省エネを高く評価された東京電力 2月に受賞決定の「第20回地球環境大賞」を辞退へ

chikyukankyo.jpg
「地球環境大賞」公式サイトより
 瞬時に東北地方の太平洋側を壊滅状態に陥れた東日本大震災。こうした未曾有の災害時こそ、取材記者を大量に動員できる大手新聞・テレビの真価が問われるところだが、そんな中、ひそかに「しまった!」と首脳陣が頭を抱えているメディアグループがある。 「『地球環境大賞』を主催しているフジサンケイグループです。20回目となる記念すべき今年の大賞受賞者になんと東京電力を選んでしまい、対応に大わらわのようです」(大手紙幹部)  「地球環境大賞」とは、1992年に産業界を主な対象にフジサンケイグループが立ち上げだ顕彰制度。秋篠宮殿下が名誉総裁を務める財団法人「世界自然保護基金ジャパン」の特別協力も得ており、ホームページによれば「環境に関する顕彰制度として日本でもっとも権威と格式をもつ」のだそうだ。 「審査員には、有馬朗人・元東大学長のほか権威をズラリとそろえていて、なるほど、"格式"ある賞の体裁を取っています。しかし産業界を主な対象にしているだけあり、大企業が順繰りで受賞している仲間内の催しという感じ。東電にしてみたら、20年目にしてようやくめぐってきた栄冠でした」(同前出)  受賞決定は、今年2月のこと。受賞者には財界を代表する企業がズラリと居並び、そのトップに東電が輝いた。その受賞理由は、こう説明された。 「川崎火力発電所(川崎市川崎区)に隣接する工場を新設の配管で結び、発電時に発生した蒸気を各工場に供給、熱源として再利用できる仕組みを構築し大幅な省エネを実現した。審査委員からは『既存のシステムを変えて省エネを図るものであり、大変効果的だ』(合志陽一・筑波大学監事)、『企業の境界線を超えた面的な省エネ活動の好事例』(椋田哲史・日本経団連常務理事)など、周辺地域を視野に入れた取り組みが高く評価された」  要するに、「省エネ」「CO2(二酸化炭素)削減」を金科玉条のようにうたい、この物差しにかなう取り組みこそ優良企業の証しだと言わんばかりなのだ。  しかし、今となっては悪いジョークでしかないだろう。受賞決定翌月の3月、東電は原発事故を引き起こし、放射性物質をまき散らしているのだ。  この状況に「環境大賞」はあまりにも不釣り合いだろう。目に付きやすい小手先の「省エネ」事業に取り組み、企業イメージをアピールしようと腐心するあまり、結果的には自然環境そのものを破滅へと導く形になってしまっている。  今回の震災と福島第一原発事故を受けて、フジ側は4月5日に予定されていた授賞式を延期すると同時に、東電の受賞を取り消すかどうか判断を迷っていたようだ。  13日になって、東電・清水社長が会見で、この受賞について「辞退する方向で調整したい」とし、主催のフジ側も、東電側から辞退の意向があることを認めた上で「今後、顕彰制度の趣旨に照らし合わせて、審査委員会ならびに顕彰制度委員会に諮り、正式決定する」とコメントしている。  審査委員長の有馬氏は、今回の受賞決定に際して「環境問題の解決に向けた各社の活動は年々深化しており、温暖化防止に向けたCO2の削減はもとより、生物多様性の保全など取り組みにも幅が出てきた」と語ったが、その見識こそ、あらためて問われることになるだろう。
不都合な日本の真実 不都合なことばかり。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「ここまで露骨に癒着していたとは」東電・ゼネコン・仙谷由人氏が夜の銀座で...... あまりにリアルな"原発マンガ"『白竜~LEGEND~』突如休載の理由とは? 「ずっとウソだったんだぜ!」アーティスト斉藤和義の原発批判ソングがYouTubeに

「やせた犬、ノイローゼの馬……」震災1カ月 原発5km圏内で見た被災動物の悲劇

futabacho041401.jpg
避難指示区域に取り残された飼い犬たち。力なく歩き回っていた。
 3月11日に発生した東日本大震災の巨大津波によって、日本は未曾有の危機を迎えている。人間社会の便利さを支える電力。それを生み出す発電所の事故によって、交通・産業・環境などにさまざまな被害がもたらされた。その陰に、見過ごすことのできない別の被害者がいる。それは福島第一原発周辺のエリアに取り残された動物たちだ。  震災から約1カ月後の被ばく被災地を歩いたフリージャーナリストの丸山ゴンザレス氏に、5km圏内に残された動物たちの現状を聞いた。 ――被災地、それも福島原発の5km圏内に入ることは可能だったんですか? 丸山ゴンザレス(以下、丸山) 4月3日(日)の時点では、意外なほどあっさりたどり着くことができました。最初は出身地の宮城にいる母に持病の薬を届けにいったのですが、流れで福島入りして「ここまで来たら福島原発の近くまで行ってみよう。どうせ近くまで行ったら検問があるだろうし、そこで引き返そう」と思ったわけです。 ――具体的にはどのようなルートを取ったのですか? 丸山 宮城の南部エリアから国道6号線をひたすら南下しました。途中で津波や地震のダメージで寸断されている道路がありましたけど、そこを迂回して再び6号に合流するってだけで、基本は同じ道を進みましたね。
futabacho041402.jpg
道路状況は壊滅的
――5km圏内に入ったとのことですが、原発周辺の様子はどうだったんですか? 丸山 5km圏内には、簡単に入ることができました。検問があったり、立ち入り禁止になっていたら引き返そうと思っていたんです。ところが、道路は封鎖されていないどころか、人が居ないんですよね。警備している警官にも一度しか会いませんでした。その警察官は「気をつけてね。危ないから」と言っただけで、強制的にオレを戻すわけでもなく、そのまま立ち去って行きました。道路事情が本当に悪く、道が崩落している個所も多くて、それを回避しながら進んでいたら「双葉町」の看板が出てきて「入っちゃったんだ......」というのが正直な感想でした。 ――噂では聞いていましたが、それほど簡単に入れるものなんですね。実際、どの辺りまで行かれたんでしょうか。 丸山 避難指示の出ている20km圏内にある双葉町内と福島第一原発の作業員通用口、裏門ですね。そこから少し迂回して第二原発横を抜けて行きました。そこも警備は皆無でしたよ。あまりに安易に近づけたんで、いくら非常時とはいえ、セキュリティー面での問題はあるんじゃないかとも思いました。双葉町は完全なゴーストタウンでした。6号沿いにはお店などもあるんですが、それも人が居ないだけで、割ときれいなまま。それで、町の中を車で回っていたら、何か動く物が見えたんで近づいてみると、犬の群れだったんですよ。
futabacho041403.jpg
ゴーストタウンと化した"原発の町"
「原子力明るい未来のエネルギー」の文字が空しい
――双葉町には動物たちが取り残されていたと? 丸山 そうなんです、明らかに飼い犬でした。首輪から数センチほど鎖がぶら下がっている犬が結構多いんですよ。おそらく現地に取り残された飼い犬たちを、消防か警察の人間が、少しでも生きられるように断ち切ったんでしょうね。住人たちがいかに緊急的な避難をさせられたのかうかがい知れました。  印象的だったのは、犬たちの反応です。オレのように突然現れた人間に擦り寄ってくることもあれば、警戒して距離を取ったり、ひたすら不信感をあらわにするように吠えてくるなど、同じ群れでも反応はさまざまでした。いずれも人間にどう接していいのか分からなくなっているんでしょうね。犬種からしても、もともとの群れではなくて自然発生的に集まっているんでしょう。犬たちも寂しいんじゃないでしょうか。 ――犬たちは自分たちで餌を確保しているんですか。それとも飼い主が餌を持ってきているんでしょうか。 丸山 餌は食べていない感じでした。見た目でやせているのが分かります。それでも何カ所かに、誰かが置いていった餌がありました。冷蔵庫の残り物っぽい感じで、ミートボールとか魚の切り身、スナック菓子なんかです。飲み水は、おそらく雨水なんかがたまった水たまりでなんとかしのいでいるんじゃないでしょうか。 ――ほかにも取り残されていた動物たちはいましたか。 丸山 犬のほかに目立ったのは猫の死骸です。餓死したのか、車にはねられたのか、それとも両方なのかは分かりませんが、道路沿いに死骸が多かった。この地域では牛も放牧されていましたが、これは小屋から解き放たれて街中を歩き回っていました。  衝撃的だったのは馬小屋です。ここには死骸が何頭分かあったのですが、生き残っている馬も10頭以上は居ました。その馬たちがノイローゼになっているようで、悲惨でしたね。小屋につながれたままの馬たちは最低限の身動きしかできずに、首が伸びる範囲にある餌は食い尽くして、餌の置いてあった床を何度も鼻でこすっていたんです。食べ物を探しているのかもしれないですね。飢えとストレスから狭い小屋の中で暴れた馬も居たようで、首や足にケガをしているようでした。ほかにも、ひたすら首を上下に振り続けているだけの馬も居ました。  この状況は、避難エリアである以上、この先取り上げられることはないのかもしれないと思い、立ち去ることがためらわれました。しかし、私自身も放射能の影響が気になりますので、長居できなかったのが正直なところです。  だから、住人に「戻ってきて何とかしろ」なんてとても言えません。でもペットや家畜や競走馬は、人間と一緒にしか生きられない命です。ほかにもっと方法はなかったのか、そのことを考えてしまうばかりですね。
futabacho041404.jpg
馬舎に取り残された馬たち。よく見ると、自ら打ちつけたのか、体中が傷ついている。
 いまだ収束の見通しが付かない原発問題の陰で、置き去りにされた動物たちも犠牲者と言えるだろう。そして、その悲惨な状況もまた、現在進行形なのである。
すべての犬に里親を! 阪神・淡路大震災 1556頭の物語 見過ごせない。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「できることをやるしか......」震災1カ月 原発事故から"35キロの町"いわき市の今を歩く 食料も燃料も絶たれた"グレーゾーン"で苦悩する被災者たち 原発職員がこぼした本音、略奪を踏みとどまらせた被災者の心

田原総一朗が「震災報道」に見た既存メディアの問題点と可能性とは【3】

793T9072.jpg
【1】【2】はこちらから 浮島さとし(以下、浮島) 田原さんご自身のお話に戻るんですが、今でこそ政治評論の重鎮としてご活躍ですが、お若いころはかなりメチャクチャをされてたというお話を耳にします。 田原総一朗(以下、田原) どうかな。例えば、どんな? 浮島 あの、元全共闘のヒッピーが全裸で行った結婚式の取材で、花嫁がノリで列席者全員とセックスすることになり、田原さんも花嫁に請われてその場でセックスしたという話は、あれはガセですか。 田原 しましたね。スタッフもみんな。それで、そのまま撮ってオンエアしましたよ。 浮島 そうですか(笑)。じゃ、ニュージャージー州でマフィアに取材を申し込んだら、マフィアの人間がビリヤード台を指して、この場で売春婦とセックスしたら取材を受けてやると言われて、実際にその場でヤったというのも本当ですか。なんかセックスの話ばかりで恐縮ですが。 田原 本当ですよ。だって取材するためだからしょうがない。取材はなんでもありですよ。 浮島 よくその状態で●●●が立ちますね......。ビビったりしなかったんですか。 田原 なんでビビるの? 浮島 なんでって、周りにマフィアがいるからです。 田原 だって、こっちは取材をしたいんですよ。そのためにはなんでもやりますよ。あのね、取材ってのは最終的にどこか命を張るという部分がないとダメですよ。だから向こうもこっちを信用する。そういうもんです。 浮島 今のお話で思い出したのですが、先日、(政治評論家の)三宅久之さんとお会いしたときに、70年代に起きた「西山事件」についてお聞きしたんです。当時、毎日の記者だった西山氏が、外務省の女性職員と懇ろになって沖縄返還協定に絡んだ機密情報を入手し、それをスクープとして出した。三宅さんは当時、毎日新聞デスクで西山記者の上司だった。 田原 あの時は取材方法が問題視されて、毎日新聞が世論からも同業他社からも批判されましたね。最後には男と女のスキャンダルに話が矮小化されてしまった。 浮島 三宅さんによると、その時ただ一人味方してくれたのが、ナベツネさん(渡辺恒雄・読売新聞社主)だったそうです。記者仲間の飲み会の場で「おまえら、おマ●コまでしてスクープ取ってこれるのか! オレのライバルは西山だけだ!」と言ってくれたと。ナベツネさんといえば今回のプロ野球開幕強行発言で男を下げましたが、これは若かりしころの男前なお話だなと。 田原 だってねえ、取材っていうのは、方法が三つあるの。盗むか、だますか、買収するかなんですよ。その意味で、西山事件は批判されるような問題では全然ない。 浮島 今、日本で盗撮のような手法で取材をして、仮に重大な反社会的行為の事実を引き出したとしても、当局以上に視聴者やネットユーザから取材した側に批判が来ますよね。「おまえら法律に違反してネタ取ってるじゃないか」と。 田原 だろうね、でも叩かれてもいいじゃない。昔ね、アメリカのあるスーパーが腐った肉をミンチにして商品として売ってるという噂があって、アメリカのテレビ局の人間がスーパーの店員に化けてカメラを持ち込んで、腐った肉を加工してる現場の撮影に成功して放送したの。そしたらそれがドキュメンタリーの権威ある賞を取った。 浮島 それはすごいですが、訴訟をされたりとかは。 田原 もちろん訴えられた(笑)。しかも裁判に負けた。で、僕はその取材をした責任者を取材したの。「負けたね、やっぱり違法だね」って。そしたら「そうですね」って。「これからどうする、もうしないの」と聞いたら「方法がまずかった。もっとバレない方法でやる」と。 浮島 コンプライアンスもクソもない(笑)。でも取材方法としては正しいと。もっとも、コンプライアンス自体が悪いわけじゃないですしね。法令遵守は必要なのであって、その解釈がゆがんで独り歩きしていることが問題ということで。 田原 西武ライオンズに東尾修っていうピッチャーがいたでしょ。彼に「ボークの定義って何だ」って聞いたの。そしたら、「アンパイアがボークと言ったらボークです」と。「あなたはボークしないの」と聞いたら、「バレないようにやるんだ」と。そういうもんです。 浮島 圧力に萎縮せずに、したたかに一貫してやり続ける姿勢が求められると。 田原 あと、楽しむことも大事じゃないかな。僕も裁判起こされたりしたけど、誤解を恐れずに言えば、裁判そのものはすごく面白かった。そしたら弁護士がね、こんなの面白がるの田原さんぐらいしかいないって。 浮島 ああ、なるほど。実は田原さんが提訴された時もすぐに事務所にインタビューを申し込んだんです。絶対に今は断られると思ったら、秘書の方は「田原は全然OKだ」と。でも、弁護士がNG出すかもしれないとおっしゃるので、担当弁護士の●●さんに電話で聞いたんです。そしたら●●弁護士も「田原先生は絶対OK出しちゃうと思うけど、今は遠慮してもらえますか」と言ってました。今のお話を伺って、なんか、そのときの空気が理解できました(笑)。 田原 ああ、●●さんがね。そんなことがあったの。 浮島 田原さんといえば『朝まで生テレビ』(テレビ朝日系)です。1980年代後半のかなり初期の放送を、学生だった私は友人と見ていた記憶があるのですが、田原さんが討論のテーマに予定されていなかった天皇制の問題を急に語り始めたんです。当時は天皇制といえば、今とは比較にならないくらいタブー視されていて、テレビで正面から議論するなんてあり得なかった。だから、見ているこちらにも「この司会者、何かやり出したぞ!」とびっくりして。あれ、確信犯ですよね。最初から企んでたのですか? 田原 あれはね、あのとき昭和天皇のご容態が思わしくないころで、今ここで天皇制の議論を避けるのはどう考えてもはおかしいだろうと、前もって局のプロデューサーに持ちかけたんですよ。そしたら彼も悩んでたけど、やっぱり無理だと。だから分かったと。その代わり、「生放送だから、たまたま話がそっちへ流れてしまうことは、アクシデントとしてはあり得るよね、その場合の責任は僕が持つしかないよね」と言ったの。そしたら彼は黙ってた(笑)。それを僕は暗黙の了承と受け取った。 浮島 あのとき田原さんが「今、天皇陛下が......」と切り出した途端、パネラーの間に緊張が走ったのが画面を見ていてもわかりました。猪瀬(直樹)さんですら動揺してましたから。田原さんも視線を盛んにチラチラとスタッフの方に動かしていて、スタジオが右往左往している空気が伝わってきたのを鮮明に覚えています。結局、栗本慎一郎さん(当時:明治大学教授)が「聞いてない!」って顔を真っ赤にして退席しちゃうし。あれはしびれましたね。 田原 しかけてナンボですからね。テレビというものは。 浮島 「朝生」はご自身で構成を考えるのですか。 田原 そう。全部こちらでやる。出演者もほとんど自分で選びます。で、このメンバーだか、ら、だいたいこういう話の流れで、という感じで。ついでにスポンサーまで自分で見つけてくることがありますよ。 浮島 その構成通りにいくものですか? 田原 一回もいったことない。むしろ、いきそうになるとこっちからかき回すから。当たり障りない答えばかりされるとつまらないでしょ。 浮島 スポンサーという言葉が出ましたが、よく「スポンサーの圧力」という言葉が使われますよね。スポンサーや広告代理店から電話がかかってきて「番組やめろ」みたいな。朝生では実際のところどうなんですか。 田原 あのね、スポンサーだって出資している以上は視聴率には敏感だけど、圧力をかけて番組をつぶすなんてことはまずありませんよ。それを言ってる局の人間がいたら、ただの言い訳。自分の力の無さを責任転嫁してると思っていい。そりゃね、トヨタ批判をする番組をトヨタのスポンサードでは作れませんよ。でも、そういう極端な形でない限り、スポンサーは文句なんて言ってきませんよ。 浮島 『朝生』を長くやってこられて、局のスタッフも世代交代してきて変化もお感じになると思うのですが、何か一貫したテーマとして掲げているものはありますか。 田原 まぁ、全体的に昔よりやりづらくなったけど一言で言えば、やりにくいものをどこまでやるかがテーマですかね。さっきもあなたが言ったけど、コンプライアンス部の監視体制も厳しいしね。 浮島 正直言って、段々つまらなくなってきたんじゃないですか。 田原 それはないでしょ。僕はね、テレビ局の監視体制が強まってくるのは、半ば歓迎してるの。つまりケンカでしょ。ケンカする局面がいっぱい出てくるっていうのは楽しいことだよ。 浮島 でも、昔はできたことができなくなると、自分の伝えたいものとは違う番組になるとか。 田原 それはならないでしょう。こういうふうにやってできなければ、こっちからやるか、あっちからやるか。要はやりようですよ。 浮島 それを若いスタッフやディレクターさんに伝えていかれるのですか。 田原 いつも言ってますよ。僕は昔から言ってるの、民放のディレクターなんてのは自分の表現したいことができるはずがないって。なぜなら、テレビは総務省が監督官庁として完全に管理してるから。スポンサーもいるから視聴率も無視できない、上層部からの圧力だってある。三重に縛られてるんです。じゃあ、自分のやりたいことが全然できないかというと、逆に考えれば三重に縛られてるから面白いんだって。縛りの中でいかに自分のやりたいことをやるか。縛りがないところでやりたいなら同人誌が一番縛りがないからね。でも、それじゃ面白くないでしょ。やっぱり文句を言われるから面白いんですよ。
今だから言える日本政治の「タブー」 ウソも隠蔽もいいかげんにして。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 現場放棄、東電批判を"自粛"......震災であぶり出される大手メディアの素顔 「紙がない!」製紙工場被災と広告激減で出版界大倒産時代が来る!? 「ここまで露骨に癒着していたとは」東電・ゼネコン・仙谷由人氏が夜の銀座で......

田原総一朗が「震災報道」に見た既存メディアの問題点と可能性とは【2】

793T9071.jpg
撮影=笹村泰夫
【1】はこちらから 浮島さとし(以下、浮島) 取材力の話に関連するのですが、警察情報を記者が記事にする場合、被疑者が警察に拘束されていると、情報の裏を取るのが非常に難しい。結果、警察が言っていることをそのまま書くしかない。それがパターン化しているという現状があります。 田原総一朗(以下、田原) もともとマスコミってのは、取材源に対して立場が弱いんですよ。典型的なのが、今言った警察や検察に対して。例えば今、ホリエモンが逮捕されたとしますよね。検察は堀江さんを有罪にしたいから、いかに彼が悪人で汚い人間かという情報を一方的にリークする。身柄は当局に拘束されているから裏が取れない。なので、メディアは取材をせずに、リーク情報をそのまま世にはんらんさせ、それで世論が形成される。 浮島 検察が意図した通りに世論が作られる。あるいは、検察に批判的な記事を書く記者は(記者)クラブに出入り禁止とか。 田原 それもある。検察の意図に沿って流さないと、嫌がらせをして取材を拒否したりね。拒否されたら、検察情報が一切入ってこないから紙面が作れない。従って、検察の批判記事は基本的に新聞に出てこないという構図があったわけだけど、例の村木厚子さんの冤罪事件では、さすがに各紙ともここぞとばかりに検察をたたいてましたね。ただ、あの事件については批判できたけど、また別の事件については前と同じで、検察の圧倒的な優位性は変わらないでしょう。 浮島 検察タブーと関連するのですが、田原さんがメイン司会者だった『サンデープロジェクト』(テレビ朝日系)の打ち切り理由は、検察批判の急先鋒である元検察官の郷原信郎氏を、田原さんが番組に呼んで自由に発言させたことに対して、局の上層部から圧力がかかったからだという話もありますが。 田原 郷原氏を今後も番組に出すのであれば朝日の司法記者を出入り禁止にすると、検察からそう言ってきたという話は聞いています。 浮島 検察から記者を出入り禁止にされたら、朝日新聞は記事が作れない。困った上層部は、田原さんを切ったと、こういう構図ですか。 田原 まぁ、必ずしもそれだけとは言いませんけどね。あの番組がいろんな意味で局の上層部にとって重たい存在だったのは確かでしょうね。 浮島 局の上層部からしたら、田原さんが"空気を読まない"番組作りばかりするので負担だったのではないでしょうか(笑)。その意味では、鈴木宗男前衆議院議員が収監される前にもインタビューをされていますが、あれも地上波では放送できないのでニコニコ動画で流したのですか。 田原 そう。収監前にどうしてもメッセージを撮りたかった。彼は裁判について言いたいことがいっぱいあるわけだから。テレビに持ちかけたらNGだというので、それでニコニコ動画に「やらないか」と言ったら「やりましょう」と。それで70分流しました。 浮島 宗男さんがNGだというのは、刑事被告人や容疑者だからという理由は分かるのですが、そういうNGの基準って各局の規則やガイドラインにでも明記されているのですか。 田原 明記はされてないけど、起訴されて裁判中の人間は出さないのが一応はテレビ界の大原則なんです。 浮島 しかし、それを言ったら堀江貴文さんもそうだし、もっと言えば田原さんも裁判中じゃないですか(編注:北朝鮮による拉致被害者の有本恵子さんの両親が田原氏の発言をめぐって2009年7月に神戸地裁へ提訴)。 田原 そう。だからそこらへんはあいまいというか、ガイドラインとして明文化されてるわけじゃないから。今のところでいうと、「堀江さんはOK、ただし裁判のことは言っちゃいけない」みたいな空気にはなっていますね、テレビでは。 浮島 でも、そういう「空気」も黙ってて自然に出来上がるわけではないですよね。田原さんが堀江さんをテレビに引きずり出したいと思っても、局から「被告人だからダメ」と言われ、そこから折衝して出演までこぎ着けるわけですよね。今でこそ堀江さんは普通にテレビへ出ていますけど。 田原 もちろんそう。僕はね、「番組を作る」とか「表現をする」ってことは、(テレビ)局側とのケンカだと思ってるんです。あるいは新聞社の「社」でもいいですね。雑誌だったら編集部。そことどこまでケンカできるかだと思います。逆に言えば、それがあるから面白いんじゃないですか。 浮島 田原さんは1964年に東京12チャンネル(現:テレビ東京)に入社以来、45年以上テレビ業界に携わっていらっしゃるわけですが、当時と今では世の中の状況もテレビ局員の社会的地位も全く違うと思うのですが。 田原 違うね。僕が東京12チャンネルに入ったころは、テレビがとてもいいかげんな時代だったの。ステータスも全然なかった。特に東京12チャンネルはできたばかりの「テレビ番外地」みたいな、インディーズ的な会社だった。誰にも相手にされないから、今のニコニコ動画みたいにいろんな番組が自由に作れたんですよ。でも、徐々にテレビ会社も就職試験が難しくなり、一種のステータスになってくると、だんだん縛りが強くなってきた。 浮島 テレビが自由にできたというのは、当時はまだ活字媒体の方が社会的地位がはるかに高くて、視聴者もテレビをそんなに信頼していなかったという要素があったと思います。まさに今のネットと同じで。自由な番組作りができるというネットメディアも10年後は、テレビと同じ道をたどるとは言わないまでも、今と違った形になると考えられますよね。 田原 確かに違った形にはなると思うけども、ただネットメディアは誰もが発信者になれるというのが最大の特徴だからね。これはテレビなどの既存のメディアとは大きく違うところなんで、同じ道をたどることはないと思う。ただ、ネットは「金を払わない」というのが主流だからね。ビジネスモデルの構築が大きな課題ですね。堀江(貴文)さんなんかは有料メールの会員を相当抱えているようだけど、誰もができるモデルではないからね。ニコニコ動画なんかは、ようやくビジネスになり始めたというけど。 (【3】につづく
今だから言える日本政治の「タブー」 ウソも隠蔽もいいかげんにして。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 現場放棄、東電批判を"自粛"......震災であぶり出される大手メディアの素顔 「紙がない!」製紙工場被災と広告激減で出版界大倒産時代が来る!? 「ここまで露骨に癒着していたとは」東電・ゼネコン・仙谷由人氏が夜の銀座で......

田原総一朗が「震災報道」に見た既存メディアの問題点と可能性とは【1】

793T9052.jpg
撮影=笹村泰夫
  『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)の顔として、テレビジャーナリズムの可能性を切り開いてきた田原総一朗氏。1964年の東京12チャンネル(現:テレビ東京)入局以来、約半世紀にわたりテレビ業界を見続けてきた。また、緻密な取材を基にこれまで150冊を超える著書を出すなど、活字ジャーナリズムの世界でも第一人者として活躍を続けている。その田原氏が、3月11日以来続く一連の「震災報道」の問題点や、『サンデープロジェクト』(同)打ち切りの真相、さらには若かりしころの破天荒な仕事ぶりなどを激白。既存メディアの可能性や問題点を浮き彫りにしてもらった。
(聞き手=浮島さとし/フリーライター) 浮島さとし(以下、浮島) 3月11日の大地震から早くも1カ月がたちました。一連のマスコミ報道をご覧になっていてお感じになることはありますか。 田原総一朗(以下、田原) 新聞やテレビが政府の発表をそのまま垂れ流していますよね。たとえば、11日の大地震の翌日に福島第一原発の1号機が水素爆発を起こした。これで建屋が吹っ飛びました。ところが、建屋の内部で爆発するほど気圧が上がる理由は、普通はないわけですよ。であれば、どこからか高い気圧が漏れてきたということになる。建屋内部で気圧が高い箇所といえば、圧力容器の中と考えるのが妥当なんです。 浮島 あの時点では、まだ政府は圧力容器の損傷はないと言っていたわけですが。 田原 政府は確証情報しか出さないからね。でも、順を追って普通に考えれば原子炉が原因と推測できるはずです。ということは当然、圧力容器が破損していると見なければならない。圧力容器が破損するということは、燃料棒が溶融している。もちろん、それは推測です。しかし、そういう推測を政府は発表しない。政府が発表しないと、マスコミも報じない。でも本来マスコミは、その可能性を報じないといけないんですよ。 浮島 専門家の中にはツイッターやブログなどで炉心溶融の可能性を示唆していた人もいましたが。 田原 そういう声がテレビになかなか出なかった。破損している可能性が高いと論理的に確証を持って言える専門家は居たわけで、たぶん記者もそこは取材しているはずなんですよ。でも、怖いからそれを発表しない。なぜか。「危機感をあおっている」「風評被害だ」と言われるのが怖いから。その結果、無難な報道に徹してきた。無難な発表というのは政府の発表をそのまま伝えるということなんですよ。 浮島 いわゆる、大本営発表。 田原 その通り。大本営発表ですよ。でも、戦争中は言論統制が厳しくて戦争反対なんて言えなかったけど、今は統制なんてないわけ。なのに、なぜかマスコミは大本営発表をだけを垂れ流す。理由は無難だからですよ。 浮島 それと、地震から4日目くらいですか、一斉にどこの局も番組編成を通常の形に戻し、バラエティー番組も始まりました。NHKも大河ドラマを始めて、気付いたら地震報道をしている地上波が一局もないという状態になりました。あの時は、建屋内部が冷却できずに温度が上がり続けていて、恐ろしく緊迫していたはずなのですが。 田原 それも無難だから。バラエティーを始めたら時期尚早と世間からたたかれるかもしれない。やるならみんなで一緒にやりましょうと。自分のところだけたたかれないで済むわけだから。自粛だってなぜするかといえば、無難だからですよ。自粛しないと批判される。とにかく無難でさえあればいいという。その結果、事実が視聴者に伝わらない。それが一番の問題です。 浮島 田原さんはよく「今のメディアは守りに入りすぎて面白くない」という趣旨の発言をいろいろな場でされています。昨今は各局ともコンプライアンスを専門に取り扱う部署が発言力を持ち、思い切った番組作りができないという話も聞きます。コンプライアンスという言葉が独り歩きをしているとの指摘もあるようです。 田原 コンプライアンス部ってのは、クレームをつけるのが仕事の部署なんですね。例えば「視聴者からこんなクレームがあった」と大騒ぎする。大騒ぎしないとサボってるってことになる(笑)。それもあって、テレビも新聞も非常に神経質になってる。最近ね、相撲に対しても政治に対しても、あるいは19歳の受験生がカンニングしたことに対しても、新聞記事やテレビの番組にクレームがいっぱいくるわけ。世間の目が非常に厳しいよね。僕は一種のいじめだと思うけどね。 浮島 制作サイドが思い切ったコンテンツ作りをできない大きな理由は、クレームを恐れた過剰なまでの組織防衛の風潮だということになりますか。 田原 それが一つね。もう一つ大きいのが経費の問題。結局ね、新聞もテレビも不況なんですよ。広告費が落ちて景気が弱くなると経営がそれだけ弱気になる。新聞なら取材費、テレビなら制作費を落とそうとする。これにより取材が十分にできなくなる。すると、取材に自信を持てなくなる。自信がなくなると臆病になって、その結果、「危険なことはやめよう」「無難にやろう」という動きになる。それが今のコンプライアンスとやらの実態だよね。 浮島 実際、取材経費が出ないという状況が珍しくなくなりました。先日、野村総研の上海支社で幹部が強制わいせつを働いたという事件があったのですが(記事参照)、取材をしたら被害者が上海に居るという。一次情報を得るために上海まで行ったのですが、ビジネスとして見たらまるっきり赤字でした。これがネット媒体ならまだしも、週刊●●とか、××とか、結構な大手出版社でも「上海? 遠いな、無理」って感じですから。 田原 ああ、そう(笑)。昔は(週刊)ポストでも(週刊)現代でも、経費で海外取材が当たり前だった。僕はずいぶん行きましたよ。今はだんだんケチになってる。あとね、これ良くないことに、テレビが制作費を削減するでしょ。それでも番組ができるでしょ。「しめた」と思っちゃう、管理職が。だから、これから景気が良くなっても制作費を上げませんよ。 浮島 安く作れるノウハウを覚えてしまうと......。 田原 そう。覚えた、と思っちゃう(笑)。本当はそんなもの、ノウハウでもなんでもないのにね。それだけ取材がおろそかになって番組は劣化するんですよ。 浮島 私も良くないとは思いながら、特に遠方だと移動経費と時間がもったいなくて、ついつい電話取材で済ませてしまうことがあります。 田原 それが良くない。あのね、新聞記者を一番ダメにしてるのはケータイですよ。記者は政治家の携帯番号を知ってるわけだ。会わずに「どうですか」と聞いちゃう。そりゃ聞けば答えはするけど、ケータイ程度にしか答えないからね。Face to faceで押し込んでいくのと、ケータイで聞くのとは全く違いますよ。なのに、それで取材できたと思っちゃう。ここが問題ですよ。便利になりすぎたんだ。 浮島 確かに楽なんです。電話で20~30分聞いて、それなりに記事が書けちゃう。でも、会って顔を見て話すのとは、出てくる言葉が違いますよね。 田原 全然違う。ケータイが普及したことはね、新聞やテレビの記者の取材力を相当減退させたと僕は思ってますよ。 (【2】につづく
今だから言える日本政治の「タブー」 ウソも隠蔽もいいかげんにして。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 現場放棄、東電批判を"自粛"......震災であぶり出される大手メディアの素顔 「紙がない!」製紙工場被災と広告激減で出版界大倒産時代が来る!? 「ここまで露骨に癒着していたとは」東電・ゼネコン・仙谷由人氏が夜の銀座で......

「できることをやるしか……」震災1カ月 原発事故から"35キロの町"いわき市の今を歩く

iwaki0001.jpg
いわき市の久ノ浜地区。瓦礫の向こうには
静かな海が広がっている。
 福島第一原発事故は一向に収束の気配を見せず、近隣のいわき市沖で調査用に採取されたコウナゴからは、またしても国の暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された。  福島第一原発から"35キロ"近辺に位置するいわき市・四倉には、いまだ避難指示も屋内退避指示も出ていない。放射能への恐怖からトラックドライバーが寄り付かず、震災後しばらく物資が不足していたことは既報の通りだが、1カ月が経過した今、地元住民たちはどのように暮らしているのか。被災地いわきの今を歩いた。 ■いまだに残るがれきの山  常磐道は「いわき四倉IC」までが復旧しており(※2011年4月10日時点)、首都高から約3時間で四倉地区の中心地「道の駅よつくら港」のある国道6号線にたどり着く。昨年7月にグランドオープンを迎えたばかりの「道の駅よつくら港」は、柱と屋根を残して津波に打ち抜かれている。  国道6号を挟んだ向かい側の木造住宅群は特に損傷が激しく、住人たちが忙しそうに廃材や廃家具を運び出している。一服していた地元の方に話を聞くと、食料や燃料などの物資については、もうほとんど不足はなくなってきているという。 「アレ(道の駅)が目の前にできた時は"ずいぶんと立派なのが建った"と思ったけど、今じゃほら、一緒だ」  地元に居を構えて30年以上になるという60代の男性。水産関係の仕事は復旧の目途すら立っていないが、とにかくできることをやるしかない、と笑顔を見せる。 「放射能は、そりゃ怖くないわけじゃないが、どうしようもないからなあ。こうやって片付ける家があるだけでもまだマシってもんだよ」  「何か困っていることはありますか?」と尋ねると、ぐしゃぐしゃに壊れた家の中に案内してくれた。  「これ、知り合いに頼んで安くしてもらったんだけど。こうなっちまって、なんだか申し訳ないんだよなあ」と、木くずと泥にまみれたドラム式の洗濯機を指さした。 ■「体を動かしている時だけ、震災を忘れられる」  四倉地区の津波被害は、宮城県の気仙沼市や女川町に比べれば「全然大したことないレベル」(地元の20代男性)だという。それでも、1カ月たった今でも方々にがれきの山が築かれ、自動車が転がっているのだから、その威力は想像を絶するものがある。  土砂の詰まった布袋をネコ車に載せてヨロヨロと運んでいた40代くらいの女性から、荷を引き取りつつ声をかけた。 「ショックだったし、しばらくは大変だったけど、いつまでも寝てるわけにもいかないから。不思議なもので、こうやって体を動かして片付けをしてると、震災のことを忘れられるんですよ。おかしいでしょ?」  歩道には、家屋や路地に流れ込んだ土砂を詰めた布袋が、まるで土のうのように積み上げられている。今は穏やかに小波が打ち寄せているが、大津波を起こした海からは数十メートルしか離れていない場所だ。怖くないのか、と聞くと、 「怖いでしょう? 避難場所はそこの高台だからね。揺れたら必死で走りなさいよ」  アハハ、と記者の腕をたたきながらひとしきり笑うと、「ありがとう、助かりました」と空になったネコ車を押してがれきの山へ戻っていった。  四倉からさらに北上した久ノ浜地区には、常磐線の線路上に空っぽになった電車が乗り捨てられていた。海沿いの集落には、一階部分がごっそり抜けてしまった木造住宅が肩を寄せ合っている。重機の入った形跡もあり、片付けは着実に進んでいるようだ。  久ノ浜第一幼稚園の崩壊した園舎に、園児を連れた両親が訪れていた。この幼稚園に限って言えば、園児に犠牲者は出なかったという。  「ママ、あった、これ!」と、園児が真っ赤なおもちゃを掲げてうれしそうに顔を輝かせている。聞けば、4月からは15キロほど南下したところにある平第一幼稚園に編入することになり、ちょうどこの日が入園式だったそうだ。 ■原発事故の前線からわずか10分 復興への意気は高く
iwaki0000.jpg
J-ビレッジ前の検問。ここから先は
福島第一原発の20キロ圏内となる。
 久ノ浜から6号を北上すると、ほんの10分ほどで原発事故の前線基地になっている「Jヴィレッジ」が見える。交差点で警察が検問を張っていて、それ以上進むことができなかった。ここが20キロ地点である。近隣のセブンイレブン広野町店には広い駐車場があり、警察車両が何台も止まっていて、真っ白い防護服とゴーグル、マスクを着用した作業員が数十人、車座になって地べたに腰を下ろしていた。  復興へ息づく町と、原発事故の前線が、まさに背中合わせなのである。 「とにかく、分からないことが多すぎる。(漏れ出している放射性物質に)人を殺すような害があるのかないのか、どのくらい危ないのか、避難した方がいいのか、今、こうやってる時も、ここの空気は吸っちゃいけないくらい汚れてるのか。いくら考えても分かることじゃないし、どうにもならないことばかりですよ。でも、がれきを片付けてると、どんどんきれいになるからね。生きてる感じがする。人間の体だってケガしたら治る、治そうとする、それと同じだよ」(四倉在住の30代男性)  事故を起こしている第一原発からわずか35キロ、いわきの市街地はエネルギーに満ちているように見えた。  政府は11日、20キロ圏外の一部地域について「放射性物質の年間積算量が20ミリシーベルトを超える地域」を「計画的避難区域」に設定し、避難を指示することを決定したという。その避難区域にも、いわき市は含まれていない。  日々、発表されてはコロコロと変更や訂正が繰り返される放射性物質の量についても、政府のあいまいな避難指示についても、話題を振れば住民たちはいら立ちと不安を隠そうとしない。だがその一方で、目の前に広がるいわきの町を元の姿に戻そうと、朝から晩まで汗を流して身体を動かしている。  この日、30人ほどの被災者の方々にお話をうかがったが、「避難指示が出てもここにとどまる」と答えた方は一人もいなかった。こうした住人の生命と健康を守るのが、政治の役割であるはずだ。政府には、適切な判断と指示が求められている。 (取材・文=編集部)
※当記事は、2011年4月10日(日)の取材を元に構成しております。取材に訪れた日の翌11日夕方、いわき市では大きな余震が立て続けに発生し、土砂崩れで3人の方が亡くなるなど、大きな被害が出ているそうです。編集部は犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに、一日でも早くいわき市と東日本全域の被災地に暮らす方々に安寧の日が訪れることを願っております。
リーダーになる人に知っておいてほしいこと 菅さんへ。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 【東日本大震災】原発職員がこぼした本音、略奪を踏みとどまらせた被災者の心 食料も燃料も絶たれた"グレーゾーン"で苦悩する被災者たち 「もっと避難所を映せ!」サンドウィッチマン伊達の"提言"は震災報道を変えたか

「ここまで露骨に癒着していたとは」東電・ゼネコン・仙谷由人氏が夜の銀座で……

sengokuyoshito.jpg
『陰の総理・仙谷由人vs.小沢一郎』
(徳間書店)
 いまだ解決の見通しが立たない、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故。そんな中、銀座のクラブ関係者から東電幹部と、ゼネコンや政治家との"不適切な関係"が漏れ伝わってきている。  特に、東電と準ゼネコン・水谷建設とのそれは顕著だ。水谷建設といえば「政商」として有名で、5年前には脱税で元会長が逮捕されている。その脱税で作った裏ガネが、政界や裏社会に流れたのではないかとささやかれている。  この脱税事件の元となったのが、福島第二原発の残土処理事業。この事業は東電から前田建設工業が受注し、その下請けとして水谷建設が行っていた。水谷建設が孫請け業者に業務を発注した時に、所得隠しが行われたとされている。この事件をめぐっては、東電からの発注金額が不適正だったのではないかと、東電の元会長が特捜部の事情聴取を受けていた。つまり当局は、東電が発注額を上乗せし、その過剰資金を使って、水谷建設に政界や裏社会に対して裏工作をさせていたとにらんだのだ。  結果的に、政界や裏社会に捜査のメスが入ることはなかったが、東電と水谷建設の蜜月ぶりは明らかになった。銀座のクラブ関係者は「脱税事件が起こる前までは、東電の幹部連中は毎晩のように銀座8丁目の高級クラブ『S』で、前田建設と水谷建設の接待攻勢に遭っていましたよ。払いはすべて水谷。東電の幹部の中には店のホステスを愛人にして、その手当まで水谷に面倒を見させていた人も居たんです」と言う。もちろん、これらのカネは巨大な事業発注を通して東電からゼネコンに流れたもの。  別のクラブ関係者は、「実際にはクラブ『S』に来ていないのに、店のスタッフは来たことにして水谷に請求書を出す。いわゆる架空請求で水谷からカネを吸い上げ、店からは東電の幹部たちにリベートが払われていたという話もありましたよ。いわば、マネーロンダリングの舞台だった『S』が東電関連の客の売り上げで持っていたことは間違いありません」と語っている。  さらに、銀座では東電幹部に交ざって、民主党の仙谷由人代表代行も一緒に飲み歩いていたところが目撃されている。仙谷氏といえば、国家戦略相時代、海外に日本の原発技術を売り込むためにトップセールスを展開していたが、東電幹部とそこまで露骨に癒着していたとは驚く。  巨大企業・東電から流れ出した莫大なカネが、ゼネコンや夜の銀座を介して政治家たちを汚染していたとしたら、国の原発への安全政策が骨抜きになるのもさもありなんというものだ。 (文=本多圭)
陰の総理・仙谷由人vs.小沢一郎 ズブズブ。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 現場放棄、東電批判を"自粛"......震災であぶり出される大手メディアの素顔 「紙がない!」製紙工場被災と広告激減で出版界大倒産時代が来る!? 「都知事選はただの宣伝!?」漏れる本音......東国原英夫候補の狙いは、やはり国政か

現場放棄、東電批判を"自粛"……震災であぶり出される大手メディアの素顔

20110407.jpg
「週刊新潮」4月7日号(新潮社)
伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ギョーカイの内部情報を拾い上げ、磨きをかけた秘話&提言。  福島第一原発事故以降、メディアの現場でもそのスタンスが問われかねない"事件"が起こっている。その最たるものが「週刊新潮」(新潮社/4月7日号)で報じられた共同通信福島支局の現場放棄事件だ。爆発事故をテレビで見た東京の社会部幹部が、福島支局員たちの県外退避を指示、一時、福島市にある共同の福島支局が不在になる異常事態となったというもの。「新潮」も「ニュースの担い手が真っ先に逃げたら、パニックを増長する」と苦言を呈した。  だが、これにはさらなるトンデモ後日談があった。 「退避後、共同上層部が『すぐに戻れ』と指示を撤回し、支局長以下支局員たちは福島に戻りました。この職場放棄事件はもちろん、福島の他テレビ・新聞社にも知れわたっていた。そのため、福島支局長は仕方なく記者クラブで関係者に謝って回ったんです。その際、支局長は首にガイガーカウンター(放射線量測定器)をぶら下げていて、さらなるひんしゅくを買ったんです」(大手紙社会部関係者)  市民にさえも避難勧告が出されていない中、日本を代表する通信社の"放射能パニック"は大ひんしゅくモノだ。中には「あんたら(共同通信)は原発を推進してきた張本人だろう」と言い放つ関係者もいたという。というのも、数年前、共同は電通と組んで「原発は安全」というPR広告を共同加盟社に流した"前科"があるからだ。  その後、この支局長には自宅待機の処分が言い渡された。だが、この処分も支局長にとってはラッキーなことだったという。 「支局長の自宅は東京ですからね(笑)。福島から離れて放射能の恐怖から逃れられたと思ったのか、なんだかうれしそうにも見えました。その後、支局長は校閲部に左遷されましたが、直後に銀座で行われた脱原発デモに参加し、写真を自分のTwitterにアップまでしていた」(同大手紙関係者)  なんともはや、である。だがこの事態を招いたA級戦犯は「独断でパニックになり現場を混乱させた社会部幹部A氏」(某大手通信関係者)だ。 「支局長が更迭されたのに、Aさんがなぜ処分できないのかと、社内でも不満を漏らす記者は多い。Aさんは爆発直後からパニック状態になり、避難指示の前も『一人の被爆者も出すな!』『水は絶対飲むな』『支局から出るな』と、とんでもない指示を出しまくっていた。社内でも『Aさんがメルトダウンした』と嘲笑されていました」(前同)  しかし、共同の体たらくを報じた「新潮」も、彼らを批判する資格などない。原発事故以降の「新潮」を見ると、東電批判が一切ないという異常事態が続いているからだ。いや、批判しないどころか、東電社員の美談を掲載する始末。その理由はもちろん「広告」だ。 「これまでテレビはもちろん新聞・雑誌など多くのメディアは、東電、そして各電気会社の連合会である電事連から莫大な広告出稿という恩恵にあずかってきました。東電だけで年間220億円以上もの広告費が垂れ流されていた。ゆえにめったなことで東電批判はしない、タブーとなっていた」(メディア事情に詳しい関係者)  そのため原発事故当初、多くのメディアはあからさまな東電批判を控える傾向にあった。しかし事態は長期化し、放射能汚染が続くと、そんな平時の論理は通用しなくなった。さらに「東電という企業が今のまま存続しないのではないか」(前同関係者)という、何ともご都合主義的な判断から、雑誌メディアを中心に東電批判も展開されるようになる。そんな中、「新潮」だけが一貫して東電批判を控えているのだ。 「逆に言えば、手のひら返しをするメディアに比べ一貫しているのかもしれません。もちろん皮肉ですが(笑)。『新潮』はかつて批判していた阿含宗の広告をいつの間にか掲載していたり、パチンコメーカーに擦り寄るなど、広告に関しては商業主義丸出しでしたからね。しかも、今回の地震では千葉にある倉庫でスプリンクラーが誤作動し、出荷直前の書籍が水浸しになる大損害を被ったと言われています。事態が収束した後、また東電から広告をもらおうとする意図がミエミエ」(前同)  今回の大震災・原発事故が硬派ジャーナリズムを気取る「新潮」、そして日本を代表する共同通信といったメディアに内在する問題を、見事にあぶり出したと言える。 「しかし、メディアとはいえ企業です。社員(記者)を守り、利益を出すという義務がある。一方で、情報を発信し報道を続けるというメディアとしての使命もある。今回の原発事故は、こうしたバランス・メディアや記者個人のスタンス・存在意義を究極的に試されている事態なのです」(メディア事情に詳しいジャーナリスト)  骨のないメディアにとっては、頭の痛い日々が続きそうだ。 (文=神林広恵)
電力会社のおしごと カネで大手メディアを牛耳ったりもします。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「紙がない!」製紙工場被災と広告激減で出版界大倒産時代が来る!? 元「FRIDAY」「週刊現代」編集長が提言「いま週刊誌がやるべきこと」とは 「週刊朝日」名物編集長交代の裏に、あの小沢一郎の存在!?

「詐欺で訴えたい!」摘発の違法デリヘル ウソだらけの"肩書"に常連客激怒

tekihatsuderiheru.jpg
今回摘発された店舗のひとつ、
渋谷「R」のHPより。
 風俗好きにはちょっと夢が壊れるような話かもしれない。  警視庁は7日までに、大規模な違法デリヘルグループを売春防止法違反(周旋)の疑いで摘発。40代の韓国人経営者ら9人を逮捕した。  この容疑者グループは、渋谷や恵比寿など都心に複数の高級店を3年ほど前から開業。延べ1万人以上の顧客から約5億円の売り上げがあったと見られている。  店舗のひとつ渋谷「R」は、主にインターネットのホームページで宣伝。コンパニオン女性の写真にはそれぞれ職業が記載されていたが、その肩書がすさまじい。 「舞台女優」 「読者モデル」 「タレント事務所所属」 「レースクイーン」 「キャビンアテンダント」  女性はいずれも下着姿で顔を手で隠しているが、この肩書が本物ならデリヘルより芸能事務所をやった方がいいのではないかとも思ってしまうほど。  風俗誌編集者によると「デリヘル通の間では、店員らしき人物がネットの掲示板で自作自演の良い感想を書くことで知られていた。ただ、それに対してだまされたという声まではなかった」という。  店は女性の肩書によって金額に差をつけており、通常3万円の料金が、前出のような華やかな肩書の女性には5~8万円と高額設定をしていた。  しかし、今回の摘発で警視庁はここも徹底捜査。「書いてあった肩書はウソばかりだった」(捜査関係者)というから、約1万人の利用者からすればガッカリだろう。 「でも、同様の手口はこの業界では常とう手段。虚偽の肩書で宣伝をする業者はよくある」と前出編集者。  この時代、舞台女優やモデルが本当に働いていればネットでその情報が広がるはずで、ちょっと考えればファンタジーであることは分かりそうなもの。  しかし、前出の捜査関係者によると、今回のグループを利用していた客らしき男性から「だまされたので詐欺で訴えたい」という相談もあったというから穏やかではない。  ある弁護士に聞いたところ「法的には女性の肩書を偽った場合、詐欺として訴えることは可能。ただ、舞台女優やモデル、タレント事務所所属などはそういった活動を装うことが簡単にできるので、実際に争うのは難しい」とする。  いずれにせよ、今回の摘発では利用者も捜査を受けている。余計なトラブルに巻き込まれないためにも、店選びは慎重にすることが重要か。 (文=鈴木雅久)
フーゾク 儲けと遊びの裏事情 ふむふむ。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 エロじじいたちが赤裸々に告白『性生活報告アーカイブ』文庫創刊! テレクラは今こんなことになっている2010 さよなら&こんにちは、ピンク映画の殿堂「上野オークラ」新たなる旅立ち

「預けた猫が返ってこない……!」協会阪神支部で何が起こっていたのか(後編)

dobutsuaigo0200.jpg
動物福祉協会の問題を取り上げた「週刊新潮」
前編はこちら 「N島さんに猫を預けたら返ってこない」 「○○県へ里親に出したと言うだけで、詳しく教えてくれない」 「領収書をくれない。しつこく頼むとなぜか逆ギレされる」  取材を進めるうちに浮かび上がってきた証言の数々。その中身をもう少し詳しく見てみよう。
dobutsuaigo0201.jpg
阪神支部の正常化を訴える会員からの告発文
(クリックすると拡大します)
「NF会のN島さんに二匹の猫の手術代とワクチン代、回虫駆除代金と、『お車代もお願いね』といわれて合計8万円を払いました。車代というのは、猫を捕獲するのに車で来るからのようです。病院名は何回聞いても教えてもらえませんでした。高いとは思ったのですが、相場だと言われて言い返せなかったんです」(神戸在住の会員Cさん) 「病院名を聞いたら『○○(ある地域名)の先生に頼んである』と言われたんです。その先生はボランティアで無料で手術をしてくれることで有名な方なんですが、N島さんからは3万円を請求されて、なぜか領収書には別の獣医師の『K原』というハンコが押されてました。うさんくさいとは思ってたんですが、ほかに頼む人もいなくて......」(同Dさん)  また、手術ではなく「里親を探してほしい」と依頼した会員Eさんの証言は衝撃的だ。 「金額はともかく、預けた猫が行方不明になるというのはどういうことなんでしょう。すごく元気な猫だったのに、突然『あの猫は腎臓病で死んだ』と言う。そんなはずはないと問いただすと、『今は治療中だから』とか『具合が悪くて寝込んでる』と二転三転。もういいから返してくれと言うと、『私を疑ってるのか! 私はクリスチャンなんだから悪いことなんてしないわよ!』と意味不明なことを叫びだす始末です。しまいには逆ギレして『死んだって言ってるでしょ! あんたキ○ガイじゃないの』とまで言われました。キ○ガイはあんただと言いたいですよ。今は電話にも出てもらえません」
dobutsuaigo0202.jpg
預けた猫が死んで帰ってきたというある会員からの告発文
(クリックすると拡大します)
 前編で述べた通り、動物福祉協会の本部事務局が環境省に対して昨年12月13日付でまとめた報告書では、N島氏らが高額の手術代金を受領していた点や、K原獣医師が実費より高額の領収書を発行していた実態を認めた上で、 「従来から、阪神支部の助成金は他の支部に比し突出しており、本来の動物福祉の理念を忘れて、助成金目当てを公言する会員が増えるなど本部も憂慮しておりました」(原文ママ)  と、大筋で不正を認めながらも、複数の猫が行方不明になっている事実には触れず、 「(N島氏とK原獣医師が)深く反省し、協会に対し、二度と水増し領収書の発行はしないと言明しており、今後こうした事態は発生しない」(同事務局)と結論付けている。さらに、その2日後に発行された会員向け会報では「本部の調査で助成金支給に関して不正等は存在しなかったことは確認されております」と、環境省へ提出された報告書と正反対の報告がなされているのだ。
dobutsuaigo0202.jpg
環境省総務課動物愛護管理室のある庁舎
 協会本部が事態の幕引きを図る背景に、「公益法人の認可が大きく関係しているのでは」と語るのは、事情に詳しい別の愛護団体の幹部だ。 「2年前に公益法人改革のための法改正が施行され、今までの社団法人は一般法人と公益法人に分けられることになりました。寄付金控除などが認められる公益法人は、経理の透明性や公益性などが内閣府公益認定等委員会の30人の委員により厳しく審査されます。これまで全国4万件の法人で公益認定を受けたのは、わずか300件ほどという狭き門です。動物福祉協会が資金を不正に流用し、猫たちが行方不明になり、さらに協会ぐるみで犯人を隠避したとなれば、公益認定は取れないでしょう。彼らはそれを恐れているのです」  皇室関係者が名誉総裁を務めるほどの由緒正しい(?)動物愛護団体が公益認定を取れなければ、伝統ある協会の権威はガタ落ちだ。さらに、歳入の多くを寄付金で賄っている同協会とすれば、公益法人に与えられる寄付金控除の恩恵はぜひとも享受したいに違いない。 「環境省も事実を知った以上、犯人隠避に加担するわけにはいかないでしょう。動物福祉協会のH理事や顧問獣医師のY氏らは現在、環境省中央審議会の公益認定委員(公益団体を選定する委員)のメンバーですが、不正が発覚した団体の理事が選考委員にいるのはおかしな話です。当然、辞任すべきでしょう。また、公益認定が取れなかった場合、華子妃は名誉総裁をお辞めになるとのウワサが協会内に広まっています。協会は今まで華子妃のお名前を利用して多額の寄付を集めてきましたし、華子妃ご自身も善意で多額のご寄附をされていますから、実はこれが協会にとって一番の痛手だという指摘もあります」  では、こうした事態を関係省庁はどう受け止めているのだろうか。まず、宮内庁総務課に見解を求めたところ、問題はあくまで「日本動物福祉協会において処理する事項である」とした上で、常陸宮華子妃も宮内庁も「関与する立場にない」との回答がファックスで寄せられている(下記画像の通り)。
dobutsuaigo0204.jpg
宮内庁からの回答
(クリックすると拡大します)
 一方、動物福祉協会に対して今回、二度にわたり報告書の出し直しを命じるなど、比較的厳しい措置を取っている環境省は、「猫の行方不明については把握していない」としながらも、不明朗な会計が常態化していた事実を重く見ている。 「会員の内部告発を受け、省では協会から出された2009年度実績のすべてにあたる1,757頭分の報告書を精査し、不明点の再調査を指導しました。そもそも、阪神支部長という立場の人間が協会と別の個人組織(NF会)を並行して運営するというのがおかしな話です。それを見過ごしてきた協会本部の責任は決して小さくない。今後の協会の動きを見守っていきたいと考えています」(環境省動物愛護管理室)  最後に、当の動物福祉協会の見解を聞こう。以下は事務局長のコメントだ。 「今回の件は、以前から一部の会員から指摘されていました。本部としても放置してきたわけではないのですが、人員にも限界があり、必ずしも徹底した調査ができていたとは言えないのも事実です。また、一連の事態を会員に向けて十分告知していなかった点も反省すべきだと考えています。今回のことをしっかりと受け止め、改めるべき点は改め、協会の見直しを図っていきたいと考えています」  また、N島前支部長がなんらかの方法で猫を処分していた疑いについては、「そういうことはなかったと信じています」としながらも、具体的な調査は「予定していない」という。  実は、動物福祉協会の活動がメディアに注目されたのはこれが初めてではない。「週刊新潮」(1994年7月14日号/新潮社)が、「常陸宮妃殿下の日本動物福祉協会 犬一万匹薬殺」のタイトルで、協会が表向き不妊手術や保護をしていると偽りながら年間1万頭を薬殺処分していたとして、5ページを割いた特集で報じている。先の、別の愛護団体の幹部が言う。 「意外に知られていませんが、動物福祉協会は今でも預かった犬や猫の大半を行政に引き渡して、殺処分に加担しています。確かに野良猫や野良犬猫の処分に社会がどう取り組むべきかは大きな問題で、殺処分もひとつの方法だという議論そのものは、私はあってもいいと思います。であれば、こうした事実を活動方針として堂々と訴えるべきです。薬殺の実態を活動報告や収支報告書にも一切載せず、一方で保護をPRしながら寄付金を募るのは詐欺行為と言われても仕方ないでしょう」 (文=浮島さとし)
犬と猫と人間と ペットブームの陰で......。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 死んだペットは「ご遺体」?「ゴミ」? ペット大国日本に突きつけられた問題 地震や洪水のとき、愛犬はどうなるの? 地震大国日本でペットを守るための絶対ルール 2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』