
(c)2013 SHINCHOSHA
ここ数年、「未開の地・グンマー」などと呼ばれてやたらとネット上でバカにされ、ネタになっている群馬県。しかも2012年の「都道府県魅力度ランキング」では魅力度最下位、さらに化粧品メーカーのポーラが発表した「美肌県グランプリ」でも最下位になってしまったりと、踏んだり蹴ったりの状態なのだ。
しかし、今年の夏の甲子園では前橋育英高校が優勝。群馬のゆるキャラ「ぐんまちゃん」も「ゆるキャラグランプリ2013」で3位に入賞。サブカル方面でも『群馬のおきて~グンマーを楽しむための52のおきて』(アース・スターエンターテイメント)という本が出版されたり、新潮社のWebマンガサイト「
くらげ バンチ」で掲載中の漫画『
お前はまだグンマを知らない』が話題になったりと、意外なところで注目度が高まっていることも事実。
……ということで、残念ながら「地味でビミョーな県」というポジションが定着しつつある群馬県をどーにかするために(?)、『群馬のおきて』の作者・北村ヂンと、『お前はまだグンマを知らない』の作者・井田ヒロトによるグンマーサミットを開催! どうしたら群馬県は魅力度あふれる県になれるんでしょうか!?
■外に出てみないとよさが分からない県
北村 群馬をネタにして本や漫画を描いている2人、という対談なんですが、井田さんとボクの群馬との関わり方って逆なんですよね。ボクは出身が群馬で現在は東京に住んでいるんですが、井田さんは外から群馬にやって来たんですよね。
井田 そうですね。神奈川生まれなんですけど、それから父親の仕事の都合で千葉に行ったり引っ越しをしまくっていて、最終的に中学に上がる時に群馬の高崎へやって来たという感じです。
北村 群馬には、引っ越してすぐに馴染めました?
井田 怖かったですね。それまで千葉県のすごい過疎地に住んでいたんで、高崎に来て「ウワッ都会!」って思いましたもん。
北村 都会!? 群馬が!
井田 引っ越してきたのが、高崎競馬場のすぐ近くだったもんで。
北村 ああ、今はなき高崎競馬場! ボクは逆に、子どもの頃から「こんな田舎イヤだー!」と思い続けていて、大学進学と同時に東京に逃げたタイプなんです。
井田 確かに、生まれてからずっと群馬にいて「群馬が好き」っていう人って少ないような気がします。一回外に出てみないとよさが分からないというか……。自分も、大人になってから群馬を出て、東京に一年住んでみたり、埼玉に一年住んでみたり、韓国に一年住んでみたり、フラフラしていた時期があったんですけど、「そろそろ腰を落ち着けて漫画を描こう」と思って群馬に帰ってきてから、「群馬いいところだな」って感じましたから。
北村 ボクも普段は仕事で日本全国を回って珍スポットや奇祭などを取材しているんですが、群馬に関しては「もう知ってるから」ということでわりとノーマークだったんですよ。でも、いろんな県を見てきて、あらためて群馬を振り返ってみたら一番変わってて面白い県だなって思いましたね。

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■「グンマー」ネタに怒ってる群馬県民はいない
北村 で、最近ネットでは「グンマー」なんて呼ばれてネタにされ、ある意味、認知度が高まっている群馬ですけど、あのネタに関してはどう思いますか?
井田 ちょっと前までは、そのポジションが埼玉県だったじゃないですか。「ダサイタマ」って呼ばれたり、「さいたまさいたま!」みたいなアスキーアートがはやったりして。アレがうらやましかったんですよ。全国の人たちと、自分の地元ネタで盛り上がれるっていうのが。
北村 あ、じゃあ「グンマー」とか言われだした時はうれしかった?
井田 そうですね。ただ、何がきっかけだったんだろうっていうのは、不思議でしたけど。
北村 2010年頃、2ちゃんに書き込まれた「顔の濃い群馬県民が職質された」というネタが最初らしいですけどね。「どこから来たの?」「……ぐんま」「ミャンマー?」「ぐんま」「グンマーね。ビザは持ってるの?」みたいな。
井田 天気予報の最高気温が、群馬だけなぜか誤植で56度とかになってる……みたいな画像も出回りましたよね。それから、明らかなアフリカの画像に「グンマー」って文字を入れるネタがはやりだしたんですかね?
北村 今、Googleの画像検索で、普通に漢字で「群馬」って検索しても、アフリカの画像ばっかり出てきますから(笑)。冷静に考えると結構ひどい画像ばっかなんですけど、「グンマー」ネタに対して怒ってる群馬県民って、全然いないと思いませんか?
井田 いないですね。やっぱり、もともと自分の地元に対してあんまり自信を持ってないから、ネタであっても、いじってもらえたらうれしいと思ってるんじゃないですかね。「こんなネタ、ひどい!」とか言ってる人って、たいがい県外の人ですもん。
北村 福岡県の人は、「修羅の国・福岡」ってネタにされて怒ってましたけどね。
井田 ええーっ、格好いいじゃないですか、修羅の国! 世紀末の世界で巨大な馬に乗って「ヒャッハー!」みたいな(笑)。まあ、福岡くらいメジャーな名物がいっぱいある県になると、地元に対するプライドも高いでしょうから、ネタにされると怒っちゃうんでしょうね。

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北村 群馬県は他県民に誇れるような名物、あんまりないですからねぇ……。ボクも東京の友達から「群馬に行くとしたら、どこがオススメ?」とか聞かれても「行かないほうがいいんじゃない?」とか答えちゃいますもん。
井田 ええーっ!
北村 群馬の観光地って、自動車持ってること前提な場所ばっかりだから、電車で旅行しに行く人にはオススメしづらいんですよ。
井田 あー、電車で旅行するのはムリですね。
北村 だから、テキトーに「温泉じゃない?」とか言っちゃうの。
井田 「群馬の観光地といったら温泉!」ってイメージは強いですけど、温泉なんて全国どこにでもありますからね……。個人的には「高崎白衣大観音」とか、陸軍火薬製造所跡地の「群馬の森」なんかをオススメしたいんですけど、やっぱり好き嫌いが分かれるスポットなんで……群馬って、誰にでも愛される土地ではないですね。

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■「実は群馬は軍事国家だった!」という妄想
北村 そんな、他県に向けて自慢するものが乏しい群馬県ですけど、2012年の「都道府県魅力度ランキング」で最下位になってしまいまして……。
井田 最下位は最下位で、おいしいと思いますけどね。
北村 そうなんですよ! ……ということで「魅力度最下位というのをネタにして笑っちゃおう」と思い、群馬の自虐ネタ&あるあるネタを集めた『群馬のおきて』という本を出版したんですが、井田さんが『お前はまだグンマを知らない』という漫画を描こうと思ったきっかけって、なんだったんですか?
井田 以前から漠然と「群馬の漫画を描きたいな……」とは思っていたんですよ。でも、ただ単に舞台が群馬という漫画を描いてもあんまり意味がないので「どういう形にするのがいいかな?」と保留していたんですが、「@バンチ」という雑誌で『誰かカフカを守って』という漫画を連載していた時に、おまけのページでコラムを書かせてもらえることになったんです。そこで『一分間だけ、群馬を語る。』という1ページ漫画を描くことにして、陸軍の航空機を開発していた「中島飛行機」だったり、「高崎白衣大観音」だったりを紹介していたんです。
北村 はー、その頃から群馬ネタを。
井田 で、それがエスカレートしてきて「群馬にコレとコレがあるってことは、裏にこんな陰謀があってもおかしくないんじゃないか……」みたいな陰謀論を交えた妄想を広げて、「実は群馬は軍事国家だった!」という妄想設定の『お前はまだグンマを知らない』というネット漫画を連載することになったんです。
北村 あ、今後そういう展開になる予定なんですか?
井田 今のところは、ネット上での「グンマー」ネタや、あるあるネタみたいなものを取り上げてますけど、それだけをやりたいワケじゃないんで、どんどん妄想の「グンマ」を広げていきたいですね。ネット上のネタだけを扱ってても、すぐにネタ切れちゃいますし。
北村 まあ、ネット上での「グンマー」って、だいたいアフリカのことですからね。
井田 わりとメチャクチャ描いてるのに、群馬の人たちがTwitterで「だいたい合ってる」って、つぶやいてるからうれしいです(笑)。
北村 合ってないですよ!
井田 一応、「ここからここまでは本当の情報で、ここからは井田の妄想ですよ」っていうのを、ちゃんと説明できるようにはしようと思っているんですけどね。たとえば、第4話で「グンマ大学の研究チームが2004年にまとめた研究結果によると、グンマ人の肉体のおおよそ0.0024%が焼きまんじゅうと同じ成分で構成されていたという」というネタが出てくるんですけど、そこには「上毛民報社『焼きまんじゅう文化史1』参照」というように『魁!!男塾』の「民明書房」みたいな出典が書いてあるんで、「ああ、これは妄想なんだな」って分かるという。
北村 逆に分かりづらいですよ! 子どもの頃は「民明書房」も本当にあるんじゃないかって思ってましたよ。
井田 ゴルフの起源が「呉 竜府(ご りゅうふ)」だなんて、ちょっと考えればウソだって分かるじゃないですか!(「ゴルフの起源は中国の呉竜府が考案した説が支配的である」という、代表的な「民明書房ネタ」。間違ってる! と出版社に抗議した人もいたとか)
北村 それも信じてたんですよ、子どもってバカだから!
井田 まあ、漫画に出てくるのはあくまで「グンマ」なんで……。こちらの脳内で妄想が広がった「グンマ」だということでご理解いただければ。たまに間違えて「群馬」って書いちゃうんですけどね。

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■住むのにはいい! ……観光はあきらめる
北村 一応、編集部からは「どうやったら群馬が盛り上がるか? みたいなことも話し合ってくれ」と言われているんですが……この県は、どうしたらいいんですかねぇ?
井田 来年、「富岡製糸場」が世界遺産に登録される可能性があるらしいんで、県としてはそれをイチオシにしてって考えているみたいですけど……。正直、富岡製糸場の地域は閑静なところなので、あそこに観光客が増えても群馬全体は潤わないと思うんですよね。
北村 また鉄道の便が悪いから、ピンポイントで富岡製糸場に行ったとしても、別の観光スポットにまでは寄ってくれそうにないですし。群馬って、全体的に交通機関のつくり方が間違ってますよね。そもそも高崎駅に新幹線が来てるのに、どうして県庁所在地である前橋駅に新幹線が通ってないんだと。
井田 おかげで前橋駅なんて、めったに行く機会がないですからね。
北村 駅前、県庁所在地だと思えないくらいに荒廃していますよ。2012年に「エキータ」という、「駅の北にあるから……」って最低なネーミングセンスの商業施設がオープンしたんですが、この間行ったら、そこの目玉だったハズの「味の駅」が早くも潰れてて、廃墟みたいになってましたから!
井田 いっそのこと、前橋市と高崎市が合併しちゃえばいいんですけどね。
北村 確かに、そうなったら人口70万人以上の北関東ナンバー1都市になれるんですけどね……でも、前橋と高崎って、メチャクチャ仲が悪いのでまずムリでしょうね。
井田 かつて両市の間で県庁の誘致合戦とかがあったとは聞いてますけど、ホントにそんなに確執があるんですか?
北村 ありますよ! ボクの通ってた前橋高校と高崎高校なんて、昔は利根川を挟んで石を投げ合ってたらしいですもん。
井田 そんな都市間抗争の代理戦争みたいなことを!
北村 で、「さすがに危ないから運動で決着をつけよう」ということで、毎年「定期戦」という対抗運動会をやるようになったんですが、前橋高校はクリーム色のジャージを着ているんで「豚ジャージ」、高崎高校は観音山にあるから「山猿」と、お互いを罵り合うという。
井田 それじゃあ合併は不可能ですね。……でもまあ、群馬って、台風も地震もめったに被害がないし、海なし県だから水害の心配もないし、住むのにはいい場所だと思いますよ。
北村 確かに。しかも前橋は、全都道府県庁所在地の中で一番地価が安いらしいですからね。関東なのに……。
井田 東京からも近いし、結構便利だぞ、みんな!
北村 じゃあ、観光で盛り上げるのはあきらめて、定住者を増やす作戦で……。まあ、アーティストやフリーランスの人なんかを誘致したら、地価や物価も安くて住みやすいし、新幹線なら東京にもすぐ出られるし、喜びそうですよね。
井田 浅間山の噴火だけが若干心配ですけど、家を建てるなら群馬一択でしょう!
北村 そういう意味では、「安中榛名」をオススメしたいですね。ムリヤリ新幹線駅を造ったものの、利用者がほとんどいなくて「秘境駅」なんて呼ばれているらしいんで、家賃や地価もメチャクチャ安いはずですよ。しかも、東京まで60分で行けますから!
井田 ああ、いいですねぇ。
北村 まあ、新幹線しか走ってない駅なんで、隣駅の高崎や軽井沢まで10分で行けるものの、運賃は2000円以上かかりますけど……。
●『おまはまだグンマを知らない』は『くらげバンチ』(新潮社)にてほぼ週刊連載中!(毎週金曜日更新、完全無料)
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