もう遺骨も要らない!? 宗教学者・島田裕巳が提唱する、新たな葬式の形「0葬」

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島田裕巳氏
 日本人と「葬式」の関係が変化している。イオンが葬式ビジネスに参入し、ヤフーでもネットで葬式を申し込む「ヤフーの葬儀手配」というサービスをリリースした。肝心の内容も、かつては当たり前だった、寺やセレモニーホールを使用した大々的な葬式から、少人数で行われる「家族葬」や、通夜・告別式などを行わない「直葬」へと徐々に変化しつつある。  だが、葬式の世界における変化はとどまることを知らない。これまで『葬式は、要らない』『戒名は、自分で決める』(幻冬舎新書)などの著書を執筆し、従来の葬式のあり方に対して疑問を呈してきた宗教学者で作家の島田裕巳氏は、新著『0葬』(集英社)にて、遺骨も引き取らない新たな葬式のスタイル「0葬」を提案している。  いったい、日本人の「死」に対する意識はどのように変わったのか? そして、未来の葬式はどのような姿をしているのか? もしかしたら、葬式のない時代がすぐそこまで迫っているのかもしれない……。 ――これまで島田さんの著書では、葬式や戒名など、死をめぐる慣習についての疑問が投げかけられてきましたね。 島田裕巳(以下、島田) 葬式をめぐっては、日本社会の考え方が急激に変わりつつあるのを感じます。通夜も告別式も行わない「直葬」というスタイルも、言葉が誕生してからわずか数年のうちに、すっかりと定着してしまいました。 ――これまでの大規模な葬式の方法から、中身が削ぎ落とされていって、どんどんと簡略化されています。この変化には、どういう事情があるのでしょうか? 島田 高度経済成長の時代に都市化が起こりました。その時に都会に出てきた世代が、ちょうど亡くなる時期に差し掛かっています。それが一番大きな理由ですね。また、経済的な状況が悪化していることで、葬式にお金をかけられない、あるいは平均年齢が上がることによって大往生が増えているなど、さまざまな要因がかかわっています。 ――島田さんの著書によれば、葬式の平均費用は231万円ということです。正直「そんなにかかるのか……」と、驚いてしまいました。けれども直葬ならば、費用も20万円程度と、これまで10分の1に抑えられます。 島田 もちろん、お金を持っている人は立派な葬式を挙げればいいんです。けれども、問題はお金のない人。その人たちがどのように葬式を執り行うかについて、これまでの社会は答えられていませんでした。簡略化された葬式という選択肢が、これまで与えられてこなかったんです。 ――「直葬」を実際に選択する人は、どのくらいいるのでしょうか? 島田 葬式の情報サービス会社「鎌倉新書」が2012年に行った調査によれば、関東地方では22.3%が直葬でした。人を弔うことにお金をかけても仕方がない、という人は増えています。ただし、まだお墓に関しては必要と考える人は多い。同じく鎌倉新書の調査では、東京都では平均278.3万円が、お墓の購入代金として使われています。お墓にこれだけお金がかかるから、葬式にお金をかけられない。直葬が広がる背景には、こういった事情もあるのでしょう。 ――この先、日本人の葬式はどのように変化していくのでしょうか? 島田 現在は、貯金のある高齢者も多いですが、これからは、高齢者でもどんどんお金がなくなっていくから、葬式や墓には、今以上にお金はかけられなくなります。 ――やはり、簡素化の方向に進んでいくんですね。 島田 そもそも、葬式や墓にこんなに金がかかるのは現代に特有のことで、かつては葬式にほとんどお金はかかりませんでした。また、現在でも、韓国で37.3万円、アメリカで44.4万円、イギリスで12.3万円と、諸外国では日本よりもはるかに安価に葬式を挙げているんです。そこで考えたのが、遺骨を引き取らない0葬です。遺骨がなければ高額の費用がかかる墓も必要なく、火葬代だけで済みます。 ――遺骨すら引き取らない……そんなことが可能なんですか? 島田 一部の火葬場では可能です。そのような選択肢があること自体、普通は知りませんよね。0葬が普及するかどうかはわかりませんが、そういう方法もあるという可能性を提示したかったんです。世界的にも、こんなにも骨を大事にする国は珍しいんですよ。 ――外国の葬式では、火葬場から骨を引き取らない人も多いそうですね。 島田 日本国内でも、実は葬式の方法は地方によってまちまち。東京では通夜、葬式を挙げてから火葬をしますが、東北地方では通夜をして葬式をする前に火葬をしてしまう地域もある。そもそも、正しい葬式なんていうものはないんです。 ――島田さん自身の葬式は、どのように挙げてほしいですか? 島田 何もしなくていいですよ。 ――0葬の実践ですね(笑)。 島田 葬式自体、はたして本当に意味があるのでしょうか? 本当に深く付き合っている人でもない限り、葬式には行く必要はないと思います。 ――ただ、自身の葬式ではなく、両親などの喪主を務めるのであれば、生前の意向や世間体なども考えなければならず、事情は異なるのではないでしょうか? 島田 そうですね。ただ、とりあえず火葬して、それからゆっくりと考えようと思います。火葬をしてからその後を決めれば、時間的な余裕が生まれます。それから、どのような葬式をするかを考えても遅くはないはずです。 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●しまだ・ひろみ 1953年生まれ。東京都出身。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了(宗教学専攻)。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員などを歴任。現在、東京女子大学非常勤講師。NPO法人「葬送の自由をすすめる会」会長。

「マグロと一緒で、泳ぎ続けないとそこで止まっちゃう」チャレンジし続ける小橋建太の折れない心

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撮影=尾藤能暢
 2013年5月11日に武藤敬司、秋山準、佐々木健介ら錚々たる顔ぶれとタッグを組み、KENTA、潮崎豪、金丸義信、マイバッハ谷口ら、現在トップを張る後輩レスラーと繰り広げた壮絶な引退試合から約1年。プロレスラー・小橋建太は、引退後も休むことなく精力的に活動を続けている。そんな中、2014年4月25日には『今日より強い自分になる』(ワニブックス)を上梓。この本は、引退試合の舞台裏や度重なるケガや肝臓がんとの闘いを綴ると同時に、その中で培った「折れない心」を、仕事と闘う世の男たちへ向けて伝授するメッセージ集でもあるのだ。 「この本を書くに当たって、最初はちょっと抵抗があるというか、ちゃんとメッセージを送れるのかなって心配もありました。でも、僕の体験談・経験談を書かせてもらっているうちに、どんな職業であろうと、共通することがあるんだなって思って。これも引退後の新しいチャレンジだと思って書き続けました」  小橋の引退後のテーマは、この“チャレンジ”である。小橋は「第2の青春」を求め、引退後から講演やテレビ出演など、休むことなく活動を続けている。その理由を「いろいろなことが試せる期間だと思って。それに、僕はマグロと一緒で、泳ぎ続けないとそこで止まっちゃうから」と言い、さまざまなジャンルへ触手を伸ばしている。  そして、6月8日には、プロレスの聖地である東京・後楽園ホールで、自身がプロデュースするプロレス興行「FortuneDream(フォーチュン・ドリーム)1」が開催される。これは、小橋自身が「この選手の試合が見たい!」と思った選手をピックアップし、団体の垣根を越えた選手たちが集結するビッグイベントだ。出場選手は、全日本プロレスからは金丸義信、鈴木鼓太郎、宮原健斗。その他大日本プロレス、ZERO1、女子プロレスラーも参戦するなど、とてつもないバラエティ感になっている。 「『FortuneDream(FD)』のテーマは“熱い試合”です! 僕が思わずリングに上がりたくなってしまうような、そんな熱い試合を繰り広げてくれる選手を集めました! 今のプロレス界は30~40代の選手が多くて、20代の若手は少ないんですけど、FDでは若手選手も呼んでいるので、自分の団体では目立つことが難しくても、FDで熱い試合をすれば名前を売るチャンスになりますから」  このように、若手に対してもチャンスを与えるというのは、引退してもなおプロレス界やファンに影響力のある小橋だからこそできること。さらには、現在の若手に対して、ちょっとした不満もあるからのようだ。 B0000574_1.jpg 「僕らが若いころは、もっと貪欲だったような気がしますけど、今の若手を見てるとギラギラしたものが少ない。自分たちはどうにかして自分の力でのし上がって、トップになってやろうと思って頑張ってたけど、今はそういうヤツはあんまりいないのかも。もっとギラギラしていいと思うんですけどね」  また、プロレス界全体に関しても「プロレス界が持つ元気、パワーが弱くなっていると思うんです。いろんな団体がありすぎて、そのパワーが分散してることもあると思います。ひとつの場所で固まったら、お客さんもそこに集中しますからね。『FD』では、プロレスラーとして有名な選手よりも、そこで熱い試合ができるレスラーを集めました」という小橋。まさにプロレス団体の枠を超えて、ひとつの場所でエネルギーを放出させようというイベントになっている。この『FD』がプロレス界の本来持っているパワーを爆発させる起爆剤となるのだろか。  さらに『FD』のもうひとつの目玉、いやメーンイベントと言ってしまってもいいかもしれないのが、小橋建太vs長州力のトークバトルだ。小橋と長州。多くのプロレスファンにとって、この2人の接点を見つけるのは難しいはずだ。それもそのはず、小橋本人ですら「長州さんとは、挨拶程度しかしたことがないんです(笑)」というくらいの関係だからだ。これまでリング内外で幾多の名言を生み、マイクパフォーマンスでも超一流の長州と、朴訥でストレートな言葉をぶつける小橋とのこの“世紀の一戦”は、どうなってしまうのだろうか!? 「盛り上がるかもしれないけど、盛り上がらないかもしれない(笑)。それも面白いかなと。長州さんとはこれまで会話もしたこともないし、当日長州さんの会場入りも早くはないだろうから、打ち合わせもできないと思います。何を話すかもリングに上がってみないとわからないですし、そもそもどういう話をするのか想像がつきません!」  現役時代は実現しなかった小橋vs長州の一戦。本人たちですらどういう展開になるのか、まったくわからないこの戦いは、引退した小橋の「第2の青春」の口火を切るバトルになりそうだ。また、今回の『FD』の成功いかんによっては、第2・3弾と続いていくかもしれないとのこと。小橋の大号令のもと、プロレス界が団体やジャンルのしがらみを越えて、ひとつのリングに集結する日が来るのかもしれない。リングを降りたとはいえ、まだまだプロレス界に必要な男・小橋建太の今後から目が離せない。 (取材・文=高橋ダイスケ) ●書籍『今日より強い自分になる』 度重なるケガ、手術とリハビリ、がんとの闘い……。なぜ、小橋建太の心は折れなかったのか? 己との戦い方から、不安に負けないための独自の発想法まで。“鉄人”と呼ばれた男の、メンタルコントロール術。 定価:1400円(税込み) 発売:ワニブックス 発売中 ●日産センチュリー証券PRESENTS 『FortuneDream 1』 開催日時:6月8日(日)開場17時00分/試合開始18時00分 会場:後楽園ホール(東京都文京区後楽1-3-61/TEL03-5800-9999) 詳細<http://www.fortune-kk.com/pages/201406dream.htm>

「なるべくちっちゃいことのほうがいい」あばれる君が生み出す“パンチライン”の秘密

abareru0509.jpg  汗をかきながら全力で演じる「熱血コント」で人気急上昇中のピン芸人・あばれる君。最近では、『なら婚』(日本テレビ)という番組の企画で結婚式を挙げたことでも話題となった。  そんな彼が5月28日、初めてのDVD『あばれる君です よろしくお願いします。』をリリースする。あの珠玉のコントは、どうやって作られているのだろうか? ――街で一般の人に気付かれたり、声をかけられたりすることはありますか? あばれる君  ありますね、ありがたいことに。そういうときは、倍の笑顔で「ありがとうございます!」って返します。 ――どういうふうに声をかけられますか? あばれる君  「あばれる君ですか?」っていうときもありますし、「なんだっけ?」って言われて自分から名乗ることもあります。一番ひどいときには「スタミナさんですか?」って(笑)。雰囲気は近いんですけどね。 ――ネタはどうやって作っていますか? あばれる君  基本的には家で考えますね。パソコンは使わずに、紙に書きます。「人間が追い込まれたときにどうやって脱するか」っていうのをポイントに置いています。 ――なるほど! 確かに、そういう設定のネタが多いですね。 あばれる君  そうですね。追い込まれるときって、できるだけちっちゃいことのほうがいい気がするんです。たとえば、大工がトンカチを忘れて釘打つのどうするのかって考えて、手で打とうとするとか。トイレに行きたいのに先客がなかなか出てこないとか。できるだけちっちゃいことを壮大にやる、っていう感じですね。  小学校のときにダンスのテストみたいなのがあって、体育の先生の前でダンスをしないといけなかったんです。そこで僕の友達が動きをまったく覚えてなくて、アドリブで踊り出したんですよ。その姿がめちゃくちゃ面白くて。覚えてないと怒られるから、どうにかしようとしたんです。追い込まれても決してあきらめない人間って面白いなあ、と思ったのはそれがきっかけですね。 ――あばれる君のネタの中には、「怖くないって言ったらウソになります」とか、妙に印象に残るフレーズが多いですね。 あばれる君  ありがとうございます! 自分ではそういうのを「パンチライン」って呼んでるんですけど。そこが好きですね。それを言いたくて、そこに持っていくにはどうするかって考えます。「俺の尿意は時間を選んでくれない」とか。 ――お笑いをやるきっかけは? あばれる君  お笑いは子どもの頃から好きでした。小学生から『めちゃイケ』(フジテレビ系)見てて、中1で『オンバト』(NHK)ブームが到来して。そのときから「お笑い芸人って最強だな」って思ってたんですよ。歌手だったら歌手だけなんですけど、芸人だったら歌もできるしドラマにも出られるし。 ――小さい頃から芸人になりたいという気持ちはあったんですか? あばれる君  ありましたね。ムードメーカーと呼ばれて、クラスでも目立つほうでした。小4のときに演劇部に入って、「バラ星人」っていう自分の脚本の演劇を披露して、大ウケでした。高校では室伏広治さんのものまねを文化祭でやって、めっちゃウケましたね。大仏の仮面をかぶった状態で、それを脱いでハンマーを投げて「フォー!」って叫ぶ、っていう。 ――高校でウケそうなネタですね(笑)。 あばれる君  そう、あのときはすごかったなあ。高校でブレークしましたから。大学で東京に出てきて、田舎者だと思われたくないっていうのがあって、ちょっとスレました。眠いのに、無理してクラブとか行って、意地張ってるところはありましたね。眠いしうるさいし、ソファと耳栓が欲しかったです。 ――楽しくなかったんですか? あばれる君  まあ、楽しいときもありましたけど、あんまり楽しくはなかったですね。クラブで踊るってことができなかったんで。 ――お笑いの養成所に入ったのは大学時代ですか? あばれる君  はい、大学4年の頃です。ちょうどみんなが就活したりしているときに、僕は養成所に入りました。最初はコンビを組んで、1~2週間ぐらいやってたんですけど、合わなかったですね。相手が仮病使ってネタ合わせを休んじゃったりして。次の日も体調が悪いふりとかしていて。でも、絶対ウソなんですよ。二郎ラーメン大盛りを食べてたし。 abareru05093.jpg ――それでピン芸人になった、と。 あばれる君  はい、それからはずっと1人です。1人のほうが性に合ってましたね。いつでもネタを考えられるし、全部自分の責任だから、ピンのほうが楽です。ウケたときは独り占めですし。 ――でも、逆にスベったときのダメージも1人で引き受けないといけない、っていうのもありますよね。 あばれる君  そのリスクはでかいですね。スベると、次の日の朝まで恥ずかしいときありますからね。家でソファに座っていて、リモコン取るのも恥ずかしい、動きたくない、存在したくないって思って。 ――あばれる君はネタ中にたくさん汗をかきますが、これは体質なんでしょうか? あばれる君  体質ですね。幼稚園の頃から汗かきで。新陳代謝がいいんですよね。あと、舞台で汗かくのは緊張してるからだと思います。緊張しないと、かかないですもん。 ――人前に立つのはいまだに緊張しますか? abareru05092.jpg あばれる君  そりゃあ、しますよ。いつ慣れるんですかね? 慣れたいんですよ。焦ってる中にもキラリと光る冷静さがあるような、そういう男になりたいんです。  中学の頃、理科の時間にプレパラートを割っちゃったときも、汗ダラダラで。そのときにも周りに「なんでそんなに焦ってるの?」って言われましたね。 ――今後の目標は? あばれる君  ネタを英語に訳して、世界進出したいですね。地球の各地で「こいつやばいよ」って言われるくらいになりたいです。そのためには、全人類共通の共感できるところを探していきたいです。  あとは「お前、よくやったな」って言われることにチャレンジしたい。イモトアヤコさんだったら、山に登ってるじゃないですか。あれは壮大ですけど、僕はもっとちっちゃいことでもいいんですよ。最近チャレンジしたのは、ゴルフボールを3つ積み重ねるとか。 ――小さいことだけど、できたらすごい、みたいな。 あばれる君  トランプタワーとか、ドミノとか、24時間けん玉とか。根性でできそうなやつをやりたいですね。 (取材・文=ラリー遠田/撮影=名鹿祥史)

地元ヤカラとの戦い、難航する嫁探し……ケンコバと宮川大輔の“ほっこり”できない勝手気まま旅!!

IMG_8196_.jpg  2009年から始まった異色のトークライブ「あんぎゃー」。ケンドーコバヤシと宮川大輔が月1のペースでライブを行い、47都道府県をすべて“行脚”するという壮大すぎるプロジェクトである。2人が出会った名物、迷物、名所、迷所……それらをすべて還元してきたトークライブも、ついに東京でファイナルを迎える。感動のラストを前に、今ケンドーコバヤシは何を思うのか――。知られざる「あんぎゃー」の魅力を探る。 ――ケンコバさんと宮川(大輔)さんのトークライブ「あんぎゃー」、いよいよファイナルですね。 ケンドーコバヤシ(以下、ケンコバ) 単純計算で(全国行脚は)4年で行けるって言ってたんやけど、震災で開催できない月があったり、あと勝手に海外でやったりとかもあったので、結果足かけ5年くらいになりました。 ――そもそもこの企画のきっかけは、なんだったのでしょう? ケンコバ 以前、ヨシモト∞ホールで2人のトーク番組を一発やってもらったんですよ。そこですっごいスケベな話ばっかりしまして。いくらなんでもこれはアカンぞ、って怒られたんです ――確か「最強のAVを考える」とかでしたっけ? ケンコバ 日本刀の先にペニスつけて入れるとか(笑)。自由にやってええとは言ったけども、いくらなんでもこれはアカンやろ、と各所から言われまして。それを聞いて「だったら、ライブでやってやるよ!」と。トークでダメ出し食らったんで、トークで仕返ししたったっていうだけですね。 ――謎の反骨精神! ケンコバ 基本、反骨というか、反体制の2人ですから。スタンス的には。 ――全国を回るというコンセプトは? ケンコバ それは大輔さんがすごい俺のことを心配してくれてて、その心配が実際には5年後にも解消されてなかったんですけど、はよ結婚せいと。お前は田舎の純朴な子が似合うから、この企画で嫁を見つけろと。 ――そんな裏テーマがあったのですね。 ケンコバ そうなんです。いやぁね、女の子に関しては壮絶なエピソードが結構ありますよ。全国を「あんぎゃー」してきた中で。 ――では後ほど、強烈な思い出をお伺いするとして、まずはケンコバさんと宮川さんのつながりから教えていただけますか? ケンコバ これはね、本当に不思議な縁です。大阪で僕がデビューしたときは、すでに大輔さんは東京で(吉本印)天然素材というスターやったんですよ。その頃は飯食い行ったのも2~3回くらいの、あんまり近しい感じではなかったんです。  で、僕は大阪でちょいちょい忙しくなってきたのに、一回コンビを解散して仕事がゼロになったんですよね。それと時を同じくして大輔さんもチュパチャップスを解散しはって、まったくお笑いの仕事がないと。東京と大阪でお互い無職みたいな状態のときに、これまた東京に出てきてまったく仕事がなくなっちゃった雨上がり(決死隊)さんが、「もうこうなったらコントライブやる。全国ツアーやるから、大輔とコバ、おまえらヒマやから手伝え」と声をかけてくれたんです。当時東京には、よしもとが借り上げた合宿所みたいなところがあったんですよ。そこに僕と大輔さんずっと泊まって、雨上がりさんはそこから仕事行って、帰ってきたら4人でネタ考えて練習して。 ――テラスハウスみたいですね。 ケンコバ そう(笑)。そこで大輔さんと毎日オナニー見せ合ったりとか、どっちが飛ばすかとか、中学生みたいなことやっていて(笑)。「あ、いつまでもこういうノリで接せられる人おんねんな」とお互い思ったと思うんですよ。大輔さんは、この世界ではちょっと変わった人で、「俺、よしもとのそういうの(芸歴で先輩後輩を決めること)あんまり好きじゃないねん」っていうのを、当時からおっしゃっていて。年齢で一緒なのが一番心地ええねんなと。大輔さんとは同い年ですけど2年先輩なので今でも敬語は使ってますが、ほぼ同級生というか友達感覚でお付き合いさせてもらってます。 IMG_8114_.jpg ――以前お2人のトークライブで「大輔さんは究極のSで、僕は究極のM」とおっしゃっていましたが、そういう部分でも波長が合ったのでしょうか? ケンコバ 当時はそういう体になっていたかもしれないけど、実際Mに関しても大輔さんはすごいから(笑)。俺も、なかなか尊敬できるM仲間っていないんですよ。「俺Mです」とか言ってるヤツに限って、全然ガキだったり。だけど。大輔さん見てたら、この人、心から尊敬できるなって思いました。 ――どんな大輔さんを見て、Mを確信したのですか? ケンコバ いやぁ、大輔さんはお子さんもおられるんで、ここではあんまり言えないですけどね。まぁギリギリ言える範囲としたら……そうですね、「あんぎゃー」でタイに行ったときに、夜中にスーパー行ったら、大輔さんが2メートルくらいあるブラジル人のレディボーイと一緒に買い物してたことですかね。顔の下半分、ヒゲで青なってた。 ――タイ、ブラジル人、レディボーイ、2メール、青ヒゲ…… ケンコバ そうです。2人で魚卵のコーナーを物色してましたよ。なんやねん、まったく意味が分からない。 ――ホンマモンですね。 ケンコバ 今、居酒屋トーク感覚でSとかMとか言うじゃないですか。でもオマエらのそれはSじゃなくMじゃなく、自分勝手でガキなだけやと思うんですけど、大輔さんの話は、そんなことまったく思わないですね。あぁ、この人は求道者なんだなと。 ――その道を究めていると。 ケンコバ 陶芸家とか居合い抜きの人に近いですね。大輔さんは本当に感覚で生きている人。一方、僕は物事を考えるのが好きで、考察が趣味。でも、舞台ではちょっと逆っていうのが不思議なんです。僕が舞台では感覚で、大輔さんは理論。 ――「あんぎゃー」で2人が見つけるオモロイものは、まったく違いますか? ケンコバ いや、そこは似てるんです。だからやれてるんだと思います。あいつエロそうやな、っていう人も一緒。あいつ美人やけど、セックスあんまり良くないやろなっていうのも一緒(笑)。そういう感覚がすごく近い。 ――全国を旅するにあたり、事前リサーチなどはするのですか? ケンコバ 「るるぶ」ですよ。やっぱり昼飯は「るるぶ」頼りなところはありますね。でもね、地方に行くと日本の政治とかいろいろ考えますよ。中央集権って、ホンマなんです。「るるぶ」ペラペラな県とかありますよ。表紙と森の写真だけの「るるぶ」がね、ホンマにあるんですよ。中央集権については、もう一度考え直さなあきませんよ。 ――逆に地方のパワーを感じたのは? ケンコバ まぁ、ヤカラ方面ですね。マジかコイツらと。俺と大輔さんはどっかで頭おかしいから、マジのケンカになりかけたこと何回かありますよ。絶対ダメじゃないですか、テレビに出させてもらってる人間が。 ――ヤバかったのは、たとえば…… ケンコバ 山口県と千葉県でデカイ抗争ありましたね(笑)。なんかね、後でゾッとするんですけど、大輔さんといると一歩も引かへんようになっちゃうんですよ。うまく引けたのは埼玉くらいですね。埼玉は相手が超強そうやったんで(笑)。もう「ウソやろ?」っていう武闘派軍団出てきて。 ――マイルドじゃないヤンキー(笑)。 ケンコバ 一方で、東北に行ったら人の優しさに触れましてね。日本は北へ行けば行くほど、優しくなる。寒いからですかね、人にも優しくなれるのは。「あんぎゃー」は東日本大震災を挟んでいるんですけど、震災の時は大輔さんともよく話し合いましたよ。なんか俺たちもせなあかんと。「あんぎゃー」のカウントには入れてませんけど、宮城に行きましたし。2人が真面目な話したんは、あれが初めてかもしれないですね。 ――震災では、「笑い」が難しい局面に立たされていました。 ケンコバ あの時初めて、笑いの葛藤を感じましたね。笑かしてええんかなっていう。でも行ってみたら、皆さん笑いを求めていた。僕はこの世界に入って初めて、ちゃんと人を笑かそうと思ったかもしれない。 IMG_8169_.jpg ――あれ? それまでは…… ケンコバ 正直、そんな気持ちはないんですよ、俺。笑ってくれたらいいなとは思ってますけど。 ――自分が面白いと思うことをやって、結果お客さんが笑ってくれたらいいなという感じですか? ケンコバ いやいや、もっと自分勝手ですね。刑務所入らへんようにという具合です。こうやって吐き出しとかな、俺はいろいろ溜めたらきっとよからぬことをしてしまう。常識人とよく言われるし、確かに常識を守るのが趣味です。夜中の信号を守っているのは、俺くらいですよ、歩行者で。誰も見てないところで正義を貫くのが趣味なんですよ。頭おかしいんでしょうね。お前らにできへんことやったるっていうとこがあるんでしょう。難しいのは夜中の信号守ることですよ。 ――己との戦いですね。 ケンコバ だから、僕もちょっと求道者のところがあるのかもしれない。自分のそういうところも見つめ直した5年でした。 ――では、インタビューもたけなわになって参りましたので、そろそろ5年間の「あんぎゃー」におけるインパクト大エピソードを教えていただけますでしょうか? ケンコバ これは僕の中で「誰が呼んでん?」シリーズと呼んでいるんですけど、そうですね……あれは広島県での出来事です。僕と大輔さんと作家さんとよしもとの社員さんで打ち上げしてたんですけど、その時なぜか同じテーブルに両足血まみれの女の子がいて、一緒に飲んでたんです。後で振り返って、あれ誰やねん? と。謎中の謎なんですよ。両足血まみれの女の子を呼ぶわけないし、声かけるわけもないし。 ――飲んでるときは、気が付かなかったんですか? ケンコバ 僕らの会話を聞いてニコニコしてるだけだったので、別にジャマじゃなかったんですよ。これが話に入ってきたりしたら「おまえ誰やねん?」ってなったんでしょうけど。おまえ誰やねん、の機会すら与えてくれなかった。 ――こわいな~こわいな~系ですね。 ケンコバ ホンマですよ。あとやっぱり山口県の抗争ですかね。今どきそんなタレントいませんよね、昭和やないねんから(笑)。 ――事の発端はなんだったんですか? ケンコバ それもね、日本の中央集権の闇を感じたんですけど、山口はメインの繁華街がほぼシャッタータウンなんですよ。タクシーの運転手さんに「一番栄えてるとこに連れてってください」ってお願いしたら「何言ってんのよ、ここは滅びゆく街だよ」って言うんです。やっと一軒ラーメン屋を見つけて、そこでとりあえず飲んでたんですよ。そしたら若いやつらがTwitterかなんかで広めたんでしょうね。まず暴走族みたいなのが入ってきた。「おぉやっぱりおった~。一緒に飲もうや」って。なんでおまえらと飲まなあかんねんってモメてたら、めちゃめちゃイカついラーメン屋の大将が「うるさいんじゃ、おまえら。ラーメン食ってる間は俺の客じゃ、出ていけ!」って、暴走族に包丁突き出したんです。大将にお礼を言って飲み直してたら、さらにその上の方がバーンって入ってきよった。ホステス30人くらい連れてきて「コイツらとツーショット撮れ!」と。おお! 武闘派の大将どうすんのかと思ったら、ラーメンの湯切りして聞こえへんフリしてた(笑)。 ――大将!! ケンコバ ずっとお互いにらみ合いながら、ホステス30人と写真撮ったのはいい思い出ですね。 ――それもある意味「誰が呼んでん!」シリーズですね。 ケンコバ 後で山口出身のロンブー淳に聞いたら「実は、僕もあそこの店で殴られたことあるんです」って。そういう場所なんやと(笑)。でもよう考えたら、両足血まみれのニコニコ女のほうが怖いですけどね。 ――とにかく「あんぎゃー」では、お2人がすごい経験をされてきたと。 ケンコバ 静岡では「私のおっぱいは20代並みにキレイ」って豪語する80歳のママがやってるスナックに行って、大輔さんが「見せろ!」って言ったらホンマにキレイなおっぱい出てきたとか。そのとき、俺は泥酔してたから、もしかしたら記憶が間違ってるかもしれないんですけど、大輔さん、ちょっと咥えてたような気がします。 ――(笑)。今度の東京がファイナルというのは惜しいような、ステキな話ばかりですね。 ケンコバ 東京公演では全国からの選りすぐりの話が聞けますよ(笑)。ここには書けないような、すごい話いっぱいありますから。それを、わりかし今テレビに出させてもらってる2人がやってるというのは考えられないと思いますけどね。このコンプライアンス社会で。俺らも「あんぎゃー」してるときはヤンキーなんで。やったる! っていう気持ち。全国制覇の気合ですね。 (取材・文=西澤千央) 20140530_angya-tokyo-1.jpg ●「あんぎゃー」公演情報 日時:2014年5月30日(金) 18:30開場/19:00開演 チケット:前売 3,000円 当日 3,500円 ※全席指定 ※参加資格:高校生不可、18歳以上 会場:よみうりホール 【東京都千代田区有楽町1-11-1読売会館7階(ビックカメラ上)】 出演:宮川大輔、ケンドーコバヤシ プレイガイド ・チケットよしもと…0570-550-100【Yコード:100020】 ・チケットぴあ…0570-02-9999【Pコード:435-842】 ・ローソンチケット…0570-084-003【Lコード:33658】 お問い合わせ チケットよしもと予約問い合わせダイヤル 0570-550-100【24時間受け付け(お問い合わせは10:00~19:00)】 制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

芸人が選ぶ“天才”芸人・三四郎が漫才のオチに「ピー!」を入れるワケ

sanshiro0509_01.jpg  いま最も勢いに乗っている若手芸人・三四郎。『ゴッドタン』(テレビ東京系)では「若手芸人が選ぶ天才芸人1位」として紹介され、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)などにも出演。すぐに挙動不審になり、先輩芸人にも平気でかみつく小宮浩信の「生意気キャラ」も話題を呼んでいる。  そんな彼らが5月28日、初めての撮り下ろしDVD『一九八三』をリリースする。独特のテンポで予測不能のボケが飛び出す彼らの漫才は、同業者の間でも評価が高い。順調に波に乗りつつあるこの状況で、彼らは自分たちの現状をどう捉えているのか? ――DVDに収録されたネタは、どういう基準で選んだんですか? 小宮浩信(以下、小宮) いろいろな漫才を見ていただきたいので、タイプの違うやつをたくさん入れました。 ――DVDの中では、セリフに「ピー」音が入ってる箇所もいくつかありましたね。これだけピー音が入ってるお笑いDVDも珍しいですよね。 相田周二(以下、相田) 確かに、ピー多めですね(笑)。 ――ネタの途中で「ピー」がたくさん入るというのは、ご本人たちとしてはどう思われますか? 小宮  まあ、そこで「何を言ってるのかな?」っていうのを気にしていただいて、ライブに足を運んでくれたらいいなと思いますね。 相田  「ピー多すぎだろ」っていうのがボケになってるような感じもあるので、そこを楽しんでもらいたいですね。オチなのにピーが入ってるところとか、面白いですよね(笑)。 ――このDVDに収録されているネタの中で、特に好きなネタや印象に残るネタを教えていただけますか? 小宮  「桐島」とかは、あらためて見ても、笑えるか笑えないかすごく際どいラインかなと思いますね。これ、何やってるんだろう? って。やってる僕らもおかしいですけど、これで笑ってるお客さんもどうかしてると思いますね(笑)。 相田  僕は「DB」も好きなんですよね。僕らのネタってだいたい長くても6分くらいなんですけど、このネタは9分くらいやってる。アドリブみたいなところもありますし、遊びどころがいっぱいあるので、やってて楽しいですね。 sanshiro0509_02.jpg ――ネタは、どうやって作っているんですか? 小宮  まあ、プライベートでつらいことや嫌なことがあったりしたら、そのことを糧にして作るっていうことが多いですね。例えば「あるよ!」っていうネタはそうやって生まれました。決めつけてくる人って、たまにいるじゃないですか。そこから派生してネタになってるんです。 ――じゃあ、「リア充に劇薬ぶっかけたい」というフレーズが印象的な「リア充」というネタも、リア充に対する恨みから生まれたんですか? 小宮  まあ、そのときの衝動でネタ作ってるので。今は嫌いじゃないですけどね。今は三四郎もいい具合にノッてるんで。……異論はないですよね? 相田  やかましいわ!(笑) 小宮  3年前ぐらいは本当に売れてないし、ライブでもファンもいないし、みたいな感じの状況だったから、これができたっていうのもあるんです。あと、「リア充」っていう言葉自体も嫌だなって思って。すでにある言葉みたいな、ありものみたいに言われてるのが。 相田  「リア充」のネタは、結構好きな人が多いですね。 小宮  ライブで出待ちしてくれる人の中でも、顔面蒼白でアブなそうな人が「リア充のネタ大好きです!」って言ってきたり。「私も本当に劇薬ぶっかけたいと思ってるんですよ!」って(笑)。いや、ネタだからね、って。本当にぶっかけたいとは思ってないですから。 相田  怖いなあ(笑)。 ――漫才の中で小宮さんは「メンタル鬼弱だぞ」と言っていたりしますが、実際にメンタルは弱いんでしょうか? 小宮  まあ、そうですね。 ――最近、バラエティ番組では小宮さんは先輩芸人にもかみついていますけど、ああいうときにも実際は緊張していたりするんでしょうか? 小宮  いや、そりゃそうですよ。毎回ビクビクしてますよ。大丈夫かな? って。 相田  先輩方は、みんな優しい人たちだからね。 ――先輩にタメ口で突っかかったりするのは、どういう心理なんでしょうか? 小宮  まあ、やっちゃいけないことだというのはわかってますよ。でも、普通の感じで出ても面白くないから、逆を行ってるだけです。性格上、あまのじゃくっていうのもありますし。僕の周りにいるのも社会不適合者というか、普通のことができない人ばっかりですから。『アウト×デラックス』(フジテレビ系)のオーディションでも落ちるぐらい、「アウト」な人もいたりして。 相田  セーフだから落ちるんじゃないですよ? 『アウト×デラックス』でもアウトだから落ちるような人ですから(笑)。 ――例えば、どういう人ですか? 小宮  ウエストランドの井口(浩之)とかは、間を埋めなきゃいけないっていう使命感にとらわれてて、ずっとしゃべり続けてるんです。なんであんなにしゃべれるんだろう、って思いますね。 相田  あいつはみんなが静かにしているときに、誰も何も言ってないのに、急に独り言で「まあ、そうっすよね、そりゃあそうっすよね」ってしゃべり始めるんですよ(笑)。何に対して言ってるんだ、って。沈黙に耐えきれないんでしょうね。 sanshiro0509_03.jpg ――小宮さんは『ゴッドタン』に出たときには、先輩芸人の皆さんに「実は童貞じゃないの?」ってイジられたりしてましたね。 小宮  僕、自分からは「童貞」って言ってませんからね。周りの人が勝手に言ってるだけで。この間も街を歩いていたら、小学生に指さされて「あっ、童貞だ」って(笑)。お前が言うなよ、って思いましたね。どんな覚え方だよ。 相田  「童貞」の意味もわからないようなやつに(笑)。 ――じゃあ、童貞ではないんですね? 小宮  (キレ気味に)いや、童貞ではないでしょ。 相田  イライラしてるねえ。これはヤバいっすよ(笑)。 小宮  井口もキレてますからね、「あの人(小宮)は本当に童貞じゃないですよ! 僕のほうがモテないですよ!」って。 相田  なんで井口がキレてるんだよ(笑)。もういっそのこと、「小宮はヤリチン」って書いてもらおうか。 小宮  そうだな。「俺、本当はヤリチンだぞ」って。……余計、童貞っぽい! 相田  輪をかけて童貞っぽくなっちゃった(笑)。 ――小宮さんは、街で一般の人に気付かれたりすることもあるんでしょうか? 小宮  いや、そんなにないですけど。 相田  茶髪とメガネで「あっ!」ってなって、最終的に(欠けている)歯で判別する人が多いんですよ。 小宮  普段はマスクをしてるんですけど、歩いていると一般の人が「あっ、もしかして……?」っていう感じで近寄ってきて、「マスク取ってもらっていいですか?」って言われて。それでマスクを取ったら、「あっ……応援してます」って。 相田  前歯があったら、どうなってたんだろうね(笑)。 ――「生意気キャラ」扱いされることについて、ご自分ではどう思われますか? 小宮  まあ、漫才のときの芸風とそんなに離れてないので、やりやすいっていうのはありますね。やっぱり性格とか出したほうが面白いですから。 相田  それこそ「童貞」の漫才もありましたからね。「お前、童貞だろ」って言われてうろたえるっていう。 ――さて、DVDの話に戻ります。DVDのタイトル「一九八三」はどういう意味なんでしょうか? 小宮  やっぱり、漫才のネタも、今までの生まれ育ってきた環境や周りの人によって形成されているので、生まれた年の「1983年」から始まったっていう意味で、そうつけました。 ――DVDジャケットのデザインも、スタイリッシュで格好いい感じですね。 小宮  ウエストランドの『漫才商店街』のDVDジャケットを見て、うわっ、これはちゃんと本腰入れないとまずいな、って思ったんですよ(笑)。 相田  『漫才商店街』のジャケットには度肝を抜かれましたからね。あれには勝ちたかったです。 ――最後に、お二人の今年の目標は? 小宮  漫才をがんばっていきたいので、『THE MANZAI』とか『漫才新人大賞』で結果を残したいですね。 相田  今だったらたぶん、小宮のキャラを知っている人も去年より多いから、そこは有利に働くんじゃないかと思うんですよね。 小宮  僕のキャラって、嫌いな人は嫌いなんで。 ――うん。 小宮  いや、「うん」じゃないでしょ! 「そんなことないですよ」でしょ! (取材・文=お笑い評論家・ラリー遠田/撮影=名鹿祥史)

「撮影初日の自慰シーンで、逆に開き直れた」初SMプレイに挑んだ天乃舞衣子が出会った、新たな“快感”とは?

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撮影=尾藤能暢
 団鬼六の小説を原作に映像化され続けてきた『花と蛇』シリーズ。杉本彩主演、石井隆監督による『花と蛇』から10年、シリーズはさらなる成長を遂げ、このたび公開される最新作『花と蛇ZERO』では、主演女優が3人という大胆な設定になった。『探偵はBARにいる』シリーズの橋本一監督がメガホンを取り、よりエンタテインメント性が高まった作品になっている。  主人公3人は、夫の借金のカタとして闇サイトで陵辱される遠山静子(濱田のり子)。その闇サイトを見て自ら緊縛の世界に飛び込んでいく、専業主婦の瑠璃(桜木梨奈)。そして、闇サイトの真相を暴くため、妹を助けるために陵辱されることを決意する女刑事の雨宮美咲。美咲を演じた天乃舞衣子は、初の緊縛、初のSMプレイだったとか。果たして、新たな快感を得られたのだろうか? ――雨宮美咲役はオーディションで勝ち取ったそうですね。 天乃舞衣子(以下、天乃) とても有名なシリーズということと、橋本一監督とご一緒できるということで、ぜひやりたいと思ったんです。『花と蛇』なので、ヌードになることはわかっていました。でも作品に必要なことですし、この作品だったら私も脱ぐことにも全力でトライしたいと思ったので、大丈夫でした。 ――美咲は仕事一筋の刑事。そんなキャラクターだからこそ、捜査のためならなんでもやるのかもしれないと思わせるものがありました。 天乃 緊縛もSMも、捜査を機に体験しただけ。でも、一度その世界に入ったら、逃れられなくなってしまった。誰もが、気持ちの解放をしてみたいという欲望を持っているんじゃないかなって思いますね。 ――美咲は捜査のためなら、トイレで自慰しろという犯人からの命令も受け入れてしまいます。『花と蛇』ならではのエロティックなシーンでしたが。 天乃 実は、撮影初日の最初のシーンだったんですよ。何も考える間もなく、とにかく懸命にやりました。いきなりあのシーンをやったことで、逆に開き直れましたね。気がついたら、裸で現場を歩くようになっちゃいましたし(笑)。 ――橋本一監督の演出は、いかがでしたか? 天乃 私は映画に主演するのが初めてなので、主演としての心構えから教えていただきました。とても明るい監督で厳しい面はないのですが、ちょっとした顔の角度などを本番で間違えてしまったときは、指導されました。リハーサルだとできるんだけど、本番になると気持ちが入りすぎてしまって、この角度で止めなきゃいけないのにそれがうまくできなくて。何度も何度もやりましたね。でも橋本監督って、基本的には撮影を楽しんでいる方という印象です。監督が楽しんでいる中で、私は何百回と鞭で打たれ続けてました(笑)。 378A5485.jpg ――SMや緊縛には、どんなイメージを持っていましたか? 天乃 見ることのないものだと思っていました。イメージとしては、男性のもの、エロティックなもの。まさか自分が映画でやるなんて思ってもいなくて。撮影に入る前に、体にどれぐらい傷や痕がつくかを見るために体験緊縛というものをやったんです。縛られること自体は特に痛くなかったのに、ブワーッと湿疹みたいなのが出てきてしまって。服の上から縛られていたので、脱いだときにびっくりしましたね。初めてだったから、体が驚いたのかも。でも、そうやっていくうちに体が少しずつ縄になじんでいくらしくて、傷がどんどんつかなくなるんですよ。人間って、すごい適応能力ですよね(笑)。 ――裸で縛られるって、どんな感覚なんでしょう? 天乃 プロの緊縛師の方にちゃんと縛ってもらうと、ギュッと抱きしめられているような、しっかりとした安心感があるんですよ。宙吊りは床で縛ってもらってから上に吊ってもらうんですが、浮いたときは、今まで体験したことのないアトラクションのような不思議な感覚で面白かったですね。縛られるコツは、自然と受け入れることだと思います。緊縛自体はそんなに痛みはないので。でも、鞭で打たれるのは本当に痛かったですよ(笑)。鞭ってこんな叩き方をするんだって思うぐらい、いろんな叩かれ方をされましたし、みみず腫れもアザもできましたから。M役になって思ったのは、思いきり叩いてもらえることが、すごくうれしいということ。それが快感になるんでしょうね。でも私自身は、SとMどちらもある気がします。 ――逆に、誰かを調教したくなったのでは? 天乃 やってみたいですね。思いっきり鞭で叩いてみたいです(笑)。 ――いま、表情がすごく輝きましたよ(笑)。それほどまでに苦労しただけあり、緊縛ショーは芸術的なシーンになりましたね。 天乃 そうなんです、だから男性だけでなく女性に見てほしいという思いもあるんですよね。緊縛ショーのシーンでは私を含めた3人の女性が縛られてつなげられて、一斉に宙に吊られるのですが、私たちがつらくないようにと、一発で撮るぞという張りつめた空気になっていました。みんなで作り上げたという達成感で、撮影が終わって寂しかったほど。もう縛られることはないのかって思ってたんですけど、写真集の撮影でまた縛られたので、もっと見たい方はぜひ写真集も見てください(笑)。 ――撮影期間中の精神状態は、どんな感じでしたか? 天乃 今まで生きてきた中で、一番の極限状態だったと思います。家に帰っても撮影が休みの日でも、なんにも手につかない。役に入り込んでしまっているのか、しっかり寝ることもできなくて。現場が嫌で行きたくないとかではなく、そういうことも考えられないぐらい没頭していましたね。明日のシーンのことを考えるというよりは、次なにがあるかわからないという恐怖と期待。橋本監督は何をしてくるかわからないからと、下準備もしっかりして。そんな毎日が楽しみでもありました。だから撮影中は毎日、生きることで必死(笑)。でも撮影をしていく中で、どんどん気持ちが前向きになって、スタッフさんたちもみんな「早く観たいね」って撮影中から言っていたほどなんですよ。それぐらい橋本監督を信じることができたし、作品のことも信じていたということだと思います。 ――天乃さんがお芝居に興味を持ったきっかけは、なんだったんですか? 天乃 舞台に出たことですね。デビュー当時はグラビアやタレント業をやっていたんですが、初めて女優として舞台に立ったときの感動は忘れられません。周りの役者さんから受ける感情がとても新鮮で、心地よくて。もっといろんな感情に出会ってみたい、もっといろんな役に出会いたいなって、すごく思いました。 378A5522.jpg ――自分の性格を表すとしたら? 天乃 真面目だねって、よく言われますね。あと、急に何かをしだす。『花と蛇ZERO』も、ほとんど誰にも相談せず、ひとりで決めたような話でしたし。自分で嫌な部分は、いっぱいあります。普段はすごくぐうたらで、家からそんなに出ないんです。なんでも、「やらなきゃ」という感じで自分を動かすタイプ。舞台を観るのが好きなので、お休みの時は舞台を観に行くことが一番楽しいですね。でも、仕事をしているときが一番楽しいかもしれない。それ以上の趣味ってあまりなくて……。 ――本当に真面目ですねぇ。なんでもお仕事や自分磨きにつなげたりとか。 天乃 これをすることで、どれぐらい自分の身になるか、ということが面白いんだと思います。今回の役みたいに、お仕事では未知の世界に惹かれてしまうんですよね。だから普段ノーマルなのかな。お酒も弱いので普段あまり飲まないんですが、舞台の打ち上げで飲んだときはすごく泣いてましたね。共演者の人が間違えて言った「また明日ね」という言葉に、「もう明日はないんだってば!」って大泣きしてました(笑)。周りの人は、めんどくさかっただろうなぁ。 ――かわいいじゃないですか。もっと酔わせてみたいです。さまざまな苦労を重ねた映画『花と蛇ZERO』がいよいよ公開ですが、今の率直な気持ちは? 天乃 『花と蛇』シリーズを初めて観る方でも楽しんでいただける、官能エンタテインメントです。エロスだけじゃなく、サスペンス、アクションといった要素もありますし、今回は橋本監督ならではの笑いも入っています。早く観てほしいという気持ちでいっぱいですね。 ――女優としても、これからさらに飛躍していけそうですね。 天乃 これだけのことを経験したというのが、すごく自分の糧になっていると思います。精神的にかなり強くなったので、どんな役が来てもやり遂げたいですね。 (取材・文=大曲智子) ●あまの・まいこ 1985年生まれ。09年、TBS系『関口宏の東京フレンドパーク2』のレギュラーアシスタントで芸能界デビュー。大学時代はグラビアアイドルとして活躍。卒業後は女優に。12年『笑う警官』、12年『第三世代』など舞台を中心に活躍。13年、R-15指定の舞台『問わず語り』では激しい濡れ場に体当たりで熱演、大ヒットを記録する。出演映画『奴隷区・僕と23人の奴隷』が6月28日より公開。初の写真集『天乃舞衣子写真集 ZERO』(ワニブックス)が発売中。 hanatohebi0_large.jpg ●『花と蛇ZERO』 原作/団 鬼六『花と蛇』(幻冬舎アウトロー文庫刊) 監督/橋本一 脚本/港岳彦 出演/天乃舞衣子 濱田のり子 桜木梨奈 津田寛治 川野直樹 榊英雄 辻本祐樹 菅原大吉 木村祐一 5月17日より全国ロードショー <http://www.dmm.co.jp/hanatohebi0> (C)2014 東映ビデオ

「アニメがあったから、道を踏み外さなかった」“世界最強のオタク”を目指す格闘家・岡倫之の壮絶な半生

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撮影=後藤秀二
 空手、柔道、レスリング、サンボ、ビーチレスリング、グラップリング、パンクラチオンなど数々の格闘技に挑戦し、国内外の大会で次々と優勝を決めている新進格闘家・岡倫之。彼の動向が、今ネット上を大きくにぎわせている。公開されたプロモーションビデオでは、まるで肉食獣を思わせるワイルドな闘いぶりを見せる一方、アニメやゲームに登場する美少女キャラグッズに囲まれたプライベートな姿を惜しげもなく披露。大会に出場すれば、『ミルキィホームズ』や『ラブライブ!』など人気アニメの美少女がほほえむシャツやグッズに身を包んでバッチリ入賞を決めるという具合に、格闘技にも、アニメファンとしても全力投球。4月25、26日に開催されたアジアパンクラチオン選手権大会でも、2部門でそれぞれ3位に入賞。『ミルキィホームズ』グッズ装着で授賞式に臨み、大きな話題を呼んだ。  そんな「世界最強のオタク」を目指す岡選手だが、この4月1日から新日本プロレスの親会社としてプロレス界をけん引する株式会社ブシロードに入社したばかり。新人研修を受けつつ、レスリングでのオリンピック出場を目指すというハードな日々を送っている。そんなピカピカの新卒社会人でもある岡選手に、そのオタク人生と格闘家としての目標を聞いてみた! ■輝かしき、その戦績! ──萌えキャラや声優ネタが詰まったブログやPVで一躍話題を集めた岡選手ですが、本当にお好きなんですね(取材時には、2012年に開催された声優ユニット・ミルキィホームズ武道館ライブグッズのTシャツ姿で登場)。 岡倫之 選手(以下、岡) (ちょっと照れながら)大好きですね。 ──もともとブシロードという会社の存在は知っていましたか?  はい。昔から知っていました。僕が大学1年か2年の時に、冗談で「アニメの会社だし名前もかっこいいし、いずれはブシロードに所属して試合に出たい」なんて言っていたんです。ただの冗談だったのですが、それが実現するとは……。 (一同笑)
ネット上で話題になったPV
 ブシロードに近づきたいからこういうキャラ付けをしている、とか言われたりもするんですけど、ブシロードが新日本プロレスの親会社になったことも当時は全然知りませんでしたし、このライブ(Tシャツを指しながら)があった時も全然知りませんでした。最初のきっかけは、2012年6月に「ブシロードクラブ」[註]の永田裕志監督が大学に来て、今度ブシロードが新しくクラブを立ち上げるというお話を聞いた時です。僕の父親は自衛隊員だったんですが、自衛隊はレスリングが強かったので、当時は自分も自衛隊に入ろうと思っていたんです。なので、その時はあまり気には留めませんでした。でも、2012年12月のコミックマーケットでブシロードの木谷高明社長にお会いし、「この人についていきたい」「ブシロードに入りたい」と思うようになりました。 ──なるほど。そんな岡選手ですが、先に出会ったのはアニメと格闘技のどちらだったのでしょうか?  格闘技ですね。小学生の頃に空手と柔道を始めて、レスリングを始めたのは高校生の時です。大学に入ってからはビーチレスリング、サンボ、グラップリング、パンクラチオンに挑戦して、今は総合格闘技をやっています。 ──それぞれ輝かしい成績を残していますね。  まず、大学1年の時に大洗でのビーチレスリングに参加したんですが、その時は1回戦負けでした。その後、4年で再挑戦し、優勝と最優秀選手賞をいただきました。それ以外だと、3年の時にサンボのユニバーシアードで優勝したほか、グラップリング、パンクラチオンの大会でもそれぞれ優勝しました。 ──岡選手といえば、アニメグッズに身を包んで大会に出場し、その姿が話題になることも多いです。  大学4年の時に出場した大洗のビーチレスリングでは、『ガールズ&パンツァー』の舞台ということで、ガルパンのウエアを着て参加しました。それと今年2月9日に『ラブライブ!』のコンサートがあったのですが、ちょうどサンボの試合とかぶってしまい参加できなかったので、気分だけ味わおうと『ラブライブ!』のシャツを着て参加しました。その時にネットで「世界最強のラブライバー」と、ちょっと話題になりました(笑)。 ■明日への活力だったアニメ
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憧れの選手は、長島☆自演乙☆雄一郎選手。
──アニメは、いつ頃から見るようになったのでしょうか?  小学生の時から子どもなりにアニメは好きだったんですけど、本格的に目覚めたのは中1の時に見た『スクールランブル』です。かわいい女の子がたくさん出てきて、そして主役を張るっていうアニメは当時あまり見たことがなくて、一気にのめり込んでしまいました。中学生ということでお金はあまりなかったんですけど、DVDも全巻そろえました。あとは兄にも協力してもらって、コミックスの限定版とかも集めました。そして中3の時に『涼宮ハルヒの憂鬱』が始まって、これもすごくハマりましたね。 ──中学時代に洗礼を受けちゃったわけですね。その後、高校ではどんなオタクライフを送られたのでしょうか?  高校時代はレスリング漬けの生活でしたし、僕も全国優勝を狙っていたので全然アニメを見られませんでした。一日中練習をして、帰宅したらちょっとアニメを見る、という感じでした。ただ、その頃『らき☆すた』は見ていて、舞台は埼玉だったんですよね。僕の通っていた高校も埼玉だったので、毎年、鷲宮神社には初詣に行っていました。  ただ実は、アニメオタクということと、気弱な性格ということで、高校までずっといじめを受けていまして……。当時、すでにレスリングでも成績を多少残していたのですが、「こいつは図体ばかりだ」「いつでも倒せる」ということで、……不良の人から10数人がかりでリンチを受けたりというのもあれば、物を隠されたり捨てられたり、陰険ないじめも受けました。 ──そうだったんですね。いじめに遭っても、アニメ好きを貫いてこられたのはなぜでしょうか?  逆につらいからこそ、その世界に逃げていたってことでしょうね。レスリングもつらくて、学校生活もつらくて、でも道を踏み外さないで今まで生きてこられたのは、アニメがあったからこそだと思います。アニメを見ている時だけは嫌なことを全部忘れられて、ただ楽しかったんです。こういう主人公になりたいとか、こういう青春を送りたいとか思いながら高校3年間を乗り切りました。 ──アニメが明日への活力だった。  僕にとってはそうでした。だから、どちらかというとスポーツではなく、アニメで精神力を鍛えられたのかな。全国大会で優勝するという目標もありましたし、明日も嫌なことがあるかもしれないけど、いつかアニメの中のような青春が訪れるんだろうと思いながら頑張りました。その結果、ブシロードという会社に入ることになったわけですが、これも運命だと勝手に思っています。それに、アニメ好きを貫いたといっても、高校生までは隠れオタクだったんです。でも、どこからか漏れていじめの対象になったりしたので、逆に大学からは堂々とするようになりました。  というのも、全国大会などを通して世の中にはいろいろな人がいるということを知り、人に合わせて生きても仕方がない。もし自分を出して嫌われたとしても、もうその人とは縁がなかったとあきらめるようになりました。それよりも、本当の自分をいいと思ってくれる人が本当の友達だと思うようになりまして、大学からはアニメオタクの部分をどんどん出していくようにしました。最初の頃は否定的な人も多かったんですが、それでも貫き通していったら、だんだんと認めてもらえるようになりました。 ■世界最強のオタクを目指して!
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この日のために、剃り込みを。もちろん『ミルキーホームズ』のM!
──当初は格闘技の世界に、オタク趣味を持ち込むことに対する拒否感もあったということでしょうか?  そういうのもあったと思います。アニメといえば、なよなよしたものという固定観念があったのも事実だと思います。確かに、男らしさというものからはかけ離れているとは思いますけど、主人公が夢をあきらめなかったり、仲間との絆を大切にしたりしている姿からはいろいろと学ぶことは多いですし、見る人によっては教科書になると思います。だから、先入観で物事を決めるのはよくないです。実際にアニメを見てつまらないと思うなら仕方がないのですが、見もしないで否定するということは、その人自身も何も学ぶことがないということじゃないでしょうか。  僕自身、現在いろいろな格闘技をやっているわけですが、それに対して「お前は何がやりたいんだ」「そんなことでオリンピックには行けない」という方もいるんです。でも、それこそやってみないと分からないじゃないかと思っています。もちろん一つの競技を極めてトップを狙うのもいいと思うんですが、僕は僕なりの強さを見だしたいと思っています。 ──岡選手がさまざまな競技で頂点を目指す理由は、なんなのでしょうか?  そもそも高校の頃に「レスリングが強いからって調子に乗るな。お前なんてレスリングがなかったら、ただのデブなオタクだ」と言われたことがありまして、じゃあレスリング以外も極めてやろうと思ったことがきっかけですね。レスリング以外の道も極めたら、それは強さの証明になるんじゃないかなと。今はまだまだ証明しきれてないですね。もっと成績を残していきたいです。みんなが「無理だ」と言うことも、頑張ればやれないことはない、というアニメの主人公たちが教えてくれたことです。そういう姿って、本当に格好いいと思っているんです。ほかの人は、この道は確率的に難しいからやめようとか思うかもしれないけど、僕はバカなのでそんな確率とかは考えずに、やれる限りとことんやっていきたいです。 ──まさに、少年漫画の主人公みたいな生き様ですね! そんな岡選手の目標を教えてください。  世界最強のオタクになることです。世界最強というのは強さだけではなく、知名度もある選手になるということでもあります。今、プロレスはすごく盛り上がってはいるのですが、プロレスファン以外には意外と選手の名前くらいしか知られていなかったりします。レスリングだと吉田沙保里選手は知っているけどルールはよく知られていない、というような状況が多くあるように思います。いくら強くても、スポーツを認知する人が増えないと意味はないわけです。スポーツ選手というのは、いわば看板を背負って闘う存在ですので、ブシロードという宣伝力の強い会社を通じて岡という人間やレスリングのことをもっと知ってもらって、応援もしてもらって、一緒に盛り上がっていけるように頑張っていきたいと思います。 ──力強いコメントありがとうございます! そんな岡選手のおすすめアニメはなんですか?  『ミルキィホームズ』ですね。これはもう永久に続いてほしいです。今日の髪形も、『ミルキィホームズ』のMと、メンバー4人を意味する4本ラインを入れてもらいました。初の武道館ライブの時も、当時は週7日の練習があってほとんどイベントなどには行けなかったんですけど、この日ばかりはなんとかスケジュールを縫って参加しました。その代わり、大学4年の12月に引退してからは、今まで行けなかった分を取り戻すようにいろんなイベントに参加しました。この1月から3月は、人生最大のオタ充期間でしたね。その時に生まれて初めてオタク友達もできて、楽しさを分かち合ったり、好きなアニメについて語り合ったりしました。やっぱりライブって楽しいですよね。 ──最後に、ブシロードでやってみたいことを教えてください。  たくさんあるんですが、まずはミルキィホームズさんと一緒にお仕事をしたいと思っています! そして、プロデビューできたあかつきには、皆さんが歌ったり踊ったりしている中でリングに入場したいと思います! ──ちなみに、一番推しているメンバーはどなたですか?  徳井青空さんです。元気があるけどしっかりしている部分もあって、思わず応援したくなるんですよね。 ──ミルキィホームズのメンバーと共演される日を、楽しみにしています! ありがとうございました。 (取材・文=有田シュン[シティコネクション]) ※註 2012年7月にスタートした、オリンピック出場を目指すアマチュアレスリング選手の育成を目的とするブシロードによるプロジェクト。本人の希望があれば、将来的にプロレスラーへの転向も可能。4月より岡選手も所属。 ●岡倫之公式ブログ「オカロード」 <http://ameblo.jp/nihon0612/>

女優・小明が語る“フェイクドキュメント”の現場「フェイクじゃなくガチで痛い目に遭いました!」

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足を踏み入れた者は全員発狂すると噂されるタタリ村でのロケから帰ってきた小明嬢。一体、劇場版『コワすぎ!』の現場で何が……!?
 2012年のリリース以降、全国のレンタルビデオ店で密かに話題を呼んでいるのが白石晃士監督のフェイクドキュメンタリー『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズだ。4月14日~19日に「ニコニコ生動画」でシリーズ全5作を連日放映したところ、最終日だけで10万人、6日間で延べ30万人以上が視聴するなど、低予算ホラー作品としては近年稀に見るヒットシリーズとなっている。そして、いよいよ『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』が5月3日(土)より劇場公開されることになった。  『劇場版・序章 【真説・四谷怪談 お岩の呪い】』で工藤ディレクターが「劇場版はアイドル呼んでやっから!」と高らかに宣言していたが、そのアイドルとは日刊サイゾーでおなじみ小明嬢であることが判明した。公開よりひと足早く『史上最恐の劇場版』を観たところ、小明嬢はとても演技しているようには思えない自然な演技を披露し、『コワすぎ!』ワールドを大いに盛り上げているではないか。“映画女優・小明”に、フェイクドキュメンタリーならではの撮影現場の面白さを存分に語ってもらった。  『コワすぎ!』シリーズの概略はざっとこんな感じ。低予算ビデオ作品として心霊現象の検証番組を製作している工藤ディレクター(大迫茂生)、アシスタントの市川(久保山智夏)、カメラマンの田代(白石晃士)の3人がレギュラーメンバー。口裂け女、廃墟に現われる幽霊、人喰い河童、トイレの花子さんなど様々な都市伝説を取材してきた。『劇場版・序章』で工藤ディレクターが突き止めたのは、「東海道四谷怪談」の作者・鶴屋南北は呪術者集団の拠点だった“タタリ村”の出身だということ。これまで撮影クルーが遭遇してきた怪奇現象もすべてタタリ村が関係しているらしい。そこで今回は劇場版ということで、サブカル界の人気アイドル・小明(小明)、浄霊師の宇龍院(宇賀神明広)、物理学者の斎藤(金子二郎)を連れて今までになく大々的にロケに向かう。ところがタタリ村は『コワすぎ!』シリーズのファンでさえ予測不能な悶絶級の怪奇現象が次々と起こるのだった。果たして小明ら撮影クルーは無事で済むのか?
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『コワすぎ!』撮影クルーと共に廃村取材に向かう小明。いつもより高いギャラを提示され、まだこの時点ではやる気満々だった。
──劇場版『コワすぎ!』、面白すぎますよ! 低予算ホラーかと思いきや、宮崎駿監督の『もののけ姫』(97)や庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』(95年~96年、テレビ東京系)を実写化したような壮大なスケール感のあるSF作品に仕上がっている。しかも映画的な面白さに溢れている。これはもうホラーの枠を越えた大傑作ですよ! 小明  そうなんです、スケール感あるんですよね。低予算映画だと舐めて掛かると、舐め返されちゃう(笑)。でも、そこまで絶賛していただけるとは……。 ──劇場版『コワすぎ!』も傑作ですが、ゲストヒロインである小明さんの自然な演技も素晴しい。実名で登場する小明さんの存在が、どこまでがフィクションでどこまでがリアルなのかの境界線を曖昧にしてしまう。フェイクドキュメンタリーの世界で、とても重要な役割を果たしていると思います。 小明  自然な演技というより、そのままの素の状態でカメラに映っていただけです(笑)。以前、私が迷走していた頃に出ていたDVDシリーズ『小明の感じる仏像』のプロデューサーから連絡があって、「映画に出てみない?」ってすごく軽い乗りで言われたんですね。その頃の私、国に払わなきゃいけない公金の支払いを溜め込んでいて、一気に支払ったらクレジットカードが使えない状態になって……。スケジュールもすかすかだったし。それで、「どうせ、出て1~2分で死んでしまう、ヒロインの友人役だろう」くらいのつもりで打ち合わせに行ったんです。そうしたら、意外と出ずっぱりだし、ゲストヒロイン的な扱いで驚きました。「誰か降板したんだろうな」と思ったんですけど、白石監督は丁度“売れないアイドル”を探していたみたいですね(笑)。低予算で過酷なロケにも文句を言わず、呼びやすい手頃なアイドルという条件を満たしていたのが私だったみたいです(笑)。
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「お金がなかったこと、暇だったこと、そして敬愛する白石晃士監督の作品だということが、今回の出演の決め手でしたね」と笑顔で語る。
■白石監督はその人が持っているものを200%にしてしまう ──工藤ディレクターら『コワすぎ!』撮影クルーとの打ち合わせの席で、絶版になった写真集『エプロン宣言』(ぶんか社)や『アイドル墜落日記』(洋泉社)を持参して懸命に自己アピールした後、他の出演者たちが「心霊現象はあるかないか」を熱く討論しているのを、つまらなそうに聞き流している。あの表情が絶妙ですね。 小明  私、バラエティー番組に出てても、他の人のトークには興味ないんですよね(笑)。でも、そんなにつまらなそうな表情をしてました? まったく無自覚でした。『コワすぎ!』の撮影現場って、いつカメラが回っているか分からないんです。台本は一応あるんですけど、最低限のことしか書いてない。工藤ディレクターたちレギュラー陣は、ツーカーでアドリブできるし、台本を現場で読んでいる人は誰もいませんでしたね。私も「その台詞は感情を込めて」とか言われるとダメなんで、白石監督には事前に演技できないことはお話していたんですが、白石監督の返答は「全然、大丈夫です」でした(笑)。私自身が売れないアイドルでギャラ欲しさに参加したわけですし、その人が普段から持っているものを200%にして、白石監督はカメラに収めるみたいですね。 ──「ギャラ欲しさ」とのことですが、そんな人間の欲望や好奇心が『コワすぎ!』の世界では超常現象を呼び起こすトリガーになっていますよね。足を踏み入れると全員発狂すると言い伝えられるタタリ村へ、小明さんたちは「ギャラ欲しさ」で同行してしまう。ここで引き返せばまだ間に合うという段階でも、「この映画、絶対話題になるから」「仕事がバンバン入るようになるから」と工藤ディレクターの甘言に釣られて、最後まで付き合ってしまう。売れたい、お金がほしいという欲望と自分の命とを天秤に掛けて揺れ動く人間の浅ましい姿が赤裸々に描き出されていく。 小明  去年の夏ごろの撮影だったんですが、私その頃は本当にお金がなかったんです。仕事の選り好みできなかったですね。多分、マジでヤバい心霊スポットの体験レポートでも引き受けていたと思います(笑)。低予算映画だと聞いていたのでギャランティーはあまり期待していなかったんです。サブカル系のお仕事だと“足代”だけなことが多いんですが、それでもいいから仕事くださいって状況でした。それで事前にギャランティーの金額を教えてもらったら、私が考えていたよりはかなり多かった。「あっ、けっこーくれはるやん!」って(笑)。二泊三日で東京郊外の山に登るというロケ撮影だったんですが、工場で1週間働くよりは全然いいなって(笑)。はい、それでバラエティー乗りで現場に行ったら、ガツンと痛い目に遭いました……。タタリ村のロケ地は車を降りて40分ぐらい山を登ったところにあって、かなりヤバい雰囲気のところでしたね。廃屋だらけで実際に何かあったみたいなところなんですよ。サブカルっ子は基本、廃屋が好きなんで写メをパシャパシャ撮っていたら、撮影クルーはどんどん先に進んで、私ひとりだけ取り残されかけましたね。
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さっさと引き返せばよかったのに、ギャラ欲しさにタタリ村に来てしまった小明。カメラには怪しい影が映っていた!
──タタリ村でみんな不機嫌そうにしているのは、リアルにしんどかったから? 小明  そうなんですよ! かなりキツい山道で、最初はみんなで「歌でも歌いましょう♪」とか言っていたのが、次第に「しゃべると疲れる」みたいに黙りこくってしまった。それと、いちばんしんどかったのは、最後のトイレタイムから10時間くらいずっと尿意を我慢してなくちゃいけなかったことですね。女性は私と市川役の久保山さんの2人だけだったんです。それで男性スタッフが気を遣って野外用の簡易トイレを用意してくれたんですが、使用後に猫砂を掛けるタイプのもので、撤収する際にその猫砂を持ち帰らなきゃいけない。男性スタッフに使用済み猫砂を持ち帰らせる勇気は、私にはなかった。まだ、そういうプレイを平気で楽しめるほど大人ではないですね……。久保山さんは慣れたもので、ずっとトイレに行かなくても平気みたいでした。「こういう人が『コワすぎ!』のレギュラーになるんだなぁ」と感心しました。不気味な廃村で、歩き疲れ、しかも尿意をずっと我慢しての撮影。いろんなものとの闘いが現場では待っていました。しかも私と物理学者役の金子二郎さん(金子修介監督の実弟で本職は脚本家)以外はみんなレギュラーで仲いいし、金子さんはコミュニケーション能力のある方だし、私だけアウェー感を感じながらのロケだったんです。 ■自分の中にいる、もう一人の自分のドキュメンタリー ──疎外感を感じ、ギャラか身の安全かで揺れ動いていた売れないアイドルに、“もののけ”が取り憑いてしまう。ゾンビアイドルとしても知られる小明さんが、まるでシュールレアリズムの絵画を思わせるとんでもない状態に。 小明  ありがとうございます。そう言ってもらえると、うれしいな♪ まだ完成品を観てないので、自分がどのように画面に映っているのか知らないんです(笑)。別に乳首が出てたり、ヘアが丸見えなわけじゃないんですよね? じゃあ、全然OKです(笑)。私としては、その後にもらった工藤パンチのほうがリアルに衝撃でした。大迫さんはボクシング経験者で、パンチが速くて見えないんです。本番の前に一応、「パンチを浴びる直前に首をのけぞらせると当たっているように見える」とレクチャーしてもらったんですが、私は体育の成績がずっと2でしたから。私のリアクションが遅いとパンチが入るし、私が首をのけぞるタイミングが早すぎると撮り直しになるし、勢い余って砂利の上に吹っ飛ばされるし……。工藤パンチを何発も浴びた後は、マジで朦朧とした状態のまま撮影が続いてましたね。 ──白石組の現場もテストやリテイクはあるんですね? 小明  そうですね。白石監督が「このシーンはこんな感じです」ってザッと説明して、一回だけ軽くカメラテストして、後はすぐ本番って感じですね。大事なシーンに関しては撮り直しもあるみたいです。カメラマン役の白石監督がそのまま撮影しているんですが、すっごく楽しそうに生き生きとカメラを回している。「あ~、『コワすぎ!』は白石監督のライフワークなんだなぁ」って感じましたねぇ。 ──お話を聞いていると『コワすぎ!』はフェイクドキュメンタリーではあるものの、ドキュメンタリー的側面がとても強い作品のようですね。 小明  本当にそうだと思います。私に関してはガチなドキュメンタリーでしたね。工藤役の大迫さんとも話したんですけど、カメラが回ってないと普通の方ですけど、お子さんと遊んでいるときとかに「ふと自分の中に工藤がいることに気づく」と言ってましたね。多分、久保山さんの中にも、アシスタントの市川というキャラクターがいるんでしょうね。自分の中にいるもう一人の自分を、白石監督はドキュメンタリーとして撮っているのかもしれないですね。だとするとヤバいなぁ、もう一人の私は今も山の中をさまよっているのかも! いや~、かなり大変な目に遭った撮影でしたけど、オールアップの瞬間は不思議なくらい「やりきった!」という充足感がありましたね。カメラに向かって思わず「みなさん、よくこんな過酷なロケに耐えてますね。我慢強いですね!」なんてケンカを売るようなことを口走ってしまいました(笑)。あのコメント、DVDの特典映像に入るのかな。
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──では最後に、劇場版『コワすぎ!』を観るにあたって事前にチェックしておくとベターなものがあれば教えてください。 小明  そうですね、『増量版 アイドル墜落日記』が今年出たので、事前に購入していただけると、「こんな墜落人生を送ってきた売れないアイドルが、それでもめげずに低予算映画で頑張っているんだ」と劇中の私にすごく共感できると思うんです。おすすめですね(にっこり笑顔)。もちろんこの劇場版は、今までのシリーズを見ていなくても、充分に楽しめますよ! というわけで白石監督、これからますます続くだろう『コワすぎ!』シリーズにまた是非呼んでくださいね~! (取材・構成=長野辰次) kowazugi_03.jpg 『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』 監督・脚本・撮影/白石晃士 助監督・音響監督/中川究矢 出演/大迫茂生、久保山智夏、白石晃士、宇賀神明広、小明、金子二郎、大畠奈菜子、金子鈴幸ほか  配給/「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」上映委員会 5月3日(土)より渋谷アップリンクにて公開 ※公開初日は同劇場にて、白石監督、大迫、久保山、小明による舞台あいさつあり。また、シリーズ作品を一挙上映する「コワすぎ!祭」を現在開催中。 (C)ニューセレクト http://albatros-film.com/movie/kowasugi 13988342002bSAB7H65TdvEeR1398834199.gif ●あかり 1985年栃木県出身。2002年に眞鍋かをりを輩出した「ホットドッグプレスドリームガールズ」で準グランプリに選ばれ、芸能界入り。09年には『アイドル墜落日記』(洋泉社)を刊行するなどアイドルライターとして活動する一方、村上賢司監督、矢島舞主演映画『ゾンビデオ』(12)ではゾンビ女子高生を熱演し、ゾンビアイドルという新しい地平線を切り開いている。フェイクドキュメンタリーの第一人者である白石晃士監督の『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』に出演したのに続き、“Vシネ界の良心”城定秀夫監督の新作が公開待機中。女優として、何気にインディペンデント系の巨匠たちとのコラボが続いている。ゾンビアイドルとしてのグラビアページを追加した『増量版 アイドル墜落日記』(洋泉社)が現在発売中。

サイテー男・上島竜兵が力説「『上島ジェーン』は、現代の寅さん(のヒドいバージョン)である」

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撮影=後藤秀二
 あの男がスクリーンに帰ってくる。5年前、カルト的ヒットを博した前代未聞「丘」サーファー映画『上島ジェーン』。あの日、高波に消えたはずの上島は死んではいなかった。今回は相棒に上島竜兵を知り尽くす男、リーダー肥後を迎え、元AKB野呂佳代、品川祐、大久保佳代子など共演陣も一層豪華に。なぜ上島は性懲りもなくまた海を目指すのか。「ビヨンド」に隠された意味とは。裏『上島ジェーン』を、上島、肥後、そして野呂の3人が語り尽くす。 ――まずは、続編の話を聞いたときの気持ちをお聞かせください。 上島竜兵(以下、上島) ご飯食べてるときに、監督(マッコイ斉藤)から急に電話がかかってきて「『上島ジェーン ビヨンド』って面白くないですか?」って。あぁ、絶対たけしさんの『アウトレイジ ビヨンド』でひらめいたんだなと分かりました。前作で俺は死んだってことになってるでしょ?『アウトレイジ』も、たけしさんが刑務所で刺されて誰もが死んだと思っていたんだけど、実は生きていたっていうストーリーだから。だからたぶん、ほんとすみませんが、(アイデアを)いただきました。 肥後克広(以下、肥後) パクってるわけじゃないよね。リスペクトだよね。 上島 前作が東スポ映画特別賞いただいたんでね……本当、単なるリスペクトです。 ――今回は有吉(弘行)さんがいらっしゃらないですが、そのことに対する不安はなかったですか? 上島 今回は、なんといってもリーダーがいますから、全然不安はなかったです。ただ、ちょっと気を付けたのは、リーダーと一緒にいて、これを映画みたいにカット割りで撮っていくとしたら、やっぱりコントみたいになっちゃうんじゃないかと。それはちょっと違うんですよね。たぶん監督もそう思ったから、2週間ずつくらいの長いスタンスで、セミドキュメント風に撮ったんだと思います。 ――長くカメラを回して、自然な感じで。 上島 3カ月丸々いたわけじゃないですけど、まぁ1週間なら1週間、食事しているところも飲んでるところも含め、一日中カメラ回しっぱなしでしたね。 ――肥後さん、撮影はいかがでしたか? 肥後 ロケは千葉の海で、非常に気持ちがよかったですね。夏はね。秋は普通につらかったので、やっぱり俺はサーファーにはなれないなと……。この映画をきっかけに、サーファーになろうと思ったんですけど、秋になって心が折れましたね。撮影現場は明るい雰囲気で楽しかったですよ。ただやっぱりね、僕はずっと一緒にいるから分かるんですけど、サーフィンにこれといって興味のない、この上島という男のサイテーさを、よく監督が出してくれたなぁと。そういう点で、本当にこれはドキュメント映画ですね。監督はよく上島のことを分かっているんですけど、千葉のサーファーたちが徐々に上島のダメさ、性格の悪さを分かっていくという。 上島 フフン(笑)。 ――肥後さんだけが知っている上島さんが、この映画には出ていると。上島さんは、そのあたりいかがですか? 上島 だからね、あの……アレなんですよね、スタイルは全然違うし内容も違いますけど、寅さんなんですよ、俺は。ね? 肥後 何を言いだすんだよ!! 上島 いや監督が言ったんです。「上島さん、これ寅さんですよ。寅さんのヒドいバージョン」って。だから山田(洋次)監督には申し訳ないですけど、全然別物ですけど、人間みんなあるじゃん、そういうのって。最初っから、そんなやましい気持ちじゃないんですよ。本当にサーフィンやりたいと思ってたんですよ。それで行くんですよ、海に。 肥後 そこにマドンナが現れると。 上島 マドンナっちゅうか、女の子にばっかり気を取られて、結局女の子を中心に考えている男だから、サーフィンなんてどうでもいいってなっちゃうんですよね。でも、カッコはつけたい。まぁ、確かに俺はそういうところがあるよね。
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――人間臭さというか。 上島 キレイに言ったね(笑)。 肥後 周りを巻き込んでいくっていうね。寅さんは。 上島 あんまり寅さん寅さん言うなよ。怒られるから。 ――でも、それは前作からも一貫しているテーマですよね。人間臭さは。 上島 そうですね。監督いわく、前作のテーマは「人間カッコつけると死ぬ」。だから、そういうことなんですよ。 肥後 どういうことだよ。 上島 まぁそれは極端ですけど、今回もそういう似たような教訓の映画になってると思います。サーファーをチャラチャラしてるとか女にモテそうだとか勝手にイメージしてたら、実際は全然違うよ。サーファーはすごい。すごい世界ですよ。確かに、そういうところから入って、すごくなった人もいると思いますよ。女にモテたいから芸能人になったとかね、そういう人いるじゃないですか。ね? 肥後 上島さんは、なんで芸人になろうと思ったの? 女にモテたいから? 上島 違います。僕はもう、お笑いが大好きで……。 肥後 ほらね? 最低な人間でしょ? すぐ出るんだよ、そういうところが。 上島 僕はお笑いが大好きで、人の笑顔を見たら、もう本当に幸せだなって。 肥後 うそつけ! 上島 いや、お笑いは一番難しいですし、一番誇れる仕事だと僕は思っています! 一同 爆笑 ――肥後さんが先ほどおっしゃっていたのは、この感じですか……? 肥後 この感じ、この感じ。ほんっとサイテーな人間。中身も何にもない。 上島 そうですよ。舞台でスベったら客のせいにして、テレビでスベったらディレクターのせいにする(笑)。「センスねぇなぁ」とか言って。 肥後 お前が一番センスねぇだろってな。 上島 それに対してなんの努力もしていないっていう、まさにそういう人間の映画です。 ――野呂さんはいかがでしたか? 今回の役どころは? 野呂佳代(以下、野呂) えっと、まず上島さんが仲間にデカいことを言っちゃうんです。「AKB連れてきてやるよ」って。だけど、そろえられるのは私しかいなかったという話です。声をかけてもらった時は、私もうれしかったんですけどね。前作も見ていて、すごく出たかったので。しかも、サーフィン始めたばっかりだったんですよ。“え? 知ってたの、監督?”って、ウキウキして配役を待っていたらなんのこっちゃない、上島さんプロデュースのご当地アイドル……。まぁ、協力させていただいたっていう感じですかね(笑)。 ――何か監督からアドバイスを受けたりしましたか? 野呂 それが……。 肥後 ププッ(笑)。 上島 素直に言ったほうがいいよ。 野呂 素直に言いますが、私のことをですね、監督が「野呂は……DV顔だ」と。 ――え? ええ? 野呂 急になんですけど、「あれ? ちょっと待って? お前、DV顔だな」って。それで急に上島さんからビンタされたんですよ。 ――えええ?
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野呂 ビンタされて、普通ひるむじゃないですか。そしたら「その表情がたまんない」と。それで何回かやらされましたね。初めての経験でした。そんなにビンタされたことないんで。 上島 しないよね。 肥後 でも、されたそうな顔してるよね。 野呂 って、言われるんですよ。私には、それが意味が分からない。 上島 もちろん、お芝居だからやったんですよ。 野呂 そういう言い争うシーンがあったから、監督の指示で。私はほかの芸人さんみたいに、上島さんとキスはできないですから。 ――それは、ご自身でも新たな発見でしたか? 野呂 そうですね。それからは、しゃべろうとすると「黙れ!」って言われたり。扱いが……あれ? って。 ――マッコイさん、すごいですね。 肥後 ちゃんと見抜くんだよね。監督が今回、野呂さんのこと、すごい気に入っちゃって。次回作は『野呂ジェーン』を作ろうと。 野呂 それはいいですね! ――肥後さんは、監督から何か指示されましたか? 肥後 基本ドキュメントタッチで撮ってるので、ああしようこうしようは極力ないんですけど、監督自身もカメラを担ぎながら耳元でたまにささやかれるんですね。それが、だいたい人を傷つける言葉なんです。 一同 爆笑 肥後 大久保(佳代子)さんに向かって「クソババアって言ってください」とか。人を傷つける言葉しか演出でささやかないという、これまたサイテーな監督ですね。僕が大久保さんに「クソババア」って叫んだら、編集困るんじゃないかっていうくらい監督がギャハギャハ笑ってて、案の定、編集大変だったみたいです。 ――じゃあ、結局、監督が一番楽しんでいたんですね。 上島 それは本当にそうでした。楽しそうだった。あと、地元のサーファーの方たちが楽しそうだったのがよかったですね。 肥後 この映画に関わって知ったよ。サーファーって真面目な人なんだなって。見た目はチャラいけどね。中には上島みたいなのもいるかもしれないけど。 上島 なんかリーダーがね、やりだしてんだよ、サーフィンを。 肥後 いやぁ楽しかった~。普通に楽しかったよ。 ――肥後さんは海が似合いますよね。 上島 ずっとグッピー食ってたから。 野呂 うそ!? 上島 食ってたよ。チュルっとパクっと(笑)。 ――竜兵会のメンバーから、何か感想は? 上島 これからですね。前作は渋谷でレイトショーしかやらなかったのに、それでも結構みんな見てくれましたよ。感想は……やっぱり最後のシーンで大爆笑だったと。人によっては「本編は、最後のオチのための長いフリだった」とも。 ――前作はシンプルでしたから。 上島 そうですね。今回はあれよりも豪華で、かつエンタテインメント性があると思います。前作との違いはそこかな。あれはあれで、ずっと有吉といられて楽しかったんですけどね。でも、ちょっとドキュメント性が強かったんですよ。自分で芸人として「あ、うまくいったな」って思ったところは、ことごとく編集で切られてたから。そういうのはいらないと。前作はね、俺じゃなくて有吉の評価が高いのよ。ナレーションもやってたし。それで今作も、やっぱり野呂ちゃんとかリーダーの評価が高いんですよ。なぜか俺の評価は低い。
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(C)2014 PONY CANYON INC.
肥後 だって監督が言ってたじゃん。「上島さん損するよ」って。 上島 (笑)。いや、これ本当で。編集作業が終わった後に「これ上島さん損するな~」って。 肥後 主役が損する映画って、あんまりないよね。 上島 今日も念押しされましたよ、監督に。「上島さんすみませんねぇ。絶対損すると思います」って。なんだそれ。 肥後  でも、野呂さんは良かったよ。九十九里ッターズの歌(「波の数だけI need you」)も、オールディーズっぽくていいよね。撮ってて、どのシーンが印象に残ってる? 野呂 そうですね。私は、やっぱり上島さんとのケンカシーンかなぁ。最初の出会いもケンカでしたし……あと本当にすみません、あんまり思い出がないんですよ。 一同 爆笑 野呂 私、言ってもそんなに出てないんで。いや、うれしかったんですよ、出演できて。 上島 さっきのコメント聞いても分かりますよ。見る気もないんです。見たいとも思ってない。 野呂 見たいし、うれしすぎるんですよ、ダチョウさんもマッコイさんも好きですし。ただ撮影中の記憶が本当にないんです。ハイ。 上島 野呂は撮影中、ずっとムッとしてたよ。 肥後 元AKBの野呂さんがセンターやる気満々で来たのに、まさかのセンターじゃなくて、リアルにもめてたよね(笑)。 野呂 ハッハッハ。 肥後 もう完璧に、自分がセンターだと思っていたんだよね。メンバーを見て。 野呂 やっとセンターになれると思ったんですよ。それが……そっか、そうだよなって。テヘ☆って。 肥後 そんなかわいい感じじゃなかったよ。すげぇムッとしてたよ。 上島 最後の最後までもめていたという、そんな野呂も今回の見どころですね。 ――上島さん的な見どころは? 上島 俺はやっぱりあれですね。10月後半に撮ったところなんかは、もう寒くてね。最後の、オチのシーンは何回も撮ったからきつかった。ハアハア息上がっちゃったし、頭も痛かったし。 野呂 上島さん、楽しい見どころをお願いします(笑)。 上島 あぁあとね、「しき」ちゃんっていう子が、本当にかわいかった。 野呂 ……「希志(あいの)」さんですよね? ――で、では上島さん、今作の主役として最後はビシッと読者にメッセージをお願いします。 上島 みなさん好き嫌いはあるでしょうけど、本当にバカバカしくてくだらない部分と、すごいかっこいいサーフィンの映像や、サントラ出すくらいいい音楽とのバランスが絶妙です。本当に素晴らしい作品なので、絶対一回見たら、きっと面白いダと……。 肥後・野呂 面白い……「ダ」? (取材・文=西澤千央) 0219_03_large.jpg ●『上島ジェーンビヨンド』 企画・監督/マッコイ斉藤 脚本/藤谷弥生 出演/上島竜兵、肥後克広、大久保佳代子、品川祐、清宮佑美、野呂佳代ほか 製作/ポニーキャニオン 配給/キノフィルムズ 4月26日よりシネマート新宿ほかにてロードショー <http://www.ponycanyon.co.jp/ueshimajane/>

“爆音”の聖地・吉祥寺バウスシアターが閉館!! さよなら企画「ラストバウス」を5月末まで上映

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映画館として5月いっぱいで上映を終えることになったバウスシアター。爆音上映や大人計画の公演など、様々な企画が30年の歴史を彩ってきた。
 あるのが当たり前だと思っていたものほど、失ったときの喪失感は大きい。吉祥寺のランドマークでもあった映画館バウスシアターが2014年5月いっぱいで閉館するとのニュースが2月に流れ、驚いた人は相当数に上っただろう。1984年にオープンしたバウスシアターはそれだけ吉祥寺という街にしっくり溶け込み、中央線文化を発信する重要な拠点となっていた。ミニシアターながら、シアター1(218席)、シアター2(50席)、シアター3(105席)と3スクリーンを揃え、メジャー大作からインディペンデント作品、名画のリバイバル上映とごっちゃ煮のプログラムで、幅広い層のファンを楽しませてくれた。多目的ホールとして設計されたシアター1での特大スピーカーを使った「爆音映画祭」は、バウス名物として2004年以降すっかり定着していた。シネコンに対抗しうる独自色を発揮していた映画館だけに、閉館の知らせは残念でならない。関係者のコメントをもとに、バウスシアターの存在意義をもう一度考えてみたい。  2014年3月1日付で、バウスシアターの創業者である本田拓夫社長が「建物の経年劣化による大規模修繕の必要性もありながら、近年の市況の厳しさもあり、今後の長期的な展望を見出すことは難しく、誠に残念ではございますが閉館を決定した次第でございます」とホームページ上で閉館を発表した。劇場がいい感じで年季が出てきていたのは確かだが、爆音映画祭など上映作品によっては満席になることも少なくなかっただけに、経営が追い詰められていたようには思えない。バウスシアターで番組編成を担当する武川寛幸さんに、内情を聞いてみた。 武川 「僕がバウスに入社したのは2001年で、ちょうど営業方針が転換した時期でした。2004年に立川にシネマシティ2ができ、2005年にはMOVIX昭島ができ、近辺にシネコンがオープンする度に観客動員数は分かりやすく落ちていったんです。それまでバウスは席数の多いシアター1でメジャー作品を上映し、小さいシアター2でチェコアニメ特集やロシア映画祭などを編成していました。メジャー作品で稼いで、独自プログラムをちょこちょことやっていたんです。そんなとき、みうらじゅんさん原作、田口トモロヲ監督の『アイデン&ティティ』(03)を渋谷シネセゾンとバウスの2館のみで独占ロードショーしたところ、メジャー作品を上映していたシアター1より、『アイデン&ティティ』を上映していたシアター2のほうにお客さんが集まり、スクリーンを入れ替えることにしたんです。その頃から、バウスは独自のプログラムやミニシアター系と呼ばれる作品を積極的に押し出すようになり、この10年間はなんとか生き延びてきたという感じでした。ただ、やはりバウスシアターも開業から30年たち、震災もあって耐震性が問われるようになり、このままでの運営が難しくなったんです。とはいえ、極端に集客が落ち込んでいたわけではないので、僕たちスタッフも残念だし、これからどうしようかと閉館後の身の振り方に悩んでいるところなんです(苦笑)」
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「長野から上京してきた自分にとって、バウスは憧れの場所でした。情報を発信していく面白さを学ばせてもらった」と武川さんは語る。
 バウスシアターを建て替えるという案もあったものの、武蔵野市の規制により吉祥寺一帯は高層ビルを建てることが制限されており、低層フロアにテナントを入れ、高層フロアをシネコン化するという計画を進めることは難しかったようだ。また、バウスシアターが閉館することになった要因のひとつに、デジタル化問題もあるという。シアターN渋谷は黒字経営だったものの上映システムのデジタル化を断念し、2012年に閉館している。バウスシアターは、すでに上映機材をデジタル対応できるようにしていたはずだが……。 武川 「設備投資に関しては2010年に3Dデジタルシネマシステムを導入していたんですが、バウスとしてはそこまでで精一杯でした。今、都内のシネコンはほとんどが自動発券システムを導入しているんです。また、ムビチケと呼ばれ、ネット上でチケットを購入すると同時に座席も予約できる新しいサービスも始まりました。チケットのデジタル化にまではバウスは手が回らず、他のシネコンでは共通で使えるものが、バウスでは使えないという状況になってしまった。バウスはこれまでずっとスタッフがチケットをもぎり、ノートに手書きで記録するという昔ながらのスタイルでやってきたんですが……。自動発券システムを導入するにはかなりの金額がかかるため、個人経営の映画館にとっては厳しいものがあるんです」  ムビチケは、KADOKAWAグループの角川メディアハウスが2011年に新会社「株式会社ムビチケ」を立ち上げて始めた、電子前売り券サービス。「観客動員数が伸び悩んでいる映画業界を活性化できる」という謳い文句で始まったサービスで、TOHOシネマズをはじめとする多くのシネコンが現在取り入れている。これからミニシアターが生き延びていくには、設備投資とサービスに潤沢な予算を投じたシネコンとは異なる独自色をよりいっそう打ち出していくことが求められることになりそうだ。 ■吉祥寺はメジャーとインディーズが共存する街
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ハモニカ横丁で「おふくろ屋台」を経営する松江さん。「魅力的な街であり続けるか、つまらない街になるか、今の吉祥寺は分岐点にある」と話す。
 吉祥寺を舞台にした映画を製作し続けている「武蔵野映画社」の代表・松江勇武さんにも話を聞いた。松江さんは映画プロデューサーであり、また吉祥寺の人気グルメスポットであるハモニカ横丁の「おふくろ屋台」の店主でもある。松江さんが企画プロデュースした最新作『さよならケーキとふしぎなランプ』はバウスのクロージング作品として上映される。 松江 「バウスが閉館すると知らされたのは2013年の年末です。吉祥寺でお店をやっていることもあり、夏ごろに『バウスが売りに出されるらしい』という噂は耳にしていたんですが、年末にバウスのスタッフから『すみません、バウスが閉まることになったんです』と頭を下げられたときは驚きました。吉祥寺でロケした『さよならケーキとふしぎなランプ』は2014年秋にバウスで公開するつもりでバウスのスタッフとも準備を進めていましたから。本当は映画祭などに出品し、じっくり宣伝活動をしてから公開したかったんですが、バウスで上映することを前提に撮った作品だったので、スタッフや関係者を説得して回って、バウスのクロージングに間に合うよう、大急ぎで仕上げているところなんです」  香川県出身の松江さんだが、10年前から知人の紹介で「おふくろ屋台」を始め、すっかり吉祥寺という街に居心地のよさを感じている。お店の常連客に映画監督たちがいたことから、松江さん自身も映画製作に興味を持つようになり、『セバスチャン』(09)『あまっちょろいラブソング』(10)『あんてるさんの花』(12)、そして『さよならケーキとふしぎなランプ』と吉祥寺を舞台にした映画を作り続けてきた。 松江 「吉祥寺という街の魅力は、吉祥寺駅を中心にして徒歩圏内に大型商業施設が点在し、その間を繋ぐように個人経営の商店が建ち並んでいる。そして、その中にライブハウスやバウスシアターのように文化を発信する拠点もあるということです。普通、大型店と商店街の人って仲が悪いものですが、吉祥寺では月イチとかでデパートの人や商店街の人たちが集まって飲み会を開くなどしているんです。メジャーなものとインディペンデント的なものが非常にバランスよく共存している珍しい街だと思います。映画に関してまったく素人だった僕が初めて作った『セバスチャン』をバウスでひと晩だけ上映したときも、お金がないので近場で撮影したわけなんですが(笑)、撮影に協力してくれたお店の人たちが声を掛け合って集まってくれて、バウスのシアター1が満席になったんです。映画を作ること、上映することの面白さを吉祥寺で教えてもらったので、その後も吉祥寺にこだわって、誰でも気軽に楽しむことができる映画を作り続けてきたんです」
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ミュージシャンの堂島孝平と『自縄自縛の私』の平田薫が共演した『さよならケーキとふしぎなランプ』。大切な人との別れと旅立ちがテーマです。
 「おふくろ屋台」を経営し、映画製作を続けていく一方、変わりゆく吉祥寺の景観を映像として記録しておこうと、アーカイブ作業も松江さんは日々行っている。 松江 「変わっていく街の景色をビデオ撮影したり、昔から住んでいる長老の方たちを取材して回っています。取材をしながら思うのは、吉祥寺という街はもともとあったわけではなく、いろんな世代の方たちがそれぞれ苦心して、今みたいな街を作っていったんだということなんです。それこそバウスシアターの存在は、街づくりの中で大きな役目を果たしてきたと思います。僕ら若い世代が受け継いでいかなくちゃいけない。今すぐは難しいですけれど、将来的にはバウスのような独自のプログラムを編成する上映スペースを吉祥寺に設けたいですね」  松江さんがプロデュースした堂島孝平、平田薫主演のファンタジードラマ『さよならケーキとふしぎなランプ』はバウスシアターのクロージング作品として4月26日(土)~5月9日(金)2週間限定で上映される。 ■最後の爆音がサンロード商店街に響き渡る!?  バウスシアター30年(バウスの前身であるムサシノ映画劇場から数えると63年)の歴史を振り返るクロージングイベント「THE LAST BAUS~さよならバウスシアター、最後の宴」が4月26日(土)~6月10日(火)に開催される。スタッフの思い入れとファン&関係者からのリクエストを合わせた形でAプログラム「バウスをめぐる映画たち」(4月26日~5月16日)、Bプログラム「第7回爆音映画祭」(4月26日~5月31日)、Cプログラム「ライヴハウスバウス」(6月1日~10日)と3つの特集プログラムが組まれている。ちなみに「THE LAST BAUS」のネーミングは、バウスシアターでリバイバル上映して人気を呼んだマーティン・スコセッシ監督の音楽ドキュメンタリー『ラスト・ワルツ』(78)に掛けたもの。『ラスト・ワルツ』の冒頭の言葉‘This Film Should Be Played Loud(この映画は大音量で上映すること)’は、バウス発祥の上映イベント「爆音映画祭」のきっかけとなった。
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5月31日(土)の最終プログラムとなる『ラスト・ワルツ』。ロックが産業化していく直前、古きよき時代の終焉を描いたライブドキュメンタリーだ。
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ファンからのリクエストに応え、『ゆらゆら帝国 2009.4.26LIVE@日比谷野外音楽堂』が爆音映画祭に再登場。ディレクターは大根仁監督。
武川 「爆音という呼び名を使う前から、バウスでは音響設備を生かしたライブドキュメンタリーの上映を『ラスト・ワルツ』や『イヤー・オブ・ザ・ホース』(97)など度々やっていたんです。それを客席で観ていたのが映画評論家の樋口泰人さん。樋口さんに『他にも大音量で上映すると面白い映画がある』と助言を頂いて、2004年からゴダールの作品なども大音量で上映するようになり、爆音上映と命名されたんです。樋口さんがディレクターを務める“爆音映画祭”は第7回となる今回でバウスでは見納めです。『ラスト・ワルツ』やゴダール作品はもちろん、爆音映画祭のスタッフがずっと待ちこがれていたフランシス・F・コッポラ監督の『ドラキュラ』(92)も、ようやく爆音上映できます。『ファイト・クラブ』(99)もそうですが、『ドラキュラ』もすでに日本での上映権が切れており、今回の爆音限定で上映許可をもらったものなんです」  なんとも贅沢な上映プログラムではないか。他にもバウスで封切られた『アイデン&ティティ』や地元出身の松江哲明監督による音楽ドキュメンタリー『ライブテープ』(09)のアンコール上映、閉館が決まったバウスシアターでロケ撮影された『BELLRING少女ハートの6次元ギャラクシー』のプレミア上映、アレハンドロ・ホドロフスキー監督が来場してのカルト映画『エル・トポ』(70)のトーク付き上映、『ロッキー・ホラー・ショー』(75)のパフォーマンス付き上映など連日レアものプログラムが組まれている。映画の上映は5月いっぱいで終了し、6月1日~10日はライブハウスとしてバウスシアターは30年に及ぶ船旅を終えることになる。「バウスで学んだノウハウを他の職場で生かしたい」という武川さんらバウスシアタースタッフの新しい船出を祝いつつ、ラストバウスに通いたい。 (取材・構成=長野辰次) sayonara_cake02.jpg 『さよならケーキとふしぎなランプ』 監督・脚本/金井純一 脚本/ビーグル大塚 出演/堂島孝平、平田薫、ヨネスケ、坂田雅彦、田中世津子、広澤草、福場俊策、二宮慶多、梅垣義明ほか 配給/ブラウニー 4月26日(土)より吉祥寺バウスシアターほか全国順次公開  (C)武蔵野映画社 /2013「さよならケーキとふしぎなランプ」 <http://www.sayonara-cake.com>