「日本中を僕らの楽屋に」新生レイザーラモンが語る、プロレス愛が支えた漫才師への道

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撮影=後藤秀二
 誰がセンターマイクを挟んで立つ二人を予測しただろうか。「THE MANZAI」決勝進出で漫才師としての姿を強く印象づけたレイザーラモン。コンビとして誰よりも激しい紆余曲折を味わった二人はなぜ漫才にたどり着き、そしてどんな未来を見据えているのか。ルミネ終わりの二人を直撃し、新生レイザーラモンの決意表明を聞いた。 ――2年連続認定漫才師、そして2013年は決勝進出。「THE MANZAI」の前と後では、環境もだいぶ変わりましたか? RG まず、ネタをまったくやってなかったですね、2年前は。 HG あるある言う、ハードゲイやる、みたいな。コンビながら、ピンが二人おるという感じでやってましたね。 RG 認定漫才師になってから、ネタで笑いを取るというのが少しずつできてきまして。 HG 関西の漫才番組に呼ばれるようになったんです。17年やってきて初めてですよ。 RG やっと普通の芸人活動ができているという感じですかね。 ――「THE MANZAI」の時は、レイザーラモンさんの愛され感が視聴者にも伝わってきました。 RG それは、レイザーラモンが特殊な生い立ちをしていることにほかなりません。まずHGがバーンといって、俺が完全に置いていかれて、その後、HGがプロレスで大けがして……コンビとして「かわいそう」が、一つのキーワードになっていますから。 HG だから諸先輩方が助けたがるというか、なんとかコイツらを面白くしてやろうと。いつも助け舟を出してくれるんです。 RG 前に出ることをやめなかったっていうのは、あるのかもしれないですね。 HG コンビで一人がドーンてなったら、たいがい仲悪くなるか、そのまま解散してしまうかなんですね。しかしRGさんは、ブレイクしたHGをパクるというとんでもないことをしだした。それから「あるある」ですよ。お笑いのセオリーとはまったく別なやり方で、ここまできました。 ――それも、すべてお二人の頭にあったストーリーなのかなって思うくらい、自然です。 HG プロレス的ではありますね。 RG たとえば猪木さんは「スキャンダルを飯にしろ」ってことをよくおっしゃてまして、猪木VSモハメド・アリ戦ですごい借金を背負っても、逆にそれを売りにしてましたから。転んでも、ただでは起きない。プロレス好きが、HGをパクってる僕を見て「敵が出てきた!」みたいな感じで受け入れてくれたんですね。 HG ベビー(善玉)とヒール(悪役)。 RG 常にそれは僕らの中にある。だから漫才をやろうってなった時も、「解散するかも」と打ち出しておいて、自分たちを追い込んで、お客さんには乗っかってもらった。プロレス的な運びを意識しました。 ――二人の立場や関係性がどんどん変わって目が離せなくて、最終的には応援している。 RG その辺が、僕らが“ハッスルイズム”を継いでいるところだと思うんですけど、記者会見でも旬な人の話題を出して紙面を獲りにいくみたいなことを毎回やってて。話題になりたい。紙面を飾りたい。それが、ハッスルイズムです。 ――プロレスだったらリング、漫才だったら舞台、どちらも「神聖な場」というイメージがありますが、それぞれのガチなファンから中傷されることはなかったですか? HG 正直、プロレスファンの中には、当初「なんやお前ら」っていう空気がありましたけど、僕らとにかくプロレスが好きで真剣に練習して試合して、RGもやられキャラで頑張って、そうやってるうちに少しずつ認められていった感じがしますね。天龍さんも、ある時を境に「頑張ってるな」って話しかけてくれるようになりましたし。 RG どの世界でも、真面目にやってるのが分かれば、受け入れてもらえると思います。僕らも、これは漫才じゃないとか言われたり、HGが素顔で出てザワザワしたままネタに入れないこともあったんですけど、2年かけて、メディアも巻き込んで「俺たちは漫才に真剣です」って訴えて。一時は「ザ・漫才うけ太わろ太」に改名しようとまでしました。だから「THE  MANZAI」の決勝後に「やっぱりあれ漫才じゃない」って言われたの、悔しかったですもん。 _MG_8911.jpg HG 今年は、漫才協会の門を叩こうかという話も。 ――本当ですか!? RG 今はまだ吉本というホームでしかやってないので、ふらっと遊びに来た浅草のお客さんを笑わせることができるか挑戦したいですね。 ――では、ナイツがライバル? RG ライバルというより、憧れです。ナイツは今年のお正月の漫才番組で、もう紅白のネタをやっていたんですよ! なんてカッコいいんだ! HG 芸風からは、まったく想像できない発言ですね(笑)。最近のRGさんは漫才にアツすぎて、完全にキャラを見失ってます。 RG 去年「頑張れば、もしかしたら『THE MANZAI』の決勝行けるかも」って思った出来事があったんです。営業で中川家さんと一緒になりまして、その時に「あの雅楽のネタおもろいな」って言ってくれたんですよ。決勝まで頑張ってみようと思ったのは、その一言があったからかもしれません。 ――漫才への真剣な気持ちが、どんどん周囲を巻き込んでいったんですね。 RG これもまたプロレス的なんですけど、“新日本プロレスと東スポ”ならぬ“レイザーラモンと「お笑いナタリー」”という形でご協力いただきまして。僕らなんかに力を入れてもらって、申し訳ない限りですが。パンサーを特集したほうが、リツイート数は上がるというのに。 HG だから、僕の裸の写真(※ゲイ雑誌「バディ」2014年2月号表紙)入りの記事をナタリーさんで配信して、過去最高のリツイート数を記録したと。そこで恩返しをさせていただいて。 RG 周りを巻き込むというのは、怒られない空間を広げていくっていうことなんですね。楽屋でウケている感じを、ずっと広げていければと思っています。究極的には、日本全国が僕らの楽屋になればいい。楽屋だったら怒られないから。 ――すごい。そのままタイトルになりそうです(笑)。 RG 「日本を楽屋に」ですよ。 HG ンフフ。 RG プロ意識の欠如と言われれば、それまでですが(笑)。 ――でも間違いなく、2013年の「THE MANZAI」はレイザーラモンさんが持っていってしまったと思います。 HG いやいやいや……相方がトップバッターなんか取るから。 RG どうせあそこは空きますし。みんなが嫌がることを僕らがやることによって、大会自体が盛り上がればいいんですよ。結果、ゼロ票ということになりましたが。 HG 自分らの試合よりも興行を盛り上げたいという、プロレス的な考え方はあるかもしれませんね。 ――でも、ゼロ票だったことは悔しかったと? RG その時、初めて思いました。それまでは盛り上がれとか騒がしくしてやれとか考えていたのに、あそこで0点になって「あぁ負けたんや」と。 HG 意外でしたね。普段何やっても落ち込まない、反省しない男でおなじみのRGが。 RG ほかの人とはまったく違う漫才をしたと思っていたのに、「漫才じゃない」って言われて。でも、帰って番組の録画見たら「そりゃそやろな」って(笑)。 HG 愛のあるイジり方をしてくださったんですよ。 _MG_8914.jpg ――レイザーラモンさんにとって、お笑いのゴールはどこですか? RG それはいっぱいありますね。「THE MANZAI」のゴールがあって、そこをゴールしたらまた別のゴールがあって。武藤(敬司)さんが言っていたのは「プロレスはゴールのないマラソンだ」と。 HG 毎回、こうすればよかった、ああすればよかったが見つかる。年を取ったら取ったなりの漫才ができますし。 ――正解がないと。 RG オール巨人師匠に「漫才という大変な道にきてくれて、ありがとな」って言われた時、すごいところに足を踏み入れたんやなと思いました。 ――漫才という大変な挑戦を支えたのは、お二人のコンビとしての絆の深さだと思うのですが、特にレイザーラモンさんはピンとして片方がブレイクしたり、複雑な関係を強いられてきたと思います。でも「レイザーラモン」で居続けた、その理由はなんですか? RG やっぱりバッファロー吾郎軍団にいたことが大きかったですね。バッファロー吾郎さんにケンコバさんに小薮(千豊)さん……軍団の皆さんが僕らをかわいがってくれて、新キャラができたら先輩方のイベントに出してもらって。全然完成してないのに(笑)。僕らコンビだけでいて、どちらかが売れたら「なんやアイツ」となっていたかもしれません。だけど、僕らの周りにはいつも兄さんたちがいて、そんな兄さんたちに「なんだ、アイツ器ちっちぇえな」と思われたくなかった(笑)。 ――それで、今度はRGさんが、あるあるでブレイクして。 RG よく言われるのは、僕のあるあるネタを一番笑ってるのはHGやって。年末にHGが(EXILE弟分のGENERATIONS)関口メンディーさんのモノマネをした時も、やっぱり僕が一番笑ってた。お互いが一番笑うから自信を持っちゃう。日本全国楽屋なんですけど、その核というか、始まりは相方を笑わすことなんですよ。 HG めっちゃかっこいいこと言ってる(笑)。 RG コントでも、お互いが知らない設定を持ち込むことはない。お互いの共通体験、お互いが知ってる変な人……それを必ず題材にしてますから。 HG あるあるの選曲もバツグンなんですよ。渡辺美里とか佐野元春とかチューブとか、ほんまちょうどいい。 ――こんなにお互い目を合わせて話す芸人さんも、珍しいと思います。 HG 漫才師あるあるなんですけど、コンビで目も合わさへん、楽屋も別々っていう時期を経て、めっちゃ仲が良くなるっていう。僕らは、それをぎゅっとした感じだと思います。もちろん目合わさん時期もありましたけど、今は誰よりも相方を笑わせたい。 ――今年は、テレビにはどのようにアプローチされますか? 今バラエティはネタよりトーク力が優先されていますよね。 RG トーク力って、実は誰でも持ってるんですよ。だけど、緊張感が先に立ってしまうと発揮できなくなってしまう。僕らも相方と普通にしゃべる感じでテレビに出られたら、トークも面白くなると思うのですが(笑)。昔、吉本新喜劇座長の川畑(泰史)さんに「テレビはご褒美や」って言われたことがありまして。 HG 大阪時代なんて、テレビ出られるて言ったら、みんなに触れ回ったもんな。 RG DonDokoDonの山口(智充)さんなんか毎月ライブやって新ネタおろして、そのほんの一部がテレビで出てる。千原兄弟さんもそうです。だからテレビがどうのというより、「漫才でお客さんを笑わす」「楽屋で皆さんを笑わす」をちゃんとやっていれば、そのご褒美でテレビに出られると僕は思ってます。 HG 僕はまだまだ緊張してるし、肩に力が入っちゃう。それまでキャラに乗っかってやってきましたからね。銀行強盗が目出し帽を脱いだ状態なので、今は。 IMG_9005.jpg ――RGさんのハートの強さを見習いたいと? HG RGはハートが強いってよく言われますけど、僕はそんなに簡単な言葉じゃないような気がします。よく凹んだりもしますしね。 RG 僕は過保護に育てられてるだけ。前に出ないと先輩方に怒られると思ってるから、新キャラをとにかくやる、隙があったらあるあるを歌う。逆に言うと、ガラスのハートなんです。皆さんと、ちょっと意識が違うだけです。 HG 普通、ネタを思いついたら、自分の中で一旦消化しようとするじゃないですか。このキャラやったらどうなんねん、こっからどうオトしていくねんとか。それを考えずに思い付いたことをやるの、スゴイですよ。 ――今まで誰も通ったことのない道を進んできたお二人ですが、これからお笑い界で成し遂げたいことはなんでしょうか? RG お笑い芸人って、ミュージシャンや俳優から比べると、世間から若干下に見られてるじゃないですか。僕らのほうが偉いんだっていうことではないんですけど、僕は芸人さんが一番すごいと思ってるので、もっと正当に見てもらえないかなとは思っていますね。 HG 昔よりは、だいぶ評価されているとは思いますけど。 RG 一回テレビでやったネタが次からウケなくなるとか、すごい儚いモノなんですよ、漫才って。ノンスタイルだって、M-1取った時のネタをまだ一回もやってない。巨人師匠が言ってた「大変な世界」っていうのは、そういうこともあると思います。 ――何年もかけて磨いてきたものが、一瞬で消費されてしまう。 RG これが歌なら、その後もずっと残るじゃないですか。漫才やコントに関しても、そういう文化になれば。庶民の余興から始まって、徐々に伝統芸能になった歌舞伎のように、漫才にも革命が起きればいいと思うんです。芸術になっちゃいけないけど、格は上げたいと思います。 HG それを、市川AB蔵が言うという(笑)。 (取材・文=西澤千央)

「目指すは、男版・きゃりーぱみゅぱみゅ!?」JKに大人気“ガガ系高校生”けみおって?

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平成生まれの新人類・けみおくん。
 みなさんは「けみお」ってご存じでしょうか? おそらく「日刊サイゾー」のメイン読者層(おっさん)にはまったく知られていないと思いますが、実はこのけみおくん、ネットで今一番ホットな男子高校生といわれていて、女子高生の間ではメチャクチャ人気なんだとか。  面白動画をネットに上げ続け、Twitterのフォロワーはなんと37万人以上! そのほとんどがJKで、“けみおシスターズ”なんて呼ばれているというのだからあやかりたい……!?  そんなにJKの心をガッチリつかんでしまう動画、どんなもんなのかと見てみても、おじさんにはちょっと分からないなぁ~……。最近では、『めざましテレビ』(フジテレビ系)や『ZIP!』(日本テレビ系)でも紹介されたらしい(おまけに『オールナイトニッポン』にもMCとしてなぜか出演!)が、そんな、まさに新人類(長州力という意味ではなく)というべき「けみお」くんに、JKのハートをゲットしたいおっさんがインタビューしてきました。 ――えっと、けみおくんはいろんな活動をしてますけど、知らない人たちには、なんの人だと説明すればいいんですか? 「原宿系ファッション誌『HR』の専属モデル、というのがメインですかね。でも、最終的には(レディー)ガガ様のようなスーパースターになりたいんです!! モデルとかテレビに出たり……というのも、そのゴールに向けての一環ですから!」 ――ジャンルは問わず、とにかく有名になりたい……と。ネットでの活動で、一気に話題となったわけですが。 「6秒動画の『Vine』というアプリで面白動画を作っていたら、大ヒットしました。そのアプリ、海外ではメチャクチャはやってるんですけど、日本ではあんまり普及してなくて。海外には面白い動画を作っている人たちがいっぱいいるんで、それをマネして学校で友達が話しているネタとかを6秒にまとめてみたら、リツイートされまくったんです」
――Vineを始める前と比べて、Twitterのフォロワー数も全然変わったんじゃないですか? 「動画を上げ始めたのが去年の10月くらいなんですが、それ以前は6,000人くらいでしたからね。1カ月で11万人になって、今では37万人になっています。10本くらい上げたころから反応が変わってきたな……と感じましたね」 ――一気に話題になったという感じなんですね。動画にするネタは、どうやって考えてるんですか? 「“あるある”ネタが多いんで、あまり真剣にネタを考えて……という感じでもないんですよ。学校であった面白いこととか、感じたことなんかを、6秒にまとめるという感じですね。撮り直しても3回くらいで、わりとパッパッと撮れちゃいます」 ――学校であった面白いことを紹介するにしても、YouTube、ニコニコ動画みたいなところでダラダラしゃべる……というやり方もあったと思いますが、やっぱり6秒でまとめたほうが面白いんですかね?
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「HR」では特集ページが設けられるほど人気急上昇中。
「Vineって、6秒の動画しか作れないので、無限にループするんですよ。動画を見てくれている人たちに話を聞いたら、同じ動画を3回くらいループして見ているとツボにハマるらしいです」 ――動画は基本的に自宅の部屋で撮っているみたいですけど、親御さんはどう思ってるんですか? 「以前はよく怒られてました。一人で部屋にこもって騒いで撮影して……何をやってるか全然分からないから。しかも、顔に落書きしたまま部屋から出てきたりしてたんで(笑)」 ――息子が一人で部屋で騒いで、顔に落書きまでしてたら、完全にどーかしちゃったと思いますよ! 「まあ、テレビに出てからは応援してくれてますけどね」 ――やっぱり親世代にとって、テレビっていうのはデカいんですね。動画は、人前よりも、一人のほうが撮りやすいんですか? 「人が見ているところでも、やれないことはないんですけど……心の整理が必要ですね。一人のほうが恥を捨てられるんで!」 ――でも、その動画を世界中に配信するのは大丈夫、っていうのは面白いですね。 「それが若者のパワーなんだと思います! ほかの高校生たちも、わりとみんな自分の部屋で撮ってますから」 ――それじゃ、今後の野望は? 「やっぱりテレビの世界に挑戦してみたいです。今はまだ、高校生くらいの人にしか知られていないから、もっといろんな世代の人に知ってもらえたらいいなと。(きゃりー)ぱみゅぱみゅちゃんみたいな!」 ――きゃりーさんも、「HR」のモデル出身なんですよね。ちなみに、テレビに出てこれがやりたい……みたいなのってありますか? 「幅広く、なんでもやりたいです。クイズに間違えると水に落とされちゃう……みたいなバラエティにも出たいですし、音楽的なこともやってみたいです。とにかく新種の人間として認識されたいです。『けみお』っていう新たなジャンルを作りたいですね!」 ――そういえば今度、奥田民生さんプロデュースでCDが出るんですよね。 「そうなんですよ! 『ケミオ&アミーガチュ』という名義で、夏くらいにデビューさせていただく予定です。でも、失礼なことにボク、奥田民生さんってご存じなくて……」 ――ええーっ!? 「事務所の人たちから、『スゴイ人だから』ってさんざん言われました(笑)。カラオケに行っても、歌うというよりは騒ぐ派なんで、ちょっと心配ですけど、どんな曲になるのか楽しみです!」 ――それじゃ最後に「日刊サイゾー」を読んでる大人たちに一言。 P1170546.jpg 「息子のような存在として、かわいがってください!」 ――息子かぁー……。 (取材・文・写真=北村ヂン) ●けみお 1995年東京都生まれ。身長187cm。趣味はリサイクルショップめぐり、特技は人を笑わせること。この春、高校を卒業し、スーパーアイドルになる予定。 <http://ameblo.jp/grfft-kemio/

ポン・ジュノ監督が宮崎アニメについて語った!「SFとアニメは作家のメッセージが最も発露する」

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韓国・フランス・米国による合作映画『スノーピアサー』を演出中のポン・ジュノ監督。チェコで巨大セットを組んで撮影が進んだ。
 ディープなオタク心と鋭い社会批評性を持ち合わせたポン・ジュノ監督は、世界で最も注目される映画監督のひとり。『グエムル 漢江の怪物』(06)では怪獣映画の正しき進化の形を提示してみせ、『母なる証明』(09)では“母と子”といういちばん身近な人間関係をサスペンスフルなドラマに仕立てた。そして製作費約40億円を投じた最新作が『スノーピアサー』だ。環境破壊によって氷河期を迎えた近未来、残された人類は地上を走り続ける弾丸超特急スノーピアサー号の乗客だけに。そして17年間走り続けた列車の中は厳格な格差社会となっていた。主人公のカーティス(クリス・エヴァンス)らは支配階級の圧政に蜂起し、スノーピアサー号に隠された秘密を暴く。映画界の若き巨匠が日刊サイゾーのインタビューに応じた。 ──ポン・ジュノ監督の新作は、いつも驚きと同時にどこか懐かしさも感じます。人類滅亡後も走り続ける特急列車を舞台にした『スノーピアサー』を観て、70年代に日本でテレビ放映された『未来少年コナン』や『銀河鉄道999』を思い出しました。84年に発表されたフランスのグラフィックノベルが原作ですが、日本アニメの影響もありますか? ポン・ジュノ おぉ、『未来少年コナン』! 僕の中学時代をほぼ支配したアニメですよ(笑)。『コナン』を観たのは中学2年のときで、僕にとって初めて観る宮崎駿作品でした。何度も何度も繰り返し観て、さらに自分の頭の中で反芻する毎日でした。シーンとシーンはどのようにつなぐのか、カットをどのように割るのか、演出という概念を僕は『コナン』を観ることで学んだんです。『銀河鉄道999』も僕が子どもの頃に非常に人気のあるアニメでした。日曜日の朝、早起きしてよく観たものです。特に雨の日曜日に観る『999』が思い出に残っています。あのメランコリックな世界観は、雨の日曜日にぴったりでした。メーテルのセクシーさは、子ども心に焼き付いています(笑)。でも、『コナン』も『999』もずいぶんと昔に観た作品なので、今回の『スノーピアサー』に直接的に影響を与えたというわけではないですね。
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後方車両で抑圧された生活を強いられるカーティス(クリス・エヴァンス)らは前方車両で優雅に暮らす支配階級への反乱を企てる。
■宮崎アニメには左派的視点が盛り込まれている ──そうですか……。『スノーピアサー』を観たことで遅ればせながら気づいたのですが、『コナン』も『999』も、実は支配階級へ反旗を翻す階級闘争のドラマだったんですね。少年時代のポン・ジュノ監督は、『コナン』や『999』といった日本アニメに込められていたメッセージ性をしっかり受け止めていたように思います。 ポン 確かに『コナン』は階級闘争の面が色濃く打ち出されていますね。インダストリアのパートでは地下で暮らす民衆が反乱を起こす様子が描かれ、とても印象的でした。宮崎駿監督の作品には、どれも左派的な観点が盛り込まれているように思います。『魔女の宅急便』(89)でさえも、日々労働しながら生きる主人公キキの生活が裕福な階級とは対照的に描かれていたのではないでしょうか。SFやアニメーションは、監督の思想性やメッセージが込めやすい表現形態なんだと思います。『999』に関しては、『スノーピアサー』とは正反対の世界でしょうね。『999』では鉄郎とメーテル以外は誰もいないがらんとした列車の風景が描かれていましたが、『スノーピアサー』は人間が飽和状態で乗り込んでおり、ギュウギュウ詰めになっていますから(笑)。 ──日本のアニメに、とても精通されていますね。ポン・ジュノ監督が少年時代を過ごした1970~80年代はまだ日本と韓国は正式な文化交流はありませんでしたが、どのように日本アニメに接していたんでしょうか?
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アジアの名優ソン・ガンホら国際色豊かなキャストが集まった『スノーピアサー』。ティルダ・スウィントンは特殊メイクで顔が分からない!
ポン おっしゃる通り、韓国と日本が正式に文化交流を始めたのは98年になってからです。不思議に思うかもしれませんが、韓国でも日本のアニメ作品を幅広く視聴することができました。大人向けの番組と違ってアニメ作品は子ども向けだということで、韓国のテレビで普通に放映されていたんです。ですから僕らの世代は、みんな日本製アニメを観て育ちました(笑)。『マジンガーZ』『グレンダイザー』『グロイザーX』『新造人間キャシャーン』……いろんなアニメ作品を観てきました。でも、子どもだった僕らは、自分たちが観ているアニメが日本製だとは知らなかったんです。『宇宙戦艦ヤマト』は『空飛ぶ戦艦V号』という題名で放映されていましたし、主人公が着物姿になっているシーンなどは編集されていましたからね。いわば国籍不明の世界を、少年時代の僕らは楽しんでいたんです。 ──国籍不明の世界ですか。どこかスノーピアサー号の世界とつながっているように感じます。そのスノーピアサー号ですが、環境破壊、食料問題、人口問題、経済格差など現代社会が抱える歪みのすべてが列車の中に詰め込まれています。諸問題を抱えながらもシステムが回り続けることで辛うじて均衡を保っている状況は、現代のグローバル社会そのものですね。 ポン (うなずきながら)ずっと走り続けなくてはならない、一度も止まることが許されない、これは大変な恐怖でしょう。スノーピアサー号の乗客たちは「列車が止まったら終わりだ」「列車の外の世界は死が待っている」と洗脳されてしまっているんです。スノーピアサー号で生まれた子どもたちは、車両教室でそのことを小さいときから教えられ続けているんです。実際に外の世界に出たら死ぬのかどうかは誰も確かめていないのに、「列車は走り続けなくてはならない」と思い込んでしまっている。この状況は、私たちが生きている現代社会そのものです。私たちは社会という名のシステムの中で暮らしていますが、その社会がずっと続き、その社会の中の付属品のように生きざるを得ないかのように思い込んでしまっています。でも過去の人類の歴史を振り返ると、古いシステムが新しいシステムに取り代わり続ける連続だったはずです。今のシステムが本当に正しいものなのかどうか、主人公たちは自分の目で確かめようとする。SF映画だからこそ描くことができた世界だといえるでしょうね。 ■ポン・ジュノ監督が作品を量産できない理由 ──『キャプテン・アメリカ』(11)のクリス・エヴァンス、『ナルニア国物語』(05)のティルダ・スウィントンといったハリウッドスターは、濃厚なメイクで素顔が分からない。また、撮影はチェコのスタジオで行われたそうですね。ハリウッド映画でもなく、かといって韓国映画でもない、無国籍映画として『スノーピアサー』は完成したように思います。 ポン 米国で技術試写をしたんですが、上映が始まって20分が過ぎた頃に「どうして主人公のクリス・エヴァンスが、まだ登場しないんだ?」と言いだした映写技師がいたんです。クリスが最初からずっと出ていることに、彼は気づかなかったそうです(笑)。クリスはニット帽をかぶり、ヒゲ面で顔が真っ黒ですからね。主人公のクリスが分からなかったぐらいですから、特殊メイクしているティルダはもう言わずもがなですよ(笑)。ティルダが演じた総理役のメイソンのモデルはいろんなイメージを複合させたものですが、実在した人物でいえば英国首相だったマーガレット・サッチャーです。ティルダはメイソン役にノリノリで、わざわざサッチャーが生まれたヨークシャー地方のアクセントで台詞を話したいと提案してきました。韓国でいえば慶尚道風のなまり、日本なら関西弁といった感じでしょうか。実はメイソン役には、『コナン』の登場人物であるモンスリーとダイスのイメージも盛り込んでいるんです(笑)。
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『グエムル』で怪獣に食べられたコ・アソンは、特殊能力を持つ少女ヨナ役で出演。『未来少年コナン』のヒロイン・ラナを思わせるキャラだ。
──やっぱり『コナン』の影響があるんですね(笑)。米国や英国を中心にしたグローバル社会への異議申し立てを『スノーピアサー』には感じます。世界の映画の中心はハリウッドではないよという意味も込められているんでしょうか? ポン いやいや、そんなつもりはありません。ひとつの産業というのはとても大きなもので、映画産業に対して自分の立ち位置を作品を通して表明しようなどとは考えていません。これまで自分が追い求めるイメージを追求しながら5本の長編映画を撮りましたが、自分が表現したい作品を自分の理想通りに撮りたいという想いだけでやってきたんです。映画産業の中で自分はどの立場に立ち、どのような路線で作品を撮っていこうという方向性は別にありません。そういったことはプロデューサーが考えてくれればいいと思っているんです。 ──『悪魔を見た』(10)のキム・ジウン監督はシュワルツェネッガー主演作『ラストスタンド』(13)で、本作のプロデューサーを務めたパク・チャヌク監督はミア・ワシコウスカ主演作『イノセント・ガーデン』(13)でそれぞれハリウッド進出。近年は韓国映画界の人材の世界進出が目立ちます。 ポン 『グエムル』がカンヌ映画祭で注目され、僕にも海外エージェントが付き、いろんな脚本が送られてくるようになりました。その中には本当に完成度が高く、面白くて、「映画化されたら、ぜひ自分が客になって観たい」と思う脚本も少なくないんです。ハリウッド作品もありましたし、非ハリウッド作品もありました。でも、やはり自分自身で考えたオリジナル企画に比べると「この作品は絶対に自分が映画化してみせる」という心の奥底から込み上げてくるものがないんです。キム・ジウン監督らは他の人が書いた脚本をうまく演出する才能を持っています。僕もそのようにできれば、もっと多くの作品を発表できるでしょうね(苦笑)。自分の中で熟成し、「これだけは絶対に作品にしたい」という想いが込み上げたときには必ず作品にするようにしています。どうやら、それが僕にとっての短所でもあり、同時に長所でもあるようですね(笑)。 (取材・文=長野辰次) snow_p04.jpg 『スノーピアサー』 原作/ジャン=マルク・ロシェット、ベンジャミン・ルグランド、ジャック・ロブ 脚本/ポン・ジュノ、ケリー・マスターソン 監督/ポン・ジュノ 出演/クリス・エヴァンス、ソン・ガンホ、ティルダ・スウィントン、オクタヴィ・スペンサー、ジェイミー・ベル、ユエン・ブレムナー、コ・アソン、ジョン・ハート、エド・ハリス 配給/ビターズ・エンド、KADOKAWA 2月7日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー  (c)2013 SNOWPIERCER LTD CO,ALL RIGHTS RESERVED <http://www.snowpiercer.jp> ●ポン・ジュノ 1969年大韓民国生まれ、ソウル在住。ペ・ドゥナ主演作『ほえる犬は噛まない』(00)で長編監督デビュー。実在の未解決連続殺人事件を題材にした監督第2作『殺人の追憶』(03)が大ヒット。怪獣パニックムービー『グエムル 漢江の怪物』(06)は韓国映画史上に残るメガヒットを記録。ウォンビン、キム・ヘジャ主演作『母なる証明』(09)は世界各国で映画賞に輝いた。監督第5作となる『スノーピアサー』は2013年に韓国で公開され、900万人を動員する記録的な大ヒットに。世界167カ国での公開が決定している。

小泉麻耶が語る女性にとっての“風俗”という仕事、そしてグラビアから女優へと転身する難しさ

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 “障害者の性”というタブー視されている題材を真っ正面から描いた映画『暗闇から手をのばせ』は2013年に劇場公開され、全国各地でロングラン上映となった話題作だ。とりわけ障害者専門のデリヘル嬢を演じた小泉麻耶の体当たりの演技は、観客の視線とハートをがっちりとつかんでみせた。『暗闇から手をのばせ』は関西に実在する障害者専門の派遣型風俗店をモデルにしたドキュメンタリータッチの人間ドラマ。「障害者が相手なら楽そうで安全」と軽い気持ちから障害者専門のデリヘル店「ハニーリップ」に勤めだした沙織(小泉麻耶)が筋ジストロフィー患者をはじめとするさまざまな客と裸で接することで、生と性について見つめ直すというストーリーになっている。DVDリリースに当たり、難役に挑んだ小泉が「友達の風俗嬢を取材した」という役づくりについて、またグラビアアイドルから女優へと転身する難しさについて赤裸々に語った。 ──『暗闇から手をのばせ』は渋谷ユーロスペースでのレイトショー公開後に作品内容が徐々に広まり、上映館数が増えていったそうですね。 小泉 ほんとうれしいです。『暗闇から手をのばせ』という作品に参加できた上に、観客のみなさんに作品を評価していただけたみたいで。昨年はずっとどこかで上映が続いていましたね。スケジュールが合う限り、私もできるだけ舞台あいさつなどに参加するようにしました。 ──本作がデビュー作となる戸田幸宏監督からは、小泉さんのブログ宛てに出演のオファーがあったとのこと。「怪しい」とは思わなかった? 小泉 そうなんです(笑)。私のブログのメッセージ欄に戸田監督の書き込みがあったんです。「障害者の方たちの生と性についての真面目な話です」と内容が書いてあったんですが、文面に真面目さがすごく感じられたので、これは決して怪しい仕事じゃないなと。戸田監督は普段はNHKで番組ディレクターをしていて、最初はドキュメンタリー番組としてオンエアしたかったそうです。まず事務所に相談し、戸田監督に会ってもらいました。それで、「戸田監督はきちんとした人だし、やってみたらどうだ」と言われたんです。私自身ぜひやりたいと思っていたので、受けることにしました。
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『暗闇から手をのばせ』で障害者専門の風俗嬢を演じた小泉麻耶。屈託のない表情で、撮影の舞台裏について打ち明けてくれた。
──障害者の性がテーマで、しかも風俗嬢という役。躊躇はなかった? 小泉 この作品に出てから、共演したホーキング青山さんに仲良くしてもらったり、劇場に来られた障害を持つ方と接する機会ができたんですが、それまでは障害のある方が身近にいたわけではなかったですね。でも風俗嬢という仕事に関しては、私にとってそう遠い存在ではなかったんです。風俗経験のある友達がいたので、その子にはいろいろ聞きましたね(笑)。友達と新宿や渋谷に遊びに出掛けても、「あっ、あの子は風俗の仕事してるな」とか分かる同世代の女の子が多いですし。風俗の仕事してる子が特別な世界にいるようには感じられないんです。どんな女の子でも、ふとしたことで風俗の世界に足を踏み入れることもあるだろうし、誰しも「風俗ってどんな仕事なんだろう?」と興味あると思うんです。戸田監督が言っていたことなんですが、「この作品は障害者を支援したいとか、風俗嬢を肯定するものではなく、こんな人たちがいるんだってことを定義したいんだ」って。私もやりがいを感じてというよりは、「面白そうだな」という好奇心が強かった(笑)。風俗の仕事を選ぶのには、やっぱり何か理由があったからでしょうし、そういうのを探りながら役づくりするのは面白いだろうなって。 ──マスコミ試写の際に戸田監督からコメントをもらっていたところ、小泉さんがこちらに歩み寄って「脚本を読んで、この役は私だと思った」「女の子は誰しも心に闇を持っているんです」と話し掛けてきたのが印象に残っています。 小泉 私、言いましたか? 恥ずかしいなぁ(笑)。ごめんなさい、まだまだ日々成長中なもので、そういう恥ずかしい言葉をつい口にしてしまったようです。う~ん、当時の私は闇を抱えていたのかなぁ……。 ■量産してやっていく仕事のしんどさ ──風俗嬢として漠然と生きている劇中の沙織と、グラビアアイドルから女優への転身中で模索状態だった小泉さんの姿が、そのときは重なって感じられました。 小泉 うん、それはすごくあるように思います。グラビアの仕事を否定する気はないんですが、私にとってはグラビアの仕事は表現が限られ、対象者は男性に限定され、一時期かなり息苦しかったんです。もっと広い世界を見たいし、いろんなことに挑戦してみたかったんです。その部分は沙織が感じていた生きることへの息苦しさとリンクしてたみたいですね。沙織が障害者専門の風俗嬢になったのも、何か自分から新しいアクションを起こしたいという気持ちがどこかにあったんでしょうね。 ──小泉さんはグラビアアイドルとして人気を極めたわけですが、女優への転身は簡単ではなかった? 小泉 グラビアを極めたとは全然思っていません。グラビアでもアートっぽい自由度の高い仕事は面白いけど、量産してやっていかないといけない仕事がすごく多いんです。グラビアアイドルの王道ってよく言われるのが、雑誌をひと通り網羅したら、次はテレビのバラエティー番組に出て顔と名前を覚えてもらって、それでそのままタレントになるか、それとも女優になりたいなら違う道を目指しましょう、みたいなステップがありますよね。それで「日テレジェニック2009」に選ばれて、1年近く「日テレジェニック」の番組に出演していたんですが、その頃がいちばんキツかったんです。
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グラビア界を制したグラマラスボディはキープ。「サイゾーって攻めてる感じ。月刊サイゾーの表紙を飾れたときはうれしかったですよ♪」
──そのキツさって具体的には……。 小泉 グラビアアイドルとして求められていることと自分のやりたいことと食い違うことがありました。グラビアの仕事をしていると「じゃあ、自己紹介お願いします」「得意なポーズやって」「スリーサイズは?」「何か一発芸か物まねやって」みたいなことを言われるんですが、そういうのが本当に苦手で……。もちろん、グラビアの仕事が好きな人もいると思うし、才能のある人ならもっとスムーズに女優に転身できると思いますし、これは個人の問題でしょうね。自分の中でどのようなイメージで勝負していくべきなのか考え中なんです。その点、『暗闇から』の沙織はすごく演じがいがありました。どこまでも役に入っていけるし、役を演じることで自分自身とも向き合えたんです。もちろん役に入っていく作業は大変だし、何が正解かも分からないし、演じた後で「もっと、こうできたんじゃないか」と後悔することが多いんです。だから「じゃあ、次はもっとこうしよう」とトライし続けるしかない。今回の沙織役を熱意なく演じていたら、こんなに思い入れも湧かなかったでしょうね。 ■ぶっちゃけて聞いた風俗のお仕事 ──『暗闇から』の沙織役は、衣装や持ち道具も自分で用意したと聞いています。 小泉 持ち道具に関しては、バッグや財布まで自分で全部用意するべきだったなと反省しています。脚本では、お客さんの家に沙織が忘れ物するのは腕時計だったんですが、「腕時計はどこででも外すものだから、ネックレスとかのほうがいいんじゃないですか」と私から提案したりしましたね。衣装に関しても、私なりに風俗嬢の着ている衣服を研究していたので、自分で買いに行ったり、自分のものを提供したりしました。下着も自分で買ってきたんですが、透けていたので、自分で裏地を張って縫いました。 ──DIY精神あふれる女優! 小泉 はい(笑)、やっぱり自分の役ですし、自分が身に着けるものですから。作品によると思います。戸田監督は私のアイデアに耳を傾けてくれたので、そこはすごく感謝しています。 ──友達の風俗嬢からいろいろ聞いたとのことですが、印象に残ったことは? 小泉 沙織と同じような答えが返ってきたんです。「ねぇねぇ、ぶっちゃけ風俗の仕事って、どーゆー感じなの?」と訊くじゃないですか。そうすると「え~、やることはフツーに同じだよ」って。「えっ、フツーって?」と尋ねると「だって、みんなするじゃん」って。 ──みんなするじゃん(笑)。 小泉 ガールズトークだし、私が聞いた友達は、あけすけなんです(笑)。「風俗の仕事も、恋人にしてあげるのと同じだよ」って。「障害者の場合は動かないから楽かな。でも、自分が全部動かなくちゃいけないから、大変なのかなぁ」ってリアルな声が聞けましたね。なるほど、なるほどと。そういう言葉は、自分の中に染み込んできましたね。
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介護経験のないまま障害者専門のデリヘル嬢となった沙織。最初の客は寝たきり状態の筋ジストロフィー患者(管勇毅)だった。
■変わらないと思っていた日常風景が変わった ──撮影現場はどうでしたか? 小泉 マネージャー役の津田寛治さんと一緒のシーンから撮影が始まったんです。私はまだ芝居の経験が浅くて、自分が分かってないことすら分かってない状況だったんですが、津田さんはいつもニュートラルでいてくれて、すごく親切だし、素敵な役者さんだなって感じましたね。本当に頼りがいのあるマネージャーみたいでした。お客さんの順番は劇中の順番通りでした。筋ジストロフィーの患者さんを演じた管勇毅さんは撮影前に戸田監督と一緒に実際に筋ジストロフィーの患者さんの家を訪ねて、1日過ごして役づくりしたそうです。それで撮影現場には筋ジストロフィーの患者の方と女性パートナーの方も監修として来られて、狭い現場の割には人数が多かったんです。そんな中で私は脱ぐ場面だったんですが、管さんは「僕は見ないようにするね」って自分の手で目隠ししてくれた(笑)。緊張気味の私を和らげようと気遣ってくれた、とてもジェントリーな役者さんでした。その次がホーキング青山さん。 ──身障者芸人・ホーキング青山のアドリブ演技に、思わず吹き出してしまったと。 小泉 前半は表情を抑えた演技で通すつもりだったのに、ホーキングさんのアドリブのせいで、すっかり私の思い描いていた演技プランは崩壊しましたね(苦笑)。後で、戸田監督に「ごめんなさい。あのシーンはもっとちゃんとするつもりでした」と謝りのメールをしたんです。でも戸田監督は「どんな人間でも、ドン底に堕ちても、くだらないことで笑うことってあるよ。それが人間だよ」って言ってくださって。完成した作品を観たらドキュメンタリーっぽい感じに仕上がっていて、良かったです。
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デリヘルの常連客を演じたホーキング青山のエッチなアドリブトークに小泉は思わず表情を崩してしまう。小泉の素顔が覗いた心和むシーンだ。
──3番目のお客を演じた俳優には、胸をガン見されちゃったそうですね。 小泉 森山晶之くんは若い役者さんなんですが、戸田監督から「お前、勃つなよ」と言われて、現場は大変でした(笑)。下半身不随の役だったので、パンツを2枚はいた上に前貼りまでさせられていたんですが、そのせいで(股間が)膨らんでるように映ってしまって。それで、またパンツを脱がせて、前貼りを剥がして……と(笑)。撮影中は大変でしたけど、今考えると笑っちゃいますね。このシーン、目を手で覆ってくれた管さんと違って、森山くんには、しっかり見られてしまいました(笑)。 ──小泉さんの胸が、それだけ魅力的だったと。 小泉 はい、そういうふうに解釈します(笑)。最終日は森山くんと海に飛び込むシーンの撮影だったんですが、3月の撮影で海に飛び込むのは寒すぎるので、海のシーンだけ1カ月後の4月に撮影したんです。4月でも全然寒くて、森山くんは死にそうになってましたね(笑)。彼を助けるために沙織も海に飛び込んだからといって、体の障害が良くなるわけでもないし、沙織の人生が変わるわけでもないんです。日常が変わるわけではないけれど、でも沙織が心を開いて人と向き合うことで今までと違った風景が広がっていく。すっごく気に入っているラストシーンです。今回の沙織役は私を必要としてくれた役だったし、小泉麻耶としての存在意義を感じさせてくれた愛着のある作品になりましたね。 ──映画を観たくても、自宅からなかなか出ることのできない人たちにとって、今回のDVD化はうれしいニュースでしょうね。 小泉 そうですね。「この映画は、どうしても観たかった」と車椅子で劇場まで来ていただいた方もいましたが、劇場に来ることが難しかった方でもDVDなら手軽に観てもらえますよね。松本の映画館で上映された際にトークショーに参加させていただいたんですが、福祉関係の方がトークの様子を熱心にメモしていたのも印象に残っています。福祉のお仕事に興味がある方にもおススメしたいですね。幅広く、いろんな方が楽しめる作品になっていると思うので、ぜひ一度手に取ってみてほしいです。 ──最後に、今後の活動予定を教えてください。 小泉 まだ作品名を公表できないんですが、『暗闇から』を観てくださったある人気監督から出演オファーをいただきました。もうすぐ発表されるので、そちらも楽しみにしてください! (取材・文=長野辰次) ●こいずみ・まや 1988年東京都生まれ。『エレクトロニックガール』(09)、『特命女子アナ 並野容子』(09)、『Re:Play-Girls』(10)、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(12)などに出演。主演作『暗闇から手をのばせ』(13)は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013」のオフシアター部門でグランプリ&シネガーアワードの2冠を受賞した。

刺され、切られ、犯され……小松彩夏が艶麗なゾンビに変身!

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撮影=後藤秀二
 まるでお人形さんのようなパーフェクトな顔立ちで、女優やグラビアアイドルとして活躍する小松彩夏。そんな彼女が、その美貌をかなぐり捨てて挑んだ初主演映画『Miss ZOMBIE』。鬼才・SABU監督によるモノクロの美しい映像を背景に、刃物で刺され、包丁で切られ、そしてレイプされてしまうなど、人間に徹底的にいじめ抜かれるゾンビ「沙羅」役を熱演している。今回、この作品がDVDとなってリリースされることを記念して、彩夏ちゃんに突撃インタビュー! 果たして、初主演・初ゾンビという経験は、彼女に一体何をもたらしたのか!? ――『Miss ZOMBIE』初主演おめでとうございます! 小松彩夏(以下、小松) ありがとうございます。映画の主演をさせていただくことがデビュー当時からの夢だったので、その夢が10年越しにかないました! 作品を初めて見た時に、エンドロールの一番最初に自分の名前が出てきて、思わずうるっとしてしまいました。あ、もちろん作品の内容にも泣きましたよ(笑)。 ――ただ、主演の夢は「ゾンビ」の姿ではなかったと思うんですが……。 小松 あはは、確かに。台本をいただいた時は自分がゾンビ役だと聞いていなかったので、配役を知って「あたしがゾンビ!?」と、衝撃的でした。しかも、読んでも読んでもセリフがない……。 ――彩夏ちゃん演じるゾンビの少女・沙羅は、作品中、まったくセリフをしゃべることがありません。いったい、どのように演技をしていたのでしょうか? 小松 5日間という短い期間で撮影したんですが、撮影に入る前に、監督と一緒にリハーサルを重ねました。監督が特にこだわっていたのが、ゾンビの独特の歩き方。ゾンビの心情に合わせて、歩き方を少し早くしたり、ゆっくりにしたり、と変化させなきゃならないんです。撮影に入る前に、プライベートでも、駅から家まですり足の練習をしたり、買い物袋もゾンビのように持ってみたりと、一生懸命練習を重ねました。 ――夜道で、そんな人に遭遇したくありません! 小松 近所の人からは、怖がられていたかもしれないですね(笑)。 ――これまでに、数々のゾンビ映画が公開されてきましたが、彩夏ちゃんはもともとゾンビ好きだった? 小松 何本かは見たことがありますが、あんまりゾンビには詳しくないんです……。監督にも「参考になるゾンビ映画はありませんか?」と聞いたんですが、「絶対にゾンビ映画は見ないで!」と言われました。今回、監督が目指したのは、まったく新しいゾンビ。今までのゾンビ作品とは、まったく別物なんです。コアなゾンビファンの人が見ても、いい意味で裏切れるんじゃないかな〜。 _MG_0140.jpg ――確かに、ここまでゾンビの心情にフォーカスした映画はないですよね。演じる上で、こだわった部分はありますか? 小松 セリフがないので、動きや表情など、ひとつひとつの動作を大切に演じるようにしました。目線の角度、動きの速度など、細かいところでゾンビの心情を表現したんです。もともと血を見るとクラッとしてしまうタイプなんですが、あまりにも夢中で演じていたからカットがかかってようやく「血が出てる!」と気付き、びっくりして貧血を起こしそうになりました。 ――ブログには「特殊メイクが大好き」と書かれていましたね。 小松 メイクといったら、普通、キレイにしてもらうはずなのに、逆に傷つけられて血だらけになっていくのが新鮮でした。今回の特殊メイクには、2時間半もかかったんですよ! ――ただ、これまでキレイでカワイイ彩夏ちゃんばかり追いかけてきたファンの心境は複雑なんじゃ……。 小松 沙羅は、一見弱そうに見えるんですが、心に強い部分を持っているひとりの女性なんです。それなのに、何もしていないのにゾンビであるというだけで、周囲からいじめられてしまう。弱い者ならば何をしてもいいのか? 見てる人に、ちょっとでも考えてもらえればいいなと思います。 ――ところで、彩夏ちゃんと同じく実写版『セーラームーン』に出演していた沢井美優さんも昼ドラ『天国の恋』(フジテレビ系)で意外な一面を開花させていましたが、彩夏ちゃんから見て、その活躍ぶりはいかがでしょう? 小松 当時、セーラー戦士を演じた5人は、みんなそれぞれ活躍しているんです。しかも、定期的に集まって、今でもすごく仲良し。『天国の恋』も、見ていて気持ちがいいですよね。ああいう役をやったら、すごく楽しいだろうなって思います。 ――「糞ガール」と罵られたり、「このカピバラ女!」と罵ったり……? 小松 賛否分かれと思いますが、私のイメージを崩していきたいんです。今回の『Miss ZOMBIE』でも、今まで見たことない私を見せることができました。これからも、いろいろな私を見せていきたいですね。 _MG_0152.jpg (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●こまつ・あやか 1986年、岩手県生まれ。雑誌「CANDy」のモデルオーディションに応募したことがきっかけで、芸能界デビュー。主な出演作に、テレビドラマでは『美少女戦士セーラームーン』(TBS系)、『バンビ~ノ!』(日本テレビ系)、『BUZZER BEAT~崖っぷちのヒーロー~』(フジテレビ系)、映画では『僕は妹に恋をする』『容疑者Xの献身』『僕等がいた(前編・後編)』などがある。 <http://ameblo.jp/ayaka-502/●イベント情報 開催日時:01月26日(日)15:00~ 場所:タワーレコード秋葉原店 出演:小松彩夏ほか その他詳細は、HPにて<http://tower.jp/store/event/2014/01/09701Miss%20Zombie>

マッチョなボディで、便利屋で大成功!? あの“新加勢大周”坂本一生の現在 

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撮影=後藤秀二
 新加勢大周として一世を風靡した、“筋肉タレント”の坂本一生を覚えているだろうか? 鍛え抜かれた筋肉と白い歯が光るさわやかな笑顔がトレードマークだった彼が、便利屋に転身し、ビジネスマンとして大成功を収めているという。そこで、そんな彼の現在を探るべく、取材を試みた。 ――相変わらず、いいカラダしてますね! 坂本一生(以下、坂本) デビュー当時からタンクトップだったんで、それが似合うようなカラダをキープしてます。年々、パワーアップしてるんじゃないかな。元祖筋肉タレントとしてのプライドもあるし、いつ仕事が来てもいいようにね。鍛えてなかったら、そこらへんを歩いてる、ただのおっさんと変わらないし。今いろいろと筋肉タレントがいるけれど、やっぱり黒いタンクトップが似合うのは、俺だと思ってます! ――現在は、便利屋のお仕事がメインなんですか? 坂本 少し前は、芸能界がメインで、この仕事は副業的な感じでやっていたんですが、今ではすっかり逆転しましたね。芸能は仕事が来たらやる、という感じです。 ――そもそも、どうして便利屋に……? 坂本 芸能界という世界にいて、いい時期もありましたし、チヤホヤもされてきました。その後、仕事が減って働かなければならない状況になり、トラックの運転手やとび職、レストラン店長など、さまざまな仕事をしてきましたが、どれも長続きせず、転々としていたんです。将来について悩んでいた時に、たまたま茨城の友達のところに遊びに行ったんですが、そこで東日本大震災に遭い、帰るに帰れず、着る物も食べる物なく困っていたところ、地元の人にいろいろと助けてもらって。そのお礼として、一週間ほど瓦礫の撤去や家の中の片付けの手伝いをしたりしました。僕は昔から世話好きというか、困っている人を放っておけない性格なので、その体験がきっかけで人の役に立つ仕事をしたいなと思うようになり、たまたま知り合いが便利屋を始めるというので、僕も加わったんです。 ――「便利屋!お助け本舗」は、わずか2年半で全国130店舗を構えるほど、急成長しているそうですね。 坂本 ありがたいことに開業当初から依頼をたくさんいただき、世の中にはこんなに困りごとを抱えている人が多くいるんだなあ、と思ったくらいです。 ――便利屋って、どんな仕事なんですか? 坂本 日本中に困っている人がたくさんいるじゃないですか? それを“よかった”に変える仕事です。特に高齢者や女性からの依頼が多いのですが、「便利屋=夫や家族の代理」みたいなイメージかな。 ――本当に、どんな依頼でも引き受けてくれるんですか? 坂本 法に触れないことなら、なんでもやります。ただ以前、男性から“ホテルの一室で水着撮影をさせてほしい”という依頼があったんですが、さすがにそれは断りました(笑)。芸能人としての僕に仕事を依頼するなら、1時間3150円~じゃ安いでしょ? それなりのギャラを払ってもらわないと(笑)。 _MG_4414.jpg ――時間内であれば、いくつかまとめて仕事をお願いしてもいいんですか? 坂本 うちは1時間3150円+出張費2100円、計5250円が基本料金ですが、50分で依頼が終わって、残り10分で何か別のことをしてくれ、というのもOKですよ。 ――どんな依頼が多いんですか? 坂本 季節ごとに変わってきますが、この時期は掃除とか不要品処分、引っ越しのお手伝いなどが多いですね。高齢者の方からは電球交換や荷物の移動、買い物の代行、庭の手入れ。女性の方からは、家具の組み立てやAV機器の配線、重い荷物の移動などが多いですね。 ――これまでに受けた、変わった依頼は? 坂本 食品会社からの依頼で、24時間、提供する食べ物・飲み物を残さず食べ、1時間ごとに体重を量ってほしいという依頼がありました。結果、腹はパンパンで5kg太りました(笑)。また、20年間ためた小銭を銀行に持って行くのを手伝ってほしいという依頼で、梅酒のビン27個分、重さ100kg超の小銭を運んだこともありました。両替するのに丸1日かかり、銀行の人もあきれていましたね。それから、母国語しかしゃべれないアフリカ人を空港に迎えに行くという依頼もありましたね。地下鉄の音におびえて走って逃げようとするわ、電車内で大声で歌いだすわ、公園に連れて行けば鳩を追い掛け回すわ、八百屋のりんごを勝手に取って食べるわで、向こうもすべてが驚きなんだろうけど、こっちはもっとビックリで大変でした……。。 ――便利屋をテーマにした、三浦しをんさんの小説『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)が映画化・ドラマ化され、便利屋という職業の認知度も高まっていますが、このストーリーのように、依頼の本筋から外れて、依頼者のプライベートにも踏み込むこともあるんですか? 坂本 基本的にはプライベートなことには首を突っ込みませんが、悩み相談というか、おじいちゃんおばあちゃんの雑談を聞くことはありますね。3年前に亡くなった奥さんの墓の掃除をしてほしいと独り暮らしのおじいさんから頼まれたことがあったんですが、現地に行ってみると墓はすでにきれいに掃除されていて、おじいさん宛てに書かれた手紙が置かれていました。それをおじいさんに渡すと、手紙を読み、すすり泣いていました。事情を聞くと、10年前に勘当し、音信不通になっていた娘さんからの手紙だった、なんてこともありましたね。こんなドラマみたいなこと本当にあるんだと。 ――便利屋という仕事の魅力って、どんなところですか? 坂本 人助けをして、笑顔で感謝されることですかね。腰の曲がったおばあちゃんがさらに腰を曲げながら「ありがとう、ありがとう」と言ってくれるので、とてもやりがいがあります。依頼内容、場所、時間も毎回違って刺激があるので、そういう意味では芸能界に似ているところもあるかな。なにより、大好きな肉体労働だってところが大きいです。僕の天職ですね。 (取材・文=編集部) ●「便利屋!お助け本舗」 <http://otasuke365.com/>

さっき『有吉反省会』に出てたゾンビ、アレ何なの!? 小明(あかり)直撃インタビュー!!

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『有吉反省会』(日本テレビ系)より
 「月刊サイゾー」連載『卑屈の国の格言』や、サイゾーテレビ『小明の副作用』などなど、サイゾーではお馴染みの小明ちゃん! サイゾーではよく見るけど、他にどんな仕事をしているのかは謎に満ちていた。そんな小明ちゃんが先日『有吉反省会』(日本テレビ系)に出演したらしいんですが、その姿が、ゾ……ゾンビ!? あまりに衝撃的だったので緊急インタビューを決行! ──すごいゾンビっぷりでしたね。 小明 見てくれたんですか? ありがとうございます~! ──一応アイドルですよね?普通の顔では出られなかったんですか?
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謎に包まれた私生活が赤裸々に!?
小明 初めは普通の顔で出る予定だったんですけど、スタッフの人に前日に「あ、ずっとゾンビで……」って言われて。 ──もう少し抵抗しましょうよ! 小明 すっぴん自信ないし……(ゾンビではないメイクの時は普通のメイクもすっぴんと呼んでいる)。 ──じゃあもうアイドルやめちゃえよ。 小明 嫌だよ!! フォトショップとか駆使して生き残ってやるよ!! (気まずい沈黙) 小明 それにしても、テレビっていろんな人が見てくれてるんですね~。 ──あ、反響はどうでしたか? 小明 昔の同級生とかから電話が…… ──あ~よかったですね~ 小明 いや、なかったんです。一件も。人気番組ですからね、誰かしらは見てたはずだと思うんです。名前も特徴的ですし、覚えている人もいたと思うんです。だから、たぶん、本当に記憶に残ってなくて見流した人と、私を覚えいていた上で、ゾンビになった私を見て、同級生同士で電話しながら「ギャハハ! あいつまじなにやってんの!」「マジ無理ー、あんなことよくできるよね、キモい」「つーかああいうキャラだっけ?」「覚えてねー」とか見下して笑いものにしてるんだろうなって思うとすごい、死ねとも思うし、死にたくとなりました。 ──学生時代、友達いたんですか? 小明 ……(無言でうつむく)。 ──それでも、ゾンビはやめられないんですか? 小明 ゾンビに罪はないし……(?)というか、ゾンビじゃなく地上波に出られない? 地上波対応無理だから、シャイだから、私。 ──そのメンタルでゾンビを続けるのはキツイんじゃ…… 小明 すっぴんでテレビに出るよりはぜんぜんマシですよ! ゾンビで「グロ」って書かれるのは誉め言葉だけど、フルメークで出て「グロ」って書かれてごらんよ。2年は家から出られないよ。 ──すっぴんグロいんですか?
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アラサートークに、はにかむ小明
小明 まぁ……老け顔のアラサーって感じ……道で薬中と間違われて職質くらうレベル……。 ──それは、けっこうですね。なんでアイドルになろうと思ったんですか。 小明 昔はかわいかったんだよ。 ──で、今回はグラビアを自分で撮ってきたそうじゃないですか。どういうつもりでそんな無茶を。 小明 来年でなぁ……もう29でなぁ……アイドルはじめてもう11年かぁと思ってなぁ……そろそろ重い腰を上げんとなぁという気持ちになって、スタジオ、カメラマン、メイク、スタイリスト、お友だち価格ではありますが、全部自腹で呼んだんです。 ──本気度が伝わってきます。
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本気度が伝わるグラビア
小明 最初は自費出版で写真集でもつくるか~と思ってたんですけど、収録で有吉さんに「胸を出しちゃえば」ってアドバイスをいただいたので、私はがっかりおっぱいだから尻でも出すか、と尻を強調してきたよ。ただね、尻も汚いの……。 ──あんた……いいとこないじゃないですか! 小明 (無視して)でも、久しぶりに本気のグラビアを撮ってみたのよ。私のグラビアアイドルとしての可能性はまだ無限に広がってるんじゃないかと思って。
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尻を強調した
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胸も少し
──でも、グラビアで売れなかったから事務所をやめたんですよね? 小明 うん、でももう熟れてきたから始めなきゃと思って。売れなかったけど、熟れてきたから(ドヤ)。 ──10年遅いよ! 撮影後、写真を見てみてどうでした? 小明 愕然としましたね。一流のスタッフを揃えたのにこれか、と。そういえばメイクさんもスタイリストさんもカメラマンも、なんどか「あれ~?」みたいに小首傾げてましたもん。撮ってる最中は「失礼な奴だな」と思ってましたけど、出来上がりをみると「あ~」って。納得ができた。 ──お気の毒さまです(スタッフが)。 小明 一流の人たちは、やっぱり余分なところにまったく肉とか乗ってないですからね。私の場合、ぶよんぶよん。ぽっちゃりで売るなら巨乳じゃなきゃいけないはずなのに、胸はないの。現役時代はまだ胸はあったし、もう少し細かったから、まぁ明らかに劣化してるよね。人に見せてないせいかなぁ。人に見せてない=清純って解釈されて許されないかなぁ。あ、「今! 劣化するアイドル!」ってキャッチはどう? ──いま会えるアイドル見たいに言わないでください。そんなに気にするならダイエットしようとは思わなかったんですか? 小明 しましたよー!! 食生活改善して運動もして、我ながらかなり引き締まったな、と思って撮影に挑んだら「あ、まだまだだった……!」って。己の体のだらしなさにびっくりしましたね。でも、ホラ、安達祐実さんのヌードも、垂れたお腹がエロかったりするし、そういう目で見てもらえればエロスなんじゃないかな(ニコッ)。 ──安達祐実さんは経産婦だからたるみがあるんですよ。あんたいつ産んだのよ。 小明 生産性のない人生でございます。
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生産性のない肢体
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サブカルっぽくキメた
──そのグラビア写真、これからどうすんの? 小明 どうしようかと思って、持ってきた。サイゾー本誌の表紙にしてくれていいですよ。 ──……(沈黙) 小明 じゃあ、中ページでもいいよ。 ──ちょっと、決定権がないんで……。もうページも埋まってますし……。 小明 じゃあ誰か原稿落とせ!! そしたらページあるだろ!!(迫真) ――年末進行中に何言ってるんですか!? 小明さんこそ早く原稿あげてください! 締め切り来週ですけど今どのくらいな…… 小明 アーーアーー(白目で耳を塞ぐ)。じゃあさ、とりあえず、ここに数枚載せてもらってさ、それでもまだグラビアはもっと激しいのが色々と残ってますんで、「うちに載せてやってもいいよ!」って出版業界の方、連絡ください☆ アイドルが直々に持って行きます☆ 撮り下ろしも大歓迎~! ――これで満足っすか。 小明 まぁまぁね。あとは、自分磨きをしながら連絡待ちですかね。連絡くるかなぁ。遅咲きで狂い咲きたいです……。 ──ところで。いつも家で何してるんですか? 自分磨き? 小明 家では忙しいんですよー。まずスマホでまとめサイトの巡回しなくちゃいけないし、自分探し(という名目の、ツイッター自分検索でファンや昔の同級生をストーキングして、脳内でオフ会や同窓会を開くなど、有意義な時間を過ごすこと)にも余念がないし、ネットストーキングで悪い気をため込んだ後はデトックスでお昼寝や半身浴もしなきゃいけないし…… ──ただゴロゴロして太っていくだけの人生……? 小明 言うなれば、ゴミだよね! ──自覚があるならなんとか改善できるんじゃないですかね。 小明 でも、私は、ゴミの中でも愛されるゴミになりたいから。 ――……わかりました。最後に一言意気込みを! 小明 ゾンビ・グラビアアイドルの小明です! これからグラビアに再チャレンジするから、お前ら全員私で勃起しろ!!! あと洋泉社から発売された『アイドル墜落日記』が、装いも新たにページも増量されて発売されるので、魔除けと思って4冊くらい買ってください☆ お仕事待ってます☆ 独身です☆ 戸籍も空いてます☆ よろしくお願いいたしまーす☆ ――ぜんぶ告知でしたね、どうもありがとうございました! (インタビュー取材・構成・文=小明/撮影=尾藤能暢・北村ヂン/ヘアメイク=梁取亜湖/スタイリスト=吉岡里沙) ●小明(あかり)アイドル・ライター 2002年に『ホットドック・プレス』の準グランプリを受賞し、華やかにグラビアデビューするも即低迷。事務所を退社し、雑誌でコラムを書いたり連載したり、ネットテレビに出たり、ゾンビになったりして細々活動していたところを『有吉反省会』に拾われる。これからの人生どうしたらいいのかわからない。 ○出演情報 サイゾーテレビ『小明の副作用』隔週木曜22時~23時生放送! 次回はクリスマスイブ、12月24日の22時からです! メルマガ会員の方にはそこそこ高額なプレゼント企画があるので見てね! その他、出演情報はブログ『小明の秘話』(http://yaplog.jp/benijake148/)や、ツイッター(https://twitter.com/akarusan)でチェック! ○連載情報 『月刊サイゾー』にて「卑屈の国の格言禄」連載中 『日刊サイゾー』にて宍戸留美さんと『声優 on FINDER!』連載中 『アームズマガジン』にて「小明の神聖キネマ帝國」連載中 『月刊少年シリウス』にて「小明のアイドル地獄変」連載中 ○著書 『アイドル墜落日記』が増量されて装いも新たに来月発売。アマゾンで予約開始!

「魅力度最下位だけど、住むにはいい場所!」ボクたちが“未開の地・グンマー”を愛するワケ

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(c)2013 SHINCHOSHA
 ここ数年、「未開の地・グンマー」などと呼ばれてやたらとネット上でバカにされ、ネタになっている群馬県。しかも2012年の「都道府県魅力度ランキング」では魅力度最下位、さらに化粧品メーカーのポーラが発表した「美肌県グランプリ」でも最下位になってしまったりと、踏んだり蹴ったりの状態なのだ。  しかし、今年の夏の甲子園では前橋育英高校が優勝。群馬のゆるキャラ「ぐんまちゃん」も「ゆるキャラグランプリ2013」で3位に入賞。サブカル方面でも『群馬のおきて~グンマーを楽しむための52のおきて』(アース・スターエンターテイメント)という本が出版されたり、新潮社のWebマンガサイト「くらげ バンチ」で掲載中の漫画『お前はまだグンマを知らない』が話題になったりと、意外なところで注目度が高まっていることも事実。  ……ということで、残念ながら「地味でビミョーな県」というポジションが定着しつつある群馬県をどーにかするために(?)、『群馬のおきて』の作者・北村ヂンと、『お前はまだグンマを知らない』の作者・井田ヒロトによるグンマーサミットを開催! どうしたら群馬県は魅力度あふれる県になれるんでしょうか!? ■外に出てみないとよさが分からない県 北村 群馬をネタにして本や漫画を描いている2人、という対談なんですが、井田さんとボクの群馬との関わり方って逆なんですよね。ボクは出身が群馬で現在は東京に住んでいるんですが、井田さんは外から群馬にやって来たんですよね。 井田 そうですね。神奈川生まれなんですけど、それから父親の仕事の都合で千葉に行ったり引っ越しをしまくっていて、最終的に中学に上がる時に群馬の高崎へやって来たという感じです。 北村 群馬には、引っ越してすぐに馴染めました? 井田 怖かったですね。それまで千葉県のすごい過疎地に住んでいたんで、高崎に来て「ウワッ都会!」って思いましたもん。 北村 都会!? 群馬が! 井田 引っ越してきたのが、高崎競馬場のすぐ近くだったもんで。 北村 ああ、今はなき高崎競馬場! ボクは逆に、子どもの頃から「こんな田舎イヤだー!」と思い続けていて、大学進学と同時に東京に逃げたタイプなんです。 井田 確かに、生まれてからずっと群馬にいて「群馬が好き」っていう人って少ないような気がします。一回外に出てみないとよさが分からないというか……。自分も、大人になってから群馬を出て、東京に一年住んでみたり、埼玉に一年住んでみたり、韓国に一年住んでみたり、フラフラしていた時期があったんですけど、「そろそろ腰を落ち着けて漫画を描こう」と思って群馬に帰ってきてから、「群馬いいところだな」って感じましたから。 北村 ボクも普段は仕事で日本全国を回って珍スポットや奇祭などを取材しているんですが、群馬に関しては「もう知ってるから」ということでわりとノーマークだったんですよ。でも、いろんな県を見てきて、あらためて群馬を振り返ってみたら一番変わってて面白い県だなって思いましたね。
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(c)2013 SHINCHOSHA
■「グンマー」ネタに怒ってる群馬県民はいない 北村 で、最近ネットでは「グンマー」なんて呼ばれてネタにされ、ある意味、認知度が高まっている群馬ですけど、あのネタに関してはどう思いますか? 井田 ちょっと前までは、そのポジションが埼玉県だったじゃないですか。「ダサイタマ」って呼ばれたり、「さいたまさいたま!」みたいなアスキーアートがはやったりして。アレがうらやましかったんですよ。全国の人たちと、自分の地元ネタで盛り上がれるっていうのが。 北村 あ、じゃあ「グンマー」とか言われだした時はうれしかった? 井田 そうですね。ただ、何がきっかけだったんだろうっていうのは、不思議でしたけど。 北村 2010年頃、2ちゃんに書き込まれた「顔の濃い群馬県民が職質された」というネタが最初らしいですけどね。「どこから来たの?」「……ぐんま」「ミャンマー?」「ぐんま」「グンマーね。ビザは持ってるの?」みたいな。 井田 天気予報の最高気温が、群馬だけなぜか誤植で56度とかになってる……みたいな画像も出回りましたよね。それから、明らかなアフリカの画像に「グンマー」って文字を入れるネタがはやりだしたんですかね? 北村 今、Googleの画像検索で、普通に漢字で「群馬」って検索しても、アフリカの画像ばっかり出てきますから(笑)。冷静に考えると結構ひどい画像ばっかなんですけど、「グンマー」ネタに対して怒ってる群馬県民って、全然いないと思いませんか? 井田 いないですね。やっぱり、もともと自分の地元に対してあんまり自信を持ってないから、ネタであっても、いじってもらえたらうれしいと思ってるんじゃないですかね。「こんなネタ、ひどい!」とか言ってる人って、たいがい県外の人ですもん。 北村 福岡県の人は、「修羅の国・福岡」ってネタにされて怒ってましたけどね。 井田 ええーっ、格好いいじゃないですか、修羅の国! 世紀末の世界で巨大な馬に乗って「ヒャッハー!」みたいな(笑)。まあ、福岡くらいメジャーな名物がいっぱいある県になると、地元に対するプライドも高いでしょうから、ネタにされると怒っちゃうんでしょうね。
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北村 群馬県は他県民に誇れるような名物、あんまりないですからねぇ……。ボクも東京の友達から「群馬に行くとしたら、どこがオススメ?」とか聞かれても「行かないほうがいいんじゃない?」とか答えちゃいますもん。 井田 ええーっ! 北村 群馬の観光地って、自動車持ってること前提な場所ばっかりだから、電車で旅行しに行く人にはオススメしづらいんですよ。 井田 あー、電車で旅行するのはムリですね。 北村 だから、テキトーに「温泉じゃない?」とか言っちゃうの。 井田 「群馬の観光地といったら温泉!」ってイメージは強いですけど、温泉なんて全国どこにでもありますからね……。個人的には「高崎白衣大観音」とか、陸軍火薬製造所跡地の「群馬の森」なんかをオススメしたいんですけど、やっぱり好き嫌いが分かれるスポットなんで……群馬って、誰にでも愛される土地ではないですね。
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■「実は群馬は軍事国家だった!」という妄想 北村 そんな、他県に向けて自慢するものが乏しい群馬県ですけど、2012年の「都道府県魅力度ランキング」で最下位になってしまいまして……。 井田 最下位は最下位で、おいしいと思いますけどね。 北村 そうなんですよ! ……ということで「魅力度最下位というのをネタにして笑っちゃおう」と思い、群馬の自虐ネタ&あるあるネタを集めた『群馬のおきて』という本を出版したんですが、井田さんが『お前はまだグンマを知らない』という漫画を描こうと思ったきっかけって、なんだったんですか? 井田 以前から漠然と「群馬の漫画を描きたいな……」とは思っていたんですよ。でも、ただ単に舞台が群馬という漫画を描いてもあんまり意味がないので「どういう形にするのがいいかな?」と保留していたんですが、「@バンチ」という雑誌で『誰かカフカを守って』という漫画を連載していた時に、おまけのページでコラムを書かせてもらえることになったんです。そこで『一分間だけ、群馬を語る。』という1ページ漫画を描くことにして、陸軍の航空機を開発していた「中島飛行機」だったり、「高崎白衣大観音」だったりを紹介していたんです。 北村 はー、その頃から群馬ネタを。 井田 で、それがエスカレートしてきて「群馬にコレとコレがあるってことは、裏にこんな陰謀があってもおかしくないんじゃないか……」みたいな陰謀論を交えた妄想を広げて、「実は群馬は軍事国家だった!」という妄想設定の『お前はまだグンマを知らない』というネット漫画を連載することになったんです。 北村 あ、今後そういう展開になる予定なんですか? 井田 今のところは、ネット上での「グンマー」ネタや、あるあるネタみたいなものを取り上げてますけど、それだけをやりたいワケじゃないんで、どんどん妄想の「グンマ」を広げていきたいですね。ネット上のネタだけを扱ってても、すぐにネタ切れちゃいますし。 北村 まあ、ネット上での「グンマー」って、だいたいアフリカのことですからね。 井田 わりとメチャクチャ描いてるのに、群馬の人たちがTwitterで「だいたい合ってる」って、つぶやいてるからうれしいです(笑)。 北村 合ってないですよ! 井田 一応、「ここからここまでは本当の情報で、ここからは井田の妄想ですよ」っていうのを、ちゃんと説明できるようにはしようと思っているんですけどね。たとえば、第4話で「グンマ大学の研究チームが2004年にまとめた研究結果によると、グンマ人の肉体のおおよそ0.0024%が焼きまんじゅうと同じ成分で構成されていたという」というネタが出てくるんですけど、そこには「上毛民報社『焼きまんじゅう文化史1』参照」というように『魁!!男塾』の「民明書房」みたいな出典が書いてあるんで、「ああ、これは妄想なんだな」って分かるという。 北村 逆に分かりづらいですよ! 子どもの頃は「民明書房」も本当にあるんじゃないかって思ってましたよ。 井田 ゴルフの起源が「呉 竜府(ご りゅうふ)」だなんて、ちょっと考えればウソだって分かるじゃないですか!(「ゴルフの起源は中国の呉竜府が考案した説が支配的である」という、代表的な「民明書房ネタ」。間違ってる! と出版社に抗議した人もいたとか) 北村 それも信じてたんですよ、子どもってバカだから! 井田 まあ、漫画に出てくるのはあくまで「グンマ」なんで……。こちらの脳内で妄想が広がった「グンマ」だということでご理解いただければ。たまに間違えて「群馬」って書いちゃうんですけどね。
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■住むのにはいい! ……観光はあきらめる 北村 一応、編集部からは「どうやったら群馬が盛り上がるか? みたいなことも話し合ってくれ」と言われているんですが……この県は、どうしたらいいんですかねぇ? 井田 来年、「富岡製糸場」が世界遺産に登録される可能性があるらしいんで、県としてはそれをイチオシにしてって考えているみたいですけど……。正直、富岡製糸場の地域は閑静なところなので、あそこに観光客が増えても群馬全体は潤わないと思うんですよね。 北村 また鉄道の便が悪いから、ピンポイントで富岡製糸場に行ったとしても、別の観光スポットにまでは寄ってくれそうにないですし。群馬って、全体的に交通機関のつくり方が間違ってますよね。そもそも高崎駅に新幹線が来てるのに、どうして県庁所在地である前橋駅に新幹線が通ってないんだと。 井田 おかげで前橋駅なんて、めったに行く機会がないですからね。 北村 駅前、県庁所在地だと思えないくらいに荒廃していますよ。2012年に「エキータ」という、「駅の北にあるから……」って最低なネーミングセンスの商業施設がオープンしたんですが、この間行ったら、そこの目玉だったハズの「味の駅」が早くも潰れてて、廃墟みたいになってましたから! 井田 いっそのこと、前橋市と高崎市が合併しちゃえばいいんですけどね。 北村 確かに、そうなったら人口70万人以上の北関東ナンバー1都市になれるんですけどね……でも、前橋と高崎って、メチャクチャ仲が悪いのでまずムリでしょうね。 井田 かつて両市の間で県庁の誘致合戦とかがあったとは聞いてますけど、ホントにそんなに確執があるんですか? 北村 ありますよ! ボクの通ってた前橋高校と高崎高校なんて、昔は利根川を挟んで石を投げ合ってたらしいですもん。 井田 そんな都市間抗争の代理戦争みたいなことを! 北村 で、「さすがに危ないから運動で決着をつけよう」ということで、毎年「定期戦」という対抗運動会をやるようになったんですが、前橋高校はクリーム色のジャージを着ているんで「豚ジャージ」、高崎高校は観音山にあるから「山猿」と、お互いを罵り合うという。 井田 それじゃあ合併は不可能ですね。……でもまあ、群馬って、台風も地震もめったに被害がないし、海なし県だから水害の心配もないし、住むのにはいい場所だと思いますよ。 北村 確かに。しかも前橋は、全都道府県庁所在地の中で一番地価が安いらしいですからね。関東なのに……。 井田 東京からも近いし、結構便利だぞ、みんな! 北村 じゃあ、観光で盛り上げるのはあきらめて、定住者を増やす作戦で……。まあ、アーティストやフリーランスの人なんかを誘致したら、地価や物価も安くて住みやすいし、新幹線なら東京にもすぐ出られるし、喜びそうですよね。 井田 浅間山の噴火だけが若干心配ですけど、家を建てるなら群馬一択でしょう! 北村 そういう意味では、「安中榛名」をオススメしたいですね。ムリヤリ新幹線駅を造ったものの、利用者がほとんどいなくて「秘境駅」なんて呼ばれているらしいんで、家賃や地価もメチャクチャ安いはずですよ。しかも、東京まで60分で行けますから! 井田 ああ、いいですねぇ。 北村 まあ、新幹線しか走ってない駅なんで、隣駅の高崎や軽井沢まで10分で行けるものの、運賃は2000円以上かかりますけど……。 ●『おまはまだグンマを知らない』は『くらげバンチ』(新潮社)にてほぼ週刊連載中!(毎週金曜日更新、完全無料) <http://www.kurage-bunch.com/

「大抵のテレビ番組が嫌い」テレビ東京“鬼才”ディレクターから見た“やらせ問題”とは

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 空撮映像で全国各地の風景や建物を紹介する『空から日本を見てみよう』、「童貞史」「スカートめくり史」といった一風変わった切り口で日本文化史を調査する『ジョージ・ポットマンの平成史』など、数々の話題作を世に送り出してきたテレビ東京の高橋弘樹ディレクター(プロデューサー)。  そんな彼が先日、著書『TVディレクターの演出術 物事の魅力を引き出す方法』(ちくま新書)を出版した。この本では、限られた予算で魅力的な番組を作るためのノウハウが紹介されている。相次ぐやらせ問題など、何かと目の敵にされやすいテレビ業界の片隅で、「若き奇才」は何を思うのか? ――著書を書く上で苦労したことや、気をつけたことはありますか? 高橋弘樹氏(以下、高橋) テレビって、映像じゃないですか。それを文章に表すのは、なかなか難しいなとは思いましたね。だから、そこは意識していろいろ工夫しました。 ――映像に関する話題は、具体例を挙げたりしてかなりわかりやすくなっていますね。 高橋 まあ、番組を作るときも同じですからね。視聴者にわかりやすく見てもらうようにするのが基本なので。そのクセは出ているかもしれないです。 ――この本の中で、「ディレクターが自分で台本やナレーションを書き、自分でカメラを回し、タレントはあまり使わない」という手法を「『手作り』で番組を作る」と表現していますね。手作りにこだわるのは、やはりテレビ東京がほかのキー局よりも、制作費が少ないためなんでしょうか? 高橋 それはありますね。有名なタレントはあまり使えないから、方法論を変えないといけないんですよ。だったら、ディレクターがガッツリ時間をかけて深く掘ることで戦おう、みたいな風潮は、テレビ東京の一部の勢力にはありますね。僕もそれを引き継いでいると思います。 ――ということは、この本に書かれている制作のノウハウの中には、先輩から受け継いだこともたくさんあるんでしょうか? 高橋 そうですね、先輩から引き継いだ教えを、自分なりにかみ砕いています。テレビ東京にも何班かあるんですけど、僕は『TVチャンピオン』をやっていた部署にいて。その血を色濃く引いているので、そこでの教えが詰まっている気はしますね。 ――この本では、インターネットで情報を調べるための検索術についても詳しく書かれているのが面白いと思いました。これは、ご自分で編み出した方法なんですか? 高橋 そうですね。結局、リサーチって、適当にやると非効率的じゃないですか。ネットでは効率よくサクサクと調べ尽くして、その次にやっと現場に行けるわけで。そのためにはやっぱり、網羅的にやるというのが重要だと思うんです。現場で何かを見つけても、それがネットにすでに出ていたら、その情報価値は下がるわけじゃないですか。網羅的に調べる必要性は、やりながらずっと感じてましたね。その上で、自分の中で体系化していった感じです。 ――著書の中で「僕は大抵のテレビ番組が嫌いです」と書かれていますが、入社する前からテレビは嫌いだったんですか? 高橋 好きな番組もありましたけど、いわゆるバラエティとかお笑い番組はあんまり見てなかったです。だったら本を読めばいいや、と思っていたので。今は必要に駆られて見ることはありますけど。 ――好きな本のジャンルは? 高橋 なんでも読みますけど、どちらかというと、フィクションよりはノンフィクションが多いですね。 ――好きな書き手は? 高橋 西村賢太さんは好きです。あの人が書いているのは、ノンフィクション寄りのフィクションですよね。ノンフィクション系の人では、上原善広さん、石井光太さん、佐藤優さんも好きです。社会でタブーとされているところや、あんまり人が光を当てないようなところを変な切り口で切っていったりする人は好きですね。それは『ジョージ・ポットマンの平成史』の作り方と、似てるかもしれないです。 ――テレビをほとんど見ないというのは、作り手としては珍しいですよね。 高橋 まあ、よくないとは思いますけどね。でも、普段テレビをつけてる人の割合(総世帯視聴率)は、ゴールデンタイムでも60%ぐらいじゃないですか。だとすると、テレビつけてない人が40%ぐらいいるわけだから、テレビを嫌いな人も結構いると思うんですよね。そこに向けて番組を作っていければいいのかなと思いますね。 ――「テレビ嫌いが見たいと思う番組を作る」というのが、高橋さんのモットーだそうですね。 高橋 そうそう、僕の中ではずっとそのコンセプトがあって、なるべくそういう方向に持っていこうとはしています。 ――最近のバラエティ番組はテロップやナレーションなどで説明過剰になってきていますが、高橋さんはあまりそういうのが好きではないそうですね。 高橋 あんまり好きじゃないですね。ボケました、ツッコみました、ワッハッハ、みたいなのが、ちょっとありきたりに見えるというか。全部説明しないで、違和感を出してシーンとさせるくらいのほうが好きは好きです。 ――見ている人に考えさせる演出、ということですね。 高橋 ちゃんと見てる人は、そういうところも楽しんでくれると思うんですよね。でも、これがなかなか難しくて。こういうのを総称して「センス芸」というんですが、「センス芸を発動させる番組は数字が取れない」という定説がありますね。やっぱりなるべくわかりやすく作って、笑いどころには笑いを足して、つっこんであげると。そういう王道の番組作りをするほうが、数字は取れるんですよ。だから、センス芸を発動させるのは悪だとされる雰囲気はありますけどね。 ――最近、『ほこ×たて』(フジテレビ系)でやらせが発覚して番組が打ち切りに追い込まれるという事件がありました。「やらせ」と「演出」の違いはなんだと思いますか? 高橋 「やらせ」の定義は、辞書的にいうと「制作者が出演者にお願いして何かをやってもらうこと」ですよね。でも、出演者に何かをお願いしてやってもらうことが、必ずしもやらせになるわけではないと思っています。  もちろん、存在しない事実をでっち上げるのはダメです。例えば、普段は行列ができないラーメン屋さんなのに行列があるように見せる、というのは絶対ダメですよね。でも、真実を伝えるという目的のために、ディレクターが努力することは必要だと思うんです。  例えば、この本でも書きましたけど、ペルーのスラム街を取材したときの話です。そこで周りの人たちに現金収入を得られるように頑張って編み物を教えているおばあさんがいて、みんなからすごく感謝されていたんですよね。その「感謝されている」ということは、真実なんですよ。でも、ディレクターは1年ずっとその人に張り付いてるわけにはいかないので、何もしなかったら1年に1回しかないような感動的なシーンを撮れないんです。  そこで、母の日にお祝いのイベントがあるというのを聞いて、「じゃあ感謝の手紙を書いてみたら?」と提案したんです。そしたら、その人が本当にいい手紙を書いてきたんですよね。その結果、普通にインタビューするだけじゃ、引き出せない感情とかが吐露されたんです。  僕は、それが真実だと思うんです。真実を伝えるためにディレクターがそういう環境に持っていく、ということは、どんどんやるべきだと思います。それをやらないなら、ディレクターなんて必要ないですよね。誰が撮っても同じになるわけですし。それは、演出だと僕は思います。 ――今のテレビを取り巻く状況をどう思いますか? 高橋 テレビ業界を目指す若い人が減ってるのは、事実ですよね。なんで減っちゃったかというと、インターネットとかいろいろな娯楽が出てきたから、相対的に減ったというのはあるかもしれないけど……。いまテレビにあんまり信憑性がないですよね。ネットのおかげで、テレビがウソついてたこともある、というのがどんどん露見してますから。 ――バレやすくなってるんですね。 高橋 それは真摯に受け止めなきゃいけないと思うんです。そういうことがあるから、テレビなんてうさん臭いし面白くない、とていう空気が世の中に蔓延しちゃってる感じはあるんですよね。ただ、そういうことをやっちゃうのは、本当にごくごく一部の、2~3%ぐらいの人なんですよ。僕が知ってるテレビのディレクターの97~98%ぐらいは、やっぱりかなり真摯に、真面目に番組を作ってますね。でも、そうじゃない2~3%の人の印象が強くて、テレビを志望してくれる人が減ってるのかなという気はしますね。  テレビの仕事は面白いです。自分が興味のあることを調べて、現場に行って取材して、それを視聴者の皆さんにお届けする。こんな楽しい仕事はないなって思うんですけど、ほんのちょっとのネガティブな情報のせいで、テレビ業界を目指す人が減るのはもったいないなあと思いますね。だからこの本を通じて、テレビ作りの楽しさを知ってほしいです。 (取材・文=ラリー遠田) ●たかはし・ひろき テレビ東京制作局プロデューサー・ディレクター。1981年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。05年テレビ東京入社。『TVチャンピオン』『新説!?日本ミステリー』『決着!歴史ミステリー』『ザ・ドキュメンタリー』『空から日本を見てみよう』などのディレクターを経て、『ジョージ・ポットマンの平成史』のプロデューサー・演出を担当。現在『空から日本を見てみようPLUS』プロデュ―サー、『世界ナゼそこに?日本人』ディレクター。著書に『ジョージ・ポットマンの平成史』(伊藤正宏との共著、大和書房)がある。

「優待株投資は農業みたいなもん」“カリスマおじさん”桐谷さんに聞く、素晴らしき株主優待生活の世界

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撮影=後藤秀二
 関ジャニ∞の村上信五とマツコ・デラックスがMCを務める『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)で紹介された、現金をほとんど使わない株主優待生活という異色のライフスタイルが人気を集める、“株主優待のカリスマ”桐谷広人さん。25歳よりプロ棋士(七段)として活躍し、現役時代は“財テク棋士”としても知られていた人物で、現在は大量に保有している株主優待を使い切るため、自転車で日々奔走している。そんな桐谷さんが、このたび『桐谷さんの株主優待生活』(角川書店)なる単行本を上梓。株主優待生活とは一体どんなものなのか、本人を訪ねた。 ――今日も颯爽と自転車で登場ですね。テレビでは株主優待を使い切るため、毎日分刻みのスケジュールをこなしていると紹介されていましたが、本当にそんなに慌ただしい毎日を送っているんですか? 桐谷広人さん(以下、桐谷) 普段は8時に起きて9~15時まで株の取引をやって、終わったらもうグッタリ。そこから30分ほど仮眠を取って、16時からスポーツジムへ向かいます。平日の18時までしか利用できない会員なので(ジムの優待券を換金して、そのお金で近所の別のジムの会員になっている)、急がないと間に合わないんですよ、えぇ。雑誌などの取材もよく受けるんですが、その時間によっては10分くらい入浴だけして出ることもあります。でも、毎日行かないと、もったいないからね。 ――桐谷さんが急いでいる理由には、優待券を使って見られる映画のスケジュールによるところも大きいそうですが。 桐谷 多いときには1日3本、年間160本ほど見ます。ただ、そんな生活しているので、映画館に行って映画を見てると、ついつい寝ちゃうんですよね……。 ――本末転倒じゃないですか(笑)。さて、本題に入りますが、現在の保有銘柄数はどれくらいですか? 桐谷 だいたい600銘柄ですね。そのうち優待株(株主優待制度を実施している企業の株)は400銘柄くらいです。こんなに持っている人はあんまりいませんね、えぇ。株の投資というのは、銘柄が多くなると注意力が散漫になるということで、あまりよくないといわれているんですが、優待株は一単位持っていても数単位持っていても、同じ優待が来る場合が多いんです。だから優待株投資家は、“広く浅く持つ”というのがパターンなんですね、えぇ。 ――その優待株を持っていると、どんなサービスが受けられるんですか? 桐谷 配当のほか、優待券や優待品(現物)ですね。いろいろなジャンルがあって、商品券や飲食券、QUOカード、おこめ券、映画のチケット。また、冠婚葬祭のカタログギフトのように、カタログから好きなものを選ぶタイプもあります。日用品や食品、家電から衣服まで、なんでもあります。最近もらって気に入っているのは、リクライニング座椅子かなぁ。 ――本当にいろいろあるんですね。これだけあれば、お金を使わずに余裕で生活できそうですが、1カ月の生活費って、どれくらいなんですか? 桐谷 家賃が13万円、電気・ガス・水道・インターネット・新聞代などでだいたい2万ちょっと。それと交通費ですね。毎月、実家がある広島まで帰っているんで。それが夜行バスで1万5000円くらい。食費はまったくかからないです。というのは、お米もソーセージも缶詰も梅干しなんかも優待で送られてきますし、飲食店の優待券もありますから。まぁ、現金で払っている分も、配当金で賄えてしまいますね、えぇ。 ――株で生計を立てていると聞くと、すごくギャンブラーな感じがしますが……。 _MG_4741.jpg 桐谷 確かにデイトレード(一日のうちに売買を済ませて損益を確定させる取引のこと)はギャンブル的な要素がありますが、優待株投資は売り買いするのではなくて、株を持っていると配当が来て、優待券や優待品が定期的に来る。毎日チェックする必要はないですし、種をまいて作物を収穫する、農業のようなもんなんです、えぇ。今、1000万円を5年定期預金にすると、金利は年に4000円にしかならない。ところが、優待株投資をしていると、配当と優待で、金額に換算すると、だいたい年に60万円分くらいくるんですね。150倍も違う。私も以前はデイトレードをしてましたが、今は優待がメインです、えぇ。 ――そもそも、優待生活を始めたきっかけは? 桐谷 バブルのころまでは本当によかったんですが、それがはじけて急降下。それから山一証券が倒産して、リーマン・ショックで大損して、2億数千万くらい損失を出したんですね。しかも信用取引という、証券会社から1億も金を借りてやっちゃってたもんだから、もう大変。1日で2000万円くらい損失を出したこともあるんですね、えぇ。おまけに、将棋連盟理事選で会長側に投票するのを拒んだため、一切仕事をさせてもらえなくなり、無収入になっちゃったんです。それで困って夜も眠れなくなったり、ヘモグロビンA1c値もかなり上がっちゃって……。でも、まだ保有している株がいくつかあって、いろいろなモノが送られてくるので、それで生活できるんじゃないかと思ったのがきっかけですね、えぇ。 ――2億数千万円ですか!? そこから普通のお仕事に就こうとは思わなかったんですか? 桐谷 棋士は、将棋の巡回教室なんかやって1日8万円くらいもらえるんですが、私の場合はそれも止められちゃいましたし、額が額だけに、普通のバイトに行って1日1万円もらって働く気には、とてもならなかったんですよ。だったら、なんとか優待でお金使わずに生活して、頑張って復活するしかない。株で損した分は、株で取り戻すしかないと思ったんです。 ――根っからの勝負師なんですね。 桐谷 1年前にアベノミクスが起こって、昨年12月に信用取引の借金はなくなりました。もし、そのまま続けていたら大儲けしたんですがね……。以前「ダイヤモンドZAi」(ダイヤモンド社)のアベノミクス特集で、6ページほど、バレーボールの川合俊一さんが取り上げられていたんです。見出しに「アベノミクスで外車何台分か儲けさせてもらいました」って書いてあって、あとは豪快に売買した話。その次ページをめくると「早々に勝負を降りて儲け損ねた!」という見出しで、私のページが2ページありました……はい。その後、川合さんとお会いする機会があったんですが、川合さんはアベノミクスでは儲けたけど、その前は大損していたそうなんです。彼は帳面をつけていないから損したことは忘れていて、実はぜんぜん儲かっていないんですよね。だからまあ、トータルでは私より儲けていないなと思って、安心しました。川合さんは運動神経はいいけど、株式投資の腕はそれほどでもないよね。 _MG_4765.jpg ――(笑)。棋士時代は“コンピューター桐谷”と呼ばれていたそうですが、棋士としての経験は投資に生かされていますか? 桐谷 はい、やはり記憶力は大事ですね。私は毎日、克明に帳面をつけていましてね。株というのは、原則として儲けてから売らなくちゃいけない。ところが買値を忘れちゃうと、損したところで売っちゃったりするわけですよね。原則的に売った値段より高かったら、買い戻さない。買った値段より安かったら、売らない。ある程度、記憶力がよければ失敗しないんです。ただ記憶力が悪くても、会社とか株の資料をペラペラめくって調べればいんです。私も何度も大損しましたけど、その都度生き残っているのは、普段から質素な生活をして、儲かっても豪遊しない。ちゃんとためているので、やられたときでもなんとかカバーできるんです。 ――優待株、優待生活の魅力とはどんなところですか? 桐谷 そうですねぇ、優待で金券とか映画券をもらうと、今まで行ったことのないお店や場所に行って、おいしいものを食べたり、遊んだりできますし、自分の生活の幅が広がりますね、えぇ。毎日、楽しいですよ。 ――今回の本は、これまで株に興味のなかった比較的若い層に向けて作られたそうですが、ごくごく平凡なサラリーマンでも、桐谷さんのように優待生活を楽しめますか? 桐谷 3~4万円くらいで買える優待株で、配当やQUOカード、図書券といった優待と合わせて利回り5~10%になる銘柄は、実はけっこうあるんですよ。口座はネットで無料で開けますし、10万円以下なら手数料もほとんどかからない。買った株が値上がりすれば儲けだし、値上がりしなくても、いろいろ優待が来るんでね。面白かったら増やしていけばいいし、優待をやっている人のブログや、経済誌を参考にするといいんじゃないでしょうか。たまに潰れる株もありますが、それは交通事故みたいなもの。いくつか株を持っていれば、そちらでカバーできます。人生はやっぱり、いろいろありますからね。私なんて日本航空が潰れて、1000万円ほどが紙切れになったこともありましたから。それと比べたら、3~4万円なんてたいしたことないですよ! (取材・文=編集部) ●きりたに・ひろと 1949年生まれ、広島県出身。七段元プロ棋士、(故)升田幸三実力制第四代名人門下。現役時代より、財テク棋士として有名に。一時は株式600銘柄、時価3億円分を保有。サブプライム危機やリーマン・ショックで大損害を被るが、株を売買し続けることで復活。07年に引退後は、保有する400もの優待銘柄をやりくりし、現金をほとんど使わない株主優待生活を送っている。