無知が生んだ日本最大のタブー! 右翼も訝しがる"報道"を忘れた皇室番組の意義を問う

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『皇室』(扶桑社ムック)
──土曜日の早朝、放送開始から50年以上たつ長寿番組『皇室アルバム』がひっそり続いていることをご存じだろうか? ニュース番組では、当たり障りのない事象のみを伝える報道がなされ、深掘りして報道するはずの皇室番組も、鳴りを潜めている。果たして、既存の皇室番組、そして皇室報道の存続意義とは?  近頃、皇室周りが何かと騒がしい。今年11月に気管支肺炎を患って長期入院をされた天皇陛下の健康問題に、未婚の女性皇族が結婚した場合に生じる"皇族減少"を防止するべく検討され始めた、女性宮家の創設。さらには10月、皇太子夫妻が長女・愛子さまの通う学習院初等科の運動会に出席され、その時の模様が一部週刊誌で「ほかの父兄が自分の子ども以外を撮影する際は、相手の承諾を得ることを固く義務付けられていた中、皇太子殿下は愛子さま以外の子どもも無断で撮りまくっていた」などと報じられたり、皇室に対するバッシングも過熱している。皇室ウォッチャーならずとも、ニューストピックとして気になっている人は多いだろう。  現在、テレビでは『皇室アルバム』(TBS)、『皇室ご一家』(フジテレビ)、『皇室日記』(日本テレビ)という3つの"皇室番組"が毎週放送されている。詳しくは次特集を参照いただくとして、いずれも基本的には皇室の一週間の動向を追い、ニュース番組などの皇室報道では取り上げられない公務やプライベートの模様を垣間見ることができる。しかし、放送の時間帯が日曜もしくは土曜の早朝に設定されているため、社会人にはリアルタイムでチェックすることはなかなか難しい。さらに3番組あるといっても、放送内容はどれも似たり寄ったりで、制作側のモチベーションの低さが透けて見えるのも事実。しかし、「女性自身」(光文社)で皇室記事を50年以上担当している記者の松崎敏弥氏いわく、「昔はもっと報道を意識した作りになっていた」という。 「特に皇室番組の中で最も歴史のある『皇室アルバム』はすごかった。制作元の毎日映画社は、皇室報道に定評のある毎日新聞社の系列会社だから、毎日新聞の記者から撮影の際にアドバイスがもらえたんです。『昭和天皇はご病気のせいで顔が麻痺しているから、ご病状を伝えるためにお顔のアップを撮ったほうがいい』とか。でも今は、各局、系列の新聞社とのつながりも薄くなってしまって、自分たちで考えて撮るよりほかなくなった。しかも、例えば同じ祭りごとでも、各局がその切り口を考えるにしても、そもそも知識がない。結果、宮内庁の指示通りに撮って、『これでいいや』という感覚で作ってしまっている。そりゃあ、内容のかぶった番組になりますよ(笑)」(松崎氏) ■宮内庁もわかってない? 曖昧なままの報道姿勢  では、皇室番組はなぜ、みな宮内庁の言いなりとなってしまったのか。そこには、情報の引き継ぎをおざなりにしてきたテレビ局の制作スタッフの世代交代による、皇室報道の変化があるという。 「例えば最近だと、10月23日に眞子さまの『成年式』、11月3日に悠仁さまの『着袴の儀』と、ご皇族の儀式が立て続けにあったんですが、それを報道する情報番組のスタッフが『この儀式はどんなことをするんですか?』って聞いてくるんですよ。ちょっと調べたらわかるだろうに、それを教えてくれる人が現場にいない。さらに、行事を取り仕切る宮内庁側ですら、最近は若い職員とか、警察庁や外務省など外からの出向組が増えてきて、古くからの皇室のしきたりについてちゃんと理解している人が少なくなっている」(同)  皇室に関する職務を司る宮内庁側までそんな状況では、何が正しく、何を規制すべきなのか、コントロールすることも難しいのだろう。前述の皇太子夫妻による運動会騒動をはじめ、バッシングやスキャンダルにつながるような報道が増えているのも、そのことが大きく関係しているように思えてならないのだが......。 「それは一理あるでしょうね。ただでさえ今の皇室は、天皇陛下のご健康や愛子さまの付き添い通学など、さまざまな問題を抱えていることもあって、ネガティブな報道を恐れた宮内庁がはっきりとした情報を出さなくなり、それがまた悪循環を生んでしまっている。天皇陛下が入院された時も、当初は『一週間ほどで退院できます』と発表しておいて、予定日になったら『熱が上がってきたので、退院は延期します』とか、そんなことを3回もやってしまった。ましてや病状もただの風邪だの、マイコプラズマ肺炎だのって二転三転して......。宮内庁がそんなでは、メディア側や視聴者に『天皇陛下のご容体、実は相当ヤバいんじゃ』と疑われても仕方ないですよ」(同)  "重病説"にさらなる信憑性をもたらしたのは、入院先が東京大学医学部附属病院(以下、東大病院)であったこと。風邪なら宮内庁病院でも治療できるだろうに、わざわざ東大病院に入院されたことで、疑惑を深めてしまったのだ。それにしても、なぜ東大病院だったのだろう? 「これはあまり知られていない話なんですが、実は東大病院の最上階には、皇室専用の病室があるんです。エレベーターも専用で関係者以外は立ち入れないようになっていて、警備も厳重。ただ、皇室の方々は健康保険に加入できないので、入院すると1泊20万円近くかかるらしい。なんでそんな大枚はたいてまで東大病院に入院するのかというと、宮内庁病院に腕の良い医師がいないからなんですよ。設備は充実していても、医師がいまひとつだから、重病が懸念される場合は利用されない。じゃあ、宮内庁病院の存在意義は......と聞きたくなりますけどね(笑)。  天皇陛下は2003年に前立腺がんの摘出手術を受けて以降、再発を防ぐためにホルモン治療を続けられているんですが、その副作用で骨密度が骨粗しょう症レベルにまで低下してしまったため、皇居内に新設したプールで運動されるなど、もともと健康面に注意しなければならない状態だったんです。さらに今年は震災が起きたことにより、7週連続で被災地をご訪問されるなど、イレギュラーのご公務がどっと増えて、お疲れも相当たまっていた。だから大事を取って、今回は東大病院で検査しよう......というのが当初の来院目的だったはずで、そういった説明を宮内庁がしないもんだから、変に勘ぐられる結果になってしまったんですよ」(元皇室担当記者)  確かにそうした背景もきちんと説明されていれば、余計な憶測は呼ばなかったはず。しかし、宮内庁が説明をしないのであれば、これまでの動向を見てきた担当記者が先立って報じる手段もあったわけで、それがなされなかったことにもいささか疑問が残る。 「新聞や雑誌、テレビなどの宮内庁担当記者のうち、15社くらいは宮内庁の中にデスクを置いて、常駐して取材をしているんです。でも、その『宮内記者会』という記者クラブの中にも"お約束ごと"があるため、知っていても書けないことがある。テレビ局の担当記者なら、各ニュース番組の担当者たちが『これどうなってるの?』って聞けば答えるけど、自分たちからは積極的に話さないことも多いんだよ。さらには、記者クラブ内のお約束ごとを破るわけにはいかないからと、プロデューサーに聞かれても答えないこともあるらしい。言ったら誰が流したかバレるからね。そうなったらもう、情報や写真などの資料が一切もらえなくなってしまう」(同) ■右翼におびえるテレビ局 スクープしない担当記者  報道の職に就いておきながら、情報発信に自主規制をかけまくるというのもおかしな話だが、それが宮内庁担当記者の仕事だというなら仕方あるまい。さらに記者たちをびびらせているものがもうひとつ、それは"右翼団体からの抗議"だという。  確かに皇室に関するネガティブな報道には、右翼団体によるクレームの不安がつきまとう。とはいえ、実際に抗議活動は行われているのだろうか? 新右翼団体「一水会」の代表を務める木村三浩氏に聞いた。 「街宣車を走らせるまでにはなかなか及びませんが、テレビの報道に対しても、電話や書面で抗議している活動家はいますよ。ただ、最近は事実が先行した上でネガティブな報道をされることが多いので、発信元よりも現場に抗議がいくケースが増えているようです。10年に愛子さまの不登校騒動が取り沙汰された時も、学習院に『愛子さまをいじめたとされる児童は本当に存在するのか』とか『ご皇室の子弟をお預かりする管理体制は万全なのか』といった抗議が殺到しました。事実よりもネガティブな報道が先行した場合は、当然ながら発信元の報道機関に抗議がいきます。そのため、フライング報道は危険と言わざるを得ません」  宮内庁にも右翼団体にも目をつけられずに皇室報道をまっとうするには、宮内庁から正式に発表された情報だけを発信するのが一番。前出の松崎氏によると、皇室にとって重要な情報については、宮内記者会の中で「宮内庁より正式な発表があるまでは解禁しないように」といった協定が結ばれることもあるという。 「現に雅子さまのご病気についても、協定が結ばれていました。これによってスクープは絶対に取れなくなる半面、他社に出し抜かれることも絶対になくなるし、『正式発表があるまでは解禁できない決まりになっているから』と、大義名分を掲げて安心していられる。ただ、一方で宮内庁側から流してほしい情報が特定の記者にリークされ、それがスクープとして報じられることもあるんですよ。最近だと、11月に読売新聞が報じた『宮内庁長官が野田首相に女性宮家創設の検討を"火急の案件"として伝えた』というニュースがそう。読売の記者はスクープが取れたと喜んでいたけど、周りはみんな『どうせリークでしょ』と(笑)」(松崎氏)  もし本当にリークまでしたのであれば、現在の宮内庁にとって一番の問題は、やはり女性宮家の創設なのかもしれない。ただ、確かにそれも気になるものの、どちらかといえば、天皇陛下のご容体のほうが気がかりになっている人も多いはず。一部情報によると、11月中に読売テレビが、天皇陛下が万が一崩御された時に備え、緊急体制に入った日もあったと聞くが......。 「その話は僕も聞きましたよ。『陛下のご容体が危ないらしい』と聞いた局側のスタッフが、宮内庁担当記者に電話で確認しようとしたら、『今それどころじゃない』なんて言われたもんだから、すっかり勘違いしてしまったらしくて。まぁ、78歳といったら、一般的にいえば"何があってもおかしくない年齢" ですからね......。  実はXデーに向けてのシミュレーションは、すでに各テレビ局で始まっていて、陛下がお生まれになってから現在に至るまでの映像をまとめた番組などが制作されているんですよ。昭和天皇の時も公にしていなかっただけで、局内では事前に特別番組の制作が行われていた。僕も携わっていたんですが、いつでも放送できるように、週1ペースで頻繁に準備して、いろんなパターンをそろえて......。さすがにまだそこまで差し迫ってはいないですが、各局で内々に準備は進められているはず」(同)  崩御に向けた準備なんて、不謹慎極まりないと思われるかもしれないが、これは常にリアルタイムで世相を報じなければならないテレビメディアの宿命ともいえる。  最後に松崎氏が「09年、NHKが両陛下のご成婚50周年の記念番組で宮中の朝の散歩のご様子を放送し、お2人のプライベートな会話も流れました。これからはもっと若い世代が皇室に関心を持てるよう、こうした踏み込んだ取材をしてほしい」と述べたように、さまざまな問題が提示されている今こそ、皇室番組の真価を見せてもらいたいものだ。 (文=アボンヌ安田/「プレミアサイゾー」より) ■プレミアサイゾーとは? 雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、月額525円読み放題! (バックナンバー含む) 1lineimg.jpg
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被災地の実態から山口組組長直撃取材まで ──タブーなき名作ドキュメンタリーの世界

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『山口組 知られざる組織の内幕』(NHK/上)と木村栄文による『苦海浄土』(RKB毎日放送/下)。これらの作品はときどき動画サイトにアップされている。
──需要が少なく陽の目を浴びることがなかったテレビのドキュメンタリー。テレビ放送黎明期から製作されてきたこれらの作品は、今日のテレビ番組制作に大きな影響を与えているという。その歴史や影響、現在のシーンをたどりつつ、隠れたテレビドキュメンタリーの名作を紹介していく。  このところ、テレビドキュメンタリーに注目が集まっている。もちろんこれまでも話題となる番組はあったが、ドラマなどに比べると再放送も、DVD 化されることも極めて稀だった。それが、戸塚ヨットスクール事件のその後を扱った東海テレビ制作のテレビ番組『平成ジレンマ』(10年5月放送)や、四日市公害の闘争を扱った、やはり同局制作の『青空どろぼう』(10年11月に放送された『記録人 澤井余志郎~四日市公害の半世紀~』を劇場用に再構成した作品)などが劇場公開されたり、また、山形国際ドキュメンタリー映画祭でも60年代から70年代の秀作を中心にテレビドキュメンタリーの特集上映が組まれ、その魅力が再発見されている。  長年、ドキュメンタリー映画に関する隠れた良作を発掘し、神保町のneoneo坐などで上映活動を行っている清水浩之氏は、テレビドキュメンタリーへの関心がにわかに盛り上がり始めた背景についてこう話す。 「これまでドキュメンタリー作品では、テレビ番組はほとんどまとめられていなかった。それを岩波書店が2年前、『シリーズ・日本のドキュメンタリー』というDVD付全集を編む時に、初めて資料にまとめようという動きが出てきたんです。この資料の中に、放送業界内では有名な作り手が制作したものや、評価の高い作品が結構あるんですよ。だけど昔のものに限らず、リアルタイムでも一般人が簡単に見られる作品はほとんどない。例えば、地方局である東海テレビ制作のドキュメンタリーは、かならずしも系列キー局のフジテレビで放送されるわけではない。なので、もっと見せる機会を増やせないかということで、東海テレビの阿武野(勝彦)さんの発案で、『青空どろぼう』を劇場公開する流れになったんです」  このように劇場公開できるほどの良質な作品は、とくに地方局から生まれやすいという。 「地方局にとって、地元の状況や事件を扱ったドキュメンタリーは、キー局に比べて地方局ならではの"強み"が発揮できるジャンルなんです。地元取材なら、東京から取材に来たスタッフとも互角以上に渡り合える。また、視聴率よりも、賞狙いで番組を作っているようなケースもあります。60年代から福岡の RKB毎日放送にいた木村栄文という伝説的なディレクターは芸術祭賞などを多数受賞して、『賞獲り男』って言われていたくらいですから。賞を獲ることで評価されて、また次の番組を作ることができる、という構図もあると思います」(清水氏)  ドキュメンタリー作家である松江哲明氏も、やはり地方局で生まれる作品に注目しているという。 「地方局は、あるテーマに取り組むときに、ひとりのディレクターだけでかかわることが少ない。地域との関係性の中で、先輩ディレクターから引き継いだり、同僚と連携しながら、集団で取り組んでいく。そうやって、長年被写体に密着しながら番組を作っていく体制は、映画のドキュメンタリーではなかなかできるものじゃないですね」(松江氏)  松江氏が衝撃を受けたという『青空どろぼう』も、長期に渡る丁寧な取材があった。 「ドキュメンタリーが特に力を発揮するのは、声を持たない人たちや、はっきりとは映らない空気のようなものを掬いとる時だと思うんです。『青空どろぼう』も、企業が国ぐるみで大きなモノを優先させるときに、その影で犠牲になる人たちの小さな声を緻密に取り上げている。僕にとっては、今年観たドキュメンタリーで、ベストのうちのひとつだといえる素晴らしい作品でした」(松江氏) ■ドキュメンタリーの旗手田原総一朗の偉業とは?  さて、良作のテレビドキュメンタリーが映画化されたり、ソフト化される動きに加え、オンデマンド配信や動画共有サイトなど、テクノロジーの発達もこの盛り上がりに一役買っているのではと、清水氏は語る。 「84年から89年に掛けて起こった山一抗争の頃に、NHKが山口組を取材したドキュメンタリー『山口組 知られざる組織の内幕』(84年8月放送)という作品があるのですが、これは4代目竹中正久組長を始め、若頭などが勢ぞろいで出演。さらに対抗組織だった一和会の組事務所の中にまでカメラが入っている。間違いなくNHKは再放送もオンデマンド配信もしないでしょう。ところがこの作品を誰かが録画して持っていて、動画共有サイトに不定期にアップされる(笑)。もちろん発見されると削除要請されて消えてしまうのですが、また上げられるというイタチごっこが繰り返されています」  こうしてこれまでは気軽に見られなかった隠れた名作に、手が届きやすくなった。この機運に乗じて盛り上げていくには、「埋もれてしまった名作を紹介する"キュレーター"的な役割が重要であり、そうした需要も高まってきているのでは?」と、清水氏は語る。  そんな中、10月に開催された山形国際ドキュメンタリー映画祭では、60年代から70年代のテレビドキュメンタリーの特集が組まれた。 「私も作品の選定にかかわったのですが、ドキュメンタリー映画って監督の名前だけで売れるようなところがありますが、テレビ番組の場合、その性質上、どうしても作り手がテーマの影に隠れがちなんです。  この頃活躍した人だと、例えば、NHKには工藤敏樹という緻密なドキュメンタリーを作るディレクターがいた。日テレには牛山純一という民放のドキュメンタリーを一から創った名物プロデューサーが、TBSには、後にテレビマンユニオン(映画監督の是枝裕和が所属するドキュメンタリーに強いテレビ制作会社)を設立する、萩元晴彦や村木良彦という実験性に富んだドキュメンタリーでテレビ的表現を拡張したディレクターがいた。彼らの作品を切り口にしたら、とアドバイスしたんです。  この時代は、テレビがまだニューメディアだった。番組の作り方も確立しておらず、いろいろな試行錯誤がされていたんです。最初は映画のやり方をマネしてみたり、ラジオの構成を取り入れてみたりしている。今見ると、かなり変だけど、面白い番組がいっぱいあります」(清水氏)  また、前記の作り手たちに並んで、清水氏が、テレビの表現を開拓した重要な人物として挙げるのが、現在もジャーナリストやキャスターとして活躍する田原総一朗である。 「田原さんもやはり同じ頃にテレビ東京に入って、ドキュメンタリー番組を作っていました。当時のテレ東はNHKやほかの民放局に比べて、今以上に予算もないし、視聴者も少ない。そんな環境で、田原さんは、かなり過激な番組作りで、テレビドキュメンタリーの表現を探っていった。例えば、ジャズピアニストの山下洋輔が出演した『バリケードの中のジャズ~ゲバ学生対猛烈ピアニスト』という番組は、学生運動吹き荒れる早稲田大学のバリケードの中に山下洋輔をピアノと一緒に放り込んで、ピアノを弾きまくらせるというむちゃくちゃな企画。きっかけは山下洋輔がどこかで『ピアノを弾きながら死にたい』と言ったのを聞いた田原さんが『面白い、俺が殺してやる』って、死に場所としてバリケードの中をチョイスしたそうなんです。その思いつきを実行してしまう豪腕ぶりが抜群に面白い」(清水氏)  また松江氏は、現在も放送されている『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)を例に挙げつつ、田原の制作手法について語る。 「田原さんの場合、ドキュメンタリーの制作において、結論を出さないままで放り投げて、まとめ上げることなく番組を終わりにしてしまう。テレビなら放送時間が決まっているので、どんなに放り投げても、番組の放送時間終了とともに、ちゃんと終わりがくるんですよ(笑)。こうしたスタイルは『朝生』にしっかり継承されています。田原さんはよくあの番組について『結論なんかでなくていい』と言う。でも、どんなにケンカになろうが、議論がしっちゃかめっちゃかになろうが、朝がきたらスパッと終わる。田原さんの番組を見ていると、(ひとつの作品としてお金を取って上映する)映画のドキュメンタリーとは違う、テレビドキュメンタリーならではの可能性があると思います」(松江氏) ■ドキュメンタリーのナウな楽しみ方とは  このようにテレビの"青春期"にドキュメンタリーの作り手たちが生み出した手法には、その後の番組作りに多大な影響を及ぼしたという。 「66年にTBSの萩元さんたちが作った『あなたは...』という番組では、道行く老若男女に無差別に同じ質問をするんです。その質問を寺山修司が考えているのがまた面白いんですが、例えば『日本人は悲劇ですか? 喜劇ですか?』や『(アメリカ人に向かって)原爆に責任を感じてますか?』など、独特な質問をぶつけて、そのリアクションを見る。それまではタレントやキャスターが何かを発信するというのがテレビ番組の基本でしたが、この頃『リアクション』が発見されたことで、素人も番組で"いじれる"ようになった。これはバラエティ番組の原点とも言えるでしょう」(清水氏)  確かにこうした手法は今日のテレビ番組では当たり前のもの。それと同時に、時代とともにそれらはアップデートもされている。自らも作り手である松江氏は語る。 「例えば、『痛快!ビッグダディ』(テレビ朝日)みたいな大家族モノって、出てる人たちが自分の役割をよくわかってるところにある。彼らは素人ですが、頭のどこかにかつてテレビで見た大家族モノのフォーマットがインプットされていて、それに合わせて、自分がどう動くべきかをどこかで理解しているように見えます。例えば『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)でも『漂流家族』という、大家族ものがあるんですが、その中で旦那が妻を殴ろうとするんですけど、そのカメラアングルが絶妙なんですよ。旦那が手を振り上げた瞬間に、妻がカメラの手前にいる子供たちに向かって、大声で『出ていくよ!』って言うんです。いくらなんでも芝居がかりすぎだろっていう(笑)」(松江氏)  かつて今村昌平が映画『人間蒸発』(1967年)の中で、撮影の一環として女優のプライベートを隠し撮りして、「やりすぎだ」と議論を呼んだことがある。その際、今村は「カメラで隠し撮りでもしないと人間の本音は炙り出せない」と言ったという。しかし、松江氏によれば、むしろ今のテレビドキュメンタリーの核心は、カメラを向けることで演じ始めてしまう被写体から、漏れる本音を拾うところにあるという。 「今村さんの時代とは隔世の感がありますよね。半年ぐらい前に放送された『ザ・ノンフィクション』で女性アイドルの生き方に迫った『アイドルすかんぴん』では、番組放送後、出演者が撮られ方への不満を告白して話題になりました。自分のプライバシーを曝かれたというクレームではなく、自分がイメージしていた映り方と、番組サイドの編集に誤差があって、それが許せない、ということでした。でも、ドキュメンタリーを制作していく上で、そのズレはどうしても生じるもの。すごいディレクターだと、そのズレをあえて意識して制作しているフシがみられる。カメラを向けまくることで、ぽろっと漏れてくる本音、それを見るのが、今のドキュメンタリーの楽しみ方のひとつですね」(松江氏)  今旧作や地方局を中心に、光が当てられているのは、テレビという表現が持つ意味を、制作体制や視聴方法も含めて、もう一度、考えてみようという機運なのではないか。 (文=九龍ジョー/「プレミアサイゾー」より) ■プレミアサイゾーとは? 雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、月額525円読み放題! (バックナンバー含む) 1lineimg.jpg
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「意外にも親日家が多い!?」緊張感高まるイラン、黒いベールに包まれた国を歩く(前編)

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 核開発をめぐる問題でアメリカとイランの国家間の緊張が高まり、今にも戦争が勃発するのではないかとにわかに騒がしくなっている中東情勢。外務省のHPでは、イラク及びアフガニスタンとの国境付近など一部地域への退避勧告や渡航延期が出されているが、はたしてイランの現状はどうなっているのか。  まず訪れたのは、首都テヘラン。4,000m級の山々が連なるアルボルズ山脈のふもとに位置し、今の時期は日本とよく似た気候だが、冬季の最低気温は氷点下になることもある。テヘランは、旅行者の間ではこれといって見所のない場所として有名だが、人口680万人を超える人々が暮らす大都会だ。 
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 意外にもテヘランには親日家が多く、歩いているだけで1日100人ぐらいのイラン人からうれしそうに声をかけられる。「日本から来た」と言うと、目を輝かせながら「ウェルカム トゥ イラン!」と迎え入れ、中には車を運転しながら「ジャポーン!」と叫び、走り去ったかと思いきや、バックをしてわざわざ戻ってくる人までおり、かなり好意的な様子。
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テヘランで出会った軍人。
 治安はよく、夜でも出歩く人は多い。だが、不思議だったのは、迷彩柄の軍服を着た軍人がやたらと多かったこと。別に銃を持って警備しているわけでもなく、ただ、軍服のまま街をふらふらと私用で歩いているだけなのだが、テヘランを始め、イラン各地の街中をこうした軍人がうろついている。一体、なんだってこんなに多いのか、これはアメリカに対抗してなのか。疑問に思い、出会った軍人に直接聞いてみるとこんな答えが返ってきた。 「別にアメリカだけじゃないよ。イランの周りは、イラクとか、アフガニスタンとか、敵だらけだからね」
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イランの国旗。緑はイスラームのシンボルカラーで白は平和、赤は勇気を表す。
 地図を広げてみれば、なるほど確かに少し危険な香りのする国が多い。ちなみに、出会った軍人などに聞いた話によれば、軍人の給料は、1カ月100ドルから400ドル程度。イランでの平均的な1日の稼ぎは10ドルから20ドルのようなので、100ドルは安すぎる気がするが、ほかの職業とそれほど給料は変わらない。ただ、職業によって、日本と同じように住宅手当や食事も出るようなので、軍人の場合、優遇されている可能性は高い。
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バンダルアッバースの船着場。
この先には、アフリカ大陸のオマーンがある。
 そもそも、イランがイスラーム国家になったのは1979年のこと。イラン宗教界の指導者だったエマーム・ホメイニーがイランの最高指導者に就任してからなので、意外と最近の話だ。それ以前はアメリカとも友好的な関係にあり、今ではとても考えられないが、女性は自由にミニスカートをはくことができたそうだ。  30代後半のイラン人男性に当時の話を聞いてみると、「ある日、突然、母親がスカーフをつけ、スカートをはかなくなってしまった」と、子どものころの記憶を語ってくれた。  それゆえ、イランの行く末を変えたエマーム・ホメイニーは、イランでは誰もが知る最重要人物。イランで使用されている5万リアル、2万リアル、1万リアルなどの紙幣にも載っている。都市部では彼を嫌う人が多く、顔をしかめて「ベシベシ」とお札を叩く人がたまにいたので、私も冗談でタクシーのおじちゃん相手にマネをして叩いてみると、『分かっているじゃないか!』と満足そうな表情を浮かべていた。
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ホメイニーが載っているイランの紙幣、イラン・リアル。イランでは、
クレジットカードもトラベラーズチェックも使えない。
ドルを中心とした現金を両替する。
 それにしても、旅行中に出会ったイラン人に話を聞く限り、現大統領の支持率は低い。  そのもっとも大きな理由のひとつが規制の厳しさだ。とくにネットの規制は激しくFacebookやTwitter、YouTubeはもちろん、Yahoo!やGoogleのトップページすら開かず、メールのチェックができないこともあり旅行中は非常に困った。そもそも、ネットの接続も悪くつながらないことも多いが、その一方で、時々なぜかFacebookが見られるようになる"幻の2時間"があらわれるので、それに対して旅行者は一喜一憂するという感じだった。
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ネットカフェ。イランでは、「カフェネット」「コーヒーネット」
などと呼ばれている。
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ネットカフェの店内。ここにも軍人。
 もっとも、イラン人もパソコン持ちの旅行者も、多くの人はフィルター解除のソフトを持っており、自分の見たいサイトのアドレスを入れる自由に見ることができる裏テクをいくつも編み出していた。  だが、「ウォールストリートジャーナル日本版」の1月6日付けの記事(http://jp.wsj.com/World/Europe/node_371090)によれば、イランではインターネットの規制をさらに強化するとのことで、ネットカフェでは「15日以内に監視カメラの設置と、顧客の詳細な個人情報の収集、ユーザーのオンライン履歴を文書で記録するよう求める規制を導入」するなど、また一段と厳しくなるようだ。また今後、独自のインターネット回線のサイトしか使えないようにして外部の情報を一切遮断するという話もあり、インターネットに対して、神経質なまでに警戒を高めている。  この国は、外国人に対しても飲酒やポルノ雑誌等の持ち込み禁止に加え、女性には、頭のスカーフとお尻の隠れる上着の着用を義務づけるなど、「超」のつくほどイスラームの戒律が厳しい。  とくに女性が嫌がっているのが服装。これは法律で決められているので、私も旅行中はスカーフを着用し、お尻が隠れる服を着ていた。初めのうちはコスプレ感覚で楽しんでいたが、2週間が経ったころ、あまりにもずっとスカーフを着けているので、首がかゆくなってきてしまった。
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旅行中の格好。大体いつもこんな感じ。スカートは基本ダメだが、怒られず。
レギンスも問題なかったが、スカーフは取ると怒られる。
 イラン南部、現在は封鎖問題でゆれるホルムズ海峡に面するバンダルアッバースという港町は半袖でも過ごせるほど暑く、長袖を着ていることがバカらしくなるし、スカーフもつけていられない。そこで、スカーフを取って歩いていると、すぐさま「スカーフが取れてるよ」といろんな人から笑顔で注意されるので、渋々かぶらざるを得なくなってしまった。    今の若い女の子はみな、スカーフを取ってオシャレをしたいと思っている。
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イランの女子高校生。肌を露出しない制服姿。
 田舎ではみんなきっちりとつけているが、都市部ではずり落ちる寸前までスカーフを下げていたりする子も多い。まるで、中学生が学校の校則に逆らっているような感じで、なんだか微笑ましい。
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スカーフの中。オシャレな人は、スカーフの形がキマっている。
どうやら"盛り"が重要らしく、巨大なリボンかクリップを使いカサ増し。
 だが、スカーフ巻き初心者としては、決してスカーフが落ちないという点には感心。彼女たちのスカーフは常に一定の位置でキープされている。私の場合、後頭部に丸みのない"絶壁"なため、気がつけばスポッと頭から外れてしまうのでよく手で押さえたりしていたのだが、それを仲良くなった大学生の女の子たちの前でやっていたら、 「押さえなくったっていいのよ! 気にしないで。取っちゃえばいいのよっ、こんなもの」  と、ひとりが道端で自分のスカーフを取ってしまい、一緒にいた子たちは大ウケ。日本にもいそうなイマドキの女の子なのだ。
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スカーフをマフラー風にするのがオシャレ?
日本でいうところのギャル系か。
 そもそも、ムスリム(イスラム教徒)が露出NGの理由は、男性を欲情させないため。前述の大学生とは別に、電車の中でイラン人の若い子と話していると、「肌を見せないことで女性は守られているのよ」と、おばちゃんにゆるやかにお叱りを受けたこともあったが、オシャレをしたいという願望は万国共通だ。  イラン人はみな自分たちが住んでいる町は大好きだが、イランという国や政治は大嫌い。国の政治の暴走にはもはやあきらめモードなのか、「自分たちの手で変えてやる!」というような心意気の人はおらず、「この国はダメだね」と言う人ばかり。  イランのパスポートは激薄で出入国のスタンプを押すページが2、3ページしかない。これは、最初から「国外に出るな」という設定で作られているように思えてならない。だがこの国は、いつ国民に"見切られて"国外に出ていかれてもおかしくはない。 (後編に続く/取材・文・写真=上浦未来)
イランはこれからどうなるのか―「イスラム大国」の真実 どうなるの? amazon_associate_logo.jpg
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橋下徹大阪市長の懐刀・中田宏前横浜市長を現役横浜市議が実名告発!(後編)

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中田前市長の"実績"についても、
「まやかしだ」と一刀両断の太田市議。
前編はこちらから  自身のスキャンダル報道の真相と地方政治の実態を記した前横浜市長・中田宏氏の著書『政治家の殺し方』(幻冬舎刊)。市長在任中から中田氏を追及してきた太田正孝市議は、同書の内容について「すべてがゴマカシ」と憤る。前編ではスキャンダル報道の"本当の真相"について語ったが、後編に当たる今回は虚飾に彩られた疑惑まみれの中田市政の実相を明らかにする。 ――中田氏は、横浜市長時代に行革で約1兆円もの負債と市職員6,000人の削減を実現したと同書の中で触れていますし、自身も至るところで吹聴しています。今回、大阪市の区政改革のまとめ役に就任するのも、そうした実績を橋下市長が評価してのことだと思うのですが......。 太田 市職員6,000人の削減といっても、定年退職などに伴う自然減と、多くは外郭団体に職員を移しただけで実態は何も変わっていない。別に行革の成果でもなんでもありませんよ。横浜市の借金を1兆円減らしたというのも、そこには"カラクリ"があるんです。 ――そのカラクリというのは? 太田 中田氏がいう「1兆円」とは、市債残高で約4,400億円、横浜市建築助成公社の借入金残高で約3,400億円、横浜市土地開発公社の借入金残高で約1,200億円などをそれぞれ減らしたといったようなことを指しているのでしょうが、これが大きなまやかし。公社関係の借入金は中田氏が減らしたわけではないし、これらの借入金は本来、横浜市の負債にカウントすべきものではないんです。 ――どういうことでしょうか? 太田 横浜市土地開発公社の主な業務は市営の駐車場の管理運営などのほかに、住宅の建築・取得のために横浜市民へ融資を行うことなんですが、要は同公社が金融機関からお金を借りて市民に住宅資金を融資しているわけですよ。つまり、"銀行からの借入金=市民への貸出"だから、純粋な負債ではないわけです。同公社の借入金残高が約3,400億円減ったというのも、それは市民が普通に同公社へ返済しただけのこと。別に中田氏の行革の成果ではありません(笑)。横浜市土地開発公社の借入金にしても土地を購入するためのもので、資産として土地が残っているわけだから、こういうのは負債にはカウントしないんですよ。 ――なるほど、ということは中田氏が純粋に減らした負債というのは市債残高分の約4,400億円なわけですね。 太田 そこも微妙で、実は横浜市には中田市長時代に作った約1,000億円もの"隠れ借金"とも言うべき負債があるんです。 ――自治体が市債を発行しないで借金なんてできるんですか? 太田 ところができるんです。たとえば、横浜市が施設を建てるといったようなとき、通常は市債を発行して資金を調達するのですが、「PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)」という手法を使えば、市債を発行せずに施設を建てることが可能なんです。つまり、市債を発行しないので、見かけ上は横浜市の借金がないことになるんです。 ――PFIというのは、どういう手法なんですか? 太田 施設の整備から資金調達、サービス提供までを民間業者に委ねて、その代償として自治体は"施設提供サービス購入費"を民間業者に支払うという手法です。正しく行われれば自治体にとってコスト削減にもなるし、民間の力を最大限に活用できるのですが、横浜市の場合は極めて不健全な形で行われてきました。というのも、民間業者がノンバンクなどから高金利の資金を調達して建てた施設を横浜市が借り入れるという形を取っていたんです。 ――つまり、結局は横浜市がその高金利を負担しているというわけですね。そうしたノンバンクの金利は市債の金利より当然高いわけですから、起債による借金よりも市の財政を圧迫しますよね。 太田 そういうこと。バランスシート上の借金を減らすために、中田市長時代の横浜市はこんなインチキをやっていたわけです。実態はただの"粉飾決算"ですよ。そう考えると、中田市長時代に減った借金なんて3,000億円程度。それも、「受益者負担」だとかいって以前は無料だった公会堂などの使用に料金を課したり、税収をアップさせたりと別の形で市民からカネを巻き上げていますから、中田氏が称する行革とやらで減らした借金なんてもっと少ないでしょう。 ――じゃあ、橋下市長は中田氏のそうした"まやかしの実績"にダマされちゃったわけですね。 太田 彼は"人たらしの名人"ですからね。横浜の大物財界人から聞いた話なのですが、その財界人と寿司屋で同席した際、中田氏が上着を脱がないのでその財界人が促したところ「私は●さん(財界人のこと)が上着を脱ぐまでは脱ぎません」といったようなことを中田氏は言うんだそうです。その財界人はいたく感激して中田氏を支援するようになったそうで、そんなことぐらいで中田氏を支援するのもどうかと思うけど(笑)、ことほど左様に中田氏は人に取り入るのが上手いわけです。しかし、「開国博Y150」の大失敗でいよいよゴマカシがきかなくなって、任期途中で逃げ出しちゃったわけですよ。 ――25億円もの大赤字を出したY150の大失敗は、どう取り繕っても申し開きができないですもんね。 太田 市議会が参考人招致を求めても、多忙を理由に逃げ回っていますからね。こんな本を書く暇があったら、まずは議会へ出て横浜市民にきちんと説明するべきでしょう。それに中田氏が市長を辞めても、彼が残した"負の遺産"は今でも横浜にダメージを与え続けているんです。 ――どういうことでしょうか? 太田 中田氏は市長時代、自分と親密だった企業や個人にさまざまな便宜供与を図っているんです。たとえば横浜の観光名所の1つであるマリンタワー、あれは横浜市からの委託で地元の不動産会社が管理運営を行って月々のテナント料を横浜市に支払っているのですが、いくらだと思いますか? ――マリンタワーの展望台だけでも年間収入は約2億円だそうですから、月に支払うテナント料も相当なものなのでしょうね。ほかにもレストランやショップがあるわけだから......。 太田 ところがたったの240万円。マリンタワーのテナント料を設定するに当たっては専門家が鑑定したそうなんですが、横浜市の観光に活用されるスペースについては基本的にタダという訳のわからないルールをデッチ上げて格安のテナント料にしちゃったんですよ。2億円も収益を上げている展望台部分のテナント料がタダですからね。事業者の選定についても露骨な"出来レース"だったし、あり得ませんよ! ――そこまで便宜を図ったということは、その不動産会社から中田氏へ対してなんらかの見返りがあったということですよね。 太田 その不動産会社から中田氏へ数百万円の献金があったことが確認されていますが、実態はそんなものじゃきかないと思いますよ。それと市役所の駐車場ですが、なぜか民間業者が管理運営しています。 ――ああ、あれ、市役所の駐車場というのは行政財産なのに、なぜ民間がやっているのか不思議に思っていたんですよ。 太田 民間に委託したほうがコストを削減できるというのが横浜市の言い分ですけどね。あの駐車場は市役所に用がある人は1時間無料なんですが、それ以外のクルマの駐車も認めて駐車料金を取っているわけです。土日なんて市役所が休みだから、バンバン駐車料金が入ってきて業者は大儲け(笑)。あまり感心できるやり方ではないにせよ、それでも業者から委託費が入れば財政の厳しい横浜市にとっては少しでもプラスになるのかなと思っていたのですが、実は横浜市は業者から委託費を取っていない。つまり、業者にタダで市役所の駐車場を貸して商売をやらせているんです。 ――えっ、じゃあ横浜市にとって何のメリットもないじゃないですか!? 太田 だから、これも中田氏が市長時代に行った露骨な便宜供与なんです。こうしたケースは他にもあって、彼が市長を辞めた後も契約上の縛りがあるので今でも続いているんです。結局、中田氏が市長時代にやったことなんて横浜を私物化しただけなんですよ。今度は大阪市政に携わるようですが、私は大阪の人たちが彼に食い物にされないかと非常に危惧しているんです。 (取材・文=牧隆文)
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橋下徹大阪市長の懐刀・中田宏横浜前市長を現役横浜市議が実名告発!(前編)

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中田前市長を厳しく糾弾する現役横浜市議・太田正孝氏。
 橋下徹・大阪市長の肝いりで、大阪市の区政改革のまとめ役に就任することになった前横浜市長の中田宏氏だが、昨年出版した著書『政治家の殺し方』(幻冬舎刊)が話題を呼んでいる。同書は、中田氏が週刊誌の捏造スキャンダルによって「ハレンチ市長」とレッテルを貼られ追い詰められていく過程と、魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)する面妖な地方政治の実態を克明に記したものだ。だが、同書の内容に「すべてがゴマカシ、この本こそ捏造だ!」と反論するのが、横浜市議の太田正孝氏だ。太田氏は、中田氏が市長在任中から市政について市議会で徹底追及してきた市議の1人。そんな太田市議に話を聞いた。 ――同書を一読された感想を聞かせてください。 太田正孝氏(以下、太田) もう、すべてがゴマカシの一言に尽きますね。横浜での失政のほとぼりが冷めたと思って、自分を正当化するためにこんな本を書いたのでしょうが、ウソばかりの内容です。 ――中田氏といえば、何といっても「愛人騒動」ですが(笑)、愛人だったとされるNさんとの民事裁判に全面勝訴して週刊誌の報道は捏造だったことが証明されたと、中田氏は同書の中で主張しています。裁判に勝ったということは、やはり中田氏とNさんは愛人関係になかったということなのでしょうか? 特に、太田さんはNさんが中田氏を告発した記者会見を仕切っていらしたわけですが......。 太田 確かに、その民事裁判は当事者であるNさんが裁判を放棄したということで中田氏の勝訴で結審したのですが、争点は「Nさんが中田氏と愛人関係にあったか否か」ではなかったんです。 ――と言いますと? 太田 Nさんは愛人関係にあった中田氏が結婚の約束をしたのに守らなかった、つまり"結婚詐欺"だということで訴えたわけです。つまり、裁判で争われたのは中田氏が結婚詐欺を行ったかどうかであり、裁判に勝訴して結婚詐欺の事実がなかったと認定されただけで、愛人関係にはなかったという点が法的に証明されたわけじゃないんですよ。 ――結婚詐欺の事実がなかったからといって、愛人関係がなかったというわけではないんですね。でも、中田氏はみなとみらいにある「ヨコハマグランド インターコンチネンタルホテル」でNさんと密会していたという週刊誌報道についても、著書の中で「もし愛人関係にあるなら、そんな目立つ場所で密会するはずがない」などと一笑に付しています。 太田 そんな目立つ場所で密会していたから、多くの人たちに目撃されているんだって(笑)。でも、さすがに報道があってからは、密会場所を「ホテルニューグランド」に替えたようですけどね。これは、私自身がニューグランドの従業員から聞いた話ですから間違いないですよ。 ――そういえば、同書の中には書かれていませんが、太田さんはNさんと一緒に名誉棄損で中田氏に告訴されていたんですよね? 太田 そうそう。中田氏が落選した一昨年の参院選の前だったんだけど、名誉棄損の件で東京地検に「ちょっと話を伺いたい」と呼ばれたんです。前述の民事裁判でNさんは中田氏とやり取りしたメールの文書を証拠として提出していて、中田氏は著書の中で「そんな何年も前のメールなんて本物かどうか証明のしようがない」なんてごまかしていたけれど、そのとき事情を聴かれた検事さんには「あのメールは本物ですから、民事裁判は続行すべきですよ」と言われました。 ――結局、名誉棄損の告訴はどうなったんですか? 太田 どうなったんでしょうか(笑)。まあ、勝ち目がないと思って取り下げたんでしょうね。少なくとも、私は何の咎(とが)も受けていないわけですから。こんな具合に、あの本には自分の都合の悪いことには一切触れずに自己弁護とゴマカシばかりが書かれている。 ――地検では名誉棄損についてだけでなく、ほかのことについてもいろいろと聴かれたそうですね。 太田 地検では数時間ぐらい話を聴かれたんだけど、名誉棄損についてはほんのちょっとで、あとは「横浜市長時代の中田氏にはいろいろと胡散臭い点があるので詳しく教えてくれませんか」ということだったんです。 ――つまり、名誉棄損うんぬんは口実で、地検の目的はほかにあったと? 太田 とにかく、中田氏の動向に強い関心を示していましたね。それで、2時間ぐらい話した後、検事がしばらく中座して戻ってくるなり私にこう言ったんです。「今、中田氏をどうすべきか上席と相談してきたんです」と。 ――それは機会があれば、東京地検に中田氏を検挙しようという意志があったということですか? 太田 私にはそう感じられましたね。 ――同書の中では、横浜市会という地方政界の黒幕的な存在として「A市議」という匿名ですが、太田さんも登場しています。 太田 まあ、必ずしも私と決まっているわけじゃないけどね(笑) ――いやいや、こりゃどこからどう読んでも太田さんですって(笑)。同書によると、A市議というのは法律の抜け道に詳しくて、暴力団や建設業界と癒着して横浜市の利権を漁っている札付きの悪徳市議で、A市議の利権を潰そうとした中田氏を裏で糸を引いてスキャンダルを捏造することによって追い落としたなんて描かれていますが......。A市議というのは、相当のワルですよね(笑) 太田 そこまで悪しざまには書かれていないと思うんだけど(苦笑)、まあ仮に私がA市議であり悪徳市議だとしたならば、中田氏は任期途中で逃げ出さずに私を追放すればいいだけじゃないですか。彼の日頃の勇ましい言動からすると、明らかに矛盾していますよね。ただ、この際だからハッキリ申し上げておきますが、私は暴力団や建設業者との不適切な付き合いなんてまったくないし、金銭を得ていたこともありません。 ――A市議が太田さんだという前提で話を進めますが(笑)、太田さんは前述のNさんの記者会見を仕切っていたじゃないですか。そういう点も、中田氏のスキャンダル報道はA市議の陰謀なんじゃないのかという印象を同書の読者に抱かせますよね。 太田 あれは、Nさんの元カレが私の知人の知り合いだったの。中田氏とNさんとの愛人関係が周囲に表沙汰になるにつれて、中田氏はNさんに冷たく接するようになった。しかし、Nさんとしては当然だけど、「2年も付き合っているのに、このままじゃ遊ばれただけ」と面白くないわけですよ。そこでその知人を介して彼女が中田氏を告発したいということだったので、私が記者会見をセッティングしたわけです。 (後編に続く/取材・文=牧隆文) ●おおた・まさたか 1945年、神奈川県生まれ。1979年の横浜市議選で初当選。通算9期を数える横浜市会最古参の市議でもある。最近では横浜市の放射能対策について議会で厳しく追及するなど、横浜市民の支持を得ている。現在は無所属クラブに籍を置く。
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橋下徹大阪市長の懐刀・中田宏横浜前市長を現役横浜市議が実名告発!(前編)

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中田前市長を厳しく糾弾する現役横浜市議・太田正孝氏。
 橋下徹・大阪市長の肝いりで、大阪市の区政改革のまとめ役に就任することになった前横浜市長の中田宏氏だが、昨年出版した著書『政治家の殺し方』(幻冬舎刊)が話題を呼んでいる。同書は、中田氏が週刊誌の捏造スキャンダルによって「ハレンチ市長」とレッテルを貼られ追い詰められていく過程と、魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)する面妖な地方政治の実態を克明に記したものだ。だが、同書の内容に「すべてがゴマカシ、この本こそ捏造だ!」と反論するのが、横浜市議の太田正孝氏だ。太田氏は、中田氏が市長在任中から市政について市議会で徹底追及してきた市議の1人。そんな太田市議に話を聞いた。 ――同書を一読された感想を聞かせてください。 太田正孝氏(以下、太田) もう、すべてがゴマカシの一言に尽きますね。横浜での失政のほとぼりが冷めたと思って、自分を正当化するためにこんな本を書いたのでしょうが、ウソばかりの内容です。 ――中田氏といえば、何といっても「愛人騒動」ですが(笑)、愛人だったとされるNさんとの民事裁判に全面勝訴して週刊誌の報道は捏造だったことが証明されたと、中田氏は同書の中で主張しています。裁判に勝ったということは、やはり中田氏とNさんは愛人関係になかったということなのでしょうか? 特に、太田さんはNさんが中田氏を告発した記者会見を仕切っていらしたわけですが......。 太田 確かに、その民事裁判は当事者であるNさんが裁判を放棄したということで中田氏の勝訴で結審したのですが、争点は「Nさんが中田氏と愛人関係にあったか否か」ではなかったんです。 ――と言いますと? 太田 Nさんは愛人関係にあった中田氏が結婚の約束をしたのに守らなかった、つまり"結婚詐欺"だということで訴えたわけです。つまり、裁判で争われたのは中田氏が結婚詐欺を行ったかどうかであり、裁判に勝訴して結婚詐欺の事実がなかったと認定されただけで、愛人関係にはなかったという点が法的に証明されたわけじゃないんですよ。 ――結婚詐欺の事実がなかったからといって、愛人関係がなかったというわけではないんですね。でも、中田氏はみなとみらいにある「ヨコハマグランド インターコンチネンタルホテル」でNさんと密会していたという週刊誌報道についても、著書の中で「もし愛人関係にあるなら、そんな目立つ場所で密会するはずがない」などと一笑に付しています。 太田 そんな目立つ場所で密会していたから、多くの人たちに目撃されているんだって(笑)。でも、さすがに報道があってからは、密会場所を「ホテルニューグランド」に替えたようですけどね。これは、私自身がニューグランドの従業員から聞いた話ですから間違いないですよ。 ――そういえば、同書の中には書かれていませんが、太田さんはNさんと一緒に名誉棄損で中田氏に告訴されていたんですよね? 太田 そうそう。中田氏が落選した一昨年の参院選の前だったんだけど、名誉棄損の件で東京地検に「ちょっと話を伺いたい」と呼ばれたんです。前述の民事裁判でNさんは中田氏とやり取りしたメールの文書を証拠として提出していて、中田氏は著書の中で「そんな何年も前のメールなんて本物かどうか証明のしようがない」なんてごまかしていたけれど、そのとき事情を聴かれた検事さんには「あのメールは本物ですから、民事裁判は続行すべきですよ」と言われました。 ――結局、名誉棄損の告訴はどうなったんですか? 太田 どうなったんでしょうか(笑)。まあ、勝ち目がないと思って取り下げたんでしょうね。少なくとも、私は何の咎(とが)も受けていないわけですから。こんな具合に、あの本には自分の都合の悪いことには一切触れずに自己弁護とゴマカシばかりが書かれている。 ――地検では名誉棄損についてだけでなく、ほかのことについてもいろいろと聴かれたそうですね。 太田 地検では数時間ぐらい話を聴かれたんだけど、名誉棄損についてはほんのちょっとで、あとは「横浜市長時代の中田氏にはいろいろと胡散臭い点があるので詳しく教えてくれませんか」ということだったんです。 ――つまり、名誉棄損うんぬんは口実で、地検の目的はほかにあったと? 太田 とにかく、中田氏の動向に強い関心を示していましたね。それで、2時間ぐらい話した後、検事がしばらく中座して戻ってくるなり私にこう言ったんです。「今、中田氏をどうすべきか上席と相談してきたんです」と。 ――それは機会があれば、東京地検に中田氏を検挙しようという意志があったということですか? 太田 私にはそう感じられましたね。 ――同書の中では、横浜市会という地方政界の黒幕的な存在として「A市議」という匿名ですが、太田さんも登場しています。 太田 まあ、必ずしも私と決まっているわけじゃないけどね(笑) ――いやいや、こりゃどこからどう読んでも太田さんですって(笑)。同書によると、A市議というのは法律の抜け道に詳しくて、暴力団や建設業界と癒着して横浜市の利権を漁っている札付きの悪徳市議で、A市議の利権を潰そうとした中田氏を裏で糸を引いてスキャンダルを捏造することによって追い落としたなんて描かれていますが......。A市議というのは、相当のワルですよね(笑) 太田 そこまで悪しざまには書かれていないと思うんだけど(苦笑)、まあ仮に私がA市議であり悪徳市議だとしたならば、中田氏は任期途中で逃げ出さずに私を追放すればいいだけじゃないですか。彼の日頃の勇ましい言動からすると、明らかに矛盾していますよね。ただ、この際だからハッキリ申し上げておきますが、私は暴力団や建設業者との不適切な付き合いなんてまったくないし、金銭を得ていたこともありません。 ――A市議が太田さんだという前提で話を進めますが(笑)、太田さんは前述のNさんの記者会見を仕切っていたじゃないですか。そういう点も、中田氏のスキャンダル報道はA市議の陰謀なんじゃないのかという印象を同書の読者に抱かせますよね。 太田 あれは、Nさんの元カレが私の知人の知り合いだったの。中田氏とNさんとの愛人関係が周囲に表沙汰になるにつれて、中田氏はNさんに冷たく接するようになった。しかし、Nさんとしては当然だけど、「2年も付き合っているのに、このままじゃ遊ばれただけ」と面白くないわけですよ。そこでその知人を介して彼女が中田氏を告発したいということだったので、私が記者会見をセッティングしたわけです。 (後編に続く/取材・文=牧隆文) ●おおた・まさたか 1945年、神奈川県生まれ。1979年の横浜市議選で初当選。通算9期を数える横浜市会最古参の市議でもある。最近では横浜市の放射能対策について議会で厳しく追及するなど、横浜市民の支持を得ている。現在は無所属クラブに籍を置く。
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西新宿・早朝の凶行 芸能界に太いパイプを持つ被害者が襲撃された現場と背景ーー

shinjukukim.jpg 何かが狂ってしまった現代社会。毎日のようにニュースに流れる凶悪事件は尽きることを知らない。そして、いつしか人々はすべてを忘れ去り、同じ過ちを繰り返してゆく......。数多くある事件のなかでも、未だ犯人・被疑者の捕まっていない"未解決事件"を追う犯罪糾弾コラム。  第19回 西新宿五丁目・集団リンチ殺人事件 (2008年3月)  90年代以降の再開発により、高層ビルが林立する西新宿。1日の乗降客数が日本で最も多い新宿駅から、青梅街道を西に車で10分ほど移動すると、十二社通りを境としてガラリと雰囲気が変わり、昔ながらの住宅地域が現れるのをご存じだろうか。西新宿五丁目──新宿方向に望む高層ビルが無ければ、昭和に逆戻りしたかと錯覚してしまいそうな景観の街並みである。付近を流れる神田川にかかった淀橋を渡れば、すぐに中野区という位置関係だ。  2008年3月16日午前4時過ぎ、この場所で韓国食材輸入業の金村剛弘さん(当時32歳)が数人の男に集団で暴行を受け、5日後の3月21日に脳挫傷のため死亡した。狭い路地に金村さんを追い込み、金属バットで執拗に殴打するという、あまりに残忍な犯行だった。  襲撃された金村さんは普段から熱心にスポーツジムに通い、鍛え上げられた肉体を持っていた人物である。まさか、暴行事件の被害者になるとは、誰も想像ができないような、極めて屈強な体つきだった。仕事面では父親の会社で韓国食材の輸入を手がけるほか、新宿歌舞伎町を中心にビルを複数所有し、女性専用サウナも経営する"ヤリ手"として知られていた。そして、何より金村さんが大勢の芸能人と親交があったことが、雑誌やインターネットなどのメディアの関心を誘い、それを目にした読者やユーザーから大きな注目を集めた。  事実、金村さんの芸能界の交友関係は幅広い。90年代後半にアイドルとして絶大な人気を誇り、現在は女優として活躍する「H」の元夫で、ファッションデザイナーとしても活躍する「O」は、金村さんと大親友の間柄。また、大河ドラマの主役を演じた「M」と先に離婚が決定した俳優の「T」は、金村さんを兄貴分として慕っていた。その関係を裏付けるように、「O」のブログには、一緒にスポーツジムに通う金村さんの写真が掲載されていたのだ(現在ブログは閉鎖)。そのほかにも多くの芸能関係者との交友があったといわれている。  事件当日の現場を振り返ってみよう。都心でもまだ寒さが残る3月の早朝4時15分頃。十二社通りから西新宿五丁目に入った狭い路地から、「殺せ、殺せ!」、「逃がすな!!」という怒声が聞こえるのを多くの近隣住民が聞いている。目撃者によると、犯人は目出し帽を被った十数人の男たち。取り囲まれ、泣きながら「助けて下さい!」「ごめんなさい!」と許しを請う金村さんを、男らは金属バットでメッタ打ちにし、近くに停車していた複数台の車で逃走したという。病院に搬送された際、金村さんは全身血まみれで、すでに意識は途絶えていた。惨劇の起こった場所は金村さんの自宅近くで、男らは金村さんが現れるのを待ちぶせ、異変に気付いて逃げる金村さんを300メートル以上も追いかけ回して集団で暴行に及んだのである。  実際に金村さんが襲撃された西新宿五丁目を訪れてみてまず驚いたのは、犯行現場の路地があまりに狭いことだ。この事実を知るまで、屈強な金村さんなら、相手が武器を持っていたとしても、「逃げる程度なら可能だったのでは?」と疑問を持っていたが、複数の男に囲まれれば、そんなスペースは残されていなかっただろう。また、朝といえども3月の4時は真っ暗である。細い路地が入り組んでいて、仮に土地を熟知していても、焦って走れば袋小路に行く手を阻まれる可能性は高い。さらに、現場からほど近い十二社通りは、人通りもそれほど多くなく、犯人たちにとっては逃走しやすい場所でもあった。  どうして金村さんはこのような凶行に遭ってしまったのか? 屈強な肉体を持ち、少年時代からケンカも負け知らずだった金村さんは、実はかつて新宿界隈での伝説的なチーマーだった。警察の調べによれば、金村さんは地元の暴力団関係者や不良グループにも密接な関係があり、別地域のグループと対立・抗争を繰り返していたという。今回の事件は、金村さんに恨みを持つ同種のグループの犯行として捜査が進められたが、これほど大がかりなリンチ殺人事件であるにもかかわらず、犯人の足取りは未だ掴めないままだ。さらに、2010年に発生した歌舞伎役者「I」の暴行事件とも関わりがあると一部で報道されるなど、事件の闇は深まるばかりである。  金村さんが襲撃された現場には、当時の羽振りの良さを想像させる、豪華な花束が置かれていた。華やかな世界の暗黒面を象徴するかのような、この事件が解決しない限り、金村さんの友人や近親者に安息の日々は訪れないだろう。それは、芸能界とその闇の間に股をかける「I」のような人間たちにも、やはり同じことである。 (取材・文=神尾啓子)
未解決事件ファイル 真犯人に告ぐ 告ぐ。 amazon_associate_logo.jpg
バックナンバー 【第18回】学校からの帰り道、狂気の刃物男とのすれ違いが青年の夢を絶った...... 【第17回】10年前、白昼の繁華街で消えた"美人"女子高生 背景に複数の「疑問点」が浮上......!! 【第16回】飲みかけのココアを残し、消えた少女......奇妙な「怪文書」が示唆する事件の真相とは!? 【第15回】 胸と内臓を刃物でえぐり取られ......切断された島根の女子大生殺害事件から1年 【第14回】 "栃木女児殺害事件"発生から5年 7歳少女の顔を執拗に殴打し、胸を12度も刺した犯人の残忍性 【第13回】 15歳ハーフ美少女が夏祭りの夜に失踪 3日後、見知らぬ町で変わり果てた姿に...... 【第12回】 "白昼の惨殺劇"母親が刺殺される一部始終をトイレの中で聞いていた娘...... 【第11回】 全裸発見の茨城大女子学生絞殺遺体 遺留品から検出の"男性2人分のDNA"の謎 【第10回】 愛知・蟹江町の"眼球破裂"通り魔事件 昨年5月「母子3人殺傷事件」と同一犯か!? 【第9回】「逮捕で迷宮入り!? "時効延長"直前に起きた「愛知母子4人殺害・放火事件」 【第8回】「上智大生殺人放火事件」時効まで残りわずか! 昨年10月の「千葉大生殺害放火事件」との関連は!? 【第7回】全国有数の"失踪事件"多発地域で女性記者が姿を消してから11年 【第6回】見知らぬ男が家に侵入して17歳長女を刺殺  顔を見られた犯人は妹と祖母を追い回し...... 【第5回】被害者とその親友──2人の"佐藤梢"と消えた男のリアル・ミステリー 【第4回】 ストーカー行為を働いた挙げ句にターゲット女性の家族を惨殺して逃亡 【第3回】 事態急転!「リンゼイさん殺害事件」市橋達也整形術前後の写真入手で逮捕秒読み!? 【第2回】大量の遺留品が招いた初動捜査の混乱 果たしてDNAに人格は認められるか? 【第1回】「おい、小池!」で日本中に知られた男は本当に名前を呼ばれる日を待ち続けている

「住民票を移すか、子どもを関東に戻すか」原発事故 自主避難家族に迫られる理不尽な選択

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この"外側"の人たちの悲劇
 東京電力福島第1原発事故によって、国が指定した区域外から九州や沖縄に自主避難した人々の間に、現地の教育委員会からの"ある通達"が困惑をもたらしている。  これまでは特例措置として、自主避難した家族の児童については住民票を移動することなく現地の学校への通学が認められてきたが、来年度以降はこの"特例"が認められないというのだ。「だったら、住民票を移せばいいだけではないか」と指摘されそうだが、自主避難している母子にとってはそう単純な話ではない。場合によっては、避難先から追い出されるか、関東で離れて暮らす夫との離婚か、の"二者択一"を迫られるケースすらあり得るのだ。  法律上では義務教育の場合、転居を伴う転校の際には住民票の移動が必要。各地の教育委員会によって毎年編纂される学齢簿も住民票をベースに作られるため、転校と住民登録は一体のものだ。自主避難の児童については一時的な措置として、現地への住民登録なしでの通学が認められているが、それ以前に自主避難の母子の多くは住民票を移したがらないという。なぜか。小学生の息子を連れて那覇市に自主避難している横浜市の40代主婦は、こう事情を明かす。 「指定区域外からの自主避難ということで、『避難なんて大げさ』と夫や義父母などの周囲から必ずしも理解があるわけではないんです。避難している多くのママたちは周囲に必死で頼み込んだり、反対を押し切ったりしながら、肩身の狭い思いをして何とかここ(沖縄)で暮らしているのが実情。そんな状態なのに住民票を移したらどうなると思いますか。夫から『そんなにオレと離婚したいのか!』などとなじられたりして、たださえギクシャクしている夫婦仲がさらに険悪になってしまいかねません。教育委員会は、そんな自主避難者たちの事情をまったく分かっていないんです」  実際に、離婚に至ってしまったケースもある。東京から熊本市へ避難して小学生の娘と雇用促進住宅で暮らす30代主婦は、「もともと避難に大反対だった都内で暮らす夫から『住民票を移したら離婚だぞ!』と言われていたのですが、住民票を移さないと住宅から追い出されると匂わされ、教育委員会から半ば脅されるように泣く泣く住民登録したんです。その結果、離婚ということに。子どもの健康を守ることを第一に考えたあげくがこれですからね、本当に原発が憎いです」と憤る。  周囲の猛反対を押し切っての自主疎開に、夫が妻の自分に対する愛情を疑うという感情的なしこりもさることながら、住民票を移せない現実的な事情を抱える母子も存在する。前出の横浜市の主婦もその1人だ。「わたしも夫や姑の反対を押し切って、家出同然に避難したんです。もし、居場所が知られると無理矢理連れ戻されてしまうので、住民票の移動は本当に困るんです」と途方に暮れる。  法律では転居を伴う転校の際には住民票を移動しなければならないと前述したが、もちろん例外もある。DVやストーカー被害などに遭った児童については、当事者と学校、教育委員会などとの話し合いによって住民票を移動しなくても転校が認められるケースもある。自主避難についても、これに準ずると考えてもいいのではないか。 「わたしもそう思っていたんですけど、12月の初旬に教育委員会から手紙が届いて、来年3月末までに住民登録して正式な転校手続きを取るようにと一方的に通告してきたんです。電話で教育委員会に問い合わせても『このままだと4月以降、今の学校に通えなくなりますからね。いいですか、わかりましたね』と非常に高圧的な対応。でも、よくよく話を聞いてみると、3月末までに自主避難中の児童を元の居住地に戻すよう、どうやら国から教育委員会に指示があったようなんです。いずれにせよ、避難者へ事前に何の相談もなく、住民登録をしなければ沖縄から出ていけというのは乱暴だし理不尽すぎます」(前出・横浜市の主婦)  こうした自主避難者たちの憤りに対して、教育委員会はどう答えるのか。那覇市教育委員会に話を聞いた。 「指定区域から避難者と区域外の自主避難者は明確に分けて、後者に関して自主避難を継続する場合には正式な転校手続きを踏まえるように、という文部科学省からの通達が11月の終わりにありました。そうしたこともありますし、やはり法律上でも本来転校には住民登録が必要ですので、自主避難の方々に通知させていただいたわけです。住民登録されていないと、教育委員会としても児童のみなさんの居住地の把握が困難ですからね。もちろん、それぞれ事情がおありでしょうから、個別に相談に乗らせていただくことはあります。ただし、自主避難だからという理由だけで、住民登録なしの通学を認めることはできません」(那覇市教育委員会学務課学事グループ)  「法律で決まっていることだし、自分たちの都合で避難しているわけだから、たかが住民登録のことで文句を言うのは身勝手だとは分かっているんですけどね......」と東京から沖縄市に疎開中の20代主婦は自嘲するが、それは違う。そもそも、自主避難者たちは物見遊山で九州や沖縄へやって来ているのではない。放射能被害から子どもたちを守るために、周囲との軋轢を引き起こしながらもやむにやまれず南の地に避難しているのだ。  確かに行政側の立場からすれば、実際の居住地と住民票の住所が異なるのは福祉手当の支給などの面で多少の不都合もあるかもしれない。しかし、那覇市に居住する自主避難中の児童はたかだか60人程度である。事情を考えれば、大した問題ではないはずだ。那覇市教育委員会も「すぐに行政面で支障があるわけではないのですが......」と認めている。文科省からの指示がなかったら特例措置を継続していたか、という問いにも「まあ、そうでしょうね(笑)」と苦笑する。つまり、これまでの特例措置を唐突に打ち切る必然性は何もないのだ。加害者である東電が本来は破綻処理されるべきなのにさまざまな特例が認められ、あまつさえ存続のために兆単位の税金が注ぎ込まれているというのに、被害者である自主避難者らが法律を盾に住民登録というささやかな特例すら認められないのは、どう考えても理不尽であるし不平等だろう。  12月16日、野田佳彦首相は原発事故の「収束」を宣言した。これには多くの人々が違和感を覚えたが、そこには強引にでも事故を収束させたいという政府の思惑が透けて見える。そして、それは「自主避難を続けたければ住民票を移せ」という文科省からの指示にも同じことが言えないだろうか。避難者らが住民票を移さずに自主避難を断念して関東の自宅へ戻るもよし、住民票を移せば外形上は通常の転校と変わらなくなるので避難を継続してもよし。いずれにせよ、自主避難という政府にとって"不都合な事実"が消えてしまう――。そんなことを勘繰ってしまうのは、うがちすぎだろうか。 (文=牧隆文)
報道写真全記録2011.3.11-4.11 東日本大震災 来年も続きます。 amazon_associate_logo.jpg
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「世襲制を批判する声も……」 金正日同志の死に"親友"中国人民の反応は!?

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正日死亡を伝える中国紙
「金正日総書記は朝鮮人民の偉大な指導者で、中国人民の親友でもあり、朝鮮の社会主義事業の発展と中朝の友好関係の発展に大きく貢献した」  これは、中国外交部の報道官が、金正日の逝去に際し発表した談話である。改革開放を推し進め、北朝鮮とは全く違う道を歩んできた中国だが、ともに社会主義を標榜する以上、北朝鮮とはやはり同志という立場なのだ。  しかしこれは、人民の声を代表するものではない。  金正日の死亡が報じられた際、たまたま中国広東省を取材中だった筆者は、人民たちの声を拾ってみた。  広州市のカラオケスナックで働く28歳の女性は、 「中国にも官二代とか富二代(官僚や富豪の二世)っていう、親の七光りで威張り散らしている連中がたくさんいるけど、金正日はその最たるもの」  と、同国の3代にもわたる世襲制を痛烈に批判。  また、広州市と深セン市を結ぶ高速鉄道に乗車していた35歳の男性も「中国に来るたびに金や食料をせびっていた印象しかない」と話すにとどまった。  さらに、深セン市内の40代のタクシードライバーは、「さんざんうまいもの食っていい女抱いたのだから、死んでも悔いはなかっただろうな!」  と、嘲笑するばかり。結局、金正日を同志と呼ぶ人民に出会うことはなかった。  一方、中国版Twitter「微博」では、「毛沢東主席の同志である金日成の息子なのだから、金正日は我々人民にとって同志も同然。哀悼する」など、金正日の死を惜しむ声も聞こえてくる。また、中国人船長による韓国海洋警備員刺殺事件で中韓の対立が深まっていた時期だったこともあり、「金正恩大将同志に、南韓を成敗してもらうようお願い申し上げます!」などといった過激な発言も書き込まれていた。しかし、やはり大半を占めるのは、北朝鮮の政治体制や、カメラの前で一斉に泣き崩れる北朝鮮人民に異議を唱える書き込みだ。  数少ない友達であったはずの中国人民にも見限られた、金一族率いる北朝鮮。国際社会での孤立が続けば、どんな暴挙に出るか分からない!? (文=高田信人)
マンガ 金正日 最期の日 終焉なのか、序章なのか。 amazon_associate_logo.jpg
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正日死亡を伝える中国紙
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