香港フィギュアブームの火付け役! ‟『AKIRA』にヤラれた”作家が手がける近未来物語

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「Apexplorers character T-rex 」(c)Winson Ma
 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どものころ、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、日本のポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。 第28回 キャラクター・デザイナー ウィンソン・マー(Winson Ma)  鉄人兄弟(brothersfree) 。アクション・フィギュア好きの人なら、一度は聞いたことがあるだろう。香港のマイケル・ラウ、エリック・ソーと並んで、2000年代初頭に旋風を巻き起こした「香港アクション・フィギュア」ブームの一翼を担い、今もなお世界中に根強いファンを持つ、アクション・フィギュア・クリエイティブユニットだ。  ウィンソン・マーが、友人のケニー・ウォン、ウィリアム・ツァンと共に「鉄人兄弟」をスタートさせたのは2000年。香港で、彼らのごく身近な存在である工事現場の労働者たちをモチーフにしたアクション・フィギュアのシリーズ「brothersworker」は、衝撃的なデビューを遂げた。「フィギュアはアートだ」と、誰しもが実感せずにはいられないほどの世界観と高いクオリティを持った彼らの作品は、フィギュア界に確実に新しいエポックを残した。  しかし06年、「広告代理店のクリエイティブ・ディレクターとしての待遇を捨て、貯金を削ってまで自分たちのアクション・フィギュアを作りたかった」鉄人兄弟の3人は、それぞれの道を選ぶことになる。  「カルチャーとかデザインとかの枠を超えて、あの時期、鉄人兄弟は、頂点に駆け上った。3人でやるべきことのすべてを成し遂げた結果だし、何より僕たちの作品が多くの人に受け入れられたことが自信になった」というウィンソンは、その後、自身の会社Winson Classic Creationを設立。自身初のオリジナル・シリーズ作品「Apexplorers(エイプクスプローラーズ)」を発表する。自らストーリーを作り、全キャラクターデザインを手がけた近未来物語。フィギュアだけでなく、ムービー、イラストなど、メディアミックスで展開されている。
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「Apexplorers character Ice & Laser」(c)Winson Ma
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「Apexplorers character Otto」(c)Winson Ma
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「Apexplorers character Otto & Ice」(c)Winson Ma
「世界初めて三極(北極、南極、エベレスト登頂)を極めた香港の女性冒険家、レベッカ・リーが、探検先から地球に関する貴重な資料をたくさん持ち帰った。彼女は僕の友人なんだけど、鉄人兄弟を立ち上げる前に、彼女のプロジェクトに協力したこともあって……。Apexplorersは、彼女の冒険談や、環境保護データを基にした物語なんです」  鉄人兄弟時代とはかなりかけ離れたコンセプトだったため、ウィンソン自身も「環境をテーマにしてフィギュアをデザインすることが果たして正しいことなのか、迷った」という。「鉄人兄弟のスタート以降、この10年の間に、アクション・フィギュア・ブームも、何度も引き潮を迎えていたし」  しかし、ウィンソンの迷いは杞憂に終わる。 「ラッキーだよ。香港だけでなく、台湾、日本、アメリカ、中国などの市場で受け入れられ、多くのメディアが話題にしてくれた」
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「Apexplorers Fashion product 2012」(c)Winson Ma
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「hand made Adam  figure @ 2004」(c)Winson Ma
 ウィンソンに、どんなジャパニーズカルチャーの影響を受けたのか、聞いてみた。 「アニメ、SF映画にゲーム……とくに日本のキャラクターデザインとストーリー作りにはすごいものがある。例えば『Dr.スランプ』のラブリーなキャラクターとクレイジーで笑えるストーリー、『バイオハザード』のエキサイティングな展開と人物像。『AKIRA』は、アニメもコミックも、両方ヤラれました。スクリーニングの表現方法はショックの連続で、広告代理店で働いていた頃は、資料としていつも手元に置いていました」  そして、彼の敬愛する日本のアーティスト、空山基。 「すごくセクシーで、大胆なところがたまらない」
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「Ice & Laser sketch」(c)Winson Ma
 彼の描く近未来ストーリーやキャラクターの端々には、そうした要素をウィンソン流に咀嚼した片鱗がうかがえる。しかし、それはもはやジャパニーズカルチャーの模倣ではなく、ウィンソン・オリジナルになっている。  昨年、鉄人兄弟誕生10周年を記念する展覧会が香港で行われ、多くのファンが駆けつけた。そのことを喜びながらも、ウィンソンは、将来に向けての自分の計画に焦点を合わせている。目下、中国最大のウェブショップ「Taobao.com」とのコラボ企画であるApexplorersミニフィギュアがローンチを控えているという。
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「Taobao 2012 project @ China」(c)Winson Ma
「その後は、Apexplorersのエピソード2を年内に発表し、来年には、Apexplorersファッションブランドを立ち上げたい。それと並行して、中国で僕のブランドをアップグレードするために、もっとたくさんのコラボレーション企画に参加したいと考えています」  かつてウィンソンに大きな影響を与えた『AKIRA』のように、香港発のApexplorersが、さまざまなメディアを通して、中国、そして世界の人たちに衝撃を与え続けている。 (取材・文=中西多香[ASHU]) Winson-portrait.jpg ●ウィンソン・マー 香港生まれ。コマーシャル・アート業界で経験を積み、2000年にケニー・ウォン、ウィリアム・ツァンと共に鉄人兄弟(brothersfree)を設立。アクション・フィギュアのデザインや、著名ブランドとのコラボレーションに従事。05年にWinson Classic Creation設立。自身がデザインしたキャラクター「Apexplorers/Jungle」が、07年HKDA Awardsの銀賞を受賞。リーバイス、ノキア、コカ・コーラ、キヤノンなど、国内外のブランドとのコラボレーションも多く手がける。 <http://www.winsoncreation.com/> ●なかにし・たか アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com > オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/> ■バックナンバー 【vol.27】“田名網チルドレン”続々……アジア各地で熱烈支持されるサイケデリック・マスター 【vol.26】『銀河鉄道999』はアップル並みのインパクト? 韓国の催眠術的ポートレイト 【vol.25】ネタ元は日本の特撮ヒーロー? インドネシア式ファンタジー 【vol.24】"80後"世代の代弁者 中国売れっ子写真家の「未来系アート」 【vol.23】「ヤクルトとカップヌードルに洗礼?」MOJOKOのユーモラスな世界 【vol.22】「狂気とポップカルチャーが融合!?」香港のアーティストが追求する"不完全な美" 【vol.21】「人間の欲望を視覚化?」香港人気キャラの生みの親が追求する"醜さの美学" 【vol.20】「故郷・ボルネオ島での原体験が創造力の源」世界で活躍するマレーシアの"ケンヂ" 【vol.19】「人生に起きるすべてのことを細かく観察したい」中国ネット世代のアーティスト 【vol.18】「ヒーローは宮崎駿と奈良美智」シンガポールのマルチスタイル・アーティスト 【vol.17】「ルーツは『天空の城 ラピュタ』」ウォン・カーウァイに見い出された香港の若き才能 【vol.16】怖かわいい魑魅魍魎が暴れ回る! ヤン・ウェイの妖魔的異界 【vol.15】「原点は日本のコミック」東南アジアを席巻する都会派クリエーター 【vol.14】エロ×宗教×故事が混在!? 中国版・寺山修司が造り出すカオスな世界 【vol.13】昼間はOL、夜は寡黙なアーティスト ソン・ニが描く秘密の快楽の世界 【vol.12】まるで初期アニメ ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」 【vol.11】「造形師・竹谷隆之に憧れて......」 1000の触手を持つ、マレーシアのモンスター 【vol.10】"中国のガロ系"!? 80年代以降を代表するコミック・リーダー ヤン・コン 【vol.9】大のラーメンおたく!? シンガポールデザイン界を率いる兄貴、クリス・リー 【vol.8】メイド・イン・ジャパンに憧れて...... 香港の文学系コミック作家・智海 【vol.7】「血眼になってマンガを追いかけた」海賊版文化が育んだ中国の新しい才能 【vol.6】裸人間がわらわら 香港ピクセル・アートティストが放つ"アナログデジタル"な世界 【vol.5】ダメでも笑い飛ばせ! 香港の国民性を体現したグラフィック・ノベリスト 【vol.4】「教科書はガンダムの落書きだらけだった」 香港・原色の魔術師の意外な原点 【vol.3】「懐かしいのに、新しい」 読むほどにクセになる"タイ初の日本漫画家"タムくん 【vol.2】 マイブームはBL!? 香港の腐女子が描きとめる、消えゆく都市の記憶 【vol.1】「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢

毒カレー、オウム真理教、光市母子殺害……“悪魔の弁護人”と呼ばれる男の素顔『死刑弁護人』

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極悪人を擁護する人でなし、鬼畜弁護士……と激しいバッシングを浴びる
安田好弘弁護士。「マスコミは人を痛めつけることが多い」と
マスコミを毛嫌いする。(c)東海テレビ放送
 悪魔の弁護人。マスコミは弁護士・安田好弘のことをこう呼ぶ。「オウム真理教事件」の麻原彰晃、「和歌山毒カレー事件」の林眞須美、「光市母子殺害事件」の元少年……。どれも安田弁護士が担当している死刑事件だ。マスコミや世間は、凶悪事件の弁護を請け負う安田弁護士のことを猛烈にバッシングする。それでも彼は法廷に向かう。刑事事件、しかも死刑事件を引き受ける弁護士はそうそういないからだ。裁判に勝つ見込みは限りなく少なく、国選でない場合は身銭を切ることがほとんど。ではなぜ、安田弁護士は極悪人とされる被告人たちの弁護を続けるのか? その真相に迫ったのが、ドキュメンタリー映画『死刑弁護人』だ。マスコミぎらいで知られる安田弁護士の密着取材に成功したのは、東海テレビの齊藤潤一ディレクター。戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長を追った『平成ジレンマ』(10)に続いて、齊藤ディレクターが再びバッシングの渦中の人物をクローズアップした、ローカル局発の問題提起作となっている。  1998年に4人の死者を出した「和歌山毒カレー事件」。夏祭りに提供されたカレーの中から大量のヒ素が見つかり、カレー鍋の近くにいた林眞須美に疑いが向けられた。林眞須美はヒ素を使った保険金詐欺の常習犯だった。マスコミの報道は連日過熱し、マスコミに突き動かされる形で警察は逮捕に踏み切った。留置中の林眞須美は故三浦和義を介して安田弁護士に助けを求める。このときの安田弁護士が弁護を引き受けた理由は明快。「林眞須美はこれまで保険金詐欺で稼いできた。だから、一銭の得にもならないことをやるとは思えない」と安田弁護士は語る。だが、最高裁は直接証拠や犯行の動機が見つからないまま、林眞須美に死刑を宣告する。  オウム事件の麻原彰晃も弁護の引き受け手がいないことから、安田弁護士が国選弁護人として選ばれた。当初、麻原は接見にきた安田弁護士と友好的な関係だった。しかし、教団幹部・井上嘉浩の反対尋問の際に、麻原が打ち切りを要求し、安田も休廷を申し入れるが、裁判所はこれを認めなかった。この後、麻原は態度を一転させる。弁護人との接見を拒否し、意味不明の言語を口にするようになる。麻原の精神は崩壊していった。やむをえず安田弁護士は法廷を欠席しての引き延ばしを図る。麻原の量刑を早急に決めることよりも、社会を揺るがした大事件の真相を明らかにすることが何よりも大事だと安田弁護士は考えた。ところが、安田弁護士は1998年に強制執行妨害の容疑で身柄を拘束され、麻原の弁護人から解任されてしまう。オウム裁判の早期終結を目指していた司法にとって、“悪魔の弁護人”の存在はひどく目障りだったらしい。この事件は“安田事件”と呼ばれ、国家権力がひとりの弁護士を潰しに掛かったことを物語っている。
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悪徳弁護士=高級車での移動、のイメージが
あるが、安田弁護士はもっぱら電車での移動。
いつも質素な身なりだ。
 そして、安田弁護士へのバッシングが最高潮に達したのが、「光市母子殺害事件」。排水検査を装った当時18歳だった元少年は、同じ公団アパートに住んでいた主婦の首を絞めて殺害した後に陵辱。さらに生後11か月の赤ちゃんの首にヒモを巻き付けて殺害。遺体をそれぞれ押し入れと天袋に隠した。未成年者の犯罪ゆえ一審二審の判決は無期懲役だったが、遺族感情を考慮した最高裁が審理の差し戻しを命じたため、死刑判決の可能性が強まった。ここで前任弁護士に代わって元少年の弁護に就くことになったのが、安田弁護士を主任とする21人の弁護団だった。それまで殺意を認めていた元少年だが、接見した安田弁護士に「殺意はなかった」と話したことから、法廷は混沌と化す。精神鑑定の際の「ドラえもんが助けてくれると思った」「『魔界転生』の復活の儀式のつもりだった」という供述を持ち出したため、世論の怒りの火に油を注いだ。安田弁護士らは鬼畜、悪魔と罵られ、カッターナイフの刃や銃弾が送り付けられた。それでも安田弁護士はひるまない。オウム事件と同様、懲罰の度合いよりも事件の真相を徹底的に究明することが自分の使命だと考えているからだ。再び悲惨な事件が起きることを防ぐには、事件の問題点をすべて明るみにしなくてはならない。そのために“悪魔の弁護士”の汚名を甘んじて受けている。  曲げることのない信念を持つ安田弁護士にとって、重大な事件があった。1980年に8人の死傷者を出した「新宿西口バス放火事件」だ。子どもを施設に預けて東京へ出稼ぎに来ていた丸山博文は、お盆にも子どもに会いに行けなかった罪悪感や福祉に対する後ろめたさから朝から酔っぱらい、停車中の路線バスにガソリンと火の点いた新聞紙を放り込んでしまう。「死にたい。むごいことをした」と悔やみ続ける丸山には死刑が求刑されたが、若手時代の安田弁護士は心神喪失状態にあったと訴え、無期懲役を勝ち取った。裁判に勝利し、安堵した安田弁護士だったが、事件はそれで終わりではなかった。獄中にいた丸山は自殺を遂げてしまう。安田弁護士は半年後に新聞記事でそのことを知る。裁判で勝っても、丸山の心の闇はずっと晴れることはなかったのだ。
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安田弁護士64歳。夕食を終えた後、事務所に
戻って深夜3~4時まで仕事が続く。事務所
に寝泊まりし、睡眠時間は3時間。
 マスコミを毛嫌いする安田弁護士から取材OKを取り付けるのに2年間を要したという東海テレビの齊藤ディレクターに企画・取材の経緯を聞いた。 齊藤 「2008年にドキュメンタリー番組『光と影 光市母子殺害事件 弁護団の300日』を作った際に、主任弁護士だった安田さんの存在に興味を持ったんです。あれだけバッシングされながらも、決して自分の信念を曲げない人。『平成ジレンマ』の戸塚宏校長にも通じるところがありますね。それで2年ほど前に懇親会の場で取材を打診したのですが、『ふんッ』と鼻先であしらわれました(苦笑)。『平成ジレンマ』を作りながらも、安田さんの取材をやりたいなと考え続けていたんです。それで、正式に企画書を作成して取材を申し込んだんですが、『俳優でもタレントでもないのに密着取材なんてありえないし、取材に対応している余裕もない』と断られました。一度は諦めたんですが、安田さんの周囲にいる方たちが、『安田さんの言動は一度きちんと映像として記録されたほうがいい』と協力してくれたんです。『安田さんひとりじゃなくて、4人くらいの弁護士を取り上げる企画だと話せば、安田さんは断りにくくなるはず。最悪、放送前に謝ればいい』とアドバイスされました。それで偽の企画書を渡し、『仕方ない。そこまでしつこく言うなら』と安田さんはOKしてくれたんです。偽の企画書で弁護士を騙してしまった(苦笑)」  ひと筋縄ではいかない死刑弁護人のドキュメンタリーを作るためには、きれいごとだけでは企画は前に進まなかった。また、取材のOKはもらったものの、安田弁護士の素顔を追うのは簡単ではなかった。 齊藤 「弁護士というとお金持ちなイメージがありますが、安田弁護士はブランド品など身に付けず、いつも質素な服装です。赤坂の事務所に寝泊まりして、自宅に帰るのは月に1~2度。毎日、深夜3~4時まで仕事をして、3時間だけ休んでから近くのサウナで汗を流し、また働き始めるという生活です。でも、安田さんはそういう普段の姿をカメラで撮ろうとすると『オレは芸能人じゃない、やめろ』と言うんです。どうしたものかと頭を抱えました(苦笑)。毎晩、取材が終わった後は安田さんに誘われて一緒に夕食を摂っていたんですが、安田さんがお酒を呑んで気分よくなっているとき、カメラマンがさっと小型カメラを持ち出して、安田さんの了承なしで撮り始めたんです。安田さん、お酒を呑むとガードが低くなるんですよ。そのことが分かってからは、安田さんと一緒にカメラマンもボクもお酒を呑んでからカメラを回すようにしました(笑)。いつもは取材対象者と親しくなり過ぎないよう、一定の距離を保つために一緒に食事などはしないようにしていたんですが、今回は特別でしたね」
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2011年10月に東海地区でオンエアされた内容に、
2012年2月の「光市母子殺害事件」の最高裁判決
の様子を追撮している。
 安田弁護士は“死刑廃止論者”として知られ、光市母子殺害事件など担当する死刑裁判を政治的に利用していると非難する声もある。 齊藤 「ボク自身は、冤罪の人が死刑になるなんて許されないことだと思います。かといって被害者の遺族を取材していると、簡単には“死刑廃止”とは口にできない。そんなグラグラした心境の中で、安田さんの『どんな悪人でも、必ず更生できる』という言葉を聞いて、深く考えさせられるものがありました。死刑制度が是か否か、ボク自身は今でも悩み続けています。死刑事件を取材していると、明るい気持ちにはなれませんね。どんどん暗い性格になっていきます(笑)。それでも、安田さんはバッシングに負けずに弁護を続けている。安田さんの人間としての魅力に惹かれて取材を続けたように思います」  司法関連の作品を度々手掛ける齊藤ディレクターに、聞いてみたいことがあった。マスコミは世論を誘導し、バッシングを引き起こすトリガーの役目を容易に果たす。そんなマスコミが司法の過ちをただし、冤罪事件を救済する力を持っているのだろうか。 齊藤 「マスコミは裁判の判決が出ると、一斉に報道し、その後はさぁーと引いてしまいます。『平成ジレンマ』と同様、そのことに対する自戒の念も込めたつもりです。その一方、足利事件や布川事件はマスコミがキャンペーンを張ったことで、無罪を勝ち取っています。ただし、足利事件も布川事件も無期懲役刑でした。死刑判決を覆すのは非常に難しい。そこには大きな分厚い壁があるように感じます。死刑判決が覆ると、それは司法制度そのものの存在を根底から揺るがすことになるからです。でも、マスコミには権力を監視する役目があります。冤罪の可能性がある事件なら、徹底的に解明しなくてはいけないはずです」  齊藤ディレクターが初めてドキュメンタリー番組を手掛けたのが『重い扉 名張毒ぶどう酒事件の45年』(06)。さらに『黒と白 自白・名張毒ぶどう酒事件の闇』(08)『毒とひまわり 名張毒ぶどう酒事件の半世紀』(10)と冤罪の可能性が高い“名張毒ぶどう酒事件”を題材にした3本のドキュメンタリー番組を発表している。さらに6月30日(土)には、仲代達矢、樹木希林、本作のナレーションを担当した山本太郎らが出演するドラマ『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』が東海エリアで放映される。一度取材した事件は、その真相が究明されるまで追い続ける。『死刑弁護人』は安田弁護士を礼賛するための作品ではないと話す齊藤ディレクターだが、おのれの信念に従って一本道を突き進む安田弁護士の姿に深く共鳴しているのは確かなようだ。 (文=長野辰次) shikei_bengonin5.jpg 『死刑弁護人』 ナレーター/山本太郎 プロデューサー/阿武野勝彦 音楽/村井秀清 音楽プロデューサー/岡田こずえ 撮影/岩井彰彦 音声/伊藤大介 スクリプター/河合舞 音響効果/久保田吉根 編集/山本哲二 アソシエイトプロデューサー/安田俊之 監督/齋藤潤一 配給/東海テレビ放送 配給協力/東風 6月30日(土)よりポレポレ東中野、名古屋シネマテークほか全国順次公開 http://shikeibengonin.jp ※ポレポレ東中野にて、6月30日(土)~7月6日(金)夜9時10分より『光と影 光市母子殺害事件 弁護団の300日』『毒とひまわり 名張毒ぶどう酒事件の半世紀』を二本立て上映。7月7日(土)~8日(日)、10日(火)~13日(金)は『平成ジレンマ』を夜9時10分よりアンコール上映 ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第176回]“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』 [第175回]やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』 [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! 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毒カレー、オウム真理教、光市母子殺害……“悪魔の弁護人”と呼ばれる男の素顔『死刑弁護人』

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極悪人を擁護する人でなし、鬼畜弁護士……と激しいバッシングを浴びる
安田好弘弁護士。「マスコミは人を痛めつけることが多い」と
マスコミを毛嫌いする。(c)東海テレビ放送
 悪魔の弁護人。マスコミは弁護士・安田好弘のことをこう呼ぶ。「オウム真理教事件」の麻原彰晃、「和歌山毒カレー事件」の林眞須美、「光市母子殺害事件」の元少年……。どれも安田弁護士が担当している死刑事件だ。マスコミや世間は、凶悪事件の弁護を請け負う安田弁護士のことを猛烈にバッシングする。それでも彼は法廷に向かう。刑事事件、しかも死刑事件を引き受ける弁護士はそうそういないからだ。裁判に勝つ見込みは限りなく少なく、国選でない場合は身銭を切ることがほとんど。ではなぜ、安田弁護士は極悪人とされる被告人たちの弁護を続けるのか? その真相に迫ったのが、ドキュメンタリー映画『死刑弁護人』だ。マスコミぎらいで知られる安田弁護士の密着取材に成功したのは、東海テレビの齊藤潤一ディレクター。戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長を追った『平成ジレンマ』(10)に続いて、齊藤ディレクターが再びバッシングの渦中の人物をクローズアップした、ローカル局発の問題提起作となっている。  1998年に4人の死者を出した「和歌山毒カレー事件」。夏祭りに提供されたカレーの中から大量のヒ素が見つかり、カレー鍋の近くにいた林眞須美に疑いが向けられた。林眞須美はヒ素を使った保険金詐欺の常習犯だった。マスコミの報道は連日過熱し、マスコミに突き動かされる形で警察は逮捕に踏み切った。留置中の林眞須美は故三浦和義を介して安田弁護士に助けを求める。このときの安田弁護士が弁護を引き受けた理由は明快。「林眞須美はこれまで保険金詐欺で稼いできた。だから、一銭の得にもならないことをやるとは思えない」と安田弁護士は語る。だが、最高裁は直接証拠や犯行の動機が見つからないまま、林眞須美に死刑を宣告する。  オウム事件の麻原彰晃も弁護の引き受け手がいないことから、安田弁護士が国選弁護人として選ばれた。当初、麻原は接見にきた安田弁護士と友好的な関係だった。しかし、教団幹部・井上嘉浩の反対尋問の際に、麻原が打ち切りを要求し、安田も休廷を申し入れるが、裁判所はこれを認めなかった。この後、麻原は態度を一転させる。弁護人との接見を拒否し、意味不明の言語を口にするようになる。麻原の精神は崩壊していった。やむをえず安田弁護士は法廷を欠席しての引き延ばしを図る。麻原の量刑を早急に決めることよりも、社会を揺るがした大事件の真相を明らかにすることが何よりも大事だと安田弁護士は考えた。ところが、安田弁護士は1998年に強制執行妨害の容疑で身柄を拘束され、麻原の弁護人から解任されてしまう。オウム裁判の早期終結を目指していた司法にとって、“悪魔の弁護人”の存在はひどく目障りだったらしい。この事件は“安田事件”と呼ばれ、国家権力がひとりの弁護士を潰しに掛かったことを物語っている。
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悪徳弁護士=高級車での移動、のイメージが
あるが、安田弁護士はもっぱら電車での移動。
いつも質素な身なりだ。
 そして、安田弁護士へのバッシングが最高潮に達したのが、「光市母子殺害事件」。排水検査を装った当時18歳だった元少年は、同じ公団アパートに住んでいた主婦の首を絞めて殺害した後に陵辱。さらに生後11か月の赤ちゃんの首にヒモを巻き付けて殺害。遺体をそれぞれ押し入れと天袋に隠した。未成年者の犯罪ゆえ一審二審の判決は無期懲役だったが、遺族感情を考慮した最高裁が審理の差し戻しを命じたため、死刑判決の可能性が強まった。ここで前任弁護士に代わって元少年の弁護に就くことになったのが、安田弁護士を主任とする21人の弁護団だった。それまで殺意を認めていた元少年だが、接見した安田弁護士に「殺意はなかった」と話したことから、法廷は混沌と化す。精神鑑定の際の「ドラえもんが助けてくれると思った」「『魔界転生』の復活の儀式のつもりだった」という供述を持ち出したため、世論の怒りの火に油を注いだ。安田弁護士らは鬼畜、悪魔と罵られ、カッターナイフの刃や銃弾が送り付けられた。それでも安田弁護士はひるまない。オウム事件と同様、懲罰の度合いよりも事件の真相を徹底的に究明することが自分の使命だと考えているからだ。再び悲惨な事件が起きることを防ぐには、事件の問題点をすべて明るみにしなくてはならない。そのために“悪魔の弁護士”の汚名を甘んじて受けている。  曲げることのない信念を持つ安田弁護士にとって、重大な事件があった。1980年に8人の死傷者を出した「新宿西口バス放火事件」だ。子どもを施設に預けて東京へ出稼ぎに来ていた丸山博文は、お盆にも子どもに会いに行けなかった罪悪感や福祉に対する後ろめたさから朝から酔っぱらい、停車中の路線バスにガソリンと火の点いた新聞紙を放り込んでしまう。「死にたい。むごいことをした」と悔やみ続ける丸山には死刑が求刑されたが、若手時代の安田弁護士は心神喪失状態にあったと訴え、無期懲役を勝ち取った。裁判に勝利し、安堵した安田弁護士だったが、事件はそれで終わりではなかった。獄中にいた丸山は自殺を遂げてしまう。安田弁護士は半年後に新聞記事でそのことを知る。裁判で勝っても、丸山の心の闇はずっと晴れることはなかったのだ。
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安田弁護士64歳。夕食を終えた後、事務所に
戻って深夜3~4時まで仕事が続く。事務所
に寝泊まりし、睡眠時間は3時間。
 マスコミを毛嫌いする安田弁護士から取材OKを取り付けるのに2年間を要したという東海テレビの齊藤ディレクターに企画・取材の経緯を聞いた。 齊藤 「2008年にドキュメンタリー番組『光と影 光市母子殺害事件 弁護団の300日』を作った際に、主任弁護士だった安田さんの存在に興味を持ったんです。あれだけバッシングされながらも、決して自分の信念を曲げない人。『平成ジレンマ』の戸塚宏校長にも通じるところがありますね。それで2年ほど前に懇親会の場で取材を打診したのですが、『ふんッ』と鼻先であしらわれました(苦笑)。『平成ジレンマ』を作りながらも、安田さんの取材をやりたいなと考え続けていたんです。それで、正式に企画書を作成して取材を申し込んだんですが、『俳優でもタレントでもないのに密着取材なんてありえないし、取材に対応している余裕もない』と断られました。一度は諦めたんですが、安田さんの周囲にいる方たちが、『安田さんの言動は一度きちんと映像として記録されたほうがいい』と協力してくれたんです。『安田さんひとりじゃなくて、4人くらいの弁護士を取り上げる企画だと話せば、安田さんは断りにくくなるはず。最悪、放送前に謝ればいい』とアドバイスされました。それで偽の企画書を渡し、『仕方ない。そこまでしつこく言うなら』と安田さんはOKしてくれたんです。偽の企画書で弁護士を騙してしまった(苦笑)」  ひと筋縄ではいかない死刑弁護人のドキュメンタリーを作るためには、きれいごとだけでは企画は前に進まなかった。また、取材のOKはもらったものの、安田弁護士の素顔を追うのは簡単ではなかった。 齊藤 「弁護士というとお金持ちなイメージがありますが、安田弁護士はブランド品など身に付けず、いつも質素な服装です。赤坂の事務所に寝泊まりして、自宅に帰るのは月に1~2度。毎日、深夜3~4時まで仕事をして、3時間だけ休んでから近くのサウナで汗を流し、また働き始めるという生活です。でも、安田さんはそういう普段の姿をカメラで撮ろうとすると『オレは芸能人じゃない、やめろ』と言うんです。どうしたものかと頭を抱えました(苦笑)。毎晩、取材が終わった後は安田さんに誘われて一緒に夕食を摂っていたんですが、安田さんがお酒を呑んで気分よくなっているとき、カメラマンがさっと小型カメラを持ち出して、安田さんの了承なしで撮り始めたんです。安田さん、お酒を呑むとガードが低くなるんですよ。そのことが分かってからは、安田さんと一緒にカメラマンもボクもお酒を呑んでからカメラを回すようにしました(笑)。いつもは取材対象者と親しくなり過ぎないよう、一定の距離を保つために一緒に食事などはしないようにしていたんですが、今回は特別でしたね」
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2011年10月に東海地区でオンエアされた内容に、
2012年2月の「光市母子殺害事件」の最高裁判決
の様子を追撮している。
 安田弁護士は“死刑廃止論者”として知られ、光市母子殺害事件など担当する死刑裁判を政治的に利用していると非難する声もある。 齊藤 「ボク自身は、冤罪の人が死刑になるなんて許されないことだと思います。かといって被害者の遺族を取材していると、簡単には“死刑廃止”とは口にできない。そんなグラグラした心境の中で、安田さんの『どんな悪人でも、必ず更生できる』という言葉を聞いて、深く考えさせられるものがありました。死刑制度が是か否か、ボク自身は今でも悩み続けています。死刑事件を取材していると、明るい気持ちにはなれませんね。どんどん暗い性格になっていきます(笑)。それでも、安田さんはバッシングに負けずに弁護を続けている。安田さんの人間としての魅力に惹かれて取材を続けたように思います」  司法関連の作品を度々手掛ける齊藤ディレクターに、聞いてみたいことがあった。マスコミは世論を誘導し、バッシングを引き起こすトリガーの役目を容易に果たす。そんなマスコミが司法の過ちをただし、冤罪事件を救済する力を持っているのだろうか。 齊藤 「マスコミは裁判の判決が出ると、一斉に報道し、その後はさぁーと引いてしまいます。『平成ジレンマ』と同様、そのことに対する自戒の念も込めたつもりです。その一方、足利事件や布川事件はマスコミがキャンペーンを張ったことで、無罪を勝ち取っています。ただし、足利事件も布川事件も無期懲役刑でした。死刑判決を覆すのは非常に難しい。そこには大きな分厚い壁があるように感じます。死刑判決が覆ると、それは司法制度そのものの存在を根底から揺るがすことになるからです。でも、マスコミには権力を監視する役目があります。冤罪の可能性がある事件なら、徹底的に解明しなくてはいけないはずです」  齊藤ディレクターが初めてドキュメンタリー番組を手掛けたのが『重い扉 名張毒ぶどう酒事件の45年』(06)。さらに『黒と白 自白・名張毒ぶどう酒事件の闇』(08)『毒とひまわり 名張毒ぶどう酒事件の半世紀』(10)と冤罪の可能性が高い“名張毒ぶどう酒事件”を題材にした3本のドキュメンタリー番組を発表している。さらに6月30日(土)には、仲代達矢、樹木希林、本作のナレーションを担当した山本太郎らが出演するドラマ『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』が東海エリアで放映される。一度取材した事件は、その真相が究明されるまで追い続ける。『死刑弁護人』は安田弁護士を礼賛するための作品ではないと話す齊藤ディレクターだが、おのれの信念に従って一本道を突き進む安田弁護士の姿に深く共鳴しているのは確かなようだ。 (文=長野辰次) shikei_bengonin5.jpg 『死刑弁護人』 ナレーター/山本太郎 プロデューサー/阿武野勝彦 音楽/村井秀清 音楽プロデューサー/岡田こずえ 撮影/岩井彰彦 音声/伊藤大介 スクリプター/河合舞 音響効果/久保田吉根 編集/山本哲二 アソシエイトプロデューサー/安田俊之 監督/齋藤潤一 配給/東海テレビ放送 配給協力/東風 6月30日(土)よりポレポレ東中野、名古屋シネマテークほか全国順次公開 http://shikeibengonin.jp ※ポレポレ東中野にて、6月30日(土)~7月6日(金)夜9時10分より『光と影 光市母子殺害事件 弁護団の300日』『毒とひまわり 名張毒ぶどう酒事件の半世紀』を二本立て上映。7月7日(土)~8日(日)、10日(火)~13日(金)は『平成ジレンマ』を夜9時10分よりアンコール上映 ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第176回]“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』 [第175回]やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』 [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! 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AV女優、変幻自在! 男の勝手な妄想ムービー『AI高感度センサー搭載 メイドロイド』

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アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。 ●今回のお題 『AI高感度センサー搭載 メイドロイド』 監督:友松直之 女性主演:吉沢明歩、鈴木杏里、里見瑶子、山口真里  名作である。数ある“命を与えられた人形”系の作品の中ではダントツの出来。あ、殺人人形チャッキーの『チャイルド・プレイ』は別ね。出演者の見事な脱ぎっぷりから、ジャンル的にアダルトコーナーに置かれそうだけど、過去のどの“人形映画”よりも、深く、熱く、もっともっとヒットせにゃならんっ! っていう作品である。
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『AI高感度センサー搭載 メイド
ロイド』

20XX年。マリアが上野の家にやっ
てきたのは、彼がまだ子どもの頃。
メイドロイド開発メーカーに勤務
する多忙な両親が、彼の世話をさ
せるために連れてきた社内モニタ
ー用のドジッ娘プログラム機体だ
った……。
 男の虚しさ、しゃべれない人形の哀しさ、女の儚さ、すべてが1つの映像、1つのおっぱいの中に詰め込まれている。ここまでメッセージ性の強い脚本! ここまで見事な脱ぎっぷり! なのに、安っぽくない! ここまで演じたAV女優! ここまで切ない男優たち! 拍手喝采の65分。男側の言い分を吐き出しまくった妄想作品。とことん分析してみようと思う。  物語は20XX年。メイドロイド「マリア」が彼の家にやってきたのは、まだ子どもの頃のお話。  メイドロイド開発メーカーに勤務する多忙な両親が、彼の世話をさせるために連れてきた社内モニター用のドジッ娘プログラムのメイドロイドだった。両親は中学生になった彼を残して他界。マリアと二人きりの生活は両親の他界後もずっと続き、大人になった彼は当然ながらマリアにセックス機能を搭載しようとするが、モニター用試作機なのでまったく対応できない。深く愛し合いながらも抱き合えない切なさを抱えたまま数十年の月日が流れ、年老いた彼はバッテリー切れで機能停止したマリアを前に、独り思い出話を語りかける日々を送っていた。  こんな空しさと寂しさの世界観の中なのに、同時進行で、レイプマシンによる連続強姦事件の物語が進行。  おいおい『空気人形』(2009)と『デモン・シード』(※コンピュータが人間の女性を妊娠させちゃう映画/1977)を、一緒に見てるようなもんだ~~と言いながらも、展開のリズムがものすごくいいので、全然違和感なし。 DSC09347.jpg  この映画は、吉沢姉さんが主役って時点で、脱ぎっぷりや、おっぱいについて申し分ないのは言うまでもないが、ものすごくお勧めしたいポイントの1つに、現在社会の性状況を引っ掛けたブラックなセリフが満載だということがある。  いくつか引用させてもらうと、 「それに生身の女は裏切るからね。その点、メイドロイドは大丈夫。メイドロイドの恋愛は永遠なの」 「もうね、やめようよ、生身にこだわるの。結局、恋愛妄想を押し付けてるだけじゃん」 「化粧だって工業製品じゃん。美容整形もそうだけど、結局、工業製品が作り出した架空のイメージに欲情してるわけだよね」 「だったらいいじゃん。工業製品オンリーで。メイドロイドと幸せな恋愛しようって」  メイドロイドの販売員のセリフ1つ取っても、男と女が生きていく上での根本を覆した感じがものすごくいい。この世界がこうなって、性というものが歪んできた状況をしっかりユーザーに植え付けている。お見事ですよ。 DSC09360.jpg  でもって、そのメイドロイド役の方々なのですが、吉沢姉さんはじめ、ちゃんと“機械+人間”という微妙なさじ加減がうまくて、スイッチの切り替えによって、いろんなところのサイズが変わったり(いろんなところね)、いろんな液体も選べたり(いろんな液体ね)、いろんな回転や、ねじれや、ひねりや、もがきや、くねりや……(字では限界)ちゃんと切り替わった時の動きや顔、も~~~~~うまいうまい♪ さすがAV女優っ!!  カメラワークというより、画像演出(文字やハメコミの画像の出方とかね)等のタイミングや、先ほども書いたセリフの見事さが女の子……いや、メイドロイドたちをよりいい女にさせている。そうそう! SEも! SEも思いっきり女を感じさせまくってます!  ものすごいCGや、金をかけたA級感はないけど、逆にあったら成立していない作品。安っぽさが未来の崩れ具合にリンクしている。AV女優の名演技と、物語の切なさと、この手のジャンルではダントツNo1の世界観を十分に楽しんでほしいです。  なんか、今回はネタもなく、まじめに語ってしまった。いやいや、それほどの深い作品ですぞ! (文=梶野竜太郎) kajinoryutaroprof.jpg ●かじの・りゅうたろう 映画監督・マルチプランナー。1964年東京生まれ。 短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。アイドルをちゃんと女優として扱う映像が特徴的でカルトなファンを多く掴む。11年に『魚介類 山岡マイコ』を公開し、アイドルものとしてもファンタジーとしても好評価を得る。同映画のアニメ版、マンガ版等、マルチコンテンツとして世に出す等、プロデュースも行う。 ブログは→http://ameblo.jp/mentaiman1964/ ●アイドル映画監督梶野竜太郎の【アイドル映画評】INDEX 【第27回】ジュニアアイドル・ワールドへようこそ!『実写版 マイコうそみたい!』 【第26回】AVの焼き直しがこんなピュアな作品に!?『平成百合族 ある愛の詩』 【第25回】すべてが中途半端! だがそれが美学!!『後ろから前から』 【第24回】なんでこの娘が主演なんだ? 田代さやか、徹底追求!『18倫』 【第23回】覗きを越えた見せたがる演出『Oh!透明人間』 【第22回】バレない浮気の疑似体験MOVIE『セブンカラーズ』 【第21回】『巨乳ドラゴン 温泉ゾンビ VS ストリッパー5』思い切りさらけ出す演出と"AV女優"の必然 【第20回】『ラブファイト』──北乃きいを5倍堪能する方法。 【第19回】男装女子から漏れる少女の可愛さ『1999年の夏休み』 【第18回】無気力露出系マニア必見! ペ・ドゥナをとことん味わう『空気人形』 【第17回】ヴァーチャル監督視線体験ムービー『テレビばかり見てると馬鹿になる』 【第16回】メイキングDVD希望! アイドル映画の死角"鎖骨"全開の『笑う大天使(ミカエル)』 【第15回】女子高生の体育の時間を、遠くから眺めていたあの頃......『平凡ポンチ』 【第14回】「君はどうしてダメ男ばかり好きになる!?」堕ちてゆく女の美学『ララピポ』 【第13回】あの堀越のりだからできた変身願望映画の傑作!!『特命女子アナ 並野容子』 【第12回】セルフアフレコの美学『カンフーシェフ』加護亜依フォーエヴァー! 【第11回】鈴木美生ちゃんの真の萌声(もえごえ)が男の脳髄直撃!『机のなかみ』 【第10回】バカエロ映画の極×2『まぼろしパンティ VS へんちんポコイダー』 【第9回】「電車男」でカニバリズムで格闘映画の傑作『カクトウ便 VS 謎の恐怖集団人肉宴会』 【第8回】トップアイドルの制服(もちろんミニ)とM男君の快感『ときめきメモリアル』 【第7回】知的に低脳な『秘密潜入捜査官 ワイルドキャッツ in ストリップ ロワイアル』 【第6回】『インストール』──女の子が部屋でひとり。何をしているのか、見たくないか? 【第5回】『お姉チャンバラ THE MOVIE』──ビキニvsセーラー服の恍惚 【第4回】『デコトラ・ギャル奈美』──古きよき時代のロマンポルノ・リターンズ 【第3回】『リンダ リンダ リンダ』──王道的傑作に潜む"多角的フェチズム" 【第2回】『妄想少女オタク系』──初心者歓迎!? BLの世界へご案内 【第1回】『すんドめ』──オナニー禁止とチラリズムの限界点

AV女優、変幻自在! 男の勝手な妄想ムービー『AI高感度センサー搭載 メイドロイド』

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アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。 ●今回のお題 『AI高感度センサー搭載 メイドロイド』 監督:友松直之 女性主演:吉沢明歩、鈴木杏里、里見瑶子、山口真里  名作である。数ある“命を与えられた人形”系の作品の中ではダントツの出来。あ、殺人人形チャッキーの『チャイルド・プレイ』は別ね。出演者の見事な脱ぎっぷりから、ジャンル的にアダルトコーナーに置かれそうだけど、過去のどの“人形映画”よりも、深く、熱く、もっともっとヒットせにゃならんっ! っていう作品である。
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『AI高感度センサー搭載 メイド
ロイド』

20XX年。マリアが上野の家にやっ
てきたのは、彼がまだ子どもの頃。
メイドロイド開発メーカーに勤務
する多忙な両親が、彼の世話をさ
せるために連れてきた社内モニタ
ー用のドジッ娘プログラム機体だ
った……。
 男の虚しさ、しゃべれない人形の哀しさ、女の儚さ、すべてが1つの映像、1つのおっぱいの中に詰め込まれている。ここまでメッセージ性の強い脚本! ここまで見事な脱ぎっぷり! なのに、安っぽくない! ここまで演じたAV女優! ここまで切ない男優たち! 拍手喝采の65分。男側の言い分を吐き出しまくった妄想作品。とことん分析してみようと思う。  物語は20XX年。メイドロイド「マリア」が彼の家にやってきたのは、まだ子どもの頃のお話。  メイドロイド開発メーカーに勤務する多忙な両親が、彼の世話をさせるために連れてきた社内モニター用のドジッ娘プログラムのメイドロイドだった。両親は中学生になった彼を残して他界。マリアと二人きりの生活は両親の他界後もずっと続き、大人になった彼は当然ながらマリアにセックス機能を搭載しようとするが、モニター用試作機なのでまったく対応できない。深く愛し合いながらも抱き合えない切なさを抱えたまま数十年の月日が流れ、年老いた彼はバッテリー切れで機能停止したマリアを前に、独り思い出話を語りかける日々を送っていた。  こんな空しさと寂しさの世界観の中なのに、同時進行で、レイプマシンによる連続強姦事件の物語が進行。  おいおい『空気人形』(2009)と『デモン・シード』(※コンピュータが人間の女性を妊娠させちゃう映画/1977)を、一緒に見てるようなもんだ~~と言いながらも、展開のリズムがものすごくいいので、全然違和感なし。 DSC09347.jpg  この映画は、吉沢姉さんが主役って時点で、脱ぎっぷりや、おっぱいについて申し分ないのは言うまでもないが、ものすごくお勧めしたいポイントの1つに、現在社会の性状況を引っ掛けたブラックなセリフが満載だということがある。  いくつか引用させてもらうと、 「それに生身の女は裏切るからね。その点、メイドロイドは大丈夫。メイドロイドの恋愛は永遠なの」 「もうね、やめようよ、生身にこだわるの。結局、恋愛妄想を押し付けてるだけじゃん」 「化粧だって工業製品じゃん。美容整形もそうだけど、結局、工業製品が作り出した架空のイメージに欲情してるわけだよね」 「だったらいいじゃん。工業製品オンリーで。メイドロイドと幸せな恋愛しようって」  メイドロイドの販売員のセリフ1つ取っても、男と女が生きていく上での根本を覆した感じがものすごくいい。この世界がこうなって、性というものが歪んできた状況をしっかりユーザーに植え付けている。お見事ですよ。 DSC09360.jpg  でもって、そのメイドロイド役の方々なのですが、吉沢姉さんはじめ、ちゃんと“機械+人間”という微妙なさじ加減がうまくて、スイッチの切り替えによって、いろんなところのサイズが変わったり(いろんなところね)、いろんな液体も選べたり(いろんな液体ね)、いろんな回転や、ねじれや、ひねりや、もがきや、くねりや……(字では限界)ちゃんと切り替わった時の動きや顔、も~~~~~うまいうまい♪ さすがAV女優っ!!  カメラワークというより、画像演出(文字やハメコミの画像の出方とかね)等のタイミングや、先ほども書いたセリフの見事さが女の子……いや、メイドロイドたちをよりいい女にさせている。そうそう! SEも! SEも思いっきり女を感じさせまくってます!  ものすごいCGや、金をかけたA級感はないけど、逆にあったら成立していない作品。安っぽさが未来の崩れ具合にリンクしている。AV女優の名演技と、物語の切なさと、この手のジャンルではダントツNo1の世界観を十分に楽しんでほしいです。  なんか、今回はネタもなく、まじめに語ってしまった。いやいや、それほどの深い作品ですぞ! (文=梶野竜太郎) kajinoryutaroprof.jpg ●かじの・りゅうたろう 映画監督・マルチプランナー。1964年東京生まれ。 短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。アイドルをちゃんと女優として扱う映像が特徴的でカルトなファンを多く掴む。11年に『魚介類 山岡マイコ』を公開し、アイドルものとしてもファンタジーとしても好評価を得る。同映画のアニメ版、マンガ版等、マルチコンテンツとして世に出す等、プロデュースも行う。 ブログは→http://ameblo.jp/mentaiman1964/ ●アイドル映画監督梶野竜太郎の【アイドル映画評】INDEX 【第27回】ジュニアアイドル・ワールドへようこそ!『実写版 マイコうそみたい!』 【第26回】AVの焼き直しがこんなピュアな作品に!?『平成百合族 ある愛の詩』 【第25回】すべてが中途半端! だがそれが美学!!『後ろから前から』 【第24回】なんでこの娘が主演なんだ? 田代さやか、徹底追求!『18倫』 【第23回】覗きを越えた見せたがる演出『Oh!透明人間』 【第22回】バレない浮気の疑似体験MOVIE『セブンカラーズ』 【第21回】『巨乳ドラゴン 温泉ゾンビ VS ストリッパー5』思い切りさらけ出す演出と"AV女優"の必然 【第20回】『ラブファイト』──北乃きいを5倍堪能する方法。 【第19回】男装女子から漏れる少女の可愛さ『1999年の夏休み』 【第18回】無気力露出系マニア必見! ペ・ドゥナをとことん味わう『空気人形』 【第17回】ヴァーチャル監督視線体験ムービー『テレビばかり見てると馬鹿になる』 【第16回】メイキングDVD希望! アイドル映画の死角"鎖骨"全開の『笑う大天使(ミカエル)』 【第15回】女子高生の体育の時間を、遠くから眺めていたあの頃......『平凡ポンチ』 【第14回】「君はどうしてダメ男ばかり好きになる!?」堕ちてゆく女の美学『ララピポ』 【第13回】あの堀越のりだからできた変身願望映画の傑作!!『特命女子アナ 並野容子』 【第12回】セルフアフレコの美学『カンフーシェフ』加護亜依フォーエヴァー! 【第11回】鈴木美生ちゃんの真の萌声(もえごえ)が男の脳髄直撃!『机のなかみ』 【第10回】バカエロ映画の極×2『まぼろしパンティ VS へんちんポコイダー』 【第9回】「電車男」でカニバリズムで格闘映画の傑作『カクトウ便 VS 謎の恐怖集団人肉宴会』 【第8回】トップアイドルの制服(もちろんミニ)とM男君の快感『ときめきメモリアル』 【第7回】知的に低脳な『秘密潜入捜査官 ワイルドキャッツ in ストリップ ロワイアル』 【第6回】『インストール』──女の子が部屋でひとり。何をしているのか、見たくないか? 【第5回】『お姉チャンバラ THE MOVIE』──ビキニvsセーラー服の恍惚 【第4回】『デコトラ・ギャル奈美』──古きよき時代のロマンポルノ・リターンズ 【第3回】『リンダ リンダ リンダ』──王道的傑作に潜む"多角的フェチズム" 【第2回】『妄想少女オタク系』──初心者歓迎!? BLの世界へご案内 【第1回】『すんドめ』──オナニー禁止とチラリズムの限界点

【清野とおるの、キ○チ○ガ○イと呼ばないで】第3話「恐怖!‟木曜日の男”」

1mokuyou.jpg 『東京都北区赤羽』でおなじみの漫画家・清野とおるによる、悶絶必死の爆笑コラム。  2011年の師走のある日。東京から大阪に嫁いでいった親戚のユカリ姉ちゃんから、数年ぶりに電話がかかってきた。電話の向こうのユカリ姉ちゃんは、狼狽した様子で声を荒げている。一体何があったというのか? ユカリ姉ちゃんの話を聞いて、俺は恐怖に身震いした。  2011年11月24日木曜日、午後6時。閑静な住宅街が広がる大阪市東成区にて、最初の事件は起こった。
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 上下薄緑色の作業服に、緑色のママチャリに乗った30前後の男。 3mokuyou.jpg  その男が、暗い住宅街を歩いていた若い女性を追い抜きざまに、 4mokuyou.jpg  なんと、顔にウンコを塗りたぐり、猛スピードで走り去ったそうだ……。 ※この先もウンコの絵が続くため、あえてウンコの色を一番ウンコっぽくない「ピンク」に塗っておきましたが、実際は茶色極まりないウンコです。  男はその日、30分の間に同じ手口で計5人もの若い女性の顔にウンコを塗りたぐり、行方をくらませたという。  その翌週の木曜である12月1日にも、 5mokuyou.jpg  男は同じ手口で2人の女性の顔にウンコを塗りたぐって逃走。また、その翌々週の木曜である12月8日にも、 6mokuyou.jpg  男は同じ手口で2人の女性の顔にウンコを塗りたぐって逃走。被害者の数、3週間で計9人。  犯行は半径1キロ圏内、決まって木曜日の夕方~夜であったことから、いつの間にやら男は「木曜日の男」と呼ばれ、住民たちから畏怖される存在になったという。 7mokuyou.jpg  ユカリ姉ちゃんの家は、まさにこの1キロ圏内で、いつ顔にウンコを塗りたぐられてもおかしくない状況下に、発狂寸前であった。 8mokuyou.jpg  近所の主婦たちの間では、「木曜日の男」の話題で持ち切りとなり、さまざまな憶測が飛び交ったそうだ。 9mokuyou.jpg  また、東成区限定のローカル番組内でも連日、この「木曜日の男」のことが放送され続けたという。  女性たちはただただ恐怖に戦き、男性たちは犯人だと疑われることを恐れ、木曜日には気軽に自転車に乗れない心と身体になってしまったそうだ。 10mokuyou.jpg  この事態に、大阪府警も立ち上がった。現場に残されたウンコのDNA鑑定をし、60人もの私服警官を街に投入して、厳戒態勢で臨んだという。  そして迎えた4度目の木曜日、2011年12月15日。午後6時半。共働きのユカリ姉ちゃんは、仕事帰りに「1キロ圏内」の保育園に子どもを迎えに行くことになった。 11mokuyou.jpg  1キロ圏内に突入した姉ちゃんは、帽子とマスクを装備。長い髪をジャケット内に隠し、男っぽい雰囲気でいくことにしたそうな。  それでも万一、ウンコを塗りたぐられた時のために、応急処置用のミネラルウォーターと石鹸とファブリーズまで装備したというから周到だ。  「木曜日の男」のせいか、普段と比べて明らかに人気の少ない東成区。保育園までの道のりは200メートルほどだったが、この時ばかりは「8.5キロくらい」に感じたという。  と、その時。 12mokuyou.jpg  不気味に静まり返った暗い住宅街で、目つきの鋭い怪しげな男が近づいてくるではないか……! 13mokuyou.jpg 14mokuyou.jpg  ……彼は、「木曜日の男」を逮捕するために配備された私服警官だった。  保育園に到着したユカリ姉は、娘を抱きかかえると、無我夢中で家まで全力疾走したそうだ。 15mokuyou.jpg  結局この日、「木曜日の男」は現れなかった。 16mokuyou.jpg  というのがユカリ姉ちゃんはじめ、近所の主婦の方々の見解だそうだが、真相は闇の中だ。  「木曜日の男」は、2011年12月8日を境に、ピタリと現れなくなった。次いつ現れるのか、大阪市東成区の人々は落ち着かない日々を送っているという。  「木曜日の男」の一刻も早い逮捕を、東京都北区という超安全圏からお祈りしております……! (文・イラスト=清野とおる) 1seinoprof.jpg ●せいの・とおる 1980年生まれ。東京都板橋区出身。地元・赤羽に生息する奇妙な人々を生き生きと描いた漫画『東京都北区赤羽』(Bbmfマガジン )が大ヒット中。

“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』

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妻を強姦された高校教師のウィル(ニコラス・ケイジ)は
謎の男・サイモン(ガイ・ピアーズ)から“代理殺人”を
提案される。
 サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックの代表作のひとつに『見知らぬ乗客』(51)がある。妻との離婚調停が進まない主人公に、たまたま列車の中で知り合った乗客が“交換殺人”を持ち掛けるというもの。“見知らぬ乗客”は主人公にこう囁く。「あなたの妻をあの世に送ってさしあげますよ。代わりに、私の父を殺してくれませんか」と。お互いに殺人の動機がないので、警察は逮捕することができないと言う。『見知らぬ乗客』は個人間で取り交わされる契約だったが、もしも“交換殺人”を組織単位で行なったらどうなるか? ターゲットの選定、行動パターンの調査、そして実行、証拠隠滅を別々の人間が分担して“完全犯罪”をやり遂げる。ニコラス・ケイジ主演の『ハングリー・ラビット』は、平凡な高校教師が組織ぐるみの“交換殺人”に巻き込まれる恐怖を描いている。  舞台は米国のニューオリンズ。2005年に米国南部を襲った超大型ハリケーン・カトリーナの災禍からようやく街は立ち直り、かつての平和な暮らしが戻りつつあった。そんなある日、高校教師のウィル(ニコラス・ケイジ)の妻ローラ(ジャニュアリー・ジョーンズ)が銃で武装した暴漢にレイプされるという事件が起きる。ローラは一命を取り留めたが、ボコボコにされた顔が痛ましい。外傷以上に心の傷が深刻だった。夫であるウィルが近づいても怯えている。なぜ自分の妻が? 警察は何をしているのか? 怒りの吐け口を見つけられずにいるウィルに“見知らぬ男”が声を掛けてきた。「警察が犯人を捕まえても、すぐに釈放されます。私たちが代わりに強姦魔を罰してあげましょう」と謎の男サイモン(ガイ・ピアース)は話す。強姦魔をこのまま街にのさばらせておくわけにはいかない。正義は自分たちの側にあるのだ。そう考えたウィルは「イエス」の返事をする。しばらくして強姦魔の死体が発見された。ウィルは違和感を覚えつつも、ローラとの夫婦生活に平穏が戻ってくることを喜んだ。  ローラが元気を取り戻した頃、“見知らぬ男”サイモンが再びウィルの前に姿を現わす。強姦魔の件の代償として、今度はウィルが殺人を引き受けなくてはならないと説明する。交換殺人は組織単位で巧妙に行なわれており、彼らは「空腹なウサギは?」「ジャンプする」という暗号を交わしていた。次のターゲットはすでに選定されており、記事を捏造して人心を惑わす悪徳ジャーナリストを事故に見せかけて消すようウィルは命じられる。ウィルは頑なに代理殺人を拒み続けるが、想像以上に秘密組織の規模は大きく、ウィルは逃げ場を失っていく。「空腹なウサギは?」と問われたウィルは、やむえず「ジャンプする」と答えざるを得なくなる。
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強姦魔に襲われ、病院に運ばれた妻ローラ
(ジャニュアリー・ジョーンズ)。ウィルは自分
が何もできないことが恨めしい。
 ハリケーン・カトリーナによって堤防が決壊し、ニューオリンズの八割が水没した。行政の対応が遅れ、移動手段を持たない低所得者、高齢者、障害者たちが犠牲となった。さらに、ブッシュ政権の災害に対する認識が甘かったために救援体制が整わず、食料や医療品をめぐる略奪行為が相次いだ。自分たちの安全は自分たちで守らなくてはいけない。『ハングリー・ラビット』では災害をきっかけに防災・自衛の意識が強まった被災都市で、秘密裡に自警団が結成される。あくまでもフィクションだが、60年代の南部を舞台にした実録映画『ミシシッピー・バーニング』(88)に登場するKKKのような不気味さがある。また、災害の起きた地域では情報が錯綜し、デマや噂が飛び交いやすい。災害がもたらす以上の恐怖が人々を襲う。街が復興した後も、様々な都市伝説が生まれる。本作の善良なる主人公ウィルも、妻の暴行事件や交換殺人の依頼にパニック状態となり、冷静な判断ができなくなってしまう。『キック・アス』(10)では自警団の無茶ぶりをコメディとして演じたニコラス・ケイジが、本作では正義の名のもとに暴力を振るうことの是非を問い掛けてくる。
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“交換殺人”を断ったため、ウィルは秘密
組織に追い詰められる。一体、どちらが正義
なのか。
 今年で“芸能生活30周年”を迎えたニコラス・ケイジ。私生活では古城マニアであることに加え、スーパーカーやレアコミックの収集による散財が祟って、借金まみれ状態。そのため、ここ数年は作品を選ばぬ多作ぶりだ。やはり被災後のニューオリンズを舞台にした『バッド・ルーテナント』(09)や趣味と実益を兼ねた『キック・アス』(10)『ドライブ・アングリー3D』(11)は見応えのある好編だったが、古典アニメの実写化『魔法使いの弟子』(10)や伝奇ファンタジー『デビルクエスト』(11)といったビミョーな作品にまで主演。シネコンに行くと、いつもニコラス・ケイジの哀愁をたたえた中年顔が待っている。もはや“ハリウッドの船越英一郎”状態だ。ニコラス・ケイジひとりによって、ハリウッド大作が“プログラム・ピクチャー”化している感がある。とはいえ、ある一定レベル以上の娯楽作品に押し上げてみせているところは、さすがハリウッドのトップスター。本作では秘密組織の追っ手を振り切るシーンにおいて、立体高速道路でのパルクールを交えたスタントに挑んだ。金遣いはルーズだが、自分が二枚目スターではないことはしっかり自覚している。  借金まみれのニコラス・ケイジにぴったりな、もう一本の主演作が『ブレイクアウト』(6月23日公開)。美人妻(ニコール・キッドマン)と生意気ざかりな愛娘との3人で優雅な豪邸暮らしを満喫していたところ、その派手さに目をつけた覆面強盗団の襲撃に遭う。こちらの作品も、不意に降り掛かってきた暴力に対し、どうやって自分と自分の家族を守るかがテーマだ。果たして家族の絆パワーで、セキュリティー設備の盲点を突いてきた強盗団を撃退できるか? 借金に追われ、お尻に火が点いた状態で次々と映画に主演するニコラス・ケイジ。彼が現代の米国を象徴するスターであることは間違いない。 (文=長野辰次) hungryrabbit4.jpg 『ハングリー・ラビット』 製作/トビー・マグワイア、ジェームズ・D・スターン 監督/ロジャー・ドナルドソン 脚本/ロバート・タネン、ユーリー・ゼルツァー 出演/ニコラス・ケイジ、ジャニュアリー・ジョーンズ、ハロルド・ペリノー、ガイ・ピアーズ  配給/ショウゲート 6月16日(土)より新宿バトル9ほか全国公開中 <http://hungry-rabbit.com> (C)2011 HRJ DISTRIBUTION, LLC ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第175回]やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』 [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! 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[第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! 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“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』

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妻を強姦された高校教師のウィル(ニコラス・ケイジ)は
謎の男・サイモン(ガイ・ピアーズ)から“代理殺人”を
提案される。
 サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックの代表作のひとつに『見知らぬ乗客』(51)がある。妻との離婚調停が進まない主人公に、たまたま列車の中で知り合った乗客が“交換殺人”を持ち掛けるというもの。“見知らぬ乗客”は主人公にこう囁く。「あなたの妻をあの世に送ってさしあげますよ。代わりに、私の父を殺してくれませんか」と。お互いに殺人の動機がないので、警察は逮捕することができないと言う。『見知らぬ乗客』は個人間で取り交わされる契約だったが、もしも“交換殺人”を組織単位で行なったらどうなるか? ターゲットの選定、行動パターンの調査、そして実行、証拠隠滅を別々の人間が分担して“完全犯罪”をやり遂げる。ニコラス・ケイジ主演の『ハングリー・ラビット』は、平凡な高校教師が組織ぐるみの“交換殺人”に巻き込まれる恐怖を描いている。  舞台は米国のニューオリンズ。2005年に米国南部を襲った超大型ハリケーン・カトリーナの災禍からようやく街は立ち直り、かつての平和な暮らしが戻りつつあった。そんなある日、高校教師のウィル(ニコラス・ケイジ)の妻ローラ(ジャニュアリー・ジョーンズ)が銃で武装した暴漢にレイプされるという事件が起きる。ローラは一命を取り留めたが、ボコボコにされた顔が痛ましい。外傷以上に心の傷が深刻だった。夫であるウィルが近づいても怯えている。なぜ自分の妻が? 警察は何をしているのか? 怒りの吐け口を見つけられずにいるウィルに“見知らぬ男”が声を掛けてきた。「警察が犯人を捕まえても、すぐに釈放されます。私たちが代わりに強姦魔を罰してあげましょう」と謎の男サイモン(ガイ・ピアース)は話す。強姦魔をこのまま街にのさばらせておくわけにはいかない。正義は自分たちの側にあるのだ。そう考えたウィルは「イエス」の返事をする。しばらくして強姦魔の死体が発見された。ウィルは違和感を覚えつつも、ローラとの夫婦生活に平穏が戻ってくることを喜んだ。  ローラが元気を取り戻した頃、“見知らぬ男”サイモンが再びウィルの前に姿を現わす。強姦魔の件の代償として、今度はウィルが殺人を引き受けなくてはならないと説明する。交換殺人は組織単位で巧妙に行なわれており、彼らは「空腹なウサギは?」「ジャンプする」という暗号を交わしていた。次のターゲットはすでに選定されており、記事を捏造して人心を惑わす悪徳ジャーナリストを事故に見せかけて消すようウィルは命じられる。ウィルは頑なに代理殺人を拒み続けるが、想像以上に秘密組織の規模は大きく、ウィルは逃げ場を失っていく。「空腹なウサギは?」と問われたウィルは、やむえず「ジャンプする」と答えざるを得なくなる。
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強姦魔に襲われ、病院に運ばれた妻ローラ
(ジャニュアリー・ジョーンズ)。ウィルは自分
が何もできないことが恨めしい。
 ハリケーン・カトリーナによって堤防が決壊し、ニューオリンズの八割が水没した。行政の対応が遅れ、移動手段を持たない低所得者、高齢者、障害者たちが犠牲となった。さらに、ブッシュ政権の災害に対する認識が甘かったために救援体制が整わず、食料や医療品をめぐる略奪行為が相次いだ。自分たちの安全は自分たちで守らなくてはいけない。『ハングリー・ラビット』では災害をきっかけに防災・自衛の意識が強まった被災都市で、秘密裡に自警団が結成される。あくまでもフィクションだが、60年代の南部を舞台にした実録映画『ミシシッピー・バーニング』(88)に登場するKKKのような不気味さがある。また、災害の起きた地域では情報が錯綜し、デマや噂が飛び交いやすい。災害がもたらす以上の恐怖が人々を襲う。街が復興した後も、様々な都市伝説が生まれる。本作の善良なる主人公ウィルも、妻の暴行事件や交換殺人の依頼にパニック状態となり、冷静な判断ができなくなってしまう。『キック・アス』(10)では自警団の無茶ぶりをコメディとして演じたニコラス・ケイジが、本作では正義の名のもとに暴力を振るうことの是非を問い掛けてくる。
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“交換殺人”を断ったため、ウィルは秘密
組織に追い詰められる。一体、どちらが正義
なのか。
 今年で“芸能生活30周年”を迎えたニコラス・ケイジ。私生活では古城マニアであることに加え、スーパーカーやレアコミックの収集による散財が祟って、借金まみれ状態。そのため、ここ数年は作品を選ばぬ多作ぶりだ。やはり被災後のニューオリンズを舞台にした『バッド・ルーテナント』(09)や趣味と実益を兼ねた『キック・アス』(10)『ドライブ・アングリー3D』(11)は見応えのある好編だったが、古典アニメの実写化『魔法使いの弟子』(10)や伝奇ファンタジー『デビルクエスト』(11)といったビミョーな作品にまで主演。シネコンに行くと、いつもニコラス・ケイジの哀愁をたたえた中年顔が待っている。もはや“ハリウッドの船越英一郎”状態だ。ニコラス・ケイジひとりによって、ハリウッド大作が“プログラム・ピクチャー”化している感がある。とはいえ、ある一定レベル以上の娯楽作品に押し上げてみせているところは、さすがハリウッドのトップスター。本作では秘密組織の追っ手を振り切るシーンにおいて、立体高速道路でのパルクールを交えたスタントに挑んだ。金遣いはルーズだが、自分が二枚目スターではないことはしっかり自覚している。  借金まみれのニコラス・ケイジにぴったりな、もう一本の主演作が『ブレイクアウト』(6月23日公開)。美人妻(ニコール・キッドマン)と生意気ざかりな愛娘との3人で優雅な豪邸暮らしを満喫していたところ、その派手さに目をつけた覆面強盗団の襲撃に遭う。こちらの作品も、不意に降り掛かってきた暴力に対し、どうやって自分と自分の家族を守るかがテーマだ。果たして家族の絆パワーで、セキュリティー設備の盲点を突いてきた強盗団を撃退できるか? 借金に追われ、お尻に火が点いた状態で次々と映画に主演するニコラス・ケイジ。彼が現代の米国を象徴するスターであることは間違いない。 (文=長野辰次) hungryrabbit4.jpg 『ハングリー・ラビット』 製作/トビー・マグワイア、ジェームズ・D・スターン 監督/ロジャー・ドナルドソン 脚本/ロバート・タネン、ユーリー・ゼルツァー 出演/ニコラス・ケイジ、ジャニュアリー・ジョーンズ、ハロルド・ペリノー、ガイ・ピアーズ  配給/ショウゲート 6月16日(土)より新宿バトル9ほか全国公開中 <http://hungry-rabbit.com> (C)2011 HRJ DISTRIBUTION, LLC ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第175回]やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』 [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! 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10年に一度の超ド級スクープ!? 小沢一郎、妻からの‟離縁状”で政治家生命終了?

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「週刊文春」6月21日号 中吊り広告より
グランプリ 「引退勧告スクープ 小沢一郎 妻からの『離縁状』 松田賢弥+本誌取材班」(「週刊文春」6月21日号) 第2位 「『菊地直子』求愛男が『高橋克也』をゆすっていた!」(「週刊新潮」6月21日号) 第3位 「元カレが告白 AKB48指原莉乃は超肉食系でした」(「週刊文春」6月21日号) 次点 「『ドラッグは用意できる』と沢尻エリカに迫ったエイベックス松浦勝人社長」(「週刊 文春」6月21日号) 次点 「小沢ガールズナンバーワン美女『田中美絵子』代議士 接吻の流儀」(「週刊新潮」6月21日号)  今週はグランプリに輝いたスクープの存在が大きすぎて、ほかが霞んでしまった感がある。さらに見ていただければわかるように、月曜発売の週刊誌は一冊も入っていない。このところ文春の独走態勢が続いている。現代、ポスト、朝日、AERA、サンデー毎日の奮起を促したい。  次点に入ったのは、小沢ガールズナンバーワン美女といわれる田中美絵子代議士(36)が夜のJR大崎駅の構内を、男の右腕に腕を絡めて歩き出し、しばらく行くと足を止めた彼女が、目を開いたまま唇を突き出す男の顔に唇を寄せて重なり合った瞬間をバッチリスクープ撮している記事だ。  この男は、妻子ある国交省中部地方整備局副局長のキャリア官僚(55歳)である。  この記事は、モノクログラビアと活版でやっているが、2人のキスシーンを見た知り合いの中年女性は、「ワー汚い! なんでこんなところでやるの。いい年をして恥ずかしくないのかしら」とのたまった。  その後、2人は駅とつながっている連絡通路を歩いて、シティホテルへ向かって、一夜を共にしたという。  彼女は「社会保障と税の一体改革」特別委員会の委員を務めているそうだが、これではそちらのほうには集中できそうもないね。  同じく次点は、沢尻エリカの大麻疑惑を追い続ける文春の記事。今回は追及の矛先を大手プロダクション「エイベックス」の松浦勝人社長に向ける。  沢尻の夫・高城剛が、エリカに松浦がこう話したとしているからである。 「エイベックスが芸能界に復帰させてやるから、とりあえず高城と離婚しろ」「ドラッグならいつでも用意できる」「俺のオンナになれ」  彼女になるのは嫌だとエリカがいうと、「B子(実際には有名歌手の実名)が芸能界で生き残れているのは、俺のオンナになったから。お前も生き残りたかったら、俺のオンナになれ」と言われたそうだ。  もしこの発言が本当だとしたら、 「上場企業のトップとして大問題でしょう。交際を迫る発言もさることながら薬物の問題は論外です。重大な背任と言わざるを得ず、株主にとっても到底許されることではありません」(郷原信郎関西大学特任教授)  週刊朝日によれば、 「エイベックスは6月24日に開かれる株主総会を気にしているようです。メディアからの取材なら『事実無根です』と広報担当者が答えればいいけど、株主総会では社長自ら説明せざるをえない。それまでは高城氏の挑発にのって騒ぎを大きくしたくないというのが本音なんです」(芸能関係者)  映画の公開も迫っているし、この騒動、どのように決着するのか目が離せない。  さて、AKB48の「総選挙」というバカ騒ぎは無事終わったが、そこで4位に入った「ヘタレさしこ」といわれる指原莉乃(19)の元カレが、彼女は「超肉食系」だったと文春に告白している。これが3位。  出会いは秋葉原のAKB劇場。イベントや握手会に通い、ファンレターを出しているうちに指原の友人と名乗る子からメールが届く。ところがこれは本人だったようだ。  デートは原則、彼女の自宅で、指原の母親がいない時間帯。「エッチまで4ヵ月かかった」と話している。彼の携帯には、指原の胸元や胸のアップ写真などが残されている。  しかし、会いたいときに会えない、付き合っていることを友達にもいえないためにストレスがたまり、彼のほうから別れを切り出したという。  指原からはメールで「諦めたくない」「エッチだってしたのにふざけんなよ!」といってきたそうだ。  これは09年の秋、約3年近く前のことであるから彼女はまだ16である。  これって問題あるよなと思っていたら、AKB48のプロデューサー秋元康が早速動いた。指原を、姉妹グループで福岡を拠点とするHKT48にすっ飛ばしてしまったのである。総選挙で4位に入った人気者を外すという荒療治をした背景には、文春が書いているように、こんなことは日常茶飯事なのだろう。 「今でこそ国民的アイドルですが、当時は“地下アイドル”に毛が生えた程度。いくら恋愛禁止を掲げても、プロ意識の薄い、若いメンバーは同世代のイケメンのファンと随分つながっていた」(元AKB48スタッフ)  どこにでもいるフツーの女の子たちには、イケメンファンがアイドルに見えるのではないのだろうか。こうしたグループは、内部から崩壊していくこと必定である。  オウムの高橋克也が逮捕されたが、彼の所持品から松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚の写真やその著作、説法を録音した携帯型プレーヤーが見つかったことで、まだ麻原のマインドコントロール下にあるのではないかと報道されている。  高橋は菊地直子と10年近く逃亡生活を続け、その後菊地は知り合った高橋寛人と同棲するのだが、新潮が気になる情報を高橋の実兄から聞き出している。この記事が第2位。  前号で菊地直子情報を警察に届けたのは、同棲していた高橋寛人の親族だったと書いていたが、警視庁関係者がこう話している。 「情報提供したのは、寛人の兄でした。兄は金銭的に困っており、しばらく会っていなかった寛人と去年頃からまた顔を合わせるようになっていた。寛人と菊地が暮らしていた相模原市のバラック小屋にも行ったことがあり、その際に寛人から“彼女はオウムの菊地”と打ち明けられていた」  またこうも言っている。 「それで3日朝に警視庁を訪れて情報提供したわけですが、その際、寛人の兄はこうも言っていた。“寛人は、あの高橋克也とトラブルになっている”と」  菊地と高橋克也とは長い間行動を共にしてきた。菊地の正体を知った寛人は、克也のアパートに現金1,700万円ほどあることを菊地から聞き出し、部屋に侵入して半分ほど盗んだという。  その後も「お前は逃亡犯だろ、金を出せ」と、ゆすっていたようだ。寛人にも菊地を匿っている負い目があり、3者の関係はギリギリのところで均衡が保たれていたが、それを瓦解させたのが寛人の兄だったというのである。  こうした仲間割れが起きるのは、いずれの場合も金がらみである。  今週のグランプリは10年に一度といっていい超ド級のスクープである。小沢一郎という大政治家の妻が昨年11月頃、ごく親しい後援会の人間に自筆で書いた「小沢との離縁状」を文春が入手して全文掲載したのだ。  なにはともあれ、この衝撃の手紙を読んでもらいたい。 「(中略)長年お世話になった方々のご不幸を知り、何もできない自分を情けなく思っております。このような未曾有の大災害にあって本来、政治家が真っ先に立ち上がらなければならない筈ですが、実は小沢は放射能が怖くて秘書と一緒に逃げ出しました。岩手で長年お世話になった方々が一番苦しいときに見捨てて逃げ出した小沢を見て、岩手や日本のためになる人間ではないとわかり離婚いたしました。(中略)八年前小沢の隠し子の存在が明らかになりました。●●●●●といい、もう二十才をすぎました。三年つき合った女性との間の子で、その人が結婚するから引きとれといわれたそうです。それで結婚前からつき合っていた●●●●という女性に一生毎月金銭を払う約束で養子にさせたということです。小沢が言うには、この●●●●という人と結婚するつもりだったが水商売の女は選挙に向かないと反対され、誰でもいいから金のある女と結婚することにしたところが、たまたま田中角栄先生が紹介したから私と結婚したというのです。そして『どうせ、お前も地位が欲しかっただけだろう』と言い、謝るどころか『お前に選挙を手伝ってもらった覚えはない。何もしていないのにうぬぼれるな』と言われました。あげく『あいつ(●●●●)とは別れられないが、お前となら別れられるからいつでも離婚してやる』とまで言われました。  この言葉で、三十年間皆様に支えられ頑張ってきたという自負心が粉々になり、一時は自殺まで考えました。息子たちに支えられ何とか現在までやってきましたが、いまでも、悔しさと空しさに心が乱れることがあります。(中略) (昨年の=筆者注)三月十六日の朝、北上出身の第一秘書の川辺が私の所へ来て、『内々の放射能の情報を得たので、先生の命令で秘書達を逃がしました。私の家族も既に大阪に逃がしました』と胸をはって言うのです。あげく、『先生も逃げますので、奥さんも息子さん達もどこか逃げる所を考えてください』と言うのです。  福島ですら原発周辺のみの避難勧告しか出ていないのに、政治家が東京から真っ先に逃げるというのです。私は仰天して『国会議員が真っ先に逃げてどうするの! なんですぐ岩手に帰らないのか! 内々の情報があるのならなぜ国民に知らせないのか』と聞きました。  川辺が言うには、岩手に行かないのは知事から来るなと言われたからで、国民に知らせないのは大混乱を起こすからだというのです。  国民の生命を守る筈の国会議員が国民を見捨てて放射能怖さに逃げるというのです。(中略)川辺はあわてて男達は逃げませんと言いつくろい、小沢に報告に行きました。  小沢は『じゃあしょうがない。食糧の備蓄はあるから、塩を買い占めるように』と言って買いに行かせました。その後は家に鍵をかけて閉じこもり全く外へ出なくなりました。復興法案の審議にも出ていません。 (中略)岩手に行こうと誘われても党員資格停止処分を理由に断っていたこともわかりました。知事に止められたのではなく放射能が怖くて行かなかったのです。 (中略)本当に情けなく強い怒りを感じておりました。実は小沢は、数年前から京都から出馬したいと言い出しており後援会会長にまで相談していました。  もう岩手のことは頭になかったのでしょう。(中略)  かつてない国難の中で放射能が怖いと逃げたあげく、お世話になった方々のご不幸を悼む気も、郷土の復興を手助けする気もなく、自分の保身の為に国政を動かそうとするこんな男を国政に送る手伝いをしてきたことを深く恥じています。(中略)せめて離婚の慰謝料を受けとったら岩手に義捐金として送るつもりです。(中略) 小澤和子」  ここでも何度か書いているが、私とこれをスクープした松田賢弥記者が小沢一郎をやろうと思いたったのは、小沢が自民党最年少の幹事長になった頃だったから、今から20数年前になる。  田中角栄の庇護を受けて伸びてきた若き実力者に注目し、小沢を中心に据えて永田町を見ていこうというものだった。  私は小沢の憲法観や「普通の国」という“危険”な考え方には批判的だったが、彼が今後どう動いていくのかには興味があった。  私たちの予想通り、小沢は権力者への階(きざはし)を順調に上っていった。途中、心臓病で倒れたり、自民党を離党し新党をつくったが、常に権力の中心にいた。  私が週刊現代編集長時代は、毎週のように松田記者の手による小沢批判が誌面に載った。金脈研究はもちろんのこと、紀尾井町の料亭「満ん賀ん」の女将とのラブロマンスから、彼女が引き取った「隠し子」のことまで書いた。  正直、なかにはなかなか書きにくいこともあったし、十分に裏の取れないこともあった。それは小沢が若いタレントに産ませたという子どものことだった。彼女の素性はわかったが、なぜ、何年か経って「満ん賀ん」の女将だった小沢の愛人が、その子を引き取ったのだろうか。  詰め切れなかった「謎」の部分もすべて、今回の妻・和子の手紙に書いてあるではないか。  妻に、男としてはもちろんだが、政治家としてここまで完膚無きまでに批判された代議士は聞いたことがない。「あいつ(●●●●)とは別れられないが、お前となら別れられるからいつでも離婚してやる」という小沢の心ないひと言が、彼女をしてここまで書く決意をさせたのだろう。馬鹿な男だ。  小沢一郎という政治家の終焉である。妻から捨てられ、地元から見捨てられた政治家は生きてはいけない。消費税増税反対に最後の力を振り絞るのだろうが、もはや小沢の帰るところはない。  私が現役を離れたため、たった一人で小沢をここまで追い込んだ松田記者の執念の取材は、お見事というしかない。  それにしても、新聞もテレビも、これについてほとんど報じていないのはなぜなのだ。これはAKB48のアイドルが男と一泊したという程度のスキャンダルではない。  田中角栄と金庫番といわれた愛人・佐藤昭子とのスキャンダルが文藝春秋に載ったときも、新聞、テレビは触れなかった。  今の政治を動かしている一方の旗頭の正真正銘の大醜聞である。それも彼の妻が、な批判が巻き起こることを覚悟して書いたものを取り上げないメディアには、存在価値などないと言っていい。  週刊現代で立花隆は言っている。 「ここまで小沢の本性が明らかになった以上、今後は小沢抜きの政局しか考えられない。彼を庇い続けてきた輿石(東)幹事長としても、さすがに庇いきれないだろう。(中略)小沢抜きの政局のなかで、野田総理が代表選も凌いで来年夏の衆参W選挙まで引っ張る公算が強くなった」  どちらにしても、小沢一郎よさらばである。 (文=元木昌彦)

あっと驚くパロディ満載!「パロディ・マンガ大全集」

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「マンガ奇想天外臨時増刊号
パロディ・マンガ大全集」
(奇想天外社、1981年)
 「二次創作」という言葉の下で、パロディは主に同人誌の分野で盛んに行われている。二次創作の同人誌がどれだけ存在するかは、ある意味、原点となる作品の人気の指標としての側面も持っている。  さて、今回紹介するのは、まだ「二次創作」なんて言葉もなかった時代の、パロディ漫画をまとめた一冊である。発行元の奇想天外社は三度にわたって出版元を変えながら続いたSF専門誌「奇想天外」の第二期の出版元である。この雑誌は、曽根忠穂を編集長に1974年に盛光社から創刊するも10号で休刊。76年、奇想天外社が設立され曽根が引き続き編集長に就任するも81年に奇想天外社が倒産すると共に、77号目で休刊。曽根は、今度は大陸書房に入社し、87年から隔月刊で「小説奇想天外」として復活を果たすも、12号目となる90年春号で休刊した。実質三期にわけられる「奇想天外」だが、もっとも熱かったのが奇想天外社発行の第二期の時代だ。小説面では、とくに新人育成に力を入れ、夢枕獏、新井素子、谷甲州といった作家をデビューさせている。それと同時に力を注いだのが、SFマンガである。
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吾妻ひでお全盛期のパロディイラスト。やはり天才だと再確認。
 同社は、78年に「別冊奇想天外」第5号として「SFマンガ大全集」を発行。以降、12月の第8号、79年8月の8号、80年1月の第9号を発行する。そして、80年4月から、季刊ペースで「マンガ奇想天外」が独立創刊に至ったのである。同誌にも寄稿していた大友克洋の初単行本『ショートピース』が奇想天外社から発行されたことから見ても、(会社が倒産するくらいだから、売れ行きはともかくとして)同誌の漫画を見る目は確かであり、熱を入れた創刊だったことは間違いない。  さて、「マンガ奇想天外」の臨時増刊号となる、この「パロディ・マンガ大全集」だが、表紙に<あっと驚くパロディ満載!!>と銘打っている看板に偽りはない。本誌のすごさを説明するとしたら、あの日野日出志の『銅羅衛門』の初出誌だといえばわかるだろうか?    まず目を見張るのが、執筆している漫画家の豪華さである。赤塚不二夫、夏目房之介、吾妻ひでお、いしかわじゅん、新田たつお、つか絵夢子、泉昌之……と、今これだけの作家を揃えようとしたら、かな~り苦労するハズだ。
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もはや、元ネタを知らないとまったく笑えないレベル。
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手塚治虫ガールといえば、やっぱり和登さんだよね。
 さて、ページをめくると最初に掲載されているのが、飯田耕一郎の『Dr.ゼッコォチョー』。早い話が、『Dr.スランプ アラレちゃん』をいしいひさいちが描いたらこうなる、という二重のパロディである。そもそも主人公が、いしいひさいちの描くナカハタそのままである。その内容は「あまり関係ないけど元阪神のエモトは乞食だった」とか、いしい作品を読んでいないとまったく意味がわからない展開の末に、なぜか唐突に諸星大二郎の『孔子暗黒伝』のパロディに突入する、文字通り奇想天外な展開。笑うためには、読者にかなりの知識を要求する、希有な作品である。  スノウチサトル(ほとんどの作品が単行本になっていない奇才。消息を知っている人、教えて)の『LAST WORLD』は、見ての通り手塚治虫『ロストワールド』のパロディ。手塚ヒロインを効果的に使っているあたり、田中圭一に通じるものがあるのだが、本人は駄作だと思っているのか、欄外に「パロディをやろうと思ってたのに本気になってしまった……ゴメンして下さい」と書き込みが。
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伝説の日野日出志のドラえもんパロディ。
もっと世間に評価されてよいレベルではないか。
 赤塚不二夫の描く『銀座鉄道999.999号』は、登場人物が「国鉄では銀河鉄道999号の企画でちびっ子ファンの四万枚のキップの申込みがあったそうだが、原作者の漫画家松本零士を国鉄総裁にして一年中走らせりゃあ赤字も解消されるんだ」「新幹線のビュッフェの食い物のまずさったらありゃしないぞ! あれなら吉野家の牛丼をビュッフェに置いた方がよっぽどいいわい」と、なぜかパロディの名を借りた体制批判が。やはり、大人向けの赤塚作品の容赦なさは、今読んでも新しい!  さらに、本誌は文章面も充実している。あにめじゅんとしもつき・たかなかの共同による『なるほどざあにめ評 SF編』はアニメ作品評の形を取ったネタページだ。作品をものすごく曲解、いや深読みした形でレビューしているのである。鉄腕アトムには「ヒロイン・ロボットたちの妖しいまでのなまめかしさからもわかるように、メカニズムの冷たい輝きを超えて、ロボットたちには過剰なまでの愛情が寄せられている」と記す。サイボーグ009には「世界に黒い幽霊の存在を広く知らせようともせず、正義の戦いを私物化する彼ら」と「それをいっちゃおしまいだよ」な指摘を。一方でマジンガーZには、ロボット同士が格闘するのに「核ミサイルなどの大量殺傷兵器はついぞ用いられたことがない」として「非人間的な核兵器への反対をその巨体に秘めて、マジンガーは戦い続ける」と絶賛。さらに、宇宙海賊キャプテンハーロックを「それぞれ一対の道具を思わせるようなマゾーン艦とアルカディア号とて相まみえるのだから、何がこの作品のメタファーとシンボルであるかはもう明らかであろう」とまで看破(?)するのだ。
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今では封印作品になってしまっている泉昌之の
ウルトラマンパロディも堂々掲載だ。
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赤塚不二夫がかくエロシーンってかなり独特の色気があるよね。
 別のページでは宇能鴻一郎風に書いた『ガンダムなんです』なんてページが。「機械いじりの好きなぼく、サイド7にいたんです。そしたら、攻めてきたんです。ジオン軍が」と、宇能独特の文体を知らないと何も面白くないパロディまでもが掲載されている。一冊丸ごと、かなりハイレベルなパロディといって異論はない。    いまや、同人誌の存在によって「パロディ」と呼ばれる作品はごく当たり前に存在するものとなっている。もちろん、そうした作品にも価値がある。それでも「パロディ」の黎明期の作品群のほうに魅力を感じてしまう筆者は、単なる懐古厨なんだろうか? (文=昼間 たかし 文中敬称略) ■「100人にしかわからない本千冊」バックナンバー 【第7回】“落としやすい”女のコがいる大学は……?「平凡パンチ」1980年6月9日号 【第6回】物欲と性欲、自己肯定感に満ちた30年前の大学生活「POPEYE」 【第5回】1991年、ボクらはこんなエロマンガを読んでいた「美少女漫画大百科」 【第4回】そして『孤独のグルメ』だけが残った......月刊「PANjA」とB級グルメの栄枯盛衰 【第3回】「いけないCOMIC」1985年1月号大特集 戸川純にただ単にミーハーしたいっ! 【第2回】あの頃、俺たちはこんな本でモテようとしていた『東京生活Qどうする?』 【第1回】超豪華"B級"文化人がロリコンで釣ってやりたい放題『ヘイ!バディー』終刊号