性間の格差も構造も変わりません。ですが、そのような「勝ち組」の男性と結婚し、とりあえず社会保障として守ってもらうのが、日本人女性の生き方として、一番、リスクが少ないのかもしれません。 ――本書を、どんな人に読んでもらいたいでしょうか? 開内 バリキャリ系の女性を応援したい男性に読んでほしいです。そういう男性には大きな心で、自分の力でやっていきたいという女性を温かく見守ってほしいですね。 (構成=本多カツヒロ) ●ひらきうち・ふみの 一橋大学大学院言語社会研究科博士後期課程退学。現在、中央大学文学部兼任講師、フェリス女学院大学文学部非常勤講師。専門は家族社会学、ジェンダー理論、グローバリゼーション論。主な訳書に、C.コーワン&P.コーワン『カップルが親になるとき』(共訳、勁草書房)、Z.バウマン『幸福論――“生きづらい”時代の社会学』(共訳、作品社)がある。

「必死にやっていれば、奇跡は起こる」漫談家・コラアゲンはいごうまんの冴えたやり方

IMG_0129_.jpg  9月4日、コラアゲンはいごうまんにとって初めてのDVD『コラアゲンはいごうまん 実録・体験ノンフィクション漫談』がリリースされた。自分の体験したことだけをしゃべるという唯一無二のスタイルを築き上げた漫談の達人が、取材相手の心を開くための、とっておきの秘密を伝授する。 ――全国を飛び回って、現地でネタを見つけて漫談ライブをやっているそうですが、ネタ探しは大変じゃないですか? コラアゲン 大変ですよ~。ライブ前日にその町に行って、たった1日で次の日の前半30~40分の時間を埋めるしゃべりを考えないといけないですから。もう、恐怖ですよね。死ぬほど怖いです。 ――どうしてもネタが見つからないときに、切り抜けるためのコツみたいなものはありますか? コラアゲン 何個かはありますね。まあ、有事に備えて。ひとつは、交番に飛び込む。理屈としては「困ってる人を助けるのが交番やろ?」っていうことで(笑)。ライブのネタがなくて、本当に困ってるんでね。この前、北海道のむかわ町というところに行ったときも、名物が「ししゃも」しかないと。でも、ししゃもはもう去年行ったときに取材してたんです。それでどうしてもネタが見つからなくて、当日のギリギリまで動いていて。鬼気迫る状態で交番に飛び込んだんです。なんとかしてもらえませんかね、と。  門前払いでもおかしくないんですけど、そのときはホンマにいい警察官の方がいて、一緒に考えてくれたんですよ。「ちょっと待ってね、うーん、何かあったかな……」って。それで最後には「力及ばず、すいません」って謝ってきたんですよ。「今後は、パトロールするときにも、何か面白いものがないか探すようにします」って(笑)。そう言ってくれるだけで十分じゃないですか。そのことをしゃべれますから。交番にこんなにいい人がいるなんて、この町は最高ですね、って言ったら、やっぱりむかわの人も喜んでくれますやんか。  「これで十分です、今からがんばりますわ」って言って出ようとしたら、その人が「うーん……まあ、使う・使わないは別として、ひとつご提案があります。僕、のび太みたいな顔してますよね?」って。確かに、50代になってやつれた、老け込んだのび太くんみたいな顔をしてはるんですよ。「でも、こんな見た目なのに、僕の本名『高橋克典』っていうんです」って(笑)。これはめちゃくちゃ面白いじゃないですか。必死にやってると、そうやって奇跡が起こるんですよ。 ――コラアゲンさんは、そうやっていろんな人に体当たりで取材をされていますが、人の心を開く秘訣はありますか? コラアゲン 僕も、それがわからんのですよ。ただ、必死で真面目であるということが大事でしょうね。僕らはバカげたことをやってるわけじゃないですか。それだけに、行動だけで判断されないように、本気でこの人はこれをやろうとしてるって思われないといけない。そうするとやっぱり、いい人っているんですよね。 ――必死にやっていると、助けてくれる人が現れると。 コラアゲン まあ、必ずじゃないですけどね。ダメなときの方が多いんですけど。それでも、10回に1回でも助けてくれる人がいたら十分でしょう。僕は、こんな仕事をしてるけど、決して社交的でもないんですよ。初対面の人としゃべるのが、おっくうなんです。打ち解けるまでに時間がかかる。 ――今でもそうなんですか? コラアゲン 今でもそうです。だから、取材に行くときは、相手がヤクザとか宗教関係者とか関係なく、一般家庭の主婦の方に話を聞くだけでも死ぬほど震え上がるんですよ。「盛り上がるんだろうか?」「自分のことを受け入れてくれるだろうか?」とか、不安はいっぱいあります。ただ、社交的でもないし不器用なのに、がんばってそうじゃないように見せたいと思ってるときは、確実に失敗しますね。 ――よく見せようとすると、うまくいかない? コラアゲン 舞台もそうですけどね。笑いを取ろう取ろうとしすぎたり、感動させようとすると、絶対スベりますから。 ――そういう下心が、お客さんに伝わってしまうんですかね。 コラアゲン まあ、バレますよね。結局、良く見せようとしてる時点で、自分のことを考えてるってことですからね。相手を見てない。本当に相手だけを見ていたら、なりふりかまわなくなれますよね。でも、自分のここをこうしよう、こう見せよう、とか気にしている時点で、相手に向き合ってないですよね。そうするとたぶん話を聞き出すこともできないし、相手が警戒心を解くこともない。ある一定の距離を保った質疑応答しかできないですよ。そこで相手の人生に一瞬でも触れようと思ったら、なりふりかまわないで行くしかない。  僕は技術がないから、そうするしかないんですよ。まあ、ある程度は技術もこれから覚えていかなアカンと思うんですけどね。空気は読めないけど正直だとか、悪いことをしたら謝るとか、そこしかないですよ。そういうのを徹底していると、それだけで認めてくれる人もいる。どうしても、あなたに話を聞きたいんです!という覚悟を示すしかないですよね。 (取材・文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●テレビ出演情報 『うもれびと』CX <http://blog.fujitv.co.jp/umorebito/index.html> 放送日:9月5日(水)、12日(水)で2週連続放送 ゲスト:柴田理恵(ワハハ本舗)

「絶望の中の微かな希望」作者が語る『ウシジマくん』と『ドラえもん』の共通点

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(C) 2012真鍋昌平・小学館/映画『闇金ウシジマくん』製作委員会
 ヤミ金業者「カウカウファイナンス」のウシジマ社長を主人公に、欲望に堕ちてゆく人々を描くマンガ『闇金ウシジマくん』(小学館)。コミックスの売り上げは累計500万部を突破、山田孝之主演で映像化されたドラマ版は、深夜ながら高い視聴率を獲得した。  そして8月25日(土)、ウシジマくんが映画となって帰ってくる! ドラマ版を踏襲したキャスト陣に加え、映画版にはAKB48の大島優子が出演。この公開を記念して、日刊サイゾーでは原作者の真鍋昌平氏にインタビュー取材を敢行。顔出しNG、取材時間はわずか20分……。厳戒態勢の中、いま最も冷酷なマンガを執筆する真鍋氏を、固唾をのんで待ち受けた……。  「よろしくお願いしまーす」と入ってきた真鍋先生は、意外にも爽やかな好青年。物腰も柔らかく、笑顔もチャーミングだ。まさかこの人から『闇金ウシジマくん』のような冷酷な物語が生まれているとは、にわかに信じられない……。 ――とても爽やかな人柄に、びっくりしました。てっきり、もっとイカツイ人なのかと……。 真鍋昌平(以下、真鍋) 「こういうヤツが描いているのか……」と思われるのがあまり好きではないんで、顔は出さないようにしているんです。 ――ギャップがありすぎて、逆に好感度が上がりそうです。ところで、映画をご覧になった感想はいかがでしょうか? 真鍋 冒頭のシーンから、すごい作品だなと思いました。セレブたちのパーティーのシーンなのですが、金持ちのおじさんたちはTシャツ姿。彼らはいつも空調の効いた環境で生活をしているから半袖でいいんですよね。また、周囲に集まる女の子たちも、損得で考えるビッチな雰囲気を醸し出している。細部の美術に至るまで、スタッフのこだわりを感じました。こういった仕事は、スタッフ全体の熱量が上がらないと絶対に作れないですよね。 ――映画を見ながら「これはマンガじゃできない」と思う部分はありましたか? 真鍋 大島優子さん演じる鈴木未來が、街を駆け抜けるシーンがあるんですが、あの瞬間は映画ならではの疾走感を感じました。マンガでは、あの表現は難しいですね。
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――映像では、ウシジマ社長の部下である柄崎と加納という2人のキャラが1人に統合されていたり、ウシジマ社長に“野菜嫌い”の設定が加わっています。こういった映像オリジナルの設定については、どのように考えているのでしょうか? 真鍋 あまり気にならないですね。映像は監督の解釈で成立するものなので、問題はないと思います。僕が細部にこだわるというのは、登場人物がどんなスーパーでどんな物を買っているのか、といった部分。自分の中で、そのキャラクターが“存在している”と思えるように設定を作っているんです。原作とまったく同じように映像化してほしいと思っているわけではないので、別の設定が入っても全然構いません。 ――真鍋さんは『闇金ウシジマくん』を描くにあたっては、かなり綿密な取材を重ねているそうですね。
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真鍋 編集部から犯罪系のライターさんを紹介してもらい、さらにライターさんからソッチ系の方々を紹介してもらいながら、いろいろな話を聞き出しています。最新刊でテーマにしている生活保護の受給者にも、実際に会って話を聞いてきました。決してリアルだけを目指しているわけではないのですが、そのキャラクターや、彼らの考えていることに近づけたらと思って取材をしています。会って話したほうが、やっぱり情報量が多いんですよ。 ――実体験をエピソードとして盛り込むこともあるんですか? 真鍋さん自身も借金地獄に苦しめられていたとか……。 真鍋 マンガ家になる前は借金をしていましたが……。 ――えっ、ヤミ金ですか!? 真鍋 いえ(笑)、消費者金融です。マンガ賞に応募する作品を作るためにバイトを辞めて、生活費を借りたんです。賞が獲れなければ借金だけが残る状態だったんですが、無事受賞することができ、その賞金を持ってすぐにATMに行きました。 ――資料によれば、藤子・F・不二雄先生の作品に衝撃を受けたそうですね。世界観としては、藤子不二雄A先生のほうが近い気がしますが……。 真鍋 小学校の頃に、『ドラえもん』を読んで衝撃を受けたんです。未来からやってきたドラえもんが、毎回ひみつ道具でのび太の窮地を一時的に助けますが、必ず最後にはのび太はしっぺ返しを食らう。6巻の「さよならドラえもん」という回で一度エンディングを迎えるんですが、この回はのび太がドラえもんの道具に頼らず、自分の力で戦うというストーリーでした。そこまでの『ドラえもん』が大好きなんです。
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――お話を伺っていると、どことなく『ドラえもん』と『闇金ウシジマくん』が共通するお話のように思えてきます。 真鍋 『闇金ウシジマくん』も『ドラえもん』も「そんなうまい話はない」っていうことを描いているんじゃないかな。そこは共通しているかもしれませんね。 ――『闇金ウシジマくん』のストーリーは、よく「救いがない」と言われます。作者としては、どのような意図から、救いのないストーリーを描いているのでしょうか? 真鍋 まったく救いがないわけではないんです。毎回、ちょっとだけ希望を感じられるような終わり方をしている。登場するキャラクターが、この先もやっていけるんじゃないかという希望を感じさせるための最低限の救いはあります。“絶望の中の微かな希望”というイメージですね。 ――真鍋さんは、人間をどういう生き物だと捉えていますか? 真鍋 最初に『ウシジマくん』を描く時、葛藤している人間を描こうと思っていました。お金で葛藤している人々は、どこか生き生きとしているようにも見えたんです。それに、窮地に追いやられた時に人間の出す力は面白い。『ウシジマくん』では、そういった人間の面白い部分を描ければいいなと思っています。 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●まなべ・しょうへい 生年月日非公開。1993年『GOMES』主宰のマンガコンテストにて『ハトくん』がしりあがり寿賞を受賞しデビュー。グラフィックデザインのアルバイトを経て、1998年『憂鬱滑り台」でアフタヌーン四季賞の四季大賞を受賞し、再デビュー。2004年より「ビッグコミックスピリッツ』で『闇金ウシジマくん』を不定期連載、第56回(平成22年度)小学館漫画賞一般向け部門を受賞。 ●『闇金ウシジマくん』 監督:山口雅俊/脚本:福間正浩 山口雅俊/出演:山田孝之 大島優子 林遣都 崎本大海 やべきょうすけ 岡田義徳 ムロツヨシ 鈴之助 内田春菊 市原隼人 片瀬那奈 黒沢あすか 新井浩文/原作:真鍋昌平 『闇金ウシジマくん』(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中) /配給:S・D・P  8/25(土)新宿バルト9ほか 全国ロードショー 公式サイト <http://ymkn-ushijima-movie.com/> 公式Facebook <http://www.facebook.com/ymkn.ushijima.movie> 公式Twitter <https://twitter.com/#!/ushijima_movie>

【鳥居みゆき×小明】小説とDVDとゾンビ映画と白ブタと永遠の女子高生についてのパラグラム

torii_akari0001.jpg  小説『余った傘はありません』(幻冬舎)、巨匠・山岸伸によるファースト写真集撮影ドキュメントDVD『世界鳥居紀(奇)行 IN サイパン』(コンテンツリーグ)、続いて私もゾンビ役で出演させてもらった映画『ゾンビデオ』の公開も控えて絶好調の鳥居みゆきさん。鳥居さんには何回もインタビューさせていただいているし、今日も楽しみだなぁとのんきに扉を開けて元気に挨拶をすると、鳥居さんが「えっ……そんなにフランクにくる感じ?」「なんか、どんどんお金かけない服になってきてるね。一応アイドルなのに」と苦笑いで迎えてくれました。出鼻をくじかれ、とめどなく流れる冷や汗の中で取材スタートです。 小明 このたびは、小説やDVDが立て続けにリリース、そして映画『ゾンビデオ』の公開ももうすぐのようで……。 鳥居 『ゾンビデオ』っていつ公開なの? ℃-uteと一緒に完成披露試写会をやったけど、それもけっこう前なのよ。 小明 それ観に行きましたけど、確か去年の夏でしたよね。公開は今年の春か夏って言ってた気がするんですけど……。 鳥居 夏きちゃったよ! 小明 完成から一年たちますね。鳥居さん、ほぼ主演だったのに。 鳥居 違うよ、主演は℃-uteだよ。みゆきは小明ちゃんと一緒だよ。 小明 私、素顔が一瞬しか映らないゾンビですよ(笑)。ずっと白目のコンタクトレンズで角膜が剥がれるかと思いました。 鳥居 それはそれでいいと思う(興味なさそうに)。 小明 DVD『世界鳥居紀(奇)行 in サイパン』では、海に沈んだり溺れたりとひどい目に遭いすぎて、ゾンビのようになってましたね。あんなに素顔でゾンビっぽくなれる人、他にいないですよ。 鳥居 そんなシーンないよ(きっぱり)。でも本当クソッタレだよ。だって、あんなの、やる予定じゃなかったんだよ。なのにコンテンツリーグさんが宣伝を勝手に進めちゃってさ、そこに「アクティビティに挑戦!」って書いてあってさ。 torii_akari0002.jpg 小明 「アクティビティ」って、また大ざっぱですよね(笑)。具体的に何をやるのか、ちょっとピンとこないですし。 鳥居 どうせ、アクティブな人間がラウンドワンとかでやるようなことでしょ? 宣伝に載っちゃったんなら、やるしかないでしょ。恐ろしいよ、コンテンツリーグ。 小明 前作の『世界鳥居紀(奇)行 in タイ』は、まだ鳥居さんも楽しんでいる感じがしましたけども、今回のは逃げ場なしといった感じで。 鳥居 タイは一応、楽しかった。今回は、楽しめないってことが最初からわかってたから。なんか、カメラが好きなカメラ小僧のおじさんがついてくるっていうし。 小明 山岸伸さんは巨匠ですよ! 山岸さんの撮影はどうでした? 鳥居 汗すげぇかくなぁって思った(笑)。汗かくのに痩せない人っているよね(笑)。 小明 写真の方はさすがにきれいに写ってましたね。 鳥居 ね。あの人、カメラ小僧のわりに意外とうまいよね? 小明 だから巨匠なんですよ! グラビア撮影はどうでしたか? 鳥居 私、毛がないんで、どこが出てもかまわないんですけど、肌が嫌なの。 小明 あの、ほとんど外に出てない感じの肌の質感に親近感が湧きました。 鳥居 バレた? 引きこもってる感あった? 外嫌い(笑)。 小明 でも、今の時代にグラビアでサイパンなんてすごいんですよ。篠崎愛さんとか吉木りささんじゃないと、連れて行ってもらえないんじゃないですかね。 鳥居 ……吉木りさちゃんに似てるよね。言われない? 小明 すごく疲れているときの吉木さんと、すごく調子がいいときの私がたまに似てるって言われます。 鳥居 そういうことだよね。イルカとクジラの境界線みたいなもんでさ。デカさで分けてんじゃん、あれ。それと同じで、めっちゃ疲れさせたら、吉木さんのグレードが下がるから、そのときに小明ちゃんがめっちゃ頑張れば、ギリ。境はあるんだけどね、確実に。 小明 そうなんですよね。境は確実にあるので、並べられたくはないなって思います。吉木さんは自分が勝っているのが本能でわかってるから、似てるって言われてるのを耳にしても「小明さんと絡みたい(笑)」とか言ってくれてるんですよ。でもこっちとしては、それってそうとうキツイんですよ。 鳥居 それは余裕がある人の発言だよね。ドジョウとウナギの差だもんね。ドブだもんね、小明ちゃん。 小明 ドブ……? えっと、DVDの話に戻りますが、海では奇声を上げたり地べたを這い回ったり、けっこうなはしゃぎっぷりで、さぞかし体を傷めたことだと思います。 鳥居 大丈夫、血がちょっと出るぐらいしか。 小明 あ、ちょっと跡が残ってる! っていうか、なんか傷だらけ! 鳥居 そう。毎日、毎日、傷ができるよ。ここも城咲仁のせいでパックリいっちゃうしさ。本の宣伝しようとしたら城咲仁が「おい、今、宣伝するなよ」っておどけてきて、その時に紙で皮膚がやられて城咲仁に「ジーンってやっちゃった」ってナチュラルダジャレ言っちゃって「ああああああ」ってなって……(赤面)! 本当にナチュラルダジャレほど恥ずかしいものはないよ。血も出たし、ちょう痛かった。映像も全然繋がらないし、ぜんぶ仁のせいです。(「実際は血なんて全然出てませんよ」担当マネージャー談) torii_akari0003.jpg 小明 流血といえば、小説で、そっくりな双子が似ていないところを作ろうとリストカットする場面はジーンときました。 鳥居 本当に? 私、全然きてないよジーンと。『余った傘はありません』ってタイトルは、どう取る? 小明 読みはじめは双子が憎み合って「お前にやる傘なんてねぇよ」みたいな意味かと思ってましたけど、ラストまで読んだら違いました。意外とあたたかかったです。 鳥居 よかった、わかってくれて。私が思う『余った傘はありません』っていうのは、例えば、好きな人がいて、私だけが傘を持っている時に「一緒に入ろう」って言えない、ちょっとした心の歪みというか……私が人に対して素直になれない部分が込められています。 小明 やっぱり、ご自分がモデルになった話も多いんですか? 鳥居 なんかね、エッセイって自分を良いように書いちゃうけど、実は小説の方が自分が出ちゃうんだって。 小明 自分が考えていることを整理できて、セラピーにもなるって聞きますよね。小説の中で双子が互いに比べ合って、劣等感から「いい子でいなくちゃ」って追い詰められていく感じはよくわかります。鳥居さんも、お姉さんがいらっしゃいますよね。 鳥居 私、超デブだったの。おねぇは、変わらずキレイなままなの。読者モデルとかいろいろやってて。 小明 読者モデル! それって一番いいやつですよね。あえて女子アナを狙わない、欲のない美しさ。 鳥居 そう! そうなの! 一番モテるもん。そこと比較されて、白ブタって呼ばれてたから、私。 小明 白ブタ(笑)! 奇遇ですね、私もギャルの姉にガンハクトン(意味:顔が白い豚)って呼ばれてました! いつ、お痩せになったんですか? 鳥居 中2になって、背がいきなり伸びて、ちょうどいい感じになりました。よかったー。 小明 いい感じになっても、内面には比べてられていた時期の自分が根付いているから……。 鳥居 そう、暗いんですよね、結局は。すごい暗かったし、髪もどっちが前かわからないビッグフットみたいな感じで、人と目を合わせなくてもいいようにしてました。 小明 未確認動物状態だと、卒業アルバムもつらい感じになりそう。 鳥居 卒アルの集合写真って、目立っている人を重点的に良くしようとしてない? ずるいよね! 私、ひとりだけすげぇブレてるんだもん。あれ、ヒドイよ。でも、写真の上にひとりで載るやつも憧れる。 小明 私、昔それを狙って集合写真の日に学校休んだんですけど、上に別個で掲載もなくて、普通にクラスに存在しない人になってて悲しかったです。 鳥居 それはそれでいいね! ……ねぇ、あれって死んだら白黒? 小明 ひとりだけ白黒の黒縁にされても暗い気持ちになりますし、普通じゃないですか? っていうか、その枠には憧れちゃダメですよ! もう大人なんですから! 鳥居 でもね、私、高校生のとき、何があっても毎日学校行ってたの。で、卒業式だけ行かなかったの。だからね、私、永遠の女子高生なの。まだ、卒業証書もらってないの。すごくない? 「取りに来て」って言われたんだけど、まだ行ってないから、まだ女子高生のままなの。すごくない? 永遠のJK。 torii_akari0004.jpg 小明 ……。小説は、どれぐらいの期間で書かれたんですか? 鳥居 1年くらい幻冬舎で連載してたの。毎月書いてるから、全然繋がってなくて(笑)。いろいろ直して、量も増やして、タイトルも変えたって感じ。前は『4月1日』ってタイトルだったんだけど、「なんか違うな」って思って。「なんだそれ」って。「バカじゃねぇの?」「クソだな」って。 小明 そこまで思わなくても。最後はそれぞれの人生が交差して、ちゃんと繋がってましたよ。泣ける話もあって……。 鳥居 泣ける話あった? ひとつも泣いてないよ。『乾杯』が評判いいんですけど、女の子がすごい「感動した」とか言って、ホロッときてる感を出して、純粋な女の子と思われようとしてるんですよ(笑)。バカだな(笑)。 小明 自分で書いておいて見下すって、もう意味わかんないですよ! 鳥居 ひねくれてるの! あと、わかりづらいよね。『←ラブレター』には、ちょっとした仕掛けがあるのよ。親切心のやじるしがついてるでしょ。 《一部抜粋》 すみません、初めてお手紙を書きます。 きのう駅であなたに財布を拾ってもらった者です。 できたらお礼がしたいのです。 すごく嬉しかったものですから、連絡ください。 小明 わ! 気づかなかった! この章ぜんぶ縦読みじゃないですか! 意味も本文と交差してるんだ、わー!! 鳥居 気づいても気づかなくても楽しめる作品。 小明 テクニカル! お互いに劣等感を持った双子の姉妹を軸に、登場人物のねじれた恋愛模様や心の闇がいくつも交差して、最後はあたたかい気持ちになる、これかなり良い小説ですよね。 鳥居 大人になったからこそわかる余裕みたいな、そういう感じのお話にしました。ふふふ。 小明 たくさん重版がかかりますように! この本は、どんな人に読んでもらいたいですか? 鳥居 子どもから大人まで幅広く読んで欲しいですね(棒読み)。 小明 子ども、歪むなぁー! 鳥居 じゃあ、(村上)春樹に飽きた人とか東野圭吾に飽きた人が読めばいいよ。 torii_akari0006.jpg 小明 投げやり! 個人的には、愛情表現が下手でこじれちゃった人には、きっとハマると思いますよ! 最近は舞台もやられていますし、次の単独もありますし、ずいぶんお忙しそうですね。単独のネタはもう固まりましたか? 鳥居 固まってはきてて、どういう組み立てにしたらいいか考えている。無意義と有意義をプラマイゼロにしたい感じ。メッセージ性ってさ、強く長く出すとダサいじゃん。 小明 努力、希望、仲間、絆、生きていく意味、みたいな? ひねくれた性格だと、メッセージ性が強いと引いちゃいますしね。 鳥居 そうそう。今、舞台の稽古をやってるんですよ。人が書いた本ってものにもまだ馴染めないし、今、けっこうストレス抱えてる。 小明 稽古って時間もかかるし、ギャラも出ないし、知らない人との団結を求められて……よほど好きじゃないと胃にきますよね。 鳥居 そう、「このカンパニーで~」とか言いだすのよ? 最近の劇団は。寒気するわーって思って。 小明 カンパニー? ベビースター? 鳥居 おやつカンパニー以外で聞かないよね? だから、「私、劇団員じゃなくてビジネスなんで。そういうノリじゃないんで」ってハッキリ言いました。そしたら、若い、初めて舞台に出る女の子とかが、「劇団員じゃないけど、みんなでカンパニーとして、仲良くなっていきたくて、前向きにぃ……」とか言いだして、さっきのは全否定かいと思って。(※ちなみに舞台は大好評で幕を閉じたそうです) 小明 うわー、DVDのアクティビティもそうですけど、ストレスになるのが分かってる仕事の前の晩はつらいですよねぇ。 鳥居 あぁ、それは昨日のことだな。 小明 ……もしかして、ちょっと飽きてきてますか? 鳥居 気づいていると思うけど、ちょっとじゃないよ。 小明 わー、どうもありがとうございました!  好きな人に「一緒に入ろう」が言えなくて「余った傘はありません」と突き放す鳥居さんですから、この私とのやりとりの中にも、きっとどこかに不器用な愛が隠れているはず……と一生懸命さがしてみましたが、特には見付からなかったので、本当に早く帰りたかったんだと思います。単独ライブも、昨年秋から一切情報が更新されない『ゾンビデオ』も楽しみですね! (取材・構成=小明) ●とりい・みゆき 1981年、秋田県生まれ。07年頃から、白いパジャマでテディベアを抱えた「マサコ」キャラでブレイク。以降、テレビ、映画、ラジオ、出版など幅広い活動を続けている。近著『余った傘はありません』(幻冬舎)発売中。DVD『世界鳥居紀(奇)行 IN サイパン』(コンテンツリーグ)は8月22日発売。映画『ゾンビデオ』(http://www.zomvideo.com/)年内公開予定。 鳥居みゆき 単独ライブ 狂宴封鎖的世界「方舟」 9月27日(木)~9月30日(日) 全6回公演 【場所】草月ホール(住所:東京都港区赤坂7-2-21) 【チケット発売情報】8月18日(土) CNプレイガイドにて午前10:00発売!

リアル・マカオ・ノワールの衝撃作『ルーレットシティ』がついに日本上陸!

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 今週末より、全国順次劇場公開される衝撃作『ルーレットシティ』。2010年のシンガポール国際映画祭、マカオ国際映画祭で注目を浴びた衝撃作だ。  監督、脚本を手掛けるのは、中国や香港のテレビドラマ、映画などで活躍するシンガポール出身の若手俳優、トーマス・リム。第一回監督作品にもかかわらず、監督・脚本・主演という離れ業を演じ、さらに全編マカオ・ロケで製作されたもの。しかも、アジア圏の国際映画祭で続々と招待上映も決まっているばかりか、その勢いに乗ってシンガポール国内では早くも劇場公開を果たし、スマッシュ・ヒットを記録しているというから、目を見張るものがある。日本公開にあたって、来日したリム監督に話を聞いた。  日頃のトーマス監督は、作品とは対照的に物静かで穏やかな人物だ。やはり気になるのは、全編をマカオでロケしたということ。対岸の香港は映画の都として知られるが、マカオで映画と聞いてピンと来るものがないのは、筆者だけではないだろう。  リム監督によれば、基本的にマカオには映画業界というものがないという。 「たまに香港のジョニー・トー監督がマカオで撮影する映画などはありますが、私が知る限り、ここ5~6年の間にマカオで製作された劇場長編映画は、この『ルーレットシティ』だけです」  そんなマカオに日本人が抱くイメージといえば、本作のテーマにもなっているカジノ。シンガポール出身であるリム監督にとっても、やはり魅力ある題材だったのだろうか? 「マカオのカジノ業界が収益的にピークを迎えたのは2007年なのですが、たくさんの中国人が国境を越えてマカオにやってきました。それと同時に、カジノをめぐるさまざまな事件が起き、私もこの問題に非常に興味を持ち、取材をしたんです」  このように本作の第一の魅力は、日本と同じ東アジアに位置しながら、あまり情報の入ってこないマカオの、今まさに起こっている出来事を題材にしていることにある。しかも、テーマの魅力だけでなく、ストーリーも、とても第一回監督作品とは思えないほど練られている。いったい、どのような過程を経て、本作を完成に導いたのだろうか? 「私は俳優から映画監督になるために、ラブストーリー作品の脚本を書こうと決めていました。中国人の男とマカオの女がカジノをめぐってトラブルに巻き込まれる、というストーリーを考えたわけですが、この映画の男女のラブストーリーは、ある種の暗喩だと考えています。つまり、一攫千金を夢見て大陸から来た男・タクと、マカオに住み、カジノで働くことで高収入を得ている女・アマンダというキャラクターは、同じ中国人でありながらマカオでは違う存在なのです。マカオで実際に取材した要素をラブストーリーにプラスすることで、このラブストーリー自体がカジノにおける中国人同士のギャップを象徴するものになったと思います。それを脚本として書くために1年近くかかりました」  リム監督は俳優業の傍ら、映像編集や映画監督としての勉強を重ねてきた来歴の持ち主。今回の作品も脚本執筆に1年を要したばかりか、撮影準備に入ったのは2008年から。そして2009年にようやくクランクイン。本人も「危険だった」と語るマカオ・ロケを経て、自ら編集してなんとか完成させることができたという。  2010年のシンガポール国際映画祭とマカオ国際映画祭で初上映され、劇場公開も果たせて幸運だったと笑顔で語るリム監督だが、演技力も目を見張る。主人公のタクを演じている時の鬼気迫る緊張感は素晴らしい。叔父のワイを演じた香港演劇界のベテラン俳優であるキュー・ポウチョンとの激しい競演シーンは特におすすめだ。一方で、後半になるにつれてさまざまな駆け引きに対処する際のポーカーフェイスも実にサマになっているなど、柔軟な演技力の持ち主なのである。  本作にはミス・マカオ出身のエニー・ロイ、香港の演劇・映画で活躍するジョセフィン・チャイなどの女優陣のほか、アジア映画界で勝負する個性派俳優たちが数多く出演している。ルーレット、カジノ、ギャンブル等々、日本人の日常生活からは見事にかけ離れたイメージで全編構成されるノワール的な無常観を、監督であるトーマス・リムがマカオの深い闇へと身を投じ、リアリティー満点に描写する傑作なのは、間違いないだろう。  なお、『ポチの告白』『GOTH』の監督・高橋玄が、本作の日本語字幕の翻訳監修を手掛けている。 『ルーレットシティ』 監督:トーマス・リム(林毅煒) 出演:トーマス・リム キュウ・ポウチョン ジョセンフィン・チャイ チョン・ユーシン エニー・ロイ 2011年製作/上映時間76分 2012年8月11日(土)より、新宿バルト9にて東京公開 その後、梅田ブルク7、横浜ブルク13、T・ジョイ京都、T・ジョイ博多にて順次劇場公開 <作品のご紹介 & 劇場情報> KINEZO PREMIERE 公式HP http://premiere.kinezo.jp/lineup/movie5.html