
『KING OF TATTOO2014』公式ホームページ。
【リアルサウンドより】
現在、海外はもちろん、日本でもタトゥーを入れているミュージシャンは少なくない。彼らの影響もあり、ファッションの一部として気軽にタトゥーを入れる一般人も増えた。音楽シーンではもはや当たり前のように浸透しているタトゥー文化は、どのように音楽文化と関わりを持ってきたのか。
東京高円寺にあるタトゥーショップ
TOKYO HARD CORE TATTOOのオーナーKATSUTA氏協力の元、近年の音楽シーンとタトゥーの関係について、取材と調査をした。
タトゥーを入れ始めたミュージシャンたち
刺青文化の歴史は紀元前にも遡り、日本にもまた長い歴史があるが、本稿ではロック以降のポップミュージックとの関わりについて記したい。
ロックシーンの中でタトゥー文化が盛り上がりを見せたのは、ロックが世界的に普及した1960年代頃から。イギリスのヘヴィメタルミュージシャン、オジー・オズボーンは1960年代半ば、17歳頃に微罪により逮捕され収監された際に、刑務所内にて小さなニコちゃんマークのタトゥーを入れ、それをきっかけに多数のタトゥーを入れ始めている。また、イギリスのサイケデリックロックバンド、ホークウインドのデイヴ・ブロックや、アメリカのロックバンド、オールマン・ブラザーズ・バンドのグレッグ・オールマンなども1969年〜1970年に入れている。また、女性ではジャニス・ジョプリンが早くからタトゥーを入れていた。彼女は1970年に27歳で亡くなっているので、やはり60年代に入れたようだ。
一方、日本では70年代後半から80年代にかけてタトゥーを入れるミュージシャンが増加し始めた。有名ミュージシャンではARBのドラムのキースが70年代後半から80年頃に入れている。その後、アンダーグラウンドシーンでGAUZEのドラムだったヒロがイギリスで入れて来たのを初め、LIP CREAMのジャジャが横須賀で入れるなど、ハードコアパンクシーンにタトゥー文化が広まった。ロカビリーバンドのブラックキャッツもこの頃にエド・ハーディーに入れてもらっている。KATSUTA氏もこの頃ハワイで最初のタトゥーを入れている。
女性では80年代に原宿にあるショップ「ピンクドラゴン」の社長がエド・ハーディー(セイラ・ジェリーの弟子で、多くの海外ミュージシャンにタトゥーを入れている有名タトゥーアーティスト)を呼んだ際に、アン・ルイスがタトゥーを入れている。
KATSUTA氏によると、当時はまだ西洋風のタトゥーをやっているショップが横須賀に一件あっただけなので、ほとんどの場合は和彫の彫師にドクロなどのワンポイントのデザインを持ち込み「こんなもの彫れるか!」と怒られながらも、なんとか入れてもらっていたそうだ。それ以外だと、海外で入れてくるしか方法が無かったとのこと。その後、西洋のタトゥーと日本の刺青が融合し始め、独自の手法が生み出されていった。
現在の海外の女性ミュージシャンでは、レディー・ガガやアヴリル・ラヴィーンといったポップスターがタトゥーを入れている。彼女たちのように影響力の強いミュージシャンがタトゥーを入れていることで、最近は一般の若い女性がファッションの一部としてタトゥーを入れるケースも見受けられる。そういった場合、耳の後ろや耳たぶ、手首等の見える場所にアクセサリー感覚で入れることが多いようだ。
タトゥーのデザインと音楽ジャンル
タトゥーのデザインには現在、アメリカントラディショナル、ジャパニーズトラディショナル、ブラック&グレイ、トライバルなど様々なタイプがあり、一概には言えないが、音楽のジャンルによって好む絵柄が別れる傾向がある。ロカビリー系のミュージシャンはアメリカントラディショナルを好み、50年代スタイルの絵柄が多くみられる。
メタル系ミュージシャンはトライバルやブラック&グレイなどが多く好まれ、ヒップホップになるとL.Aスタイルと言われるメキシカンギャングなどが入れる絵柄や、文字などのタトゥーを好む傾向があるようだ。
パンクになるとオリジナルスタイルが多く見られ、バンドのロゴなどの他に、社会や体制に対するメッセージを絵柄や言葉にして入れる事が多い。
レイヴやクラブなどのカルチャーでは、トライバルなどのほか、最近の若い女の子が入れる模様などの柄も多く、アクセサリーの一部としてのタトゥーも人気だ。
最近では海外でもジャパニーズトラディショナル、いわゆる和彫が流行していて、アメリカントラディショナルが主流だった日本のタトゥー業界も、今やジャパニーズトラディショナルが主流になりつつあるようだ。
タトゥーという表現方法
ミュージシャンはステージに立ち、ファッションや髪型、メイクなど身体全体で表現するのは当然のことで、彼らは自分の意志を伝える手段としてタトゥーを用いている。だからこそ、タトゥーに憧れを持つファンも増えたし、ひとつのカルチャーとして一般層にも広まってきたのではないだろうか。
刺青は、過去には罪人の証となっていたこともある。また、職人や火消し、鉱夫などが死んだ時に身元が判るように入れられていた時代もあったが、明治時代以降に禁止され、その後、ヤクザしか入れなくなった時期も長かった。そのため、イメージが悪くなったのではないかとKATSUTA氏は指摘している。
タトゥーを入れることに対する社会的な抵抗感は現在も残っており、KATSUTA氏は「ほとんどの温泉やプールには『暴力団・タトゥー・刺青、タトゥーシールお断り』と書かれています。また、生命保険に入れなかったりするほか、最近では海でもタトゥー禁止になっている場所もあります。若者にも浸透してきていて、文化として、ファッションとして定着しているタトゥー文化への理解が、もっと一般にも広がるようにしたいですね」と、その心情を語っている。
タトゥーに興味がある、または興味を持った方は、今年で9回目を迎える日本最大のタトゥーイベント
KING OF TATTOO2014へ足を運んでみてはいかがだろう。10月11、12、13日に代官山THE ROOMにて行われるこのイベントは、世界各国からタトゥーアーティストが集まり様々なパフォーマンスが行われる。タトゥー文化の奥深さを味わえるはずだ。
■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST