今週の注目記事 ・「画面には映らなかった紅白『舞台裏』」(「週刊新潮」1/15号) ・「紅白歌合戦『楽屋ウラ』全情報」(「週刊文春」1/15号) ・「オリコン第1位アイドル『仮面少女』の性接待」(「週刊文春」1/15号) ・「22歳『大和なでしこ』を1カ月も監禁暴行した『インド人』の無法地帯」(「週刊新潮」1/15号) ・「TBS長嶋茂雄&三奈特番に一茂の姿がなかった理由」(「週刊文春」1/15号) ・「氷の炎上 安藤美姫に元婚約者父が『きちんと説明して』」(「週刊文春」1/15号) 年末年始のテレビに出まくっていた元フィギアスケーター安藤美姫だが、彼女は自分が思っているほど“人気”があるわけではないようだ。 その理由は、新しい恋人のスペイン人を公表したことと、元日にインスタグラムに投稿した愛娘との3ショット写真だと文春は書いている。要は、テレビが起用しているのは、彼女の「スキャンダル」が、今のところ賞味期限内であるからだというのだ。 「正月が終われば減るはず」(放送作家)だというが、さらに不可思議なのは、彼女が一時、一緒に暮らしていた元フィギアスケーターの南里康晴との仲はどうなったのかということだ。 南里はメディアから追いかけられたとき、赤ん坊の父親は私ではないと言い切っていたから、本当の父親が誰か知っていたに違いない。知っていながら彼女をかばっていたのだから、近い将来、結婚するものと周囲も南里の親も思っていたに違いない。 “糟糠”の彼氏をあっさり捨てて外国男に走るなんざあ、大和撫子のやることじゃあるまい。南里の父親がこう話す。 「ひとつのステップにケジメをつける前に次のステップにっていうのは都合が良すぎる。次の人と幸せになりたいんだったら、ちゃんと説明せんと。雲隠れしているならともかく、あんなに自分から表に出てきているのに何も無しってのは大人としてダメでしょうが」 その通り。今度は南里の衝撃告白が文春に載るかもしれないな。 TBSの長嶋茂雄特番が話題だ。長嶋の頑張りは日本中を元気にしたが、そこで息子の一茂のことにまったく触れられなかったのを奇異に感じた方も多いだろう。 以前は一茂の妻が社長を務める「ナガシマ企画」が取り仕切っていたが、父親の記念品や愛用品を売り飛ばしたことが発覚して、亀裂が生じてしまった。 今は、次女の三奈が代表を務める「オフィスエヌ」が仕事や資産を管理している。先の件で、三奈と一茂の仲もこじれて修復できない状態にあると文春が書いている。 そんなこんながあって、ジャイアンツの野球振興アドバイザーをやり、日テレの野球解説を担当している一茂への配慮もあり、三奈は熱心にオファーを出していたTBSに決めたようだ。 文春は「一度こじれた長嶋家の絆が再び戻る日を、誰もが待ち望んでいるのではないか」と結んでいるが、本心ではあるまい。三奈対一茂の第2ラウンドが開始されるのを心待ちにしているのは、文春はもちろん、他の週刊誌も同じだろう。 日本の宝である父親を大切にしなかった、一茂に対する罰である。 年明けの1月3日、インド東部のコルカタで起きた日本人レイプ事件は、大きな衝撃を与えた。 新潮によれば、被害者は22歳の女性で、昨年11月20日にコルカタを訪れ、日本語で旅行ガイドを装ったインド人たちと知り合った。彼らは北部のブッダガヤに彼女を連れて行き、1カ月近くにわたって監禁して集団レイプをしていたのだ。 犯人は5人。現金約14万円も奪っている。その村では「外国人が来ている」とウワサになっていたらしいが、誰も助けに来てくれはしなかった。 彼女の容体が悪くなったので、医者に診てもらうために犯人が連れ出したところ隙を見て逃げ出し、警察に話して事件となった。 痛ましい事件だが、地元では「日本の女性は詐欺師のカモ」だといわれているぐらい、多くの日本人女性が彼らの毒牙にかかっているようだ。 インド在住のジャーナリストがこう語る。 「インドではほぼ毎日、レイプに関する報道があると言っても過言ではない。その中には、外国人が餌食になる例も少なくない。2013年3月には、夫と一緒に自転車で旅行していたスイス人の女性が集団レイプされるという事件もあった。また、警察官が警察署内で女性をレイプするなど、警察機能が欠落した地域も多く存在しているのです」 この背景には、カースト制度と根強い女性蔑視の風潮があると新潮は指摘する。上位のカーストから外され、都会で悪さを働く集団もあるという。 今でもインドでは、夫に先立たれた女性が再婚することは許されない。私は明るくて歌とダンスの素晴らしいインド映画が好きだが、こうした現実を知ると、今までのように無邪気に見てはいられなくなる。 インドにも第2、第3のマララさんの出現が待たれる。 私はまったく知らないが、秋葉原・万世橋のたもとに、アイドルグループ「仮面女子」の常設館があるという。 写真を見ると、仮面をかぶったAKB48のようである。今年元旦に発売されたCD「元気種☆」(デストロイレコード)は、インディーズレーベルながら予約販売枚数が13万枚を超え、週間オリコンチャートの第1位に輝いたという。 AKB48もそうだが、こうした若い娘たちを使って稼ごうとする人間の中には、しばしば彼女たちの性を自分のものにしようとする輩がいるものである。 文春によると、ここの池田せいじ社長ものその一人だという。彼は大阪でホストクラブを立ち上げたが、スキャンダルが相次ぎ、芸能事務所の運営をするようになったそうだ。 今回、社長に肉体関係を迫られ、仕方なく結んだと告白しているのは現役、元の4人の女の子たちだ。生々しい性接待の実態は文春を読んでいただくとして、興味深いのはこうしたグループを無批判に取り上げ、人気グループに押し上げてしまうメディア側の問題が提起されていることである。 NHKは2013年6月21日に『ドキュメント72時間「“地下アイドル”の青春」』を放送して、彼女たちの知名度を全国的にしてしまうのである。だが、ここで描かれている「貧乏生活」は社長からの指示で、“やらせ”だったというのだ。六畳間に4人が共同生活を送り、自炊をしながら成功を夢見て暮らすという、お決まりのパターン。 告白によると、彼女たちは自炊などはせず、元コックのマネジャーがいて、寿司や中華を作ってくれる。メンバーのほとんどが実家暮らし。月収1万円もウソで、月平均10万円、高い子は20万円はあるという。おまけに脱退すると言うと、違約金として数百万円を要求されることもあるというのだ。 それに騙されたのは『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系)、『Nスタ』『有吉ジャポン』(TBS系)などなど。テレビ局に取材力を求めること自体無理なことは承知だが、これでは佐村河内守事件と変わらないではないか。 池田社長は取材に対して、性接待もやらせも否定。違約金の件だけはノーコメント。 現役や元メンバーの訴えを、ファンたちはどう聞くのだろう。もはや、これまで同様に無邪気に聞く気にはなれないと思うが、今のガキたちは「そんなことはこの世界では当たり前じゃん」と、歯牙にもかけないのかもしれないな。 さて、今年の紅白歌合戦は中森明菜や桑田佳祐まで引っ張り出したが、あえなく視聴率は前年より2.3ポイントも下がって42.2%止まり。以下は、文春と新潮から引用したものである。 中森には「録画映像疑惑」が持ち上がり、桑田には歌詞の内容が「安倍首相批判」ではないかという反響が出た。1月6日付の朝日新聞がこう報じている。 「横浜での年越しライブ会場から中継で登場した桑田さんが歌ったのは『ピースとハイライト』だった。 世界各国の言葉で『平和』という文字が映し出された映像が流れる中、桑田さんは少しおどけたように歌った。 ♪都合のいい大義名分(かいしゃく)で 争いを仕掛けて 裸の王様が牛耳る世は……狂気」 この「都合のいい大義名分」を、集団的自衛権行使容認のための憲法解釈変更に重ね合わせて聴いた視聴者らがネットで反応した。曲名を「平和(ピース)と極右(ハイライト)」と読み替えたり、「裸の王様」を安倍晋三首相への揶揄(やゆ)と受けとめたり――。 Twitterなどには、この歌の「解釈」をめぐって賛否の投稿が相次いだ。 「安倍政権の極右旋回へのプロテスト(抗議)と戦争への危惧』『素晴らしい(安倍政権への)カウンターソング』。一方では『今後一切サザンは応援しない』『日本に対するヘイトソング歌う為(ため)に紅白でたわけか』というツイートも」 朝日新聞らしい解釈だが、もし桑田が意識してそう歌ったのだとすれば、日本のジョン・レノンといってもいいかもしれない。 中森明菜の疑惑についてはNHK関係者がこう話す。 「あれは生放送です。ただ、明菜の声量が生中継で出せなかった時のために、流れる曲に録音した明菜の歌声を入れて、その上に彼女の生歌を乗せて中継したのです」 これはバックトラックといって、音楽ライブでよく使われる「声量偽装」ともいわれる技術だそうだ。 やはり明菜は大勢の前で歌える状態にはなく、歌さえも「偽装」しなければならなかったということだ。これで復帰がまだまだ遠いことが全国に知られてしまった。 桑田の出場も直前まで伏せられていたそうだが、新潮によると犬猿の仲の長渕剛がそれを知ると降りてしまうことを慮ったというのである。その意趣返しではないだろうが、長渕は新曲を歌うと言いだし、NHKもさじを投げ、「好きにしてください」と言ったと文春が報じている。 中島みゆきも、AKBなどの若手がガヤガヤうるさいNHKホールで歌うことを嫌がったために、別スタジオから歌ったという。 昔の紅白の威光を知っているわれわれには、信じられないことばかりだ。美空ひばりは例外として、ほかの歌手のわがままなど聞く耳持たなかった紅白の凋落を示すエピソードである。 司会の吉高由里子のひどさは際立っていたが、薬師丸ひろ子も「全くダメだった」(スポーツ紙記者・文春)。ヒドイを通り越して、哀れさを感じさせるステージだった。もう歌など歌わないほうがいい。 もう一人ひどかったのが、大トリの松田聖子。あれだけのタマがプレッシャーで震えていたとは思えないが、トリを飾るには10年早いと思わせるステージだった。 以前は紅白の裏番組は各局捨てていたが、近年はテレビ東京のボクシングのように5~6%を取るものが増えてきている。だが中には、「試合放棄」したテレビ局があると文春が書いている。社員の年収がナンバー1のフジテレビだ。 年末年始の番組は軒並み低視聴率で、31日のバラエティ『ツキたい人グランプリ』はなんと2.5%だった。 こんな番組を作っているテレビ局が給料ナンバー1というのは、どう考えてもおかしいではないか。亀山社長、今春は給与のベースダウンを考えたほうがいいのでは? (文=元木昌彦)「週刊新潮」1/15号 中吊広告より
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太川陽介が示す、日本の美徳とは――テレビ東京『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(1月3日放送)を徹底検証!
かつて日本人は、控えめさと几帳面さを美徳としていた。そしてまた、和をもって尊しとなるという考え方は言葉にせずとも共有のものであった。そんな時代が、確かにあった。そう昔の話ではない。隣国の悪口を叫びながら街を練り歩いたり、早く子どもを産めと議会でヤジを飛ばしたり、東京駅の記念Suicaを求めて「それじゃ、転売できねえんだよ!」と言いだすような人々が出現する少し前までは、確かにそういう時代だったのだ。 それでは、控えめさと几帳面さという日本人の美徳は、誰からも失われてしまったのか? もちろん、そんなことはない。少なくとも太川陽介にはそれがある。テレビ東京の人気番組『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』のリーダー役。決して自分が出しゃばらない控えめさ。常に地図を広げて路線をさぐる几帳面さ。そして、蛭子能収というノーデリカシー・モンスターを相手にしても、決して怒らず、和をもって尊しとするその態度。彼がいなくては、この番組は成り立たないというのは断言できる。 1月3日に放送された『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』は、3時間45分のスペシャルであった。このシリーズの言動によって、現在何度目かのブレークを果たしている蛭子能収だが、やはりこの番組での蛭子能収はひと味違う。3時間45分の間、ずっとイライラさせてくれる。番組のオープニングで、太川陽介から「絶対、息抜きに来てるでしょ?」と問われて「俺だって、これに賭けてるんだから」と反論するのはいいのだが、顔が完全にニヤニヤしている。明らかに、そんなことを思っていないというのが丸見えだ。 数えだしたらキリがないが、ゲストのマルシアに対して「歌手のイメージないね」「まっすぐ歩くことができないんだね」と絶対に言わなくていい一言を言ってみたり、バスの中で財布を下向きに開いて小銭をすべてこぼすという無駄な面倒さを披露してみたり、バスを待っている間に近くに食事をする店がないため「ガソリンスタンドで出前を取ってもらう」という、実にこしゃくなアイデアを提案してみたりと、まさに蛭子能収ワールド全開。視聴者として見ている分には、“腹立つわー”と笑えてしまうのだが、一緒に3泊4日の旅をする太川陽介からしたら、たまったものではないだろう。 しかも、今回のゲスト(マドンナ)はマルシアだ。番組冒頭で「私は一日200歩しか歩かない」と堂々と宣言し、番組開始からわずか8分で愚痴を始める始末。もはやスタッフが太川陽介を本気で怒らせようとしているとしか思えないわけだが、それでも太川陽介は決して怒らない。二人に気を遣い、そして献身的にチームを引っ張る。理想的なリーダーである。一体なぜ太川陽介は、誰に対しても怒ることがないのだろうか? また、どうすれば、そんなことが出来るのか? ここに一冊の本がある。執筆者は太川陽介。書名は『ルイルイ仕切り術』(小学館)という、2014年9月に出版された一冊であるが、一体これを誰が買うのかと勝手ながら心配になる。しかしその中身は、いわゆるタレント本の中でもかなり充実したものとなっており、「仕切る人間は“決断”をしなければいけないけれど、それが“独断”であってはいけないと思う」といったリーダー論や、番組が始まる際にプロデューサーから言われた言葉が「本当にまったく台本のない旅番組をやりたい」というものだったりと、非常に示唆に富んでいる。 この本の中で書かれているのが「蛭子さん級にイライラする人に対処する」という、太川陽介が見つけた一つの真理だ。果たして太川陽介は蛭子能収にイライラしてしまう自分を、どうやってコントロールしたのか。少し長くなるが、引用してみたい。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(テレビ東京)
だいたい考えてみれば、悲観的であろうと前向きじゃないことをいおうと、それが蛭子さんの個性なんですから。あの個性がなければ蛭子さんじゃないんですから。 みなさんも、時にはどうしようもなくイライラする人と出会うことがあると思うんです。 そういう時は潔くあきらめる。あきらめて、そういう個性の人なんだ、と大きな心で受け入れる。 そしたら、最近は本当にあまりイライラしなくなったんです。あきらめるのだ。あるいは言葉を変えれば、自分とは違う人間の存在を認める、ということになるのかもしれない。かつて立川談志は「落語とは人間の業の肯定である」と語ったが、太川陽介にとってもまた、蛭子能収との路線バスの旅は、人間の業の肯定なのだろう。自分と考え方が違うからといって、排除や差別をするのではない。むしろそのまま受け入れる。まさしく日本的な思想であり、そしてそれはいま多くの日本人が失いかけているものでもある。 よくよく考えれば『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』という番組の企画そのものが、日本的というか、日本ならではのものだろう。バスが時間通りに到着しなければ、そもそも企画にならない。そしてバスが時間通りに到着する真面目な国は、世界を見回してもあまり多いわけではない。テレビの画面には映らない多くの日本人の几帳面さや控えめさ、あるいは和をもって尊ぶという精神がこの番組を成立させているのであり、そのリーダーである太川陽介が日本的であるというのは、おそらくただの偶然ではないだろう。 景気の先行きも見えず、殺伐とした事件は絶えず起こり、イライラすることの多い世の中である。笑うよりも怒るほうがたやすい時代だ。だが、そのたやすさに甘んじるのが正しい道であるとは限らない。タクシーや高速道路を使わずに、ただただ愚直に路線バスと自らの足を使って初めて見える景色がある。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』が教えてくれるのは、そういったことではないか。 シリーズ第19弾となる今回の旅で、一行は一人のバス運転手と出会った。高校の教員をやっていたその男性は、去年からバス運転手の仕事を始めたそうだ。その理由は、この『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』という番組が好きで、運転手をやってみたかったから。そう、人が季節をめぐるように、バスは路線を周り続ける。イライラする必要なんてないのだ。ここがどんな場所であれ、この世界は、それほど悪いものではない。 【検証結果】 2014年の暮れに行われた衆院選で自民党の安倍総裁が掲げたスローガンは「この道しかない」という、この息苦しい世の中のムードを的確に捉えた勇ましい言葉だった。だが、それは『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』の思想とは真逆のものだといえるだろう。道なんていくらでもある。そして人は、どの道を選んでもいい。差別や排除など必要ないのだ。あの蛭子能収に対してもイライラしない太川陽介という人間の存在は、確かにそれを証明している。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは @aizawaaa
世にも美しい図鑑、ドキュメンタリー『凍蝶圖鑑』ここはセクシャルマイノリティーが集う夢の楽園
とても美しい図鑑をめくっているような気分になる。ドキュメンタリー映画『凍蝶圖鑑』は“いてちょう ずかん”と読む。凍蝶とは、草陰に隠れて越冬する蝶のこと。幻想的な美しさと生命のはかなさ、そしてたくましさを感じさせる言葉だ。ただし、『凍蝶圖鑑』は図書館に並んでいるような昆虫図鑑ではない。同性愛者、トランスジェンダー、ドラァグクイーン、サディスト&マゾヒスト、ウェット&メッシー、身体改造愛好家……。ノーマルな嗜好を持つ人たちとは異なる、世に言う“変態さん”たちにスポットライトを当てている。 実に様々な凍蝶たちをビデオカメラで追ったのは、神戸在住の田中幸夫監督。そして田中監督と我々観客を、凍蝶たちが生息するアンダーグランドへと誘うのは漫画家の大黒堂ミロさん。バー経営者、イベンターなど多彩な顔を持つ彼はゲイであることをカミングアウトしており、彼の案内で未知なる図鑑のページが開かれていく。 ミロさんと共に大阪の下町情緒漂う歓楽街を歩く。近くに通天閣がそびえ、ノスタルジックさと温かみを感じさせる商店街が続く。ミロさんいわく、近くのマンションにはおじいちゃんたちがやっているゲイ専門のソープランドが存在するとのこと。ハッテン場として知られるピンク映画館やサウナもある。中学時代のミロさんは実家に自分の居場所がなく、この街でホームレスたちと飲み明かすうちにその道の先輩に声を掛けられ、ゲイに目覚めたそうだ。「ゲイだとか変態だとかじゃなくて、人恋しくて集まっていた人たちが多かったのかな」とミロさんは自身の青春時代を振り返る。 神々しいまでの美しさを感じさせるのは、あずみさんだ。生まれつき顔に血管腫があり、その容姿は否応なく人目を惹く。しかし、あずみさんは外見上が個性的なだけでなく、性同一性障害という複雑なアイデンティティーの持ち主でもある。昼は男性として会社で働き、夜は女装サロンでくつろいだ時間を過ごすあずみさん。そんな彼女をモデルにして、スチール撮影しているのが写真家の谷敦志さん。谷さん自身はノーマルだが、「性的マイノリティーの人たちにいつも助けられてきた」と話す。あずみさんはカメラに撮られることで、また写真家の谷さんはあずみさんを撮ることで、お互いのアイデンティティーが確立されていく。カメラの前で裸になったあずみさんが崇高な存在に思えてくる。多彩なセクシャリティー、フェチズムの持ち主が登場する『凍蝶圖鑑』。フランス人のVivienneさんは縛りの美しさに魅了されて13年になる緊縛調教師。
『凍蝶圖鑑』を観ているうちに、この図鑑は単に異形な人々を紹介しているだけではなく、異形の人々と社会との関わりを描いていることに気づく。ミロさんは大学教授を講師として招き、性倒錯についてのマジメな勉強会を開いている。あずみさんは谷さんのカメラを通して自分を表現し、性的マイノリティーの人たちをテーマに撮り続けてきた谷さんはパリのエロチズム博物館で個展を開くことになる。また、トランスジェンダーであり、詩人でもある倉田めばさんは刑務所を回って、薬物依存の過去に悩む受刑者へのカウンセリングを行なっている。彼らは彼らなりの視点と方法で、現代社会としっかり関わっていることが分かる。凍蝶の美しさは表面的な派手さや物珍しさに由来するものではない。厳しい環境でも生き抜く、生の輝きがそこにはある。 大阪、神戸、京都、パリと1年がかりで凍蝶たちを追った田中監督は味のある関西弁でこう語る。 田中監督「これまで38年間、関西を拠点にドキュメンタリー、ドラマ、企業のPR作品といろいろ撮ってきたんです。あるとき、大黒堂ミロさんと知り合って、『なんでボクらを撮らへんの?』と言われたのが『凍蝶圖鑑』を撮り始めたきっかけ。性的マイノリティーを扱ったドキュメンタリーはいろいろあるだろうと思って調べてみたら、日本では中島貞夫監督の『にっぽん’69 セックス猟奇地帯』(69)か『セックスドキュメント 性倒錯の世界』(71)があるくらい。海外でも『モンド・ニューヨーク』(87)くらいしかなかった。それならやるかと(笑)。でも僕はいたってノーマルな人間で、そっちの世界のことは分からない。それで関西では“変態の大御所”であるミロさんに紹介してもらい、ドラァグクイーンの先駆けであるシャンソン歌手のシモーヌ深雪さんやカメラマンの谷さんに会うようになったんです。変態と言っても幅広いけど、僕は美しいものが好き。美しいものって人によって違うでしょ。だから、排除するとかではなく、スカトロジーは今回はちょっとなぁ……と(苦笑)。スカトロジーが嫌いだとかではなく、僕には撮れないということなんです。僕が美しいと感じるものを撮ったんだけど、みなさん、どうかな? 楽しんでもらえるといいなぁという作品なんです」 興味本位で見始めた『凍蝶圖鑑』だが、驚きはあっても嫌悪感を覚えるシーンはなく、不思議なほど心地よさを感じさせる。田中監督の手持ちカメラを、被写体たちは身構えることなく受け入れている。また、カメラの前を猫たちが度々横切るのも目立つ。猫は居心地のよい場所を見つける天才だ。田中監督がカメラを向けた空間は、性的マイノリティーに限らず、ノーマルな人間にも、動物たちにとっても安らげる場所らしい。そしてクライマックスは、変態夫婦gonchang&akiko babyの結婚10周年記念パーティー。変態バーで出会ったサディストの夫とマゾヒストの妻との愛に満ちた10年間を祝うため、パーティー会場は様々な変態さんやクリエイターたちが集うユートピアと化している。吊り師・BONZIN氏によるボディサスペンション。危険な行為に映るが、衛生面を配慮し、医療技術を応用することで、最低限の傷で済むようになった。
田中監督「彼らの世界って、優越がないんですよ。SMとスカトロジーはどっちがエラいとかはないし、自分とは違う性癖の人間を排除することもしない。お互いが違いを認め合う世界なんです。世間の常識とは異なる世界かもしれないけど、性的マイノリティーの世界ではそれが成立している。優越もなく、排除もない世界。それはある意味、アンダーグランド界のユートピアかもしれませんね。この映画はそんなユートピアを旅した僕自身の体験記でもあるんです」 世にも美しい人間図鑑は、常人が知らない理想郷への扉を開いてくれる大事なパスポートでもあるようだ。 (文=長野辰次)刺青師の彫修羅(ほり しゅら)氏。「この仕事は舐められたら終わり。100kgある相手を片手で押さえながら彫らなきゃいけないこともある」と語る。
『凍蝶圖鑑』 監督・撮影・編集・製作/田中幸夫 助監督/北川のん 企画協力/山田哲夫 撮影協力/藪田政和 音効/吉田一郎、石川泰三(ガリレオ・クラブ) 写真/谷敦志 題字・デザイン/東學 企画・製作・配給/風楽創作事務所 1月10日(土)より新宿武蔵野館にてレイトショー公開 +R18 (c) itecho.jp = 風楽創作事務所 http://itecho.jp
「怖いもの見たさ」を刺激する、TBS『クレイジージャーニー』の“煽りすぎない”衝撃映像
東洋一のスラム街と呼ばれるフィリピンのトンド地区に潜入し、そこを歩いていると銃声のようなものが何度も鳴り響いた。 「おちょくられてるか、威嚇されてるんじゃないですか?」 怯える番組スタッフに、取材者は事も無げに笑みを浮かべて言う。 スタジオでそのVTRを見ていたバナナマン設楽統は、思わず「お正月にこんなの見たくないよ!」と叫んだ。 2014~15年の年末年始番組で最も強烈なインパクトを与えた番組のひとつが、このVTRが放送された『クレイジージャーニー』(TBS系)だろう。出演者は設楽のほか、ダウンタウン松本人志、小池栄子。演出は、『水曜日のダウンタウン』(同)でもディレクターを務める横井雄一郎である。 独自の視点で世界を巡る狂気の旅人がスタジオに集結し、「自分じゃ絶対行かないけど、見てみたい!」と思えるような旅の体験を語ったり、その映像を見るという“伝聞型紀行バラエティ”だ。 冒頭のスラム街に潜入したのは、「危険地帯ジャーナリスト」の丸山ゴンザレス。その肩書からもうヤバい。世界中の治安の悪いエリアやスラムに足を運び、底辺に住む人々の生活や犯罪事情など、命がけの取材でその実態に迫るジャーナリストだという。 「死にそうになったことは?」という問いに、インドのベナレスに行ったときの話を語りだしたゴンザレス。「そこに、ちょっと麻薬の市場調査に行ったんです」と。松本は「ちょっと行くようなところじゃない」とツッコむが、丸山は「ちょっと気になったんで」と笑う。そこで現地のジャーナリストと落ち合う予定だったのだが、連絡が取れず、仕方なく一人で取材を続行して帰国すると、実は現地のジャーナリストは合流する直前に殺されていたのだとサラッと明かす。 ちなみにゴンザレスという名前は、もともと旅仲間の名前。「ちょっと逮捕されてしまった」から“襲名”したという。 「ゴンザレスさん、全部“ちょっと”で済ますから」 と、さすがの松本も笑うしかなかった。 フィリピンのトンド地区は、規模の大きさや貧しさから「東洋一」といわれるスラム街。なぜそんな危険なところに行くのかと問われたゴンザレスは「好奇心ですよね。怖いもの見たさが先に立つ」と答える。 「スラムがどんな場所で何があるのか、肌で感じたいし、目に入るものすべて押さえたいですよね。あとは家の中ですよね。どんな人が住んでいてどんな部屋なのか内部に入り込みたい」 そんな決意を持って、同行した番組スタッフの「大丈夫ですか?」という不安げな言葉にも「大丈夫、大丈夫」と明るく答えながら、どんどんスラム街に足を踏み入れていく。インフラが壊滅した町並み、残飯を集め調理し販売している人々、異臭を放つゴミの山、そのゴミ山の中に建つ家、そこでビニール袋の中身を吸う子ども……。カメラは、ショッキングな光景を次々に淡々と映し出していく。 そこで、一軒の家に入っていく。天井が低く、床も壁も頼りない家。3畳のスペースに、9人もの人が住んでいるという。そんなスラムの家屋事情を住民に取材中、突如、カメラが大きく揺れた。何事かと振り返ったカメラが、家の外に立つ若者の姿を捉えた。その若者は、撮影していた番組スタッフのお尻のポケットから携帯電話を盗もうとしたのだ。若者は悪びれた様子もなく、少し照れくさそうに笑う。その笑顔が妙にリアルだった。 ゴンザレスはなおも「全然スラムの闇の部分に触れられてないんですよ。その辺を調べてみたいなと思いまして。犯罪とか、違法性のあるそういう仕事をしてる人を調べてみたい」と、臓器売買をしたことがあるという男にたどり着く。入院費が払えず、腎臓を売ったというその男は、なんとそれを医者に薦められたというのだ。 さらに、銃密造現場にも潜入。ただし、あまりに危険なため、番組スタッフとは別れ、ゴンザレスは一人ガンマニアを装い、裏社会に精通しているという現地人15人を経由し、銃密造現場の案内人と合流。小池が思わず「現実とは思えない」とつぶやく、衝撃的な映像を撮影することに成功したのだ。 番組ではさらに神秘の光る山を激写する『奇界遺産』(エクスナレッジ)の佐藤健寿、かつて『情熱大陸』(TBS系)などでも大きな話題を呼んだ自然と戦うサバイバル男・服部文祥、北朝鮮の内部映像を発信する石丸次郎が、ゴンザレスに負けず劣らずのエピソードや映像を紹介していく。 この手の番組は、とかくえげつなさが強調されがちだ。だが、この番組はセンセーショナルな煽りもなく、丁寧な編集と絶妙な距離感を保っているため、見ていてストレスも不快感もほとんどない。“モニタリングの天才”設楽や、生きた虫を食べることも厭わない行動力を持った小池、そして冴えわたるコメント力で重苦しさを吹き飛ばす松本という、3人のバランスが抜群なのもその要因だろう。クレイジーなものを真っ当な演出で見せる。それが、たとえ「こんなの見たくない」と思っていても、心の奥の「怖いもの見たさ」という欲望を刺激し、画面に釘付けにさせるのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから極バラ『クレイジージャーニー』 | TBSテレビ
『HERO』劇場版第2弾で木村拓哉が仰天オファー! フィギュア羽生結弦が俳優デビューへ!?
芸能取材歴30年以上、タブー知らずのベテランジャーナリストが、縦横無尽に話題の芸能トピックの「裏側」を語り尽くす! 木村拓哉主演の人気ドラマ『HERO』(フジテレビ系)シリーズの劇場版第2弾が、今年7月18日に公開予定だが、キムタク自ら、フィギュアスケートの羽生結弦選手に出演オファーしたという情報を映画関係者から入手した。 「キムタクの奥さんの工藤静香が羽生の大ファンだったことから、つてを頼って、羽生に出演オファーしたようです。実現すれば羽生の俳優デビューということで、映画の話題にもつながる。キムタクの劇場版に対する意気込みがうかがえますよ」(映画関係者) フジの“月9ドラマ”として昨年7~9月期に放送された『HERO2』は、初回視聴率26.5%(関東地区、ビデオリサーチ調べ/以下同)を記録。全11話の平均視聴率21.3%で、民放ドラマのトップに立っていた。だが、10月期から放送された米倉涼子主演の人気ドラマシリーズ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)が最終回視聴率27.4%、全11話の平均視聴率22.9%を記録したことで、14年度のドラマ視聴率のトップの座を米倉に奪われた。 人一倍プライドが高いキムタクは“ドラマの仇は映画で”とばかりに、撮影がスタートした劇場版第2弾のクランクイン初日、撮影所に約300万円分といわれる食材を持ち込んで、出演者や撮影スタッフに“キムタク鍋”を振る舞ったという。神戸牛を一頭買いし、北海道ほか、全国から特産品を集めたとも。そのほか、冬の撮影に備えて自腹で制作したスタッフ・ジャンパーを配布したという。 これは、『ドクターX』で米倉による豪華な差し入れが現場スタッフの士気を盛り上げ、高視聴率につながったという業界の評判を意識したものだろう。しかし、差し入れ以上に驚かされたのが、これまで夫の仕事の現場に姿を見せたという話を聞いたことがない工藤静香が、キムタクと一緒に撮影所で鍋作りを手伝ったということだ。 さらに、羽生への出演オファー。キムタクは「羽生選手が出演してくれるなら、自分のギャラを削ってもいい」とまで言ったという情報もある。羽生の回答は現時点では不明だが、キムタク本人からのオファーだとしたら断りづらいところ。しかし、そのオファー後、ご存じの通り、羽生選手は尿膜管遺残症で手術・入院してしまったため、出演は相当微妙な状況になったようだ。 万が一、羽生選手が『HERO2』で俳優デビューということになれば、話題性は抜群。すでに9年前の『HERO』第1弾で雨宮舞子役を演じた松たか子が第一子を妊娠中であるにもかかわらず、キムタクの情熱を買って、復活することが決定している。 キムタクの作品に対する意気込みは半端でないゆえ、公開までの間、劇場版の話題は尽きそうもない。 (文=本多圭)
アベノミクスでテレビ局は儲かる!? 有名500社「年収ランキング」フジテレビが1,506万円で首位
今週の注目記事 ・「有名500社『年収ランキング』」(「週刊ポスト」1/16・23号) ・「2015年まるごと完全予測 景気・株・円安・会社 こう動く!」(「週刊現代」1/17・24号) ・「いま日本で『本当にうまい役者』ベスト100人を決める」 ・「いま日本で『本当に歌がうまい歌手』ベスト50人を決める」(「週刊現代」1/17・24号) ・「現代、ポスト『袋とじセクシー』の勝者はどっちだ!」 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 新年第1弾は現代とポストの合併号。どちらも年末に作り置きした企画だから、新鮮さよりも企画力の勝負になる。まずは、セクシー袋とじ企画から見てみよう。 現代の懐かしい女優シリーズは「風吹ジュンに恋をして」。後半グラビアではハーフのマルチタレント「LiLiCoが脱いだ!」と「平子理沙 超絶ボディ」。袋とじは「シンクロ元日本代表片平あかね『初めてのAV出演』で驚きの体位を連発!」 ポストは袋とじ2本で、またまた大場久美子の54歳と18歳の時の水着姿と、「裸になったアンヌ隊員 ひし美ゆり子」。ほかには内田有紀とポスト専属の「祥子の事。」。ポストは袋とじ2本だからか、定価は440円。現代は430円。ハーフながらLiLiCoの肢体が見事だし、かわいらしさがいつまでも変わらない風吹ジュンが愛くるしい現代のほうが、私にはお得感があったが、それほど圧倒的とは言い難い。よって今週は引き分けじゃ! 現代のうまい歌手、うまい役者という企画自体は褒められたものではない。これまで何度も繰り返されてきた古臭い企画だが、まあ新年ということで許そう。 二昔前なら1位は美空ひばりで決まりだったが、今はよくいえば群雄割拠、悪くいえばドングリの背比べである。 ベスト5まで挙げると、1位から順に桑田佳祐、中島みゆき、山下達郎、小田和正、井上陽水。3位の山下がやや意外だが、そのほかは順当だろう。6位に五木ひろし、7位に沢田研二、8位に都はるみがランクイン。 紅白でニューヨークからライブ中継で出演した中森明菜は12位で、紅組のトリを務めた松田聖子が20位。失礼だが、明菜は目がうつろで、口パクではないかと心配になるほど体調がよくなさそうだった。NHKが強引に口説いたのかもしれないが、歌姫完全カムバックとは当分いかないようである。 意外な低評価は氷川きよし39位、森進一40位、吉幾三41位。氷川は同性愛疑惑やマネジャーへの暴力沙汰が響いたのか? 同じような企画が「うまい役者は誰」だ。すぐに名前が挙がるのは役所広司、佐藤浩市、西田敏行あたりだが、以外によかったのが岡田准一だ。NHKの大河ドラマ『軍師官兵衛』は一度も見ていないが、期待していなかった映画『蜩ノ記』の岡田が、地味な役柄だったがいい味を出していた。 さて、ベスト1には“意外な?”役者が選ばれている。『クライマーズ・ハイ』やNHKの朝の連ドラ『マッサン』で好演した堤真一が、コメディから人情もの、シリアスまで幅広くこなせると評価が高い。 2位以降は、香川照之、藤原竜也、役所広司、浅野忠信、大森南朋、堺雅人、佐藤浩市、渡辺謙、濱田岳と並ぶ。 岡田准一は意外に低評価で15位。中井貴一が18位。三浦友和19位、西田敏行21位、水谷豊が22位だ。反対に高評価だと思うのは、本木雅弘の24位。お茶のCMと映画『おくりびと』しか印象にないが、一つ一つの仕事が丁寧だそうだ。 私は、役所広司はなんの役をやっても役所広司になってしまうところが難だし、普通の格好をしていても不潔な感じがするのはいただけない。佐藤浩市は昔のほうがよかった。オヤジの三國連太郎を意識しすぎるためか、佐藤の良さを殺してしまって、個性を失っているように見える。 田中邦衛のように、画面に出てきたら圧倒的な存在感を示す役者になってもらいたいと思うのだが。 お次は、現代とポストのアベノミクスにまつわる記事を2本。朝日新聞の1月5日付社説で安倍政権の経済政策をこう批判している。 「金融緩和で物価を押し上げることが果たして好ましいのか。企業がきちんと利益をあげて働く人の賃金が増え、その結果、消費が活発になって物価も上がっていく。求められるのはそんな経済の姿だろう。物価が将来どれだけ上がると考えるか、人々の期待(予想)に働きかける政策から、実需を見る政策へ。経済のかじ取りを切り替えるべきではないか」 日本の現実は「年収200万円以下の働き手が1100万人を超え、住民税が非課税となる低所得世帯の人が2400万人を数える。かつて日本経済を支えた中間層が細り、低所得層が増えた。それが、日本経済のいまの姿である」(同)。格差がますます広がり、わずかな富裕層や、アベノミクスで恩恵を受けている一部の大企業だけが「我が世の春」を謳歌しているだけである。 現代は、世界的な投資家ジム・ロジャース氏にこう言わせている。 「日本はすでに多額の政府債務を抱えており、本来であれば財政支出を減らすべきです。そもそも人口減少が急激に進む国に、新しい道路や橋を作る必要がどこにあるのか。大規模な財政支出を止めれば減税することも可能で、そうすれば国民の生活水準は改善されていく。しかし、安倍総理がやっているのはそれとは真逆。アベノミクスは今年も日本を破壊する方向に進んでいくということです」 急激な原油安でロシアがあえいでおり、アメリカもシェールガス景気に水を差された格好だ。欧州は経済不振から抜け出せず、中国の成長率の鈍化がはっきりしてきた。世界的にいつ何があってもおかしくない「90年代末と似てきた」(英エコノミスト)不安定な時代である。 株価も、不安定ながら2万円の大台に乗るのではないかと見られているようだが、現代によれば6月に最大の山が来るというのだ。 それは、アメリカのFRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長が9年ぶりに行うといわれる「利上げ」だ。これまでアメリカはゼロ金利政策をとり続けてきた。景気を刺激するアクセルをふかしてきたわけだが、それをやめてブレーキを踏めば、スピンしてアメリカ経済が失速する可能性が出てくるというのである。 そうなれば、投資家たちは株などのリスク資産に投資したカネを引き上げるリスクが高まるという。 また、もし利上げしないという判断をすればアメリカ経済が減速していることを意味するわけだから、アメリカ株の売りにつながる。こうしたアメリカ経済の余波が日本に押し寄せ、株大暴落のシナリオも考えられるというのだ。 ところで今、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が書いた『21世紀の資本』(みすず書房)が世界的ベストセラーになっている。その本が5分でわかるという記事を、現代がやっている。 こうした企画はもっとやるべきである。アメリカでは、こうした重要だが大著には必ず要約本が出て、それが売れるのだ。5分とはいかないが、1時間程度で内容のダイジェストをする記事が、日米の本を問わずもっとあっていいと思う。それが読みたくて週刊誌を買う読者も必ずいるはずだ。 この本の翻訳を手がけた山形浩生氏がこう解説している。 「本書で主張していることは、実はとても簡単なことです。各国で貧富格差は拡大している。そして、それが今後大きく改善しそうにないということです。なぜかというと、財産をもっている人が、経済が成長して所得が上がっていく以上のペースでさらに金持ちになっていくからです。ピケティの功績は、このことをデータで裏付けたことにあります」 この格差を是正するのには相続税の増税が必要だとしているが、これは日本にも当てはまるはずだ。 ポストは、日本の企業間の格差もどんどんアベノミクスで広がっていると、有名500社の企業の平均年収を調べて公表している。 これによるとフジ・メディア・ホールディングスが2012年度の1,479万円から1,506万円にアップして第1位。2位もTBSホールディングスで1,489万円から1,499万円。 3位が野村ホールディングスで1,334万円から1,488万円。4位が日本テレビホールディングスで1,491万円から少し下がって1,454万円。6位が電気機器のキーエンスで1,321万円から1,440万円。 7位が日本M&Aセンターで1,217万円から1,412万円。8位にもメディアでテレビ朝日ホールディングスが1,303万円から1,395万円。20位にもテレビ東京ホールディングスが入り1,210万円から1,221万円。 そのほかにも、20位までに損保や商社がズラッと顔を見せている。アベノミクスの「トリクルダウン」戦略とは、富めるヤツがさらに儲かれば、そヤツらがどんどんカネを使って貧しい人間にも行き渡るというものだが、そんなものは気配も感じられない。 ポストは、財務省の法人企業統計を出して、「アベノミクスが始まった2013年度に『資本金10億円以上の大企業』は経常利益を平均約34%も伸ばしたが、『資本金1000万円未満の中小・零細企業』は平均マイナス2%の減益だった」と言っている。 ポストはさらに「リストをさらに細かく見ていくと、日本の政治が明らかに権力者の取り巻きだけが利益を得る『途上国型』へと大きく退化しつつあることがわかる」としている。 円安でたっぷり利益を上げたトヨタ自動車の平均年収も43万円増の794万円、日産は67万円増の766万円にはなっているが、トヨタは13年度で1兆8,231億円の純利益を上げているのに、社員の給料アップに使った金額は約240億円、純利益の1.3%しか使っていない。 トリクルダウン効果がないことを象徴的に示すのが、自動車業界を中心に人材派遣を行っている東証一部上場の企業「アウトソーシング」で、同社の平均年収は5万円しか上がっていなくて289万円だという。 大企業はまるまる肥え太り、内部留保で貯め込み、社員には雀の涙ほどのベースアップを施し、下請けには涙も出さない。 驚くのはトヨタや新日鐵の大卒事務職や技術職の年収の高さだ。トヨタの大卒は入社7年目の29歳で約650万円、出世の早い人間は40歳課長で約1,200万円になるという。 新日鐵も平均年収569万円だが、これは高給の管理職を排除しているからで、30歳そこそこで管理職に昇格すると年収1,000万円台に近づくという。 大企業と中小とで格差が広がり、社内でも高卒と大卒で格差があり、出世するかしないかで大きく賃金格差が広がっていく。 大手商社では、大きなプロジェクトを成功させれば40代でも3,000万円に届くという。年収200万円しかないワーキングプアは、この数字をどう見るのだろうか。 こうした富める者だけをさらに富ませるアベノミクスは、日本人の大多数の貧しさの上にあることを、安倍首相は気付いてはいまい。 アベノミクスを盲目的に礼賛する大新聞やテレビは、これからますます安倍首相にすり寄っていくことであろう。週刊誌の役割は、常に弱者や貧しい者に寄り添って、政権批判をこれまで以上に強めていかなければならないはずだ。 (文=元木昌彦) 【謹告】私の友人の弟子吉治郎さんが出した『立川談志 鬼不動』(河出書房新社)の刊行記念として、新宿紀伊國屋ホールで、嵐山光三郎さん、立川志らくさん、内田春菊さん、談志さんの娘さん松岡弓子さんたちと、談志さんの「言葉」について語り合います。司会を元木昌彦がやります。本邦初演の落語「鬼不動」と立川志らくさんの落語もありますので、ぜひお越し下さい。 日時 1月16日(金) 18時半開場 19時開演 場所 紀伊國屋ホール(03-3354-0141) 木戸銭 2000円(当日券あり)「週刊ポスト」1/16・23号 中吊広告より
安倍首相ブチ切れ、池上彰×テレ東にんまり……衆院選特番の裏側
いよいよ幕を開けた2015年。杏&東出昌大、米倉涼子&一般人、菊地凛子&染谷将太など、年末年始は芸能人の結婚ラッシュとなり、今年も芸能界はにぎやかになりそうです。果たして、昨年の「ASKAシャブ中で逮捕」を超えるスクープは出るのか!? 楽しみですね。 それでは早速、12月下旬の注目記事をおさらいしていきましょう! 第1位 『ZERO×選挙』で“ブチ切れ”の安倍晋三首相、生放送後さらにヒートアップ「枝野は落ちないじゃないか!」 そんなに怒ると血圧上がるよ。 第2位 「バカな女は使うな!」池上彰起用で選挙特番独り勝ちのテレビ東京、その秘訣とは―― 優子はお気に入り。 第3位 水原希子の“股間アップ写真”が国外に飛び火! 交際報道のBIGBANG・G-DRAGONに「あんなビッチと別れて」の声 ビッチなところがいいんだよ。 第4位 元モー娘。吉澤ひとみの目に違和感……後藤真希や辻希美も疑惑の“目頭切開”とは? みんなやってるもんねー 第5位 「現場では好印象だが……」TOKIO国分太一“悪評噴出”の裏に、ジャニーズの采配ミスあった!? 本当に人気あるの? 次点 歌舞伎町激震! “元アウトローのカリスマ”瓜田純士が「ヒキオタニート」になっちゃった!? 日刊サイゾー独占!!! 次々点 『笑っていいとも!』終了で迎えたテレビの大きな転換期 カギを握る「タレント」は? いろいろあったねー
小保方晴子、佐村河内守、百田尚樹……今年もお騒がせ!【2014年週刊誌スクープBEST10】
今年もあっという間に1年が過ぎてしまった。今年を振り返れば、なんと週刊誌ネタの多かった年だろうと思う。佐村河内からSTAP細胞、小渕優子や渡辺喜美のカネがらみのスキャンダルが多発した。
ここでは取り上げなかったが、朝日新聞の慰安婦、吉田調書報道問題や、日テレの女子アナ内定取り消しなど、メディアのおかしさが噴出した1年でもあった。
日本人は忘れっぽいといわれる。2014年という年がどんな年であったのか、週刊誌のスクープ記事をもう一度読み直して考えてほしいと思う。(文=元木昌彦)
2014年週刊誌スクープ・番外
「米倉涼子が毎週泊める日本一の幸せ男 何者だ?」(「フライデー」1月10・17日号)
フライデーの張り込みスクープ。平均視聴率23パーセントと大ヒットしたドラマ『ドクターX』(テレビ朝日系)の主役で、いま乗りに乗っている米倉涼子(38)が「結婚間近」だという張り込みネタだ。
12月上旬の夕方、真っ赤な「フォード・マスタング・コンバーチブル」に乗った米倉は、所属事務所での打ち合わせ終えると、南青山の交差点へと向かった。歩道には、ビジネスバックを持った長身の男性が待っていたという。
途中、明治屋などで買い物をした後、2人は米倉の自宅マンションへ入ると、そのまま一夜を明かしたそうだ。
気になる彼氏だが、彼の友人によるとこうだ。
「リクルートの元社員で、12年8月に独立したフリーの編集者です。現在は『ホットペッパー』などの情報誌を手がけています。
同じ8月に『女性セブン』にも二人の密会を報じられましたが、それ以降、本格的に付き合うようになったようです。年齢は30代半ばで米倉さんより年下ですが、入社5年目で『ホットペッパー』の編集長に抜擢されたほど優秀な人ですよ。雰囲気は、俳優の堺雅人さんに似ています」
米倉には『ドクターX』終了後、大きなスケジュールは入っていないという。フライデーは新春早々にも、サプライズ発表があるかもしれないと書いている。
〈元木昌彦の眼〉 年末の週刊文春(1/1・8号)でも「米倉涼子が同棲する会社社長」と報じた。これで観念したのか、米倉は文春発売の翌日に事務所を通じて結婚を発表した。この情報の初出はフライデーである。この記事の正しさが証明された。
第10位
「小保方晴子さんにかけられた『疑惑』」(「週刊現代」3月8日号)
「小保方『STAP細胞』を潰せ!『捏造疑惑』噴出で得する人々」(「週刊ポスト」3月7日号)
第2の佐村河内事件か? 昨夜の友人たちとの酒席では、割烹着の“リケジョ”美人・小保方晴子さん(30・理化学研究所のユニットリーダー)が発表したSTAP細胞の話題で持ち切りだった。
普通の細胞を酸性の液に漬けるだけで、どんな臓器にもできる万能細胞が生まれるという「世紀の大発見」は、彼女がカワイイこともあってメディアが飛びつき、世界的な話題になった。彼女が着ていた割烹着の売れ行きまでがいいという。
科学誌「ネイチャー」に掲載され、世界から称賛を浴びていたが、ネットでは早くから、実験条件が異なるにもかかわらず酷似した画像が出ている「画像使い回し疑惑」が指摘され、捏造ではないかというウワサまで出ているのだ。
やっかみ半分の中傷かと思っていたら、どうもそうとばかりはいえないようである。
文春がいち早く取り上げたが、現代とポストが正反対の記事をやっているので、この2本を今週の第1位とした。
まずは“懐疑的”な現代から。
「素人目に疑問なのは、学会では論文を『間違えました、直します』と言って許されるのかという点だろう」(現代)
そこで、カリフォルニア大学デーヴィス校医学部で再生医療の研究に携わる、ポール・ノフラー准教授に聞いている。
「論文に、誤植などの小さな間違いは比較的よくあります。しかし画像の混同といった手違いは大問題であり、過去には論文撤回の理由になったこともある。本当に全体の結果に影響しないか精査しないといけません」
さらに現代は、小保方さんらが公開すべきデータを正しく公開していないと追及する。
「ネイチャー」に小保方論文のような分子生物学系の論文を投稿する際は「実験に使った遺伝子の情報を、公開の遺伝子情報データベースに登録する」という規定があるという。
だが今回の小保方論文は、正確なデータの公開が行われないまま掲載されてしまった。これでは研究成果が真実なのか、第三者が検証できないと、ケンブリッジ大学シルヴァ博士は厳しく批判する。
「データーの届出を行っていないことは最大の問題です。そのデータがあってこそ、世界中の科学者が論文の主張を確認できるのです。この手違いひとつをとっても、論文は発表されるべきではなかったと思います」
そして人々の疑念を一層深めているのが、発表から1カ月近く経ったいまもなお、世界中のどの研究所でも再現実験(追試)が成功していないことだ。
前出のノフラー准教授も、STAP細胞の発見のニュースを聞いて期待に胸を躍らせ、自ら追試を試みたという。だが、結果は失敗。ならばと自らのHPで世界の研究者に追試の成果を書き込んでくれるよう呼びかけたが、「集まったのは期待に反して『失敗』の報告ばかりだった」(現代)
ノフラー准教授は、こうも言っている。
「もしSTAPが作成されたことが確かなら──私はそう願っていますが──ほとんどの研究室では再現できないような、非常に難しいテクニックだということでしょう。私は小保方さんたちが、STAP細胞を作る『手順(プロトコル)』に特化した、新しい論文を出すことを期待します」
理研も、HPのトップに誇らしげに掲げていた小保方さんとSTAP細胞に関する記述を削除するなど、態度を一変させた世間の風当たりの冷たさは容易ならざるものになっている。
「いずれにしても、ことここに至っては、疑念を払拭する道は限られている。形勢逆転のためには、ミスの経緯を明かし、必要なデータを公表する、小保方さん自身の言葉や理研の誠実な説明が必要だろう」(現代)
これを読むと、何やら「?」がつく研究のように見えるが、ポストはそんなことはないと、小保方さんに代わって反論をしている。
ポストは小保方さんの論文に向けられた疑惑は4つあるとし、ただし、それらを冷静に分析していくと、少なくとも現段階では、『STAP細胞の発見が捏造』という批判は、完全な的外れであることがわかると書いている。
画像の使い回しについては、小保方さんの共同研究者の若山照彦山梨大学教授が、単純ミスで本筋にはまったく影響しないと語っている。
今回の発見の再現性についても、若山教授がこう話す。
「発表があってから、わずか3週間で結果が出るような甘いものではありません。96年、スコットランドの研究グループが、クローン羊の『ドリー』を作ったことを覚えていますか? 1年以上経っても誰も再現できず、ドリーの論文は捏造ではないかとさえいわれた。そんな中、私が約1年後にマウスのクローンを誕生させ、ドリー論文を再現した。 小保方さんが会見で“(STAP細胞の作り方は)手技的には簡単だ”といってしまったから勘違いされているのかもしれないが、世紀の発見がそう簡単に再現されるわけがない」
よってポストは、とにかく現段階でほぼ確定しているのは、補足論文に画像の掲載ミスがあったということだけだから、調査中だという理研や「ネイチャー」の報告が待たれるが、どの疑惑も「大勢に影響なし」といえそうなのであるとしている。
また、これだけの騒動に発展した背景には、一定の「アンチ小保方勢力」の存在が見え隠れするというのだ。
再生医療の分野には、出身学部を異にするグループが存在する。大きく分けると「医学部出身の研究者」と「それ以外(理学部、農学部、工学部出身など)」だ
。
ある医療関係者が、こう話す。
「医学部出身者の中には、遺伝子や細胞の分野とはいえ、人体を扱う医療分野で医学部出身者以外が実績を上げることを面白くないと感じている人は少なくない」
ちなみに小保方さんは早稲田大学理学部出身で、若山教授は茨城大農学部出身だそうだ。
「しかもこのところ医学部出身のグループは肩身の狭い思いをしている。昨年から医薬業界を揺るがせている、いわゆる『ノバルティス問題』である。世界有数の製薬会社『ノバルティスファーマ』(以下、ノバルティス)が販売していた降圧剤は、複数の大学医学部の論文結果を用いて『脳卒中や狭心症にも効果がある』と謳っていたのだが、それが虚偽だった。ノバルティスに都合のいい研究結果をデッチ上げた研究室には、ノバルティスから累計11億円あまりの金銭的支援が流れ込んでいた」
この事件にはとうとう東京地検が動き出し、大がかりな疑獄事件へと発展する可能性が大である。
私の友人の医者が言っていたのだが、この万能細胞が実用化されたら莫大な市場になり、日本は再生医療先進国として力を持ち、一大産業に育つ可能性が高いと、医療関係者の間では大変期待が高いそうである。
当然ながら、そこには考えられないほどのカネが動くことも間違いない。
ポストによれば、政府は13年度から10年間で、再生医療に対し約1,100億円もの支援を決めている。今、この支援金をめぐって、研究機関で争奪戦が行われているという。
「早速、14年度、iPS細胞研究に政府から150億円の支援が下りることが決まっています。そのほとんどは山中伸弥教授のいる京大の研究所に払われる。再生医療で結果を出せば、莫大な研究費が入るわけです。もし、STAP細胞が認められれば、理研や小保方さんグループに大量の研究費が投入されることになり、その分他の研究機関に回らなくなる。それを阻止する動きがあってもおかしくない」(医療関係者)
世紀の大発見か捏造か。小保方さんの愛くるしい笑顔を見ていると捏造などとは思えないが、早く白黒をつけてほしいものではある。
〈元木昌彦の眼〉 ご承知の通り小保方のSTAP細胞発見は世紀の大捏造になってしまった。釈明記者会見で彼女がいった「STAP細胞はありま~す」は流行語にまでなったが、世界中から注目されたSTAP細胞は、小保方の上司である笹井氏の自殺という悲劇と、彼女の理研退職で一応幕を閉じた。週刊誌のスクープからではなく、ネットからSTAP細胞への疑惑が噴出して、世紀の大発見のウソが暴かれていった。あらためてネットの威力を思い知らされた「事件」でもあった。
第9位
「氷川きよしの『ホモセクハラ』『暴力』『創価学会強要』地獄」(「週刊文春」5/8・15号)
氷川がホモではないかということは、かつてフライデーが報じたことがあるが、今度は文春が、氷川のマネジャーだった人物に決定的な「証言」をさせている。
このマネジャーは後藤光雄氏(仮名・20代)で、昨年10月に氷川の所属する長良プロに入り、今年1月に氷川の担当になったという。彼がこう話している。
「氷川さんは自宅では女性物のTシャツにピンクのショートパンツという格好。女性用のパンティも何十枚もあり、基礎化粧品はシャネルで揃えている。私は隅々まで掃除するのが仕事ですから、そういうものも目に入る。どういう生活をしているのかと、不安に思いましたが、氷川さんは意に介していないようでした。それどころか、街中を走っている時、ガチムチ系の外国人や体育会系の男性を見かけると、車のパワーウインドウを目の高さまで下ろして、『イケメーン?』とはしゃいだりして、じっと観察していた。そういう話題の後は、『あんた、本当にノンケなの?』などと訊かれ、ストレートの私はかなり面食らいました。(中略)
ある日、車内で二人きりになったとき、後部座席から身を乗り出した氷川さんが、『ねぇ、サオ(陰茎)が大きいほうがいいよねぇ』と耳元で囁くのです。『外人のって大きいよねぇ』と。正直、気持ちが悪かった。どう答えていいか分かりませんでした」
実は、4月29日付の東京スポーツが「氷川きよし恐喝被害」という見出しで、事務所が元従業員から数億円を揺すられて困っているという「一方的にも見える内容を報じた」(文春)のだ。だが事実は違うというのである。
文春、は後藤氏に接触して先のような談話をものにした。事実関係は、後藤氏は氷川によるセクハラ、暴力によってストレスがたまり、4月20日をもって職場を離れたのだ。だが現在も不眠状態が続き、都内の病院の精神科でうつ状態と診断され、服薬などの治療を続けているそうである。
「就任初日のことです。車の中で、『オトコに興味あるの?』と……。社内で噂は耳にしていましたが、本当にドキッとしました」(後藤氏)
“口撃”もたびたびされたという。
「二月中旬頃には、毎日のように『死ね!』とか『この障害者』とか、罵倒されるようになったのです。氷川さんは、実はかなり口が悪く、ファンの女性のことも『ババア』と呼んでいる。あまりにえげつない“裏の顔”でした」(同)
もう一つ後藤氏を追い詰めたのは、創価学会への執拗な勧誘だったそうだ。公言こそしていないが、氷川が学会員だというのは有名な話だという。13年の元日には、機関紙「聖教新聞」の一面を飾っている。
文春によれば、氷川が暴力を振るうようになった背景には、彼の才能を見出した恩師である長良プロの先代会長長良じゅん氏が一昨年他界したことがあるそうだ。
そして、4月3日の夜、氷川一行が岡山全日空ホテルにチェックインした直後に事件が起きた。
「宿泊するスイートルームのある十四階でエレベーターが停まり、私は氷川さんが降りるのを待つため、エレベーターの『開』ボタンを押そうとしたのです。すると突然、後から頭を殴られた。激痛が走りました。(中略)さらに、『そんなことはどうでもいいんだよ、おめえよぉ!』と叫びながら手にしていたペットボトルを投げつけてきた」
後藤氏は会社に窮状を伝えるための証拠にするため、暴行の様子を録音するようになっていた。文春が確認したが、このときの音声は「まさに“地獄のイジメ現場”そのものだ」ったという。
この日、後藤氏は退職を決意した。
しかし、彼が部長に送った当てつけのメールは“恐喝”と間違われかねないものだった。
「とにかく永川さんに謝罪してもらいたいという一心で、『もう絶対許せませんので、1.2億ぐらいほしいぐらいです』などという突拍子も無いメールを送ってしまったのです」
文春も「確かに後藤氏が会社に送ったメールは、恐喝と間違われかねない軽率な内容だった」と書いている。「しかし、氷川のハラスメントの事実が帳消しになるものでは決してない」(文春)
演歌を再興させた“星の王子さま”氷川きよしは、後藤氏が言っているような“暴君”なのか。芸能界ではありがちな話ではあるが、これまでの演歌歌手にはなかった清々しさを売り物にしてきた彼には、致命傷になりかねないスキャンダルではある。
〈元木昌彦の眼〉 自分が同性愛であることをカミングアウトする芸能人は多くなってきた。それは素敵なことだと、私は思う。愛の形は様々であっていい。だがこの氷川のケースのように、マネジャーへの暴力はいけない。夢を売るのが芸能人の役割のひとつだとすれば、その夢を壊すのは同性愛ではなく、理不尽に弱い者へ振るう暴力であることを、氷川は知ったほうがいい。
第8位
「村上春樹が酩酊した『ドイツ大麻パーティ』の一部始終」(「アサヒ芸能」8/14・21号)
日本でもマリファナを解禁せよという声は以前ほどではないが、一部に根強くある。だが自制心のない連中がマリファナを吸って自動車を運転することを考えると震えがくるのは、私だけではないだろう。
そう思っていたら作家の村上春樹氏がアサヒ芸能の「袋とじ」になっているではないか。表紙にはだいぶ若い村上氏がややトロンとした表情で写り、その下に「『ノルウエーの森』を生んだ『大麻パーティ』を発掘スクープ!」と書いてある。
アサ芸と村上春樹という取り合わせは珍しい。世界的に大麻解禁の流れにある中で、いまさら大麻疑惑でもないだろうとは思うが、取り合わせの妙で今週の第1位に推す。
ときは奇しくも『1Q84』(新潮社)ならぬ1984年。「BRUTUS」(マガジンハウス)の取材のために訪れたドイツ・ハンブルクでのことだそうである。
撮影兼案内係を務めたのがドイツ人元フォト・ジャーナリストのペーター・シュナイダー氏で取材は1カ月ほどだったという。
某日、村上氏たちはハンブルクの郊外にある廃駅を利用したクラブを取材することになった。現地のコーディネーターがアレンジしたもので当初はカメラマンだけが出向くという話だったが、村上氏も同行したいといい出した。
しかし、現地へ行ってみると運悪くリニューアル中で見学させてもらえず、帰ろうとしたところ、クラブのオーナーであるドイツ人妻が、自分の家に寄って行かないかといってくれたので、4名が寄らせてもらったという。
最初はビールで乾杯し、当初はクラブ経営のことなどが話題に上っていたが、やがてオーナーがこう切り出した。
「よかったら一服やらないか?」
この一服はタバコではなくマリファナのことである。当時ドイツでも大麻は違法だったが、クラブ経営者など業界人が自宅でマリファナやハッシシ(大麻を固めた合成樹脂)をプライベートに楽しむのは日常茶飯事だったという。
通訳が村上氏に伝えると、村上氏は事もなげにこう答えた。
「ええ、大麻なら、僕は好きですよ」
そのときシュナイダー氏が撮影した何点かの写真が「袋とじ」の中にある。
彼がフイルムを整理していたところ出てきたのだそうだ。それまで、その日本人がノーベル文学賞候補にまでなった村上春樹と同一人物だったとは気がつかなかったという。
シュナイダー氏はなぜ今、このことを公表しようと思ったのか。
「別に彼を落としめようとか、批判しようとかという気持ちはない。彼の作品にはマリファナを扱う描写も出てくるし、本人もマリファナ好きを公言してるのはファンなら知っている。その彼が若い時にこのようにマリファナを楽しんだということを彼の“ファン”も知りたいと思ったからだ」
たしかに、その経験は彼の作品に存分に生かされている。10年に発表された『1Q84』の中で、主人公、天吾は父の入院先である病院の看護師たちとパーティーをやった後、その中でいちばん若い女性である安達クミにマリファナを勧められる。その感覚をこう表現している。
「秘密のスイッチをオンにするようなかちんという音が耳元で聞こえ、それから、天吾の頭の中で何かがとろりと揺れた。まるで粥を入れたお椀を斜めに傾けたときのような感じだ。脳みそが揺れているんだ、と、天吾は思った。それは、天吾にとって初めての体験だった~脳みそをひとつの物質として感じること。その粘度を体感すること。フクロウの深い声が耳から入って、その粥の中に混じり、隙間なく溶け込んでいった」
『うずまき猫のみつけかた』(新潮社)の中でも村上氏はマリファナについてこう書いている。
「経験的にいって、マリファナというのは煙草なんかよりも遙かに害が少ない。煙草と違って中毒性もない。だからマリファナをちょっと吸ったぐらいで、まるで犯罪者みたいに袋叩きにあうなんていう日本の社会的風潮は、まったく筋が通らないのではないか」
これだけマリファナ擁護論を展開しているのに、アサ芸が村上春樹事務所に事実関係を確認すると、事務所から連絡を受けたという都築響一という編集者が出てきて、
「取材旅行中、僕は常に村上さんと一緒に行動していたので、こちらの知らない場所で大麻というのは、写真を含めてありえないかと思います」
と答えている。
常にいたという都築氏の姿はシュナイダー氏の写真の中には発見できなかったと、アサ芸は書いている。
われわれが若い時はマリファナやハッシシ、LSDなどは簡単に手に入り、新宿の喫茶「風月堂」はそうした連中の溜まり場であったし、罪悪感などなかった。
だから大麻を解禁してもいいとは、私は思わないが、大作家になると、こうした過去の微笑ましい外国での経験でも、認めるわけにはいかないのだろうか。
〈元木昌彦の眼〉 この報道の後を追う週刊誌は当然ながらどこもなかった。いまでも真偽の程はわからない。村上側がこの記事に抗議したという話も、私は聞いていない。やしきたかじんとその妻との純愛ノンフィクション『殉愛』を書いた百田尚樹のその後の「騒動」についても週刊誌は最初ほとんど書かなかった。作家が最大のタブーになってしまっていいいのか? 出版社系週刊誌の最大のウイークポイントはそこにある。
第7位
「ミス東洋英和が日テレの女子アナ内定を取り消された理由」(「週刊現代」11/22号)
NHKの朝のドラマ『花子とアン』でも注目を集めた東洋英和女学院大学の4年生、笹崎里菜さん(22歳)が内定していた日テレから内定取り消しを受け、提訴したというのである。
彼女は平成25年9月12日に日テレから、平成27年度のアナウンサー職の採用内定を受けた。
この笹崎さんの存在は、「女子アナ通」の間ではすでによく知られていたそうだ。彼女は「2011年ミス東洋英和」に輝き、ファッション誌の読者モデルとしても活躍していた。
その彼女がなぜ、日テレの内定を取り消されたのだろうか?
今年3月、すでに内定者として研修を重ねていた笹崎さんが人事担当者に電話で告げたことが騒動のきっかけになった。
「以前、母の知り合いの関係者が経営している銀座の小さなクラブで、お手伝いを頼まれて短期間アルバイトをしていたことがありますが、そういうものは大丈夫なのでしょうか」
こうしたことを言わずに女子アナになる者が多いのに、彼女は正直に「過去」を話したのだ。だが、日テレの人間は笹崎さんにこう告げたという。
「(アルバイトのことを)上に上げたら問題になってしまった。明日は人事部の部長、部次長から話がある。ホステスのバイトをしていたことがバレたら、週刊誌には好きに書かれる。笹崎は耐えられるか。これまで研修でがんばってきたことは知っているけど、それはいったん置いて、よく考えてほしい」
さらに週刊誌などで騒ぎになったら、父親のところにも取材が殺到して、父親が会社を辞めなければならなくなるかもしれないとも言ったそうだ。父親にそのことを話したら、心配するなと言われた。当然である。
しかし4月2日、日テレの部長から内定取り消しが伝えられた。
彼女がホステスのアルバイトをしていた銀座のクラブというのは、スナックのようなこじんまりとした店で、彼女の母親の知人もカウンターの中で働いていた。
特定社会保険労務士の今中良輔氏が疑義を呈する。
「この裁判は彼女一人のものではなく、社会に対する問題提起の側面を持っています。ホステスのアルバイトをしていた過去は、女性の将来を塞ぐことがあっていいのか。個人的にはあってはならないと思う。司法がどのような判断を下すか注目しています」
一読して、何をバカなことを日テレは言っているのかと思わざるを得ない。氏家斉一郞氏が生きていたら、こんなことはなかったに違いない。
今どき、ホステスやキャバクラのアルバイトをしていたから入社させないというのは、そうした職業を差別しているからではないのか? 夏目三久(日テレ→フリー)のように、入社してからコンドームの箱をもった写真が写真誌に載り、騒ぎになったトラウマが日テレにはあるのだろうが、ケツの穴の小さいテレビ局である。
笹崎さんは、アナウンサーになる夢をあきれめることはどうしてもできないと言い、こう続ける。
「この裁判は世間の皆さんに、女子アナという仕事について考えていただく機会にもなると思っています。大学時代にホステスのバイトをしていた女子アナは、受け入れてもらえないのでしょうか? 私の経歴は、裁判によって公になります。その上で、もし私が女子アナになれたとしたら、批判も含めて、過去はすべて引き受けるつもりです」
裁判は11月14日から始まる。これだけ強い意志を持った女性なら、いい女子アナになると思うがね。
〈元木昌彦の眼〉 この話題は日テレ以外のワイドショーも取り上げたが、そのほとんどが日テレ側に厳しいものだった。当然である。どうやら和解が成立しそうで、日テレ側が彼女を受け入れる流れになっているようだ。しかしこの騒動で日テレのイメージダウンは相当なものがある。これで彼女を入社させてもアナウンス局に配属しなかったら、このテレビ局は女性から見放される。重大な判断ミスをした日テレの上層部はそろって辞職すべきではないのか。それほど責任は重い。
第6位
「女優・児島美ゆきが初告白『高倉健さんと暮らした300日』」(「週刊現代」1/3・10号)
女優・児島美ゆきが高倉健と交際していた日々を告白している週刊現代を、MAISON TROISGROSのインスタントコーヒーを飲みながら読み始めた。
「男女の仲になったデートの日の別れ際、彼が、『これからは僕のことを剛ちゃんと呼んでください。本名は小田剛一ですから』と言ったんです。二人の仲を縮めたかったのか、それとも『俳優・高倉健』ではなく、一人の男として私と付き合いたかったのか、それはわかりません」
とうとう出てきたという気持ちと、なぜ児島なんだという気持ちがない交ぜになる。健さんだったら、大原麗子か吉永小百合との「忍ぶ恋」が似合うのに……。
そういえば、歌手の石野真子を熱心に口説き落としたと書いた週刊誌もあった。女性の好みは人それぞれ。健さんはこういうタイプが好きなのかもしれない。
当時、健さん52歳、児島31歳。児島がテレビドラマ『北の国から』で富良野のスナックのホステスを演じたのを健さんが見て、田中邦衛を介して「会いたい」と伝えてきたという。日に何度も電話があり、「うちにコーヒーを飲みに来ませんか」と誘われ、彼のマンションへ行く。結ばれたのは2度目に訪れたとき。
「寝室の大きなダブルベッドで。彼は体は筋骨隆々でしたが、やさしい人でした」(児島)
彼女は彼のためにステーキや生姜焼き、肉じゃがなどを作る。黙々と食べる健さん。終わると、いつの間にか食器を洗ってくれていた。
「とにかく、時間のあるときには、映画を観るか(マンションに小さな映写室があった=筆者注)、腹筋や腕立て伏せをしているか、あとは洋服の整理(笑)。セータを畳んだり、シャツなどを並べたり、整理整頓が趣味のような人でした」(同)
健さんは警察無線や消防無線を聞くのが好きだったという。児島が茶目っ気たっぷりにヌードダンサーの真似をすると、顔をほころばせ手を叩いて子どもみたいに喜んだそうだ。
「ある日、彼に膝枕をしてあげたら、彼はふいに、『幸せだなぁ。こんなに幸せでいいのかなぁ……』驚いて彼の顔を見ると、目に涙まで浮かべていたんです。膝枕ぐらいで泣くなんて、と驚くと同時に、『普通の幸せを、こんなに恋しいほど求めている人なんだ』と、私まで切なくなって……」(同)
スーパーへ一緒に行って、児島が買い物袋を抱えてクルマまで戻ってくると、こう言ったそうだ。
「剛ちゃんはこういうことがしたかったんだ」
それほどまでに彼の生活は孤独で、ストイックだったと児島は話している。
そんな生活が300日続いた。だが2人のことが芸能誌で報じられ、健さんから「しばらく会えない」と言われ、世間体が大事で私を捨てたと怒った児島は、彼のもとから去る。そして30年がたち、「あなたの気持ちをわかってあげられなかった」という詫び状を送った直後、高倉健の悲報が届く。
児島は「人間・小田剛一も、本当に優しく、温かい人だったことを知ってほしい。面白くて気取らず、人間くさい、愛すべき人でした」と語る。
こうした健さんとの思い出を持つ女性はほかにもいるはずだから、名乗り出てほしい。人間・高倉健をもっともっと知りたくなってきた。
〈元木昌彦の眼〉 高倉健の死は日本中に衝撃を与えた。私のように学生時代から『昭和残侠伝』を見てきた熱狂的なファンは、何か体の芯が抜け落ちるような気持ちが未だに続いている。男の生き方を背中で教えてくれた俳優だった。だが昭和の男だった健さんの女性の好みは、以外にも楚々たる美女ではなくどこか三枚目的な女性だったというのも、なにやら健さんらしいなと、思うのだ。
第5位
「林真理子『夜ふけのなわとび』」(「週刊文春」12/11号)
今週の第1位は林真理子の連載コラムに捧げる。
「一ヶ月近くたって巷でこれだけ話題になっても、どの週刊誌も一行も報じないではないか。やしき氏(やしきたかじん=筆者注)の長女がこの本によって、『名誉を傷つけられた』と提訴し、出版差し止めを要求した。が、相変わらずテレビも週刊誌も全く報道しない。私はこのこともすごい不気味さを感じるものである。この言論統制は何なんだ! 大手の芸能事務所に言われたとおりのことしかしない、テレビのワイドショーなんかとっくに見限っている。けれど週刊誌の使命は、こうしたものもきちんと報道することでしょう。ネットのことなんか信用しない、という言いわけはあたっていない。そもそも、『やしきたかじんの新妻は遺産めあてではないか』と最初に書きたてたのは週刊誌ではなかったか」
林真理子が文春の連載「夜ふけのなわとび」で怒る怒る。週刊誌が自分の役割を果たさないのはどういうこっちゃ! と真っ当に怒り狂っている。
この騒動は、百田尚樹という物書きが幻冬舎から出した『殉愛』という本についてである。
先日亡くなったやしきたかじんの闘病の日々と、彼を献身的に介護する新妻との日々を描いた“ベストセラー狙い”のお涙ちょうだいノンフィクションだ。
だが、この新妻というのが実はイタリア人と結婚していて、「重婚」の疑いがあるというのである。
また、やしきの友人でもあり彼の楽曲に詞を提供していた作詞家の及川眠子が『殉愛』の中で資料として提示されているたかじん「自筆」とされるメモの字の筆跡について、真贋を疑問視するツイートをしたのだ。
「『殉愛』の表紙に感じたすっごい違和感。なんでだろーと思っていたが、はたと気付いた。たかじんってあんな字を書いたっけ? もっと読みづらい変ちくりんな字だった記憶が・・・。病気になると筆跡まで変わっちゃうのかな?」
その上、やしきの長女が幻冬舎に対して「出版差し止めと1100万円の損害賠償を求める」訴訟を東京地裁に起こしたのである。
これに対して百田は「裁判は面白いことになると思う。虚偽と言われては、本には敢えて書かなかった資料その他を法廷に出すことになる。傍聴人がびっくりするやろうな」とツイートしたものの削除してしまった。
Web上のまとめサイトでは「百田尚樹氏はほぼ作家生命終了」とまで断定されてしまっている。
これだけ話題になっている本についての「醜聞」は週刊誌の格好のネタであるはずだ。だが、不可解なことに出版社系はどこも取り上げないのだ(『サンデー毎日』と『週刊朝日』はやしき氏の長女のインタビューなどをやっている)。
週刊現代を出している講談社は『海賊とよばれた男』が大ベストセラーになっている。週刊新潮は百田の連載が終わったばかり。タブーは他誌に比べてないはずの文春だが、林によると「近いうちに連載が始まるらしい」から、これまた書かない。
小学館の週刊ポストも、百田の連載をアテにしているのかもしれない。
私がここでも何度か言っているが、いまやメディアにとってのタブーは天皇でも創価学会でも電通でもない。作家なのである。
昔「噂の真相」という雑誌が出ていたときは、毎号作家についてのスキャンダルや批判が載っていたが、いまや作家について、それもベストセラー作家のスキャンダルを読みたくても「サイゾー」以外どこを探しても見つからない。
「私は週刊誌に言いたい。もうジャ-ナリズムなんて名乗らないほうがいい。自分のところにとって都合の悪いことは徹底的に知らんぷりを決め込むなんて、誰が朝日新聞のことを叩けるであろうか」(林真理子)
私も週刊誌OBであるから、恥ずかしくて仕方ない。ネットで現場の記者や編集者は、そんな状況を打破しようとしているというコメントを見つけた。
「文春や現代、ポストの週刊誌編集部には関西生まれの記者や編集者も多く、彼らは子供の頃からたかじんの番組に慣れ親しみ、親近感を持っており、今の状況は許せないと思っている。若手記者たちは『企画を出しても通らない!』と憤っています。中には仕方なく自腹で取材に動いたり、情報収集をしはじめる記者もいます。ある版元の、ノンフィクションが得意の敏腕編集者の下には、こうした情報が続々と集まっていると聞きました。騒動の裏側が本格的に暴かれる日も近いのでは」(夕刊紙記者)
これに似たようなことを私も聞いているが、どこまでやれるかはなはだ心許ない。この本の版元は見城徹という人間がやっている幻冬舎で、彼の裏には芸能界の「ドン」といわれている周防郁雄がいるそうだ。百田はベストセラー作家であり、安倍首相のお友達である。
この程度の「圧力」に屈して、この「事件」を書かないとしたら週刊誌など廃刊したほうがいい。
私は百田の『永遠の0』を30ページほど読んで捨ててしまった程度の読者である。したがって、百田の物書きとしての才能をうんぬんすることはしない。だが、「文は人なり」である。安倍首相のような人間と親しいことをひけらかし、下劣な発言をたびたび繰り返している人間のものなど読むに値するわけはない。
〈元木昌彦の眼〉 ここに書いてあるように週刊文春で百田の連載が年末から始まった。出版不況の中で売れる数少ない作家の存在は、どこの出版社でも貴重である。批判めいたことを書いて連載をやめられたらどうしようと考えるのは無理はない。作家によってはこれまで出していた本をすべて引き上げてしまうケースも多くある。だが、ノンフィクションと銘打ちながら、片方の当事者の一方的な話だけで作り上げた本に対してものをいうことが出来ないとすれば、ジャ-ナリズムの看板は下ろすべきであろう。今年も文春が頑張っていただけに残念である。
第4位
「ユニクロ・柳井が封印した『一族』の物語」(「週刊現代」8/30号)
佐野眞一氏の『あんぽん』(小学館)や橋下徹大阪市長について書いた週刊朝日の記事を持ち出すまでもなく、功成り名を遂げた人の「出自」を暴くというのが、週刊誌ノンフィクションの常道である。
そこには、もはやあなたは公人なんだから出自も含めてすべて開示されても致し方ないという、メディアや書く側の一方的な思い込みがあるのではないか。今回もユニクロ柳井正氏の「地元嫌い」を親族の出自と絡めてルポしているが、柳井氏を知る上でこうした情報がどれだけ役に立つのか、私には読み終わってもよくわからなかった。
柳井家の親族の1人がこう話す。
「土地から離れようとしているだけでなく、一族からも距離を置こうとしているのは寂しい」
正氏の父・等さんがユニクロの前身となった「小郡商事」を作ったが、実は、もう一つの親族が作った「小郡商事」があったというのである。もう一つの「小郡商事」は、等さんの兄で正の伯父・柳井政雄氏が作ったものだという。
この政雄氏は1908年、現在の山口市で牛馬商を営む父柳井周吉氏の4男として生まれた。
「政雄氏の著書『同和運動の歩み』によれば、尋常高等小学校中退後、炭鉱産業が隆盛だった宇部市の炭鉱で働くなどして青年期を過ごす内に、極道の世界に足を踏み入れたという」(現代)
政雄氏の息子、澤田正之氏はこう言う。
「46年に山口市議に当選してから政界にも人脈が広がった。やくざにも警察にも顔が利くので、重宝がられる。だから周囲からいろいろ頼まれごとをするのですが、断らない人だね。(中略)そうこうするうちに様々な事業に関わるようになっていった。地域で困っているような人を自身が経営する会社で引き受けて面倒も見ていました」
親分肌で面倒見がいい、東映任侠映画に出てくるような人物だったのだろう。伯父の政雄氏や父親の等氏は地域に根差した家族的経営を貫いていった。
しかし柳井正氏は、等氏らが行ってきた家族的経営を批判することから実業家の歩みを始めたという。
正氏は著書『一勝九敗』(新潮社)の中で「義理人情に厚く、生業家業といった観点で仕事をし、企業家とか経営者といった観点はなかった」と彼らのやり方を評している。
しかし、そうした正氏の経営姿勢が功を奏し、広島県でユニクロ1号店を誕生させてから今年で30年、当時年商1億円ほどだった「小郡商事」は、今や1兆円を売り上げる世界のユニクロへと成長したのだ。
ユニクロの前身となった紳士服開業の地は今は空き家で、かつてそこに本社が置かれていたことを示す痕跡はないという。どういう理由で正氏が「故郷を捨て」たのかはわからない。それを彼自身の口から聞いてみたいものである。
〈元木昌彦の眼〉 この記事はどう評価するか難しい。ノンフィクション作家の吉田司は私に、柳井の出自を書いた現代はすごい、よくできたなといった。だが、私には柳井という人間を描くのにそこまで必要なのか、考えあぐねている。昔、本田靖春さんに美空ひばりを書いてもらった。私は本田さんに、美空が在日だという「噂」が以前からあるが、それをぜひ彼女に聞いてほしいと頼んだ。その時本田さんは、キミが美空に手紙を書き話してくれと頼んで、彼女がいいといったら聞こう。だが、彼女がそれについては話したくないというのであれば、取材する側は、それを無視してまで聞く権利はない。僕はそういう取材はしたくない私にいった。そういう本田さんの取材方法をとらえて、本田は優しすぎるから突っ込みが足りないのだという批判をする人間もいる。だが、いま私はこの記事を読んで、もう一度本田さんのいった言葉の意味を再び考えている。週刊誌をやる人間たちにも考えてもらいたいテーマである。
第3位
「さらば器量なき政治家『渡辺喜美代』議士」(「週刊新潮」4/3号)
みんなの党・渡辺喜美代表のカネがらみのスキャンダルだ。まずはこのコメントから。
「日本維新の会とみんなの党の連携話が渡辺さんから入ってきたのは12年3月。その頃、私が検査入院していた慈恵医大病院の特別室に、渡辺さんは人目も気にせず一人でやってきて、『次の総選挙で、維新と全面的に選挙協力をすることになりました。両党で100人以上は当選する可能性がある。ついては20億円ほどお借りできませんか』と頼んできたのです。確かに20億円は大金ですが、当時の腐りきった民主党政権に終止符を打ち、この20億円が日本再生のためになるのならと思い、支援するつもりでいました。しかし、ご存知の通り、みんなの党と維新の会の連携はご破算となり、渡辺さんからは『5億円でいいことになりました』と連絡が入ったのです。選挙の1ヵ月前の11月21日、2年前と同じ口座に、5億円を私の個人口座から振り込みました。ただ、前回の3億円の時と違うのは、彼から借用書が送られてこなかったこと、そして18人が当選した後も、礼の一つもなく、連絡まで絶えてしまったことでした。私が彼に幻滅し始めたのは、おそらくこの頃のことです」
こう渡辺代表(62)のことを非難するのは、渡辺のスポンサーだった吉田嘉明DHC会長(73)である。
吉田会長が1972年に創業したDHCは化粧品、サプリメントなどを扱う総合メーカーで、総売上高は約1140億円になる。
このスクープは大新聞が1面で追いかけ、党内からは代表を辞任せよという厳しい意見が相次いでいる。
吉田会長率いるDHCは天下り官僚を1人も受け入れていないそうだ。彼の持論は、霞ヶ関、官僚機構の打破。それこそが今の日本に求められる改革であり、それを託せる人が、彼の求める政治家だから、声高に脱官僚を主張していた渡辺善美に興味を持つのは自然のことだったという。少なくとも5年前までは。
吉田会長は渡辺の土地を買い上げてやったり、10年7月の、結党以来2度目の国政選挙である参院選を控えて「渡辺さんから選挙資金の依頼がありました。『参院選のための資金を貸してもらえないでしょうか。3億円あれば大変助かります』と申し出があった」ため3億円を貸したり、総選挙前には5億円も渡し、しかも借用書も取っていないというのだ。
選挙後はなんの連絡もなかったが、今年2月9日に渡辺が突然訪ねて来て、自宅地下のカラオケルームに招き入れると、彼はいきなり土下座したというのである。そして「会長、いろいろとご迷惑をおかけしました。許してください」と、蚊の鳴くような声で詫びたという。
吉田会長は、自分の怒りを鎮めようという「芝居」だったのではないかと話している。
これを読む限り、渡辺氏はあまりにも身勝手で恩知らずと思わざるを得ないし、政治資金として記載していないというから、政治資金規正法に引っかかるのではないか。
それについては後述するが、渡辺氏といえば、妻の尻に敷かれていることでも有名だが、吉田会長はこんなエピソードを話している。
吉田会長に会うときは大抵、妻のまゆみさんが一緒だったという。
「渡辺さんは心底惚れていて、何かあればいつも白旗を掲げていました。ある時、まゆみさんが渡辺さんと女性番記者との仲を疑って離婚話にまで発展したことがあった。その時、渡辺さんはふらりと一人で私の家にやって来て、うちのカラオケルームで森進一の『冬のリビエラ』を熱唱していったのです。『男って奴は~』という節に力を込め、歌い終わったあと、彼は力なくこう言いました。『今はただ、お怒りが鎮まるのを待つのみです』代表であり夫である渡辺さんがこれですから、党内の議員や秘書も、まゆみ夫人に嫌われたら万事休す、といったところだったのでしょう」
5億円は選挙の1カ月前の11月21日、2年前と同じ口座に、吉田会長の個人口座から振り込んだ。その後、4回にわたって計330万円ほど返金されているから、現在の残高は5億4986万1327円だそうである。
この問題については、朝日新聞(3月27付)朝刊で、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士がこう語っている。
「選挙資金だった場合、たとえ借入金だったとしても選挙運動費用の収支報告書に記載がなければ、公職選挙法違反に問われる可能性がある。政治活動の費用だった場合は、政治資金収支報告書に記載がないと政治資金規正法違反にあたる可能性がある。使途が選挙や政治活動に無関係だったとしても、吉田会長は12年の5億円について担保や返済期限が設定されず、借用書もなかったとしており、贈与と認定されて税務上の問題が指摘される可能性が浮上する。これを寄付とみなした場合には政治資金規正法が定める寄付額の制限を超える可能性もある」
政治とカネの話はこれまでも無数にあった。有り余ったカネを使って政治家のスポンサーになり、フィクサー面をする実業家にも辟易するが、カネ欲しさにたかる政治屋は最低である。
こんな人間が官僚打破などできるわけはない。渡辺氏は、仮に法の裁きを受けなかったとしても、代表の座を降り一政治家として再出発するしか残された道はないこと、言うまでもない。それに、今の奥さんとは別れたほうがいいのでは?
〈元木昌彦の眼〉 今年も政治家のカネがらみのスキャンダルが多く出た。なかでも渡辺のは金額的にも大変な額である。その説明も十分にしない(出来ない)ために有権者からも疎んじられ、年末の選挙であえなく落選してしまった。もともと政党を率いる器などなかった男が、父親の七光りで祭り上げられていただけなのだろう。選挙中、渡辺より目立っていた奥さんの尻の下に敷かれているのがお似合いだと、思わざるを得ない。
第2位
「『小渕優子』経産相のデタラメすぎる『政治資金』」(「週刊新潮」10/23号)
昨日(10月20日)2人の大臣が辞任した。どちらも、週刊誌が報じたことがきっかけだった。
安倍首相にとって内閣改造の目玉として指名した小渕優子と、そのデング熱ならぬテングのような振る舞いでひんしゅくを買った松島みどり法相である。
今週のフライデーが、松島の「イヤミな全言動」を報じている。この記事が辞任に追い込んだわけではないが、松島という人間性がよく出ているので取り上げてみた。
松島氏が批判されたのは、以下のようなことである。自らの選挙区の祭りでうちわを配ったことは公職選挙法に触れる。都内に住んでいるのに赤坂の議員宿舎に入居し、週末には自宅に帰っている。襟巻き着用が認められていないのに、ストール着用で参院本会議に出席した。
フライデーいわく「あの非常識の塊のようなアントニオ猪木ですら、議場ではトレードマークの赤いマフラーを外す」というのに、だ。
ご本人は東大出というのが誇りだそうだが、滑り止めで受けた早稲田大学政治経済学部には落ちている。しかも、あの朝日新聞出身だ。
失礼な言い方になるが、もともと法務大臣にはあまりいい人材が配されたことはないが、この人は、歴代の中でもワースト3に入るのではないか。女性登用と意気込んだ安倍首相だが、しょせんは男女問題ではなく、能力あるなしを見極めることが肝要なのだ。
「松島氏をめぐっては、今月7日の参院予算委員会で、民主党の蓮舫氏が松島氏の政策が書かれたうちわを選挙区内のお祭りで配っていたことを『寄付にあたり違法だ』と追及。松島氏は『うちわのような形をしているが、討議資料だ』と反論したが、選挙区内の有権者への寄付を禁じた公職選挙法違反の疑いがあるとして民主党が刑事告発していた」(朝日新聞10月20日付より)
安倍首相、に人を見る目がないことがよくわかる。
さて今週、堂々の第1位は、将来の総理候補と持ち上げられている小渕優子経産相(40)に、週刊新潮がスキャンダルの洗礼を浴びせた巻頭特集である。
それも「政治資金規正法」の疑いありというのだから、読んですぐに、彼女にとっても安倍政権にとっても国会対応は苦しいものになりそうだと思った。
まずは、新潮の内容を紹介しよう。10月8日朝、日本橋浜町にある「明治座」に「小渕優子後援会女性部大会」のご一行様が、次々にバスを連ねて到着したという。その数ざっと1,000人超。
この観劇会は毎年行われていて、明治座側は切符代を3分の2ほどに値下げして出していると話している。S席は通常1万2,000円だから1枚8,000円ほどになる勘定だが、たとえば2010年分の政治資金報告書で、小渕後援会が群馬県選挙管理委員会に届けたのは「観劇会」として372万8,000円だけ。これでは1人あたりの切符代は3,700円程度にしかならない。
「一方で支出を見ると、組織活動費の『大会費』扱いで、844万円余りが『入場料食事代』として明治座に支払われたことになっている。その結果、実に470万円もの差額が生じているのだ」(新潮)
小渕は政党支部として「自民党群馬ふるさと振興支部」という団体があり、そこからも10年10月1日の日付で約844万円が支払われている。新潮が領収書のコピーを取り寄せたところ2枚の領収書は連番だから、合計1,688万円の支出を二等分して届けたとわかる。
これにより、収入との差額は1,316万円に広がってしまうことになるのだ。地元の支援者の票がほしいために送り迎えして観劇させ、飲み食いまでさせて手土産のひとつも持たせることは、昔なら地方のどこでも見られた光景だった。
だが、今は政治資金の使い方に厳しく網がかけられ、政党助成金制度までできているのである。これについて新潮で、神戸学院大学法科大学院の上脇博之教授がこう話す。
「1~2万円なら会計ミスで通るかもしれませんが、これだけ巨額では見逃すわけにはいきません。報告書の不記載ないし虚偽記載にあたり、それを行った者や、場合によっては団体の代表までも罰則を受ける可能性があります」
それ以外にも新潮によれば、実姉のやっているブティックから、10~12年にかけて小渕の各団体から330万円の支払いがなされている。そのほかにも、地元の農業協同組合や地元農家から大量の下仁田ネギやこんにゃくを購入しているが、これらも「組織活動費」や「交際費」に計上されているそうである。
先の上脇教授は「小渕大臣の使い方は、どうも政治資金を私物化しているような印象を受けるのです」と言っているが、これでは先頃話題になった「大泣き兵庫県議」のやっていたこととあまり違いはないのではないか。
とまあ、小渕恵三元首相の忘れ形見のお嬢ちゃんとはいえ、卑しくも現役の議員、それも経産相という重責についている大臣のやることじゃござんせんな。
新潮が小渕大臣を直撃したところ「事務所がお答えすると話しています……」と、我関せずという態度だったそうだ。
現代では松田賢弥氏が、まだほかにもあると、こう語っている。
「小渕氏の地元の群馬県吾妻郡中之条町では、彼女の母親の千鶴子さんが01年10月に約132坪の土地を取得し、2階建てのビルを建てています。この土地はもともと、千鶴子さんの親族が経営していた木材工場の一部。問題は、このビルに事務所を構える『小渕優子後援会』が、不可解な家賃を計上していることです。直近の過去3年間の収支報告書によれば、このビルは千鶴子さんが所有するものであるにもかかわらず、小渕優子後援会が毎月6万3000円の家賃を支払っています。1年間で75万6000円、10~12年の3年間では総額226万8000円。しかも、家賃の受取人は母親ではなく、小渕本人になっているのです」
これでは小渕の後援会が母親のビルを通して、小渕本人に献金をしていたのではないのか、という疑惑である。
蝶よ花よと大事に育てられてきた深窓育ちのお嬢ちゃまが初めて遭遇するスキャンダルだったが、あえなく辞任ということになってしまった。
小渕氏は辞任記者会見で「長年、私が子どものころからずっと一緒に過ごしてきた、信頼するスタッフに管理をお願いしてきた。その監督責任が十分ではなかった」(asahi.com10月20日より)と、悔しさをこらえて話したという。
父親の時代からいたスタッフが、若くて何も知らないお嬢ちゃんに知らせずに、これまで通りにやってきたということだろう。何か聞かれても「私たちにお任せを」と言うだけで、報告義務を果たしていなかった。親の地盤を引き継いだ二世、三世議員にはよくあることだが、何も知らされなかった彼女は悔しかったのだろう。
だが、この程度の人間を「将来の総理大臣」と持ち上げてきた永田町や新聞は、反省すべきである。安倍首相は小渕経産相と松島法相の辞任について「任命したのは私で、任命責任は私にある。こうした事態になったことを国民に深くおわびする」と首相官邸で記者団に語ったというが、当然である。
第一次安倍内閣が潰れたのも、閣僚の不祥事が次々に表面化したためである。同じような道をたどって、第二次も崩壊していくのかもしれない。
〈元木昌彦の眼〉 小渕は年末の総選挙では楽勝した。まるで政治家としては瑕疵がないとでもいうように。だが、事務所の人間が政治資金規制法違反の証拠になるパソコンを電気ドリルで壊していたことが発覚して、検察の怒りを掻き立ててしまった。政治家としての資質に大きな疑問が湧いてくる。このまま小渕議員がお咎めなしなら規制法はザル法だということを満天下に知らしめることになる。検察の威信を賭けて取り組んでほしいものである。
2014年週刊誌スクープ・グランプリ
「全聾の作曲家佐村河内守はペテン師だった」(「週刊文春」2月13日号)
私事で恐縮だが、大雪が降った土曜日(2月8日)の夕方、川崎駅近くにある「ミューザ川崎シンフォニーホール」で開かれた「東京海上フィルハーモニックオーケストラ第21回定期演奏会」へ行ってきた。
ベートーヴェンの交響曲第9番、いわゆる「第九」といわれるものだ。残念ながら2,000人が入る会場は、交通事情悪化のため半分ぐらいの入りだったが、100名近いフルオーケストラと300名近い男女の合唱は、神々しいまでに荘厳で迫力に満ちたものだった。
ドイツが東西に別れていた1956年から64年の間に開かれた五輪に合同選手団を派遣した際、国歌の代わりとして、この第四楽章「歓喜の歌」が歌われたそうである。
恥ずかしいが、この年になるまで「第九」を生で聴く機会がなかった。
ベートーヴェンが初めてこの曲を演奏し、終わったとき、全ての聴衆の目には涙が光り、嵐のような歓呼は永遠に止むことがないように思われたという。外が吹雪のせいもあったかもしれないが、同じような“感動”をこの日私も味わった。「ブラボー」の声があちこちから上がり、拍手は鳴りやまなかった。
その楽聖・ベートーヴェンに比して「現代のベートーヴェン」とTIME誌に言わせしめた日本人作曲家が、実はペテン師だったという文春の記事は衝撃的であった。これが久々のグランプリだ!
作曲家・佐村河内守氏(さむらごうちまもる・50)のゴーストライターを務めていた新垣隆氏(43)が、こう告白している。
「私は18年間、佐村河内守のゴーストライターをしてきました。最初は、ごく軽い気持ちで引き受けていましたが、彼がどんどん有名になっていくにつれ、いつかこの関係が世間にばれてしまうのではないかと、不安を抱き続けてきました。私は何度も彼に、『もう止めよう』と言ってきました。ですが、彼は『曲を作り続けてほしい』と執拗に懇願し続け、私が何と言おうと納得しませんでした。昨年暮れには、私が曲を作らなければ、妻と一緒に自殺するというメールまで来ました。早くこの事実を公表しなければ、取り返しのつかないことになるのではないか。私は信頼できる方々に相談し、何らかの形で真実を公表しなければならない責務があるのではないかと思い始めたのです」
この“事件”、新聞やスポーツ紙、ワイドショーでは数日前から騒ぎになっていたが、時間的にいえば、文春が取材し、その新聞広告を手に入れた新聞社がその事実を知り、新聞社名では出しにくいので共同通信に情報を渡し、共同が書いたということになるのではないか。
佐村氏は広島生まれの被爆2世で、全聾の作曲家として一躍有名になった。
2011年に発表した80分を超える「交響曲第一番 HIROSHIMA」(演奏、東京交響楽団/日本コロンビア)は、クラシック界では異例の約18万枚のセールスを記録したという。
また、昨年3月31日に放送された『NHKスペシャル』の「魂の旋律~音を失った作曲家」では、東日本大震災の被災地の石巻、女川を訪ねながら創作する過程が紹介され、それが元で生まれた「鎮魂のソナタ」(演奏ソン・ヨルム/同)は、番組の反響もあって10万枚の売り上げを記録しているそうだ。
この番組は私も見たが、佐村河内の名前を知らなかった私も、内容に感動して、すぐにAmazonでCDを買って聴いてみた。さほど交響曲には感動しなかったが、被曝2世、全聾者という彼の人生が音楽の隠し味になって、聴く者を感動へと誘っていたことは間違いない。
ソチ五輪の男子フィギュアのショートプログラムで、高橋大輔選手が彼の作曲した「バイオリンのためのソナチネ」で滑ることも話題になっていた。
そこに18年間もの間、佐村河内氏のゴーストライターをやっていたという桐朋学園大学音楽学部作曲専攻で講師を務める新垣氏が、「懺悔実名告白」をしたのだ。
2人が出会ったのは、1996年の夏のことだという。年上の佐村河内氏は、新垣氏にこう切り出した。
「このテープには、とある映画音楽用の短いテーマ曲が入っている。これをあなたにオーケストラ用の楽曲として仕上げてほしい。私は楽譜に強くないので」
新垣氏はこの申し出をあっさり受け入れた。佐村河内氏が提示した報酬は数万円。それが、いびつな二人三脚の始まりとなったと文春は報じている。
新垣氏がこう話す。
「クラシック界では、大家の下でアシスタントが譜面を書いたりオーケストラのパート譜を書いたりすることはままあることです。ところが、その後わかったのですが、佐村河内は楽譜に弱いのではなく、楽譜が全く書けない。正式なクラシックの勉強をした形跡もない。ピアノだって、私たちの常識では『弾けない』レベルです」
新垣氏はお金とか名声がほしくて引き受けたのではなく、自分が作曲した音楽を多くの人に聴いてもらえることがうれしかったからだと動機を語っている。
新垣氏は自分たちを「天才的な大馬鹿コンビ」と自嘲していたというが、まさに奇跡の出会いだったようだ。
楽譜の書けない佐村河内氏は、細かい「構成図」を書いて新垣氏に渡したという。文春によればこうだ。
「『中世宗教音楽的な抽象美の追求』『上昇してゆく音楽』『不協和音と機能調整の音楽的調和』『4つの主題、祈り、啓示、受難、混沌』等々、佐村河内は、ひたすら言葉と図で一時間を超える作品の曲想(コンセプト)を書いている。このコンセプトに沿って新垣は、一音一音メロディーを紡ぎだし、オーケストラ用のパート譜を書き起こしていく。つまり、佐村河内はセルフプロデュースと楽曲のコンセプトワーク(ゼロを一にする能力)に長け、新垣は、それを実際の楽曲に展開する力(一を百にする能力)に長けている」
だが、「新潮45」(13年11月号)に載った音楽家・野口剛夫氏による論考『「全聾の天才作曲家」佐村河内守は本物か』を読んで、新垣氏は不安を持った。
野口氏はこう綴っている。
「時にはバッハ風、ときにはマーラー風の美しい響きの瞬間も随所にあるが、それらは刹那的な感動の域を超えることがない(中略)、『交響曲』の最後で(中略)ほとんどマーラーの交響曲(第3番の終楽章?)の焼き直しのような響き」
講談社から出した自伝『交響曲第一番』の中の記述などもウソが多く、新垣氏はここで打ち切ろうというアドバイスをしたが、佐村河内氏は受け入れなかった。
思いあぐねた新垣氏は、自分の教え子でもあり佐村河内氏が曲を献呈していた義手のヴァイオリニストの少女の家族の前で、これまでの真相を話し、謝罪したというのである。
こうして綻びは大きくなり、砂上の楼閣は崩れ始めた。
驚くことに「全聾」というのもウソだと、新垣氏は言っているのだ。
「実際、打ち合わせをしても、最初は手話や読唇術を使ったふりをしていても、熱がこもってくると、普通の会話になる。彼自身も全聾のふりをするのに、ずっと苦労したんだと思います。最近では、自宅で私と会う時は最初から普通の会話です」
米誌がつけた“現代のベートーベン”という言葉に踊らされ、日本人の多くが騙されていた感動物語は、思ってもみないエンディングを迎えてしまった。
しかし、これだから人生は面白のだ。昔、ロサンゼルスで妻を何者かに撃たれ、悲劇のヒーローになった三浦和義氏に「保険金詐欺の噂がある」と文春が連載し、大騒ぎになったことがあった。
感動秘話の裏にある、どす黒い真実を暴き出すのも週刊誌の役割である。そういう意味でも、日本中を驚かせた文春は見事である。
なぜ、文春にばかりスキャンダル情報が集まるのだろうか? ここでも何度か書いているが、AKB48のスキャンダルをはじめ、タブーに怖じ気づかず数々のスクープをものにしてきた文春だから、ネタを持っていけばやってくれるという「安心感」がネタ元にあるからだろう。
ほかの週刊誌では、「面白い話ですが、うちではコンプライアンスがうるさくて」とか、「あのプロダクションとはケンカできないので」とかいった「言い訳」で断ることが多いが、文春にはそうした断る理由が他誌よりはるかに少ないのだ。
この騒動が起きたとき、ネタ元は文春だとぴーんと来た。文春恐るべしである。
〈元木昌彦の眼〉 見事なスクープである。問題としては小保方晴子のSTAP細胞や小渕優子の政治資金規正法違反疑惑のほうが大きいが、話題性という意味ではダントツである。時代の寵児の仮面を剥ぐのは週刊誌の独壇場だが、中でも文春の情報収集力や取材力は抜きんでている。その文春が百田尚樹の件については、百田の弁明を載せただけというのはいただけない。林真理子も後でいっているように、百田からのいい分けではなく、文春編集長のいい分を聞きたかったというのは正論であろう。AKB48スキャンダルなどフライデーも書けないタブーを次々に打ち破ってきた文春なのだから、ぜひ作家タブーも破ってほしいものだ。
結婚ラッシュ、水卜ちゃん二冠、内定取り消し騒動……女子アナ事件簿2014
あくまで筆者の個人的な感想であるが、2014年の女子アナ界で最も驚かされたニュースはTBS・吉川美代子アナの定年退職。昨今の民放キー局では「30歳定年説」がささやかれる中にあって、一般企業の定年まで勤め上げることの難しさは想像に難くないわけで、快挙と呼べる出来事である。このほかにも、今年の女子アナ界について報じられたニュースは多彩であり、その内容は実に悲喜こもごも。そんな女子アナにまつわる出来事をまとめてみた。 ■日本テレビで女子アナ内定の取り消し騒動 日テレに女子アナとして内定を受けていた東洋英和女学院大学の笹崎里菜さんが、銀座クラブのホステス経験を理由として、内定を取り消される事件が勃発。当初は笹崎さんが研修の厳しさに耐えかねて内定を辞退したと報じられ、事実に反すると憤った当人が週刊誌上で真実を顔出し実名で告白するまでに至る。日テレの人事担当者は「アナウンサーは、高度の清廉性が求められます」として、ホステスのバイト歴が「アナウンサーの経歴にふさわしくない」と説明。女性アナウンサーが「清廉」かどうかはさて置き、11月からスタートした裁判の結果いかんでは、各局のアナウンサー採用に影響を与えることになりそうだ。 ■往年のアナドルが“崖っぷち”を武器に復活? 元日テレのアナドルだった脊山麻理子アナが、水着グラビアで再ブレーク。その後も飲み会で乱れまくるなどのプライベートシーンをセキララに披露して、“崖っぷちキャラ”による大躍進を遂げる。ほかにも、テレ東時代にセクシーなキャラで「ポスト・大橋未歩」と目されていた亀井京子アナが、「風水マニア」を押し出して再浮上。元TBSのブリッコアナこと小林麻耶アナも、フジ系『バイキング』での花嫁修業企画で“痛女”を演じて注目されるなど、かつて一世を風靡したアナドルたちが次々に復調の兆しを見せた。本人たちにとっては生き残りをかけた切実なものなのだろうが、アナドル時代のファンにとっては、そのあまりに大きいギャップが痛々しすぎて悲しくなってしまうのだが……。 ■各局の人気アナたちによる結婚ラッシュ 毎年のように報じられている女子アナの結婚だが、今年は例年以上にビッグカップルが誕生した。まず、9月にテレ東・大江麻理子アナがマネックス証券社長の松本大氏とゴールイン。松本氏の資産が「100億円」と伝えられたことで、世紀の玉の輿婚として騒がれることになった。ほかにも、同月にフジのショーパンこと生野陽子アナが同期の中村光宏アナとの結婚を『めざましテレビ』で報告。ふたりの交際はかなり以前からウワサされていたが、今年ついに恋を実らせることになった。また、11月にはTBSのエースである枡田絵理奈アナが司会を務める『いっぷく!』で結婚を生報告。お相手は広島東洋カープの堂林翔太選手で、一部報道では年内の入籍が伝えられている。今年の結婚では寿退社する女子アナはほとんど見られず、女子アナの職場環境も変わりつつあるのかもしれない。 ■カトパンが体調不良で番組を途中退席 10月27日に放送された『めざましテレビ』で、カトパンことフジ・加藤綾子アナがいきなり画面から消えるという異常事態が発生した。理由は体調不良のため、退席して病院に直行したとのこと。翌日も同番組を欠席することになり、メインキャスターの三宅正治アナから「風邪」と説明された。彼女のほかにも、昨年に脳梗塞で休養したテレ東・大橋未歩アナに続いて、同局の紺野あさ美アナも今年の4月24日から体調不良を理由に休養を発表(7月20日に復帰)している。タレント化が顕著な女子アナはアナウンス以外の仕事も多く、とくにエースアナはレギュラーや特番に加えて社内業務など、尋常ではない仕事量をこなさなければならない。人気アナの宿命とはいえ、倒れるまで酷使するのはさすがに行きすぎ。テレビ局にはエースの健康状態に留意する配慮を求めたい。 ■新人アナたちの抜擢ラッシュ 今年は例年以上に新人アナたちの話題も多く取り沙汰されている。まず、TBSではADから女子アナに異例の転身を遂げた笹川友里アナが『王様のブランチ』でデビュー。テレ朝では入社1年目の山本雪乃アナが、1981年から続く名物番組『熱闘甲子園』のキャスターに就任して、各メディアを驚かせた。また、フジでは永島優美アナがエースアナへの登竜門である冠番組『ユミパン』をゲット。ほかにもサッカー番組『MONDAY FOOTBALL R』のMCや『めざましテレビ』の情報キャスターなど、現在はレギュラー5本を担当して新人とは思えない活躍を見せている。これらの積極的な起用によって新人が台頭してくると、各局のエース争いも激しさを増して、より魅力のあるアナドルが登場していくに違いない。 ■総論~2014年は転換点の年~ 2014年の女子アナ界は、元キー局の女子アナによる水着グラビア、ADから女子アナへの転身など、これまでにない出来事が多かったように思われる。ほかにも、12月にはオリコンの「好きな女性アナウンサーランキング」が発表され、日テレの水卜麻美アナが二冠を達成。同ランキングではテレ東系『モヤモヤさまぁ~ず2』での破天荒なキャラクターで人気を集めている狩野恵里アナも6位に入賞していて、視聴者に求められる“女子アナ像”が清楚でおしとやかなものから変わってきていることが感じられた。 また、内定取り消しや人気アナの体調不良など、テレビ局の暗部について問題視されるようなニュースも噴出。これらはどのテレビ局も他人事ではない問題であり、採用問題や起用方法などを再考する必要性を求められることになる。 良いことも、悪いことも、いろいろな意味で女子アナ界が大きく変わりつつある転換点となった2014年。この動きを受けて、来年は彼女たちや女子ファンにとって、よりよい一年になることを期待したい。 (文=百園雷太)
高倉健主演のワーナー作品『ザ・ヤクザ』がDVD化 健さんがハリウッド映画に与えた影響とは……?
昭和は遠くになりにけり。日本映画界を代表するスター俳優・高倉健さんが11月10日に、菅原文太さんが11月28日に相次いで亡くなり、そんな言葉を思い浮かべた人も少なくなかっただろう。年末最後ということで12月23日にDVDが再リリースされた高倉健さん主演のハリウッド映画『ザ・ヤクザ』(74)を振り返りたい。ワーナー映画である『ザ・ヤクザ』は、『タクシードライバー』(76)の脚本家として著名なポール・シュレイダーのデビュー作だ。兄レナード・シュレイダーは文太さんが出演した『太陽を盗んだ男』(79)の脚本を手掛けている。兄弟そろって大の日本文化びいきであり、カルト映画を語る際に欠かせない存在である。 『ザ・ヤクザ』は同志社大学と京都大学で5年間にわたって英文学の講師を務めたレナード・シュレイダーが原案を考え、兄レナードと同様に日本の任侠映画をこよなく愛する、当時は映画評論家だったポール・シュレイダーが脚本を執筆した。「やくざは八九三の数字に由来する。足して20。賭博では負けの数だ」というテロップが流れるオープニングから、シュレイダー兄弟の任侠ものへの偏愛ぶりが溢れ出ている。ほぼ日本で撮影が行なわれ、健さん主演の大ヒット作『昭和残侠伝』(65)の東映プロデューサー・俊藤浩滋が製作総指揮を執った。俊藤プロデューサーの自伝によると、シドニー・ポラック監督と共同脚本としてロバート・タウンが参加したことでメロドラマ要素が強くなったそうだ。 元探偵のハリー(ロバート・ミッチャム)は、太平洋戦争終結後の東京に進駐軍として滞在していた頃の記憶が忘れられずにいた。美しい日本女性・英子(岸恵子)と一緒に暮らした日々は、米国に戻ってひとり身の生活を送っているハリーにとって唯一の心温まる思い出だった。そんな折り、米軍時代の戦友であるターナー(ブライアン・キース)から助けを求められる。海運商であるターナーは日本のヤクザ組織・東野組と銃の密輸取引を進めていたが、期日までに銃を納品できず、ターナーの娘が人質として拉致監禁されてしまった。「娘を助け出してほしい」と旧友に頼まれ、ハリーは20年ぶりに日本に向かう。ハリーは英子のもとを訪ね、英子の兄・田中健(高倉健)の居場所を聞き出す。健は大物ヤクザで、健の助けを借りることで、ターナーの娘を救出しようとハリーは考えていた。太平洋戦争で米軍相手に戦った健は米国人を憎んでいたが、終戦後の混乱期に英子がハリーの世話になったことに義理も感じていた。かくしてハリーと健は、東野組を敵に回して人質奪回に赴く―。 70年代前半、ブルース・リー主演のアクション映画が爆発的にヒットし、米国ではブルース・リーに続く新しいアクションスターが求められていた。そこで白羽の矢が立てられたのが、日本のヤクザスター・健さんだった。物語の後半、健さんがロバート・ミッチャムを伴って東野組に殴り込みを掛けるシーンは、「昭和残侠伝」シリーズの花田秀次郎(高倉健)と風間重吉(池部良)が死地に赴くクライマックスシーンの再現だ。日本刀を手にした健さんは東野組のヤクザたちを次々と血祭りにする。健さんの背中では不動明王の刺青が生き血を吸って、妖しく輝く。健さんの独壇場である。もはや、バイオレンスシーンというよりも、死を覚悟した男が放つ官能美の世界である。銃を手にしたロバート・ミッチャムは、ただただ健さんの後ろ姿に見蕩れるしかない。ロバート・ミッチャムと高倉健が共演した『ザ・ヤクザ』。本作がなければ、『ブラック・レイン』(89)も『キル・ビル』(03)も存在しなかったかもしれない。
エキゾチックな世界観に加え、健さんが最後に指を詰めるショッキングな人体欠損シーンもあり、『ザ・ヤクザ』は米国をはじめ世界市場で興行的な成功を収めた。残念ながら当時の日本では実録ヤクザ路線『仁義なき戦い』(73)が人気を呼び、健さんが演じた古風なヤクザ像は飽きられていた。また“日本のヤクザは武士の末裔”と言わんばかりのシュレイダー兄弟の過剰な日本文化びいきがマイナスに働き、わずか4週間で劇場公開は打ち切られてしまった。だが、健さん主演の『ザ・ヤクザ』は一過性の消耗品に終わらず、その後のハリウッドに多大な影響を与えることになる。 作家の処女作には、その作家のすべてが詰まっていると言われる。ポール・シュレイダーにとって脚本デビュー作となった『ザ・ヤクザ』にもそれは言える。『ザ・ヤクザ』が興行的に成功したことで、『ザ・ヤクザ』と同時期に書いていた『タクシードライバー』も映画化されることになった。『ザ・ヤクザ』は太平洋戦争で終戦後も6年間にわたって南洋のジャングルを彷徨った田中健が平和な日本社会に溶け込むことができず、ヤクザ相手に情念を爆発させる。『タクシードライバー』の主人公トラヴィス(ロバート・デニーロ)はベトナム戦争に海兵隊として従軍するも、復員後は不眠症に悩まされ、深夜タクシーでしか働くことができない。孤立感を深めていくトラヴィスは、13歳の娼婦・アイリス(ジョディ・フォスター)をポン引きのもとから救い出すという強迫観念に取り憑かれる―。いわば、『ザ・ヤクザ』の健さんと『タクシードライバー』のトラヴィスは義兄弟の関係なのだ。健さんが欧米人には理解しがたい仁義を貫くように、トラヴィスは自分なりの正義をまっとうする。『ザ・ヤクザ』の成功がなければ、『タクシードライバー』はもっとチープなB級バイオレンス映画になっていた可能性が高い。マーティン・スコセッシ監督もロバート・デニーロもジョディ・フォスターも、ブレイクの仕方は違った形になっていただろう。 ポール・シュレイダー脚本作では『ローリング・サンダー』(77)もカルト的な人気を誇る。『ローリング・サンダー』の主人公も戦場帰りの男だ。ベトナム戦争で捕虜として7年間を過ごしたレーン少佐(ウィリアム・ディベイン)は英雄として帰郷する。だが、妻は他の男とできてしまい、息子もすっかりその男になついている。拷問という行為を愛することで拷問生活に耐えてきたレーンだったが、もはや故郷に自分の居場所はなかった。生温い生活は、拷問以上の拷問だった。ある日、レーンが受け取った義援金を狙うギャング団によって、妻と息子が惨殺されてしまう。レーンの生き場所がようやく見つかった。レーンは軍隊時代の部下・ジョニー伍長(トミー・リー・ジョーンズ)を従え、ギャング団の根城となっている娼館へと殴り込む―。『ローリング・サンダー』もまた『ザ・ヤクザ』の変奏曲である。健さんが指を詰める代わりに、『ローリング・サンダー』のレーン少佐は片腕を失う。ポール・シュレイダー作品の主人公たちは時代の変化に適応することを良しとせず、死地を求めることで輝きを放つ。ポール・シュレイダーはこの主題をさらに突き詰め、三島由紀夫の生涯をドラマ化した日本未公開映画『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(85)を監督作として作り上げる。独自の美学を放つポール・シュレイダー作品の発火点となったのが、健さん主演作『ザ・ヤクザ』だった。 任侠映画の集大成だった『ザ・ヤクザ』が国内でコケたことは、健さんにとってショックだったに違いない。文太さんとの共演作『神戸国際ギャング団』(75)、オールスター出演作『新幹線大爆破』(75)を最後に専属契約を結んでいた東映を離れ、大映で『君よ憤怒の河を渉れ』(76)、東宝で『八甲田山』(77)、松竹で『幸福の黄色いハンカチ』(77)、角川映画『野性の証明』(78)と日本映画史に残る名作・話題作に続けて主演することになる。日本と米国の異なる価値観がぶつかり合った『ザ・ヤクザ』は、ハリウッドにとっても邦画界にとっても分岐点となる作品だったことが分かる。剣の達人である田中健(高倉健)。道場で自分が教える「何も考えるな」という境地で、敵対するヤクザたちを次々と斬り倒していく。
健さんの映画俳優としての功績は誰もが認めるところだが、健さんが残した負の遺産について最後に触れておきたい。健さんが映画の中で演じたストイックなキャラクターは痺れるほどかっこよかった。健さんが演じてきた寡黙なキャラクターを、84年〜89年にわたってオンエアされた日本生命のCMでの「不器用ですから」という台詞はうまく言い当てていた。だが、このときの健さんがあまりに魅力的だったため、不器用な生き方=かっこいいと勘違いする一部の人間がこのCMを見て育った世代にはいる。 言うまでもなく、健さんが演じた“不器用キャラ”は映画やCM世界での虚像である。実際の健さんはスタッフや共演者への気配りを欠かさず、初めて逢った人には自分の手で名刺を丁重に渡すコミュニケーションの達人だった。そうでなければ生涯205本もの映画に出演することはできない。そんな現実を無視して、口当たりのよい虚構部分だけを鵜呑みしてしまった人間の行く末は悲惨だ。周囲とのコミュニケーションを図る努力をせずに、「不器用ですから」と自分で口にする人間の末路はシャレにならない。そもそも1回しかない人生を、器用に生きられる人間はどこにもいないはずだ。「不器用ですから」の台詞の後、健さんは伝えたい言葉があったのではないだろうか。健さんがいなくなった今、そのことを思う。 (文=長野辰次)“スリーピング・アイ”と呼ばれたロバート・ミッチャム。『狩人の夜』(55)や『恐怖の岬』(62)などカルト作で強烈な個性を放った。
『ザ・ヤクザ』 製作・監督/シドニー・ポラック 原作/レナード・シュレイダー 脚本/ポール・シュレイダー、ロバート・タウン 出演/ロバート・ミッチャム、高倉健、ブライアン・キース、岸恵子、ハーブ・エベルマン、リチャード・ジョーダン、ジェームス繁田、岡田英次、待田京介、クリスティーナ・コクボ、郷鍈治、汐路章 発売元/ワーナー・ブラザーズ・ホームエンターテイメント 発売価格/1429円(税抜価格) 12月23日よりDVDレンタル&発売中 (C) 2014 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved. http://www.warnerbros.co.jp














