
『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』
「A・RA・SHI」は黒っぽい“要素”を取り入れたポップス
この曲の面白さは、構成とアレンジに注目するとよくわかりますので、まずは下のよう整理してみました。Aはラップ部分、Bは「Step by step」から始まる歌セクション、Cがいわゆるサビで「You are my SOUL! SOUL!」で始まるセクションです。( )内は代表的なパート、[ ]内はキー(全て長調)です。構成
Intro (パーカッション、ベース、ギターリフ、「Take it so so」) A1 (ラップ、ブラスシンセサイザーリフ、ランニングベース)[A] C1 (サビ、ブラスシンセサイザーリフ、ギターリフ)[A] A2 (ギターリフ、ギターカッティング、ボイス)[A → Bb] B1 (ブラスシンセサイザーリフ、コーラス、ギターリフ)[G] C2 (C1と同じ)[A] break 間奏 テンポアップ (ディストーションギター)[A] 間奏2 (Introと同じフレーズ)[G] A'(「Take it so so」ラップ、ワウギター)[G] B2 (ブラスシンセサイザー、ディストーションギター)[G] C3 (ロック的な打ちっぱなしのキメ)[A] C4 (ラップが重なる)[A] C5 (歌が抜けてラップ)[A] C5 (ゴスペル風R&B調、パーカッションとベースのみ)[A] 順に見ていくと、ブレイクのIntroから、A1で唐突にラップが始まります。そしてこちらも唐突にブレイクし、C1(サビ)に入ります。その間わずか28秒です。その後すぐにA2、B1、C2と続きます。ここまでで一応サビが2回訪れたことになりますが、セクション間をきれいにつなぐための、いわゆるブリッジとなるセクションが一切登場しません。A、B、Cがそれぞれ全く雰囲気の異なるセクションであることは、セクションの境目にリズムブレイクが入ることからもわかります。一度仕切り直さないとつながらない、ということです。また、ベースのフレーズに注目してみるとAはうねるランニングベース、Bはリズムフックのある深めのフレーズ、Cはルート(コードの基音)の8分音符弾き、とやっていることがかなり変わります。 そして、C2後のブレイクからテンポアップし、ディストーションギターのソロが続きますが、A'で一旦雰囲気を落としてラップを挟み、改めてB2で盛り上がってその後はCの連続です。Cの連続といっても、上記のように実にいろいろなことをやっています。 このようにして改めて順を追って見ていくと、少なくとも歌謡曲としてはなかなか変わった構成だということがわかります。もちろん単にラップセクションと歌セクションを並べただけ、というわけではなく、細かな工夫はされています。例えばA2のラストからB1の最初のコード進行は「D(レ) C#(ド#)CM7(ド)」と半音ずつ下がって自然につながります。しかし大きな目で見てこの曲の矢継ぎ早な構成からは、歌謡曲に重視される物語性や曲としての雰囲気の一貫性というよりは、「5分の間にやりたいことを全部詰め込んじゃおう」というような、勢いとコンセプトを重視している、と言えるでしょう。 次にアレンジに注目します。横ノリ、ブラックミュージック的である、ということがどういうことかは『WISH』の分析で詳しく書きますが、この曲は実は、一見ブラックミュージック風のようでいて、実は縦ノリのストレートなリズムです。ドラムのパターンにそれがよく表れています。イントロのキック(ドン * * * ドンドン * * *)が唯一横ノリを持っていますが、A1からキックは4つ打ちになり、その後は基本的にストレートなリズムです。ラップはもちろん、太くうねるベースの存在感、きらびやかなシンセブラス、B1のR&Bっぽいコーラス、C5のゴスペル感など、道具立てとしてはいかにもそれっぽいものをいろいろと集めておきながら、リズムフックやタメはあまりなく、基本的に前に前に進んでノリが掴みやすい構造になっています。 そのような構造を考えると、結局本編とは異なるリズムを提示しているイントロも「実際は縦ノリだけど、イメージとしてはこういう感じ」と言っているように聞こえてきますし、A'までのギターリフはいろいろと形を変えながらも、エアロスミスの『Walk This Way』(86年にRun D.M.Cがモチーフに使用して大ヒット)を思わせます。従って、制作陣が何を狙ったかは予想するしかありませんが、「黒っぽい曲にしようとしたけどできていない」というよりは、「本質的には黒いグルーヴ感を持っていない人たちがフォーマットを模倣して遊んでいる」という表現を意図的にしているように感じます。(続きは書籍で)
リアルサウンド編集部『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』









