「他人の記事をパクるのはこんな人」弱小出版社の編集者が語る、パクリ騒動が起こるワケ

 信ぴょう性の低い情報の掲載や、他サイトの記事の無断転載、いわゆるパクリ記事を掲載していたことで昨年12月、DeNA運営の医療情報キュレーションメディア「WELQ」が大炎上し閉鎖。ネットメディアのあり方が問われた事件であった。

 この騒動が起こったのと同時期の昨年11月29日に出版されたのが『重版未定』(河出書房新社)。弱小出版社にありがちなリアルな現状が、かわいらしい2頭身のキャラクターたちによって描かれている漫画だ。著者は、出版社に勤務している川崎昌平さん。大手とは違う小さな出版社の編集者はキュレーションメディアにおけるパクリ騒動をどう捉えるのか、お話をうかがった。

■スマホが普及していなかった時代は、紙媒体でもネット画像のパクリ本があった

――キュレーションメディアでのパクリが問題となっていますが、紙媒体でも、エッセイストの葉石かおりさんの著書を無断で再編集したムック本『日本酒入門』(枻出版)が回収となったことがあります。枻出版は弱小とはいえませんが、弱小出版社となると、かけられる経費も人も少ないので、パクリ騒動が起こるのかと思ってしまいます。実際のところは、どうなんでしょうか?

川崎昌平さん(以下、川崎) 時代的には2000年代中盤あたりに、紙媒体による「ネットの画像を無断借用して編集した本」が多かったと記憶しています。当時はまだスマホ全盛期ではなく、「ネットで広まっているおもしろい画像を集めたもの」に価値があったのでしょう。今なら「まとめサイト」がその役割を果たしてくれるんでしょうが、当時はギリギリですが、そうした本が企画として成立する余地があった。

 僕の見立てですが、紙媒体でパクリをやる出版社は、弱小というより、刊行点数を増やさないといけない、厳守しないといけないところなのではないかと思います。「信念を持った弱小出版社」は、往々にして専門性の高さを売りにしている。したがって「パクりまでしてローコスト&大急ぎで本を作る必然性」がないわけです。歴史と伝統のある弱小出版社は、パクらず時間をかけて、思想や人文系の本を作っている。もちろん専門性の高さ=読者の少なさなので、少部数しか発行しませんし、新刊を出す→返本される→新刊を出す、という苦しいサイクルはどこも同じなのでしょうが……本当に作りたい本を作れているのは確かです。

 その意味では、「弱小出版社は、実はあまり儲けようとしていない」のではないかと僕はにらんでいます。儲けることよりも、会社を続けることを目的としているのではないかと。営利企業がそれでいいのか、というツッコミももちろんあるわけですが、「急いでそこそこ売れそうなタイトルをローコストで作るためにパクる」よりはマシだと考えています。まあ、弱小の定義も難しいですけど。

――しかし、会社的には売り上げを上げないとまずいですよね。弱小出版社は、どのように生き残っているんですか?

川崎 永遠の自転車操業ですね。こぐのをやめると倒れちゃうので、こぎ続けなきゃいけない。良いと信じて作った本がしっかり売れ……ないから弱小なのですが、返本の山が生じると、倒産してしまいます。ですから新刊を出し続け、数字上の売り上げを計上しつつ、また次の本を出せるようがんばる。新刊至上主義なのは、大手も弱小も規模こそ違えど、本質的には変わりないと思います。ただ、そういうことは考えすぎると暗澹たる気持ちになるので、編集者はそこを考えずに勤務すべし、というのが私の持論です。

■本来、引用はアカデミックな世界だと名誉なこと

――キュレーションメディアは、きちんと著作権問題をクリアしていれば、非常に便利な読み物だと思います。紙媒体でも、もともとある情報をまとめて書籍にすることはありますが、川崎さんはその点はどう考えていますか?

川崎 本というのは情報の塊ですが、情報は単体として存在するわけではありません。ある情報に注釈を加えたり、内容を変更したり、新しい解釈を重ねたりするためのツールが本です。ですから、本来の行為としての引用や転載は、情報のあり方、本の作り方としては正当なものだと思います。「引用が1カ所もない学術論文」なんてものがあったとしたら、むしろ「ちゃんと勉強しているのか?」と疑いたくなっちゃいますし、書き手側からしても引用されるのは、アカデミックな世界では名誉なことであり、かつ研究の弾みにもなるわけです。「へえ、私の考えは、こうした読まれ方をするのか。なら次は、こういう実験をしてみようかな」という具合に。

 ただ、そこにはルールがあります。引用にも厳格な作法が定められているのが普通です。私は本を編集する上では、適切な引用ならば引用のルールに則った表記の仕方で引用し、図版・画像の使用、テキストのまとまった転載であれば、著作権者への連絡および許諾を必ず取るようにしています。転載の許諾申請が大量になると、面倒なことは確かですが、まあ、編集者の仕事ってそこだろうと、「複数の知をつなぐ仕事」が編集なのだから、そこをサボっちゃいかんだろうと思いながらやっています。

 それと、そうされることで書き手も喜ぶというのを知っているからでもあります。2012年に出た『村上隆完全読本 美術手帖全記事1992-2012』(村上隆〈著〉、美術手帖編集部〈編〉、美術出版社)という本があって、私が美術ライター時代に書いた記事が転載されたんですが、そのときに、小さな記事だったにもかかわらず、ちゃんと編集部が連絡をくれたんですね。それがうれしかったというのもあって、編集者としても、そこはちゃんとやりたいというふうに考えています。

 キュレーションメディアも連絡や許諾申請をサボらず、ちゃんとやればいいのに、と思いますね。

――今回、ユーザー側も意識が少し変わってきていると思ったのが、女性向けキュレーションメディアの「MERY」で、SNSに投稿したオシャレな画像が記事に使われたことを喜んでいるユーザーがいたと聞いたことです。パクられて喜ぶ人もいるのだと知りました。

川崎 「私の論文が引用された!うれしい!」というのとは違う気がしますね。引用した側が相当の覚悟と決意とで作ったものであるならば、その労作に貢献できる喜びはあるでしょう。でも「なんかテキトーな画像ないかな」とググって探して見つけられて転載されても……うれしいんですかね? 自己承認欲求と自己表現が、ごっちゃになっているものを今の日本のウェブではよく見かけますが、そのあたりの気風も、パクリが横行する土壌を産んでいるのかもしれません。

■自分を編集できるスキルを身につければ、もっとおもしろい表現ができる

――パクリ問題が起きたのは、キュレーションメディアに編集者がいないことも要因のひとつだといわれていますよね。

川崎 作り手もユーザーも自分で自分を編集できる世界が生まれれば、最高ですよね。手前味噌ですが、編集者でありながら本を書いていると、自分の著作に関しては「自分で自分を編集する」という作業が、そこそこできている方だという自負があります。今回出した『重版未定』や15年に出した『自殺しないための99の方法』(一迅社)などの初出は同人誌です。同人誌の特徴は、編集者がいないこと。したがって、自分で自分の本を編集しなければなりません。これができている本とできていない本では、やはり差が出ます。もちろん「編集できていない本」であっても、あふれんばかりの情熱で押し切って、めちゃくちゃおもしろい本になっている、という例は多々あります。

 でも「編集できていない本」と向かい合うには、受け手にも作り手と同じぐらいの情熱が必要です。多くの同人誌のイベントは、読みたい・読ませたいという愛にあふれた人々の集いですから、それでも成立しますが、より外の世界……例えば一般の書店やウェブで発表しようとなると、ある程度の客観性が求められます。

――同人誌もそうですが、今はSNSやブログで、自分からなんでも発信できる時代です。編集のスキルというと、具体的にはどんなことでしょう?

川崎 伝え方だと思います。例えば、猫が好きで猫の記事を書く人は、猫に愛がある。そこは一番大事な部分です。でも、愛があった上でも伝わらない相手がいます。その相手にどうすれば伝わるかを、一個一個の手順として、客観的に引いて考えることができる、または少しクールダウンして読み直すことができる技術。それが編集のスキルです。

 ひとりよがりの意見になっていないか、異なる意見の存在を前もって想定できているか、作品に対する関係者の存在を理解すると同時にそれらの調整は済んでいるか……などなど、基本的な「編集のスキル」の有無は、紙媒体だろうがウェブだろうが、意識すべきポイントだと思います。そういう編集のスキルを磨ける場があれば……パクリ記事を作っている人もウェブの世界のおもしろさに気づけるんじゃないかな、と想像しているんですが。

 キュレーションメディアの件でもそうですが、ウェブがらみで炎上する人を見ていると、冷静になるタイミングを知らないと感じます。

――よく言われるのが、きちんと読まずに反射的に発言してしまうことですね。

川崎 そうですね。やはり読むスキルは、数ある編集のスキルでも必須のもの。コツは「落ち着いて最後まで読むこと」に尽きます。予備校でセンター試験の現代文を教えていたとき、やはり最後まで読むことが重要だと教えていました。一度最後まで読んで、一呼吸置いてから問題を解く。設問と問題文を行ったり来たりする人もいますが、あれは絶対ダメです。文章の論旨を自分の思考ではなく設問によって読み解こうとしてしまうから、答えを自分で構築できなくなるわけです。

 そして「読まずに書く」のもダメですが、「書いたけど読まない」のも最悪です。編集者からすると、誤植の最大の原因となります。野球選手の年俸のニュース記事で、年俸6300万円のはずが「年俸6300円」になっていたり(笑)。そういうのを目にするたびに、自戒として「書いたら読む」を徹底せねばと思っています。

――川崎さんは、今後も出版社勤務と作家活動を続けていかれる予定ですか?

川崎 はい。今後は、『重版未定』に出てくる架空の出版社「漂流社」を実際に作ろうと思っています。出版社が漫画を作るのは当たり前ですが、「漫画が出版社を作る」のはなかなか例がないと思って。僕一人で、著者、編集者、編集長をやろうと思っているので、「それ、もうお前の同人誌じゃねーか!」という話ですが(笑)。
(姫野ケイ)

川崎昌平(かわさき・しょうへい)
1981年、埼玉県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。作家、編集者、東京工業大学非常勤講師。2007年、『ネットカフェ難民』(幻冬舎新書)により、新語・流行語大賞トップテン。著書に『若者はなぜ正社員になれないのか』(ちくま新書)、『自殺しないための99の方法』(一迅社)、『小幸福論』(オークラ出版)、『はじめての批評』(フィルムアート社)ほか。

「日本が北朝鮮のような独裁国家になるかもしれない」映画『太陽の下で』の監督が語る未来

 北朝鮮の人々の生活を追いかけたドキュメンタリーはやらせだった!? 映画『太陽の下で―真実の北朝鮮―』は、ロシアのヴィタリー・マンスキー監督が撮影した北朝鮮の一家族を映し出したドキュメンタリー。撮影前の台本は北朝鮮側に修正され、撮影後の映像も検閲を受けることになっていたが、マンスキー監督は検閲前にフィルムを外部に持ち出して、この映画を完成させた。そこに映し出されていたのは、幸せ家族を装うように北朝鮮側のスタッフに指示されている家族の姿を隠し撮りしたもの。『太陽の下で~』は、北朝鮮の幸せ一家のやらせ映像を暴露した驚きのドキュメンタリーなのだ。

 そこで来日したヴィタリー・マンスキー監督にこの映画の制作意図、監督の目に映った北朝鮮の人々、そしてこの映画が、日本人の私たちに投げかけていることを語っていただいた。

■北朝鮮の人々は実に幸せそうで、そこにはひとつも嘘はありません

――この映画は撮影許可を得るまでに2年間、家族のドキュメンタリーを撮影するのに1年を要したそうですね。北朝鮮の映画を撮影することが困難な道になることはあらかじめ覚悟されていたと思いますが、マンスキー監督はなぜ北朝鮮の家族のドキュメンタリーを撮影しようと思われたのでしょうか?

ヴィタリー・マンスキー監督(以下、マンスキー監督) 私と私の両親はソビエト連邦の出身で、スターリン主義の独裁国家の中で育ちました。私は映画というタイムマシーンに乗って、自分たちの過去を見てみたいと思ったのです。北朝鮮を選んだのは、独裁国家の体制がある国が北朝鮮だったから。でも実際には、私が見たかったものはそこにはありませんでした。宇宙船に乗せられて別の国で降ろされたような気持ちです。スターリン時代、全体主義に対して芸術家などは反抗をしていましたし、国家権力と社会の間には矛盾したものがありました。しかし、北朝鮮にはそれがないのです。国民はみんなとても幸福そうでした。それを幸福と呼ぶのであれば。

――確かにこの映画で、北朝鮮の家族の方たちは、数々の指示に素直に応じていましたね。そこには不満な様子は全くありませんでした。監督は彼らの笑顔は本物だと思いましたか? 撮影時のことを教えてください。

マンスキー監督 彼らは「ああしろ、こうしろ」と指示されていることに対して素直に応じていましたし、全く反抗心の芽も感じられませんでした。というか、「なぜこんなことするんだ?」という思考が全くないようでした。とても厳しい決まりに対して、従順であることの体制が出来上がっているのです。北朝鮮の方たちは、この映画の8歳の女の子ジンミと同じように、幼いときから従うように教育されて育ちますから、疑いを持つことはないのでしょう。

 私と家族が生きたスターリン時代は、表向きは同じように全体主義を教えられましたが、家に帰れば自由がありました。しかし、北朝鮮には家庭においても自由はない。抜け道はいっさい用意されていないのです。

■北朝鮮と日本、いつ立場がひっくり返るかわからない未来

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――日本人は拉致問題が解決していないこともあって、北朝鮮に対してあまりいい印象を持たない人も多いと思うのですが、この映画が日本公開されるにあたり、日本の観客に向けたメッセージなどはありますか?

マンスキー監督 私はこの映画で北朝鮮を宣伝するつもりは全くありません。日本の方たちには、近い国である北朝鮮の人たちが、どんな生活を送っているのかを知ってほしいのです。もうひとつ、この映画で伝えたいこと、それは北朝鮮の人たちが手に入れていないフリーダム、自由についてです。自由というのはスミレの花のように小さなものです。水を与えないとしおれてしまうし、太陽を浴び過ぎると枯れてしまいます。とても繊細なのです。

 いいですか、自由というのは自然に発生するものではありません。今、あなたたちが生きている日本の自由は決して安全なものではなく、いつ失うかわからないのです。自由は国民みんなで獲得するもので、それらを絶えず意識し、思考していかないと、あなたの指の隙間からこぼれて消えていきます。あなたたちは、この映画が抱える問題点を自分たちの問題として考えてみてほしい。これは心からの願いです。

――今、日本は北朝鮮と比べたらとても自由ですが、それが危ぶまれているような意識はあります。少し怖くなってきました。

マンスキー監督 あともうひとつ言いたいことがあります。この先、どんな未来が待っているかは誰もわかりません。しかし、ソ連時代、第二次世界大戦でナチを追い払い、多くの犠牲を出して、ヨーロッパを解放しましたが、ヨーロッパは再びスターリンの独裁体制に入ってしまいました。このように北朝鮮と日本も、いつひっくり返るかわからないのです。独裁体制になる可能性だって捨てきれないのですよ。みなさん一人ひとりの意識にかかっています。安泰に暮らしている場合ではないのです。

■北朝鮮の女性たちは自由からくる美しさを失ってしまっている

――北朝鮮の女性たちは、報道で見る限り、美しい人たちをそろえている印象がありますが、実際に街行く女性たちに対して、監督はどういう印象を持たれましたか? 

マンスキー監督 美とはなんだと思いますか? 造形的にきれいに整った顔のことでしょうか? 違いますよね。美とは思考する眼差しだったり、緊張感から解けたときの穏やかな顔だったり、そういう顔が美しさであると私は考えます。その美しさはどこからくるかといえば、自由です。形として整っていても、北朝鮮の女性の美に自由はありませんでした。だから私の感覚では美しい人と感じることはなかったですね。

――北朝鮮の人々は、それでも幸福であり、不幸ではないのですよね。

マンスキー監督 ええ、不幸だと感じてはいません。例えば、ある日、エコに目覚めた人が、毛皮のために飼育していた動物を檻から出して野生に戻したそうです。しかし、数日後に動物たちは檻に帰ってきた。なぜだと思います? 食べていけないからです。生まれてからずっと檻の中にいて、食べ物を与えられてきたから、解放されても、どうしたらいいのかわからないのですよ。先日は脱北者が韓国へ渡ったけど、結局、また北朝鮮に戻ってきたという話を聞きました。理由は同じですね。

――監督はこの映画でたくさん語りたいことがあるように思いましたが、映画の中ではご自身の主張をあまり前面に押し出していませんね。

マンスキー監督 私は自分の映画を見てくださる観客の皆さんを尊敬しています。この映画の演出で、見ている皆さんに対して「教える」ということはしません。映画を見て、自分自身で結論を導いてほしいからです。描かれている世界を受け取り、それについて考えて心を豊かにしていく。この映画は映画館向きです。大きなスクリーンで、あなた自身も北朝鮮に入り込んだように感じながら見てほしいですね。
(斎藤香)

ヴィタリー・マンスキー監督
ロシアのドキュメンタリー監督。モスクワ・ドキュメンタリー映画祭会長。『青春クロニクル』『ワイルド・ワイルド・ビーチ』『祖国か死か』などの作品がある。

『太陽の下で―真実の北朝鮮―』
2017年1月21日、新宿シネマートほか全国ロードショー
公式サイト

「日本が北朝鮮のような独裁国家になるかもしれない」映画『太陽の下で』の監督が語る未来

 北朝鮮の人々の生活を追いかけたドキュメンタリーはやらせだった!? 映画『太陽の下で―真実の北朝鮮―』は、ロシアのヴィタリー・マンスキー監督が撮影した北朝鮮の一家族を映し出したドキュメンタリー。撮影前の台本は北朝鮮側に修正され、撮影後の映像も検閲を受けることになっていたが、マンスキー監督は検閲前にフィルムを外部に持ち出して、この映画を完成させた。そこに映し出されていたのは、幸せ家族を装うように北朝鮮側のスタッフに指示されている家族の姿を隠し撮りしたもの。『太陽の下で~』は、北朝鮮の幸せ一家のやらせ映像を暴露した驚きのドキュメンタリーなのだ。

 そこで来日したヴィタリー・マンスキー監督にこの映画の制作意図、監督の目に映った北朝鮮の人々、そしてこの映画が、日本人の私たちに投げかけていることを語っていただいた。

■北朝鮮の人々は実に幸せそうで、そこにはひとつも嘘はありません

――この映画は撮影許可を得るまでに2年間、家族のドキュメンタリーを撮影するのに1年を要したそうですね。北朝鮮の映画を撮影することが困難な道になることはあらかじめ覚悟されていたと思いますが、マンスキー監督はなぜ北朝鮮の家族のドキュメンタリーを撮影しようと思われたのでしょうか?

ヴィタリー・マンスキー監督(以下、マンスキー監督) 私と私の両親はソビエト連邦の出身で、スターリン主義の独裁国家の中で育ちました。私は映画というタイムマシーンに乗って、自分たちの過去を見てみたいと思ったのです。北朝鮮を選んだのは、独裁国家の体制がある国が北朝鮮だったから。でも実際には、私が見たかったものはそこにはありませんでした。宇宙船に乗せられて別の国で降ろされたような気持ちです。スターリン時代、全体主義に対して芸術家などは反抗をしていましたし、国家権力と社会の間には矛盾したものがありました。しかし、北朝鮮にはそれがないのです。国民はみんなとても幸福そうでした。それを幸福と呼ぶのであれば。

――確かにこの映画で、北朝鮮の家族の方たちは、数々の指示に素直に応じていましたね。そこには不満な様子は全くありませんでした。監督は彼らの笑顔は本物だと思いましたか? 撮影時のことを教えてください。

マンスキー監督 彼らは「ああしろ、こうしろ」と指示されていることに対して素直に応じていましたし、全く反抗心の芽も感じられませんでした。というか、「なぜこんなことするんだ?」という思考が全くないようでした。とても厳しい決まりに対して、従順であることの体制が出来上がっているのです。北朝鮮の方たちは、この映画の8歳の女の子ジンミと同じように、幼いときから従うように教育されて育ちますから、疑いを持つことはないのでしょう。

 私と家族が生きたスターリン時代は、表向きは同じように全体主義を教えられましたが、家に帰れば自由がありました。しかし、北朝鮮には家庭においても自由はない。抜け道はいっさい用意されていないのです。

■北朝鮮と日本、いつ立場がひっくり返るかわからない未来

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――日本人は拉致問題が解決していないこともあって、北朝鮮に対してあまりいい印象を持たない人も多いと思うのですが、この映画が日本公開されるにあたり、日本の観客に向けたメッセージなどはありますか?

マンスキー監督 私はこの映画で北朝鮮を宣伝するつもりは全くありません。日本の方たちには、近い国である北朝鮮の人たちが、どんな生活を送っているのかを知ってほしいのです。もうひとつ、この映画で伝えたいこと、それは北朝鮮の人たちが手に入れていないフリーダム、自由についてです。自由というのはスミレの花のように小さなものです。水を与えないとしおれてしまうし、太陽を浴び過ぎると枯れてしまいます。とても繊細なのです。

 いいですか、自由というのは自然に発生するものではありません。今、あなたたちが生きている日本の自由は決して安全なものではなく、いつ失うかわからないのです。自由は国民みんなで獲得するもので、それらを絶えず意識し、思考していかないと、あなたの指の隙間からこぼれて消えていきます。あなたたちは、この映画が抱える問題点を自分たちの問題として考えてみてほしい。これは心からの願いです。

――今、日本は北朝鮮と比べたらとても自由ですが、それが危ぶまれているような意識はあります。少し怖くなってきました。

マンスキー監督 あともうひとつ言いたいことがあります。この先、どんな未来が待っているかは誰もわかりません。しかし、ソ連時代、第二次世界大戦でナチを追い払い、多くの犠牲を出して、ヨーロッパを解放しましたが、ヨーロッパは再びスターリンの独裁体制に入ってしまいました。このように北朝鮮と日本も、いつひっくり返るかわからないのです。独裁体制になる可能性だって捨てきれないのですよ。みなさん一人ひとりの意識にかかっています。安泰に暮らしている場合ではないのです。

■北朝鮮の女性たちは自由からくる美しさを失ってしまっている

――北朝鮮の女性たちは、報道で見る限り、美しい人たちをそろえている印象がありますが、実際に街行く女性たちに対して、監督はどういう印象を持たれましたか? 

マンスキー監督 美とはなんだと思いますか? 造形的にきれいに整った顔のことでしょうか? 違いますよね。美とは思考する眼差しだったり、緊張感から解けたときの穏やかな顔だったり、そういう顔が美しさであると私は考えます。その美しさはどこからくるかといえば、自由です。形として整っていても、北朝鮮の女性の美に自由はありませんでした。だから私の感覚では美しい人と感じることはなかったですね。

――北朝鮮の人々は、それでも幸福であり、不幸ではないのですよね。

マンスキー監督 ええ、不幸だと感じてはいません。例えば、ある日、エコに目覚めた人が、毛皮のために飼育していた動物を檻から出して野生に戻したそうです。しかし、数日後に動物たちは檻に帰ってきた。なぜだと思います? 食べていけないからです。生まれてからずっと檻の中にいて、食べ物を与えられてきたから、解放されても、どうしたらいいのかわからないのですよ。先日は脱北者が韓国へ渡ったけど、結局、また北朝鮮に戻ってきたという話を聞きました。理由は同じですね。

――監督はこの映画でたくさん語りたいことがあるように思いましたが、映画の中ではご自身の主張をあまり前面に押し出していませんね。

マンスキー監督 私は自分の映画を見てくださる観客の皆さんを尊敬しています。この映画の演出で、見ている皆さんに対して「教える」ということはしません。映画を見て、自分自身で結論を導いてほしいからです。描かれている世界を受け取り、それについて考えて心を豊かにしていく。この映画は映画館向きです。大きなスクリーンで、あなた自身も北朝鮮に入り込んだように感じながら見てほしいですね。
(斎藤香)

ヴィタリー・マンスキー監督
ロシアのドキュメンタリー監督。モスクワ・ドキュメンタリー映画祭会長。『青春クロニクル』『ワイルド・ワイルド・ビーチ』『祖国か死か』などの作品がある。

『太陽の下で―真実の北朝鮮―』
2017年1月21日、新宿シネマートほか全国ロードショー
公式サイト

猫トラブルの原因は「近隣住民同士のいさかい」――地域猫活動が浮き彫りにする、意外な問題点

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 これまで、日本のペット事情について取材を行ってきた、短期連載「ペットと人のこれからを考える」。初回は、架空のペットブームにより犬猫の値段が高騰していること、そして第2回は、そんな状態に疑問を持ち、ペットショップでありながら生体販売をやめたChouChouの店長、澤木崇氏にお話をうかがった。

 今、各所で「殺処分ゼロ」を目指す試みがある。しかし澤木氏の言うように「ペットショップより前の段階で、命を落とす子犬や子猫がたくさんいる」ことを考えると、動物愛護センターに持ち込まれるのは、流れの中の“末端”。もっと先端の“蛇口”にあたる部分を取り締まらなければ、到底「殺処分ゼロ」にはならないのだ。

 その取り組みで最も有名なのが「TNR活動」だ。TNRとは、「Trap Neuter Return(トラップ・ニューター・リターン)」の略。飼い主のいない猫を捕獲して不妊手術を行い、元の場所に戻すことを指す。そうして手術を受けた猫は、人が目で見てわかるように、耳の先を軽くV字にカットされ、その形状が桜の花びらに似ていることから、「さくらねこプロジェクト」とも呼ばれている。

 大阪に、飼い主のいない猫の不妊手術専門の病院「のらねこさんの手術室」がある。この病院では、避妊手術をメス8,000円、オス4,000円、入院費800円、送迎料金2,000~3,000円という安価な料金でサービスを行っているという。今回は、その代表・秋本真奈氏と副代表の安田和美氏に、病院でのTNR活動やこれからの課題をうかがった。

■「猫を増やしすぎない」TNR活動とは?

――まず、野良猫の不妊手術が必要な理由を教えてください。

安田和美氏(以下、安田) ねずみ算は有名ですが、実は“猫算表”というのがあるんです。猫は1回のお産につき平均6匹産みますが、昔は母猫の栄養状態が悪いため、そのうち2~3匹残ればいい方でした。今は栄養状態がいいので、みんな大きくなります。年に4回産む子もいますから、1匹の猫が子猫を産み、その子猫がまた子猫を産みとなると、1匹の猫から年間50~70匹くらいに増える計算なんです。昔より今の方がスピードは速いと思います。

――猫が増えると、なにか問題なのでしょうか。

安田 だいたい年間7万匹の猫が殺処分されていますが、そのうち約4万4,000匹が子猫です。産まれて1~2カ月たち、離乳の終わった子猫なら里親を探せますが、まだ乳離れできていない、へその緒がついた状態で持ち込まれた子は確実に殺処分となってしまいます。殺されるために産まれてくるような子があまりに多いんです。

秋本真奈氏(以下、秋本) 私たちはこの病院を始めるまで、動物愛護団体にいました。そこは、動物を保護して里親を見つけるところなのですが、次から次へと保護されてくるんです。里親に出せない性格や病気の子もたくさんいるので、頭数はどんどん増えていってしまいます。そこで「今、なにを急がないといけないか」と考えたら、殺されている子をこれ以上増やさないようにすべきだと、猫の不妊手術活動にたどり着きました。

――猫が病院に持ち込まれる経緯には、どんな例がありますか?

安田 地域猫の世話をしている方やボランティアの方から依頼が来たら、まずはどんな場所に何匹いるのかなど、聞き取り調査をします。それから捕獲器を頭数分持って、餌をあげている時間帯に合わせて、うかがいます。捕獲器の中にエサを入れて設置しておくと、8割方捕まりますね。そこで捕まらなかった子は、用心深いのか臆病なのか、その子の性格に合わせて、あの手この手で罠を作ります。

秋本 1回失敗すると次は同じ手は使えませんから、捕獲のタイミングって、すごい緊張感があるんです。

安田 確保したら落ち着かせるために捕獲器を布でくるんで、病院に連れて帰ります。捕獲器の外から麻酔をかけて眠らせて、体重を量って、ケガをしている子がいたら手当てをして、ご希望の場合はワクチンを打ちます。不妊手術自体はオスで5分くらい、メスでも麻酔をかけてから覚醒するまで30分くらいです。一晩病院で預かって様子を見て、翌日同じ場所へ返しに行きます。

――手術も麻酔の時間も、ずいぶん短いんですね。

安田 低容量麻酔とはいっても、あまり体にいいものではないので、少ない量でかつ短時間で済ませたいんです。飼い猫ではなく、地域猫や野良猫が来るため、健康状態がわかりません。中には肝臓の悪い子も来ますから、なるべく負担の少ないようにしたいと思っています。そういう猫が、だいたい1日に20~30匹来ています。

■多岐にわたる猫トラブル

――“地域猫”という言葉がありましたが、野良猫とは違い、誰かに管理されているということでしょうか?

秋本 特定の飼い主を持たずに、地域で管理されている猫のことです。私たちのやっているTNR活動も、“地域猫活動”といわれています。猫が増えすぎたり、トラブルが起きないように猫との共存を考えていく活動です。よくある相談が、「猫が家の庭で排泄し、苦情になっている」というもの。そういう問題に対して、一つひとつ対応の仕方をお話していきます。

――その場合、どういう指導をするのでしょうか。

秋本 「ここで排泄してほしい」という敷地内に、猫が好む砂を使ったトイレを設置します。それで解決するかどうかはわかりませんが、まずはやってみましょうと。苦情を言ってこられた方には、消臭剤をプレゼントするなど、誠意のある対応をします。実際それで猫が来なくなることはあまりないと思いますが、意外とそれで解決したりするんです。

安田 猫のトラブルって、「もともと仲のよくない近隣の人が、猫に餌をやっているから気に入らない」といったように、実際は住民の方同士が揉めているケースが多いんです。それに猫が巻き込まれている感があります。心に余裕がないと、ちょっとフンをされただけでも許せなくなるみたいですね。ただ、人って、誰かから感謝されると、他人に対して寛容になるもの。真摯にお詫びをされると責めにくいものです。つまり人間関係が良くなると心が広くなります。猫に対して苦情を言っていた人でも、揉めていた人との関係が良好になるだけで、猫問題へのいら立ちが収まる場合は多いんです。それで、半分以上の猫問題が片付くんじゃないかと思うほどです。

――ほかに、どんな猫トラブルの例があるのでしょうか。

安田 地域猫に餌をやっている方のマナーも問題になりがちです。地域によって決まりは違うのですが、基本は「置き餌はしない」。自分が餌をやりに行くときは、その子が食べられる量をあげて、食べ終わるまで待ち、片付けて帰る。マンションの駐車場や駐輪場といった私有地であげないなどのマナーがあります。それを守れない人が多いようで、「餌をそのままにして帰る」という苦情が一番多いんですよね。必要以上の餌を放置して、カラスがたかっているとか、あちこちの猫が集まってくるとか。マナーがなっていないと、結局は猫のためにならないことを、餌やりさんが理解しないといけないんです。

――餌をやっている人たちは、自分の家で飼えないのでしょうか?

秋本 飼えないですね。まず捕まえられないですし、捕まえて家に入れたところで、地域猫とはいえ、野生です。簡単には人に慣れません。

安田 野生の猫を家に入れるリスクって、すごくあるんですよ。「外で暮らす猫は不幸だ」という考えで、どんどん家に入れる方もいるんですが、多頭飼いになることで、発症のリスクが高くなる病気もありますから、野生の猫が家の中で幸せに暮らせるとは思えないんです。猫は結構、自分でちゃんと餌を取れる動物。ゴミを漁ったりもしますが、ネズミや虫を捕って食べたりしています。生きていくための能力があるから、あまり過保護にして守りすぎるのもよくないのではないでしょうか。とはいえ、地域猫の適性数ってあると思うんです。今は頭数が多すぎるから、餌も足りないしトラブルにもなる。人間が見守るだけになれば理想かな、と思います。不妊手術の活動をしていると、よく言われるんですよ、「猫を絶滅させたいのか」って。決して、そうではないんです。絶滅なんてしてほしくないし、いつか猫が自分たちで餌を取って生きていけるような環境を作っていくのが目標です。

■猫が「好きか嫌いか」は問題ではない

――猫が嫌いな人には、地域猫活動は迷惑なものなのでしょうか。

秋本 猫が嫌いだといって排除するだけでは、解決にならないんですよね。一方で、猫好きな方に餌をやるなと言っても、隠れてあげるようになるだけ。それなら「時間と場所を決める」「しっかり掃除をする」「不妊手術を受けさせる」というルールを作る方が、早く解決すると思います。

安田 実際に、地域猫の管理に成功している地域もあるんです。猫たちを手術して、写真を撮って個体管理をしっかり行っています。その地域の団地に住む方が “見守り隊”を結成して、猫の様子をみているんです。今では、2~3カ月に1匹手術をする程度になっていて、その地域では完全にTNRが完結しています。

――活動が一段落した地域は、ほかにもあるのでしょうか?

秋本 アメリカやイギリスにも、もうTNRが終わっている地域があると聞きます。何年か前に比べたら猫の数は激減しているそうです。

安田 瀬戸内海の男木島(おぎじま)は、住民の数より多いほどの猫が暮らしている“猫の島”として有名ですが、苦情もかなり寄せられていたそうです。実際にニュースでもこの問題は取り上げられていました。そこの役所の方が、TNR活動に力を入れようと提案したのですが、その方は、もともと猫が大嫌いだったんだとか。どんどん増えていくことで、さらに嫌悪感が増して、それを「どうにか排除したい」という気持ちでいろいろ調べたらしいんです。そうして地域のボランティアさんと打ち合わせをしているうちに、「排除するだけではダメだ」と理解が深まったと言っていました。無料で猫の不妊手術が受けられるシステムを作っている「どうぶつ基金」さんに依頼をして、2日間で200匹の猫を不妊手術するという活動を行ったのですが、そのときに「本当によかった、猫が幸せに暮らしていける」っておっしゃっていました。TNR活動に協力してくださる方は、猫の好き嫌いにかかわらず、問題を理解してくださっている方なので、ありがたいと思っています。

*     *     *     *     *     *     *     

 「のらねこさんの手術室」が目指すのは、猫と人間の共生だという。だが、そこに行き着くために必要なのは、過度な猫の保護でも、排除でもない。トラブルの根源を見つめ、それを解消する前向きな姿勢と、さまざまな立場の人がいることを理解することだ。

 最近は、無料で不妊手術を行うなど、行政もこのTNR活動に着目しつつあり、今後「殺処分ゼロ」への取り組みに欠かせない活動となっていくのではないだろうか。

 これまで、ペット問題を通して、“人とペットが共生する”術について探ってきたが、次回はペットの老後について考えてみようと思う。ペットも長寿になり、人間と同じように、認知症を発症したり、健康状態に問題を抱え、介護が必要になったペットがたくさんいる。そうしたペットたちを、人はどのように支えていくべきなのだろうか。次回は、今や全国にある“老犬ホーム”を取材する。
(取材・文=和久井香菜子)

『糟糠の妻はなぜ捨てられるのか』の著者が一番なりたくない「捨てられる妻」とは?

 「糟糠(そうこう)」とは、「酒粕(かす)」と「糠(ぬか)みそ」のことで、粗末な食事を意味し、「糟糠の妻」とは貧しい時から連れ添った妻を指す。成功した男性が貧しい時代に苦労させた妻を捨て、若く美しい女性を妻に迎える例は枚挙に暇がないが、それはなぜなのか。『糟糠の妻はなぜ捨てられるのか』(プレジデント社)の著者で婚活アドバイザーの大西明美さんに聞いた。

■「ゲス不倫」は、成功した男が女を裏切る行為

――著書『糟糠の妻はなぜ捨てられるのか』が話題ですが、2016年はまさに糟糠の妻を裏切り、不倫に走る男性が目立ちましたね。

大西明美さん(以下、大西) そうですね。昨年は本当にいろんな不倫報道がありました。原稿を書き終わった後も落語家の三遊亭円楽さんとか、歌舞伎役者の中村橋之助(現・芝翫)さんとか、どんどん出ていましたね。

 実は、この本の発売日(16年9月29日)には、川谷絵音さん(ゲスの極み乙女。のボーカル)と交際している19歳のタレントの飲酒を所属事務所が認めたという報道もあって、ビックリしました。

――川谷さんは16年はじめにタレントのベッキーさんとの不倫が報道されたばかりでしたから、批判も多かったようです。「ゲス不倫」という言葉も生まれました。

大西 私は、「ゲス不倫」というのは「成功した男が女を裏切る行為」ととらえています。なぜそんなひどいことをするのか、というのが本書のテーマなのです。

――浮気そのものは成功していない男でもすると思いますが、たしかに本書を読むと、「成功男」の裏切りの構図がよくわかります。この本は銀座と大阪の北新地の書店でよく売れているそうですね。

大西 そうなんです。北新地も銀座のような高級飲食店街ですから、高級店のホステスさんたちがよく読んでくださっているのだそうです。

――妻を裏切る夫のタイプや、裏切られる妻のタイプなどを詳しく書いていらっしゃるからでしょうか?

大西 そうですね。でも、結局、浮気する男性は懲りないので、すぐに別の女性と不倫しますよ。

■夫と異なる価値観を持っている妻は捨てられやすい

――なぜ「成功男」は不倫するのですか?

大西 仕事ができる人は、エネルギッシュで話も面白いですよね。それに、周囲の評価が高く、お金も持っています。こういうエネルギーは、不倫、つまりセックスで発散しやすく、そもそもこんな魅力的な男性を周囲の女性は放っておかないでしょう。

 一方で、成功男も常に成功しているわけではなく、ライバルや取引先との関係、社内の立場などで不安もあります。この不安を不倫で解消する方も多いです。たとえば不本意な出向などで不安がある時に、「出向でお給料が下がったら、息子の受験はどうなるのよ?」などと言う妻は不倫されやすいですね。「あなたなら、どこでも大丈夫!」と言ってほしいのに、息子さんを優先されたらガッカリします。

 これに対して、同じ職場の女性は事情もわかっているし、共感してくれるので、つい不倫に走ってしまいがちです。なので、夫とは異なる価値観を持っている妻は捨てられやすいです。また、普段、夫に「なぜ?」と言えなくなったら要注意ですね。夫に質問する気がないというのは、夫に興味がないということですから。

■結婚は制度としては「死んでいる」

――著書では「捨てられる妻」を類型化されています。

大西 いろいろなタイプがいますが、たとえば「進化する夫を否定する妻」ですね。私は「『木綿のハンカチーフ』妻」と呼んでいます。これは1975年の暮れに発売され、翌年大ヒットした曲のタイトルですが、地元の恋人が「都会の絵の具」に染まることを受け入れられない女性の歌です。「今の自分」にダメ出しを続ける妻と、「いつもがんばっているあなたが好き」と応援してくれる愛人では、勝敗は見えていますね。

 もう一つは、進化した夫と釣り合わなくなる「無関心妻」です。別に出世を期待していたわけではなく、単に好きだったから結婚しただけで、妻に落ち度がない分、悲劇になります。急にセレブになった夫との生活についていけず、価値観も話題も合わなくなってしまうのです。

 そして、私が一番なりたくないのは、「成功男」に否定的でありながら「捧げ尽くす妻」ですね。夫を一流にしたくて努力してせっかく成功しても「あなたを支えて、育てたのは私なのよ」とずっと恩着せがましく言い続けて、夫の成長をそれ以上認めようとしない妻です。窮屈になった夫がほかに居場所を求めるのは、必然でしょう。

――たしかに不倫される妻の側にも「理由」があるのはわかる気もしますが、これだけ不倫が多い時代に、そもそも結婚する意味はあるのでしょうか?

大西 結婚はもう制度としては死んでいますよね。結婚と恋愛の大きな違いは「責任の取り方」ですが、別に結婚していなくても責任は取れますから。もちろん結婚して家庭を築き、それぞれの責任をまっとうするのはとてもいいことです。私がご相談をいただく方は、皆さんがそういう夢を持っていらっしゃいます。

■インスタグラムが恋愛を変えた?

――今年も不倫ははやるのでしょうか?

大西 そう思います。著書でも触れましたが、相模ゴム工業の調査によりますと、13年1月の時点で配偶者や交際相手以外のセックスのお相手がいる割合は、男性で26.9%、女性が16.3%でした。結構な数字ですよね。

 私としては昨年の田中萌さん(テレビ朝日アナウンサー)と先輩アナウンサー、中村橋之助さんと芸妓さんの不倫は驚きよりもショックでした。田中さんはあんなにかわいいのに、なぜ妻子ある人と……とか、三田寛子さんというしっかり者の奥様がいる橋之助さんがなぜ……とかテレビを見てハラハラしていました。今年はもっとすごい不倫カップルが出てくるかもしれません。

――昨年はりゅうちぇるさんとぺこさん、DAIGOさんと北川景子さんなど新しいご夫婦も誕生しました。

大西 りゅうちぇるさんたちは「恋人キャラ」が微笑ましくてよかったので、うまく「理想の夫婦」に方向転換できればいいですね。「美人は3日で飽きる」といいますから、心配なのはDAIGOさんですね(笑)。

――今後の不倫はどうなっていくと思われますか?

大西 不倫といいますか、恋愛全体に「格差」が広がると思います。モテる人はよりモテて、モテない人はよりモテなくなるということです。これにはSNSの普及が関連していて、その中でも特にオシャレなインスタグラムは、かなり影響があると考えます。

 インスタに載せるようなカッコイイ写真というのは、「自分への興味」つまりナルシシズムの表れなんですね。これらをうまく使いこなせて、女性の話もきちんと聞いてあげられるリッチな年上男性はどんどんモテます。

 そして、平野ノラさんのようなバブルを知らない世代がバブルに憧れていることからもわかるように、ロリータ風よりもアダルトな雰囲気を目指す女性が増え、妻子がいてもオトナの男性と交際したいと思う女性も増えると思います。そんなカップルのために出てきそうなビジネスが「不倫民泊」ですね。これは今年こそ当たると思います。私も「しのびの宿 おおにし」とか経営してみたいです。防音もちゃんとして、逢瀬のために提供しますよ。不倫の時代はまだまだ続きますね。
(蒼山しのぶ)

大西明美(おおにし・あけみ)
婚活アドバイザー。2010年からクリスチャン専門の結婚相談所を経営。20年で4万3000件以上の「婚活&恋愛アドバイス」を実施。これまで1000人以上の不倫カウンセリングも行う。現在は1日20件以上の婚活メール相談や年間100人以上の直接面接による婚活アドバイスをこなしつつ、「WEBプレジデントウーマン」で働く女性向けの婚活記事を連載するなど、恋愛や婚活、不倫に関するさまざまな情報を積極的に発信し続けている。著書に『となりの婚活女子は、今日も迷走中』(かんき出版)がある。

「専業主婦かバリキャリか」二択の時代ではない! 女性のライフプランに必要なこととは?

(前編はこちら)

 配偶者控除廃止問題をきっかけに、現代女性が置かれている日本社会の現状について前編で触れた。では、これからの日本で女性はどう考え、行動して生きていけばよいのだろうか。引き続き、大沢真知子さんに聞いた。

■日本社会は女性に厳しい時代に

――女性がこれからの社会を生きていくためには、どういったライフプランを考えることが大切ですか?

大沢真知子さん(以下、大沢) 今後、配偶者控除が廃止になる可能性は高く、そうなれば、女性が自分自身で自立し、稼ぐことのできるスキルを身につける覚悟をしなくてはいけません。

 自分の人生についての設計がなく、「専業主婦になればいい」という安易な考えでは、生活保障がない上に、結婚して子どもができても金銭的に大変になります。子どもを養育するためにも、お母さんが働ける力を持つことは必要になってくると思います。

 「専業主婦かバリキャリか」と二極化して考えてしまいがちですが、そうではなくて、何があってもきちんと稼げるスキルを持っていることが重要なのです。例えば、市場価値のある資格を取って、夫の転勤についていったとしても働けるようなスキルを持つこと。そのためには、20代で自己投資をして、スキルを身につけていかないといけない。

 稼がないといけないし、子育てもしなければならない。日本社会は女性に優しくない。非常に厳しい時代になってきたと感じています。

――女性にとって厳しい時代とは、具体的にどういうことでしょうか?

大沢 配偶者控除廃止の問題と合わさって、企業が配偶者手当も廃止するところまで踏み込んでしまうと、日本的雇用慣行は変質します。今までは妻の内助の功を前提にした経営がなされていたのですが、これからは子育て支援にシフトしていくと思われます。これは本当に大きな転換だと思います。

 日本は今、時代の転換点に立っていると思うのですが、どういう意味で転換点かというと、女性の社会進出が加速化して、女性が「○○ちゃんのお母さん」というアイデンティティと共に、会社では個人の名前で活躍する両方の領域を持つ時代がやってきたということです。女性に選択肢が増えたという意味では、もちろん良い面もあります。ただ、その分、今回の配偶者控除の問題のように、今まで保護されていた部分がなくなっていくことも理解しなければなりません。男性の賃金も自動的に上がる時代ではなくなりました。

 欧米諸国の場合は、男女の差別なく、女性も活躍できる社会的環境を整えていきますが、日本の場合はそれがまだ十分になされていない。大きな問題です。実際は企業における男女の差別もまだまだ根強く維持されたままで、正規・非正規の問題も解決せず、女性に対して「仕事もしてね」「子どもも産んでね」「子どもを産んでも、仕事辞めないでね」「でも、保育所は十分にないよ」という状況になっています。女性は「一体どうすればいいの!」ってなってしまいますよね。だから結婚しない女性、子どもを産まない女性も増えている。そりゃできないでしょ、って感じです。

 ここまで国が「女性を活躍させます」ということで動くのであれば、まずは女性と男性が同じような条件で仕事ができる、昇進においても差別されないような仕組みを整えることが第一です。それによって、男性は仕事、女性は家庭というステレオタイプな価値観が壊れると思います。

■正社員と同給で雇用が保障された欧米の就業形態「パート」

――海外という話が出ましたが、日本と海外の女性の働き方を比べた時に、大きな違いはありますか?

大沢 今、日本は時代の転換点に立っていると言いましたが、欧米諸国では、それを1970年代から80年代に、すでに経験しています。なので、配偶者控除の問題について、そういう変化をすでに経験している欧米の人に説明すると、向こうは女性が働いているのが当たり前の社会なので、「税金のそんなところの制限について、今ごろ議論しているんですか?」と言われます。女性がもっと稼いでいるので、海外の人から見たら、103万円の壁なんてたかが知しれた額だという認識です。

 欧米諸国では、正社員の短時間勤務のことを「パート」と言います。これは正社員と同じ時給で、雇用が保障されており、ただ労働時間を短くすることができるという就業形態です。基本は熟練を積んだ女性が、子育てのために時間を使いたいという時に、労働時間の調整ができるシステムになっています。日本のように正社員と比べて時給が低かったり、雇用が保障されていなかったりすることはないんですね。

 日本では、基本的な就業形態は、正社員でフルタイムの労働をするか、非正規で最低賃金に近いような時給で働くかの二択になっています。本当は働き手にとって一番ニーズがあるのではないかということで、「限定正社員」という考えがやっと登場しましたが、まだこれも始まったばかり。あまり広まっていません。働かないといけないし、子育てもしなくてはいけない女性のニーズを埋められるような、ワークライフバランス社会の実現が必要なのではと考えています。

 現状は、やはり正社員で長時間働くというのがモデルになっています。それを変えて、中間層をくみ取って、男性も女性も社会の中で仕事と生活とのバランスを保てる社会を作らないといけない。ですが、そこに関する議論は十分に行われていないという印象があります。

■管理者の意識改革が特に遅れている

――女性のワークライフバランスを変えていくためには、男性の意識改革や協力が必要になると思いますが、いかがでしょうか?

大沢 その通りです。男女共同参画基本計画の第4次計画の中に男性の育児休暇の取得率を高めることで、男性の家庭参加を高めるという文言があります。しかし、現状は企業の努力義務に任されていて、ただでさえ忙しい企業が、簡単に男性の働き方を変えることは難しい。若いお父さん世代の人たちが、長時間労働を強いられているのが現状です。

 アンケートを取ると、多くの男性が「子どもと、もっとコミュニケーションを取りたい」「成長を見守りたい」と言っています。しかし、家庭を優先させて転勤を断るとか、残業をしないとなれば、出世を諦めることになってしまう。実際はまだまだ男性の方が稼ぎ主なので、家族にとってよいのは頑張って働くことなのだと悩んでいる男性も多いです。

 いくら男性の意識が変わっても、社会の構造を変えなければ意味がない。それができるのは国のリーダーなのに、全く力が足りていない。会社も同じです。組織の風土が長時間労働を評価するようなものであれば、いくら制度を作っても意味がない。会社の場合は、管理者の意識改革が特に遅れていると思います。日本ではこのような問題が、男性/女性の意識の問題にすり替えられがちですが、社会の構造に大きな問題があるということを認識すべきです。

 ただ、夫婦の関係については、私たち個人が柔軟に考えていくことも必要になります。従来のスタイルに当てはまる家庭ももちろんあると思いますが、お母さんが家にいることだけが子どもにとっていい影響があるとは考えないで、自分たちにとっての一番いい夫婦の関係や子育ての形を探していくことが大切です。

 例えば妻の方に管理職の能力があって、夫は子ども好きだし家庭のことがきっちりとできる人だというケースもあり得ますよね。どちらが昇進のスピードが早いかで育児休暇を取る方を決めるなど、「男は仕事で女は家庭」という意識を取っ払っていくことが、これからの時代は必要になると思います。
(田村はるか)

大沢真知子(おおさわ・まちこ)
シカゴ大学ヒューレット・フェロー、ミシガン大学ディアボーン校助教授、日本労働研究機構研究員、亜細亜大学助教授を経て、日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。2013年、同大学の「現代女性キャリア研究所」所長に就任。内閣府男女共同参画会議の専門調査会、厚生労働省のパートタイム労働研究会などの委員を務める。

「専業主婦かバリキャリか」二択の時代ではない! 女性のライフプランに必要なこととは?

(前編はこちら)

 配偶者控除廃止問題をきっかけに、現代女性が置かれている日本社会の現状について前編で触れた。では、これからの日本で女性はどう考え、行動して生きていけばよいのだろうか。引き続き、大沢真知子さんに聞いた。

■日本社会は女性に厳しい時代に

――女性がこれからの社会を生きていくためには、どういったライフプランを考えることが大切ですか?

大沢真知子さん(以下、大沢) 今後、配偶者控除が廃止になる可能性は高く、そうなれば、女性が自分自身で自立し、稼ぐことのできるスキルを身につける覚悟をしなくてはいけません。

 自分の人生についての設計がなく、「専業主婦になればいい」という安易な考えでは、生活保障がない上に、結婚して子どもができても金銭的に大変になります。子どもを養育するためにも、お母さんが働ける力を持つことは必要になってくると思います。

 「専業主婦かバリキャリか」と二極化して考えてしまいがちですが、そうではなくて、何があってもきちんと稼げるスキルを持っていることが重要なのです。例えば、市場価値のある資格を取って、夫の転勤についていったとしても働けるようなスキルを持つこと。そのためには、20代で自己投資をして、スキルを身につけていかないといけない。

 稼がないといけないし、子育てもしなければならない。日本社会は女性に優しくない。非常に厳しい時代になってきたと感じています。

――女性にとって厳しい時代とは、具体的にどういうことでしょうか?

大沢 配偶者控除廃止の問題と合わさって、企業が配偶者手当も廃止するところまで踏み込んでしまうと、日本的雇用慣行は変質します。今までは妻の内助の功を前提にした経営がなされていたのですが、これからは子育て支援にシフトしていくと思われます。これは本当に大きな転換だと思います。

 日本は今、時代の転換点に立っていると思うのですが、どういう意味で転換点かというと、女性の社会進出が加速化して、女性が「○○ちゃんのお母さん」というアイデンティティと共に、会社では個人の名前で活躍する両方の領域を持つ時代がやってきたということです。女性に選択肢が増えたという意味では、もちろん良い面もあります。ただ、その分、今回の配偶者控除の問題のように、今まで保護されていた部分がなくなっていくことも理解しなければなりません。男性の賃金も自動的に上がる時代ではなくなりました。

 欧米諸国の場合は、男女の差別なく、女性も活躍できる社会的環境を整えていきますが、日本の場合はそれがまだ十分になされていない。大きな問題です。実際は企業における男女の差別もまだまだ根強く維持されたままで、正規・非正規の問題も解決せず、女性に対して「仕事もしてね」「子どもも産んでね」「子どもを産んでも、仕事辞めないでね」「でも、保育所は十分にないよ」という状況になっています。女性は「一体どうすればいいの!」ってなってしまいますよね。だから結婚しない女性、子どもを産まない女性も増えている。そりゃできないでしょ、って感じです。

 ここまで国が「女性を活躍させます」ということで動くのであれば、まずは女性と男性が同じような条件で仕事ができる、昇進においても差別されないような仕組みを整えることが第一です。それによって、男性は仕事、女性は家庭というステレオタイプな価値観が壊れると思います。

■正社員と同給で雇用が保障された欧米の就業形態「パート」

――海外という話が出ましたが、日本と海外の女性の働き方を比べた時に、大きな違いはありますか?

大沢 今、日本は時代の転換点に立っていると言いましたが、欧米諸国では、それを1970年代から80年代に、すでに経験しています。なので、配偶者控除の問題について、そういう変化をすでに経験している欧米の人に説明すると、向こうは女性が働いているのが当たり前の社会なので、「税金のそんなところの制限について、今ごろ議論しているんですか?」と言われます。女性がもっと稼いでいるので、海外の人から見たら、103万円の壁なんてたかが知しれた額だという認識です。

 欧米諸国では、正社員の短時間勤務のことを「パート」と言います。これは正社員と同じ時給で、雇用が保障されており、ただ労働時間を短くすることができるという就業形態です。基本は熟練を積んだ女性が、子育てのために時間を使いたいという時に、労働時間の調整ができるシステムになっています。日本のように正社員と比べて時給が低かったり、雇用が保障されていなかったりすることはないんですね。

 日本では、基本的な就業形態は、正社員でフルタイムの労働をするか、非正規で最低賃金に近いような時給で働くかの二択になっています。本当は働き手にとって一番ニーズがあるのではないかということで、「限定正社員」という考えがやっと登場しましたが、まだこれも始まったばかり。あまり広まっていません。働かないといけないし、子育てもしなくてはいけない女性のニーズを埋められるような、ワークライフバランス社会の実現が必要なのではと考えています。

 現状は、やはり正社員で長時間働くというのがモデルになっています。それを変えて、中間層をくみ取って、男性も女性も社会の中で仕事と生活とのバランスを保てる社会を作らないといけない。ですが、そこに関する議論は十分に行われていないという印象があります。

■管理者の意識改革が特に遅れている

――女性のワークライフバランスを変えていくためには、男性の意識改革や協力が必要になると思いますが、いかがでしょうか?

大沢 その通りです。男女共同参画基本計画の第4次計画の中に男性の育児休暇の取得率を高めることで、男性の家庭参加を高めるという文言があります。しかし、現状は企業の努力義務に任されていて、ただでさえ忙しい企業が、簡単に男性の働き方を変えることは難しい。若いお父さん世代の人たちが、長時間労働を強いられているのが現状です。

 アンケートを取ると、多くの男性が「子どもと、もっとコミュニケーションを取りたい」「成長を見守りたい」と言っています。しかし、家庭を優先させて転勤を断るとか、残業をしないとなれば、出世を諦めることになってしまう。実際はまだまだ男性の方が稼ぎ主なので、家族にとってよいのは頑張って働くことなのだと悩んでいる男性も多いです。

 いくら男性の意識が変わっても、社会の構造を変えなければ意味がない。それができるのは国のリーダーなのに、全く力が足りていない。会社も同じです。組織の風土が長時間労働を評価するようなものであれば、いくら制度を作っても意味がない。会社の場合は、管理者の意識改革が特に遅れていると思います。日本ではこのような問題が、男性/女性の意識の問題にすり替えられがちですが、社会の構造に大きな問題があるということを認識すべきです。

 ただ、夫婦の関係については、私たち個人が柔軟に考えていくことも必要になります。従来のスタイルに当てはまる家庭ももちろんあると思いますが、お母さんが家にいることだけが子どもにとっていい影響があるとは考えないで、自分たちにとっての一番いい夫婦の関係や子育ての形を探していくことが大切です。

 例えば妻の方に管理職の能力があって、夫は子ども好きだし家庭のことがきっちりとできる人だというケースもあり得ますよね。どちらが昇進のスピードが早いかで育児休暇を取る方を決めるなど、「男は仕事で女は家庭」という意識を取っ払っていくことが、これからの時代は必要になると思います。
(田村はるか)

大沢真知子(おおさわ・まちこ)
シカゴ大学ヒューレット・フェロー、ミシガン大学ディアボーン校助教授、日本労働研究機構研究員、亜細亜大学助教授を経て、日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。2013年、同大学の「現代女性キャリア研究所」所長に就任。内閣府男女共同参画会議の専門調査会、厚生労働省のパートタイム労働研究会などの委員を務める。

「配偶者控除を廃止すれば女性が働きやすくなるわけではない」現代女性が本当に活躍するためには?

 「働く女性の裾野を広げよう」と声高にアピールしてきた安倍政権の一大課題である税制改革。その中で廃止が取り沙汰された「配偶者控除」は、結局、廃止が見送られることになったが、2016年12月22日に閣議決定された17年度の税制改正大綱で、満額の控除が受けられる配偶者の年収上限は103万円から150万円に引き上げられることになった。「配偶者控除が廃止されれば、女性が活躍できる社会がやってくる!」と考える人は少なくないようだが、本当に女性が社会で活躍するための課題は、想像以上に、複雑に絡み合いながら存在している。

 「配偶者控除廃止問題」から見えてくる、現代女性が本当に活躍するために必要なことについて、日本女子大学・現代女性キャリア研究所所長の大沢真知子さんに話を聞いた。

■年収が103万円を超えないと、所得税がかからない

――そもそも配偶者控除とは、どのような制度で、なぜ作られたのでしょうか?

大沢真知子さん(以下、大沢) 1961年に創設された制度で、それまでは16歳以上の扶養家族がいる世帯主に認められていた「扶養控除」に主婦も含まれていたのですが、そこから独立して作られました。当時の議論では、自営業の人ならば「基礎控除」があるのに、専業主婦の場合は所得がないので基礎控除がない。ということから、妻の分の代わりに、夫に配偶者控除を認めた経緯があったと聞いています。また、背後には妻の内助の功を認める意味合いもあったようです。

 「103万円の壁」と言われますが、働く人は、すべての納税者が対象の「基礎控除」38万円と、給与所得者が対象の控除65万円の2つの控除が受けられます。つまり、誰でも年収が103万円(2つの控除の合計)を超えないと所得税がかからない仕組みになっています。

 配偶者控除とは、妻の所得が最低課税限度額の103万円までなら、夫の課税対象所得から38万円を控除できる制度のことです。

――今年度の廃止はひとまず見送られましたが、なぜ、廃止が検討されるようになったのですか?

大沢 制度が導入された時には、既婚女性で被雇用者(企業・団体等に雇われている人)として働いている女性は、15歳以上人口の1割程度。農業部門や中小企業で自営業者や家族従業者として働いている既婚女性は多かったのですが、被雇用者として働く女性は少なかったのです。しかし今は被雇用者の方が多くなっています。

 さらに、働く女性が増加していることに加えて、日本の女性の所得分布を見ると、100万円あたりにピークがあり、その後、150~199万円が少なくなっています。ここから、税制の壁が女性の就業を抑制させているとして、女性の働き方に中立ではないと考えられたのです。

 先ほどの「103万円の壁」は、年収103万円を超えると世帯の税負担が増えるため、自然に103万円以内に抑えるというインセンティブ(動機付け)が働いてしまうということです。

 ただ、87年に「配偶者特別控除」(年収103万円を超えても141万円未満の間で、金額に応じて段階的に受けられる控除)という制度によって解決されています。それにもかかわらず、壁があるのはなぜかというと、妻の所得が103万円を超えてしまうと、夫に企業から支給される「配偶者手当」がなくなってしまうのが大きな原因の1つです。15年の民間企業における配偶者手当は、月あたりの平均で1万3,885円でした。

■専業主婦の1割は貧困層

――やはり103万円の壁はなくすべきということですか?

大沢 配偶者控除をなくすだけでなく、次世代に貧困が連鎖していかないような税負担と給付のあり方を考えていく必要があります。最近の研究で、専業主婦の1割は貧困だと言われています。シングルファザーやシングルマザーも増えています。独身の女性の貧困問題も顕在化しています。つまり、所得の再配分機能を強化するような形での制度改革が必要だと思います。

――専業主婦にとって厳しい時代だということですね。

大沢 今、経済界は、配偶者手当に代わる「家族介護手当」に切り替えることを検討していると聞いています。また、00年代になって既婚女性の労働力率(15歳以上に占める労働力人口の割合)が上昇している背後には、夫の所得の減少があります。最近のみずほ総合研究所のリポートでも、女性の雇用が拡大し、年収100~149万円に女性の所得が集中しているのは、夫の所得の減少が背後にあると指摘しています。2人以上の勤労世帯の世帯主の月の平均賃金は、97年から2015年にかけて7万円以上減少しています。

 こう見ると、世間で語られがちな「配偶者控除は女性の働き方に制限をかけているから、なくすべきだ」という単純な議論とは全く違うことがわかってくると思います。

 今、日本の政府は大きな赤字を抱えています。その理由の1つは、高齢化による社会保障費の増大です。社会保障制度の支え手を増やすことで借金を減らし、福祉を充実させなければならないので、将来的に配偶者控除のような制度を維持していくことは難しいと思います。

■「103万円の壁」がなくなれば女性が働きやすくなるとはいえない

――103万円の壁がなくなれば、女性の社会進出が進むのだろうというイメージを持っている方は多いと思いますが、実際は違うということでしょうか?

大沢 103万円の壁は「税金の壁」ですが、もう1つ「130万円の壁」があります。これは「社会保険の壁」と言われていて、年収が130万円を超えてしまうと、たとえパート社員であっても社会保険に加入する必要が出てきます。つまり社会保険料の支払いが発生し、夫の扶養から外れなければいけない。昨年の10月からは、501人以上従業員のいる企業に勤めていて、週20時間以上働いており、年収106万円以上の人には加入が義務付けられました。中小企業でも、労使の合意があれば、年収106万円から厚生年金に加入できるようにする法案が検討されています。これは非常に大きな壁です。

 社会保険料は企業も半分負担しなくてはいけないので、企業側からすると、女性に年収を106万円未満に抑えてもらって、社会保険や健康保険の負担を避けたいと考えるかもしれない。従業員の雇用において、非正規化に拍車をかける可能性も高まります。簡単に、この103万円の壁がなくなることで女性が働きやすいようになるかというと、そうは言えないと思います。

 ただ、これにはメリットもあります。年収106万円を超えて働き、若いうちに社会保険に入っていれば年金が充実することになり、将来的には年金や医療保険などの保障が女性自ら得られるようになります。厚生年金に加入すれば基礎年金に加えて、企業と折半で支払う保険料によって年金の上乗せ部分(報酬比例部分)があるので、若い人に限れば、プラスに働くことになるかと思います。

■配偶者控除の廃止だけを議論しても意味がない

――配偶者控除廃止だけが問題ではなくて、雇用の正規・非正規の問題にも密接につながっているということですか?

大沢 日本は正規雇用と非正規雇用の間に、ものすごく大きな賃金差があります。なぜ非正規の賃金がこんなに安く、経験年数に伴って上昇することもないのか? 生産性が正規と非正規の間で明らかに違っていればわかりやすいですが、同じ仕事をしている場合もあります。また、非正規の約3割は正規と同じ時間働いていることが統計上わかっています。

 非正規の賃金がもっと高ければ、そもそも配偶者控除が廃止になっても大した問題にはなりません。あたかも女性が活躍できないのは配偶者控除があるからだという理屈がまかり通っていますが、そうではない。非正規の人の中には会社で中核の仕事をしている人もいるのに、「非正規」と呼ばれて賃金が低い。そういう労働市場の仕組み、構造に問題があることを、もっと考えていく必要があります。この問題の解決のために、同一労働同一賃金についての指針が作成されましたが、企業の努力義務にすぎません。

 加えて企業にとっては、103万円、106万円の壁があることで、支払う賃金も低いままでいい、社会保険料の負担もないのであれば、非正規で十分だと、非正規を雇う理由を与えてしまうわけです。

 今回は年収1,220万円までの世帯主を対象に、控除を受けられる配偶者の年収の上限が103万円から150万円に引き上げられましたが、配偶者控除がなくなっても106万円や130万円の壁があるので、引き続き、既婚女性の就労は100万円から149万円に抑えられるのではないでしょうか。しかし、それは女性の就労調整の結果ではなく、人件費を削減したい企業側の都合によるものです。

 そうは言っても、若者の人口が減少していくと、「壁」を維持していれば良い人材が育たない。それは長期的に見ると会社にとってもマイナスです。非正社員の正社員化を進めている会社も増えていますが、そうしないと良い人材が他の企業に移ってしまうからです。

 女性の活躍を推進するということであれば、まずは就労を希望する子育て中の主婦たちのために、就職を前提としたインターンシップ制度を整えるとか、働くスキルを獲得できるような通信講座の受講料や授業料に対する助成、企業に対して非正規から正規への移動を促すためのインセンティブの付与などをすることによって、女性が就業能力を身につけ、子育て後もきちんとした処遇で働けるような社会をつくっていかなければならないと思います。問題は、主婦が再就職をしようとしても子どもを預けるところがなかったりして、希望に合ういい仕事に就けないことで、そこにきちんと踏み込んでいかないまま、配偶者控除の廃止だけを議論しても「なんのための改革なの?」という話になってしまいます。
(田村はるか)

(後編へつづく)

大沢真知子(おおさわ・まちこ)
シカゴ大学ヒューレット・フェロー、ミシガン大学ディアボーン校助教授、日本労働研究機構研究員、亜細亜大学助教授を経て、日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。2013年同大学の「現代女性キャリア研究所」所長に就任。内閣府男女共同参画会議の専門調査会、厚生労働省のパートタイム労働研究会などの委員を務める。

藤原紀香ウォッチャーが考察する「彼女が炎上しまくる理由」――ドヤッてるのは天然だから?

 

 2016年3月、歌舞伎俳優・片岡愛之助と結婚し、梨園の妻デビューを果たした藤原紀香。芸能ニュースでは、紀香の動向が盛んに報じられたが、それと比例するように、ネット上では「結婚会見時の着物が派手すぎる」「眉唾物の水素生成器を引き出物に入れたのが痛々しい」など批判の声が飛び交う事態に。そんな激動の1年を、日々紀香の動向をチェックしているウォッチャーたちはどのように見ていたのだろうか? 「私たちはただのアンチではない」と表明する紀香ウォッチャーたちの考える「紀香の面白さや魅力」とは?

A……20代女性。陣内智則と結婚した頃から、紀香の面白さに注目するようになった。
B……30代女性。紀香のことを「好き」ではないが、紀香関連のニュースは逐一チェックしてしまう。
C……40代女性。紀香ファン。かつて紀香にあこがれて、ウルフカットにしたことも。

■紀香はついに、ほしいものを全て手に入れた

A 藤原紀香、よく叩かれているね。私は一周回って今は好き。07年に陣内智則と結婚したとき、十二単を着たことに度肝を抜かれて以来、「この人、面白い」と思うようになった。

B あれはすごかったね。「自分は特別な人間」という感覚があるのかな。実際、なんだかんだでほしいものを全部手に入れているすごい人だとは思うけど。

C 私はJ‐PHONEのCMに出ていた頃から紀香好き。当時は「CM女王」として君臨していたから、今なぜ嫌われているのかわからないんだよね。16年3月に行われた片岡愛之助との結婚会見は、すごくうれしそうで微笑ましかった。

A 会見で関西弁を織り交ぜてたじゃない? あれ、ネットでものすごいブーイングが起こってたよね。「『もう会わないでね』って、事務所から言われた時に、ああ、本当に会われへんねや、あ、会えないんだと思いまして……」ってやつ。叩く人は、ああいうところが「あざとい」とか「ドヤってる」と思うんだろうね。ああいうところこそ笑えるのに。

B でも、愛之助は、なぜ紀香と結婚したんだろう。愛之助にとって紀香は単なるセフレだと思ってたよ。

C 実は私もそう思ってた。

A 「フライデー」15年9月11日号(講談社)に紀香が愛之助の腰に手を絡ませているツーショット写真が掲載されたでしょう? あれは紀香が“あえて撮らせた”というウワサがあるね。「私服がダサい」と騒がれていたけれど、あのダサさすらも演出とか。当時、愛之助は熊切あさ美と別れた・別れないとゴタゴタあった直後。芸能記者のほとんどは「愛之助は熊切に限らず、結婚そのものに乗り気ではない」という見方だった。そこで紀香は、外堀を埋めて結婚する気にさせるためにマスコミを利用したんじゃないかって言われてたのよ。

B なるほどね。愛之助はまんまとしてやられたわけだ。紀香との生活も、そのうち飽きたら浮気しそう。

A 結婚会見で、紀香は愛之助について「本当におモテになるので。歌舞伎役者というものは色がないとダメだと思っているので」と暗に浮気を容認する発言をしていたね。ただ、12月28日放送の『バイキング!ゴールデン』(フジテレビ系)では、「浮気=『芸の肥やし』だと私は思ってません。だから前の方(陣内)と比べられて、前の方の浮気がダメでこっちはいいのか、私はそんなこと一切言ってません。それはほんとに言いたかったけど、そんなこといちいちブログに書きたくないです」って言ってたけど、やっぱり愛之助なら許しそうじゃない? 格下の陣内の浮気は許せず離婚に至ったけど、ステイタスのある愛之助ならずっと支えていくつもりなんだと思う。

B ほら、Skoop On Somebodyのボーカルの元カレのときも“大女優なのに、ステイタスやお金で男を選んでいない私ってステキ”と酔っている印象があったけど、陣内で懲りたんだろうね。そのあとUSB証券のアナリストと付き合ってたもんね。

C でも、一般人の金持ちでは物足りなかったんじゃない? ステイタスやお金だけでなく、さらに華もあって確固たる地盤もある、全てを兼ね備えた男、それが愛之助。いい男と出会えてよかったよね。やっぱり紀香は、ほしいものを手に入れる女なんだよ。

■水素水へのこだわりは、いい妻アピール?

A そうそう、結婚会見のときの着物の柄が洋風のダイヤモンドリリーとカサブランカだったことで「派手すぎ」「伝統的な和柄を選ぶべき」と批判されたこともあったね。

B 「私の最大優先順位は、彼の健康面のサポート、そして彼が情熱を注ぎ続ける、歌舞伎界の仕事のサポート」「一番大事なのは夫のお仕事」と会見で言っていた割には、あの着物は「私こそ主役」感があったね。女優だという意識が思わず着物に出ちゃった。

C そこが紀香の愉快なところ!

A 引き出物として約8万円もする水素水生成器を配ったのは、紀香自身が水素水信者ってこと以上に、「水素水で愛之助の健康面を支える」ということを世間にアピールしたかったと思う。陣内のときも「“大女優”である私が芸人を支えること」を楽しんでいたんだろうけど、それは目立たないし、称賛はされない。紀香は、『藤原主義』(幻冬舎文庫)で、友人に「みんなにいい子と思われたい」と指摘されたと書いていたけど、やはり愛之助という看板があった方が、褒められる量は多いと思う。

B それにしても水素水! 愛之助はネットニュースなんて見なさそうだけど、紀香は絶対チェックしてそうじゃん。水素水に対する批判の声も耳に入っているだろうに、わざわざ引き出物に選ばなくても。

A 批判の声が聞こえてもやらかしちゃうところが、「天然でおちゃめ」なんだと思う。16年4月の熊本地震のときも、被災地へ現地の情報やメッセージを送った上で、「家のことも、外のこともやることがたくさんあり、睡眠はあまり取れていませんが、現地のみんなのことを考えたら、眠いなんて言ってられないですよね」「明日は5時起きですからそろそろ休みます。80分後ですね。ぜったい寝坊しません!!!」(16年4月19日公式ブログより)と書いて大炎上。ネットでは「寝てないアピールは不快」ということが定説化しているのに、あえて睡眠時間を書く紀香、天然だわ~。

C 努力アピールはチョイチョイするよね。でも本当に努力家なの。真っ赤のピタピタなパンツを穿いていて話題になった、16年3月の楽天ゴールデンイーグルスの始球式。あれ、何日も前からガチで投球練習してたんだよ。「東北を盛り上げたい」って。その練習の過程も、ブログで「この日も練習は100球近く投げ東京に戻り翌朝、起き上がれなかった笑 その後も、東京で 投球ができる場所を借りて投げてましたが、とにかく時間もないので毎回 最初のキャッチボールを含め100球は投げアイシングとマッサージに通い次の日から数日、肩や腕がパンパンで(笑)3月は、わりとカラダがえらいことでした」と報告してた。

B いちいち言わなくていいし、それで東北が盛り上がるとも思えない。そのズレ加減は確かに天然の芸当。『バイキング!ゴールデン』では、そんな紀香に、「自分が何か言うと叩かれるという意識はあるか?」と炎上騒動についてズバリ聞いててさ。なんと答えるかと思ったら、「えっ、意識ないです。だけど『みんなが炎上してるよ、大丈夫』って連絡があったときに、皆そういう取り方をするんだって思います。私昔はバカだから、ほんとにみんなに愛されないと嫌というところがありました。でもそれはあり得ないことで、それは自分が幼かったなと思います。(それが変わったのは)結婚してからだと思います」って言ってた。

A 愛之助は、会見で紀香について「相当ひょうきんで、あと、若干おっちょこちょい」とか「車の運転で、迎えに来てくれたりするんですよ。すごく法定速度以下くらいの速度で走るのでちょっとドキドキするんですけど、安全運転は安全運転。そして高速に乗ったら、停まってるから『何してんの?』って聞いたら、高速に合流できなくて」と、“大女優だけど”という意外な一面を明かしていたよね。紀香、そういうギャップをアピールしてもらえて、たまらなかったろうなと思う。

C 陣内のときはあまりに「格差婚」と騒がれすぎて、陣内は紀香に対して“恐縮しきり”というキャラを通してたもんね。紀香の可愛らしさを引き出せなかった。一方、愛之助とは対等の立場だし、可愛らしさを引き出してもらえる。紀香はいい広報を旦那にしたよ。

A あ! 披露宴で、「まきぞう」「のりぞう」と呼び合う親友・大黒摩季が2人のための書き下ろし曲「スポットライト」を歌って、「これだけ証人がいるんだから別れないでね」と言ってたのも気になった。「友達なら、披露宴でそんなこと言うなよ」という意見もあったけど、なんか、紀香に対してちゃんとツッコめる友達がいるということに感動しちゃったの。紀香の周りには、いいところだけすくい取ってチヤホヤする人も多いだろうに……まきぞう&のりぞうは、本当の女の友情だと思う。

C はるな愛とも仲がいいよね。はるなもツッコみそうだし、紀香はツッコまれたい気質の人なのかも。

■17年、紀香が梨園と日本を変える

A それにしても、なぜ紀香は「梨園の妻失格」といわれるんだろう。「いい妻」然としている三田寛子の方がよほど鼻につく。16年9月にあった夫・中村芝翫の不倫騒動では、「私も至らぬ点ありましたので反省しております」「(離婚は)ないでーす」とコメントして「神対応」といわれていたけれど、乙武洋匡の不倫騒動で妻が「自分にも責任の一端がある」とコメントしたら批判されて、三田は称賛されるのはおかしくない?  

C 三田なんて、結婚前は天然のおバカキャラだったのに、歌舞伎役者と結婚したら賢い妻にキャラ変えしてね。ブレない紀香の方がよほど人間として魅力的。

B 確かに、紀香の自分好きキャラはブレない。賢い妻を演じようとしているけど、演じていることがバレバレだもんね。やっぱり天然だよ。

A 愛之助が不倫したとき、紀香はどう対応するかな。三田みたいに、怒りもせず「夫婦の絆が深まりました」とコメントしつつも、めっちゃ派手な着物で出てきたりして。

C もしくは、舞台用のド派手な衣装とメイクで出てきて、「私も舞台の公演が控えていますので、そっとしておいてください」と言うとか。その方が“浮気された女”という傷は浅い。

A 言いそう言いそう(笑)。“サポートしてます”感をアピールしつつ、さりげなく女優として舞台の宣伝をぶっこんできそう。まさに紀香劇場。

B “梨園の妻”だけではなく、女優を続けているからこそ、どちらかで失敗しても補える。万全のセーフティーネットを張って生きているわけね。

A もう1つ、紀香の最高なところは、趣味を「女磨き」と断言しているところ。上野千鶴子と小泉今日子が「GLOW」16年9月号(宝島社)で対談したの知ってる? 上野が「アンチエイジングって言葉が、大嫌いなんです」と発言して、小泉が「私もです」と同調し、ネットで共感の声が広がったことがあったのよ。小泉の「私は『中年の星』でいい」という言葉の、他人の努力をあざわらうような上から目線が本当にムカついちゃって。紀香のように努力して泥水すすっている方がかっこいい。

C 紀香はおすすめの美容グッズをセレクトした「紀香バディ!コム」というサイトを運営していて、その売り上げの一部を寄付してる。美の追求と同時に慈善事業も行っているあたり、たとえ容貌が劣化しても「中身が美しい」という逃げ道もちゃんと用意してる。本当に周到。“自分好き”でもここまで完璧できる人はいないと思う。

B 17年、紀香はどうなるかな。また炎上事件や珍事を起こしてくれるんじゃないかと期待してる。

C 紀香が親の反対を押し切って芸能界入りを決意したのは、阪神大震災を経験して、「人間はいつ死ぬか分からない、それならやり残したことを後悔して死にたくはない」と思ったからだそうだよ。紀香を変えたのは災害。そこが原点。今後も人のために何かをしてくれるはず。

B だから、愛之助に尽くすんだ?

C いや、もっと大きく「日本を救いたい」と思っているはず! 愛之助との結婚も、「私は日本の伝統芸能を支えている」くらいに思っているのでは。慈善活動とか見てると、しいては世界を救うつもりだと思う。キョンキョンはただの芸能人。紀香は芸能人ではない。「女優だね」「きれいだね」では物足りない。女優はあくまで地球を救うための一環だから。

A その貪欲さ、スケール感がすごい(笑)。でもやっぱり女優としては代表作がない。そこが面白い。

C 心配なのは、子どものこと。きっと周りからの圧力がすごいはずだよ

B 紀香は今年46歳。現実問題、妊娠・出産のハードルが高いというのは紀香自身が一番わかっていると思うんだけど、跡継ぎを生むことが重要視されている梨園の妻になったからって、マスコミは無遠慮に「子どもはどうする」って聞くよね。完全にハラスメントにあたるのに……。着物の件も含めて「梨園の妻はこうあるべき」「女優業をやめるべき」という批判は腹が立つね。考え方が古すぎる。紀香にはそういう梨園を変えていってほしいな。

C 紀香なら梨園を変えて、日本を変えて、世界を変えられるよ。

A 私もそう思う。17年も紀香がんばれ~!
(亀井百合子)

事実婚が増えれば、夫婦別姓が実現するかもしれない——「未届けの妻」のメリットとは?

(前編はこちら)

■事実婚は、自分にとって最適な結婚生活を実現できる“カスタマイズプラン”

――36歳の時に、“事実婚”で再婚されていますが、なぜ、事実婚を選択されたんですか?

水谷さるころさん(以下、水谷) まず事実婚についてお話しすると、事実婚はいわゆる婚姻届を提出し、法律で認められた夫婦ではありませんが、「夫婦ですよ」という状態を指す広い言葉なんです。事実婚にもいろいろあるのですが、うちの場合は、生活実態をより法律婚に近い状態にするために、住民票を一緒にして同一世帯にして「未届けの妻」にするという方法をとっています。行政は、保育園や子どもの医療保険などに関する手続きにおいて「世帯」を単位として見ているので、籍は実は関係がないんです。

 共働きでお財布が別、どちらが扶養されるわけでもなく納税も別だと、法律婚をするメリットは少ないんじゃないかと思って。働いて生きていきたい女性にとっては、結婚すると、「世の中って、こんなふうなの?」とガッカリすることが多いんですよね。きちんと、わかりやすく看板を立てていかないと、保守的な結婚の考えの人に、仕事の面でも、家庭の面でも引っ張られてしまう。法律婚は“おまかせ安心パック”、事実婚は自分にとって最適な結婚生活を実現できる“カスタマイズプラン”のようなイメージです。

――おもしろい考え方ですね。

水谷  世間には、保守的な“結婚村”というのがあると感じることが多くて。村人は、村の掟から外れることをすごく嫌います。「結婚したのに、そんなに夜遊びするの?」とか、「毎日ごはんつくってないの?」とか圧をかけてくるわけです。うちは、夫がごはんをつくってるので、それを言うと、すごい嫌な顔をされて「あいつはダメ嫁だ」というレッテルを貼ってくる人がいるんですよ。理想のルールの通りにしてほしい、という圧をかけてくる。だから、私はその村から抜けようと思ったんです。私が欲しいのは、結婚じゃなくて家族ですから。

 結婚村の人は、同居が続いていると、「どうして結婚しないの? 早く結婚した方がいいんじゃない?」とか言います。でも、事実婚なら、「婚」がついているので、牽制にもなりますし、「ルールが違います」と伝えやすいんですよね。

――事実婚をして、大変だったことはありますか?

水谷 やっぱり親を説得するのが大変でした。「なんで、そんなことするの?」と聞かれますから。でも、「保守的な結婚観が嫌だから」とは言えないじゃないですか(笑)。いかにうまくオブラートに包みながら、「事実婚の方がいい」「普通に結婚しているのと変わらない」と伝えられるか。「名前も変わらないし、うちはフェアな関係だから」と言い続けると、私がごはんをつくっていないことなども、徐々にとやかく言われなくなっていきます。ただ、理解してもらうには、最低でも3年は必要だと思います。

――親世代を納得させるのは、なかなか難しそうですね。

水谷 うちは夫も私も両方とも再婚で、親の期待値がものすごく下がっていて、パートナーがいてくれるだけでも安心という状態だったので、説得しやすかったと思います。

 友達にも事実婚にしようとした女の子がいたんですが、初婚でそれを言いだすと、味方がひとりもいない。自分の親も、相手の親も嫌がるし、パートナーは「どっちでもいい」みたいな状況。女性側が「事実婚の方がいいな」と思っていたとしても、初婚でそこに至るのは難しいのが現実だと思います。

■事実婚が増えたら、法律が変わるかもしれない

――ところで、お子さんもいらっしゃいますよね。事実婚で特に問題はないですか?

水谷 別にないですね。びっくりするほど、何もありません。久々に「おぉっ!」と思ったのは、この間、息子が手術をして、半日入院した時です。たくさん書類があったので、保護者として、私と夫でサインをしていたんです。

 そうしたら、息子が手術室に運ばれていった後に、「ちょっとお話が……」と呼び出されて、「お母様とお子さんのお名前が違うんですけど、どういったご事情でしょうか?」と聞かれました。今まで1回も聞かれたことがなかったから、気がつかなかった。「うちは事実婚なので母子別姓で、息子の籍は夫側。でも親権者は私です。生活は一緒にしていて、家族です」と伝えたら、それで終わりでした。それぐらいですね。

――お子さんの籍は旦那さん側ですか? 入籍しない場合、女性側の籍に入るのかと思っていました。

水谷 子どもの名前は夫側の姓にしたかったので、一度、籍を入れて、夫の姓(野田)で産んで、離婚しているんです。

 ご指摘の通り、結婚をしないで子どもを産むと、自動的に女性側の籍に入ります。別に自分の子どもを自分の姓にしたいという願望もないですし、夫の姓の方が親戚も多くて仲間もいっぱいでいいかなと思って。私の親は「娘の子が自分と同じ姓」なのを喜ぶ人たちでもなかったので子どもを自分の姓にするメリットもなくて。

 でも、結婚しないで野田姓にするには、家庭裁判所に行ったり、手続きがなかなか面倒臭いんです。それで出産する時だけ入籍して、野田になって、産んでから離婚しました。それなら、書類を出すだけで終わりますから。

――わざわざ結婚&離婚されていたんですね。一度籍を入れたら、そのまま流されてしまいそうですが。

水谷 私がもう結婚したくないと思う理由のひとつに、結婚すると、金融機関の名前の変更があるんですよ。私の場合、取引先の多数の会社に入金用口座の変更をお願いする必要があるので、本当に大変。ですから、半年ぐらいであれば、準備期間として、クレジットカード会社や金融機関からも何も言われないので、結婚して半年くらいで離婚という方法をとりました。

 それから、小さな政治的な主張という意味合いもなくはありません。今、日本では夫婦別姓が認められていません。今後もしも事実婚をしている人が増えて、半分とはいかなくても、1~2割ぐらいの無視できない数になってきたら、事実上、法律婚の必要性が低くなっているから、ということで、法律が変わるかもしれない。制度を実情に合わせるべきと主張した方が、法律が変わることが多いですから。今の状態で、選択的別姓の運動をしても、昭和22年に廃止されはしたものの、女性が男性側の戸籍に属する「家制度」の名残がある日本では難しいと思っています。

 男女差別なんて、もうないよね? と思っていましたが、それは、先人の働く女性が戦ってくれたおかげで、そう感じていただけで、まだ道は半ば。今は過渡期だからしょうがないですよね。

――もっと事実婚を浸透させていくには、どうしたらよいと思いますか?

水谷 一番簡単なのは「結婚しました」と言って、事実婚状態にしておくことだと思います。事実婚で不便だと思ったら籍を入れれば、何の不便もない。婚姻届なんて、書くだけ書いて、しまっておけばいいんですよ。本当にそれでいい。結婚式も挙げて、「結婚しました」と言って、婚姻届も書いて、棚にしまう。引っ越しの時に「未届けの妻」にしておけば、実質的にも「妻」だし、子どもが生まれた時に、婚姻届を使うかどうか考えればいい。私のおすすめは、“しれっと事実婚”です。

 「結婚したら、夫が支配的になった」とか「結婚前の約束は嘘だった」といった場合でも、関係を解消しやすい。浮気は事実婚でも民事で裁判できますから、法律婚はするなら相続問題が現実的になる頃、事実婚20年目の記念などに「20年仲良くできたね」と、してみてもいいんじゃないかな――と思ったりしています。
(上浦未来)

水谷さるころ(みずたに・さるころ)
1976年千葉県生まれ。女子美術大学短期大学部卒業。イラストレーター。マンガ家、グラフィックデザイナー。99年「コミック・キュー」(イースト・プレス)にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ!30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末を『30日間世界一周!』(イースト・プレス、以下同)としてマンガ化(全3巻)する。そのほかの著書に旅マンガ『35日間世界一周!!』(全5巻)、『世界ボンクラ2人旅!』(全2巻)がある。趣味は空手。