入り口に掲げられているのは「家畜人ヤプークラブ ZERO」の文字。沼正三作である世紀の同名小説のタイトルを冠した、そのパーティの主催者は、“伝説のプロデューサー”こと康芳夫によるものだった。 康芳夫と聞けば今の40代を超えるものは知らぬもののいない怪人プロモーターである。1937年、東京生まれ。東京大学を卒業。その在学中から“赤い呼び屋”と呼ばれたプロモーター、神彰氏の元でプロデュース業に携わり、ある意味モラルを完全に無視した、知的好奇心最優先ともいえる暴力的な仕掛けで、日本中を混乱と興奮の渦に巻き込んだ。しかし、華々しい“世紀の呼び屋”としての活動は1970年代後半までといったところ。それから30年以上を過ぎた今、突如として活動を開始したのだという。 しかし、現在は怪しいものが怪しいまま存在することが許されない、デジタルかつクリーンな社会となっている。 そのような中で筆者も人間の限界を拡大しうる怪しい人間専任で活動を続けている端くれだけに、21世紀に蘇った昭和の奇人の動向は気になって仕方がなかった。 そういうわけで、パーティとは別日に改めて康芳夫のロングインタビューをセッティングした。 ■王貞治の所有ビルでSMクラブ
――この間行なわれたパーティはどのような経緯で開催されたんでしょうか? 「もう40年も前になりますが、新宿御苑のあたりで『家畜人ヤプークラブ』というSMクラブをやっていました。まだ東京にSMクラブなんてものがあまりない時代に先駆けてやっていたんです。今回はそれを復活させようと始めた、第一歩ですよ。当時は王(貞治)くんの所有しているビルでやっていたんだけど、あまりに流行ったんで“康さんやめてくれよ”って言ってきたよ(笑)」 ――えっ、あの王さんですか? 「王くんはね、今の新しいテレビ塔……スカイツリーの真下でね、『五十番』って支那飯屋の息子です。彼のお父さんは中国からやってきた人で、うちの病院の患者だったこともあるんですけどね」 中国からやってきて日本へ根付いた王家のように、康家もまた中国から移り住んできた家系だった。康氏の父親は慶応医学部を卒業し、神保町で開業医となった。家族ぐるみの付き合いだったという康氏と王貞治氏の関係だったが、物件のオーナーがあの世界の王氏だったのは「単なる偶然」だという。 ――当時「家畜人ヤプークラブ」はどのくらい流行ったんですか? 「そりゃね、野坂(昭如)は毎日来るわ、吉行(淳之介)、遠藤(周作)も来ましたね。あとは石坂浩二くんとかね。噂を聞きつけて、それぞれが女性を連れてやってくるわけですよ。彼らはブレイクしたばかりで、毎晩銀座のクラブで遊んで最後に女の子と一緒にドンチャン騒ぎするわけ」 ――嘘みたいな面子ですね……当時の著名人がそこで何をしていたんですか? 「もう、それは……SMショーだよ」 ――ステージに上がってですか? 「いやあ、客席もステージもない、辺り一帯で繰り広げられていたよ。誰が誰だか区別が付かないような状態。なにしろ、本当のSと本当のMが来ちゃってるからね……それに遠藤は本当のMですから」 現在のように専門的な風俗店と化した「SMクラブ」とは違い、康氏が言っている「SMクラブ」は、どちらかといえば現在の「SMバー」と呼ばれる形態のものに近かったようだ。客と店員が即興で変態プレイに興じる、まさに酒池肉林の宴だったのだろう。とにかく、世界の王の与り知らぬところで、日本のSMシーンはド派手に幕を開けていたようだ。 「まあ、あんまり騒がしいんで警察から苦情が出てね、1年半くらいで閉めましたね」 この闇雲に著名人の名前を散りばめたようなスキャンダラスなエピソードの顛末でもわかる通り、康芳夫虚々実々と思わせる手法で昭和の日本を手玉に取った人物である。 ■虚業家とは? “伝説のプロデューサー”の他にも、自ら“虚業家”“国際暗黒プロデューサー”なる奇天烈な肩書きを名乗り、近年は“全世界を睥睨するスフィンクス”を自称するなど、こと怪しさに関していえば近年の日本ではお目にかかれない種の、遙かなスケールなのである。 ――“虚業家”っていう肩書きはご自身で名乗られたんですよね? 「そうそう」 ――“虚業家”って簡単に説明すると、どういう職業なんですか? 「要するに……ペテン師みたいなもんだ」 ――それ簡単すぎますよ(笑)。ペテン師と虚業家はどこか違わないんですか? 「うーん……ペテン師寄りの実業家かな?」 ――そういうものなんですね(笑)。 「両者の大きな違いは、ペテン師は殺伐としているが、虚業家、特に僕のようなタイプは大ロマン主義者ということだ。僕が『虚業家宣言』って本を出したのはもう40年ほど前なんだけど(1974年・双葉社刊)、ライターはまだ文藝春秋に入ったばかりの花田(紀凱)くんだからね。その後、週間文春編集長、現『WiLL』編集長ですが」 ――最近、康さんの他に虚業家はいますか? 「みんなゴミだねえ」 ――おお! 「売れっ子の精神科医とか医者ね、今幻冬舎でベストセラー出してる輩が何人かいるんだけど、こいつらの言ってることは全てまやかし、ペテンですよ。読んでる奴がおかしくなるだけなんですよ。たとえば大問題になってるのが、『人は死なない』って書いた矢作(直樹)ね。彼も言っていることが徹底してちぐはぐなんだだよ。最大の問題はね、オレオレ詐欺もそうだけど、引っかかる奴らに問題がある。善男善女にも大きな自己責任がある。カモがいるからこういうのが出てくるんだ。秋本(康)くんも殺伐なペテン師であるといえばそうだけど、あれくらいは愛嬌でしょう。別にどうって話じゃない」 ――東京オリンピックで大きな役割を担うという噂もありますが……。 「オリンピック!? それはないよ、そんな甘くない。バックグラウンドでやるのはあり得るけどね。ちなみにLAオリンピックは当時テレ朝の天皇といわれた三浦専務と組んで仕掛けたんですが、電通に潰された。勿論、三浦からは然るべき『オトシマエ』はとりあげたけど。当時の新聞読んでもらえれば、いかに大騒動だったかよくわかるよ」 (文・写真=福田光睦/http://ch.nicovideo.jp/channel/mftv">Modern Freaks Inc. 代表) ・第二回に続く ●康芳夫(こう・よしお) 1937年東京生まれ。国際暗黒プロデューサー、虚業家、家畜人ヤプー全権代理人、全地球を睥睨するスフィンクス。 公式ツイッター=@kyojinkouyoshio 公式サイト=http://yapou.club 有料メルマガ=『全地球を睥睨(へいげい)するスフィンクス『康芳夫』メールマガジンそして「家畜人ヤプー」通信』 無料メルマガ=『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)』 【8月8日 45年ぶりに『家畜人ヤプー倶楽部』復活(定期開催)イベント開催!】<イベント概要> 月蝕歌劇団 代表 高取 英 構成のショー、 柊 一華 演出の本格的SMショーを酒を飲みながら堪能ください。出演:女王様『柊 一華』,モデル『秘密』 / 倉敷あみ(月蝕歌劇団トップ) 三上ナミ 柴奏花 他月蝕歌劇団 <日時> 2015年8月8日(土) ・第一回め:開演時刻 18:30 前売り(予約)3500円(当日会場払い) ・第二回め:開演時刻 20:30 前売り(予約)3500円(当日会場払い) <会場> 家畜人ヤプー倶楽部@下北沢 <チケット> ・http://peatix.com/event/101342![]()

















