日本では安保法案をめぐり賛否両論が渦巻いていますが、昨今の中国の動きを見れば、この法案の衆院通過は正しかったと思えてきます。僕は日々、中国の報道を見ていますが、日本人が想像している以上に中国は危険な兆候を強めています。 7月27日、朝鮮戦争勝利62周年記念イベントが催され、習近平政権が「この戦争は、朝鮮の“民主主義”のために、帝国主義を推し進める鬼畜米帝を退治した記念すべき戦いだった」と発表しました。東西が対立していた冷戦時代ならまだしも、この現代において、アメリカをここまで敵視したコメントを発表するのは、異常なことです。 今、中国政府はアメリカに対する反発を急速に強めており、機関メディアでは、事あるごとに、アメリカを敵国と位置付けた報道がなされています。いくつか例を挙げていきましょう。 先月の中国の株価暴落の際には、「アメリカがネガティブな報道ばかりしたせい」とすべてアメリカに責任を押し付けました。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に関しては、中国はこれをAIIB(アジアインフラ投資銀行)のライバルだと見なしています。先日、TPPの条件が見合わずに保留となったことが発表されましたが、中国国内では、「ざまあみろ、そのまま頓挫しろ」という意見が大半を占めています。 また現在、中国国内では人権弁護士が200人以上拘束されていますが、それに対してアメリカ国務省は直ちに解放するように中国に強く求めています。なぜ、国家を分裂させようとする重罪人の弁護士たちを取り締まっているのに、外国から偉そうに言われなければならないのか、中国政府にとっては我慢のならないことです。 そしてグーグルは、グーグルマップ上にて、中国とフィリピンとの間で領有権をめぐり係争中である島の中国名「黄岩島」を削除し、国際的に知られている名前「スカボロー礁」に変更しました。これも、中国にとってはかんに障る話です。それに、中国政府が海外の教育機関と提携している孔子学園が、アメリカで相次いで閉鎖されていますが、これに対しても、中国側は「アメリカは排外主義だ」と非難しています。 こうした数々の対立があり、今、中国国内では「アメリカ、憎し!」の感情が渦巻いています。日本では、中国が覇権主義を強めていると報道されていますが、中国の機関メディアでは「中国は平和主義であり、被害者である」と常日頃から報道されていて、国民もそれを信じています。双方の報道は、まったく逆の立場です。 「これまで世界は、アメリカを中心とする西側諸国のルールで動いてきた。しかし、そんな中、中国が急激に力を付け、ヨーロッパを巻き込んでAIIBの設立を打ち出した。アメリカはそれが面白くないのか、AIIBには一切協力しないばかりか、妨害行為ばかり繰り返してきている!」 それが中国側の見方なのです。 しかし、中国も負けているわけにはいきません。7月、「国家安全法」が全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で採択され、中国国内で経済活動をするIT企業の規制や情報監視の強化が盛り込まれました。その中では、海外企業に情報開示を義務付ける条文も盛り込まれています。グーグルやアップル、アマゾン、マイクロソフトなどのIT企業は、今後、大きなダメージを受けることでしょう。中国にとって、これは「正義の反撃」です。 そして現状、中国はアメリカを「敵」だと位置付けており、さらなる実力行使に出てもおかしくない状況になっています。どう反撃するかというと、その取っ掛かりとして、「尖閣諸島」が真っ先に挙げられます。尖閣諸島は、日本の管轄下に置かれていますが、中国政府は、日本の先にあるアメリカを見据えています。かねてから領有権を主張している中国政府が、この島を獲得すれば、アメリカに一矢報いることができるのです。 以上、中国人から見た世界情勢を書いてみましたが、いかがでしょうか? 株価暴落やTPPや、人権弁護士など全ての要素が絡み合い、中国とアメリカが一触即発の状況になりつつあることを、日本国民はもっと認識すべきだと思います。その上で、安保法案について考えるべきです。中国は虎視眈々と憎きアメリカに対する反撃のチャンスをうかがっており、そんな中、日本とアメリカとの絆に綻びが見えたとしたら、一気に尖閣諸島に行くでしょう。 憲法9条は、戦争の引き金になることこそあれ、日本という国を守る上では役に立たないのは、中国人の感覚としてははっきりとわかります。この危険な状況の中、日本はガッシリとアメリカと連携し、隙を見せないことが重要なのです。
●そん・こうぶん 中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)がある。 <https://twitter.com/sun_koubun>



















