「原発周辺は宝の山?」商機を求めて"放射線を吸収する菌"に群がる東電関係者たち

 東京電力とも密接な関係にある原子力関連組織の有志研究チームが「放射線を吸収する菌」の本格研究に乗り出したことが分かった。  この菌は3年ほど前、チェルノブイリ原発事故での放射線研究の一環で発見されたもので、原子炉の壁から採取されたところ、放射線を吸収して成長していることが判明。「まるで"放射線を食べる菌"だ」と世界的な話題となっていた。  これを日本でも研究に乗り出すというわけだが、福島の原発事故にも何か有益な部分があるというのだろうか。 「現時点では答えはノーです」  あっさり否定したのは研究チームの関係者だ。 「吸収するといっても放射線を減らす力を持っているわけではないので、直接的な放射線対策にはなりません。ただ、いろいろな点で応用ができるので、いずれにせよ放射能関係で役立つ可能性を秘めています。詳しくは語れませんが、我々の着眼した研究には多額の出資をするというベンチャー企業も名乗りを上げてくれています」  放射能に関連するベンチャービジネスは日々、盛んになりつつあるが、この関係者は先日、タンザニアで放射性物質を吸着させる菌が見つかったことも言及した。  これは先月、金沢大学名誉教授、田崎和江氏が発見したもので、同関係者によると「こちらの方はうまく活用すれば放射性物質の拡散を防げる可能性を秘めている」という。こちらも既に世界各国の企業から研究への出資申し出があるという。 「そういう状況なので正直、福島の原発事故後、放射線が広がった地域は宝の山に見えてしまいます。土壌中の微生物を調べようと多くの研究者が出入りして、まるで金脈を探すような感じになっているんです」(同関係者)  こうしたビジネス欲で結果的に放射能汚染の問題解決が前進するのなら歓迎だが、一方で不快感を示す声もある。  クリーンエネルギー開発を推進する都内団体の関係者は「東京電力と近い連中がこの機会に放射能ビジネスを模索するのはおかしい」と指摘する。 「東電は社内でベンチャー起業制度を持っていて、社員による新事業を支援する仕組みになっているので、今回の原発事故に関連したビジネスチャンス探しも活発化しているんです。自分たちが起こしたトラブルなのに、その被害を金もうけに利用するのは許されない。大資本の東電が出てくると他の中小企業は対抗できず飲み込まれてしまい、研究の妨げになってしまう。結局は、この分野が原子力発電と同じようにまた東電に独占されてしまいますよ」(同関係者)  原発事故は「国と学者と東京電力の拝金主義による人災」という声もあるが、この期に及んでも金もうけのことしか頭にないのなら鬼畜にも程があるだろう。 (文=鈴木雅久)
もやしもん(10) 菌ってすごいのね。 amazon_associate_logo.jpg
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「補償については、相応の対処を検討したい」福島・原町火力発電所原油流出事故

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発電所近辺にあがった、油にまみれた鳥の死骸。
前編はこちらから  福島県の東北電力原町火力発電所で容量9,800キロリットルの重油タンク2基から大量の重油が流出した――。この情報の真偽を確かめるべく取材を開始したタイミングで、「30キロ圏外は漁OKに 漁業者の被曝安全基準を初設定」(5月8日朝日新聞)というニュースが報じられた。  震災発生後の東京電力福島第一原発の事故で放射線量が増加したことで、原発から半径20~30キロ圏内では屋内退避勧告が出されていた。原町火力発電所の位置はおよそ25キロ地点に当たる。  5月に入ってから避難していた住民たちも自宅に戻り通常の生活を始めようとしていたが、漁業に従事していない住民たちは一様に原油流出事故を「知らない」と答えた。そこで、被害の当事者となる漁業関係者に重点を置いて取材をしていくことにした。  最初に問い合わせたのは、県漁連(福島県漁業協同組合連合会)に設置された福島県漁業関係東日本大震災対策本部だった。漁業の専従組織にとって原油流出は大きな問題であるはずだ。当然、怒りの声を聞くことができると思っていた。  ところが、返答は私の予想とは異なるものだった。電話で対応してくれた担当者は「原油流出の報告は受けていません」「大変な問題かもしれませんが、現在は非常時であり報告がない以上、そこに注力することはできません」と事務的な口調で語るのみだった。  確かに漁業が本格再開していない状況では、沖合に出る船もなく、漁協として被害状況をつかむのは難しいだろう。被害報告がなければ、対応のしようもないことも事実。そこで、すでに通常通りの操業に戻り福島よりは落ち着きを見せている茨城県の漁業関係者をあたることにした。  連絡を入れたのは、茨城県農林水産部漁政課の庶務だった。対応してくれた担当者は「報告は受けていません。通常、原油流出のような問題は海保から報告があった後に対策協議会が立ち上がりますが、連絡がない以上は動きようがありません」とした上で、「現状では油が海上に浮いているとの報告は漁業関係者はもちろん海上保安庁からも受けていません。ただし、これが事実だとしたらきちんとした対応(流出原油の対策)をしなければなりません」と厳しい姿勢で臨むことを表明した。福島、茨城と空振りしたことで、この事故について漁業関係者には通達がいっていないことが判明した。  そこで、海上保安庁に「重油の流出を洋上で確認したか。または通報があったか」を問い合わせることにした。海保が情報をつかんでいれば取材の裏付けにもなると期待していたが、担当者は「そのような報告は受けていません」と短く言い切ると、すぐさま電話を切ってしまった。  対応の善しあしはともかく、海保が確認していないとなると、海上での原油流出を確認することは難しいだろう。そこで別の視点から取材を重ねていくことにした。  まず、発電所を管轄している行政、南相馬市は事実関係をどこまでつかんでいるのか。南相馬市役所内にある災害対策本部に行き窓口にいた職員に用件を伝えると、丁寧に応対してくれた。「少々お待ちください」と責任者らしき男性を呼び、こちらの質問を伝えてくれたのだが、「東北電力から報告は受けていません。詳しい話は東北電力に聞いてほしい」と申し訳なさそうに言われてしまった。明言を避けるためにたらい回しにしているわけではなく、本当に知らない様子だった。  そこでもう一度取材の原点に立ち返ることにした。爆発火災事故があったとされる当日、原町火力発電所では本当のところ何が起きていたのか。私は相馬地方広域消防本部に連絡を取った。  消防本部の担当者によると「震災発生後に火災はありました。これは、すでに県からも発表があったように重機(クレーン車)が燃えただけに過ぎません。火災の原因は我々(消防)が調査していますので間違いはありません」とのことだった。特に取材に対して警戒している様子もないので、もう少し突っ込んで質問を重ねた。 「調査をされたということですが、火災現場となった発電所の敷地内のタンクにはかなりの量の原油が入っていたはずですよね。そちらには被害はなかったのですか?」  火災関連の質問の一環としては不自然ではないだろう。担当者も警戒することなく「(原油)流出はありましたが、引火はしていません」と答えてくれた。  そこでさらに核心を突くべく「流出した原油は敷地内にとどまったのでしょうか」と聞き返すと、「海に流出した可能性はあります」とのこと。流出を把握しているところはあるかと尋ねると、「福島県ではないか」とのことだった。ようやく光明が見えた瞬間だった。  福島県には環境問題を取り扱う水・大気環境課がある。原油流出の可能性と、それを管轄する役所が分かった。  海に原油が流出した可能性がある以上、ここには消防本部の情報のみならず発電所を管轄する東北電力からも何らかの情報伝達があったはずだ。すぐさま水・大気環境課に連絡を入れ、単刀直入に「東北電力から通達はあったのか」と聞いてみることにした。 「火災のときに、県の相双地方振興局環境課の担当者には東北電力から口頭で報告があったそうです。ただこれは例外でして、原油の流出ということになりますと東北電力さんには電気事業法が適用されるため、『水質汚濁防止法』に基づく事故報告は適用が除外されるんですよ」  やはり県には東北電力から報告があった。しかし、適用される法律が予想していた水質汚濁防止法とは異なる。これで、想定外の方向に取材の舵を切らねばならなくなった。というのも、水質汚濁防止法では、仮に適用される事故が起きた場合には「事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならない」とされている。つまり、窓口の担当者レベルに報告ではなく、あくまで県知事に対しての報告義務があるのだ。  ところが、今回の震災に原因がある事故で適用される電気事業法に基づく報告義務は、経済産業省が管轄になっているため県に対する報告は除外されている。  東北電力を義務違反と単純に追及することはできない。  さらに担当者からは「当該地域が屋内退避区域ということもあり、詳細は把握できていません。流出量についても同様で、把握できていません。ですから、今後の対策についてお答えするのは少しお時間をいただけますか」とのことだった。  ここまで取材を進めて、情報の伝達経路が通常の事件や事故とは異なるために今回の重油流出事故が報道されていないことが明らかになってきた。  しかし、原則はどうであれ電気事業法に基づく報告義務だからと県知事に伝えていないことは問題ではないだろうか。あくまで私個人の考えだが、震災に端を発する被害は広く知らしめて情報を共有する必要がある。
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一帯は漏れ出したとみられる重油で、黒い海と化していた
 いずれにせよ、原油の流出が事実であるとの情報を得、外堀を埋めることはできた。いよいよ本丸の原町火力発電所を管轄する東北電力に取材をかけることにした。  ここまで回りくどく周辺取材を重ねたのは、念入りに裏を取りたかったからだ。「原油流出の事実がある」ことと「関係機関にどのような通達がされているのか」。東北電力のような大きな会社が相手となるからには、この2点をしっかり固めておかないと私のようなフリーランスのジャーナリストは門前払いされてしまう可能性が高い。  準備が整ったところで正面から東北電力福島営業所に連絡を入れた。フリージャーナリストと身分を明かした上で火力発電所の取材をしていると伝えた。 「原町火力のことならば、私どもの管轄ですので可能な限りお答えします」  私の警戒心に反して、担当者は想像以上の低姿勢で対応してくれた。そこで、こちらも妙な含みを持たせないように、先の2点のほかに「漁業従事者などへの補償はあるのか」といった今後の対策まで含めて知りたいと最初に明かした。すると、担当者はやや困ったような様子になった。 「発電所のことはですね、確かにそのようなこと(重油の流出)があるかもしれません。ですが、補償などの話はこちらでは判断できないのです。」  確かに営業所で判断のつく話ではないだろう。そのことは想定の範囲内だ。 「では、対応できる窓口を教えていただけませんか」  本社広報の連絡先と担当者名を教えてくれた上に、「こちらからも広報に連絡を入れますので」とのことだった。私は自分の電話番号を伝えて電話を切った。このまま広報から連絡を待ってもよかったが、広報対応の早い大企業などないことはこれまでの経験でも明らかだ。  こちらから東北電力の広報・地域交流部(報道グループ)に電話をかけた。そこでの担当者の対応は至って丁寧で、大企業にありがちな上からの物言いもなかった。だが、明らかに困惑している様子が伝わってきた。 「現地に確認を取るのでしばらく時間をください」  現地の営業所から紹介されたので確認はどうかとも思うが、「時間をください」が本音なのだろう。私は了承の旨を伝えて電話を切った。  次に福島県の水・大気環境課に連絡を入れた。保留になっていた行政としての対策を確認しておくためだ。  水・大気環境課の担当者は、「汚染の被害実態を探る環境モニタリング調査で、原発近海に加えて火力発電所周辺も対象とするよう環境省に申請しました」と、あくまでこれからの問題として対応するとの回答だった。  本丸の東北電力から回答があったのは、それから2日後のことだった。前日にこちらから電話していたものの「まだ確認中なので、もう少し時間をください」と言われてしまっていた。再び私が電話を入れると、初日に対応した人とは別の広報担当者に代わり、落ち着いたトーンでこちらの質問に次々と答えていった。  まず、前提となる事実確認として、破損したのは2つのタンクであり、震災発生直後に1万3,500キロリットルの原油が貯蔵されていた。すべての原油が海中に流れ出たとは考えられないが、一部の原油が海に流れた「可能性は否定できない」とのことだった。  私は今後の対応策について県が環境モニタリング調査をしようとしていることを申し添えた上で、「可能性の話かもしれませんが、もし環境に影響があった場合にはどうされるのか、その対応策をお聞かせください」と問いただした。 「現在、県が行っている環境モニタリング調査の結果を待って、仮に周辺環境や漁業への悪影響があった場合には相応の対処を検討したいと思います」  電力会社としての補償の可能性を示唆する回答だった。淡々とした口調ではあったが、最終的に聞きたいことを引き出すことができた。これが、私が一連の調査を通じて得た結末だ。それがどれだけの意味を持つのか、現時点では不確定だ。だが、その被害は無視できるものではない。  海洋研究をしている独立行政法人・水産総合研究センターによると、原油が海中に流れ込むと最悪の場合、動きのない海藻類や貝類、移動速度の遅いウニやプランクトン・魚の稚魚などが死滅するなどの被害が想定されるという。  原油は色やにおいがあるため、それがなくなれば被害を受けた意識が人々から薄れていく可能性もある。一方で放射能同様に、原油はそう簡単に消滅するものではない。  今回の原油流出を福島第一原発事故が周辺地域にもたらした被害と単純に比較することはできない。しかし、どちらも「今」ではなく「これから」の問題という点では共通している。震災被害は目に見えているものだけがすべてではない。そのことを、震災の記憶ともども忘れてはならない。 (取材・文=丸山ゴンザレス/http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/
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「原油の流出なんて気にしている場合じゃない!?」福島・原町火力発電所原油流出事故

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破壊された原町火発の施設と、油をかぶって真っ黒になった消波ブロック。
 写真週刊誌「FLASH」(光文社)6月7日号に「福島県で第二の海水汚染......火力発電所から重油が海に漏れている!」と題された記事が掲載された。この記事は東北電力原町火力発電所で起きた原油流出事故を取材した筆者によるものだが、「FLASH」に掲載しきれなかった裏側をリポートしたい。  発端は、当サイトに掲載された私の記事を読んだ方からのメールだった。 「南相馬市にある原町火力発電所の重油が大量に流出しています」  宮城や福島の沿岸部を何度か訪れて被害の大きさを目撃してきた経験から、無視できない情報だと思った。これまでにデマや飛ばしとしか思えないメールを受け取ることもあったが、今回はあながちウソではないと思ったのだ。海沿いの施設は規模の大小にかかわらず軒並み津波で破壊されており、引き波で海中に持っていかれてしまったケースも無数にある。その中には、ガソリンを満載したタンクローリーや排泄物ごと流された浄水施設もある。それらは、有害物質を多分に含んだ状態で海中に沈んでいることになるだろう。その中に火力発電所の燃料として使われていた重油が含まれていても何の不思議もない。むしろ、それぐらいの被害は起こり得るだろうと容易に推測できた。詳しい話を聞くため、メールを送ってくれたフリーカメラマンの工藤大介氏とコンタクトを取ることにした。  工藤氏の話によると、3月20日ごろ、福島県南相馬市にボランティアとして訪れたときに異臭がしたことがきっかけだったそうだ。 「海岸沿いに重油のにおいが立ち込めていたんです。それで気になって地図を見たら、その海岸の数キロ先に発電所があったんです」  この発電所こそ、東北電力原町火力発電所だったのだ。工藤氏は火力発電所を目指して車を走らせたが、県道74号、260号線がそれぞれ地震の影響で陥没していたため、たどり着けなかったそうだ。それから約1カ月後の4月末にも再び現地入りしたが、そのときもまだ油臭さが漂っていたという。  工藤氏からは、そのとき撮影した発電所の写真も送られてきた。写真には大破した2基のタンクが写っており、これほどの被害を出した原町火力発電所に関する報道が皆無だったことに、私は違和感をぬぐえなかった。  厳密に言えば、原町火力発電所についての報道はあった。震災発生直後の3月14日に「重油タンクが爆発炎上し火災が発生」とのニュースがあったが、その直後に福島県が「原町火力発電所の火災はクレーン車が燃えただけ」と訂正を発表しただけにとどまった。  このことを「FLASH」編集部の担当者に伝えると、「取材してきてほしい」と返事があった。同時に「事実かどうかの裏を取ってきてください。それができなければ記事にはできません」とも伝えられたため、私は急いで準備を整え、福島県南相馬市へと車を走らせることとなった。  原町火力発電所は福島県南相馬市の中部にあり、東京電力の福島第一原発からおよそ25キロ北の距離に位置している。福島市から国道115号線を抜けて海方面に向かい、発電所の南側、原町区北泉の海浜総合公園に車を止めて、夏には海水浴場として使われる砂浜を歩いていく。震災からおよそ2カ月が経過しようとしているのにもかかわらず、海辺一帯はいまだに「油」のにおいが消えていなかった。
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総出力200万kWを誇った原町火発。周囲には油臭がたちこめていた。
 1キロほど手前から発電所に向かって歩いていくと、容量9,800キロリットルの重油タンク2基から流出したと思われる大量の重油が黒い液体となって広がっているのが確認できた。
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被害に遭ったタンク。奥に見える1基は原形をとどめていない。
 火力発電所周辺にめぐらされた防波堤の岸壁からは、石炭を搭載した大型のタンカーが座礁している様子が見えた。そのタンカーを横目に進んでいくと海中に防油フェンスが申し訳程度に張られているのが見えたが、その内側に油膜はとどまっていなかった。  防波堤の海側壁面やテトラポッドには黒い液体がべったりとこびりついており、外洋に面した岸壁に向けて流れ出していったと思われる重油の黒い痕跡も見て取れた。  火力発電所の敷地周辺は、さらにひどく油臭さが立ち込めていた。施設内には砂にオガクズを混ぜたような物が道沿いに積まれている。おそらく、流出した重油を吸わせて処理しているのだろう。その砂を詰め込んでいると思われるドラム缶も数多く並べられている。  5月に入ってまでこのような撤去作業が行われていた理由としては、福島第一原発から半径20~30キロ圏内で屋内退避勧告がなされていたことが考えられる。この勧告が緩和されたことで、ようやく発電所の職員たちが施設内に立ち入れるようになったのだ。私が取材に訪れたときも、すでに火力発電所周辺の家屋に一部の住民たちが戻ってきていた。そこで、原油流出について知っているかどうかを中心に話を聞いてみることにした。  発電所周辺に人がいるのか心配だったが、車を走らせてみると、時折歩いている人を見掛ける。避難指示区域の近くとはいえ、人は住んでいるようだ。なるべく警戒されないように、努めて明るくあいさつをしてから「東京から取材にきたんですが、お話しを聞かせてもらえませんか」と切り出すと、どの人も気さくに取材に応じてくれた。 「この辺りの港は船も全部流されたからな。(発電所の)北も南もやられちまった。海沿いに住んでいた漁師たちもみんな避難しちまったし、いま別に問題にするような人もいないんじゃないかな」(原町区60代男性) 「自宅で暮らしている人たちはスーパーも開いていないような状況の中で生きるのに必死。原油の流出があったとしても、それを気にしている場合じゃない」(南相馬市20代男性) 「今は何があっても南相馬で暮らそうと思っている。とにかく放射能が気になるから、どうしてもそっちにばかり目がいってしまうよ。原油流出なんて聞いたこともないしね。それよりも目に見えない放射能の方が怖い」(60代女性)  結局、どの人も「知らない」とのことで大きな進展はなかった。だが、地元の人ですら原油流出を知らないということは、この件がまったく報道されていないことの裏付けでもある。原町火力発電所の原油流出の現状の一端を確認できた私は、事実関係の確認のため関係者への直接取材を開始することにした。 (後編へつづく/取材・文=丸山ゴンザレス/http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/
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「観光にさらなる打撃」またまたサーチャージ値上げ! 日本の航空業界はどうなる!?

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気軽に海外旅行なんて夢のまた夢!?
 中東情勢の混迷や、福島第一原発の事故を受けての世界的な「原発離れ」による原油価格高騰のあおりを受けて、飛行機代がまた上がる。全日本空輸(以下、ANA)では、6月発券分から国際線の燃油サーチャージを値上げすると発表。上げ幅は1,000~7,500円程度で、これにより運賃に上乗せされるサーチャージ(片道1人分)は、北米やヨーロッパで2万5,000円(現行1万7,500円)、ハワイで1万6,000円(同1万1,000円)となる。  また、日本航空(以下、JAL)でも6月から同規模の値上げを行う予定で、これによるサーチャージは北米やオセアニアで2万5,000円(現行1万7,500円)、グアムで8,000円(現行5,000円)、タイやシンガポールで1万3,000円(同8,500円)となる見込み。さらに、外資系航空会社も軒並み値上げを表明している。  各航空会社が一斉にサーチャージの値上げに動くのは、2月の引き上げ(500円~3,500円程度)に続き、今年に入り早くも2回目。路線によっては「昨年末の運賃より1万円以上高くなる便も少なくない」(都内旅行代理店)という。  ローコストキャリア(LCC)と呼ばれる格安航空会社が国内にも急速に浸透しつつある中、今回の値上げがそうしたニーズ拡大に逆風になることはないだろうか。  これについて、今回の値上げで打撃を受けるのは「LCCよりは、正規料金に近い価格でビジネス客を相手にしている大手キャリアのほうが大変」と言うのは、航空専門誌「エアワールド」編集長の竹内修氏だ。 「LCCの利用者は、多少値上げされても他に選択肢はありません。その反面、これまでビジネスクラスで社員を出張に行かせていた企業は、ただでさえ経費削減が求められるのに、これ以上値段が上がるなら出張自体の数を減らすか、出張をするにしても価格の安いエコノミークラスの利用が増えるでしょう。こうした動きが進めば、エコノミーでも高いからLCCを使えという流れにもなりかねません」  さらに3月の震災以降、海外からのビジネス客が減少を続けていることも大きな不安要素だ。 「従って、こうした高価格ゾーンを収益の柱としている大手エアラインにとっては苦しい展開が予想されます。LCCとしてはむしろ、富裕層から流れ込んでくる新たな顧客層が見込めるかもしれません」  総じて"負け組"に甘んじていると言われている航空業界だが、その中でも業態による勝ち負けの二分化が予想されるというわけだ。  また、昨年秋から国際便の運行が一部復活し、「成田より便利な国際空港として今後に大きな期待がかかる羽田空港」(前出の旅行代理店)に、こうした値上げの動きはどんな影響をあたえるのだろうか。竹内氏が言う。 「羽田で国際便が認可されたといっても、北米便やヨーロッパ便の発着は早朝や深夜の時間帯に限定されています。出発が早朝6時ならチェックインは4時ごろまで。となると電車やバスはまだ走ってないので、ホテルに前泊する必要がある。しかも行き先がニューヨークの場合、羽田を6時に出ると時差の関係で到着が朝5時ごろ。あまりの不便さに利用者数は伸びていません。それどころか、欧米のエアラインの中には事実上の撤退を検討している会社もあるという噂です」  各社とも表向きは大震災の影響による「一時的な運休」としてはいるが、利用客が伸びず、儲からない羽田の国際便から、これを契機にフェイドアウトしたいというのが本音のようだ。今回の値上げがこうしたネガティブな動きにさらなる拍車がかかるということなのか。 「ただ、JALやANAと提携関係にあるエアラインは、契約上の問題で自社の一存で撤退するわけにはいきませんし、将来の羽田の発着枠の拡大をにらむと、今ここでフェイドアウトの決断をするのは難しい。今回の値上げで即撤退や運休を決めるエアラインが出てくることはないと思いますが、このままサーチャージが高い水準にとどまれば、前述したように、羽田がメインターゲットにしている企業の海外出張者の数も減少します。苦しい状況になることは間違いないでしょう。逆に、値上げをしない、あるいはしても小額の中東系航空会社は有利になるかもしれません」  また、今回の値上げで打撃をこうむるのは、航空会社よりも観光業界全体だと竹内氏は予測する。 「今年は稼ぎ時のゴールデンウィークが震災の影響で低調でしたので、ホテルや旅館はなんとか夏休みで盛り返したいと考えていたはず。今回の値上げで出鼻をくじかれた感は否めません。震災で激減した中国人旅行者が最近になってようやく戻ってきたといわれていましたが、彼らの旅行形態は大半が極めて低価格のパックツアー。6,000円、7,000円の値上げは正直痛い。観光業界としては間違いなく逆風でしょう」  原油価格が上がればチケットの値段も上昇し、震災やテロが起これば不安感から利用者は激減する。一見、華やかに見える航空業界が、実は極めて不確かな要素に左右される"水商売"的なビジネスである実態が、今回の値上げであらためて露呈したと言えるだろう。 (文=浮島さとし)
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被災地のペットを救え!「福島原発20キロ圏内・犬猫救出プロジェクト」緊急報告会

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「原発事故が原因で死亡した人間はいない」などという悠長な言説も散見されるが、
すでに多くの小さな命が奪われている。
 昨年末、ワイドショーをお騒がせしたジャーナリストの山路徹氏が、東日本大震災の被災地取材と並行して行っている「福島原発20キロ圏内・犬猫救出プロジェクト」の緊急報告会が5月20日に行われた。  当初は取材のために原発被災地に入ったという山路さん。現場に入ると、飢えと人恋しさのあまり駆け寄ってくる犬に多数遭遇した。避難所に連れて行けないため、やむを得ず放たれたペットたちだ。はじめは食糧をやっていたが限界があり、「どうにかして救いださなければ」と感じたという。Twitterで協力者を募ったところ、横浜で犬猫の保護ボランティアをしていた大網直子さん、カメラマンの太田康介さんが名乗りをあげ、プロジェクトを開始するに至ったという。  「こんなことをしている場合かという声もあるが、小さな命を救えない社会が大きい命を救えるわけがない。われわれと同じ社会に生きている彼らを見殺しにしていいのか」と山路さんは語る。救出した犬猫は、飼い主が見つかれば届けている。20キロ圏内は現在立ち入り禁止の「警戒区域」に指定されているため、救出をあきらめていた飼い主たちの喜びは計り知れない。「犬猫を助けることは、避難した方の気持ちも助けることにつながる」と大網さんは言う。
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プロジェクトの中心メンバーである大網さん、山路さん、太田さん
(写真左から)。
 プロジェクトを開始して1カ月以上で60頭以上を救出し、報告会では、ホッとしたような表情を見せる愛らしい犬や猫たちの映像が多く紹介された。だが、現実は生やさしいものばかりではない。水を求め用水路に落ちてしまった牛・餓死して腐乱した豚・飼い主を待ちわびて眠るように亡くなった犬など、痛ましい事実も報告された。無事救出できても、病気やケガをしている場合もある。  飼い主が見つからなかったり、避難所にいる場合は里親探しという難題も待ち構えている。現在は、山路さんのプロジェクトを含めてボランティア団体が中心となり救出にあたっているが、日本動物愛護協会や日本獣医師会らによる公的団体「どうぶつ救援本部(緊急災害時動物救援本部)」は何をしているのだろうか。
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水を求め用水路に落ちてしまった牛たち。
「はじめは救援本部が広くケアをしてくれると思って、義援金も『救援本部へ』と呼びかけていたんですが、フタを開けてみたら徘徊犬は保護しないと言い、実質ほとんど救出できていない。屋内にいる犬猫は、飼い主の委任状があっても救出しないそうです。それはひどいとTwitterでつぶやいたら、救援本部から『山路さんがツイートしたせいでクレームがきた』と電話がかかってきました。でも本当のことですから。義援金の分配についても『保健所から意見書をもらってこい』と言うから保健所に行ったら『県庁へ』、県は『どこの団体にも意見書を出すつもりはない』と言う。何のために義援金を集めているのかと聞いたら、『それはこの場ではお答えできません』と(笑)」(山路さん)  現在、福島までの交通費やフード代、ケガなどの治療費はメンバーの持ち出しとカンパによってまかなっている。メディアを通じて大々的に支援を呼びかければいいが、警戒区域内で取材撮影した内容は、コンプライアンスを重視する大手メディアでは扱わない。行政は人間の避難で手いっぱいで、ペットのことまでは頭が回らない状況だ。葛尾村や飯舘村などが新たに計画的避難区域に指定されたことで、今後さらに1,000頭から2,000頭以上のペットが行き場を失う可能性があるという。ひとつでも多くの小さな命を救うにはどうすればいいか、プロジェクトは保護に頭を悩ませている。 (文=安楽由紀子/写真=住本勝也・APF通信社)
小さないのち―まほうをかけられた犬たち おんなじ命です。 amazon_associate_logo.jpg
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日本科学未来館に聞く、3.11の教訓とこれからの科学

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天井が一部落下した未来館のエントランス。
(写真提供=日本科学未来館/以下同)
 東日本大震災の影響で、首都圏の大型施設でも天井が落下し犠牲者が出るなど大きな被害が出た。閉館を余儀なくされたり補修工事が急ピッチで行われている施設が多い中、同様の被害があった日本科学未来館では少し変わったプロジェクトが始まっている。それは、発想を転換させた"新しい天井"づくり。「絶対に落ちない天井はあり得ない」という考えの下、「たとえ落ちても大事に至らない天井」に作り替えているというが、果たしてこの新しい天井は、日本の建築常識をひっくり返す起爆剤となり得るのか。同館の運営事業部部長代理・栄井隆典氏と科学コミュニケーター【註】・大西将徳氏に話を聞いた。 ――そもそも震災前から、日本科学未来館(以下、未来館)の建物全体や天井の耐震性について何らかの懸念はあったのでしょうか? 栄井隆典氏(以下、栄井) 未来館は2001年に開館して今年で10年目を迎えますが、建物自体は震度7規模の地震まで耐えられる構造となっており、耐震性は保障されています。今回は大きな揺れが長い時間続いた影響で、エントランスの吹き抜け天井の一部のボードが落ちるという事故が発生しました。幸い、来館者やスタッフにケガ人は1人も出ませんでした。 ――復旧に当たり、崩落部分を張り直し補強を行うという選択肢もあったかと思いますが、今回は東京大学生産技術研究所・川口健一教授のアドバイスを受け、あえて発想を転換した"新しい天井"を採用することになりました。教授は以前から、天井の崩落被害に問題意識を持っていらっしゃったのでしょうか。
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大西将徳氏(左)と栄井隆典氏(右)。
大西将徳氏(以下、大西) 川口教授はもともと建築物の構造がご専門で、1995年の阪神・淡路大震災が大きな契機となったそうです。現地に入って大型施設の被害状況を100件以上調査されたのですが、直下型の地震といっても建物の骨格はそれほど壊れていなかったそうです。一方で、3分の1ほどの施設で、上からの落下物の被害があり、そのうちの7割は天井の落下だったということに衝撃を受けられた。「わたしたちが日ごろ安全だと思っているものとは一体なんだったのか」ということで、天井の被害についても考えなければならないと思い立ったそうです。阪神大震災が起こったのは朝の5時46分だったので、教授が調査された大型施設で天井が落ちてケガをされた方はいらっしゃいませんでした。しかしその後、大型施設は避難所として利用されたわけですが、天井が落ちたことで避難所として使えなかったり、天井が落ちかかっていてもそのまま避難所として使わなければならなかったという状況を目の当たりにされて、「命が助かればそれでいいのではなく、もっと安心な建物を日本は目指さなければならない」と思われたそうです。それで、安心な建物とは何かといえば、「大地震が来ても次の日からそれまで通りの日常が送れる建物」だと。例えば、会社に勤めている方の場合、会社の建物自体に被害がなくても、地震ですごく揺れて怖い思いをすると、次の日から会社に行こうしてもそれがトラウマになって不安になってしまいますよね。そのように、次の日からいつもの日常が送れなくなってしまうのではダメだと。 ■構想15年 教授が出した答えは「膜天井」 ――そもそも、なぜ天井は落ちるのでしょうか。
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天井は薄い金属板で支えられている。
大西 天井は屋根とは違い、屋根裏や上の階の床の裏側を見せないよう、部屋の上部に設置するものです。近年の日本の天井の多くは上から金属の棒で吊り下げられる構造をしており、その空間には電気ケーブルなどが収納されています。つまり、天井は建物の構造を保つためではなく、見栄えをよくするインテリアと同じ役割なんです。天井が落ちる被害は地震以外にもあって、例えば屋内プールでは、湿気で部品が錆びて劣化してしまうなど、さまざまな要因で起こります。天井落下への対策としては、例えば01年の芸予地震の後に国土交通省が、"天井パネルに対して斜め材を入れて、地震が来ても吊り下げた天井が落下しにくくなるように補強しなさい"というような技術的助言を出しています。ただ、斜め材に限って言えば、地震には効果があるけれども、すべての天井落下の被害に対する解決になっていないという面もあります。川口教授は、そもそも重たい物・大きな物が頭上にあるということが問題で、建物の用途や構造に合わせた根本的な解決方法を考えなければならないと指摘しています。 ――こういった天井崩落の被害に対し、教授が最初に考えたのが、落下防止ネットだったそうですが。 大西 はい。でも、落下防止ネットは見た目があまり美しくないので採用されないのではないかということで悩まれていました。それであるときひらめいたのが、軽くて柔らかい膜で天井を張るという「膜天井」でした。膜だったら軽量なので上から落ちてきても大丈夫だろうと。さらに、上にある機材を受け止めてくれたり、落下防止ネットとしての役割も果たす。地震の揺れに対するねじれにも強い膜天井ならば、より安心・安全な天井がつくれるのではないかと考えられたわけです。そういう経緯もあり、震災直後の3月13日に教授から「天井を調査させてほしい」というご連絡をいただき、その調査結果をもとに議論を重ねた結果、未来館では膜天井を採用することになったわけです。いわゆるドームや駅など、膜そのものを外装材として使うということは昔からありましたが、これまでに膜天井が地震後の修復として利用されたのは、2003年の十勝沖地震の際に天井が崩落した釧路空港だけです。教授が正式に監修されたのは未来館が初めてということになります。
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天井の張り替えのため剥がした石膏ボード。
――「たとえ落ちても大事に至らない天井」、「安全だけでなく安心が伴う建築」というのは今後、日本においてスタンダードとなり得るのでしょうか。また、今回の未来館の動きはそのきっかけとなるとお考えですか。 大西 難しいところではありますが、まさにきっかけになることが未来館の役割だと思っています。未来館は、みんなが未来をどうつくっていくのか議論する場でありたいと考えています。そのために、わたしたち科学コミュニケーターが日本や世界にどれくらい新しいことを提示していけるか、もしかしたらそれは2、3年たってそれほど正しい判断ではなかったとしても、未来に向かって議論する場をつくることがわたしたちのミッションだと思っています。今回の膜天井は、川口教授をはじめ、わたしたちがいろいろ考えた上で今できる最良の回答だと思って出していますが、それ以上にそれを見た来館者やみなさん一人ひとりがそこに目を向け、これからどういう未来を自分たちが選択していくかという議論のひとつのタネになったり、みんなが前に進んでいく活力になることを目指しています。ですから、もちろん「これが正解です」と胸を張って言いたいところではありますが、もっと広い目で見て、もっといい新しい天井が数年後にできている未来の方が理想かもしれません。
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地上25メートルの作業現場。
栄井 未来館は先端の科学技術を伝えるミュージアムですから、今回の新しい天井もひとつの展示物だと考えていただければと思います。いま、工事の様子を段階的にレポートにまとめて公式サイトにアップしていますが、いろいろな方から心配の声と期待の声をいただいているので、新しい、安全性の向上した未来館をぜひご覧いただきたいですね。 ■"科学"を判断するのも取り扱うのも人間 ――科学には「より便利な生活を実現させるための技術」という面と、「正体が分からないものの存在を明らかにし、人を安心させる」という2つの側面があると思います。しかし、今回の原発事故のように、より便利な生活を求め科学技術を発達させていった結果、逆にそれがわたしたちの生活を脅かすものになってしまったという意見も一部ではあります。3.11後の社会において、科学が担う役割とはどのようなものになっていくのでしょうか。 大西 狭い意味での科学というものは、自然現象に対して、それがどうなっているのか仮説を立ていろいろ実験しながら客観的に調べていく行為と、そこから出てきた知の集合という類のものだと思うんです。そういう意味では、おそらくいま、人間が科学というものを過信しすぎているのではないかと思います。変な言い方ですが、幻想を抱いているところがあるのかもしれない。あくまでも科学というのは、ある切り取り方によって自然を見たときに「こういうものですよ」というだけのものであって、それが「安全です」とか「安心です」という判断とはまったく別の場所にあると思うんですよ。例えば、放射線の量を計るのは科学だけど、それを見て安全かどうかというのは科学が判断してくれるのではなくて、人間が判断するものですから。  そこがいま、あまりにも科学が発達して一般の人から遠くなっていることで見えにくくなっている。うまくいっているときには、科学とは良いものでそれに任せておけば未来はどんどん良くなっていくと漠然と思えるんですが、それが今回の原発事故のように一つでも良くないことが起こると、これまで信じていたものに対する不信感というか不安ばかりが大きくなってしまう。でも、科学の根本的なスタンスというのは変わっていなくて、淡々と世の中はこういうものですよ、ということを解き明かしてくれるだけのものだと思うんです。そういう科学や科学技術に対して、わたしたちの中の、それを判断する頭であったり、取り扱う心が、少し追い付いていなかったのではないかと思う部分もあります。原子力というのは、本来は人間が扱えるものではないくらいとても大きなエネルギーを持ったものです。それを使ってあの建物の中で発電している、すごいことが起こっているという実感が、わたしたちにはなくなってしまっているんですね。もちろん、すべての人が科学の深いところまで知っていなければいけないわけではないですが、ある一定レベルの"科学リテラシー"が必要とされているのだと思います。科学というのは、自然を解き明かすひとつの手段でしかなくて、それを扱うのも判断するのも人間なんです。
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膜天井エントランスホールの完成イメージ。
 今回の原発事故では「想定外」という言葉がよく出ましたが、実際に「想定外」だったかどうかは別にして、それを安全だと判断したのは人間だったということを忘れてはいけないと思うんです。震度7を大きく超える地震は来ないだろうとか、原発がこれで安心だと判断したのは人だったということを再認識しなければならない。それが今回の震災や原発事故で浮き彫りになったことだと思います。 ――そういった"科学リテラシー"を普及させていくことが、科学コミュニケーターのひとつの役割である。 大西 いまの社会では、科学技術とわたしたちの生活は不可分です。どういうものの上に自分たちの生活が成り立っているのかということを、まずはみなさん一人ひとりに知っていただくことが大事なのかもしれないですね。震災があったということもありますが、わたしたちがどういう社会、未来を選択していくかという時に、そもそも自分たちがどういう場所にいるか分からないと、これからどこを目指せばいいのかなんて分からないですよね。わたしたち科学コミュニケーターはまず、自分たちがいる場所を支えている科学というものを伝え、みなさんと一緒に議論したり、ひも解いていくことができればと思います。 (取材・文=編集部) 【註】科学コミュニケーター 科学者・技術者と一般社会・市民とをつなげる役割を担う仕事。先端の科学技術研究の動向を調査し、研究者の中にある情報をさまざまな形で分かりやすく伝える。日本科学未来館のほかにも、北海道大・東京大・早稲田大などで人材養成が行われている。未来館には現在、約40名の科学コミュニケーターが在籍。展示フロアでの解説や実演、展示物やイベント、メディアの企画・制作などを行っている。 ●日本科学未来館 現在、東日本大震災の影響で臨時休館中だが、6月11日(土)10:00より開館予定。延期となっていた企画展「メイキング・オブ・東京スカイツリ®―ようこそ、天空の建設現場へ―」が開催されるほか(10月2日まで)、新しい天井も公開。天井下では科学コミュニケーターによる実演も行われる。詳しくはHPにて。 < http://www.miraikan.jst.go.jp/>
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「メルトダウン? 英語に訳せばそうなりますか」国民をナメきった東電副社長の答弁

todenkaiken0519.jpg  去る12日に東京電力(以下、東電)がようやく認めた福島第一原発1号機でのメルトダウン(炉心溶融)。冷却水から露出した燃料棒が溶け落ち、圧力容器を破損させて漏れ出していた事実が明らかになった。さらに東電では、「2、3号機でも同様のリスクがある」とその可能性を認めている。  東電はこれまで、格納器ごと水に浸す「冠水」で冷温停止を図る作業を進めてきたが、格納容器の破損で水がためられない以上、冠水の実施は困難。実際、これまで1号機に注ぎ続けてきた約1万トンの水のうち約1割が外部に漏れ出したと見られており、うち約300トンの水がこのほど1号機建屋の地下から見つかっている。計画の大幅な見直しを迫られた東電は、17日の定例会見で工程表の改訂版の発表を余儀なくされた。新工程表によると、冠水に代わる圧力容器の冷却方法として、原子炉建屋にたまった汚染水を除染処理、塩分処理して原子炉に戻して冷却を図る「循環注水冷却」(図参照)を採用。そのための設備を早ければ6月までに構築すると説明した。
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 東電が事故収束へ向けたロードマップとなる工程を初めて発表したのは約1カ月前。「収束へ向けて最も重要なのは原子炉を冷却すること」(武藤栄原子力・立地本部長=東電副社長)と東電が自ら強調するように、原子炉冷却は工程の根幹。その最重要工程が、わずか1カ月で修正されたことになる。また、溶けた燃料棒や汚染水が漏れ出た破損部分はいまだ特定できておらず、「循環注水冷却」があくまで応急措置に過ぎないことは明らかだ。  なにより、3月11日の地震発生から「ない」と言い続けてきたメルトダウンの事実が明らかになりながら、会見で淡々と説明を続ける東電関係者に、出席した記者たちのいら立ちは募った。説明に当たった武藤本部長、松本純一本部長代理は、共に慎重に言葉を選びながら「炉心溶融」「メルトダウン」という表現を一度も使おうとしない。  さらに、配布された資料にも「炉心溶融」の文字はどこにも見当たらない。気付けば、4月に発表された工程表に設けられていたはずの「現状」の欄が削除されている。そこにはこれまで、福島第一原発の「現状」として、「燃料の一部損傷」の文字が記されていた。本来なら今回のメルトダウン発覚により、この欄は「炉心溶融」と改められるべきはずである。その欄が消されている。発言からも資料からも、メルトダウン的な表現を排除した対策本部の意図的な姿勢がうかがい知れる。  当然ながら、記者団からの質問は「メルトダウンをどう認識しているのか」に集中した。 ――メルトダウンはないと言い続けながらあったわけだが、これをどう考えるか。 「どうであれ、我々のやるべき対策は同じだと思っています。とにかく炉を冷やすこと。それに変わりはないわけで、これからも続けるということです」(武藤本部長) ――メルトダウンの事実はお認めになるのですね。 「私は英語が苦手なのであくまで日本語で炉心溶融という表現をしていますが、まぁ、翻訳すればそういうことになるのかもしれませんが」(同本部長) ――ご自身の認識が甘かったとは思われませんか。 「そうは思っておりません。我々は当初から、とにかく炉を冷やすことを最優先に考えてきた。それはこれまでも、これからも変わらないわけでして......」(同本部長)  まさに答弁は堂々めぐり。武藤本部長は表情を変えずに淡々と答え続ける。ある全国紙の記者は、「まだこういう態度でくるかね」とあきれたようにつぶやいた。  ちなみに東電は、2、3号機のメルトダウンについては、「(1号機と)同様のリスクはある」としながらも、データが不十分であるとしていまだに事実として認めていない。事ここに至っても、その場しのぎのごまかしを改めようとしていないのだ。  「避難されている方々のご帰宅の実現および、国民の皆様が安心して生活していただけるように全力で取り組む所存です」(武藤本部長の冒頭のあいさつより)との言葉がむなしく響く。国民の安心に向けて本気で取り組むならば、まずは正確な情報の公開と現状の認識が求められるだろう。もはや東電にその場しのぎをしている時間は一秒も残されていない。 ■東京電力が福島第一原発の最新映像を公開  福島第一原子力発電所の対応に追われている東京電力は17日、今月6日に撮影したとされる同原発の最新映像を報道陣に公開した。
 約13分の映像には、水素爆発で窓ガラスや什器などがめちゃくちゃに破壊された事務所の内部や、津波に流されて横転している職員らの乗用車などが映されているほか、放射性物質の漏洩を防ぐためにクローラーダンプと呼ばれる特殊車両で飛散防止剤を散布する作業、無人重機による放射線値が高いがれきの撤去など、過酷な作業の様子なども収められている。  また、作業員が寝泊まりをしている「免震重要棟」では、建物内部に放射線が入り込まないように作業員が注意深く出入りしている様子や、物資をバケツリレーで運び込む様子なども見ることができる。  福島第一原子力発電所の1号機では、3月12日には全燃料が溶融して圧力容器下部に落下するメルトダウン(全炉心溶融)を起こしていたことが分かっており、地震発生時から「炉心溶融はない」と言い続けてきた東京電力は、事故収束へ向けて工程の大幅な見直しを余儀なくされるなど厳しい対応を迫られている。 (文=浮島さとし)
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やり方次第で2日間使える? 震災で大幅減収のJR東日本が発売した「1万円パス」の実力

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JR東日本HPより
 東北新幹線の新特急「はやぶさ」がデビューした直後に東日本大震災が発生し、無念の運休を余儀なくされたJR東日本。震災による大幅な減収を回復すべく、「復興支援」を名目とした新たな乗り放題切符「JR東日本パス」が発売された。  震災による交通網の混乱や観光旅行が自粛されるムードの中で、JR東日本の受けた損害は大きい。4月上旬には首都圏だけでも91億円も減収、さらに全社では288億円もの減収となったことが発表されている。  一部では客足の回復が見られたゴールデンウィークでも鉄道の利用は鈍く、JR東日本の利用客数は前年度比27%減となった。東北新幹線は、連休初日の4月29日にようやく全線が復旧したものの、客足の回復には結び付かず前年度比で33%減少、秋田新幹線に至っては61%減少と目も当てられぬ数字となっている。一方で九州新幹線が全線開通したJR九州は、震災の影響を受けなかったこともあり利用客は同じく前年度比の23%増と、大幅な伸びを見せている。  苦しい状況の中で、客足の回復を目指してJR東日本が5月11日から発売を開始したのが「JR東日本パス」、通称・1万円パスである。文字通り、1万円(子どもは半額)で、JR東日本のすべての新幹線と在来線が1日乗り放題となる切符だ。指定席も2回までは料金の中で利用できる。  通常だと東京~仙台間の新幹線自由席が往復2万1,180円、東京~新青森間が3万2,740円であるから、日帰りならば半額以下と大幅な割引運賃となる。ただし、利用期間は6月11~20日、7月9~18日なので、社会人には利用しにくい設定だ。  このあたりに、少々サービスの悪さを感じずにはいられない。「青春18きっぷ」の改悪や、ムーンライトながら(とその前身の大垣夜行)の臨時列車扱い、寝台急行銀河・ムーンライトえちご・急行アルプスの廃止等々、鉄道旅行の選択肢がどんどんと失われていったことへの怒りがわき上がってくる......。  とはいえ、首尾よく休暇を取ることができれば、お得に鉄道旅行ができることは間違いない。なにしろ、復興支援への利用を名目としているが、利用できる範囲はJR東日本管内すべてなのだ。最北端は、大湊線の大湊駅(青森県)。JR東日本管内の西の果てである大糸線の南神城駅(長野県)にも、南の果ての東海道線の湯河原駅(神奈川県)までもが、利用可能だ。なお、JR東日本管内の最東端の駅は、山田線の岩手船越駅(岩手県)なのだが、山田線は震災によっていまだに宮古~釜石間が代行バス運転の状況。乗り放題の魅力を生かして、東西南北の果てをめぐってみるのは、旅のプランとしてはスタンダードなのだが、ちょっと残念。ぜひとも早めの復旧を祈念したい。岩手県内には、秘境駅マニアにも知られる岩泉線の押角駅という名駅もあるのだが、岩泉線は地震より前の昨年7月から、土砂崩れが原因で、全線が運休でバス代行輸送中だ。こちらも、早めの復旧を祈念したいもの。  ただ、東北新幹線の全面復旧によって、岩手・青森方面は混雑しそうなので、むしろ目指したいのは、残り少ない寝台特急となった、あけぼの(上野~秋田経由~青森)を使った旅行プランだ。実は、最も1万円パスで得した気分になれるのが、この、あけぼのを使った場合だ。このパスは、利用中に日付が変わっても、その時に乗っていた列車から降りない限りは有効なので、実質的に2日間利用できることになる。  「1日限り」のパスで、そんなことが本当に可能なのか? JRの「旅客営業規則」を条文通りに解釈すれば確かに間違いないが、いざ改札口で駅員ともめそうな気も......。この「1日乗り放題」の解釈をめぐって、鉄道旅行を愛好する人々の間では、いま盛んに議論が交わされているのが実情だ。  おそらくは、利用者の理論武装と各駅員の認識によって結果は異なるのではなかろうか。まずは、実際に乗って試してみないと分からない。 (文=昼間たかし)
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あの原発でゲリラ撮影を敢行! 原発不安で話題の映画『原子力戦争』が見たい!

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『原子力戦争』
 一説には、原子力史上最悪のケースとも評される福島第一原発の問題。原因となった東日本大地震の発生から2カ月余りを経た今も、騒動は収束する気配を見せない。原子力発電の賛否は別として、日本の産業、そしてわれわれの生活を担うエネルギー政策が大きな修正を迫られていることは間違いないだろう。そうした中、一本の映画が一部で注目を集めている。  それが、黒木和雄監督作『原子力戦争』(1978)だ。田原総一朗の同名ルポルタージュを原案にしたドキュメンタリータッチのフィクションである。  すでに30年以上前に製作された作品にもかかわらず、原発問題が注目を集める今、リアリティーを感じずにはいられない。  物語の舞台は、原発のある海沿いの村。その浜辺に、原発の技師と東京でトルコ嬢(劇中の表現)をしていた村出身の女の死体が打ち上げられたところから始まる。  そして、情婦を殺した相手を見つけて金をゆすろうと村へやって来たヒモのチンピラ(演・原田芳雄)は、とんでもない事実を知ることになる。実は、村の原発ではとうてい隠ぺいできないような重大な事故が発生していて、それを告発しようとした技師は心中に見せかけて殺されたのだ。技師から書類を預かっていた男も首つり死体で見つかり、事件の背後には原発利権をめぐる巨大な闇が存在していることも、次第に明らかになる。  ハリウッド映画ならばスムーズに事件は解決に向かうものだが、そうはいかない。事件の真相を追う新聞記者は、自己弁護を重ねながら手を引いてしまう。重大な事故があったことに気付いた科学者さえも「事故のパニックによる原子力発電所開発の中止の方が国民にとってよほど危険」と、かかわり合いになることを拒否してしまう。  結果的に、救いも何もないまま原発の背後に巨大な闇が存在していることだけをにおわせながら幕を閉じる本作。注目すべきは、福島第一原発でゲリラ撮影を行っていることだ。  物語の中で、原田芳雄が演じるチンピラは、原発の入り口にやってくる。中に入っていこうとする原田(と、撮影クルー)に、警備員たちは「無断撮影はできません」と、カメラを手でふさごうとする。一方、原田は構わず警備員に「(原発を指さし)大きいねえ」と話し掛け、警備員の詰め所の中にも勝手に入っていく。  物語の展開には「まさか、そこまでは現実にはないだろう」と思うが、警備員の対応を見ると「やはり、何か隠しているものがあるのではないか」という疑惑を抱かずにはいられない。  まさに、原発が注目される今、ぜひ再び見てみたい作品なのだがDVD化されておらず、かつて発売されたVHSも廃盤。容易に見ることはかなわない。  実は、今年4月にはスカイパー!の「日本映画専門チャンネル」で放映が予定されていたのだが、震災後に「3月11日に発生した東日本大震災による福島原子力発電所への影響を勘案し」という理由で放送が中止になってしまった。  いったい、何に気を使っているのだろうか? どう見ても過剰な自粛である。  どこからかクレームをつけられることを、過剰に恐れているのか。あるいは、なにかしらの圧力が存在したのか。  こうなると「意義ある作品だから見たい」というよりも、「封印作品っぽいから見たい」という欲望の方が高まってくる。  名画座で上映される機会でも待つしかない『原子力戦争』だが、かつて販売されていたVHS版が一部のレンタルビデオ店では、現在も陳列されているそうだ。ただ、どこの店でも常に「貸し出し中」が続いているとか。原発不安の中で、映画の名も広く知れわたっているのだろうか。 (文=昼間たかし)
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中国で流行するロイヤルウエディング事情

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英国王室もビックリ!?
(現地メディアの報道より)
 沿道に手を振るウエディングドレス姿の花嫁と赤い軍服に身を包んだ新郎を乗せた馬車を騎馬近衛兵が先導し、アストンマーチンの車列がそれに続く。彼らが向かうのはバッキンガム宮殿かと思いきや、新郎新婦は英国紳士・淑女ではなく、どこからどう見てもアジア人である。  実はこれは、中国で流行している"ロイヤルウエディング"の様子である。イギリスのウィリアム王子とキャサリン妃をマネた結婚式が、中国各地で執り行われているのだ。    これまで中国では、ウィリアム王子がキャサリン妃に贈った婚約指輪から、キャサリン妃のウエディングドレス、さらに結婚記念品に至るまで、世紀のロイヤルウエディングに便乗したさまざまな模造品が出現してきた。しかし結婚式を丸ごとパクってしまうとは、もうあっぱれと言うしかない......。  しかも、広東省で偽ロイヤルウエディングを目撃した日本人によれば、仕込みの観衆まで動員した大掛かりなものだと言うのである。 cw00.jpg 「道路がやたら渋滞していたので不思議に思っていたら、公道の真ん中を馬車が走っていた。新郎新婦の姿は見えませんでしたが、馬車の頭上には五星紅旗ではなくユニオンジャックがはためいていました。沿道にも多くの住民が集まり、手を振っていたので、よほど人望のある人なのだろうと思っていたのですが、沿道の参加者いわく『誰の結婚式かは全く知らないが、こうして手を振ると引き出物がもらえる』とのことでした」  偽ロイヤルウエディングを行っている、浙江省のある結婚式プロデュース会社にコンタクトを取ったところ、その費用はおよそ20万元(約260万円)とのこと。これは、通常の結婚式に比べ3倍以上の予算に当たるということだが、「希望者は多く、予約待ちの状況」だという。  偽ロイヤルウェディングが中国で流行している背景について、ルポライターで『中華バカ事件簿』(扶桑社)の著者、奥窪優木氏はこう話す。 「中国では伝統的に結婚式が盛大に行われますが、現在、結婚適齢期を迎えている世代は一人っ子政策後に生まれたいわゆる小皇帝。特に富裕層では、両親や祖父母に至るまで家族の張り切りようは半端なく、ハデ婚が流行している。そんな中イギリスで行われた、ウィリアム王子の結婚式はまさに彼らのあこがれとなった。地方なら、警察にわいろを渡せば道路を借り切ることができるし、こんな結婚式が可能なのは中国ならではでしょう」 中国の富裕層には結婚式だけでなく、英国貴族のノブレス・オブリージュまでもマネてもらいたいものだ。 (文=高田信人)
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