
話題になっている「なりすまし」Twitter
第一線で活躍するジャーナリストがインターネット上で嫌がらせを受け、その内容があまりに悪質であるとして問題となっている。
被害を受けたのは、外国人労働者問題などに詳しく、最近では「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などについての取材を進めている安田浩一氏(47)。
安田氏は本名でTwitterを利用しているが、何者かが安田氏と同姓同名のアカウントを開設した。しかも、単に名前が同じというだけではなく、アカウントが安田氏のTwitterと1文字違いという点を除いて、デザインやアイコンの写真までまったく同じなのである。外見的には安田氏のTwitterとほとんど変わりがなく、故意に似せた可能性が極めて高いと考えられる。
だが、この「なりすまし」Twitter、プロフィール欄の「千葉県 ジャーナリスト。元週刊誌記者」までは同じなのだが、次に紹介されている安田氏の著書は『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)なのに対し、「なりすまし」の方は『ルポ 寄生虫の在日朝鮮人』(光交社新書)という架空の書名が掲げられている。
そして何より、「なりすまし」によるツイート内容は安田氏のそれとはまったく異なっている。「なりすまし」ツイートはいずれも2010年12月7日の日付で、「狡猾さ、悪智恵、抜け目のなさ、不正行為、偽善などの諸特徴は朝鮮人の性格に根ざしたものである」「これら朝鮮人の劣等で犯罪的な性格は、彼らの人種としての特性に基づくものであるから、我々が外部からどのように努力してみても改善させることは不可能である」などと書き込まれている。
この「なりすまし」Twitterの特徴は、安田氏を直接攻撃するのではなく、あたかも安田氏が差別的な意見、偏見に満ちた発言をしているかのように見せかけている点である。「なりすまし」ツイートの内容は、安田氏が記事や著書で公にしているものとは正反対。この点が大きな問題なのだ。
ジャーナリストやライターといった文章表現を仕事にしている者は、ときに批判や反論を受けることも覚悟している。揶揄や誹謗中傷であっても、自分自身に対するものであれば堂々と受け止めるものだ。安田氏も筆者の取材に対し、「私は『表現者』である以上、自らも他者の表現の対象となることは覚悟しています。下半身であろうが上半身であろうが、好きなだけ攻撃してもらって一向に構いません。無名ライターの私とすれば、『なりすまし』なんてのは一種の勲章みたいなものです」と答えている。
筆者もまた、「物書きにとって悪口もほめ言葉」だと思っている。筆者も以前、ネット掲示板「2ちゃんねる」に、「玉泉のヤツは美人デザイナーを拉致して変態プレイに明け暮れている」などと書かれたことがある。このように自らを突飛な想像のネタに遊んでいただくことはまったく構わない。こうした笑えるジョークは大歓迎だ。
だが、安田氏の「なりすまし」には、ジョークでもなければウイットもない。安田氏に対する批判でもなければ風刺にもなっていない。単に安田氏が取材対象としている在日コリアンを誹謗する表現であり、それをあたかも安田氏の発言かのように見せかけることに徹している。これは、安田氏本人に対する中傷などより、はるかに悪質なものである。
この「なりすまし」に対して、安田氏は即刻削除するようDMで伝えたものの、何の反応もなかった。そして、安田氏もその「なりすまし」のことを忘れかけていた。
ところがその後、安田氏は知人などから「Twitterでひどいことを書いている」といった指摘を受けることが度々あった。「なりすまし」を安田氏の発言だと誤解していたのだ。
さらに、8月になって安田氏の著書の出版元である光文社に「『ルポ 寄生虫の在日朝鮮人』という本は、本当に出版されているのか」という問い合わせがあったという。こちらもやはり、「なりすまし」Twitterが原因だった。
こうした事態に出版元も問題視する動きを見せ、場合によっては相応の措置も検討しているという。
ちなみに、その安田氏の「なりすまし」Twitterは、9月30日現在も放置されたまま、削除もなされていない。
さて、ジャーナリストが不可解な嫌がらせを受けることは、これまでも何度か起こっている。たとえば、ジャーナリスト山岡俊介氏宅への放火事件がある。2005年7月3日の早朝、山岡氏の自宅兼事務所にドアの郵便受けから可燃物らしきものが投げ込まれて激しく炎上。たまたま起きていた山岡氏はベランダづたいに逃げたため無事で、火災も消防によって消し止められたものの、ひとつ間違えば大惨事になっていたことだろう。犯人および犯行の意図は未だに不明だ。
今回のケースも、安田氏に対して好意的ではないことは確かであるものの、その動機や真意については詳しいことはまったく分からない。
インターネットの普及によって、誰でも自らの意思や意見を広く世に問うことができるようになった。しかし同時に、誰もが言論というものを「凶器」として扱える可能性が格段に高くなったともいえる。今回の「なりすまし」は、その一例に過ぎないのではなかろうか。
(文=橋本玉泉)
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「早く死にたい」台湾の空港に不法滞在の日本人男性 台湾芸能人まで巻き込み話題に

ブログ「2011/9/7~台湾不法滞在記」より
台湾の桃園国際空港に不法滞在しているZhongZhengと名乗る40代の日本人男性が、台湾メディアをにぎわせている。ZhongZheng氏は9月7日から台湾での不法滞在の状況をブログにつづっており、その話題が9月26日、台湾の新聞「蘋果日報(APPLEDAILY)」に報じられたのだ。
台湾に日本人はビザなしで90日間滞在することができる。ZhongZheng氏は9月6日にその90日目を迎えたため、不法滞在者となってしまった。その時点でお金も尽きていたZhongZheng氏は、空港でオーバーステイであることを報告して処分を受けるつもりだったそうだ。しかし、空港の移民局で不法滞在であることを報告するも、係の女性に「何の方法もない」と言われ、まるで映画『ターミナル』のような不法滞在生活がスタートしてしまった。
ちなみに、不法滞在に対する台湾の処罰としては、2,000元の罰金が科されるとのことだが、今の彼にはそんなお金はもちろんない。
不法滞在生活がスタートしてからは、ブログに「早く死にたい」と記し、「そもそも日本に帰ったとして、そのほうが地獄を見る。家もなく仕事もなく、泊めてくれそうな友人も思いつかない。みんな守るべき生活がある。家族がある。こんな浮浪者になった自分を助けてくれるのは、台湾人の友だけだ。ひとりだけ、メールで近況を伝えている日本の友人が沖縄にいるが、彼とも台湾で知り合った」とも書いている。
このブログが2ちゃんねるなどを通じてじわじわと日本でも注目されているが、後ろ向きなZhongZheng氏に対する日本人のコメントは辛らつだ。働く気のない氏に対して「ゴミだな」というものや、所持金があまりないにもかかわらず、酒ばかり飲んでいることを指して「ちょっと待てや、コラ」などというものも見られる。
一方、台湾人の反応はというと、日本人ほど辛らつなものは見られない。もちろん、「早く強制送還すべき」「日本の経済もここまでになってしまったのか......」というものもあるが、「わずかな所持金で生活するなんて、『いきなり!黄金伝説。』の1カ月1万円生活みたいだな」という、いかにも日本通なものや、「台湾人が日本の空港で不法滞在した場合、何日間滞在が可能なんだろう」などというコメントまで見られた。
また最近は、台湾や中国で数万人単位の観客を集める超人気のロックバンド「五月天(メイデイ)」のボーカルの阿信が、Twitterを通じてZhongZheng氏にメッセージを送ったことでも話題になった。これは、ZhongZheng氏が食事をするお金にすら困っているにもかかわらず、五月天が出演する3D映画『五月天(メイデイ)3DNA』を見に行ったことをブログに記していたのがきっかけ。この事実を知り、五月天のボーカルの阿信が感動。櫻花男(台湾でのZhongZheng氏のニックネーム)に、「今度ビールをおごってあげたい」とツイートしたのだ。
ZhongZheng氏も、このコメントや台湾の人々の温かい気持ちに触れ、最初のように「早く死にたい」という気持ちは薄れ、前向きな気持ちをブログにつづるようになった。
一体、この騒動はどのような形で終結するのか。台湾の芸能人も巻き込んだことで、ますます注目を集めそうだ。
●2011/9/7~台湾不法滞在記
<http://blog.livedoor.jp/die_door/>
野田政権発足から1カ月 事情通から聞く中国の「野田評」とは?

"増税ボーイ"こと野田佳彦首相。
野田佳彦首相率いる政権が発足してから約1カ月が経過した。短期間でコロコロと変わる日本の首相を、海外は「回転木馬」(米ワシントンポスト紙)と揶揄するなど、お世辞にもリスペクトされているとは言い難いのが現状だ。
そんな中、何かと日本にちょっかいを出してくる隣国中国は、この新総理をどう見ているのだろうか。中国の軍幹部や政府要人ともつながりを持ち、北京に拠点を置く日本人実業家の山岡昇一氏(仮名・53歳)は、匿名を条件に次のように証言してくれた。
「共産党の幹部から聞く感触では、当初は保守的な人物として一定の警戒心を持っていたものの、早くも集団自衛権や靖国参拝に否定的な発言をしている。実はさほどのイデオロギーも持たず、結局は歴代の総理のように何もできないと感じているようです」
事実、中国の「野田評」については、「新華社」が8月30日付け記事で、「レッテルを貼るのは時期尚早」との論評を配信し、過度に警戒するのではなく当面は静観すべきとの見解を示している。
「一時は前原誠司氏より強硬との声も一部にはありましたが、今では沈着冷静なタイプとの見方が支配的。先の臨時国会での所信表明で、日米同盟を深化・発展させる覚悟を示したことからも分かる通り、対米重視という現実路線を選んでいるだけで、中国に対して特に敵対心を持っているとは見られていません」
一方、野田氏が「松下政経塾」出身であることに警戒する声も一部にはある。「解放日報」は上海国際問題研究所副所長のコメントとして、「松下政経塾の出身者は常に強硬な言動をとっており、その一人である野田氏の就任は同盟国に懸念をもたらしている」とし、「一部の日本人の歴史を反省しない傲慢な態度は、中国人の反感を引き起こしている」とまで決めつけている。
また、「環球時報」は中国社会科学院委員の言葉として、「野田氏は"民主党の中の自民党"であり、あきらかな右派である。今後は日本が一層右傾化する可能性がある」との懸念を示した。
もっとも、山岡氏によれば、こうした声はあくまで一部で、「多くは野田氏にそれほどの際立ったイデオロギーはなく、当面は日中関係に大きな問題は起こらないだろうと考えている」ようだ。
中国では、習近平体制への移行となる来年の共産党18回全国代表大会(18回党大会)を控え、日本を含む対外関係で大きな波風は避けたい時期。その一方で、尖閣諸島付近では相変わらずの挑発行為を続けている。一連のこうした"軍事行動"は、18回党大会へ向けて習体制が軍の信頼を強固にするための、重要な戦略の一つとも見られている。
山岡氏は言う。
「海軍の人間と話していても感じますが、ようするに『日本くみやすし』となめているわけです。その意味でも、昨年の尖閣事件で、管直人内閣が事実上の拒否権発動で船長を無罪放免したのは大失敗でした。あれで『日本はびびって何もできない』というメッセージを発してしまった。私もバカにされますよ(笑)。『領土』や『主権』といったテーマでは鳩山由紀夫・管は史上最悪でした。野田さんの外交手腕に注目したいところですが、どうも様子を見る限り、大きな期待はできなさそうですね。そこらは中国共産党もしっかり見ていますよ」
日本国際フォーラム副理事長で、過去に駐仏大使などを歴任した平林博氏は、9月18日付け産経新聞への寄稿で次のように記している。
「日本国民は外国から軽視されるのではなく、畏敬される首相を渇望している」
この至極当たり前な願いが野田首相の耳に届くことはあるのだろうか。
(文=浮島さとし)
当代随一の「封印作品」 安全神話を語り続けた禁断の「原発PR映画」上映会が東大で開催!

いま現在も、福島第一原発周辺は立ち入り禁止になっているが......。
3月11日の東日本大震災から早くも半年。いまだに福島第一原発事故の処理作業は終わらない。日本列島の中に人が立ち入ってはならない禁断の地が形成されるSFのような出来事が、現在進行形で続いている。そんな中、前代未聞の原発PR映画上映会が10月30日に東京大学本郷キャンパスで開催される。
「原子力発電と安全神話―原発PR映画を見る」と題されたこの上映会は、東京大学大学院情報学環などが行っている「記録映画アーカイブ・プロジェクト」の一環。このプロジェクトは、消失したり散逸してしまっている記録映画を、収集・保存・公開し、今後の研究や教育のために役立てようという目的で行われているもので、東京大学大学院情報学環、東京藝術大学大学院映像研究科、東京国立近代美術館フィルムセンターが参画している。
これまでも、ダムの建設を記録した『佐久間ダム』(全3部の超大作記録映画。音楽は、芥川也寸志)というダムマニアにはたまらない作品を上映するなど、忘れ去られつつある傑作記録映画を次々と公開している。
今回の上映会では「原子力発電の推進・普及とPR映画が果たした役割」について議論することを目的に、日本初の商用原子力発電所である茨城県の東海原発の建設を記録した『東海発電所の建設記録』、さらに、原子力発電所の安全対策を解説する『原子力発電所と地震』などが上映される予定だ。
また、1976年に完成直後の福島第一原発を取材し「安全神話」への疑問を投げかけたテレビ・ドキュメンタリー『いま原子力発電は...』も上映される。
上映後には、『いま原子力発電は...』を演出した羽田澄子氏や、社会学者の吉見俊哉氏らによる討論も行われる、盛りだくさんの内容だ。
被爆国であり原子力に対するアレルギーがある日本で「夢のエネルギー」である原発建設を進めるべく、電力会社などは膨大な広報活動を行ってきた。映画のみならず、著名人を用いたり、マンガで分かりやすく解説して、原発がいかに安全かを国民に知らしめる活動は繰り返されてきた。
そのことの是非や、原発の是非は別にして、それらの膨大な広報資料は、今や決して陽の目を見ることはない「封印作品」になってしまった。
今回上映される作品も、電力会社などからしてみれば「なかったことにして欲しい」作品ばかり。この機を逃しては、二度と見ることができないであろうラインアップだ。この時期に、この企画を進めた人々を賞賛するよりほかない。
研究者はもちろんのこと、さまざまなマニアにとっても垂涎の作品群であることは間違いない。しかしながら、会場の定員は180名とやや少なめである。早めの申込みをオススメする。
●記録映画アーカイブ・プロジェクト第7回ワークショップ
「原子力発電と安全神話―原発PR映画を見る」
日時:2011年10月30日(日) 13:30-17:30(開場は13:00)
場所:東京大学本郷キャンパス(赤門横)
福武ホール・ラーニングシアター(B2F)
主催:東京大学大学院情報学環(記録映画アーカイブ・プロジェクト)
入場無料・HPにて事前登録制
<http://www.kirokueiga-archive.com/event/index.html>
「KDDIの社員は口が軽いんだよ」ドコモもあきれる「iPhone5騒動記」の行方は?

「米アップルが今秋にも発売する『iPhone5』を、KDDIが日本で販売することが判明した。日本では初代iPhoneから3年間続いたソフトバンク(SB)による独占販売体制が崩れる」(以上、9月22日付け日経ビジネスオンラインより)
日経ビジネスオンラインが報じた「KDDIがiPhone5参入」の記事が波紋を呼んでいる。その後、日経本紙や他メディアもこぞって追随し、この結果ソフトバンクの株価が下落するなどの騒ぎになっている。これまでiPhoneといえば、国内ではソフトバンクモバイル1社の独占販売。報道が事実なら、スマートフォン市場で出遅れたKDDIの大幅な巻き返しが予想される。
しかしこのニュース、関係者の間では真偽のほどを疑う声も少なくない。第一報を報じた日経ビジネスオンラインも、それを後追いした一般紙も、情報ソースを明らかにしているところは一社もないからだ。場合によっては、各メディア総ぐるみの世紀の大誤報ということにもなりかねない。KDDI側は「当社からアナウンスしたものではないから、コメントのしようがない」(広報部)、「メディアさんが勝手に言っているだけでこちらは何も聞いていません」(都内auショップ)の一点張り。ライバル会社であるドコモのある関係者は、今回の報道のソースについて「日経ビジネスオンラインの記者が個人的なコネクションでKDDIの関係者から聞き出したということでしょう。政治記者が個々の情報ソースを秘書や代議士に持っているのと同じです」と推測するが、「事実かどうかは課内でも懐疑的」だという。
これについて、「可能性は極めて高い」と言うのは、ITジャーナリストの石川温氏だ。
「22日の報道を知った後に、私も複数の関係筋に確認したのですが、その感触では信ぴょう性は非常に高いというのが実感です。今のところ、誤報という結果にはならないと感じています」
発売時期を日経ビジネスオンラインが「11月」と報じた点については(他メディアは「年明けの可能性」とも報道)、アメリカでのiPhone5発売時期と関係しているという。アップルでは北米におけるiPhone5の発表を10月4日に、発売を中旬ごろに開始するとしており、日本のソフトバンクもこのスケジュールに準ずることが予測される。KDDIの「11月」は、これに極力近づけたいという意思の表れだというのだ。
KDDIは現在、Cメールをグローバル機種でも送受信できるように、メッセージングサービスを国際規格であるSMS/MMSに対応させようとシステムの改修を進めており、この完了が来年1月ごろといわれています。それを待ってiPhone5を発売するのか、前倒ししてソフトバンクのスケジュールに合わせるかという判断だと思います」
ただ、課題も残されていると石川氏は言う。
「当然ながら、料金体系もキャンペーンもアップルが仕切る形になりますし、相当量の販売ノルマも課せられる中で、KDDIが主導権を握れるかという懸念があります」
また、ユーザーの増加でネットワークのキャパシティーにも不安が残る。
「iPhoneユーザーがau利用者に拡大すれば、ネットワークも当然ながらひっ迫します。結果的に今のソフトバンクと同じくらい、つながりにくい状態になる可能性も否定できません」
一方、「今回の報道はあまりにソースがあいまい」として、情報自体の信ぴょう性を疑うのは、モバイル業界に詳しい武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏だ。
「交渉自体はauもドコモもアップルとはしてきているはずですから、その意味ではどちらも可能性がゼロということはありませんが、現時点での報道内容を見る限り、懐疑的にならざるをえませんね」
また、KDDIの社風という観点からも疑問を呈する。KDDIは自社のビジネス目的の達成のために、メーカーや販売店に制約をかける傾向が、他のキャリアより非常に強い企業なのだと木暮氏は言う。
「この26日に発表されたモトローラ社の『PHOTON(ISW11M)』は、本来は世界中で通信ができるようにさまざまな通信システムを搭載するように設計された機種なんです。ところが、今回KDDIを通して発売するにあたり、ドコモやソフトバンクが採用しているW-CDMAや、国際規格のGSMを外してしまった。完全に国内使用限定モデルにしてしまったわけです。SIMカードを外して海外などで使わせないようにとの意図なんでしょうが、設計段階の思想を崩壊させてまでも、わざわざコストをかけてユーザーの利便性に反することをする。そういう企業文化の会社が、果たしてiPhone5を扱えるのかという疑問は残ります」
さらに、今回の一連の報道のソースがKDDIからのリークであった場合、契約に厳密な米アップルが黙っているかという問題もある。
「アメリカでは機密保持契約に対する概念が、日本とは比較にならないくらい厳しい。過去にも海外で、アップルと提携した経営者が記者発表の前日にポロっとしゃべってしまい、それで契約破棄になったという事例もあります。国内でも過去にドコモの山田社長が『iPadで使えるSIMを提供する』としゃべってしまい、後日撤回する騒ぎがありました。仮に今回、KDDIが本当にアップルと合意に達していたとしても、この大騒ぎをアップルがどう見るかというのは、今後注目すべきところでしょう」
KDDIは26日、スマートフォン秋冬モデルの新作発表を都内で行ったが、記者からのiPhone5に関する質問に対しては、予想通りノーコメントを通した。
冒頭でコメントしたドコモ関係者があきれ気味に言う。
「そもそもKDDIは脇が甘い会社でしてね。ドコモ以上に官僚体質というか、頭が固い会社の割に、口が軽い方が比較的多いんですよ(笑)。記者からドキっとする裏情報を聞いたときは、たいがいソースがKDDIだったりする。今に何か大きな問題に発展すると噂していたんですが......」
今回の報道で多くのauユーザーが歓喜したことは想像に難くない。しかし、彼らの手にiPhone5が届くまでには、まだまだ多くの紆余曲折を経る必要がありそうだ。
(文=浮島さとし)
"業界のタブー"セブン-イレブンの「加盟店いじめ」に下された審判

1万3,500店舗以上を誇り、いまだ増え
続ける巨大チェーンの問題とは?
コンビニ・フランチャイズ業界で、トップに君臨し続ける、鈴木敏文会長率いるセブン-イレブン・ジャパン。同社本部が値下げ販売制限等をめぐって約2,600万円の損害賠償を福岡市内の元加盟店オーナーS氏から求められていた訴訟の第一審判決が、9月15日に出た。福岡地裁は、販売制限を独占禁止法違反(優越的地位の濫用)と認め、同社に220万円の支払いを命じた他、加盟店契約内容が説明不十分だと認定し、本部が一審敗訴となった。
元オーナーであるS氏の訴えを簡単にまとめると、「自身の店舗で弁当等のデイリー品の値下げ販売を実施していたことに、同社本部が散々難癖をつけたことは独占禁止法違反であり、不当だ」とするもの。田中哲郎裁判長は判決理由で「(本部が)値下げ販売をやめるように繰り返し指導したことで、店側の取引を不当に拘束した」と独禁法違反を認定した上で、「値下げすれば利益を上げることができた」とも述べた。また、廃棄や万引きで「ロス」となった商品を売り上げに計上し、チャージを徴収する「ロスチャージ」といわれるコンビニ業界で用いられる特殊会計システムについても「計算方式が一般的な方法と異なることについて、加盟店側に理解できるよう配慮する必要がある」と述べ、説明義務違反を認定した。
要約すると、「価格販売の値下げは、加盟店の自由。廃棄リスクのある商品は値下げをしてでも販売した方が利益が上がるのだから、加盟店がそれを実施するのは当たり前。本部に制限する権限はない。ロスチャージ会計も契約時に加盟店に説明せよ」というもので、いわば、これまでの"本部側の常識"を覆す内容で、セブン-イレブン本部ならずとも、コンビニ各社の経営陣を戦慄せしめる判決なのだ。
筆者は2年前の2009年に2度も同社の井阪隆一社長に直接インタビューしたが(参照記事1)、その際「値下げをしても売上げ・利益が伸びるような効果はないし、会計の説明もきちんとしている」という、今回の判決と180度異なる趣旨を語っている。
S氏は1997年にセブン-イレブン加盟店オーナーになったが、2008年に脱退している。しかし、現役コンビニオーナーたちで作る労働組合「コンビニ加盟店ユニオン」はS氏を支援してきた。ある現役オーナーは「勝てる自信はなかった」と語り、本部から大金星を勝ち取ったことを誇った。九州のコンビニ加盟店ユニオンのメンバーには、契約解除を本部から不当に通告されたとして訴訟を検討しているメンバーもおり、この判決は自信となったようだ。
だが、S氏が求めていた約2,600万円の損害賠償金に対して、判決では10分の1以下の金額である220万円の支払い命令でしかなかったことや、「廃棄分のコストの15%は本部が負担していた」と同社本部が語っていたことは事実ではない、としていたS氏の主張は無視された形で、今回の判決は決して「完勝とは言えない」というのが、裁判関係者一同の見解のようだ。
■ユニフォームで遺体の身元が分かる
今回の裁判を支援してきたコンビニ加盟店ユニオンの活動を筆者は度々報道してきたが(参照記事2、3)、今年で結成3年目を迎え、先月8月24日には東日本大震災の影響を考慮して、東京ではなく大阪で定期大会を開催した。

コンビニ加盟店ユニオンの定期大会
同大会には、北海道から九州まで全国のコンビニオーナーが参加し、中には被災地である福島県や宮城県といった東北のオーナーも姿を見せた。
宮城県でセブン-イレブン美里町関根店を経営する中林茂男氏は震災直後の状況を語り、しばらくはお店をまともに開店するどころか自分が食べるものすらなく、九州のオーナー仲間から食料が届いたときのありがたさや、水道供給停止中はトイレ使用を制限せざるを得なかったことや、いまだ行方不明のオーナーや従業員がいる切実な被災地店舗の状況を話した。特に「セブン-イレブンのユニフォームを着た従業員の遺体が発見された時、警察は『良かった。これなら身元が分かる』とホッとしたそうです」という逸話は、被災地の行方不明者たちの発見作業の熾烈さを垣間見せるものだった。
また、東日本大震災や原発事故の影響で、例年より国会議員の挨拶は少なかったが、それでも「フランチャイズ法を考える議員連盟」の事務局長・姫井由美子参議院議員と事務局次長・長尾敬衆議院議員が顔を見せた。震災でストップしていたフランチャイズ議連の活動も8月から再開しており、長尾議員は「政局がどうなろうと、フランチャイズ問題に取り組む」と、フランチャイズ法制定に取り組む強い信念を述べた他、姫井議員は「次の大会では首相を連れてくる」とまで発言した。鉢呂吉雄前経済産業大臣辞任劇に始まりドタバタの船出となった野田佳彦首相を、姫井議員はコンビニ加盟店ユニオンの定期大会に連れてくることができるのか?
福岡地裁の判決で、コンビニ本部による加盟店への不当な締め付けの実態はより明らかになった。こうした店を取り締まるフランチャイズ法の制定は、政界・法曹界の今後の大きなトピックとなりそうだ。
(文=角田裕育)
「パートナーが欲しいなら婚活するべき!」"婚活歴5年"の著者が語るイマドキ婚活の極意

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この春、放送された月9ドラマ『幸せになろうよ』(フジテレビ系)は"婚活ドラマ"にふさわしく、ヒロインの黒木メイサが結婚相談所に入会する場面からスタート。だが回が進むにつれ、ヒロインは最初から純粋に婚活する気もなければ、香取慎吾と自然恋愛を経て結婚......というロマンティックな展開で幕を閉じた......。
数年前に婚活ブームが叫ばれて以来、あらゆるメディアが婚活を取り上げてきた。だが"婚活"というキャッチーな響きの奥には、体験者しか知ることのできない独特な生臭さがあるという。
約5年にわたり婚活を行った著者・石神賢介氏が、婚活の実状を綴った新書『婚活したらすごかった』(新潮社)が発売となり、版を重ねている。同書は、生涯の伴侶を探すべくひたむきに婚活に打ち込む著者の奮闘記であり、同時に冷静な視点で考察された婚活指南書である。
現在も婚活中の著者に、結婚したいすべての日刊サイゾー読者へ向け、アドバイスをもらった。
■婚活で、まず自分の市場価値を知るべし
――婚活を始めたきっかけを教えてください。
石神賢介氏(以下、石神) ある雑誌で婚活をテーマにした記事を担当したことがあって、そこから公私共に興味を持ったのがきっかけです。もしパートナーが欲しいなら、絶対にやった方がいいですよ。日常の中での出会いはゼロではないけど、どこに魚がいるのか分からない水面に糸を垂らすのと、餌を求める魚がたくさん泳ぐ釣堀とでは、当たりの数が違いますから。
――婚活自体は楽しいものですか?
石神 それは微妙ですね。僕が利用しているのは"婚活サイト"と"婚活パーティー"ですが、基本的には「恥ずかしい」という気持ちの方が大きいです。やっぱり、誰しも日常の中で知り合った人と結婚したいでしょう? けど、それが叶わないから特化した方法を取らないといけない......。ただ、婚活サイトの女性の写真は実物よりかわいいものが多いので、それは見ていて楽しいですよ(笑)。
――恥ずかしくても、悲しくても、それでも婚活した方がいいと?
石神 婚活は傷つくことも多いかもしれませんが、自分の市場価値が分かるんです。例えば女性20人中、何人が自分に好意を抱いてくれているのか知ることができる。現実は知っておくべきです。婚活パーティーでいつも感じるのは、女性は髪も服装もきちっとしているのに、男はムサい人がとにかく多い。鼻毛が出てたり、ヒゲを剃り残してたり、サンダルで来てたり......。だから逆に、男性はちょっと頑張れば抜きん出るのは早い気がします。
■容姿、年収......婚活する女性は理想が高い?
――婚活をしている女性は、男に高い理想を求めるイメージがあるのですが、実際はどうですか?
石神 やっぱり、年収の高い男を求めている女性は多いと思います。特に婚活サイトではそれが明らかですね。僕、婚活中の女性に頼んで女性側の画面(男性のプロフィールや、女性からの申し込み件数が見られる)を見せてもらったんですが、年収が高い男性は顔が悪くても人気があるんです。さらに年収1,000万円を超えていれば、女性からの申し込みは殺到します。逆にイケメンでも年収が低ければ人気はないですね。
――日常でパートナーを見つけられない女性には、何かしら難点があるのでは? と疑ってしまう男性もいると思うのですが。
石神 僕はまったくそうは思わないですね。婚活の場に出て行く女性は、男性と同様にプライドを傷つけられたりしながら、勇気を持って出てくるわけですから。それを僕は魅力的なことだと思うし、すごくかわいいことだと思うんです。それに今はいろいろな事情で相手を見つけづらい結婚難の時代ですしね。
――約5年間の婚活で100名以上の女性とデートをしたそうですが、どんな女性が多かったですか?
石神 著書の中では、特徴的な女性を中心に取り上げていますが、実際はまともで、礼儀正しくて、きちんと仕事をしてる普通の方がほとんどです。「何でこの人に彼氏がいないんだろう」と不思議に思うことが多いですね。
■婚活サイト、結婚相談所、婚活パーティー、タイプ別おすすめ婚活法
――日本では、婚活サイト、結婚相談所、婚活パーティーの3つが主流ですが、中でも婚活サイトが合っているのはどんな人でしょうか?
石神 まず時間を選ばないので、忙しい人ですよね。あとはルックスや年収など、いろんな条件のいい人。また対面は苦手だけど、文章が上手に書ける人や、仕事柄、メールでのやり取りが多い人などには合ってると思いますね。
――では結婚相談所がおすすめの人とは?
石神 これはあくまでも想像ですが、積極的な男性は結婚相談所ですごく際立つと思います。結婚相談所を利用している女性たちに取材したら、口をそろえて「男性が消極的だった」って言うんですよ。つまりそこへ積極的な男が入ったら、一人勝ちじゃないかと。
――婚活パーティーがおすすめな人は?
石神 普段から人との会話に自信がある人や、写真情報や数字情報があまり良くない人にはおすすめです。あと、写真写りはイマイチだけど、動いてるとごまかしのきく人っているじゃないですか。例えばスタイルがいいとか、おしゃれだとか、姿勢がいいとか、そんな人はパーティーがいいと思います。
――婚活パーティーの会場には、サクラの女性がいるイメージがあるのですが。
石神 僕が出たパーティーにはサクラの気配はなかったです。特にここ1~2年は女性の参加者が多いので、ほぼいないと思いますよ。ただ、ネットにはいるんじゃないかな。婚活サイトには2種類あって、会費がほぼ定額制のサイトと、異性とのやり取りのたびにチャージがかかるサイト。前者でサクラを感じたことはありませんが、後者の場合は明らかにサクラを感じますね。女性側が執拗に何度もやり取りをしようとしたり、文面が明らかに僕に興味がない様子だったり......ちなみに先日もサクラと思われる人からメールが来ました(笑)。
――婚活パーティーの攻略法があれば、教えてください。
石神 婚活パーティーは最初に限られた時間の中で全員と話すのですが、人数が少ない方が1人あたりの会話時間が長くなるんです。だから僕みたいに人と話すのに慣れている人は、参加者が少ないパーティーの方が有利だと思いますよ。逆にルックスのいい人は、人数が多い方が顔で勝負できるのでいい気がします。
――現在の婚活のシステムで、改善して欲しい点はありますか?
石神 女性がもっと積極的に話しかけられるシステムにしてあげればいいのにって思います。ただ、僕が婚活を始めた5年前に比べて、今はネットもパーティーも大分利用しやすくなってると感じます。
――いろいろ勉強になりました! 本日はありがとうございました。
***
取材後、「僕の服装とか髪型とかどこか悪いところはありませんか?」と切り出した石神氏。会った女性には必ず聞くようにしているという彼は、普段から婚活のためにジムに通うなど向上心を忘れないという。
現在シングルの読者のみなさんが、彼のように本気で婚活に臨むことができるかどうかは別として、試しに一度婚活の場に足を踏み入れ、自分の市場価値を知るところから始めてみてはいかがだろうか。
(取材・文=林タモツ)
「デモで彼女ができて……」フジテレビ抗議デモ主催者が交際を理由に活動終了を表明

抗議文は受け取ったものの、
依然として沈黙を続けるフジテレビ。
フジテレビの「韓流ゴリ押し・偏向」を抗議するフジテレビ抗議デモ主催者が、デモ活動で知り合った女性との交際を理由に活動終了することを表明した。
8・21フジテレビ抗議デモ実行委員会代表「現地の人」は、19日付けの自身のブログ「現地に転がっている人」で、「もう知っている方も多いと思うけど...」というタイトルの記事をアップ。「第一期としての自分の存在が続けば今後立ち上がる人々にとって最大の障害になること、また自分が攻撃対象になってこの運動自体が批判されることが予想される」と、その理由を説明した。
加えて、デモ活動で知り合った女性と結婚を前提に付き合っていることを告白。その上で、「今まで色々な活動で男女間の問題が活動自体の障害になってしまった例を見たり聞いたりしているので、この様な事になった自分にはもう表舞台に立つことは許されない」としている。
一方、抗議デモ実行委員会の公式ブログでは、「9・16花王抗議デモと9・17フジテレビ抗議デモが両方共無事に終わり、9月16日にフジテレビへの抗議文もきちんと渡し終えたことで自分達8・21の実行委員会としての役目は全て終わりました」と活動終了に至った経緯を説明しているが、「デモで彼女ができ、活動終了」という点だけが強調され、話題になっている。
高岡蒼甫のTwitter騒動が勃発した当初、フジテレビの韓国ドラマ枠で放送されていた『製パン王キム・タック』は主演のユン・シユンと敵役のチュウォンのイケメンぶりをアピールするプロモーション戦略を採っていた。そのため、「韓流ゴリ押し」の典型例として嫌悪されることになった。
しかし、『キム・タック』はイケメン俳優で終始したドラマではなかった。妻と部下の不義と戦う父親ク・イルチュン(チョン・グァンリョル)や、息子を引き離した正妻への復讐を企てるキム・ミスン(チョン・ミソン)ら「おじさん」「おばさん」の迫力がクローズアップされるドラマでもあった。
韓国嫌いでもない限り、むしろ幅広い視聴者層が楽しめる内容となっていたこのドラマ。その意味で、結婚を前提に交際中という家庭人を志向するデモ主催者が活動を終了することは、主張とは裏腹に「韓流ゴリ押し」批判層の偏りを物語るようで興味深いところだが......。
(文=林田力)
沖縄農協から覚えのない借金を背負わされた男の悲劇

7億円もの不正融資が行われていた沖縄農協名護支店(元やんばる農協)。
■前編はこちらから
沖縄農協から身に覚えのない多額の借金を背負わされ、しかも裁判でも言い分が認められずに、1,342万円もの支払いを余儀なくされた金城正さん(仮名・名護市在住)の一件については既報の通り(※前編参照)。本サイトでは以前、ゆうちょ銀行のデータ喪失事件(※記事参照)についても報じたばかりだ。経済ジャーナリストの須田慎一郎氏が、「ゆうちょ銀行や農協では昔からその手の話はたくさんある。氷山の一角でしょう」と指摘する通り、金融機関のずさんな業務実態や犯罪行為が、あまりに多く存在することに驚くばかりだ。
一方、こうした理不尽な事件に巻き込まれた被害者が、裁判で勝つことが難しいのはなぜなのか。前回証言をしてくれた元農協金融担当者のA氏に、金融機関を訴訟する難しさについて話を聞いた。(聞き手/浮島さとし=フリーライター)
――Aさんは長年にわたり農協で融資を担当されてきたわけですが、今回の事件をどうご覧になりますか。
Aさん 金城さんが沖縄農協の不正融資事件に巻き込まれた被害者であることは、訴状と判決文を見る限り間違いないと思います。あの事件では7億円が不正融資されたと報道さ れましたが、それは発覚しているだけの額。金城さんのような被害者はまだ他にもいるんじゃないでしょうか。
――こういうことは農協では頻繁にあることなのでしょうか。
Aさん さすがに頻繁とまではいいませんが、しばしば耳にするのは事実ですね。ただ、農協に限らずゆうちょ銀行や大手の都銀でも似た話は聞きますよ。もっとも、沖縄農協の場合は決裁権のないひとりの課長が7億もいじって誰も気づかないのだから、ずさんの度合いがひどすぎますけどね。
――Aさんが仮に不正融資をして今回のように訴訟を起こされた場合、どう対策を取りますか。
Aさん 今回のような訴訟なら、対策を取らなくても勝てると思います。金融機関相手に素人が裁判で勝つというのは、原理原則を考えるとほとんど無理なんですよ。
――あ、無理なんですか?
Aさん ポイントは立証責任なんですが、借りていた事実を立証するならともかく、「借りてません」ということを立証するのって、ものすごく難しいんですよ。今回でいえば、架空口座を開設したときに金城さんの印鑑が使われていますが、あれ偽造ですよ。でも偽造だということを立証するなんて、ぶっちゃけ犯罪者の自白しかない。でも、民事訴訟で犯罪者が自白するはずがないですよね。裁判官もそれを分かっているから、「気の毒だけど立証できないでしょ、じゃ棄却しますね」となるわけです。
――たしかに今回の判決文を読む限り、裁判官も「不正の可能性は大いにあるけど」というニュアンスの表現をしてくれているんですけどね。
Aさん 裁判官にしても「こりゃ絶対、農協やってるな」と思ってますよ。でも、裁判所は事実を追求する捜査機関ではないですからね。原告の主張だけに絞って、その言い分を立証できているかどうかを判断するのが仕事なわけで。
――となると立証責任を負う方が不利になりますね。
Aさん どんな裁判でも立証責任を押しつけたほうが勝つんですよ。もっといえば、やり方によれば金城さんは勝てた可能性もあるんです。この訴訟と同時に、債務不存在請求確認訴訟を起こす。つまり、「私が融資を受けたという証拠を出しなさい」という、立証責任を農協側に押しつける裁判です。もし私が農協側の担当者だったら、これをされたら負けも覚悟しますね。
――弁護士の戦略ミスということでしょうか。
Aさん そうだと思います。ただ、現実問題として金融に精通した弁護士って、実は日本に数えるほどしかいないんですよ。そういう人たちは皆、金融機関向けの企業弁護士をしてますから、そうなると弁護士同士で利益相反になるので、こういう個人の案件はあまり受けてくれないんですよね。
――同じ"金融ムラ"の弁護士同士ではケンカしないということですか。
Aさん はっきりいうと、そういうことです。仕方ないので被害者は、金融に精通していない、戦い方もよくわからないという弁護士に依頼するしかない。なので、一般人が金融機関と揉めたときにまともな裁判を受けることは、実はほとんど不可能に近いというのが現実なんです。
――監督官庁である金融庁はこういう事態をどう見ているのでしょう。
Aさん 本来こうした案件は司法になじまないわけで、行政が取り締まるべき問題だと私は思います。ところが、コンプライアンスが重視される昨今では、いかに金融庁でも確かな証拠がないと動けないですからね。疑惑だけで討ち入りして証拠が出なければ、こんどは逆に行政が裁判で逆襲されますから。
――いま「証拠」という言葉が出ましたが、金融機関のシステムから証拠をあぶり出すのも相当困難のようですね。本サイトで報じたゆうちょ銀行の事件もまさにそういう話でした。
Aさん 困難というか、ほとんど無理に近いですね。 金融機関は内部資料を開示しないから、立証できないとわかっている弁護士は引き受けてくれない。金融に精通している弁護士であればなおさらです。つまり、個人が金融機関に裁判で勝てない理由をまとめれば、【1】行政(金融庁)が動かない、【2】金融知識のある弁護士が少ない、いても受けてくれない、【3】金融機関が情報開示しない、以上の3点でしょうかね。
――あえて解決策を提示するとすれば。
Aさん 短期的には難しいですが......。まぁ、時間をかけて世論を醸成し、金融機関への監視を細かく厳しくできるような法体系にするしかないんじゃないでしょうか。現時点で決定打となる解決策はないというのが正直なところです。
沖縄農協から覚えのない借金を背負わされた男の悲劇

巨額の不正融資事件が起きていた沖縄農協。
もしある日突然、身に覚えの無い数千万円の借金の請求が届いたら、あなたならどうするだろうか。しかも、請求者が悪徳な詐欺集団ならいざ知らず、なじみの深い「おらが村」の農協だったとしたら――。
地元農協からあずかり知らぬ借金を背負わされ、しかも裁判でも言い分が認められずに、1,000万円以上の支払いを余儀なくされたひとりの男性がいる。沖縄県名護市に住む金城正さん(仮名)のもとに、沖縄県農業協同組合(以下、沖縄農協)から約6,400万円の債務に関する通知が届いたのは平成14年5月のこと。書面の内容は、金城氏が平成5年と6年の2度にわたり、合計7,000万円の融資を名護農協(後に合併して「やんばる農協」→再合併して「沖縄農協」)から受け、その返済がないために債権を東京の債権回収会社に譲渡するというものだった。
ところが、金城さんにとっては全くの寝耳に水の話。そもそも、農協は平成5年と6年に融資をしたといいながら、その日まで9年の間、一度たりとも返済を求めた事実はない。まさに青天の霹靂。普通であれば狐につままれたような気持ちになるところだが、金城氏はある事件を思い出して強い不安感に襲われたという。
「ある事件」とは、それより3年前の平成11年、やんばる農協時代に起きた巨額の不正融資事件である。同農協の金融課長だった男がカラオケ店経営者の知人と共謀し、オンライン端末を不正に操作して知人やカラオケ店従業員の名義の架空口座を多数開設。貸付権限がないにもかかわらず、決裁を得ないまま架空口座へ融資を繰り返した。不正行為は92年7月から96年3月まで3年9カ月続けられ、不正金額は発覚しただけで約7億円。那覇地裁は平成11年10月、「犯行は常習的。犯行態様は悪質極まりない」として、元金融担当課長に懲役4年の実刑判決を言い渡している。

JAやんばる(現・沖縄農協)の
不正融資事件を報じる
平成11年10月付け地元紙。
金城さんに通知が届いたのは、その3年後の平成14年。やんばる農協の事件は当時地元でも大きな騒ぎとなったため、当然ながら金城さんは事件との関連性を疑った。事実、農協から取り寄せた口座開設申込書を見ると、金城さんは逮捕された共犯者が経営するカラオケ店の従業員という形にされており、さらに記入された住所と名前の筆跡は、金城さんのそれとは似ても似つかぬ他人のものだった。

上段が架空口座が作られたときに犯人もしくは協力者が金城さんになりすまして書いた文字。
丸い女性的な筆跡が特徴。下段が実際の金城さんの筆跡。まったく異なるのが分かる。
あっけにとられた金城さんだが、農協側にそれを主張しても聞き入れてもらえない。その後、平成15年8月には裁判所から「不動産競売開始決定通知」が届く。つまり、知らない間に自身の家屋や土地が抵当に設定されており、その競売が執行されるというのである。精神的に大きなショックを受けた金城さんはこの時期から体調不良に陥り、血圧上昇やろれつが回らないなどの症状が出始め、今も通院が続いているという。
身に覚えのない借金で家屋と土地が取り上げられる――。追い詰められた金城さんは、平成16年に抵当権抹消を求めて裁判を起こすが、翌年棄却。控訴するも平成18年控訴棄却。さらに上告も不受理となり、ついに平成19年1月に金城氏の敗訴が決定してしまう。
借りた覚えのない多額の借金を請求されるという無茶苦茶なこの事件。金城さんはいったいなぜ敗訴したのか。関東のある農協で長年融資を担当していたA氏(52歳)は、今回の事件を「沖縄農協による組織ぐるみの犯罪隠ぺいであることは間違いない」としたうえで、「この手の裁判のポイントは立証責任。ただし、それが難しい」と説明する。
「裁判ではどんなに状況が怪しくても、立証できなければ勝てません。例えば、今回の事件では、架空口座を作ったときに金城さんの偽造印鑑が使われていますが、それが偽造であることを立証するとなると、偽造した人間の自白しか方法がない。だから、裁判では立証責任を押しつけた方が勝つんです」
実際、那覇地裁の判決文には、「(やんばる農協の金融担当課長)による不正貸付であった可能性は大いにあるものの、その真相は不明というほかなく、この事態は立証責任を負担する原告(編注:金城さん)の責任において解決されるべきものである」としているのである。裁判所としても怪しいことは間違いないとしながら、それを立証するのは被害者たる金城さんにあると言っているのである。「裁判所は事実を追求する場所ではなく、原告の立証を判断する場所」(A氏)であるとはいえ、一般的な感覚からいえば理不尽極まりないとしかいいようがない。
その後、債権は別の回収会社に転売され、その回収会社は金城さんに対し、「1,342万円を支払えば競売申し立ては取り下げる」と打診。敗訴をして打つ手がない金城さんは、家屋と土地を守るために平成20年4月、断腸の思いで1,342万円を回収会社へ支払ったという。
それにしても、本サイトで前回報じた、ゆうちょ銀行のデータ喪失事件(※記事参照)も含め、金融機関のあまりにずさんな業務実態や犯罪行為が露呈する一方、一般人が裁判で敗訴を続けるのはなぜなのか。次回は、今回証言をしてくれた元農協金融担当者A氏に、金融機関を訴訟する難しさについて話を聞く。(後編へつづく)
(後編に続く/文=浮島さとし)








