物欲と性欲、自己肯定感に満ちた30年前の大学生活「POPEYE」

『POPEYE』(平凡出版,1983年8月25日)
 いまや日本人の大学・短大進学率は60%近く。どこの大学も学生の確保に必死だ。昨年から別件の取材でさまざまな大学のパンフレットを取り寄せているのだが、3月に入ってから大学から「進学先は決まりましたか? ウチはまだ受験できますよ!」と電話やメールがバンバン。もはや、大学生であること自体の価値は、ほとんど失われているのではあるまいか。それでも、多くの若者が4月からの新生活をドキドキワクワクしながら心待ちにしているに違いない。そこで、今回は、大学生活にワクワクしている若者諸君をあおる雑誌記事を紹介することに。ただし、30年余り前のだけれどね……。  モテたい若者が必ず読んでいる雑誌の二強が「POPEYE」(平凡出版/現・マガジンハウス)と「Hot-Dog PRESS」(講談社)だったのはいつ頃までだったろう。「Hot-Dog PRESS」の休刊が2004年なので、それ以前に“モテるために読む雑誌”というものは、需要を失っていたのではなかろうか。「Hot-Dog PRESS」が、恋愛マニュアルなどを中心に即物的な路線だったのに対して、オシャレ感が前面に出ていたのが「POPEYE」である。今回紹介する1983年8月25日号も、タイトルロゴの下には「Magazine for City Boys」の文字が輝いている。表紙は、まさにアメリカ西海岸テイスト。わたせせいぞうの代表作『ハートカクテル』を実写にしたら、ちょうどこんな感じなんだろうと思われる。  筆者も、大学時代に『ハートカクテル』を地でいくライフスタイルを追求していたが、友人から江口寿史の『わたせの国のねじ式』を読まされて、悪夢から目覚めたことを思い出さずにはいられない。  さて、本号の特集は「気分引き締め新学期」。大学は後期の授業が始まる時期であり、「一新ついでに、ちょいと生活も変えてみたい」というテーマで構成された記事である。今でも毎年、季節の変わり目になると自分の部屋を「個性」で飾り立てることをあおる「部屋テク」系のムックが何冊も発行されている。それに感化された人は、だいたいアパートの蛍光灯を取り外して間接照明に変えてみたり、あるいは「イケア」あたりにオシャレな家具を買いに出かけてみたり。ちょっと気の利いた人は、中央線沿線の古道具屋なんかで、妙な雑貨を買い込んで部屋を飾ろうとしているハズ。
いま、こんな部屋に済んでいたら絶対に落ち着かないと思う(クリックすると画像を拡大します)
 ところが、この特集で紹介されている「部屋テク」は、そうした小技をせせら笑うダイナミズムで満ち溢れている。「狭いながらもアールデコ。」というキャッチで紹介される部屋の模様替え例は、「何から何までアンティークで揃えるとなると、恐ろしく高いものについてしまうので、安価な組立式の棚をパーツで買って階段状に組んだり、ダミーの柱を作って置いたりする。これならチープかつ効果的に部屋を演出できてしまう」と本文で説明する。ところがどっこい、部屋に置かれているものの説明を見ると「アンティークのミラー/58,000円」「灰皿/6,800円」「サイドテーブル/128,000円」……決してこの頃、日本が驚異的なインフレに見舞われていたわけではない。  なんだかよくわからないが、一歩先をいく展開は止まらない。続くページでは、コンピューターをステーショナリー代わりに活用するテクニックを紹介。大学ノート代わりに持ち歩きたいとして紹介するのは「Canon X-07」。よほどの通でなければ覚えていないだろうが、Canonが唯一発売した、ハンドヘルドコンピューターだ。資料によればメモリは8KB(16KBまで増設可能)、画面は20文字4行表示というもの。特集では、これに大学ノート分くらいの情報が入ってしまう「ROM・RAMカード」を持っていれば「ノートは定期入れの中に入ってしまう時代」と熱く語るのだ。実践していた人がいたならば、ぜひお話を聞かせていただきたい!
これを読んで「マイコン」を購入した人もいるのだろうか。テクノロジーの進歩には感嘆するばかり(クリックすると画像を拡大します)

あまり注目されないが80年代のデザインセンスも、かなり独特である(クリックすると画像を拡大します)
 「くそう! 80年代の大学生はこんなに愉快に暮らしていたのか」あるいは「コイツら、何しに大学に行ってたんだ」とさまざまな思いが溢れ出す。とにかく、いかなるページであっても文末に「~だろう」「~かもしれない」といった逃げの文句を打つことなく、すべて「これが正しいんだ!」とばかりに言い切っている。ここまで断言されたら、相当強固なポリシーのある大学生でなければ“洗脳”されてしまったことだろう。  さらにページを進めると、登場するのは女子大探訪記だ。やはり、80年代は女子大生がブランドだった時代、執筆者も楽しんで書いているのか、ほかのページよりも熱が入っているように感じられる。本号では、この年、薬師丸ひろ子が入学した玉川学園と、同じく、この年にミス・ユニバース日本代表を生み出した松蔭女子学院大学(現・神戸松蔭女子学院大学)を「日本で一番美女の多い二大大学」だとしてルポしている。ここでも、妙な説得力のあるネームの勢いは止まらない。むしろ、力が入りまくりだ。玉川学園は「明るく爽快感あふれるキャンパスには健康サラダガールがあふれている」そうで、「ガールフレンドとして、一緒に街を歩きたいタイプの女のコでキャンパスはいっぱい」らしい。彼女らにウケのよいファッションが「IVYやトラッドといった感じの一般受けするスタイルが彼女たちのお好み」と書いてあるあたりが時代を感じさせる。対する松蔭女子は「美人のパノラマワールド」と、いきなりな結論である。「思わず“どうして”と聞きたくなるほど素敵なコが多いのに驚いてしまう」とか書いてるし「キャンパスは美人の満漢全席」とまで宣言されたら、納得するほかない。
大学生の本分は「楽しいキャンパスライフ」確かに、そんな時代は存在した(クリックすると画像を拡大します)

 本号を貫いている思想は、前述したように、どんなムチャなことでも納得させてしまう迷いのない「言ったモン勝ち」ともいうべき勢いである。「83年秋、放課後のプレイスポットはキャンパスなのだ」と銘打ったページでは、大学のキャンパスでできる遊びとして、ブーメラン、宝探しゲーム、そしてFM放送機材を使ってミニFM局を開局しようと呼びかける。そこでは「お気に入りのレコードや自分で編集したテープをかけて、曲の合間にクラブの情報やキャンパス内でのちょっとしたトピックスでも入れれば、小さいとはいえ、もう立派な放送局だ」とまで言い切る。
このゲーム機、本気で欲しい!(クリックすると画像を拡大します)

どんな広告でも、とりあえず水着の女のコを配置するのが80年代テイスト。ちなみに自転車は宮田工業のスポルディング・フリスコ
 ここまで肯定感に溢れる思想の背景にあるものはなんなのだろうか。インターネットが普及して、自己表現は誰もが手軽に安くできるようになった。さまざまなツールが登場し、男女の出会いも30年前よりは格段に楽になったはずだ。衣食住も、30年前よりは安くて種類も多くなっている。なのに、30年前の大学生のほうがラクに楽しく生きているように見えるのはなぜだろうか。いまや、大学入学時点で多くの学生は人生を達観し、大学は就職予備校と化している。それは、単なる経済状況の変化によるものだろうか。学生運動が終わった後の「シラケ世代」、そして「新人類」が生まれた80年代、そして90年代を経て21世紀へと、大学生という存在の価値の変容、そして彼らの意識の変化を解読していくには、まだまだ研究が足りない。 (文=昼間たかし)
POPEYE (ポパイ) 2012年 04月号 今はただのファッション誌? amazon_associate_logo.jpg
■「100人にしかわからない本千冊」バックナンバー 【第5回】1991年、ボクらはこんなエロマンガを読んでいた「美少女漫画大百科」 【第4回】そして『孤独のグルメ』だけが残った......月刊「PANjA」とB級グルメの栄枯盛衰 【第3回】「いけないCOMIC」1985年1月号大特集 戸川純にただ単にミーハーしたいっ! 【第2回】あの頃、俺たちはこんな本でモテようとしていた『東京生活Qどうする?』 【第1回】超豪華"B級"文化人がロリコンで釣ってやりたい放題『ヘイ!バディー』終刊号

プロマイドの殿堂・マルベル堂で俺プロマイドを作る

趣味を押しだし過ぎですよ、店長さん!
珍奇なものをこよなく愛するライター・北村ヂンが、気になったことや場所にNGナシで体当たり取材していく【突撃取材野郎!】。第14回は、プロマイドの殿堂・マルベル堂に行ってきました。 ■ちょっと変なことになっている最近のプロマイド  アイドルにまつわるグッズは数あれど、ファンにとって最もうれしいグッズといえば、やはりアイドルの姿をバッチリ拝むことができる、いわゆる「生写真」ってヤツだろう。飾ってよし、眺めてよし、持ち歩いたってバッチグー。中にはペロペロハムハムしちゃっているファンもいるんじゃないだろうか。  まあ、それくらいファンが狂喜乱舞するグッズだけに、近年では非常にビジネス臭プンプンなアイテムと化しており「全144種類の生写真がランダム封入!」みたいな売られ方をしているケースも少なくないんだけど。「そんなのコンプするためにはいくら銭ッコをつぎ込めばいいんだ!」ということで、「生写真は麻薬。一度手を出したら後戻りできない!」などという裏・スローガンがアイドルファンの間で口伝されているほどなのだ。それでもやっぱ、他のファンがナイスな生写真を持っているのを見るとうらやましいやら欲しいやらでねぇ……。レアな生写真はリアルに麻薬級のプライスで取引されているとかいないとか。
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プロマイドといえばココ! マルベル堂。
 最近ではそんな殺伐としちゃっている生写真界隈だが、芸能界がもうちょっと牧歌的だった昭和時代、アイドルグッズの代表格だったのがいわゆる「プロマイド」と呼ばれる生写真。もちろん当時はランダム封入なんてことはなく、好きな写真を好きな枚数買えるというよい子のお財布にも優しい親切システムで、プロマイドの売上枚数がそのままアイドル人気のバロメーターとなっていたらしい。  そんなプロマイドの元祖といえば「マルベル堂」。名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかと思うけど、昭和の頃から自社でプロマイドを撮影・製造しているマルベル堂は今でも浅草で店舗を営業していて、8万種類以上もの懐かしいスターたちのプロマイドを買うことができる。
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スターのプロマイドが所狭しと……
 しかし、こんな伝統あるマルベル堂が、最近ちょっとどーかしちゃってるみたいなのだ。だって、店頭にズラッと並んだ昭和スターたちに混じって、なぜか掟ポルシェ、杉作J太郎、吉田豪といった、ロフトプラスワン、新宿歌舞伎町地下2階感のただようサブカル者たちのプロマイドが置かれているんだもん。しかも掟さん、杉作さんにいたっては尻丸出し状態の写真まである始末!
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真ん中へんに明らかに昭和スターじゃない人が……。
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アラカンや秀樹に混じって掟ポルシェ、杉作J太郎、吉田豪
のプロマイドが……どーなってるの!?
 従来のプロマイドといえば、スターがキッチリポーズをつけてニコパチ……というのが常識だったが、平成のプロマイド業界はこんな方向に進化を遂げていたとは。  こりゃあ取材しておかなきゃなるまい、ということでマルベル堂の店長・武田さんと、30年間スターのプロマイドを撮り続けてきたカメラマンの中村さんに話を伺った。 ■新旧プロマイド事情を訊く ――あの、明らかに昭和スターという枠から外れているイカれたプロマイドはどうして作ることになったんですか。 武田さん 偶然、掟ポルシェさんを電車でお見かけしまして、その場で「プロマイドを作りませんか?」と声をかけて……まあナンパですね(笑)。実は以前からロマンポルシェ。のライブに行ったりするくらいファンだったので。 ――あ、やっぱり店長さんの趣味なんだ……。 武田さん ちょうど、方向性を模索している時期でもあったんですよね。昔は各芸能事務所からデビューする新人アイドルさんはウチでプロマイドを作るというのが恒例になっていたんですけど、ある頃から事務所さん自身で生写真を作って売るようになってしまって、マルベル堂で新たにプロマイドを作ることってなくなってしまったんです。 中村さん 昭和のアイドルはみんなプロマイドを作ってたんだけどね。俺も、山口百恵ちゃんから、キャンディーズ、ピンク・レディー、郷ひろみ、西城秀樹……ジャニーズ系もかなり撮ってきたけど、最後は男闘呼組くらいかな? 光GENJI以降は作らなくなっちゃったんだよ。 武田さん なので、新たにプロマイドを作らせてくれる人はいないかな……と考えていたときに、人を通じてDDTプロレスリングの高木三四郎さんと知り合って、DDTのレスラーさんのプロマイドを作ることになったんです。アイドルだけじゃなく、そういうサブカル路線っていうのもアリかなと思い、掟さんたちのプロマイドも作らせてもらったんですが、バカ売れってほどではないですけど、コンスタントに売れ続けていますよ。 中村さん でもあの撮影はまいったよね。男の尻を撮ったのなんて初めてだからさぁ。 ――サブカル寄りな人以外だと、やはり昭和スターのプロマイドが中心ですけど、今でも売れているのはどなたですか。 武田さん やっぱりジュリーこと沢田研二さんが圧倒的に強いですね。キャンディーズあたりの人気も根強いですが、それは「キャンディーズのプロマイドが欲しくて」と狙ってウチに来てくださるお客さんがメインなんですね。でもジュリーの場合、通りがかりの観光客の方がフラッと見かけて買っていくことも多いんですよ。やっぱり今見てもカッコイイですし、スター性が違うんですかね? ――やっぱりジュリーは永遠のスターですねぇ。昭和のプロマイド全盛期にもやはりジュリーが売れていたんでしょうか。 武田さん 昔もジュリーはすごく売れていたらしいですけど、ピンク・レディーが出てきた頃はもっとすごかったみたいですね。 中村さん あの頃、マルベル堂のプロマイドを扱っているお店が全国で2,000店舗以上あったんだけど、生産が全然追いつかなかったから。当時は一枚しかないネガを使って手作業で写真を焼いていたんで、大量生産するのは本当に大変だったんだよ。 ――いろんなスターを撮ってきた中でもとくに印象に残っている人は。 中村さん みんなそれぞれ印象に残ってるけど……、西城秀樹なんかは自分をプロデュースする能力がすごくあったね。普通の新人アイドルだったらこっちの指示するポーズを取るので精一杯なのに、秀樹は「こういうポーズはどうですか?」って自分から提案してくるんだよ。それがまたファンの心理をちゃんとつかんでるポーズで、よく売れたんだ。 ――最近の生写真とプロマイドの違いってなんだと思いますか。 中村さん 完全に別物だと思ってるよ。プロマイドと生写真の一番の違いって、ポーズを取っているかどうか。今の生写真って、まあ言っちゃえばスナップ写真みたいなものだけど、プロマイドはキッチリとポーズを決めて作られたものだから、頭の先から爪先まで神経を配って撮っているからね。昔、ジャニー(喜多川)さんから「ユー、ただの写真を撮ってほしいんじゃない、プロマイドを撮って欲しいんだ!」って言われたのはよく覚えている。ファンがほしがっているのはただの写真じゃなくて、キッチリ作り込まれたプロマイドなんだってことだよね。……それを言われたとき、ジャニーさんと夜中に部屋でふたりっきりだったからいろいろと緊張したけどねぇ(笑)。 ――最近のアイドルでプロマイドを作れるとしたら誰のものを撮りたいですか。 中村さん やっぱり嵐かな。それはオレが撮りたいかどうかっていう話じゃなくて、子どもたちが喜んでくれるプロマイドを作りたいんだよ。今だったら嵐のがあったらうれしいでしょ。 武田さん せっかくお店に来てくれたお客さんに「嵐のはないんですか?」って聞かれるのはやっぱりつらいですよね。 中村さん ジャニーさんも、その辺のところを考えてくれて、プロマイドを作らせてくれればいいんだけどね。 ■ついに俺プロマイドの撮影……そして販売開始!?  ……と、こんな感じで今昔のプロマイド事情を聞かせてもらったのだが、なんとマルベル堂では最近、スターのプロマイドを販売するだけではなく、「あなたのプロマイド撮影します」というサービスもやっているそうなのだ。  その名の通り、数々のスターを撮影してきた中村カメラマンがオリジナルのプロマイドを撮影してくれるというこのサービス。プロのカメラマンさんに撮影してもらう機会なんて滅多にないし、ましてやプロマイドを作ってもらうことなんてこのチャンスを逃したら二度となさそう! ……ということで、取材のついでにこのサービスも体験させてもらった。
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スタジオにはこんな年代物のカメラまで。
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ここがスターたちもやって来たスタジオ……。
 幾多のスターたちがプロマイドを撮影してきたスタジオにドキドキしながら足を踏み入れると、ものすごいゴツいカメラが。さすがに最近では予備でデジカメも用意されてはいるらしいが、やはりプロマイドを撮影するのはフィルム。しかもポスターサイズまで引き伸ばしても粒子が粗くならないほどの巨大なフィルムを使用しているんだとか。
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この巨大なフィルムがプロマイドの美しさの秘密!
 デジカメが主流になってからはとくに、シャッターをバシバシ切るカメラマンが多くなったけど、この道30年以上の中村さんは一枚入魂!(フィルムも高いし)「もうちょっと身体をひねって……指は伸ばして」などと細かくポーズや衣装を指示して、なかなかシャッターを切らないのだ。
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細かいポーズ指導が……
ホントにコレでいいの!? バカみたいじゃない?
 あまり写真を撮られ慣れてないモンで、ボクも言われるがまま、カウボーイハットをかぶらされ、ギターを持たされ、椅子に足を乗せられ……こんなヤツが道を歩いていたら大バカ丸出しとしか形容しようのない珍妙な格好&ポーズを決めた状態で撮られてしまったのだが、出来上がりを見ると……確かに顔はともかくとして、昭和スター感がちゃんと出ていてプロマイドっぽい!
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おおっ、格好よ……くはないけど、それっぽい!
「こういうポーズのパターンっていっぱいあるんだけど、ワイルド系、ブリッ子系、女優系……と相手に合わせたポーズを選んで撮っていくんだよ。じゃあ次はブリッ子っぽいので撮ってみようか」  「なんで俺がブリッ子!?」と文句を言う間もなく、持ってこられた椅子がまたすごかった。かつて、キャンディーズや近藤真彦、吉永小百合も座ったという、まさにスターのみが座ることを許された(!?)椅子なのだという。
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こ……この椅子にキャンディーズがッ!?
 この椅子にまたがって、またしても中村さんの言われるがままにブリッ子っぽいポーズを取っていく。 「あーカワイイ! そうそうカワイイ!」  ……中村さんも、30代男を前にしてどんな気持ちでそんなことを言っていたのかは分からないが、意外とうれし恥ずかしいモンで「いやいや、何言ってんですかー」と言いつつも顔はニヤニヤしてしまい、先ほどよりも自然な笑顔を作ることができたような気がする。おお、コレが数々のスターを撮ってきたプロフェッショナルの技か。
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またしてもポーズ指導。この左手がかわいさのポイント。
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「最後に店長さんたちの写真も……」と言ったら、パッとこの
ポーズを。さすがです! 左から武田店長と中村カメラマン。
 約一週間ほどで完成した俺プロマイドは、どれも撮影の腕もさることながら、やはりポーズの指示が的確で実に昭和感あふれる、プロマイドらしい出来栄えに。いやぁ、なかなかイイものができたんじゃないの!?  そこで調子に乗って、店長の武田さんに「あのー……せっかくなんでボクのプロマイドも店頭に置いて売ってくれませんかねぇ……スターたちの中にシレッと紛れ込ませて」とダメ元で頼んでみたところ、「いいですよー!」と快諾!  ……というわけで、浅草・マルベル堂さんの店頭でしばらくボクのプロマイドが販売されているようです。30代半ばの男が必死にアイドルポーズを決めている写真が欲しい、バカなプロマイドが欲しいという方は、ぜひお買い求めを!(一枚くらい売れないとさすがにマルベル堂さんに申し訳ないんで……) (取材・文・イラスト・写真=北村ヂン)
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店頭でバッチリ販売されていました。
掟さん、杉作さん、豪さんという思いっきりサブカルゾーンですが……(妥当)。
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しかも、まさかの全3種類販売中!
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みなさん、よろしくお願いしまーす!
■マルベル堂 新仲見世店 住所:東京都台東区浅草1-30-6 電話・FAX:03-3844-1445 営業時間:平日11:00~19:00  土日祝10:30~19:00 年中無休 <http://marubell.co.jp/> i01maruberu.jpg
アイドル生ブロマイド ARASHI 15パック入1箱 ジャニさん、どうっすか? amazon_associate_logo.jpg
●「突撃取材野郎!」バックナンバー 【第13回】名古屋駅より徒歩5分。1泊1,500円〜のバカ安ホテルに泊まる 【第12回】大阪にそびえ立つ変な形の謎タワーに登ろうとしてきた! 【第11回】藤子不二雄Aだらけの町・富山県氷見市! 【第10回】ファン狂喜乱舞モノ!?  藤子・F・不二雄ミュージアムに行ってきた 【第9回】男だけど女声を使いこなす"両声類"になりたい! 【第8回】SM雑誌だらけの図書館!? 風俗資料館 【第7回】 テレクラは今こんなことになっている2010 【第6回】『東京都北区赤羽』の作者と行く赤羽ディープスポットめぐり(後編) 【第5回】『東京都北区赤羽』の作者と行く赤羽ディープスポットめぐり(前編) 【第4回】手塚、藤子、赤塚、石ノ森......漫画界の巨匠たちも食べた伝説のラーメン屋 【第3回】「激安宿に泊まりたい!」ドヤ街で一泊1,000円代の宿に泊まってみる 【第2回】「甘酸っぱい思い出のシンボル......」僕らの愛したブルマーは今どこに 【第1回】アイドル小明と行く、サブカル魔窟『中野ブロードウェイ』

プロマイドの殿堂・マルベル堂で俺プロマイドを作る

趣味を押しだし過ぎですよ、店長さん!
珍奇なものをこよなく愛するライター・北村ヂンが、気になったことや場所にNGナシで体当たり取材していく【突撃取材野郎!】。第14回は、プロマイドの殿堂・マルベル堂に行ってきました。 ■ちょっと変なことになっている最近のプロマイド  アイドルにまつわるグッズは数あれど、ファンにとって最もうれしいグッズといえば、やはりアイドルの姿をバッチリ拝むことができる、いわゆる「生写真」ってヤツだろう。飾ってよし、眺めてよし、持ち歩いたってバッチグー。中にはペロペロハムハムしちゃっているファンもいるんじゃないだろうか。  まあ、それくらいファンが狂喜乱舞するグッズだけに、近年では非常にビジネス臭プンプンなアイテムと化しており「全144種類の生写真がランダム封入!」みたいな売られ方をしているケースも少なくないんだけど。「そんなのコンプするためにはいくら銭ッコをつぎ込めばいいんだ!」ということで、「生写真は麻薬。一度手を出したら後戻りできない!」などという裏・スローガンがアイドルファンの間で口伝されているほどなのだ。それでもやっぱ、他のファンがナイスな生写真を持っているのを見るとうらやましいやら欲しいやらでねぇ……。レアな生写真はリアルに麻薬級のプライスで取引されているとかいないとか。
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プロマイドといえばココ! マルベル堂。
 最近ではそんな殺伐としちゃっている生写真界隈だが、芸能界がもうちょっと牧歌的だった昭和時代、アイドルグッズの代表格だったのがいわゆる「プロマイド」と呼ばれる生写真。もちろん当時はランダム封入なんてことはなく、好きな写真を好きな枚数買えるというよい子のお財布にも優しい親切システムで、プロマイドの売上枚数がそのままアイドル人気のバロメーターとなっていたらしい。  そんなプロマイドの元祖といえば「マルベル堂」。名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかと思うけど、昭和の頃から自社でプロマイドを撮影・製造しているマルベル堂は今でも浅草で店舗を営業していて、8万種類以上もの懐かしいスターたちのプロマイドを買うことができる。
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スターのプロマイドが所狭しと……
 しかし、こんな伝統あるマルベル堂が、最近ちょっとどーかしちゃってるみたいなのだ。だって、店頭にズラッと並んだ昭和スターたちに混じって、なぜか掟ポルシェ、杉作J太郎、吉田豪といった、ロフトプラスワン、新宿歌舞伎町地下2階感のただようサブカル者たちのプロマイドが置かれているんだもん。しかも掟さん、杉作さんにいたっては尻丸出し状態の写真まである始末!
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真ん中へんに明らかに昭和スターじゃない人が……。
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アラカンや秀樹に混じって掟ポルシェ、杉作J太郎、吉田豪
のプロマイドが……どーなってるの!?
 従来のプロマイドといえば、スターがキッチリポーズをつけてニコパチ……というのが常識だったが、平成のプロマイド業界はこんな方向に進化を遂げていたとは。  こりゃあ取材しておかなきゃなるまい、ということでマルベル堂の店長・武田さんと、30年間スターのプロマイドを撮り続けてきたカメラマンの中村さんに話を伺った。 ■新旧プロマイド事情を訊く ――あの、明らかに昭和スターという枠から外れているイカれたプロマイドはどうして作ることになったんですか。 武田さん 偶然、掟ポルシェさんを電車でお見かけしまして、その場で「プロマイドを作りませんか?」と声をかけて……まあナンパですね(笑)。実は以前からロマンポルシェ。のライブに行ったりするくらいファンだったので。 ――あ、やっぱり店長さんの趣味なんだ……。 武田さん ちょうど、方向性を模索している時期でもあったんですよね。昔は各芸能事務所からデビューする新人アイドルさんはウチでプロマイドを作るというのが恒例になっていたんですけど、ある頃から事務所さん自身で生写真を作って売るようになってしまって、マルベル堂で新たにプロマイドを作ることってなくなってしまったんです。 中村さん 昭和のアイドルはみんなプロマイドを作ってたんだけどね。俺も、山口百恵ちゃんから、キャンディーズ、ピンク・レディー、郷ひろみ、西城秀樹……ジャニーズ系もかなり撮ってきたけど、最後は男闘呼組くらいかな? 光GENJI以降は作らなくなっちゃったんだよ。 武田さん なので、新たにプロマイドを作らせてくれる人はいないかな……と考えていたときに、人を通じてDDTプロレスリングの高木三四郎さんと知り合って、DDTのレスラーさんのプロマイドを作ることになったんです。アイドルだけじゃなく、そういうサブカル路線っていうのもアリかなと思い、掟さんたちのプロマイドも作らせてもらったんですが、バカ売れってほどではないですけど、コンスタントに売れ続けていますよ。 中村さん でもあの撮影はまいったよね。男の尻を撮ったのなんて初めてだからさぁ。 ――サブカル寄りな人以外だと、やはり昭和スターのプロマイドが中心ですけど、今でも売れているのはどなたですか。 武田さん やっぱりジュリーこと沢田研二さんが圧倒的に強いですね。キャンディーズあたりの人気も根強いですが、それは「キャンディーズのプロマイドが欲しくて」と狙ってウチに来てくださるお客さんがメインなんですね。でもジュリーの場合、通りがかりの観光客の方がフラッと見かけて買っていくことも多いんですよ。やっぱり今見てもカッコイイですし、スター性が違うんですかね? ――やっぱりジュリーは永遠のスターですねぇ。昭和のプロマイド全盛期にもやはりジュリーが売れていたんでしょうか。 武田さん 昔もジュリーはすごく売れていたらしいですけど、ピンク・レディーが出てきた頃はもっとすごかったみたいですね。 中村さん あの頃、マルベル堂のプロマイドを扱っているお店が全国で2,000店舗以上あったんだけど、生産が全然追いつかなかったから。当時は一枚しかないネガを使って手作業で写真を焼いていたんで、大量生産するのは本当に大変だったんだよ。 ――いろんなスターを撮ってきた中でもとくに印象に残っている人は。 中村さん みんなそれぞれ印象に残ってるけど……、西城秀樹なんかは自分をプロデュースする能力がすごくあったね。普通の新人アイドルだったらこっちの指示するポーズを取るので精一杯なのに、秀樹は「こういうポーズはどうですか?」って自分から提案してくるんだよ。それがまたファンの心理をちゃんとつかんでるポーズで、よく売れたんだ。 ――最近の生写真とプロマイドの違いってなんだと思いますか。 中村さん 完全に別物だと思ってるよ。プロマイドと生写真の一番の違いって、ポーズを取っているかどうか。今の生写真って、まあ言っちゃえばスナップ写真みたいなものだけど、プロマイドはキッチリとポーズを決めて作られたものだから、頭の先から爪先まで神経を配って撮っているからね。昔、ジャニー(喜多川)さんから「ユー、ただの写真を撮ってほしいんじゃない、プロマイドを撮って欲しいんだ!」って言われたのはよく覚えている。ファンがほしがっているのはただの写真じゃなくて、キッチリ作り込まれたプロマイドなんだってことだよね。……それを言われたとき、ジャニーさんと夜中に部屋でふたりっきりだったからいろいろと緊張したけどねぇ(笑)。 ――最近のアイドルでプロマイドを作れるとしたら誰のものを撮りたいですか。 中村さん やっぱり嵐かな。それはオレが撮りたいかどうかっていう話じゃなくて、子どもたちが喜んでくれるプロマイドを作りたいんだよ。今だったら嵐のがあったらうれしいでしょ。 武田さん せっかくお店に来てくれたお客さんに「嵐のはないんですか?」って聞かれるのはやっぱりつらいですよね。 中村さん ジャニーさんも、その辺のところを考えてくれて、プロマイドを作らせてくれればいいんだけどね。 ■ついに俺プロマイドの撮影……そして販売開始!?  ……と、こんな感じで今昔のプロマイド事情を聞かせてもらったのだが、なんとマルベル堂では最近、スターのプロマイドを販売するだけではなく、「あなたのプロマイド撮影します」というサービスもやっているそうなのだ。  その名の通り、数々のスターを撮影してきた中村カメラマンがオリジナルのプロマイドを撮影してくれるというこのサービス。プロのカメラマンさんに撮影してもらう機会なんて滅多にないし、ましてやプロマイドを作ってもらうことなんてこのチャンスを逃したら二度となさそう! ……ということで、取材のついでにこのサービスも体験させてもらった。
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スタジオにはこんな年代物のカメラまで。
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ここがスターたちもやって来たスタジオ……。
 幾多のスターたちがプロマイドを撮影してきたスタジオにドキドキしながら足を踏み入れると、ものすごいゴツいカメラが。さすがに最近では予備でデジカメも用意されてはいるらしいが、やはりプロマイドを撮影するのはフィルム。しかもポスターサイズまで引き伸ばしても粒子が粗くならないほどの巨大なフィルムを使用しているんだとか。
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この巨大なフィルムがプロマイドの美しさの秘密!
 デジカメが主流になってからはとくに、シャッターをバシバシ切るカメラマンが多くなったけど、この道30年以上の中村さんは一枚入魂!(フィルムも高いし)「もうちょっと身体をひねって……指は伸ばして」などと細かくポーズや衣装を指示して、なかなかシャッターを切らないのだ。
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細かいポーズ指導が……
ホントにコレでいいの!? バカみたいじゃない?
 あまり写真を撮られ慣れてないモンで、ボクも言われるがまま、カウボーイハットをかぶらされ、ギターを持たされ、椅子に足を乗せられ……こんなヤツが道を歩いていたら大バカ丸出しとしか形容しようのない珍妙な格好&ポーズを決めた状態で撮られてしまったのだが、出来上がりを見ると……確かに顔はともかくとして、昭和スター感がちゃんと出ていてプロマイドっぽい!
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おおっ、格好よ……くはないけど、それっぽい!
「こういうポーズのパターンっていっぱいあるんだけど、ワイルド系、ブリッ子系、女優系……と相手に合わせたポーズを選んで撮っていくんだよ。じゃあ次はブリッ子っぽいので撮ってみようか」  「なんで俺がブリッ子!?」と文句を言う間もなく、持ってこられた椅子がまたすごかった。かつて、キャンディーズや近藤真彦、吉永小百合も座ったという、まさにスターのみが座ることを許された(!?)椅子なのだという。
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こ……この椅子にキャンディーズがッ!?
 この椅子にまたがって、またしても中村さんの言われるがままにブリッ子っぽいポーズを取っていく。 「あーカワイイ! そうそうカワイイ!」  ……中村さんも、30代男を前にしてどんな気持ちでそんなことを言っていたのかは分からないが、意外とうれし恥ずかしいモンで「いやいや、何言ってんですかー」と言いつつも顔はニヤニヤしてしまい、先ほどよりも自然な笑顔を作ることができたような気がする。おお、コレが数々のスターを撮ってきたプロフェッショナルの技か。
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またしてもポーズ指導。この左手がかわいさのポイント。
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「最後に店長さんたちの写真も……」と言ったら、パッとこの
ポーズを。さすがです! 左から武田店長と中村カメラマン。
 約一週間ほどで完成した俺プロマイドは、どれも撮影の腕もさることながら、やはりポーズの指示が的確で実に昭和感あふれる、プロマイドらしい出来栄えに。いやぁ、なかなかイイものができたんじゃないの!?  そこで調子に乗って、店長の武田さんに「あのー……せっかくなんでボクのプロマイドも店頭に置いて売ってくれませんかねぇ……スターたちの中にシレッと紛れ込ませて」とダメ元で頼んでみたところ、「いいですよー!」と快諾!  ……というわけで、浅草・マルベル堂さんの店頭でしばらくボクのプロマイドが販売されているようです。30代半ばの男が必死にアイドルポーズを決めている写真が欲しい、バカなプロマイドが欲しいという方は、ぜひお買い求めを!(一枚くらい売れないとさすがにマルベル堂さんに申し訳ないんで……) (取材・文・イラスト・写真=北村ヂン)
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店頭でバッチリ販売されていました。
掟さん、杉作さん、豪さんという思いっきりサブカルゾーンですが……(妥当)。
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しかも、まさかの全3種類販売中!
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みなさん、よろしくお願いしまーす!
■マルベル堂 新仲見世店 住所:東京都台東区浅草1-30-6 電話・FAX:03-3844-1445 営業時間:平日11:00~19:00  土日祝10:30~19:00 年中無休 <http://marubell.co.jp/> i01maruberu.jpg
アイドル生ブロマイド ARASHI 15パック入1箱 ジャニさん、どうっすか? amazon_associate_logo.jpg
●「突撃取材野郎!」バックナンバー 【第13回】名古屋駅より徒歩5分。1泊1,500円〜のバカ安ホテルに泊まる 【第12回】大阪にそびえ立つ変な形の謎タワーに登ろうとしてきた! 【第11回】藤子不二雄Aだらけの町・富山県氷見市! 【第10回】ファン狂喜乱舞モノ!?  藤子・F・不二雄ミュージアムに行ってきた 【第9回】男だけど女声を使いこなす"両声類"になりたい! 【第8回】SM雑誌だらけの図書館!? 風俗資料館 【第7回】 テレクラは今こんなことになっている2010 【第6回】『東京都北区赤羽』の作者と行く赤羽ディープスポットめぐり(後編) 【第5回】『東京都北区赤羽』の作者と行く赤羽ディープスポットめぐり(前編) 【第4回】手塚、藤子、赤塚、石ノ森......漫画界の巨匠たちも食べた伝説のラーメン屋 【第3回】「激安宿に泊まりたい!」ドヤ街で一泊1,000円代の宿に泊まってみる 【第2回】「甘酸っぱい思い出のシンボル......」僕らの愛したブルマーは今どこに 【第1回】アイドル小明と行く、サブカル魔窟『中野ブロードウェイ』

プロマイドの殿堂・マルベル堂で俺プロマイドを作る

趣味を押しだし過ぎですよ、店長さん!
珍奇なものをこよなく愛するライター・北村ヂンが、気になったことや場所にNGナシで体当たり取材していく【突撃取材野郎!】。第14回は、プロマイドの殿堂・マルベル堂に行ってきました。 ■ちょっと変なことになっている最近のプロマイド  アイドルにまつわるグッズは数あれど、ファンにとって最もうれしいグッズといえば、やはりアイドルの姿をバッチリ拝むことができる、いわゆる「生写真」ってヤツだろう。飾ってよし、眺めてよし、持ち歩いたってバッチグー。中にはペロペロハムハムしちゃっているファンもいるんじゃないだろうか。  まあ、それくらいファンが狂喜乱舞するグッズだけに、近年では非常にビジネス臭プンプンなアイテムと化しており「全144種類の生写真がランダム封入!」みたいな売られ方をしているケースも少なくないんだけど。「そんなのコンプするためにはいくら銭ッコをつぎ込めばいいんだ!」ということで、「生写真は麻薬。一度手を出したら後戻りできない!」などという裏・スローガンがアイドルファンの間で口伝されているほどなのだ。それでもやっぱ、他のファンがナイスな生写真を持っているのを見るとうらやましいやら欲しいやらでねぇ……。レアな生写真はリアルに麻薬級のプライスで取引されているとかいないとか。
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プロマイドといえばココ! マルベル堂。
 最近ではそんな殺伐としちゃっている生写真界隈だが、芸能界がもうちょっと牧歌的だった昭和時代、アイドルグッズの代表格だったのがいわゆる「プロマイド」と呼ばれる生写真。もちろん当時はランダム封入なんてことはなく、好きな写真を好きな枚数買えるというよい子のお財布にも優しい親切システムで、プロマイドの売上枚数がそのままアイドル人気のバロメーターとなっていたらしい。  そんなプロマイドの元祖といえば「マルベル堂」。名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかと思うけど、昭和の頃から自社でプロマイドを撮影・製造しているマルベル堂は今でも浅草で店舗を営業していて、8万種類以上もの懐かしいスターたちのプロマイドを買うことができる。
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スターのプロマイドが所狭しと……
 しかし、こんな伝統あるマルベル堂が、最近ちょっとどーかしちゃってるみたいなのだ。だって、店頭にズラッと並んだ昭和スターたちに混じって、なぜか掟ポルシェ、杉作J太郎、吉田豪といった、ロフトプラスワン、新宿歌舞伎町地下2階感のただようサブカル者たちのプロマイドが置かれているんだもん。しかも掟さん、杉作さんにいたっては尻丸出し状態の写真まである始末!
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真ん中へんに明らかに昭和スターじゃない人が……。
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アラカンや秀樹に混じって掟ポルシェ、杉作J太郎、吉田豪
のプロマイドが……どーなってるの!?
 従来のプロマイドといえば、スターがキッチリポーズをつけてニコパチ……というのが常識だったが、平成のプロマイド業界はこんな方向に進化を遂げていたとは。  こりゃあ取材しておかなきゃなるまい、ということでマルベル堂の店長・武田さんと、30年間スターのプロマイドを撮り続けてきたカメラマンの中村さんに話を伺った。 ■新旧プロマイド事情を訊く ――あの、明らかに昭和スターという枠から外れているイカれたプロマイドはどうして作ることになったんですか。 武田さん 偶然、掟ポルシェさんを電車でお見かけしまして、その場で「プロマイドを作りませんか?」と声をかけて……まあナンパですね(笑)。実は以前からロマンポルシェ。のライブに行ったりするくらいファンだったので。 ――あ、やっぱり店長さんの趣味なんだ……。 武田さん ちょうど、方向性を模索している時期でもあったんですよね。昔は各芸能事務所からデビューする新人アイドルさんはウチでプロマイドを作るというのが恒例になっていたんですけど、ある頃から事務所さん自身で生写真を作って売るようになってしまって、マルベル堂で新たにプロマイドを作ることってなくなってしまったんです。 中村さん 昭和のアイドルはみんなプロマイドを作ってたんだけどね。俺も、山口百恵ちゃんから、キャンディーズ、ピンク・レディー、郷ひろみ、西城秀樹……ジャニーズ系もかなり撮ってきたけど、最後は男闘呼組くらいかな? 光GENJI以降は作らなくなっちゃったんだよ。 武田さん なので、新たにプロマイドを作らせてくれる人はいないかな……と考えていたときに、人を通じてDDTプロレスリングの高木三四郎さんと知り合って、DDTのレスラーさんのプロマイドを作ることになったんです。アイドルだけじゃなく、そういうサブカル路線っていうのもアリかなと思い、掟さんたちのプロマイドも作らせてもらったんですが、バカ売れってほどではないですけど、コンスタントに売れ続けていますよ。 中村さん でもあの撮影はまいったよね。男の尻を撮ったのなんて初めてだからさぁ。 ――サブカル寄りな人以外だと、やはり昭和スターのプロマイドが中心ですけど、今でも売れているのはどなたですか。 武田さん やっぱりジュリーこと沢田研二さんが圧倒的に強いですね。キャンディーズあたりの人気も根強いですが、それは「キャンディーズのプロマイドが欲しくて」と狙ってウチに来てくださるお客さんがメインなんですね。でもジュリーの場合、通りがかりの観光客の方がフラッと見かけて買っていくことも多いんですよ。やっぱり今見てもカッコイイですし、スター性が違うんですかね? ――やっぱりジュリーは永遠のスターですねぇ。昭和のプロマイド全盛期にもやはりジュリーが売れていたんでしょうか。 武田さん 昔もジュリーはすごく売れていたらしいですけど、ピンク・レディーが出てきた頃はもっとすごかったみたいですね。 中村さん あの頃、マルベル堂のプロマイドを扱っているお店が全国で2,000店舗以上あったんだけど、生産が全然追いつかなかったから。当時は一枚しかないネガを使って手作業で写真を焼いていたんで、大量生産するのは本当に大変だったんだよ。 ――いろんなスターを撮ってきた中でもとくに印象に残っている人は。 中村さん みんなそれぞれ印象に残ってるけど……、西城秀樹なんかは自分をプロデュースする能力がすごくあったね。普通の新人アイドルだったらこっちの指示するポーズを取るので精一杯なのに、秀樹は「こういうポーズはどうですか?」って自分から提案してくるんだよ。それがまたファンの心理をちゃんとつかんでるポーズで、よく売れたんだ。 ――最近の生写真とプロマイドの違いってなんだと思いますか。 中村さん 完全に別物だと思ってるよ。プロマイドと生写真の一番の違いって、ポーズを取っているかどうか。今の生写真って、まあ言っちゃえばスナップ写真みたいなものだけど、プロマイドはキッチリとポーズを決めて作られたものだから、頭の先から爪先まで神経を配って撮っているからね。昔、ジャニー(喜多川)さんから「ユー、ただの写真を撮ってほしいんじゃない、プロマイドを撮って欲しいんだ!」って言われたのはよく覚えている。ファンがほしがっているのはただの写真じゃなくて、キッチリ作り込まれたプロマイドなんだってことだよね。……それを言われたとき、ジャニーさんと夜中に部屋でふたりっきりだったからいろいろと緊張したけどねぇ(笑)。 ――最近のアイドルでプロマイドを作れるとしたら誰のものを撮りたいですか。 中村さん やっぱり嵐かな。それはオレが撮りたいかどうかっていう話じゃなくて、子どもたちが喜んでくれるプロマイドを作りたいんだよ。今だったら嵐のがあったらうれしいでしょ。 武田さん せっかくお店に来てくれたお客さんに「嵐のはないんですか?」って聞かれるのはやっぱりつらいですよね。 中村さん ジャニーさんも、その辺のところを考えてくれて、プロマイドを作らせてくれればいいんだけどね。 ■ついに俺プロマイドの撮影……そして販売開始!?  ……と、こんな感じで今昔のプロマイド事情を聞かせてもらったのだが、なんとマルベル堂では最近、スターのプロマイドを販売するだけではなく、「あなたのプロマイド撮影します」というサービスもやっているそうなのだ。  その名の通り、数々のスターを撮影してきた中村カメラマンがオリジナルのプロマイドを撮影してくれるというこのサービス。プロのカメラマンさんに撮影してもらう機会なんて滅多にないし、ましてやプロマイドを作ってもらうことなんてこのチャンスを逃したら二度となさそう! ……ということで、取材のついでにこのサービスも体験させてもらった。
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スタジオにはこんな年代物のカメラまで。
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ここがスターたちもやって来たスタジオ……。
 幾多のスターたちがプロマイドを撮影してきたスタジオにドキドキしながら足を踏み入れると、ものすごいゴツいカメラが。さすがに最近では予備でデジカメも用意されてはいるらしいが、やはりプロマイドを撮影するのはフィルム。しかもポスターサイズまで引き伸ばしても粒子が粗くならないほどの巨大なフィルムを使用しているんだとか。
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この巨大なフィルムがプロマイドの美しさの秘密!
 デジカメが主流になってからはとくに、シャッターをバシバシ切るカメラマンが多くなったけど、この道30年以上の中村さんは一枚入魂!(フィルムも高いし)「もうちょっと身体をひねって……指は伸ばして」などと細かくポーズや衣装を指示して、なかなかシャッターを切らないのだ。
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細かいポーズ指導が……
ホントにコレでいいの!? バカみたいじゃない?
 あまり写真を撮られ慣れてないモンで、ボクも言われるがまま、カウボーイハットをかぶらされ、ギターを持たされ、椅子に足を乗せられ……こんなヤツが道を歩いていたら大バカ丸出しとしか形容しようのない珍妙な格好&ポーズを決めた状態で撮られてしまったのだが、出来上がりを見ると……確かに顔はともかくとして、昭和スター感がちゃんと出ていてプロマイドっぽい!
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おおっ、格好よ……くはないけど、それっぽい!
「こういうポーズのパターンっていっぱいあるんだけど、ワイルド系、ブリッ子系、女優系……と相手に合わせたポーズを選んで撮っていくんだよ。じゃあ次はブリッ子っぽいので撮ってみようか」  「なんで俺がブリッ子!?」と文句を言う間もなく、持ってこられた椅子がまたすごかった。かつて、キャンディーズや近藤真彦、吉永小百合も座ったという、まさにスターのみが座ることを許された(!?)椅子なのだという。
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こ……この椅子にキャンディーズがッ!?
 この椅子にまたがって、またしても中村さんの言われるがままにブリッ子っぽいポーズを取っていく。 「あーカワイイ! そうそうカワイイ!」  ……中村さんも、30代男を前にしてどんな気持ちでそんなことを言っていたのかは分からないが、意外とうれし恥ずかしいモンで「いやいや、何言ってんですかー」と言いつつも顔はニヤニヤしてしまい、先ほどよりも自然な笑顔を作ることができたような気がする。おお、コレが数々のスターを撮ってきたプロフェッショナルの技か。
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またしてもポーズ指導。この左手がかわいさのポイント。
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「最後に店長さんたちの写真も……」と言ったら、パッとこの
ポーズを。さすがです! 左から武田店長と中村カメラマン。
 約一週間ほどで完成した俺プロマイドは、どれも撮影の腕もさることながら、やはりポーズの指示が的確で実に昭和感あふれる、プロマイドらしい出来栄えに。いやぁ、なかなかイイものができたんじゃないの!?  そこで調子に乗って、店長の武田さんに「あのー……せっかくなんでボクのプロマイドも店頭に置いて売ってくれませんかねぇ……スターたちの中にシレッと紛れ込ませて」とダメ元で頼んでみたところ、「いいですよー!」と快諾!  ……というわけで、浅草・マルベル堂さんの店頭でしばらくボクのプロマイドが販売されているようです。30代半ばの男が必死にアイドルポーズを決めている写真が欲しい、バカなプロマイドが欲しいという方は、ぜひお買い求めを!(一枚くらい売れないとさすがにマルベル堂さんに申し訳ないんで……) (取材・文・イラスト・写真=北村ヂン)
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店頭でバッチリ販売されていました。
掟さん、杉作さん、豪さんという思いっきりサブカルゾーンですが……(妥当)。
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しかも、まさかの全3種類販売中!
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みなさん、よろしくお願いしまーす!
■マルベル堂 新仲見世店 住所:東京都台東区浅草1-30-6 電話・FAX:03-3844-1445 営業時間:平日11:00~19:00  土日祝10:30~19:00 年中無休 <http://marubell.co.jp/> i01maruberu.jpg
アイドル生ブロマイド ARASHI 15パック入1箱 ジャニさん、どうっすか? amazon_associate_logo.jpg
●「突撃取材野郎!」バックナンバー 【第13回】名古屋駅より徒歩5分。1泊1,500円〜のバカ安ホテルに泊まる 【第12回】大阪にそびえ立つ変な形の謎タワーに登ろうとしてきた! 【第11回】藤子不二雄Aだらけの町・富山県氷見市! 【第10回】ファン狂喜乱舞モノ!?  藤子・F・不二雄ミュージアムに行ってきた 【第9回】男だけど女声を使いこなす"両声類"になりたい! 【第8回】SM雑誌だらけの図書館!? 風俗資料館 【第7回】 テレクラは今こんなことになっている2010 【第6回】『東京都北区赤羽』の作者と行く赤羽ディープスポットめぐり(後編) 【第5回】『東京都北区赤羽』の作者と行く赤羽ディープスポットめぐり(前編) 【第4回】手塚、藤子、赤塚、石ノ森......漫画界の巨匠たちも食べた伝説のラーメン屋 【第3回】「激安宿に泊まりたい!」ドヤ街で一泊1,000円代の宿に泊まってみる 【第2回】「甘酸っぱい思い出のシンボル......」僕らの愛したブルマーは今どこに 【第1回】アイドル小明と行く、サブカル魔窟『中野ブロードウェイ』

プロマイドの殿堂・マルベル堂で俺プロマイドを作る

趣味を押しだし過ぎですよ、店長さん!
珍奇なものをこよなく愛するライター・北村ヂンが、気になったことや場所にNGナシで体当たり取材していく【突撃取材野郎!】。第14回は、プロマイドの殿堂・マルベル堂に行ってきました。 ■ちょっと変なことになっている最近のプロマイド  アイドルにまつわるグッズは数あれど、ファンにとって最もうれしいグッズといえば、やはりアイドルの姿をバッチリ拝むことができる、いわゆる「生写真」ってヤツだろう。飾ってよし、眺めてよし、持ち歩いたってバッチグー。中にはペロペロハムハムしちゃっているファンもいるんじゃないだろうか。  まあ、それくらいファンが狂喜乱舞するグッズだけに、近年では非常にビジネス臭プンプンなアイテムと化しており「全144種類の生写真がランダム封入!」みたいな売られ方をしているケースも少なくないんだけど。「そんなのコンプするためにはいくら銭ッコをつぎ込めばいいんだ!」ということで、「生写真は麻薬。一度手を出したら後戻りできない!」などという裏・スローガンがアイドルファンの間で口伝されているほどなのだ。それでもやっぱ、他のファンがナイスな生写真を持っているのを見るとうらやましいやら欲しいやらでねぇ……。レアな生写真はリアルに麻薬級のプライスで取引されているとかいないとか。
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プロマイドといえばココ! マルベル堂。
 最近ではそんな殺伐としちゃっている生写真界隈だが、芸能界がもうちょっと牧歌的だった昭和時代、アイドルグッズの代表格だったのがいわゆる「プロマイド」と呼ばれる生写真。もちろん当時はランダム封入なんてことはなく、好きな写真を好きな枚数買えるというよい子のお財布にも優しい親切システムで、プロマイドの売上枚数がそのままアイドル人気のバロメーターとなっていたらしい。  そんなプロマイドの元祖といえば「マルベル堂」。名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかと思うけど、昭和の頃から自社でプロマイドを撮影・製造しているマルベル堂は今でも浅草で店舗を営業していて、8万種類以上もの懐かしいスターたちのプロマイドを買うことができる。
02maruberu.jpg
スターのプロマイドが所狭しと……
 しかし、こんな伝統あるマルベル堂が、最近ちょっとどーかしちゃってるみたいなのだ。だって、店頭にズラッと並んだ昭和スターたちに混じって、なぜか掟ポルシェ、杉作J太郎、吉田豪といった、ロフトプラスワン、新宿歌舞伎町地下2階感のただようサブカル者たちのプロマイドが置かれているんだもん。しかも掟さん、杉作さんにいたっては尻丸出し状態の写真まである始末!
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真ん中へんに明らかに昭和スターじゃない人が……。
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アラカンや秀樹に混じって掟ポルシェ、杉作J太郎、吉田豪
のプロマイドが……どーなってるの!?
 従来のプロマイドといえば、スターがキッチリポーズをつけてニコパチ……というのが常識だったが、平成のプロマイド業界はこんな方向に進化を遂げていたとは。  こりゃあ取材しておかなきゃなるまい、ということでマルベル堂の店長・武田さんと、30年間スターのプロマイドを撮り続けてきたカメラマンの中村さんに話を伺った。 ■新旧プロマイド事情を訊く ――あの、明らかに昭和スターという枠から外れているイカれたプロマイドはどうして作ることになったんですか。 武田さん 偶然、掟ポルシェさんを電車でお見かけしまして、その場で「プロマイドを作りませんか?」と声をかけて……まあナンパですね(笑)。実は以前からロマンポルシェ。のライブに行ったりするくらいファンだったので。 ――あ、やっぱり店長さんの趣味なんだ……。 武田さん ちょうど、方向性を模索している時期でもあったんですよね。昔は各芸能事務所からデビューする新人アイドルさんはウチでプロマイドを作るというのが恒例になっていたんですけど、ある頃から事務所さん自身で生写真を作って売るようになってしまって、マルベル堂で新たにプロマイドを作ることってなくなってしまったんです。 中村さん 昭和のアイドルはみんなプロマイドを作ってたんだけどね。俺も、山口百恵ちゃんから、キャンディーズ、ピンク・レディー、郷ひろみ、西城秀樹……ジャニーズ系もかなり撮ってきたけど、最後は男闘呼組くらいかな? 光GENJI以降は作らなくなっちゃったんだよ。 武田さん なので、新たにプロマイドを作らせてくれる人はいないかな……と考えていたときに、人を通じてDDTプロレスリングの高木三四郎さんと知り合って、DDTのレスラーさんのプロマイドを作ることになったんです。アイドルだけじゃなく、そういうサブカル路線っていうのもアリかなと思い、掟さんたちのプロマイドも作らせてもらったんですが、バカ売れってほどではないですけど、コンスタントに売れ続けていますよ。 中村さん でもあの撮影はまいったよね。男の尻を撮ったのなんて初めてだからさぁ。 ――サブカル寄りな人以外だと、やはり昭和スターのプロマイドが中心ですけど、今でも売れているのはどなたですか。 武田さん やっぱりジュリーこと沢田研二さんが圧倒的に強いですね。キャンディーズあたりの人気も根強いですが、それは「キャンディーズのプロマイドが欲しくて」と狙ってウチに来てくださるお客さんがメインなんですね。でもジュリーの場合、通りがかりの観光客の方がフラッと見かけて買っていくことも多いんですよ。やっぱり今見てもカッコイイですし、スター性が違うんですかね? ――やっぱりジュリーは永遠のスターですねぇ。昭和のプロマイド全盛期にもやはりジュリーが売れていたんでしょうか。 武田さん 昔もジュリーはすごく売れていたらしいですけど、ピンク・レディーが出てきた頃はもっとすごかったみたいですね。 中村さん あの頃、マルベル堂のプロマイドを扱っているお店が全国で2,000店舗以上あったんだけど、生産が全然追いつかなかったから。当時は一枚しかないネガを使って手作業で写真を焼いていたんで、大量生産するのは本当に大変だったんだよ。 ――いろんなスターを撮ってきた中でもとくに印象に残っている人は。 中村さん みんなそれぞれ印象に残ってるけど……、西城秀樹なんかは自分をプロデュースする能力がすごくあったね。普通の新人アイドルだったらこっちの指示するポーズを取るので精一杯なのに、秀樹は「こういうポーズはどうですか?」って自分から提案してくるんだよ。それがまたファンの心理をちゃんとつかんでるポーズで、よく売れたんだ。 ――最近の生写真とプロマイドの違いってなんだと思いますか。 中村さん 完全に別物だと思ってるよ。プロマイドと生写真の一番の違いって、ポーズを取っているかどうか。今の生写真って、まあ言っちゃえばスナップ写真みたいなものだけど、プロマイドはキッチリとポーズを決めて作られたものだから、頭の先から爪先まで神経を配って撮っているからね。昔、ジャニー(喜多川)さんから「ユー、ただの写真を撮ってほしいんじゃない、プロマイドを撮って欲しいんだ!」って言われたのはよく覚えている。ファンがほしがっているのはただの写真じゃなくて、キッチリ作り込まれたプロマイドなんだってことだよね。……それを言われたとき、ジャニーさんと夜中に部屋でふたりっきりだったからいろいろと緊張したけどねぇ(笑)。 ――最近のアイドルでプロマイドを作れるとしたら誰のものを撮りたいですか。 中村さん やっぱり嵐かな。それはオレが撮りたいかどうかっていう話じゃなくて、子どもたちが喜んでくれるプロマイドを作りたいんだよ。今だったら嵐のがあったらうれしいでしょ。 武田さん せっかくお店に来てくれたお客さんに「嵐のはないんですか?」って聞かれるのはやっぱりつらいですよね。 中村さん ジャニーさんも、その辺のところを考えてくれて、プロマイドを作らせてくれればいいんだけどね。 ■ついに俺プロマイドの撮影……そして販売開始!?  ……と、こんな感じで今昔のプロマイド事情を聞かせてもらったのだが、なんとマルベル堂では最近、スターのプロマイドを販売するだけではなく、「あなたのプロマイド撮影します」というサービスもやっているそうなのだ。  その名の通り、数々のスターを撮影してきた中村カメラマンがオリジナルのプロマイドを撮影してくれるというこのサービス。プロのカメラマンさんに撮影してもらう機会なんて滅多にないし、ましてやプロマイドを作ってもらうことなんてこのチャンスを逃したら二度となさそう! ……ということで、取材のついでにこのサービスも体験させてもらった。
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ここがスターたちもやって来たスタジオ……。
 幾多のスターたちがプロマイドを撮影してきたスタジオにドキドキしながら足を踏み入れると、ものすごいゴツいカメラが。さすがに最近では予備でデジカメも用意されてはいるらしいが、やはりプロマイドを撮影するのはフィルム。しかもポスターサイズまで引き伸ばしても粒子が粗くならないほどの巨大なフィルムを使用しているんだとか。
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この巨大なフィルムがプロマイドの美しさの秘密!
 デジカメが主流になってからはとくに、シャッターをバシバシ切るカメラマンが多くなったけど、この道30年以上の中村さんは一枚入魂!(フィルムも高いし)「もうちょっと身体をひねって……指は伸ばして」などと細かくポーズや衣装を指示して、なかなかシャッターを切らないのだ。
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細かいポーズ指導が……
ホントにコレでいいの!? バカみたいじゃない?
 あまり写真を撮られ慣れてないモンで、ボクも言われるがまま、カウボーイハットをかぶらされ、ギターを持たされ、椅子に足を乗せられ……こんなヤツが道を歩いていたら大バカ丸出しとしか形容しようのない珍妙な格好&ポーズを決めた状態で撮られてしまったのだが、出来上がりを見ると……確かに顔はともかくとして、昭和スター感がちゃんと出ていてプロマイドっぽい!
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おおっ、格好よ……くはないけど、それっぽい!
「こういうポーズのパターンっていっぱいあるんだけど、ワイルド系、ブリッ子系、女優系……と相手に合わせたポーズを選んで撮っていくんだよ。じゃあ次はブリッ子っぽいので撮ってみようか」  「なんで俺がブリッ子!?」と文句を言う間もなく、持ってこられた椅子がまたすごかった。かつて、キャンディーズや近藤真彦、吉永小百合も座ったという、まさにスターのみが座ることを許された(!?)椅子なのだという。
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こ……この椅子にキャンディーズがッ!?
 この椅子にまたがって、またしても中村さんの言われるがままにブリッ子っぽいポーズを取っていく。 「あーカワイイ! そうそうカワイイ!」  ……中村さんも、30代男を前にしてどんな気持ちでそんなことを言っていたのかは分からないが、意外とうれし恥ずかしいモンで「いやいや、何言ってんですかー」と言いつつも顔はニヤニヤしてしまい、先ほどよりも自然な笑顔を作ることができたような気がする。おお、コレが数々のスターを撮ってきたプロフェッショナルの技か。
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またしてもポーズ指導。この左手がかわいさのポイント。
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「最後に店長さんたちの写真も……」と言ったら、パッとこの
ポーズを。さすがです! 左から武田店長と中村カメラマン。
 約一週間ほどで完成した俺プロマイドは、どれも撮影の腕もさることながら、やはりポーズの指示が的確で実に昭和感あふれる、プロマイドらしい出来栄えに。いやぁ、なかなかイイものができたんじゃないの!?  そこで調子に乗って、店長の武田さんに「あのー……せっかくなんでボクのプロマイドも店頭に置いて売ってくれませんかねぇ……スターたちの中にシレッと紛れ込ませて」とダメ元で頼んでみたところ、「いいですよー!」と快諾!  ……というわけで、浅草・マルベル堂さんの店頭でしばらくボクのプロマイドが販売されているようです。30代半ばの男が必死にアイドルポーズを決めている写真が欲しい、バカなプロマイドが欲しいという方は、ぜひお買い求めを!(一枚くらい売れないとさすがにマルベル堂さんに申し訳ないんで……) (取材・文・イラスト・写真=北村ヂン)
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店頭でバッチリ販売されていました。
掟さん、杉作さん、豪さんという思いっきりサブカルゾーンですが……(妥当)。
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しかも、まさかの全3種類販売中!
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みなさん、よろしくお願いしまーす!
■マルベル堂 新仲見世店 住所:東京都台東区浅草1-30-6 電話・FAX:03-3844-1445 営業時間:平日11:00~19:00  土日祝10:30~19:00 年中無休 <http://marubell.co.jp/> i01maruberu.jpg
アイドル生ブロマイド ARASHI 15パック入1箱 ジャニさん、どうっすか? amazon_associate_logo.jpg
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懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』

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ライアン・ゴズリング主演のクライムアクション『ドライヴ』。
カンヌ映画祭監督賞を受賞したニコラス・ウィンディング・レフンの硬質な演出が冴える。
(C)2011 Drive Film Holdings, LLC. All rights reserved.
 まるで阿修羅像のように、映画『ドライヴ』の主人公は3つの顔を持っている。昼間は薄暗い自動車整備工場で黙々と汗を流す整備工としての地味な顔。そんな男が輝く瞬間がある。映画のカーアクションシーンで人気俳優の身代わりを務めるカースタントマンとしての顔だ。危険なシーンでも愚痴ひとつこぼさず、冷静なドライブ技術を披露し、映画スタッフから信頼されている。ただし、あくまでも人気俳優の影武者であり、その素顔が脚光を浴びることはない。整備工としてもスタントマンとしてもベストの仕事を男は尽くすが、整備工としての稼ぎは限られているし、カースタントの仕事も不定期なため、収入は安定しない。そんなとき、男にとって3つめの顔がもたげてくる。犯罪者を後部座席に乗せて、夜の街を疾走する“逃がし屋”としての裏の顔である。カースタントで鍛えた度胸と整備工として身に付けた知識に裏付けされた華麗なテクニックで、警察の執拗な追跡を振り切ってみせる。そのため、警察は男の素顔をまだつかめていない。  ダッチワイフと暮らす田舎の朴訥な青年を演じた『ラースと、その彼女』(07)、大恋愛の末に結ばれながらも倦怠期を迎えた夫婦の危機を描いた『ブルーバレンタイン』(10)と、クセのある繊細な若者役がハマるライアン・ゴズリング。メジャー大作には出演していないため日本での知名度はもうひとつだが、今が旬の演技派男優だ。大統領選挙戦の内幕を描いた政治サスペンス『スーパー・チューズデー 正義を売った日』(3月31日公開)では正義と権力の座を天秤に掛ける能弁な選挙参謀役をキリッと演じた彼が、本作では往年のフィルム・ノワールを思わせる犯罪ドラマの寡黙な主人公に扮している。作品ごとに幾つもの顔を持ち、地味な役でも黙々と没頭するライアン・ゴズリングの姿は、本作の主人公と重なるものがある。
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『シェイム』ほか話題作に続けて出演中のキャリー・マリガン。童顔女優クリスティーナ・リッチが座っていた席に就いた感あり。
 自動車の整備で油まみれになるのを嫌がらない男の仕事ぶりに惚れた整備工場の上司シャノン(ブライアン・クランストン)は、男に自分が果たせなかった夢を託す。カースタントの先輩でもあるシャノンは怪我を負っており、もう運転することはできない。若くて、卓越した運転術を身に付けている男をレーサーに仕立て、自分はレーシングチームのボスとして、ひと花咲かせようと夢想している。シャノンがそう思うほど、男には限られた人間だけが持ちうる何かが秘められていた。男の内側では、暗い情熱がとぐろを巻いていた。できれば、その情熱は正しい方向に導いてやりたい。シャノンは羽振りのいい実業家のバーニー(アルバート・ブルックス)に話を持ち掛け、男を表舞台へ送り出そうと考える。  一方の男にも近況に変化があった。アパートの隣室に幼い男の子を連れたシングルマザーのアイリーン(キャリー・マリガン)が引っ越してきた。夜のドライブデートに出掛けるほど、2人は懇意になる。長い間、ずっと日陰生活を送ってきた男だったが、どうやら風向きが変わってきたらしい。男は“裏の仕事”から足を洗い、目の前に現われた幸福をつかみとろうとする。そんなとき、アイリーンの夫スタンダード(オスカー・アイザック)が刑務所から出所してきた。スタンダードは刑務所の中で多額の借金を背負っており、その借金が返済できないとアイリーン親子もギャングの標的となってしまう。「これが最後の仕事」と男は自分自身に言い聞かせて、スタンダードと一緒に郊外の小さな質屋を襲撃する。きわめて簡単な仕事のはずだったが……。
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お金の匂いに敏感な実業家のバーニー(アルバート・ブルックス)。「オレの手も汚れているぜ」と握手を求める。
 愛する者のために裏稼業から足を洗おうとするくだりは、ヤン・イクチュン監督の『息もできない』(08)をはじめとするチンピラ映画の定番的ストーリー。男たちが束の間だけ夢を思い描くシーンは、青春時代の終わりを描いたフランス映画の名作『冒険者たち』(67)を彷彿させる。また、静謐な映像を唐突に突き破るかのように挿入されるバイオレンスシーンの過激さは、北野武監督の『ソナチネ』(93)のようでもある。古今東西のさまざまな映画の名シーンのスペアパーツを組み合わせたかのごとく、新しい時代のクライムストーリーへと整合してみせたデンマーク出身のニコラス・ウィンディング・レフン監督の手腕がお見事。脚本は『日陰のふたり』(96)のホセイン・アミニが担当している。
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普段は温厚なドライバー(ライアン・ゴズリング)だが、危機回避能力がハンパない。プロのヒットマンと激突する。
 ニコラス監督は助演陣の扱いもうまい。現在公開中の『シェイム』に出演するまではロリ系女優の印象があったキャリー・マリガンを若妻役に起用。車の運転以外に興味を示さなかったクールな主人公が心を開く、イノセントかつ母性的優しさの持ち主としてキャラクター造型されている。男性臭の強いキャスティングの中で出色の存在が、コメディ俳優として知られるアルバート・ブルックス。彼が演じるバーニーというオッサンは、実業家として成功しているが、そこに至るまでには多分、何人もの邪魔者を消してきたのだろう。主人公が「手が汚れているから」と握手するのを避けようとすると、バーニーは「オレの手も汚れている」と答える。おそらく、2人とも幼い頃から家庭環境には恵まれなかったはずだ。2人とも裏の仕事に手を染めることで今まで生き抜いてきた。2人は似たもの同士なのだ。だから、バーニーは若い男がレーサーになろうとする夢に手を貸すが、やがて質屋から奪った大金を巡って対峙することになる。男にとってバーニーはいちばんの理解者であると同時に最大の敵となっていく。  名前がなく、周囲から“ドライバー”と呼ばれている主人公は、天才的なドライブテクニックを持つ孤高のヒーローのように映るが、実は大きな欠陥を抱えている。フツーの人間なら感じるはずの恐怖心を、この男は持ち合わせていない。それゆえ大胆なハンドルさばきを見せることができる。アクセルを踏み込むときだけ、男は生を実感することができるのだ。阿修羅像のように3つの顔を持つ男だったが、アイリーンという愛情を注ぐ対象を見つけたことで、3つの顔は次第に消滅していく。物語のラスト、血まみれとなった男は弱々しく苦しげな表情を浮かべる。どんなときでも、クールさを気取っていた男が見せる、ぶざまな姿だ。だが、その表情はどこかうれしそうでもある。車しか愛することができなかった男が、生身の人間を愛する喜びを知ったからだろうか。 (文=長野辰次) drive_movie05.jpg 『ドライヴ』 原作/ジェイムズ・サリス 脚本/ホセイン・アミニ 監督/ニコラス・ウィンディング・レフン 出演/ライアン・ゴズリング キャリー・マリガン、アルバート・ブルックス、ブライアン・クランストン、オスカー・アイザック、ロン・パールマン 配給/クロックワークス R15 3月31日(土)よりほか新宿バルト9ほか全国ロードショー<http://drive-movie.jp●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! 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「週刊文春」3月29日号 中吊り広告より
第1位 「小沢一郎『完全別居』次男と暮らす和子夫人を直撃!」(「週刊文春」3月29日号) 第2位 「芸能界とヤクザ 溝口敦」(「フライデー」4月6日号) 第3位 「年間報酬一人あたり4600万円! 関西電力の厚顔役員たち」(同) 次点 「小向美奈子の淫らなニオイがする袋とじ」(「週刊アサヒ芸能」3月29日号)  今朝(3月16日)早起きして米男子ゴルフ「アーノルド・パーマー招待」を見て、タイガー・ウッズ2年半ぶりの優勝に拍手した。2位との差があったのでガッツポーズは見られなかったが、最後のパットを打つ前、ラインを読むためにグリーンに屈んだとき、やや潤んだ目を隠すように帽子の庇を前に引っ張った仕草に、やっとここまで来られたという感慨が込められていたと見た。  2週間後には「マスターズ」が始まる。復活したタイガーのプレイに世界のゴルフファンの注目が集まるだろう。  日曜日の「高松宮記念」では5歳牝馬のカレンチャンが見事な走りを見せてくれた。馬も素晴らしいが鞍上の池添がいい。早めに2番手にとりつき、4コーナーを回って坂上から早めのスパートをして粘り込む好騎乗。先週は途中で走ることを止めてしまった4冠馬オルフェーヴルに騎乗し、もう一度立て直して猛然と追い込んだ。惜しくも2着だったが、オルフェーヴルの強さを見せてくれたレースだった。  騎手では、池添、岩田、福永、それに内田、横山典が抜きん出ている。残念ながら武豊の時代は終わったといってもいいだろう。  こうした感動とはほど遠かったのが、やはり日曜日に行われたメジャーリーグと阪神、巨人との対戦だった。  イチロー、川崎がそれぞれ打ったもののマリナーズは1対5で阪神に完敗。アスレチックスは巨人に5対0で勝ったものの、先発の宮国の落ちる球に三振の山。巨人にいたっては半分眠っているのではないかと思うほどの無気力野球。  高橋由伸に6億5,000万円、阿部慎之助に10億円も“裏契約金”を払った巨人は、選手の能力を見極める力がなかったとしか思えない。  もはやプロ野球は、WBCかクライマックス・シリーズを見るだけのスポーツになってしまった。  前置きはこれぐらいにして本論へ入ろう。このところ毎週書いていることだが、各誌の大特集に見るべきものがない。大スクープはハナから期待していない。「ヘー」と思わせてくれる記事が何本かあればいいのだが、それを探すのもなかなか難しい。  そんな中から探し出したのは、アサヒ芸能の袋とじ。小向美奈子のエロ姿態はさほどそそられないが、「特別加工 開けたら香る!」ニオイ付きだというので早速ハサミでジョキジョキ。  だが、かすかにニオイはするのだが、淫らではなくソープランドで嗅ぐようなソープのニオイのようだ。  実はこのアイデア、だいぶ前にアサ芸の前編集長に私から伝えていたのだ。ヘア・ヌードグラビアもマンネリ化で、よほどの大物でない限り売り物にはならない。  最後の秘策として私は、ニオイ付き袋とじがいけるのではないかと考えていたのだ。今の印刷技術は進んでいるから、グラビアに出てくる女性のつけている香水や体臭(難しいか?)が、袋とじを開けるとにおうというのは、ネットではできないから、話題になるのではないか。  残念ながら、今回のは「淫らなニオイ」という工夫をしすぎたために、よくわからないニオイになってしまったが、再度チャレンジしてほしいものだ。したがって今回は努力賞ということで次点にした。  今週一番充実しているのはフライデーである。  2位、3位にあげたものだけではなく、「片瀬那奈『クールビューティ女優の同棲写真』」は幸せそうな2人がよく写っているし、私もよく行っていた赤坂の料亭「佳境亭」の最後の日を撮った特集も読みごたえがある。  「佳境亭」の女将・山上磨智子(85)は三木武夫元首相の彼女で、そうした縁から、多くの政治家や官僚たちが集い、何人もの首相がここで「謀議」され誕生した。竹下登が消費税導入を決断したのもここだった。  かつて赤坂の料亭は「政界の奥座敷」といわれ、連日黒塗りのクルマが列をなしたものだった。そうした歴史を刻んできた料亭が、幾分かの寂しさを伴ってまた一つ消えていった。  最近のフライデーのいいところは「怒り」が表に出ているところである。3位の特集も、関西電力の役員たちの報酬が高すぎると怒り、八木誠社長、香川次朗副社長、豊松秀己副社長を直撃し、写真を掲載している。  大飯原子力発電所の3、4号機の再稼働問題で注目されている関西電力には森詳介会長、八木誠社長以下、4人の副社長、8人の常務取締役と5人の取締役がいて、彼らの年間報酬合計額は8億7,800万円、一人当たり平均4,600万円超だというのだ。ただし個別の金額について情報開示はしていない。  元経産官僚の古賀茂明は、電力会社の経営は「総括原価方式」というやりかたで電力料金を算出していいと法律で決められているし、かかったコストのすべてを電気料金に組み込むことができるから、経営は難しくないと話す。  東京電力は過去10年間で、実際にかかった費用よりも約6,000億円も多いコストの見積もりを出し、それをもとに電気料金を算出していたことが明らかになったが、関電も同様で、何に使ったのか公開しないのはおかしいとも話している。  電力料金は税金と同じで、消費者は電力会社の言いなりに払うしかない。それに日本はアメリカやヨーロッパなどに比べると電力料金は圧倒的に高いのだ。  フライデーは、当然ながらストレステストの一時評価だけで大飯原発が再稼働されてはならないといっている。他の週刊誌にもフライデーのような激しい怒りの滲み出た誌面をつくってほしいものである。  怒りを忘れた週刊誌はクリープを入れないコーヒーみたいなものである(古いね~)。  島田紳助の引退で注目を集めている暴力団と芸能界の癒着構造だが、フライデーはベストセラー『暴力団』(新潮社新書)の著者で、その世界に詳しい溝口敦を起用して「芸能界とヤクザ」の短期集中連載を始めた。  第1回は高齢者ネタで人気沸騰した漫談家・綾小路きみまろ(61)を取り上げている。きみまろではやや弱いのではないかと思って読み始めたが、これがなかなか面白いのだ。  関東の広域暴力団「稲川会」の組長Aが溝口にこう言っている。 「きみまろは稲川会が育てたというのが、わしらの共通認識です。親分(稲川会会長を指す)や親分の姐さんの誕生日会などに、きみまろを呼んでは小遣い(出演料)を渡していた」  ところが5年くらい前からきみまろの携帯に電話しても返事が来なくなったという。そこで呼び出すと、きみまろは「偉くなりたいんです。スターになりたいんです」。偉くなるためには暴力団とつながっていてはダメだ。そういう意味のことを言ったそうだ。 「確かに今の時代はそういう流れになっている。わしはきみまろの率直さに免じて無罪放免してやった。わしらが離れることで芸人を育てる、そういう応援の仕方もあるんじゃないかと思ったのだ」(組長A)  なかなか心の広い組長である。  しかし、きみまろはそうした過去に触れられるのが嫌なようだ。だが、ネットの動画サイトに、98年9月に山口組系後藤組・後藤忠政組長(当時)の新築祝い兼誕生会の司会をやるきみまろの姿が映っている。  それ以外にも02年6月8日、稲川会理事長補佐で中村興業・中村銅市会長の誕生パーティの司会をやったビデオテープも残されている。  そこにはきみまろ以外に、敏いとうとハッピー&ブルー、志賀勝、松原のぶえ、角川博、松山千春、前田亘輝なども出演している。  きみまろ側はフライデーの取材に対して、稲川会系組長へ「スターになりたいんです」と言ったことはないと否定しているが、溝口は「きみまろが稲川会系組長に『スターになりたいんです。だからこの際、交わりを絶って』と頭を下げた事実の、どこが悪いのか。(中略)少し遅れてきみまろは夫人さえ組長に紹介して、頭を下げさせたことを、私は取材で確認している」とし、「こんな回答をするようでは、国民的人気者の芸も底が割れた。過去の行状ではなく、今現在こそ、きみまろの汚点である」と厳しく結んでいる。  私の感想を言わせてもらえば、漫才芸人にそこまでの覚悟を求めるほうが無理だと思うが、この連載、これからどこへ向かうのか、中田カウスやビートたけしは取り上げるのか、注視していきたい。  ただ、この特集をはじめとして最近のフライデーは活字が多すぎる。すべて一枚写真でやってほしいとは言わないが、写真の質の向上と文字数をもっと減らしてもらいたいと苦言を呈しておく。  今週のグランプリは、週刊文春の小沢一郎もの。今回は永田町政局や金脈ではなく、小沢家の崩壊についてのレポートである。  ジャーナリスト・松田賢弥と本誌取材班が、小沢夫人の和子と次男がスーパーで買い物をして、帰ってくるところを写真に撮り(グラビアに掲載)、インタビューを試みている(返事はないが)。  2人は小沢の住んでいる家ではなく、そこから徒歩3分ほどのところにある和子名義の「秘書寮」でひっそりと暮らしているというのだ。  小沢には3人の息子がいる。長男は早稲田大学理工学部から海上自衛隊幹部候補生学校に入る。卒業後、海上自衛官になるが01年に辞めて、ロンドンに留学したとされるが、その後の所在はわからない。  次男も大学を出てからは、何をしているのか判然としないし、三男は、小沢が「派遣社員だ」と語っているようだが、周辺に聞いてもよくわからないという。  かつて妻・和子は、小沢の代理として地元(岩手県水沢=現奥州市)へ入り、後援会をまとめていたが、ここ10年ぐらいぷっつり姿を見せていない。そのために後援会も分裂しそうだという。  小沢には長年付き合っている愛人がいる。結婚しようとしたが田中角栄の反対でできなかった元料亭「満ん願ん」の女将がそれである。小沢の支持者らが開いている勉強会で、熱心にメモをとりながら出席者の発言に耳を傾けている彼女の姿が目撃されている。 「昨年、小沢はある席で知人にこう漏らしたという。『別れることにした』完全に夫婦関係を解消するということなのか――」(文春)  小沢は今、要塞のような豪邸でたった一人で暮らしている。唸るほどのカネがあり、カネの力で多くの子分もできたが、足元の家族が崩壊しては、それに何の意味があるのだろうと文春は問うている。  「寂しき陸山会の裸の王様」というタイトルの本が書けそうである。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情

 3月も下旬に突入し、最終回を迎えるTVアニメも数知れず。我々視聴者を楽しませてくれたアニメが次々と完結するということで寂しい気もするが、4月に入れば新作アニメとの出会いが待っている。そんな出会いと別れの季節に身もだえするアニメファンも多いことだろう。  4月からスタートする新作アニメのタイトルを見てまず気付くのが、「分割2クール作品」が深夜アニメに多いという点だ。  「分割2クール作品」とは、放送前の時点で2クール(およそ24~26話)分の放送が決定しておきながら、前半と後半を1クールごとに区切って、一定の期間をあけて放送するという放送形態のアニメのことである。  今春スタートする分割2クール作品は以下の通り。 ・『Fate/Zero』 ・『めだかボックス』 ・『君と僕2』 ・『ヨルムンガンド』 ・『緋色の欠片』  このほかにも、夏クールからスタートする分割2クール作品として、『輪廻のラグランジェ』『境界線上のホライズン』の2タイトルがすでに判明している。  2000年代後半頃より、各クールに1~2タイトル程度は存在していた分割2クール作品だが、なぜここに来て爆発的にその数が増えたのだろうか。その理由を、とあるアニメ関係者はこう語る。 「1クールごとに新作アニメを作るという早いサイクルに、業界がついていけなくなってきて、以前より問題となっていたネタ切れが深刻になってきたんです。そこで分割2クールアニメを制作して、一つの作品の寿命を長引かせたいという業界全体の思惑があります」  畳みかけるような勢いで新作を発表し、それに付随するDVD、アニメソングCDといったパッケージ商品や、関連書籍やフィギュアなどのグッズを売りさばくというビジネスモデルの深夜アニメには、とりわけパッケージ商品の購買力が高い20~30代のアニメファンが多い。  2000年代後半より1クールで完結する作品が増え、どんどんと新たな作品が発表されてきたが、この流れはそういった「太い客」に、間断なく新たなグッズを買わせ続けるためでもある。  しかし、あまりにも作品の入れ替わりのサイクルが早くなってしまったため、アニメ化できる原作や企画が枯渇し始めたというのだ。  また、別のアニメ関連の音楽制作関係者は次のように分析する。 「ここ数年の不景気のせいで、DVDやCDといった深夜アニメでもっとも重要な資金源となるパッケージ商品が売れなくなってきたんです。2000年代中盤以降、DVDやCDをグッズ感覚で気軽に買うライト・ユーザーが増えたのですが、昨年あたりから彼らの財布の紐が堅くなってきました。その一方で、『アニメのDVD、CDならどんなタイトルでも絶対に買う』というコアなアニメファンが、一定数いることも事実です。そこで、今後はそういったコア・ユーザーに細く長くパッケージ商品を買ってもらえるような分割2クール作品が増えていくと思います」  このように、アニメ業界に蔓延するネタ切れと、アニメファン向けにパッケージ商品を売るためのアニメを作る、という90年代以来のビジネスモデルの崩壊という深刻な問題が分割2クール作品の増加という現象の裏にあるようだ。  とくに「コア・ユーザー向けの作品を細く長く」という前出の音楽制作関係者の話が事実だとすると、深夜アニメはよりアニメファン向けに先鋭化していく可能性もある。その結果、いわゆる「オタク向け」アニメが増加し、よりマニアックな、一部のアニメファンのみが楽しめる偏ったタイトルが続出することにはならないだろうか。  確かにもともとアニメはマニアックな要素の強いメディアではあるが、近年のアニメブームを通じてアニメに興味を持ったライト層を取りこぼす事になってはあまりにももったいない。  一方で分割2クール作品が増えることで、作品のボリュームが増加。1クールの作品では描ききれないような見応えのある作品が生まれる可能性もある。  このようにアニメの作劇やメディア展開といったさまざまな部分に大きな影響を与えうる「分割2クール作品」の増加現象だが、一アニメファンとしては単純に2クール分の内容に水増ししただけの作品ばかりが増えないことを願うばかりである。 (文=龍崎珠樹)
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■バックナンバー 【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー 【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!? 【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』 【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』 【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』 【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』 【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!

特撮ヒーローのエッセンスが満載! インドネシア式ファンタジー

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「An Old Apartment Of Coaliti」(c)Eko Nugroho
 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どものころ、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。 第25回 アーティスト エコ・ヌグロホ(Eko Nugroho)  インドネシアのジョグジャカルタに生まれ、現在もそこをベースに活動するアーティスト、エコ・ヌグロホ。大小さまざまな島から成るインドネシアの国土の東西幅は、実はなんとアメリカ合衆国の国土よりも長い。それぞれの島や土地に独自の文化や風習があり、特にエコが住むジョグジャカルタは、王宮文化が色濃く残る、今でも舞踏や影絵、楽団などの伝統芸能が盛んな国際都市だ。豊かな文化に恵まれたインドネシアにいることの恩恵を感じているというエコのルーツは、ジャワ文化。彼によれば、これはかなりパワフルなもので、彼の作品にも強い影響を与えているという。
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「1919-13」(c)Eko Nugroho
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「Generasi Monoton」(c)Eko Nugroho
「インドネシアの政治状況は昔も今も変わらず“サイテー”ですが、そこに暮らす人々は、笑顔を絶やすことがない。庶民の暮らしだって、決していいとは言えない状態だけど、みんなものを分け合い、助け合っている。それが僕にとっては本当に美しいと感じることなんです」  エコは、絵画だけでなく、刺繍で作った絵画や、等身大の彫刻、影絵や巨大壁画など、身の回りのさまざまなメディアを自在に繰りながら、自分の世界を作り上げている。彼の作品にしばしば登場するのは、体の一部がモンスターや、ほかの物体に変形した人間(?)。それは進化の過程なのか、何者かに侵略されてしまった姿なのか……。現実と空想世界が渾然一体となった作品は、常に「人間の本質は何か」と、問いかけているようだ。  それにしてもこの、不気味なのにちょっと愛嬌もあり、寂しげにも見えるモンスターたち、どこかでお目にかかったような、懐かしさを感じるのだが……?  
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「Dungu」(c)Eko Nugroho
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「I Was Politician」(c)Eko Nugroho
「子どものころに体験したファンタジーが、僕の作品に強い影響を与えているのは確かです。もちろん、日本からのものも多いですよ。遠い昔、僕が6歳のときに、近所の人がベータ・ビデオのプレイヤーを持っていて、日本のヒーローものをそれはたくさん見せてもらったんです」  『宇宙刑事ギャバン』『超電磁マシーンボルテスV』『怪傑ライオン丸』『メガロマン』……次から次へとタイトルが出てくる。どうやらその頃の彼の脳味噌は、日本のヒーローアニメや怪獣ものに、かなり“侵略”されていたようだ。 「僕の中では、奇怪な容貌を持つキャラクターや、お面をつけたキャラクターが、地域社会でみんなと一緒に普通に生活している、という、極めて不思議な物語の数々が始終渦巻いていました」  最近は、植田まさしの漫画にハマっており、大好きなジブリ作品のサウンドトラックを聞きながら楽しんでいるという。
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(c)Eko Nugroho
 現在、パリ市立近代美術館で個展(http://www.mam.paris.fr/fr/expositions/eko-nugroho)が開催されており、続いて今年中には、ベルリンのARNDTギャラリーでも個展をする予定だという。海外での活動も多く、インドネシアではすでにベテラン・アーティストとして評価されているエコだが、実際は苦闘の毎日らしい。 「インドネシアで“アーティスト”になると決意すること自体、まったく普通じゃありえないことです。アーティストの生活がどんなに困難を伴うものか、みんな知っていますからね。政府からの支援もなく、いいアート施設や美術館もない。孤軍奮闘の厳しさも感じています」  それでも、エコがインドネシアをベースにアーティストとして活動するのは、普通の人々の生活に、美しさを感じているから。彼は、地域社会で暮らすことこそが、作品を生み出すプロセスの大切な要素だと繰り返す。そして、そんなリアルな生活に根ざした「インドネシア式ファンタジー」に溢れる彼の作品こそが、私たちが待ち望んでいるものなのだ。 EKO-NUGROHO_portrait.jpg ●エコ・ヌグロホ 1977年、インドネシア、ジョグジャカルタ生まれ。インドネシアン・インスティテュート・オブ・アート(ジョグジャカルタ)を2006年に卒業後、インディペンデントのアーティストとして活動を開始する。これまでに、ニューヨーク、ベルリン、北京、パリ、アムステルダム、ヘルシンキ、日本などでの国際展に参加。作品は、TROPENMUSEUM(アムステルダム)、シンガポール美術館(シンガポール)、ギャラリー・オブ・モダンアート(GOMA/ブリスベン)、アジア・ソサエティ・ミュージアム(ニューヨーク)、パリ市立近代美術館(パリ)、アート・ギャラリー・オブ・サウス・オーストラリア(AGSA/アデレード)に所蔵されている。 <http://ekonugroho.or.id> ●なかにし・たか アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com > オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>
宇宙刑事ギャバン Vol.1 『ロボコップ』のデザインにも影響を与えたようで。 amazon_associate_logo.jpg
■バックナンバー 【vol.24】"80後"世代の代弁者 中国売れっ子写真家の「未来系アート」 【vol.23】「ヤクルトとカップヌードルに洗礼?」MOJOKOのユーモラスな世界 【vol.22】「狂気とポップカルチャーが融合!?」香港のアーティストが追求する"不完全な美" 【vol.21】「人間の欲望を視覚化?」香港人気キャラの生みの親が追求する"醜さの美学" 【vol.20】「故郷・ボルネオ島での原体験が創造力の源」世界で活躍するマレーシアの"ケンヂ" 【vol.19】「人生に起きるすべてのことを細かく観察したい」中国ネット世代のアーティスト 【vol.18】「ヒーローは宮崎駿と奈良美智」シンガポールのマルチスタイル・アーティスト 【vol.17】「ルーツは『天空の城 ラピュタ』」ウォン・カーウァイに見い出された香港の若き才能 【vol.16】怖かわいい魑魅魍魎が暴れ回る! ヤン・ウェイの妖魔的異界 【vol.15】「原点は日本のコミック」東南アジアを席巻する都会派クリエーター 【vol.14】エロ×宗教×故事が混在!? 中国版・寺山修司が造り出すカオスな世界 【vol.13】昼間はOL、夜は寡黙なアーティスト ソン・ニが描く秘密の快楽の世界 【vol.12】まるで初期アニメ ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」 【vol.11】「造形師・竹谷隆之に憧れて......」 1000の触手を持つ、マレーシアのモンスター 【vol.10】"中国のガロ系"!? 80年代以降を代表するコミック・リーダー ヤン・コン 【vol.9】大のラーメンおたく!? シンガポールデザイン界を率いる兄貴、クリス・リー 【vol.8】メイド・イン・ジャパンに憧れて...... 香港の文学系コミック作家・智海 【vol.7】「血眼になってマンガを追いかけた」海賊版文化が育んだ中国の新しい才能 【vol.6】裸人間がわらわら 香港ピクセル・アートティストが放つ"アナログデジタル"な世界 【vol.5】ダメでも笑い飛ばせ! 香港の国民性を体現したグラフィック・ノベリスト 【vol.4】「教科書はガンダムの落書きだらけだった」 香港・原色の魔術師の意外な原点 【vol.3】「懐かしいのに、新しい」 読むほどにクセになる"タイ初の日本漫画家"タムくん 【vol.2】 マイブームはBL!? 香港の腐女子が描きとめる、消えゆく都市の記憶 【vol.1】「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢

深夜の政治放談? “永田町のエース”小泉進次郎に女性スキャンダル

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「週刊文春」3月22日号 中吊り広告より
第1位 「キムタク『スピード違反』で捕まっていた!」(「週刊文春」3月22日号) 第2位 「小泉進次郎議員 赤坂議員宿舎で美女と過ごした『ワケありの夜』」(「週刊ポスト」3月30日号) 第3位 「『アーンして』むかしラブラブいま介護-『シルバー川柳』傑作選」(同)  週刊誌が一時の勢いを失いつつあるようだ。「週刊現代」は一昨年、昨年上半期と順調に部数を上積みしてきたが、東日本大震災、島田紳助電撃引退騒動以降低迷して、今年に入ってもその傾向は止まらないようである。  刷り部数は60万部近くあるが、実売率はときどき50%台が出るそうだし、70%台がやっとだという。  そうしたこともあってか、発行元である講談社は社員の給料2割カットを組合側に提示したそうである。大手出版社がこのていたらくでは、出版不況はまだまだ出口が見えないようだ。  今週も大特集に見るべきものがなかったが、軽いものにキラリと光るものがあった。  第3位はポストの川柳を扱った記事だが、近頃は大変な川柳ブームだそうだ。サラリーマン川柳などは毎年恒例になったし、今回の全国有料老人ホーム協会が主催した「シルバー川柳」も秀逸なものが多くある。 「アーンして」 むかしラブラブ いま介護 誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ 居れば邪魔 出かけりゃ事故かと 気をもませ デザートは 昔ケーキで 今くすり 万歩計 半分以上が 探しもの  カード増え 暗証番号 裏に書き つまずいた ふと見た床に 段差なし 中身より 字の大きさで 選ぶ本 離れ住む 子らに病む日も 無事と書き 以下は老夫婦について詠んだ川柳。 あの世では お友達よと 妻が言い 厚化粧 笑う亭主は 薄毛症 共白髪 まっぴらごめんと 妻茶髪 妻が書く 老後の計画 俺イナイ 身内より 心が通う 介護の手 老後の寂しさを詠んだ川柳。 さびしくて 振り込め犯と 長電話 飲め飲めと 差し出されるのは 薬だけ 転んでは 泣いていた子が言う 「転ぶなよ」 私には次の川柳が身に沁みた。 飲み代が 酒から薬に かわる年  第2位は、いまや橋下徹人気に敵うのはこやつしかいないといわれる小泉進次郎に降りかかった女難スキャンダルである。  1月の某日深夜、佐々木希似の女性が赤坂議員宿舎の門をくぐり、小泉の部屋へ入って、人目をはばかるようにして宿舎を後にしたのは早朝4時だったというのだ。  ポストよくやったとほめてつかわしたいところだが、この記事、どこか奥歯に物が挟まった感じなのである。  この女性は地元のレジャー産業で働くS子、28歳。そこは結婚式などのイベントも開かれる場所だというから、貸しホールのようなところなのだろうか。お客からも従業員にも好かれる優秀な娘だそうだ。  いつ頃かわからないが、小泉が来たときに彼女が、自分のメールアドレスが載っている名刺を渡し、後日、小泉から丁寧なメールが届くようになったという。  1月中旬の夜、友人との会食が終わったS子は、小泉からのメールを待っていた。そこへ小泉から「今日、これから赤坂宿舎に来ない?」というメールが届き、「S子さんが小泉議員にいわれたままの住所をタクシー運転手につげ、議員宿舎の門をくぐったのは深夜11時だったという」  彼女が宿舎を出たのは早朝4時。ここまでは関係者への取材を元にその夜を再現したものだとことわっている。  しかし、このことが彼女の交際相手にわかり、大ゲンカになってしまったそうだ。  当のS子へもインタビューしている。宿舎へ行ったことは認めているが、部屋では「仕事の話とか、お話しさせていただきました」と語り、小泉から求められたのではという記者の不躾な質問には、「ないです。ノーコメントです」と答え、最後に「今は一切、小泉議員とは連絡を取っていません」と言っている。  宿舎に女性を招くこと自体は内規に触れるわけではない。だが、一昨年の3月、中井洽国家公安委員長(当時)が交際中の女性を招き入れたとき、小泉はこう批判した。 「もしも官舎に入れた部外者の方が外国の諜報機関とつながっていたらどうするんですか」  ポストは、永田町の将来を担う存在なのだから、深夜、女性と二人きりの「政治談義」はほどほどにと苦言を呈している。  これを読んで気になったのは、この情報をもたらしたのは誰なのかということである。小泉とのメールのやりとりや、彼女が議員宿舎へ行ったことは、ポスト編集部が独自に調べたことではない。  こういう場合、男に連れなくされた女が編集部にタレ込むケースはよくあることだが、彼女の言葉を読む限りそうではなさそうだし、このことで彼女に何か有利になることがあるとも思われない。  考えられるのは、彼女の交際相手がなんらかの意図をもって編集部に持ち込んだのではないかという線だが、その意図とはなんだったのだろうか。いまひとつスッキリしないが、ともあれ1月の深夜、議員宿舎で小泉進次郎が女性と5時間近くニ人きりでいたことは間違いないようである。  父親の純一郎は、猥談を好むかなりの女性好きであったようだが、子どもにもそのDNAが受け継がれているとすると、進次郎、思わぬスキャンダルで人気失墜ということもあるかもしれない。  今週のグランプリは文春の「キムタク捕まる」という記事。  捕まったというのはやや大げさだが、昨年9月29日に「千葉県内の千葉東金道路で四十キロ未満のスピード違反により県警高速道路交通警察隊の取り締まりを受けた」という。同乗していたのは愛人ではなく妻の工藤静香(残念!)で、九十九里浜でサーフィンをやるためのドライブ途中だった。  ちなみにキムタクのクルマはシボレーアストロ。米国製のミニバンタイプで、後部のドアからサーフボードを収容できる。すでに2005年で生産は終わっているが人気は高いという。  間の悪いことに、あのトヨタが国内需要の掘り起こしのために制作費数億円をかけたCMにキムタクが起用され、その大キャンペーンの始まる2週間前のことだったというのだ。  トヨタも頭を抱えたのではないか。 「CMでは安全運転に徹するキムタクだが、じつは当人がキャンペーン開始の約二週間前に交通違反をしておきながら、『運転する楽しさ』などと言っていたら、視聴者はどう思うだろう」(文春)  しかし、この「事件」は報道されることもなく、3本のCMは無事放送されるのだ。  そこには大トヨタから報道機関への圧力はなかったのだろうか。  トヨタ自動車広報部は今回の取材に対して、違反があった事実はすぐ後、代理店を通じて連絡があり、「代理店を通して今後の交通ルールの遵守を強くお願いしておきました」と答えている。  ジャニーズ事務所は文春が取材に動いた時点で、違反があったことを認めて謝罪している。  キムタクはTBS開局60周年記念ドラマ『南極大陸』が惨敗し、今度コケれば後はないといわれているそうだ。文春はこう結んでいる。 「人気回復を焦ってアクセルを吹かしすぎたのか」  この締めのうまさも含めて今週のグランプリである。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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