“バラエティの女王”若槻千夏の帰還 テレビ朝日『まとめないで!!』(4月9日&16日放送)を徹底検証!

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 かつて彼女は、バラエティの女王と呼ばれていた。大物司会者にいじられれば的確なコメントを返し、おバカタレントとしては数々の偉業を成し遂げ、またMCになった際は進行を務めながらもしっかりと場を荒らし、ときに体まで張ることもあった。彼女の名は若槻千夏。どんな場所でもその状況に対応する天性の勘の良さと、努力に裏打ちされた確かな技術は、まさにバラエティの女王と呼ばれるにふさわしかった。だが彼女は2009年、自身のアパレルブランドを設立し、表舞台から去る。時を経て、今。長すぎる沈黙を破って、若槻がバラエティに帰ってきた。  いわゆるバラドルという呼称も死語となり、いまやバラエティの女性タレント枠は群雄割拠だ。グラビア界からはもちろん、アイドルグループを卒業したタレントもその椅子を狙っていて、さらには女優やモデル界からもスターが生まれつつある。結果、彼女たちが求められる技術は向上しており、昨今ではワイプに映るための練習までしているという。そのタイミングでの、若槻の帰還である。かつての女王は、ロートルとして醜態を晒すことになるのではないか? 彼女の技術力は、今ではそう大したものではないのではないか? それはただの杞憂に過ぎなかった。若槻は、本格的なバラエティ復帰以降、すべての番組で確実に爪痕を残している。  なぜ、若槻は特別なのか? 彼女の特性を一言で表すならば、テロップいらずの女、だといえるだろう。彼女はバラエティ番組におけるテロップの役割を、しゃべりで担っている。  テロップとは、大きく分けて2つの種類がある。まずは、コメントをフォローするためのテロップ。出演者がしゃべったセリフを、そのまま文字にする種類のものだ。そしてもうひとつは、番組サイドが出演者にツッコミを入れるテロップ。収録の現場では誰もツッコまなかったことに対して、後から番組が編集でツッコミを文字で出す。若槻はこの2種類のテロップを、現場のしゃべりで補っている。  4月9日&16日に放送された『まとめないで!!』(テレビ朝日系)では、MCとして劇団ひとりと共に出演した若槻。立ち位置の明確な役割はないが、どちらかといえば劇団ひとりがメイン、若槻がアシスタント的なポジションで番組は進行していく。番組の主旨として、食通で知られる渡部建がほかの出演者からツッコミをいれられるわけだが、渡部の“知人の薦めた店にしか行かない”という姿勢に対して、それはただの受け売りではないかと指摘されてしまう。普通はそうだろう、と反論しようとする渡部に対して、若槻はこんな言葉を投げかける。 「でも、それを大きな声でテレビで言ってるだけでしょ!?」  重要なのは、このコメントに対してはテロップが入らないという点だ。これを受けて、劇団ひとりが「大きな声で言って、お金をもらうっていう……」とかぶせたコメントで初めて、テロップが乗る。  これと同じ流れが、番組では何度も見受けられる。渡部の言うことは聞いている時点で力量がないということがわかる、というコメントに対して「力量がないんですね!?」とかぶせ、寺門ジモンは本当の食通だが、本当の食通はテレビ向けではないというコメントを聞くと「ジモンさん、テレビ向きじゃないんですか!?」と即座に返す。これらの若槻の発言のすべてにテロップは入らない。というか、不要なのだ。この発言自体が、テロップの役割を果たしているから。たとえば「力量がない」のくだりでは、あとから編集で渡部の顔のアップに「力量がない」というツッコミテロップを入れることもできるが、若槻のコメントがあるからその作業は不要になる。視聴者の熱をテロップで冷ますことなく、自然な流れで番組が進行していく。    現在のバラエティの主流はむしろ、いかに自分のコメントでテロップが出るかという技術勝負になりがちだ。それは、たとえば『ナカイの窓』(日本テレビ系)のゲストMCスペシャルのときに、テロップの回数でランキングがつけられる、というのを見てもわかる。実際、自分が出演者としておいしいのは、そちらのはずだ。笑いも取れるし、印象にも残る。だが、若槻は逆に、自分のコメントでテロップが入ることをおそらく是としていない。前述した「でも、それを大きな声でテレビで言ってるだけでしょ!?」という発言も、間を取ることなくかぶせにいっている。ゲストMCという立場でありながら、その手法はガヤのそれに近い。  それではなぜ、若槻は自分のコメントでテロップが入ることを是としないのか? それはおそらく、自分が個人として結果を残すことよりも、番組全体の流れや面白さを重視しているからだ。かつて『痛快!明石家電視台』(毎日放送)でお笑いモンスターからスパルタ教育を受け、03年から『オールザッツ漫才』(同)でMCを務めた彼女は、バラエティ番組とはチームプレイであるという精神を叩き込まれたはずだ。そしてそれは、今もって若槻の中に息づいていて、新たなバラエティ女性タレント像を作りつつある。  どんな女性タレントも、若槻の真似はできない。なぜならば若槻自身が、誰の真似もしていないからだ。彼女はこれまでの人生で学んだ教訓を、ただただ愚直にバラエティ番組にぶつけている。女王はひとりでいい。誰も歩いたことのない道を、若槻千夏は歩いている。 【検証結果】  若槻は4月13日に放送された『ずっと引っかかってました。~ヒロミ&ジュニア 心のとげぬき屋~』(日本テレビ系)で、かつて自分のことを応援してくれていたファンを心配した。自分のことを応援したのを後悔していないかと。かつてのファンは彼女へのコメントで、DVDのことをデーブイデーと発音する。ほかの出演者や視聴者がそれを笑う中、若槻だけが「悪意がある、今の!」「DVDって言ってんじゃん! テロップ直してくださいよ!」と、たったひとりでファンの側に立った。そこには、計算など微塵もない。ただ愛と感謝だけがあった。若槻は、そのようにして、バラエティの世界で生きている。 (文=相沢直) <「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから> ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは @aizawaaa

“バラエティの女王”若槻千夏の帰還 テレビ朝日『まとめないで!!』(4月9日&16日放送)を徹底検証!

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 かつて彼女は、バラエティの女王と呼ばれていた。大物司会者にいじられれば的確なコメントを返し、おバカタレントとしては数々の偉業を成し遂げ、またMCになった際は進行を務めながらもしっかりと場を荒らし、ときに体まで張ることもあった。彼女の名は若槻千夏。どんな場所でもその状況に対応する天性の勘の良さと、努力に裏打ちされた確かな技術は、まさにバラエティの女王と呼ばれるにふさわしかった。だが彼女は2009年、自身のアパレルブランドを設立し、表舞台から去る。時を経て、今。長すぎる沈黙を破って、若槻がバラエティに帰ってきた。  いわゆるバラドルという呼称も死語となり、いまやバラエティの女性タレント枠は群雄割拠だ。グラビア界からはもちろん、アイドルグループを卒業したタレントもその椅子を狙っていて、さらには女優やモデル界からもスターが生まれつつある。結果、彼女たちが求められる技術は向上しており、昨今ではワイプに映るための練習までしているという。そのタイミングでの、若槻の帰還である。かつての女王は、ロートルとして醜態を晒すことになるのではないか? 彼女の技術力は、今ではそう大したものではないのではないか? それはただの杞憂に過ぎなかった。若槻は、本格的なバラエティ復帰以降、すべての番組で確実に爪痕を残している。  なぜ、若槻は特別なのか? 彼女の特性を一言で表すならば、テロップいらずの女、だといえるだろう。彼女はバラエティ番組におけるテロップの役割を、しゃべりで担っている。  テロップとは、大きく分けて2つの種類がある。まずは、コメントをフォローするためのテロップ。出演者がしゃべったセリフを、そのまま文字にする種類のものだ。そしてもうひとつは、番組サイドが出演者にツッコミを入れるテロップ。収録の現場では誰もツッコまなかったことに対して、後から番組が編集でツッコミを文字で出す。若槻はこの2種類のテロップを、現場のしゃべりで補っている。  4月9日&16日に放送された『まとめないで!!』(テレビ朝日系)では、MCとして劇団ひとりと共に出演した若槻。立ち位置の明確な役割はないが、どちらかといえば劇団ひとりがメイン、若槻がアシスタント的なポジションで番組は進行していく。番組の主旨として、食通で知られる渡部建がほかの出演者からツッコミをいれられるわけだが、渡部の“知人の薦めた店にしか行かない”という姿勢に対して、それはただの受け売りではないかと指摘されてしまう。普通はそうだろう、と反論しようとする渡部に対して、若槻はこんな言葉を投げかける。 「でも、それを大きな声でテレビで言ってるだけでしょ!?」  重要なのは、このコメントに対してはテロップが入らないという点だ。これを受けて、劇団ひとりが「大きな声で言って、お金をもらうっていう……」とかぶせたコメントで初めて、テロップが乗る。  これと同じ流れが、番組では何度も見受けられる。渡部の言うことは聞いている時点で力量がないということがわかる、というコメントに対して「力量がないんですね!?」とかぶせ、寺門ジモンは本当の食通だが、本当の食通はテレビ向けではないというコメントを聞くと「ジモンさん、テレビ向きじゃないんですか!?」と即座に返す。これらの若槻の発言のすべてにテロップは入らない。というか、不要なのだ。この発言自体が、テロップの役割を果たしているから。たとえば「力量がない」のくだりでは、あとから編集で渡部の顔のアップに「力量がない」というツッコミテロップを入れることもできるが、若槻のコメントがあるからその作業は不要になる。視聴者の熱をテロップで冷ますことなく、自然な流れで番組が進行していく。    現在のバラエティの主流はむしろ、いかに自分のコメントでテロップが出るかという技術勝負になりがちだ。それは、たとえば『ナカイの窓』(日本テレビ系)のゲストMCスペシャルのときに、テロップの回数でランキングがつけられる、というのを見てもわかる。実際、自分が出演者としておいしいのは、そちらのはずだ。笑いも取れるし、印象にも残る。だが、若槻は逆に、自分のコメントでテロップが入ることをおそらく是としていない。前述した「でも、それを大きな声でテレビで言ってるだけでしょ!?」という発言も、間を取ることなくかぶせにいっている。ゲストMCという立場でありながら、その手法はガヤのそれに近い。  それではなぜ、若槻は自分のコメントでテロップが入ることを是としないのか? それはおそらく、自分が個人として結果を残すことよりも、番組全体の流れや面白さを重視しているからだ。かつて『痛快!明石家電視台』(毎日放送)でお笑いモンスターからスパルタ教育を受け、03年から『オールザッツ漫才』(同)でMCを務めた彼女は、バラエティ番組とはチームプレイであるという精神を叩き込まれたはずだ。そしてそれは、今もって若槻の中に息づいていて、新たなバラエティ女性タレント像を作りつつある。  どんな女性タレントも、若槻の真似はできない。なぜならば若槻自身が、誰の真似もしていないからだ。彼女はこれまでの人生で学んだ教訓を、ただただ愚直にバラエティ番組にぶつけている。女王はひとりでいい。誰も歩いたことのない道を、若槻千夏は歩いている。 【検証結果】  若槻は4月13日に放送された『ずっと引っかかってました。~ヒロミ&ジュニア 心のとげぬき屋~』(日本テレビ系)で、かつて自分のことを応援してくれていたファンを心配した。自分のことを応援したのを後悔していないかと。かつてのファンは彼女へのコメントで、DVDのことをデーブイデーと発音する。ほかの出演者や視聴者がそれを笑う中、若槻だけが「悪意がある、今の!」「DVDって言ってんじゃん! テロップ直してくださいよ!」と、たったひとりでファンの側に立った。そこには、計算など微塵もない。ただ愛と感謝だけがあった。若槻は、そのようにして、バラエティの世界で生きている。 (文=相沢直) <「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから> ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは @aizawaaa

北朝鮮の外貨稼ぎを叩く韓国テレビ局にブーメラン! 「朝鮮中央テレビ」に年間1,000万円の“利益供与”発覚!?

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イメージ画像(「Thinkstock」より)
「韓国政府の開城工業団地の操業中断措置には、北朝鮮の核とミサイル開発に使われる資金源を元から遮断するという強力な意志が込められている……。(同団地のからの収益は)核ミサイル開発資金5分の1に相当する」 「それにより、年間1,000億ウォン(約100億円)を超える金正恩の資金源はなくなった。北朝鮮海外労働者たちの外貨稼ぎを遮断しなければならない」  これは去る2月、韓国政府が「韓国と北朝鮮の経済協力の象徴」ともいえる開城工業団地の操業を全面中断すると発表した際に、韓国の各テレビ局が報じた内容だ。いずれも論調は似たようなもので、要するに、北朝鮮の外貨稼ぎを遮断すべきという主張になっていた。北朝鮮に外貨が流れると核やミサイルの開発が進むというロジックなので、確かに韓国にとっては見逃せない問題だろう。  しかし4月20日、北朝鮮の外貨稼ぎを口うるさく指摘してきた韓国の各テレビ局が、北朝鮮の国営「朝鮮中央テレビ」に2006年から著作権料を支払っていたことが明らかになった。「開城工業団地は北朝鮮の資金源」などと酷評してきた各局が、いうならば、その資金源となっていたわけだ。  スクープを報じた韓国メディアによると、「朝鮮中央テレビ」に著作権料を支払ってきたのはKBSやMBC、SBSといった地上波各局をはじめ、テレビ朝鮮、チャンネルA、聨合ニュースTVなど。著作権料は06年から09年まで北朝鮮に送金されていたが、同年4月のミサイル発射後は対北政策によって民間からの送金が禁じられたため、未払い著作権料は現在、裁判所に供託されているそうだ。  韓国統一部が明かしたところによると、朝鮮中央テレビの映像を韓国のテレビ局が使用できるよう契約を交わしたのは06年3月。それ以前は、北朝鮮のテレビ映像は「利敵表現物」に分類されており、任意に取得したり使用したりすることはできなかったという。  気になるのは、韓国の各テレビ局がいくら支払っていたかのか、だ。    KBS関係者が明かしたところによると、同社は07年から著作権料を支払っており、その額は年間3,000万ウォン(約300万円)程度だという。SBS報道運営チーム長も「金額は3,000万ウォンほど」と答えた。それらを合計すると、韓国の各テレビ局から支払われた著作権料の総額は、年間1億ウォン(約1,000万円)を超える計算になる。  韓国の専門家はこう指摘する。 「各テレビ局は開城工業団地からの収益は核開発に転用されると報道しておきながら、自分たちが支払う著作権料については言及しなかった。現在は裁判所に供託されているが、いずれは支払うお金。自分たちは北朝鮮を利するような動きをする一方で、開城工業団地を核開発の資金源などと報道するのは、二枚舌もいいところだ」    表では北朝鮮の外貨稼ぎを叩き、裏では北朝鮮に外貨を渡していた韓国の各テレビ局。ネット社会になって久しい韓国では、テレビに対する信頼がまたひとつ揺らぐきっかけになるかもしれない。

「消火器を持って農民と戦え」!? 土地所有権をめぐり、中国・校長が地元住民との決闘に全学生投入

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早朝、指定の集合場所に集められた学生たち
「人間の盾」とは戦争や紛争において、敵が攻撃目標とする施設の内部や周囲に民間人を配置するなどして、攻撃を牽制することをいう。もちろん国際法上は「戦争犯罪」とされており、近年では湾岸戦争の際、フセイン大統領(当時)が日本人を含む外国人を軍事施設に移送して盾としたこともある。  しかし今回、中国でまさに“犯罪”に匹敵するような「人間の盾」騒動が起こった。「新京報」(4月12日付)によると、河北省にある河北美術学院(学生数1万人)で、土地の所有権をめぐり学校側と地元農民が衝突。4月10日夜、学校側が学生たちに対して「11日の授業はすべて休講する。全学生は早朝7時にジャージを着用し、指定の場所に集合すること」という内容の緊急通知を発した。
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乱闘現場に続々と送られる学生たちの様子
ranto003
実際の乱闘現場の様子。消火器でお互い応戦しているのがわかる。積まれているレンガも、武器として使用された
 この時点では、多くの学生たちは植林活動などの課外活動を行うものだと考えていたという。ところが当日の朝、集合場所に集まった彼らが目にしたのは、消火器やこん棒、レンガを手に学校側の警備員と乱闘している農民の姿だった。実際に現場で学校側と農民の衝突を目の当たりにした学生は「学校長が拡声器で指示を出し、警備員がブルドーザーや消火器、唐辛子スプレーで農民と戦っていた」と証言している。
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こん棒を手にカメラをにらみつける人物。今にも殴りかかってきそうだ
 一体この学校に何があったのだろうか? 学校関係者によると、2009年に学校側が近くの土地の買収を行った。ところが、一部の農民がその後も土地の所有権を主張し続けたため、以前から両者間でトラブルになっていたというのだ。その後、学校長の車が農民によって破壊されるという事件が発生し、今回の乱闘事件に発展していったとのこと。  こうした経緯があるにせよ、招集をかけられた学生たちはたまらない。なんの説明も受けず、学校からの緊急通知で乱闘現場に集められた学生たちは地元メディアの記者に対して、「僕たちは学校に勉強しに来ているのに、乱闘に参加させようとするなんて許せません。学校側は説明責任を果たしてほしい」と怒りをあらわにする。また、乱闘事件に参加した農民らも記者に対して、「これまで何度か学校側と一触即発の事態となってきたが、学生が動員されたのは今回が初めてだ。きっと学校側は、学生にも武器を持たせて乱闘に参加させるつもりだったんだろう」と証言し、波紋を呼んでいる。  幸い、乱闘に巻き込まれた学生はいなかったが、中国版Twitter「微博」では、学生が人間の盾に利用されたことに関し、「どう見ても、学校長の命令だろ」「教育が一番必要なのは学校長だな」「こんな乱暴な教師に学問を教わるなんて、学生がかわいそう」などなど、学校長への非難の声や、学生に対する同情コメントが多く寄せられた。  中国では地上げや土地の所有権をめぐり、利害関係者が衝突して死人が出ることも珍しくない。だが、学生を守るべき立場の学校が学生を盾として利用した例は前代未聞だろう。あってはならない暴挙だ。 (文=広瀬賢)

「消火器を持って農民と戦え」!? 土地所有権をめぐり、中国・校長が地元住民との決闘に全学生投入

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早朝、指定の集合場所に集められた学生たち
「人間の盾」とは戦争や紛争において、敵が攻撃目標とする施設の内部や周囲に民間人を配置するなどして、攻撃を牽制することをいう。もちろん国際法上は「戦争犯罪」とされており、近年では湾岸戦争の際、フセイン大統領(当時)が日本人を含む外国人を軍事施設に移送して盾としたこともある。  しかし今回、中国でまさに“犯罪”に匹敵するような「人間の盾」騒動が起こった。「新京報」(4月12日付)によると、河北省にある河北美術学院(学生数1万人)で、土地の所有権をめぐり学校側と地元農民が衝突。4月10日夜、学校側が学生たちに対して「11日の授業はすべて休講する。全学生は早朝7時にジャージを着用し、指定の場所に集合すること」という内容の緊急通知を発した。
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乱闘現場に続々と送られる学生たちの様子
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実際の乱闘現場の様子。消火器でお互い応戦しているのがわかる。積まれているレンガも、武器として使用された
 この時点では、多くの学生たちは植林活動などの課外活動を行うものだと考えていたという。ところが当日の朝、集合場所に集まった彼らが目にしたのは、消火器やこん棒、レンガを手に学校側の警備員と乱闘している農民の姿だった。実際に現場で学校側と農民の衝突を目の当たりにした学生は「学校長が拡声器で指示を出し、警備員がブルドーザーや消火器、唐辛子スプレーで農民と戦っていた」と証言している。
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こん棒を手にカメラをにらみつける人物。今にも殴りかかってきそうだ
 一体この学校に何があったのだろうか? 学校関係者によると、2009年に学校側が近くの土地の買収を行った。ところが、一部の農民がその後も土地の所有権を主張し続けたため、以前から両者間でトラブルになっていたというのだ。その後、学校長の車が農民によって破壊されるという事件が発生し、今回の乱闘事件に発展していったとのこと。  こうした経緯があるにせよ、招集をかけられた学生たちはたまらない。なんの説明も受けず、学校からの緊急通知で乱闘現場に集められた学生たちは地元メディアの記者に対して、「僕たちは学校に勉強しに来ているのに、乱闘に参加させようとするなんて許せません。学校側は説明責任を果たしてほしい」と怒りをあらわにする。また、乱闘事件に参加した農民らも記者に対して、「これまで何度か学校側と一触即発の事態となってきたが、学生が動員されたのは今回が初めてだ。きっと学校側は、学生にも武器を持たせて乱闘に参加させるつもりだったんだろう」と証言し、波紋を呼んでいる。  幸い、乱闘に巻き込まれた学生はいなかったが、中国版Twitter「微博」では、学生が人間の盾に利用されたことに関し、「どう見ても、学校長の命令だろ」「教育が一番必要なのは学校長だな」「こんな乱暴な教師に学問を教わるなんて、学生がかわいそう」などなど、学校長への非難の声や、学生に対する同情コメントが多く寄せられた。  中国では地上げや土地の所有権をめぐり、利害関係者が衝突して死人が出ることも珍しくない。だが、学生を守るべき立場の学校が学生を盾として利用した例は前代未聞だろう。あってはならない暴挙だ。 (文=広瀬賢)

「余震が続く限り割引します!」中国企業の“熊本地震祝賀セール”に非難轟々

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震災セールを告知する投稿。利用できるものはなんでも利用する、中国企業
 いまもまだ余震が続く熊本地震に対し、世界各国から支援や哀悼の意が寄せられている。中国の習近平国家主席も、遺族や負傷者を見舞うメッセージを天皇陛下宛てに送った。  ところが、中国の複数の民間企業が、今回の地震に便乗した“反日商法”を展開。これには、中国ネット民からも非難が相次いでいる。
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「昆明銀工務防門控」の投稿に対しては、900以上もの非難コメントが書き込まれた
 香港の「蘋果日報」(4月17日付)が伝えたところによると、調理器具などを販売する「浙江永康市尊誠工貿公司」が中国版Twitter「微博」の公式アカウントで17日昼ごろ、熊本地震祝賀セールを告知する投稿をした。 「日本の大地震を祝し、今日から3日間は一律超低価格。余震がやまなければキャンペーンは継続し、もしマグニチュード8の地震が起きたらさらにディスカウント。10万人が死んだらもっと安くなり、日本が沈んだら在庫一掃セールをします」
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中古車販売業者も震災セールに便乗
 ネット上では、門扉を販売する「昆明銀工務防門控」という企業や、中古車販売業者など、複数の企業が同様の告知を行っている。  これらの投稿に対しては、さすがに中国ネット民からも「こんな会社は早く潰れるべき」「こういう人間こそ、地震に遭うべきだ」などと非難轟々。いずれの企業も、告知から3日を待たずに投稿を削除している。  東日本大震災の際には、中国のネット上に日本の被害を祝うコメントが相次いで投稿された。それに比べれば、今回祝賀セールを告知した企業に非難のコメントが殺到したことは成長といえるのかもしれないが、反日感情をこじらせたような低レベルな言動がこの国から一掃されるには、まだまだ時間がかかりそうだ。

「余震が続く限り割引します!」中国企業の“熊本地震祝賀セール”に非難轟々

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 いまもまだ余震が続く熊本地震に対し、世界各国から支援や哀悼の意が寄せられている。中国の習近平国家主席も、遺族や負傷者を見舞うメッセージを天皇陛下宛てに送った。  ところが、中国の複数の民間企業が、今回の地震に便乗した“反日商法”を展開。これには、中国ネット民からも非難が相次いでいる。
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「昆明銀工務防門控」の投稿に対しては、900以上もの非難コメントが書き込まれた
 香港の「蘋果日報」(4月17日付)が伝えたところによると、調理器具などを販売する「浙江永康市尊誠工貿公司」が中国版Twitter「微博」の公式アカウントで17日昼ごろ、熊本地震祝賀セールを告知する投稿をした。 「日本の大地震を祝し、今日から3日間は一律超低価格。余震がやまなければキャンペーンは継続し、もしマグニチュード8の地震が起きたらさらにディスカウント。10万人が死んだらもっと安くなり、日本が沈んだら在庫一掃セールをします」
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中古車販売業者も震災セールに便乗
 ネット上では、門扉を販売する「昆明銀工務防門控」という企業や、中古車販売業者など、複数の企業が同様の告知を行っている。  これらの投稿に対しては、さすがに中国ネット民からも「こんな会社は早く潰れるべき」「こういう人間こそ、地震に遭うべきだ」などと非難轟々。いずれの企業も、告知から3日を待たずに投稿を削除している。  東日本大震災の際には、中国のネット上に日本の被害を祝うコメントが相次いで投稿された。それに比べれば、今回祝賀セールを告知した企業に非難のコメントが殺到したことは成長といえるのかもしれないが、反日感情をこじらせたような低レベルな言動がこの国から一掃されるには、まだまだ時間がかかりそうだ。

実直な職業ドラマ『重版出来!』が描く、「前向き」になる方法

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火曜ドラマ『重版出来!』|TBSテレビ
『重版出来!』(TBS系)は、見ると前向きになれるドラマである。  主人公の黒沢心は、週刊コミック誌「バイブス」の編集部に配属されたばかりの新社会人。入社前は柔道で日本代表を争っていたが、ケガで選手生命を絶たれたという経歴を持っている。体育会出身らしく、元気で明るくハキハキしていて、やる気に満ちあふれている。  彼女を演じるのは黒木華。典型的な「朝ドラのヒロイン」的人物像で、ややもすればウザい感じになりがちなところを、絶妙なバランスで演じ、不快感を味わわせない。  同名の人気原作マンガのドラマ化とあって、放送前から期待も高かったが、それに見事応えている。主人公の黒木をはじめ、編集長・和田役の松重豊、副編集長で黒沢への教育係的な役割を担っている五百旗頭役のオダギリジョー、その他編集部員に安田顕や荒川良々など、一癖も二癖もあるキャストがハマっている。さらに、マンガ家役には小日向文世、要潤、滝藤賢一と、こちらも豪華だ。加えて、劇中に登場するマンガも、なんと藤子不二雄Aや、ゆうきまさみなどが協力している。  脚本を務めるのは野木亜紀子。彼女は以前、自衛隊の広報室を舞台にした『空飛ぶ広報室』(同)の脚本も手がけている。この作品も登場人物の“お仕事”の奮闘を描く、いわゆる“職業ドラマ”として出色の出来だった。  とかく“職業ドラマ”というと、登場人物たちがあり得ないようなミスを連発してトラブルを起こすことでドラマを盛り上げようとしてしまいがちだ。それをみんなで協力して劇的に解決、めでたしめでたしとなる。だが、そもそもそんなミスはまともな職業意識を持っていれば起こらないだろうし、ましてや、連発なんてあり得ない。劇的な解決であればあるほど、それができるほど優秀なら、そんなトラブル起こさないよと、冷めてしまうこともしばしばある。  だが、『重版出来!』には今のところ、そんな気配はまったくない。劇的とは真逆の実直なドラマだ。    第2話の“主人公”は、営業部の小泉純(坂口健太郎)。彼は情報誌の編集部を希望していたが、営業部に配属された。ずっと異動願いを出し続けているが、それがかなう見込みはない。 「いつになったら、この毎日から抜け出せるんだろう」  そんなことを日々思いながら、苦手な営業の仕事をこなしている。営業先の書店員からは、存在感のなさから「ユーレイ」と呼ばれている。  営業部長の岡(生瀬勝久)が、「編集が希望」と言う彼に「どんな企画を、誰にどう伝えたい?」と尋ねると、口ごもってしまう小泉。そんな小泉に、岡は諭すように言う。 「自分の立っている場所がわからないうちは、どこへも行けないと思うぞ」  岡は、「バイブス」で連載中の『タンポポ鉄道』の単行本が急に売り上げを伸ばしていることに気づく。期待されているタイトルとは言いがたく、重版もされていないにもかかわらず、異例のことだった。  実際に読んでみると、周りにその良さを伝えたくなるマンガだった。 「仕掛けるぞ」  3巻の発売を来月に控え、岡は営業部に号令をかける。そこに「営業の勉強」でやってきたのが、黒沢だった。黒沢は小泉と、返品本を切り取って作った試し読み冊子を置いてもらうため、百数十軒の本屋回りに同行する。  彼女の臆さない行動力と姿勢、そしてそれによって目に見えて変わっていく書店員の対応が、次第に小泉の意識を変えていく。自らアイデアを出し、積極的に動き始めるのだ。  勝手に売れる本などはない。自らアイデアを出し動く営業、協力的な担当編集者、作品を愛してくれて推してくれる書店員がそろった本は、大化けする可能性があるという。 「人をうらやんでいた頃はわからなかった。これが営業の仕事。これが僕の仕事なんだ!」  意識が変われば、見える景色も変わってくる。たとえば、ドラマ上でそれは、営業部長が大事にしている「忍法帳」と呼ばれる手帳が象徴している。最初は「ただの手帳」と興味なさげに言っていた小泉が、やがてその手帳を「見せてほしい」と目を輝かせて言うようになるのだ。  よく「前向きに生きなさい」と言われることがある。けれど、迷いの渦中にいる人にその言葉は届かない。なぜなら、どこが「前」なのかわからないからだ。けれど、受け身ではなく、能動的に行動をし始めると、とたんに目の前のことが「前」になる。自然と前向きになり、「自分の立っている場所」がわかるようになるのだ。 「俺たちが売っているのは『本』だが、相手にしているのは『人』だ。伝える努力を惜しむな」 と岡は言う。だからこれは出版業界を描いたドラマではあるが、どんな業界にも当てはまることだ。仕事とは、実直にコツコツと積み重ねていく作業だ。実直の果てに時には、劇的で奇跡のような成功があったりもする。  まさにこのドラマは、そんな「仕事」によってできているのだ。 『重版出来!』には、決して派手なトラブルやドラマティックな展開はない。だが、地味だけど確かに意識が変わる瞬間のような、人の仕事への向き合い方が丁寧に飛躍なしに描かれている。だからこそ、このドラマを見ているとわが身を振り返り、もっと頑張ろうと前向きになれるのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

テレビ中継されたのは戦争の真実か残酷ショーか アイヒマン本人が出演する『アイヒマン・ショー』

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1961年にイスラエルで開かれた“アイヒマン裁判”の様子をテレビマンの視点から伝える『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』。
 600万人が亡くなったとされるホロコーストで、いかに効率よくユダヤ人を強制収容所に移送できるかを計画したナチスドイツの戦争犯罪者アドルフ・アイヒマン。連合国側に顔が知られていなかったため、戦後は南米アルゼンチンで逃亡生活を送っていたアイヒマンだが、イスラエルの諜報機関モサドに見つかり、1960年にイスラエルへ強制連行。翌年4月から12月までイスラエルの首都エルサレムにて、“アイヒマン裁判”が開かれた。ユダヤ人虐殺を指揮したアイヒマンをユダヤ人国家が裁くということ、また戦時中の犯罪を戦後に作られたイスラエルの法律で裁くなど、様々な問題を抱えての法廷だった。  この歴史的裁判の様子をテレビ中継することを企画したプロデューサーと、その中継を託されたディレクターとのエピソードをドラマ化したのが、『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』だ。BBCの人気ドラマ『SHERLOCK/シャーロック』のワトソン役でおなじみマーティン・フリーマン扮するプロデューサーたちが織り成すドラマに、実際のアイヒマン裁判の記録映像を中継画像として盛り込むことで、アイヒマン本人が出演するリアルなノンフィクション映画に仕立てている。  アイヒマン裁判のテレビ中継を企画したプロデューサーのミルトン・フルックマン(マーティン・フリーマン)はユダヤ人で、ミルトンに要請されてディレクターを引き受けたレオ・フルヴィッツ(アンソニー・ラパリア)は米国で赤狩りに遭って仕事を干されている身だった。権力から抑圧されながらも生き延びてきたミルトンとレオが手を組んで、戦争犯罪者アイヒマンの裁判を全世界へと中継する。テレビ放送が始まって以来の画期的なプロジェクトだった。だが、話題を呼んだのは中継の開始直後だけ。視聴者はどんな極悪人が法廷に姿を現わすのか興味津々でテレビに魅入ったが、被告席に座ったアイヒマンは小役人風の平凡な中年男で、多くの視聴者は期待を裏切られてしまう。裁判は粛々と進み、視聴率は思ったほど伸びない。しかも、ソ連が有人宇宙ロケットの打ち上げに成功し、みんなの関心はそちらに移ってしまう。「過去より、未来に目を向けるべきだ」という世間の声にミルトンたちの心はぐらぐらと揺らぐ。
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マーティン・フリーマンは、変人ホームズに続いてアイヒマンに振り回される役。A・ラパリアは『ギター弾きの恋』(99)などに出演した実力派だ。
 プロデューサーのミルトンは裁判をひとつのドラマと捉え、裁判官から傍聴人まで含めた法廷の全体像を求めていた。カメラのスイッチングを多用することで、視聴者の興味を惹こうとする。一方、ドキュメンタリー監督であるレオは、戦争犯罪に加担したアイヒマンの人間像をじっくり掘り下げたいと考えていた。アイヒマンの顔のアップを、カメラマンたちに執拗に指示する。しかし、防弾ガラスで覆われた被告席に佇むアイヒマンの表情は、裁判中ほんとんど変わることがない。次第に中継クルーの間に亀裂が生じていく。さらにミルトン宛に脅迫の手紙や電話が相次ぐようになり、家族のいるミルトンは心が休まらない。あの戦争で何が起きたのかを世界中に伝えるという野心的なテレビ中継は、空中分解する寸前だった。  やがて裁判が動き出し、証人喚問が始まる。強制収容所から奇跡的に生き延びた人たちが、収容所の中で何が起きたのかを切々と語る。収容所に連れてこられたユダヤ人の子どもたちは「外は寒いから建物の中に入りなさい」と声を掛けられ、ガス室へと送り込まれた。ガス室に入ることを拒もうとすると銃身で殴りつけられ、無理矢理に押し込まれた。愛する家族や親族たちは家畜の屠殺よりも無惨に処分されていった。ガリガリに痩せ細った身体で“死の行進”を強いられた……。おぞましい収容所内の実態が、全世界へ向けてテレビ中継されていく。証人たちの衝撃的な告白に、視聴者は再び興味を示し、視聴率がぐんぐんと上がっていく。中継していたカメラマンは、法廷で暴かれる戦争犯罪のあまりの残酷さに気分が悪くなり、その場で倒れ込む。視聴者が求めていたのは収容所で起きた真実なのか、それともただの残酷ショーなのか。モニターを前に中継を指示していたミルトンもレオも、自分たちの体を張った仕事の是非が分からなくなっていく。
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防弾ガラスで覆われた被告席に姿を見せたアドルフ・アイヒマン本人。法廷中はほとんど身動きせず、表情を変えなかった。
「私は命令に従っただけだ」。アイヒマンは自分の戦争責任を否定するが、平和に対する罪、人道に対する罪などを問われ、裁判の翌年1962年6月にアイヒマンは絞首刑となる。ファシストたちの聖地にならないよう、アイヒマンの遺体は墓には収められず、遺灰として海に撒かれた。だが、アイヒマンの名前は、今なお“アイヒマン・テスト”として現代に残されている。別名、ミルグラム実験とも呼ばれるアイヒマン・テストは、人間は自分より権力のある者から命令されれば、簡単に他者に対して暴力行為を振る舞ってしまうことを科学的に証明したものだ。人間は誰もが、潜在的なアイヒマンである。ミルトンとレオが残した裁判映像は、そのことを思い起こさせてくれる。 (文=長野辰次)
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『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』 監督/ポール・アンドリュー・ウィリアムズ 脚本/サイモン・ブロック 出演/マーティン・フリーマン、アンソニー・ラパリア、レベッカ・フロント 配給/ポニーキャニオン 4月23日(土)よりヒューマン・トラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー (c)Feelgood Films 2014 Ltd. http://eichmann-show.jp

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スーパーアイデア炸裂! ザハもびっくりの建築デザインバトルマンガ 『建作ハンズ』

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『建作ハンズ』(河本ひろし/少年画報社)
 2020年の東京五輪を控え、新国立競技場問題などで何かと建築デザインが取り沙汰される昨今、世にも珍しい「建築デザイナーマンガ」というものが存在します。その名も『建作ハンズ』。東急ハンズとは、もちろん無関係です。テーマ自体かなりマニアックですが、その中で繰り広げられる建築デザインバトルもまた、ぶっ飛んでおります。  早速、内容をご紹介しましょう。主人公は、一流の建築デザイナーを目指して上京してきた、計建作(はかり・けんさく)という少年。  建作の才能は、上野駅で早くも発揮されます。なにやら駅の構内にあるショーウィンドーの飾り付けでモメている大人たち。まったく話がまとまりそうにありません。それを見た建作は、勝手にショーウィンドーの資材をいじり始めます。それが先ほどの大人たちに見つかって、ダッシュで逃亡。  実は建作、ショーウィンドーを勝手に飾り付けしてしまったのでした。しかも、それがメチャクチャ高評価です。建作は東京の有名建築デザイン学校「日本建築学院」にトップの成績で合格し、入学するために上京した優秀な学生だったのです。  ようやくたどり着いた日本建築学院の前には、超ミニスカートのヒロイン、白瀬まゆが登場します。彼女は建築学院の講師の娘ということで、そのツテで建作も入学前に学院内を見学させてもらえることになりました。そこで繰り広げられていた授業の課題は「広く感じる部屋の作成」というもの。  建築デザインという地味なテーマなので、こんなんでマンガが盛り上がるのかと心配になりますが、そこはご安心を。ちゃんとバトルが繰り広げられます。「広く感じる部屋」を自慢げに見せびらかしてきたのは、成績は優秀だけど、ちょっと性格の悪い天本先輩。その先輩のつくった「広く感じる部屋」ですが、コマの効果音が「ばん!」ときて…… 「おおー、さすが大きなことを言うだけはある!!」 「とても広く感じるぞっ!!」 と、ギャラリーたちは好リアクション! 正直、読者には広いのかどうなのかよくわかりませんが、なにしろ効果音が「ばん!」なので、きっと広いんでしょう。そんな天本先輩ご自慢の広く見える部屋を、建作が早速ディスりまくります。 「うーん…まだまだだなぁ…」 「この部屋をもっと広くできると思ってさぁ」 「基本を忘れてるんだよねー、基本を…」  まだ入学もしていない新入生にメンツを潰され、天本先輩も激怒します。 「よおーし、じゃあその基本とやらをここで見せてもらおうじゃないか」  というわけで、建築デザイナーズバトルが勃発するのです。調子に乗ってる奴を挑発してバトルに持ち込む構造は、『ミスター味っ子』とか『美味しんぼ』などのグルメマンガの構造とよく似ています。そして、建作がつくった広く見える部屋は、コマの効果音が「ぐあっ!」ときて…… 「あ、天本の部屋より広く見えるぞ!!」 「ほっ本当だっ!!」  ギャラリーからは、天本先輩のときより大きめのリアクション。効果音が「ばん!」から「ぐあっ!」となっているので、さぞかし広くなったのでしょう。タネ明かしはこうです。 「部屋づくりの基本として、その空間が正方形により近い方が広く感じられるんだよ!」  なるほど、勉強になります。さらに、建作には、もっと部屋を広く感じさせる裏技があるというのです。その名も、計建作の究極の超拡大部屋!!(そのまんまのネーミング) 「すっ…すごいっ!!」 「部屋がずっと広がり天井がつきぬけているっ!!」  またしても好リアクション。なにせ、見開きページで効果音が「グアアアッ」となっていますし、相当広くなったのでしょう。その、「劇的ビフォーアフター」な奥義とは…… 「カガミを壁と天井の一部に張ることによって視覚的に部屋に奥行きを持たせたんだ!!」  なるほど! ラブホとかによくあるアレですね!! っていうか、それなら最初から全面にカガミを張っておけば最強なのでは……?  そんな感じでバトルに勝利した建作。一息つくのも束の間、次のバトルがすぐにやってきました。自分の住まい探しのために、超ミニスカのまゆちゃんと一緒に不動産回りをする建作。  格安の物件につられて早速契約したのですが、実は悪徳不動産屋でした。ろくな説明もされず、超ボロアパートを押し付けられてしまった建作。返金を申し出ても、契約をタテに受け付けようとしません。しかし、建作が日本建築学院の学生だと知り、突然返金の条件を突き付けてきます。  その条件とは、この不動産屋のおっさんの自宅の和室を洋室に改装し、しかも気が向いたらいつでも和室に戻せるような部屋にしてほしいとのこと。これができれば返金してくれますが、できなければ金を倍額取られてしまいます。普通に考えてあり得ないほど無茶な条件ですが、そこはマンガですから、建作は驚くべきアイデアで不可能と思えた和室と洋室のハイブリッドな部屋を考え出します。その方法とは……。 「障子と掛け軸はロールブラインドで隠し、畳を全部ひっくり返して床をフローリングに!」  なんということでしょう! こんな方法があったとは!! まさに匠のワザですね。実はこのアイデア、自分の着ているリバーシブルのジャンパーがヒントになったのでした。この安っぽさがまた、少年マンガらしくていい味出していますね。  そんな感じで、建作のスーパーアイデアが炸裂して建築デザインバトルに次々勝ち進んでいきます。その後の展開としては、喫茶店の改装バトルで店内に滝をつくってみたり、“地獄の集中授業”と称して、学生全員が無人島に置き去りにされ、最小限の工具と食料で、自分で家を一からつくらなければいけないという、なんの意味があるのかよくわからないサバイバル実習を行わされたりします。  しかも、無人島で家づくりに失敗した学生たちは次々と原因不明の失踪をしてしまうという、まるで海外ドラマ『LOST』を彷彿とさせる恐ろしい島になっており、かなり想像の斜め上を行く展開です。そのあたりのトンデモなストーリーは、ぜひ作品を読んでいただければと思います。  というわけで、世にも珍しい建築デザインバトルマンガ『建作ハンズ』をご紹介しました。部屋を広く見せるテクニックなどは、ニトリとかIKEAでインテリアをそろえたりするのが好きな方には、微妙に役に立つかもしれませんね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)