今夜最終回!『僕らは奇跡でできている』要潤“ブチ切れ”の先に見えた、主人公に偏らない物語の“公平性”

 いよいよ今夜最終回を迎える『僕らは奇跡でできている』(フジテレビ系)。4日に放送された第9話の視聴率は、6.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と前回より0.4ポイントアップしたものの、初回の7.6%を更新することはできず……。

 とはいえ、数字のわりに視聴者の満足度が高いのがこの作品。残る1話で挽回となるか、今夜放送の最終回を前に、ある大事件が起きた9話を振り返っていきたいと思います。

(前回までのレビューはこちらから)

■最後の最後に事件が……

 気まずくなっていた家政婦の山田さん(戸田恵子)との関係もすっかり元に戻った相河(高橋)。ある日、女子生徒の青山琴音(矢作穂香)から、「私、相河先生と結婚したいんです。私のこと、どう思いますか?」と、“恋の”進路相談を受けます。歯科医である水本先生(榮倉奈々)との仲を疑う彼女は、相河は水本先生のことが好きなんじゃないかと指摘。そんなこと考えもしていなかった相河は、山田さんに料理を習いにやってきた水本先生本人に、「(水本先生のことが好きかどうか)どう思います?」と険しい表情をしながら、自分の気持ちを問います。

 その後、水本先生のクリニックに、青山がやってきました。「相河先生のことどう思っているんですか?」「その気がないなら相河先生に近づかないでください」と、すっかり戦闘スイッチが入った青山に圧倒される水本先生。歯科医のあかり(トリンドル玲奈)や祥子(玄覺悠子)は、2人を冷やかし気味に、陰から見守っていました。

 そんな中、水本先生の自宅にヤモリが出現。彼氏の雅也(和田琢磨)とは別れたばかりで他に頼れる人もいない水本先生は、渋々相河を呼ぶことに。部屋にゴキブリがいると聞き、思わず相河に抱きついてしまった水本先生は、どんどん相河を意識するようになります。

 一方、樫野木先生(要潤)に頼まれ、娘の香澄ちゃん(矢崎由紗)を大学に連れてきた相河は、樫野木先生の用事が済むまでの間、香澄ちゃんに過去のフィールドワークでの思い出話をしているうちに水本先生への気持ちに気づき、とある日の朝、先生を待ち伏せして言います。

「僕は、水本先生のことが……おもしろいって思ってます」

 その後、大学ではまだ諦めのついていない様子の青山に、「私のこと、女として、結婚対象としてどう思っていますか?」と聞かれた相河は、「興味ありません。ごめんなさい」とキッパリ彼女を振るのですが、その後、大学の研究室で事件が起こります。

 香澄ちゃんからの電話で、元妻が恋人と再婚したがっていることや、家族を思ってフィールドワークをやめたはずなのに、妻はフィールドワークをしている自分が好きだったことを知った樫野木先生。苛立ちからか、「香澄さんが昔の樫野木先生の写真見せてくれました。僕も昔フィールドワークやってるとき、髪やヒゲが伸びてるときありました」と楽しげな相河に、思わず「だまれ!」と暴言を浴びせてしまいます。

 それでも樫野木先生の気持ちはおさまることなく、

「相河先生みたいになれたら幸せだよね。できないことがあっても支えてくれる人がいて、好きなことだけやってられて」

「子供はキラキラした大人に憧れるけど、キラキラした大人なんてほんの一握りしかなれない。なのに学生たちも相河先生みたいになりたがってる。なれなかったらどうすんの? 責任取れんの?」

「相河先生はここだからいられるんだよ。よそじゃやっていけない。それわかってる?」

「迷惑なんだよ。ここから消えてほしい」

 と暴言を連発。目にいっぱい涙を溜めた相河は、足早に研究室を後にします。

■簡単に「好き」はとは言わない“らしさ”

「水本先生と一緒にいると感動や発見があります。でも、嫌な気持ちになったときもありました。いろんな気持ちになります」

 と、フィールドワークと同じように、「おもしろい」と水本先生への気持ちを表現した相河。2人がそう簡単にくっつかないことは、視聴者のほとんどが予想していたはずですが、次回予告で2人のラブ展開をさんざん煽っていただけに、「好きじゃないんかーい!」「それ面白いちゃう、恋や!」とツッコミの声が。

 ただ、青山には「興味ありません」とバッサリ言い切っているところを見ると、きっと水本先生には興味があるからこそ「おもしろい」と言ったんだろうし、目に見えない人の気持ちに言葉をつけた人は偉いと言っていた相河だけに、彼なりの愛情表現が「おもしろい」だっただけなんだと思います。この、簡単に「好き」とか言わないところが相河らしさであり、この作品らしい部分でもあるなあとほっこりしました。

 まあ、相河だから成り立つわけで、「おもしろい」とうれしそうに言われて颯爽と立ち去られたら、水本先生のように、ポカーンとなるのが普通のリアクションだとは思いますが……。それにしても、相河を意識しまくってどぎまぎする榮倉奈々ちゃん、とってもかわいかったです。

 

■“総まとめ”的な要潤の大爆発

 さて、そこで終わるのかと思いきや、今話にはラストにとんだ爆弾が仕込まれていました。最初は悪者キャラかと思われていたものの、このごろはなんだかんだ言いつつ相河のフォローをしてくれていた樫野木先生のブチ切れ事件です。

 このドラマではこれまで、周りの子どもたちとはちょっと違う息子・虹一くん(川口和空)を受け止めることができなかった母・涼子(松本若菜)だったり、一度は息子(相河)を捨て、11年後に家政婦として戻ってきた山田さんだったり、“完璧ではない”人たちを否定することなく、相河が疑問を投げかけることでその人にとって大切なことは何なのかを気づかせてきました。

 それがあったからこそ、樫野木先生が相河に放った言葉がより冷酷で残酷なものに聞こえてきたわけです。

 また、家族のためにフィールドワークをやめた樫野木先生は、両親のためにこんにゃく農家を継ごうか迷っている男子学生・新庄(西畑大吾/関西ジャニーズJr.)や、親から受け継いだクリニックを守ろうと必死になっている水本先生でもあるわけで、言わば、これまでのまとめ的存在。

 それに、樫野木先生が家族のために自分の夢を犠牲にしたように、何かを犠牲にしなくてはならず、相河のように生きたくても生きられない人が世の中のほとんどでしょう。

 そんな人からすれば、絶対的理解者であるおじいちゃん(田中泯)や鮫島教授(小林薫)に守られながら、好きなことをして楽しそうな姿はうらやましく見えて当然(もちろん、相河も幼い頃に自分と向き合い、苦しさを乗り越えてきたからこそ今があるわけで、決して楽をしてきたわけではありませんが……)。

 確かに、八つ当たり的に相河に暴言を浴びせたことは間違っていましたが、ネット上の視聴者たちの反応を見ると、「気持ちわかるんだよなぁ。やりたいことだけやって好きに楽しく生きている人は眩しく見える」「八つ当たりからの発言だったかもだけど、一理あるよねぇ……」「自己犠牲して頑張っている自分が、何故こんな目にって思っちゃうよね」と、意外にも樫野木先生に理解を示す声が多数見受けられました。

 そこからもわかるように、このドラマは、さまざまな問題を、主人公視点とその周りからの視点で丁寧に描くことで、どちらか一方に偏らず公平に、多くの人の心に届けようとしている制作陣の思いが、今回の9話から感じられました。

 ラストで鮫島教授が、相河に暴言を浴びせた樫野木先生を諭すような口調で叱っていましたが、ここまで誰かを否定してこなかったこのドラマ、ラスト1話で樫野木先生にどうやって大切なことを気づかせるのでしょうか。

 

■残る伏線は……

 そんな今話のタイトルは、「楽しかった日々の終わり」。次回予告で相河は大学を辞めると宣言していただけに、相河にとって楽しかった大学での日々は、これで終わってしまうのでしょうか……。

 また、8話のラストに挿し込まれた水泳シーンは、てっきり一生ファンへのサービスかと思っていたのですが、水泳を習いだしたのは何か理由があるようだし、急にロシア語の勉強を始めたのも謎です。実はコンチューバーだった沼袋先生(児嶋一哉)と、それを知ってしまった新庄くんにも注目しつつ、今夜の最終回を見届けたいと思います。

(文=どらまっ子TAROちゃん)

『下町ロケット』第9話 変人・軽部に父性を目覚めさせた意外な相手は!? 時代劇とSFとが融合

 前シリーズに比べて視聴率が伸び悩んでいる阿部寛主演ドラマ『下町ロケット』(TBS系)ですが、かなりユニークな状況となってきました。石原プロのイケメン俳優だった徳重聡が変人キャラ・軽部を演じていることでも話題ですが、ここにきて軽部が人間らしい表情を見せるようになってきたのです。軽部を変えたのは、いったい誰だったのでしょうか? さっそく『下町ロケット ヤタガラス』第9話を振り返りたいと思います。

(前回までのレビューはこちらから)

 第9話は杉良太郎演じる「帝国重工」の藤間社長が大活躍です。経営不振から引退がささやかれていた藤間社長ですが、次期社長と目されている重役の的場(神田正輝)が完成させた農業用大型ロボット「アルファ1」がデモンストレーションに大失敗してしまったことで俄然ヤル気が蘇りました。的場に任せては、「帝国重工」には未来はないと確信したのです。一方、目の前で「アルファ1」が大横転した現場を見てしまった的場は、急に白髪が増えたようです。

 的場の太鼓持ち・奥沢部長役の福澤朗は演技がビミョーなことが以前から気になっていましたが、今回はまた違った意味で気になりました。「アルファ1」の問題点は、走行システムを開発した野木教授(森崎博之)側にあると主張する奥沢は、異議を唱える財前部長(吉川晃司)をギョロ目で睨みつけます。落ち着きなくやたらに目をギョロギョロさせるメガネ姿が、ある人物を連想させました。佐村河内ゴーストライター事件で有名になった新垣隆さんです。視聴者の注目を惹く表情の作り方など、参考にしているのかもしれません。新垣さんはクラシック音楽業界の闇を暴露することで一躍ブレイクしましたが、俳優・福澤朗にブレイクする日は果たして来るのでしょうか。

 

■杉良太郎の背中に刻まれた桜吹雪は消えてなかった!

 話を進めましょう。「アルファ1」の問題箇所を調べるため、佃社長(阿部寛)率いる「佃製作所」が協力することになりました。野木教授の走行システムを搭載した「佃製作所」の試作ロボットで「アルファ1」と同じような走行テストを行い、これで問題がなければ野木教授のシステムに不備はないことになります。

「よし、行け!」「がんばれ!」と立花(竹内涼真)とアキ(朝倉あき)は走行テストを始めた試作ロボットに声援を送ります。いつもはクールに後ろのほうで腕組みをしている軽部(徳重聡)ですが、この日は立花やアキと一緒になって「がんばれ~!!」と前のめりになってコブシを震わせています。今まで見せたことのない軽部の熱い姿がそこにはありました。

 プログラムに従って動くロボットを励ますなんて、意味がないことです。これまでの軽部なら、熱くなる立花たちを冷笑していたことでしょう。でも、軽部が開発に関わったトランスミッションを内蔵した試作ロボットゆえに、他人事ではありません。生まれたてのロボットに対して、軽部に父性的な愛情がいつしか芽生えていたのです。平気で嘘をついたり、他人の顔色をうかがう人間よりも、無口だけど正直なロボットに軽部は愛情を抱いているのかもしれません。ロボットを育てることで、コミュ障っぽかった軽部が人間らしくなっていく。不思議な感慨が湧いてくるシーンでした。

 走行テストに無事成功した「佃製作所」の試作ロボットですが、それでも的場と奥沢は「帝国重工」側に非があることを頑なに認めようとはしません。そこに颯爽と現れたのが、藤間社長です。このときの杉良太郎は時代劇スターとしてのオーラ全開でした。

 失敗の責任を野木教授ひとりに押しつけようとする的場と奥沢を、藤間社長は厳しく叱責します。「自分たちが世の中の中心だと思っている連中に、新規事業ができるはずがない」と一刀両断。胸がすくような大岡裁きです。いや違った、杉良太郎の当たり役だった時代劇『遠山の金さん』(テレビ朝日系)の世界でした。スーツ姿の藤間社長の背中には、きっと桜吹雪が咲き乱れていたことでしょう。

■親子鷹の夢は、遥か火星を目指すことに

 第9話は佃利菜(土屋太鳳)と佃航平との父子関係もクローズアップされました。祖母(倍賞美津子)が詩吟の練習に使っている古いカセットレコーダーを利菜が修理していたところ、会社から帰ってきた父・航平も手伝うことに。父子で一緒に修理に取り組む姿は往年の「日曜劇場」を思わせるものがありました。幼い頃の利菜は、航平が映らなくなったテレビやラジオを直してしまう様子を見て「パパは魔法が使えるんだ」と感動し、彼女自身も理系の道へと進むことになったのです。仕事に追われる佃航平にとっては、娘と話す思い出話は格別なものがありました。

「帝国重工」のロケット用バルブの開発リーダーに抜擢された今の利菜にとって、「佃製作所」の社長である佃航平はライバルでもあります。利菜がありったけの情熱を注いで開発した自社バルブは性能試験の結果、見事に合格ラインをクリアしますが、「佃製作所」の改良バルブはさらにそれを上回る数値を記録します。利菜は完敗を喫します。でも、利菜がエンジニアとしての成長を諦めない限り、いつかは父・佃航平に引導を渡す日が訪れることでしょう。

 バルブ対決を終えた佃父子は自宅前の川の堤防に横になり、頭上に広がる夜空を眺めます。淀んだ東京の夜空でも、火星は赤く輝いています。いつの日か利菜が開発した新型バルブを搭載したロケットが、火星まで到着することになるかもしれません。理系親子ならではの、大きな大きな夢を共有する佃航平と利菜でした。

 いつもはストーリー展開が早すぎて、ドラマの描き方が雑な『下町ロケット』ですが、第9話はかなり上質な出来だったと思います。杉良太郎と吉川晃司が登場する「帝国重工」の場面は完全に時代劇の世界ですし、変人・軽部が農業用ロボットに愛情の眼差しを注ぐシーンはSFドラマの要素を感じさせます。さらに第9話では、理系親子が夢をバトンリレーしていくエピソードが描かれました。池井戸潤原作の企業ドラマ『下町ロケット』ですが、ひとつの作品の中に時代劇、SFドラマ、ホームドラマと実にいろんなレイヤーが重なって構成されていることが分かります。「日曜劇場」という伝統ある放送枠を使って、TBSドラマ班は新しい試みに挑戦していると言えるのではないでしょうか。挑戦なくして、伝統を育んでいくことはできません。

 気になる第9話の視聴率は12.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。第7話は12.0%、第8話は11.5%とワースト記録を更新していましたが、クライマックスを控えてようやく持ち直すことができました。企業ドラマ、時代劇、SF、ホームドラマと多彩な側面を持った『下町ロケット』は残り2話で、果たしてどんな領域にまで進むことができるのでしょう。軽部の活躍ともども期待したいと思います。

(文=長野辰次)

『SUITS/スーツ』第9話 ムリヤリな設定に強引な展開……ゆるふわな主婦にしか見えない石田ひかりの演技

『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)第9話。「宿命!裏切りの代償」

(前回までのレビューはこちらから)

 

■「無資格の弁護士」に加えて「無資格の会計士」まで登場!

 今回の案件は、幸村チカ(鈴木保奈美)の親友であり、「幸村・上杉法律事務所」の顧問会系事務所&クライアントでもある「YURI綜合会計事務所」所長・花村百合(石田ひかり)からの依頼。

 百合の事務所に勤めている会計士・大河原忠(西村まさ彦)を解雇したいという。その理由は、大河原が経歴詐称して無資格なのに会計士として勤めていたから。

 この案件を担当することになった甲斐正午(織田裕二)と鈴木大輔(中島裕翔)だったが、大輔は自分も無資格な弁護士ということで、大河原の側にガッツリ肩入れしてしまう。

 しかも大河原は、大輔の完全記憶能力と似た、「一度見た数字は忘れない」という特殊能力を持っているのだ。……そんな人、そうそういるもんなのか!?

 このドラマのメイン設定でありながら、まったく納得できない「無資格の弁護士」という設定。

 日本とアメリカで弁護士制度が違うんだから、明らかに無茶なこの設定を引き継がなくてもよかったんじゃ……と思っているところに、「無資格の会計士」まで乗っけてきてしまった。

 大河原は、世話になった個人経営の会計事務所のオーナーが突然亡くなってしまい、“その事務所を潰したくない”という一心で、無資格のまま会計士を続けてしまった……と言っているわりに、アッサリ百合の事務所に引き抜かれたというのも意味不明なのだ。

 それでも、大河原に肩入れした大輔は、なんとか解雇を撤回させるために動き回るのだが、「うーん、ムリでしょ、だって無資格なんだもん」という感情しか沸いてこない。

 その後も、なかなか強引な展開が続く。

 ボウリングの最中に法律事務所の入館証を盗んだり、その事務所に忍び込んで資料を盗み見したり、それを発見した警備員が金を要求してきたり、甲斐が警備員に金を渡したら本当にアッサリと解放してくれたり……。

 久々に「勝つためには手段を選ばない」弁護士っぷりを演出したのかもしれないが、それにしても、ムリヤリ過ぎるよ。

■石田ひかりが、ゆるふわ主婦にしか見えない……

 結果的に「YURI綜合会計事務所」がペーパーカンパニーを利用し、コンサル料を水増し請求していたことが発覚。

 大河原は、無資格の会計士だったことが理由ではなく、水増し請求に気付いてしまったから解雇されることになったのだ。

 自分も裏切られていたと知ったチカはブチ切れるが、百合は否定。しかし解雇された大河原が登場して悪事を暴かれてしまう。

 臭い物にフタをするために解雇した元・社員のせいで全部バラされてしまうというこの展開。前回と同じパターンだ!

 水増し請求に気が付いた社員をクビにしたら、そりゃあ逆恨みして色々バラされちゃうよ。

 大輔も百合も大河原も、それぞれかなり頭のいいキレ者という設定のハズなのに、行動がことごとくバカなのが残念だ。

 そしてもうひとつ残念なのが、石田ひかりの演技。

「親友」「戦友」と言っていたチカと百合のバトルがクライマックスなのだが、百合からは開き直った悪人の力強さが皆無。どう見てもゆるふわな主婦にしか見えないのだ。

 石田ひかり VS 鈴木保奈美のバトルと言われるとワクワクするシチュエーションだけど、ちょっとミスキャストだったのではないだろうか。

 

■切り捨てた人間に足をすくわれるパターン三度!

 百合案件と同時進行していたのが、前回から引き続き大輔の恋愛問題。

 大河原の解雇理由を探るため、蟹江貢(小手伸也)たちとのダブルデートをセッティングし、一緒に行く相手として、前回キスをした谷元砂里(今田美桜)に協力を頼む。

 しかも「私本気だからね、あの時のキス」とまで言われているのに、ガッツリ利用するところは利用して、後になって「妹としか見れない」とバッサリ切り捨て。

 それでいて、聖澤真琴(新木優子)とは仕事中に発情してしまったのか唐突にキス。

 ボンヤリしているようで、結構ヒドイよ大輔!

 そりゃあ、砂里の兄・遊星(磯村勇斗)に、弁護士資格がないことをバラされちゃうわけだわ。

 またも、切り捨てた人間に足をすくわれる展開。このドラマ、このパターン好きだね。

 次回、いよいよ「最終回前編」! って、前回から「最終章」には突入していたハズなんだけど……。
(文と絵=北村ヂン)

『今日から俺は!!』第8話 主演なのに……賀来賢人がいまいちパッとしない理由とは?

 12月2日に放送された『今日から俺は!!』(日本テレビ系)の第8話。この回のエピソードに選ばれたのは“ヘルメット男編”。「一番つええヤツ」を探し、軟高で暴れ回るフルフェイスのヘルメットをかぶった新入生(須賀健太)と三橋貴志(賀来賢人)らが対決する内容である。

 原作に思い入れを持つ筆者だが、今回に限っていえば、原作よりもドラマ版のほうが面白かった。ドラマでのオリジナルストーリーは、果たし状で呼び出された赤坂理子(清野菜名)がヘルメット男とタイマンし、危機に陥った理子を三橋が救い出す部分である。このくだりで、原作では進みそうで一向に進まなかった(それがいいのだが)2人の仲がドラスティックに深まった。象徴的なのは、理子がヘルメット男に啖呵(たんか)を切る場面だ。

「そんなヘルメットかぶって守り固めてさあ、金属バット持ってケンカするような卑怯なヤツに、軟高のテッペンは取らせねえよ」

「なんなの、お前。これから3年間、ずーっとそのヘルメットかぶって授業受けんの? バッカじゃねえ。悔しかったら、そのヘルメットと金属バットなしで勝負しろや!」

 理子なりに、三橋のしゃべり方を真似し、三橋が言いそうなことを言っている。後から来た三橋が言おうとするセリフのどれも、彼女が先に言ってしまっていた。三橋の言いたいことを、理子は全部知っている。

 そして、今回のハイライトは三橋が現れた時の第一声、「俺の女に手出すんじゃねえ」だ。原作で、こんなセリフは登場しなかった。そもそも、原作の三橋は、こんなことを言うキャラではない。そんな“原作版三橋”との個性の乖離は、功を奏していると思う。ドラマ版は原作版三橋にある“鋭さ”を描き切れていないが、ドラマ版三橋には原作版にはない男っぽさがある。これはこれでいいと思う。

『今日から俺は!!』は全10話。限りがある。描き切れない人間関係が出てもしょうがない。でも、三橋と理子の甘酸っぱい関係性は話が別だ。それは描きたい。ドラマでは、今まで描けているようで描けていなかった。力業で「俺の女」と言わせることで、2人の関係性を深めておきたかった。そういうことだと筆者は受け取り、納得した。

 一方で、残念な描写も存在する。ヘルメット男に追い詰められる理子が「さんちゃーん!」と助けを求めた時、やって来たのが伊藤真司(伊藤健太郎)だったのだ。その時、三橋はスネていた。これはダメだ。素直になれないけども、内心で理子をとても大事に想っているのが三橋。理子に名前を叫ばれ、飛んで行かないのは三橋じゃない。終盤の理子vsヘルメット男の場面での「俺の女に~」発言につなげたるためのじらしかもしれないが、ならば、理子に「さんちゃーん!」と叫ばせるべきではなかった。それじゃ、三橋が小さい男になってしまう。オリジナルストーリーの至らなさによって三橋の良さが消えてしまうことが、このドラマには多々ある。

■三橋の魅力と智司の性分がドラマ版では描かれていない

 次週、いよいよ軟高と開久による全面対決が行われる。開久の番長・片桐智司(鈴木伸之)は、軟高との開戦になぜか消極的だ。その態度を歯がゆく思った相良猛(磯村勇斗)がクーデターを起こし、不良たちを先導する……という流れになるはずだ。

 原作派は気づいているが、本来、この抗争で番長格に収まったのは相良ではなく「末永」という男だった。このタイミングで相良の起用は非常にもったいない。彼は、こんなところで脱落する程度の存在じゃないのだ。未読の方には読んでいただきたいが、原作では相良の狂気が三橋&伊藤に最悪の修羅場をもたらしている。すなわち、それは三橋&伊藤にとって最大の見せ場。あの最終エピソードを、ドラマ版はオミットするのか? もったいない。

 智司の描き方にも触れたい。三橋&伊藤と事を構えたくない智司。心中で2人を認めているからだ。智司がその認識へ至った経緯も、ドラマ版では描けていない。原因が第3話にあるのは明らかだ。具体的に言うと、ムロツヨシ&佐藤二朗の重用に原因がある。

 詳しく振り返りたい。第3話で、三橋と智司がタイマンをした。そこに、いきなり理子の父・哲夫(佐藤)が割り込んだ。さらに、佳境で椋木先生(ムロ)ら教師陣が乱入、ケンカをうやむやにしてしまった。本当はこの対決で、“開久の頭”であることに智司が疑問を持つはずだった。

 原作版でも、三橋と智司のタイマンは一進一退である。その最中、「俺が誰だかわかってんのか? 開久の頭だぞ!」と智司が吠えた。「俺は三橋貴志だ。俺よりエバッた奴は叩き潰す」と返す三橋。この三橋の態度に、智司は呆然とする。「俺はいつから開久の頭なんかに納得しちまったんだ」「強えな、自分のハタ振ってる奴はよ……」。肩書に酔う自分に、智司は嫌気が差した。

 この心理描写があるとないとでは、全然違う。智司が三橋らに一目置く理由を、まるまるカットしてしまっている。同時に、筋を通す智司の性分もカット。三橋の魅力の根っこの部分もカット。ムロと佐藤の出番で、削り落とされてしまったのだ。惜しすぎる。

 ドラマ版の『今日から俺は!!』は、伊藤と今井勝俊(太賀)に人気が集中してしまっている。2人に比べ、三橋の支持率は明らかに劣る。それは、ドラマ版が三橋の魅力を描き切っていないからだ。キメるところはキメる三橋。そのカッコ良さがあるから、卑怯な側面も際立つ。でも、ドラマ版の三橋は、ただ卑怯なだけなのだ。惜しい。

 もうひとつ、付け加えたい。ムロと佐藤の出番が多いがために、超重要キャラの中野誠も登場せずじまいだ。彼は開久との戦争で、最高の働きをするはずだった。三橋、伊藤、今井に劣らぬ人気が中野へ集まったのは、開久戦での活躍が決め手だった。彼がいないなんて、原作を知る者からすると不完全だ。

 ドラマ化するとなると、時間の尺や話数を勘定に入れなければならない。だからこそ、ムロと佐藤の重用がもったいないと言っている。いろいろなものを切り捨てる原因になっている。「それよりもっとほかのキャラに出番を与えてよ!」と声を上げたくなるのだ。あと、第6話の「レプリカヤクザ編」も余計だった。あんなエピソードはやらずに、中野に出番を与えてほしかった。

 今回の第8話のように、ハマれば原作を上回ることさえあるのだ。重要なキャラ、重要なエピソードを選び、ドラマならではの魅力を追求してくれると、原作ファンもうれしい。

(文=寺西ジャジューカ)

『今日から俺は!!』第8話 主演なのに……賀来賢人がいまいちパッとしない理由とは?

 12月2日に放送された『今日から俺は!!』(日本テレビ系)の第8話。この回のエピソードに選ばれたのは“ヘルメット男編”。「一番つええヤツ」を探し、軟高で暴れ回るフルフェイスのヘルメットをかぶった新入生(須賀健太)と三橋貴志(賀来賢人)らが対決する内容である。

 原作に思い入れを持つ筆者だが、今回に限っていえば、原作よりもドラマ版のほうが面白かった。ドラマでのオリジナルストーリーは、果たし状で呼び出された赤坂理子(清野菜名)がヘルメット男とタイマンし、危機に陥った理子を三橋が救い出す部分である。このくだりで、原作では進みそうで一向に進まなかった(それがいいのだが)2人の仲がドラスティックに深まった。象徴的なのは、理子がヘルメット男に啖呵(たんか)を切る場面だ。

「そんなヘルメットかぶって守り固めてさあ、金属バット持ってケンカするような卑怯なヤツに、軟高のテッペンは取らせねえよ」

「なんなの、お前。これから3年間、ずーっとそのヘルメットかぶって授業受けんの? バッカじゃねえ。悔しかったら、そのヘルメットと金属バットなしで勝負しろや!」

 理子なりに、三橋のしゃべり方を真似し、三橋が言いそうなことを言っている。後から来た三橋が言おうとするセリフのどれも、彼女が先に言ってしまっていた。三橋の言いたいことを、理子は全部知っている。

 そして、今回のハイライトは三橋が現れた時の第一声、「俺の女に手出すんじゃねえ」だ。原作で、こんなセリフは登場しなかった。そもそも、原作の三橋は、こんなことを言うキャラではない。そんな“原作版三橋”との個性の乖離は、功を奏していると思う。ドラマ版は原作版三橋にある“鋭さ”を描き切れていないが、ドラマ版三橋には原作版にはない男っぽさがある。これはこれでいいと思う。

『今日から俺は!!』は全10話。限りがある。描き切れない人間関係が出てもしょうがない。でも、三橋と理子の甘酸っぱい関係性は話が別だ。それは描きたい。ドラマでは、今まで描けているようで描けていなかった。力業で「俺の女」と言わせることで、2人の関係性を深めておきたかった。そういうことだと筆者は受け取り、納得した。

 一方で、残念な描写も存在する。ヘルメット男に追い詰められる理子が「さんちゃーん!」と助けを求めた時、やって来たのが伊藤真司(伊藤健太郎)だったのだ。その時、三橋はスネていた。これはダメだ。素直になれないけども、内心で理子をとても大事に想っているのが三橋。理子に名前を叫ばれ、飛んで行かないのは三橋じゃない。終盤の理子vsヘルメット男の場面での「俺の女に~」発言につなげたるためのじらしかもしれないが、ならば、理子に「さんちゃーん!」と叫ばせるべきではなかった。それじゃ、三橋が小さい男になってしまう。オリジナルストーリーの至らなさによって三橋の良さが消えてしまうことが、このドラマには多々ある。

■三橋の魅力と智司の性分がドラマ版では描かれていない

 次週、いよいよ軟高と開久による全面対決が行われる。開久の番長・片桐智司(鈴木伸之)は、軟高との開戦になぜか消極的だ。その態度を歯がゆく思った相良猛(磯村勇斗)がクーデターを起こし、不良たちを先導する……という流れになるはずだ。

 原作派は気づいているが、本来、この抗争で番長格に収まったのは相良ではなく「末永」という男だった。このタイミングで相良の起用は非常にもったいない。彼は、こんなところで脱落する程度の存在じゃないのだ。未読の方には読んでいただきたいが、原作では相良の狂気が三橋&伊藤に最悪の修羅場をもたらしている。すなわち、それは三橋&伊藤にとって最大の見せ場。あの最終エピソードを、ドラマ版はオミットするのか? もったいない。

 智司の描き方にも触れたい。三橋&伊藤と事を構えたくない智司。心中で2人を認めているからだ。智司がその認識へ至った経緯も、ドラマ版では描けていない。原因が第3話にあるのは明らかだ。具体的に言うと、ムロツヨシ&佐藤二朗の重用に原因がある。

 詳しく振り返りたい。第3話で、三橋と智司がタイマンをした。そこに、いきなり理子の父・哲夫(佐藤)が割り込んだ。さらに、佳境で椋木先生(ムロ)ら教師陣が乱入、ケンカをうやむやにしてしまった。本当はこの対決で、“開久の頭”であることに智司が疑問を持つはずだった。

 原作版でも、三橋と智司のタイマンは一進一退である。その最中、「俺が誰だかわかってんのか? 開久の頭だぞ!」と智司が吠えた。「俺は三橋貴志だ。俺よりエバッた奴は叩き潰す」と返す三橋。この三橋の態度に、智司は呆然とする。「俺はいつから開久の頭なんかに納得しちまったんだ」「強えな、自分のハタ振ってる奴はよ……」。肩書に酔う自分に、智司は嫌気が差した。

 この心理描写があるとないとでは、全然違う。智司が三橋らに一目置く理由を、まるまるカットしてしまっている。同時に、筋を通す智司の性分もカット。三橋の魅力の根っこの部分もカット。ムロと佐藤の出番で、削り落とされてしまったのだ。惜しすぎる。

 ドラマ版の『今日から俺は!!』は、伊藤と今井勝俊(太賀)に人気が集中してしまっている。2人に比べ、三橋の支持率は明らかに劣る。それは、ドラマ版が三橋の魅力を描き切っていないからだ。キメるところはキメる三橋。そのカッコ良さがあるから、卑怯な側面も際立つ。でも、ドラマ版の三橋は、ただ卑怯なだけなのだ。惜しい。

 もうひとつ、付け加えたい。ムロと佐藤の出番が多いがために、超重要キャラの中野誠も登場せずじまいだ。彼は開久との戦争で、最高の働きをするはずだった。三橋、伊藤、今井に劣らぬ人気が中野へ集まったのは、開久戦での活躍が決め手だった。彼がいないなんて、原作を知る者からすると不完全だ。

 ドラマ化するとなると、時間の尺や話数を勘定に入れなければならない。だからこそ、ムロと佐藤の重用がもったいないと言っている。いろいろなものを切り捨てる原因になっている。「それよりもっとほかのキャラに出番を与えてよ!」と声を上げたくなるのだ。あと、第6話の「レプリカヤクザ編」も余計だった。あんなエピソードはやらずに、中野に出番を与えてほしかった。

 今回の第8話のように、ハマれば原作を上回ることさえあるのだ。重要なキャラ、重要なエピソードを選び、ドラマならではの魅力を追求してくれると、原作ファンもうれしい。

(文=寺西ジャジューカ)

『ドロ刑』は「取り調べコント」で間延び&伏線を回収せず、モヤモヤ感が残る結末に……

 ジャニーズの人気グループ・Sexy Zoneの中島健人が主演するドラマ『ドロ刑 -警視庁捜査三課‐』(日本テレビ系)の第8話が1日に放送され、平均視聴率7.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から1.1ポイントダウンとなってしまいました。

(前回までのレビューはこちらから)

 ここ最近、馴染みのバーに伝説の大泥棒・煙鴉(遠藤憲一)が現れないことを気にかけていた斑目勉(中島)ですが、ある日、その煙鴉がしれっと来店。積もる話をしようと喜ぶ班目ですが、そこへ緊急の呼び出しがあり、警視庁へ向かうことになります。

 取調室には器物損壊の罪を自首して捕まった男(大友康平)の姿があり、13係の皇子山隆俊(中村倫也)らが取り調べにあたるものの、男は身元をまったく明かさず、手の指紋をすべてバーナーで焼き切ってしまっているため、前科データから素性を割り出すこともできません。

 ところが突然、男が煙鴉だと名乗ったことで、13係は騒然。もしそれが本当ならば大手柄となるのですが、伝説の大泥棒が自首する意味がわからず、混乱が広がります。また、本物の煙鴉を知る班目は、偽・煙鴉の目的が何なのかと疑問を抱きます。

 そんな13係の空気を察した偽・煙鴉は、本物の煙鴉である証拠として、2年前に空き巣に入った事件について供述を開始。その事件は確かに、煙鴉の犯行とされているものだったのです。

 さらに驚くことに、その現場を再捜査した班目が、新たに発見した指紋を鑑定したところ、それが第一話で逮捕した空き巣・瀬戸正次郎(高橋克実)のものであることがわかったのです。

 そのことから、偽・煙鴉が前科者で、刑務所内で瀬戸から犯行手口を聞いたに違いないと踏む班目ですが、それにしてもやはり自首した目的がわかりません。その様子をあざ笑うように、偽・煙鴉は再び過去の犯行を証言。班目たちはすぐにその現場へと向かいます。

 そうして再捜査した結果、今度は第2話に登場した犯人・大堂吾郎(笹野高史)の指紋を検出。すっかり翻弄されてしまう13係ですが、偽煙鴉は刑事たちのプライベートに精通し、取り調べ中に余計なことを暴露するため、こちらでも振り回されてしまうのでした。そして、空き巣犯だという証拠が揃わないままに勾留期限が過ぎ、偽・煙鴉は釈放されることになります。

 後日、班目はいつものバーで煙鴉から、“ある男”についての話を聞かされます。その男は町工場を経営していたものの、友人の借金を肩代わりしたことによって倒産。妻と娘と別れ、肉体労働でコツコツと借金返済していたものの、新たに2,000万円の借金があることが発覚し、自殺を決意したというのです。

 男が自殺の名所に佇んでいると、ある男から、5日間勾留される代わりに5,000万円の報酬を渡すと持ち掛けられます。つまり前者が偽・煙鴉、後者が本物の煙鴉だったわけなのです。

 なぜそんなことを? 煙鴉の意図がわからず、さらに捜査への助言だと思っていたことがすべて、偽・煙鴉を確実に釈放させるための誘導だったと知った班目は憤るのですが、煙鴉は、「俺を捕まえてみろ」と挑発的なセリフを吐いて立ち去ってしまうのでした。

 さて感想。偽・煙鴉が自首してきた理由は? という謎をメインに1時間引っ張る回となったのですが、その役を演じる大友康平が存在感抜群だったため、引き込まれるものがありました。しかし、彼に5日間の勾留を依頼した煙鴉の意図が明かされなかったため、最終的には非常にモヤモヤ感が残る回となってしまいました。

 また、煙鴉の助言(実際には誘導)によって、班目が犯行現場から次々と新たな証拠を見つけ出し、それらがすべて過去に登場した犯人たちを示す、という展開は謎がさらに深まり見ていて面白かったのですが、それだけでは1時間の尺がもたなかったのか、今回は余計なシーンが多かった印象です。

 ドラマを間延びさせてしまったのは、延々と繰り返された“取り調べコント”でした。偽・煙鴉が13係の内情に精通しているということで、取調室でそれぞれの刑事たちの秘密をコメディ調に暴露していくくだりがあったのですが、これはメインのストーリーにまったく関係ないわけなんですね。そのシーンのせいでテンポが悪くなり、途中でかなり飽きてしまう場面が何度かありました。

 その一方、煙鴉が班目と懇意にしていることや、警察あるいは同業者たちに対して「ぬるい仕事ばっかしやがって」と憤る理由は何なのか。さらに今回、皇子山が煙鴉を執拗に追うのは、5年前に自殺した妹・真里の仇をとるためであることが発覚したのですが、その事件の真相とは何なのか。クライマックスへ向けて興味がそそられる伏線がいくつか散りばめられていました。

 連続ドラマではたまに、「1週間経てば忘れているだろ」と、制作陣が視聴者を侮っているのか、前回の伏線が回収されないままということがありますが、偽・煙鴉を登場させた理由は何なのか、しっかりした説明を期待しつつ次回放送を待ちたいと思います。
(文=大羽鴨乃)

『リーガルV』向井理&速水もこみちの大根演技で、クライマックスへ向けて盛り下がる……

 米倉涼子が元弁護士役で主演を務めるドラマ『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(テレビ朝日系)もいよいよクライマックスへ突入。第8話が6日に放送され、前回から0.8ポイントダウンとなる平均視聴率13.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録しました。

(前回までのレビューはこちらから)

 元弁護士の小鳥遊翔子(米倉)は、1年前、NPO法人「貧困を救う会」の幹部職員・市瀬徹(夙川アトム)を公園で刺殺し、懲役9年の実刑判決を受けた、元依頼人の守屋至(寛一郎)と1年ぶりに再会します。

 小鳥遊はこの事件の調査中、暴力団幹部の花田尊と接触したことによって弁護士資格を剥奪され、最後まで弁護できなかったことに対して悔恨の念を抱くのですが、それだけではなく、守屋がまるで他人事のように実刑判決を受け入れたことに違和感を抱いているのです。また、面識のない市瀬をなぜ殺したのか、その動機も不明のため、事件の背後に“隠された何か”があるのではと疑い、再調査を買って出ます。

 しかし、守屋は頑なに心を閉ざし、付け入る隙がありません。また、弁護士資格がないにもかかわらず暗躍する行為に対し、古巣「Felix & Temma法律事務所」の代表弁護士・天馬壮一郎(小日向文世)の差し金によって、弁護士会から非弁行為だと警告されてしまいます。

 小鳥遊をクビにしなければ業務停止処分の可能性もあるということで、頭を悩ませる「京極法律事務所」の面々。この空気を察した小鳥遊が書き置きを残して姿を消したため、事務所は空中分解となり、弁護士の青島圭太(林遣都)以外は去ってしまうのでした。

 ところが、やはり事件の真相が気になる「京極法律事務所」のメンバーたちは、それぞれ独自に調査を開始。その結果、守屋が「貧困を救う会」で働いていたことや、市瀬がその会の活動費を着服していたことが発覚します。裁判の際には初対面とされていた2人の密接な関係性が明らかになったのです。

 さらに、「貧困を救う会」の代表・大峰聡(速水もこみち)と天馬が懇意であることや、大峰のことを支援する厚生労働大臣・丸山珠美(どんぐり)と天馬が、大学時代のゼミの先輩・後輩の仲であることなどが判明するのでした。

 その一方、小鳥遊は田舎の温泉旅館に宿泊。傷心旅行かと思いきや、その旅館には守屋の妹・未久(久保田紗友)の姿が。兄が起こした殺人事件後、周囲からのバッシングに耐えられなくなった未久は、偽名を使い仲居として働いていたのです。

 その事実を引っ提げて小鳥遊は帰京し、再び守屋と面会。妹はアルバイトをしながら大学の夜間部で法律の勉強をしている。そう信じていた守屋は衝撃を受けます。そして、大峰から命じられ、花田と共謀するカタチで市瀬を殺したことを告白するのでした。

 事件の真相を知った小鳥遊は、裁判をやり直すことを決意。そこへ「京極法律事務所」のメンバーも再集結したところで今回は終了となりました。

 さて感想。次回で最終回ということで、市瀬・殺人事件の裏に潜む悪事を暴くことがドラマのクライマックスを飾ることになるのですが、そのカギを握る大峰役の速水もこもちが相変わらずの大根ぶり。声のトーンを抑え、何とか頑張って黒幕感を出そうとするものの、どうにも薄っぺらい。役者名はわかりませんが、暴力団幹部・花田役の方のほうが凄みが利いていてよっぽど存在感があるんですよね。なぜ速水をキャスティングしたのか不思議でしょうがないです。

 また、薄っぺらいといえば、天馬の座を虎視眈々と狙う、「Felix & Temma法律事務所」のエース弁護士・海崎勇人役を演じる向井理も同じことがいえます。初回からかなり背伸びしている感じがありましたけど、放送回を重ねてもまるで成長した様子が見られないんですよね。今回は、事務所の後輩で恋人でもある白鳥美奈子とともに、大峰と天馬の関係性を陰で嗅ぎ回るシーンを演じていましたが、美奈子役の菜々緒ともども、ドラマを盛り上げるほどの演技力はないように思えました。

 で、その2人が調査した結果、大峰が天馬と丸山の息子だとニオわせる描写がありましたが、まさかの展開に唖然としてしまいました。丸山役のどんぐりは、映画『カメラを止めるな!』に“竹原芳子”名義で、テレビ局のプロデューサー役として出演していた小柄な女性ですが、その彼女と天馬役の小日向文世との間に、どう考えても速水のような長身イケメンが誕生するわけがありません。視聴者のミスリードを狙ったにしても、もう少しキャスティングを考えるべきだったのではないでしょうか。

 また、1年前の裁判でなぜ、守屋と市瀬の関係性が明らかにならなかったのかも謎。キャストも脚本も欠点だらけでクライマックスへ向けて盛り下がった感は否めませんが、とりあえず次週放送を待ちたいと思います。
(文=大羽鴨乃)

『リーガルV』向井理&速水もこみちの大根演技で、クライマックスへ向けて盛り下がる……

 米倉涼子が元弁護士役で主演を務めるドラマ『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(テレビ朝日系)もいよいよクライマックスへ突入。第8話が6日に放送され、前回から0.8ポイントダウンとなる平均視聴率13.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録しました。

(前回までのレビューはこちらから)

 元弁護士の小鳥遊翔子(米倉)は、1年前、NPO法人「貧困を救う会」の幹部職員・市瀬徹(夙川アトム)を公園で刺殺し、懲役9年の実刑判決を受けた、元依頼人の守屋至(寛一郎)と1年ぶりに再会します。

 小鳥遊はこの事件の調査中、暴力団幹部の花田尊と接触したことによって弁護士資格を剥奪され、最後まで弁護できなかったことに対して悔恨の念を抱くのですが、それだけではなく、守屋がまるで他人事のように実刑判決を受け入れたことに違和感を抱いているのです。また、面識のない市瀬をなぜ殺したのか、その動機も不明のため、事件の背後に“隠された何か”があるのではと疑い、再調査を買って出ます。

 しかし、守屋は頑なに心を閉ざし、付け入る隙がありません。また、弁護士資格がないにもかかわらず暗躍する行為に対し、古巣「Felix & Temma法律事務所」の代表弁護士・天馬壮一郎(小日向文世)の差し金によって、弁護士会から非弁行為だと警告されてしまいます。

 小鳥遊をクビにしなければ業務停止処分の可能性もあるということで、頭を悩ませる「京極法律事務所」の面々。この空気を察した小鳥遊が書き置きを残して姿を消したため、事務所は空中分解となり、弁護士の青島圭太(林遣都)以外は去ってしまうのでした。

 ところが、やはり事件の真相が気になる「京極法律事務所」のメンバーたちは、それぞれ独自に調査を開始。その結果、守屋が「貧困を救う会」で働いていたことや、市瀬がその会の活動費を着服していたことが発覚します。裁判の際には初対面とされていた2人の密接な関係性が明らかになったのです。

 さらに、「貧困を救う会」の代表・大峰聡(速水もこみち)と天馬が懇意であることや、大峰のことを支援する厚生労働大臣・丸山珠美(どんぐり)と天馬が、大学時代のゼミの先輩・後輩の仲であることなどが判明するのでした。

 その一方、小鳥遊は田舎の温泉旅館に宿泊。傷心旅行かと思いきや、その旅館には守屋の妹・未久(久保田紗友)の姿が。兄が起こした殺人事件後、周囲からのバッシングに耐えられなくなった未久は、偽名を使い仲居として働いていたのです。

 その事実を引っ提げて小鳥遊は帰京し、再び守屋と面会。妹はアルバイトをしながら大学の夜間部で法律の勉強をしている。そう信じていた守屋は衝撃を受けます。そして、大峰から命じられ、花田と共謀するカタチで市瀬を殺したことを告白するのでした。

 事件の真相を知った小鳥遊は、裁判をやり直すことを決意。そこへ「京極法律事務所」のメンバーも再集結したところで今回は終了となりました。

 さて感想。次回で最終回ということで、市瀬・殺人事件の裏に潜む悪事を暴くことがドラマのクライマックスを飾ることになるのですが、そのカギを握る大峰役の速水もこもちが相変わらずの大根ぶり。声のトーンを抑え、何とか頑張って黒幕感を出そうとするものの、どうにも薄っぺらい。役者名はわかりませんが、暴力団幹部・花田役の方のほうが凄みが利いていてよっぽど存在感があるんですよね。なぜ速水をキャスティングしたのか不思議でしょうがないです。

 また、薄っぺらいといえば、天馬の座を虎視眈々と狙う、「Felix & Temma法律事務所」のエース弁護士・海崎勇人役を演じる向井理も同じことがいえます。初回からかなり背伸びしている感じがありましたけど、放送回を重ねてもまるで成長した様子が見られないんですよね。今回は、事務所の後輩で恋人でもある白鳥美奈子とともに、大峰と天馬の関係性を陰で嗅ぎ回るシーンを演じていましたが、美奈子役の菜々緒ともども、ドラマを盛り上げるほどの演技力はないように思えました。

 で、その2人が調査した結果、大峰が天馬と丸山の息子だとニオわせる描写がありましたが、まさかの展開に唖然としてしまいました。丸山役のどんぐりは、映画『カメラを止めるな!』に“竹原芳子”名義で、テレビ局のプロデューサー役として出演していた小柄な女性ですが、その彼女と天馬役の小日向文世との間に、どう考えても速水のような長身イケメンが誕生するわけがありません。視聴者のミスリードを狙ったにしても、もう少しキャスティングを考えるべきだったのではないでしょうか。

 また、1年前の裁判でなぜ、守屋と市瀬の関係性が明らかにならなかったのかも謎。キャストも脚本も欠点だらけでクライマックスへ向けて盛り下がった感は否めませんが、とりあえず次週放送を待ちたいと思います。
(文=大羽鴨乃)

幸せとはきっと、大切ななにかに気づくこと――佐々木蔵之介主演ドラマ『黄昏流星群』第9話

(前回までのレビューはこちらから)

 12月5日に放送された『2018 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)に、中山美穂が出演した。披露したのは、1986年のヒット曲「WAKU WAKUさせて」と、1992年に中山美穂&WANDSとして発表した「世界中の誰よりきっと」の2曲。ドラマ『黄昏流星群』(同)の展開が佳境に入っている中、役の上での彼女の心境を表したような選曲に、思わず唸らされた。

 ドラマはいよいよ第9話、中山美穂演じる真璃子が大きな決断を下す展開だった。

 前回の放送のラスト、車の中で抱き合った真璃子と日野(ジャニーズWEST・藤井流星)。しかし、真璃子が途中で拒んだため、それ以上の関係に進むことはなかった。

 「弱っている者同士は、こんなふうに抱き合ってはいけない」

 真璃子はそう言って、日野と、そして自分の気持ちを押し止めたのだ。

 その頃、完治(佐々木蔵之介)は、銀行への復帰を打診されていた。出世コースに戻れるのは願ってもないことだろうが、出向先での新しい仕事にやりがいを感じていた完治は、戻るべきかどうかと思い悩む。

 そんな完治の思いとは裏腹に、夫が銀行に戻れそうだと知った真璃子は、家を出ていくことを告げる。理由を尋ねる完治に、栞(黒木瞳)との関係を知っていることを告白する。そう言われた完治は、真璃子が家を出ていくことを受け入れるしかなかった。

 真璃子が別れて暮らすことを決断した理由は何だったのだろう? 彼女は何を手に入れたかったのか?

 娘である美咲(石川恋)の駆け落ち、夫の浮気、「子供を育て家庭を守る」ことに専念していた自分に対し、自由に生きている彼らが羨ましくなったのかもしれない。自分が生きていく中で、どうありたいのかということに気づいた結果の行動なのだろう。

 一方、完治との別れを決断した栞は、荻野倉庫を辞め、漁港で働き始めていた。「なぜこんなところで働くのか?」と問われた彼女は、「海が好きだから」と答える。だが、彼女は、本当は山が好きだったはず。完治との思い出を消し去るために、都会でもなく、山でもなく、海に向かったのかもしれない。そして、彼女は医師から糖尿病と診断され、失明の恐れがあるとも指摘されていた。病魔に蝕まれながら、懸命に働くしかなかったのだ。

 完治の出向元の若葉銀行では、不正融資の問題が起きているという。真偽を確かめるため、同期の井上(平山祐介)と会い話をするが、特に問題はないと答えるだけだった。妻との別居、不倫、娘の駆け落ち、全てを話す完治に、井上は言う。

「人生でいちばん大事なのは仕事じゃない。人間だ」

 彼は何かを抱えている。そして気づいたのだろう。人との出会いが、人生を大きく左右するということに。

 荻野倉庫では、銀行への復帰を迷う完治に、課長の川本(中川家・礼二)が、「あなたにしかできない仕事が待ってる」と背中を押す。その声に勇気を得た完治は、銀行へ戻り、不正融資問題の対策に取り組む。その不正融資には、井上が大きく関与していた。

 家を出た真璃子は、友人の聡美(八木亜希子)の家にいた。聡美は、交際していた須藤(岡田浩暉)と結婚するという。居づらさを感じた真璃子は、時間つぶしに街をさまよう。そこで偶然日野と再会する。

 日野は弱っていた。母・冴(麻生祐未)の介護に疲れ、生活も荒れていたのだ。見かねた真璃子は、日野の家に行き、介護を手伝うことにする。

「娘が迷惑かけたことへの罪滅ぼし」という真璃子だが、実際の気持ちはどうだったのだろう。他に居場所が無くなったこともある、日野に息子のような気持ちを抱いているのかもしれない。しかし、明らかに、彼に対する愛情も感じていたはずである。

 真璃子に対し冴は、日野の子供の頃の話をする。愛おしい息子。自分の人生をかけて育ててきた彼の大切さをわかってもらうためだろうか。あるいは、息子との“関係”を疑い、真璃子に、親子ほど歳が離れていることを感じさせるためだろうか。いずれにせよ、冴は、ガンに体を侵され、先が長くないことを知っている。自分のために息子がダメになるのを見たくない。そのためにホスピスに入るという決断をする。

 息子に醜い姿を見せたくない、彼の前では美しくいたい、というのは、まるで恋人に向けたような言葉だ。母親の息子に対する、少し過剰な気持ちが見え隠れする。

 ドラマの終盤では、命に関わるシーンが交錯する。

 家でアイロンを掛ける真璃子の姿を見て、日野は言う。

「このまま時間が止まればいい。母の病気もこれ以上悪くならず、真璃子さんもここにいて……」

 でも、誰も時間を止めることはできない。命を永遠に得ることもできない。

 そして、若葉銀行では、不正融資に関わった人のヒアリングを行う中、中心人物と見られていた井上が、飛び降り自殺を図る。

 漁港で働く栞は、視野が狭くなっていくのを感じる。

 それぞれの希望と絶望が渦巻いて、ラストに向かって収束していく。息詰まるような展開は見ごたえがあった。

 以前から、このドラマには中高年世代に刺さるような、懐かしい演出があることは述べてきた。今回中山美穂の歌番組出演があり、奇しくもその曲の内容とリンクするような感覚が味わえた。もちろん、それを想定して脚本を作ったわけではないだろうが、歌番組側では、ドラマの内容を承知した上で、披露する曲を決めたという理由はあったのではないかと思う。

「世界中の誰よりきっと」の主人公は、最後に本当に愛していた人と出会い、幸せを手にする。一体、今回のドラマで幸せを掴むのは誰なのだろう。

 最終回を残すのみとなったが、完全なハッピーエンドというのは想像しにくい。誰かが幸せになれば、誰かが孤独になる。そんな複雑な人間関係になっているからだ。その関係の糸を少しずつたどりながら、それでもみんなが幸せに向かって歩いていく――。そんなラストを期待したい。

(文=プレヤード) 

幸せとはきっと、大切ななにかに気づくこと――佐々木蔵之介主演ドラマ『黄昏流星群』第9話

(前回までのレビューはこちらから)

 12月5日に放送された『2018 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)に、中山美穂が出演した。披露したのは、1986年のヒット曲「WAKU WAKUさせて」と、1992年に中山美穂&WANDSとして発表した「世界中の誰よりきっと」の2曲。ドラマ『黄昏流星群』(同)の展開が佳境に入っている中、役の上での彼女の心境を表したような選曲に、思わず唸らされた。

 ドラマはいよいよ第9話、中山美穂演じる真璃子が大きな決断を下す展開だった。

 前回の放送のラスト、車の中で抱き合った真璃子と日野(ジャニーズWEST・藤井流星)。しかし、真璃子が途中で拒んだため、それ以上の関係に進むことはなかった。

 「弱っている者同士は、こんなふうに抱き合ってはいけない」

 真璃子はそう言って、日野と、そして自分の気持ちを押し止めたのだ。

 その頃、完治(佐々木蔵之介)は、銀行への復帰を打診されていた。出世コースに戻れるのは願ってもないことだろうが、出向先での新しい仕事にやりがいを感じていた完治は、戻るべきかどうかと思い悩む。

 そんな完治の思いとは裏腹に、夫が銀行に戻れそうだと知った真璃子は、家を出ていくことを告げる。理由を尋ねる完治に、栞(黒木瞳)との関係を知っていることを告白する。そう言われた完治は、真璃子が家を出ていくことを受け入れるしかなかった。

 真璃子が別れて暮らすことを決断した理由は何だったのだろう? 彼女は何を手に入れたかったのか?

 娘である美咲(石川恋)の駆け落ち、夫の浮気、「子供を育て家庭を守る」ことに専念していた自分に対し、自由に生きている彼らが羨ましくなったのかもしれない。自分が生きていく中で、どうありたいのかということに気づいた結果の行動なのだろう。

 一方、完治との別れを決断した栞は、荻野倉庫を辞め、漁港で働き始めていた。「なぜこんなところで働くのか?」と問われた彼女は、「海が好きだから」と答える。だが、彼女は、本当は山が好きだったはず。完治との思い出を消し去るために、都会でもなく、山でもなく、海に向かったのかもしれない。そして、彼女は医師から糖尿病と診断され、失明の恐れがあるとも指摘されていた。病魔に蝕まれながら、懸命に働くしかなかったのだ。

 完治の出向元の若葉銀行では、不正融資の問題が起きているという。真偽を確かめるため、同期の井上(平山祐介)と会い話をするが、特に問題はないと答えるだけだった。妻との別居、不倫、娘の駆け落ち、全てを話す完治に、井上は言う。

「人生でいちばん大事なのは仕事じゃない。人間だ」

 彼は何かを抱えている。そして気づいたのだろう。人との出会いが、人生を大きく左右するということに。

 荻野倉庫では、銀行への復帰を迷う完治に、課長の川本(中川家・礼二)が、「あなたにしかできない仕事が待ってる」と背中を押す。その声に勇気を得た完治は、銀行へ戻り、不正融資問題の対策に取り組む。その不正融資には、井上が大きく関与していた。

 家を出た真璃子は、友人の聡美(八木亜希子)の家にいた。聡美は、交際していた須藤(岡田浩暉)と結婚するという。居づらさを感じた真璃子は、時間つぶしに街をさまよう。そこで偶然日野と再会する。

 日野は弱っていた。母・冴(麻生祐未)の介護に疲れ、生活も荒れていたのだ。見かねた真璃子は、日野の家に行き、介護を手伝うことにする。

「娘が迷惑かけたことへの罪滅ぼし」という真璃子だが、実際の気持ちはどうだったのだろう。他に居場所が無くなったこともある、日野に息子のような気持ちを抱いているのかもしれない。しかし、明らかに、彼に対する愛情も感じていたはずである。

 真璃子に対し冴は、日野の子供の頃の話をする。愛おしい息子。自分の人生をかけて育ててきた彼の大切さをわかってもらうためだろうか。あるいは、息子との“関係”を疑い、真璃子に、親子ほど歳が離れていることを感じさせるためだろうか。いずれにせよ、冴は、ガンに体を侵され、先が長くないことを知っている。自分のために息子がダメになるのを見たくない。そのためにホスピスに入るという決断をする。

 息子に醜い姿を見せたくない、彼の前では美しくいたい、というのは、まるで恋人に向けたような言葉だ。母親の息子に対する、少し過剰な気持ちが見え隠れする。

 ドラマの終盤では、命に関わるシーンが交錯する。

 家でアイロンを掛ける真璃子の姿を見て、日野は言う。

「このまま時間が止まればいい。母の病気もこれ以上悪くならず、真璃子さんもここにいて……」

 でも、誰も時間を止めることはできない。命を永遠に得ることもできない。

 そして、若葉銀行では、不正融資に関わった人のヒアリングを行う中、中心人物と見られていた井上が、飛び降り自殺を図る。

 漁港で働く栞は、視野が狭くなっていくのを感じる。

 それぞれの希望と絶望が渦巻いて、ラストに向かって収束していく。息詰まるような展開は見ごたえがあった。

 以前から、このドラマには中高年世代に刺さるような、懐かしい演出があることは述べてきた。今回中山美穂の歌番組出演があり、奇しくもその曲の内容とリンクするような感覚が味わえた。もちろん、それを想定して脚本を作ったわけではないだろうが、歌番組側では、ドラマの内容を承知した上で、披露する曲を決めたという理由はあったのではないかと思う。

「世界中の誰よりきっと」の主人公は、最後に本当に愛していた人と出会い、幸せを手にする。一体、今回のドラマで幸せを掴むのは誰なのだろう。

 最終回を残すのみとなったが、完全なハッピーエンドというのは想像しにくい。誰かが幸せになれば、誰かが孤独になる。そんな複雑な人間関係になっているからだ。その関係の糸を少しずつたどりながら、それでもみんなが幸せに向かって歩いていく――。そんなラストを期待したい。

(文=プレヤード)