『銀河鉄道999』はアップル並みのインパクト? 韓国の催眠術的ポートレイト

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(c)Seungyea Park
 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どものころ、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。 第26回 アーティスト スンイェ・パク(Seungyea Park )  非常に繊細で、写実主義を極めた筆致で描かれたポートレイト。でも、何かが変。もう一度見る。えも言われぬ不安感に襲われつつ、今度は細部を見極めようと、見入ってしまう。そして普通の「人」のポートレイトにはあり得ないモノや部分を見つけては、恐怖や、嫌悪感にも似た感情が湧き出るのを押さえることができない。それなのに、シュール感と現実感が絶妙なバランスで共存している彼女の人物画を前にすると、この「人」たちの存在も簡単に受け入れてしまいそうになるのだ。  韓国のアーティスト、Seungyea Park(スンイェ・パク)は、そんな自分の作品を「催眠術的ポートレイト」と称している。
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(c)Seungyea Park
 スンイェの作品はほとんどが人物画だ。中性紙の上に、アクリルとボールペンを使って彼女が描き出したいのは「人の内面に棲むモンスターと、外部に現れたモンスター」。 「本当は誰にでも見えているかもしれないモノなのに、私たちは実は何も見ていない、あるいは、現実をそのまま受け入れようとしない、ということを表現したいのです」  スンイェは最近、20代のほとんどを過ごしたアメリカから、家族のいる韓国に戻って来た。 「韓国は私の生まれた場所で、現在の私の生活と活動の場でもあります。刺激的で、特殊なトレンドが生まれるところ。一方で、あらゆる種類のニーズに対するたくさんのチャンスがある場所でもあります」
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(c)Seungyea Park
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(c)Seungyea Park
 作品を韓国で売るのは簡単なことではないが、展覧会企画やアーティスト・イン・レジデンス、助成金などが、彼女の活動を支えているという。  そして、自分の作品に影響を与えるのは、どこか特定の国の文化ではない、としながらも、アメリカと日本の文化の存在は大きい、という。 「だって、それらはもはやほぼ世界中に広がっているものだから。子どものころは、『銀河鉄道999』や『鉄腕アトム』を見て、バービー人形と遊んで育ちました。21世紀のアップルが世界中に与えたインパクトと同様、巨大産業の影響からは逃れられないということです」 「アメリカには、韓国的なもの、アメリカ的なもの、日本的なもの、中国的なもの、そしてヨーロッパ的なものが混在しています。学校や友人、仕事の現場に、それらは普通にあり、確実に言えるのは、そうしたさまざまなカルチャーが、私の中にミックスされているということです」
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(c)Seungyea Park
 彼女に、ポートレイトを描き続ける理由を聞いてみた。 「人を描くのが好きなんです。顔は、その人の背景にある多くの歴史的なものを表している。それは美しく、壊れた大きな鏡――システムとも言えるし、私たちが属する社会とも言える――のかけらのようでもあります」  人々の中に、外に、巣食うモンスターたち。それは、彼らの暮らす生活や社会のひずみともいえるのかもしれない。そして、そうしたものを、スンイェは視覚化するのだ。 「私の絵は、モンスターたちが争う戦場みたいなものかもしれませんね」  現在所属するNational Art studio of Koreaは「自分が人々に向けて、自分が何を打ち出していくべきかを考えるのに適したところ」だというスンイェ。年末には、ソウル市のスポンサーによる個展の計画も進んでいる。  これからは、インスタレーションや書籍、ビデオなど、自分のドローイングをより多くの媒体を使って、メディアミックスの形でプレゼンテーションしていきたいという。 「とにかく、もっともっと作品作りを楽しみたいんです」  私たちの内面と外面にいるモンスターたち。スンイェにしか見えないそれらを、その作品を通して、もっと見せてほしいと思うのは、筆者だけではないはずだ。 (取材・文=中西多香[ASHU] sueportrait.jpg ●スンイェ・パク ソウルで生まれ育つ。高校卒業後、アメリカに渡り、ニューヨークのSouthampton Longisland UniversityでBFA(美術学士)を、C.W .POST of Southampton Long Island Universityで修士を取得後、アーティストとして活動を開始。現在はソウルをベースに、展覧会や出版を通じて作品の発表を続ける。2011年、Sovereign Asian Art Prize のTOP30 ファイナリストに選出される。 <http://blog.yahoo.com/artpark> <http://www.saatchionline.com/spunkyzoe> ●なかにし・たか アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com > オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/> ■バックナンバー 【vol.25】ネタ元は日本の特撮ヒーロー? インドネシア式ファンタジー 【vol.24】"80後"世代の代弁者 中国売れっ子写真家の「未来系アート」 【vol.23】「ヤクルトとカップヌードルに洗礼?」MOJOKOのユーモラスな世界 【vol.22】「狂気とポップカルチャーが融合!?」香港のアーティストが追求する"不完全な美" 【vol.21】「人間の欲望を視覚化?」香港人気キャラの生みの親が追求する"醜さの美学" 【vol.20】「故郷・ボルネオ島での原体験が創造力の源」世界で活躍するマレーシアの"ケンヂ" 【vol.19】「人生に起きるすべてのことを細かく観察したい」中国ネット世代のアーティスト 【vol.18】「ヒーローは宮崎駿と奈良美智」シンガポールのマルチスタイル・アーティスト 【vol.17】「ルーツは『天空の城 ラピュタ』」ウォン・カーウァイに見い出された香港の若き才能 【vol.16】怖かわいい魑魅魍魎が暴れ回る! ヤン・ウェイの妖魔的異界 【vol.15】「原点は日本のコミック」東南アジアを席巻する都会派クリエーター 【vol.14】エロ×宗教×故事が混在!? 中国版・寺山修司が造り出すカオスな世界 【vol.13】昼間はOL、夜は寡黙なアーティスト ソン・ニが描く秘密の快楽の世界 【vol.12】まるで初期アニメ ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」 【vol.11】「造形師・竹谷隆之に憧れて......」 1000の触手を持つ、マレーシアのモンスター 【vol.10】"中国のガロ系"!? 80年代以降を代表するコミック・リーダー ヤン・コン 【vol.9】大のラーメンおたく!? シンガポールデザイン界を率いる兄貴、クリス・リー 【vol.8】メイド・イン・ジャパンに憧れて...... 香港の文学系コミック作家・智海 【vol.7】「血眼になってマンガを追いかけた」海賊版文化が育んだ中国の新しい才能 【vol.6】裸人間がわらわら 香港ピクセル・アートティストが放つ"アナログデジタル"な世界 【vol.5】ダメでも笑い飛ばせ! 香港の国民性を体現したグラフィック・ノベリスト 【vol.4】「教科書はガンダムの落書きだらけだった」 香港・原色の魔術師の意外な原点 【vol.3】「懐かしいのに、新しい」 読むほどにクセになる"タイ初の日本漫画家"タムくん 【vol.2】 マイブームはBL!? 香港の腐女子が描きとめる、消えゆく都市の記憶 【vol.1】「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢

行きすぎたシステム社会に警鐘を鳴らす“ユナボマー・マニフェスト”の映画化『モンスターズクラブ』

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山小屋で暮らす良一(瑛太)は、爆弾づくりに情熱を注ぐ。
連続爆弾魔ユナボマーにインスパイアされた、豊田利晃監督の
新作『モンスターズクラブ』。
 豊田利晃監督の新作『モンスターズクラブ』では、瑛太演じる主人公は雪に閉ざされた山小屋で静かに暮らしている。電気も水道もない、自給自足のシンプルな生活だ。そんな彼にとって大切な仕事は、手づくりの爆弾を作ること。木箱の中に火薬を詰め込み、マッチ棒の発火装置を取り付ける。完成させた爆弾は、社会に大きな影響を与える大企業や政治家たちに送りつける。システム化の進み過ぎた現代社会に警鐘を鳴らすためだ。『青い春』(01)、『空中庭園』(05)でカミソリのように切れ味鋭い演出を見せた豊田監督のオリジナル脚本である本作は、1978年から95年の間に3人の死亡者、29人の重軽傷者を出した米国の爆弾魔ユナボナーの犯行声明文、通称“ユナボマー・マニフェスト”にインスパイアされて撮り上げたものだ。  FBIを18年間にわたって翻弄し続けた爆弾魔ユナボマーの本名は、セオドア・ジョン・カジンスキー。教育熱心な家庭に生まれた彼はIQ167の天才少年として育ち、飛び級して16歳でハーバード大学に入学。しかし、極端に内向的な性格で、自分のことを知能指数でしか評価しない社会を憎むようになる。カリフォルニア大学バークレー校の助教授に25歳の若さで就くものの、2年で辞職。モンタナの山奥に引き篭って暮らす。以後、山小屋で作られた小包爆弾は、16回にわたって大学や航空会社などに送りつけられた。95年には「自分の論文を載せれば、爆弾による犯罪行為はやめる」と新聞社に声明文の掲載を迫った。FBIの要請を受けたニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストが3万5,000語にも及ぶ“ユナボマー・マニフェスト”を全文掲載する。『産業社会とその未来』と題された声明文は、「産業革命は悪であり、文明社会を発展させるために追求したテクノロジーの進化によって、それを創造した人類もが支配されてしまう」という主旨のもの。爆弾テロは産業社会のシステムを攻撃するためであることを示唆した。このとき、彼は「フリーダムクラブ」と名乗っている。
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『青い春』(01)でスクリーンデビューした
瑛太にとって、念願の豊田監督による主演作。
山形県最上町で2週間にわたってロケが
行われた。
 この声明文を読んだカジンスキーの弟が「兄の過去の論文と似ている」と気づき、FBIに通報。96年4月、モンタナの山小屋で爆弾魔ユナボマーは取り押さえられることになる。年間の生活費110ドルで暮らしていた彼の身なりは、FBI犯罪史上に残る知能犯と思えないほどボロボロだった。現在、ユナボマーは司法取引により、仮釈放なしの終身刑となっている。以上がユナボマー事件のあらましだが、暴力に訴えた彼の罪とは別に“ユナボマー・マニフェスト”の「効率化の進んだシステム社会が、個人の自由を奪っている」という主張には共感を覚えた人も少なくない。その1人が、豊田監督だった。  「彼が危惧していた社会システムの末路は日本の現状に似ていると感じた」と豊田監督は語っている。『空中庭園』の公開直前に不祥事を起こした豊田監督も、1年間の隠遁生活を岡山の山中で送った。4年ぶりに公開された前作『蘇りの血』(09)は、もともとは鈴木清順監督が「この映画が完成すれば、世の中がひっくり返る」と脚本まで準備を進めていたものの幻の企画に終わった、魯迅の短編小説『鋳剣』をベースにしたもの。生ぬるい映画モドキがはびこる現在の日本映画界に、ガツンと一撃を加える過激さに溢れた作品だった。豊田監督にとっては映画づくりこそが、ぬるま湯に慣れ切った現代人の固定観念を吹き飛ばす爆弾であり、社会に物申すマニフェストなのだ。
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コドクに生きる良一を心配して、妹のミカナ
(草刈麻有)が山小屋を訪ねてくる。兄妹の
関係は、ユナボマーとその弟を投影したもの。
 本作の主人公・垣内良一(瑛太)は、夏目漱石や宮沢賢治といった日本文学を愛する知的でクールな若者だ。山小屋にひとりで暮らし、必要最低限の狩猟によって食料を賄っている。会社を経営していた両親(國村隼、松田美由紀)はすでに他界し、良一に狩猟の仕方を教えてくれた優しい兄・ユキ(窪塚洋介)は若くして自殺してしまった。弟のケンタ(KenKen)もバイク事故で命を散らした。残る肉親は、大学進学を控えた妹のミカナ(草刈麻有)だけ。山小屋を訪ねてきたミカナが「みんな、いなくなっちゃった」とこぼすと、「まだ、オレとお前がいるじゃないか」と励ます。宮沢賢治と妹トシみたいに仲が良い兄妹だ。ただし、宮沢賢治が『グスコーブドリの伝記』などの童話を書き残した代わりに、良一は黙々と爆弾を作り続ける。高度にテクノロジー化の進んだ現代社会に対し、「自然へ帰れ」とメッセージを伝えるために。  岡山での隠遁生活中に“ユナボマー・マニフェスト”を読んだ豊田監督は、「アメリカではなく、日本に向かって言われている気がして」と話す。確かに、勤勉さを美徳とし、和を重んじ、空気を読み合う日本人は、システムのベースが一度固まると、各人が職人的スキルを発揮し、そのシステムを瞬く間にさらに完成度の高いものへと押し上げていく民族だ。高度に洗練されたシステムを築き上げるのと同時に、そのシステムをよりスムーズに機能させるために、途中で立ち止まる者や反対意見を唱える少数派を認めようとしない。過剰に進みすぎたシステムが招いた大惨事が、福島第一原発事故だったのではないか。  日曜日の夕方、テレビの前でしばし夢想する。サザエさん一家では原発事故のニュースを見ながら、どのような会話が飛び交ったのだろう。都内の企業に勤める波平とマスオはシラフではうかつなことは口にできないかもしれないが、舟とサザエは家族のことを考えて3.11以降は慎重に食材を選んでいるはずだ。カツオやワカメの通う学校は福島からの転校生を受け入れているかもしれないし、クラスの中には防災問題や今後のエネルギーの在り方を作文の題材にした級友たちもいたに違いない。出版社に勤めるノリスケは原発問題を取材する機会が少なからずあっただろうし、隣に住む作家の伊佐坂先生は反核小説を構想中かもしれない。まだ幼いタラちゃんやイクラちゃんにとっても、重大な問題だ。いつもと同じように公園の砂場で遊ぼうとしたら、「今日は風が強いから、おうちで遊びましょうね」と言われ、きょとんとしている。「子どもは風の子だって言ってたのに、何でですか~?」「バブー!」  爆弾魔ユナボマーが書いたマニフェストと愉快なサザエさん一家の生活は、決して無関係ではない。 (文=長野辰次) mosters4.jpg 『モンスターズクラブ』 監督・脚本/豊田利晃 出演/瑛太、窪塚洋介、KenKen、草刈麻有、ピュ〜ぴる、松田美由紀、國村隼 配給/ファントム・フィルム 4月21日(土)より渋谷ユーロスペースほかにてロードショー <http://monsters-club.jp> (c)GEEK PICTURES ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第166回]祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! 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[第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

行きすぎたシステム社会に警鐘を鳴らす“ユナボマー・マニフェスト”の映画化『モンスターズクラブ』

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山小屋で暮らす良一(瑛太)は、爆弾づくりに情熱を注ぐ。
連続爆弾魔ユナボマーにインスパイアされた、豊田利晃監督の
新作『モンスターズクラブ』。
 豊田利晃監督の新作『モンスターズクラブ』では、瑛太演じる主人公は雪に閉ざされた山小屋で静かに暮らしている。電気も水道もない、自給自足のシンプルな生活だ。そんな彼にとって大切な仕事は、手づくりの爆弾を作ること。木箱の中に火薬を詰め込み、マッチ棒の発火装置を取り付ける。完成させた爆弾は、社会に大きな影響を与える大企業や政治家たちに送りつける。システム化の進み過ぎた現代社会に警鐘を鳴らすためだ。『青い春』(01)、『空中庭園』(05)でカミソリのように切れ味鋭い演出を見せた豊田監督のオリジナル脚本である本作は、1978年から95年の間に3人の死亡者、29人の重軽傷者を出した米国の爆弾魔ユナボナーの犯行声明文、通称“ユナボマー・マニフェスト”にインスパイアされて撮り上げたものだ。  FBIを18年間にわたって翻弄し続けた爆弾魔ユナボマーの本名は、セオドア・ジョン・カジンスキー。教育熱心な家庭に生まれた彼はIQ167の天才少年として育ち、飛び級して16歳でハーバード大学に入学。しかし、極端に内向的な性格で、自分のことを知能指数でしか評価しない社会を憎むようになる。カリフォルニア大学バークレー校の助教授に25歳の若さで就くものの、2年で辞職。モンタナの山奥に引き篭って暮らす。以後、山小屋で作られた小包爆弾は、16回にわたって大学や航空会社などに送りつけられた。95年には「自分の論文を載せれば、爆弾による犯罪行為はやめる」と新聞社に声明文の掲載を迫った。FBIの要請を受けたニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストが3万5,000語にも及ぶ“ユナボマー・マニフェスト”を全文掲載する。『産業社会とその未来』と題された声明文は、「産業革命は悪であり、文明社会を発展させるために追求したテクノロジーの進化によって、それを創造した人類もが支配されてしまう」という主旨のもの。爆弾テロは産業社会のシステムを攻撃するためであることを示唆した。このとき、彼は「フリーダムクラブ」と名乗っている。
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『青い春』(01)でスクリーンデビューした
瑛太にとって、念願の豊田監督による主演作。
山形県最上町で2週間にわたってロケが
行われた。
 この声明文を読んだカジンスキーの弟が「兄の過去の論文と似ている」と気づき、FBIに通報。96年4月、モンタナの山小屋で爆弾魔ユナボマーは取り押さえられることになる。年間の生活費110ドルで暮らしていた彼の身なりは、FBI犯罪史上に残る知能犯と思えないほどボロボロだった。現在、ユナボマーは司法取引により、仮釈放なしの終身刑となっている。以上がユナボマー事件のあらましだが、暴力に訴えた彼の罪とは別に“ユナボマー・マニフェスト”の「効率化の進んだシステム社会が、個人の自由を奪っている」という主張には共感を覚えた人も少なくない。その1人が、豊田監督だった。  「彼が危惧していた社会システムの末路は日本の現状に似ていると感じた」と豊田監督は語っている。『空中庭園』の公開直前に不祥事を起こした豊田監督も、1年間の隠遁生活を岡山の山中で送った。4年ぶりに公開された前作『蘇りの血』(09)は、もともとは鈴木清順監督が「この映画が完成すれば、世の中がひっくり返る」と脚本まで準備を進めていたものの幻の企画に終わった、魯迅の短編小説『鋳剣』をベースにしたもの。生ぬるい映画モドキがはびこる現在の日本映画界に、ガツンと一撃を加える過激さに溢れた作品だった。豊田監督にとっては映画づくりこそが、ぬるま湯に慣れ切った現代人の固定観念を吹き飛ばす爆弾であり、社会に物申すマニフェストなのだ。
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コドクに生きる良一を心配して、妹のミカナ
(草刈麻有)が山小屋を訪ねてくる。兄妹の
関係は、ユナボマーとその弟を投影したもの。
 本作の主人公・垣内良一(瑛太)は、夏目漱石や宮沢賢治といった日本文学を愛する知的でクールな若者だ。山小屋にひとりで暮らし、必要最低限の狩猟によって食料を賄っている。会社を経営していた両親(國村隼、松田美由紀)はすでに他界し、良一に狩猟の仕方を教えてくれた優しい兄・ユキ(窪塚洋介)は若くして自殺してしまった。弟のケンタ(KenKen)もバイク事故で命を散らした。残る肉親は、大学進学を控えた妹のミカナ(草刈麻有)だけ。山小屋を訪ねてきたミカナが「みんな、いなくなっちゃった」とこぼすと、「まだ、オレとお前がいるじゃないか」と励ます。宮沢賢治と妹トシみたいに仲が良い兄妹だ。ただし、宮沢賢治が『グスコーブドリの伝記』などの童話を書き残した代わりに、良一は黙々と爆弾を作り続ける。高度にテクノロジー化の進んだ現代社会に対し、「自然へ帰れ」とメッセージを伝えるために。  岡山での隠遁生活中に“ユナボマー・マニフェスト”を読んだ豊田監督は、「アメリカではなく、日本に向かって言われている気がして」と話す。確かに、勤勉さを美徳とし、和を重んじ、空気を読み合う日本人は、システムのベースが一度固まると、各人が職人的スキルを発揮し、そのシステムを瞬く間にさらに完成度の高いものへと押し上げていく民族だ。高度に洗練されたシステムを築き上げるのと同時に、そのシステムをよりスムーズに機能させるために、途中で立ち止まる者や反対意見を唱える少数派を認めようとしない。過剰に進みすぎたシステムが招いた大惨事が、福島第一原発事故だったのではないか。  日曜日の夕方、テレビの前でしばし夢想する。サザエさん一家では原発事故のニュースを見ながら、どのような会話が飛び交ったのだろう。都内の企業に勤める波平とマスオはシラフではうかつなことは口にできないかもしれないが、舟とサザエは家族のことを考えて3.11以降は慎重に食材を選んでいるはずだ。カツオやワカメの通う学校は福島からの転校生を受け入れているかもしれないし、クラスの中には防災問題や今後のエネルギーの在り方を作文の題材にした級友たちもいたに違いない。出版社に勤めるノリスケは原発問題を取材する機会が少なからずあっただろうし、隣に住む作家の伊佐坂先生は反核小説を構想中かもしれない。まだ幼いタラちゃんやイクラちゃんにとっても、重大な問題だ。いつもと同じように公園の砂場で遊ぼうとしたら、「今日は風が強いから、おうちで遊びましょうね」と言われ、きょとんとしている。「子どもは風の子だって言ってたのに、何でですか~?」「バブー!」  爆弾魔ユナボマーが書いたマニフェストと愉快なサザエさん一家の生活は、決して無関係ではない。 (文=長野辰次) mosters4.jpg 『モンスターズクラブ』 監督・脚本/豊田利晃 出演/瑛太、窪塚洋介、KenKen、草刈麻有、ピュ〜ぴる、松田美由紀、國村隼 配給/ファントム・フィルム 4月21日(土)より渋谷ユーロスペースほかにてロードショー <http://monsters-club.jp> (c)GEEK PICTURES ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第166回]祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! 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[第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

いいとも、志村けん……フジテレビが抱える目の上のたんこぶ(4月上旬の人気記事)

ranking0418.jpg  4月上旬の人気記事を紹介する日刊サイゾー人気記事ランキング。今期は『笑っていいとも!』を始め、フジテレビの長寿番組の話題が注目を集めました。早速チェケラ! 第1位 「SMAP、志村けんが足かせに……」超大物を切れないフジテレビの苦悩 テレ朝を見習って! 第2位 「やっぱりハンパじゃない!」樹木希林の認知症CMに業界内外から絶賛の声 ロックンローラーなんて比じゃない! 第3位 KREVAが開けた“パンドラの箱”――深刻な「コンサート離れ」で混迷極まるJ-POP界 で、会場は埋まったの? 第4位 「小倉さんは?」芸能界ヅラタブー解禁か ヅラ疑惑・増毛疑惑の大物たちが戦々恐々!? オグさん、もう頑張らなくてもいいよ……。 第5位 タモリもやる気ゼロ……『笑っていいとも!』テレフォンコーナー改新の断末魔 誰が見てるの? 次点 「総選挙後の残酷な現実──」決して美談だけではないAKB48・前田敦子卒業の全真相 お先真っ暗。 次々点 「このまま解散!?」活動休止の理由が多すぎた人気デュオ・CHEMISTRYの今後 十分稼いだんじゃない?

「再稼働基準をおおむね満たしている」枝野経産相の“アホの繰り言”再び?

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「週刊ポスト」4月27日号
グランプリ 「原発再稼働の大嘘」(「週刊ポスト」4月27日号) 第2位 「『石川遼』傲岸チンピラ親父の『スポーツ記者』暴行事件」(「週刊新潮」4月19日号) 第3位 「朝日『消費増税』礼賛と、国税調査」(「週刊現代」4月28日号)  東京の桜がようやく散った。桜の散り方が潔いなどと誰が言い出したのだろう。強風が吹いたり豪雨があったりすれば別だが、桜は咲き始めてから散るまで10日は楽しめる。  この時期、心せわしくて仕事が手につかない。あと幾たびの桜かな。そういう思いに急かされて、今日はどこの桜を見ようか、どこで花見の宴を開こうかと、都内を東奔西走する。  今年も向島の桜から始まり、飛鳥山、目黒川、千鳥ヶ淵、江戸川橋、哲学堂と徘徊し、日曜日には近くの植木屋で八重のしだれ桜まで買い込み、食卓の上に乗せて「家de花見」と洒落こんだ。花が散るのは寂しいが、これでようやく仕事に没頭できる。といってもそれほど仕事があるわけではないがね。  君は週刊ポストの新聞広告を見たか! よかったね~。「怒りを忘れた『週刊誌』なんて!」。この文句に痺れました。  ポストに同調したわけではないだろうが、今週は怒りを込めた特集が目立ったような気がする。  まず1本目の怒りは、週刊現代の朝日新聞批判記事。  私も前々から、新聞はなぜ消費税増税に賛成の大合唱なのだろうと不思議に思っていた。それに、次々に発覚する新聞社の申告漏れ。朝日新聞が4,800万円の所得隠し、2億円超の申告漏れがあったと3月30日の読売新聞が報じたし、4月10日には日経新聞が3年間で約3億3,000万円の申告漏れがあったと、自ら報じている。  現代によれば、読売も2009年に修正申告しているし、消費税増税に反対の立場をとっていた産経新聞にも昨年、東京新聞も最近2度の税務調査が入っているという。  東京国税局=国税庁の母体はいわずと知れた増税の総本山、財務省である。なんとしてでも消費税アップをやり遂げたい財務省が、消費税反対などしないように新聞社に“圧力”をかけたと推察する。  新聞社だけではなく、メディアにとって税務調査は鬼門である。取材相手を明らかにできない取材費や謝礼など、当局が叩けばいくらでも埃が出てくるからだ。  私がいた出版社でも税務署対策なのだろう、国税庁の大物OBを顧問のような形で入れていた。国税の人間から依頼された学生は優先的に採用せざるを得ないと、人事担当者が嘆いていたことを思い出す。  そうした圧力が功を奏したのかもしれない。中でも朝日新聞は社を挙げて消費税導入すべしと前のめりの論調が目立つ。  3月31日付の社説「やはり消費税増税は必要だ」では、「増税から逃げ出さずに早く決断することが大切だ」。4月6日付社説「消費税増税と政治――言い訳やめて、本質論を」では、「有権者の審判は消費税増税を決めたあとに仰げばいい。民主党の公約違反の責任はそのときにとってもらおう」と、増税したら民主党などどうなろうと構わないと思える論調である。  朝日の論説委員の一人は社内の空気についてこう語っている。 「消費税増税については『国家財政が傾いているのだから、増税は当然』というのが大前提で、増税に反対だという意見は出たことがありません。(中略)消費税増税による庶民の痛みをどうするか、といったようなことは議論の対象にすらなりませんね」  このときとばかりに、勝栄二郎財務省事務次官を始め、財務省の面々がマスコミ懐柔に走り回っている。その結果、各紙の社説に同じようなフレーズが出てくると、現代は指摘している。 「4月6日付社説に出てきた『決められない政治からの脱却』というフレーズがそうだ。同じ言葉は、3月31日付『日経新聞』社説、同『毎日新聞』社説、4月10日付『産経新聞』主張(社説)にも登場する」  真壁昭夫信州大学教授はこう言う。 「消費増税は、財政の立て直しの段階でいつか必要になります。ただタイミングを誤れば、96年の増税のあと金融危機が起きたように、日本経済にとって致命的な打撃になる。どう見ても、現状では消費税を上げることはリスクが高い」  ことは消費税増税問題だけではない。現代が言っているように、大新聞が一斉に同じ方向を向くことがいかに危険なことかは、これまで数々の忌まわしい過去が証明している。  4月16日付の朝日新聞に世論調査の結果が載っている。 「定期検査で停止中の関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を野田内閣が妥当と判断したことについて、賛成は28%にとどまり、反対は55%にのぼった。内閣支持率は25%で、下落傾向が続いている」  その中で消費税増税に賛成かどうかについても聞いている。 「賛成は40%で、反対の51%の方が多かった。法案の国会提出前の3月調査では、消費増税に賛成41%、反対46%で、差がやや開いた」  いくら新聞が大増税キャンペーンを繰り広げても、国民の半数以上は「NO」だといっているのだ。この世論を無視して、増税早くやれとキャンペーンを続けるつもりなのだろうか。「消費税増税を争点にして解散総選挙せよ」というのが民意であるはずだ。  2位は新潮の石川遼の父親批判の記事。遼の「傲岸チンピラ親父」が日刊スポーツの記者に「暴行」を働いたというのだ。  新潮によれば、日刊スポーツが3月22日付けで「遼 米ツアー参戦へ、専用ジェットに家探し」と報じたことに父・勝美氏が怒り、フロリダに来ていた記者に訂正と謝罪文を掲載しろと迫ったとき、暴力を振るったというのである。  現地の大会関係者がこう証言する。 「突然、壮年の男が記者のふくらはぎのあたりを右足で思い切り蹴ったのです。記者は抗議しているようでしたが、男はさらに激昂した様子で続けざまに3回ぐらい、同じ場所を蹴り上げた。(中略)その様子はキャディーやら大会ボランティアなど複数が目撃していますよ」  日本を出て海外を拠点に試合をすることになると、契約している日本の企業にメンツが立たないというのが、怒りの理由なんだそうだ。  こうまでされて抗議しない日刊スポーツもどうかと思うが、同じことを報じている週刊文春によれば、そうまでされた意地が、4月8日付けのスクープ「遼 婚約&今オフ結婚」になったというのだ。  昨年から1勝もできず、マスターズも屈辱の予選敗退。カワイイ婚約者もいるのに、この困った親父のおかげで遼の前途は洋々とはいかないようだ。  と、ここまでなら正直、2位にしなくてもいいかなと思ったのだ。これよりも、同じ新潮の猫ひろしの記事、「『猫ひろし』五輪切符は金で買われた!」は、カンボジアのナンバーワン・マラソンランナー、ヘム・ブンティン(26)に8時間インタビューして、こう言わせているからだ。 「(中略)僕の自己ベストを超えたこともない。どうしてそんな選手がカンボジアの国旗を背負ってオリンピックに出場できるんだ! 簡単なことだろう、お金だ。お金を払って国籍を買い、オリンピック出場権も買ったんだよ」  また、国際陸連は最近、国籍変更後の国際大会出場についての規則を改正し、居住期間が1年を切っている場合は、例外を除いて五輪に出場できないとしている。猫のカンボジア国籍取得は去年の10月で五輪は8月だから1年に満たない。 「今回のような“背景”を国際陸連が知れば、例外適用が認められる可能性は低い」(スポーツ紙デスク)  4月15日に行われたパリ・マラソンでブンティンが猫のタイムを7分近く上回ったため、「昨年10月にカンボジア国籍を取得した猫をめぐって、国際陸連が参加資格を疑問視。五輪参加が認められない可能性も浮上する中での、ライバルの好走。最後は『僕はこの現実をしっかり受け止めます』としている」(4月16日付スポーツニッポン)という。  だが、月曜日(4月16日)発売の現代とサンデー毎日を見て気が変わった。父・勝美氏のインタビューが両誌に掲載されているのだ。  現代の「石川遼の『婚約』家族はこう考えている」を読むと、勝美氏の危機感や焦燥感がうかがえる。中でも今回の婚約について、両親に相談することなく二人だけで出した結論だったことに、苛立ちを隠せないようである。  遼の婚約が早いからといって心配はしていないと言いながら、 「本当に遼が彼女と結婚するのかも分からないし、たとえ結婚せず別れたとしても『どうしたんだ?』と聞くことはないでしょう。(中略)彼女のことだって、いまは『いい子だな』と思っていますよ。でも、それが本当の姿なのか断言する自信はない」  と話している。これを彼女が読んだらどう思うか。  結婚をするということは親離れすることである。掌中の玉がどこの誰かも分からない女に奪われ、捨てていかれるのではないかという焦りが、記者たちへの傲慢な態度や暴力につながっているのではないか。  どこにでもある父と息子の葛藤の物語ではあるが、子離れできない父親ほど哀れなものはない。  今週のグランプリはポストの原発再稼働への怒りのメッセージにした。  ポストが書いているように、原発再稼働に慎重だったはずの野田佳彦首相や枝野幸男経産相が、 「4月3日の関係閣僚会合から、何かに取り憑かれたように再稼働に驀進する。野田首相が会合で『新たな安全基準をつくれ』と命じて新基準ができるまでが2日間、枝野氏が新基準をもとに関電に『安全対策を出せ』と指示してから提出まで3日間。わずか1週間足らずで安全かどうかの判断基準を決め、それに基づいて安全のお墨付きを与えるという離れ業を演じたのである」  そうして枝野は記者会見で「再稼働基準をおおむね満たしている」と言ってのけたことに、「『おおむね』で動かされてはたまらない。あのアホの繰り言『ただちに影響ない』と同じ詐欺的論法である」と怒る怒る。  原発推進の黒幕はあの仙谷由人で、野田や枝野が弱腰にならないかと、監視しているという。  野田や素人大臣を操っているのは経産省の「電力マフィア」で、その中心にいるのが今井尚哉資源エネルギー庁次長。原発再稼働には彼の出世がかかっているというのだ。  新基準は原子力安全・保安院の原子力発電検査課が、原発推進派の学者や東京電力の技術者を集めて開いた「意見聴取会」でまとめられたもので、「“これでも出しておけ”と手元にあった文書をそのまま提出したというのが真相だろう」と容赦ない。  さらに水素爆発の対策として、大飯原発にフィルター付きのベント設備を設置するとしたが、発表された工程表では整備期限は3年後になっているのはおかしいと批判する。  ポストは以前から、原発がなくても電力不足にはならないというキャンペーンをやってきた。  今回も、大飯原発が再稼働できなければ夏に大停電になるという「官製デマ」と、それに無批判に同調する大新聞を難じている。  「デタラメだから安心していい」とまで言い切る。非常時の電力である揚水発電を少なく見積もっている「電力隠し」があり、企業の非常用電源などを入れれば、「この夏の電力各社のピーク時電力使用量が記録的猛暑だった10年と同じだったとしても、『原発再稼働なし』で乗り切れる」とする。  週刊朝日の広瀬隆・緊急寄稿でも、「今年の25%電力不足というデマは、昨年よりひどい大嘘の最大電力需要3138万kWという、あり得ない想定をして、電力不足を煽った結果であった」と書いている。  先に触れた朝日新聞の世論調査でも、大飯原発再稼働には圧倒的に反対が多いのである。福島第一原発事故からまだ1年と少しである。いまだに事故原因の究明も進んでいないのに、再稼働するなどというのは天が許さない。  ポストや広瀬の試算がどれだけ正しいのか、私には判断材料がない。だが、原発再稼働には、国民一人一人が大停電したとしても仕方ないという覚悟をもって反対しないと、ずる賢い役人やそれを後押しする大メディアと闘うことはできまい。  何度も言うが、国の将来を決める「消費税増税」と「原発再稼働か否か」の大問題を争点にして総選挙をするべきである。そのための判断材料として、週刊誌は新聞・テレビが報じない情報を発信し続けてほしいと切に思う。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

勝手にコラボ! ケンタッキーフライドチキンラーメン

IMGP1843.jpg 料理の数だけダジャレがある――。ダジャレをこよなく愛する男が考案する、笑えるおいしいレシピ。  「ただいまー! ほーら、お土産買ってきたよー」  「あら、ケンタッキー。ありがとー。これ、たまに食べたくなるのよね」 IMGP1752.jpg  「このまま食べてもおいしいけれど、今日はこれでラーメンを作りまーす」  「え、ケンタッキーでラーメン?」  「そう、チキンラーメン!」 IMGP1807.jpg  「まず、冷めてしまったフライドチキンを、お湯で3分煮ます」  「フライドチキンを煮るって、なかなか斬新ね……」 IMGP1835.jpg  「次に、丼にチキンラーメンを入れて、この煮汁を注いで3分待ったら完成!」 IMGP1875.jpg  「名付けて、『ケンタッキーフライドチキンラーメン』!」  「なるほど、フライドチキンでダシを取って、さらにそれを具にしたのね」  「そう! ケンタッキーで、具とダシを兼ねる算段っす」  「兼ねる算段っす……」 父&母 「カーネルサンダース!」 ■材料  ・ケンタッキーフライドチキンのオリジナルチキン ・チキンラーメン ・水 ■作り方 1、鍋にお湯を沸かして、フライドチキンを3分程煮ます。 2、そのお湯でチキンラーメンを作ります。 3、お湯で煮たフライドチキンをトッピングします。 ■玉置メモ ・フライドチキンでダシを取ることで、チキンラーメンのスープに、コクとスパイシーさが加わります。 ・冷えてしまったフライドチキンも、煮込むことで肉が柔らかくなって一石二鳥。さらにフワフワになった衣と麺の相性もばっちりです。 ・フライドチキンを煮るのはもったいないという人は、食べ終わった後に残った骨でダシを取る方法もありますよ。 (文=玉置豊) ■男のダジャレレシピ・バックナンバー 【第25回】炊飯器で作る簡単ピラフ!「SPAM × SPAM」(SMAP×SMAP) 【第23回】北北西を向いてガブリ!「......え、フォー巻き!」 (恵方巻き) 【第22回】アラフォーはちょっとツラい!? 「とってもジューシー(牛脂)な格安すき焼き 」 【第21回】悪い酔いスウィーツで年忘れ!「レディーボーデン会 (女子の忘年会)」 【第20回】万能味噌を使った魔法の料理「西京の相性は黄身(最強の相性はキミ)」 【第19回】旬のサンマをギニア風に「イイコブ、ニコム、サンコン(イッコン、ニコン、サンコン)!」 【第18回】永谷園で作る秋の味覚「松タケご飯(まつたけご飯) 」 【第17回】アジ釣りで大漁! 「アジしめちゃいました(味占めちゃいました)」 【第16回】うなぎと乗り切れ! "ダシ"が違う夏のひつまぶし 【第15回】夏にピッタリ! 旬の魚で手軽にできちゃう「狂う水(クールビス)」 【第14回】蒸し暑い時期にピッタリ! 梅干しの酸味が効いた「上を向いて歩こう(梅と麦とアルコール)」 【第13回】レストランにも行きたくない出無精なあなたに「大型連休ギュウギュウ詰め(O型レンコン牛牛詰め)」 【第12回】旬の素材が盛りだくさん「ネギに大葉 ヤマウド・ノビル 初鰹(目には青葉 山ほととぎす 初鰹)」 【第11回】スタミナ満点! よくばりどんぶり「ごはんと胃・レバー・牛たくさん(ゴホンと言えば、龍角散)」 【第10回】甘党にはたまらん!  「オリゴ糖、黄身と和えて、ようかん食った(ありがとう、君と逢えて、よかった)」 【第9回】捌けなくても大丈夫! 包丁要らずのカンタン鍋「捌き無知鍋(サバキムチ鍋)」 【第8回】惚れてしまいそうな大人の味「バーレーン・タイ キッシュ(バレンタイン・キッス)」 【第7回】3分で出来るお祝い料理「脂肪コーン、5を書く!(志望校合格)」 【第6回】正月ボケに効果てきめん「意外! タイなら七臭粥(胃が痛いなら七草粥)」 【第5回】気分次第でアレンジ可能「麻婆茄子! 干し芋乗っかっちゃう!(まーボーナス! 欲しいもの買っちゃう)」 【第4回】三つの味が楽しめる豪華ディナー「三択ロース(サンタクロース)」 【第3回】ぜいたくの極み! 「いい肝のカワハギのいい肝ばかり(『いきものがかり』のいきものばかり)」 【第2回】ひと手間かければ豪華な一皿! 「タンカレー ナンバナナ天(タンカレー No.10)」」 【第1回】甘くて辛い 大人のおつまみ「マスタードナッツ(ミスタードーナツ)」

祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』

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“北関東3部作”完結編となる
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』。
夢を追い掛けて故郷を離れたマイティのその後が描かれる。
 夢を追い掛けているつもりだったが、いつの間にか現実から逃避しているだけなことに気が付いた。埼玉のブロッコリー畑育ちのマイティは夢をその手でもぎ取るために東京に向かったが、知らず知らずにいろんなものから逆に追い掛けられるはめに陥った。お金にシビアな怖い大人たち、警察、東京でトラブルを起こしてバックレたバンドのメンバー……、みんなでマイティを押さえつけようとする。長回しで繰り広げられるこのクライマックスシーンは、観ている人間をひどく息苦しくする。マイティがいろんなものから追われているように、この映画を観ている自分もいろんなものに追われている。毎月の家賃の支払いだとか、滞納気味の国保だとか年金だとか、今の仕事に未来はあるのかとか、付き合っている彼女とのケジメはどうすんのとか、実家をめぐる火種とか、切実な問題がすぐ後ろから首根っこを捕らえようと手を伸ばして迫ってきている。入江悠監督の地元・埼玉県深谷市を舞台にした『SRサイタマノラッパー』(08)、群馬在住のアラサー女子の葛藤を描いた『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー★傷だらけのライム』(10)に続く『SR』シリーズの第3弾。『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』は“北関東3部作”の完結編となる作品だ。前2作が切なくもおかしいコメディだったのに対し、本作はシリアスな作風へと大きく振り切れている。
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『SR1』で東京へ出ていったマイティ(奥野
瑛太)が『SR3』の主人公。鬱屈した日々
の中で、溜め込んだ情念をMCバトルで
爆発させる。
 『SR』シリーズは、入江監督にとってリアルな自分自身の進行形の物語だ。日大芸術学部を卒業して念願の映画監督になったものの、キャリア不足、ネームバリュー不足、予算不足のないない尽くしで、ままならない日々が続く。もう20代も終わりが近づき、貯金残高も残すところあと僅か。ギリギリに追い詰められた自分の心境を、ニートなダメラッパーのイックら登場キャラクターたちのラップに重ねた。『SR』シリーズは同じような境遇にある地方在住もしくは地方出身者たちの共感を集め、インディーズ映画としては異例のロングランヒットに。入江監督は全国各地の映画館に呼ばれてせっせと舞台挨拶に出掛けたが、その分生活費を稼ぐことができずに、余計に生活は苦しくなった。一時的に深谷の実家に戻るはめに。しばらくして、いろんなところからオファーの声が掛かるようになったが、今度は殺人的スケジュールを乗り切らなくてはならないという別のシビアさに直面する。最初のステージは全力でぶつかることで何とかクリアできたものの、新しいステージではより面倒な難敵たちが手ぐすね引いて待ち構えていた。
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『ムカデ人間』(09)のムカデ人間第1号
として国際的な注目を集めた北村昭博が
「極悪鳥」のメンバー役。今まで以上に
配役もグレードアップ。
 『SR3』の主人公はお調子者のMC・マイティ。『SR1』でイックやトムと一緒にヒップホップグループ「SHO-GUNG」のメンバーとして初ライブする日が来ることを待ちこがれていた。でも、夕方になると真っ暗になる地元の街にはライブハウスはおろかクラブもCDショップもない。一度、公民館でラップを大人たちの前で披露したけど、大恥ぶっこいた。夢を叶えるなら、やっぱり東京に出たほうがチャンスに近い。そう考えたマイティは、イックとトムを裏切るようにして故郷を後にした。これも夢を叶えるためだ。東京で人気ラップグループ「極悪鳥」の見習いメンバーになるものの、実際はただのパシリでステージに立たせてもらえない。福島出身のポッチャリ娘・一美と同棲しているが、まだ自分のラップを聴かせることもできずにいる。昼は日雇い労働で、夜はパシリというサイアクな生活。実家でブロッコリーを収穫しながら、イックやトムと曲づくりしていた日々がずいぶん昔に感じられる。ある日、メンバー入りの約束を反故されたマイティはキレて、メンバーをボコボコに。一美を連れて流れ者となったマイティは、栃木で盗難車の転売を手掛ける違法業者の下請けに身をやつす。夢を叶えるどころか、もはや裏社会の人間になりつつあった。そんな中で、違法業務を仕切るコワモテの胴元から詐欺まがいの野外フェスを開くように命じられる。その野外フェスにカモがネギを背負うようにひょこひょこと現われたのが、相変わらず能天気にラップを続けていたイックとトム。3人はあまりにも皮肉な形で再会することになる。
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埼玉のラップグループ「SHO-GUNG」
のMC、デブニートのイック(駒木根隆介)
と日和見主義のトム(水澤紳吾)。今回は
栃木にやって来ました♪
 夢が重たい。いつから、こんなにも“夢”を持つことが重要視される社会になったのだろうか。人気アーティストは「夢を追い掛けているあなたが好き」と歌い、人気ドラマの主人公は「夢はあきらめない限り、必ず叶う」とのたまう。本当にそうなのか? いや、違う。「夢を持て」とか「夢に向かって走れ」とか言っといたほうが、楽で口当たりがいいから彼ら・彼女らは口走っているだけなのだ。夢の正体を見極めた上で身の程を知りましょう、甘言に惑わされずにまずは生活能力を身に付けましょう、ある段階で路線変更することも視野に入れましょう……そういう地味なテーマでは歌やドラマにしにくいからスルーされる。若者たちに理解を示す寛容な大人のふりをしたエンタメ業界の詐欺師たちは「ビッグな夢をつかもう」「夢に向かってはばたけ」とお題目のように繰り返す。これでは射幸心を煽る新興宗教「ドリーム教」だ。作詞家やドラマの製作者は詐欺罪で捕まる心配がないので、手抜きかつ無責任に「夢」「夢」「夢」と連呼する。主人公が夢を追って走っていく様子が歌やドラマのエンディングを飾る。でも、夢を追い続けて引き返せなくなった人たちの屍が、崖の下には累々と重なっていることに言及する人は極めて少ない。  残念なことにさほどヒットしなかったが、北野武監督&主演作に『アキレスと亀』(08)がある。少年の頃に絵がうまいと誉められた主人公・万知寿は夢を叶えて画家となるが、特出した才能に恵まれていたわけではなかった。そのため、中年になった万知寿の一家は生活にきゅうきゅうとし、離散するはめになるという辛口ドラマだ。アキレスと亀の足並みが一生揃うことがないことに例え、自分の夢を叶えることと幸せな家庭生活を送ることは別問題であることが描かれている。『アキレスと亀』の公開時に北野監督に話を聞いたところ、北野監督は若い頃は数学者になるのが夢だったと語った。でも、自分が数学者として食べていくことは明らかに無理なことが分かっていたので、お笑いの世界に入ったそうだ。「自分が成りたかった職業に就けなかったんだからさ、せめてその世界で売れなくちゃ」という想いで舞台に上がっているうちに、運良くお笑いブームに乗ってツービートとして売れっ子になった。ビートたけしとしての人気と名声は、叶えられなかった夢の代償だった。  話を『SR』シリーズに戻そう。2009年に池袋シネマ・ロサで『SR1』が公開され、3年間にわたって邦画界を盛り上げてきた『SR』シリーズ。入江監督の代名詞ともなった『SR』シリーズは今後どうなるのか。一時は全都道府県を走破するプランも浮上していたが、『SR3』のラストシーンを見る限り、シリーズはいったん封印されることになりそうだ。入江監督の熱いスピリットは、分厚い壁の中に収容される。それだけに、エキストラ2,000人を動員した野外フェスでの長い長い長回しシーンは息苦しく、ひりひりと胸がうずく。観る者にも痛みを伴うフィナーレだ。  『SR3』は、入江監督にとって自身の青春時代のくすぶったネガティブな感情とか、劇中に登場するマイティやイック、トムたちの壊れてしまった夢とかハンパな希望とか、そんな一切合切を燃焼させる“祭り”である。同時に、入江監督がよりメジャーな次のステージに進むための“通過儀礼”でもある。3年間にわたって日本のインディーズシーンを熱くしてきた『SR』という名の祭りの最後の幕が開く。入江監督が『SR』の封印を再び解くことになるのは、何年後になるだろうか。そのときには入江監督は、どのような作風の監督になっているのだろうか。そして、『SR』を追い掛けていた自分たちはどんな風になっているんだろうか。『SR3』で感じた胸のうずきは、多分そのときまで続くはずだ。 (文=長野辰次) sr35.jpg 『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 監督・脚本・編集/入江悠 出演/奥野瑛太、駒木根隆介、水澤紳吾、斉藤めぐみ、北村昭博、永澤俊矢、ガンビーノ小林、美保純 配給/SPOTTED PRODUCTION 4月14日(土)より渋谷シネクイントほかにて全国順次ロードショー、4月21日(土)より渋谷シネクイントほかにて『SR』シリーズ全作上映 <http://sr-movie.com> (c)2012「SR3」製作委員会 ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! [第161回] 鬼才キム・ギドクの"多重人格ショー"セルフドキュメンタリー『アリラン』 [第160回]映画創成期に散った"殉教者"への聖歌 3D映画『ヒューゴの不思議な発明』 [第159回]これはホラー? それともコメディ? 勘違い女が爆走『ヤング≒アダルト』 [第158回] ピラミッドは古代からのメッセージ!? 歴史ミステリー『ピラミッドの謎』 [第157回] 韓国映画の名匠が明かす"創作の極意"イ・チャンドン監督『ポエトリー』 [第156回] ローカル局で"伝説となった男"の生涯『木村栄文レトロスペクティブ』 [第155回] 米国に半世紀も君臨した"影の大統領" FBI初代長官『J・エドガー』 [第154回]犯罪者たちに学ぶ"人心掌握術"の奨め『アニマル・キングダム』『預言者』 [第153回]"地獄"からの生還者・板尾創路の凄み 古典落語を過激に脚色『月光ノ仮面』 [第152回]早くも2012年ベスト1映画が登場!"代理殺人"を巡る恐怖『哀しき獣』 [第151回]父殺し、自分殺し、そして再生の物語 園子温流ラブストーリー『ヒミズ』 [第150回]米国お笑い横断旅行『宇宙人ポール』人間のちっぽけな悩みはETが解決! 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祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』

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“北関東3部作”完結編となる
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』。
夢を追い掛けて故郷を離れたマイティのその後が描かれる。
 夢を追い掛けているつもりだったが、いつの間にか現実から逃避しているだけなことに気が付いた。埼玉のブロッコリー畑育ちのマイティは夢をその手でもぎ取るために東京に向かったが、知らず知らずにいろんなものから逆に追い掛けられるはめに陥った。お金にシビアな怖い大人たち、警察、東京でトラブルを起こしてバックレたバンドのメンバー……、みんなでマイティを押さえつけようとする。長回しで繰り広げられるこのクライマックスシーンは、観ている人間をひどく息苦しくする。マイティがいろんなものから追われているように、この映画を観ている自分もいろんなものに追われている。毎月の家賃の支払いだとか、滞納気味の国保だとか年金だとか、今の仕事に未来はあるのかとか、付き合っている彼女とのケジメはどうすんのとか、実家をめぐる火種とか、切実な問題がすぐ後ろから首根っこを捕らえようと手を伸ばして迫ってきている。入江悠監督の地元・埼玉県深谷市を舞台にした『SRサイタマノラッパー』(08)、群馬在住のアラサー女子の葛藤を描いた『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー★傷だらけのライム』(10)に続く『SR』シリーズの第3弾。『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』は“北関東3部作”の完結編となる作品だ。前2作が切なくもおかしいコメディだったのに対し、本作はシリアスな作風へと大きく振り切れている。
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『SR1』で東京へ出ていったマイティ(奥野
瑛太)が『SR3』の主人公。鬱屈した日々
の中で、溜め込んだ情念をMCバトルで
爆発させる。
 『SR』シリーズは、入江監督にとってリアルな自分自身の進行形の物語だ。日大芸術学部を卒業して念願の映画監督になったものの、キャリア不足、ネームバリュー不足、予算不足のないない尽くしで、ままならない日々が続く。もう20代も終わりが近づき、貯金残高も残すところあと僅か。ギリギリに追い詰められた自分の心境を、ニートなダメラッパーのイックら登場キャラクターたちのラップに重ねた。『SR』シリーズは同じような境遇にある地方在住もしくは地方出身者たちの共感を集め、インディーズ映画としては異例のロングランヒットに。入江監督は全国各地の映画館に呼ばれてせっせと舞台挨拶に出掛けたが、その分生活費を稼ぐことができずに、余計に生活は苦しくなった。一時的に深谷の実家に戻るはめに。しばらくして、いろんなところからオファーの声が掛かるようになったが、今度は殺人的スケジュールを乗り切らなくてはならないという別のシビアさに直面する。最初のステージは全力でぶつかることで何とかクリアできたものの、新しいステージではより面倒な難敵たちが手ぐすね引いて待ち構えていた。
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『ムカデ人間』(09)のムカデ人間第1号
として国際的な注目を集めた北村昭博が
「極悪鳥」のメンバー役。今まで以上に
配役もグレードアップ。
 『SR3』の主人公はお調子者のMC・マイティ。『SR1』でイックやトムと一緒にヒップホップグループ「SHO-GUNG」のメンバーとして初ライブする日が来ることを待ちこがれていた。でも、夕方になると真っ暗になる地元の街にはライブハウスはおろかクラブもCDショップもない。一度、公民館でラップを大人たちの前で披露したけど、大恥ぶっこいた。夢を叶えるなら、やっぱり東京に出たほうがチャンスに近い。そう考えたマイティは、イックとトムを裏切るようにして故郷を後にした。これも夢を叶えるためだ。東京で人気ラップグループ「極悪鳥」の見習いメンバーになるものの、実際はただのパシリでステージに立たせてもらえない。福島出身のポッチャリ娘・一美と同棲しているが、まだ自分のラップを聴かせることもできずにいる。昼は日雇い労働で、夜はパシリというサイアクな生活。実家でブロッコリーを収穫しながら、イックやトムと曲づくりしていた日々がずいぶん昔に感じられる。ある日、メンバー入りの約束を反故されたマイティはキレて、メンバーをボコボコに。一美を連れて流れ者となったマイティは、栃木で盗難車の転売を手掛ける違法業者の下請けに身をやつす。夢を叶えるどころか、もはや裏社会の人間になりつつあった。そんな中で、違法業務を仕切るコワモテの胴元から詐欺まがいの野外フェスを開くように命じられる。その野外フェスにカモがネギを背負うようにひょこひょこと現われたのが、相変わらず能天気にラップを続けていたイックとトム。3人はあまりにも皮肉な形で再会することになる。
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埼玉のラップグループ「SHO-GUNG」
のMC、デブニートのイック(駒木根隆介)
と日和見主義のトム(水澤紳吾)。今回は
栃木にやって来ました♪
 夢が重たい。いつから、こんなにも“夢”を持つことが重要視される社会になったのだろうか。人気アーティストは「夢を追い掛けているあなたが好き」と歌い、人気ドラマの主人公は「夢はあきらめない限り、必ず叶う」とのたまう。本当にそうなのか? いや、違う。「夢を持て」とか「夢に向かって走れ」とか言っといたほうが、楽で口当たりがいいから彼ら・彼女らは口走っているだけなのだ。夢の正体を見極めた上で身の程を知りましょう、甘言に惑わされずにまずは生活能力を身に付けましょう、ある段階で路線変更することも視野に入れましょう……そういう地味なテーマでは歌やドラマにしにくいからスルーされる。若者たちに理解を示す寛容な大人のふりをしたエンタメ業界の詐欺師たちは「ビッグな夢をつかもう」「夢に向かってはばたけ」とお題目のように繰り返す。これでは射幸心を煽る新興宗教「ドリーム教」だ。作詞家やドラマの製作者は詐欺罪で捕まる心配がないので、手抜きかつ無責任に「夢」「夢」「夢」と連呼する。主人公が夢を追って走っていく様子が歌やドラマのエンディングを飾る。でも、夢を追い続けて引き返せなくなった人たちの屍が、崖の下には累々と重なっていることに言及する人は極めて少ない。  残念なことにさほどヒットしなかったが、北野武監督&主演作に『アキレスと亀』(08)がある。少年の頃に絵がうまいと誉められた主人公・万知寿は夢を叶えて画家となるが、特出した才能に恵まれていたわけではなかった。そのため、中年になった万知寿の一家は生活にきゅうきゅうとし、離散するはめになるという辛口ドラマだ。アキレスと亀の足並みが一生揃うことがないことに例え、自分の夢を叶えることと幸せな家庭生活を送ることは別問題であることが描かれている。『アキレスと亀』の公開時に北野監督に話を聞いたところ、北野監督は若い頃は数学者になるのが夢だったと語った。でも、自分が数学者として食べていくことは明らかに無理なことが分かっていたので、お笑いの世界に入ったそうだ。「自分が成りたかった職業に就けなかったんだからさ、せめてその世界で売れなくちゃ」という想いで舞台に上がっているうちに、運良くお笑いブームに乗ってツービートとして売れっ子になった。ビートたけしとしての人気と名声は、叶えられなかった夢の代償だった。  話を『SR』シリーズに戻そう。2009年に池袋シネマ・ロサで『SR1』が公開され、3年間にわたって邦画界を盛り上げてきた『SR』シリーズ。入江監督の代名詞ともなった『SR』シリーズは今後どうなるのか。一時は全都道府県を走破するプランも浮上していたが、『SR3』のラストシーンを見る限り、シリーズはいったん封印されることになりそうだ。入江監督の熱いスピリットは、分厚い壁の中に収容される。それだけに、エキストラ2,000人を動員した野外フェスでの長い長い長回しシーンは息苦しく、ひりひりと胸がうずく。観る者にも痛みを伴うフィナーレだ。  『SR3』は、入江監督にとって自身の青春時代のくすぶったネガティブな感情とか、劇中に登場するマイティやイック、トムたちの壊れてしまった夢とかハンパな希望とか、そんな一切合切を燃焼させる“祭り”である。同時に、入江監督がよりメジャーな次のステージに進むための“通過儀礼”でもある。3年間にわたって日本のインディーズシーンを熱くしてきた『SR』という名の祭りの最後の幕が開く。入江監督が『SR』の封印を再び解くことになるのは、何年後になるだろうか。そのときには入江監督は、どのような作風の監督になっているのだろうか。そして、『SR』を追い掛けていた自分たちはどんな風になっているんだろうか。『SR3』で感じた胸のうずきは、多分そのときまで続くはずだ。 (文=長野辰次) sr35.jpg 『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 監督・脚本・編集/入江悠 出演/奥野瑛太、駒木根隆介、水澤紳吾、斉藤めぐみ、北村昭博、永澤俊矢、ガンビーノ小林、美保純 配給/SPOTTED PRODUCTION 4月14日(土)より渋谷シネクイントほかにて全国順次ロードショー、4月21日(土)より渋谷シネクイントほかにて『SR』シリーズ全作上映 <http://sr-movie.com> (c)2012「SR3」製作委員会 ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! 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どうなるロンドン五輪……南キャン・しずちゃん、MRI検査で脳に“影”!?

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第1位 「南海キャンディーズしずちゃんMRI検査で脳に『影』」(「週刊朝日」4月20日号) 第2位 「特別付録 さらば剛毛時代」(「週刊現代」4月21日号) 第3位 「何があった?藤谷美和子が小田原で徘徊生活!」(「フライデー」4月20日号) 佳作 「吉本興業非公開『決算報告書』をスッパ抜く!」(「週刊文春」4月12日号)  週刊朝日がすごいボリュームで、いつもの倍ぐらいはある。どうしたのかと見てとれば、2012年入試速報「全国3232校主要大学合格者数」を130ページにわたって掲載しているのだ。  高校間の格差を助長するような特集を朝日とサンデー毎日のような新聞社系週刊誌が止めないのは、この号が売れるからである。だが、いい加減に止めたらどうかと、私は思うのだがね。  朝日の編集後記で河畠大四編集長が「次号から通常号の定価を20円上げて370円にします」と書いている。いま上げると消費税が10%に上がったときはまた値上げするのかな? ちなみに今週号は、週刊現代400円、週刊ポスト400円、週刊文春380円、週刊新潮370円、フライデー400円である。  今週はまず文春の吉本興業の記事を佳作に推す。  吉本興業の経営がえらいことになっているようだ。2001年4月から9月の決算書によると半年間で売上は237億円で、最終損益は15億2,000万円の赤字で、このままいくと11年3月期と同じように30億円程度の大赤字になるというのである。  原因は成長の源泉だったテレビが頭打ちになり、視聴率が取れるのは明石家さんまぐらいしかいなくなってしまったことと、大崎洋社長が決断した「上場廃止」が響いているというのだ。  この廃止で吉本の資産は激減していった。吉本の決算書を見た銀行担当者はこう言う。 「08年3月時点で二百三十七億円まで積み上げていた現金が、いまは五十億円まで減っています。同じく純資産(返済しなくてもいい資金)は四百八十五億円から百五十億円まで減少。よく言えばスリム化しましたが、要するに小さな会社になってしまったのです」  この銀行担当者は吉本は「この状況が続けばジリ貧です」と見て取る。  超優良会社といわれた吉本だった。私は、中田カウスや島田紳助問題で噴出した暴力団と吉本の癒着構造が、視聴者の嫌気を誘ってしまったのではないかと見る。最大の市場である東京の視聴者が吉本離れをしているのではないか。ことは深刻である。  第3位はフライデーの「元祖プッツン女優」藤谷美和子(49)の近況記事。  彼女を見なくなって久しい。カルビー・ポテトチップスのCMでデビューし、ブルーリボン賞にも輝いた女優だったが、奇矯な振る舞いをたびたびするようになって活躍の場を失った。2005年に結婚したが、その夫とも別居状態だそうだ。  何しろ彼女の格好がすごい。ボサボサの髪にキャップを目深に被り、両耳にはイヤホン、黒いキャリーバッグを引いて歩いてる姿はホームレスかと思わせる。  彼女の目的はネコの世話。空き地にいるネコを世話するために3日と空けずに通ってきている。ブツブツ独り言を言いながら、スマホでネコの写真を撮ったりネコの周りを片付けたりした後、キャリーバッグをガラガラ引きながら、競歩選手のようなスピードで来た道を引き返していく。  フライデーとの一問一答。 ――最近テレビでお見かけしませんが。 「いろんな媒体に『藤谷を画面に出すな』と手紙を書いている人がいるんです」 ――ご主人とは別居しているんですか? 「もうずいぶん前からです。最初から結婚する気がなかったし、(歌唱)印税を全部とられてしまっているので」 ――ネコが顔をケガしていますね。 「このネコちゃんはとっても頭がいいんです。(ケガしているのは)病院へ運ばせようとしている、病気のせいみたい」  母親と2人で生活しているそうだが、彼女がホームレスになっていても不思議はない、そう思わせるところが藤谷の「魅力」なのかもしれない。  第2位は久々の軟派記事が入った。現代はこのところ「無毛ヌード時代」をテーマにしてきているが、今週の袋とじでは「迫り来る無毛時代、その前に」として、日本人女性のヘアはこんなに濃かったと、こちらが心配になるほど「ヘア」を陳列して見せてくれる。  無毛といいながらの「ヘア・ヌード」満載グラビアで、技ありだ。  週刊ポストの活字だけの「世界20か国400人の『女性器展』の制作現場」や「美人女医が課外レッスン SEXの新境地『中戯』を極める」を完全凌駕。「陰毛専用の整毛機『ヒートカッター』」で毛をカットしている写真まである。わいせつ感のない、これぐらい開けっぴろげなヌードグラビアは珍しい。  見てもらうしかないが、アンダーヘアに隠された中までも見えそうな危ういけどアッケラカンとしたカラーグラビアに、今週の準グランプリを進呈する。  入選はしなかったが、ポストの「4・26『小沢一郎判決』で何が裁かれるか」という大特集は賛否あるだろうが、なかなかの力作ではある。  1部で有罪の場合と無罪の場合に「政局と日本の未来」がどうなるかをシミュレーションしている。  第2部では西松建設事件、陸山会事件、検察審査会、秘書裁判に分けて、各疑惑について小沢に成り代わって反論&否定している。  第3部では「政治家失格は明らかだ」(朝日新聞)、「潔く議員辞職すべきだ」(産経新聞)などと責め立てた大新聞の「過ち」を批判し、訂正・謝罪せよと迫っている。  私も、4月26日の判決は「小沢の灰色無罪」だと推定しているが、だからといって小沢の巨額蓄財への疑惑が晴れ、政治家としてまったく問題なしとなるとは思わない。  ポスト飯田昌宏編集長の「覚悟」は買うが、今回は選外にした。  そういう意味では朝日の「しずちゃん」の記事も賛否が分かれる記事であろう。  今年のロンドンオリンピックを目指してトレーニングに励む、お笑いコンビ「南海キャンディーズ」のしずちゃんこと山崎静代(33)は、人気タレントということもあって大きな注目を浴びている。  しかし、2月の全日本女子ボクシング選手権では優勝したものの、3月の女子アジア選手権(モンゴル)では1回戦で格下で17歳年下の韓国人ボクサーにボコボコにされ、レフリーストップで敗退してしまった。  彼女にとってオリンピック出場最後のチャンスは、5月に中国で開かれる世界選手権でベスト8に入ることだが、かなり難しいとの見方が多い。  そこに、数カ月前から「しずちゃんが、頭部の検査で異常が見つかったようだ」とささやかれているというのである。  取材を進めると、日本ボクシングコミッションが指定する病院の医師が、自覚症状はないが頭部のCTスキャンの結果、脳に水がたまったような薄い影が見られたため、別の病院でMRI検査をするように伝えたという話。  結局、MRI検査で脳の影が確認されたため、しずちゃんはプロへの道をあきらめた。その後のMRI検査で影も消えたため、アマチュアでオリンピックを目指すことにしたというのだ。  だが、ボクシングは危険なスポーツである。アマはヘッドギアをつけて試合をするため頭部へのダメージは少ないとはいうものの、安心はできない。  スポーツ医療関係者は、命懸けでやるという選手を止めることはできないが、選手自身が過去にそうしたことがあったと開示するべきで、その都度精密検査を受けて本当に問題がなければ堂々と試合に出たらいいと話す。  だが、しずちゃんはそのことを隠していた。朝日は「これは命にかかわる問題である。しずちゃんが『命懸け』であっても、本誌は知らないふりをすることはできない」と、しずちゃんのトレーナーや彼女の母親、本人に直撃するのである。  母親は元体育教師だったこともあって、ほかのスポーツと違って危険なことは承知しているが、彼女が必死に頑張っているいま、そのことは書かないでくれと話す。  当のしずちゃんは最初落ち着いて答えていたが、次第に語気を強めてこういう。 「ボクシングって、誰がやっても危険じゃないですか。危険を伴うスポーツなので、何が起こるかは誰もわからない。これ、記事になるんですか? (異常は)言いたくないし、そういう目で見られたくない。記事を書かれて、もし世界選手権の出場がダメになったら嫌なんです」  この記事が出ることによって本当に彼女が世界選手権に出られなくなったら。そう考えると朝日編集部も躊躇したのだろう。彼女の夢を奪うことになるかもしれないからだ。  こうしたとき、記事にはせず、彼女にいまいちどMRI検査を受けさせ、もし異常なしとわかればよし、異常が見つかった場合は引退させ、その間の事情をすべて書くという方法もあったとは思う。  私が現場にいたらどうしただろうか。悩ましい問題を抱えた記事だが、みんなで考えてもらいたいということもあって今週の第1位に挙げた。  最後に現代の「わが妻・田中好子の微笑がえし」という記事に違和感を感じたことも書いておこう。  元キャンディーズの田中好子の一周忌を前にして、夫の小達一雄が初めて明かした田中の最後の日々というリードがついている。  こんな言葉がある。 「いま私は、被災地に何回か通っています。ずっと我慢に我慢を重ねてきたご遺族の方々に『田中好子の主人です』と伝えると、多くの方が涙ながらに『あの言葉(田中が死の直前に吹き込んだ被災地を励ます録音テープ=筆者注)に救われました』と私の手をぎゅっと握ってくれました」  「家族を本当に大事にしていて」という言葉もある。だが、田中の死の直後に週刊女性が小達の愛人のことを報じたことを忘れてはいけない。  彼女の葬儀で、死ぬ間際に吹き込んだ田中好子の肉声が流され、気丈にふるまう夫・小達の姿が2,000人を超える参会者の涙を誘った。だが、その小達には10年前ぐらいから続いている愛人(40歳前後)がいて、その彼女との間に小学校高学年くらいの女の子がいるという記事だ。  週刊女性によれば「田中好子さんも勘づいていた」という。だとすれば、悲劇の裏にさらなる悲劇である。  目撃したのは昨年の7月14日、成田空港のハワイ・ホノルル行きのゲート前。「パパ」と駆け寄る女の子に「どれがいい」と小達は優しく声を掛けていた。  2人のことをよく知る関係者は「田中さん、探偵をつけたり、自ら張り込んだりもしたそうです」と話している。  このことを聞かないというのがインタビューの条件だったのだろうか。しかし編集者たる者、これを聞かずしてなんのインタビューぞ。キレイごとだけで終始した不満の残る記事であった。  蛇足。私が仲介をした現代の立川談志師匠の連載「時事放談」が本になった。「立川談志『遺稿』」(講談社刊・1500円)。文は人なり。超人的な記憶力で好きだった旅や昔の芸人たち、映画などについて縦横無尽に書いている。談志ファンならずとも一読の価値ありです。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史

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コーマンパワーが炸裂! 「安い、早い、面白い」がコーマン作品の魅力だ。
(c)2011,KOTB,LLC. All Rights Reserved.
 今日はみんなが大好きなコーマンにまつわる話をしよう。他人から指図されることをひどく嫌い、驚くほどの吝嗇家で、無名の若者たちの情熱を巧みに利用し、詐欺まがいの商法でティーンエイジャーたちの大事なお小遣いを巻き上げてきた男の話だ。その男の名前は、ロジャー・コーマン。“B級映画の帝王”と呼ばれ、監督した映画の本数は50本以上、プロデュースした映画は500本以上になり、85歳になる現在もまだ現役プロデューサーとしていかがわしい作品を作り続けている。ドキュメンタリー映画『コーマン帝国』は、そんなコーマンさまのコーマンちき伝説の数々を、ジャック・ニコルソン、マーティン・スコセッシ、ロン・ハワード、ジョナサン・デミといったハリウッドのビッグネームたちが証言するという趣向のものだ。  コーマンのすごさは、出資者や評論家たちから何を言われようとも気にせず、1950年代から延々とチープで悪趣味なインディペンデント映画を作り続けていること。映画興行は、限りなくギャンブルに近い。1~2本ヒット作が出ると、監督やプロデューサーのもとには映画の内容ではなく、お金儲けにしか興味のない出資者が集まる。うぶな監督は「もっと予算をつぎ込めば、もっと素晴らしい作品ができ、もっとヒットするに違いない」と夢想して、ハイリスクハイリターンな大作に手を出すようになる。往々にして自分が撮りたかった作品とは別物になるか、見事にすってんてんになってしまう。その点、コーマンは自分の財布具合に適した作品しか作らない。ホラー、モンスター、ギャングものなど低予算で済むジャンルに特化した。一発大勝負はせずに、そこそこ当たったら、その収益金で次回作に取り掛かった。グロテスクな宇宙人が襲来し、マシンガンが炸裂するクレイジーな映画の内容とは裏腹に、とっても健全な自転車操業を続けた。
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コーマン学校の卒業生であるマーティン・
スコセッシ。コーマン学校を卒業して、
初期の代表作『ミーン・ストリート』(73)
を作り上げた。
 低予算映画を撮り続けるうちに、様々なコーマン伝説が生まれた。若き日のジャック・ニコルソンが自虐的嗜好から歯医者に嬉々として通う変態患者を演じたカルト映画『リトル・ショップ・オブ・ホラー』(60)はわずか2日間で撮り終えた。Vシネなみの早撮りだ。この時期のジャック・ニコルソンはよっぽど暇だったらしく、やはり彼が幽霊に恋する青年将校を演じた『古城の亡霊』(63)は、『忍者と悪女』(63)で使ったセットが豪華だったので壊すのを1週間待ってもらって即席で撮り上げたもの。プロデューサーの引き受け手がいないので、コーマン自身がプロデューサーを務め、助監督も兼任して雑用をこなした。そうやって徹底的に人件費を削った。ギャラの安い脚本家を重宝した。主演俳優のギャラが高い場合は、短期間で集中して撮影することで値引き交渉する。予算をきっちり守り、スケジュール内に撮り終わること。それがコーマンが自分の作品に課したルールであり、映画業界で生き残る唯一の方法だった。  マーティン・スコセッシ監督は、コーマン夫妻がプロデュースした『明日に処刑を…』(72)で商業監督デビューを果たした。「コーマン作品はセンスは二の次」とクサしながらも、「コーマンのお陰で、スケジュール内で撮影を済ませる方法が身に付いた」と感謝の言葉を述べている。一方、フランシス・フォード・コッポラ監督もコーマン組出身だが、“作品の質を上げるためなら、少しぐらい予算やスケジュールはオーバーしてもいいではないか”という考え方だった。コーマンのもとを離れ、『ゴッドファーザー』(72)で大成功を収めるコッポラ監督だが、『地獄の黙示録』(79)では予算とスケジュールが大幅に超過してしまい、生き地獄を見るはめになった。『コーマン帝国』にコッポラが出ていないのが残念だ。
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『ワイルド・エンジェル』『白昼の幻想』に
主演したピーター・フォンダ。コーマンとの
出会いがなければ、『イージー・ライダー』も
誕生しなかった。
 俳優ならジャック・ニコルソン、ロバート・デニーロ、デヴィッド・キャラダイン、シルベスタ・スタローン……、監督ならコッポラにスコセッシ、さらに『ダ・ヴィンチ・コード』(06)のロン・ハワード、『羊たちの沈黙』(90)のジョナサン・デミ、『エイトメン・アウト』(88)のジョン・セイルズ、『グレムリン』(84)のジョー・ダンテ、『ラスト・ショー』(71)のピーター・ボグダノヴィッチらもコーマン育ちだ。安い賃金でコーマンに扱き使われたが、お金がなくて困ったとき、コーマンのもとを訪ねると仕事にありつけた。俳優たちは食いしのぐことができ、スタッフは低予算で早撮りするスキルを磨くことができた。そして、彼らはある時期が来るとコーマンのもとから巣立っていった。コーマンは引き止めることはしなかった。  誰も手を出さない未開拓の分野にも、コーマンは果敢に挑んだ。1960年代の米国を震撼させた暴走族グループ「ヘルズ・エンジェルス」の蒔き散らすパワーに目を付けたコーマンは、ピーター・フォンダ主演のバイク映画『ワイルド・エンジェル』(66)を監督する。エキストラにはモノホンのヘルズ・エンジェルスを集めた。警察から指名手配されているお尋ね者ばかりだった。『ワイルド・エンジェル』で助監督を務めていたのはピーター・ボグダノヴィッチ。エキストラの人数が少なかったため、乱闘シーンに加われとコーマンに命じられ、ヘルズ・エンジェルスたちにボコボコにされている。反社会的な匂いのプンプンする『ワイルド・エンジェル』は大ヒットし、これにほくそ笑んだコーマンは、さらに危険な匂いのする『白昼の幻想』(67)を監督。これはLSDを題材にし、ドラッグをキメるとどんな風になるのかビジュアル化した疑似体験型サイケデリックムービー。『ワイルド・エンジェル』に続いてピーター・フォンダを主演に据え、ドラッグの指南役を兼ねてデニス・ホッパーが共演。LSDを常用していたジャック・ニコルソンが脚本を書いている。今、DVDで見ても斬新な作品だ。『ワイルド・エンジェル』『白昼の幻想』に主演したピーター・フォンダは、デニス・ホッパーを監督に、ジャック・ニコルソンを共演者として呼び、アメリカンニューシネマの金字塔『イージー・ライダー』(69)を完成させる。コーマンなくして、アメリカンニューシネマは語れない。ただし、『イージー・ライダー』にはコーマンは出資しそびれて、儲けそこなっている。
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美人監督として評判のアレックス・ステイプル
トン。『コーマン帝国』が彼女にとって初の
長編デビュー作となった。
 誰も手掛けなかった作品といえば、アメリカ南部を舞台に闘鶏を題材にしたウォーレン・オーツ主演作『コックファイター』(74)もその一本。こちらは、残念ながら大ハズれ。このときのコーマンはさすがに「誰も手掛けなかったのは、誰も興味を持たない題材だったから」と反省している。といってもタダでは転ばないのが、コーマン流。タイトルを『生まれついての殺し屋』と変えて、ジョー・ダンテに新しい予告編を作らせて、さも新作のふりをして再度公開している。よくピンク映画館で旧作をタイトルだけ変えて上映してるけど、あれもコーマン・メソッドだったのか。『コーマン帝国』の元ネタとなっているコーマン自身の筆による自伝『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか』(早川書房)は、インディペンデントシーンで戦い続けるためのノウハウが詰め込まれているお薦めの一冊。  『私はいかにハリウッドで−』によると、インディペンデントシーンで名を成したコーマンは、低予算ではない高尚な作品を撮るチャンスもあったそうだ。でも、コーマンは肝心の勝負作になると、自分で監督することなく裏方のプロデュースに回った。インディペンデントシーンでは怖いものなしの無敵の帝王だったが、コーマンも生身の人間だった。映画人としての人生を賭けた大勝負は結局回避したのだ。かつては年間10本前後も撮りまくっていた監督業にも疲れを覚え、1970年代以降はプロデュース業に回る。妻や我が子たちと過ごす家庭での時間を大切にするようになった。B級映画に甘んじたと厳しく見ることもできるが、変動の激しい映画業界で最後の最後まで立っているヤツが勝利者なのだ、というのがコーマン哲学である。  ドキュメンタリー映画『コーマン帝国』の素晴らしい点は、コーマンは誰よりも映画愛に溢れた人でした、いつまでも大きな夢を追い掛けている人です、みたいな甘ったるい表現は避けているところ。コーマンは、あくまでもコーマンちき野郎でなくてはならない。ちなみに本作を企画し、監督したのは若くて美人なアレックス・ステイプルトン。同時期にオスカー受賞監督が、同じ企画を進めており、コーマンから「一緒に撮ったらどう?」と妥協策を提案されたが、その際に彼女は泣きながら「私のほうが先に頼んだのに」と訴えたそうだ。涙という女の武器をフル活用するなど、アレックス監督もかなりのしたたかさ。使えるものは何でも使ってやれ、というコーマン哲学を彼女自身がしっかり取材を通して身に付けたようだ。コーマンちきに生きることの素晴らしさを説いたナイスなドキュメンタリーである。この映画を観れば、あなたはもっともっとコーマンのことが大好きになるだろう。 (文=長野辰次) coman5.jpg 『コーマン帝国』 監督/アレックス・ステイプルトン 出演/ロジャー・コーマン、ジュリー・コーマン、ジーン・コーマン、ロバート・デニーロ、ジャック・ニコルソン、マーティン・スコセッシ、ロン・ハワード、ジョナサン・デミ、ピーター・フォンダ、ブルース・ダーン、ポール・W・S・アンダーソン、クエンティン・タランティーノ、アラン・アーカッシュ、ポール・バーデル、ピーター・ボグダノヴィッチ、デヴィッド・キャラダイン、ジョー・ダンテ、パム・グリア、ゲイル・アン・ハード、ジョナサン・カプラン、ポリー・プラット、ジョン・セイルズ、ウィリアム・シャトナー、ペネロープ・スフィーリス、メアリー・ウォロノフ、ジム・ウィノースキー、アーヴィン・カーシュナー、イーライ・ロス  配給/ビーズインターナショナル 4月7日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開 <http://corman-movie.com>
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●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! [第161回] 鬼才キム・ギドクの"多重人格ショー"セルフドキュメンタリー『アリラン』 [第160回]映画創成期に散った"殉教者"への聖歌 3D映画『ヒューゴの不思議な発明』 [第159回]これはホラー? それともコメディ? 勘違い女が爆走『ヤング≒アダルト』 [第158回] ピラミッドは古代からのメッセージ!? 歴史ミステリー『ピラミッドの謎』 [第157回] 韓国映画の名匠が明かす"創作の極意"イ・チャンドン監督『ポエトリー』 [第156回] ローカル局で"伝説となった男"の生涯『木村栄文レトロスペクティブ』 [第155回] 米国に半世紀も君臨した"影の大統領" FBI初代長官『J・エドガー』 [第154回]犯罪者たちに学ぶ"人心掌握術"の奨め『アニマル・キングダム』『預言者』 [第153回]"地獄"からの生還者・板尾創路の凄み 古典落語を過激に脚色『月光ノ仮面』 [第152回]早くも2012年ベスト1映画が登場!"代理殺人"を巡る恐怖『哀しき獣』 [第151回]父殺し、自分殺し、そして再生の物語 園子温流ラブストーリー『ヒミズ』 [第150回]米国お笑い横断旅行『宇宙人ポール』人間のちっぽけな悩みはETが解決! 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