元・着エロアイドルが明かす、AVと着エロの危うい境界線「同じことをやるなら、AVのほうがいい」?

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 AV出演強要問題をはじめ、大手プロダクション関係者が労働者派遣法違反で逮捕されたり、キャンプ場での AV撮影をめぐり大手メーカー関係者らが摘発されるなど、大きく揺れ動いているAV業界。  そんな一連のAV騒動をルポした書籍『モザイクの向こう側』(双葉社)の著者である井川楊枝と、暴露系グラビアアイドルとして活躍する吉沢さりぃが、AVの諸問題について対談した。グラドルの目に、これらの問題は、一体どのように映っているのだろうか? ■気の弱い子は、強要されると断れない 井川 吉沢さんのコラムは、以前から拝読していました。今度、彩図社から文庫本を出版されるんですね。おめでとうございます。 吉沢 ありがとうございます!  『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』(11月18日発売)というタイトルで、自身初の著書です。 井川 吉沢さんは以前、日刊サイゾーのコラムでも書かれていましたけど(参照記事)、1本目のイメージDVDをめぐって、モメにモメたんですよね。撮影当日、初めて台本を渡され、極小ビキニでバナナを舐めさせられたり、マッサージ器を使わされたり、乳首の魚拓を取られたとか。 吉沢 ええ。このときは撮影2日目で、トイレに行くふりをして脱走を企てたんです。でも、ディレクターに追いかけられて、泣きわめきました(笑)。 井川 グラビアの現場でも、いま騒がれているようなAV出演強要って、わりとあるんでしょうか? 吉沢 やっぱりありますね。例えば、女の子が「バナナは舐めたくない」って、マネジャーに言ったとしますよね。でも、マネジャーと制作側は裏で「ここまでやる」って決めておいて、マネジャーがわざと現場に来ないことがあるんですよ。それで、だまし討ちというか、逃げ場をなくして撮影することがあります。 井川 女の子はマネジャーに相談しようがないから、断りにくいですよね。 吉沢 そうですね。私なら断るんですけど、そうすると現場の空気が悪くなるんです。だから、気の弱い子とかだと、仕方なく折れちゃうでしょうね。でも一回、撮られちゃうと、その映像がいつどこで使われるかわからないから。 井川 元地方局のアナウンサーのMさんは、大学時代、AVだと聞かされず、街中で声をかけられ、飴を舐めさせられたとのことでした。撮影後、「この映像は使わないでください」って制作側に頼み込んだらしいのですが、結局使われてしまった。ましてや、契約を結んでしまったら、いくらお願いしても映像は使われると思ったほうがいいでしょうね。 吉沢 グラビアの強要ケースだと、制作側と事務所がグルのケースもあれば、事務所が勝手に「この子は、ここまでできます」って言っちゃったりすることもあります。それで制作側はできるものだと思い込んでいるけど、いざ撮影になると、女の子は聞いていなくて泣きだしちゃう。「マネジャーは現場にいないし、どうしよう……」みたいな。そういうときは、制作側も女の子も、どちらも被害者なのかなあと思います。 井川 なぜ、そういうケースが起こるのでしょうか? 吉沢 事務所のマネジャーは通常、固定給プラス歩合という給与体系なんですけど、DVDって、まとまったお金として入ってくるから、大きいんですよ。それで、なんとか決めなきゃいけないというので、あれもできるし、これもできるってしって吹聴しちゃうんだと思います。
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『モザイクの向こう側』(双葉社)
■着エロからAVに行くのは、よくわかる 井川 吉沢さんは1本目のDVDでモメた際、「発売を取りやめるんだったら、200万円払え」って言われたそうですね。 吉沢 はい。結局、仕上がった作品を見てみたら、自分が思っていたほどエグくなかったんで、200万円も払うのはバカバカしいと思い、取りやめはしなかったんですけど(笑)。AVだったら、だいぶこの額も異なりますよね。 井川 1本のキャンセル料だと、似たようなものでしょうか。スタジオ代とかスタッフのギャラとか、賠償額は50~200万ぐらいの間だと思いますよ。ですが、AVの場合、単体の複数本契約というものがあります。国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」が報告した被害事例の中には、2,460万円の賠償金を請求されたケースがありました。これは、10本契約を結んだ単体の子が、1本目を撮り終えた後に「もう出演できない」っていう話になったみたいです。そこで、事務所側は、もしも残りの9本を撮っていたらこれぐらい稼げていたはずだということで、その料金を賠償金に加算したんです。 吉沢 ケタ違いですね。そんなに請求されたら、途中で嫌だと思っても逃げられないですよ。グラビアだと、10本契約なんてまずありません。人気のある子で、よくて2~3本ですね。 井川 そうですよね。ちなみに吉沢さんって、AVに誘われたことはあるんですか? 2008年に芸能人専門AVメーカーのMUTEKIが発足して以降、着エロアイドルがAV出演を口説かれるケースが増えましたが。 吉沢 私も誘われましたね。そのときは、「次にDVDを出すのであれば、乳首ポチとかやらないといけない」って言われ、それでグラビアが嫌になって、フリーになった頃だったんです。そしたら、DVDのプロデューサーから「こういう話があるんだけど」って、MUTEKIの提案をされたんです。1本1,000万円で、プロデューサーが仲介料として100万円抜くから、900万円という話でした。結局、怖気づいちゃって出なかったんですけど。 井川 いやあ、芸能人の冠が付くと額が違いますね! 今は単体のトップクラスが1本300万円程度じゃないかな。仮に事務所と折半だと、本人の取り分は150万円ということになりますね。 吉沢 私、着エロアイドルの女の子がAVに行くのは、すごいわかるんですよ。結局、着エロDVDでも、エグいことさせられるわけじゃないですか。ソーセージに練乳をかけたやつを舐めるとか。ローター使ってオナニーとか。下のアングルから撮影されて、腰を振っているから騎上位みたいな感じで撮られるとか。やっているうちに、むなしくなるんですよ。これなら、AVのほうがキレイなんじゃないかなって。AVのほうがお金もかけられている分、ジャケットもキレイに作られるし。それに、今は恵比寿マスカッツみたいに、AV女優がアイドル化しているから。 井川 その気持ちはわかります。着エロからAVに転身した子は何人かインタビューしましたけど、みんな、「AVに行って、こんなにチヤホヤされるとは思わなかった」って言うんですよね。ファンが爆発的に増えて、Twitterのフォロワー数も2,000ぐらいだったのが、数カ月で2万人を超えてしまったりとか。 吉沢 着エロのDVDを買う人って、今はすごくコアな存在なんですよね。あまり雑誌にパブが載ることもないし、DVDを買いに行っても、すごい端に着エロコーナーみたいなのがある感じで。DVDも今、1,000本売れたらヒットという感じで、300~500本程度でも次出せるというぐらいの規模なんです。 井川 やっぱり、AVの市場規模は、だいぶ大きいですよ。AVが売れない時代とはいっても、大手メーカーだと発売の初月で1,000本はクリアしておかないと話にならないって感じですし。 吉沢 今の若い子だと、グラビアアイドルよりAVに出たいっていう子のほうが多いんじゃないですか? AV女優になってお金をいっぱいもらって、恵比寿マスカッツに入りたいって。 井川 金銭面に加え、世間に認知されるという点でいうと、確かに着エロアイドルより、AV女優のほうがいいと思います。だから、スカウトマンも「タレントやってレッスン料を払うぐらいなら、AVやったほうがいいよ」って、芸能志望の子を誘うんですよ。ただ、ここで問題があります。AVの地位って、この10年ぐらいの間に急速に上がったんですけど、今回の警察の摘発でもわかるように、法的にはビミョーなところにあるんです。モザイクの向こう側では本番をやっていないっていう、ごまかしの上で成立しているジャンルですしね。この法的なところをクリアしてあげないと、日本のAVはグレーなビジネスのままです。あと、恵比寿マスカッツとかの例外はあるけど、基本的に地上波だと「裸をやってる子はダメ」ってなっちゃうし、CMは余計に取りにくい。そこそこのスポンサーが付いている、規模の大きな映画も同様です。だから、タレント志望の女の子の中は、AVに出て有名になるはずだったのに、逆に思うように活動できないっていうジレンマに陥っちゃうんですね。AV関係者が、芸能志望の子に対して、そういうリスクを説明しないで誘うのはよくない。 吉沢 難しいところですね。 井川 昔の女性は、AVは風俗みたいなものだと割り切ってやっていたけど、時代は移り変わってきています。いまAVは、立ち位置が曖昧になっている業界で、だからこそ、こうした強要の被害が起こっているのかなと思いますね。 ●「AV出演強要問題」に揺れる業界を徹底取材! 『モザイクの向こう側』 井川楊枝 著 双葉社 刊 1400円+税

元・着エロアイドルが明かす、AVと着エロの危うい境界線「同じことをやるなら、AVのほうがいい」?

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 AV出演強要問題をはじめ、大手プロダクション関係者が労働者派遣法違反で逮捕されたり、キャンプ場での AV撮影をめぐり大手メーカー関係者らが摘発されるなど、大きく揺れ動いているAV業界。  そんな一連のAV騒動をルポした書籍『モザイクの向こう側』(双葉社)の著者である井川楊枝と、暴露系グラビアアイドルとして活躍する吉沢さりぃが、AVの諸問題について対談した。グラドルの目には、これらの問題は、いったいどのように映っているのだろうか? ■気の弱い子は、強要されると断れない 井川 吉沢さんのコラムは、以前から拝読していました。今度、彩図社から文庫本を出版されるんですね。おめでとうございます。 吉沢 ありがとうございます!  『現役底辺グラドルが暴露グラビアアイドルのぶっちゃけ話』(11月21日発売)というタイトルで、自身初の著書です。 井川 吉沢さんは以前、日刊サイゾーのコラムでも書かれていましたけど(参照記事)、1本目のイメージDVDをめぐって、モメにモメたんですよね。撮影当日、初めて台本を渡され、極小ビキニでバナナを舐めさせられたり、マッサージ器を使わされたり、乳首の魚拓を取られたとか。 吉沢 ええ。このときは撮影2日目で、トイレに行くふりをして脱走を企てたんです。でも、ディレクターに追いかけられて、泣きわめきました(笑)。 井川 グラビアの現場でも、いま騒がれているようなAV出演強要って、わりとあるんでしょうか? 吉沢 やっぱりありますね。例えば、女の子が「バナナは舐めたくない」って、マネジャーに言ったとしますよね。でも、マネジャーと制作側は裏で「ここまでやる」って決めておいて、マネジャーがわざと現場に来ないことがあるんですよ。それで、だまし討ちというか、逃げ場をなくして撮影することがあります。 井川 女の子はマネジャーに相談しようがないから、断りにくいですよね。 吉沢 そうですね。私なら断るんですけど、そうすると現場の空気が悪くなるんです。だから、気の弱い子とかだと、仕方なく折れちゃうでしょうね。でも一回、撮られちゃうと、その映像がいつ使われるかわからないから。 井川 元地方局のアナウンサーのMさんは、大学時代、AVだと聞かされず、街中で声をかけられ、飴を舐めさせられたとのことでした。撮影後、「この映像は使わないでください」って制作側に頼み込んだらしいのですが、結局映像は使われてしまった。ましてや、契約を結んでしまったら、いくらお願いしても映像は使われると思ったほうがいいでしょうね。 吉沢 グラビアの強要ケースだと、制作側と事務所がグルのケースもあれば、事務所が勝手に「この子は、ここまでできます」って言っちゃったりすることもあります。それで制作側はできるものだと思い込んでいるけど、いざ撮影になると、女の子は聞いていなくて泣きだしちゃう。「マネジャーは現場にいないし、どうしよう……」みたいな。そういうときは、制作側も女の子も、どちらも被害者なのかなあと思います。 井川 なぜ、そういうケースが起こるのでしょうか? 吉沢 事務所のマネジャーは通常、固定給プラス歩合という給与体系なんですけど、DVDって、まとまったお金として入ってくるから、大きいんですよ。それで、なんとか決めなきゃいけないというので、あれもできるし、これもできるってし、吹聴しちゃうんだと思います。
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『モザイクの向こう側』(双葉社)
■着エロからAVに行くのは、よくわかる 井川 吉沢さんは1本目のDVDでモメた際、「発売を取りやめるんだったら、200万円支払え」って言われたそうですね。 吉沢 はい。結局、仕上がった作品を見てみたら自分が思っていたほどエグくなかったんで、200万円も払うのはバカバカしいと思い、取りやめはしなかったんですけど(笑)。AVだったら、だいぶこの額も異なりますよね。 井川 1本のキャンセル料だと、似たようなものでしょうか。スタジオ代とかスタッフのギャラとか、賠償額は50~200万ぐらいの間だと思いますよ。ですが、AVの場合、単体の複数本契約というものがあります。国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」が報告した被害事例の中には、2,460万円の賠償金を請求されたケースがありました。これは、10本契約を結んだ単体の子が、1本目を撮り終えた後に「もう出演できない」っていう話になったみたいです。そこで、事務所側は、もしも残りの9本を撮っていたらこれぐらい稼げていたはずだということで、その料金を賠償金に加算したんです。 吉沢 ケタ違いですね。そんなに請求されたら、途中で嫌だと思っても逃げられないですよ。グラビアだと、10本契約なんてまずありません。人気のある子で、よくて2~3本ですね。 井川 そうですよね。ちなみに吉沢さんって、AVに誘われたことはあるんですか? 2008年に芸能人専門AVメーカーのMUTEKIが発足して以降、着エロアイドルがAV出演を口説かれるケースが増えましたが。 吉沢 私も誘われましたね。そのときは、「次にDVDを出すのであれば、乳首ポチとかやらないといけない」って言われ、それでグラビアが嫌になって、フリーになった頃だったんです。DVDのプロデューサーから「こういう話があるんだけど」って、MUTEKIの提案をされたんです。1本1,000万円で、プロデューサーが仲介料として100万円抜くから、900万円という話でした。結局、怖気づいちゃって出なかったんですけど。 井川 いやあ、芸能人の冠が付くと額が違いますね! 今は単体のトップクラスが1本300万円程度じゃないかな。仮に事務所と折半だと、本人の取り分は150万円ということになりますね。 吉沢 私、着エロアイドルの女の子がAVに行くのは、すごいわかるんですよ。結局、着エロDVDでも、エグいことさせられるわけじゃないですか。ソーセージに練乳をかけたやつを舐めるとか。ローター使ってオナニーとか。下のアングルから撮影されて、腰を振っているから騎上位みたいな感じで撮られるとか。やっているうちに、むなしくなるんですよ。これなら、AVのほうがキレイなんじゃないかなって。AVのほうがお金もかけられている分、ジャケットもキレイに作られるし。それに、今は恵比寿マスカッツみたいに、AV女優がアイドル化しているから。 井川 その気持ちはわかります。着エロからAVに転身した子は何人かインタビューしましたけど、みんな、「AVに行って、こんなにチヤホヤされるとは思わなかった」って言うんですよね。ファンが爆発的に増えて、Twitterのフォロワー数も2,000ぐらいだったのが、数カ月で2万人を超えてしまったりとか。 吉沢 着エロのDVDを買う人って、今はすごくコアな存在なんですよね。あまり雑誌にパブが載ることもないし、DVDを買いに行っても、すごい端に着エロコーナーみたいなのがある感じで。DVDも今、1,000本売れたらヒットという感じで、300~500本程度でも次出せるというぐらいの規模なんです。顔バレしないジャンルじゃないかと思います。 井川 やっぱり、AVの市場規模は、だいぶ大きいですよ。AVが売れない時代とはいっても、大手メーカーだと発売の初月で1,000本はクリアしておかないと話にならないって感じですし。 吉沢 今の若い子だと、グラビアアイドルよりAVに出たいっていう子のほうが多いんじゃないですか? AV女優になってお金をいっぱいもらって、恵比寿マスカッツに入りたいって。 井川 金銭面に加え、世間に認知されるという点でいうと、確かに着エロアイドルより、AV女優のほうがいいと思います。だから、スカウトマンも「タレントやってレッスン料を払うぐらいなら、AVやったほうがいいよ」って、芸能志望の子を誘うんですよ。ただ、ここで問題があります。AVの地位って、この10年ぐらいの間に急速に上がったんですけど、今回の警察の摘発でもわかるように、法的にはビミョーなところにあるんです。モザイクの向こう側では本番をやっていないっていう、ごまかしの上で成立しているジャンルですしね。この法的なところをクリアしてあげないと、日本のAVはグレーなビジネスのままです。あと、恵比寿マスカッツとかの例外はあるけど、基本的に地上波だと『裸をやってる子はダメ』ってなっちゃうし、CMは余計に取りにくい。そこそこのスポンサーが付いている、規模の大きな映画も同様です。だから、タレント志望の女の子の中は、AVに出て有名になるはずだったのに、逆に思うように活動できないっていうジレンマに陥っちゃうんですね。AV関係者が、芸能志望の子に対して、そういうリスクを説明しないで誘うのはよくないですよね。 吉沢 難しいところですね。 井川 昔の女性は、AVは風俗みたいなものだと割り切ってやっていたけど、時代は移り変わってきています。いまAVは、立ち位置が曖昧になっている業界で、だからこそ、こうした強要の被害が起こっているのかなと思いますね。 ●「AV出演強要問題」に揺れる業界を徹底取材! 『モザイクの向こう側』 井川楊枝 著 双葉社 刊 1400円+税

幼女虐待を描いた映画『無垢の祈り』が強烈すぎ!! ベテラン監督が自主製作に踏み切った内情とは……

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幼女虐待を生々しく描いた『無垢の祈り』。撮影時9歳だった子役の福田美姫が鬼気迫る演技を見せている。
 現在、渋谷のミニシアター「アップリンク」でロングラン上映が続き、密かに話題を呼んでいるのが『無垢の祈り』だ。人気ホラー作家・平山夢明の短編集『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社)に収録された同名小説が原作。10歳になる少女フミは小学校でイジメに遭い、自宅に帰れば義父からの執拗な虐待が待っている。母親は新興宗教に依存し、助けてはくれない。どこにも救いを求めることができないフミは、街で噂になっている連続殺人鬼に救いを求め、殺人現場となっている廃墟を訪ね歩く――。いかにも平山作品らしくハードさを極めた内容だ。幼女虐待を題材にしていることから、海外の映画祭でも上映困難だったという曰く付きの映画となっている。本作を自主製作という形で完成させたのは、壇蜜初主演映画『私の奴隷になりなさい』(12)を大ヒットさせた亀井亨監督。SM映画で人気を博したベテラン監督は、なぜ児童虐待を主題にした作品を自主製作&自主配給までして公開するに至ったのだろうか。
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妻の連れ子に手を出す最悪の義父を演じたのは物まね芸人のBBゴロー。亀井監督に口説かれての出演だった。
――平山夢明さんと亀井監督のトークショー付きの上映を拝見しましたが、アップリンクはフルハウス状態で独特な熱気を感じました。『無垢の祈り』を自主映画として製作した経緯を教えてください。 亀井 10年前に独立UHF局で平山夢明さん原作の深夜ホラー『「超」怖い話』というオムニバスものを撮ったんです。とても好評だったんですが、苦情も局に届き、再放送は一度もされませんでした。平山さんの作品って、テレビ向きじゃないんですよね(苦笑)。でも、それから平山さんは僕のことを信頼してくれ、一緒に呑みにいくようになったんです。その後も映画会社に平山さん原作の映画化の企画を出し続けたんですが、「もう少し、表現を柔らかくできない?」と戻されるわけです。平山作品の面白さを表現するには、加減したものでは意味がない。中途半端な形になるなら映像化しないほうがいいと、企画を引っ込めることが何度も続きました。僕もここ10年くらい監督をやっていて、「綺麗事を撮るだけでいいのかな」と考えるようになってきたこともあり、商業映画ではまず不可能な“児童虐待”を題材にした『無垢の祈り』を自主映画としてやろうと決めたんです。商業映画の場合、問題が起きるとプロデューサーと監督が共同で責任を負う形になりますが、自主映画ならプロデューサーと監督を兼ねた僕がひとりで負えばいいわけです。 ――亀井監督が配給も手掛け、3年がかりで劇場公開に漕ぎつけたわけですね。 亀井 そうです。3年前に平山さんに『無垢の祈り』の映画化のお話をさせてもらい、2年前に映画として完成させました。1年間ほど海外の映画祭に出品しようと動いたんですが、軒並みダメでしたね。日本の映画界で児童虐待ものがNGなように、海外でも扱ってもらえませんでした。規模の大きな映画祭ほどダメでした。唯一、上映できたのが香港アンダーグランド映画祭。アングラ映画祭のオープニングを飾りました(笑)。国内の映画祭は、平山さんが付き合いのあるカナザワ映画祭で今年9月に上映することができたんです。内容が内容だから、一般公開は上映館が限定されることは最初からわかっていたので、ミニシアター系の映画館と今も話をじっくり進めています。渋谷のアップリンクは僕の作品を以前から取り上げてくれていたので、「映倫を通していない作品ですが……」とお願いして、ロングラン上映してもらっています。平山さんも妥協しないで完成させた本作を気に入ってくれて、毎週のようにトークイベントをやっているところです。
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母親を演じた下村愛。セクシータレント・穂花として活躍後、2015年に自叙伝『籠』を執筆し、虐待された過去を公表した。
■壮絶な少女時代を体験した女優をキャスティング ――亀井監督は『私の奴隷になりなさい』をヒットさせ、また『幼獣マメシバ』(09)や『ねこタクシー』(10)などの動物モノも数多く手掛けています。なぜ、自主製作までして児童虐待ものを撮ることにこだわったんでしょうか? 亀井 動物モノに関してぶっちゃけて言うと、僕は人間よりも動物のほうが好きだからです。あまり人間が好きじゃない(笑)。人間を撮るよりも動物を撮っているほうが楽なんです。SM映画にしても、『私の奴隷になりなさい』以前も石井隆監督の助監督や団鬼六さんの監督作品で監督補をしてきたんですが、僕はSMというプレイ自体よりもSとMという関係性に興味があるんです。平山さんは僕と違って人間好きな方ですが、平山さんの小説は倫理の壁を突き抜けた向こう側を描き、とても残酷でグロいけれど、書いてあることはすごく正論。信用できる文章なんです。そういう作品なら、自腹を切ってでも本気で映画化したいと思えた。僕は今47歳なんですが、あとどれだけ映画を撮ることができるかを考えたら、そろそろ自分が本当に撮りたいものを撮らなくちゃいけないなと。みんなが「面白い、楽しかった」と言ってくれるような映画はこれからも撮り続けるつもりですが、観た人の人生の軌道を変えてしまうような映画も撮りたいと思ったんです。 ――虐待に遭う少女フミ役の福田美姫ちゃんが大熱演。本作が俳優デビューとなる芸人・BBゴローは迫真の演技。また、新興宗教にハマる母親を演じた下村愛さん(2015年に穂花から改名)は亀井監督作品にたびたび出演してきましたが、彼女自身も少女時代に壮絶な虐待を体験していたんですね。 亀井 下村愛さんにはそれもあって出演してもらいました。下村さんからは自叙伝『籠』(主婦の友社)を発表された際に、「こんな本を出したので、読んでください」と言われていたんです。自身が体験したことを、逆側の母親役として演じることは容易なことではなかったと思いますが、大変な過去を背負った彼女が母親役を引き受けてくれたことで、作品に深みが出たように思います。福田美姫ちゃんはスターダスト所属なんですが、スターダストとは動物モノの作品で付き合いがあり、僕が無茶苦茶なことはしない監督だということはわかってくれて、作品内容に理解のある子役として美姫ちゃんを紹介してくれたんです。もちろん彼女の両親の了解をもらった上での出演ですし、撮影中も法律に反するようなことはしていません。BBゴローさんは平山さんと一緒に呑む仲間で、5年以上前からの付き合いがありました。僕の作品は板尾創路さん、カンニング竹山さん、塚地武雅さんといった芸人さんに出演してもらうことが多いんですが、芸人さんは芝居がうまい。しかもBBゴローさんは形態模写をやっているので人間観察力に優れているんです。僕が「こんな感じで」と頼むと、ピッとひらめいて、サッと演じてみせる。題材が題材なだけに、僕が信頼できる人たちに出演してもらったんです。
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撮影中の亀井監督。映画の内容はハードだが、撮影はキャストに精神的にも肉体的にも苦痛を与えないよう配慮して進められた。
■「闘うことにまるで興味がない」 ――亀井監督の作品を振り返ってみると、本作で母親を演じた下村愛さんが穂花時代に主演した『テレビばかり見ていると馬鹿になる』(07)は引きこもりの女性が主人公で、『私の奴隷になりなさい』で壇蜜とのSMプレイに溺れる青年はそれまでずっと無気力に生きてきた。亀井作品は生きていく気力を持てずにいる人たちを描いていることが非常に多いです。 亀井 『幼獣マメシバ』の佐藤二朗さんも中年ニートでした(笑)。オファーの来た仕事は何でも受けている監督のように映るかもしれませんが、実は社会的に弱い立場の人間を描いているということで僕の作品は一貫しているんです。基本、自分が気に入った仕事しか受けないし、きちんとした原作がある場合以外は、なるべく自分がやりたい方向に持ってくるようにしています。僕の作品の主人公たちは、物理的に何かに立ち向かって闘うということは一切しません。僕自身が、闘うことに興味が持てないんです。優劣が歴然としてあるこの世の中で、弱者という立場にいる人たちは何を考えて過ごしているのだろうという部分に興味が湧くんです。その結果が動物モノだったり、引きこもりやSMだったりする。それが今回は児童虐待になった。ジャンルは違うけれど、描きたいことはいつも同じなんです。 ――闘うことに興味がないとのことですが、映画製作の際にはプロデューサーたちとやりあうこともあるのでは? 亀井 もちろん、自分がやりたいことはプロデューサーに対して主張しますが、それは作品を作るために必要最低限なディスカッションであって、闘いだとは思っていません。殴るとか拳銃を撃つといった戦いや、オリンピックのようなスポーツも含め、物理的な争いごとにまったく関心が持てない。『スター・ウォーズ』(77)はちゃんと観たことがないし、『シン・ゴジラ』もまだ観ていません。『ゴジラ』シリーズで描かれるゴジラは何かのメタファーなんでしょうが、そんな怪獣と戦おうという人間の心理が僕には分からない(苦笑)。もちろん人間が生きていく上で、時間との闘いだったり、人間関係をめぐる闘いはあるわけで、僕はそちらに興味がある。他人と競って勝利を得るということには心が動かないんです。 ――人間があまり好きでなく、闘うことに興味が持てない映画監督が、児童虐待を題材にした映画を撮り上げたことが興味深いです。 亀井 僕自身は、人間としてちゃんと生きていかなくちゃとは常々思っているんです。本当にちゃんとした大人は尊敬しています。でも、ほとんどの人はそうじゃない。ちゃんとした大人のふりをしているだけ。でも、そのことに文句を言っても何も始まらない。自分から世の中を変えようとはしないけど、世の中は変わってほしいとは思っています。『無垢の祈り』は最下層のどこにも行き場がない人たちの物語。悲鳴を上げたくても上げられない人たちなんです。今回、『無垢の祈り』を映画化したことで、悲鳴を上げられなかった人たちが悲鳴を上げられるようになればいいなと思うんです。「クリーンな世の中にしましょう」と言い出すと、表面に出てこない形でもっと酷な状況に追い込まれる人たちがいる。「イジメをなくしましょう」とキャンペーンを張れば、自分がイジメられていることを言い出せなくなる子どもたちが現われるわけです。本当の問題はそこじゃない。いちばん酷い目に遭っている人たちは何も話せなくなってしまう。僕にはどうすれば問題を解決できるかわかりませんが、他の監督たちとは違うことをやる監督がいてもいんじゃないかと思うんですよ。 ――この映画のいちばんの恐ろしさは、これが決してホラーファンタジーではなく、現実の世界を描いているということですね。 亀井 中には「こんなこと本当にあるの?」と思う人もいるでしょうが、現代の日本では影に隠れているけれど大きな問題だと思います。本作を上映するにあたって怖いのは、実際に虐待に遭っている若い人が観て、映画の世界と現実とをシンクロさせてしまうこと。過去に体験したという人でもフラッシュバックしてしまう恐れがあるので、その点は気を付けてほしいし、映倫には通していませんが、自主的にR18+にしています。精神的にきちんと自律できている状態で観てほしいと思います。年明けから名古屋、京都、松本でも上映されることが決まったので、平山さんは各地でトークショーをやる気になっています(笑)。今回の『無垢の祈り』が成功例になれば、今後は平山作品の面白さをそこねることなく映像化しようという流れも起きると思うんです。平山さんの小説は『ダイナー』をはじめ人気作が多数あるので、次回はぜひ商業ベースで撮ってみたいですね。 (取材・文=長野辰次)
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『無垢の祈り』 (c)YUMEAKI HIRAYAMA /TORU KAMEI 原作/平山夢明 製作・脚本・監督/亀井亨 撮影/中尾正人 音楽/野中“まさ”雄一 美術/松塚隆史 録音/甲斐田哲也 音響効果/丹愛 出演/福田美姫、BBゴロー、下村愛 R18 10月8日より渋谷アップリンクにて上映中 宮崎キネマ館:11月14日~18日再上映/シネマスコーレ(名古屋):17年1月上映予定/松本CINEMAセレクト:17年2月上映予定/京都みなみ会館:2017年上映予定 http://innocentprayer.s2.weblife.me ●亀井亨(かめい・とおる) 1969年福岡県福岡市出身。RKB毎日放送で情報番組のディレクターを経験後に上京。石井隆監督作品の演出部で活動し、『心中エレジー』(05)で監督デビュー。本作で母親役を演じた下村愛(穂花)主演作『テレビばかり見ていると馬鹿になる』(07)や『ヘクトパスカル』(09)、佐藤二朗主演作『幼獣マメシバ』(09)、カンニング竹山主演作『ねこタクシー』(10)、塚地武雅主演作『くろねこルーシー』(12)など数多くの作品を手掛けた。壇蜜初主演作『私の奴隷になりなさい』(12)は大ヒットを記録。性同一障害を題材にした『アルビノ』(16)もアップリンクで公開されている

貯金ゼロ目前、食費は1日100円……苦境極まった片渕須直監督『この世界の片隅に』は、どう完成したか

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 11月12日、ようやくアニメーション映画『この世界の片隅に』(原作/こうの史代)が全国公開を迎える。  最初に制作発表がなされたのは、2012年の8月。しかし、企画は遅々として進まなかった。  事態がガラリと変わったのは、制作発表から2年半後の15年3月だった。クラウドファンディングによる資金調達が始まると、わずか9日間で当初の目標額2,000万円に到達。最終的には、3,374人の支援者が総額3,622万4,000円を出資する国内最高金額を記録した。  こうして同6月には製作委員会も発足。さらに、今年8月には本予告と共に、主役である「すずさん」の声を、7月に芸名を新たにするなど動向が注目されていた女優・のんが担当することも発表され、『この世界の片隅に』のタイトルは、多くのメディアが取り上げるに至った。  多くの困難を乗り越えて、ようやく完成に至った『この世界の片隅に』。ここに至るまでのさまざまなエピソードを、片渕須直監督に語っていただいた。
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■クラウドファンディングが作品にもたらしたもの ──WEBアニメスタイルで連載してきたコラム『1300日の記録』。いわば『この世界の片隅に』の制作日誌ですが、12年8月20日に始まった連載の第1回では、遡って10年8月6日のことを記されていますね。ここで、監督はプロデューサーの丸山正雄さん(MAPPA代表取締役会長/本作では企画)とのやりとりを記しています。ここでは、こう書いていらっしゃいますね。 「この頃、2009年夏に完成した『マイマイ新子と千年の魔法』の次回作になる企画を模索している。丸山さんには、片渕には次はTVシリーズを作らせたい、というかなりはっきりした思いがあったらしかった」 『マイマイ新子と千年の魔法』に続いて次回作も、丸山さんと一緒に歩もうと思うに至るには、どのような経緯があったのでしょうか? 片渕 うーん『マイマイ新子と千年の魔法』をやった結果、その次という話をしやすかったということがあります。 当初、丸山さんは『この世界の片隅に』を、アニメーションにするのはよいが、テレビシリーズ向けなんじゃないかと考えていました。それは、映画のほうが企画を成立させるためのハードルが高いからです。 ところが、丸山さんが映画でやるべきだと考えを改める出来事がありました。 10年10月に作品の舞台となった防府市で『マイマイ新子と千年の魔法』の野外上映会が開催されたことです。このとき、地元だけでなく全国から1,000人あまりの人が集まってくれました。 ──ほとんど村祭りみたいですね。 片渕 そう。しかも会場には、横幅20メートルのスクリーンを貼って、後ろに映画の中に映るのと同じ山がそびえてたんですから。 丸山さんは、防府市に行くまでは「映画は無理だからあきらめろ」と僕に話すつもりだったようです。ところが、野外上映のスクリーンの前に集まっている人を見て考え方が180度変わったらしく、翌朝「やっぱり映画で作らなくちゃだめだ」と。野外上映会の後、温泉宿に一泊したんですが、丸山さんは一晩ずうっと、僕にどう切り出すか考えていたそうです。 そうしたお客さんが存在していること、そうしたお客さんをあらかじめ見積もることができたのが、丸山さんとしては大きかったと思います。 その後、クラウドファンディングを行ったのも、スポンサードしている方々に、そうしたお客さんの存在を可視化して理解していただくためでした。 ──月並みな言い方ですが、丸山さんは、純粋にアニメーションを愛している方と聞いています。 片渕 ゼロ号試写のときには、上映中から声をあげて泣いていたみたいです。終わった後、別のスタッフが聞いたんですが「生きていてよかった」とまで言っていたそうです。 丸山さんが、いっぱいお客さんがくるのを形で示さなきゃだめだよというので、クラウドファンディングをやったのですが、そこまでも本当に完成するのか、さまざまな出来事がありました。だから、形になったときに、いろんなものがこみあげてきたのでしょう。 ──丸山さんは、これからもクラウドファンディングで制作をと考えていらっしゃるのでは? 片渕 いや『この世界の片隅に』の前から「クラウドファンディングができれば、いろんなことは解決できるね」とは言っていました。けれども、通常のクラウドファンディングって、どんなに頑張っても、映画の制作費の10%くらいが限界だと思うんですよね。それが、わかったときに、丸ごとクラウドファンディングで映画を作るのは無理だと、消極的になっていた時期もあるんですよ。 だけど、クラウドファンディングでお客さんの数が確認できたら、道が拓けるんじゃないかと思ったときに、映画の完成へ向けての道が始まったと考えています。
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■先行上映や試写会の評判は「称賛しかない」 ──取材前にTwitterで『この世界の片隅に』を検索してみました。すでに先行上映や試写会で鑑賞した人の声をみると、ほぼ称賛のコメントしかありません。批判がひとつもないのは、逆に恐ろしいのではありませんか? 片渕 わかんないんですよね。批判よりは称賛というのが、存在してはいつつも、それが大勢を占めているのかが気になるところです。称賛と批判があるのではなくて、称賛と無関心がある。無関心のほうが怖いです。無関心ほど、始末に負えない批判はないと思っている。自分には関係ない映画だよといわれてしまう。それは、今でもTwitterで見ますね。「戦争中の映画なんでしょ」という風に思われてしまっていることも否めません。 ──かなり冷静に見ていらっしゃいますね。 片渕 ええ、最近でいうと『この世界の片隅に』に言及されている方は、のんちゃんのファンが多いなと思っています。のんちゃんファンの中には『マイマイ新子と千年の魔法』にまで遡って見てくれる方まで出現しています。のんちゃんを使って監督してくれている人は、どんな作品をつくっているのかと気になって『マイマイ新子と千年の魔法』を観て、こんなのがあったのかと、初めて知る。そして「世界が広がった」といった感想を寄せてくださる。 大事なのは、そういうことなんだと思っています。何かの関連ができて、自分に関わりがあるものなのだなと思った瞬間から、いろんなものが拓ける……。「自分に関わりがない」という意識を覆すのは、一番難しいハードルではないでしょうか。
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■当初の資金は「持ち出し」で、貯金額が4万5,000円に ──2010年から完成まで約6年。その間には、この企画は頓挫するのではないかと思うときもあったのではないですか? 片渕 ぶっちゃけいうと、当初の資金は自分の持ち出し……企画が成立するまでの立て替えですね。でも、限界があるわけですよ。貯金をゼロにするわけにはいかない。何しろ、子どもの学費もありましたし。 このあたりが限度かなと思ったのは、12年の4月頃。この頃には「限界かな、これ以上収入にならないと大変だ」と思っていました。でも、同時に「なんか上手くいきそう」という動きもちらつき始めていました。だから「むしろ、ここまでやったのを投げ捨てないほうがいいんじゃないかな」と考えて続けることにしたんです。 ──具体的に、上手くいく保証は、まだなかったのではありませんか? 片渕 それは丸山さんが、いろんなところでプロデューサーとして仕掛けているわけですよ。そのときに話を聞いて下さっていた人たちは、みんな製作委員会に入っていただいています。 それまで何が上手くいかなかったというと、この映画がきちんと誰かのところまで届くものなのか、きちんと示せなかったからことです。その決め手となったのがクラウドファンディングだったというわけです。 ──そこまで貯金を持ち出していると、家族の説得も大変だったのではありませんか? 片渕 いや、うちの奥さんも監督補だから。ただ最後は、貯金が4万5,000円になりました。そうなったところで「さすがに……」と丸山さんが少しお金を準備してくれました。あと、子どもの学費の支払いなど、節目ごとに少しずつ出してもらっていました。 最終的に企画が成立するまでの立て替えだと考えてはいましたけれど、貯金の残高が4万5,000円になると、さすがにおののきますね。貯金がその額になったころから、家族で1日、1食100円にしましょうということになりました。一人ではなく一家4人で100円です。100円でもいけるんですよ。 そうした生活をしていて「ああ、今やっているのが、すずさんだな」と思っていました。大根を食べたら、大根の皮は干して……とかやっていましたから。雑草を抜いてくるまではやりませんでしたけど。家族で「なんとかなるもんだね」と話をしていました。
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■原作者・こうの史代、主演・のんとの“手紙”のやりとり ──完成までの過程で腹が立ったことも、うれしいこともあったのではありませんか? 片渕 腹が立ったことはありません。もっともうれしかったのは、こうの史代さんに出会ったことと、のんちゃんに決まったことです。 ほかでも話していますが、こうのさんが僕の「作品を映画にしたい」としたためた手紙を枕の下に敷いて寝てくれたというのが、うれしかった。 同時に僕も、こうのさんから、私は『名犬ラッシー』(1996年にフジテレビ系「世界名作劇場」で放送された片渕監督作品)が大好きで、すごく運命的な出会いだというお手紙をもらって、うれしかったです。 また、のんちゃんに出演をお願いしたときも、やはり手紙をもらいました。自分は「のんちゃんにやって欲しいけれど、まず読んでください」と原作の単行本を渡しました。そうしたところ、手紙が届きました。「原作を読むまでは戦争物と身構えていましたけれど、これはすごく自分にやる意味があって、すずさんを演じてみたいと思ったので、私にやらせて頂けるのでしたら、本当にうれしいです」と書いてありました。そのときも、すごくうれしかった。仲間をもう一人得られたような気がして……。 ──お話を伺っていて、またさまざまなメディアの記事を読んで思うのは、制作陣や出演者の誰もが、仕事でやっている感じではないということです。どんどん仲間を増やして、一緒に作っている感じがあります。クラウドファンディングに参加した人も含めて、すべてがそうです。 片渕 お互いに理解し合えるんだなと、思う瞬間の繰り返しでした。なんか、のんちゃんと初めて顔を会わせたときに「やっと会えた」という気持ちがありました。こうのさんは『名犬ラッシー』を観ていてくれたし「運命」とまで言ってくれた。一人で映画を作ったなんて感じはまったくありません。
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■宮崎駿監督への思い ──かつて、監督自身が「『名探偵ホームズ』脚本の『片渕須直』というのは、あれは宮崎駿のペンネームだろう」くらいにいわれていた。自分の存在なんか、無に等しかった。(http://www.style.fm/as/05_column/katabuchi/katabuchi_030.shtml)とも記されています。それが、今では「ポスト宮崎駿」と評する人もいます。ご自身では、「追いついた/越えた」という気持ちがありますか? 片渕 いや、もうジャンルが違ってきた感じがしています。宮崎さんは空想でモノを描く人なのだと思っています。空想の中で、自分が理想だなと思うものを描く人。僕は全然違うタイプのものづくりのほうに移行したなと思っています。 ──過去、越えたいという意識をお持ちだったのではないですか? 片渕 脚本を担当した『名探偵ホームズ』の頃には、宮崎さんのやろうとしていることはトレースできました。こうやるんじゃないかなと思っていたら、その通りに絵コンテを起こしていた。その瞬間は、同じ土俵に乗っていた感じはありますが、そこから先は宮崎さんの方が、違う道に歩み出ていかれた。今ではもうかなり道が違うんじゃないかなと思っています。
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■放っておいても仕事は来る。それでも…… ──正直なところ、監督の才能と実績であれば、放っておいても仕事は次々と来るでしょう。なのに、あえて苦労して貯金を削ってまで、自分の作りたい作品のほうを選んだわけです。あらゆるジャンルのものづくりにおいて、お金選ぶか、自分の作品を選ぶかは究極的な選択だと思います。監督が、苦労してまで自分の作品をつくるほうを選んだのはなぜでしょうか。 片渕 確かに、仕事は来ます。でも「そこに身を委ねていていいのか」と考えます。こういうマンガがすごく有名で読まれているから、アニメーションにしましょうという話が舞い込んできたときに、乗れたのは『BLACK LAGOON』だけでした。 『BLACK LAGOON』の前に『アリーテ姫』で<自己実現とは何か>を問いました。『アリーテ姫』では「こうやってやれば、自己実現のために自分を奮い立たせるための根拠を見つけることができる」ことを描きました。 けれども、世の中には自己実現をしようとしても、全然違う、例えば犯罪者への道を歩んでしまう人生だってあるわけです。戦争の中では自己実現も何もないわけじゃないですか。 そういった意味合いを手がけておかなくては、その先には進めないと思ったときに、目の前に現れたのが『BLACK LAGOON』だったのです。 その制作を通り過ぎてようやく描けたのが『マイマイ新子と千年の魔法』の子どもたちの世界だったのです。それは『この世界の片隅に』に直結していくわけです。 だから、自分がこの瞬間にこういう作品やりたいと思ったときに、うまくハマるような企画の提示があるのならば、よそから提示されたものにのっかるのはやぶさかではありません。 けれど『この世界の片隅に』は、よそから提示はされていない、本当に自分が今までやりたいといってきたものです。だから、完成に至らなければ、自分がやりたいものは、やれないままになってしまうと、意地のようなものが芽生えました。 そうそう、先日、のんちゃんと一緒に(PRで赴いた映画の舞台である)呉の坂道を登っている写真を見て『恩讐の彼方に』の、穴を掘り続ける坊さんと、その弟子の若者みたいだなという感想をもらいました。『名犬ラッシー』の準備が始めてから21年目で、洞門が開通する瞬間、今がそのときなのかもしれません。  * * *  この日、片渕監督は昼食のための休憩も取れないほどの取材ラッシュであった。そうした過密スケジュールにもかかわらず、監督は真摯に質問に答えてくれた。原作者のこうの史代さんが「運命」と言い、主演の、のんさんに「私にやらせて頂けたら、本当にうれしいです」とまでいわしめたのは、作品作りに対する誠実さと、強い意志が伝わったからに違いない。  そして、貯金がゼロ目前になっても支えてくれる家族や仲間、無数のファンの存在こそが『この世界の片隅に』を完成に導いたのだと改めて感じた。ここに記された言葉は、あらゆる、ものづくりに携わる人々に共有されるべき言葉なのではなかろうか。  11月12日以降、アニメーションをとりまく状況がガラリと変わる気がしてならない。 (取材・構成=昼間たかし) ●『この世界の片隅に』 原作/こうの史代 監督・脚本/片渕須直 音楽/コトリンゴ  出演/のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、藩めぐみ、岩井七世、牛山茂、新谷真弓、澁谷天外 配給/東京テアトル 11月12日(土)よりテアトル新宿ほか全国公開 (c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会 http://konosekai.jp

AV女優人気は高くても、業界トラブルには興味なし? あの“ヤバい中国人漫画家”は「AV出演強要問題」をどう見る!?

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ライターの井川楊枝氏と、漫画家の孫向文氏
 大手AVプロダクション関係者の逮捕や、屋外キャンプ場でAV撮影を行ったとして関係者が書類送検されるなど、このところ、AV業界が騒がしい。  10月19日、そんな一連のAV騒動をルポした書籍『モザイクの向こう側』(双葉社)が発売された。AV関係者や、被害相談の団体などにインタビューを重ね、業界の問題点を浮き彫りにした一冊だ。今回、この本の著者である井川楊枝氏と、『中国のヤバい正体』(大洋図書)などで知られる中国人漫画家・孫向文氏が対談。中国人の目には、このAV出演強要の問題は、どのように映っているのだろうか? ■紅音ほたる訃報に、3,000以上の書き込み 井川 日本のAVって、他国の人から見たらどうなんだろうと思って、今回は以前からの友人である孫さんとの対談を提案したところ、企画が実現しました。中国では、日本のAVが人気ですよね?  はい。中国ではBTダウンロード(高速でダウンロードができるように設計されたファイル共有ソフト)がはやっていて、大量の日本のAVがアップされていますね。みんな2ギガとかギガぐらいのデータ容量の高画質AVを、無料でダウンロードして見ていますよ。 井川 無料なんですか?  そうです。そのサイト自体は、広告収入で稼いでいるので。昔は街中で違法コピーDVDが販売されていたんですけど、最近はネットに移行していますね。 井川 今のAV業界は不況です。その要因のひとつが、FC2とかでタダでエロ動画が見られちゃうから、若い子たちがお金を払ってまで購入しないんですよ。中国でAVを見ている人たちからも、少しでもいいからAV業界にお金が入る仕組みにできたら、業界は潤うんですけどね(笑)。  うーん、それは難しいでしょうね。中国ではAV自体が違法なものですから、日本のAVメーカーが、表立ってAVビジネスを展開することはできません。それに、仮にAVが合法になったとしても、状況は変わりません。なぜなら、映画もドラマも漫画も、中国人は無料でアップロードされたものしか見ていないから。「週刊少年ジャンプ」(集英社)なんて、日本の発売日に中国語に翻訳されて、無料でアップされていますよ。
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人気AV女優が特集されている中国のサイト
井川 著作権って概念がない国ですね。ところで、AV女優は誰が人気なんですか?  これはある中国のサイトの順位なんですけど、1位が波多野結衣、2位が天海つばさ、3位が吉沢明歩、4位が大橋未久、5位が小川あさ美、6位が早乙女ルイ、7位が桜井りあ、8位がJULIA、9位が蒼井そら、10位が椎名ゆなってなってますね。 井川 やっぱり中国人って、スタイルが良くて、身長が高い人が好きですよね。日本だと、紗倉まなとかつぼみ、星美りかとか、かわいらしい顔立ちのロリっぽい子が、必ずランクインしてくると思います。  共産党員の愛人なんか見ると、みんな160センチ以上で美脚です。モデル体形の女性がおおむね人気があります。でも、最近は、SNH48とかの影響で、中国でも、小柄でかわいい女の子が好きだっていう人が増えていますよ。 井川 そういえば、最近、紅音ほたるさんが亡くなったけど、彼女も中国で活動されていたみたいです。話題になりましたか?  えーっと……紅音ほたるさんの中国版Twitter「微博」を見てみると、これはすごい! 20万人のフォロワーがいますね。最後のツイートが、訃報になっているんですが、そこにコメントが3,444件ついています(10月26日現在)。「ご冥福を祈ります」「噴水がひとつなくなって残念」「彼女は永遠に俺のハードディスクに保存されている(俺の中で生きている)」といったコメントが寄せられていますね。 井川 中国でも、潮吹き女優として認知されていたんですね。彼女が中国人に愛されていたのが伝わってきます。 ■中国でエロ事件が起こると、日本のAVのせいに!?
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『モザイクの向こう側』(双葉社)
井川 日本では現在、AV出演強要問題が話題になっています。中国ではこの問題、どうとらえられていますか?  今回、この対談の前に、中国最大の検索エンジン「百度」とか微博で調べてみたんですよ。そしたら、ほとんど話題になっていませんでした。中国人の中にはAV好きが多いんですけど、AV女優の人権問題については、興味がないみたいですね。あと、中国には人権がないでしょ? 今は何か事件が起こって、人権問題のことをSNS上で書くと、すぐに削除されたりするんですよ。「中国共産党は人権無視している」とか書いたら、即アウトで、警察が家に来たりしますよ。だから、AVの人権問題のことも、書き込みづらいといのもあるかもしれませんね。 井川 人権がない国っていうのは、すごいですねえ……。  ところで、出演強要は、実際にAV業界で起こっているんですか? 井川 はい。今回、『モザイクの向こう側』の中でも被害事例を載せています。今後、業界は、こうした被害の起こらない環境づくりをしなきゃいけないですね。でも現状だと、「AV業界をクリーンにするため、こういう撮影はするべきではない」といった表現規制につながりそうな意見も出ていて、それは違うかなあと思うんですよね。例えば、SMがダメとか、レイプものがダメとか、本番はダメとか。女の子に無理やり嫌なことを強いるのはもちろんダメだと思うんですけど、女の子が出演の同意を得ているんだったら、別にいいんじゃないかとは個人的に思います。まあ、規制派の方々の意見をお聞きすると、こうした行為は日本の法に触れる可能性があるとのことで。法的な側面から言われると、表現もへったくれもない感じですが。  漫画も表現規制の問題があるけど、僕はそれに反対しています。僕も井川さんと同様、表現は規制するべきではないと思います。ただ、日本のAVって、スカトロとかありますよね。あれは、中国人が見たらドン引きですよ。こういうAVを作っているのは、頭がおかしい人たちだって感じちゃいます。ああいうAVを出していると、日本のイメージが悪くなるんじゃないかと、そこが心配になりますね。 井川 まあ、日本人でもスカトロを理解している人は、ごく少数ですけどね(笑)。ああいうフェチ系のビデオって、スカトロに限らず、興味がない人からしたら理解不能なものですし、閉じられた輪の中で楽しむ分にはいいのかなあと思います。それがTwitterで上がったりして、興味もない人の目に触れたりするのは、ゲッて思いますけどね。  中国だと、エロい事件が起こるじゃないですか。例えば、バスの中で女の子を痴漢したとか、射精して精液をスカートにぶっかけちゃったとか。すると必ず「この人は日本のAVを見すぎ」って言われるんですよ。この人が考えたことではなくて、日本のAVの悪影響を受けて思いついたっていう解釈です。 井川 確かに、日本のAVには痴漢モノがありますね。でも、AVが犯罪を誘発しているなんていうと、AV業界側から大反発が起こるでしょうね。例えば、痴漢欲求のある人が、痴漢AVを見て、その欲求を解消するという側面もあると思います。AVの氾濫する日本は、世界でもトップクラスの、セックス頻度の少ない国でしょ。AVだけがセックスレスの要因とは思わないですけど、映像を見ただけで満足しちゃう部分はあると思いますよ。  でもそれを言ったら、日本の出生率を上げるためには、逆にAVは存在しないほうがいいっていう論理が成り立ちますね。 井川 まあ、そうなっちゃうのかな。実際、いまVRのエロ動画とかが話題になっていて、リアルな女の子が目の前に現れちゃうわけじゃないですか。そうなると、今後、ますますセックスレスになるのかもしれないですよね。  リアルに『電影少女』の時代が来るわけですね。クリエーターとしては、表現の幅が広がって面白い時代になりそうですけど。 井川 孫さんにとっては、そうですね(笑)。 (構成=杉沢樹) ●「AV出演強要問題」に揺れる業界を徹底取材! 『モザイクの向こう側』 井川楊枝 著 双葉社 刊 1400円+税

“元アウトローのカリスマ”瓜田純士が、相次ぐイジメ・パワハラ自殺問題に緊急提言!

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 青森中2女子自殺事件、電通過労自殺事件など、若い女性が自ら命を絶つ悲しいニュースが相次ぐ昨今。いじめなどで追い詰められ、死にたくなってしまった場合、人はどうすればよいのか? 自殺未遂の過去を持ちつつ、今は生きることに喜びを感じている“元アウトローのカリスマ”こと瓜田純士(36)が、悩める若者に緊急メッセージを送った。 ――最近、若い女性の自殺関連のニュースが多いですね。 瓜田 小・中学生の自殺のニュースだけは、いつ聞いても本当に悲しくなります。だって、まだなんにも知らないんですよ。この世に生を受けて、学校や塾に通って、先生や親にさんざん未来を語られて、なんで13歳やそこらで人生の幕を閉じなくちゃならないのか。恋愛の素晴らしさも、バイトする楽しさも、セックスの気持ちよさも知らないまま死んじゃうなんて、なんのために生まれてきたのか、わからないじゃないですか。 ――社会人の過労自殺について思うことは? 瓜田 それについては語りたくないですね。大人が自分の意思で働きに出た先の出来事ですから。でも、小・中学生は違う。義務教育で縛られてるし、視野も狭いし、自分でカネを稼ぐことも引っ越すこともできないので、学校でみんなからいじめられたら、逃げ場がないような絶望感に陥ってしまうのもわかります。 ――学校でのいじめ問題は、どう解決したらよいと思いますか? 瓜田 これね、酷な言い方になりますけど、自分の身は自分で守るしかないです。女の子もそう。親や先生に助けを求めるのもひとつの手だけど、大人の目が届かないところでのいじめは続くかもしれない。行政が運営するいじめ相談のホットラインもあるけど、効果は気休め程度でしょう。有名人やミュージシャンがいじめ反対を訴えてもいいけど、そんなので件数が減るほど現実は甘くない。SNSの普及などで、むしろ目に見えないいじめは年々増加傾向にあるのかも。いじめの加害者に罰則を加える法律にすればいいという意見もあるでしょうが、法改正にはものすごい時間がかかる。そうこうしてる間に、今日も誰かがいじめに苦しんで自殺してしまいますよ。じゃあ、どうすりゃいいのかというと、「自分の身は自分で守れ」という結論になります。 ――男子はまだしも、女子はどうやって我が身を守れと? 瓜田 答えはひとつ。今すぐ、レスリングを習うといいです。 ――なぜ、レスリングなのでしょう? 瓜田 吉田沙保里や伊調馨が国民栄誉賞を受賞した最高に誇らしい競技ですし、ほかの格闘技に比べ、相手を傷つけることが少ないからです。週2回でいいから地元の教室に通ってレスリングを学べば、それだけで心も体も強くなる。いじめっ子に何かされたら、相手を殴ることなくレスリングの技で押さえ込んで、「もういじめないでね」と警告すれば、「あ、すいません……」となりますよ。防具も要らない競技だから、月謝もそんなに高くないでしょう。 ――体形がゴツくなる、などの理由で「女の子には格闘技をやらせたくない」という親御さんも多そうですが。 瓜田 数年やった程度じゃ、筋骨隆々になんかなりませんって。別に、トップアスリートにならなくてもいいんです。でも、目指す頂点は、吉田や伊調。そういう国民的な誇りがあれば、本人も胸を張って通えるし、いじめっ子も手を出しづらくなる。今、女子に学ばせるには、最適な競技だと思いますよ。
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――では、いじめられっ子の男子が今、習うべき競技は? 瓜田 ラグビーですね。五郎丸のことをいじめようとする奴、いますか? いないでしょう。ラグビーがスーパー人気の今、ラガーマンは間違いなく女にモテるし、体は勝手に屈強になっていじめられることもなくなるし、チームで新しい仲間もできる。一石三鳥ですよ。女子はレスリングで、男子はラグビー。これで決まりです。 ――いじめられて意気消沈して心を閉ざしてしまっている子どもを、レスリングやラグビーの練習に連れ出すのは難しい気もしますが。 瓜田 交換条件として、コンサートのチケットでもゲームでも、とりあえず欲しいものを買ってやりゃいんですよ。そうすりゃガキなんて、心を開いて、親の言うことを聞くようになりますから。 ――現在いじめられている子どもたちに、メッセージをお願いします。 瓜田 義務教育は長いようで短い。大人の僕らから見れば本当に、あっという間の数年間です。そこさえ乗り切れば楽しい未来が待ってるから、あとちょっとだけ踏ん張ってごらんよ、と言いたいです。いじめで自殺しちゃう子の多くは、死ぬことでいじめを明るみにして加害者に社会的制裁を加えたいという気持ちもあるのでしょう。でも、卑怯ないじめっ子なんかのために、自分の命を投げ出してしまうのはもったいない。それよりも、レスリングやラグビーをやって強くなって、何年か後に、卑怯な連中を思い切り上から見下してやったほうがスカッとするし、生きててよかったって思えますよ。 ――いじめがひどくて、どうしても学校に行きたくなかったら? 瓜田 登校拒否すりゃいいですよ。学校に行かなくなれば、先生や親が勝手に心配して、問題解決に向けて動いてくれます。面倒なことはいったん大人に任せて、その間、学校なんか行かなくていいから、レスリングやラグビーで自分の心身を鍛えましょう。勉強の遅れが不安になっても、自分の命さえ残しておけば、あとからどうとでもなるから大丈夫です。 ――瓜田さんは小・中学生時代、いじめられた経験はありますか? 瓜田 先輩らににらまれたことは、しょっちゅうありましたよ。僕は小学生の頃から悪童として有名でしたから、中学校に入るなり、3年生の悪い人たちに目をつけられて囲まれて、「おめえが瓜田か。中1の中でアタマを張るんだったら、俺らに迷惑かけるんじゃねぇぞ」と言われながら、小突かれたり蹴られたり。 ――そうしたイビリを、どう受け止めましたか? 瓜田 「この野郎、いつかやってやる」と思いながらジッと耐え、実際に数年後、そのうちの何人かをやっつけました。ちなみに僕の入った新宿の大久保中学は、日本人のクラスと、台湾人ばかりのクラスに分かれていて、台湾の中3は、日本の中3のことをナメてたんですよ。そんなある日、台湾の中3からも僕は呼び出しを食らいまして、「俺たちとあいつら(日本の中3)は仲が悪いんだけど、おまえ、どうする? どっちにつく?」と問い詰められたこともありましたね。 ――恐ろしい板挾みですね。なんと答えたのでしょう? 瓜田 台湾人の先輩は徴兵の関係で、中3なのに16歳や17歳だったりしたから、中1の僕から見るとものすごくゴツくて怖いんです。だから僕、「そのうち、あいつら(日本の中3)をやります」と答えましたよ(笑)。そしたら、その数日後から、台湾人の先輩のパシリとして偽造テレカを原宿で売らされるハメになり、結局いろいろイヤになって、台湾人グループの同級生をイワしたら大問題になっちゃって、中2の冬から僕は杉並の中学校に飛ばされることになりました。ツッパリゆえの自業自得とはいえ、こんな僕でも学生時代は、いろいろ人間関係で悩みましたし、時には小ずるく立ち回ったりもしましたよ。
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――誰かをいじめた経験は? 瓜田 それを聞かれると最高に気まずい(笑)。というのも僕、同級生全員に「俺のことは、呼び捨て禁止。くん付け、もしくは、さん付けしろ」と強制してましたからね。当時の同級生はみんな「瓜田くんにいじめられた」と思ってるかもしれない。でも、集団で誰かをいじめたり、陰湿な弱いものいじめをしたことはないです。ケンカはいつも1対1だし、相手はいつも不良や先輩など、強い奴ばかりでしたから。 ――弱いものいじめをしなかった理由は? 瓜田 正義感とは無関係ですね。僕はナルシシストだから、ダサいことが嫌いなだけ。単に美徳に反して格好悪い、という理由でやらなかっただけです。 ――少年少女の自殺に心を痛める瓜田さんですが、ご自身が自殺を考えたことは? 瓜田 何度かありますし、自分で腹を刺した傷跡も残ってます。僕の場合は、プライドが高すぎるがゆえ、こんな悔しい思いをしたまんまだったら死んだほうがマシっていう理由での自殺未遂でした。結果、死ねなかったんですけど、生きてて本当によかったというのが今の率直な気持ちですね。それだけ、今の嫁との結婚生活が楽しくて幸せなんです。生きてりゃ、いいことがあるんですよ。 ――「生きてりゃいいことがある」というのが、自殺に反対する理由ですか? 瓜田 子ども向けには、そう言いますね。五体満足な大人の自殺については、勝手に1人でやってろ、って感じです。ただし、生きよう生きようと必死に頑張っても病気で亡くなってしまう人がいるっていうのに、健康なくせに自ら死のうとするコシャ平民のチキンどもにはすげえイラつく、ってことだけは言っておきたいです。 ――厳しい意見ですね。 瓜田 もっと厳しい本音を言うと、自殺する子どもたちにも腹が立ちますよ。自分を生んでくれて、分娩室で涙を流して喜んでくれて、毎日ご飯を食べさせてくれて、ディズニーランドにも連れて行ってくれた大切な親のことを考えたら、踏みとどまれるはずなのに、それでも死んじゃうってことは、「おまえらにとって親はそんなに安いのかよ。おまえら親をナメてんのかよ」と思うところもあります。親は、子どもの遺書なんて読みたくない。なんで死ぬ前にそのことを相談してくれなかったんだ、と嘆き悲しむだけですよ。 ――「親に心配をかけたくない」という優しさゆえ、いじめられていることを親に言わないまま、死を選んでしまう子どもも、中にはいると思います。 瓜田 言わない優しさがあるなら、死なない優しさもあるはずです。死にたくなったらいま一度、一番好きな人、一番世話になった人の顔をよく思い出して、「生きる」という選択をしてほしいですね。親からも先生からも友達からも見放されていて、孤立無援だという子には、「捨てる神あれば拾う神あり」という言葉を贈りたい。世間は広いですから、いつか味方が現れますし、居心地のいい場所も見つかります。その日を信じて、どうか前向きに生きてください。 (取材・文=岡林敬太) ※瓜田純士&麗子 Instagram https://www.instagram.com/junshi.reiko/ ※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。

銭湯を舞台にした宮沢りえ主演作は海外でも話題! 新鋭・中野量太監督が銭湯に託した熱い愛を語る

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双葉(宮沢りえ)をはじめとする「幸の湯」を経営する幸野家の人々。世間の常識に縛られない、かなりユニークな一家。
 リゾート地に行かずともワンコインで気軽に温泉気分が楽しめる銭湯は、庶民にとって心のオアシス。経営者の高齢化や建物の老朽化によって年々消えつつある銭湯だが、レトロな風情が漂うあの空間を愛する銭湯マニアなら見逃せない映画が『湯を沸かすほどの熱い愛』だ。主演女優・宮沢りえが脚本に惚れ込んで出演を即決した本作は、インディーズ映画『チチを撮りに』(12)がベルリン国際映画祭をはじめ世界各国で絶賛された新鋭・中野量太監督のオリジナル作品。昔ながらの銭湯を舞台に、宮沢りえ扮する肝っ玉母さんが家族に、そして銭湯に集まる人たちにありったけの愛情を注ぐ感涙作なのだ。本作で商業デビューを飾った中野監督が、銭湯というコミュニティー空間と血縁にこだわらない新しい家族の在り方について語った。
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インタビューに応じた中野量太監督。「母にも観てもらいました。感想は聞いていませんが、多分喜んでくれているはずです(笑)」
――東京の下町の銭湯みたいに熱い熱い映画。中野監督が日本映画学校(現・日本映画大学)の卒業制作として撮った作品も銭湯が舞台だったとのこと。銭湯がどれだけ好きなのかが伝わってきます。 中野 はい、ボクが初めて撮った映画が『バンザイ人生まっ赤っ赤』(00)という作品で、銭湯が舞台でした。実家は京都なんですが、近所に銭湯が2つあり、友達がうちに遊びに来るとよく一緒に銭湯に行っていたんです。銭湯って不思議な空間ですよね。いろんな人たちが裸になって、同じ湯船に浸かり、知らないおじさんからも当たり前のように声を掛けられたりする。あの雰囲気が不思議で面白い場所だなと思っていたんです。絵的にもいいですよね。大きな富士山の壁絵があり、番台からは男湯も女湯も見渡せる。ボクがテーマにしている人と人との繋がりや親子の愛情を描くには最高の舞台だなと思って、映画学校の卒業制作で、舞台に選んだんです。今回、商業デビューするにあたって、オリジナル脚本ということで内容は任されていたので、自分らしさがいちばん発揮できて、初心に戻れる場所として、もう一度銭湯を舞台にしたドラマを描くことにしたんです。 ――銭湯って日本ならではの文化ですが、『湯を沸かすほどの熱い愛』は海外での評判もいい。すでに香港、韓国、台湾などでの公開が決まったと聞きました。 中野 ヨーロッパはちょっと分かりませんが、アジアはけっこーいけそうですね(笑)。先日、釜山国際映画祭に参加したんですが、上映後のお客さんの反響がすごかった。最近の韓国は家族を描いた映画がヒットしていて、是枝裕和監督の作品もかなり人気があるみたいです。配給の方から「だから『湯を沸かすほどの熱い愛』もきっと韓国で当たるよ」と言ってもらっています(笑)。普遍的な家族のドラマを描けば、海外でも観てもらえるとは考えてはいたんですが、実際にアジア各国での公開が決まって、うれしいです。 ――最近はジャグジータイプ、サウナや露天風呂付きの新しい銭湯もありますが、『湯を沸かすほどの熱い愛』は昔ながらのトラディショナルな銭湯。ロケ地にはこだわった? 中野 そこはこだわりました。基本、ボクが知っている銭湯、ボクが子どもの頃に通っていたような懐かしい銭湯で撮影したかったんです。昭和の香りがする銭湯をずいぶん探しました。映画の中の「幸の湯」は2軒の銭湯を組み合わせたものです。外観は足利市にある「花の湯」です。「花の湯」は内観も悪くなかったんですが、ボクの理想とする銭湯を求めて、さらに調べて回り、都内で最古級の銭湯「月の湯」を内観にしています。「月の湯」は2015年5月に廃業したんですが、すぐ取り壊される予定だったところを撮影の期間だけ延ばしてもらいました。営業中の銭湯だとどうしても休業日と平日の午前中だけしか撮影できないなどの制限があるんですが、「月の湯」では自由に撮影することができて、助かりました。撮影が終わった翌月には取り壊されましたが、都内で最古級の木造建築の銭湯を映画の中に残すことができてよかったなと思います。
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『とと姉ちゃん』で注目を集めた杉咲花は宮沢りえの娘役を熱演。「演技の感度が違う。彼女の出演を前提で脚本を書いた」と中野監督。
■家族の繋がりは血縁だけではない。それを証明するための映画 ――中野監督の銭湯愛を感じさせますが、中野監督は前作『チチを撮りに』もシングルマザーに育てられた2人の娘たちの成長物語で、今回も主人公の幸野双葉(宮沢りえ)は女手ひとつで娘・安澄(杉咲花)を育てているという設定。父親の不在も、中野監督の作品に共通しているテーマのように感じます。 中野 自分の中にある本当の感情を使って表現したいなと常に思っているんです。映画の世界でも、ウソはつきたくないんです。自分がちゃんと分かっている感情を使って演出することで、自信の持てる作品にできると考えています。ボク自身、父親を早くに亡くし、母親が女手で兄とボクを育ててくれました。双葉=ボクの母というわけではありませんが、母親の愛情のお陰でボクは育つことができたという想いがすごくある。なので、その感覚を使って、ウソのないものを描こうとすると、どうしても片親の物語になってしまうんです。 ――主演の宮沢りえさんも、お母さんと二人三脚で芸能活動してきたことで有名でしたね。 中野 宮沢りえさんが主演を受けてくれたのも縁あってのことだったなと思います。最初は新人監督のボクが、『紙の月』(14)での演技が絶賛されていた宮沢さんにオファーしていいものかと躊躇しました(苦笑)。当たって砕けろと思い、脚本を送ったところ、読んだその日に出演を決めたそうです。宮沢さんはこれまで母親役のイメージはなかったんですが、実際にはお子さんを育てていますし、絶対にこの役をできると確信していました。存在感のある母親役ですが、宮沢さんは現場でも座長としてみんなを引っ張ってくれる姿がすごくかっこよかったですね。 ――前半は双葉と安澄の母子の物語ですが、次第に母子の縦の関係だけでなく、「幸の湯」に関わる人たちが家族同然の関係へと広がっていくことに。 中野 家族って何だろうと考えてみると、血の繋がりだけが家族ではないとボクは思っているんです。家族の定義はないと思っていますし、もしあったとしても家族の数だけ定義はあると思うんです。だから、幸野家みたいにアンバランスな家族でも、家族だと言えると思うし、そのことを証明してみたくて映画にしたところがあります。でも唯一、家族として大切なものは食卓だとボクは考えているんです。ひとつ屋根の下で、食卓を囲んで一緒にご飯を食べるということが、もし家族の定義があるとすればそれが家族の証じゃないのかなと思うんです。逆に血が繋がっていても、同じ食卓を囲むことがない家族もいる。それって本当の家族なのかなというと、ちょっと難しいですよね。それもあって、幸野家が食事をするシーンは何度も登場させているんです。 ――映画の撮影中はスタッフもキャストも同じ弁当を食べて、寝起きを共にする。撮影クルーも家族みたいなもの? 中野 そうですねぇ、映画の撮影隊ってひとつのチームですし、よく“組”って言い方しますしね。一緒に映画を作っているうちに、家族みたいな関係になっていきますね。撮影中、オダギリさんはよくひとりで食べようとするので、子役の女の子たちに「ちょっとお父さんのところに行って、『一緒に食べよう』と言ってきて」とけしかけていました。子どもたちに声を掛けられたら、オダギリさんも逆らえなかったみたいです(笑)。 ――なるほど、カメラの裏側でも、中野監督は演出していたわけですか。 中野 もちろん。カメラの回っていないときも、いろいろ考えて演出しています(笑)。双葉たち幸野家がみんなそろって浴場を清掃するシーンがありますが、撮影とは別にクランクインの10日間くらい前に宮沢りえさんたちに集まってもらい、「月の湯」のご主人に清掃の仕方を教えてもらい、実際に掃除しました。銭湯の仕事を体験することで、キャスト間の親子感も生まれ、役づくりに繋がったんじゃないかと思います。でも、やっぱりオダギリさんだけいませんでしたけど(笑)。 ――本作はかなりシリアスなホームドラマですが、オダギリジョー扮する頼りない父親の存在が笑いを誘う。 中野 オダギリさんの三の線の芝居が大好きなんです。『舟を編む』(13)の演技とか素晴しいですよね。オダギリさんが加わってくれたことは頼もしかったし、双葉(宮沢りえ)と安澄(杉咲花)との母子のドラマ部分はかなり熱い芝居だったので、オダギリさんがふっと力の抜いた芝居をしてくれたことで、すごくいいバランスになったと思います。そこも計算して脚本段階から練り込みました。
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幸野家の人々が熱海旅行中に出会うバックパッカーの青年・拓海(松坂桃李)。彼も「幸の湯」にとって欠かせない一員となる。
■コミュニティー空間としての銭湯のこれから ――今も中野監督は銭湯に通っているとのこと。銭湯の素晴らしさを改めて語ってください。 中野 最近はたまにしか行けていませんが、やっぱり疲れたときは自宅の狭い浴槽ではなく、銭湯の広い湯船に浸かりたくなりますね。ダイエットしたいときも利用しています。子どもの頃は「銭湯の番台に上がっているオバさんは男の裸を見て恥ずかしくないのかな」なんて不思議に思っていました。今回の撮影中に、ボクも番台に上がってみました。番台って、浴場中が見渡せて眺めがいいんです。撮影の最終日には松坂桃李くんも番台に上がって喜んでいました。番台って、誰もが一度は座ってみたい場所みたいですね(笑)。あと、僕は銭湯の帰り道も好きなんです。風呂から上がって外を歩く機会ってあまりない。湯上がりに髪がまだちょっと濡れたまま家に帰るのっていいなと。冬だと外は暗くて寒いんですが、自分の家へこれから帰るんだという気持ちが際立ってくる。ボクは帰り道も含めて、銭湯は楽しいなと感じています。 ――銭湯と同じように、街の映画館も知らない人たちが集まって、笑ったり泣いたり感情をあらわにする一種のコミュニティースペースだと思うんです。銭湯と映画館って、どこか通じるものを感じさせます。 中野 ミニシアターはお客さんとの距離感も近くて、確かにそんな感じがします。上映後などに気軽に話ができると面白いでしょうね。 ――昔ながらの銭湯や街の映画館は年々姿を消しつつありますが、これからどうなっていくと中野監督は予測していますか? 中野 最近は若い人が古い銭湯の経営を受け継いでいるというケースがあるみたいです。銭湯の経営者とは血の繋がりのない若い人が、意欲を持って経営を引き継いで営業しているそうです。川口市の「喜楽湯」や京都市の「サウナの梅湯」はまさにそうです。新しく改装して機能的な銭湯にするのか、それとも古いまま残すのか、どちらが正解かは決められませんが、頑張っている銭湯は多いみたいですね。 ――川越市の映画館「川越スカラ座」は2007年に一度閉館したものの、地元の若者たちがグループ経営する形で営業を再開しています。ヤル気のある若者たちが血縁にかかわらずに、街の公共財産を受け継ぐケースが増えていくといいですね。 中野 そういう映画館もあるんですね。いい話だなぁ。若者の映画離れが進んでいるなんて言われましたけど、『君の名は。』はあれだけ大ヒットしているわけですから、内容が面白ければ映画館に足を運ぶ予備軍はちゃんといるってことですよね。映画界の将来は決して暗くないとボクは思っています。 ――オリジナル脚本で商業デビューを飾るわけですが、今後の抱負について聞かせてください。 中野 これまでオリジナル作品にこだわってきたので、基本はオリジナルを作っていきたいと思っています。でも、前作『チチを撮りに』から『湯を沸かすほどの熱い愛』まで3年ほど時間を要したように、どうしてもオリジナル作品をゼロから立ち上げていくのは時間も労力もかかってしまうんです。「次もオリジナルで撮っていいよ」と言われても、なかなかすぐには出来ない。今回の『湯を沸かすほどの熱い愛』に全力を注いだばかりですし(苦笑)。でも、それではプロの映画監督としては食べていけない。なので、面白い原作ものがあれば受けますし、その間にオリジナルの企画も温めて、ここぞというときにオリジナル作品で勝負できるといいなと思っているんです。人と人との関わりをテーマにした面白い話は、いくらでも作れる自信はありますので。 (取材・文=長野辰次)
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『湯を沸かすほどの熱い愛』 脚本・監督/中野量太 主題歌/「愛のゆくえ」きのこ帝国  出演/宮沢りえ、杉咲花、伊東蒼、篠原ゆき子、駿河太郎、松坂桃李、オダギリジョー  配給/クロックワークス 10月29日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー (c)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会 http://atsui-ai.com
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●なかの・りょうた 1973年京都府出身。日本映画学校の卒業制作『バンザイ人生まっ赤っ赤』(00)が日本映画学校今村昌平賞、TAMA NEW WAVEグランプリなどを受賞。助監督やテレビディレクターを経て、6年ぶりに撮った短編『ロケットパンチを君に!』(06)がひろしま映像展グランプリなどに輝く。35ミリフィルムで撮影した短編『琥珀色のキラキラ』(08)の後、初めての長編『チチを撮りに』(12)がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭監督賞を受賞、ベルリン国際映画祭に正式招待されるなど高い評価を得た。2013年のTAMA CINEMA FPRUMでは「中野量太監督特集−作品に息づく人生賛歌」として『バンザイ人生まっ赤っ赤』『琥珀色のキラキラ』『チチを撮りに』が一挙上映された。中野監督自身が執筆したノベライズ版『湯を沸かすほどの熱い愛』(文春文庫)も発売中。

ソフト・オン・デマンド新社長に35歳のイケメンAV監督が就任! SODの行く末とは

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 人気AVメーカー「SOD(ソフト・オン・デマンド株式会社)」の代表取締役社長に野本義明こと野本ダイトリ氏(35)が就任した。野本氏は「マジックミラー号新シリーズ」「人妻シリーズ」といった企画作品や、「原紗央莉」「紗倉まな」など単体女優の作品を数多く手がけたSODグループの人気AV監督でもある。AV業界きってのイケメン監督としても知られ、AD時代は自ら街頭に立ち、SODのナンパ隊リーダーとしても活躍。数多くの素人をAV出演させたキャリアを持つ。社内ではさわやかで誠実なイメージで、女子社員たちからの信頼も厚いというが、今回はその野本氏を直撃。SOD新社長までの道のりや、野本氏が考えるSODの未来像を聞いてきた。 ──おめでとうございます。150億円企業ともウワサされるSODの新社長に就任。今後はSODを背負って立つわけですが。 野本 ありがとうございます。でも、まだ正直戸惑っています(笑)。もともと、AVが好きでAV監督になりたくてこの会社に入ったので、それが社長、しかも代表取締役になるなんて、考えてもいませんでしたので。AVのことならいつまででも語ることができるんですが……。どうしたらいいんでしょうね(笑)。 ──もともとは体育会系とも聞きました。“青春”が監督時代の作品のテーマであったとも。 野本 座右の銘が“一生青春”なんです。“青春”好きですね。その言葉をベースに生きてきたんです。たとえば熟女物の作品を作るにあたっても“熟女の青春”をテーマにしたり。夢を持って、がむしゃらに生きてきたこれまでの時代を忘れず、社長になったこれからも“一生青春”を胸に頑張ろうと思っています。 ──ちなみに学生時代は、なんのスポーツをやっていたんですか? 野本 砲丸投げです。僕は小、中、高、大とずっと運動ばかり。陸上部で砲丸投げというモテないスポーツをやり続けていました。 ──スケベな体育会系青年だったということですね。 野本 いや、エッチの目覚めは実は遅かったです(笑)。女性と交際して付き合うようになったのも高3くらいから。それまで、ほとんどそういうことに対する興味はなかったんです。運動ばかりしていたので。 ──それがまた、なぜAVの世界に入ろうと思ったのですか? 野本 浪人の時にノンフィクション作家の永沢光雄さんの書いたAV女優さんのインタビュー本(文春文庫『AV女優』)を読んだのがきっかけです。当時、世間知らずで運動バカだった僕が、たまたま本屋さんでその本を手に取る機会があって、ちょっと面白そうだなと思って買ったのがすべての始まりです。予備校の自習室で毎日それを読んでいたんですが、その内容に衝撃を受けたんです。 ──AV女優の生き様に感動したということですか? 野本 そうです。AV女優さんの生い立ちとか、撮影中の秘話だとか……そういうことを彼女らが赤裸々に語っていて、僕と全然住む世界が違う、こんな人たちがいるんだなって驚いたんです。たとえば、不良だったり、女番長だったり、親からも教師からもさんざん嫌われて生きてきた人たちが、ある日、AVという世界を見つけて、そこで自分を見出し、他人から必要とされる人間に成長して生きていく。こんな人たちを応援したい、これを撮る人になりたいって思ったのがきっかけです。
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──浪人を経て、大学では商学部。他の道へ進むことは考えなかったんですか? 野本 就職するにあたって、AV以外の会社への就職は考えなかったです。大学時代からAVの企画ノートというのを鞄にずっと入れていまして、在学中もAVの企画を毎日考えていました。思いつくとメモをとったりして。 ──その後、SODに入社。 野本 はい。就職活動が始まっても、AV会社以外は受ける気はなかったので。受けるなら大きいところがいいと、いくつか探す中でSODの新卒採用の募集を見つけたんです。フェチメーカーの募集なんかもありましたが、そっちにいくとフェチなものしか撮れなくなる。SODはミラー号もあったし単体もの、熟女ものなどいろいろなジャンルの作品に取り組んでいたので、ここならいろいろ撮れるって思って受けたのがご縁となりました。 ──大学時代に企画ノートに書き込んだアイデアで、実際にその後、AVとして販売された作品はあるんですか? 野本 僕のデビュー作にもなった『ガチンコ素人企画!!トイレのエロ落書きに電話したらエロい女とSEXできるのか?!トイレの落書き大冒険』(2006年)は、そうです。会社に入って2年目くらいでしたか。「AVオープン」の1回目が開かれることになって、「チャレンジステージ」という新人が出られる枠に出場する人材をということで、社内で企画を募集していたんですけど、そのときに応募したら、たまたま僕の作品が選ばれて……。内容はドキュメンタリーです。公衆トイレの壁に書いてある電話番号の落書きがモチーフになっています。みんな気になるけど、怖くて電話でできないその番号に、僕は学生時代から興味を持っていたんですけど、東京中のトイレの落書きを1カ月間全部調査して電話かけまくって、会える子を探して、その公衆トイレでうまく口説き落とすという内容のものでした。採用されたときは、うれしかったですね。 ──SODでデビュー作を撮る前後は、ナンパもののADをされていたとか。 野本 はい。当時マジックミラー号のナンパものに1年中携わっていました。ほとんど会社にいないくらいナンパ隊として外に出かけていたんです。ナンパ隊に選ばれることが、そのころのADたちの間では、ひとつのステータスでもありました。1年間、渋谷とか仙台、大阪で出演してくれる素人の女の子を探して、ひたすらナンパをしていました。 ──AV製作の現場でナンパ隊って、すごくたいへんなイメージです。 野本 結構つらかったですよ。つかまる日とつかまらない日とがあって、つかまらない日は何百人に声をかけてもつかまらなかったです。つかまる日は午前中だけで5件アポイントがとれたり(笑)。ナンパも、誰でもいいというわけではないんです。お客さんにいいもの届けないといけないので、チャラい女の子より、お客さんがほしいだろうなという、まじめで清楚な人をターゲットにやっていたりもしました。 ──その時代、一番つらかったことは何ですか? 野本 この業界でADというのは当時、ほとんど人権というものがなかったんです。ナンパ隊で大阪に出向したとしても、ADは宿も取ってもらえなくて……。仕方がないので、ミラー号の車の下や駐車場の縁石を枕に寝ていましたね。ミラー号の中は機材だらけなので、使えなかったんです。夏場は朝起きると本当に暑くて……でも10時からナンパがはじまるので、その後は、もっとたいへん。先輩にしごかれて千本ノックのような状態で、先輩が指差す人に片っ端から声をかけていました。
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──監督になってからも、ナンパものが多いですね。 野本 自分で企画を練ってミラー号もやっています。一時期、そのミラー号がいろんな事情から駐車場で眠っていた時代があったんですけど、自分の青春時代を過ごしたミラー号をなんとか復活させたい思いで、復活させたんです。自分の性癖がネトラレものが好きだったりしたので、そういうものを絡めたミラー号の企画を作っていきました。人妻ものもやりましたけど、基本、テーマは寝取り。そのほうがドラマが生まれやすいというメリットがあったんです。 ──AV監督になるにあたって、影響を受けた監督さんはいましたか? 野本 溜池ゴローさんですね。僕は熟女好きなんです。溜さんの作品は熟女ものが多くて、溜さんのハメ撮りだったと思うんですけど、その撮り方とか、撮る人妻のバックボーンの見せ方を、すごく素晴らしいと思ったんです。入社後に社内で初めて溜さんを見かけたときは、思わず「溜池ゴローだ!」って叫んでしまったくらい。本当にファンですね。 ──その後は単体物も多く手がけ、あの原紗央莉さんも撮っていますね。 野本 僕にとって、一番の出世作ですね。まだ、監督になりたてのころだったんですけど、単体ものを撮ったことがないのに、いきなり期待の大型新人ということで原紗央莉ちゃんの監督に僕が抜擢されて。撮影の半年前から、彼女と一緒にプロモーション活動を行ったり、一緒にくっついて行動していました。彼女の家でプロモーションの撮影をしたり、一緒にご飯を食べにいったり。 ──原さんと半年間ずっと一緒だなんて、部外者からはすごくうらやましい環境に思えます。 野本 今見ると荒いところも目立つ作品ですが、すごく思い出に残っています。彼女が撮影の前に胃腸炎で倒れたり、いろいろあったりもしたので。撮影が全部終わった後に「どうだった?」って、自分が彼女に声をかけるという演出があったんですけど、彼女を覗き込んだら、彼女が天井を見て泣いていて……。そこで俺が、まさかのもらい泣きをしてしまったり(笑)。彼女がどんな思いで、どれだけ苦しんでデビューしたかというのを、一緒にいた半年の間にずっと見ていたんです。僕が泣いて声を掛けれなくなってしまったので、当時、横で見ていた先輩が、僕に代わってあわてて「どうだった?」って聞いてくれて、無事撮影は終わったんですけどね。あの作品で学んだのは、単体を撮るときは撮る側が誰よりもその子のことを好きになってあげないといけないということ。その子のいいところ、かわいさをお客さんに伝えて、恋させてあげなければいけないわけですから。 ──これから社長になっても、作品は撮り続けていくんですか? 野本 最近はあんまり撮れていないです。でも、好きなこと、やりたいことはと聞かれれば、やっぱり監督業が一番したいこと。SODに入ったのも、それが目的。やり残したこともたくさんあるので、今後も監督業には挑戦していきたいですね。 ──今回スピード出世だったわけですが、ADから社長になれたのは、なぜだと分析していますか? 野本 創業20周年を目前にして、創業者である高橋がなりが戻ってきたのですが、自分が理想とする会社とかけ離れ、保守的なツマラナイ会社になっていたことに激怒して、当時の役員をすべてクビにしてしまったんですね。当時、僕はとにかくお客さんに喜んでもらえるエロいAVを撮ることに命を賭けていて、親にAVの仕事がバレて勘当されていたんですが、それでも「俺はこの道で食べていくんだ!」と前向きでした。それを高橋に「お前面白いから社長をやれ」と任命されまして。ひとつのことに熱い気持ちで取り組んでいたことと、身近な目標と大きな目標をちゃんと決めて行動して結果を出していたというのが大きいのではないかと思います。
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――今後SODを、どう変えていくんでしょうか? 野本 最初にも言いましたように、僕はAVやエロのことであれば、本当にいつまででも話していられますが、お恥ずかしい話、経営のこととなるとどうしていいのかがわからない、というのが正直なところです。ただ、SODは理念として物作りの制作者を大事にして世に新しいものを届けるとか、お客さんに新しい刺激、今までにないものを届けるため、バカなことも大まじめにやっていこうというのがあるので、もう一度、創業当時の理念を取り戻して、とにかく新しいもの、新しい刺激のあるもの、それからやっぱりそれを作る若手を育てていきたいと思っています。 ──改革したいジャンルの作品とかありますか? 野本 企画ものに一番メスを入れたいと思っています。「予算を削って、ただ効率よく」じゃなく、もっと時間をかけていろんな企画を引っ張りだしてきて、新しいものを提供していきたいって。企画ものは監督次第だと思っているので、上から「こういうものを撮れ」じゃなくて、作り手が撮りたいものを大事にしていく環境を作りたいです。監督発信で作品を届けていきたいんです。自分が好きなものじゃないと、監督もたいして粘らなくなるんです。若い人がこれを撮りたいと言える環境を、どう作っていくかが課題だと思っています。 ──売上に関しては今後どのように推移させていきたいんでしょうか? 150億円企業といわれるSODに、まだまだのびしろはあるのでしょうか? 野本 大きくしすぎてブランドが薄れるのもどうかと思うので、その方向性は悩むところですね。ブランドのところで世間にどれだけSODブランドを広められるかを意識してやっていきたいんです。そのために今、仕組みづくりをやっています。チームとして強くなりたい。売上からいってしまうと、どうしても作品が面白くなくなってしまったりするんです。なるべく数字は見ないようにして、今はやっていきたいです。 ──直近の新しい企画としては、マジックミラー号の20周年を記念して、移動式のスタジオでもある同車両を、もっとたくさんの人に知ってもらおうと、レンタル料無料で貸し出す企画や、素人を使った新企画物として、お金に困った素人娘をAV好きの質屋が口説いてAVに出演させてしまうという「質屋娘」の制作など、新しい企画が続々登場する予定になっています。 野本 ここからのSODは、新たな素人もののパターンを作ろうと新企画をいろいろと考えていまして、そのひとつが「質屋娘」です。マジックミラー号も思い入れのある作品なので、もっともっとパワーアップした企画を考えていきたいです。 ──今後のSODに期待しています。 野本 とにかく、あれこれ悩んでも仕方がないので、思いついたことはすべてやっていことうと思います。応援よろしくおねがいします。 ■野本ダイトリ 1981年1月7日生まれ。2004年SODクリエイト新卒入社。座右の銘は「一生青春」 Twitter@nomotoyoshiaki (取材・文=名鹿祥史)

てれびのスキマ×太田省一特別対談「芸人はなぜ、“最強”になったのか?」

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太田省一氏(左)とてれびのスキマこと戸部田誠氏(右)
 日テレ『スッキリ!!』加藤浩次、フジ『ノンストップ!』設楽統、あるいは、日テレ『Going! Sports&News』上田晋也など、いまや芸人が情報番組やスポーツ番組の“顔”を務めることは珍しくなくなった。テレビだけではない。政治、文学、芸術などの分野においても、どこもかしこも芸人、芸人、芸人だらけ。一体、いつからこんなことになったんだっけ?  そんな芸人“最強”時代を、『中居正広という生き方』(青弓社)の著者である社会学者・太田省一氏が、戦後の日本人の深層心理と芸能史からひもとく『芸人最強社会ニッポン』(朝日新聞出版社)を上梓した。高度経済成長とともに育まれた「テレビ文化」と「芸人」の切っても切れない関係に、テレビっ子ライター・てれびのスキマが迫る! *** てれびのスキマ(以下、スキマ) 「どこもかしこも芸人だらけ!」という帯が、見事に現在のテレビを表していますが、『芸人最強社会ニッポン』では、「芸人万能社会」という言葉が重要なキーワードになっていますね。 太田省一(以下、太田) 歴史をさかのぼると、80年代のビートたけし、タモリ、明石家さんまの「お笑いBIG3」の登場がターニングポイントとなって、芸人は憧れの職業のひとつになっていきました。たけしさんたちが、お笑いが知的で誰にでもできるものではないということを啓蒙していった結果もあって、芸人が尊敬の対象となり、地位が上がっていった。  それが前提にあって、芸人がお笑いの分野に限らず、活躍し始めました。それまでも音楽や演技の分野に芸人が出ていくことはあったんですが、そういう場合、芸人をやめて、そちらの分野に行ってしまうことが多かった。だけど、たけしさん以降、芸人をベースにしたまま、他ジャンルに出ていくのが普通になりました。むしろ、芸人であるっていうことが、すごく価値を持つようになった。それが、90年代から現在に至る中で拡大していったように僕には見えたんですね。芸人であることや芸人が持っているスキルが、なんにでも応用できてしまう。それが「芸人万能社会」です。 スキマ かつては、芸人が他ジャンルに行くと「芸人のくせに」って言われてましたけど、今は当たり前すぎて、ギャグ以外でそんなこと言う人はいませんもんね。この本で、ちょっと意表を突かれたのは、日本が「笑いを中心にしたコミュニケーションを重視している社会」だという指摘です。言われてみれば確かにそうなんですが、とかく「日本人は真面目で勤勉」で、コミュニケーションは苦手と言われることが多いですよね。 太田 それは、今回強調しておきたかった部分ですね。戦後の歴史を大きく捉えつつ、芸人さんがどういうポジションにいたかを見ていくというのが、本書のコンセプトのひとつでした。「日本人は真面目で勤勉」というイメージは、直接的にはおそらく高度経済成長期に出来上がったものだと思うんです。戦争に負けて、そこからなんとか豊かな社会を作ろうと、国民が一致団結した。そのためには真面目に働くしかないし、実際にそれが豊かさとして自分に返ってきた。そのひとつがテレビです。高度経済成長が文化として何をもたらしたかといえば、やっぱりテレビなんです。そして、テレビからわれわれが受け取った一番大きなものが、「お笑い」だと思うんです。 スキマ 欽ちゃん(萩本欽一)や、ザ・ドリフターズですね。 太田 僕は1960年生まれですけど、彼らの登場で大きく変わったような感覚がありました。社会の真面目な雰囲気を感じつつ、実はテレビで不真面目なものばっかり見ていた(笑)。だから、僕らの世代が社会の中心になったとき、みんな不真面目というか、そういうものが好きな人たちばかりだったんです。僕らはずっと、「面白い人」になりたいと思っていた。人を笑わせられる人になりたいって感覚は、ごく自然なものでした。だから、「BIG3」が出てきたのは、時代的な必然だったんだと思います。 スキマ 「楽しくなければテレビじゃない」といった、おもしろ至上主義的な価値観は、テレビの中だけではなかったということですね。
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太田 お笑いこそ至高、みたいな考え方は、世代的に染み付いていますね。でも今、その時代がある意味、ひと巡りしたというか、時代が変わりつつあることを、この本を書く中で感じました。世の中の雰囲気が、テレビに対して冷ややかになっている部分がありますよね。80年代くらいからテレビでやっていたバラエティ的なお笑いの世界は衰えていないけど、それを世間が一緒になって面白がる熱気がなくなってきましたよね。 スキマ そのことは、本書でも「内輪受け社会」という言葉を使って説明されていますが、かつては、世間がテレビの内輪に入り込んでいた。だから少々、ムチャをやっても許されていた。けれど、今は外側から常識的な目で判断され、ちょっとしたことでクレームなどにつながってしまっているように感じます。 太田 そうですね。内輪みたいなものがピークだったのは、フジテレビの『27時間テレビ』で、さんまさんの愛車破壊をやった頃だと思います。間違いなく、今やったら大バッシングでしょう。でも、当時僕らは、あれに熱狂したわけですよね。実際には参加していないわけですけど、一緒に見ているというだけで、参加している気分になった。 スキマ 自分がやっているわけでもないのに、なんだか誇らしくなったりしてましたよね(笑)。 太田 バブル崩壊以降、一致団結していたみんなが、一人ひとりになった感覚が強まったと思うんです。そうした中で、そういうものに乗れない人たちがたくさん出てきた。それはテレビとの関係だけではなく、人と人との関係もそうで、それまで総中流意識の中で、以心伝心で自然とコミュニケーションが成立するというのが日本の社会だったんです。けれど、90年代から現在に近づけば近づくほど、格差が広がり、コミュニケーションは自分で身に付け、鍛えなければいけないものになった。そうすると、芸人さんはそれまでとは別の意味で、ある種のお手本になっていく。過酷になっていく日本の社会の中で生きていくには、コミュニケーション力が必要不可欠になる。ふと、われわれの周囲を見渡したときに、それを一番うまくやっているのは芸人さんだったんです。 スキマ 確かに。言われてみればそうですね。象徴的な芸人って、誰ですか? 太田 一番わかりやすいところでいえば、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さん。人を話術とかで動かしながら、自分の望むような結果に持っていけるような“コミュニケーションの達人”としての芸人という側面がクローズアップされだしたんです。それは、私たちの日常と近いところで芸人を捉えているっていうことですよね。 スキマ 太田さんは『中居正広という生き方』(青弓社)などを書かれている通り、アイドルにも深い造詣をお持ちですが、そうした芸人の側面は、SMAPのようなアイドルに関しても通ずる部分があるのではないですか? 太田 アイドルはまだ、ライブやコンサート、いわゆる「現場」の比重がすごく高いんですが、SMAPはその中でも別格だと思うんです。テレビにあそこまでフィットして、テレビの歴史を作ったという存在は、アイドルには今までいなかったし、これから出てくるのも難しいと思いますね。ある種、特殊なケースだと思います。  僕は、テレビの本質って「バラエティ」だと思うんですよ。つまり、いろんなジャンルがあるわけだけど、ジャンルがないジャンルっていうのがバラエティ。最終的に、なんでもありになっていくんです。なんでも受け入れるし、なんでもできるっていう楽しさがある。アイドルにしても芸人にしても、バラエティという、なんでもありな空間に入っていくことは必然で、SMAPがテレビを通じてそういう存在になっていったっていうのは、大げさにいえば、戦後日本における大衆的な娯楽とか文化の世界におけるひとつの完成形なんだと思います。
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スキマ 僕がいま、すごく象徴的だと思うのは、女子高生を中心とした若い世代に、出川哲朗さんやNON STYLEの井上さん、トレンディエンジェルの斎藤さんとかが、すごく人気があることなんです。いわゆる「気持ち悪い」とか「ブサイク」とか見た目の部分でネガティブな評価を受けがちな人たちが、これほどまとまって支持されたことって、歴史的に見てもあまりないんじゃないかと思うんです。実際、出川さんなんかは、かつて女性たちには本当に嫌われていましたから。彼らに共通するのは、ブレないポジティブさですよね。 太田 「コミュ力が高い」「コミュ障」っていう言い方がありますけど、当然、コミュ力が高い人たちばかりじゃない。そういった人たちにとって、いまスキマさんが挙げた人たちは、救いになっている。女性から見ればネガティブに受け取られる特徴を持った人たちっていうのが、お笑いの中でポジティブな輝きを持つことがある。そういうことを、僕らは日々、目撃してるわけじゃないですか。それって、冷静に考えるとすごいことだと思うんですよね。彼らに人気があるのは、女子中高生たちが、空気を読むコミュニケーションばかりが重視される今の時代に、生きにくさを感じているからかもしれないですね。 スキマ さまざまなジャンルに芸人さんが進出し、支持されている一方で、芸人の本業ともいえる漫才やコントなどのネタがなかなかテレビではできない状況があります。これは、芸人さんたちにとって不幸な状況だと思いますか? 太田 テレビに関しては、芸人にとって不幸なのかそうじゃないのかっていうのは、難しいところだと思いますね。今、テレビでネタは世に出るきっかけのひとつになってしまって、それだけで生きていくのが難しいというのは不幸なことかもしれませんね。でも、「バラエティこそ、テレビだ」って考え方からいくと、ネタももちろん笑いのひとつなんですけど、それだけではない。テレビで何が面白いかっていうと、それまでの常識を壊すことだと思うんです。それは別に、ネタじゃなくてもいいわけですよ。 スキマ なるほど。では、このような「芸人万能社会」は、これからも続くと思いますか? 太田 芸人が巧みなコミュニケーションのお手本だけなら、長く続かない。けれど、コミュニケーションがうまくない人だってこんなに面白いし、魅力的じゃないかというのを示してくれるのも、今の芸人さんだと思うんですよね。また、『万年B組ヒムケン先生』(TBS系)のように、空気を読むとか気にせずに、そこに存在するだけでいいんだと肯定してくれるような番組もある。芸人は、あらゆる人のロールモデルになっていると思うんです。今回、『芸人最強社会ニッポン』とタイトルをつけましたけど、その「最強」というのは、単に勝ち負けの強者という意味ではなくて、芸人こそがわれわれにとって助けになってくれる、救いになってくれるような“強さ”を持っている存在だっていう意味合いもあるんです。テレビの持っていた自由さが、ここまでのバリエーション豊かな文化を可能にした。笑いは、生きた文化なんです。だから、これからもなくならないと思いますね。 ●おおた・しょういち 1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなど、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論-南沙織から初音ミク、AKB48まで-』(筑摩書房)、『社会は笑う・増補版-ボケとツッコミの人間関係-』『中居正広という生き方』(青弓社)など。 ●てれびのスキマ(戸部田誠) 1978年、福島県生まれ。お笑い、格闘技、ドラマなどを愛するテレビっ子ライター。2015年にいわき市より上京。著作に『タモリ学』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか』『コントに捧げた内村光良の怒り』(コアマガジン)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)。当サイトにて「テレビ裏ガイド」を連載中。

ダンス仕込みの騎乗位に注目! 超有名ダンスグループのバックダンサー、速水ライリが衝撃のAVデビュー

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 某有名ガールズダンスグループオーディションでセミファイナルまで残った実績を持つ実力派美女ダンサー、速水ライリがSODの「本職」シリーズ「超人気Girlsダンスユニットオーディション、セミファイナリストが衝撃のAVデビュー Professional Dancer 速水ライリ AVデビュー」(9月22日発売)でAVデビューを果たした。ダンスで鍛えた究極の美Bodyを武器に、騎乗位や3Pに挑戦。迫力満点のダンスシーンも挿入されている同作。ダンス歴は16年、現在21歳の彼女の素顔に迫るべく、今回は本人を直撃。デビュー作の見所や今後の活動について話を聞いてきた。 ──普段はダンサーなんですよね? 速水 そうです。超有名ダンスグループのバックダンサーとかをやっていたんです。一緒にツアーを回ったり、コンサートに出たり……。有名なガールズダンスグループのオーディションにも、セミファイナルまで残ったことがあります。 ──今回のデビューを機にダンスはどうするんですか? 辞めるんですか? 速水 もちろん続けていこうと思っています。なのでこのレーベルでデビューさせていただいたんです。 ──ダンスの世界で順調に活動できているのに、またなぜAVに? 速水 エッチが好きというのもありますし、もともとこういう世界に少し興味があったんです。知り合いの方に声をかけられて紹介してもらって、話を聞くうちに、やってみようかなって……。 ──ダンス仲間は、速水さんがAVデビューなんていうと、びっくりするんじゃないですか? 速水 友達の何人かはすでに知っているんですけど、びっくりする反面、別にやればいいんじゃないって。本当に信頼できる子だけには、もう話してあるんです。 ──撮影は7月の終わりに済ませたとのことですが、実際に撮影してみてどうでしたか? 速水 緊張しましたね。でも始まると全然大丈夫でした。わたし、もともと人に見られるのが好きなので。 ──内容はどんな作品なんですか。ダンスがモチーフになっていると聞きました 速水 どうなんでしょう。普通にデビュー作的な感じですよ(笑)。インタビューから始まって、何人かと絡んであと3P……それからハメ撮り。ダンスシーンもドローンを使ったりして撮っていただいています。作品の合間合間で見ることができるようになっています。ダンスは普段、ヒップホップをやっているんですけど、今回、これのために振り付けの先生までついて、オリジナルのダンスを踊っているんです。 ──AVでもドローンを使う時代になったんですね。 速水 そうなんです。わたしもすごいなって。 ──ハメ撮りとかいろいろなことに挑戦してみてどうでしたか? 一番印象的に残っているのはどの場面ですか? 速水 3Pです(笑)。カメラがまわっている中で、2人の男の人に同時に迫られるんですけど楽しかった。 ──恥ずかしくなかったですか? 速水 全然。こうしろ、ああしろって動き回らされるのも嫌いじゃなかったし。
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──もともと、やるよりやられる方が好き? 速水 そうですね。好きですね。エッチの面ではわたしドMだと思うんです。 ──じゃあ、男性のタイプもSっぽい人が好き? 速水 男臭さがある人がいいです。でも、性格的に口数の少ないタイプは苦手です。わたし、ガンガンしゃべるタイプなので(笑)。わたしのおしゃべりに付き合ってくれる方じゃないと難しいと思います。 ──ダンス同様、体力を使う撮影だったと思うのですが。 速水 でも、疲れたとかはあまりなかったです。ダンスと使う筋肉も似ているのかもしれないです。普段から鍛えているということもあるのかもしれないですけど、体力的には全く問題なかったです。 ──スタイルもいいですね。体のパーツではどこが一番自信がありますか? 速水 ウエストですかね。くびれを見てください(笑)。 ──胸も結構大きいですね。 速水 胸はそんなでもないです。あるように見えるなら、それはわたしが結構盛っているからだと思います(笑)。 ──エッチは何歳くらいから興味を持つようになったんですか? 速水 中学生くらいから興味を持ち始めたと思います。初体験はちょっと遅くて16歳でしたけど。 ──昔から、ませていたほうではあった? 速水 そうですね。ダンスをやっていたりというのも少し関係があるかもしれません。
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──上京前は関西にいたんですよね? 速水 そうなんです。 ──ちなみに学生時代はどんな感じの女の子だったんですか? 速水 派手だったと思います。ギャルだったので。うちの両親もそもそも派手なタイプ。おばあちゃんも派手でした(笑)。 ──初体験は16歳ということですが、過去、男性経験はその人を含めて何人くらい? 速水 3人です。 ──じゃあ、まだ、あんまり男性のことはわからない? 速水 どうでしょう。でも、前戯でこの人うまいとかへただとか、そういうことはわかりますよ。 ──うまい人は前戯もうまい? 速水 そうだと思います。前戯ができない人は、ただ入れればいいと思っているんですよ。女性としては最初、前戯で盛り上げてもらわないとってところはあります。急に入れられてもって感じです。 ──前戯はどこを攻められると感じるんですか? 速水 どこだろう……上半身より下半身を攻められるのが好きです。手マンが好き(笑)。 ──体位もバラエティに富んでいるほうがいい? 速水 そうですね。いろいろしてみたくなるタイプですね。 ──ちなみにどんな体位が好きなんですか? 速水 得意なのは騎乗位ですけど、好きなのは寝バックです。 ──騎乗位が得意っていいですね。 速水 男性の反応とか見て、わたし得意なんだろうなって思うんです。 ──腰の動かし方がいいんですかね? 速水 たぶん。腰が柔らかい方ではないんですけど、動かすのは速いです。ダンスの影響もあるかもしれないです。
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──今まで一番気持ちがよかったセックスのシチュエーションはどんなものでしたか? 速水 2番目に付き合った人が、すごくドSさんだったんです。その人とのエッチですかね。性格はオラオラ系で、見た目も色黒。言葉攻めとか得意でしたよ。「イク時はイクって言ってからイケ」とか(笑)、「俺がいいよって言ってからイケよ」って。あといきなり首を絞めてきたり。最初は殺されるかなと思いましたけど、慣れるとそれがいいなって。ストッキングも破られました。脱ぐの面倒くさいから、わたしも破いていいよって感じになってました(笑)。 ──何歳くらいの人? 速水 20代後半でした。その人とのセックスで初めてイク感覚も覚えたんです。 ──相性はいいけど、でも、別れたんですよね? 速水 はい。わたしのほうが何か嫌になってしまって。セックスの相性は確かに良かったけど、だんだんお腹いっぱいになってしまったというか……。ドSの人は最初はいいけど、だんだん飽きてしまうというのはあります。 ──デビュー後はどんな女優さんになっていきたいですか? 速水 やるからには有名な女優さんになりたいなって思っています。ダンスの面でもそうなんですけど。 ──プライベートで経験できないエッチを体験していきたいと、プロフィールにもありますが。 速水 体位だけじゃなく、複数とか。いろいろやっていきたいって思っているんです。 ──ぶっかけも平気? 速水 平気だと思います。やってみたいです。あと、作品の中で演技もしてみたいですね。 ──ジャンル的にはどんなものに? 速水 女教師をやりたいんです。相手は生徒2人とかで。プライベートで年下に興味はないんですけど、作品の中でならいいなって。年下をいじめるのとかやってみたいです。 ──プライベートのことも教えてください。ダンス以外ではどんなことに興味を持っているんですか? 速水 料理が好きです。あと、歌も。料理はカレーマイスターの資格も持っているんです。カレールーを作れるようになるという資格なんですけど……。あともちろんファッションやメイクも。お酒も大好きで最近は日本酒にもはまっています。 ──最後にファンにメッセージを。 速水 AVだけじゃなくて、わたしのダンスのパフォーマンスの部分もぜひ見てください。AVをやりつつダンスの方でも取り上げてもらえるようになれるよう頑張ります。みなさん、応援よろしくお願いします。 (取材・文=名鹿祥史) ■速水ライリ プロフィール 1995年6月9日生まれ T153/B83/W53/H88 大阪府出身 Twitter:@rairy_hayami 彼女のダンスは必見です!! https://youtu.be/OsbbuF_C9IE