気鋭のノンフィクション・ライターが暴く、‟独裁者”橋下徹の本性

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「週刊新潮」10月18日号 中吊り広告より
佳作 「法務大臣『田中慶秋』と暴力団の癒着」(「週刊新潮」10月18日号) 注目記事 「安倍晋三『黒い交際写真』の謀略」(「週刊ポスト」10月26日号) 注目記事 「緊急連載 ハシシタ 奴の本性 佐野眞一+本誌取材班」(「週刊朝日」10月26日号) 注目記事 「世界初の快挙! 性交中の男女MRI画像の衝撃」(「週刊ポスト」10月26日号)  今週は、ノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥京大教授を、多くの週刊誌が取り上げている。スマートな容姿や話し方、それにスポーツマンという文武両道の魅力的な人物である。  新潮によれば、iPS細胞(人工多機能性幹細胞)というのは 「“万能細胞”とも言われますが、皮膚や神経、臓器などあらゆる細胞になりうる能力をもった若い細胞と思ってもらっていい。つまり、理論的には心臓や各種臓器、神経から皮膚まですべて作り出せる夢のような細胞で、移植など“再生医療”に道を開く画期的な発見なのです」(科学評論家・佐川峻)  大阪で生まれ、実家は東大阪でミシン部品工場を経営。少年時代はスポーツ少年で、柔道に打ち込んでいたという。勉強は親にいわれなくてもやるタイプだったと、母親の美奈子が週刊朝日で語っている。  長男だから跡継ぎの問題も出てきそうだが、 「うちの主人は東大阪の町工場の2代目でしたが、当時は人手不足で、人寄せだけでも気苦労の連続。伸弥には向いてません。継がせるなんて、思うたことありませんねん。そやけど今、200人の研究所の所長でやりくりできているのは、主人の商売の血が流れとるからでしょうかね」(美奈子)  神戸大学医学部時代はラグビーをやり骨折も経験し、卒業した後は整形外科医を目指したが、研修医時代、20分で出来る手術が2時間もかかり、ついた渾名が「ジャマナカ」だったという。  山中教授は臨床医からドロップアウトして基礎研究の道に進み、そこでも何度か挫折を味わいながらiPS細胞の研究を結実させる。  山中教授は『「大発見」の思考法』(文春新書)で「『人生万事塞翁が馬』だと思っています。挫折や回り道を経験したからこそ、iPS細胞に出会うことが出来た」(文春)と語っている。  今週は全体にタイトル倒れの記事が多かった。週刊現代でいえば、松浪健太、石関貴史、小熊慎司など「日本維新の会」に駆け込んだ議員を集めた緊急座談会「なぜ、われわれはガラクタと呼ばれるのか(涙)」は、タイトルに惹かれて読んだが目新しい話はなく、(涙)の部分がどこにもなかった。  文春の「小林幸子号泣インタビュー」も同じだ。  週刊新潮が4月12日号で報じた小林の個人事務所「幸子プロモーション」元社長・関根良江と元専務・沢田鈴子の解任に端を発し、33年にわたって幸子を支えてきた関根や沢田が、昨年結婚した小林の夫・林明男に経営に口を出された揚げ句、小林に切り捨てられたと批判し、泥沼の騒動になった。 「幸子プロの内情を知る小林の知人によれば、会社の経理は不明朗なものだった。『小林は世間知らずで実務のことはまったく分からず、今までは経理を仕切る沢田さんと関根さんの二人で自由に回してきました。そこに、夫の林さんが介入したことが、彼女たちにはおもしろくなかったのです』」  小林の知らないところで二人は甘い汁を吸っていた、と言いたいようだ。  関根はこの騒動が起きる前、音楽業界に絶大な権力をもつ“芸能界のドン”のもとに駆け込み、小林からの和解申し込みもドンの意向で断られたというのである。6月15日にやっと関根側と和解するが、このことが報じられると関根側から「全面和解ではない」と再び声が上がる。  追い詰められた中で、芸能界の孤児になった小林を救ったのが「兄貴」と慕うさだまさしだった。  さだが新曲の作詞・作曲を引き受けてくれたが、小林の名前ではスタジオさえも借りれず、新曲のレコーディングは別の歌手の名前を借りて極秘裏にやったという。新曲は「茨の道」。歌には「耐えて 耐えて 耐えて 生きて 生きて 生きて」という詩が入る。  タイトルといい歌詞といい、今回のスキャンダルに便乗しているように思えるが、したたかな彼女だから、それも計算済みなのだろう。文春の誌面を借りて小林側の言い分を語っただけ。そう受け取られても仕方ない記事づくりである。  辛口にならざるを得ない中で、いくつか注目記事を取り上げてみた。ポストの「男女のMRI画像」は“衝撃”かどうかはともかく、へぇーと思わせるものではある。  これは著名な科学者アレグザンダー・シアラスが、セックスとオーガズムの関係を視覚的に分析するために、性交中の男女の性器の断面図をMRIによって撮影したのだそうである。  その男女の写真が出ているが、なかなかの美男美女。薄いガウンを羽織っただけの二人は、濃厚なキスを交わした後、MRIカプセルの中で正常位セックスを12分間続けた。  その時の断面写真が掲載されている。これまでイラストなどではあったが、こうしたものは珍しいかもしれない。膣内のヒダもリアルに再現されている。  毎週似たり寄ったりのセックス記事が多い中、少し新鮮みのある企画ではある。  お次は、やや人気に陰りが見える橋下徹大阪市長だが、週刊朝日がノンフィクション・ライターの佐野眞一を起用して連載を始めた。  この連載の意図は、タイトルにある「ハシシタ」や「奴の本性」でわかろうというものだ。  冒頭は9月12日に開かれた「日本維新の会」の旗揚げパーティーのシーンから始まる。橋下の挨拶を占い師・細木数子と重ね合わせ、 「田舎芝居じみた登場の仕方といい、聴衆の関心を引きつける香具師まがいの身振りといい、橋下と細木の雰囲気はよく似ている」  また、 「橋下徹はテレビがひり出した汚物である、と辺見庸が講演で痛烈に批判したとき、我が意を得た思いだった」  と書いているように、相当きつい橋下批判の連載になりそうな予感。  パーティーで出会ったけったいな老人の話から続けて、佐野ノンフィクションの常道である橋下の血脈、父親・橋下之峯と被差別部落へと向かい、中上健次との世界と重ね合わせるところで1回目は終了する。  『あんぽん』(小学館)で孫正義の在日三世としての出自を徹底的に取材した佐野が、この連載で向かうのはどこになるのか。彼がじっくり腰を据えて橋下に取り組む覚悟なら、橋下本人にとってはもちろんのこと、読者にとっても興味深いものになるかもしれない。次回以降を注目したい。  ポストの安倍晋三の「黒い交際写真」は、羊頭狗肉気味の記事ではあるが、このタイミングで出てきたのは何かあるのかと思わせるものはある。  この写真は08年、安倍が健康上の理由で総理を辞任してから1年も経っていない頃、安倍事務所内で撮られた。真ん中に安倍、左に米共和党の大物政治家マイク・ハッカビー元アーカンソー州知事、右に現在刑事被告人として公判中の韓国籍の男性・永本壹柱だそうである。  永本が問われているのは貸金業法違反。永本は山口組暴力団関係者で「山口組の金庫番」と捜査当局は見ていると書いている。また彼は、北朝鮮とも深い関係があり「北に30億円を送った」などと公言していたという。  こうした人間と親密だったとしたら、北朝鮮への強硬な姿勢を見せている安倍総裁にとって大きな痛手になりそうだが、安倍側は「ハッカビー氏が訪れた際、複数名いた中の一人で、面識も付き合いもない」と回答し、永本のほうも「その時に会っただけで、親しく付き合っているわけではない」と答えている。  今のところこれ以上発展しようがないようだが、総理になれば再び火を噴きそうな予感のする写真ではある。  今週のグランプリは残念ながら該当記事なし。佳作として週刊新潮の「『田中慶秋法務大臣』と暴力団の癒着」を挙げたい。  失礼だが、田中慶秋という代議士はそれほどポピュラーな人物ではないし、就任当初、自ら代表を務める民主党神奈川県第5区総支部が、台湾籍の男性が経営する企業から計42万円の献金を受けていた政治資金規正法違反が浮上した際も、一般的な関心はさほど引かなかった。  だが、新聞マスコミは新潮が出る前から騒ぎ出し、10月11日のasahi.comではこう報じた。 「藤村修官房長官は同日午前の記者会見で『政治家の交際や地元活動は、いささかも違法、不適切のそしりを受けないようにするのが当然』と述べた。『必要なら政治家本人が説明責任を果たすことに尽きる』とも語り、田中氏自身が事実関係を明らかにすべきだとの考えを示した」  この御仁のクビは風前の灯火。臨時国会が開かれれば真っ先に責任を問われることになる。  新潮によれば、今から30年ほど前、横浜・新富町の高級クラブで開かれた稲川会系の組長の新年会や忘年会に、田中が出席していたという。  それだけではない。彼と親しかった稲川会の幹部の名を挙げれば切りがないと暴力団関係者が語っているほど、関係は密なようだ。中でも志村久之(仮名)というヤクザで右翼団体の会長だった人物とは「極めて親密だった」といわれる。彼は昨年50歳で死んでいるが、志村の結婚の仲人をしたのが田中議員だった。  新潮のインタビューで田中法務大臣は「縷々、弁明を続けた田中大臣だったが、最も重要な点である暴力団との交遊については、意外なほどアッサリと事実関係を認めたのである」  新潮発売の翌日、田中法相は閣議後の記者会見で暴力団関係者との交際を大筋で認め、「そういう関係をしたこと自体、大変申し訳ない」と陳謝したが、辞任するとは言わなかった。  昔から法務大臣には大物を据えない「慣習」があるといわれるが、ワースト3には入る“大物”人物のようではある。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか 

“お蔵入り映画”が人命救助を果たした!? 実話をベースにした大冒険ロマン『アルゴ』

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カナダ人と偽ってイランに入国したトニー(ベン・アフレック)は、
大使館職員たちに台本を渡し、映画スタッフを演じさせる。
 日本では年間400本前後の映画が劇場公開され、米国ではそれを上回る500~600本もの公開本数を数える。しかし、当然ながら無事に劇場公開まで辿り着けた作品は極わずか。お蔵入りして現像所の倉庫で眠り続ける大量のフィルムに加え、映画会社の片隅で山積みされたまま忘れさられた脚本や企画書の数は天文学的数字に昇る。それら映画になりそびれた夢の断片は、日の目をまったく見ることなく一生を終える。映画スタジオは夢工房であるのと同時に、形にならなかった夢の残骸の墓場でもあるのだ。SFアドベンチャー『ARGO』も、そんな埋もれてしまった企画の1本にすぎなかった。CIAが目を付けるまでは。ベン・アフレック主演&監督による『アルゴ』は、1本の“お蔵入り企画”が人命救助を果たしたという奇想天外な実話をベースにした社会派サスペンスだ。  物語は1979年11月、イラン革命の波が押し寄せる在イラン米国大使館から始まる。悪名高いパーレビ政権を米国政府は支援していた上に、亡命したパーレビ元国王の米国入国を認めたため、イラン国民は「パーレビを引き渡せ」と怒りまくっている。米国大使館は過激派に取り囲まれ、風前のともしびだ。大使館職員とその家族52人がイラン側の人質となるが、6人の職員たちは裏口から逃げ出してカナダ大使の自宅に匿われた。だが、運が良かったのはここまで。街角には革命軍の目が光り、空港は封鎖状態。この6人はテヘラン市内で完全に孤立した形となってしまった。国務省やCIAは6人を救出するため、自転車で国境まで砂漠を走り抜けるなどの作戦を検討するが、現実性があまりにもない。ちなみにイラン側の人質となった52名の大使館職員たちを救出するために翌年デルタフォースが投入されることになるが、この作戦は大失敗に終わっている。そんな中で極秘裏に採用されたのが、CIAで人質奪回を専門とするトニー(ベン・アフレック)が発案した“ハリウッド作戦”だった。  ハリウッド作戦とは何か? 6人もの大使館職員を同時に国外へ脱出させるのは至難の技だ。そこでウソの映画をでっちあげて、映画のロケハンのふりをしてイランに入国。現地で合流した6人を映画クルーに仕立てて、何食わぬ顔でそのまま空港から帰国してしまおうというもの。だいたい、映画の撮影隊にはよく分からない職種の輩がやたらといる。大使館職員たちにカメラとか機材を持たせとけば、バレやしないだろう。恐ろしく大胆にして、すげーアバウト。これ、実際にCIAが採用したミッションなんですよ。
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人質救出は成功しても陰の裏方、失敗したら一生非難される
割の合わない仕事。トニーは黙々と任務を遂行する。
 ハリウッド作戦の指揮をとり、現地にまで飛ぶのはトニー自身。というか、誰もこんな無謀で危険すぎる作戦は引き受けない。相手を欺くには、思い切ったウソのほうがいい。相手だけでなく、味方も騙せるようなじゃないとダメだ。トニーはハリウッドへ向かい、旧知の仲である『猿の惑星』シリーズの特殊メイクアップアーティストのジョン・チェンバース(ジョン・グッドマン)に協力を求める。こんなバカげた作戦に興味を示してくれるのは、ハリウッドでもそういない。チェンバースの推薦で、辣腕映画プロデューサーのレスター(アラン・アーキン)もハリウッド作戦に参加することになる。  ジョン・チェンバースは実在の人物で『猿の惑星』(68)の際にアカデミー賞特殊メイク賞が新設された、その道のパイオニア。レスターは複数のプロデューサーをモデルに合成されたキャラクターだが、ベテラン俳優アラン・アーキンがこの役に見事に命を吹き込んでいる。レスターは派手好きで食わせものの業界人。映画プロデューサーとして現地に乗り込むと意気込むトニーに対し、「お前はせいぜいアシスタント・プロデューサーどまりだな」と水を差す。ウソの企画だが、「映画の基礎となる脚本をおろそかにしてはならない」と主張して譲らない。そこでお蔵入りしていたボツ企画の中からトニーが見つけ出した1本のシナリオが『ARGO』だった。荒涼とした大地が広がる異星を舞台にしたSF冒険活劇。主人公が美女を連れて、悪の首領と戦う荒唐無稽なストーリーだ。中東でロケハンしたいという口実にぴったりではないか。レスターは時代の流れから取り残された賞味期限切れのプロデューサー。これまで口八丁手八丁で、ずいぶん詐欺師まがいのことをやって稼いできた。ここらでフィクションの世界とは別に、人の役に立つことに協力してもバチは当たらないだろう。『ARGO』を映画化するには脚本家協会の許可を取ってギャラを払わなくていけない。そこでレスターは脚本協会を相手にギャラを値切りに値切ってみせる。その一方で、ウソの製作発表会見を開き、ウソの広告をバラエティー誌に出稿する。ウソだらけの企画だが、いつもと同じように堂々とハッタリをかます。ウソの中にリアリティーを染み込ませる。それこそが、レスターができる最大限の協力だった。  1980年1月。カナダ人だと偽ってイランに入国したトニーは、カナダ大使邸に隠れていた6人にハリウッド作戦を説明するが、「マジかよ! 見つかったら処刑されちゃうよ!」と大反対される。そりゃ、そうだろうな。でも、足並みがちゃんと揃わないと、この作戦は確実に失敗する。トニーは「オレを信じろッ」と懸命に説得する。人生を生きながらえるためには、ときに腹を括って、危険な橋を渡らなくてはならないときもあるのだ。6人はそれぞれ映画監督、カメラマン、脚本家、美術スタッフ……とにわか仕立ての映画スタッフに変身。イラン革命軍を相手に一世一代の大芝居をうつことになる。
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プロデューサーのレスター(アラン・アーキン)、チェンバース
(ジョン・グッドマン)と完成することのない映画の船出を祝う。
 ウソから始まる恋愛の顛末をホロ苦く描いた『ザ・タウン』(10)に続いて、主演&監督を兼ねたベン・アフレック。大学時代に中東の政治を学んでいたこともあり、どうしてイランは米国のことをここまで憎むようになったのか歴史背景を丁寧に分かりやすく盛り込んでいる。そして一行は、いよいよクライマックスとなるテヘラン空港へ。呼び止めた警備兵に対し、ウソの映画クルーは脚本、絵コンテ、バラエティー誌に掲載された広告を取り出して見せ、映画『ARGO』の内容を説明する。バレたら全員処刑されるので、みんな必死で身振り手振りで存在しない映画の説明をする。命懸けでウソをつく。そうとは知らず、イランの警備兵は映画『ARGO』の完成した様子を頭の中で想像して、子どものように目をキラキラと輝かせる。多分、きっとこれが映画の本質なのだと思う。懸命にダマす人がいて、ダマされて気持ちよくなる人がいて、その両者の間には壊れやすいシャボン玉のような夢の世界が一瞬だけ広がる。その一瞬の世界はとても広大で豊かで、誰もが自由になれる空間なのだ。  結局、というか当然ながらSFアドベンチャー映画『ARGO』は完成することなく、劇場公開されることもないまま、人々の記憶から消え去っていく。でも、それでいいのだ。6人の大使館職員たちの心の中では、史上最大にスリリングな大冒険ロマンとして『ARGO』の名前は永遠に刻まれ続けるだから。そして今日もまた、映画プロデューサーたちの机の上には、映画化されることのない企画書や脚本が次々と山積みされていく。 (文=長野辰次) argo_4.jpg『アルゴ』 製作/ジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロブ、ベン・アフレック 脚本/クリス・テリオ 監督/ベン・アフレック 出演/ベン・アフレック、アラン・アーキン、ブライアン・クランストン、ジョン・グッドマン 配給/ワーナー・ブラザーズ映画 10月26日(金)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー (c)2012WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC <http://wwws.warnerbros.co.jp/argo> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第191回]我が家に“食人族”がやって来た! 奇才ジャック・ケッチャムの異形世界『ザ・ウーマン』 [第190回] 裏切り&結託は当たり前。今の政界にそっくり! 極道たちのバトルロワイアル『アウトレイジ ビヨンド』 [第189回] これが全米を熱狂させた“USA版バトル・ロワイアル”! 殺人リアリティーショー『ハンガー・ゲーム』 [第188回]行き詰まった人生の扉を開く鍵は“銭湯”にあり? 内田けんじ監督のオリジナル作『鍵泥棒のメソッド』 [第187回]大家族の伝統料理から超手抜きレシピまで勢ぞろい! 台所から見えてくる中東の家庭事情『イラン式料理本』 [第186回]“世界的な絶滅危惧種”である独裁者に愛の手を!? 政治ネタ&下ネタ満載コメディ『ディクテーター』 [第185回]障害者の性処理も介護の重圧も、すべて笑い飛ばせ! 男たちのバリアフリーな友情ドラマ『最強のふたり』 [第184回]人類を生み出した“創造主”との遭遇!! リドリー・スコットが物語るSF神話『プロメテウス』 [第183回]“校内格差社会”に出現した異分子(ゾンビ)たち! 青春のカタルシス『桐島、部活やめるってよ』 [第182回]カメラマンは法を犯してもかまわない!? 国家の暗部を暴く男の情念『ニッポンの噓』 [第181回]“学校”という名の密室ではびこる児童虐待の事実! 子どもたちは教師を訴える『トガニ 幼き瞳の告発』 [第180回]“神様”との出会いと別れ、そして旅からの帰還  ドキュメンタリー『アニメ師・杉井ギサブロー』 [第179回]親友=お金を貸してくれる、女友達=SEXさせてくれる!? 品性お下劣男の青春『苦役列車』 [第178回]“沢尻エリカ”という名のアトラクションムービー『ヘルタースケルター』が描く無常の世界 [第177回]毒カレー、オウム真理教、光市母子殺害……“悪魔の弁護人”と呼ばれる男の素顔『死刑弁護人』 [第176回]“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』 [第175回]やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』 [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! 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ホントに一生恨んでいるのか? 『吾妻ひでおに花束を』

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大日本吾妻漫画振興会 阿島俊編
『必殺吾妻読本 吾妻ひでおに花束を』
虎馬書房、1979年12月
 本書を語るためには、まず発見に至る過程を記さずにはいられない。時に1999年のこと、当時筆者はいろいろあって三重県は四日市市の郊外の辺鄙なあばら屋で暮らしていた。最寄り駅は近鉄線の富田駅。急行停車駅ではあるものの、ロードサイド店舗に押されてか、駅周辺の商店はどこもうらぶれた雰囲気でむせかえるようだった。そんな駅前の空き店舗に、ある日なんの前触れもなく小さな古書店が店を開いた。本当に小さい店舗で、書棚は左右の壁と中央に裏表の四面だけ。おまけに書棚の前に人が立つと、「ちょっと失礼」と通り抜けるのも困難な店舗である。ああ、きっと中はエッチな本ばかりに違いないと、入ってみて驚いた。店主の座るカウンターの傍の書棚には、吾妻ひでおの単行本がびっしりと詰まっている。ほかにも、当時、評価されるようになっていた、笠間しろうをはじめとする官能劇画系の単行本もびっしり。おまけに、ほとんどが初版である。しかも、値段は「それなりによいお値段」。「ウチにあるのを、ちょっとずつ持ってきてるんだよね~」と語る店主は、かなりのマニアであることを匂わせていた。  当時は、まだ収集方針を明確にしていなかった筆者だが「古いもの(要は90年代以前のオタク関連文献)は、買えるだけ買う」ことをテーゼにしていた。とりあえず、財布の続く限り買いまくっていたのだが、自分が買っていないうちに消えていく本がある。東京ならいざ知らず、ここは三重県の片田舎(失礼! 名古屋まで1時間かからない郊外です)である。そんな土地に、どんなマニアがいるというのか? と思っていたら、ある日、店主は、こう話した。 「さっきも、東京から来たマニアの人が、ごっそりと買っていっちゃったよ」  ……まだ、インターネットはダイヤルアップ回線すらもロクに普及していない時代。それでも、マニアは三重県の片田舎(失礼!)の古書店を見つけ出していたのだ。いったい、どのような情報の流れがあったのか? それはいまだにわからない。  前置きが長くなってしまったが、そこで手に入れた本書、大日本吾妻漫画振興会・阿島俊編『吾妻ひでおに花束を』(虎馬書房)は、1984年に同人誌として出版された、漫画家・吾妻ひでおのファンブック……もとい「必殺吾妻読本」である。ご存じの通り、阿島俊は、コミックマーケットの代表を長らく務めた漫画評論家・米澤嘉博のことである。本来は、帯もあったようだが筆者が所有するものは帯なしである。阿島俊編集という時点で内容が濃いのは自明の理であるが、とにもかくにも濃厚だ。
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あの吾妻先生の自伝ストーリーも読める。かなりの苦労人だったのを再確認する。
(クリックすると画像を拡大します)
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手書き文字は、80年代でほとんど消滅してしまった独特のオタク文字なのだ。
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この絵からあの青少年の心をわしづかみにする美少女へ変化。
すでに片鱗は見える。
 「必殺吾妻読本」の名に恥じず、巻頭は吾妻へのインタビューからスタート。就職して上京し最初は凸版印刷で、カルピスの段ボールを組み立てる仕事をしていたという吾妻。「そこはひと月くらいでやめてしまって、もう、行くあてもなく。だいたい友達の所で居候していたんで。仲間がアシスタントをやっていたんで、そこへたかり歩いて。えーちょっと一人だと耐えられない」と人生を語る吾妻は、個別の作品の話に入るとヒートアップしていく。『セールス・ウーマン』について問われれば「あれも担当、編集の意見が入っています。マガジンは編集が凄かったです。だいぶ、いじめられましたけど」と語り、『ふたりと5人』について触れられれば「あの頃から編集にいじめられだしたんですね」と語り、「編集はマニアが嫌いだからね、そーゆーの描くと、もう、すぐ切られる」とぶっちゃける。このインタビューで吾妻は山上たつひこ、鴨川つばめらに「蹴落とされ」て『週刊少年チャンピオン』の仕事がなくなったことを「一生恨んでやる」という。ネタかと思いきや、2009年にコアマガジンから出版された『誰も知らない人気アニメ&マンガの謎』で描き下ろされた「夢見る宝石 漫画家ドナドナ物語」では 「うちは山●さんと鴨●君で売れてるから吾妻さんはもういいやごくろうさん」といわれ 「この時編集長だった●●●●さんの絞り滓を見るような冷たい目今でも忘れません●●●●殺す! 注●●●●さんは亡くなりました」 と、恨みが本気だったことをうかがわせている(この編集長は、『ブラック・ジャック創作秘話』にも登場する壁村耐三である)。  それはともかく、本書が濃い情報に満ちているのは間違いない。吾妻のプロフィールを記した欄は、なんと本人の住所まで掲載だ。もっとも、当時は主な通信手段が電話と手紙だった時代。本書の奥付には当時の米澤宅の住所が記載されているし、ファンクラブの連絡先なども住所を掲載。このあたり、時代の流れを感じずにはいられない。
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現在から振り返ると当時の漫画評論のタイトルのつけかたも、
かなり独特である。
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DTPだと画一的になってしまうページ構成も手書きだとこんな感じに。
ぜひ、現代の人々にも学んでほしい部分だ。
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ここばかりは、壁村編集長も死んでしまったのですべて歴史の闇だね
(『誰も知らない人気アニメマンガの謎』コアマガジン、2010年11月より)。
 さて、本書には飯田耕一郎の「ギャグに色彩られたSF」をはじめ、評論も充実しているが、まず、注目したいのは再録された吾妻のデビュー作「リングサイドクレージー」だ(初出は秋田書店刊『まんが王』1969年10月号)。我々がよく知っている吾妻の絵柄とは、まったく違う。ここから、一時代を築いた美少女絵まで、どのような労苦があったのか、少しはうかがい知れるのではなかろうか。  本書は、同人誌としてはかなりの部数が出たようだ。筆者が所有しているのは第三版だが、後書きでは「限定五百で出した初版に対する反響にこたえて」と記している。おそらく反響があったのは、評論の「濃さ」も含んでのことだろう。「不条理解析」と題された評論は「不条理日記」で扱っているパロディの元ネタである、バラードやオールディズの作品群を挙げながら分析を行っている。「吾妻ひでお三流劇画家と酒を飲む」と題されたコラムでは「板坂剛VS流山児祥という状況が生まれる以前のことではあったが~」といった一文が。ここで笑うには、かなり当時の文化事象に関わる知識が要求されるハズだ。 そういった意味で、本書は現在では当時のオタクにとって必要だった知識が、どんなものだったかを知る手がかりにもなっているといえるだろう。  一般には、かなり入手難な本だと思うのだが、明治大学の米澤嘉博記念図書館には、なぜか4冊も所蔵されている。ネット以前の時代には、見つけたことすら奇跡だったのに、なんということだろう。「オタクの歴史」のようなものを語りたいなら、とりあえず読んでおくべき一冊である。 (文=昼間 たかし 文中敬称略) ■「100人にしかわからない本千冊」バックナンバー 【第8回】あっと驚くパロディ満載!「パロディ・マンガ大全集」 【第7回】“落としやすい”女のコがいる大学は……?「平凡パンチ」1980年6月9日号 【第6回】物欲と性欲、自己肯定感に満ちた30年前の大学生活「POPEYE」 【第5回】1991年、ボクらはこんなエロマンガを読んでいた「美少女漫画大百科」 【第4回】そして『孤独のグルメ』だけが残った......月刊「PANjA」とB級グルメの栄枯盛衰 【第3回】「いけないCOMIC」1985年1月号大特集 戸川純にただ単にミーハーしたいっ! 【第2回】あの頃、俺たちはこんな本でモテようとしていた『東京生活Qどうする?』 【第1回】超豪華"B級"文化人がロリコンで釣ってやりたい放題『ヘイ!バディー』終刊号

「誰でもできる仕事じゃない!」汁男優界のEXILEを束ねる、“汁親”杉裏達郎のリーダー論

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この男、いったい何者……?
 「汁親」という職業をご存じだろうか? AVの撮影現場で汁男優たちを束ね、時に励まし、時に叱咤しながら、女優に対して“最高”のザーメンをかけることを目指す仕事だ。今回、日刊サイゾーでは、ソフト・オン・デマンド社員であり、監督業もこなしながら、この知られざる職業に従事する杉裏達郎氏を直撃。ザーメンに対する熱い想いをとくとご覧あれ! ――まず、汁親というお仕事について教えてください。 杉裏 汁男優の面接を行い、撮影時には現場での仕切りを行います。監督の指示を受け、汁男優たちに「ほっぺに出して」「おでこに出して」と伝えています。 ――現場では常にブリーフ1枚で臨まれるということですが、これにはどんなこだわりがあるんですか?
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普段はちゃんと服着てます。
杉裏 汁男優という仕事は、メンタル面がとても重要なんです。現場の空気が和やかなら、強い団結力によって、いい場所、いいタイミングでザーメンをかけていくことができます。そんな空気づくりのために、ブリーフをユニフォームとしているんです。 ――どんな人が汁男優に応募しているんですか? 杉裏 汁男優にも2種類いて、ひとつは汁男優の仕事を楽しんだり、お金を稼ぐためにやっている人。もうひとつは、AV男優になるための登竜門として捉えている人。割合でいうと2対8で、汁男優そのものを楽しんでいる人が多いですね。一般社会では“お偉いさん”という方もいますよ。 ――汁男優を面接する際は、どのような点を重視するんですか? 杉裏 作品によってまちまちです。ある作品の場合は早漏がコンセプトだったので、早漏の方々に集まってもらい、一列に並んで一斉に高めてもらいました。その際、飛距離もチェックします。 ――人によってそんなに飛距離が違うんですか?
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来いよ、もっと来いよ!
杉裏 全然違う、全然違いますよ!! ……すいません、ザーメンのことになると、つい熱くなってしまって……。 ――いえ(笑)。ところで、男性なら誰でも汁男優になれるんですか? 杉裏 難しいかもしれませんね……。汁男優にはメンタルの強さが必要ですし、ザーメンの質も重要です。濃く、大量に出て、狙ったところに打てるテクニック、そしてそれをコントロールできる腕前が必要です。 ――射精のコントロールというと……? 杉裏 現場では、汁男優は常に女優さんのすぐそばにいられるわけではありません。カメラマンやスタッフが女優さんを取り巻くので、汁男優たちはその後ろにポジショニングします。入念なリハーサルを行い、「オレはここで」「ここはもうちょっと高いポジションで」といった段取りを踏まえながら、何歩でベッドまでたどり着くのか考慮しつつ、自分を“高めて”いくんです。この高める作業は“アイドリング”と呼ばれています。
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杉裏監督作品。
――けっこう真面目なリハーサルを行っているんですね。 杉裏 真剣です(キリッ)。ただ、やはり彼らも人間なので、アイドリングしすぎて暴発してしまうこともあります。以前、こらえきれずにカメラマンに発射してしまった人がいましたが、カメラマンにブチ切れられてましたね。 ――(笑)。杉裏さんが汁親として一番気を使っているのは、どういった部分ですか? 杉裏 現場の雰囲気は汁男優の発射にも影響します。ですから、監督がピリピリしていても、僕が和やかな雰囲気に変えなければなりません。怒られながらオナニーするのって辛いけど、女の子が「大好き」と言ってくれる状況ならできるでしょう? 空気感づくりは大切なんです。 ――そのようなリーダーシップはどこで培われたんでしょうか? 杉裏 長く現場でやっているからでしょうね。汁男優に対して「今日もお願いします」という姿勢で接することを、日々心がけています。汁男優は僕の部下ではありません。彼らは仲間なんです。例えるならば、EXILEのような関係でしょうか。
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リーダーの貫禄を漂わせてます。
――汁男優のEXILE!? ということは、杉裏さんはHIROさんのポジションですね。 杉裏 だと思います(照)。 ――汁親として一番やりがいを感じるのはどのような時ですか? 杉裏 やはり、いいザーメンで、いい画が撮れた時ですね。 ――いいザーメンとは? 杉裏 濃くてドロッとしたザーメンです。人にもよりますが、2〜3日貯めていたザーメンが最高なんです。それ以下だと薄くなってしまったり、逆にそれ以上だと思うように発射しなかったりします。 ――監督としてもご活躍されている杉裏さんですが、汁男優を必要とする“ザーメンぶっかけ”作品は撮っていませんね。 杉裏 汁親としての僕は、あくまで彼らのサポーター的な存在なんです。僕が監督をすることよって、よりよいぶっかけが撮れるならいいのですが、汁男優に関しては、汁親として監督との間に立っているのが一番だと思っています。会社の中で汁親を名乗ることができるのは僕一人なので、後輩には僕の背中を見て育ってほしいと思いますね。 ――最後に、杉裏さんにとってザーメンとはなんでしょうか? 杉裏 汁男優のザーメンには魂が込められています。魂の込もったザーメンで、女優さんがいい顔をすれば、汁男優たちもいいザーメンが出ます。さらに、それを見た視聴者も喜ぶ。そういった、いい形での「ザーメンの連鎖」が続いていけばうれしいです。 (撮影=岡崎隆夫) ●汁親AV監督 杉裏達郎の親魂日記  <http://blog.livedoor.jp/sugi_sodc/>

富も名声も手に入れたはずが……売れっ子文化人・姜尚中が抱える複雑な家庭問題

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「週刊文春」10月11日 中吊り広告より
グランプリ 「姜尚中・知られざる『家庭崩壊』」(「週刊文春」10月11日号) 第2位 「野田政権が隠蔽する『年間34万円負担増』の極秘試算」(「週刊ポスト」10月19日号) 第3位 「徹底検証 安倍晋三のお腹は本当に治ったのか?」(「週刊文春」10月11日号)  日本初の快挙を首差で逃した。10月7日にフランス・ロンシャン競馬場で行われた「凱旋門賞」で、惜しくも2着に敗れたオルフェーヴルのことである。クリストフ・スミヨン騎乗のオルフェーヴルは最外枠ながらいいスタートで飛び出し、外の1頭を壁にしながら後方を進む。スミヨンにすれば、どこかでインが開けば突っ込みたかったのだろうが、団子状態のためそれは叶わず、終始後方でロスを少なくする騎乗に徹していた。  4角を周り直線に入ると、スミヨンは手綱をしごく。それに応えてオルフェーヴルは他馬とは次元の違う脚色で一気に先頭に躍り出る。テレビを見ていたほとんどの競馬ファンは、「歴史的快挙」を確信したはずである。私も椅子から立ち上がって絶叫した。  しかし、ここの直線は長い。一旦は楽にかわしたソレミアがジリジリ二の足を使って迫ってくる。さしものオルフェーヴルも、大外枠からの発馬と、外外を回らざるをえなかった不利が堪えて、ゴール前で脚が上がりクビ差で差されてしまった。  この世界最高峰のレースに勝っていれば、人間以外で初の「国民栄誉賞」ものだったはずである。勝った馬より1.5キロ重く、回った距離は10馬身以上違うだろう。たら、れば、は競馬には御法度だが、内枠に入っていれば3馬身は突き抜けていただろう。オルフェーヴルよ、ぜひ、もう一度「凱旋門賞」にチャレンジしてほしいものである。  2週間近くハワイのカウアイ島でボンヤリしていたので、帰ってきてから週刊誌をまとめて読んだが、行く前とでは大分変化が出てきているようだ。  民主党の代表選はともかく、下馬評では3番人気だった安倍晋三が新総裁になり、それまでは飛ぶ鳥を落とす勢いだった橋下徹人気にやや陰りが出てきたようだ。週刊朝日の「<決定版> 衆院選300選挙区当落予想」を見ても、政治評論家の森田実が選挙区・比例区を合わせて「日本維新の会」の議席は61と予想し、田崎史郎が67と見ている。  週刊ポストが「橋下維新『大失速』の真相」で書いているように、みすぼらしい候補たちの顔ぶれに加え、橋下が出馬すれば反橋下派は平松邦夫前市長を擁立するだろうから、大阪という本丸を失いかねない。しょせん橋下人気に頼っているだけの根無し草政党だから、これまでのようなブームが再び起こるとは思えない。さあ、どうする橋下大阪市長。  さて、今週の3位は、誰しもが不安視する安倍新総裁のお腹の具合をしつこく調査した文春の記事  5年前の総理辞任後、安倍は「文藝春秋」で、自ら厚労省が難病指定する「潰瘍性大腸炎」であったことを認めている。大腸に潰瘍ができる病気で、下痢、粘血便の症状が出て、発熱、体重の減少が起きるという。原因は明らかではないようだが、ストレスや遺伝的な要因が考えられるらしい。  当時、首相秘書官だった井上義行がこう語る。 「辞める二ヵ月ほど前から、総理執務室の後ろにベッドルームをつくり、私服を着た医師を入れて毎日点滴を打っていました。トイレに行く回数は、一日、何十回ではきかないくらい」  そんな安倍を見ているだけに、彼は今回の出馬にも慎重だったという。  そんな人が総理になって大丈夫なのか? また体調を理由に総理の座をほっぽり出してしまうのではないか? 当然の疑問であろう。だが、その安倍に朗報が届く。潰瘍性大腸炎に効く「アサコール」という薬が日本で発売されたのだ。  この薬で病気は「ほぼ完治した」とアピールするため、総裁選の決起集会では3,500円のカツカレーを完食するパフォーマンスも見せた。  文春は、それでも信用ならんと、首相辞任の際発表したのは「潰瘍性大腸炎」ではなく、「機能性胃腸障害」だとし、「アサコール」は潰瘍性を抑えられても機能性のほうが発症するリスクはあると追及する。 「潰瘍性大腸炎も機能性胃腸障害も、完全に治る病気ではないのでコントロールすることが大切です。これらは、頑張りすぎる人がなる病気。患者さんには百点ではなく七十五点合格主義を勧めています」(鳥居内科クリニック鳥居明院長)  次の総選挙で自民党が勝てば、安倍総理が誕生する可能性大である。難問が山積する中、75点主義でのんびりやられてはたまらないが、さりとて頑張りすぎて、首脳会談の最中に何度も中座してトイレに入っていたのでは、まともな話し合いなど期待できはしない。また、任期半ばで放り出してしまう姿が浮かぶようである。  先週の週刊ポストのタイトルが絶妙であった。「『結局、安倍かよ~』というとてつもない空虚感」。その通りである。  2位には、消費税増税しても、社会保障に全額は回らないと警鐘を鳴らし続けているポストの記事。  このところ値上げラッシュである。9月には東京電力管内の電気料金が平均8.46%上がり、10月からの環境税導入により都市ガス料金引き上げが検討されている。  7月からガソリン価格がリッター10円以上の値上げになった。輸入小麦の政府卸価格が平均3%引き上げられたため、10月からは食用油や乳製品の値上げが始まり、制度改定により生命保険や自動車保険の保険料も引き上げられる。  ポストは「内閣官房社会保障改革担当室」が作成した極秘資料を入手した。作成日は9月14日、まさに民主・自民の党首選の真っ直中である。  これを要求したのは民主党の中でも消費税増税に反対していた川内博史議員で、議員の求めによって試算したとあり、2011年4月における水準と2016年4月における水準の差という副題がついている。  年収500万円世帯(夫は40代サラリーマン。妻は専業主婦。小学生の子ども2人)の場合は、年額33.8万円の負担増になり、年収300万円の単身世代では年額11万円の負担増になる。  さらに、これを作成した側の卑劣さは中身だけではなく、試算を出してきたタイミングにある。川内代議士が試算を求めたのは消費増税法案が国会で審議中だった6月なのに、出てきたのは法案が成立した後の9月だった。  ポストは、この資料を入手しているはずのメディアのほとんどがこれを公表していないことにも怒りをぶつける。  唯一報じた朝日新聞でさえ、「年11.5万円負担増 消費税10%時 年収500万円4人家族」とだけ伝え、「これだけの負担増を示す試算が消費増税法案採決の前ではなく、採決を終えてから提出されたことが最大の問題」(川内代議士)なのに、そこに言及しないのかと難じる。  川内代議士はこう訴える。 「大増税でも社会保障は充実せず、国民の負担だけが増えて、増税分はシロアリに喰われていくだけです。今からでも遅くないから、負担増ばかりが国民を襲う現実を公表し、改めて増税の是非を議論すべきです」  消費税増税を民主党以上にリードした自民党が、次の総選挙で与党に返り咲いたとしても、増税見直しなどできるわけはない。国民はこの怒りをどこへ向ければいいのだろうか。  今をときめく売れっ子文化人・姜尚中東大教授(62)のスキャンダルとなれば、読んでみたいのは誰しも同じであろう。この文春の記事が文句なしに今週のグランプリ。  熊本県で生まれ、両親は戦前に来日した韓国人。幼い頃は粗末なバラックに百世帯以上が肩を寄せ合うように生活していたと、自著『在日』(講談社)に書いている。両親の廃品回収業が成功して、彼が6歳の時にそこを出る。しかし、在日として生きる悩みは深かったと姜が話す。 「中学校で、在日は僕一人だったと思います。異性を意識するようになり、好きな子が出来れば、自分が在日と知れるのが嫌で、勉強は、まあ出来たし、野球も出来ましたが、何とか高校へ進学したものの、野球部を辞めました。中・高は楽しくなかった。その代わり本をたくさん読みました。それが今につながっていると思います」  その後、一浪して早稲田大学に入学。政治思想を専攻して大学院に進み、西ドイツへ留学したそうである。  日本名を捨てた時期や、初めて韓国を訪れた時期などに本人と周囲の人間との齟齬はあるが、これは省く。  在日コリアン向けの論壇誌に気鋭の論客として登場し、これがテレビ朝日のディレクターの目に触れ出演依頼が来る。そこからスマートな容姿と説得力のある話しぶりで、テレビの寵児となるのである。  文春らしく、姜の北朝鮮寄りの発言を、在日コリアンの人権問題について活動してきた川人博弁護士にこう批判させている。 「彼は、自分の母親をはじめ在日が苦しんだことは書きましたが、現在の在日を苦しめている北朝鮮の独裁体制のことは書いていません。小泉訪朝後様々な理屈を並べ、北朝鮮の体制維持に向けた発言を繰り返していました」  同じような批判は在日コリアンからも出ているというが、姜はこう反論している。 「拉致を解決するためには、北朝鮮の核問題と、日朝間に山積みされている日朝平壌宣言の三点をパッケージにして一挙に解決するしかありません。それはずっと主張してきたことです。私は変わっていません」  この記事は、姜尚中の思想的な問題を問おうというのではない。在日コリアン初の東大教授になり、マスコミでもてはやされ、『悩む力』(集英社新書)がミリオンセラーになるなど、華やかな外向きの顔とは別に、家庭では複雑な問題を抱えているというのである。  2009年6月、千葉県流山市の住宅街で死亡事故が発生した。姜の長男が自殺したのである。  長年の引き籠もり生活の末であった。母親はその心労のためか新興宗教に入信したという。  姜はこれまで長男の死について言及したことはない。  テレビで売れっ子になるにつれて、姜の家には脅迫状が次々来るようになった。小学生だった息子はそれに苦しみ、家で暴れるようになったという。高校生になって引きこもり、母親と怒鳴り合い、テレビ出演中の姜が慌てて帰ることもあった。  だが姜は、長男の死は自殺ではなく病死だという。生まれたときから「神経のインパルスが欠落していた」ため、長くは生きられないことを知っていて、哲学書などを読み、最終的な死因は「呼吸困難だったんじゃない?」と話す。  長男の死を公表しなかったのは? と問われて、 「隠していたわけではない。自分の不幸をわざわざ人には伝えないでしょ? 僕が言いたいのは、魂は生きているということ。肉体的にはなくなっても魂は生きているし、妻にとっても同じです。そして息子の死があったから、僕は『悩む力』が書けた。これは息子との合作です」  と語っている。  来年3月、定年まで3年を残して姜は東大教授を辞めるという。  私は姜とは一度だけしか会ったことはないが、テレビで見るよりはるかにスマートで格好いい人だった。話し口調は穏やかで説得力があり、在日コリアンを代表する論客であることは間違いない。  だが、数年前にNHKの『紅白歌合戦』の審査員として登場したとき、違和感を覚えた。何か勘違いしているのではないか、そう思ったのである。  名声も富も得て、何不自由なく暮らしていると思われていた彼に、複雑な家庭問題があったとは。この記事は、姜尚中の著作を読むためにも重要なものであろう。  「噂の真相」がなくなってから、作家や学者たちのスキャンダルが読めるのは「サイゾー」ぐらいしかなくなってしまった。  文藝春秋は姜の本をほとんど出していないから、こうした記事ができたのかもしれないが、どこかで東野圭吾のスキャンダル(あれば、だが)を書く勇気のある出版社はないかな。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか 

我が家に“食人族”がやって来た! 奇才ジャック・ケッチャムの異形世界『ザ・ウーマン』

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食人族最後の生き残り“その女”が、弁護士一家が暮らす一軒家にやってきた。
法律やモラルにとらわれない世界一自由な女だ。
 おいらはブライアン。14歳になるクソガキさ。エッチなことに興味津々な年ごろってわけ。父親のクリスは弁護士をやってるゲス野郎。外では善人づらしてるけど、権威主義の塊みたいな大人だ。母親のベルと高校生の姉ペグは、いつも父親の顔色ばかり見ている。少しでも父親の機嫌をそこねると、すぐに鉄拳が飛んでくるからね。母親と姉に言わせると、おいらはそんなオヤジと性格がそっくりらしい。学校じゃ目立たない存在だけど、クラスの女の子にこっそり悪戯をしているときだけ無性にワクワクするから、確かにそーかもしんない。まぁ、いいやそんなことはどーでも。それよりも我が家は最近、チョー盛り上がり中。オヤジは趣味でときどき猟銃を持って森へ出掛けるんだけど、この間の獲物はすごかったよ! なんせ、森で暮らしてた裸族の女を連れて帰ってきたんだぜ。全身からウンコをシチュー鍋で煮詰めたようなすげー臭いがプンプンして、鼻が曲がるかと思ったよ。それでオヤジは地下室にその女を鎖で吊るして、家族みんなを、幼い妹のダーリンも集めてこう言ったんだ。「みんなで責任を持って、この女性を飼育しよう」って。しかも、オヤジはちょっと油断した瞬間に中指を食いちぎられたんだ。どーやら、その女は食人族らしい。もうサイコー! 放課後は同級生となんか遊んでいられないよ。なんたって我が家の地下室では、食人族の女がお腹を空かせて待っているんだからね!  こんな狂ったストーリーを書き上げたのは、スティーヴン・キングが絶賛する米国のカルト作家ジャック・ケッチャム。彼の最新作『ザ・ウーマン』が映画化され、日本でも劇場公開される。文明から離れて暮らす野生の女が現代に生きていたという設定自体が奇天烈だが、さらにその女は食人族の最後の生き残りという異常さ。ザ・カニバリズム。しかも、主人公である弁護士一家は、彼女を捕獲して地下室で飼い馴らそうとするアブノーマルな香り。藤子・F・不二雄先生もびっくりな、実写ホラー版『ジャングル黒べえ』の世界ですよ!
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クリス家の地下室では、こんな感じで“その女”が飼育されています。
もちろん区役所にも保健所には登録していません。
 ジャック・ケッチャムのデビュー作『オフシーズン』とその続編『襲撃者の夜』と連なる“食人シリーズ”の完結編となる本作だが、原作段階から関わったのがラッキー・マッキー監督。グロくて泣けるホラー映画『MAY メイ』(02)で監督デビューを果たしたこの人、ケッチャムの犯罪小説『黒い夏』の映画化『ザ・ロスト 失われた黒い夏』(05)の際にもプロデューサーとして参加している。今回の『ザ・ウーマン』では原作を共作した上に、脚本執筆にもケッチャムを引っぱり込む熱の入れよう。ケッチャムにもう首ったけ状態。2009年に映画化された『襲撃者の夜』(日本ではDVDスルー)はひどく安っぽいB級ホラー仕立てで、『隣の家の少女』(07)は虐待されるヒロインが残念なことに美少女ではなかったりと、ケッチャム作品の映像化は『ザ・ロスト』以外は満足できる作品に日本ではお目にかかれなかったが、ケッチャム大好き人間のラッキー・マッキー監督の手によって、『ザ・ウーマン』はこれまでになくすげーポップでグロくてブラックな笑いに満ちた味わい深い映画に仕上がっている。  ケッチャム作品は代表作『隣の家の少女』が1960年代にインディアナ州で起きた少女監禁陵辱事件を題材しているように、『オフシーズン』から始まる“食人シリーズ”も実話をベースにしたもの。15〜16世紀のスコットランドに実在した食人ファミリー、ソニー・ビーン一家から着想を得ている。ソニー・ビーンは妻と海岸沿いの洞窟で暮らし、近くを通りかかった人を襲っては食べ、残った肉は塩漬けにして洞窟内に貯蔵し、近親相姦で一族を50人近くに増やしたと言われている。忌まわしき黒神話の住人だ。誰しも顔をそむけたくなる事件を題材に、ケッチャムは人間に隠された野獣性をあぶり出していく。ちなみに食人シリーズ第2作『襲撃者の夜』と完結編にあたる『ザ・ウーマン』は映画化されたものの、肝心のシリーズ第1作『オフシーズン』の映画化はポシャったまま。そーゆーぶっ壊れた感じも、またケッチャムらしい。スティーヴン・キングの小説がハリウッドの人気監督&人気キャストの手で続々と映画化されたのとは、あまりにも対称的ですな。
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“その女”の飼育を始めたことで、弁護士ファミリーの日常生活に変化が生じる。
最後まで責任持って育てられますか?
 原作小説が紀伊国屋新宿本店で絶賛発売中の『ザ・ウーマン』は、文明批評の強い内容となっている。食人族最後の生き残りである“その女”を弁護士のクリスは地下室で飼い馴らして、文明人に改良しようとする。まるで『マイ・フェア・レディ』(64)のヒギンス博士のように。自分の中指を食いちぎられたことで、余計にクリスのサディステックな嗜好性に火が点く。“その女”を殴りつけて傷だらけにした上で、高圧洗浄機で全身を洗い流す。それまで文明人の言語を話すことのなかった“その女”がたまらず「プリーズ……」という言葉を発すると、野蛮人を屈服させたことにクリスは無上の喜びを覚える。文明社会の番人である法律家と野生の世界で自由に生きてきた“その女”という対照的なキャラクターが描かれるわけだが、クリスは自分が家族をきっちり支配することが、家族にとっての幸せでもあると考える暴力男。食人族は自分たちが食べていくために獲物を狩るが、クリスは自分の歪んだ欲情を満たすために家族に平気で暴力を振るう。はたして一体、どっちが文明人でどっちが野蛮人なのか。「人間もしょせん動物に過ぎない」というケッチャム節が全編に朗々と流れる。  食人族と弁護士一家との奇妙な共同生活も、やがて終焉のときを迎える。最近ずっと塞ぎ込んでいるペグの様子を心配した担任のレイトン先生がサプライズでクリス家を家庭訪問したことから、血と暴力と内臓が飛び出すクライマックスの幕が開く。弁護士一家には食人族以外にもまだまだ秘密があったという驚きの大ドンデン返し。このクライマックスは、伊藤俊也監督の『犬神の祟り』(77)級の衝撃ですよ。  『隣の家の少女』に続いて、ジャック・ケッチャム作品『ザ・ウーマン』を上映するのはシアターN渋谷。これまで『ホテル・ルワンダ』(04)、『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』(05)、『ホステル』(05)、『マーターズ』(07)、『片腕マシンガール』(07)、『ベルフラワー』(11)といった埋もれがちな問題作を積極的に取り上げてきた良心的な映画館だ。ミニシアター冬の時代にあって孤軍奮闘を続けてきたが、残念なことに12月2日(日)での閉館が決まった。すっかりこぎれいになった都会の片隅で、シアターNは7年間にわたって人間の心の闇に蠢くものをスクリーンに映し出してきた。『ザ・ウーマン』はそんなシアターNのクライマックスを飾るのに相応しい、とってもワイルドでバッドテイストさを極めた作品だと思う。去勢されたシネコン映画には興味が持てない方は、刺激に溢れたシアターNまでぜひ足を運んでみてほしい。 (文=長野辰次) the_woman04.jpg 『ザ・ウーマン』 原作・脚本/ジャック・ケッチャム&ラッキー・マッキー 監督/ラッキー・マッキー 出演/ポリヤンナ・マッキントッシュ、ショーン・ブリッジャーズ、アンジェラ・ベティス、ローレン・アッシュリー・カーター、ザック・ランド 配給/エクリプス 10月20日(土)よりシアターNにてモーニング&レイトショー公開  <http://the-woman-movie.com> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第190回] 裏切り&結託は当たり前。今の政界にそっくり! 極道たちのバトルロワイアル『アウトレイジ ビヨンド』 [第189回] これが全米を熱狂させた“USA版バトル・ロワイアル”! 殺人リアリティーショー『ハンガー・ゲーム』 [第188回]行き詰まった人生の扉を開く鍵は“銭湯”にあり? 内田けんじ監督のオリジナル作『鍵泥棒のメソッド』 [第187回]大家族の伝統料理から超手抜きレシピまで勢ぞろい! 台所から見えてくる中東の家庭事情『イラン式料理本』 [第186回]“世界的な絶滅危惧種”である独裁者に愛の手を!? 政治ネタ&下ネタ満載コメディ『ディクテーター』 [第185回]障害者の性処理も介護の重圧も、すべて笑い飛ばせ! 男たちのバリアフリーな友情ドラマ『最強のふたり』 [第184回]人類を生み出した“創造主”との遭遇!! リドリー・スコットが物語るSF神話『プロメテウス』 [第183回]“校内格差社会”に出現した異分子(ゾンビ)たち! 青春のカタルシス『桐島、部活やめるってよ』 [第182回]カメラマンは法を犯してもかまわない!? 国家の暗部を暴く男の情念『ニッポンの噓』 [第181回]“学校”という名の密室ではびこる児童虐待の事実! 子どもたちは教師を訴える『トガニ 幼き瞳の告発』 [第180回]“神様”との出会いと別れ、そして旅からの帰還  ドキュメンタリー『アニメ師・杉井ギサブロー』 [第179回]親友=お金を貸してくれる、女友達=SEXさせてくれる!? 品性お下劣男の青春『苦役列車』 [第178回]“沢尻エリカ”という名のアトラクションムービー『ヘルタースケルター』が描く無常の世界 [第177回]毒カレー、オウム真理教、光市母子殺害……“悪魔の弁護人”と呼ばれる男の素顔『死刑弁護人』 [第176回]“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』 [第175回]やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』 [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! 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[第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! 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[第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学 (C) 2011 BY MODERN WOMAN LLC ALLRIGHTS RESERVED

マエアツ、宮川大輔……ハレンチ行動で好感度ダダ下がり中!?(9月下旬の人気記事)

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 9月下旬の人気記事を紹介する、日刊サイゾー人気記事ランキング。今クールは、あっちゃんの“尻出し号泣事件”に始まり、“局内SEX”宮川大輔の続報など、ちょっぴりハレンチな芸能人のみなさまの記事が人気を集めました。お仕事柄、ストレスがたまるのはわかりますが、ほどほどにしないとお茶の間に嫌われちゃうよ! それでは、早速ランキングをチェックしていきましょう。 第1位 「卒業したら事務所は守ってくれない!?」前田敦子の“痴態”が大放出された深い理由 俗にいう、‟マエアツ尻出し号泣事件”です。 第2位 福山雅治『ガリレオ』シリーズがまた映画化も、なぜか柴咲コウが降板……? 降板の原因は織田裕二? 第3位 「CMの打ち切りは決定済!?」テレビ局トイレで性行為の宮川大輔が失職危機 氷山の一角? 第4位 「ブサイクすぎるジャニーズ」Kis-My-Ft2の出演に見る“王道アイドル”の衰退 本格派アイドルが見たいよー。 第5位 “黒ジャニーズ”路線が定着せず……EXILEのHIROが上戸彩との結婚に躊躇した「理由」 でも、ちまたにはEXILEっぽい人増えたよね。 次点 「六本木の黒いウワサを避けて──!?」伊藤英明 オフは海外旅行三昧でスキャンダル逃れ中? 結局のところ、ヤバいの? 次々点 「キムタクは自主的に……」各テレビが強化し始めた芸能人の“タトゥー規制” オシャレだと思ってるのは本人だけだったりする。

で、コンビニTENGAってどこに売ってるんですか!?

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持ち歩いてても恥ずかしくないよ!
 秋。すっかり気温も下がり、オナニーのしやすい季節になった。  この夏を振り返れば、海へ山へ、プールへBBQへと赴いた思い出は何ひとつなく、もっとも心躍ったのがコンビニでTENGAを見つけた瞬間だった(※記事参照)ことは言うまでもない。  そうして手に入れた“コンビニTENGA”をデスクに飾って業務に励んでいたところ、ひとりの男が声をかけてきた。 「先輩、これ、なんすか……?」  見れば、若手社員のMくんだった。
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エロ本と同じ青テープが貼られてました
「いいところに目を付けたな、君は編集者として将来性がある」 「そういうのいいんで」 「えっ、何が?」 「何が? じゃなくて、これなんすか、って聞いてんだけど」 「タメ口……?」 「あー、あれだ。コンビニで買えるTENGAだ。これ、ちょっと開けますね」 「えっ」
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中身はこんな感じ
「えーTシャツまで入ってんじゃん、いいなー。これくださいよ」 「は? やだよバカ」 「じゃ、どこで売ってるか教えろよ!」 「ええー。すごい豹変……」 「●すぞ」 「あっ、あの、ここです。ここ、ここのポプラ」 IMG_0530.jpg 「あざす! ちょっと行ってきます!(満面の笑顔で)」  ……30分後。 「てめえ売ってねえじゃねえかよ、売り切れじゃねえかよ、あ? あ?」 「売り切れじゃしょうがないですよぅ……」 「あ? あ? あ?」 「あ、じゃあ、あの、TENGAさんのお問い合わせ窓口に、ぼく聞いてみますんで、すみません」 「早くしろよ包●野郎! ●●●に●すぞ!」  というわけで、コンビニTENGAを扱っているコンビニについては、TENGAのフリーダイヤル【お客様相談センター:0120-0721-38(フリーダイヤル) 平日10:00~19:00(土・日・祝は除く)】で教えてくれました。 <秋の空 昨日や鶴を 放ちたる>  そう詠んだのは江戸時代の俳人・与謝蕪村だったか。現代に生きる私たちも、コンビニTENGAで秋の空に元気な鶴を放ちたいものだ。 (文=編集部) ●TENGA公式サイト http://www.tenga.co.jp/

【清野とおるの、キ○チ○ガ○イと呼ばないで】第6話「謎の美人くだもの売り」

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『東京都北区赤羽』でおなじみの漫画家・清野とおるによる、悶絶必死の爆笑コラム。  ある土砂降りの、寒い冬の夜のこと。池袋西口の、飲み屋街から一歩外れた閑散とした通りを歩いていたところ、 「すみません」  後ろから、俺を呼び止める、か細い女性の声が聞こえた。振り向くとそこには……
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 20代前半と思しき、モデル体系の美女が立ち尽くしていた。合羽を着てはいるものの、フードは被っておらず、ずぶ濡れだった。手には大きなダンボールを持っている。  反射的に傘を差し出すと、女性は「ありがとうございます」と言って微笑んだ。
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 女性は、ダンボールの中一杯に詰まった巨峰を見せ、俺に勧めてきた。 「果物の行商をしておりまして、この巨峰を売り切らないと帰れないんです……」  時刻は22時半。こんな時間に若い女性がズブ濡れで巨峰を売り歩くなんて、奇妙で不審だとは思ったけど、 4yaoya.jpg  それ以上に「健気でかわいらしい」という気持ちが勝ってしまい、ひと房だけ購入してあげることにした。  きっと男なら誰だってこう思ってしまうはずだ。 5yaoya.jpg  巨峰が新鮮な上に無農薬で、いかに素晴らしいものかを説明してくれたけど、巨峰に1,000円は払う気にはならなかった。これから呑みに行くのに、持って歩くのも面倒だし。ってゆーか、そもそもブドウとかあんま好きじゃねえし。  丁重にお断りすると、女性は「そうですか。どうもありがとうございました」と微笑んで、その場を後にした。  気になったので尾行してみたところ、俺と同じ手口で酔っ払ったサラリーマンに声をかけ、巨峰を売ろうとしていた。 6yaoya.jpg  案の定、女性はおじさんたちに大人気で、一瞬で巨峰を売り切ったご様子だ。  やがて女性は、ダンボールをたたみ、フードを被ると、すごい早さで暗い住宅街を歩き始めた。 7yaoya.jpg  そして、怪しげな雑居ビルに姿を消していってしまった……。  一体あの女性は何者だったのだろうか? 霊や妖怪や狐や狸の類だったのではあるまいか?  この出来事を、Twitter的なものでツイート的な行為をしてみたところ、「僕も会ったことあります」「私も会ったことあります」「おいどんも会ったことあるでごんす」と、目撃者が多数現れた!  しかも、目撃場所は池袋だけでなく、上野、銀座、渋谷、錦糸町、立川、横浜と多岐に渡る。販売員は若い女性だけでなく、若い男性バージョンもあり。皆、果物の入ったダンボールをカートで引いたり、手持ちで売り歩いていており、不審なくらい爽やかで感じがよかったというのが主な共通点。  しかし、彼らの正体は謎のままである。 8yaoya.jpg  そしてつい最近の深夜0時過ぎ。わが町、北区赤羽で、カートに梨をワンサカ乗せた、爽やか好青年に声をかけられた。 「コレはまさしくアレの類だ!」  そう確信した俺は、一個300円の梨を思い切って購入し、彼の素性を尋ねてみた。 「僕、『D』という果物販売会社の者でして、採れたての新鮮な果物をこうして売り歩いているんです」  名刺やチラシの類は持ち合わせていないとのことだったので、彼と別れた直後、すぐさま自慢のアイフォーン4Sで『D』という会社名を検索してやった。去り行く彼が、まだ俺の視界にバッチリ収まっちゃってるくらい速攻で検索してやったともさ。  『D』は都内にいくつもの支店を持つ、果物訪問販売の会社のようだ。担当者が毎日市場へ出向き、その日一番の国産果物を仕入れ、20~30代中心の販売スタッフによってあちらこちらで手売りされてるらしい。  住宅街やオフィス街を中心に飛び込み訪問販売していて、売れ残ったものを駅周辺や道行く人たちに売りさばいているようだ。  値段が若干高めな上、一部の販売員の果物の説明がかなり適当だったりと、少しばかり胡散が臭く、一部では「マルチではないのか?」という声も上がってるようだが、販売の仕方は割と控えめだし、被害らしい被害も特に出ていない模様。販売地域を拡大して、今でもさまざまな街を練り歩いているようだ。  まあ、良くも悪くも、こういう謎めいた人たちがその辺にいるのって、胸が躍って楽しいですよね。街の雰囲気にもコクが出るし。話のネタにもなるし。 9yaoya.jpg  俺も彼らみたいに、ダンボールに売れ残った自分の単行本抱えていろんな街を売り歩いてみようかな。  そしたら通行人の同情を引いて、結構売れるかもしれないし。  まあ、売れないわな。てへぺろりーん(。・ε・。) (文・イラスト・写真=清野とおる) 1seinoprof.jpg ●せいの・とおる 1980年生まれ。東京都板橋区出身。地元・赤羽に生息する奇妙な人々を生き生きと描いた漫画『東京都北区赤羽』(Bbmfマガジン )が大ヒット中。 Twitter <https://twitter.com/seeeeeeeeeeeeno> ●【キ○チ○ガ○イと呼ばないで】INDEX 【第5話】「オモシロイ顔のおじさん」 【第4話】「ウンコおじさん」 【第3話】「恐怖!‟木曜日の男”」 【第2話】「鳥盗り物語」(後編) 【第2話】「鳥盗り物語」(前編) 【第1話】「ホモビデオの清野さん」

裏切り&結託は当たり前。今の政界にそっくり! 極道たちのバトルロワイアル『アウトレイジ ビヨンド』

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撃ってみろよ、コノヤローッ! 大友(ビートたけし)の怒声が響き渡る『アウトレイジ ビヨンド』。
いちばん悪い極悪人は誰だ?
 おのれの欲望に忠実に生きる男たちを主人公に、弱肉強食の世界を清々しいまでにクールに描いてみせた北野武監督のバイオレンスオペラ『アウトレイジ』(10)。東日本大震災の影響で撮影が延期された続編『アウトレイジ ビヨンド』だが、今回も北野監督らしい理数系的なシャープな演出が堪能できる。大企業が下請けの中小企業をいいようにコキ使う現代社会の写し鏡だった前作に対し、今回は裏社会を牛耳る二大勢力の間に新たに“第三極”が割って入り、勢力図を塗り替えていく。民主党と自民党の間で“橋下新党”が揺さぶりを掛ける日本の政界事情によく似た展開だ。  金と出世のために、裏切り、密会、結託を繰り返すヤクザたちの世界を描いた『アウトレイジ』シリーズの第2弾。前会長(北村総一朗)を亡き者にした加藤(三浦友和)が新会長に就任し、「山王会」は関東一円を支配する巨大暴力団としてますます勢力を強めていた。大友組の金庫番だったインテリヤクザの石原(加瀬亮)はそのビジネスセンスを加藤に買われて、山王会の若頭に大出世を遂げている。年功序列制から能力評価に変わったことに、古参の幹部たち(中尾彬、名高達郎、光石研)は不満タラタラ。一方、山王会が政界にまでちょっかい出すようになってきたことから、警察側はクギを刺すことになった。関西の老舗暴力団「花菱会」と衝突させ、両者を消耗させることをマル暴刑事の片岡(小日向文世)は画策する。2大勢力の間に入って火種をまき散らすジョーカー役に選ばれたのが、片岡のとっておきの切り札・大友(ビートたけし)だった。前作のラスト、獄中で刺殺されたはずの大友はどっこい生きていたという、人を喰った序盤となっている。
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山王会の若頭に異例の大出世を果たした石原(加瀬亮)だけど、キレやすい性格は相変わらず。
カルシウムが足りないよ。
 獄中の大友は仮釈放されたものの、前作で山王会に逆らった大友組は全滅している。行き場のない大友を迎えるのが、因縁のあった元村瀬組の木村(中野英雄)。大友に斬りつけられたカッターナイフの傷跡が顔に残る木村は、村瀬組を再興するために力を貸してほしいと大友に頭を下げる。組を失った木村は、死んだ舎弟の息子とその仲間(新井浩文、桐谷健太)の世話を焼く律義者だ。一度は隠遁生活を考えた大友だが、まだ老け込むには早すぎる。こうして木村が経営するバッティングセンターを根城にして、大友&木村連合軍が結成される。山王会、花菱会に比べるとあまりにも弱小グループだが、少人数ゆえの機動力を活かして裏社会でのキャスティングボートを握っていく。  たけし発案の斬新なバイオレンスシーンが目に焼き付く『アウトレイジ』シリーズ。残酷シーンの連続のような印象があるが、たけし演じる大友という男は実はガキ大将がそのまま大人になっただけに過ぎない。前作では木村の顔をカッターナイフで斬りつけ、サウナですっぽんぽん状態の村瀬(石橋蓮司)に襲いかかった。大友の振るう暴力の数々は、子どもの悪ふざけの延長だった。大使官邸で闇カジノを開いたのも、お金儲け目的というより、単に面白そうだったからやってみただけ。そもそも大友組を作ったのも、たけし軍団と同じで大勢でワイワイと騒ぎたかったからだろう。大友はただ、毎日を面白おかしく過ごすことができればよかった。お金や出世にはまるで興味がない。今回もバッティングセンターに何となく居着いてしまう姿に、大友の少年性を感じさせる。
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こちら「花菱会」の幹部たち(西田敏行、塩見三省)。会長が替わってから、
山王会のお歳暮がしょぼくなったことに腹を立てている。
 ところが現実社会は、無垢なるものに容赦ない。前作で大友が始めた闇カジノは膨大な収益を上げたことから親会社の山王会が横取りしてしまった。巨大な組織となった山王会は、その組織の巨大さを維持するために貪欲にエネルギーを欲するようになっていた。巨大組織を維持するためのエネルギーは、もちろんお金だ。山王会はもはやアウトロー集団ではなく、ひたすらお金儲けに走る集金システムと化してしまった。消費者や社員のことは考えず、利潤を上げることのみにこだわる多国籍企業と何ら変わらない。任侠の世界に憧れて、極道になっただろう大友の居場所はもうどこにもない。堅気の人間にはなれず、サラリーマン社会に背を向けてヤクザになったはずなのに。出所した大友はこう叫ぶしかない。「何だ、バカヤローッ!!」。  出所後は足を洗うつもりだった大友を、木村に引き合わせて再び裏社会に引っ張り込んだ張本人は刑事の片岡。以前は大友経由で裏社会の情報を仕入れていた片岡は、今では山王会に足繁く通うようになり、ミイラ獲りがすっかりミイラ状態。片岡本人にその自覚がないから、なおタチが悪い。学生時代からの片岡との腐れ縁で、大友は裏社会にまたズブズブと足を踏み入れるはめに陥っていく。裏切りの連続から深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズと比べられることが多い北野監督の『アウトレイジ』シリーズだが、今回はどちらかというと『あなたへ』(12)で共演した高倉健の往年の代表作『昭和残侠伝』シリーズを彷彿させる。ヤクザ渡世から抜け出そうとするも、しがらみに絡めとられてしまう経緯が切ない。でも、そこは北野監督。ウェットには流れず、ドライな演出でドラマをぐいぐい押し進めていく。  今まで続編を手掛けなかった北野監督だが、コンペ部門に選出された今年のベネチア映画祭でパート3の可能性があることをほのめかすなど、シリーズ化に強い手応えを感じている。そして今回、続編を撮った理由がラストで明かされる。いちばん悪いヤツは一体誰なのか? 北野監督はその点をきっちり指弾する。前作で二枚舌を得意とした池元(國村準)を惨殺したように、いちばん許せないヤツに向かって、大友の銃口が火を噴く。ガキ大将がそのまま大人になった大友にとって、そいつの言動だけはどうしても許せなかったのだ。 (文=長野辰次) outrage_4.jpg 『アウトレイジ ビヨンド』 監督・脚本・編集/北野武 音楽/鈴木慶一 撮影/柳島克己 出演/ビートたけし、西田敏行、三浦友和、加瀬亮、中野英雄、松重豊、小日向文世、高橋克典、桐谷健太、新井浩文、塩見三省、中尾彬、神山繁 R15 配給/ワーナー・ブラザーズ映画、オフィス北野 10月6日(土)より新宿バルト9&新宿ピカデリーほか全国ロードショー  (c)2012「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会  <http://wwws.warnerbros.co.jp> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第189回] これが全米を熱狂させた“USA版バトル・ロワイアル”! 殺人リアリティーショー『ハンガー・ゲーム』 [第188回]行き詰まった人生の扉を開く鍵は“銭湯”にあり? 内田けんじ監督のオリジナル作『鍵泥棒のメソッド』 [第187回]大家族の伝統料理から超手抜きレシピまで勢ぞろい! 台所から見えてくる中東の家庭事情『イラン式料理本』 [第186回]“世界的な絶滅危惧種”である独裁者に愛の手を!? 政治ネタ&下ネタ満載コメディ『ディクテーター』 [第185回]障害者の性処理も介護の重圧も、すべて笑い飛ばせ! 男たちのバリアフリーな友情ドラマ『最強のふたり』 [第184回]人類を生み出した“創造主”との遭遇!! リドリー・スコットが物語るSF神話『プロメテウス』 [第183回]“校内格差社会”に出現した異分子(ゾンビ)たち! 青春のカタルシス『桐島、部活やめるってよ』 [第182回]カメラマンは法を犯してもかまわない!? 国家の暗部を暴く男の情念『ニッポンの噓』 [第181回]“学校”という名の密室ではびこる児童虐待の事実! 子どもたちは教師を訴える『トガニ 幼き瞳の告発』 [第180回]“神様”との出会いと別れ、そして旅からの帰還  ドキュメンタリー『アニメ師・杉井ギサブロー』 [第179回]親友=お金を貸してくれる、女友達=SEXさせてくれる!? 品性お下劣男の青春『苦役列車』 [第178回]“沢尻エリカ”という名のアトラクションムービー『ヘルタースケルター』が描く無常の世界 [第177回]毒カレー、オウム真理教、光市母子殺害……“悪魔の弁護人”と呼ばれる男の素顔『死刑弁護人』 [第176回]“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』 [第175回]やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』 [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! 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