“計算が合わない女”長谷川理恵が止まらない!!(6月上旬の人気記事)

ranking0618.jpg  6月上旬の人気記事を紹介する、日刊サイゾー人気記事ランキング。“大麻中毒”疑惑で揺れる沢尻エリカをはじめ、女性タレントの記事が人気を集めた今期ですが、そんな中でも長谷川ネエさんが大活躍! それでは早速、ランキングをチェケラ! 第1位 “計算が合わない女”長谷川理恵 楠本氏と園山真希絵をめぐる「大人な三角関係」って…… 長谷川さんのイタさがわかるエッセイ本も絶賛発売中。 第2位 「ミキティに責任はないの!?」うそプロデュース店で食中毒の藤本美貴 “名前貸し”の旨みとリスク それ言っちゃあダメでしょ! 第3位 「なぜ誰も抗議しないのか──」沢尻エリカ“大麻中毒”報道に一同沈黙の怪 だって、エイベさんが怖いもの! 第4位 「それならうちももらえるはず!」生活保護問題で全国の福祉事務所に問い合わせが殺到中 そりゃそうなるね。 第5位 相次ぐ吉本タレントの生保問題 キングコング梶原雄太“自白”の裏にあったタレコミとは? で、次の生活保護芸人さんは? 次点 「ドラマの視聴率にも影響?」武井咲、剛力彩芽……“ゴリ押し”が嫌われるワケ ゴリ押されなかったら、そんなに嫌いじゃないんだけどな。 次々点 「懸賞金1,000万円に目がくらんだ!?」ささやかれる菊地直子容疑者の情報提供者の正体 これぞ、純愛?

“計算が合わない女”長谷川理恵が止まらない!!(6月上旬の人気記事)

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やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』

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“愛は平和ではない、愛は戦いである”の名ゼリフで幕を開ける『愛と誠』。
昭和歌謡曲の名曲がフルコーラスで甦る!
 やめろと言われても~、今では遅すぎたッ! 映画の序盤、学ランを着た妻夫木聡が西城秀樹の1974年のヒット曲「激しい恋」を熱唱する。その歌詞のまんまの映画である。『巨人の星』『タイガーマスク』『あしたのジョー』などの“スポ根”漫画で知られる梶原一騎原作の純愛ストーリー『愛と誠』を、三池崇史監督が映画化。妻夫木の「激しい恋」に続いて、映画初出演となる武井咲が加藤和彦の名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」をフルコーラスで歌い上げる。ミュージカルタッチのツッコミどころ満載ムービーだ。一度映画館に足を踏み入れてしまうと、その過剰すぎる世界を最後まで見届けるはめになる。  「週刊少年マガジン」で『愛と誠』の連載がスタートしたのが1973年。3年間にわたって濃厚なる青春ストーリーが繰り広げられた。財閥の令嬢・早乙女愛は幼少期にスキー遊びをしていたところ誤って急斜面に陥り、地元の少年・太賀誠に命を救われる。愛にとって白馬の王子さまが現われた瞬間だった。だが、誠は額に大きな傷を負ってしまう。それから11年後、都内の名門高校に通う愛はフダ付きのワルと化した誠と再会。誠の額には巨大な傷跡が残っていた。自分が傷つけたために誠の精神が歪んでしまった。自責の念にかられる愛は、何とかして誠を本来の純真な姿に立ち直らせようと尋常ならざる情熱を注ぎ始める。愛の献身的な行動に焼きもちを妬いたのが、メガネ秀才の岩清水弘。「君のためなら死ねる」とストーカーまがいの手紙を愛に送りつけ、2人に執拗に付きまとう。報われることのない一方通行の恋愛トライアングル! さらに不良の巣窟である花園実業高校を仕切る“影の大番長”との対決が愛と誠を待ち受けていた!  愛は平和ではない。愛は戦いである。ネール首相が娘に贈った言葉を引用したオープニングからして、原作の連載された70年代でも充分に大仰でアナクロ感のあった『愛と誠』が21世紀に再映画化されたことに驚いた。しかも、かつて松竹で実写化された際は『愛と誠』(74)『続・愛と誠』(75)『愛と誠・完結編』(76)の三部構成だった大河ドラマを、三池版『愛と誠』は2人が運命的に出会った幼少期のエピソードからラストまで一気に突っ走る(残念ながら、ムチの名手・砂土谷峻の登場は割愛)。
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31歳にして学生服を着こなす太賀誠役の妻夫
木聡。額のキズをからかわれると、誠の怒り
パワーはマックスとなる。
 三池監督は70年代に発表された原作を、どう現代的にアレンジしたのか? 音楽プロデューサーに小林武史、振り付けにパパイヤ鈴木を投入してのミュージカル仕立てという劇薬を注入した。岩清水弘(斎藤工)は「空に太陽があるかぎり」を暑苦しいほどエネルギッシュに歌い、文学少女・高原由紀(大野いと)への絶対的な愛を誓う蔵王権太(伊原剛志)は狂ったように「狼少年ケン」を吠え叫ぶ。あぁ、何と青春とは恥ずかしいものなのだろうか。人は恋をすると周囲が見えなくなってしまう。相手のことしか考えられない。青春ラブストーリーをミュージカルとして描いた三池監督の選択は、とっても正しい。  原作ものは一度バラバラに解体してから、エッセンス的部分を抽出して映画として再構成することをセオリーとしている三池監督。人気俳優たちが原作に登場するキャラクターたちの物まねを演じることで良しとする、あまたの監督たちとは一線を画するところだ。しかしまぁ、梶原一騎の実弟・真樹日佐夫先生との交流の深かった三池監督が、『愛と誠』の世界をミュージカル仕立てでここまでぶっ壊してみせたことに二度驚いた。  『十三人の刺客』(10)の公開時に三池監督にキャスティングについて聞いたところ、興味深いコメントが返ってきた。『十三人の刺客』の“刺客”チームは主に映画畑出身者で固め、対する“殿さま”チームには日本屈指のミュージカル俳優として活躍する市村正親とSMAPメンバーとしてスポットライトを浴び続ける稲垣吾郎を配したのだと。ステージ上で華麗に歌い踊るスターたちを、みんなで泥まみれにしてやれという“裏テーマ”のもと『十三人の刺客』は作られたのだった。80年代はテレビ映画や2時間ドラマの助監督として汗水を流し、90年代は低予算なVシネやインディペンデント映画を眠らずに量産してきた三池監督の“ミュージカル=華やかなもの”をぶっ潰してやりたいという“暗い情熱”を感じさせる。でも、稲垣吾郎も市村正親も泥まみれになることで俳優としての高い評価を受けることになった。これこそ、三池監督ならではの“歪んだ愛情”ではないか。
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早乙女愛を演じた武井咲。「脚本をしっかり
読まなくてもいいかなと思える現場でした」と
記者会見でビックリ発言。
 誠(妻夫木聡)の生活費を捻出するため、お嬢さまの愛(武井咲)は校則を破って怪しげなカフェで働き始める。カフェというよりも、風俗店だ。蔵王権太役の伊原剛志(49歳)は学生服姿で暴れ回り、岩清水の名ゼリフ「君のためなら死ねる!」も盛り込んである。誠に一蹴されたスケ番のガム子(安藤サクラ)は誠に夢中になっていく。クールなワルを気取っている誠でさえ、ひとりの女性に振り向いてほしくて歌舞伎町の小さな店に通い詰める。ミュージカルシーンや登場キャラクターたちのベタな行動に腹を抱えて笑いながらも、次第に彼らの行く末が気になり始める自分に気づく。誰よりも由紀のことを慕う権太や自分が誠に恋したことに戸惑うガム子の純情は果たしてどうなるのか。バカじゃないのと毒づきながらも、愛と誠が幼少期のトラウマから解放されればいいのにと思う。原作の発表からいくら歳月が経っても、人間の根っこの部分はそう変わらないらしい。ケータイや最新のスマートフォンを持つようになっても、人間の本質はおそろしくベタで、信じられないほどバカなのだ。  最後にコワモテで知られた原作者・梶原一騎にまつわるトリビアを。梶原一騎はペンネームであり、本名は高森朝樹という。その“梶原”の由来だが、ヤンチャぶりの度がすぎて親から教護院「誠明学園」に送られた高森少年は学園でひとりの少女と出会い、若いロマンスを育んだ。その少女の姓が“梶原”だった。教護院で心を通い合わせた少女の姓を、作家を志した高森少年は名乗るようになる。その後、劇画原作で富と名声を手に入れた彼は松竹での『愛と誠』三部作の映画化をきっかけに芸能界に深く関わるようになり、晩年はスキャンダルまみれとなっていった。それでも、どんなにドロドロに汚れまくりながらも高森朝樹は心の中の小さな小さなロマンスを大事にした。“梶原一騎”というペンネームを50歳で亡くなる最期まで使い続けた。 (文=長野辰次) aitomakoto4.jpg 『愛と誠』 原作/梶原一騎、ながやす巧 脚本/宅間孝行 音楽/小林武史 振付/パパイヤ鈴木 監督/三池崇史 出演/妻夫木聡、武井咲、斎藤工、大野いと、安藤サクラ、前田健、加藤清史郎、一青窈、余貴美子、伊原剛志、市村正親 配給/角川映画・東映 6月16日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー (c)2012『愛と誠』製作委員会 <http://aiandmakoto.jp> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! [第171回]自由社会に順応できない“脱北者”の過酷な現状 無垢なる季節との決別『ムサン日記 白い犬』 [第170回] 世界興収100億突破のSF大作『ロボット』はあらゆる既成概念を破壊する!! [第169回]“エンタの神さま”ツイ・ハークが大復活! B級映画マニアの心を焦がす『王朝の陰謀』 [第168回]人はお下劣な分だけ、強く優しくなれる!? 結婚を控えた女たちの本音『ブライズメイズ』 [第167回]行きすぎたシステム社会に警鐘を鳴らす“ユナボマー・マニフェスト”の映画化『モンスターズクラブ』 [第166回]祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! [第161回] 鬼才キム・ギドクの"多重人格ショー"セルフドキュメンタリー『アリラン』 [第160回]映画創成期に散った"殉教者"への聖歌 3D映画『ヒューゴの不思議な発明』 [第159回]これはホラー? それともコメディ? 勘違い女が爆走『ヤング≒アダルト』 [第158回] ピラミッドは古代からのメッセージ!? 歴史ミステリー『ピラミッドの謎』 [第157回] 韓国映画の名匠が明かす"創作の極意"イ・チャンドン監督『ポエトリー』 [第156回] ローカル局で"伝説となった男"の生涯『木村栄文レトロスペクティブ』 [第155回] 米国に半世紀も君臨した"影の大統領" FBI初代長官『J・エドガー』 [第154回]犯罪者たちに学ぶ"人心掌握術"の奨め『アニマル・キングダム』『預言者』 [第153回]"地獄"からの生還者・板尾創路の凄み 古典落語を過激に脚色『月光ノ仮面』 [第152回]早くも2012年ベスト1映画が登場!"代理殺人"を巡る恐怖『哀しき獣』 [第151回]父殺し、自分殺し、そして再生の物語 園子温流ラブストーリー『ヒミズ』 [第150回]米国お笑い横断旅行『宇宙人ポール』人間のちっぽけな悩みはETが解決! 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やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』

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“愛は平和ではない、愛は戦いである”の名ゼリフで幕を開ける『愛と誠』。
昭和歌謡曲の名曲がフルコーラスで甦る!
 やめろと言われても~、今では遅すぎたッ! 映画の序盤、学ランを着た妻夫木聡が西城秀樹の1974年のヒット曲「激しい恋」を熱唱する。その歌詞のまんまの映画である。『巨人の星』『タイガーマスク』『あしたのジョー』などの“スポ根”漫画で知られる梶原一騎原作の純愛ストーリー『愛と誠』を、三池崇史監督が映画化。妻夫木の「激しい恋」に続いて、映画初出演となる武井咲が加藤和彦の名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」をフルコーラスで歌い上げる。ミュージカルタッチのツッコミどころ満載ムービーだ。一度映画館に足を踏み入れてしまうと、その過剰すぎる世界を最後まで見届けるはめになる。  「週刊少年マガジン」で『愛と誠』の連載がスタートしたのが1973年。3年間にわたって濃厚なる青春ストーリーが繰り広げられた。財閥の令嬢・早乙女愛は幼少期にスキー遊びをしていたところ誤って急斜面に陥り、地元の少年・太賀誠に命を救われる。愛にとって白馬の王子さまが現われた瞬間だった。だが、誠は額に大きな傷を負ってしまう。それから11年後、都内の名門高校に通う愛はフダ付きのワルと化した誠と再会。誠の額には巨大な傷跡が残っていた。自分が傷つけたために誠の精神が歪んでしまった。自責の念にかられる愛は、何とかして誠を本来の純真な姿に立ち直らせようと尋常ならざる情熱を注ぎ始める。愛の献身的な行動に焼きもちを妬いたのが、メガネ秀才の岩清水弘。「君のためなら死ねる」とストーカーまがいの手紙を愛に送りつけ、2人に執拗に付きまとう。報われることのない一方通行の恋愛トライアングル! さらに不良の巣窟である花園実業高校を仕切る“影の大番長”との対決が愛と誠を待ち受けていた!  愛は平和ではない。愛は戦いである。ネール首相が娘に贈った言葉を引用したオープニングからして、原作の連載された70年代でも充分に大仰でアナクロ感のあった『愛と誠』が21世紀に再映画化されたことに驚いた。しかも、かつて松竹で実写化された際は『愛と誠』(74)『続・愛と誠』(75)『愛と誠・完結編』(76)の三部構成だった大河ドラマを、三池版『愛と誠』は2人が運命的に出会った幼少期のエピソードからラストまで一気に突っ走る(残念ながら、ムチの名手・砂土谷峻の登場は割愛)。
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31歳にして学生服を着こなす太賀誠役の妻夫
木聡。額のキズをからかわれると、誠の怒り
パワーはマックスとなる。
 三池監督は70年代に発表された原作を、どう現代的にアレンジしたのか? 音楽プロデューサーに小林武史、振り付けにパパイヤ鈴木を投入してのミュージカル仕立てという劇薬を注入した。岩清水弘(斎藤工)は「空に太陽があるかぎり」を暑苦しいほどエネルギッシュに歌い、文学少女・高原由紀(大野いと)への絶対的な愛を誓う蔵王権太(伊原剛志)は狂ったように「狼少年ケン」を吠え叫ぶ。あぁ、何と青春とは恥ずかしいものなのだろうか。人は恋をすると周囲が見えなくなってしまう。相手のことしか考えられない。青春ラブストーリーをミュージカルとして描いた三池監督の選択は、とっても正しい。  原作ものは一度バラバラに解体してから、エッセンス的部分を抽出して映画として再構成することをセオリーとしている三池監督。人気俳優たちが原作に登場するキャラクターたちの物まねを演じることで良しとする、あまたの監督たちとは一線を画するところだ。しかしまぁ、梶原一騎の実弟・真樹日佐夫先生との交流の深かった三池監督が、『愛と誠』の世界をミュージカル仕立てでここまでぶっ壊してみせたことに二度驚いた。  『十三人の刺客』(10)の公開時に三池監督にキャスティングについて聞いたところ、興味深いコメントが返ってきた。『十三人の刺客』の“刺客”チームは主に映画畑出身者で固め、対する“殿さま”チームには日本屈指のミュージカル俳優として活躍する市村正親とSMAPメンバーとしてスポットライトを浴び続ける稲垣吾郎を配したのだと。ステージ上で華麗に歌い踊るスターたちを、みんなで泥まみれにしてやれという“裏テーマ”のもと『十三人の刺客』は作られたのだった。80年代はテレビ映画や2時間ドラマの助監督として汗水を流し、90年代は低予算なVシネやインディペンデント映画を眠らずに量産してきた三池監督の“ミュージカル=華やかなもの”をぶっ潰してやりたいという“暗い情熱”を感じさせる。でも、稲垣吾郎も市村正親も泥まみれになることで俳優としての高い評価を受けることになった。これこそ、三池監督ならではの“歪んだ愛情”ではないか。
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早乙女愛を演じた武井咲。「脚本をしっかり
読まなくてもいいかなと思える現場でした」と
記者会見でビックリ発言。
 誠(妻夫木聡)の生活費を捻出するため、お嬢さまの愛(武井咲)は校則を破って怪しげなカフェで働き始める。カフェというよりも、風俗店だ。蔵王権太役の伊原剛志(49歳)は学生服姿で暴れ回り、岩清水の名ゼリフ「君のためなら死ねる!」も盛り込んである。誠に一蹴されたスケ番のガム子(安藤サクラ)は誠に夢中になっていく。クールなワルを気取っている誠でさえ、ひとりの女性に振り向いてほしくて歌舞伎町の小さな店に通い詰める。ミュージカルシーンや登場キャラクターたちのベタな行動に腹を抱えて笑いながらも、次第に彼らの行く末が気になり始める自分に気づく。誰よりも由紀のことを慕う権太や自分が誠に恋したことに戸惑うガム子の純情は果たしてどうなるのか。バカじゃないのと毒づきながらも、愛と誠が幼少期のトラウマから解放されればいいのにと思う。原作の発表からいくら歳月が経っても、人間の根っこの部分はそう変わらないらしい。ケータイや最新のスマートフォンを持つようになっても、人間の本質はおそろしくベタで、信じられないほどバカなのだ。  最後にコワモテで知られた原作者・梶原一騎にまつわるトリビアを。梶原一騎はペンネームであり、本名は高森朝樹という。その“梶原”の由来だが、ヤンチャぶりの度がすぎて親から教護院「誠明学園」に送られた高森少年は学園でひとりの少女と出会い、若いロマンスを育んだ。その少女の姓が“梶原”だった。教護院で心を通い合わせた少女の姓を、作家を志した高森少年は名乗るようになる。その後、劇画原作で富と名声を手に入れた彼は松竹での『愛と誠』三部作の映画化をきっかけに芸能界に深く関わるようになり、晩年はスキャンダルまみれとなっていった。それでも、どんなにドロドロに汚れまくりながらも高森朝樹は心の中の小さな小さなロマンスを大事にした。“梶原一騎”というペンネームを50歳で亡くなる最期まで使い続けた。 (文=長野辰次) aitomakoto4.jpg 『愛と誠』 原作/梶原一騎、ながやす巧 脚本/宅間孝行 音楽/小林武史 振付/パパイヤ鈴木 監督/三池崇史 出演/妻夫木聡、武井咲、斎藤工、大野いと、安藤サクラ、前田健、加藤清史郎、一青窈、余貴美子、伊原剛志、市村正親 配給/角川映画・東映 6月16日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー (c)2012『愛と誠』製作委員会 <http://aiandmakoto.jp> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! 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「週刊朝日」6月22日号
グランプリ 「東電OL殺人事件再審決定 佐野眞一『司法も警察も恥を知れ』」(「週刊朝日」6月22日号) 第2位 「『世界恐慌』を乗り越えるための全情報 あなたの預金が溶けてなくなる」(「週刊現代」6月23日号) 第3位 「『菊地直子』を通り過ぎた4人の男」(「週刊新潮」6月14日号) 次点 「オモロすぎるばい!福岡県警」(「週刊ポスト」6月22日号)  今週は4本を選んでみた。次点の記事は2ページだが、私はこういう記事が好きだ。  福岡県警のHPが“充実”しているという。HPには「手りゅう弾に注意!」と題したページがある。殺傷能力が異なる4種類の手榴弾が写真付きで紹介され、「絶対に踏んだり、触ったり、蹴飛ばしたりしない」と書かれている。  そんなことするもんかと思うが、そうではない。この県は発砲件数、指定暴力団数共に全国1位で、昨年1月以降4件もの手榴弾使用事件が起きているのだ。  しかも実名で手榴弾があることを通報すると、押収されて被疑者も検挙されれば10万円の報奨金が出るという。  2年前には全国で初めて「みかじめ通報ダイヤル」を設置して、暴力団からみかじめ料や用心棒代、ショバ代などを要求されたらここへ電話をかけてくれれば助けますよとした。その他にも暴力団から因縁を付けられたら「暴力追放ダイヤル」、暴力団による企業へのゆすり・恐喝を取り締まる「企業たかり遮断FAX」、組員を検挙した際に流す「暴力団員検挙速報」など、至れり尽くせりである。  また、暴力団の本当のおっかない姿を描いたビデオ『許されざる者』を自主制作していて、レンタルビデオ店に行けば無料で借りることができる。  こうしたやり方に「暴力団取締の負担を市民に押し付けているのではないか」という批判もあるようだが、“日本で一番物騒な県”の汚名を晴らすためには致し方ないのではないかと思うのだが。  菊地直子逮捕を各週刊誌が挙って取り上げているが、週刊新潮、週刊文春がいち早く書いてしまったため、月曜発売の週刊誌はやり方を工夫してきた。  「高額懸賞金付き『凶悪逃亡犯」」(週刊ポスト)、「高橋克也『隠遁生活』と『最終攻防』菊地直子 男にハマった『信仰』と『逃亡生活』」(週刊朝日)、「菊地直子と高橋克也 6000日のオウム逃亡ノート」(週刊現代)。だが、残念ながら両誌を抜く内容はなかった。  新潮、文春ともに菊地直子(40)が逮捕されるまでの17年間の逃亡生活や、犯人隠匿容疑で逮捕された高橋寛人(41)容疑者との同棲生活などについて触れ、菊地が書いたというノートにある、彼女と関係のあった男たちとの「性欲」についての記述を取り上げている。  だが内容は、「逃げるためには性欲を利用してもいいんだという考えに走ることになり」、「私の中に、性欲と同時に、性欲に対する恐怖があった」という記述があるだけである。  新潮は「焼酎『吉四六』緑茶割りが定番だった」など、二人がよく行った居酒屋でのディテールも書き込んである。  新潮は「情報提供者は『同居男親族』で彼も通報を知っていた」と、菊地の逮捕につながった警察への情報提供者は「同居男の親族」だと見出しで打っている。文春も書いてはいるが、この記事、新潮に軍配をあげたい。  新潮によれば、菊地逮捕からさかのぼること約12時間前、同居していた高橋が、なぜか元妻に電話をかけて会っている頃、高橋の親族(文春によれば高橋の兄)が桜田門の警視庁まで出向いて情報提供したというのである。  特別手配の菊地には公的懸賞金が800万円、警察OB組織が用意する200万円と合わせて1,000万円の賞金が情報提供者に出る。  ポストによれば、国内で最初に懸賞金をかけて情報を集めた事件は、23年前の坂本堤弁護士一家殺害事件だそうだ。この時は全国の弁護士有志が支援団体を結成して、総額2,000万円で情報提供を呼びかけた。  この事件がオウム真理教による犯行だとわかったのは情報提供者からではなく、オウム内部の人間が現代に「告白」したからだった。だが、今回の菊地や高橋克也の情報提供は、懸賞金がかかってから急増したそうである。  現代は、菊地と同居していた高橋の親族が通報し、高橋もそれを知っていたとしている。その理由は純愛である。 「寛人は逮捕後、『彼女に罪を償わせ、結婚したい』と供述しているという」(現代)  高橋克也も最近の顔が公開されたから、逮捕されるのは時間の問題のようだが、彼が捕まってもオウムの深い闇の全貌は見えてはこないだろう。  現代が藤田康雄編集長に替わった。週刊誌は編集長が替わると内容まで変わってくるが、今の橋下徹大阪市長礼賛の編集方針が変わるのか変わらないのか、注目である。  先週の現代でノーベル経済学受賞者ポール・クルーグマンがこう言っていた。 「ギリシャがユーロを離脱すると、まずスペインとイタリアで銀行から大量の預金流失が起こることになる。いわゆる取り付け騒ぎというやつだ。(中略)おそらく預金の引き出しと海外への移転の額を合わせて、1000億ユーロ(10兆円)単位になるだろう。そうなれば巨大銀行崩壊の危険性が高まってくる。もちろんスペインやイタリアの巨大銀行が倒れれば、それは『第二のリーマンショック』級のものになる」  ギリシャがユーロを離脱するかどうかはまだハッキリしないが、一足早くスペイン政府が大量の不良債権を抱える銀行の救済のために、欧州連合(EU)に金融支援を要請する意向を示し、ユーロ圏各国が10兆円規模の金融支援を行うことを決めた。  この程度の支援でスペインの金融危機が回避できるのかは不透明だが、現代はこのままいくと日本国債の暴落が始まり超インフレが来ると警鐘を鳴らしている。この記事が第2位。  一橋大学小黒一正准教授が、こう話す。 「危機の引き金になるのは日本国債の暴落だ。いまはギリシャ、スペインなど国債危機が過熱しているので、“安全資産”として日本国債が買われているが、逆にこれが問題を深刻にしている。世界最悪レベルの財政赤字を抱える日本国債が“安全”ということ自体がおかしいわけで、日本国債のバブルが目下膨らんでいるといえるからだ。しかし、安全神話はいつ崩壊してもおかしくない」  そのXデーはすぐ起きるかもしれないという。明治大学加藤久和教授は、6月の国会会期末に起こる可能性まであるという。 「実は日本は消費税率が10%になっても安定しない。25%まで上げる必要があるという人もいるし、海外の投資家たちは『少なくとも日本は20%まで上げる余地がある』と考えている。逆に言えば、この余地・余力がなくなったと判断された時点で、一気に国債が売り浴びせられる可能性が高い。国会会期末を迎え、『日本は政治的に消費税が上げられない』と見なされれば、その瞬間に、日本売りが始まるかもしれない」  しかし、「デフレ下で消費税を上げると、景気がさらに悪化して、モノが売れなくなり、企業業績は一層落ち込む。税収も減るのでさらに増税しなければいけなくなり、それで再びモノが売れなくなり……という悪循環に陥る。(中略)疲弊した企業も個人も日本国債を買い支えることができなくなり、日本銀行が約1000兆円の国債を引き受けざるをえなくなる。その瞬間、カネの価値は一気に暴落し、超インフレが起こるのです」(経済評論家・森永卓郎)という見方も説得力がある。  現代は、極端な例だが、スタバのカフェモカが1杯3万8,000円になることもありうるとシュミレーションしている。  だが、そのことへの対策が、変動金利で住宅ローンを組んでいる人は固定金利に切り替える、デフレで落ち込んだ不動産などのモノを仕込んでおけば、インフレになれば価値が上がる程度のことでは、ものの役には立つまい。年金暮らしの私など、1週間も生きてはいられないはずである。  クルーグマンはこういっているではないか。この危機を乗り越えるためには、ユーロ諸国、アメリカ、日本などが一斉に大恐慌並みの大胆で積極的な財政・金融政策をとればいいと。  世界中の先進国が頭を抱えている国債、借金問題などそれほど恐くないとも言っている。 「経済が成長すればそれは返すことができる。イギリスがかつて成長を謳歌していた時代にも、同国は大量の借金を抱えていたという事実をどうして誰も語ろうとしないのか。そうした意味でも、成長のための政策がいま求められているのだ」(クルーグマン)  政治に求められているのは、消費税を上げることではなく、どうしたら経済を成長させることができるかであろう。週刊誌はやたら危機を煽るだけではなく、そのために何をしなければいけないのかも提示することが求められるはずである。  さて今週のグランプリは、1997年に起きた「東電OL殺人事件」で逮捕されたネパール人ゴビンダ・プラサド・マイナリ元被告が、一審で無罪だったにもかかわらず、二審で有罪になり2003年に無期懲役が確定したが、これを「冤罪」だとして取材を続けてきたノンフィクション・ライター佐野眞一の怒りの手記である。  ゴビンダは無罪を訴え続け、再審請求してきたが、8年経ってようやく東京高裁が再審を決定した。  佐野は、この背景には最新のDNA鑑定、足利事件の菅谷利和の無罪、大阪地検特捜部などの信じられない不祥事の連続が「逆バネ」になって再審への道が開かれたと書く。  佐野は、ゴビンダが犯人ではないと確信を持つようになった理由をあげている。ゴビンダが働いていた千葉幕張のインド料理店から渋谷まで、同じJRにストップウオッチを持って乗り込んでみたところ、警察が発表した殺害時刻には殺害現場には着けないことがわかった。  ゴビンダの故郷のネパールへ行き、彼と同じ渋谷の円山町アパートで暮らしていた同室者に話を聞いたところ、一人はゴビンダのアリバイを証言し、一人は警察によって殴る蹴るの暴行を受け、就職の斡旋まで受けてゴビンダを犯人に導く証言したことを告白した。 「一審無罪だったゴビンダは、憲法違反の疑いが濃厚な再拘留決定を受けた上、控訴審の東京高裁で逆転有罪無期懲役の不当判決を言い渡された。そのとき、ゴビンダが日本語で『神様、やってない』『神様、助けてください』と訴えた悲痛な叫び声は、いまでも私の耳にこびりついて離れない」(佐野)  この判決を言い渡した高木俊夫裁判長は、狭山事件の第二次再審請求を棄却し、足利事件の控訴審を棄却した「札付き裁判官」であること、ゴビンダが欧米や韓国、中国の人間ではなくネパールという最貧国からの出稼ぎ労働者であったから、その背景にレイシズム(民族差別感)があると書いている。  再審開始の決め手になったのは昨年7月、殺害現場から発見された陰毛と被害者の体内に残されていた精液が、最新のDNA鑑定によって、ゴビンダ以外の第三者のDNAと判明したことである。 「東京高裁がここまで踏み込んだ決定を下した背景に、完全に信頼感を失った司法に対する強い危機感があることを感じた。これは希望を失った司法の世界に大きな風穴を開ける画期的な決定だったと率直に評価したい」(佐野)  横浜刑務所から釈放されたゴビンダ元被告に対して、東京入国管理局横浜支局は強制退去の命令を出した。これによって臨時旅券などの発行手続きが進めば、ゴビンダ元被告は数日中に母国ネパールに向けて出国できることになる。  新聞、テレビも、東京電力の力に怯えたのか、この事件についてはほとんど報じてこなかった。事件当初は「東電OL」だったものを、東電側にクレームをつけられて「電力会社OL」と言い換えてしまった。  「東電OL」にこだわり、事件の真相を地を這うような取材で掘り起こし、ゴビンダの無罪を訴え続けた佐野のノンフィクション魂が、再審開始の大きな力になったことは間違いない。ノンフィクションの持つ力を見せてもらった。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか 

「東電OL殺人事件」再審決定 信頼感を失った司法の世界に風穴が開く?

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「週刊朝日」6月22日号
グランプリ 「東電OL殺人事件再審決定 佐野眞一『司法も警察も恥を知れ』」(「週刊朝日」6月22日号) 第2位 「『世界恐慌』を乗り越えるための全情報 あなたの預金が溶けてなくなる」(「週刊現代」6月23日号) 第3位 「『菊地直子』を通り過ぎた4人の男」(「週刊新潮」6月14日号) 次点 「オモロすぎるばい!福岡県警」(「週刊ポスト」6月22日号)  今週は4本を選んでみた。次点の記事は2ページだが、私はこういう記事が好きだ。  福岡県警のHPが“充実”しているという。HPには「手りゅう弾に注意!」と題したページがある。殺傷能力が異なる4種類の手榴弾が写真付きで紹介され、「絶対に踏んだり、触ったり、蹴飛ばしたりしない」と書かれている。  そんなことするもんかと思うが、そうではない。この県は発砲件数、指定暴力団数共に全国1位で、昨年1月以降4件もの手榴弾使用事件が起きているのだ。  しかも実名で手榴弾があることを通報すると、押収されて被疑者も検挙されれば10万円の報奨金が出るという。  2年前には全国で初めて「みかじめ通報ダイヤル」を設置して、暴力団からみかじめ料や用心棒代、ショバ代などを要求されたらここへ電話をかけてくれれば助けますよとした。その他にも暴力団から因縁を付けられたら「暴力追放ダイヤル」、暴力団による企業へのゆすり・恐喝を取り締まる「企業たかり遮断FAX」、組員を検挙した際に流す「暴力団員検挙速報」など、至れり尽くせりである。  また、暴力団の本当のおっかない姿を描いたビデオ『許されざる者』を自主制作していて、レンタルビデオ店に行けば無料で借りることができる。  こうしたやり方に「暴力団取締の負担を市民に押し付けているのではないか」という批判もあるようだが、“日本で一番物騒な県”の汚名を晴らすためには致し方ないのではないかと思うのだが。  菊地直子逮捕を各週刊誌が挙って取り上げているが、週刊新潮、週刊文春がいち早く書いてしまったため、月曜発売の週刊誌はやり方を工夫してきた。  「高額懸賞金付き『凶悪逃亡犯」」(週刊ポスト)、「高橋克也『隠遁生活』と『最終攻防』菊地直子 男にハマった『信仰』と『逃亡生活』」(週刊朝日)、「菊地直子と高橋克也 6000日のオウム逃亡ノート」(週刊現代)。だが、残念ながら両誌を抜く内容はなかった。  新潮、文春ともに菊地直子(40)が逮捕されるまでの17年間の逃亡生活や、犯人隠匿容疑で逮捕された高橋寛人(41)容疑者との同棲生活などについて触れ、菊地が書いたというノートにある、彼女と関係のあった男たちとの「性欲」についての記述を取り上げている。  だが内容は、「逃げるためには性欲を利用してもいいんだという考えに走ることになり」、「私の中に、性欲と同時に、性欲に対する恐怖があった」という記述があるだけである。  新潮は「焼酎『吉四六』緑茶割りが定番だった」など、二人がよく行った居酒屋でのディテールも書き込んである。  新潮は「情報提供者は『同居男親族』で彼も通報を知っていた」と、菊地の逮捕につながった警察への情報提供者は「同居男の親族」だと見出しで打っている。文春も書いてはいるが、この記事、新潮に軍配をあげたい。  新潮によれば、菊地逮捕からさかのぼること約12時間前、同居していた高橋が、なぜか元妻に電話をかけて会っている頃、高橋の親族(文春によれば高橋の兄)が桜田門の警視庁まで出向いて情報提供したというのである。  特別手配の菊地には公的懸賞金が800万円、警察OB組織が用意する200万円と合わせて1,000万円の賞金が情報提供者に出る。  ポストによれば、国内で最初に懸賞金をかけて情報を集めた事件は、23年前の坂本堤弁護士一家殺害事件だそうだ。この時は全国の弁護士有志が支援団体を結成して、総額2,000万円で情報提供を呼びかけた。  この事件がオウム真理教による犯行だとわかったのは情報提供者からではなく、オウム内部の人間が現代に「告白」したからだった。だが、今回の菊地や高橋克也の情報提供は、懸賞金がかかってから急増したそうである。  現代は、菊地と同居していた高橋の親族が通報し、高橋もそれを知っていたとしている。その理由は純愛である。 「寛人は逮捕後、『彼女に罪を償わせ、結婚したい』と供述しているという」(現代)  高橋克也も最近の顔が公開されたから、逮捕されるのは時間の問題のようだが、彼が捕まってもオウムの深い闇の全貌は見えてはこないだろう。  現代が藤田康雄編集長に替わった。週刊誌は編集長が替わると内容まで変わってくるが、今の橋下徹大阪市長礼賛の編集方針が変わるのか変わらないのか、注目である。  先週の現代でノーベル経済学受賞者ポール・クルーグマンがこう言っていた。 「ギリシャがユーロを離脱すると、まずスペインとイタリアで銀行から大量の預金流失が起こることになる。いわゆる取り付け騒ぎというやつだ。(中略)おそらく預金の引き出しと海外への移転の額を合わせて、1000億ユーロ(10兆円)単位になるだろう。そうなれば巨大銀行崩壊の危険性が高まってくる。もちろんスペインやイタリアの巨大銀行が倒れれば、それは『第二のリーマンショック』級のものになる」  ギリシャがユーロを離脱するかどうかはまだハッキリしないが、一足早くスペイン政府が大量の不良債権を抱える銀行の救済のために、欧州連合(EU)に金融支援を要請する意向を示し、ユーロ圏各国が10兆円規模の金融支援を行うことを決めた。  この程度の支援でスペインの金融危機が回避できるのかは不透明だが、現代はこのままいくと日本国債の暴落が始まり超インフレが来ると警鐘を鳴らしている。この記事が第2位。  一橋大学小黒一正准教授が、こう話す。 「危機の引き金になるのは日本国債の暴落だ。いまはギリシャ、スペインなど国債危機が過熱しているので、“安全資産”として日本国債が買われているが、逆にこれが問題を深刻にしている。世界最悪レベルの財政赤字を抱える日本国債が“安全”ということ自体がおかしいわけで、日本国債のバブルが目下膨らんでいるといえるからだ。しかし、安全神話はいつ崩壊してもおかしくない」  そのXデーはすぐ起きるかもしれないという。明治大学加藤久和教授は、6月の国会会期末に起こる可能性まであるという。 「実は日本は消費税率が10%になっても安定しない。25%まで上げる必要があるという人もいるし、海外の投資家たちは『少なくとも日本は20%まで上げる余地がある』と考えている。逆に言えば、この余地・余力がなくなったと判断された時点で、一気に国債が売り浴びせられる可能性が高い。国会会期末を迎え、『日本は政治的に消費税が上げられない』と見なされれば、その瞬間に、日本売りが始まるかもしれない」  しかし、「デフレ下で消費税を上げると、景気がさらに悪化して、モノが売れなくなり、企業業績は一層落ち込む。税収も減るのでさらに増税しなければいけなくなり、それで再びモノが売れなくなり……という悪循環に陥る。(中略)疲弊した企業も個人も日本国債を買い支えることができなくなり、日本銀行が約1000兆円の国債を引き受けざるをえなくなる。その瞬間、カネの価値は一気に暴落し、超インフレが起こるのです」(経済評論家・森永卓郎)という見方も説得力がある。  現代は、極端な例だが、スタバのカフェモカが1杯3万8,000円になることもありうるとシュミレーションしている。  だが、そのことへの対策が、変動金利で住宅ローンを組んでいる人は固定金利に切り替える、デフレで落ち込んだ不動産などのモノを仕込んでおけば、インフレになれば価値が上がる程度のことでは、ものの役には立つまい。年金暮らしの私など、1週間も生きてはいられないはずである。  クルーグマンはこういっているではないか。この危機を乗り越えるためには、ユーロ諸国、アメリカ、日本などが一斉に大恐慌並みの大胆で積極的な財政・金融政策をとればいいと。  世界中の先進国が頭を抱えている国債、借金問題などそれほど恐くないとも言っている。 「経済が成長すればそれは返すことができる。イギリスがかつて成長を謳歌していた時代にも、同国は大量の借金を抱えていたという事実をどうして誰も語ろうとしないのか。そうした意味でも、成長のための政策がいま求められているのだ」(クルーグマン)  政治に求められているのは、消費税を上げることではなく、どうしたら経済を成長させることができるかであろう。週刊誌はやたら危機を煽るだけではなく、そのために何をしなければいけないのかも提示することが求められるはずである。  さて今週のグランプリは、1997年に起きた「東電OL殺人事件」で逮捕されたネパール人ゴビンダ・プラサド・マイナリ元被告が、一審で無罪だったにもかかわらず、二審で有罪になり2003年に無期懲役が確定したが、これを「冤罪」だとして取材を続けてきたノンフィクション・ライター佐野眞一の怒りの手記である。  ゴビンダは無罪を訴え続け、再審請求してきたが、8年経ってようやく東京高裁が再審を決定した。  佐野は、この背景には最新のDNA鑑定、足利事件の菅谷利和の無罪、大阪地検特捜部などの信じられない不祥事の連続が「逆バネ」になって再審への道が開かれたと書く。  佐野は、ゴビンダが犯人ではないと確信を持つようになった理由をあげている。ゴビンダが働いていた千葉幕張のインド料理店から渋谷まで、同じJRにストップウオッチを持って乗り込んでみたところ、警察が発表した殺害時刻には殺害現場には着けないことがわかった。  ゴビンダの故郷のネパールへ行き、彼と同じ渋谷の円山町アパートで暮らしていた同室者に話を聞いたところ、一人はゴビンダのアリバイを証言し、一人は警察によって殴る蹴るの暴行を受け、就職の斡旋まで受けてゴビンダを犯人に導く証言したことを告白した。 「一審無罪だったゴビンダは、憲法違反の疑いが濃厚な再拘留決定を受けた上、控訴審の東京高裁で逆転有罪無期懲役の不当判決を言い渡された。そのとき、ゴビンダが日本語で『神様、やってない』『神様、助けてください』と訴えた悲痛な叫び声は、いまでも私の耳にこびりついて離れない」(佐野)  この判決を言い渡した高木俊夫裁判長は、狭山事件の第二次再審請求を棄却し、足利事件の控訴審を棄却した「札付き裁判官」であること、ゴビンダが欧米や韓国、中国の人間ではなくネパールという最貧国からの出稼ぎ労働者であったから、その背景にレイシズム(民族差別感)があると書いている。  再審開始の決め手になったのは昨年7月、殺害現場から発見された陰毛と被害者の体内に残されていた精液が、最新のDNA鑑定によって、ゴビンダ以外の第三者のDNAと判明したことである。 「東京高裁がここまで踏み込んだ決定を下した背景に、完全に信頼感を失った司法に対する強い危機感があることを感じた。これは希望を失った司法の世界に大きな風穴を開ける画期的な決定だったと率直に評価したい」(佐野)  横浜刑務所から釈放されたゴビンダ元被告に対して、東京入国管理局横浜支局は強制退去の命令を出した。これによって臨時旅券などの発行手続きが進めば、ゴビンダ元被告は数日中に母国ネパールに向けて出国できることになる。  新聞、テレビも、東京電力の力に怯えたのか、この事件についてはほとんど報じてこなかった。事件当初は「東電OL」だったものを、東電側にクレームをつけられて「電力会社OL」と言い換えてしまった。  「東電OL」にこだわり、事件の真相を地を這うような取材で掘り起こし、ゴビンダの無罪を訴え続けた佐野のノンフィクション魂が、再審開始の大きな力になったことは間違いない。ノンフィクションの持つ力を見せてもらった。 (文=元木昌彦) (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか 

新感覚スウィーツ!?  夏はICECREAMで「アイススーパーカップヌードル」

IMGP5845.jpg 料理の数だけダジャレがある――。ダジャレをこよなく愛する男が考案する、笑えるおいしいレシピ。  「ただいまー。頼まれたもの買ってきたよ。はい、カップヌードルライト」  「ありがとう。テレビでCMを見て、一度食べてみたかったのよ。アイスカップヌードルっていうのを」 IMGP5785.jpg  「冷たいカップヌードルなんて、なんだか気持ち悪そうだけどな」  「そんなことないわよ。AKB48がおいしいっていってんだから、間違いないわ。さあ、はやく作って」  「はいはい。まずは麺がギリギリ浸かるくらいにお湯を入れるんだよね」 IMGP5835.jpg  「3分たったらアイスを投入。うーん、やっぱり気持ち悪いと思うんだけどな」 IMGP5805.jpg  「え! ちょっと、何を入れようとしているのよ!」 IMGP5842.jpg  「いや、アイスカップヌードルだからバニラアイス。カップヌードルだけにスーパーカップね。あ、もしかして、チョコミントがよかった?」  「アイスを入れるんじゃなくて、氷を入れて冷やすからアイスなの! アイスコーヒーにアイスは入れないでしょ! もー、それはあなたが食べてね!」  「なんだよ、紛らわしい。まあいいや、どれどれ……う、うまい! カップヌードルのしょっぱさとアイスクリームの甘さのコントラスト、そして猫舌でも余裕で食べられる生ぬるさ。これは夏の新感覚スウィーツラーメンやー!」 IMGP5858.jpg  「え、おいしいの? ちょっと食べさせて……ズルズル……意外とイケる! 女子高生に絶対ウケる味! AKB48だったら、こっちのほうが好きなはず!」  「でしょ!アイスのスーパーカップとカップヌードルライトで作ったから、名付けて、『アイススーパーカップヌードル』でどうだろう。カロリーはぜんぜんライトじゃなくなったけど」  「おいしすぎて全然足りないわ。もっとないの?」  「じゃあ、次はカップヌードルのカレーでいってみようか」  「それはさすがにアイスには合わないわよ。ライトタイプじゃないし」  「だからアイスじゃなくて、ライスに乗せて……」 IMGP5887.jpg 父&母 「ライスカップヌードル!」 ■材料  ・カップヌードルライト レギュラーかチリトマト ・スーパーカップ 超バニラ ■作り方 1、カップヌードルライトに、麺がギリギリ浸かるくらい熱湯を入れます。 2、バニラアイスをドカドカと入れます。スーパーカップなら、半分くらい。 3、軽くかき混ぜていただきます。 ■玉置メモ ・自分でもドキドキしながら試食しましたが、とてもおいしくて驚きました。なんだかクセになる味です。 ・アイスは完全に混ぜないで、少し塊が残るくらいが、口の中で楽しいです。 ・ライスカップヌードルは、カップヌードルひとつでは物足りない人にオススメです。これもお湯はできるだけ少なめで作りましょう。ちょっと具が長いカレーだと思えば、意外と違和感なく食べられますよ。 (文=玉置豊) ■男のダジャレレシピ・バックナンバー 【第26回】初夏の新定番! スパルタンな「カツオの100タタキ」 【第25回】勝手にコラボ! ケンタッキーフライドチキンラーメン 【第24回】炊飯器で作る簡単ピラフ!「SPAM × SPAM(SMAP×SMAP)」 【第23回】北北西を向いてガブリ!「......え、フォー巻き!」 (恵方巻き) 【第22回】アラフォーはちょっとツラい!? 「とってもジューシー(牛脂)な格安すき焼き 」 【第21回】悪い酔いスウィーツで年忘れ!「レディーボーデン会 (女子の忘年会)」 【第20回】万能味噌を使った魔法の料理「西京の相性は黄身(最強の相性はキミ)」 【第19回】旬のサンマをギニア風に「イイコブ、ニコム、サンコン(イッコン、ニコン、サンコン)!」 【第18回】永谷園で作る秋の味覚「松タケご飯(まつたけご飯) 」 【第17回】アジ釣りで大漁! 「アジしめちゃいました(味占めちゃいました)」 【第16回】うなぎと乗り切れ! "ダシ"が違う夏のひつまぶし 【第15回】夏にピッタリ! 旬の魚で手軽にできちゃう「狂う水(クールビス)」 【第14回】蒸し暑い時期にピッタリ! 梅干しの酸味が効いた「上を向いて歩こう(梅と麦とアルコール)」 【第13回】レストランにも行きたくない出無精なあなたに「大型連休ギュウギュウ詰め(O型レンコン牛牛詰め)」 【第12回】旬の素材が盛りだくさん「ネギに大葉 ヤマウド・ノビル 初鰹(目には青葉 山ほととぎす 初鰹)」 【第11回】スタミナ満点! よくばりどんぶり「ごはんと胃・レバー・牛たくさん(ゴホンと言えば、龍角散)」 【第10回】甘党にはたまらん!  「オリゴ糖、黄身と和えて、ようかん食った(ありがとう、君と逢えて、よかった)」 【第9回】捌けなくても大丈夫! 包丁要らずのカンタン鍋「捌き無知鍋(サバキムチ鍋)」 【第8回】惚れてしまいそうな大人の味「バーレーン・タイ キッシュ(バレンタイン・キッス)」 【第7回】3分で出来るお祝い料理「脂肪コーン、5を書く!(志望校合格)」 【第6回】正月ボケに効果てきめん「意外! タイなら七臭粥(胃が痛いなら七草粥)」 【第5回】気分次第でアレンジ可能「麻婆茄子! 干し芋乗っかっちゃう!(まーボーナス! 欲しいもの買っちゃう)」 【第4回】三つの味が楽しめる豪華ディナー「三択ロース(サンタクロース)」 【第3回】ぜいたくの極み! 「いい肝のカワハギのいい肝ばかり(『いきものがかり』のいきものばかり)」 【第2回】ひと手間かければ豪華な一皿! 「タンカレー ナンバナナ天(タンカレー No.10)」」 【第1回】甘くて辛い 大人のおつまみ「マスタードナッツ(ミスタードーナツ)」

年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』

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民間団体「心といのちを考える会」の袴田俊英さん。“縁側”のように
気軽に交流できる場所としてコーヒーサロン「よってたもれ」を始めた。
 日本における2011年の自殺者数が3万651人であることが発表された。14年連続で年間自殺者数が3万人を越えたことになる。イラク戦争で亡くなったイラク民間人の犠牲者数は戦闘の激しかった2003~2006年の3年間で約15万1000人(WHO調査)とされているからも、この数字が尋常ではないことがわかる。日本では目に見えない戦争がずっと続いていると言っても過言ではない。自殺死亡率を他国と比べてみると、リトアニア、韓国、ロシア、ベラルーシなどに続いて、日本は第8位となっている。上位にランキングされている国を見てみると、旧共産圏が多いことに気づく。日本もバブル景気に躍らされて気づくのが遅れたが、90年代以降すっかり社会の仕組みが変わってしまった。社会の変化に対応できずに孤立化し、生きづらさを抱える多くの人たちが自らの命を絶っている。そして、また苦しんでいるのは自殺者だけではない。残された家族や友人たちも、自殺者を救うことができなかった自責の念に悩まされている。これまで映画が取り上げることが稀だった、自殺対策というシリアスなテーマに正面から向き合ったドキュメンタリーが『希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言』だ。  日本でもっとも自殺率の高い県という不名誉な記録が95年から15年連続で続いた秋田県。その汚名を返上するため、秋田県内では各地域でそれぞれ自殺防止の取り組みが行なわれている。『希望のシグナル』はその様子を1年間にわたって記録したもの。本作において中心的な人物となっているのが秋田県藤里町で暮らす袴田俊英さん。袴田さんは曹洞宗月宗寺の住職であり、10年前に「心といのちを考える会」を設立して、会長を務めている。「自分たちにできることからやっていこう」という袴田さんたちが始めたことは一杯のコーヒーを淹れることだった。町の中心地にある交流館で週1回、コーヒーサロン「よってたもれ」を開いている。コーヒーは一杯100円。誰でもここに来れば、袴田さんや他のお客さんが話し相手になってくれ、日常生活で感じている愚痴や不満をこぼすことができる。また、他のお客さんの話を聞くことで、悩みを抱えているのは自分だけではないことが分かる。  悩みを誰かに打ち明けたからといって、すぐに問題が解決するわけではない。「でも」と袴田さんは言う。「悩みを人に話している間だけ、背負っている荷物を降ろして、ひと息つくことができるんです」と説明する。週1回のコーヒーサロンを利用する人数は、そう多いわけではない。しかし、利用者数が多いか少ないかは関係ないらしい。自分の話を誰かが聞いてくれる場所がある、そのことが大切なのだ。人口4000人の藤里町は秋田県内でも有数の自殺率が高い町だったが、袴田さんたちの取り組み以降、自殺者数は減少へと向かっているそうだ。
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NPO法人「蜘蛛の糸」の佐藤久男さんは
8億円の借金を抱えた体験をもとに、自営
業者たちの生活再建の手助けをしている。
 秋田県で自殺予防に取り組む、もう一人の中心人物と言えるのが佐藤久男さん。秋田市でNPO法人「蜘蛛の糸」を立ち上げ、自営業者とその家族の自殺防止に努めている。佐藤さんはかつて秋田で有数の凄腕社長として知られていた。だが、バブルの終焉と共に会社は倒産し、8億円もの借金が残った。残務整理中は気が張っていて大丈夫だったが、整理が終わった途端に鬱になり、自殺願望に取り憑かれた。それまで社長夫人として家事以外のことはしたことのなかった妻の英子さんが一念発起して学生相手の下宿を始め、佐藤さんを支えた。佐藤さんは、このときの体験を活かして「会社の倒産や借金くらいで死ぬことはない」と多重債務や経営難に苦しむ人たちの相談にのっている。佐藤さんは精神科医でも専門のカウンセラーでもない。「しろうとでも、人間と人間が向き合うことでできることがあるのではないか」と手探りで活動を続けている。事務所を兼ねていた自宅に掛かってきた電話を英子さんが取ったところ、受話器の相手は「お陰で命拾いしました」と感謝の気持ちを伝えたそうだ。人を助けることで、佐藤さん夫婦もまた救われている。  自殺の抱える問題に、遺族側が身内から自殺者が出たことを外部に向けて話したがらないという一面がある。外部の人間も、なぜ自殺してしまったのか立ち入って聞くことを憚ってしまう。自殺の原因がはっきりせず、遺族も周囲の人々もいつまでも浄化されないままの問題を抱え込むことになる。仙台で暮らす田中幸子さんは自死遺族の自助グループ「藍の会」の代表。田中さんは警察官だった息子を自殺で失い、「人を殺して、自分も死のう」と自殺未遂を重ねた。いろんな会に参加したり、あらゆる本を読んだりしたが、救われることはなかった。同じように身内を自殺で亡くした遺族たちはどんな悩みを抱えているのか。田中さんは遺族の会が仙台にあればいいと思った。袴田さんがパネラーとして出席した自殺予防のための集会が仙台で開かれた際に、田中さんは「自分は死にたい。仙台に会はつくられないのか」と訴えたが、その悲痛な声は「まだ、その準備はできていない」という事務的な対応で遮られてしまった。そのとき、「いつでも連絡ください」と言葉を掛けたのが袴田さんだった。その後、袴田さんとのやりとりに励まされた田中さんは、自助グループを独力で立ち上げた。遺族の声を自殺対策に反映させることが自殺を減らすことに繋がると田中さんは考えている。
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仙台で自死遺族の自助グループ「藍の会」を
立ち上げた田中幸子さん。遺族との茶話会や
ランチ会を開いている。
 本作を企画・製作したのは1982年生まれ、岩手県北上市在住の双子の兄弟、都鳥(とどり)伸也・拓也。兄・拓也が撮影&編集を担当、弟・伸也が監督を務めた。日本映画学校時代の同期生にSONYの旧式カメラPD-150を借りて、本作を撮り上げた。製作費ゼロからのスタートだったが、サポーターズ・クラブという形で撮影取材と同時進行で製作費を募り、完成に漕ぎ着いた。岩手県のお隣・秋田県の自殺対策が、民間のネットワークだけでなく行政や医師会などを巻き込む形で変革期を迎えつつあることを映像として記録しようという想いで、アルバイトをしながら二人三脚で撮影を続けた。正直なところ、映像としては平板で、作品の構成にも斬新さはない。でも、映像的なテクニックに頼らない愚直さが、本作においては非常に効果的だったように思う。エンディングロールでは、協力者のクレジットが延々と流れる。本作の主旨に賛同し、製作費をカンパしたサポーターズ・クラブの人たちの名前だ。  マスコミ向け試写の際に都鳥監督が夜行バスに乗って上京して挨拶をし、新聞などのインタビューに答えたりした他は、本作の目立った宣伝活動は都内では行なわれていない。公開規模もこぢんまりとしており、公開終了後にDVDとして一般販売やレンタルされる予定はない。本作の上映を目にする人は、かなり限られることになるだろう。もちろん、多くの人に観てもらいたいし、本作で紹介された取り組みが他の地域でも広がるきっかけになればいいと思う。でも、いちばん肝心なのは、秋田や仙台や岩手に自殺者がひとりでも減ることに努めている人たちがいるという事実。たとえ、あなたが今いる場所からそこが遠く離れていても、あなたが死んだら悲しむ人がいるということ。あなたが死ぬのを考え直したら、喜んでくれる人がいるということ。この映画は生きづらい社会の夜空に打ち上げられた、小さな小さなシグナルなのだ。 (文=長野辰次) kibounosig4.jpg 『希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言』 監督/都鳥伸哉 撮影・編集/都鳥拓也  配給/ロングラン映像メディア事業部 6月16日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開  ※6月16日(土)は都鳥兄弟による初日舞台挨拶、17日(日)は清水康之氏(自殺対策支援センター ライフリンク)と都鳥監督とのトークなどポレポレ東中野にて毎週土曜と日曜にトークイベントを開催 <http://ksignal-cinema.main.jp> (c)『希望のシグナル』サポーターズ・クラブ/ロングラン映像メディア事業部 ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! 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年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』

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民間団体「心といのちを考える会」の袴田俊英さん。“縁側”のように
気軽に交流できる場所としてコーヒーサロン「よってたもれ」を始めた。
 日本における2011年の自殺者数が3万651人であることが発表された。14年連続で年間自殺者数が3万人を越えたことになる。イラク戦争で亡くなったイラク民間人の犠牲者数は戦闘の激しかった2003~2006年の3年間で約15万1000人(WHO調査)とされているからも、この数字が尋常ではないことがわかる。日本では目に見えない戦争がずっと続いていると言っても過言ではない。自殺死亡率を他国と比べてみると、リトアニア、韓国、ロシア、ベラルーシなどに続いて、日本は第8位となっている。上位にランキングされている国を見てみると、旧共産圏が多いことに気づく。日本もバブル景気に躍らされて気づくのが遅れたが、90年代以降すっかり社会の仕組みが変わってしまった。社会の変化に対応できずに孤立化し、生きづらさを抱える多くの人たちが自らの命を絶っている。そして、また苦しんでいるのは自殺者だけではない。残された家族や友人たちも、自殺者を救うことができなかった自責の念に悩まされている。これまで映画が取り上げることが稀だった、自殺対策というシリアスなテーマに正面から向き合ったドキュメンタリーが『希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言』だ。  日本でもっとも自殺率の高い県という不名誉な記録が95年から15年連続で続いた秋田県。その汚名を返上するため、秋田県内では各地域でそれぞれ自殺防止の取り組みが行なわれている。『希望のシグナル』はその様子を1年間にわたって記録したもの。本作において中心的な人物となっているのが秋田県藤里町で暮らす袴田俊英さん。袴田さんは曹洞宗月宗寺の住職であり、10年前に「心といのちを考える会」を設立して、会長を務めている。「自分たちにできることからやっていこう」という袴田さんたちが始めたことは一杯のコーヒーを淹れることだった。町の中心地にある交流館で週1回、コーヒーサロン「よってたもれ」を開いている。コーヒーは一杯100円。誰でもここに来れば、袴田さんや他のお客さんが話し相手になってくれ、日常生活で感じている愚痴や不満をこぼすことができる。また、他のお客さんの話を聞くことで、悩みを抱えているのは自分だけではないことが分かる。  悩みを誰かに打ち明けたからといって、すぐに問題が解決するわけではない。「でも」と袴田さんは言う。「悩みを人に話している間だけ、背負っている荷物を降ろして、ひと息つくことができるんです」と説明する。週1回のコーヒーサロンを利用する人数は、そう多いわけではない。しかし、利用者数が多いか少ないかは関係ないらしい。自分の話を誰かが聞いてくれる場所がある、そのことが大切なのだ。人口4000人の藤里町は秋田県内でも有数の自殺率が高い町だったが、袴田さんたちの取り組み以降、自殺者数は減少へと向かっているそうだ。
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NPO法人「蜘蛛の糸」の佐藤久男さんは
8億円の借金を抱えた体験をもとに、自営
業者たちの生活再建の手助けをしている。
 秋田県で自殺予防に取り組む、もう一人の中心人物と言えるのが佐藤久男さん。秋田市でNPO法人「蜘蛛の糸」を立ち上げ、自営業者とその家族の自殺防止に努めている。佐藤さんはかつて秋田で有数の凄腕社長として知られていた。だが、バブルの終焉と共に会社は倒産し、8億円もの借金が残った。残務整理中は気が張っていて大丈夫だったが、整理が終わった途端に鬱になり、自殺願望に取り憑かれた。それまで社長夫人として家事以外のことはしたことのなかった妻の英子さんが一念発起して学生相手の下宿を始め、佐藤さんを支えた。佐藤さんは、このときの体験を活かして「会社の倒産や借金くらいで死ぬことはない」と多重債務や経営難に苦しむ人たちの相談にのっている。佐藤さんは精神科医でも専門のカウンセラーでもない。「しろうとでも、人間と人間が向き合うことでできることがあるのではないか」と手探りで活動を続けている。事務所を兼ねていた自宅に掛かってきた電話を英子さんが取ったところ、受話器の相手は「お陰で命拾いしました」と感謝の気持ちを伝えたそうだ。人を助けることで、佐藤さん夫婦もまた救われている。  自殺の抱える問題に、遺族側が身内から自殺者が出たことを外部に向けて話したがらないという一面がある。外部の人間も、なぜ自殺してしまったのか立ち入って聞くことを憚ってしまう。自殺の原因がはっきりせず、遺族も周囲の人々もいつまでも浄化されないままの問題を抱え込むことになる。仙台で暮らす田中幸子さんは自死遺族の自助グループ「藍の会」の代表。田中さんは警察官だった息子を自殺で失い、「人を殺して、自分も死のう」と自殺未遂を重ねた。いろんな会に参加したり、あらゆる本を読んだりしたが、救われることはなかった。同じように身内を自殺で亡くした遺族たちはどんな悩みを抱えているのか。田中さんは遺族の会が仙台にあればいいと思った。袴田さんがパネラーとして出席した自殺予防のための集会が仙台で開かれた際に、田中さんは「自分は死にたい。仙台に会はつくられないのか」と訴えたが、その悲痛な声は「まだ、その準備はできていない」という事務的な対応で遮られてしまった。そのとき、「いつでも連絡ください」と言葉を掛けたのが袴田さんだった。その後、袴田さんとのやりとりに励まされた田中さんは、自助グループを独力で立ち上げた。遺族の声を自殺対策に反映させることが自殺を減らすことに繋がると田中さんは考えている。
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仙台で自死遺族の自助グループ「藍の会」を
立ち上げた田中幸子さん。遺族との茶話会や
ランチ会を開いている。
 本作を企画・製作したのは1982年生まれ、岩手県北上市在住の双子の兄弟、都鳥(とどり)伸也・拓也。兄・拓也が撮影&編集を担当、弟・伸也が監督を務めた。日本映画学校時代の同期生にSONYの旧式カメラPD-150を借りて、本作を撮り上げた。製作費ゼロからのスタートだったが、サポーターズ・クラブという形で撮影取材と同時進行で製作費を募り、完成に漕ぎ着いた。岩手県のお隣・秋田県の自殺対策が、民間のネットワークだけでなく行政や医師会などを巻き込む形で変革期を迎えつつあることを映像として記録しようという想いで、アルバイトをしながら二人三脚で撮影を続けた。正直なところ、映像としては平板で、作品の構成にも斬新さはない。でも、映像的なテクニックに頼らない愚直さが、本作においては非常に効果的だったように思う。エンディングロールでは、協力者のクレジットが延々と流れる。本作の主旨に賛同し、製作費をカンパしたサポーターズ・クラブの人たちの名前だ。  マスコミ向け試写の際に都鳥監督が夜行バスに乗って上京して挨拶をし、新聞などのインタビューに答えたりした他は、本作の目立った宣伝活動は都内では行なわれていない。公開規模もこぢんまりとしており、公開終了後にDVDとして一般販売やレンタルされる予定はない。本作の上映を目にする人は、かなり限られることになるだろう。もちろん、多くの人に観てもらいたいし、本作で紹介された取り組みが他の地域でも広がるきっかけになればいいと思う。でも、いちばん肝心なのは、秋田や仙台や岩手に自殺者がひとりでも減ることに努めている人たちがいるという事実。たとえ、あなたが今いる場所からそこが遠く離れていても、あなたが死んだら悲しむ人がいるということ。あなたが死ぬのを考え直したら、喜んでくれる人がいるということ。この映画は生きづらい社会の夜空に打ち上げられた、小さな小さなシグナルなのだ。 (文=長野辰次) kibounosig4.jpg 『希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言』 監督/都鳥伸哉 撮影・編集/都鳥拓也  配給/ロングラン映像メディア事業部 6月16日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開  ※6月16日(土)は都鳥兄弟による初日舞台挨拶、17日(日)は清水康之氏(自殺対策支援センター ライフリンク)と都鳥監督とのトークなどポレポレ東中野にて毎週土曜と日曜にトークイベントを開催 <http://ksignal-cinema.main.jp> (c)『希望のシグナル』サポーターズ・クラブ/ロングラン映像メディア事業部 ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! [第171回]自由社会に順応できない“脱北者”の過酷な現状 無垢なる季節との決別『ムサン日記 白い犬』 [第170回] 世界興収100億突破のSF大作『ロボット』はあらゆる既成概念を破壊する!! [第169回]“エンタの神さま”ツイ・ハークが大復活! B級映画マニアの心を焦がす『王朝の陰謀』 [第168回]人はお下劣な分だけ、強く優しくなれる!? 結婚を控えた女たちの本音『ブライズメイズ』 [第167回]行きすぎたシステム社会に警鐘を鳴らす“ユナボマー・マニフェスト”の映画化『モンスターズクラブ』 [第166回]祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! [第161回] 鬼才キム・ギドクの"多重人格ショー"セルフドキュメンタリー『アリラン』 [第160回]映画創成期に散った"殉教者"への聖歌 3D映画『ヒューゴの不思議な発明』 [第159回]これはホラー? それともコメディ? 勘違い女が爆走『ヤング≒アダルト』 [第158回] ピラミッドは古代からのメッセージ!? 歴史ミステリー『ピラミッドの謎』 [第157回] 韓国映画の名匠が明かす"創作の極意"イ・チャンドン監督『ポエトリー』 [第156回] ローカル局で"伝説となった男"の生涯『木村栄文レトロスペクティブ』 [第155回] 米国に半世紀も君臨した"影の大統領" FBI初代長官『J・エドガー』 [第154回]犯罪者たちに学ぶ"人心掌握術"の奨め『アニマル・キングダム』『預言者』 [第153回]"地獄"からの生還者・板尾創路の凄み 古典落語を過激に脚色『月光ノ仮面』 [第152回]早くも2012年ベスト1映画が登場!"代理殺人"を巡る恐怖『哀しき獣』 [第151回]父殺し、自分殺し、そして再生の物語 園子温流ラブストーリー『ヒミズ』 [第150回]米国お笑い横断旅行『宇宙人ポール』人間のちっぽけな悩みはETが解決! [第149回]70年前と変わらない日本人の精神構造『聯合艦隊司令長官 山本五十六』 [第148回]追悼......"永遠の反逆児"原田芳雄さん幻の主演作『原子力戦争』がDVD化 [第147回]"ファスト風土"を舞台にした犯罪喜劇 J・アイゼンバーグ主演『ピザボーイ』 [第146回]"正義のゾンビ"が犯罪者を貪り喰う! イラク戦争奇談『ゾンビ処刑人』 [第145回] "時代の寵児"の未ソフト化作品上映!「松江哲明グレイテスト・ヒッツ」 [第144回]原発事故を描いた『カリーナの林檎』と今関あきよし監督の背負った贖罪 [第143回]"窮屈なモラル"を脱ぎ捨てた裸の女たち 園子温監督の犯罪エロス『恋の罪』 [第142回]ノーベル賞作家・川端康成が夢想した新風俗『スリーピングビューティー』 [第141回]横暴な上司は有志社員が制裁します!『モンスター上司』のブラックな笑い [第140回]"クソみたいな社会を変えたい!"高校生テロリストの凄春『アジアの純真』 [第139回] うつ病なんかヘーキ!? 宮崎あおい主演作『ツレがうつになりまして。』 [第138回]"神話"が生まれる瞬間を目撃せよ! 人類への黙示録『猿の惑星:創世記』 [第137回]刑務所で食する至高の味『極道めし』ヒロインの後ろ姿に、むせび泣き! 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[第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! 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[第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学 (画像1:キャプション) (画像2:キャプション) (画像3:キャプション)

“落としやすい”女のコがいる大学は……?「平凡パンチ」1980年6月9日号

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「平凡パンチ」1980年6月9日号
 山ガールという言葉が流行したころから、本気の山でも女性の姿が増えてきた。「いわゆるあの娘はお嬢さま 俺はしがない山がらす~」とか自嘲しながら、ヒィヒィと岩にしがみついていた時代とは、隔世の感がある。とはいえ、バブル期の「スキー場は3倍」の法則は、山でも通じるものがある(ほら、空気も薄いしね)。昨年、登山雑誌「岳人」の夏山増刊で、剱岳で出会った女性登山者を見開きで紹介していたけど、写真がすべて引き絵だったのは、なんとなく納得……。  で、先頃、知人の軟派な編集者から「山ガールも当たり前だし、女のコを誘って山に行きましょうよ」と誘われた。筆者も昨年、いよいよゴロー(巣鴨にある、植村直己も愛用した登山靴の名店)のS-8を手に入れた身。「いいね、日帰りなら塔ノ岳か蛭ヶ岳あたりで……」と返答したら、怒られた。 「そんなハードコアな話してるんじゃないですよ! 高尾山とかですよ! ハイキングですよ!」  ……残念ながら、埋めがたい意識のズレがあったようだ。しかし、近年になって男女のグループが出会い目的でハイキングに出かける、いわゆる合ハイ(合同ハイキング)は、日常的なものとなっているようだ。2010年には、文部科学省が「スポーツ立国戦略」策定の中で、独身男女による「合同ハイキング」で若者のスポーツ参加率を促すという案を提示している。新聞や雑誌記事を検索すると、ここ5年あまりの間に、スポーツや各種の野外活動で汗を流しながら、出会いも探すという行動パターンは徐々に浸透しているようだ。    さて、その合ハイだが、バブル期には合コンに取って代わられ、まったく廃れた文化だった。何かと合コンをネタにしてきた、ホイチョイプロダクションズの漫画『気まぐれコンセプト』でも、合ハイをネタにした作品を見ることができる。「流行っている」と聞いたら「とりあえず、体験してみるか」の前に、まず系譜を探りたくなる。早速、大宅壮一文庫で合ハイに関する記事を探していたら、見つけてしまった! また下世話な記事を。 ■親睦を深めるには、代々木公園で鬼ごっこ
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まだ誰も「個人情報が~」なんて頭のカタイことをいわない、
よい時代だった。
 というわけで、今回紹介するのが「平凡パンチ」1980年6月9日号の巻頭記事「東京全大学合ハイ新相関地図」である(そもそも、表紙にならぶ記事のタイトルが下世話過ぎて、絶対に読みたくなる。「女のハンドバッグ徹底ご開帳」なんて、もはや文化史の重要な資料だよ)。
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合ハイが合コンへと転換していく時代の貴重な
資料といえる記事だ。
 合コン以前の、重要な出会いの場だった合ハイ。この記事では、まず慶応大学の「ソビエト研究会」と大妻女子短大国文科との合ハイに密着する。彼らの集合場所は、土曜日午後4時、原宿駅。この時点で「え、ハイキングじゃないのか?」と思うのだが、行き先は代々木公園である。自己紹介の後いったい何をするのか? 記事はこのように綴る。
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相関図を見ると、大学同士の関係性は今も変わらない感じが。
「広い代々木公園の一角で彼らはおそろしく古典的な遊びの数々を繰り広げた。“草の上の昼食”ならぬ、草の上のハンカチ落とし、草の上の鬼ゴッコ……」  すでに何事かわからない。この記事を執筆した当人も「ちょっとおかしいヨ!」と思ったのか 「“ハイキング”というにはあまりにも近場で、一昔、二昔前の文字どおりの合ハイとはエライ変わりようだ」
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コネタも時代を象徴するにおいで溢れている。
 と記す。しかも、文字通りのハイキングは約1時間だけ。「“前戯”の功あって、すでにかなりの打ちとけよう」な男女は公園通りを抜けて「道玄坂のライブハウス『ヘッド・パワー』へ吸い込まれていった」のである。要は、ハイキングは口実で、そのまま飲み会に突入するわけである。なるほど、まだチェーン居酒屋が一般的でない時代(チェーン居酒屋の普及は80年代中盤以降)、ライブハウスで飲み会という手があったのか!
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この時期の連載漫画は、みなもと太郎先生。
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散々、恋愛を煽った挙げ句にこんな広告が。ステマか?
 記事は、宴会は2時間にわたって続き、成立した2~3組のカップルが向かったのは、宮下公園である。そこでは「サテンに行こうよ」「帰り送らせて」といった駆け引きが続いたことを記す。  なるほど、合ハイを口実にすれば、いきなり飲み会から始まる合コンスタイルよりも男女が互いに値踏みしたり、目当ての相手と駆け引きする時間も多いじゃないか! と納得。でも「ハズレ」だった時に帰りたくても帰れない時間が続くのは痛い!
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とにかく出会い系の広告がいっぱいである。
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いくらなんでも、異色すぎる対談。
   こうして、読者に「俺も合ハイしたいなあ」という気分を煽る記事は、首都圏の各大学が「地理的、歴史的、偏差値的に」近しい他の大学と相関関係をつくっていることを解説していく。要は、東大とお茶の水女子大、慶大とフェリス女子大、早大と日本女子大、一橋大と津田塾大のように地理的、歴史的、さらには「オツムの程度が似たりよったり」な大学同士だと、合ハイが成立しやすいことを解説していく。さらには、相関図を記し、大学ごとに関係性の強さ、相思相愛型か、片想い型か、さらには合ハイを申し込む場合に、ポスターを張ることができるか、否かまでを図で解説するのだ。
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果たして、このビジネスで儲かった人っているんだろうか?
 そこで、明らかになるのは人気トップ3は、東大、早大、慶大という構図。ううむ、現在とまったく変わらないような。さらに、青山学院大、上智大、立教大などの女子は「自校の野郎には目もくれず、にっくき他大学に秋波を送ってやまないのだ」と解説する。さらに、合ハイでもっとも不人気だと指摘されているのが中央大だ。「地理的条件の不利はあるものの、津田塾、共立、白百合、明星、昭和と、片っ端から声をかけてはみても、色よい返事はまるで頂戴できずにいるのだ」というから悲惨。記事では、その反動として内部でカップルが成立して「週末同棲」が急増していることまで指摘している。いや、なによりも、この取材力がスゴイ! ■落ちやすい女子大は、文化女子大と女子美大  ううむ、結局は受験戦争に勝ち残って東大、早大、慶大に通ってなければ、出会いの敗者とならざるを得ないのか。多くの読者が絶望したのは想像に難くない……。と思ったら、記事はそうした相関関係から外れた大学の諸君にも、救いの手を差し伸べてくれる。それは「穴場的女子大」を狙う方法だ。まず挙げられているのが、国立音大、桐朋、武蔵野音大だ。「こういう音楽系の大学は他大と意外につき合いが少ないし、普通の女子大とは一味違った雰囲気を持って」いるんだとか。さらに「ズバリ“落ちやすい”大学」として指摘されるのが、文化女子大と女子美大。加えて、昭和女子大を「寮の門限がキチンとあり、当局の取締りが厳しいゆえに、これから開発の余地がある」と『早稲田乞食』(早稲田大の伝統的ミニコミ誌。まだ、ある)の推薦する女子大として、紹介している。さらに『慶応塾生新聞』(これも、まだ続いている)のコメントとして「上智、青学、立教の女子は学年が進むにつれて、自校の男のコのアラが見えはじめる」ので、高学年に的を絞れば、容易に合ハイを組めることを指南するのだ。
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これ読んで、注文してから後悔した若者もいるんだろうな……。
 最近「町コン」をはじめ、男女の出会いが再び、アナログな手法へと回帰している。ネットは手軽な出会いのツールなのだが、やはり安心感が違うのか。それにしても、この記事が書かれた80年は現代と比べて、遙かに肉食的だ。アポなしで訪問することが非常識扱いされたり、意中の人に何度も猛アタックすることがストーカー呼ばわりされるようになったのは、いつ頃からなのか。やはり、携帯電話の普及で様相はがらりと変化したのか? まだまだ調査する必要がありそうだ。 (文=昼間 たかし) ■「100人にしかわからない本千冊」バックナンバー 【第6回】物欲と性欲、自己肯定感に満ちた30年前の大学生活「POPEYE」 【第5回】1991年、ボクらはこんなエロマンガを読んでいた「美少女漫画大百科」 【第4回】そして『孤独のグルメ』だけが残った......月刊「PANjA」とB級グルメの栄枯盛衰 【第3回】「いけないCOMIC」1985年1月号大特集 戸川純にただ単にミーハーしたいっ! 【第2回】あの頃、俺たちはこんな本でモテようとしていた『東京生活Qどうする?』 【第1回】超豪華"B級"文化人がロリコンで釣ってやりたい放題『ヘイ!バディー』終刊号