しゃべりと笑いと音楽があふれる“少数派”メディアの魅力を再発掘! ラジオ好きライターが贈る、必聴ラジオコラム。 タモリほど個性が強いのに、適応力のある人間はいない。基本的に相反するこの2つの要素がタモリの中で平然と両立しているのは、実はタモリの持つ個性が、一般にいわれる個性とは基本的に異なるからだ。彼の個の中心は、常に空洞化されている。そのドーナツの中心にある穴こそが、タモリである。 『笑っていいとも!』(フジテレビ系)終了を電撃発表した翌日から、タモリが5年ぶりのラジオ・パーソナリティーを務める番組が3夜連続で放送された。ニッポン放送開局60周年記念番組『われらラジオ世代』(ニッポン放送 10/23水曜~10/25金曜21:00~21:50)という大仰な名を持つその番組は、しかしいかにもタモリらしい密室的な「個」を感じさせる内容だった。 この番組は「ラジオの現在、過去、未来を語る」というコンセプトで、それぞれの曜日に久保ミツロウ&能町みね子、笑福亭鶴瓶、ももいろクローバーZをゲストに迎えてトークを展開する、というものだが、タモリにかかれば核となるコンセプトなどもはや関係がない。そこにあるのは、ゲストとの対話によって導き出される秀逸な「こぼれ話」の集積であり、中心ではなく辺縁にこそ、彼の面白さの本質がある。 番組は生ではなく事前収録されたものであり、ゆえに『いいとも』終了の件には一切触れていない。だがそんな目先のこと以上に、タモリの過去、現在、未来を貫く本質的な哲学が、なんでもない周辺から、どうでもいいようなふりをして語られる。 初日の放送では、久保&能町を相手に、タモリ流の摩訶不思議な人間関係学が披露された。タモリが『オールナイトニッポン』をやっていた頃の話になると、「いろんな悪口ばっかり言ってました」と懐かしみ、「悪口言ってると(相手が番組に)出てきてくれる」「出てきたら結構面白い。いまだにつき合いありますけどね」と意外な場所へと着地する。今でいうと、完全にドランクドラゴン鈴木拓的な「炎上ビジネス」だが、敵(のちに味方)は近田春夫や井上陽水といった売れっ子の猛者たちである。なんと覚悟の据わったイタズラ心だろうか。 さらに話は、「悪口言って、随分得したことがあるんですよ」と続き、「ワインが嫌い」だと言えば、食通の小説家が「最高級のものを飲ましてやる!」と息巻いてヨーロッパからワインを持ってきて飲ませてくれ、フランス料理もブランデーもその方式で最高級のものを味わえたという。その話を聴いた能町が「『まんじゅう怖い』みたいですね」といったのはまさに言い得て妙だが、結果としてそこからワイン好きになるのではなく、「一番いいのを飲んだからワインはもう(飲まなくて)いい」と、最終的に「無に帰す」のがいかにもタモリらしい。 2日目の鶴瓶との対話では、さらに人間タモリの本質に迫る言葉が不意に登場する。30歳で芸能界入りしたタモリは、歳下の鶴瓶や、さらには明石家さんまよりも芸歴では後輩であるからややこしい、という話の流れから、「(歳下の先輩に対し)どこでなし崩しに先輩面をするかが、この世界に入ったときの第一命題だった」と、タモリの口から思わぬ告白がこぼれた。鶴瓶はその言葉がにわかには信じられぬようで、「悩んでたん?」と何度も確認していたが、そこで「悩んでた風を出したら、ますます乗り遅れるから」と答えるタモリは、やはり一枚上手だ。その後、「入って4~5年目で『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)の審査員やってた」という今では考えられない話に至り、いよいよタモリの本質を突く、決定的なフレーズが本人の口から飛び出す。 「俺の本当の芸は『なりすまし』ってやつだよね」 確かに、タモリの持ち芸である4カ国語麻雀もインチキ神父もイグアナのものまねも、紛うかたなき「なりすまし」の極致である。その能力は、赤塚不二夫や山下洋輔や筒井康隆など、彼を東京に連れ出した才人たちからの無茶ぶりに即応することで鍛え上げられたものであると同時に、そういう稀有な力を持っているからこそ、彼は東京に引っ張り出されたともいえる。タモリはいまだに、タクシーの運転手相手に医者になりすますなどして楽しんでいるという。新聞を読むのも、あらゆる職業になりすますためだと。 あるいは『いいとも』司会者という30年以上にわたる「昼の顔」も、長すぎる「なりすまし」だったのかもしれない。そう考えたのは、番組最終日のももクロを迎えた回では、最初の2日間と違い、彼の個性よりも「昼の顔」的な適応力が前面に出ていたからだ。 終始ももクロのペースで進められたこの日の会話は、タモリの話を心待ちにしていた人間にとっては、正直物足りないものだった。タモリは前日の鶴瓶との会話の中で、ラジオの魅力について、「過剰に盛り込むことはいらない」「自分の外に出すもんじゃなくて、心の中で自問自答してるようなことを乗せたほうが面白い」と語っていた。最終日のにぎやかな放送はそれとは真逆の方向であるように聞こえたが、ここであえて自分を出さず、司会者の役割に徹するその適応力こそが、タモリを密室芸人から「昼の顔」に押し上げたということもできる。そしてその適応力とは、つまり「なりすまし力」のことでもあって、それは間違いなく彼の個性の本質でもある。タモリの中で、個性と適応力は一体化している。 タモリはこの週、同局の昼ワイド番組『上柳昌彦 ごごばん!』で旧知の上柳アナからインタビューを受け、「やる気のある者は去れ!」という自らの言葉に続けて、こんなことを言っていた。 「やる気のある奴っていうのはね、中心しか見てないんだよね。お笑いってのは、だいたい周辺から面白いものが始まっていく。やる気のある奴はそれを見てない」 ちなみにその昔、『オールナイトニッポン』でタモリはこう言った。 「思想をまとってくる者ほど愚劣な者はない。一番悪い奴は、最初に思想をまとってやってくる」 つまりこれは、「思想を持たないという思想」である。自らの中心を持たないという思想である。彼の個性に中心はなく、周辺しか存在しない。その個は巧妙にドーナツ化されている。彼はその中心の穴から周辺を眺め、面白いものを常に探している。そしてドーナツは、穴が開いているからおいしい。その真ん中の穴こそが、タモリなのである。 (文=井上智公<http://arsenal4.blog65.fc2.com/>) ◆「逆にラジオ」過去記事はこちらから『タモリ』(Sony Music Direct)
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「人間が近づけば即死──」特定秘密保護法が隠そうとする、福島第一原発4号機の“不都合な真実”
今週の注目記事 ・「専門家が本気で心配する福島第一原発4号機の燃料棒溶融」 (「週刊朝日」11月8日号) ・「目からウロコの大胆提言! サラリーマンの給料に消費税を」 (「週刊ポスト」11月8・15日号) ・「金正日は1兆円で日本に謝罪した」 (「週刊文春」10月31日号) ・「TBS大株主『みのもんた』反撃の倍返し」 (「週刊新潮」10月31日号) ・「本誌が勝訴! ユニクロはやっぱり『ブラック企業』」 (「週刊文春」10月31日号) ・「特定秘密保護法の“ずさんさ”」 (「週刊朝日」11月8日号) 今週の唸らせるタイトル ・「『松本人志』監督『R100』 上映館を埋め尽くす閑古鳥の大群」 (「週刊新潮」10月31日号) 今週はポストが合併号で420円。現代は通常号で400円。朝日もついに400円になってしまった。増大号とうたってあるが、それほど厚くはない。新潮370円、文春は秋の特大号とうたって390円。買ってお得なのはどれか? 読者のシビアな選択眼に耐えられるのはどれか? 来年の消費税アップの時が、週刊誌存亡の正念場になるだろう。 さて、新潮は名編集者の斎藤十一氏が作り上げたものだが、当時からタイトルのうまさは群を抜いていた。その伝統はまだ残っていて、時々だが、うまい! と感心させられるタイトルがある。 今週のワイドの中の1本、お笑い芸人の松本人志が作った映画『R100』の記事に付いたタイトルが「『松本人志』監督『R100』 上映館を埋め尽くす閑古鳥の大群」。中身を読まなくても、タイトルがすべてを表している。天晴れ! である。 今週はどの記事もドングリの背比べだから、順位を付けるに至らなかった。 まずは朝日の特定秘密保護法の記事だが、他誌がこの問題を扱っていないのは、どうしたのだろう。死ぬまでセックスなどと囃し立てているうちに、淫乱ボケにでもなってしまったのだろうか? それとも、自分たちの雑誌は国の機密などに接触することも関心もないから「他人事」だと考えているからだろうか? 厳しい言い方になるが、そんな雑誌は存在価値がない。 朝日もタイトルからして腰が引けていて、読んでいて腹が立つ。特定秘密保護法は“ずさん”なのではなく、危険すぎる法律なのだ。文中で、情報公開に詳しい識者がこう指摘している。 「行政機関の長による指定にチェックが利かない点や、5年ごとに特定秘密の指定期間が更新可能で、30年を超える場合は内閣の承認があれば延長でき、半永久的に情報公開されない可能性がある」 ここで、上智大学の田島泰彦教授や立教大学の服部孝章教授らと私たちが訴えている声明文の1部を引用しておく。 「(中略)広範な国家秘密をお上(官僚)の一存で秘密に指定し、その漏えいや取得をはじめさまざまな行為を犯罪として厳罰に処し、適性評価制度で秘密の管理も厳格にするというまさに『まず秘密ありき』の露骨な法案で、市民の知る権利や情報公開の理念に真っ向から反し、情報公開を広げる世界の潮流にも逆行する挑戦に他ならない。 言論、表現活動に携わり、関わる私たちにとって、取材・報道の自由や創作の自由も含む表現の自由は譲り渡すことのできない貴重な権利であり、市民の知る権利を充足する重要な手段でもある。法案は重要な国家秘密を取り扱う情報源たる公務員等の漏えいに重罰を科し、適性評価制度による選別で内部告発を狭めることによって情報源の萎縮を促進し、取材者が入手できるはずの有用な情報を細らせ、枯渇させることになる(中略)」 まさに、安倍首相がもくろむ「平成の治安維持法」である。ここでメディアが一斉に声を上げないと安倍や官僚たちの思うままになり、特定の名が付けば外交、軍事だけではなく、原発情報なども国民は手にすることができなくなるのだ。声を大にして言いたい。危機感をかき立てろ! お次は文春。ユニクロから訴えられていた文春だが、裁判所が「ブラック企業」と認定してくれたと報じている。 「『原告らのその余の請求をいずれも棄却する』10月18日、東京地裁の法廷に、土田昭彦裁判長の声が響き渡った。ユニクロ側が文藝春秋を訴えた裁判の判決で、本誌が指摘した『過剰労働』について、裁判所は全面的に事実と認定したのだ」(文春) ユニクロ側が問題視したのは、文春(2010年5月6日/13日号)で、国内店舗や中国の工場における過酷な労働環境をレポートした、次のような記述についてである。 <現役店長はこう説明する。(中略)『けれど、仕事量が減ったわけでありませんから、11月や12月の繁忙期となると、今でも月300時間を超えています。そんな時は、タイムカードを先に押して、いったん退社したことにしてから働いています。本部ですか? 薄々は知っているんじゃないですか」>(『ユニクロ帝国の光と影』(文藝春秋・横田増生著より) これを読んだユニクロ柳井正社長の怒りは、すさまじかったようだ。 11年6月6日に行われた部長会議では、文春を訴える旨の報告の後、柳井社長から次のような話があったと文春は書いている。 「高収益を上げ、高成長を遂げているユニクロは、低価格と高品質を両立した商品を実現するために、店舗の社員やお取引先の労働者から搾取している、という内容が書籍に書かれている。しかし、我々は、そのような恥ずべき行為は決してしておらず、万が一、不適切な労働実態などあれば、真摯にそれを正していく企業である」(同社「部長会議ニュース」より) 裁判所は柳井社長やユニクロ側の請求をすべて棄却した。判決のポイントになったのはこうだ。 「判決文では、ユニクロ国内店舗の労働環境について<出退勤管理のシステム上、サービス残業を行うことは物理的には可能であり(中略)、現にサービス残業が行われた事例が発覚していることが認められる><(記事の)重要な部分については真実である>として、著者の横田氏が店長の証言にもとづいて報じた長時間労働の実態を事実と認定している。中国の現地工場における長時間残業などについては<(記事の)重要な部分が真実であると判断したことには相当の理由がある>と内容の正当性が認められている」 10月10日にアパレル業界としては初めて年間売上高が1兆円を突破したユニクロだが、ブラック企業という“汚名”は、まだまだ消えないようである。 新潮のみのもんたの記事はなかなか面白かったのだが、26日にみのが記者会見をして、報道番組から降板することを発表してしまったため、ここに書いてあるような「徹底抗戦」はしないようだ。だが、他誌より内容的に優れているので紹介してみよう。 「みのさんが9月30日までにTBSホールディングスの株を3万株買い増しし、個人筆頭株主に躍り出たというのです。(中略)そもそも、みのさんは、うちの株を5~6万株持つ大株主でした。TBSでは、2005年に始まった楽天による株式の買収騒動の際に、局と縁の深い多数の資産家に安定株主として株を持ってもらう防衛策をとりました。この時、みのさんにも頭を下げて、買っていただいたんです」 このコメントはTBSのある中堅社員である。個人ではかなりの株数になるのだが、それでも全体でいえば少数派である。みのはどんな戦略を考えているのだろうか。同社員がこう続ける。 「これが編成局や報道局の一部の幹部にも知らされ、衝撃が走ったといいます。実際には7~8万株持ったとしても、発行済み株式の0.1%にも満たないし、議決権などを行使できるような影響力はありません。しかし、大株主の一人であることには違いなく、本人にすれば、それを背景に“自分から降板するつもりはない”と徹底抗戦の意思表明を行ったのではないでしょうか。少なくとも、この話を聞いた幹部らはそう受けとめたようです。(中略)あるいは、株購入によって、“楽天騒動の際に協力したことを、よもやお忘れではないでしょうね”と井上弘会長、石原俊爾社長ら経営幹部に訴え、恩義を思い出してもらおうという戦略かもしれません」 彼の知人は「本人は、やはりTBSの『朝ズバッ!』に復帰したい一念ですよ」と語っている。 だが、そのTBSでは、彼の知らないところで重要な決定が下されていたというのである。 「実は、各部署の法令遵守事案を統括するコンプライアンス室で、みのさんの処遇をめぐる問題が議題にかけられていたのです。 こう内情を明かすのはTBSの幹部である。 『それがつい最近、<みのもんた氏の復帰は不都合で、困難である>との結論に達したのです。もちろんこれが即、社全体の決定にはなりませんが、間もなく役員会に上げられる。これを基に、井上会長や石原社長がみのさんと話し合うことになるでしょう』」 最高年棒は一時27億円を超えたと豪語するみのだが、親から引き継いだ水道業「ニッコク」の業績が下がりっぱなしで、7億円ともいわれるギャラがなくなるとそちらへの影響が出るようだし、鎌倉の大豪邸の維持費も毎年数千万円になるというから、そう簡単に「全部辞めます」とは言えないようである。バラエティ番組には出るそうだが、彼が望んでいるように、報道番組から「戻ってきて」という声はかからないと思う。 カネを持てば持っただけ生活が大きくなり、それを縮小するのはなかなか難しい。大変ですな、みのさんは。 文春は小泉純一郎総理(当時)が訪朝した2002年の日朝首脳会談で、北朝鮮の要求に従って1兆円の支援をしていたという張真晟(チャン・ジンソン)氏の証言を取り上げている。 これは同社が出した本のパブ記事ではあるが、これが本当だったら小泉訪朝とはなんだったのかが問われることになる。 「『拉致被害者の横田めぐみさんは2003年に生きていた可能性がある』『故金正日総書記は2002年の日朝首脳会談で、日本が提案した114億ドル(当時のレートで約1兆4000億円)の支援がほしくて、独断で拉致を認めて謝罪した』。こんな衝撃的な内容が書かれた本が出版された。タイトルは『金王朝『御用詩人』の告白──わが謀略の日々』(文藝春秋)。著者は北朝鮮の対南工作機関である『統一戦線事業部(統戦部)』に体制宣伝の詩人として勤務し、その後脱北した張真晟氏だ」(文春) 張氏は、首脳会談後に北朝鮮外務省が作成した参考資料に目を通したという。 「張氏は、記憶をたどって、この参考資料の内容を、著書の中で再現している。それによれば、北朝鮮側は日本による植民地支配の賠償金として400億ドルを提示したが、日本側から『日本が建設した発電所や製鉄所、鉄道などの使用料を払え』と逆襲される。北朝鮮側は、外貨による現金支援を求めるが、日本側は、『独裁国家の支援には、北朝鮮の核開発への支援とみなされ、米国は検証を求めて介入してくる』と、北朝鮮側が最も嫌がるポイントを突いてきた。最終的には日本政府から114億ドルの物的支援を受けることで何とか合意した。政府開発援助(ODA)式支援と推定される」(同) 首脳会談の午前の会議が終了し、休憩時間中に、北朝鮮側が拉致に対する公開謝罪を拒否したため、小泉代表団の中から「帰ろう」という声が上がり、金正日総書記があわてて、独断で謝罪することを決めたのだという。 114億ドルという数字については、当然ながら、そんな数字を提示してはいないと、当時の関係者たちは揃って否定している。 「しかし張氏は、『北朝鮮の政権中枢にいた私以外の脱北者も、この数字を聞いていた』と自信をみせた。また、日本政府の拉致問題担当者の中にも、『その数字を聞いたことがある』という複数の証言があり、信憑性は高い」(同) 金正日総書記の謝罪と拉致被害者の帰国がカネで買われていたとすれば、小泉元総理は国民に経緯を説明する義務がある。だが、ODA式支援だとすれば、どうやってそのカネを捻出したのだろうか。1兆円以上のカネの出を完全に秘密にしておくことなどできるはずないと思うのだが。 ポストはどえらいページを割いて銀行についての大特集を組んでいるが、少し前に確か現代がやっていたが、それと五十歩百歩の記事。大手銀行は3行しかないのだし、庶民の言うことなどハナから聞く気などないのだから、読む気が失せる。 それよりも、サラリーマンの給料に消費税をという記事のほうがへぇーッと思わせるものがあった。そうすれば、サラリーマンも会社も損をしないというのである。 そうなると、月収約47万円のサラリーマンの収入や支出がどう変わるかをポストが試算した。 「会社から支払われる給料に消費税5%=2万3500円が上乗せされるため、月収は約49万3500円に増える。所得税や社会保険料は同じ。また、消費支出も変わらないから、『家計黒字』は約10万3500円に増える。『でも、その貯蓄から自分で消費税を税務署に納めなくちゃならないでしょ?』という疑問は、その通り。しかし、会社から給料に加算される消費税額より、サラリーマンが納付する税額の方が少なくて済む」 税法学者で現役の税理士でもある浦野広明立正大学客員教授は、こう指摘している。 「サラリーマンは労働力を商品として売っているので、消費税が課税される場合、スーツや靴など直接仕事に使うものだけでなく、妻や子供など扶養者の養育費や生活費、住宅購入費も仕入れとして考えるべきです」 ポストによれば、消費支出すべてを仕入れとすれば、そこで支払った消費税負担分1万3,300円が控除され、追加で納めなければならない消費税額は、2万3,500円-1万3,300円=1万200円となる。それを納税しても家計の黒字は、現在より1万3,300円アップするというのだ。 安倍首相、考えてみたらいかがか。 すでに国民の記憶から薄れていっている福島第一原発事故だが、これを風化させてはならじと、朝日が一番心配される4号機について巻頭で特集を組んでいる。 現代も「東電破綻」という巻頭特集を組んでいるが、こちらは東電が破綻したときの経済的な観点からの記事なので、朝日のほうを紹介したい。 これを読んで震えがくるのは、寒くなってきた季節のせいばかりではない。じっくり読んで欲しい記事である。 早ければ11月8日にも始まる、福島第一原発4号機の使用済み燃料プールの燃料棒の取り出し作業だが、ひとつ間違えば大変なことになるのだ。 「東日本大震災当時、停止していた4号機では、1~3号機と違いメルトダウンは起きていない。その代わり、水素爆発でグチャグチャに吹き飛んだ建屋の上部にある燃料プールに、1533体もの燃料棒が残されたままになっている」(朝日)のである。 事故前に燃料棒の移動に携わっていた元大手原発メーカー社員が語っている。 「作業には熟練の技術が必要。まず水中で機器を操作し燃料棒を数十体ずつキャスクという金属容器に詰める。燃料棒をちょっとでも水から露出させたら、作業員は深刻な被曝を強いられる。水中で落下させて燃料を覆う金属の管が破れても汚染は深刻。フロアの全員退避は避けられない」 廃炉工程を検証している「プラント技術者の会」の川井康郎氏もこう指摘する。 「キャスクが落下して破損し、中の燃料が露出したら、大量の放射性物質が放出される。作業員はもう近づけません。燃料棒はまだ崩壊熱を帯びており、本来は常に冷やし続けなければならない。長時間放置すると燃料が溶融する可能性があります。こうなると燃料の回収は困難になり、作業全体が頓挫してしまう」 むき出しになった燃料は、「人間が近づけば即死」(原子力工学の専門家)という凄まじい放射線量である。こうなると、1~3号機のメルトダウンに匹敵する深刻な危機に直面するという。 まだまだ危機など去っていないし、汚染水すらコントロールされていないのだ。それなのに安倍首相と東電は柏崎刈羽原発を再稼働しようと企んでいるのである。 再稼働のキーマンであるv新潟県知事もインタビューで「東電まかせではまた事故は起こる」と言いきっている。 泉田知事が9月25日に東電の広瀬社長と会談した翌日、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に向けた安全審査を原子力規制委に申請することを認めたため、「知事は心変わりしたのではないか」と受け取った人もいるという問いに、「心変わりではなく、むしろ安全性をいかに高めるかを考えた上での決断です」と答えている。 さらに今の東電は、知事の要求に応えることができるでしょうか、という問いに対しては、 「最大の問題は、東電がお金の問題で首が回らなくなって、きちんとした判断ができなくなっていることです。事故処理のために9600億円の引当金を積んでおきながら、1000億円がもったいないと言って遮水壁を造らなかった。事故処理の費用を電気料金に上乗せして返すという今の形は、もう限界にきています」 東電の破綻処理もあり得るかという質問には、 「日本航空だって破綻処理をして、経営陣が責任をとった上でOBの年金もカットして、V字回復したわけです。東電は負担をすべて電気料金にかぶせていますが、株主や金融機関の責任はゼロでいいんでしょうか。破綻処理をしても電気料金という日銭が入ってくるんですから電気供給は止まりませんし、債権の見直しをすればすぐに料金を値上げする必要はありません」 しかし、原子力規制委の田中俊一委員長に面会を申込んでいるのに、会ってくれないそうですねという問いには、 「規制委に国民の命と安全と財産を本気で守るつもりがあるのか疑問です。守っているのは、電力会社の財産ではないか。規制委には地方自治に明るい人が一人もおらず、断層のチームと原発設備のチームしかいない。新潟県は中越沖地震の時に原発事故との複合災害を身をもって体験しています」 そして最後にこう言っている。 「国民の皆さんは正しい情報さえ与えられれば、的確な判断ができるんです。情報を与えないで誘導するのでは、また同じ過ちを繰り返してしまう。まさに今、日本の民主主義の熟度が試されていると思います」 そうなのだ! 今の安倍自民党政権が目指しているのは、国民に知らせたくない情報をすべて隠すことができる国にしようということなのだ。 国民の多くが原発事故を忘れたわけではない。メディアが報じないから記憶が薄れてしまっているのだ。これだけの大事故が3年も経たずに風化していくとしたら、メディアも日本という国も最低だと、私は考える。 (文=元木昌彦) ●もとき・まさひこ 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。「週刊朝日」11月8日号
「人間が近づけば即死──」特定秘密保護法が隠そうとする、福島第一原発4号機の“不都合な真実”
今週の注目記事 ・「専門家が本気で心配する福島第一原発4号機の燃料棒溶融」 (「週刊朝日」11月8日号) ・「目からウロコの大胆提言! サラリーマンの給料に消費税を」 (「週刊ポスト」11月8・15日号) ・「金正日は1兆円で日本に謝罪した」 (「週刊文春」10月31日号) ・「TBS大株主『みのもんた』反撃の倍返し」 (「週刊新潮」10月31日号) ・「本誌が勝訴! ユニクロはやっぱり『ブラック企業』」 (「週刊文春」10月31日号) ・「特定秘密保護法の“ずさんさ”」 (「週刊朝日」11月8日号) 今週の唸らせるタイトル ・「『松本人志』監督『R100』 上映館を埋め尽くす閑古鳥の大群」 (「週刊新潮」10月31日号) 今週はポストが合併号で420円。現代は通常号で400円。朝日もついに400円になってしまった。増大号とうたってあるが、それほど厚くはない。新潮370円、文春は秋の特大号とうたって390円。買ってお得なのはどれか? 読者のシビアな選択眼に耐えられるのはどれか? 来年の消費税アップの時が、週刊誌存亡の正念場になるだろう。 さて、新潮は名編集者の斎藤十一氏が作り上げたものだが、当時からタイトルのうまさは群を抜いていた。その伝統はまだ残っていて、時々だが、うまい! と感心させられるタイトルがある。 今週のワイドの中の1本、お笑い芸人の松本人志が作った映画『R100』の記事に付いたタイトルが「『松本人志』監督『R100』 上映館を埋め尽くす閑古鳥の大群」。中身を読まなくても、タイトルがすべてを表している。天晴れ! である。 今週はどの記事もドングリの背比べだから、順位を付けるに至らなかった。 まずは朝日の特定秘密保護法の記事だが、他誌がこの問題を扱っていないのは、どうしたのだろう。死ぬまでセックスなどと囃し立てているうちに、淫乱ボケにでもなってしまったのだろうか? それとも、自分たちの雑誌は国の機密などに接触することも関心もないから「他人事」だと考えているからだろうか? 厳しい言い方になるが、そんな雑誌は存在価値がない。 朝日もタイトルからして腰が引けていて、読んでいて腹が立つ。特定秘密保護法は“ずさん”なのではなく、危険すぎる法律なのだ。文中で、情報公開に詳しい識者がこう指摘している。 「行政機関の長による指定にチェックが利かない点や、5年ごとに特定秘密の指定期間が更新可能で、30年を超える場合は内閣の承認があれば延長でき、半永久的に情報公開されない可能性がある」 ここで、上智大学の田島泰彦教授や立教大学の服部孝章教授らと私たちが訴えている声明文の1部を引用しておく。 「(中略)広範な国家秘密をお上(官僚)の一存で秘密に指定し、その漏えいや取得をはじめさまざまな行為を犯罪として厳罰に処し、適性評価制度で秘密の管理も厳格にするというまさに『まず秘密ありき』の露骨な法案で、市民の知る権利や情報公開の理念に真っ向から反し、情報公開を広げる世界の潮流にも逆行する挑戦に他ならない。 言論、表現活動に携わり、関わる私たちにとって、取材・報道の自由や創作の自由も含む表現の自由は譲り渡すことのできない貴重な権利であり、市民の知る権利を充足する重要な手段でもある。法案は重要な国家秘密を取り扱う情報源たる公務員等の漏えいに重罰を科し、適性評価制度による選別で内部告発を狭めることによって情報源の萎縮を促進し、取材者が入手できるはずの有用な情報を細らせ、枯渇させることになる(中略)」 まさに、安倍首相がもくろむ「平成の治安維持法」である。ここでメディアが一斉に声を上げないと安倍や官僚たちの思うままになり、特定の名が付けば外交、軍事だけではなく、原発情報なども国民は手にすることができなくなるのだ。声を大にして言いたい。危機感をかき立てろ! お次は文春。ユニクロから訴えられていた文春だが、裁判所が「ブラック企業」と認定してくれたと報じている。 「『原告らのその余の請求をいずれも棄却する』10月18日、東京地裁の法廷に、土田昭彦裁判長の声が響き渡った。ユニクロ側が文藝春秋を訴えた裁判の判決で、本誌が指摘した『過剰労働』について、裁判所は全面的に事実と認定したのだ」(文春) ユニクロ側が問題視したのは、文春(2010年5月6日/13日号)で、国内店舗や中国の工場における過酷な労働環境をレポートした、次のような記述についてである。 <現役店長はこう説明する。(中略)『けれど、仕事量が減ったわけでありませんから、11月や12月の繁忙期となると、今でも月300時間を超えています。そんな時は、タイムカードを先に押して、いったん退社したことにしてから働いています。本部ですか? 薄々は知っているんじゃないですか」>(『ユニクロ帝国の光と影』(文藝春秋・横田増生著より) これを読んだユニクロ柳井正社長の怒りは、すさまじかったようだ。 11年6月6日に行われた部長会議では、文春を訴える旨の報告の後、柳井社長から次のような話があったと文春は書いている。 「高収益を上げ、高成長を遂げているユニクロは、低価格と高品質を両立した商品を実現するために、店舗の社員やお取引先の労働者から搾取している、という内容が書籍に書かれている。しかし、我々は、そのような恥ずべき行為は決してしておらず、万が一、不適切な労働実態などあれば、真摯にそれを正していく企業である」(同社「部長会議ニュース」より) 裁判所は柳井社長やユニクロ側の請求をすべて棄却した。判決のポイントになったのはこうだ。 「判決文では、ユニクロ国内店舗の労働環境について<出退勤管理のシステム上、サービス残業を行うことは物理的には可能であり(中略)、現にサービス残業が行われた事例が発覚していることが認められる><(記事の)重要な部分については真実である>として、著者の横田氏が店長の証言にもとづいて報じた長時間労働の実態を事実と認定している。中国の現地工場における長時間残業などについては<(記事の)重要な部分が真実であると判断したことには相当の理由がある>と内容の正当性が認められている」 10月10日にアパレル業界としては初めて年間売上高が1兆円を突破したユニクロだが、ブラック企業という“汚名”は、まだまだ消えないようである。 新潮のみのもんたの記事はなかなか面白かったのだが、26日にみのが記者会見をして、報道番組から降板することを発表してしまったため、ここに書いてあるような「徹底抗戦」はしないようだ。だが、他誌より内容的に優れているので紹介してみよう。 「みのさんが9月30日までにTBSホールディングスの株を3万株買い増しし、個人筆頭株主に躍り出たというのです。(中略)そもそも、みのさんは、うちの株を5~6万株持つ大株主でした。TBSでは、2005年に始まった楽天による株式の買収騒動の際に、局と縁の深い多数の資産家に安定株主として株を持ってもらう防衛策をとりました。この時、みのさんにも頭を下げて、買っていただいたんです」 このコメントはTBSのある中堅社員である。個人ではかなりの株数になるのだが、それでも全体でいえば少数派である。みのはどんな戦略を考えているのだろうか。同社員がこう続ける。 「これが編成局や報道局の一部の幹部にも知らされ、衝撃が走ったといいます。実際には7~8万株持ったとしても、発行済み株式の0.1%にも満たないし、議決権などを行使できるような影響力はありません。しかし、大株主の一人であることには違いなく、本人にすれば、それを背景に“自分から降板するつもりはない”と徹底抗戦の意思表明を行ったのではないでしょうか。少なくとも、この話を聞いた幹部らはそう受けとめたようです。(中略)あるいは、株購入によって、“楽天騒動の際に協力したことを、よもやお忘れではないでしょうね”と井上弘会長、石原俊爾社長ら経営幹部に訴え、恩義を思い出してもらおうという戦略かもしれません」 彼の知人は「本人は、やはりTBSの『朝ズバッ!』に復帰したい一念ですよ」と語っている。 だが、そのTBSでは、彼の知らないところで重要な決定が下されていたというのである。 「実は、各部署の法令遵守事案を統括するコンプライアンス室で、みのさんの処遇をめぐる問題が議題にかけられていたのです。 こう内情を明かすのはTBSの幹部である。 『それがつい最近、<みのもんた氏の復帰は不都合で、困難である>との結論に達したのです。もちろんこれが即、社全体の決定にはなりませんが、間もなく役員会に上げられる。これを基に、井上会長や石原社長がみのさんと話し合うことになるでしょう』」 最高年棒は一時27億円を超えたと豪語するみのだが、親から引き継いだ水道業「ニッコク」の業績が下がりっぱなしで、7億円ともいわれるギャラがなくなるとそちらへの影響が出るようだし、鎌倉の大豪邸の維持費も毎年数千万円になるというから、そう簡単に「全部辞めます」とは言えないようである。バラエティ番組には出るそうだが、彼が望んでいるように、報道番組から「戻ってきて」という声はかからないと思う。 カネを持てば持っただけ生活が大きくなり、それを縮小するのはなかなか難しい。大変ですな、みのさんは。 文春は小泉純一郎総理(当時)が訪朝した2002年の日朝首脳会談で、北朝鮮の要求に従って1兆円の支援をしていたという張真晟(チャン・ジンソン)氏の証言を取り上げている。 これは同社が出した本のパブ記事ではあるが、これが本当だったら小泉訪朝とはなんだったのかが問われることになる。 「『拉致被害者の横田めぐみさんは2003年に生きていた可能性がある』『故金正日総書記は2002年の日朝首脳会談で、日本が提案した114億ドル(当時のレートで約1兆4000億円)の支援がほしくて、独断で拉致を認めて謝罪した』。こんな衝撃的な内容が書かれた本が出版された。タイトルは『金王朝『御用詩人』の告白──わが謀略の日々』(文藝春秋)。著者は北朝鮮の対南工作機関である『統一戦線事業部(統戦部)』に体制宣伝の詩人として勤務し、その後脱北した張真晟氏だ」(文春) 張氏は、首脳会談後に北朝鮮外務省が作成した参考資料に目を通したという。 「張氏は、記憶をたどって、この参考資料の内容を、著書の中で再現している。それによれば、北朝鮮側は日本による植民地支配の賠償金として400億ドルを提示したが、日本側から『日本が建設した発電所や製鉄所、鉄道などの使用料を払え』と逆襲される。北朝鮮側は、外貨による現金支援を求めるが、日本側は、『独裁国家の支援には、北朝鮮の核開発への支援とみなされ、米国は検証を求めて介入してくる』と、北朝鮮側が最も嫌がるポイントを突いてきた。最終的には日本政府から114億ドルの物的支援を受けることで何とか合意した。政府開発援助(ODA)式支援と推定される」(同) 首脳会談の午前の会議が終了し、休憩時間中に、北朝鮮側が拉致に対する公開謝罪を拒否したため、小泉代表団の中から「帰ろう」という声が上がり、金正日総書記があわてて、独断で謝罪することを決めたのだという。 114億ドルという数字については、当然ながら、そんな数字を提示してはいないと、当時の関係者たちは揃って否定している。 「しかし張氏は、『北朝鮮の政権中枢にいた私以外の脱北者も、この数字を聞いていた』と自信をみせた。また、日本政府の拉致問題担当者の中にも、『その数字を聞いたことがある』という複数の証言があり、信憑性は高い」(同) 金正日総書記の謝罪と拉致被害者の帰国がカネで買われていたとすれば、小泉元総理は国民に経緯を説明する義務がある。だが、ODA式支援だとすれば、どうやってそのカネを捻出したのだろうか。1兆円以上のカネの出を完全に秘密にしておくことなどできるはずないと思うのだが。 ポストはどえらいページを割いて銀行についての大特集を組んでいるが、少し前に確か現代がやっていたが、それと五十歩百歩の記事。大手銀行は3行しかないのだし、庶民の言うことなどハナから聞く気などないのだから、読む気が失せる。 それよりも、サラリーマンの給料に消費税をという記事のほうがへぇーッと思わせるものがあった。そうすれば、サラリーマンも会社も損をしないというのである。 そうなると、月収約47万円のサラリーマンの収入や支出がどう変わるかをポストが試算した。 「会社から支払われる給料に消費税5%=2万3500円が上乗せされるため、月収は約49万3500円に増える。所得税や社会保険料は同じ。また、消費支出も変わらないから、『家計黒字』は約10万3500円に増える。『でも、その貯蓄から自分で消費税を税務署に納めなくちゃならないでしょ?』という疑問は、その通り。しかし、会社から給料に加算される消費税額より、サラリーマンが納付する税額の方が少なくて済む」 税法学者で現役の税理士でもある浦野広明立正大学客員教授は、こう指摘している。 「サラリーマンは労働力を商品として売っているので、消費税が課税される場合、スーツや靴など直接仕事に使うものだけでなく、妻や子供など扶養者の養育費や生活費、住宅購入費も仕入れとして考えるべきです」 ポストによれば、消費支出すべてを仕入れとすれば、そこで支払った消費税負担分1万3,300円が控除され、追加で納めなければならない消費税額は、2万3,500円-1万3,300円=1万200円となる。それを納税しても家計の黒字は、現在より1万3,300円アップするというのだ。 安倍首相、考えてみたらいかがか。 すでに国民の記憶から薄れていっている福島第一原発事故だが、これを風化させてはならじと、朝日が一番心配される4号機について巻頭で特集を組んでいる。 現代も「東電破綻」という巻頭特集を組んでいるが、こちらは東電が破綻したときの経済的な観点からの記事なので、朝日のほうを紹介したい。 これを読んで震えがくるのは、寒くなってきた季節のせいばかりではない。じっくり読んで欲しい記事である。 早ければ11月8日にも始まる、福島第一原発4号機の使用済み燃料プールの燃料棒の取り出し作業だが、ひとつ間違えば大変なことになるのだ。 「東日本大震災当時、停止していた4号機では、1~3号機と違いメルトダウンは起きていない。その代わり、水素爆発でグチャグチャに吹き飛んだ建屋の上部にある燃料プールに、1533体もの燃料棒が残されたままになっている」(朝日)のである。 事故前に燃料棒の移動に携わっていた元大手原発メーカー社員が語っている。 「作業には熟練の技術が必要。まず水中で機器を操作し燃料棒を数十体ずつキャスクという金属容器に詰める。燃料棒をちょっとでも水から露出させたら、作業員は深刻な被曝を強いられる。水中で落下させて燃料を覆う金属の管が破れても汚染は深刻。フロアの全員退避は避けられない」 廃炉工程を検証している「プラント技術者の会」の川井康郎氏もこう指摘する。 「キャスクが落下して破損し、中の燃料が露出したら、大量の放射性物質が放出される。作業員はもう近づけません。燃料棒はまだ崩壊熱を帯びており、本来は常に冷やし続けなければならない。長時間放置すると燃料が溶融する可能性があります。こうなると燃料の回収は困難になり、作業全体が頓挫してしまう」 むき出しになった燃料は、「人間が近づけば即死」(原子力工学の専門家)という凄まじい放射線量である。こうなると、1~3号機のメルトダウンに匹敵する深刻な危機に直面するという。 まだまだ危機など去っていないし、汚染水すらコントロールされていないのだ。それなのに安倍首相と東電は柏崎刈羽原発を再稼働しようと企んでいるのである。 再稼働のキーマンであるv新潟県知事もインタビューで「東電まかせではまた事故は起こる」と言いきっている。 泉田知事が9月25日に東電の広瀬社長と会談した翌日、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に向けた安全審査を原子力規制委に申請することを認めたため、「知事は心変わりしたのではないか」と受け取った人もいるという問いに、「心変わりではなく、むしろ安全性をいかに高めるかを考えた上での決断です」と答えている。 さらに今の東電は、知事の要求に応えることができるでしょうか、という問いに対しては、 「最大の問題は、東電がお金の問題で首が回らなくなって、きちんとした判断ができなくなっていることです。事故処理のために9600億円の引当金を積んでおきながら、1000億円がもったいないと言って遮水壁を造らなかった。事故処理の費用を電気料金に上乗せして返すという今の形は、もう限界にきています」 東電の破綻処理もあり得るかという質問には、 「日本航空だって破綻処理をして、経営陣が責任をとった上でOBの年金もカットして、V字回復したわけです。東電は負担をすべて電気料金にかぶせていますが、株主や金融機関の責任はゼロでいいんでしょうか。破綻処理をしても電気料金という日銭が入ってくるんですから電気供給は止まりませんし、債権の見直しをすればすぐに料金を値上げする必要はありません」 しかし、原子力規制委の田中俊一委員長に面会を申込んでいるのに、会ってくれないそうですねという問いには、 「規制委に国民の命と安全と財産を本気で守るつもりがあるのか疑問です。守っているのは、電力会社の財産ではないか。規制委には地方自治に明るい人が一人もおらず、断層のチームと原発設備のチームしかいない。新潟県は中越沖地震の時に原発事故との複合災害を身をもって体験しています」 そして最後にこう言っている。 「国民の皆さんは正しい情報さえ与えられれば、的確な判断ができるんです。情報を与えないで誘導するのでは、また同じ過ちを繰り返してしまう。まさに今、日本の民主主義の熟度が試されていると思います」 そうなのだ! 今の安倍自民党政権が目指しているのは、国民に知らせたくない情報をすべて隠すことができる国にしようということなのだ。 国民の多くが原発事故を忘れたわけではない。メディアが報じないから記憶が薄れてしまっているのだ。これだけの大事故が3年も経たずに風化していくとしたら、メディアも日本という国も最低だと、私は考える。 (文=元木昌彦) ●もとき・まさひこ 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。「週刊朝日」11月8日号
甲子園の激闘から7年……楽天優勝の立役者・田中将大が歩んだ軌跡
アスリートの自伝・伝記から読み解く、本物の男の生き方――。 2006年夏の甲子園、決勝に駒を進めたのは、斎藤佑樹の早稲田実業と田中将大の駒澤大学附属苫小牧高校だった。延長15回にまで及んだ両校の戦いは1対1の引き分けで決着がつかず、翌日の再試合に持ち込まれる。結果、3対4で早稲田実業に軍配が上がった。 早稲田大学に進学した斎藤に対して、田中は東北楽天ゴールデンイーグルスに入団。監督は、知将として知られる野村克也だった。 今期・楽天イーグルスは球団初となるパリーグ優勝、日本シリーズ出場を果たした。田中は、この快挙の一番の立役者といって過言ではないだろう。開幕から24連勝という記録は、日本プロ野球史上初のものだ。 あの甲子園から7年、いったい、田中はどのようにして成長をして、楽天を優勝へと導いていったのだろうか? プロ1年目から、田中は一軍のマウンドを任された。記念すべきデビュー戦となった3月29日の対福岡ソフトバンクホークス戦。「ビビらずに、どんな相手にも、向かって投げられたらいいなと思います」と意気込みを語ったが、結果は惨敗に終わる。1回2/3を投げて、6安打3奪三振、1四球で6失点。負け投手にこそならなかったものの、その内容はKOと呼ぶにふさわしいものとなった。 だが、このKO劇には野村監督の思惑があったという。日本球界を代表する選手に成長すると判断した野村監督は、高卒ルーキーをあえて強力打線を誇る福岡ソフトバンクホークスとのアウェー戦に送り出した。抑えれば自信につながるし、もし打たれても這い上がってくるだろうという読みだ。結果、プロの洗礼を浴びた田中は、ルーキーシーズンに11勝を記録、新人王を獲得した。 「田中が投げると、負けていても不思議と逆転した試合が多かったように思います。野手は『ルーキーが頑張っているのだからなんとかしてやろう』と意気に感じていましたし、マウンド上で闘志を前面に出す投球スタイルはチームメイトを引き込む魅力がありました」(『楽天イーグルス 優勝への3251日』角川SSS新書) ルーキー時代の田中と同じ楽天のユニフォームを着ていたスポーツジャーナリスト・山村宏樹は当時を振り返り、こう表現する。田中という怪物ルーキーの存在がチーム全体のムードを盛り立てた。 恩師・野村監督と共に、田中に影響を与えた人物が岩隈久志。楽天草創期を支えた選手であり、2012年にメジャーリーグに渡るまで、7年間をチームのエースとして活躍した。そんな岩隈の背中を見ながら若い時代を過ごせたことは、田中にとって大きな財産となった。 「私が入団したとき、岩隈久志さんという大エースがいました。ルーキーなのに生意気にも岩隈さんのことは意識していましたし、直接アドバイスを頂いたり、見て学んだりすることも本当に多くありました」(『田中将大 ~若きエース4年間の成長~』小学館) ピッチングフォームから、試合運び、球場の外での過ごし方など、田中は、岩隈から多大な影響を受けて成長。そして、2012年からは楽天を離れ、シアトル・マリナーズで孤軍奮闘する岩隈に代わり、田中が名実ともにエースの座に就任する。昨シーズンはケガなどに泣かされ10勝という例年に比べると振るわない成績に終わったが、今シーズンは破竹の勢いでペナントレースを爆進。その活躍を間近で見る小山伸一郎投手は、田中に生まれた変化を見る。 「昨季までは、打たれたら力んで、力でねじ伏せようとしていたのですが、2013年は力むこともなく、最終的にゼロで抑えてイニングを終えればいいと考えているようです。緊迫したゲーム展開でも、イニング間に気持ちを上手く切り替えていますし、まさに大人ですね。練習でも、私生活でも、全てにおいてメリハリが効いていますし、このメリハリが、ピンチを迎えてからギアを上げて抑える、マウンドさばきに繋がっていると思います」(『楽天イーグルス 優勝への3251日』角川SSS新書) エースとして、1シーズンを乗り切ることは決して容易いことではない。それを実現するために、田中は緩急のリズムをつかんだ。その成長が、今シーズンの優勝につながったのだ。 2010年に、田中は「理想の投手像」を次のように語っている。 「やっぱり周りから信頼を得られて、『お前が投げれば勝てる』とか『お前なら任せられる』と思われるピッチャーになりたいですね。あとは、チームの流れが悪い時に自分でその流れを変えられるような、チームにとって影響力のあるピッチャーにもなりたいです」(『田中将大 ~若きエース4年間の成長~』小学館) 今、この目標が達成されたことは、誰の眼にも明らかだろう。甲子園の怪物から楽天のエースへ、そして日本球界のエースへと一歩一歩成長を続けた田中。かつては興味を示していなかったものの、現在、その眼はメジャーリーグをも視野に入れている。上原浩治、松坂大輔、ダルビッシュ有、そして先輩・岩隈久志らが活躍する本場・アメリカに飛び込み、日本のエースが世界のエースとなる日も近いかもしれない。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])『田中将大 ~若きエース4年間の成長~』(小学館)
熱い? 寒い? 賛否両論の話題作『キルラキル』を斬る!
『天元突破グレンラガン』の監督・今石洋介×脚本・中島かずきコンビが送る、秋クールスタートのアニメ『キルラキル』(MBS・TBS系列)の評価が大きく二分されている。 本作は、『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』などの制作でおなじみのGAINAXスタッフが独立して立ち上げたアニメ制作会社・TRIGGERが、企画から手掛けた初のテレビシリーズ作品だ。 父の殺害現場に残されていた巨大な片太刀バサミを持つ少女・纏流子が、意思を持つ謎のセーラー服「鮮血」を着用し、片太刀バサミの謎を知ると思わせる本能字学園の生徒会長・鬼龍院皐月を倒すべく、次々と襲いかかる生徒会の手先と戦うというあらすじの本作は、例えるならば、初期『男坂』『炎の転校生』などに代表される、80年代少年漫画テイスト全開の非常に熱いノリの作風に仕上がっている。 現在、第4話までが放送されており、これからますますテンションが上昇していくことが、中島かずきへのインタビューなどからうかがえる。 そんな『キルラキル』だが、アニメファンの間での評価は賛否両論大きく分かれている。 ネット上に挙げられている感想をざっくりと分類してみると、およそ以下のようになっている。 ■支持派 ・「絵に勢いがある!」 ・「アナログテイストなタッチが力強くていい!」 ・「ちょっと昔テイストの作画が心地いい」 ・「いろんな意味でひどくていい!」 ・「80年代ドラマなどのオマージュネタが笑える」 ■否定派 ・「作画がおかしい。安定していない」 ・「テンションが高すぎてついていけない」 ・「ギャグなのかシリアスなのか分からない」 ・「ノリだけで内容がない」 ほかにもさまざまな意見があるが、大きく分けると、こんなところだろうか。 支持派は主に、本作の80年代テイストを感じさせる演出(テンションで押し切るテイストも含まれるか)や、アナログタッチの作画が持つ力強さを評価する一方、否定派にはそれらの要素がそのままウィークポイントとなってしまっていることが分かる。 実際にどういう層が本作を支持し、逆に拒否反応を示しているのかを確かめるべく、某アニメ誌の編集者に話を聞いた。 「まだ肌感覚でしかないのですが、視聴者のアニメ体験によって大きく感想が変わっているように思います。アナログ作画が大半を占めており、各作画監督の画風によって毎回絵のタッチが変わっていた90年代後半までにアニメにのめり込む体験をしていた視聴者は、本作の粗い作画を、懐かしさをもって受け入れているように思います。多少の強引さやこじつけをものともしない勢い重視の作風も、当時のアニメのテイストを思わせます。一方、デジタル作画時代に突入した00年代以降にアニメを見始めた世代の視聴者は、単に作画が汚く、ロジカルでない雑なシナリオの作品ととらえられている節もありますね」 そう語る20代の彼もまた、「個人的に『キルラキル』は、ちょっと受け入れにくいところはありますね……」と、本作に対し微妙な評価を下す。 ちなみに30代半ばの筆者の感想は、「『キルラキル』、イエスだね!」である。う~ん、やはり30代以上と以下で、本作の評価は分かれてしまっているのだろうか? 確かにここ数年のアニメはキャラクターデザインに対して忠実に作画することが喜ばれる傾向にあり、90年代までのアニメのように作画監督ごとのタッチの違いがそこまで出ることはなくなったし、シナリオも前後の矛盾がほとんどなくなり、安心して物語を楽しめるようにもなった。 だが、かつてのアニメが持っていた独特の「ユルさ」や「作画スタッフの個性」が生み出す、なんとも言えない味わいが薄まってしまったことも事実である。『キルラキル』はそういう時代の作品が持つ、画面からにじみ出るパッションを再現しようとしているのではないだろうか。こんなことを書くと、若い読者からは老害扱いされそうだけれども。 ともあれ、賛否両論を巻き起こすということは、それだけ多くの視聴者の注目を集めている作品、ということでもある。今後、本作がこの勢いをさらに加速させて天元突破してしまうのか。はたまた時代にマッチできずにスベってしまうのかは、じっくりと2クールの放送を見届けて判断するしかないだろう。 (文=龍崎珠樹)テレビアニメ『キルラキル』
人間とハエとの恋愛は果たして成就するのか? インドからやって来た“虫愛づる姫”『マッキー』

映画史上初となる一匹のハエを主人公にしたインド映画『マッキー』。愛する女性に、一途なハエ心は伝わるのだろうか?
ところが、わずか数時間後に彼の人生はジ・エンドとなってしまう。「欲しいものは全て手に入れる」という凶悪な建築会社社長スティープ(スティープ)もビンドゥを狙っており、ジャニが目障りだったのだ。スティープと部下たちに拉致されたジャニは哀れ、撲殺死してしまう。主人公が序盤で死ぬという衝撃的な展開。と、ここまでが前振り。死んだジャニは、愛するビンドゥを守るため、一匹のハエへと輪廻転生。小さな体で、極悪人スティープに戦いを挑む。まぁ、身も蓋もなく言ってしまえば、デミ・ムーア主演の大ヒット作『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)の昆虫版ですよ。 ハエが主人公と聞いて、オシャレ女子は「えっー」と引いてしまいがちだが、むしろ女性に勧めたい本作。物語のキーアイテムとなっているのが、ビンドゥが作るマイクロアート。鉛筆の芯を細やかに削って、ハート型にしたり、鎖状にする、とってもミニマムな彫刻なのだ。マイクロアートはよ~く見ないとその魅力に気づかないし、丁寧に扱わないとあっさり壊れてしまう。それって、まぁ、人間の心と同じじゃないですか。寄付してくれた篤志家に対し、精魂込めたマイクロアートをお礼に贈るビンドゥ。ビンドゥはナウシカのように虫と交信できる特殊能力に恵まれているわけではないが、小さきもの、ささやかなものを愛でる繊細な心が持ち味。一匹のハエが妙に自分にまとわり付き、一生懸命に何かを訴えかけていることに気づくわけです。姿が変わってしまった恋人の存在をそのまま受け入れる、ヒロインのオープンマインドさにぐっと来ますね。 多種多様な言語、文化、宗教観が入り交じったお国柄がインド映画には反映されている。学歴偏重社会をクールに風刺した学園ドラマ『きっと、うまくいく』はインド北部のヒンディー語圏、ラジニカーント主演のベタなギャグ満載の『ロボット』はインド南部のタミル語圏の映画。もともとの『マッキー』はヒンディー語、タミル語に続くインド第3の言語、テルグ語で作られたもの。ちなみにインド南東部のテルグ語圏で作られる映画は、ボンベイで作られるボリウッド作品に対しトリウッド作品と呼ばれている。年間1200本以上もの映画が製作されているインドでは、それぞれの言語圏だけで産業として成り立っている映画界が10ほど存在するそうだ。それってインドのローカル映画でしょ、と侮るなかれ。最新VFXを駆使した『マッキー』は主人公をハエながら可愛げのあるキャラクター造形に仕上げたこともあり、インド全域でスマッシュヒットしたのみならず、米国では同時期に公開されたハリウッド超大作『アメイジング・スパイダーマン』(12)をスクリーンアベレージで上回ってみせた。小さきものがでっかい巨人をひっくり返してみせるという痛快さが『マッキー』の魅力となっている。ビンドゥへの恋心が実り、喜びの絶頂に浸かるジャニ(ナーニ)。数時間後の自分に待っている衝撃的な運命はまるで予感できずにいる。

ハエとなったジャニは、ビンドゥ(サマンサ・ルス・プラブ)に協力してもらい肉体トレーニングを開始。昆虫版『ロッキー』(76)の世界です。
『マッキー』
原作・脚本・監督/S.S.ラージャマウリ 音楽/M.M.キーラヴァーニ 出演/ナーニ、スディープ、サマンサ・ルス・プラブ 配給/アンプラグド 10月26日(土)よりTOHOシネマズ六本木ほか全国公開
(c)2012 Varahi Chalana Chitram. All rights reserved.
<http://masala-movie.com/makkhi>
トタンが好きすぎて妻を怒らせた……トタン建築鑑賞家・イシワタフミアキさん
身の回りにいそうでいない、ちょっと変わったことをしている人や、面白そうな場所に、文筆家のやきそばかおるが直撃取材! 「トタニスト」……トタン建築の魅力にどっぷりとハマってしまって、出てこられない人物がいる。名前はイシワタフミアキさん。街を歩けば、気になるのはトタンのことばかり。撮影したトタン建築はすでに1000件以上!……というイシワタさんに、トタン建築の魅力を聞いてみた。 やきそば 「なぜトタン建築の写真を撮ろうと?」 イシワタさん 「今から6~7年前に、雜誌の仕事で、路地裏の飲食店を撮っている時に、知り合いのライターさんが『トタンっていいよね~』って言ってきたんです。最初は『トタンですか……』という感じでピンとこなかったんですけど」 やきそば 「確かに……」 イシワタさん 「そのライターさんが何度もそう言うんで、だんだんと意識するようになってきたんです。そのうち、街を歩いている時でもトタン建築が気になるようになってきて、気づいたらハマっていました」 やきそば 「ひょえ~~。イシワタさんにとって、トタン建築の魅力ってなんでしょう?」 イシワタさん 「たとえ腐食している場合でも、色使いや、色の組み合わせなど、現代アートっぽいところがいいですね。あとは、現代的な建物のすぐそばにトタン建築があることがあって、現代とトタンが一緒になっている風景も好きです。周りはすごいスピードで進んでいるけど、そこだけは時間が止まっている感じがするんです」イシワタさんお気に入りのトタン建築の一つ。木の存在がいい味を醸し出している。
やきそば 「今でもトタン建築が見られるところって、どういうところですか?」 イシワタさん 「海沿い、川沿い、線路沿いです。海沿いや川沿いは潮風が強いため、トタンを住宅用に使った場合は傷みが激しくなります。後から作り直す時に、壊しやすく、値段が安いこともあって、今でもトタンを使っています。線路沿いにあるトタン建築は、闇市の名残ですね」 やきそば 「そういえば、意外な場所にもありますよね。東京スカイツリーに行った時に、ツリーの周辺にトタン建築があって、ツリーとトタン建築とのコントラストに、私も思わず瞳孔が開いちゃいました」 イシワタさん 「スカイツリーのある墨田区は、今でもトタン建築が多く残っています。事実、私のようなトタン建築ファンが写真を撮っている光景をよく見かけますよ」 やきそば 「ほかのトタン建築好きの方は、トタン建築のどんなところに注目しているんですか?」 イシワタさん 「いろんな好みはあると思いますが、私が思うに、サビ好きな人が多いですね(笑)」 やきそば 「あぁ、サビって人間の手ではコントロールができない分、サビによってできる模様も味があっていいですよね。墨田区以外で、トタン建築をよく見かける地域は?」 イシワタさん 「大田区、北区も多いし、世田谷区や新宿区、中央区に位置する築地の場外市場や銀座でも見かけます」 やきそば 「都心のど真ん中にもあるっていうことですね。あえてお聞きしますが、イシワタさんが街を歩いていて、『あ、この辺にトタン建築がありそうだな~』というカンのようなものが働くことはありますか?」 イシワタさん 「ありますね(笑)。なんとなく気配を感じて歩いてみると『あった』っていうことはあります。あとは、いつも歩いているような道でも、通りに面した建物が壊されると、突然その奥にトタン建築を発見することもあります。地層の中に埋もれている感じなので『発掘調査』って呼んでます(笑)」 イシワタさんは、仕事の移動中に素敵なトタン建築を見つけると、チェックして休日にあらためて見に行くほど、ハマっているという。 ■トタン建築・ジャンル分け ところで、イシワタさんは、トタン建築をジャンル分けされているとのことで4パターンを紹介してもらった。 【グライコ】神保町にて。こちらもイシワタさんのお気に入りのトタン建築の一つ。
イシワタさん「トタンの凸凹に沿って、サビが棒グラフ化したものです」 やきそば 「昔、ラジカセにも付いてましたね。懐かしい」 【パッチワーク】
イシワタさん「トタンを継ぎはぎしている様式です」 やきそば 「継ぎはぎする人のセンスが出そうですね」 【バーコード】
イシワタさん「文字通り、見た目がバーコードっぽいものです」 やきそば「トタンの付け方からして、几帳面な性格っていう感じですね」 【怨念化】
イシワタさん 「サビや腐食が心霊写真のように見えるパターンです」 やきそば 「深夜に遭遇してしまったら、逃げ出したくなりますね」 中には、パッチワーク、怨念化、バーコードのすべての要素を兼ね備えたものもあるという。 ■トタンと出産
そんなイシワタさんは、トタンにのめり込みすぎて、奥様を怒らせたことがあるという。 イシワタさん 「妻が妊娠して、もう少しで生まれるかもしれないという時に、車で病院に運んでたんです。病院に向かう途中で、前から目をつけていたトタン建築と目が合った瞬間に『子どもが生まれたら、ニ度とこの道を通ることはないかもしれない。ということは、あのトタン建築も、すぐには撮りに来られないかもしれない……』と思うと、いてもたってもいられなくなって、最寄りのコンビニに車を止めて、写真を撮りに行ったんです」 やきそば 「奥様はそのままで!?」 イシワタさん 「そうです。トタン建築を撮影して車に戻ってきたら、妻がものすごくご機嫌ナナメで(泣)」 やきそば 「そりゃそうですねぇ……」 イシワタさん 「『私は大変な思いをしてて、赤ちゃんもどうなるか分からないのに、私を置いてトタンを撮りに行くって、どういうことなの!?』って」 やきそば 「まぁ、怒られても仕方ないような気が……」 イシワタさん 「相当、恨んでるのか、今でもたまに、そのことについて言及されます……(苦笑)」 そんなイシワタさん、なんと、初の個展を開催! お客さんがたくさん遊びに来て、奥様のご機嫌も直ってくれることを祈る! ●イシワタフミアキ 写真展「トタニズム」 <http://f-stop.blog.so-net.ne.jp/> 10月25日(金)~1月7日(木) ※日曜休館 会場:エプソンイメージングギャラリー エプサイト (新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル1階 ※JR・小田急・京王新宿駅・各西口徒歩8分) ※入館無料 ※詳細はイシワタさんのブログにて。 ※12月には洋泉社から写真集が発売される予定!奥様が出産する際に撮りに行ったトタン建築。
●やきそば・かおる
山口県出身、東京都在住。ライター、構成作家、写真家。趣味は、変わった人に会って、変わった話を聞くこと。「相づちだけはうまいと言われます」(本人談)
Twitter@yakisoba_kaoru
【秋のメガ盛りシリーズ】これがホンモノ! 大盛りチキンカツ定食
日本中に大盛りメガ盛りグルメは数多いが、そのほとんどがメインの“おかず”の大盛りではなく、主食の米や麺などの炭水化物の山盛りの店ばかり。言い方は悪いが、「これって、ごまかしてねぇ?」と思うのは、ひねくれた記者だけだろう。
ところが、奈良で見つけたこの店の珍級グルメは、その定説を覆すホンモノのメガ盛りメニューだった! 奈良県近鉄郡山駅からバスで4つ目くらいの停留場の目の前にある「とんまさ」に入ると、昼時を過ぎているのに客席は半分ほど埋まっている。
注文したのは、若鶏かつ定食(大)1,523円。出てくるまで店内を観察していると、目についたのはこんな張り紙。
「女性うけがとてもいいはずです!!」とか「きっとヘルシーです」なんて、シャレが利いている。
さらに奥の座敷席の壁には、過去に取材を受けたテレビ局と番組名が書かれた張り紙も。
ほかの客が食べてるメニューをチラ見すると、やっぱりおかずが多いが、基本的に大盛りの店ではなく、おいしい肉が売りの店らしい。正真正銘の名店のようだ。
しかしその数分後、店員さんが手で押さえながら運んできてくれたチキンカツがコレだった!
どうよ! 炭水化物じゃなくて、ホンモノのチキンカツの大盛りでっせ。キャベツの千切り山の上に、多分、大きめのチキンカツ4枚くらいが、ジェンガのように山積みになっている。おいしそうな部分を見つけても、上から順に食べていかないと崩落は免れないだろう。
レモン汁を垂らし、ひと切れを口に運ぶと、タマゴをまぶした衣はアツアツのサックサクで、鶏胸肉は若鶏だけに柔らかくてホックホク。素直においしいチキンカツだ。
だけど、この量……。
もちろん定食なので、ほかにご飯とみそ汁も付いている。とうてい完食はムリと思いつつも、一切れ一切れ口に運んでいった。
途中、レモン汁とソースとタレで味変しながら、およそチキンカツ3枚分とご飯半分を食べたところで満腹。残ったカツを呆然と眺めていたら、何も言わないのに大女将が持ち帰り用のパックを持ってきてくれた(笑)。お土産にしたカツも、夜、ちゃんと食べました。
大変おいしゅうございました。
奈良県大和郡山市 とんまさ 若鶏かつ定食(大)1,523円
見た目 ☆☆☆
味 ☆☆☆
店 ☆☆★
「女性うけがとてもいいはずです!!」とか「きっとヘルシーです」なんて、シャレが利いている。
さらに奥の座敷席の壁には、過去に取材を受けたテレビ局と番組名が書かれた張り紙も。
ほかの客が食べてるメニューをチラ見すると、やっぱりおかずが多いが、基本的に大盛りの店ではなく、おいしい肉が売りの店らしい。正真正銘の名店のようだ。
しかしその数分後、店員さんが手で押さえながら運んできてくれたチキンカツがコレだった!
どうよ! 炭水化物じゃなくて、ホンモノのチキンカツの大盛りでっせ。キャベツの千切り山の上に、多分、大きめのチキンカツ4枚くらいが、ジェンガのように山積みになっている。おいしそうな部分を見つけても、上から順に食べていかないと崩落は免れないだろう。
レモン汁を垂らし、ひと切れを口に運ぶと、タマゴをまぶした衣はアツアツのサックサクで、鶏胸肉は若鶏だけに柔らかくてホックホク。素直においしいチキンカツだ。
だけど、この量……。
もちろん定食なので、ほかにご飯とみそ汁も付いている。とうてい完食はムリと思いつつも、一切れ一切れ口に運んでいった。
途中、レモン汁とソースとタレで味変しながら、およそチキンカツ3枚分とご飯半分を食べたところで満腹。残ったカツを呆然と眺めていたら、何も言わないのに大女将が持ち帰り用のパックを持ってきてくれた(笑)。お土産にしたカツも、夜、ちゃんと食べました。
大変おいしゅうございました。
奈良県大和郡山市 とんまさ 若鶏かつ定食(大)1,523円
見た目 ☆☆☆
味 ☆☆☆
店 ☆☆★
SODの新人女優・紗藤まゆちゃんが愛する“長くて固い”アレって!?
ソフト・オン・デマンドから、新たなる大型新人女優「紗藤まゆ」ちゃんがデビュー! その絵に描いたような美少女っぷりに、業界からは熱い視線が注がれている。端正な顔立ちもさることながら、Fカップの柔らかおっぱいと、ツンと上を向いた乳首、プリンとしたかわいらしいお尻……、20歳の柔肌に、全国の男子が歓喜する!
そんなまゆちゃんを直撃取材したところ、意外な一面が連発……。
え、こんなAV女優がいていいんですか!?
──今回は、デビュー記念インタビューということで、まゆちゃんのことをイロイロ聞いちゃいます!
紗藤まゆ(以下、紗藤) ちょっと緊張しているんですが……よろしくお願いします!
──初々しいね~。まず、デビューのきっかけは?
紗藤 街を歩いていたらスカウトされたんです。でも、正直どうするかすごく迷いました。今まで人前に立って何かをしたこともないのに、いきなり脱ぐなんて……。
──そんなまゆちゃんのデビューを後押ししたのは?
紗藤 成瀬心美さんとか、紗倉まなさん、麻倉憂さんなんかの活動を見ているうちにAV女優という仕事に憧れるようになりました。せっかくのチャンスをものにしようと思って飛び込んだんです!
──ところで、プロフィールを見ると、「電気工事・ガス溶接・ボイラー取り扱い」とガテン系な特技が並んでいるんだけど……。
紗藤 工業高校だったんで、資格を取りました。
──こんな美少女が工業高校に!?
紗藤 ふふ。高校を選んだのは、家から近かったというだけなんですが、女子も学年で私ひとりしかいない環境でした。女子がいないことには、初めは抵抗があったんですが、すぐに慣れちゃいましたね。
──逆ハーレム状態だから、すごくモテたんじゃないですか?
紗藤 いやいや、全然です……。でも、そのおかげで、男友達が多くなりました。今でも、男友達とは、「あの女子カワイイよね~」とか、「どうやったら落とせるんだろう?」とか話しています。逆に、私、女心が全然わからなくて、女友達が少ないんです……。
──意外だな~。そして、卒業後は、鉄道会社に就職した。
紗藤 はい。毎日電気信号を確認したり、終電の後にホームから線路に降りてレールのチェックをしたりしていました。万が一のことが起こってはいけないので、毎日気を張らなきゃならない大変な仕事なんです。もちろん、そこでも女子は私だけでした。
──鉄道会社に就職っていうことは、鉄ヲタなの?
紗藤 鉄道というか、レールが好きなんです。
──レールが好き……ですか?
紗藤 はい! レールの鉄が錆びた質感がたまらないんです。あとは、固さも大好き!
──うーん、鉄道マニアの上を行く「鉄マニア」か……。確かに女の子は友達になれなそう(笑)。
紗藤 確かに趣味を共有できる友達はいないですね……。
──ところで、初めてのAV撮影はどうでしたか?
紗藤 大勢の人の前でエッチをするのは初めてなので、とっても緊張しました。相手の男優さんが出てきたときは、もう心臓が止まるかと思うくらい。でも、みなさんに優しくしてもらって楽しかったですね。ただ、恥ずかしくて、まだビデオは見れてないんですけど……。
──プライベートでは経験できないHもしたのかな?
紗藤 1作目はわりとノーマルだったんですが、2作目は人生で初めて潮を吹きました。でも、自分ではあんまり実感がなくて、「潮吹いてるよ」って言われて初めて気づいたくらいなんです。
あとは3Pも初体験しましたね。初めての3Pだったんですが、とても忙しかったです(笑)。されるがままで、男優さんたちについていくのがやっとでした。ただ、個人的には1対1よりも3Pのほうが気持ちよかったな~。
──今後、挑戦してみたいプレイは?
紗藤 ソフトSMを経験してみたいです。今回も、目隠しとか、軽く手首を縛られたプレイをしたんですが、監督から「目隠しされてるシーンが一番濡れてたよ」って褒められました。いじめられてると気持ちよくなっちゃうんです。
──こんな活動をしていきたい、という目標は?
紗藤 そうだな……AVじゃなくて、工事現場とか、トラックの運転手として働いてみたいかも。
──そんなこと、ファンが許しません!
紗藤 (笑)。でも、もし工事現場でプレイするような作品があったら絶対に出てみたいですね~。
──最後に、日刊サイゾー読者にメッセージをお願いします。
紗藤 まだ始めたばかりなんでわからないことばかりなんですけど、勉強して頑張っていきたいです。応援よろしくお願いします!
──じゃあ、工事現場で働く読者には?
紗藤 雇ってください! なんでもやります!!
“いくえみ女子”はのび太? 不完全な“フツーの人”の成長物語『潔く柔く』
男だって、堂々と女子マンガが読みたい!――そんな内なる思いを秘めたオッサンのために、マンガライター・小林聖がイチオシ作品をご紹介! いくえみ綾の00年代の代表作というべき『潔く柔く』が、映画化される。10月26日公開ということなので、たぶんテレビなどでもガンガンCMが流れているだろうから(我が家にはテレビがないのでわかんないけれど)、普段は少女マンガに興味なんてない男性読者も、名前くらいは知っているんじゃないだろうか。 公式サイトなどでも「感動のラブストーリー大作」と銘打たれているので、映画版はたぶん真っ正面からラブストーリーなんだと思う。でも、原作は、単なるラブストーリーではない。少女マンガ史に残る大傑作なのだ。 原作の『潔く柔く』は、全10章からなるオムニバス連作で、それぞれの章が異なる主人公の独立した物語になっている。だが、同時にそれぞれの章と登場人物が少しずつ絡み合い、全体としては、事実上のシリーズヒロインである瀬戸カンナの物語につながっているという、複雑な構成になっている。 そこで繰り広げられるのは、確かに恋の物語だ。あるときは死んでしまった同級生に憧れていた女子高生の、あるときは中学生に言い寄られる女子大生の、それぞれに恋を軸にして話が進んでいく。シリーズの中心にいるカンナの物語も、あらすじだけを抜き出せば、冒頭に書いたように「好きだった男の子が死んじゃった女の子の恋物語」だ。 だけど、この作品は、悲劇のヒロインが王子様にめぐり会ってハッピーエンドを迎えるというような話ではない。カンナの物語は、確かに悲劇から始まっている。だが、いくえみ綾は、カンナが悲劇のヒロインとして生きることを許していない。 たとえば、ある章で死んでしまったカンナの幼なじみ・ハルタについて、別の同級生が語るシーンがあるのだけれど、これがすさまじい。 「でね! でね!」「そのハルタって死んだ男が またモテ系でさ お葬式とかでも女の子 泣きまくってさ~~」 (中略) 「あ~なんか思い出してきちゃった!」「せつな~~~い!」 語っているのは名もない(顔すら出てこない)同級生で、物語の中にも登場しないいわゆるモブキャラだ。だが、それにしたって、この描きようは冷徹だ。 ハルタの死は、同作の中心にあるエピソードであり、最後の最後までカンナにつきまとったものだ。物語の中では、アンタッチャブルな出来事ですらある。その一方で、物語の外側から見れば「過去のちょっと悲しい思い出話」であるという残酷さを、いくえみは描いている。「せつな~~~い!」と楽しげに語る、女の子たちの恐ろしさを、いくえみ作品は常に忘れずに描き込んでいる。 この毒っ気がいくえみ綾だ。“いくえみ男子”と呼ばれ、新しいモテ男の形として取り沙汰される男性キャラクターとは裏腹に、“いくえみ女子”は「フツーの子」が多いといわれるが、いくえみの描く「フツー」というのは、毒っ気を抱えているということでもある。 カンナも同様だ。いくえみキャラのセリフを集めたファンブック『いくえみ男子 ときどき女子 いくえみ綾 名言集』の中でも、いくえみはカンナについて「女子に嫌われ系」とバッサリとコメントしている。 こういうふうに紹介すると、多くの男の人に「あー、ヤダヤダ、女のドロドロしたドラマとか見たくない」と思われたりするのだけれども、いくえみ作品は深い影を持ちながら、どこかで泥沼感がない。むしろ、毒っ気があるからこそ、救いがある。 それはどういうことだろうと考えたとき、思い出したのは『ドラえもん』だった。「ドラえもん」の作者である藤子・F・不二雄は、常々「のび太は僕自身だ」と語っていた。何をやってもパッとしないのび太は自分の分身だと語り、「たいていの人たちは、自分の中に多かれ少なかれ"野比のび太"を抱え込んでいるのではないでしょうか」と述べている。 そんなのび太がひとつだけ持っているいいところを、藤子・Fは時々反省することだと語っている。時々だけれども、今よりよい人間になろうと努力するのが、のび太の美徳であると。 “いくえみ女子”は、女の子にとっての“野比のび太”なのだと思う。パッとしなかったり、うまくいかない部分を抱えていたり、嫉妬や憎しみに苛まれたりする、不完全でコンプレックスを抱えた女の子たちは、物語を通して、不完全なまま、それでも何かを変えようとあがく。 原作『潔く柔く』の中で、すごく好きなセリフがある。ハルタに憧れていた女の子・一恵がモノローグで語るセリフだ。 「あたしは人を救うことなんてできやしないけど」 「自分くらいなら救える」 「あたしはせめて あたしのことを救おう」 いくえみ綾は、徹底的に少女マンガの人だ。だけど、一恵のこのセリフに込められた、“フツーの人”が変わろうとする祈りのような思いは、男女を問わず、“フツーの人”の胸を打つと思うのだ。 長澤まさみが演じる映画版のカンナも、そういう“フツーさ”を持っているといいなと思っている。 (文=小林聖 <http://nelja.jp/>)『潔く柔く 13』(集英社)












