ありがたきご尊顔が乗っかった、甘さと辛さの奇跡の出会い系『人形焼きカレー』

chinguru25_1.jpg  さてさて、これは下町のばあさんから山の手の奥様まで、みんな大好きな東京名物人形焼きだ。しかし、何かの海にプッカリと浮かんでいるんだけど、いったいなんの海だかわかる?  その答えは……
chinguru25_2.jpg
もちろん、カレーの中にもほぐした人形焼きが入っている。
 なんと、カレー!  駒形にあるこのカレーショップでは、人形焼きが乗っかったカレーライスが食べられるのだ。  えっ、どんな味かって? カレーに入ってるんだから、人形焼きの中には、らっきょとか福神漬けか何かが入ってるんだろうって?
chinguru25_3.jpg
人形焼きは人形町の有名店のもの。ちゃんと使用許可をいただいてカレーに乗せているという。人形焼きがないときは当然出せないので、要確認。
 ざーんねんでした。  その中身は、フツーに「あんこ」なのだ。つまり、香辛料のたっぷり入ったスパイシーなカレーの海に、甘~いあんこがたっぷり詰まった、東京名物人形焼きを、そのまんまオンしたカレーライスということ。イージーだろ~?  で、その味はというと、色は同系色でまとめられていて美味しそうな感じ。それに、カレーはひき肉の入ったキーマ風……と思ったら、細かくほぐした人形焼きだった。スパイシーなカレーに甘い人形焼きのコーディネートは、「甘からず、辛からず」ではなく、ストレートに「甘くて辛くて、ウマからず」。  あ~あ、言っちゃったよ。言っちゃったけど、正直、庶民の舌を持つ記者には理解不能の味だった。  ちなみに、このカレーショップ、以前紹介した「いちごカレー」のあの店だ。今回も言うけど、フツーのカレーはおいしいのにな~。    うもうございませんでした……。 駒形 カフェ・ラティーノ『人形焼きカレー』 意外性 ☆☆☆ 味   ☆   店   ☆☆☆
chinguru25_4.jpg
店内ではペットのケヅメリクガメのリクちゃんが這い回っている。

やっぱりキナ臭い! バイラルメディアの仁義なき足の引っ張り合いに、ネット民が大盛り上がり

ヲタ系ITライターと日刊サイゾー新米編集者が、ここ最近、ネットで話題になったいろいろな出来事について語るコーナーです。
netgeek.jpg
「netgeek」
■急成長のバイラルメディア業界が、キナ臭いことになっている ITライター・Dr.T アキちゃんは、バイラルメディアって知ってる? 新米編集者・アキ なんですか、それ? Dr.Tの必殺技の名前ですか? Dr.T 違うよ! 中二病はもう卒業したよ! アキ 中二病の人ほど、そう言うんですよね〜。 Dr.T というか、その話はもういいから! バイラルメディアっていうのは、ここ最近急成長してきているネットメディアのことだよ。厳密な定義はややこしいけど、簡単にいえばFacebookやTwitterなどを利用して、一気に記事を拡散することを目的としたメディアサイトのことなんだ。レイアウトもシンプルでスマホを意識しているし、FacebookやTwitterにシェアするためのボタンが大きく付いているのが特徴だよ。アキちゃんもきっと、一度は見たことあるんじゃないかな。 アキ あー、そういえば見たことあるかも! 動画とかよく紹介してますよね。 Dr.T それそれ。で、そんなバイラルメディア業界が、どうもここ最近、キナ臭いことになっているみたいなんだ。というか、もともとバイラルメディア自体がうさん臭いんだけどね。 アキ そうなんですか? 普通のネタ紹介サイトに見えますけど……。 Dr.T その「紹介」ってところがポイントだよ。紹介ってことはつまり、自分のところでコンテンツを用意するわけじゃなく、他のサイトやクリエイターが作ったものを情報の横流しのように紹介するだけでPVを稼ぎ、広告収入を得ているんだからね。YoutubeやTwitterみたいに、貼り付けるためのコードが用意されているものはまだいいとして、写真や文章なんかは完全に無断転載ってわけ。 アキ 人のネタで儲けるのは、ちょっとなんだかな〜ですね。 Dr.T ところが、そんなパクリの温床になっていた有象無象のバイラルメディアに、これまたとあるバイラルメディアがかみついたんだ。「netgeek」というサイトなんだけど、ここが「【速報】バイラルメディアのパクリランキングが発表!一番パクっていたのはあのサイトだった」という記事を出したのがきっかけで、ネットユーザーが俄然盛り上がった。 アキ えっ、同じバイラルメディアにかみついたんですか? Dr.T うん。この記事自体は「netgeek」のオリジナルなんだけど、ここでやり玉に挙げられたのが「BUZZNEWS」。ここからしばらく、「netgeek」による「BUZNEWS」への攻撃が始まったんだ。その結果、「BUZZNEWS」の運営元であるWEBTECHASIAの"他の仕事"が次々と見つかった。どうやらこの会社、「netgeek」の記事を信じるなら、TV番組をYoutubeにアップしたり、人のツイートをパクって発言する、TwitterBotのワロスBOTの運営もしていたらしい。いやー、「netgeek」のこの追求の勢いはすごかったね。 アキ いがみ合い、殺し合う運命の元仲間たち——萌えますね……! Dr.T どういう妄想だよ! ただ、そうこうしているうちに、今度は「netgeek」から不可解な謝罪文が出されたんだ(http://netgeek.biz/archives/20410)。そこには「28日か29日に公開する予定だった記事が、事情により公開できなくなった」旨と、「過去の一部の記事を削除した」という報告が書かれてあった。この過去の一部の記事というのが、「BUZZNEWS」絡みの記事だったんだ。急にトーンダウンした「netgeek」にいったい何があったのか? 圧力なのか、別のなんなのか? 「netgeek」自身は理由を説明する気はなさそうなので、真相は闇の中だね。 アキ この謎めいた感じ……いい擬人化BLが描けそう! Dr.T アキちゃんはブレないな! ■「桃モッツァレラ」レシピが大ブーム! Dr.T 平和なネタも投下しておこう。ネットでは、たまに個性的なレシピを見る機会があるんだけど、先日Twitterを中心にブームになったのが「桃モッツァレラ」だよ。 アキ えらく、「も」が多い料理ですね。 Dr.T 桃とモッツァレラという意外な組み合わせで信じられないくらいおいしくなることや、手軽さなんかがウケたみたい。元は料理家の内田真美さんが考案したものなんだけど、確かにこれはちょっと気になるよね。 アキ 確かにモッツァレラはいろんな食材に合いますけど、桃と合わせようと発想したことはなかったですね。 Dr.T ただ、注目が集まった弊害か、正しいレシピじゃない作り方も出回ったりしたんだ。グルメブロガーのツレヅレハナコさんのツイートいわく、  ってな感じで、材料費をケチってレシピを改変すると、せっかくの料理が台なし。だからぜひ、ちゃんとしたレシピで作ってみてほしい。詳しい作り方はTogetter(http://togetter.com/li/710612)にまとめられているから、参考にしてね。 アキ ちなみに、Dr.Tは作ったんですか? Dr.T 作ってみたよ! もちろん正しいレシピでね。これがもう、すばらしくおいしかった! ワインが進む味だったね。ネットではこういう情報がたまに出てくるから、やめられないんだよな〜。 アキ (ワインが進む代わりに、これはDr.Tのダイエットは進みそうにないですね……) Dr.T ん? 何か言った? ■「うわぐつ」「うわばき」分布図がTwitterで話題に Dr.T 突然だけど、アキちゃんは昔「うわぐつ」って呼んでた? それとも「うわばき」だった? アキ 何ですか、急に。「うわばき」ですよ。というか、「うわぐつ」なんて言います? Dr.T それが地域によっては言うんだよな〜。知らなかったでしょー。 アキ ……なんか、ムカつくテンションですね。 Dr.T ごめんごめん。いや、僕も知らなかったんだけどさ、先日Twitterで中村ゆきひろさんのツイートが話題になっていたんだ。それが、「うわぐつ」「うわばき」分布図! 実は日本の各地域で、どう呼ぶかが違うんだよね。たとえばアキちゃんは東京出身だから「うわばき」だけど、僕は「うわぐつ」地域なんだよね。 アキ どれどれ……あっ、本当だ。北海道は一部以外「うわぐつ」で、関東はほとんど「うわばき」なんですね。面白いですね、これ! Dr.T さらに、てっきり「うわぐつ」「うわばき」だけかと思ったら、東北の方は「ズック」だったりして、意外な発見があったりね。こういうのがネットの集合知だよね。 アキ ところで気になるのが、和歌山県の「バレーシューズ」なんですけど……。 Dr.T それは僕も気になったんだけど……中村ゆきひろさんによると、「バレーシューズ」は主に県中部の呼び方で、県南部は「うわばき」、県北部は「うわぐつ」が多いみたいだよ。ここだけ全部入り交じっているのは興味深いね。 アキ こういうの、ほかにも探したらいろいろありそうですね! Dr.T たとえば、アキちゃんの好きなボーイズラブをBLと呼ぶか、やおいと呼ぶか、みたいな? アキ BLとやおいの違いは、地域性とは関係ないですから! 中途半端な知識で語らないでください! Dr.T ひー! ご、ごめんごめん! (構成=Dr.T)

言葉の通じない海外で突然逮捕されたらどうなる!? ある女囚の叫び『マルティニークからの祈り』

martinique-movie01.jpg
2006年に発覚した「チャン・ミジョン事件」を映画化した『マルティニークからの祈り』。海外収監者の悲惨な境遇が白日の下にさらされる!!
 高級リゾートマンションで暮らすことができても、自由に外出することも連絡をとることも許されなければ、そこは監獄と同じだろう。逆にどんなにボロボロの四畳半一間でも、愛する人と一緒の生活ならば、それは天国の日々となる。チョン・ドヨン主演作『マルティニークからの祈り』は、人間が置かれた環境条件がどれだけその人の精神状態に影響を及ぼすかをまざまざと教えてくれる。さらに、この作品が興味深いのは、実際に起きた事件を描いているということだ。2004年にフランスの空港で起きた韓国人主婦麻薬運搬事件(チャン・ミジョン事件)が題材。自国語しか話せない平凡な主婦が麻薬密輸の疑いで海外で逮捕され、裁判が開かれないまま2年間にわたって拘束され続けたという恐ろしい事件の顛末が明かされる。  ヒロインを演じたのは、『シークレット・サンシャイン』(07)での熱演でカンヌ映画祭主演女優賞に輝いたチョン・ドヨン。韓国映画界が誇る実力派女優の主演作で、しかも韓国映画がもっとも得意とする実録社会派サスペンス。なおかつ、絶望と肉欲が渦巻く女囚もの。映画好きにとっては堪らない、切り札が3枚もそろった見応え充分な力作となっている。  ジョンヨン(チョン・ドヨン)は韓国で暮らす普通の主婦。決して楽な生活ではないが、お人好しの夫ジョンベ(コ・ス)とかわいい娘ヘリン(カン・ジウ)と幸せに暮らしていた。ところが、ジョンベが親友の借金の保証人になったことから暗雲が立ち込める。親友は借金を残したまま首を吊り、ジョンベは2億ウォンの返済を肩代わりするはめに。アパートの家賃も払えずに途方に暮れる夫妻に、奇妙なアルバイトの依頼が届く。「金の原石を運んでほしい。万が一、税関でバレても罰金を払うだけで大丈夫だ」という眉唾な仕事内容。しかも、女性にしかできないらしい。いぶかしむジョンヨンだったが、背に腹は換えられないとこの高額バイトを引き受ける。フランスのオルリー国際空港の税関をドキドキしながら潜るジョンヨン。案の定、税関の係員に呼び止められて鞄を開いてみると、中身は金の原石ではなく大量のコカインだった。フランス語が話せないジョンヨンはまったく弁解できないまま、収容生活を余儀なくされる。  本作を観た人は誰しも、フランス在住の韓国大使館員たちの無責任さに怒りを覚えるだろう。ジョンヨンは大使館に何度も事情説明の嘆願書を送るが、エリート然とした大使館員たちは「また、麻薬おばさんからだよ」と鼻で笑い、嘆願書を読もうともしない。犯罪者のために国の税金を無駄に使えないと、通訳を手配することもない。フランスの国選弁護士がジョンヨンを訪ねるが、言葉が通じないので意味がない。ジョンヨンは家族に連絡することもままならず、いつ裁判が開かれるのかも分からない状態のままパリの留置場で孤独な生活を強いられる。やがてジョンヨンは、カリブ海の孤島・マルティニークにある女子刑務所へと移送。宝石のように輝くカリブの美しい光景とは裏腹に、ジョンヨンは家族に会えないことに悲嘆し、髪の毛が抜け落ち、みるみるうちにやせ細っていく。ここらへんの極限演技は、『ハッピー・エンド』(99)や『ハウスメイド』(10)でも体当たりぶりを見せたチョン・ドヨンの独壇場だ。『あしたのジョー』(11)での伊勢谷友介か、本作のチョン・ドヨンかというくらい鬼気迫るものを感じさせる。
martinique-movie02.jpg
「ママはちょっとお出かけしてくるから、いい子にしててね」と軽い気持ちで娘と別れたジョンヨン(チョン・ドヨン)。まさか刑務所送りになるとは。
 チャン・ミジョン事件を取材した新聞記事、さらにドキュメンタリー番組『追跡!60分』を見て、映画化に動いたのはパン・ウンジン監督。『受取人不明』(01)などキム・ギドク作品で印象的な演技を見せていた元女優だ。アラン・パーカー監督の実録獄中記『ミッドナイト・エクスプレス』(78)同様のリアリティーに、女囚もののお約束ともいえるレズビアン看守によるヒロインの貞操危機シーンなども盛り込み、緊張感と娯楽性に溢れた社会派作品に仕上げている。裁判に必要な書類を紛失するなど大使館員たちの杜撰な対応がヒロインを苦境に追い込むが、このエピソードは事実らしい。ウンジン監督に事件の内情について聞いてみた。 「映画なのでキャラクターは多少戯化してはいますが、事件に関するエピソードは事実に基づいたものです。大使館員はチャン・ミジョンさんに『フランスでは麻薬に関わる事件は重罪。10~20年、中には100年の罪になることもある』と無責任な言葉を残して帰っています。『マルティニーク島には朝鮮語を話せる人間は誰もいない』という発言も実際に大使館員がしたものです。インターネットでこの事件のことを知った韓国人が『それはおかしい。私の親戚がいます』と名乗り出たことで、ミジョンさんはようやく通訳を得て、窮地を脱することができたんです。この事件のことを知らなかった人は韓国でも意外と多く、映画化をきっかけで事件の内容が広まりました。韓国の外交部(外務省)はこの映画のことを面白く思っていないようですね(苦笑)。フランスやドミニカ共和国でもロケ撮影してますが、外交部の無言の圧力を感じることがありました。多分、私は目をつけられていると思います(笑)。もし外交部が映画の公開に干渉してきた場合は、ノイズマーケティングで対抗してやるくらいの覚悟でした。こちらには実話なんだという強みがありましたから。でも、これは韓国だけに限った事件ではないと思うんです。日本をはじめどの国でも、海外で罪に問われて収監されたままの人たちは少なくないはず。なのに彼らが存在することは、母国の人たちにはほとんど知らされていない。こんな事件がもう起きてほしくないという願いから、この映画は完成させたんです」  ホテトル嬢連続拉致殺害事件を題材にした『チェイサー』(08)、障害児童の性的虐待を扱った『トガニ 幼き瞳の告発』(11)、幼女暴行事件と裁判の行方を描いた『ソウォン/願い』(現在公開中)など韓国映画は実録サスペンス、実録犯罪もののレベルが非常に高い。東野圭吾のベストセラー小説の映画化『容疑者X 天才数学者のアリバイ』(12)を撮るなど、日本文化に理解のあるウンジン監督は韓国映画界についてこう語った。
martinique-movie03.jpg
刑務所から送られてくる手紙を心待ちにしていた夫ジョンベ(コ・ス)。だが、娘は「ママの顔、忘れてきちゃったよ」と残酷な言葉を……。
「日本では人気コミックや小説の映画化が盛んですね。話題になったテレビドラマも映画化されますし、逆に映画がノベライズやコミカライズされることも多い。メディア間の連係がとてもスムーズ。韓国でももちろん原作付きの映画はありますが、日本ほどではないように思います。最近の韓国映画の傾向として、実際に起きた事件を映画化するジャンルが人気なんです。声を出したくても声を出すことが叶わない、社会の影に隠れている人たちの心情を汲み取ったものです。一概には言えませんが、日本と韓国の文化の違いもあるかもしれません。日本の映画は個人的な問題をテーマにしたものが多いように感じますが、韓国では個人対組織、または対立する組織に属する者同士の対決といった図式のドラマを、作る側も観る側もどちらも求める傾向にあるようですね」  チョン・ドヨンの熱演に目が奪われる本作だが、妻の帰りを待ち続ける家族もまた辛い。妻のいない日々、夫は妻の残したパンティーを手にするが、どのパンティーもよれよれで擦り切れていることに気づき、夫は自分の不甲斐なさに号泣する。『高地戦』(11)や『超能力者』(10)の二枚目俳優コ・スが情けなく泣き崩れる印象的なシーンとなっている。「どの国でも、男性はみなさんこのシーンにとても共感するようですね」とウンジン監督はおかしそうに笑った。 (文=長野辰次) martinique-movie04.jpg 『マルティニークからの祈り』 監督/パン・ウンジン 脚本/ユン・ジノ 出演/チョン・ドヨン、コ・ス、カン・ジウ、ペ・ソンウ、コリンヌ・マシエロ 配給/CJ Entertainment Japan 8月29日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー  (c)2013 CJ E&M CORPORATION,ALL RIGHTS RESERVED http://martinique-movie.com/

悪質なパクリサイトが急増中……あなたもやっていない? 嫌われる「バイラルメディア」のシェア

buzz.jpg
イメージ画像
 「バイラルメディア」が、いい意味でも悪い意味でも注目を集めている。バイラルメディア(Viralmedia)の、「Viral」は「ウイルス性の」という意味。「バイラルメディア」はその単語を含む造語で、ネット上で感染するように情報を広める、ウェブメディアを指している。「BuzzFeed」(http://www.buzzfeed.com/)が先駆者として有名だ。  当サイトのユーザーも、バイラルメディアの記事を何度か読んでいることだろう。面白い画像や動画を集めた内容で、SNSで急激に拡散しているためだ。お涙ちょうだいのストーリーもあれば、決定的瞬間とかユニークな広告とか動物ものなど、ジャンルはさまざま。共通しているのは、キャッチーな見出しでクリックさせようとしている点。一般的なブログを運営するのとは桁違いのページビューが集まるので、広告収入で荒稼ぎしているのだ。  新しい形で収益を上げるネットサービスが出てくるのは大歓迎だ。今の人たちはSNSで情報を扱うことが多いので、ターゲットになるのもうなずける。もちろん、オリジナルコンテンツを作成しているバイラルメディアなら、面白いし情報収集にも役立つ。問題は、記事のパクリが横行していることだ。日本では1年ほど前からはやり始めたのだが、今年に入ってまさにパンデミックのように乱立。そのほとんどが、海外サイトや2ちゃんねるからネタをパクッている。ひどいことに、ライバルの国内バイラルメディアからパクることも多い。きちんとした資本が入っている大手バイラルメディアでも、ほかのサイトから画像やコンテンツを盗作することもある。  バイラルメディアはネットで作り方を勉強すれば、誰でもすぐに始められる。とりあえず小遣い稼ぎになればいい、という人はモラルもへったくれもない。パクリにパクッてスパムページをダダ流れにする。少々手をかけて運用しているところでも、書き手をクラウドソーシングでかき集めている状態。1記事100円前後という超絶ブラックな案件も多く、ヘタをすると1件25円ということも。この手の低俗なバイラルメディアが乱立することで、「バイラルメディア=うざい」という認識が持たれ始めているのだ。  Facebookも今月25日に、悪質なバイラルメディアの排除に乗り出した。キャッチーな文句と画像でクリックさせようとする投稿のリーチ数を激減させるというものだ。リンクを開いた後に、どのくらいの時間でFacebookに戻ってくるのかを考慮するという。内容が薄い記事なら、短時間で戻ってくるというわけだ。これからは、クリックさせようと必死な投稿があったら、従来のように無視するのではなく、一瞬で閉じて反撃するという手もある。  「●●するための10のこと」いったリスト記事や衝撃的な画像や動画を見て反射的にシェアすると、友人にうざがられるということを覚えておいたほうがいい。見たことのないネタならともかく、数カ月~数年前にはやったネタをドヤ顔で共有していると、ちょっとイタイ。バイラルメディアそのものは、情報過多のこの時代に便利なサービスなのだが、パクリ業者を儲けさせることもない。記事をシェアするつもりなら、元ネタのバイラルメディアを利用しよう。くれぐれも、悪質なパクリサイトの釣り投稿に引っかからないようにしてほしい。 (文=柳谷智宣)

庵野秀明、山賀博之ら有名クリエイターの裏話だけじゃない! ド直球青春ドラマ『アオイホノオ』

aoihono0826.jpg
ドラマ24『アオイホノオ』テレビ東京
「あだち充、俺だけは認めてやる!」 「あだち充、あいつ野球マンガの描き方を全然分かってないんだぁ。ダメだよー。いや、俺は好きだけどさー。俺はあだち充が好きだから、ひいき目で見てやってるから面白いけどさー」  あのあだち充に対してどこまでも上から目線の男、それが『アオイホノオ』(テレビ東京系)の主人公、焔モユルである。  『アオイホノオ』の舞台は「若者のファッションと文化が一斉に花開いた時代」である1980年の大阪芸術大学だ。原作は、島本和彦の自伝的マンガ。だから、あだち充、高橋留美子、石ノ森章太郎、松本零士、永井豪といった時代を彩ったクリエイターたちが実名で登場する。名前だけではない。権利関係が煩雑な昨今、“よくぞここまで!”とうなってしまうほど、彼らの作品や本物の声優を起用するなど、忠実に再現している。  監督・脚本は福田雄一。『勇者ヨシヒコと魔王の城』(テレビ東京系)、『コドモ警察』(TBS系)、『メグたんって魔法つかえるの?』(日本テレビ系)、『天魔さんがゆく』(TBS系)、『裁判長っ! おなか空きました!』(日本テレビ系)、『新解釈・日本史』(TBS系)と、次々と深夜のコメディドラマを量産している売れっ子だ。ある意味、いま最もコンスタントに“コント”を作っている作家ともいえる。そんな福田が島本マンガをドラマ化するのだから、笑えないわけがない。  プロのマンガ家を目指す主人公・焔モユルを演じるのは柳楽優弥。映画『誰も知らない』で、第57回カンヌ国際映画祭「最優秀男優賞」を最年少14歳で受賞するという快挙を成し遂げ一躍注目されたが、以降は決してその注目に値する活躍とはいえなかった。カンヌ受賞から10年、『誰も知らない』の自然な演技とは真逆の、熱い男を演じている。喉仏まで見えてしまうほど口を大きく広げ、血走るほど目を見開き、大量の汗が滴り落ちる。その過剰すぎる顔芸! それと呼応するように張り上げた絶叫。うるさいほどの饒舌な独白。マンガから飛び出してきたようなハマりっぷりだ。  ハマッているのは、柳楽だけではない。彼の同級生として登場する庵野ヒデアキ(安田顕)、山賀ヒロユキ(ムロツヨシ)、赤井タカミ(中村倫也)もまた、ハマりまくっている。庵野とは、言うまでもなく後に『新世紀エヴァンゲリオン』を作る庵野秀明のことだ。山賀や赤井も、庵野ともにガイナックスで活躍するアニメ界における重要人物だ。稀代のプロデューサーとなる山賀は、庵野や赤井の才能をいち早く見抜き、「こいつらは絶対捕まえておこう! そうすれば一生食いっっっっぱくれない!」と、2人を自分のグループに取り込んでいく。モユルは幸か不幸か、そんな天才たちと机を並べることになったのだ。  モユルは、庵野たちが作る作品に打ちのめされていく。たとえば、グループで映像作品を作る課題で、モユルは絵コンテを担当する。しかし、出来上がった作品は自分の絵コンテがまったく生かされていない、どうしようもないものだった。一方の山賀グループは、アンコールが起こるほどバカ受けする『ウルトラマン』のパロディを作り上げた。「完敗です……」と、真っ白な灰になったようにうなだれながら、モユルはその作品の何がスゴいかを的確に解説していく。 「誰もが『ウルトラマン』や『仮面ライダー』のようなヒーローモノを撮ってみたい。でも撮れない。それはなぜか? ハードルが高いんです。まず金がなくて、着ぐるみが作れない。(略)しかーし、(庵野たちは)着ぐるみなんか着ていない、ただのジャージとウインドブレーカーだけ。そこが悔しい! どんな格好をしていようが、カラータイマーをつけてしまえばウルトラマン。そんなにもチャチなのに、チャチに見えない。ちゃんと巨大な感じもする。それはなぜか? 音なんですよ! 『ウルトラマン』に実際に使われている効果音をそのまま使っているんです。単なる子どもがやるようなウルトラマンごっこに本物の効果音。その着眼点! その着眼点がスゴいんです!」  そうやって、庵野たちの才能に傷つくモユル。だがここで、モユルに元来備わっている才能もあらわになっている。それは“嫉妬する才能”だ。ちゃんと嫉妬するには、相手の何が優れているのか見極めることが必要だ。モユルは、相手の作品の何がスゴいのかをハッキリと理解している。理解しているからこそ、自分との差が浮き彫りになり、打ちのめされるのだ。  だが、モユルの才能はそれだけではない。 「他人の作品を過大評価できるということは、俺の器がデカい証拠。つまり、まだ俺のほうが勝っている可能性大!」 「感動せん限り、俺の勝ちだぞ、庵野ぉーー!」 「確かにこいつらは、俺より“先”に行っているかもしれません。しかし、“上”には行ってないんですよ」 などと、ダメな現状をごまかす屁理屈と詭弁を駆使する才能だ。真骨頂は、東京へのマンガの持ち込みが失敗した時のエピソードだ。 「今回は辞退だ! クリエイターたるもの、納得できてない作品は世に出してはいかん!」「一流になる男は納得したものしか出さん!」 などと、トンデモ理屈で言い訳して課題の提出をも見送ったりもしていたモユル。だが、ついに一念発起してマンガを描き切り、友人と共に上京し、出版社に持ち込みをする。しかし、自信とは裏腹に、まったく手応えのない反応しか返ってこなかった。 「完全に東京に打ちのめされたんだ。まったく評価されないマンガを自分が描いていたなんて気づいていなかったし、気づきたくもなかった。持ち込みなんてしなきゃよかったんだ! 東京なんて来なきゃよかったんだ!」 と落ち込むモユルだが、大阪に帰ると一変する。持ち込んだ際、作品をコピーされたという一点だけを拠りどころにして「月間持ち込み大賞」に受賞しているはずだと、周囲に吹聴するのだ。 「俺ってすごいんじゃないか? 持ち込みが大失敗したことを悟られないために、脳みそをフル回転させてでまかせを言ってみたが……全然、でまかせじゃない!」  幾度となくどんなに打ちのめされても、たった一欠片の希望を信じ、何度でも奮い立っていく。  モユルは、どうしようもなく弱い人間だ。けれど、誰よりも熱い。その熱が、自分を強い人間だと自分自身に思い込ませている。ある意味で、それはモユルの持つ特別な才能だ。モユルは自分を“騙す”天才なのだ。その姿は滑稽で、コメディにしか見えないかもしれない。けれど、切ないほど真剣だ。だから笑いながらも、どこか胸の奥が痛くなる。  もちろん『アオイホノオ』は、80年代のサブカル史としても面白い。また、庵野をはじめとする有名クリエイターの裏話的な面白さもある。だが、何よりも、まだ何者でもないにもかかわらず、自分には特別な才能があると信じて疑わないモユルの挫折、葛藤、嫉妬、挑戦を描いた、ド直球の青春ドラマなのだ。  庵野は、前述の『ウルトラマン』パロディが大ウケし、アンコールが起きた時に悔しそうに言い放った。 「ウケようと思って作っているのではない! 感動させようと思ってるんだ!」  それはまさに、『アオイホノオ』という作品全体が発しているセリフではないだろうか? (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

ヒトラー“生命の泉”計画を倣って王国建設!? 謎が深まる「タイ代理出産問題」

motoki0826.jpg
「週刊文春」8/28号 中吊広告より
今週の注目記事 第1位 「高橋大輔に無理チューしていた橋本聖子 セクハラ写真公開」(「週刊文春」8/28号) 第2位 「タイ代理出産光通信御曹司・重田光時 乳幼児『養育農場』に初潜入!」(「週刊文春」8/28号) 「億万長者『光通信創業者』ご長男の人間牧場」(「週刊新潮」8/28号) 第3位 「天皇が漏らされた2015年『訪韓』のご決意」(「週刊文春」8/28号) 第4位 「安倍『連日の歯医者通い』の異変」(「週刊ポスト」9/5号) 第5位 「湯川遙菜さんの父親が慟哭告白」(「週刊現代」9/6号) 第6位 「『女性に優しい企業』ランキング」(「週刊朝日」9/5号) 今週の論争記事 「朝日新聞の慰安婦報道検証記事について」  講談社現代新書から『ジャーナリズムの現場から』という本が出た。この本に関わったわけではないが、このタイトルは私が週刊現代編集長時代に作った2ページ連載のタイトルである。  若い編集者に、ジャーナリズムの中で起きていることを勉強してもらおうと始めたもので、自分で言うのはなんだが、内外から好評の連載であった。今回の人選は、私には今ひとつピンとこないが、懐かしい。  注目記事には取り上げなかったが、現代のみのもんたインタビューとポストのビートたけしの連載に注目すべき発言がある。まずは、みのから。 「最近のテレビが権力に弱くなったのは確かです。堂々と論陣を張っていないように見えますね。生意気に聞こえるかもしれませんが、僕が辞めてしまったことで、視聴者が損をしているような気がします」  みのに言われたくない気はするが、今の局アナはもちろんのこと、コメンテーターに聞くに値する人物がいないことは間違いない。お次は、たけし。 「オイラは昔から『オネエチャンと食い物がセットになったら番組は終わりだ』と思っている。それが一番簡単で、それなりに形になる安易な方法なんでね」  テレビ東京が、予算がないため苦肉の策で始めた安いタレントを使った旅と食い物企画を、他局が物真似した番組が花盛りである。それに、NHK BSの『街歩き』の物真似。あとは無駄に声を張り上げるお笑い芸人が大挙して出る番組ばかりだから、地上波で私が見たい番組はほとんどない。凋落しているのは、フジテレビだけじゃない。このままでは、テレビを見る人間は減るばかりであろう。  さて、今週はどの週刊誌を見ても朝日新聞バッシングの記事ばかりである。そこで各誌の論調やタイトルを俯瞰して、私なりの考えを述べてみたい。  朝日新聞は8月5日朝刊で「慰安婦問題 どう伝えたか」と題する自社報道を検証する記事を掲載した。その中で、戦争中、植民地だった朝鮮の女性を暴力などを使って強制的に慰安婦に徴用したと話した吉田清治氏(故人)の証言を、当時は「虚偽」だと見抜けなかったと認め、当該の記事を取り消した。  当然ながら、週刊誌から一斉に「朝日新聞、それ見たことか」と、大バッシングが起こっている。  今週もポストや現代が叩いているが、まだかわいい(?)ほうだ。文春、新潮のタイトルはもっと厳しい。「朝日新聞よ、恥を知れ!」(文春)、「全国民をはずかしめた『朝日新聞』七つの大罪」(新潮)。新潮は、コラムを持っている櫻井よしこ氏も担ぎ出して「不都合な史実に向き合わない『朝日新聞』は廃刊せよ」と迫っている。 「『職業的詐話師』と秦氏が喝破した吉田氏の嘘を、2014年までの32年間、事実上放置した朝日は、その間、捏造の『強制連行』説の拡散を黙認したと言われても仕方がない。(中略)史実を曲げてまで日本を深く傷つけた朝日は、全力で国際社会に事実を伝えた上で、廃刊を以てけじめとすべきだ」(櫻井氏)  私はもう一度、朝日の当該記事を読み直してみた。吉田証言は指揮命令系統からも、当時、吉田氏がいたとされる済州島に陸軍の大部隊が集結する時期も事実とは思われないのだから、もっと早く虚偽だという判断はできたはずである。  なぜ今なのか、という疑問がわく。文春によれば、木村伊量社長の判断だというが、木村社長は「ちゃんと謝ったほうがいい」という旧友に対して「歴史的事実は変えられない。従って謝罪する必要はない」と答えたというが、これもおかしな話である。  吉田証言は歴史的事実ではなく、明らかな虚偽である。虚偽を報じたのなら、潔く訂正して謝罪するのが当たり前ではないか。また、他紙も吉田証言を使ったではないかという言い方も見苦しい。  推測するに、安倍政権になって右派的論調が強まり、部数的にも苦戦しているのであろう。首相動静を見ていると、木村社長は安倍首相と何度か会っているから、直接苦言を呈されたのかもしれない。そこで弱った木村社長が決断したのではないか。だが社内には、この時期にこうしたものを載せるのは如何なものかという反対意見も多くあるはずだ。そこで吉田証言が嘘だったことは認めるが、強制性に対してや植村隆記者の書いた記事に関しては「事実のねじ曲げはない」と強弁する、謝罪はしないということで手を打ったから、あのような中途半端な検証記事になったのではないのか。  しかし、これだけの大誤報を認めた以上、木村社長は謝罪会見を開き潔く辞任すべきだろうと、私も思う。その上で、日韓併合や植民地時代の苛烈な支配、原爆症で苦しむ朝鮮人被爆者や慰安婦たちの苦しみを、この誤報で帳消しにしてはいけないと主張するべきではないか。  戦時下で、多くの朝鮮人女性が甘言をもって慰安婦にされ、他人には言えない苦労を強いられたことは歴史的事実なのだ。これから朝日がやるべきことは、吉田証言とは別の軍の強制性を示す事実を総力を挙げて取材し、紙面で発表することである。そうしなければ、右派メディアや論客たちによって、「強制性」についてはもちろんのこと、従軍慰安婦は自分から志願し、カネも自由もふんだんにあった悪くない“職業”にされかねない。  週刊朝日は当然ながらこの問題に触れていないが、田原総一朗氏がコラムで触れている。  朝日新聞の検証記事には納得しがたい点が多々あるが、今の週刊誌の朝日叩きには、いずれも強いナショナリズムがバネになっており、それに拒否反応を覚えてしまうので、朝日頑張れと言いたくなると。  しかし、この記事に対する「投書」が紙面に一通も掲載されないことを難じている。私も同感である。自分たちの父祖がやったことを決して忘れず、それについて考え続けることこそ、今の日本人に最も必要なことである。右も左も「バカが多い時代」だから、「日本人はなぜ、『バカ』になったのか 養老孟司×内田樹」(現代)、「大バカの壁」(新潮45)のように、バカ企画が溢れるのだ。  6位は朝日の女性に優しい企業の特集。「女性の役員比率」のベスト5は、P&G、ジョンソン・エンド・ジョンソン、日本GE、トレンドマイクロ、ツクイの順。  「女性の管理職比率」のベスト5は、ツクイ、ユニリーバ・ジャパン、P&G、資生堂、大丸松坂屋百貨店となる。当然ながら、消費者と直接取引する企業が上位にきているし、外資系が多い。  安倍首相は、企業の指導的地位での女性の割合を2020年までに30%にするなどと大風呂敷を広げているが、2013年度では民間企業に占める女性管理職の割合はたった6.6%で、それも2年前に比べて減少しているのだ。安倍さんは、現実を見る目を持つべきである。  湯川遙菜なる人物が、シリアのイスラム過激派「イスラム国(ISIS)」に捕まった映像が流れ、釈放を求めて日本側との交渉が水面下で行われ始めているようだが、安倍首相はさほど関心を持っていないようである。  ポストによれば、広島市の土砂災害にはゴルフを切り上げて官邸に戻ったが、この件を知らされてもゴルフを切り上げることはなかったという。以前の「イラク人質事件」のときは自民党幹事長として自己責任論を展開した安倍さんにしてみれば、今回も自分勝手に危険区域に入り込んだのだから、という想いがあるのかもしれない。  現代によればこの湯川氏、かなり変わった人のようだ。本名は正行というそうだが、彼は多額の負債を抱えて行方をくらましていたとき、「男性の象徴である場所を切断し、切腹を図ったのだ!(自殺に)失敗した時は女性として生きようとも思っていた」とブログに書いている。戦時中、中国でスパイとして活動し処刑された「男装の麗人」川島芳子の生まれ変わりだと考えるようになったそうだ。  なんの知識もないのに戦地での護衛や戦闘を行う民間軍事会社を作り、シリアやイラクに“見学”に行くのでは、政府でなくともいい加減にしてくれとは思うが、人命は地球より重いのだから、無事帰国できることを祈りたい。  安倍首相批判では、どこより鋭いポストに気になる記事がある。安倍首相が連日、歯医者通いをしているというのである。  中南米訪問から帰国した8月4日、6日、11日、12日も歯医者で見てもらっているという。昨年4月にロシアを訪問してプーチンロシア大統領と首脳会談の直前にも歯が痛くなり、現地で大騒ぎになったそうだ。  強いプレッシャーやストレスで歯に症状が出る人は少なくないようだが、ポストによると安倍首相の持病である「潰瘍性大腸炎」との関係がウワサされ、悪化しているのではないかと永田町ではささやかれているという。  歯科医師の杉山正隆氏は、こう話す。 「腸内の歯のバランスは口腔内の歯のバランスと符合します。ストレスや体調を崩している時には口内の悪い菌も腸内の悪い菌も増えるのです。潰瘍性大腸炎の持病を抱える首相が、主治医から腸のことも考えて口内治療に力を入れるように指導されているとも考えられます」  安倍首相の当面のライバル、石破茂氏が安倍首相が打診している安全保障法制担当相を断ったことで、党内の次期総裁をめぐる争いは熾烈になりそうだし、内憂外患の安倍首相に忍び寄る病魔の影。週刊誌的ではあるが、気になる情報ではある。  さて、文春にも気になる記事がある。天皇が来年、訪韓したいと漏らしたというのだ。  天皇皇后に近い千代田関係者の話によると、7月に天皇皇后が宮城県のハンセン病療養所を訪問された際、こう話したというのである。 「皇后さまはこうおっしゃったのです。陛下は戦後70年の節目にパラオと韓国をご訪問されたいお気持ちです、と」  来年は戦後70年、日韓国交正常化50周年の節目の年である。しかも28年前、皇太子夫妻だった天皇皇后は韓国を訪問することが決まっていたのだが、美智子さんの病気のため断念したということがあったため、お二人にとって格別の想いがあるというのである。  先日、山口二郎法政大学教授と話したとき、今の安倍政権をチェックするのはアメリカと天皇しかいないということで話が一致した。  折に触れ、天皇皇后が日本の現状を憂いていることが伝わってくる。もし訪韓が実現すれば喜ばしいことだが、ことはそう簡単ではないだろう。  そこで、ウルトラCとして皇太子の訪韓ならありえるというのだ。皇太子が水の研究をライフワークにしているのは有名だが、来年4月に国際会議「世界水フォーラム」が韓国で開かれるのだ。毎回なんらかの形で参加をしているフォーラムだから、それを「突破口」にしようというのである。ぜひ実現してほしいものだ。  さて、8月5日、タイ・バンコクのコンドミニアムで生後間もない9人の乳幼児が保護される事件が発生した。どの子どもも、ある日本人男性がタイの代理母に産ませた子どもだと判明し、タイの国家警察が捜査に乗り出して大きな騒ぎになっている。  文春の取材に、代理母の1人で、男女の双子を産んだアナンヤー・ペンさんがこう語る。 「産み終えた後、子どもたちはすぐに私から引き離され、一度も顔を合わせることはありませんでした。最初から、父親だけではなく、卵子の提供者も教えてもらえませんでした。出産後に看護婦が『産まれたのは日本人と白人のハーフだった』とこっそり教えてくれました」  このほかにも7人の子どもがおり、そのうち4人はすでに国外に出ているそうだ。この事件の抱える問題の大きさは文春、新潮がともに巻頭で特集を組んでいることでもわかる。  タイ警察はこの男性が事情聴取に応じなかったため、名前や生年月日を公表し、この男性が重田光時氏(24)だと判明した。  彼の父親は重田康光氏(49)で、IT企業大手「光通信」の創業者である。文春によれば、「光通信」は携帯電話の販売代理店からスタートした会社で、浮き沈みはあったが現在はグループ会社200社以上を抱え、連結の売上は5,600億円あるという。  光時氏は長男で、「光通信」の株などを持ち資産は100億円を優に超えるといわれる。独身の大金持ちが、なぜ代理出産で多くの子どもを産ませたのか? 光時氏は相続税対策などと言い訳しているようだが、そんな説明で納得する者はいないだろう。  新潮は、警察が踏み込んだとき子どもの世話をしていた27歳の女性がいて、「この子らの母親です」と答えたと報じている。光時氏の彼女と思われるが、「実は彼女、もともとは男性で、最近性転換手術を受け、女性になった人物なのです」と、地元メディアの記者が話している。  しかし、同性婚で子どもを作れないからといって、何十人も代理出産させるというのはありえない話だろう。しかも代理出産に当たって、光時氏は女性側にさまざまな条件を出しているのだ。  先のアナンヤー・ペンさんがこう語る。 「クリニックの担当者から、胎児の発育状況や健康状態にかかわらず、『お産は9カ月目に帝王切開で行う』と言われました。また、『胎児に障害や、健康状態に少しでも異常が見られるようなら即刻中絶してもらう』とも言われました」  タイのほか、インドでも2人産ませたという情報もある。しかも光時氏は女の子はいらなかったようだ。男の子の名前にはすべて「ミツ」という発音が入っているそうだが、女の子には入っていない。  代理出産してくれた女性には約100万円近く払われたそうだから、現時点でも6,000万円以上が使われていることになるという。光時氏に代理母を2人紹介した女性が昨年8月、バンコクの日本大使館にメールを送り、こう警告していたと『文春』が報じている。 「彼は『毎年10人から15人の子どもが欲しい』と言っており、100~1000人もの子どもを作ろうと計画しているようです」  謎を解く鍵になるかもしれない情報がある。文春は父親・康光氏の高校時代の愛読書がヒットラーの『わが闘争』で、彼の会社はさながら“重田教”で、重田会長を神様のようにあがめていると元社員が語っている。  しかも、両親もカンボジアにある光時氏の隠れ家を何度か訪れ、母親が赤ちゃんを抱きしめてキスしていたと報じているから、光時氏が独断でやっているのではないようである。  代理出産というやり方で「重田帝国」を築くつもりなのだろうか。新潮で精神科医の町沢静夫氏がこう分析している。 「この人物は、斡旋業者に(中略)、自分の遺伝子を多く残すことが社会にとって善だという主旨の話もしています。(中略)この発想から、『生命の泉』計画など、優性思想に基づいて優秀なアーリア人をどんどん増やし、ドイツ民族の繁栄と純血を守ろうと、ナチス・ドイツのヒトラーが行った一連の政策に通じるものがあると思わざるを得ませんでした」  『生命の泉』計画とは、ナチス親衛隊長官だったヒムラーが、優秀な親衛隊隊員とドイツ女性をカップリングし、生まれた子どもはすぐ母親から引き離し「子どもの家」で育てたことをいう。この計画によって4万人の子どもが“生産”されたといわれているそうだ。  私もこの話を聞いて『ブラジルから来た少年』という映画を思い浮かべた。ブラジルでヒトラーのクローンを現代に再生させようと企む科学者と、それを阻止しようとするナチ・ハンターのユダヤ人との闘争を描く、アイラ・レヴィン原作の映画化である。  光時氏は、精子を保存冷凍する機械を設置したいと話していたという。豊富な資金があれば、彼の死後も保存された精子で代理出産を続け、念願の子孫を1,000人にすることも不可能ではない。  その子どもたちが成長して結婚し、子どもをつくれば100年後には……。  光時氏たちがそう考えているのか、現時点ではわからない。だが、科学の進歩は生命倫理の枠を一気に超えてしまうかもしれないのである。文春は「女性を『産む機械』のように使う光時氏は、生命倫理を冒涜しているとしか思えない」と難じているが、重いテーマがわれわれに突きつけられた事件であることは間違いない。  今週の第1位は、橋本聖子参議院議員(49)が高橋大輔選手(28)にキスを強要したという文春の記事。  ちと古いのが難だが2月23日、ソチ五輪閉会後に橋本議員が選手村にあるJOCの部屋にスケート選手たちを集めて酒盛りをした時のことだ。酒が入った聖子ちゃんが次々に選手たちに抱きつき、ついに“氷上の貴公子”高橋選手の肩に腕を回し、キスをした瞬間の写真がグラビアに載っている。  巻頭の写真だけを見ると、熱愛中の二人がダンスをしているうちに唇を自然に合わせたようにも見える。だがページをめくると、嫌がる高橋選手に襲いかかるようにして聖子ちゃんがキスをせがんでいることがよくわかる。  「これは自身の権力を利用した、パワハラ、セクハラといえるだろう」と文春は書いている。橋本議員は強制した事実はないといっているが、写真を見る限り「強制性」ありと見る。これで次の入閣はおじゃん? 彼女の入閣を阻止しようと考えた誰かが「落とす」ために今ごろ発表したのかもしれないが、身から出たサビ、致し方ない。 (文=元木昌彦)

前評判を覆す“ラスボス”の快進撃! 小林幸子はなぜコミケで受け入れられたのか

sachiko0824.jpg
『小林幸子全曲集2013』(日本コロムビア)
 8月15日から17日までの3日間にわたり、同人誌即売会「コミックマーケット86」(以下、コミケ)が東京ビッグサイトにて開催された。運営の発表によると、今回の来場者は合計55万人。昨年の夏コミは59万人の集客があったので今年は約4万人減少した形となるが、これは集計方法の変更によるところも大きいようだ。しかし、どちらにしろ50万人以上が集まる自主市なんて、世界のどこを探しても見つけることはできない。コミケは間違いなく、世界最大の自主流通マーケットなのである。マスメディアもこぞって取材を行い、民放3社の朝のニュースなどでは好意的な特集も組まれていた。かつての「ここに10万人の宮崎勤がいます!」といったネガティブなイメージは完全に払拭され、すっかりオタク文化がマジョリティとなりつつある。  さて、そんなコミケに今回、演歌界の大御所、小林幸子がサークル参加を果たした。プロの第一線で活躍している彼女の同人イベント参入には、コミケ開催前からさまざまな物議を醸し出していた。もちろん大物芸能人だからということもあるが、そもそもアマチュアの世界である同人業界において、プロが作品を出すことには難色を示す人が多いからである。なぜかといえば、まずコミケに限らず、同人イベントには店と客という概念がない。サークル側として自分が制作したものを頒布する人は“サークル参加者”、コミケの会場に来てそれぞれの制作物を購入する人は“一般参加者”であり、売り手も買い手も等しく“イベントの参加者”という立場を取る。それぞれの参加者は、イベントを無事成功させるために、お互いマナーを守って売買を行う。なので、当然売り手が上から目線でいてもいけないし、買い手がお客様気分でいても駄目なのだ。お互いフラットな関係でなくてはならない。ビジネスとしてお金を取って活動しているプロがそこに入ってくることを毛嫌いするのは、むしろ当然と言えるであろう。  しかし、いざフタをあけてみると、CD1500枚を即売し、5時間待ちの行列を作るなど大人気。Twitterなど現場からの実況は小林幸子大絶賛の声で埋め尽くされていた。小林幸子は、どうしてこうもコミケ参加者たちに受け入れられたのだろうか? 付近にいた参加者にその様子を聞いてみた。 「芸能人だからといってVIP入場するのではなく、普通にほかの人と同じようにサークル入場口から入っていました。イベント中もずっと笑顔で手売りしていましたし、頒布物が完売した後も、並んでいる一人ひとりと握手されてましたね。また、自ら周りのサークルにも挨拶していらっしゃったそうです」  大物芸能人だからといって特別扱いされることを受けず、コミケの基本精神(お互いが等しくイベント参加者)に則った行動をしていたからこそ、多くの人から賞賛の声が上がったのだ。今まで演歌など聴いたことないような若い参加者も、コミケを機に小林幸子のファンになったといった話も聞く。売り切れたCDはその後、ネットオークションで高騰するなど反響を呼び、再販の要望も多数上がっているそうだ。  今回、アマチュアの世界にプロが逆参入してきて成功を収めるという稀有な例を、小林幸子は示したと言えるだろう。これを受けて、我も続けと参入してくるプロが、今後も現れるかもしれない。メジャー流通の音楽セールスが頭打ちしている今、コミケの盛り上がりは確かに熱い。しかし、だからといって安易にプロが参加したとしても、いい結果は生まれないだろう。コミケの理念に沿った形で参加しなければ、いくら作品が素晴らしくても参加者たちから受け入れられることはないのである。  小林幸子は叩き上げの人と聞く。地方営業であろうが中小企業の慰労会であろうが、これまでどんな客とも真摯に向き合ってきた。だからこそコミケという場に来ても、ほかの参加者と同じ目線で接することができたのだ。紅白歌合戦のラスボスは、やはり伊達ではない。 (文=織作亜樹良)

身に覚えのある男はスクリーンを直視できない!? “虚構”が“現実”を侵蝕する恐怖ドラマ『喰女』

kuime_movie01.jpg
古典的ホラー『四谷怪談』を現代に甦らせた『喰女』。4時間以上掛けた特殊メイクでお岩に扮した柴咲コウがまじで怖い! トラウマになるよ!
 男には誰しも浮気願望がある。大恋愛の末に結ばれた恋人や奥さんがいても、素肌がまぶしい若い女の子についつい目移りしてしまう。行動に移すかどうかは別にして、浮気心を抑え込むのは非常に難しい。そんな男たちが胸の奥に隠し持っているやましさ、後ろめたさを、ひんやりと鷲掴みするのが三池崇史監督の『喰女−クイメ−』だ。古典的実録ホラー『四谷怪談』をベースにした『喰女』はあまりに恐ろしく、心に思い当たる節のある男性はスクリーンを直視できないだろう。『喰女』で描かれる恐怖は超常現象的なものではなく、女性が持つ情の深さ、嫉妬心、独占欲の恐ろしさなのだ。  『喰女』の面白さ(=怖さ)は、劇中劇という構造によって江戸時代後期に歌舞伎の演目として誕生した『四谷怪談』を現代に甦らせたことにある。日本のメジャー映画でここまで大々的に劇中劇を取り入れたのは、薬師丸ひろ子主演作『Wの悲劇』(84)以来ではないか。どこまでが芝居で、どこからが現実なのか分からない、怪しい迷宮世界となっている。客席で観ていた観客もいつしか作品の中に迷い込んでしまう。虚構であるはずの世界に現実が呑み込まれていく怖さに、思わず客席の腕掛けを握り締めてしまう。  『喰女』の主人公は、テレビや映画に引っ張りだこの人気女優・美雪(柴咲コウ)と美雪と同棲中の男優・浩介(市川海老蔵)の2人。浩介は二世俳優で、生まれついての才能は持っているものの、「女遊びは芸の肥やし」とばかりに朝帰りを続け、役者としては大成できずにいる。美雪との肉体関係がズルズルと続いているが、入籍しようという気配もない。そんな煮え切らない状況に白黒つけるべく、美雪は初めて挑む舞台『真四谷怪談』の共演相手に浩介を指名する。実生活で同棲中の女優と男優が、舞台でお岩と伊右衛門の夫婦を演じるというデンジャラスな配役だ。この時点で、美雪という女性はかなりの危険人物であることが分かる。浩介は度胸があるのか、何も考えていないのか、平然とこの挑戦を受けて立つ。かくして、どこまでが役づくりなのか、それとも本人の本音なのか判別できない、ドロドロの舞台の稽古が始まる。ショー・マスト・ゴー・オン。舞台と恋は最後の幕が降りるまで、途中でやめることは許されない。
kuime_movie02.jpg
美雪(柴咲コウ)と浩介(市川海老蔵)は舞台『真四谷怪談』で共演することに。役づくりにのめり込み、どこまでが芝居か現実か分からなくなっていく。
 舞台稽古が始まって間もなく、浩介は『真四谷怪談』でお梅役を演じる若手女優・莉緒(中西美帆)との火遊びに興じる。莉緒が演じるお梅は、伊右衛門に横恋慕してお岩から奪ってしまう裕福な武家の子女役。浩介と莉緒は役づくりを兼ねてベッドを共にする。浩介の後先考えない役者バカぶりは、観客の目には否応なく現代のカブキもの・市川海老蔵のキャラクターと重なって映る。浩介の帰りを待ちながら夕食の準備をする美雪が、次第にお岩役に入っていく姿にゾッとさせられる。柴咲も大人の女の情念をじっとり演じられた今回の美雪/お岩の2役に、今までにない手応えを感じているようだ。出世作『バトル・ロワイアル』(00)での“世界でいちばん鎌の似合う女”相馬光子以来といえる強烈キャラクターを嬉々として演じていることが、スクリーン越しに伝わってくる。『喰女』は単なる劇中劇ではなく、市川海老蔵や柴咲コウの素の部分も透けて見える、いわば三重構造の劇中劇なのだ。『IZO』(04)でフィクションとリアルの壁をブチ壊した、三池監督らしい型破りな世界ではないか。  市川海老蔵の飲み仲間である伊藤英明が伊右衛門と悪巧みを働く宅悦役で出演しているのも、虚構と現実との境界をより曖昧なものにしている。映画では美雪の付き人・加代子(マイコ)が思わせぶりな言動で気を惹くが、原作小説『誰にもあげない』を読むと、付き人として美雪の交際相手のことも知っておくべきと、浩介と肉体関係まで経験していることが明かされている。美雪、莉緒だけでなく、加代子もまた女の怖さをまざまざと感じさせるキャラクターなのだ。  同じ舞台で共演することになった俳優たちの虚々実々なやりとりが繰り広げられる『喰女』だが、男と女が同じ家で一緒に暮らすということにもある種の演技が伴うだろう。男はその場しのぎの噓をつき、女はその噓を見破りながらも笑って受け止める。『喰女』にはフィクションとは思えない、リアルな怖さが漂う。普段はどんなに温厚な女性でも、一度怒りの炎が燃え上がると最凶鬼女に変身することを男は知っているからだ。
kuime_movie03.jpg
美雪とお岩の2役を演じた柴咲コウ。ホラー映画というジャンルには収まらない、きれいごとでは済まない男と女のドラマとして演じてみせた。
 都市伝説的に言い伝えられるお岩さんの祟りの背景には、長い長い封建制度の中で虐げられてきた女性たちの恨みつらみが積み重なっている歴史があり、そのことが男により恐怖を感じさせる。さらに女性には、妊娠&出産という男には絶対できないことをやってみせる強靭な体力と精神力がある。どうしたって、男には勝ち目はないのだ。ただただ、涙目状態で『喰女』の二転三転するクライマックスと美雪と浩介の舞台の行方を見守るしかない。  浩介と浮気相手の莉緒は情事の後のベッドで、こんな会話を囁き合う。 莉緒「伊右衛門はどうすれば幸せになれたのかな?」 浩介「伊右衛門は幸せになんかなれないよ」  同性の肩を持つわけではないが、観ているうちに浩介/伊右衛門が次第に哀れに感じられてくる。男と女のゲームに勝ち目がないことを知っていながら、ゲームにエントリーしてみせた浩介。彼にできることは、愛情の裏返しである怨念の洪水を全身に浴びることだけだった。 (文=長野辰次) kuime_movie04.jpg 『喰女−クイメ−』 企画/市川海老蔵、中沢敏明 原作・脚本/山岸きくみ『誰にもあげない』(幻冬舎文庫) 監督/三池崇史 出演/市川海老蔵、柴咲コウ、中西美帆、マイコ、根岸季衣、勝野洋、古谷一行、伊藤英明 配給/東映 PG12 8月23日(土)より全国ロードショー (c)2014「喰女−クイメ−」製作委員会 http://www.kuime.jp

鈴木奈々は生きることを肯定する 日テレ『ナカイの窓 ムダに明るい人達SP』(8月13日放送)を徹底検証!

51f13Uy4jTL.jpg
『一所懸命』(竹書房)
 おバカタレントというジャンルがある。言葉としての定義をするなら、突飛な言動や一般常識のなさを披露することで視聴者を笑わせるタレント、といったところだろうか。かつてヘキサゴンファミリーが席巻していたこのジャンルにおいて、2014年現在トップを走っているのが鈴木奈々だ。2011年3月に小森純の妹分として『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)でテレビ初出演を果たすと、そのキャラクターは一躍話題を呼び、現在に至るまで快進撃は続いている。  もちろん鈴木奈々以外にも、おバカタレントと呼ばれるタレントは存在している。だが彼女が特殊なのは、視聴者をなぜか元気にさせてしまうという不思議な魅力だ。こういう娘が親戚にいたら楽しいだろうなあ、と思わせてしまう、あの感じ。ほかのおバカタレントが持ち得ない鈴木奈々のその魅力は、一体何に由来するものなのか?  8月13日に放送された『ナカイの窓 ムダに明るい人達SP』(同)に、その答えの一端が見えた。この日の放送にはゲストとして鈴木奈々のほかに、岡田圭右(ますだおかだ)、かねきよ勝則(新宿カウボーイ)、金田朋子、そしてルー大柴が出演。この蒼々たる「ムダに明るい人達」の中で鈴木奈々が見せた3つの魅力を、ここで紹介したい。彼女は一体なぜ、視聴者を元気にすることができるのだろうか? <その1 鈴木奈々は一所懸命である>  ムダに明るいことで得をしたことはあるかと質問された鈴木奈々は、大物の人に何を言っても許される、と語る。その際に披露したエピソードが、「自民党の石破幹事長に『旦那の夜が雑』という相談をしても怒られなかった」というものだった。余談ながら石破幹事長の答えは「お互いの努力が必要」というものだったらしいのだが、それはさておき。  このエピソード自体が実に鈴木奈々らしくて微笑ましいわけだが、注目すべきはそのエピソードへの入り方だ。彼女は石破幹事長という名前を出す際、「石破幹事長……知ってますか?」と前置きしてから話を始めたのである。確かに「そりゃ知ってるよ」ということではあるのだが、それは石破幹事長を知っている我々だからできるツッコミである。鈴木奈々はそのツッコミを恐れるよりも前に、石破幹事長を知らない人がいるかもしれない、という前提で話す。ここに鈴木奈々の、自分の話をちゃんと聞いてほしい、理解してほしいという、一所懸命さがある。  実際、視聴者の中には石破幹事長を知らない人物も、その数は少ないかもしれないがおそらくいるだろう。鈴木奈々はそういった視聴者にも自分の話を届けるべく、一所懸命に言葉を選んでいる。その一所懸命さは彼女の言動すべてに通じる根本的な部分であり、それを感じ取ることによって、視聴者は彼女から元気を与えられるのだ。 <その2 鈴木奈々は常に鈴木奈々である>  <その1>とは逆に、ムダに明るいことで損をしたエピソードである。自身のキャラクターのせいでよく絡まれるという鈴木奈々は、しばしば「変なことやって」と無茶ぶりをされると語る。確かに、そういったことも多いだろう。気の毒な話である。それを聞いた中居正広は「そういうときどうするの?」と尋ねる。そして、鈴木奈々は答える。「そういう時は、ダンスとかします」と。答えちゃうのだ、無茶ぶりに、鈴木奈々は。「変なこと」をやってしまうのである。  この話は、間違いなく捏造ではないだろう。「ダンスとかします」という答えは急には出てこない。実際にダンスをしているのだ、鈴木奈々は。変なダンスをする鈴木奈々の姿も完全に目に浮かぶ。そしてそれは、テレビカメラが回っていようが回っていまいが、誰が見ていようが見ていまいが、鈴木奈々は常に鈴木奈々として生きているということを証明している。  この事実は、視聴者に元気と勇気を与える。おバカというのが職業上のツールではなく、鈴木奈々そのものだということ。それはすなわち、おバカでも生きていけるということにほかならない。昨今、正しいことだけが求められ、少しでも間違うとすぐさまやり玉に挙げられる時代である。そんな時代だからこそ、おバカという生き方がアリだと示す鈴木奈々の存在は貴重であり、たくましささえ感じてしまうのだ。 <その3 鈴木奈々はずっと笑っている>  鈴木奈々の鈴木奈々たるゆえんは、まさにこの、ずっと笑っている、という部分にある。岡田圭右、かねきよ勝則、金田朋子、ルー大柴が「ムダに明るい人達」としてテンションも高く話し合うわけだが、その際に鈴木奈々は、ずっと笑っているのだ。自分がトークに割り込む場面は、実はほとんどない。だが、誰よりも笑っている。楽しくて楽しくて仕方がない、というように。    ごくごく当たり前の話だが、誰かの笑顔を見れば、人はそれだけで元気になる。鈴木奈々があえてそれを意識しているかは分からないが、彼女はきっと、誰かの笑顔を見て元気になったことが何度もあるのだろう。だから、笑うのだ。笑うことで人を笑顔にして、その笑顔を見て彼女もまた笑う。人が生きる意味なんてものは、突き詰めればそれぐらいしかない。鈴木奈々は笑うことで人生を肯定する。自分自身を含めたあらゆる人の人生を肯定する。それはきっと、おバカにしか作れない、とても素敵な世界だ。  番組の冒頭から「ムダに明るい人達」のムダな明るさにやられて疲れた表情を見せていた中居正広は、しかしあまりのムダな明るさを浴びることで「……なんか楽しくなってきた」と口にする。そのとき、鈴木奈々は番組の中で一番の笑顔を見せた。「うれしー!」と喜ぶ彼女の姿を見て、思わずうれしくなってしまった視聴者は、決して少なくはなかっただろう。 【検証結果】  2013年1月に出版された書籍「一所懸命」(竹書房)で、鈴木奈々は自ら真摯でまっすぐなメッセージを語った。この本の帯にはこう書かれている。「元気のない人に、私のありあまった元気が少しでも届いたのなら、それだけでちょー嬉しいです」。鈴木奈々は人を元気にする。鈴木奈々にしかできないやり方が、そこにはあるのだ。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは @aizawaaa

「変化よりも進化」ビニールハウスが生んだ常識外れの天才、競泳五輪メダリスト・松田丈志

51N8b+1W5wL.jpg
『自分超え―弱さを強さに変える』(新潮社)
 10年前のアテネ五輪から帰った時、松田丈志は悔しさをかみしめていた。400メートル自由形で、日本人として40年ぶりの決勝進出を果たした松田には、世間から多くの注目が集まった。だが、終わってみれば、結果は8位。松田に対する視線は、いつの間にか次々と誕生する日本人メダリストへと移っていき、オリンピックが終わる頃には、誰も彼を見ていなかった。 「成田空港では、多くのカメラと大歓声に迎えられたメダリストたちが貸切バスでテレビ局に向かった後、メダルのない僕たちは自費でリムジンバスに乗りました。メダルを取らなければオリンピックに出ても意味がない。強くそう思いました」(『自分超え―弱さを強さに変える』新潮社)  アテネ五輪後、松田はそれまでの自由形とバタフライを両立させるスタイルではなく、バタフライ1本に絞って練習を再開。力を出し切って8位に終わった自由形よりも、準決勝敗退ながらも自己ベストさえ出ていればメダル圏内だったバタフライでの金メダル奪取を目標に据えた。「変化よりも進化」当時の松田のノートには、そう書き記されていた。  だが、松田の前に強敵が立ちはだかる。「水の怪物」の異名を持つアメリカ人選手、マイケル・フェルプスだ。アテネ五輪では男子100m・200mバタフライ、男子200m・400m個人メドレーなど合計6個の金メダルを獲得している、まさに水泳界のスーパースター。松田の4年間の猛特訓も虚しく、2008年北京五輪では、フェルプスを前に銅メダルに終わった。  いったい、どうすればフェルプスに勝てるのだろうか?  松田の足のサイズは28.5cm。一方、フェルプスの足は34cm。ドルフィンキックを効率よく打つには、圧倒的にフェルプスの体格が優れていた。この天性の差を埋めるために、松田はアメリカ・フロリダ大学を訪れる。スタートとターンを課題と考えた松田は、アテネ五輪金メダリスト、ライアン・ロクテの練習に参加して、その技術を盗もうとしたのだ。  すると、そこには驚きの発見があった。  日本の競泳界では、泳ぎのバランスが崩れるため、筋トレはタブーとされていた。しかし、松田の目の前でロクテはウェイトトレーニングを週3回こなし、バーベル上げや腹筋運動など苦しい練習を行う。スイムの練習でも、日本とは圧倒的に練習量が異なり、キックの練習だけで30分も泳ぎ続けている。フェルプスやロクテは、体格が優れているから活躍しているわけではない。誰よりも厳しい練習を積んできたから、彼らは最速で泳ぐことが可能になったのだ。松田が見た「世界」は、常識外れの場所だった。 「世界一を狙う僕たちは、誰も足を踏み入れたことのない領域に到達し、その上で勝負に勝たなければなりません」(同)  だが、松田自身も、そのキャリアの初めから一貫して「常識外れ」だった。  松田は、宮崎県延岡市にある「東海スイミングクラブ」という小さなプールで競技生活をスタート。そこで、生涯の恩師となる久世由美子に出会い、厳しい練習をこなしていく。メダリストとなってからも、松田は、久世と共にビニールハウスのプールを拠点とした練習を行っており、マスコミからは「ビニールハウス生まれのヒーロー」ともてはやされた。中京大学や国立スポーツ科学センターなどのプールと、延岡のビニールハウスで覆われた25mプールを拠点としながら世界一を目指す。それは前代未聞の挑戦だった。だが、決して整った設備とはいえないこの環境を、彼は「恵まれている」という。 「振り返ってみれば、足りないものがあったおかげで、常に工夫できることはないかと考えるくせがついていました。競り合う選手がいなかったので、いつも自分自身と向き合っていました。そのおかげで自分の心と身体の状態を知るための感覚を研ぎ澄ませられたと思います」(同)  ロンドン五輪では、北島康介を「手ぶらで帰らせるわけにはいかない」とコメントし、流行語大賞にもノミネートされた松田。しかし、個人としては、またしても0.25秒差の銅メダルで涙をのむこととなる。すでに松田の年齢は28歳。引退がウワサされるも、「常識外れ」の男は現役続行を表明した。  13年からは一度久世の元を離れて、北島康介を育て上げた平井伯昌コーチのもとで再出発し、新たな練習方法を獲得。2014年には久世コーチと再タッグを組み「ロンドン五輪以上の最高の泳ぎができるよう精進していく」と決意しながら、再び金メダルへの目標を高らかに掲げた。  瀬戸大也、萩野公介などの若手が台頭する中、松田にとっては、次回の五輪出場すらも簡単なことではない。6月に行われたジャパン・オープンこそ4位に終わったものの、肺炎の病み上がり後に挑んだ東京都実業団水泳競技大会では優勝を飾り、その実力を見せつけることができた。21日から行われる第12回パンパシフィック大会でも、活躍が期待されている。  ビニールハウスプールが生んだヒーローは今年で30歳。2年後のリオ五輪に向け、彼の常識外れな戦いは、まだ始まったばかりだ。 (文=萩原雄太[かもめマシーン])