18禁ロリマンガはどう使われた? 東京都青少年課が行った情報隠蔽工作とは

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東京都青少年・治安対策本部公式サイトより
 昨年末、全国のマンガ・アニメファンを恐怖に陥れた東京都のマンガ規制条例こと「東京都青少年健全育成条例」改定案をめぐる騒動。改定案が成立したことで、騒動も一段落したかと思いきや、改定案の施行はこれからで、まさに「俺たちの本当の戦いはこれからだ」と言うべき状況だ。そうした中で、東京都の新たな情報隠蔽工作が明らかになった。  昨年6月、最初の条例案改定が否決されてから、都青少年課は都内各地のPTA・保護者団体・自主防犯組織などに出向き、条例改定の意義を理解してもらうための説明会を開催した。その回数は80回余り。12月に改定案が可決した最大の理由である民主党が賛成に鞍替えした背景には、このことが大きかったとされる。民主党の一部議員は、PTAなどの支持者から「エロ議員」と非難されることを恐れたのだ。この点で、都青少年課の目論見は成功したと言えるだろう。  問題は、PTAなどに対して都青少年課からどのような説明が行われたかということ。これまでブログやTwitterなどで漏れ聞こえている情報では、18禁マークのついた成年雑誌などを示し、あたかもこうした本が野放しになっているかのような説明が行われたとされていたが、確証を得ることはできなかった。  そこで、筆者は東京都に対して説明の際に使用した雑誌・書籍をすべて公開するよう情報公開請求を行った。  実は、昨年12月の改定案審議中にも民主党の松下玲子議員は非公式の打ち合わせで都青少年課の櫻井美香課長に対して、使用した雑誌・書籍のタイトルを明らかに示すよう求めていたのだが「その都度、誰が、どの本を使って説明したか明らかでない」と、櫻井課長は返答していた。そのため、どこまで公開するかまったく期待はしていなかった。  結論から言うと、公開されたのは表示図書(最初から出版社が18禁マークをつけたもの)と指定図書(都の審議会で不健全図書指定されたもの)が一冊ずつである。表示図書は、「コミックエルオー(LO)」(2010年5月号、茜新社)、指定図書は尾崎晶氏の『人妻爆乳アナウンサー由里子さん』(10年2月、双葉社)である。そして、表示図書・指定図書以外のもの、すなわち新たな条例で都が規制したいと考えているものは、一切が非公開とされてしまった。  正直、理解に苦しむ。「LO」は既に自主規制されており、書店で子どもの手に届くところには絶対に置かれていない。また、『人妻~』も現在の条例で規制されているものだ。つまり、これらを用いたということは、ブログやTwitterなどで喧伝されている「こんな酷いマンガがある」と誤解を招くような説明を行っていたという噂を裏付けることになる(そもそも、どのような説明が行われたかも、ほとんど明らかにはなっていない)。  さらに、表示図書・表示図書以外のものがすべて非公開にされた理由も不明確だ。非公開の理由として示されたのは「当該と書類が不健全図書類の指定の疑いがあると判断され、出版社に不利益を生じさせる」「公開することにより、不健全図書類の指定に関する業務の効果的遂行を不当に阻害するおそれがある」の二つだ。  とは言っても、PTAなどには見せているわけで、説明会を80回開催して一回あたり5人しか来なかったとしても400人。なぜ彼らには見せて、都民に広く公開することができないのか、理解に苦しむ。  PTAへの説明会に関しては、条例反対運動に反対する人物が情報公開請求した説明会を行った先の団体名もすべて非公開となっており、何が説明されたかを必死に隠そうとしているとしか思えない。  そもそも、表示図書・指定図書の公開が一冊ずつだけなのもおかしいと思い、「これだけですか?」と問いただしたところ「明らかなのは、これだけですね」と、都青少年課の小宮山みき係長は返答。この説明会の模様が描かれたブログ(http://hirometai.blog.so-net.ne.jp/2010-08-24-2)では、小宮青少年対策課連絡調整課長が説明を行っている写真が掲載されており、見たところ5冊はあるのだが?  いずれにせよ、改定された都条例の施行を前に情報を明らかにしない都の態度は自らの首を絞めているとしか思えない。自らの改定案に正当性があると思うなら、堂々と公開すべきだろう。それとも、このままのらりくらりと騒ぎが治まるのを、じっと待っているのだろうか......。 (取材・文=昼間たかし@『マンガ論争4』も絶賛発売中)
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新宿駅西口でリュックを持っていたら危険人物!? 行き過ぎた"職質"に疑問の声

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YouTubeより
 2008年に起こった秋葉原通り魔事件や昨年の"押ピー事件"の影響もあり、「街や市民の安全を守るため」という大義名分のもと、昨今、路上での職務質問(職質)が急激に増えてきている。  職質件数の増加に伴い、一部で問題になっているのが職質にあたる警官の横暴さ。基本、職質は"任意"のため、自分に不利益になると思ったら拒否することができる。にもかかわらず、半ば強制的に職質を行おうとする警官も少なくないという。YouTubeなどにはそんな"不当"な職質に遭った人たちが職質中の様子を収めた動画をアップしており、大きな話題を呼んでいる。職質を拒否する者に対して「人間的に汚い」と罵声を浴びせる警官、大人数で取り囲み威圧する警官、職質中に近くで交通事故が起こるもそちらの対応へは回らない警官など、時には"行きすぎ"と感じざるを得ない光景もある。  もちろんこれは一部の警官による行動であって、すべての警官に当てはまるわけではない。しかし、実際自分が職質に遭った場合、どのような意識を持って対応すればよいのか――。職質の相談を受け付けている人権ボランティア団体「救援連絡センター」(http://qc.sanpal.co.jp/)に話を聞いた。 ――昨今、職質の相談は増えてきているんですか? 「はい、職質の件数増加に伴い、相談も日ごとに増えてきています。とくにAPECの期間は多かったですね。エリアとしてはやはり、渋谷や新宿が多いです。職質の目的は、だいたい薬物か危険物所持の摘発。社会的に大きな事件があった後は、特に職質の件数は増える傾向にあるようです。エリアによってどういう人がターゲットにされやすいかは変わってきますが、有名な話では新宿駅西口ではリュックサックを持っている人はかなりの確率で職質される、と。リュックの中にナイフなどの危険物が入っているのではないかと疑われるようです。小型ナイフはもちろん、カッターもアウト(刃渡り6cmを超える場合)です。銃刀法違反として、逮捕はされないまでも書類送検されてしまうケースもあります。昔はBボーイっぽい人やドレッド頭のヒッピーみたいな格好をした人がターゲットになっていたようですが、今はフリーターっぽい人をはじめ、本当に普通の人でも職質を求められます。また、車の検問も増えてきていますね」 ――センターにはどのような相談が寄せられるんですか? 「職質中に電話をかけてくる人が多いですね。その場合は警察官に電話をかわって、直接話をします。また、職質を受けた後に『あれはおかしい』と相談してこられる方もいます」 ――「ちょっとやりすぎでは?」と感じるケースもありますか? 「車の検問の場合、免許を見せるとその場でちょっと機械に通せば、過去の逮捕歴が分かってしまうんです。覚せい剤の逮捕歴があれば、証拠品や怪しい言動がなくても即尿検査や身体検査をさせられるケースがあります。『任意なので応じない』と拒否している間に裁判所から身体捜索令状の令状を取って持ってくることも。令状を出す裁判所も裁判所ですが。また、そばやうどんを打つのが趣味の人がたまたま車にめんぼうを乗せていたら、凶器とみなされたなんてケースもありました」 ――そこまでいくと、さすがにちょっと異常ですよね。 「職質した以上は、何かとイチャモンつけて絞られるんです。職質は個々の警官の"勘"で強制的に行なわることもあり、その基準は曖昧。おかしいですよね」 ――「職質は任意」ということはだいぶ一般に浸透してきているとは思いますが、"拒否する"方法のようなものはあるんでしょうか。 「職質は『警察官職務執行法第2条』に基づいて行われ、"犯罪に関わっていると疑われる相当な理由"がないとできないことになっています。また、本人の意志に反して警察署に連行することはできませんし、質問に答える義務もありません。逮捕されたり令状がない限りは、強制的な身体捜索もできません。このことを念頭におき、職質を受けた場合はそのまま応じたり逃げたりせず、毅然とした態度で断ることが大事です。周囲に大声で助けを求めることも有効な場合があります。よく、『ここだと人目もあるので......』と交番に連れて行こうとする場合もありますが、同行する必要はありません」 ――点数稼ぎのためにわざわざ管轄外のエリアに出向して職質を行っている警官もいると聞きますが、実際にそのようなことはあるんでしょうか。 「そのような事実があるかはこちらでは把握してきませんが、職質は警察組織の上層部が若い警官に強制的にやらせている、という背景があります。職質は経験がものを言うので、現場に慣れさせるという目的でやらせているようです」  「1人2人の声ではどうにもならないが、みんなで職質を拒否することで何か変われば」という意識のもと活動を行っている同センターだが、同じく職質に関する相談窓口を設けている「オイコラ警察対応マニュアル」(http://oikorapolice.blogspot.com/)の千代丸健二氏によると、"職質を拒否すると逮捕する"などと脅された場合には、相手の警官の名前を聞いたり(『警察手帳規則第5条』に基づき、警察官は身分証の提示を求められたら必ず提示しなければならない)、音声や動画などにやりとりを収めるのが有効だという。場合によっては地方公務員法違反などで懲戒請求できるケースもある。  一方、警察側はどのように考えているのか。警視庁広報課にコメントを求めたところ、「YouTubeなどに動画が上がっているのは知っているが、実際に見たことはない。電話やメールで警視庁に直接寄せられた苦情には、それぞれ適切な形で対応している。実際に●●署の●●と名前が挙がったり、こちらに不適切な対応があったことが調査で分かれば指導している。必要であれば謝罪することも。職務質問は任意なのでみなさまに協力してもらわないとできない、という認識はある。警視庁全体として、行き過ぎた行動がないようにとは指導している」とのこと。また、警官の点数稼ぎのための職質の有無については、「答えられない」との回答だった。  昨今、"職質拒否"の機運が高まっていることは警視庁側も認識しており、当方の取材にもナーバスな対応が見られた。治安の維持という大命題のために職質が必要であることは間違いないが、一部警官の行き過ぎた行為・態度によって市民の当局に対する信頼が揺らいでしまえば、それこそ本末転倒だろう。 (取材・文=編集部)
クローズアップ実務1 職務質問 学科よりもまず実技!? amazon_associate_logo.jpg
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ニーチェを搾取し、ビジネス書を売りさばく今の出版界は死すべきか?

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写真/宮腰弓視香
 今、都内の大型書店に行くと必ず平積みで置かれ、文芸、人文思想界隈で話題となっている本がある。佐々木中氏の『切りとれ、あの祈る手を <本>と<革命>をめぐる五つの夜話』(河出書房新社)だ。哲学、現代思想、理論宗教学を専門とする佐々木氏が、文学(本を読み、読みかえ、書き、書きかえること)が、これまでいかに革命を成し遂げてきたか、ルターやムハンマドなどを例に、思想・哲学の専門家にではなく、本を愛するすべての人に語り下ろした良書だ。  今回、著者の佐々木氏に、「若者の活字離れ」「出版不況」が叫ばれる中で、出版点数だけは右肩上がりに増える日本での「本の消費のされ方」をテーマに話を聞いた。 ――まず、思想界に衝撃を与えた処女作『夜戦と永遠』(以文社)以来、2年ぶりとなる本書を出版した経緯を教えていただけますか? 佐々木氏(以下、佐) 前作を出版してから、こんな不況のご時世にもかかわらず、ありがたいことに新書や入門書を書かないかというオファーをたくさんいただいたんです。ただ、そういうものを書くと、その後、すべてのものについて、気の利いた一言を差し込むようなワイドショーのコメンテーターのような知識人になってしまうという危惧があり、頑なに断ってきました。そんな中、今年の2月にライムスターの宇多丸さんと対談をする機会があり、その後、朝まで飲んだんです。ライムスターというグループは、ラップで飯が食えるなんて考えられない時代から、ハードコアなまま、いかに売れるかで戦ってきたグループです。そして、KREVAくんやRIP SLYMEなど、後進をフックアップしてきた。そんな先輩に「『夜戦と永遠』のような学問的にしっかりした本を書いたんだから、もう後から来る人を勇気づけるために間口を拡げることもしないといけないよ。佐々木君は、ハードコアな自分が好きで、売れない自分が好きと言うけど、それは結局、自分のことしか考えてないってことだよ」と諭されて、非常に悩んだんですね。そこで、尊敬する河出書房新社の名編集者・阿部氏に相談すると、「佐々木さんが私的な場で言っていることは、今の若い人たちに、今必要なんだ」と言われ、この本を書くことになりました。 ――日本の書籍の出版点数は、右肩上がりで伸びていて、2010年は8万点を超える勢いです。本書の中で、「本を読んでいてわからないと、自分の力が劣っていると言われるような気がしてくる。そうした劣等感や怒りにつけ込んで益体もない入門書やビジネス書を売りさばく。これは読者を搾取している」とおっしゃっています。たとえば、今年は、『超訳 ニーチェの言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がヒットしていますが、これについてはどう思いましたか?  それについては、今度出る宇多丸さんとの対談でも詳しく語っていますが、ニーチェなんてきちんと原作を読めばわかるんです。難しいことなんて言ってないですよ。それを超訳などと言って、よりによってニーチェを搾取している。ニーチェの『ツァラトゥストラ』の最終第4部は自費出版で40部刷ってたったの7部だけ知人に送っただけですよ。それなのに『超訳 ニーチェの言葉』は70万部も売って、大儲けです。こういうのを搾取と言うんです。 ――新書ブームと言われている、この今の日本の出版をめぐる状況については、どう思われますか?  よく言われることですが、雑誌に論説というものが載らなくなった、新書がそれを肩代わりしている。どこの出版社も自転車操業で、借金を背負っているから、出版点数を稼ぐために、くだらない本ばかり出している。それで読者の劣等感につけ込んで、入門書やビジネス書を売りさばくような搾取の構造を利用しているわけです。今の出版業界のシステム自体が間違っているんです。だったら、さっさと潰れてしまえば良い。僕はそれで本が出せなくなっても構わない。つい最近までそうだったように、無名の貧しい労働者に戻るだけです。編集者も経営側も著者も皆、出版をめぐる状況はおかしいと思っている。誰も楽しいとは思っていない。利益の配分にしてもそうです。村上春樹さんも、売れっ子作家の定義は担当の編集者より年収が多いことだって皮肉に言っていましたね。僕は、村上春樹を作家としては全く認めません。が、群れないで一人淡々と作品を書く、その孤高の仕事ぶりは尊敬しています。 ――出版点数が多いことについては、いかがですか?  出版点数が多い割には、若者が読むべき本が手に入らない。僕が、書店でブックセレクトをすると、半分ぐらいは絶版なんです。エズラ・パウンドやパウル・ツェラン、日本で言えば、西脇順三郎や金子光晴のような20世紀屈指の詩人たちの作品が全然手に入らないんです。これはおかしいとしか言いようがない。 ――ただ、今更、出版のシステム自体を変えることは、さらなる出版社の倒産を招くなど相当のリスクが伴うと思います。  出版に限らず、皆、この現在が唯一の現在であって我々には変えられないと思っている。ところが、歴史をよく学ぶと、我々が動かしがたいと思っている現実、あり方、生き方、読み方、書き方なんてものは、たったの100年も巻き戻せば通用しない。今でも国境線を2、3個越えれば通用しない。変えられないなんて、何の根拠もないですよ。 ――最近は、速読が流行っていて、いかに情報を多く持つことがすばらしいかというような風潮がありますが、どうお考えですか?  たくさんものを知ってどうするんでしょうか。死ぬんですよ。いくら知識や金銭を稼いでも、生まれた時も裸、死ぬ時も裸なんです。ヘルダーリン(ドイツの詩人・思想家)が言っています。「死すべきものに 歓びは多く 知るべきことは少なく与えられている」と。佐々木はいろんなことを知っているじゃないか、と言われます。それは嘘で、全然知らないんです。僕の引く著者は実に限られている。今回の『切りとれ あの祈る手を』についても、ニーチェが繰り返し出てくる。あとは何人かの書き手と聖典だけです。仕事柄、ピエール・ルジャンドル(フランスの法制史家、精神分析家)は読んでいますが、それだけです。数としては圧倒的に少ないと思います。その割には、情報量が多いと言われる。でも、真の良書を繰り返し読めば、情報量なんてものはあとから付いてくるんです。 ――今年は、電子書籍元年などと言われ、注目を集めています。  昔からあることです。大した問題ではない。パピルス(古代エジプトで使われていた文字を書く紙のようなもの)の巻物が本になったみたいなものでしょう。印刷術の発明よりずっと小さなことで、売り方が変わるだけです。キーボードでは味気ないから万年筆で書くという人が少し前までいた。しかし昔、万年筆が出て来たときには、鉄ペンでなくては駄目だという人がいて、鉄ペンの前には、ガチョウの羽でなければ駄目だという人がいた。そんなものですよ。ニーチェは、意外にも新しいものが好きで、彼はMalling-Hansenのタイプライターを注文しているんです。彼はピアニストだったから、文章を弾きたいというのがあったんじゃないですか。現代に生きていれば、iPadとかで書いていたかもしれない(笑)。 ――本書を出してからの反響は、どうですか?  僕より後から来る人のために書いたわけですから、若い人に読んでもらうのは一番嬉しい。ですが、僕より年配の方に読まれているという事実が、何より心強いです。出版に限らずあらゆる状況が厳しい時代に、世代間闘争ほどくだらないものはないですからね。あと、作家や画家、ミュージシャン、デザイナー、劇作家のような、クリエイティブな仕事の現場に立っている人々が「勇気をもらった」と言ってくださるのが一番嬉しいですね。  * * * 『切りとれ、あの祈る手を』の帯に宇多丸氏が「背筋が伸び元気が出る」と書いているように、筆者もこの本を読んで、出版に関わる者として背筋が伸びた。本書の内容に関しては賛否両論あるようだが、まずは手に取ってみるべきです。お勧めです。 (文=本多カツヒロ) ●佐々木中(ささき・あたる) 1973年生まれ。東京大学文学部思想文化学科卒業、東京大学大学院人文社会研究系基礎文化研究専攻宗教学宗教史学専門分野博士課程修了。博士(文学)。現在、立教大学、東京医科歯科大学教養部非常勤講師。専攻は哲学、現代思想、理論宗教学。著書に『夜戦と永遠ーフーコー・ラカン・ルジャンドル』(以文社、2008年)がある。
切りとれ、あの祈る手を 宇多丸師匠もオススメ中。 amazon_associate_logo.jpg
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追跡レポートをOA直前に封印したテレビディレクターの謎の行動

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新宿駅西口で目撃証言探しの呼びかけを行う母
・尚美さん。事件時刻に合わせて行うため、帰り
は毎晩深夜になるという。
 これまで、私大職員の原田信助さんの自殺の背後に浮かび上がった、警察やJRによる非道で不可解な言動の数々をお伝えしてきた(【1】【2】)。さらにその不可解さは、信助さんの母・尚美さんを密着取材してきたテレビ局の動きにまで及んだ(【3】)。  今年6月9日、尚美さんの携帯にかかってきた奇妙な電話。電話の主のである民放キー局AのIディレクターの声は、今までにないほど興奮し、取り乱していた。 「お母さん、大変です! 信助さんが他の女性のお腹をさわっているように見える別の映像が発見されました。新宿警察署で保管していますので見に行ってください。いまタクシーでそちらへ向かいますから!」  尚美さんには電話の内容が理解できなかった。何より、前日に行なわれたある番組の屋外撮影が深夜までかかり、これが原因で風邪をひいて寝込んでいたため、「申し訳ないですが、後日にしていただけませんか」と頼む。「何言ってんですか! そんなこと言ってる場合じゃないんですよ! すぐ準備してください!」。返ってきたのはI氏の怒号だった。  I氏の勢いに「何かとんでもないことが起こっているのかもしれない」と不安になった尚美さんは、風邪をおして起き上がり、指定場所のカラオケルームへと急いだ。着いてみると、そこにはI氏と、I氏が担当しているニュース番組のキャスターが所属しているプロダクションの幹部、そして尚美さんと同様に呼び出された顧問弁護士のH氏の3人がいた。そこでI氏が話しはじめた内容は、次のような信じ難いものだった。以下、尚美さんの証言からポイントをまとめる。 ・信助さんが生前、事件とはまったく無関係の別の女性のお腹を、すれ違いざまに触っているかのように見える画像が数枚、このほど新宿駅の改札付近の防犯カメラの記録の中で発見された。 ・その画像が新宿警察署にあり、副署長のU氏が管理している。 ・これからすぐにそれを見に行ってほしい。 ・この画像が事実であれば、(信助さんが女性のお腹をさわる性癖を持つ痴漢の常習者であった可能性があるため)ニコニコ動画やF局などで放送するのは止めたほうがいい。 ・もし、これから新宿署に行かないというのなら、A局で放送予定の2つの番組(I氏のニュース番組と朝の情報番組『S』)は放送を中止する。  いったいなぜ、民放テレビ局のディレクターが新宿警察署のU副署長のメッセンジャーを務めているのか、尚美さんがなぜ「それ」を見に行かなければならないのか、そして、なぜ見ないとA局が放送をとり止めるのか――尚美さんにはすべてが理解できなかった。  信助さんの生前の画像ということは、少なくとも7カ月近く前の記録ということになる。肝心な事件現場のカメラの映像記録を、2カ月足らずでいとも簡単に「保存期限が過ぎたから消去」したはずのJR新宿駅が、別の改札付近の画像だけは半年以上も保管し続け、その膨大な画像の中から信助さんが映りこんでいた場面を数枚見つけたというのは、あまりに無理がある話ではないだろうか。  尚美さんは、「意味はよく理解できませんが、皆さんは警察に頼まれてこういうことをしているのですか?」「なぜIさんが警察の代理として来られているのですか?」と何度も聞いたが、I氏もプロダクションの幹部もこの質問には無言のまま答えず、ただひたすらに「新宿警察署へ行ってほしい」と繰り返すだけだった。尚美さんが当時を回想する。 「私は、もし記録を見せていただけるのなら、以前からお願いしている事件現場のカメラ映像を見せていただきたいと、そして、もしそういう画像があるとおっしゃるのであれば、U副署長にどうか直接ご連絡いただきますようお伝えくださいと申し上げました。するとIさんは『では、うちでは放送できません』と答え、それで本当に放送が全部なくなりました」  その日、Iディレクターとプロダクション幹部の2人は、尚美さんとの別れ際にこう謝罪したと言う。「申し訳ありません、我々も組織の人間なので、上からダメだといわれたら放送できないんです」。ここで言う「上から」が何を指すかの説明は最後までなかったが、I氏の言葉通りに捉えれば、なんらかの圧力で番組にストップがかかったと推測できる。舌鋒鋭く世相を切り続ける、I氏が手がけるニュース番組のキャスターは、はたしてこの一連の経過を知っているのか、いないのか。  尚美さんが当時を振り返る。 「仮にこの日に新宿警察署へ行ったとしても、A局が放送しないことはすでに決まっていたのではないかと思います。私に写真を見せることで息子が痴漢常習者だったと納得させたかったのか、その様子をIさんが撮影しようとしたのか、意味するものが何なのか今もってよく分かりません」  それにしても、警察の圧力に屈してテレビ局が放送をとり止めるということが、現実にあり得るのだろうか。「その可能性は限りなく低い」と言うのは、元公安捜査官の北芝健氏だ。「あくまで一般論」という前提のもと、北芝氏は警察とメディアの関係性は次のように解説する。 「警察がテレビ局の放送を組織的に止める力はないんです。各局が上層部に東大卒のキャリアを配置している理由は政治力です。日本はなんだかんだいっても東大キャリアが仕切っている国。警察がメディアの動きを止めたくても都道府県警レベルでは無理で、仮にあるとすれば警察庁のトップクラスですが、そうなると互いに東大キャリアの同級生クラス同士でのやり合いになるのでケンカにならない。番組を潰すほどの優位性は警察機構にはないんです。今回、放送がなくなった理由は分かりませんが、下請けの制作会社と親会社のテレビ局との間でなんらかのトラブルが発生したか、もしくは取材の過程で局にとって不都合な事実が発覚したという可能性は考えられます。そういう理由で突然中止になった番組は過去に数限りなくあります。むしろ制作会社とすれば、『権力に潰された』と思わせたほうが言い訳になりますからね」  一方、他の民放局のある関係者は「可能性はゼロとは言えない」として次のように推測する。 「たしかに組織レベルで潰すことは難しいが、対個人の次元なら、ないとは言い切れない。普段から警察組織を取材していれば、よくも悪くも人間的なつながりができる。バーターを持ちかけられて『次に××するから今回はなんとかしてくれ』と頼まれて、断われない状況がないとは言いきれない。ただ、番組を潰す権限は制作会社にはないので、局の幹部との個人的な人間関係か、あるいはその人間が警察に弱みを握られていたとか、理由はいくつか考えられる。今回は担当ディレクターが副署長の名前を出してゴリ押ししたというのだから、いずれにしても双方で連絡を取り合っていた可能性は高そうですね」  今回、A局の動きがこれに相当するのか、I氏が言う「上から」が単なる「言い訳」なのかは分からない。いずれにしても、在京キー局である「A局」という大手テレビ局が、同じ事件を取材した2つの番組を放送寸前になって取り止めたことは事実だ。また、仮に局内に限定したトラブルであれば、IディレクターがU副署長と組んで偽の画像を見せてまで、他社のF局やネット放送までを差し止めようと画策した理由も判然としない。尚美さんはこの件で、8月11日付け警視総監及び新宿警察署あての公開文書の中で、次のように質問している。 「新宿警察署の担当者は、息子・信助が疑わしい行動をしているという防犯カメラの画像を見るようにと●●●●●(A局の名前)のディレクター●●氏(I氏の実名)を経由して私に打診してきたのはどのような理由からでしょうか。なぜ直接打診してこなかったのですか」
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新宿警察署からの回答書。
 これに対する警察側の回答は、「当職員がテレビ局のディレクターを経由して、貴殿に防犯カメラの画像を見るように打診した事実はありません」(9月11日付け回答より)という極めて短いもので、問題の画像の有無については一切触れられていなかった。  一方、今回の事件の温床を、「痴漢関連の事件を取り扱う警察の捜査方法が根本的な問題」というのは、都内で同類案件を多く取り扱っているある法律事務所の弁護士だ。 「痴漢と言うと一般的に迷惑防止条例で処理してしまいますが、本来は刑法だけで取り扱うべきだと、個人的には感じています。酒で酩酊させたり薬で昏睡させたりして相手の性器等を触るなどという、"抵抗しがたい状況での破廉恥行為"は準強制猥褻罪(178条)となり、『6カ月以上7年以下の懲役に処する』と刑法に定められている。ところが、一般に痴漢行為については、下着の上から触れば条例違反、下着に手を突っ込めば刑法違反という原則がほぼ確立してしまっています。下着の上からとか下からとかでなく、どんな痴漢行為も全部この条文で処理されるべきです。現状では安直に条例を適用させて、信用性が担保できない"被害者"証言だけを頼りに、科学的な捜査もしないで逮捕してしまう。その慣習を改めない限り、痴漢冤罪はなくなることはないでしょう」  また、別の弁護士も次のように言う。 「迷惑防止条例違反は被疑者国選対象事件にならないんです。つまり、起訴までの間、最高で20日間以上もの期間、国選弁護人が付きません。弁護士の援助を得られないまま被疑者が警察に追い詰められてしまい、精神的に疲弊したところで『認めれば罰金だけ払って帰してやるぞ』と言われ、してもいない痴漢を認めてしまう例も少なくないんです」  今回の信助さんの事件は、多くの証言から、酔った学生グループの身勝手な暴行が発端となっている可能性が高く、一般の痴漢冤罪とは内容が異なる事案かもしれない。しかし、いずれにしても新宿警察署が、確かな証拠の積み重ねで事件の解決を目指していたならば、今回のような悲劇は起こらなかったとも考えられる。  季節は晩秋を過ぎ、冬を迎えた。昨年の12月10日に起こった悲劇から、早くも一年が経とうとしている。尚美さんは今日も新宿駅に行き、チラシを配りながらあらたな目撃証言を探している。(了) (取材・文=浮島さとし) ●母・尚美さんのブログとツイッター <http://harada1210.exblog.jp/> <http://twitter.com/harada1210> ●支援者のまとめブログ <http://harada1210.blogspot.com/>
テレビ局の裏側 報道という名の蛮行。 amazon_associate_logo.jpg
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事件を密着取材していた民放キー局取材班の不可解な動き

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ニコニコ動画の放送は大きな反響を巻き起こした。
 私大職員の原田信助さん(当時25歳)の自殺の影に、新宿警察署とJR新宿駅という二つの「当局」の理不尽な仕打ちが原因している可能性については既報(【1】【2】)の通りだが、今回の事件では、組織防衛のために事実の隠蔽工作を図り、遺族である母・尚美さんを苦しめた存在が実はもうひとつある。夜のニュース番組を看板に持つある在京民放キー局である。ここでは仮に「A局」とする(尚美さんの要望により局名は伏せる)。  A局人気ニュース番組の制作会社のディレクターI氏が、事前連絡もなく尚美さんの密着取材を開始したのは、事件5カ月後の今年5月上旬だった。前年の12月に新宿で起きた信助さんの事件は、しばらくの間世間に広まることはなかったが、5月7日に夕刊フジが特集記事を組んだことをひとつのきっかけに、ネット上に情報が拡散するなどして世間の耳目に広く触れることになる。A局が取材を開始したのはその直後だった。  Iディレクターはある日突然表れ、「追っかけ取材をしますので」と言うと、尚美さんが行く先々にどこまでもついて回った。数日後から撮影クルーが加わり、早稲田駅ホームで献花をしているときも、カメラが至近距離から迫ってきた。新宿駅のビラ配りでへとへとになり、一人になりたくても、クルーは常に尚美さんの疲れた表情を撮り続けた。  尚美さんは、人生でこれまでテレビの取材を受けたことがなかった。だから、世の中でそういうことがあるときは、きっと局の担当者が「こういう趣旨でこのくらいの期間を撮りますがよろしいですか」という類の相談が事前に来るのが普通だろうと、漠然と思っていたという。 「A局の方たち(編註:正確にはA局のニュース番組の制作会社)はある日突然現れまして、いきなり私のことを撮りはじめました。もちろん驚きましたし、カメラを向けられ続けることも正直辛かったのですが、これが放送されて事件の存在をたくさんの方に知ってもらい、目撃者が現れて息子の無実が少しでも明らかになればという望みもありました。自分が我慢すればいいことだと思ったんです」  それから撮影は週数日程度のペースで続き、多いときは2~3日続くこともあった。そのうち、他のキー局のN局やT局からも取材の申し込みがあったが、尚美さんはこれを断わっている。なぜか。尚美さんは次のように説明する。 「密着取材をしていたA局のIさん(ディレクター)から『他局の取材は全部断わってください』と強く言われていたんです。『他で(番組を)流されたら、追っかけでやってる意味がない』と。どうせ取材を受けるのであれば、複数の番組で取り上げてもらったほうが、目撃者が見つかる可能性がより高くなるとも思ったのですが、Iさんは私や顧問弁護士のHさんにかなり強くお願いをしてきましたので、H弁護士も『長期間取材してくれているし......』ということで、他局の申し込みはお断りしてきたんです」  こうして、一部の紙媒体を除くA局一社による"独占密着取材"は、その後約2カ月の間続くことになる。しかし、一向に番組として流れる気配はない。季節は6月の初夏になっていた。その間も他局から取材が申し込まれたが、尚美さんは断り続けた。
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司法記者クラブで会見を行う尚美さん。
 一方で「いつ頃番組になるのか」とI氏に聞いても、「まだ準備期間なので」を繰り返すだけで、はっきりとした返事はない。そのうち、同じA局の別の番組『S』と『J』の2つが取材を申し込んできた。他局の取材を断わるように強弁していたI氏も、これには「NO」とは言えなかった。  長期間の密着取材と単発報道を単純比較することはできないが、これまでのI氏の間延びした仕切りと比較して、後から取材を開始した2つの番組の動きは、尚美さんの目にテキパキとして映った。特に朝の情報番組『S』のディレクター氏の段取りは、無駄がなく撮影もスムーズで、同じ局でもこうまで違うのかと、尚美さんは驚いたという。  業界内のルールなど知らない尚美さんだったが、『S』のディレクターのほうがI氏より、局内の力関係が上らしいことは見ていて容易に推測できたという。それでも、「放送はIさんの番組が流れた後まで待ってください」とI氏に気兼ねする尚美さんに、『S』のディレクターは「早く放送したほうがいいです」「(9月の)民主党の党首選が始まってしまうと、世間の関心は一気にそちらへ流れてしまいますよ」と、アドバイスを交えながら強く説得をした。 「私も板ばさみのような形になり困ってしまい、Iさんに今後の見通しなどをお聞きしたのですが、相変わらず『まだ準備期間』を繰り返すだけでした。そうかと思うと『選挙の後になっちゃうけどしょうがないかなぁ』とか、ついには『Sが先に放送するっていうなら、うちはもう降りようかなぁ』とまで言いはじめました。これには驚いて、放送をする気があるのか心配になってきたんです」  そんな紆余曲折を経ながらも、I氏から連絡が入る。「放送日が6月14日に決まった」という知らせだった。尚美さんは6月15日に司法記者クラブで事件の真相を訴える記者会見を予定しており、番組はそのタイミングに合わせて前日の夜に流すという。I氏の説明によれば、「視聴率が一番上がる時間帯に15分くらいの枠で流す」とのことだった。  これまで他局の取材は原則断っていたという尚美さんだが、実はF局からだけは一度だけ取材を受けていた。事件のことで親身になって相談にのってくれていた地方議会議員からの紹介だったために、断わりきれずにありがたく受けたのだという。  従って流れとしては、記者会見前日の14日夜に、まずA局がI氏の番組を放送し、翌日15日の会見をニコニコ動画がネット中継し(『痴漢と呼ばれ自殺~残されたボイスレコーダーは何を語っているのか?』)、それを待ってF局と、A局の『S』が流れるという段取りが決まっていた(取材申し込みがあったはずのA局『J』は、なぜか途中から"撤収していた")。  ところが6月9日昼、尚美さんの携帯に奇妙な電話が入る。電話の主はA局のIディレクターだった。I氏の口調は、今までにないほど興奮していたという。 (「4」へつづく/取材・文=浮島さとし) ●母・尚美さんのブログとツイッター <http://harada1210.exblog.jp/> <http://twitter.com/harada1210> ●支援者のまとめブログ <http://harada1210.blogspot.com/>
足利事件 松本サリン事件 繰り返される愚行。 amazon_associate_logo.jpg
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なぜ、JRは「息子の死」の真相を追及する母の想いを踏みにじるのか

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2人の職員が暴行に加担していた疑いがあるJR新宿駅。
 大学職員の原田信助さんが痴漢の容疑をかけられて自らの命を絶った、いわゆる「新宿駅痴漢冤罪暴行事件」。新宿警察署の極めて不適切な捜査対応が悲劇の引き金となった可能性については前回指摘した通りだが、事件の"舞台"となった新宿駅の対応に問題はなかったのだろうか。  実は、警察と並んで信助さんを追い込んだもうひとつの"共犯組織"が、JR新宿駅と、それを統括するJR東日本だと指摘する声は多い。  今回、真相を知る上で重要な鍵となるのが、駅構内に設置されている防犯カメラの映像である。信助さんが暴行を受けた階段には、上部から階段を見下ろす形で一台のカメラが設置されている。尚美さんは事件から2カ月が経過した今年2月、この記録映像の開示を、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)に求めた。しかし、JR東日本危機管理室のOという担当者からの回答は、 「所定の保存期間が満了したから消去してしまった」 「警察からも保全の指示はなかった」  というものだった。そこで尚美さんは8月11日、公開質問状により再度、JR東日本に対して「なぜないのか?」「もしあるのなら、見られるのか?」と追及したところ、今度は以下のような回答が返ってきた。 「今回のご質問を受けて再度確認しましたところ、これとは別に本件事象発生直後に、本件事象の発生箇所周辺の防犯カメラの映像を提供するよう、警察当局から捜査事項照会を受け、映像を提供しておりました。現在は警察当局に提出しました防犯カメラの映像は返却され、当社で所持しております。しかし、こうした防犯カメラの映像の提供につきましては、他に映っているお客様の肖像権等の問題もございますので、司法機関等からの法的手続きによる場合を除き、閲覧等のご要望はお断わりしております」(JR東日本の回答文書から)  事件を取材したある記者は、吐き捨てるように言う。
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事件現場となった新宿駅の階段。
「人の命が奪われた重大な事件の証拠となりうる映像記録を、『警察から言われなかったから消しちゃったよ』と平然と答え、しつこく聞いてみたら『ごめんごめん、よく探したら別のカメラの映像があって、警察に渡していたのを忘れていた。ただ、プライバシーの問題があるからあんたには見せないよ。どうしても見たければ裁判所通してね』ってことです。対応に誠実さのかけらもないばかりか、JR側は尚美さんに対して、嫌がらせとも取れる卑劣な行為さえしていますよ」  JRによる「嫌がらせとも取れる卑劣な行為」とは何なのか。尚美さんは、真相究明へ向けて腰の重い警察に業を煮やし(それまで尚美さんは、被疑者不詳のまま新宿警察署に二度告発したが、新宿署は二度とも却下している)、ほぼ毎日、新宿駅西口や事件のあった構内などで目撃者探しのためにビラ配りを続けてきた。しかしJR新宿駅のU助役は、この行為に対して次のような「嫌がらせともとれる」対応を行なっている。尚美さんが証言する。 「JR新宿駅での目撃者探しは3月11日から続けてきたのですが、10月13日に真相究明へつながる可能性のある重大な目撃証言があったんです。その目撃者の方の陳述書を10月18日に検察庁へ提出した翌19日に、私を2カ月間応援してくださっていた、ある一般の方が、私がいつもビラ配りをしていた場所に立っていたところ、駅員が近づいてきて『こんなところに立ってないで、改札の外に行ってください』と言ったそうです。翌20日には一人の駅員の方が1メートル程の距離から私の顔に向かってフラッシュをたいて撮影しましたので、『肖像権がありますので、写真はお返しください』とお願いしたのですが、駅員の方は『あなたを撮ったのではない。工事中の現場の写真を撮っただけだ』と、駅長室に走り去ってしまいました。26日には久しぶりに応援に駆けつけてくださった方と一緒にいたのですが、今度はUという名前の助役がやってきて私たち2人をカメラでフラッシュ撮影し、『明日からは、もう来ないでください』と言いました。仕方なく、私たちは追い立てられるようにその場を去ったんです」  U助役は、尚美さんらが階段を上り終わるまで監視するように見送ったという。JR側が尚美さんを威力業務妨害で訴えようとしていると助言をしてくれた識者もいたというが、その意図はいまだ分からない。いずれにしても、13日の目撃証言がJR側を焦らせたと考えるのが自然だろう。  妨害工作と言われても仕方がない行為を、JR新宿駅がここまでしつこくする理由はいったい何なのか。真相が明るみになると、JR側にとって困る内容が映像に映りこんでいるということなのだろうか。尚美さんが続ける。 「目撃証言が少しずつ寄せられたことによって、今回の事件の中身が、酒に酔った大学生らによる『集団暴行事件』であったことが徐々に分かってきました。実はボイスレコーダーには、現場に駆けつけたJR新宿駅職員のKとHという2人の駅員も暴行に加担していたと思われる内容が、警察からの事情聴取に対する息子の言葉の中に記録されているんです」  尚美さんによれば、Kという名札をつけた駅員が信助さんを怒鳴りながら何度も繰り返して突き飛ばしたことや、Hと名乗った駅員が信助さんのネクタイを掴み、引っ張りながら振り回した行為など、両駅員が現場到着の当初から信助さんを痴漢犯人と決めつけ、大学生の暴力行為を止めるどころか逆に暴行に加担していた事実を、信助さんが警官や刑事に必死に訴えている声が記録されているのである。 「目撃証言で少しずつですが事実が浮彫りになるにつれ、誤認逮捕をした警察や、職員が暴行に加担したJR新宿駅はそれらを明るみにされては困るのでしょう。組織防衛に全力を尽くしながら、人の命をあまりに軽く扱う警察やJRを見るにつけ、こういう組織に『なんとかしてくれる』と期待していた自分が本当に情けなくなります」(尚美さん)  尚美さんのブログには、連日多くの励ましのコメントが寄せられている。その中のひとつに以下のような書き込みがあった。 「警視庁新宿警察署長の○○○○(訳注:本文は実名)とJR東日本新宿駅駅長は、前途ある優秀な若者が亡くなっている重大な事態に鑑みて微塵の嘘偽りのない誠意ある回答をするのが社会的道義的務めだ。嘘は必ず新たな嘘を生み出し話の辻褄が合わなくなる。これ以上の醜く見苦しい嘘偽りは控えるべきだ」(原文ママ)  至極まっとうなこれら一般からの声に、新宿警察署とJR東日本はいまだ誠意ある回答を示していない。  そしてさらに取材を進めると、組織防衛のために事実の隠蔽に加担した勢力がこれらふたつの「当局」だけでないことが分かってきた。「報道」という錦の御旗で強引な取材を続けたある大手放送局も、最終的には外部圧力により尚美さんを裏切り、何一つ報じることなく「事件現場」というアリーナから立ち去っていったのである。  次回は、ある在京キー局がとった極めて不可思議な取材姿勢についてお伝えする。 (「3」へつづく/取材・文=浮島さとし) ●母・尚美さんのブログとツイッター <http://harada1210.exblog.jp/> <http://twitter.com/harada1210> ●支援者のまとめブログ <http://harada1210.blogspot.com/>
それでもボクはやってない スタンダード・エディション JR駅員まで!? amazon_associate_logo.jpg
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mixiがメアド検索実装で騒動勃発!! 自動的に検索ONで人間関係崩壊の危機

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 登録ユーザー数2,190万人、月間ログインユーザー数1,464万人、月間312.4億PVを記録するSNSサイト・mixi。メールアドレスによる登録制サイトで、現在は携帯電話のメアド登録が必須となっている。そんな人気サイトがついにメアドによるユーザーの検索機能を実装し、ネット上で"祭り"が発生している。あるインターネット関連雑誌の記者は次のように明かした。 「このメアド検索は、メールアドレスさえ分かれば検索相手のマイページにアクセスでき、プロフィールや交友関係などがチェックできます。デフォルトでは検索設定は自動的にONとなっているため、OFFにするには自分で設定しなければなりません。日記や入っているコミュを見れば、趣味や嗜好がモロバレですね」  仕事上の知り合いや学校の友人など、メールアドレスしか知らない相手のmixiアカウントが簡単に見つけられるメアド検索機能。早くも大型掲示板では騒動になっているようだ。前出の記者は次のように続ける。 「mixiをやっていることを公言していない場合や、複数のアドレスでアカウントを持つ"複アカ"も、メアドさえ分かれば正体はバレバレで、人間関係を破壊する深刻な問題に発展しかねません。掲示板では、『mixiやってない』と言ってる友人や、兄弟のアカウントを発見したという書き込みが殺到しています。また、男性がネット上で女性のふりをする"ネカマ"だったという事実が発覚したり、通っているキャバ嬢の彼氏のアカウントが見つかって落ち込む人など、悲喜こもごもの騒動は広がっています」  かつて、通販サイト・Amazon.co.jpもメアド検索を実装し、同サイトの「ほしいものリスト」にアダルトグッズがある人物が特定されてしまうなどの騒動が発生した。だが、今回は、それ以上に人間関係をぶち壊す事態に発展する恐れがありそうだ。  ネット上の同じ趣味の人とつながれるmixiだが、やはり便利さの裏にはそれなりのリスクがある。ネットリテラシーについて、改めて考え直さなければならない時代に来ているようだ。
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「CMより設備投資しろ!」ソフトバンクモバイル大規模通信障害でユーザー激怒中 リストラ暴露ブログ「リストラなう」がコメントの著作権をめぐって大混乱 北川悦吏子、またもTwitterで問題発言 人気漫画ドラマ化のガセ情報に見事に釣られた?

西谷文和が永田町で吠えた? 衆院会館でアフガン取材の現地報告会を敢行!

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カブールの避難キャンプで現地報告をする西谷氏。自身6度目のアフガン取材となる。
 渡部陽一の大活躍(?)でにわかに注目を集め始めた「戦場ジャーナリスト」。砲弾が飛び交う戦場を駆け回り、世界中へニュースを発信する命がけの職業に、日本中の老若男女から熱い視線が集まっている。  そんな中、"浪花の戦場ジャーナリスト"としてテレビ朝日系『報道ステーション』にたびたび登場し、「月刊サイゾー」でもお馴染みの西谷文和氏が、この10月に自身6度目のアフガニスタン取材を敢行。その報告会がこの11月24日、衆議院第一会館会議室で行なわれた。  これまでもISAF(国際治安支援部隊)軍による度重なる誤爆で死に続ける現地一般人の悲劇や、その報復のためにタリバンへ"入隊"して「ニュータリバン化」する農民の現状など、アフガニスタンで起こっている「今」を発信し続けてきた西谷氏。今回は、冬を迎えて夜の気温が氷点下まで下がる首都カブールの避難民キャンプや、市内のインディラ・ガンジー子ども病院、ISAF軍基地本部、アフガニスタン警官訓練所などを取材するとともに、自身が代表を務めるNGO「イラクの子どもを救う会」に集められた募金による食糧や医薬品を届けた。
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カラシニコフで対タリバンを想定した射撃訓練をするアフガン軍兵士。
教官は米兵やイタリア兵などのISAF。
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ISAF軍やアフガン軍の基地周辺には大手ゼネコンの社屋が立ち並ぶ。
日本からの支援金の多くもここへ流れているという。
 報告会では、劣化ウラン弾の影響が指摘される奇形の赤ん坊や白血病の子どもなど、西谷氏が現地で撮影した衝撃的な映像が流された。さらに同氏は、同病院内のやけど専門病棟の現状にも触れ、貧困な一般家庭では狭い室内で薪を使って熱湯をわかすために、乳幼児が触れて大やけどをする例があとを絶たないという実態を紹介した。西谷氏は言う。 「日本は今年から5年間で最大約50億ドル(約4,000億円)の対アフガン支援が決まっていますが、多くは基地関連工事で大手ゼネコンにわたり、カルザイ政権の汚職に消えるでしょう。アフガン問題は決して日本と無関係ではないことを多くの日本人に知ってほしい。病院でも薬品が激しく不足しています。火傷に効くのは『アブダミン』という薬で、体の内部からたんぱく質を作り、新しい皮膚の創出を助ける働きがあるのですが、これがけっこう高い。我々(NGO「イラクの子どもを救う会」)の資金ではとても満足いく量を買い出せなかった。50億ドルの少しでも、直接ここへまわせるシステムを作るように、これからも外務省や国会議員など、さまざまな方面へ働きかけていくつもりです」
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先天性奇形の乳幼児が増えている。
「劣化ウラン弾の影響か?」の問いに現地医師は「誰もがそう思っている」。
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熱湯を浴びて火傷をする乳幼児が後を絶たない
(インディラ・ガンディー子ども病院火傷病棟にて)。
 外務省国際協力局によれば、50億ドルのうち、すでに約10億ドル(約1,061億円)の支援を実施済みで、治安能力向上へ向けた警察支援や、元タリバン兵士の社会統合支援などを行ってきたという。しかし、今年3月の国連事務総長報告では、09年の月平均治安事件発生件数は960件となり、前年比で約30%も増加。さらに、従来安定的と見られていた地域への武力衝突の拡大により、09年の民間人死者数は、01年タリバン政権崩壊後最悪となる2,412人(前年比14%増)となるなど、今後の見通しは依然として余談を許さない状態が続いている。 (文=浮島さとし) nishi_1129_p.jpg ●にしたに・ふみかず 1960年生まれ。大阪府吹田市役所勤務を経てフリージャーナリストへ。イラクやアフガニスタンを取材し、テレビ朝日系『報道ステーション』などで戦争の悲惨さを訴えている。NGO「イラクの子どもを救う会」代表として現地の子どもへ医療・食糧支援を行なっている。2006年度平和協同ジャーナリスト基金大賞を受賞。2010年10月に、自身6度目となるアフガニスタン取材を終えた。「イラクの子どもを救う会」HP<http://www.nowiraq.com/>
報道されなかったイラク戦争 こちらも体張ってます。 amazon_associate_logo.jpg
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海賊版出し放題!? AppleもGoogleも放置状態の電子書籍マーケットの現状

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人気作品が並ぶAppStoreだが......
 11月はじめ、中国のApp Store(AppleのiPhone・iPad用のコンテンツストア)において、日本の作家の作品を許諾を得ずに翻訳し、公開していた業者があったことが発覚した。  まずはじめに発見されたのは、人気作家・村上春樹の『1Q84』などであったが、その後日本のベストセラー作家の作品が次々と見つかった。  コトはAppleのストアだけの話ではない。Android Marketの「コミック」カテゴリを開くと、いくつもの英訳された「MANGA」アプリが見つかる。その大部分は集英社などの大手出版社から発売された、海外でも人気の高い作品である。日本の出版社や著者と、きちんと契約を結んだ上で発行されているかどうか、極めて疑わしい。  App Storeで販売するアプリやコンテンツの審査が非常に厳しいことで有名なAppleだが、実は著作権関連のチェックは行っていない。原則的にアプリ製作者がAppleに出さなければならないのはアプリ本体くらいで、原著者とアプリ製作者との間に結ばれた契約書の提示などを求められることはないのだ。水着の女性の写真集などを作って申請すれば、たちまち審査で弾かれてしまうのだが、無名の作家の小説を密かに翻訳してアップしても、それが正規版であるかどうかのチェックは行われず、審査を通過してしまう。  Android Marketの場合は微妙に異なるが、著作権の確認が行われない点は共通だ。まず、Android Marketの場合、販売開始までのプロセスで審査は行われない。発売後、購買者からの「通報」によりそのコンテンツが違法なものであるかどうかを確認するというシステムを採用しているのだ。  海賊版の流通防止という点において、一見Appleよりマシなシステムに見えるが、実は抑止力は大差ない。あるコンテンツが海賊版かどうかは、契約の当事者である業者と原著作者にしかわからないことで、どんなに怪しくても第三者が「それは海賊版だ」と断じることができないからだ。この「通報」によって海賊版を排除することができるのは、著者本人とオリジナルの版元だけということになる。  すでに当サイトにおいて報じたこともあるが(http://www.cyzo.com/2010/11/post_5901.html)、AppleにしろAndroidにしろ、クリエイターの表現の自由を拘束することにはやたら熱心ではあるが、クリエイターの知的財産を守ろうとする意識は希薄であるように見受けられる。 ◆誰が作家を守るのか?  このように、現状のシステムでは、海賊版の流通による知的財産権の侵害を防ぐ手立てはない。  本来、こうした権利の管理は出版社が手がけてきたものであるが、出版業界の一部には電子書籍全体を敵視する傾向があり、その結果、電子出版で発生する各種トラブルへの対応策が整っていないという現状がある。  先に述べたAndroid Marketの「海賊版とおぼしき」翻訳漫画アプリにしても、日本の版元がチェックすれば本当の海賊版なのかどうかすぐに判明するし、著者の代理人としての立場から彼らが通報を行えば、一発でマーケットから排除することが可能なはずだ。  今後電子出版が盛んになり、作家が個人レベルで作品を刊行するようになると、海賊版問題はさらにあちこちで頻発するようになるだろう。作家は作品を執筆するのが本業であり、刊行した著作物の権利を守ることまでとても手がまわらないからだ。  実は同様の問題はPC用のWeb上でも発生している。この場合主に被害者となっているのは、同人漫画作家だ。違法にスキャンされたデータが、海外で製作された「画像収集ソフト」で集められ、アフィリエイト収入を目的としたサイトに配信されているのだ。同人作家の多くは、自作がそういう形で違法に再配信されていることをほとんど知らないか、知っていてもどうすればいいのかお手上げ、という状態に陥っている。誰か、彼らの代わりに権利を管理する者が必要なのである。  海外には、出版エージェントという業態がある。作家の原稿や規格を出版社に売り込み、ギャラの交渉を行い、契約内容の管理を行うというのがその業務内容だ。日本においては、この機能は出版社が請け負っていた。しかし、電子書籍時代の到来に伴い、出版社がこの機能を喪失すれば、日本でも出版エージェントがその役割を担うことになるのかもしれない。いずれにせよ、誰かが作家たちの権利を守らなければ、夢の電子書籍市場は違法業者が跋扈する荒地となってしまうことは間違いないだろう。 (文=高安正明)
電子書籍の作り方、売り方 つくれる。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 電子書籍なのに手売り販売? ウワサの「電書フリマ」で電子書籍の最前線を体験レポート 電子書籍時代に"定期購読専門誌"を創刊! 北尾トロと考える、本と雑誌の未来 黒船が来襲する閉じた出版業界──佐々木俊尚が辟易する『電子書籍の衝撃』への衝撃

ホントにできるの? 専門家が分析する「スカイマーク国際線進出」の可能性

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スカイマークオフィシャルサイトより
 上海まで片道4,000円!、マレーシアまでの直行便が5,000円!!――一昔前なら考えられなかった激安価格で飛行機に乗れる「ローコストキャリア」(LCC)が世界的に市場を拡大する中、日本国内線のLCCとして定着したスカイマークが、2014年を目処に、ついに国際線へ参入すると発表。航空業界を激震させている。  スカイマークでは、一人当たりの運賃を抑えるために1機約280億円の「空飛ぶ豪華客席」と呼ばれるオール2階建ての超大型旅客機「A380」を6機購入するとしているが、「スカイマークの経営規模を考えると無謀。購入資金もどこから引っ張ってくるのか」(航空ライター)と危惧する声もある。  一般にLCCは、パイロットに外国人や他社の退職者を再雇用して人件費を抑え、キャビンアテンダントも制服も簡素化してトイレ掃除を自ら行うなど、徹底したコスト圧縮により低価化を実現している。「牛丼の安売り合戦みたいな薄利多売の世界」(同)だけあって、今回の大型機大量購入が高すぎる買い物となる可能性は否定できない。  そこで、航空専門誌「AIR WORLD」編集長の竹内修氏に、スカイマーク社が国際線へ進出する狙いと今後の可能性について聞いてみた。「今回の件は我々にとっても寝耳に水で(笑)。あくまで推測という枠の中でご理解いただきたい」との前提のもと、以下の通りの回答をもらった。 ――スカイマーク社が国際線へ参入する最大の目的は? 竹内氏(以下、竹内) 大株主である「HIS」とのシナジー効果への期待、ということもあると思いますが、それとは別に、日本のLCCが国交省主導のもとでANA(全日空)の系列に入っていく中で、独立したエアラインとしての地位を保つという明確な意思表示という意味はあるかもしれませんね。 ――機体の購入が「高すぎる買い物」とする指摘もあります。 竹内 おそらく、いったんリース会社が購入した機体を借りることになると思います。そういう形で航空機を導入している会社は珍しくありません。一部の報道で言われているような1,000億円以上の投資が必要となることはないでしょう。しかも航空機の価格というのは、実はあってないようなところもありまして、「日本のエアライン初の国際線LCC」という効果を期待して、ある程度の値引きがされているはずです。資金調達は、巷で報道されているとおり、増資で行うことになるでしょうね。 ――具体的な路線がまだ発表されていませんが。 竹内 今のところ、成田~ロンドン、フランクフルト、シアトル線などの名が取りざたされています。「A380」は世界最大の大型旅客機で、座席数も多いですから、搭乗率の高い、いわゆる「ドル箱路線」に投入するのではないかと思います。また、HISや海外の航空会社と共同でチケットを販売し、高い搭乗率が期待できるハワイ線や、スカイマークの航空機の整備を委託している台湾路線などへ投入する可能性はあると思います。 ――今月4日にカンタス航空(オーストラリア)で緊急着陸する事故があり、その機体が「A380」でした。 竹内 あの事故はエンジントラブルによるとの見方が有力視されていますが、「A380」のエンジンは、カンタス航空やシンガポール航空の機体が装備する「ロールス・ロイス」社製のほかに、「エールフランス」社の機体などが装備する「エンジン・アライアンス」製のエンジンを選択することも可能です。発注時にエアラインが選択できるんですね。仮にですが「ロールス・ロイス」のエンジンが心配なら、もう一つのエンジンを選べばいいだけです。 ――スカイマークの試みがビジネス的に成功する鍵は? 竹内 成田と羽田の発着枠を確保できるかどうかは鍵になりますね。大型旅客機のA380は地方の中小空港で運航不可能ですし、かといって関西や名古屋といった空港を発着する便しか運航できないようでは旅客の数からして採算が合いません。また、魅力ある航空路線のチョイスも重要です。いくら安くても「そんな国、行かないよ」という路線では座席数を埋めることは難しいでしょうから。 ――既存キャリアのJAL(日本航空)やANA(全日空)への影響は? 竹内 仮にスカイマークが今回成功を収めた場合、これまで「A380」の導入を時期尚早として見送り続けてきたANAが、真剣に導入を検討することになるかもしれません。ただ、現時点ではスカイマークが本当に国際線へ参入できるかは予断を許しません。資金面も含めて障害となるハードルは少なくありませんからね。  * * *  ここ数年で急速に存在感を増してきたLCC。背景には、国同士の乗り入れを自由に開放しようというオープンスカイ協定が結ばれたことと、航空業界のサービスが二極化している点があげられる。エールフランスなどの大手キャリアがビジネスクラスで高い単価で利益をあげる一方、これまで飛行機に乗ったことがないような層を狙い、薄利多売で利益を出すのがLCCだ。国内大手のANA(全日空)でも、香港の投資会社との共同出資によるLCCへの参入をこのほど発表。「現行運賃の半額を目指す」(ANA)と鼻息は荒い。しかし、前述のとおり「牛丼の安売り合戦みたいな薄利多売の世界」だけあり、無策なままに価格競争に参戦することは危険だと指摘する専門家は多い。ある関係者は次のように言う。 「吉野家のほうが松屋より数十円高いけど、吉野家の味を求める客を相手に牛丼の質と価格をキープしていく、というやり方もあるでしょう。LCCも、しっかりとしたマーケティング戦略の中で自社の独自カラーをどう創造していけるかが鍵になると思います」 (文=浮島さとし)
AIR WORLD (エア ワールド) 2010年 12月号 いい時代になったもんだ。 amazon_associate_logo.jpg
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