天才・楳図かずお19年ぶりとなる最新作『マザー』。家族に対する“罪悪感”がモンスター化する恐怖!

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楳図かずお監督デビュー作『マザー』。赤白のボーダーシャツを着た片岡愛之助は、『シベリア超特急5』『築城せよ!』とカルトな主演作が多い。
 天才クリエイター・楳図かずおにとって、19年ぶりとなる最新作『マザー』。人類滅亡の黙示録『14歳』の連載を1995年に終えて以降、持病である腱鞘炎の悪化から漫画家としては休筆状態が続いているが、最新作『マザー』は楳図先生が脚本、絵コンテ、キャスティングから手掛けたオリジナル作品であり、77歳での映画監督デビュー作でもある。『半沢直樹』(TBS系)のおねえキャラでブレイクした片岡愛之助に赤白のボーダーシャツを着せることで自身の分身に仕立て、楳図ワールドの恐怖の源泉へと案内していく趣向だ。楳図ワールドを楳図先生自身が実写化するとどうなるのかという点で、非常に興味を惹かれる。  主人公は人気漫画家の楳図かずお(片岡愛之助)。恐怖漫画の第一人者として知られる楳図のアトリエ兼自宅を、新人編集者の若草さくら(舞羽美海)が訪ねる。さくらは楳図作品の大ファンで、「楳図作品がどのようにして生まれたのか、楳図先生の生い立ちを一冊の本にまとめたい」と申し出る。さくらのインタビューに答える楳図。和歌山県の高野山で生まれたこと、母親が生後7カ月の楳図に鉛筆を持たせたこと、父親が地元に言い伝えられる不思議な伝説を寝物語として語ってくれたこと……。幼少期の体験が楳図作品に強く影響を与えていた。  楳図は漫画家となり、東京に上京。自分にとって最愛の存在である母・イチエ(真行寺君枝)をひとりぼっちにさせてしまったという罪悪感を感じながらも、楳図は漫画執筆に没頭する日々を送る。連載の仕事がひと段落し、入院中のイチエに付き添うが、老いたイチエは「自分の葬式に行ってきたよ。イギリスの女王さまも来てくれたのよ」「お礼参りに行ってきたの。高野山のあちこちへ」「お前のところへも行くよ」と謎めいた言葉を残して、あの世へと旅立つ。母との別れを振り返る楳図の口から「幽霊でもいいから、母にもう一度逢いたかった」という言葉がつぶやかれる。取材意欲を掻き立てられたさくらは楳図の生まれ故郷を訪ねるが、そこで信じられない怪奇現象に遭遇。楳図の心の中の想いが具象化し、母・イチエが蘇ったのだ。懐かしくも恐ろしい姿となってこの世に現われたイチエ。これは楳図の妄想の産物なのか? それとも山に潜んでいた物の怪なのか? さらには楳図の生誕に関する秘密も明らかになっていく。
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上方歌舞伎の人気俳優・片岡愛之助と宝塚歌劇団出身の舞羽美海が共演。関西を代表する伝統的ショウビズ界からのキャスティングとなっている。
 絶対的な守護者であるはずの母親が自分に襲い掛かってくるという強迫観念は、楳図かずおが恐怖漫画家としての地位を確立した“へび少女”シリーズの一編『ママがこわい』や女性にとっての若さと老いをテーマにした『洗礼』など楳図作品で度々描かれてきた。心の中で念じた想いが具象化するというモチーフも、『漂流教室』『わたしは真悟』『ねがい』など楳図ファンにはおなじみのもの。過去・現在・未来と時空を越えて愛憎劇が繰り広げられる展開は、珠玉のラブストーリー『イアラ』を彷彿させる。漫画から映画へと表現手段が変わっても、『マザー』は楳図作品であることに間違いない。楳図ワールドのエッセンスが上映時間83分の中にぎっしりと詰まっている。  『マザー』を観て感じることは、子どもは親の素顔は何も知らないということだ。特に母親は子どもにとっていちばん近い存在であり、かつて子宮をくぐり抜けてこの世に生まれてきた子どもは母親のことは誰よりも熟知しているつもりでいる。でも、実は母親が子どもに見せているのは“母としての顔”であって、子どもは母親の“女としての顔”はほとんど知らない。月の裏側に何があるのかずっと謎だったように、母親も子どもには見せていないミステリアスな一面を持っている。いつも優しかった母・イチエの、女としての知らない顔を見ることになり、楳図は恐れおののくことになる。いちばん身近で、いちばんミステリアスな存在、それが母親/マザーなのだ。  吉祥寺の楳図先生宅にお邪魔して、『マザー』についておうかがいする機会があった。楳図先生が60歳のときに母・市恵さんは亡くなられたそうだ。「母が亡くなった2日後に、ダイアナ妃が事故で亡くなったので、『これは大変!』と当時のことはすごく覚えています」と語る楳図先生。劇中で病床の母親は不可解な言葉を口にするが、実際もそうだったらしい。中でも楳図先生にとって忘れられない言葉となったのは、「いいこと、ひとつもなかった」という母親のひと言。これは実家を離れ、自分の仕事に打ち込んできた子どもにとっては相当に辛い台詞だろう。自分にできる親孝行は何か? じゃあ、田舎でひっそりと生涯を終えた母の人生をリブートしてみよう。楳図かずお流に盛りに盛った、母親のもうひとつの華やかな生涯。それが楳図かずお監督デビュー作『マザー』である。
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楳図(片岡愛之助)は締め切りに追われ、母・イチエ(真行寺君枝)をかまってやることができない。やがて心の中の罪悪感が具象化していくことに。
 監督デビュー作を自身の膨大な数になる原作群の中から選ばずに、自身を題材にしたオリジナルストーリーを書き下ろしたわけだが、これには“ある含み”もある。楳図先生のいちばんの代表作といえば『漂流教室』だが、大林宣彦監督の映画版(87年)もフジテレビでのテレビドラマ版(02年)も楳図作品の壮大すぎるスケール観と豊潤なイマジネーションを消化できないまま中途半端に終わってしまった。『わたしは真悟』や『14歳』にいたってはまだ一度も映像化されていない。楳図作品のエッセンスさえきちんと汲み取ってくれれば、もっと自由奔放に映像化してもかまわない。自分がこれまでに発表した作品を映画ならではのスケール観のあるものとして蘇らせてほしい。楳図作品の生みの親/マザーである楳図先生から、世界中の映像クリエイターたちへ向けたそんなメッセージも込められている。  『パンズ・ラビリンス』(06)のギレルモ・デル・トロ監督、『スノーピアサー』(13)のポン・ジュノ監督あたりが『漂流教室』の実写化に手を挙げれば、かなり期待できるではないか。「心の中で念じたことは、いつか叶う」。楳図先生のそんな教えが頭をよぎる。 (文=長野辰次) mother_umezu04.jpg 『マザー』 原案・脚本・監督/楳図かずお 脚本/継田淳 主題歌/中川翔子「chocolat chaud」 出演/片岡愛之助、舞羽美海、中川翔子、真行寺君枝 配給/松竹メディア事業部 9月27日(土)より新宿ピカデリーほか全国公開 (c)2014「マザー」製作委員会 http://mother-movie.jp

黒柳徹子として生きるための3つの方法 フジ『ワンダフルライフ』(9月14日放送)を徹底検証!

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 黒柳徹子。1933年8月9日、東京都乃木坂生まれ。現在81歳。53年にテレビ女優第一号としてNHKに入社した日本初のテレビタレントであり、現在に至るまでレギュラー番組を持ち続ける。76年に放送を開始したテレビ朝日系『徹子の部屋』は、今なお続く長寿番組であり、「同一の司会者による番組の最多放送回数」としてギネス世界記録に認定されている。  日本のテレビ史を語る上で、黒柳徹子は欠かせない人物の一人である。日本のテレビ創世記から第一線に立ち続け、なおかつ81歳になる現在も帯番組『徹子の部屋』の司会を務める。今もって過去の遺物などではなく、そのエネルギッシュかつある種エキセントリックな生き方は多くの視聴者の共感を集め、テレビ朝日系『アメトーーク!』では「徹子の部屋芸人」として再評価されるなど、年齢を超えた生き方をテレビのど真ん中で見せつけてくれている稀有な存在である。  黒柳徹子について語ろうと思うとき、まっ先に思い浮かぶ言葉は「自由」の二文字だ。テレビという異常な日常の中で、これほどまでに「自由」を体現しているタレントはほかにはいない。芸人という、いわば埒外の人種に対してさえも圧倒するほどの「自由」をぶち込んでくるから、「徹子の部屋芸人」というコンテンツが成立するのだ。そして、その「自由」さは、我々視聴者にとっての憧れでもある。特に2014年現在のように世知辛く、誰もが空気を読んで生きることを強要される時代だからこそ、黒柳徹子の「自由」な生き方は憧れの対象となる。  フジテレビ系『ワンダフルライフ』は、半年間で終了してしまった薄命の番組だ。9月14日に放送された最終回で取り上げられたのが、黒柳徹子だった。その人選に、制作者の想いがどれほどあったかは推し量るよりほかにはないが、少なくともその最終回は、希望に満ちた最終回であった。ここで語られる黒柳徹子の半生とその人生哲学は、終焉よりもむしろ最初の一歩を感じさせた。黒柳徹子は我々視聴者に、黒柳徹子という一人の人間の生き方を紹介したのだ。  我々は「自由」に憧れる。我々は黒柳徹子に憧れる。それでは、黒柳徹子はいかにして黒柳徹子という人生を生きているのか。その3つの手法を、今回は紹介したい。 <1>黒柳徹子は、大切な言葉を忘れない  『徹子の部屋』がこれほどの長寿番組になっていることからも分かる通り、黒柳徹子は稀代の聞き上手である。それは通り一遍の受け答えができるということではなく、他者の言葉に対して真摯に耳を傾ける能力に長けているということを意味する。事実、彼女の人生そのものが、他者の言葉によって大きく影響を受けている。女優の仕事を始めた当初、個性が強すぎると言われ続けた黒柳徹子は番組のオーディションに合格した際、劇作家の飯沢匡に向かって「個性引っ込めますので宜しくお願いします」と告げたのだが、そのとき飯沢は首を横に振り「君のその個性が欲しいんだ」と伝える。この言葉こそが結果として、黒柳徹子のその後の芸能人生に大きな影響を与えることになった。  このエピソードは飯沢匡の慧眼を確かに伝えているが、しかしそれだけではない。黒柳徹子がこの言葉を聞き、それを大切な言葉だと信じて今に至るまでに忘れずにいるからこそ、意味を持つ。言葉とは、聞く者次第だ。同じような言葉を我々がかけられたとして、その言葉に反応できるだろうか。また、その言葉を50年以上も忘れずにいられるだろうか。黒柳徹子はそれができたからこそ、黒柳徹子で居続けられている。黒柳徹子は、飯沢匡の言葉を自らの人生に投影した。その言葉を信じて生きる覚悟をしたからこそ、彼女は個性という武器を手に入れたのだ。 <2>黒柳徹子は、自分なりのやり方を見つけ出す  『徹子の部屋』で、黒柳徹子が自作のメモを読みながら進行を進めるというのはよく知られている話だが、『ワンダフルライフ』ではライブコンサートの打ち合わせ風景が映される。そこで黒柳徹子が用意しているのは、進行台本を自らの手で書き写したスケッチブックだった。台本にメモ書きするのではなく、進行台本自体を書き写している。これにより、進行の内容や流れを頭の中に叩き込んでいるのだ。  また、トレードマークであるタマネギ頭にも、実は意味がある。司会者として番組に出演する黒柳徹子は、自分の後ろからカメラで撮られることがしばしばだ。そのときのリアクションがテレビの向こうの視聴者にも伝わるよう、首の後ろが見えるように、髪型を上げるという今のタマネギ頭のスタイルに落ち着いたのだという。結果としてヘアスタイルは奇抜なものになるわけだが、それが第一義ではない。視聴者に後ろ姿でもリアクションを伝えたいという目的に添うように、ヘアスタイルを決めているのだ。  黒柳徹子にとって「自由」というのは、何をやってもいいというわけではない。まず確固たる信念があり、その信念に添うならば固定観念や常識を変えてしまえというのが黒柳徹子流の「自由」である。彼女にとって「自由」とは、目的ではなく手段である。やり方は人それぞれにせよ、自身にとって最もふさわしいやり方を自らで見つけ出しているという点こそが重要であり、それは我々視聴者にとっても決して他人事ではないだろう。 <3>黒柳徹子は、リスクを背負って信念に殉じる  『徹子の部屋』の放送が開始した当時、黒柳徹子はまだ女優として活動をしていた。だがある日、自身が酔っぱらい役を演じたテレビドラマを見た視聴者から、普段もよく酔っぱらっているのだと勘違いされるという出来事が起こる。一方で『徹子の部屋』は、自身のパーソナリティを生かしたトーク番組である。このとき黒柳徹子は、テレビドラマで演じた役柄を本人と混同されることを危惧し、その時期から一切のテレビドラマへの出演を断ることを決めたのだった。  かつては週に8本のドラマに出演をしていたほどの女優、黒柳徹子は、そのときからテレビにおいては「黒柳徹子本人」としてしか出演しないと決める。実際にその後彼女が出演するテレビドラマは、本人役もしくは、本人に極めて近い役に限られている。黒柳徹子は自らの意志で、女優からタレントへと転身したのだ。金銭的、あるいは将来的なリスクを考えればなかなかできることではない。しかし黒柳徹子は、そのリスクを背負ってでも、自らの信念に殉じたのだった。  我々は「自由」に憧れる。我々は黒柳徹子に憧れる。しかし、それは簡単な道ではない。「自由」を真摯に求めれば、そこには必ず軋轢や葛藤が生じる。だが黒柳徹子が黒柳徹子として生きるためには、その軋轢や葛藤を乗り越える必要があった。そして彼女は、それをやって見せたのだし、今でもなおそれをやって見せている。「自由」に、あるいは黒柳徹子に、憧れるだけなら簡単なことだ。それを人生で実践できるかどうか。黒柳徹子は、それをやって見せている。彼女の足下はとても軽やかだから、傍目で見ていれば気付くことはないかもしれない。それでも黒柳徹子は、黒柳徹子として生きるために、多くのものを乗り越えてきているのだ。  現在81歳となる一人の人間が、今まさにそうやって生きている。その先人の存在が、希望でなくてなんであろうか。幸いにして、我々にはまだ時間がある。81歳になるまでには、まだ何年かあるだろう。憧れを他人事にしたくないのならば、黒柳徹子という存在は、偉大なるメルクマークとして我々の前に確かに存在しているのだ。 【検証結果】  『ワンダフルライフ』と奇しくも同じ時期、9月13日に放送されたTBS系『世界ふしぎ発見!』では、「黒柳徹子不老不死伝説」と題して黒柳徹子の「ふしぎ」さが紹介された。彼女はミステリーハンターとして楽器・テルミンを学びに行った。「空気をかき回しただけで鳴る楽器なんて、ほかにない!」と笑顔で語る黒柳徹子だったが、実はある。その楽器とは、黒柳徹子自身だ。彼女は空気をかき回すことで、視聴者の心と共鳴する一つの楽器だといえるだろう。その音色がどう奏でられるのかは、我々視聴者次第。しかし少なくとも、その音色の鳴らし方は、誰にとっても「自由」そのものである。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは @aizawaaa

iOS 8アップデートは急ぐべからず!? アプリの誤動作相次ぐ 

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Apple
 18日未明にiOS 8がリリースされた。筆者も早速、いくつかの端末をアップデートした。公開直後はサーバーが混雑していたが、同日昼には普通につながるようになり、すべての端末で問題なくアップデートできた。見た目はそれほど変わらないが、細かい部分がアップデートされており、使い勝手が向上している。早速、記事執筆のために使い倒しているのだが、iOS 8に対応していないアプリが誤動作するという報告が相次いでいる。  「Dropbox」は公式ブログで、「カメラアップロード」が誤動作する可能性があると発表。「LINE」はiOS 8にすると落ちるようになった。どちらも現在は最新バージョンにアップデートすると改善されるが、問題はまだ対応していないアプリが多数あること。ただこれは、iOSのアップデート時にはいつもあることなので待つしかない。  さらに、iOS 8ではクラウドサービス「iCloud」の上位サービス「iCloud Drive」を利用できるようになったのも、注意が必要だ。「iCloud Drive」はiCloudを「OneDrive」や「Dropbox」のように使える機能で、使い勝手は劇的に向上している。しかし、既存の「iCloud」と互換性がないので、移行してしまうと以前のiOS端末やYosemiteより前のMacからアクセスできなくなってしまうのだ。「iCloud」を利用するアプリもアップデートしないと、正常に動作しなくなる。「iCloud Drive」への移行はいつでもできるので、iOS 8にしたとしても、まずは保留にしておこう。  アプリ内課金を行うゲームも要注意。iOS 8ではファミリーシェアリングという機能で、家族で課金アイテムを共有したり、親に課金の許可を求めることができる。知らないうちに子どもが高額課金するようなトラブルを防止できるので歓迎なのだが、アプリ内課金が正常に動作しない可能性がある。それぞれのアプリがアップデートして、正式に対応するのを待とう。  今後、続々とアプリがアップデートされるので、頻繁に確認するか、自動アップデート機能をオンにしておこう。自動アップデートは、「設定」→「iTunes&App Store」から設定できる。パケット節約のために、Wi-Fi接続時だけアップデートしたいなら、同じ画面の「モバイルデータ通信」をオフにしておけばいい。  iOS 8は写真アプリやメッセージアプリ、Siriなどの標準アプリが強化されているが、一般的なユーザーは今すぐに必要というわけでもないだろう。仕事で使うのでなければ、もう少し待って、利用しているアプリが一通りアップデートされてから導入するとトラブルを避けられるのでお勧めだ。 (文=柳谷智宣)

AppleのiCloudとGoogleのGmailアカウントの漏えいが発生! 個人情報保護は自己責任で

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iCloud 
 8月にAppleのiCloudがハッキングされ、ハリウッド女優のプライバシー写真が流出、9月にはGoogleのメールアドレスとパスワード約500万件が漏えいした。Googleアカウントの漏えいに関しては、2次被害まで出かねない状況だ。  iCloudのハッキングでは、若手女優の中でも注目を集めているジェニファー・ローレンスの過激なヌード写真が流出。アメリカ版2ちゃんねると言える掲示板サイト「4chan」に掲載され、情報サイトが引用して広まってしまった。それ以外にも、アリアナ・グランデやリアーナ、キルスティン・ダンストなども同様の被害に遭っている。Appleは公式声明として、iCloudのシステムには不具合はなく、メールアドレスとパスワード、セキュリティー質問が突き止められて不正アクセスされた、と公表している。つまり、なんらかの方法で本人のメールアドレスを手に入れ、パスワードを試したり、パスワードを忘れた時のセキュリティー質問にチャレンジ、突破したというわけだ。  被害者は写真をばらまいた人間はすべて訴えるとしており、FBIも捜査を開始。犯人は十分に罰せられるべきだが、本当に人に見られたくない写真であれば、対策が不十分すぎた。まず、クラウドストレージに自分や恋人のヌード写真を保存するなど、常識を逸脱している。この行為自体がありえない。慎重に、ひっそりと、USBメモリーに保存し、自分で管理すべきだ。クラウドも人が運用していることを忘れないように。また、パスワードやセキュリティー質問が、想定の範囲だったことも問題。以前、「『QWERTY』『1qaz2wsx』も要注意! 多発するSNSアカウントの乗っ取りを防ぐ方法」でも紹介したように、パスワードは強固な文字列にすべき。もし、簡単なパスワードや複数サービスで共通のパスワードを使っている人がいれば、週末にでもまとめて変更することを強くお勧めする。  とはいえ、Googleの漏えいのように、メールアドレスとパスワードがセットになって漏えいしてしまうとどうしようもない。そんな時にも被害に遭いたくないなら、「LINEなりすましの被害続出! SNS乗っ取りの対抗策」で紹介した、2段階認証をオンにしておくこと。今回の事件も、2段階認証を使っていれば、被害は発生しなかった。  Googleアカウントの漏えいに関しては、Gmailアドレスを登録させるウェブサービスから流出したデータとみられており、漏えい元はGoogleではない。また、ロシア語と英語、スペイン語圏のユーザーがターゲットになっており、日本のユーザーは心配ない。しかも、古いデータらしく、漏えいしたメールアドレスとパスワードでGoogleアカウントにサインインできるのは2%未満という。この2%も、2段階認証を利用していれば、不正アクセスされずに済む。  しかし、初めはGoogleからの漏えいのようにニュースに取り上げられ、同時に「Is my email leaked?」というサイトが紹介された。入力したメールアドレスが漏えいしているかどうかを確認してくれるサービスなのだが、今になってこのサイトが怪しい、という話も出てきた。日本はターゲットになっていないのに、わざわざ自分が使っているGmailアドレスを入力してしまった人も多いことだろう。心当たりがある人は、すぐにパスワードを変更し、できれば2段階認証を有効にしよう。  面倒くさい、とスルーするなら、自分にいくつか質問してほしい。過去の送受信メールがすべて公開されて大丈夫か? 恥ずかしいメールを送っていないか? DQNな行為を自慢してないか? 企業や同僚の悪口を言っていないか? Googleドライブに変な画像を保存していないか? Picasaにプライベートな写真を入れていないか? Google+に変なことを書かれたらヤバい? 一つでも心当たりがあるなら、スルーせずに対処しておこう。 (文=柳谷智宣)

朝日新聞を打ち負かした週刊誌に、元名物編集長が苦言「他山の石として襟を正せよ」

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「週刊新潮」9/18号 中吊広告より
今週の注目記事 第1位「朝日新聞を打ち負かした週刊誌たち!」 「続 おごる『朝日』は久しからず」(「週刊新潮」9/18号) 「朝日新聞が死んだ日」(「週刊文春」9/18号) 「池上彰『掲載拒否』で考えたこと」(同) 「木村社長『反朝日キャンペーンに屈するな』全社メールで批判封殺体質に大反発が起こった」(「週刊ポスト」9/19・26号) 「朝日新聞の憂鬱」(「週刊現代」9/20・27号) 「本当にヤバイ朝日新聞」(「アサヒ芸能」9/18号) 第2位「錦織圭を支えたマネジャー兼マッサージ係の恋人」(「週刊文春」9/18号) 第3位「内閣改造『新大臣』身体検査」(「週刊新潮」9/18号) 第4位「寿命を延ばす運動 寿命を縮める運動」(「週刊新潮」9/18号) 今週の袋とじ対決 「安達祐実 濡れ場ヌード」(「週刊現代」9/20・27号) VS. 「『伝説の林檎ヌード』麻田奈美」(「週刊ポスト」9/19・26号)  9月12日の金曜日、映画『イヴ・サンローラン』を新宿武蔵野館で見た帰り、京王線の幡ヶ谷へ行った。焼肉屋「可禮亜(カレア)」という店へ行くためである。駅から6~7分だろうか。繁華なところから少し離れた、静かなところにあった。扉を開けて入ると、入り口に4テーブル、その左奥に3テーブル、突き当たりに小部屋があるようだ。金曜の6時過ぎだというのに、奥に2組の客がいるだけである。愛想のいい中年の婦人が注文を取ってくれる。入り口からびっしりと壁に有名人のだろう色紙が貼ってある。  ここは、安倍晋三首相が昭恵夫人とよく来るといわれている店である。安倍首相の色紙がないか探そうと思ったが、あまりにたくさんあるので断念して、まずはビールとキムチとナムルの盛り合わせを頼む。左隣の3人組が、こちらのほうをチラチラ見る。気のせいかもしれないが、永田町の人間のにおいがする。  キムチは1,000円だが、大皿に白菜キムチやカクテキなどが盛りだくさん。韓国真露に変えて、焼肉盛り合わせ3,800円を頼む。特選もあるが、こちらはなかなかの値段。首相ともなれば、こちらを頼むのであろう。ホルモン盛り合わせは1,800円。テーブルの上には炭の入ったコンロ。出てきたカルビやタンは分厚くて、2人分にはちょうどいい。焼いてみた。タレが少し甘いのが気に入らないが、肉は美味である。チヂミと豚足を追加する。冷麺もと思ったが、腹がいっぱいで断念。値段もリーズナブルだ。  安倍首相、あなたの店の選び方はなかなかだと感心しながら帰途に就く。だが、心配なのは客の入りである。私たちの後から2組ほど来たが、満席にはならない。もしかして、安倍首相が贔屓の店なんか行きたくないと敬遠されているのではないか。そんないらぬ心配をしながら駅まで歩いた。  さて今週の話題は、なんといっても朝日新聞木村伊量社長の謝罪会見であろう。これについては後で触れるとして、まずは軟らかい話題から。現代、ポストの袋とじ対決の勝者はどっちだ?  現代の安達祐実は11月に公開される映画『花宵道中』のパブだが、32歳になった安達が胸も露わに濡れ場を演じている。胸は豊かとはいえないが、体当たりの花魁ぶりに少しコーフンする。  ポストのほうは、懐かしい1973年の「林檎ヌード」である。ポストは「日本グラビア史上の最高傑作」とうたっているが、確かにこのヌードを見た時の“感動”は今でも忘れない。初々しい18歳の美少女のオールヌード。豊満な胸を隠さず、両手で真っ赤な林檎をヘアの前で持っている写真は衝撃的だった。撮影は青柳陽一。その時の未公開カットが袋とじに収められているが、あどけない顔ではにかんでいるのが、なんともいい。後半のグラビアでは、「平凡パンチ」73年1月29日号に掲載されたグラビアを再録しているが、いま見ても素晴らしい迫力のある裸身である。  今週は、文句なしにポストの勝ちじゃ~!  ところで、光文社発行のFLASHが、発売直前にすべて回収したことが話題になっている。  早くからいわれていたことだが、文春がその経緯を書いている。アメリカアップル社のデータ保管・共有サービス「iCloud」から多数の女優たちのヌード写真などが流出して大騒ぎになっている。私も何枚か見たが、ジェニファー・ローレンスやモデルのケイト・アプトンなどの過激な写真がネットで拝める。  編集者であれば、この流出写真を商売に結びつけようと考えるのは自然ではある。だが、彼女たちから天文学的な賠償訴訟を起こされるリスクも、当然ながらある。  FLASH関係者がこう語っている。 「社内に見本誌が配られたのが発売前日の午前中。それを見た上層部が訴訟沙汰になるのを怖れたというのが真相です」  袋とじにしたからといって、訴訟を回避できるわけではない。私が講談社にいたころ、Viewsという月刊誌で“知の巨人”といわれるライターがインターネットについての連載をしていたことがある。  知の巨人氏は、ネットサーフィンをやって、死体ばかり載っているサイトや誘拐殺人事件で被害に遭った美少女のサイトを紹介し、そこにある写真をコピーして雑誌にそのまま載せていた。  いま考えれば長閑な時代だが、ある時、くだんの美少女の権利を持っているエージェントからクレームが入り、掲載の了解を取っていないのになぜ載せたのかという抗議文が届いた。私が前面に出て謝罪をし、なにがしかの掲載料を払ったが、今だったらその程度のカネでは済まないであろう。  FLASHは部数も低迷している赤字雑誌だから、1号出せない大損失をどうするのだろう。「この際、休刊してしまえ」という声が社の上のほうから出てくるのは間違いない。AKB48人気も去った今、FLASH存続は風前の灯火である。  今週の4位。新潮にスポーツ選手の種目別の「寿命データ」が載っている。これがなかなか興味深い。  大妻女子大学副学長の大澤清二氏が調査したそうだ。江戸時代の力士から1979年まで30種目1,920人のアスリートの寿命データを、80年代から90年代初頭まで15年かけて新聞の訃報欄から割り出したというから、かなり信ぴょう性のある労作である。  その結果、平均寿命が長かった種目ベスト3は、陸上中距離(80.25歳)、スキー(77.28歳)、剣道(77.07歳)だったという。  大澤氏によれば、 「長寿を得やすいのは、持久力系であること、生涯続けられる競技であること、自分のペースでやれて怪我が少ないことといった共通点があります」  柔道も、72.42歳と長生きの競技だ。  それに反して短命の種目の第1位は、誰が考えてもうなずくであろう、相撲である。56.69歳だ。だが、これはプロの場合であって、アマ相撲は73.61歳と長生きである。2位は意外にも自転車で57.00歳。プロボクシングが3位で61.47歳。ストレスがかかり、ケガをしやすいという共通項があるという。  ちなみにゴルフは73.57歳、水泳は71.19歳だそうだ。私の講談社の先輩に70後半でも矍鑠(かくしゃく)としている人がいる。彼は学生時代から剣道をやっていて、長く講談社の剣道部長をやり、今でも週に1~2回は講談社で剣道を教えている。  酒好きで豪快を絵に描いた人だが、やはり剣道は体にいいようだ。私も、もう少しゴルフに身を入れてみようか。  第二次安倍政権初の内閣改造について、あれこれと週刊誌が論評している。新潮は「後援者が警視庁で斃れて消えた『松島みどり法相』の選挙違反疑惑」「『山谷えり子国家公安委員長』と縁浅からぬ『統一教会』」「『有村治子女性活躍相』の結婚相手は中国系マレーシア人」とあるが、致命傷になるスキャンダルではないようだ。  興味深いのは、今回の大臣は、安倍首相が成蹊大学だからというわけではないだろうが、東大出身は2人しかいないというのだ。新たに入閣した12人の大臣と前任者を比べるとこうなる、と政治ジャーナリストが言っている。 「経産大臣は東大(茂木敏充氏)から成城大(小渕優子氏)、農水大臣も東大(林芳正氏)から東京農工大(西川公也氏)といった具合に東大卒業者が減っています」  その他にも江渡聡徳防衛相が日大、山谷えり子拉致担当相が聖心女子大である。東大出身者の閣僚は麻生内閣5人、鳩山内閣7人、菅内閣6人、野田内閣3人だった。  新潮らしく、入れ替わった大臣たちの大学の偏差値を比べている。改造前が「64.58」で改造後は「63.08」と落ちている。偏差値で人間の価値が計れるわけではない。だが、少し心配ではある。  河野太郎氏のメルマガに、こんなことが書いてあったので紹介しよう。 「今回の内閣改造に関しては、誰が入閣しそうなのかメディアが競って報道しました。そしてなかでもNHKの情報は正確だという評判でした。(中略)閣僚の人事を決めるのは総理です。だとすれば人事情報の出どころは官邸しかありません。官邸から情報を取れるということは、それだけ官邸との関係が深いことになります。そんなメディアがきちんと官邸を批判することができるでしょうか」  NHK、読売、産経、日経が官邸との距離の近さを競う中で、朝日がしばらく低迷することは間違いないから、毎日と東京に期待するしかないのだろうか。  このところ朝日新聞批判にばかり熱が入るからか、今週は文春にも見るべき記事が見当たらない。仕方ないからフライデーに期待したが、これも右トップは「朝日新聞判断ミス重ねた木村社長の『謝罪と辞任情報』」と「中国大気汚染悪化で北京から海南島に遷都へ!」である。  おいおい、失礼だが、フライデーに朝日問題を論じてもらわなくても他誌で読める。写真週刊誌らしい記事は「小島瑠璃子『モデル男』と銀座で買い物→南の島」と「国民的美少女 河北麻友子 イケメンと庶民的同棲中」か。  このところ、文春と新潮のグラビアが頑張っているのにフライデーがこれでは、きつい言い方になるが「写真週刊誌の看板を下ろしたほうがいい」のではないか。  明るい話題がない中で唯一と言っていい、錦織圭の全米オープンでの大活躍だった。  日本選手として男女通じて史上初めてテニス4大大会シングルス決勝に進んだ錦織圭(24)に、日本中が沸き返った。チリッチ(クロアチア)の力強いサーブとストロークに押され、1セットも奪えぬまま敗退して準優勝に終わったが、この試合中継を見ようとWOWOWに加入者が殺到し、一説によると錦織ブームによる経済効果は300億円ともいわれるそうである。  「勝者には何もやるな」。有名なヘミングウェー短編集の題名だが、今の時代、メジャー大会で勝つことは大金持ちになるということである。  勝者・チリッチの優勝賞金は3億円、錦織には薔薇一輪ではなく1億5,000万円が贈られるそうだ。錦織には、さらにスポンサーのユニクロから1億円。その他のスポンサーを含めると収入は年間10億円を優に超えるそうだから、サッカーの本田圭佑、ゴルフの松山英樹、メジャーリーガーのダルビッシュ有、田中将大といった超大物スポーツ選手たちと肩を並べた。だが、そうなれば週刊誌は挙って女性問題を追いかけるに決まっている。大丈夫か?  文春と新潮がともに錦織の「恋人」を取り上げているが、文春の内容がやや優っている。以下は、文春のテニス関係者の話である。 「錦織は〇八年、卓球の福原愛との熱愛が報道(フライデーに撮られた=筆者注)されましたが、ともに日本を代表するトップアスリート。大物同士すぎる故、スポンサーや関係者など大人の事情もあって破局してしまいました。その後、錦織が北京五輪で親しくなった別のフェアリージャパンの子の紹介で坪井(保菜美・25=筆者注)と知り合い、意気投合したようです。これが約五年前のことで、それから間もなく、交際が始まったと聞いています」  坪井は新体操団体競技の元日本代表で、「フェアリージャパン」の一員として北京五輪に出場している。やはり一昨年フライデーに撮られているが、それ以降半ば公然の仲で、坪井は錦織の出場する大会に同行しているという。  09年に錦織が右肘を疲労骨折した際、「もうコートに立てないかもしれない」と弱音を漏らす彼を励まし続けたという。  坪井は10年に現役を引退すると、早稲田大学のスポーツ科学部に在籍して運動生理学や栄養学などを学び、錦織に同行して身の回りの世話やマッサージなどしてあげているという。  彼女との交際を機に、テニスプレーヤーとして超一流選手の仲間入りを果たしてきたのだから、彼女を「あげまん」(別のテニス関係者)というのも、うなずけよう。人生をはすかいから見ることの好きな新潮でさえ「献身的な恋人」と見出しを打っているように、現時点でのお嫁さん候補ナンバー1であることは間違いないようだ。  親も公認の仲で、文春で坪井の母親がこう語っている。 「純粋で切り替えが早いところとか、お互いの性格がとても似ているので。兄弟のような感じなんじゃないでしょうか」  坪井は準決勝を見に行ったという。続けて、 「そんなに凄い試合をしているのかと思うくらい、普段は自然体で穏やかな方です。本当に素敵で優しい方です」  将来については? という問いには、 「それは本人たちが決めることなので……。この先はどうなるか分かりませんが、彼(錦織)だから(結婚する)ということではなく、娘が好きになった人が、たまたまこうなったと思っていますので」  非の打ちどころのないカップルとは、こういう2人をいうのであろう。来年早々にある全豪はもちろんだが、最高峰であるウインブルドンの決勝コートに立つ錦織を観たいものである。  さて、お待たせ。9月11日(木曜日)に、ようやく朝日新聞の木村伊量社長が謝罪会見を開いた。東電・吉田昌郎氏の調書を掲載した際、「命令違反で9割が撤退」としたことは誤りだったと認め、従軍慰安婦についての吉田証言についても、虚偽だとわかっていながら撤回が遅れたことを謝罪した。  遅きに失した感は否めないが、そこまで朝日は追い込まれたということであろう。私はNHK『ニュースウオッチ9』とテレビ朝日『報道ステーション』で会見を見たが、第一印象は「これが、朝日文化人の頂点に立つ人物か」というものだった。まるで中小企業のおっさんが(朝日も規模としては中規模会社ではあるが)、偽装問題で渋々謝罪を行っているようにしか見えなかった。  いや、自分が育ててきた会社の存立を賭けた会見ならもっと真剣に臨むはずだが、木村社長にも横にいた杉浦信之編集担当取締役にも、この重大な“誤報事件”が、朝日にとってどれほど大きなダメージを与え、この会見如何では朝日の存亡にかかわるという危機感が感じられなかったのは「遺憾」であった。  それは、池上彰氏の連載コラム掲載見合わせの判断をした時、「言論の自由の封殺であるという、思いもよらぬ批判があった」という言葉に如実に表れている。自社の見解と違うことを書いた社外の人間の原稿を検閲して掲載拒否することがメディアにとっての自殺行為だということを、このトップはわからなかったというのである。この一事をもってしても、この人はメディアの上にいる人間ではない。  辞任することを示唆したが、早くお辞めになったほうがいい。  一部週刊誌で、朝日問題を取り上げないと批判された古舘伊知郎の『報道ステーション』だが、この日は従軍慰安婦問題の吉田証言について長時間の検証をしていたのは、見応えがあった。  河野談話に対して吉田証言がどれほどの影響を与えたのかという点が中心だったが、古舘が「談話は吉田証言を根拠にして作製されたものではない。いろいろな形での強制性はあったと考える」と強調していたところに、古舘の意気込みが感じられた。  この検証の中で一番感心したのは、この河野談話作製に大きく関わった石原信雄氏(元官房副長官)のブレない発言だった。安倍首相ら右派連中が石原氏の証言の都合のいいところをつまみ食いして、河野談話見直しを声高に言っているが、石原氏はハッキリこう言っている。  「河野談話作成の過程で吉田証言を根拠にして強制性を認定したものではない」「慰安所の設置や運営に軍が深く関わっていたことは事実」「慰安婦たちの聞き取り調査などによって強制性はあったと認めた」などなど。  これによって、河野談話は吉田証言などハナから信用していなかったこと、従軍慰安婦に軍が深く関与していたこと、多くの資料や聞き取り調査で「強制性」があったと認めていたことが歴史的証言として定着したのだ。  安倍首相は朝日新聞の誤りをあげつらうのではなく、河野談話の精神を引き継ぎ、日本の過去を謙虚に反省して日韓関係の次なる未来をつくろうと朴槿恵大統領に申し入れる“大人の対応”を取るべきある。今度は安倍首相の器が問われることになる。  今回は週刊誌の「完勝」となったが、誤報問題でいえば、週刊誌も朝日新聞のことを大声で批判できるほど身ぎれいではない。  週刊誌も誤報の“宝庫”である。新潮は朝日新聞襲撃事件犯人の告白の大誤報について、いまだにほとんど説明らしき説明をしていないこと、読者は忘れてはいない。  現代は、先日直木賞作家になった黒川博行氏への名誉毀損問題を忘れてはいまいな。黒川氏は、現代の岩瀬達哉氏の連載でグリコ・森永事件の真犯人ではないかと書かたことで、講談社などを名誉毀損とプライバシー侵害で訴えた。  Wikipediaの記載なので自信は持てないが、「2013年8月30日、東京地裁は講談社と当時の編集長、および執筆者の岩瀬達哉に、計583万円の支払いを命じた」とあるから、敗訴したのであろう。現代が誌上でそのことについて読者に詫びたという記憶がないが、どうしたのか。  朝日新聞の迷走を見るに付け、メディアの信用は地に堕ちていると思わざるを得ない。「メディアは信用できない」という空気が日本中を覆っている。佐村河内守氏を「現代のベートーベン」と持ち上げ、STAP細胞で小保方晴子氏をノーベル賞候補と騒ぎ立て、お先棒を担いだのはメディアである。彼ら彼女たちが「偽物」だとわかった瞬間から、自分たちの非をまったく省みず、人間のくずのように非難し、追い回す。  私もこの欄で何度か、世の中の正義ヅラした人間の仮面をはぎ取る週刊誌の役割に喝采を送ったことがある。だが、週刊誌を含めたメディアが取材して暴けるのは、その人間の一部にしか過ぎないのだ。自分が全能の神になったごとく大声でその人間を非難するのではなく、常に、もしかしたら自分たちは過ちを冒しているのかもしれないという懐疑の心を持ちながら、記事にするということを忘れてはなるまい。  朝日新聞“事件”は後々まで語り継がれる大誤報ではあろうが、私も含めて、これを他山の石としてメディアに携わる人間は襟を正す、いい機会とするべきであろう。 (文=元木昌彦)

忘れてたのに……錦織圭フィーバーの陰で、元サッカー日本代表・柳沢敦が苦笑い!?

ranking130916.jpg  9月上旬に人気を集めた記事をランキング形式で振り返る、このコーナー。今期はなんといっても、テニス・錦織圭選手の歴史的快挙が世間の話題をかっさらいました。スポーツ界のニューヒーローの陰に隠れ、芸能ニュースはいまいちパッとしませんでしたが、そんな中でも、日本テレビ『24時間テレビ』のジャニーズネタは注目が高かったようです。 第1位 テニス全米OPベスト4! 錦織圭の快挙でバズった謎の3文字「QMK」ってナニ? すっかり忘れてたよ! 第2位 「なんのために受信料払ってんだ!」テニス錦織圭、歴史的快挙の裏で、なぜかNHKがとばっちり! せっかく録画放送したのに、やっぱり大バッシング。 第3位 佐々木主浩&榎本加奈子の娘が自殺未遂、小栗旬に“デリ風”報道、金子賢の体がデカイ……芸能界の危うい男たち 金子賢はどこ目指してるの? 第4位 ジャニーズタブーが怖すぎる!? 『24時間テレビ』から木村佳乃が消えた“16分間”の怪 タブーの意味がわからん。 第5位 とんでもないガチ写真も!? 暴行容疑で書類送検された“プリンス”氷川きよしが恐れるものとは ハメ撮りですか? 次点 城島茂のカッコ悪さとカッコ良さ 日テレ『24時間テレビ』(8月30日~31日放送)を徹底検証! TOKIO好きです。 次々点 「頑張る嫌われ者を応援したい」高須院長が語る、清く正しい“タニマチ”人生のススメ もうミキティは応援したくないんだって。

ボクシング井岡一翔 3階級制覇の野望を支える「アマチュア時代の辛酸」と「井岡家の看板」

20140916_300.jpg  2014年5月、IBF世界フライ級王者アムナット・ルエンロン戦で、判定の末に敗北した井岡一翔。彼にとって、プロ転向後、15戦目にして初の敗戦であり、ミニマム級、ライトフライ級と王座に君臨してきたボクサーによる無敗での3階級制覇の野望が見送られた瞬間だった。  だが、これは一翔にとって初めての敗戦ではない。プロ転向以前、彼は敗北の辛酸をなめ尽くしてきた。  元フェザー級ボクサーである井岡一法を父に持ち、叔父は世界2階級を制した井岡弘樹。彼らからトレーニングを受けた一翔は、しばしば「サラブレッド」ともてはやされている。  しかし、アマチュア時代の彼は負けの連続だった。中学時代にボクシングを始めた一翔。当初から、彼の目標は「世界チャンピオン」ただひとつだった。しかし、高校1年生で出場したインターハイ予選、一翔はまさかの敗北を喫する。まだ全国大会ですらない、近畿大会での出来事だ。 「負けて泣くな! 泣くんやったら勝って男泣きしろ! 世界チャンピオンになるって言ったんちゃうんか!」(『今をブレない。』講談社)  父は一翔の涙に激怒し、ボクシングを辞めさせようとした。しかし、一翔はその叱咤に再び立ち上がると、史上3人目の高校6冠を達成。そして、ボクシングの名門として知られる東京農業大学に進学する。住み慣れた大阪の地を離れ、北京オリンピックを目標に据えた厳しい練習を行っていく。  だが、オリンピック日本代表選考会を兼ねた全日本アマチュアボクシング選手権大会決勝、一翔は1ポイント差で判定負けを喫し、オリンピック出場の夢は閉ざされた。金メダルを獲得し、鳴り物入りでプロデビューを飾るという夢が散った瞬間だった。そして、翌年の同大会でも判定負けの準優勝に終わった一翔は、大学を中退してプロに転向することを決意する。これ以上、大学に在籍していることは、大学生活に甘えているだけなのではないかと感じたのだ。だが、それはチームメイトたちへの裏切りを意味することとなる。 「僕は部員全員に憎まれてもしょうがないと覚悟していた」(同)  こうして、一翔は、挫折の末にプロへとたどり着いたのだった。  そして、プロに転向すると、一翔の快進撃は続いた。09年1月にプロテストに合格すると、4月にプロデビュー。3戦目には世界ランカーを打ち倒し、6戦目には日本ライトフライ級王座を獲得、7戦目には夢だったWBC世界ミニマム級王者を獲得する。しかし、その喜びは一瞬のうちに消えてしまった。 「ひとしきり喜びを噛みしめたあとはもう、自分が世界チャンピオンになれたことよりも、やっとスタートラインに立てたという意識のほうが強かった」(同)  夢だった世界チャンピオンになった瞬間、夢は通過点に変わった。さらに3回の防衛に成功し、ライトフライ級に転向。ここでもチャンピオンに輝いた一翔は3回の防衛戦を勝ち抜き、さらに上のフライ級へと転向する。そして、14年5月、アムナット・ルエンロンに破れ、タイトル獲得に失敗したのだ。  一翔の原点となっているのは、アマチュア時代に経験した105戦だ。ボクシングの世界では、プロに比較しても遜色ないほど、アマチュアのレベルは高い。プロよりもラウンド数が少ないため、試合序盤から相手の様子をうかがう余裕はなく、トップギアで打ちながら、相手の弱点を見抜いていかなければならない。そんな経験を実践で叩き込まれたことが、一翔がプロとして活躍できた一因だ。  そして、一翔を支えるもう一つの大きな柱が、「井岡」という看板だ。父と叔父が背負ってきた看板を、一翔はいま、一身に背負っている。彼に課せられた使命は、その名に傷をつけず、さらにその看板を磨き上げること。現在、一翔が目標としている3階級制覇は、叔父でありジムの会長である弘樹がついに果たせなかった夢なのだ。  プロとして初の敗戦から4カ月。9月16日には、後楽園ホールでコロンビアの世界ランカーとの再起戦を行う。プロとして初の敗北を喫した後だけに、この試合の成否が今後の一翔の方向を決めることになるだろう。井岡ジム会長である父は、これに勝利した後の大みそか、一翔を再び世界3階級制覇に挑戦させる意向を示している。

伝説のホラー漫画家・日野日出志が作品を振り返り語る。『蔵六の奇病』秘話……他

hinohideshi_aa.jpg  70年代にデビューし、「ガロ」や「COM」などで一世を風靡したホラーマンガ家・日野日出志。その叙情的かつオドロオドロしい画風が多くの人を引きつけ、カルト的な人気を誇るノイズバンド『非常階段 JOJO広重』をも魅了した。そんな彼が、今回手がけたのはソフト・オン・デマンドによる女性向け動画サイト「GIRL’S CH(ガールズシーエッチ)」で配信される女性向けエロスムービー『薔薇の迷宮』だ。  これまで、作家の岩井志麻子や内田春菊、女優の広田レオナ、そして元オセロの中島知子など、一癖も二癖もある女性たちがメガホンを撮ってきたこのシリーズ。今回配信される日野氏の作品では、AV女優・友田彩也香を主演に、見る者を戦慄させるストーリーと、大人の女性が醸し出す耽美なエロスを味わうことができる。  また、この配信に合わせて、古本市場ではプレミア価格で出回っている日野日出志の名作『蔵六の奇病』『地獄変』『地獄の子守唄』の3作をコミックムービーとして配信! 過去の名作と最新のエロス、まさに日野日出志ファンにはたまらない事態となっている! 「蔵六の奇病」 http://girls-ch.com/products/detail.php?product_id=5397 「地獄の子守唄」 http://girls-ch.com/products/detail.php?product_id=5464 「地獄変」 http://girls-ch.com/products/detail.php?product_id=5528  いったい、なぜホラーマンガ家の世界とSODのエロスが融合したのだろうか? そして、気になるその内容とは? 編集を終えたばかりの本人を直撃した! ──日野さんといえば、数々の名作ホラーを生み出した伝説のマンガ家として知られていますね。今回の作品についてのお話を伺う前に、そもそも、どうしてホラーマンガを志したのでしょうか? 日野 元々のきっかけは映画でした。高校の頃に『切腹』(小林正樹監督)という映画を見て人生がひっくり返るくらいの衝撃を受け、見るのではなく、創る側に回りたいと感じたんです。それで、絵コンテを描いていたのですが、その様子を見ていた同級生がマンガを描きたいと思っていると勘違いして、マンガを貸してくれたんです。  当時はまだ高価だったので、8ミリカメラも手に入らない時代でしたから、映画をつくるなんて夢のようなことでした。けれども、絵コンテを描くのではなくマンガを描くなら完成品を作れるんじゃないかと思ったんです。だから、映画を作る代償行為としてマンガを書き始めたんですね。 ──今回、40年前の作品となる『蔵六の奇病』をはじめ『地獄の子守唄』『地獄変』の3作品が、コミックムービーとなって若いユーザーにも届くことになりました。この中でも特に思い入れのあるものはどの作品でしょうか? 日野 『蔵六の奇病』です。21歳でデビューし、22歳で「ガロ」で4本書いているんですが、当時はまだバイトをしながらマンガを描いていたんです。ガロの編集長からは「うちだけじゃなく小学館や集英社から仕事を貰わないと食っていけない」と言われていました。それで、本気で取り組まなければいけないと思い、1年間かけてつくったのがこの作品です。 ──わずか40ページの作品に、1年もかかったんですか!? 日野 絵柄を変え、設定を変え、構図を変えながら自分が納得するまで何度も書きなおしています。これがダメならマンガは諦めようという気持ちだったんです。今考えるとクレイジーですが、これが「少年画報」に掲載されると、「サンデー」や「マガジン」からオファーが殺到したんですよ。 ──そして、ホラーマンガ家の代名詞となっていったんですね。しかし、映画を原点に、マンガの執筆を始めたということは、やはり実写は待望の仕事だったのでしょうか? 日野 そうですね。ただ、実写を撮影するのは今回が初めてではありません。26年前に『ギニーピッグ』という作品を監督しているのですが、ある事件に巻き込まれてしまったんです……。 ──「ある事件」というと? 日野 宮崎勤事件で、私の監督したビデオが犯人の部屋から出てきたんです。後にデマだとわかったんですが、警察によって、宮崎勤が私の監督作品から影響を受けたと語っていると発表されてしまったものだから、マスコミからは犯人扱いをされてしまいました。 ──それは災難でしたね……。今回の『薔薇の迷宮』は、サスペンスとエロスの融合というテーマですが、元々エロスに関心はあったのでしょうか? 日野 もともと、エロティシズムは興味のあるジャンルで、以前、青年向けに怪奇とエロティシズムをテーマにした作品を連載していたこともあります。今回は、恐怖心をそそるようなサスペンスとともに、薔薇をモチーフにした叙情的なエロスを表現しているんです。 ──日野さんらしい耽美なエロスの世界ですね。AV女優の友田彩也香さんを起用しての撮影はいかがでしたか? 日野 友田さんは、非常に演技がうまくて助けられました。段取りを説明しただけなのに、リハーサルでOKが出てしまったんです。今回の作品は友田さんがいなかったら成立しませんでした。 ──ところで、なぜ友田さんを主演に選ばれたのでしょうか? 日野 目の表情に憂いがあったからですね。ラストシーンで、この目がほしいと考えたんです。 ──では、あのスレンダーなカラダありきではなかった? 日野 そうですね。もちろん、ベッドシーンでもドンドンと男優をリードをしてくれるのでやりやすかったです。 ──さすが人気急上昇中の女優! プレイはお手のものですね。しかし、今回は女性向けのエロスということで監督自身も苦労されたのではないでしょうか? 日野 そうですね。自分だけでは、どうしても男目線になってしまうので、女性スタッフのアドバイスを参考にしながら制作しました。やはり、女性のエロスの捉え方は違いますね。男性の顔や背中を観たいという意見や、キスシーンも多めに盛り込んでいます。 ──では、最後に読者の方々にメッセージをお願いします! 日野 自分としては、ここまでエロスを前面に出した作品は初めてです。素直にエロスを楽しんでもらえればいいですね。 ──ただ、日野さんらしいサスペンスということで、怖さのあまり見るのをためらう読者も多いと思いますが……。 日野 今回は、人が傷つけられたりしない「きれいなサスペンス」です。あまり怖がらずに見てください(笑) GIRL'S CHにて特設ページ公開中! http://girls-ch.com/original/hinohideshi.php

大嫌いな人間をぶっ殺してすっきりしませんか? DVD化未定の超・問題作『殺人ワークショップ』

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白石晃士監督の『殺人ワークショップ』。ワークショップ参加者たちは、自分の中に生じた殺意を解放するよう講師から指導される。
 殺人ワークショップへようこそ。人間誰しも「こいつ、殺してやりたい」「こんなヤツ、いない方が世の中のためだ」と思ったことが一度や二度はあるはず。格差社会、競争社会の中でストレスを強いられる現代人ならば、なおさらだろう。自分の中に芽生えた殺意をどう処理すればいいのか悩んでいる人にぴったりなのが、この体験型講座『殺人ワークショップ』。腕力に自信がない人、これまで虫も殺したことがないという初心者でも大丈夫。実戦経験豊富な講師が最後まできっちり後押しして見届けてくれますから。ワークショップ参加者は、ワークショップ期間中に「殺したい」と思った相手を必ず仕留めることができるのです。  こんな危険なワークショップを考案したのは、白石晃士監督。あらゆる超常現象を盛り込んだ『オカルト』(09)やブレイク直前の「ももいろクローバー」に廃校レポートさせた『シロメ』(10)など斬新なホラー作品を生み出してきた気鋭の映画監督だ。白石監督作品の多くは、POVスタイルと呼ばれる主観映像で構成されたもの。ハンディカメラを持つカメラマンの視点から物語は語られ、ドキュメンタリー映像さながらの臨場感が楽しめる。低予算を逆手にとった演出方法で、白石監督はこのジャンルの第一人者。『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズはレンタルビデオ店の人気商品となっており、今年5月には『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最凶の劇場版』が劇場公開。さらには『コワすぎ!』の豪華スピンオフである、オール韓国ロケ作品『ある優しき殺人者の記録』が9月6日から劇場公開されたばかり。虚構と現実との境界をブチ壊す問題作を次々と発表している、今もっとも尖った映画監督なのだ。  『殺人ワークショップ』は、実際に白石監督が講師をつとめた映画俳優養成のためのワークショップでの実習作品。劇中で講師をつとめる江野役の宇野祥平は、白石監督の『オカルト』や『超・悪人』(11)に主演している個性派俳優。虚構と現実を隔てる壁だけでなく、モラルや常識の壁もブチ壊してしまう白石ワールドの代弁者だ。そして、それ以外のキャストは実際のワークショップ参加者たちが演じている。そのため妙なリアリティーが作品に漂う。芝居をすることを生活の糧としているプロの俳優にはない、素人臭さと緊張感が作品中に溢れ、あたかも“殺人ワークショップ”は実在するのではないかという錯覚に、観ている側は陥ってしまうのだ。  都内のマンションの一室で開かれた“殺人ワークショップ”に若い男女が集まる。法を犯してまで人間を殺したいという動機はさまざま。同棲相手から毎日のようにDVを受けている女性、親友を自殺に追い込んだイジメっ子への復讐を誓う男性、できちゃった婚して幸せそうな生活を送る元恋人への恨みを抱える者……。講師の江野は能天気な関西弁でこうまくしたてる。「よし、みんな任せとき! ワークショップ参加者みんなで協力しあって、1人ずつ殺っていくんや。数ではこっちが上回るんから、絶対大丈夫や」。江野はマンションのドアに鍵を掛けた。殺人ワークショップの始まりだ。卒業制作としての殺人を無事に完遂するまで、誰もこのワークショップから逃げ出すことはできない。
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『オカルト』『超・悪人』で白石作品ファンにはおなじみの江野(宇野祥平)。渋谷のスクランブル交差点に、あの危険な男が帰ってきた!
 殺人ワークショップの講義内容は分かりやすく、とても実践的。講師は情熱を持って、参加者ひとり一人を指導する。殺人においていちばん気を付けたいのは、殺す直前になって躊躇してしまうこと。ビビって腰が引けてしまうと、相手から逆襲されてしまう。そこで江野は参加者たちにホンモノの刃物を握らせ、人間の肉体を刺すトレーニングを始める。「刺して抜く! 刺して抜く!」。江野の容赦ない怒声の前に、実戦トレーニングを強いられる参加者たち。ワークショップ会場に血のムクロが転がる。さっきまで呼吸をしていた人間が、冷たい肉塊と化していく。もう、これでみんな共犯者だ。ワークショップのガチぶりに恐れをなした者は、容赦なく江野の餌食に。さらにムクロが増えていく。人を殺すためにワークショップに参加したのに、ハンパな覚悟しかなかった者は自分の命を落としていく。人を殺すには、自分も死ぬ覚悟がないとダメなのだ。  江野の指導方法はワークショップというよりも、新興宗教や自己啓発セミナーの合宿によく似ている。参加者たちの携帯電話を預かり、外部と連絡できないようにした上で、マンションの一室に監禁。恐怖と暴力で支配し、参加者たちのプライドをズタズタにすれば、短期間で簡単に洗脳できてしまう。目標(殺人)をクリアできれば解放されることから、参加者たちは当初通りにターゲットに襲い掛かるしかない。江野は参加者たちのトレーニング成果をただじっと見つめるだけだ。  『コワすぎ! 史上最凶の劇場版』は低予算実写映画ながら、『もののけ姫』(97)や『新世紀ヱヴァンゲリヲン』シリーズを思わせる壮大なスケール感を見せた。「フェイクドキュメンタリー形式を使えば、撮れないものはない」と白石監督は大胆不敵に語る。ただし、フェイクドキュメンタリー形式には、「なぜカメラがここにあるのか」という説明が必要だった。撮影現場で起きた出来事という設定が求められた。だが、今回の『殺人ワークショップ』には『コワすぎ!』シリーズや『ある優しき殺人者の記録』でおなじみのカメラマン田代(白石晃士監督)は登場しないし、その必要もない。それは『殺人ワークショップ』というタイトルに興味を抱いて劇場に足を運んだ時点で、観客はすでに“殺人ワークショップ”の参加者のひとりとなっているからだ。人の殺し方に関心を持つ観客の好奇心に満ちた瞳がカメラとなり、瞳の奥の網膜にリアルな映像体験として焼き付いていく。『殺人ワークショップ』はカメラという設定なしでフェイクドキュメンタリーの面白さを活かした画期的な作品になっている。
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こちらは現在公開中の『ある優しき殺人者の記録』。人気AV女優・葵つかさ、『息もできない』のキム・コッピらが出演するフェイクドキュメンタリーだ。
 自己啓発セミナー受講者たちが自己分析を強いられるように、殺人ワークショップ参加者たちも自分自身を問いただすことになる。自分はなぜ相手に殺意を抱いたのか? 相手は本当に殺すべき存在なのか? 今までの自分はただ嫌なことから逃げ回っていただけではないのか? ワークショップ参加者たちのそんな疑問に対して、講師である江野は答えを返してはくれない。ワークショップ参加者たちは各自が握りしめた刃物や凶器で、その答えを導き出さなくてはならない。  ワークショップ参加者たちは吐き気に襲われ、血まみれになり、ナイフごしに人間の皮膚の薄さを感じながら、殺人を通して生きる意味、死ぬ価値を学んでいく。『殺人ワークショップ』の参加費は一般1600円、学生1300円。この値段が妥当かどうかは、あなたがその目で確かめてほしい。製作もとに尋ねたところ、「現時点でのDVD化の予定はない」とのことだ。 (文=長野辰次) satsujinworkshop03.jpg 『殺人ワークショップ』 監督・脚本/白石晃士 撮影監督/岩永洋 主題歌/北村早樹子「卵のエチュード」 出演/宇野祥平、木内彬子、西村美恵、徳留秀利、伊藤麻美、井ノ川岬、杉木悠真、重田裕友樹、川連廣明、須田浩章、細川佳央 製作・配給/ENBUゼミナール 9月13日(土)より渋谷アップリンクにてレイトショー、11月8日(土)より名古屋シネマスコーレにて上映。 (c)ENBUゼミナール  https://www.facebook.com/mdr.workshop aruyasashiki_02.jpg 『ある優しき殺人者の記録』 監督・脚本・撮影/白石晃士 出演/ヨン・ジェウク、キム・コッピ、葵つかさ、米村亮太朗 配給/ティ・ジョイ、日活 R15 9月6日より新宿バルト9ほか全国順次公開中 (c)NIKKATSE、ZOA FILMS http://satsujinsha-kiroku.jp

学問の神様の目の前で、きつねに化かされたみたいな『ごん太うどん』を喰う

 唐突だけど、関東と関西では「きつねうどん」の文化がかなり違うの知ってる? 関東では四角い油揚げがのっかったうどんやそばを「きつねうどん」「きつねそば」と呼ぶけど、大阪では「きつね」というと「油揚げがのっかったうどん」のみを指す。  さらに京都にいくと、「きつね」は「短冊に切った油揚げと九条ネギの上にトロ味のついたあんをかけたうどん」だっていうんだから、知らずに注文すると「アレ?」となるのは、きつねに化かされたってことか……。
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暑い日だったので冷たい白玉ぜんざいと一緒に。白玉やクリの大きさと比べるとうどんの太さがわかる。
 しかし、同じうどんでもこのうどんは化かしようがない。きれいに透き通った出汁の海に、うねるように沈み込んでいるのは、ひと目でわかる、ごん太のうどん。そしてその特徴は……。  ホ~ラ見てごらん、こうなってるんだよ~。こんなに長いんだよ~、ホラホラホラァ! kitsuneudon091003.jpg  男性の人差し指くらいの太さのうどんが、丼の中に一本、たゆたゆと浸っているだけ。他には具も何もない、出落ち感たっぷりの見た目どおりの一本素うどんなのだ。  蒸し暑い京都で熱いうどんの汁をズズッとすする。と、魚介のいい香りが鼻の奥からフワーッと通り抜けていく。そして主役の麺は、“うどん”という麺のカテゴリーからはかなり外れ、“すいとん”みたいにもっちりと歯ごたえのある食感だ。ズズッとすすりあげ「ノドで喰う」とはいかず、重量感ある麺を箸で口の中にたぐり寄せては、もさもさとアゴで喰う!
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手前にあるすりおろし生姜を入れると、さっぱりとした風味が楽しめる。
 どれくらい長いのかもういちど持ち上げ、これが限界かというところで丼の中をよく見ると、 「ア……? あれーっ!!」器の中ですでにちぎれて2本になってるじゃないか。これじゃ一本うどんじゃない! そうか、きつねに化かされたのか。と思ったら、茹で時間の関係から、現在は2本になっているらしい。ま、どっちにしても美味しいんだけどね。  ちなみに「たわらや」さんでは、うどんもそばも「きつね」はあるそうです。たいへん、うもうございました。
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場所は北野天満宮の真向かいの路地を入ったところ。築400年の町家造りの建物で食べれば京都の香りも加わってさらに……。
京都北野 たわらや 『名物たわらやうどん』730円 意外性 ☆☆ 味   ☆☆☆  店   ☆☆☆