AKB48バイオリニストはなぜ炎上 その顛末をITジャーナリストが分析

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AKB48『恋するフォーチュンクッキー』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  バイオリニストの宮崎司氏が9月3日、自身のツイッターで「今夜はTBSの『火曜曲!』に出演します!」とTV番組への出演報告を行った後、「生理的に受け付けないAKBの後ろで弾いちゃいます(笑)」と冗談交じりのツイートを行ったところ、批判が殺到し、ツイッターアカウントを閉鎖する事態になった。  ツイッター上では「AKBファンの皆、こんなやついたぞ」「こいつ人間としてどうかと思う」「仕事相手の悪口は書いちゃダメだろ」といった批判が相次いだが、一方では「プロのミュージシャンとして好き嫌いを言うことも許されないのか?」「赤の他人だったらAKB48の悪口を言っても良くて、共演者ならダメっていうのがわからない」といった意見も散見された。  AKB48に関連する話題では、ほかにも炎上する事例が絶えない。2012年12月には、ロックバンドRIZEのベーシストKenKenが、自身のツイッターで「不細工が基本のアイドルに 当てぶりが売りのバンド おれたちが本気で目指してるものがバカにされてるよねーホント」と最近のアイドルやバンドのあり方に対して発言。KenKenは名指しで批判をしておらず、フォロワーからの「これだれのこといってんの?」という質問にも、「別に誰の事でもなくそういうミュージシャン増えたなーってはなし。」と答えていたが、ネット上ではこの「不細工が基本のアイドルとはAKB48で、当てぶりが売りのバンドはゴールデンボンバーのこと」という推測が出回り、両グループのファンから苦情が殺到、炎上に繋がった。  AKB48への批判や、誤解を生む冗談は、このようにネットで炎上するケースが少なくない。なぜこのような事態が後を絶えないのか、ネットの炎上問題に詳しいジャーナリストの井上トシユキ氏に話を聞いた。 「宮崎司氏は、周囲の親しい人に対して自分の感想を書いたのでしょうが、ネットでの発言は様々な意味で捉えられるものである、という意識が足りなかったと思います。最近問題になっている悪ふざけ画像と同じことで、ネットではアッという間に情報が拡散することを忘れてはいけません。AKB48に対して色々な感想を持つのは自由ですが、それを簡単にツイッターに投稿するのはいかがかと思います。本人は冗談で書いたつもりかもしれないけど、そう受け取らない人はたくさんいますから」  では、やはり宮崎氏の言動が問題だったと? 「いえ、宮崎氏のツイートは『生理的に合わない』という個人の感想であり、誹謗中傷と言えるようなものではありません。したがって、宮崎さんだけが悪い、ということではないでしょう。彼は、誰の歌が下手だとか、誰が不細工だとかは書いていない。ファンやその他の方が、このような些末な感想を炎上させてしまうのも過剰反応だし、不寛容だとも思います。 度が過ぎた悪ふざけは、周囲にも損害を与える可能性が高いので、叱られたりするのも仕方ないと思いますが、この程度のことで炎上させるというのはどうなんでしょうか。批判しているユーザーは、自分の憂さ晴らしのために、わざわざ何かを見つけては叩いて、溜飲を下げているだけのようにも思えます。もし、このような感想を書いただけで炎上するのであれば、無難なことしか書けず、結局は誰も何も言えなくなってしまうのではないでしょうか」  AKB48は絶大な人気を誇るアイドルグループだけに、感想さえも火種となりうる現状。今回の宮崎氏ツイートに不用意な点が多かったのは事実だが、こうした状況が続く限り、多くの人気アイドルのネット炎上問題がなくなることはないのかもしれない。 (取材・文=マツタヒロノリ)

飲酒疑惑、写真流出…相次ぐスキャンダル アイドルの不祥事はどこからがアウト?

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姫carat『51%プラトニック』ワーナーミュージック・ジャパン

【リアルサウンドより】  5人組アイドルグループ、姫caratのドラムス・MIKIが8月31日、飲酒を疑われる写真がネット上に流出したため、グループを脱退した。思えば、アイドルグループのこうした脱退劇は、定期的に起きている印象がある。SUPER☆GiRLSの稼農楓は2013年の1月、『週刊文春』で元カレに過去の恋愛遍歴をリークされたことをきっかけに脱退。2011年にはスマイレージの小川紗季などが、ブログ上でファンと私信をとっていたことが一因で、脱退に至ったとされている。  このようなアイドルのスキャンダルは、昔から後を絶たない。古くは1983年、女優・タレントの高部知子(当時15歳)が、ベッドで裸体に布団を掛けた状態で煙草を咥えた様子を捉えた写真が、1983年6月に写真週刊誌『FOCUS』(1983年6月24日号)に掲載された、いわゆる「ニャンニャン事件」がある。この影響で高部は当時出演中だった『欽ちゃんのどこまでやるの!?』を始め、数々の番組を降板。通学していた堀越高校は無期停学になり、謹慎を余儀なくされた。  一方、アイドルがスキャンダルを起こしても、かつてと同じように芸能活動を復帰できる場合もある。AKB48の指原莉乃は2012年、『週刊文春』で、過去に元ファンの男性と交際していたと報じられ、そこには事実でないことも記載されているとしたものの、その男性が友人であったことは認め、ファンや関係者に向けて謝罪した。また、2013年にはAKB48の峯岸みなみが『週刊文春』にて、若手ダンサーの自宅に宿泊したことが報じられ、頭を丸刈りにして謝罪、大きな話題を呼んだ。しかし、結果として2人はAKB48を脱退することなく、今も活動を続けている。  いったい、アイドルのスキャンダルはどこまでが許されて、どこからが許されないのか。アイドル業界に詳しいサイゾー編集部の吉住哲副編集長は次のように語る。 「アイドルのスキャンダルは大きくわけて、色恋沙汰と違法行為にわけられますが、今回の姫caratのMIKIさんの場合は、スキャンダルの原因が飲酒であり、明らかに法に抵触しています。これはアイドルではなくても炎上するケースであり、厳しい処分になるのも仕方がないでしょう。かつて高部さんや加護さんが喫煙で芸能活動の停止を余儀なくされたように、たとえグループのメンバーやファンが許したとしても、世間が許さない可能性が高いです。本人の強い希望による脱退とされていますが、実際は事務所側の尻尾切りなのではないでしょうか」  では一方、不祥事が許されるケースとは? 「色恋沙汰が発覚した場合は所属事務所によってケースバイケースですね。AKB48の場合はここ数年、多くの恋愛スキャンダルさえネタにして、アイドルのキャラ作りに活かしている面もあります。一方、ハロプロでは恋愛の話をネタすることさえありません。各事務所によって恋愛に対する温度差があり、それが対処法の違いを生んでいるように思います」(吉住氏)  アイドルの不祥事が相次ぐ昨今、それが世間的に許されるか否かは、行為の内容だけではなく、事務所側がアイドルに対してどう向き合っているかによっても変わってくると言えそうだ。 (文=編集部)

「フェスはただの音楽鑑賞会じゃない」リリー・フランキーが考える“理想のフェス”とは?

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「ザンジバルナイト2013」を主催するリリー・フランキー氏

【リアルサウンドより】  リリー・フランキー氏が開催するライブ・イベント「ザンジバルナイト2013」が、9月21日に東京・新木場STUDIO COASTにて開催される。同イベントはジャンルや形式にとらわれず、ミュージシャンやDJだけではなく、今注目のアイドルやお笑い芸人、さらには文化人などが一同に集結し、通常の音楽イベントとは趣を異にしているのが特徴だ。さらに今年は、同イベントとしては初となる3ステージを設置、フェス形式での開催となっている。  リリー氏は、このイベントで、いったいどんな空間を生みだそうとしているのか。ザンジバルナイトの詳細から、その根底にあるリリー氏の音楽観、文化観までを語ってもらう集中連載。第1回では、ザンジバルナイトの魅力と、リリー氏が考える理想のイベントについて語ってもらった。 ――ザンジバルナイトは、ミュージシャンだけではなく、お笑い芸人や文筆家もキャスティングされています。 リリー・フランキー(以下、リリー):キャスティングに関しては、2006年に代官山のUNITでやっていた頃からそうなんだけど、基本的にはとにかく気になる人に声をかけるって感じ。今回は特に多業種を集めていて、現代芸術家がいたり、芸人さんがいたり、アイドルがいたり、ミュージシャンがいたり、映画監督がいたりして、いろんな文化がグシャっと集まった感じになっている。今、たくさんのフェスやライブがあって、それぞれの特色が見えにくくなっているけど、カオス感で言えばザンジバルナイトが一番なんじゃないかな。東京でやるからこそのカオス感というか、整理されていない感じが面白いと思って(笑)。 ――今回、日比谷野音から、メインステージ以外にも複数のステージがあるSTUDIO COASTに会場が移りました。 リリー:野音の場合は、ステージがひとつだからお客さんは演目を順番通りに観ていくしかない。でも、真面目に音楽を順番通りに聴きましょうという形式は、もともとのフェスの本質から離れていっているんじゃないかと思う。逆に、フェスに行ったんだけど、何も観ないでキャンプだけしていたっていう人がいても良いかと。今回のザンジバルナイトはフェスのつもりでやっているわけではないけれど、3ステージあって、フェス仕立てというところは意識している。お祭り感があるイベントを、東京の身近なところでできるっていうところがポイントかな。このアーティストが目当てっていうよりも、全体的な文化を楽しんでもらえたらいいですね。遊びに来る感覚というか。
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時折、冗談を挟みながら、ザンジバルナイトの計画を語るリリー氏

――ステージごとの特色は? リリー:メインステージは今の音楽をやっているミュージシャンだと思う。小室哲哉さんにしてもそうだし、OKAMOTO'Sもそうだし、でんぱ組.incもそう。みんな、少なくとも前時代的なサウンドではない。たとえば小室さんの作品って、多くの人がイメージするのは今まで小室さんが作ったヒット曲だったりして、懐かしい印象を覚える人もいると思う。でも彼は常にその時々で“今の音楽”をやってきた人なんだよね、安室奈美恵の曲にしてもTRFの曲にしても。その時代の音楽を、小室さんの中できちんと消化している。で、最近の小室さんのソロなんだけど、すごくいいんだよね。そして、それを俺が観たいという(笑)。こないだのサマーソニック、観に行けなかったしね。  プールステージには様々なアーティストが出てくる。テントステージはトークや弾き語りなんかがメインだね。だから、メインステージはミュージシャンに頼りっきりだけど、それ以外のところ、テントステージやフードコートをどう充実させるかっていうのが、俺たちみたいなキャストの役割だと思う。メインステージではないところの面白さが「遊びに来てよかった」って感覚を作るものだと思うからね。今回は、遊びに来なかったひとに「あー、行けば良かった」って後悔させるくらい気合いを入れているよ。もう、来年はこのテンションになれる自信はないよね。 ――今回はなぜそんなにやる気に? リリー:せっかく3ステージでできるんだから、もう一回フェスっていうものを、ただの音楽鑑賞会じゃないところに戻したかったという気持ちが大きいかな。単純に遊びたい。たとえばライジングサンとかに行っても、バックヤードでミュージシャンとジンギスカン食べてたりするのが面白かったりするんだよね。その感覚を表に出したいというか、お客さんとバックヤードを共有したいというか。 ――フードコートではどんなメニューを? ここもいろいろ考えているんだけど、今の段階ですでに、食中毒が出そうな企画ばっかりなんだよね(笑)。会田誠さんの土人BBQとか(笑)。最高でしょ。スチャダラパーのビニールに入ったわたあめ作ったりね。お客さんが「うわーいらねー」って思うものを売りたい。くだらないことに手間暇をかけられるのも、東京でフェスをやる意味だと思うしね。 ――音楽じゃないところにも、力を入れている。 リリー:文化って音楽なら音楽、お笑いならお笑いっていう風に、孤立しているものじゃないと思う。いろんなものが共存しているもの。今回は音楽というものから派生している文化、たとえばミッツ・マングローブは、タレントとして認識しているひとが多いと思うんだけど、あの人がやっている歌謡ユニットの星屑スキャットは、実はすごく渋い音楽なんだよね。ほかに音楽芸人として、どぶろっくやマキタスポーツを呼んでいるんだけど、彼らは面白いだけじゃなくて、楽曲的にも素晴らしい。そういった感じで、文化のいろんな側面を楽しめる空間にしたいんだよね。今回のザンジバルは、もしその3つのステージに全然お気に入りの人がいなかったとしても、その空間にいるだけで楽しいイベントになっているんじゃないかな。 zanzibal.jpg2013年9月21日(土) 東京都 新木場STUDIO COAST OPEN 14:00 / START 15:00 出演者 アリーナ・ステージ(ライブ) 小室哲哉 / スチャダラパー / OKAMOTO’S / でんぱ組.inc / and more テント・ステージ(トーク&ライブ) みうらじゅん&リリー・フランキー / 吉田豪&杉作J太郎 / どぶろっく / マキタスポーツ / 渡辺大知(黒猫チェルシー) / 星屑スキャット(ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムー) プール・ステージ(ライブ&DJ) Negicco / ウクレレえいじ / Charisma.com / 掟ポルシェ / ピエール中野(凛として時雨) / and more テレビ・ステージ(トーク) 大根仁 / and more フードコート Coming Soon ザンジバルナイト公式HP (取材・文=マツタヒロノリ、写真=金子山)

矢口真里、LUNA SEA、ガガ様…この夏、体型変化で話題になったアーティストたち

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レディ・ガガ『アプローズ』(ユニバーサルインターナショナル)

【リアルサウンドより】  人前でパフォーマンスするアーティストにとっては、ルックスをコントロールすることも大切な仕事のひとつかもしれない。もちろん、太っているからといって良い演奏ができないわけではないし、痩せているからといってダンスがうまくなるわけでもない。だが、多くのリスナーはそのアーティストの外見も含めてファンになっているという場合は少なくないし、かつてのイメージと異なりすぎる容姿になっていると、ショックを受けるケースがあるのは事実だ。  そして、好きなアーティストのルックスの豹変ぶりからは、出来れば目を背けたい気持ちもあるが、やはりその姿も目に焼き付けたいと願うのは、ファン心理の不思議なところ。そこで、しばらく見ないうちに以前とは異なるルックスとなり、ファンたちを驚かせたアーティストを集めてみた。 ●矢口真里  不倫騒動が大きく報道され、すっかり公の場から姿を隠してしまった矢口真里。そのストレスは相当なものだったらしく、先月27日に発売された「女性自身」(光文社)に掲載された写真では、かつてのスッキリとした顎のラインは見る影もなく、二重あごになり、二の腕もパンパンに膨れていた。元夫の中村昌也が順調に芸能界復帰をしはじめ、不倫騒動を笑いに変えようと奮闘した結果か、世間的にも矢口に対する同情ムードが漂っている昨今。本人の気持ちに整理が付き、早々に芸能界復帰ができることを願いたい。 ●RYUICHI(LUNA SEA)  8月30日放送のミュージック・ステーションに、約13年ぶりに登場したLUNA SEA。ボーカルのRYUICHIは現在43歳で、13年前と比べてかなりガッシリとした体型に変わっていた。ネット上では番組を観たファンから「渋いオヤジになったね」「まだまだカッコイイよ」と、その外見の変化を年齢相応の風格と捉える意見があった一方、「ホリエモンにそっくりになっている!」「彦摩呂にも似ている!」と、驚く声もあがっていた。LUNA SEAは2000年末に開催し、2010年に再結成。そして今回のミュージックステーション登場を機に、本格的に活動を再開するという。 ●鈴木花音(モーニング娘。)  モーニング娘。史上、最強のぽっちゃり系として話題のズッキこと鈴木花音。デビュー当時はすっきりとした体型の美少女だったが、体質が変化しやすい年頃なのか、2012年頃はすっかりぽっちゃり系に。しかし、最近はダイエットが功を奏したのか、またスッキリとした体型に変わってきた。明るくて努力家なキャラクターが愛され、ぽっちゃり系でもしっかりファンが付いていた彼女。一部のファンからは痩せたことに対し「そのままの体型が良かったのに」という声もあがっているが、年頃の乙女としては複雑な心境かもしれない。 ●TERU(GLAY)  2011年あたりから激太りが指摘されてきたGRAYのTERU。2012年の4月にはブログで「アンチエイジング宣言」をし、6キロのダイエットに成功したと報告したが、やはりかつての美少年の面影は薄い。だが、ボーカリストの風貌が変わっても、人気バンドであり続けるGLAYがすごいことは確かだ。 ●レディー・ガガ  2012年には激太りで大きな話題を呼び、ライブ中にからかった観客からソーセージを投げつけられるなどのトラブルに巻き込まれていたレディー・ガガだが、2013年には一転、激やせで話題をかっさらった。7月に自身で立ち上げたSNS「LittleMonsters」で公開したすっぴんは、あまりにも痩せすぎていて「誰だかわからない」「廃人っぽい」と、ファンから心配されているのだ。話題に事欠かないガガだが、急激な体型の変化で注目を集めるのは、これで最後にしてほしいところ。  アーティストも生身の人間、不摂生な生活を送れば体型も変化するし、年齢を重ねれば誰もが老いるもの。だが、それでも好きなアーティストにはいつまでも輝いていてほしいと願うのも人情である。アーティストには体型の変化などで話題とならずに、音楽やプライベートの朗報、吉報で話題となってほしいものだ。 (文=松下博夫)

掟ポルシェのアイドルプロデュース論 Perfume、東京女子流、Negiccoの曲はなぜ面白い?

20130831-okite.JPG【リアルサウンドより】 アイドル界の論客としても知られる掟ポルシェ氏が、シーンの最前線を語る集中連載第4回。最終回となる今回は、アイドルをプロデュースするうえで大切なビジョンとはなにかを語ってもらった。 第1回:ハロプロはソフトレズ容認へ!? 掟ポルシェが語る『アイドルと恋愛』 第2回:BABYMETAL、BiS階段...「規格外のアイドル」が次々登場する背景を掟ポルシェが分析 第3回:掟ポルシェが語るハロプロの真価 つんく♂サウンドの「特殊性」とは? ――ハロプロ以外では、掟さんが最近、特に注目しているグループは? 掟ポルシェ(以下、掟):東京女子流、Negicco、hy4 4yh(ハイパーヨーヨ)、Especia、アップアップガールズ(仮)、ライムベリーあたりでしょうか。特に東京女子流は、メンバーのキャラクターとやっている音楽が対極にあるのが面白い。平均年齢15歳ぐらいの女の子なんだけど、やっているのはこの上なく渋い大人の音楽。70年代のブルース・ロックやスティービー・ワンダーみたいなブラック・ミュージック、80年頃のA.O.Rなどの要素が曲に散りばめられていて、サウンド・プロダクションが豪華です。最新シングルの『運命』なんて90年代のニュージャックスイングっぽさも感じられたり、現代のいわゆるベタなアイドル曲とは、そのフォーマットと目指すものが完全に別次元にあって、その洗練が際立っています。歌謡曲マニアがいてもたってもいられなくなるラインを完全に押さえている。その大人びた曲を大人が圧倒的な歌唱力をもって普通に歌ったら、それは今までの歌謡の歴史の中にあったものになりますが、質朴な十代の女の子の歌声がそこに乗ることで化学反応が起き、新鮮な驚きが生まれます。

東京女子流『運命』(avex trax)

 プロデューサーの藤原俊夫さんは、たどり着きたい正解がハッキリと見えている人。アレンジャーの松井寛さんが藤原さんのアイデアを最短距離で的確に形にしていく。制作のチーム女子流には完全に正解というものが見えているんです。アイドルにどういうことをやらせたいのかが明確にあるのが強み。あそこまでビジョンがハッキリ見えている制作チームはなかなかいませんね。 ――歌い手のポテンシャルを超えている曲をあえて用意していると? 掟:難しい曲を少しずつものにしていく経過が応援したい気持ちを喚起して良いという捉え方もあるし、自分の場合は、音階の一番上の部分やサビで声量のいる部分が時に裏返ったり、パーフェクトに歌いきれてないこと自体が美徳と思っています。アイドルの歌はテクニカルになりすぎると、前回にも書いた、アイドルの「可愛さ=拙さ」という本懐が薄れて、魅力の一端が損なわれてしまう恐れがありますし、今の状態ですでにベストではないかと。  あと、東京女子流はセンターの新井ひとみさんがとても不思議で面白い。15歳なんですけど、近年、「宇宙人が時々自分の意識に入ってくるので交信している」と言う。普通ならアウトでしょうが、朴訥とした純真な佇まいの新井さんが言うと、「新井ひとみが言うのだから虚言ではない」と確信できるものがある。でも、メンバーの中でも大人びていて現実的な思考の小西彩乃さんは、(んなわけねーじゃん)と思っているのか、「じゃあさ、宇宙人に今晩のご飯は何を食べたらいいか聞いてみてよ」なんて、いじわるを言う。すると新井さんは笑顔のまま表情ひとつ崩さず、「わかりました、聞いてみます(ややななめ上を凛と見つめて)…………(何かの答えが降りてきたようにハッとした顔で)きました! 今晩のご飯はすいとんです」って(笑)。なんで宇宙人が15歳の少女にすいとんを食えとアドバイスしてるんだ、いや、それ以前になんで宇宙人がすいとん知ってんだよとか、いろいろ思いますが、新井さんがいうのだから、まぁ、その、100%真実です。年齢に不似合いなまでの純真過剰がもうたまらないですね。卓越した楽曲を歌っていても、やっているアイドルたちが音楽に飲み込まれていない部分があるのがすごいんですよ。 ――音楽に飲み込まれない、というのは? 掟:歌い方のクセだとか、メンバーのキャラクターだとかが楽曲のポテンシャルに負けず拮抗して、より素晴らしいものを生み出してしまうこと。そういう意味では、10年活動して最近になって初のオリジナルアルバムを出した新潟のNegiccoも、キャラクターの清廉さが曲との相乗効果を生んでいます。最新シングル『アイドルばかり聴かないで』のプロデューサー小西康陽さんは、一聴してわかる小西サウンドが持ち味。故に歌っているアイドルの曲というより、「小西康陽の曲」になりがちではあります。しかもこの曲はアイドルヲタが同じCDを何枚も買う現代のアイドル産業構造の歪みをそのまま小西さんが歌詞にしていて、アイドル本人が歌うのはシャレにならない部分があるはずなんですが、いまだに新潟在住で、地方の女の子特有のスレてなさを大量に持ち合わせるNegiccoが歌うことで、曲の毒気をポップに昇華してしまっている。これは、実はすごいことだと思います。  『アイドルばかり聴かないで』は、小西さんが作るアイドル曲仕事の中でもぶっちぎりのホームラン曲だと思いますし、2010年代のアイドル歌謡を代表するぐらいのすごい曲だと思っています。両者の相性がよかったということもありますが、まさかここまでいいとは、と。通常のNegiccoの曲は、彼女たちと同じく新潟在住のプロデューサー・connieさんが全面的に制作していますが、彼が作る泣きメロのダンサブルな曲もとてもオリジナルな質感を持っていて素晴らしい。Negiccoの清涼感のある歌声とキャラクターは、どんな曲にも飲み込まれない。10年続いているグループにはやはり理由があります。聴いてるだけで心が洗われるような気がしてくるんですよね。

Negicco『アイドルばかり聴かないで』(T-Palette Records)

――アイドルが楽曲の力で成功するためには、何が必要なんでしょう? 掟:独自の正解を持っているワンプロデューサーの元で、同じ路線の音楽を続けていくっていうことが大事なんでしょうね。結果を出してきたグループはそういう傾向が強いと思います。中田ヤスタカさん、小西康陽さんや藤原俊夫さんも、自分の作風のオリジナルを信じ、圧倒的な自信を持っている。プロデューサーに正解のビジョンが見えていて、それを具現化し続けている限りは大丈夫だと思っています。 ――例えば、中田ヤスタカさんの継続の仕方とは? 掟:中田ヤスタカさんは音色とメロディーセンスにオリジナリティがあって、ご自身の作風からほとんどブレずに曲を作り続けている。元ネタをそのまままるごと引用したりもしますが、元ネタに対して上に乗っけているメロディーが特徴的なため、元ネタよりもいい曲に聴こえさせる力がある。売れている作曲・編曲家にはいわゆる“節”があるものだと思いますが、中田さんの書くメロディにもしっかりと“中田節”がある。Perfumeに曲を作り続けて約10年、その間変わらず中田節だけをやり続けているから、海外でも評価される。また、同じような曲を継続していると、飽きられるという問題もあるかと思いますが、音楽に変化がない分、リスナー層がうまく入れ替わっていくことも出来るんですよ。  Perfumeの場合、最初はアイドルファンしか聴いていなかったのが、時が経つに連れ一般層や同世代の女の子とかにメインのリスナー層が入れ替わっていった。アイドルというジャンルから違うリスナー層を獲得するという難しいことに成功し、いまではアイドルと呼ぶのに戸惑うぐらいの風格を漂わせている。ロックフェスのトリをとってもなんの違和感も異論もない。かつてのアイドルが誰も成し得なかった偉業だと思います。  アイドルというのは、極論すれば若い女の子がその若さ故の輝きの力だけで成立するものであったりもします。でも、明確なビジョンを持つワンプロデューサーで、同じ方向性の音楽を続けていくことが出来れば、歳を取り若さの輝きが薄れていった時でも、純粋にその音楽が好きなファンは残る。アイドルのプロデュースをする上で、そこはすごく重要なポイントだと思っています。 (取材・文=編集部)

『恋するフォーチュンクッキー』は、本当に恋しているか?

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AKB48『恋するフォーチュンクッキー』(キングレコード)

 盆休みに友人と酒を飲んでいて、音楽の話になった。彼はキンクスやアニマルズなどの古いロックや60年代ポップスに造詣の深い好人物だ。そんな彼が「ポップスの歌詞に意味は不要じゃないか」と言いだした。「どんな素晴らしい歌詞も、メロディやコードの構造の美しさに負けてしまう。その証拠に」と彼が挙げたのは、ダスティ・スプリングフィールドのヒット曲「タルサから24時間」だった。    最愛の恋人を一夜にして裏切ってしまう、儚くも情熱的な物語。「こんなドラマチックな歌詞なのに、そこに言及されることはあまりない。作曲者であるバート・バカラックの名前は知っていても、作詞をしたハル・デヴィッドを知る日本人は少ないだろ」と彼は嘆いた。  歌謡曲がいつの間にかJ-POPと呼ばれるようになって、歌詞の存在意義は年月を経るごとに薄らいでいるように思う。今その中心に存在するのはAKB48だ。最新シングル「恋するフォーチュンクッキー」を聴いてみよう。  華やかなストリングスはモータウン風。フィリーソウルを思わせるブラス・アレンジ。大仰でないサビメロは上品な印象。2012年12月に散開したガール・ポップ・ユニットTomato n' Pineの凝りまくったサウンドに比べればクオリティは劣るものの、粗製乱造のJ-POP界にあって、よく練り込まれた作品だと思える。それ以前に、かわいい女の子たちが元気に歌っているのが良い。元気でかわいい女の子を嫌いな人間はいない。AKB48はそれ自体が社会現象だが、グループ・アイドル・ブームのトリガーとしての功績は、いまさらながら、とてつもなく大きい。  それにしても、だ。この曲を「物語性」という観点で聴くと、その歌詞はもはや「何も言ってない」のと同じだ。状況を描写する言葉は唯一「カフェテリア」だけで、風景が見えない。「ルックスに自信なくても前向きに。笑顔でいれば良いことあるかも」という低級な処世訓を演じているだけの5分弱。このフォーチュンクッキーは、まったく無根拠に「あなたとどこかで愛しあえる予感」がする程度で、全然恋なんかしてないのだ。  どこか韻を踏んでいたり、比喩や暗喩や伏線があるかといえば、まったくない。前半で「地味な花は気づいてくれない」と言うなら、後半で「花開く」とか「咲いてる」とか、何かそういう対比されるフレーズがあるべきなのだ。そういう構成美が詩歌の肝だろ。そもそも「地味な花は気づいてくれない」って文法的に正しくない。「地味な花には気づいてくれない」か「地味な花を気づいてくれない」が正しい。そんなこと指摘しだすと、「だけど自分に自信ない」という部分も許せなくなってくる。自信って言葉は自分以外に使わない。「自分に自信がない」は「頭痛が痛い」って言うのと一緒だ。唐突に述べられる「世界は愛で溢れているよ」とか「人生捨てたもんじゃないよね」などはもはや詩と呼べるレベルにない。生まれて初めて書いた小学生の作文にでも出てきそうな、幼稚な言葉……。  70年代の歌謡曲黄金時代を担った作詞家、阿久悠はこんな象徴的な言葉を遺している。 「昭和の歌謡曲は映画的だった。近年のJ-POPはブログ的だ」  今やポップスにストーリー性を持たせようとすると、「トイレの神様」みたいな冗長なものになってしまう。西野カナ的な「共感ブログ手法」の即効性が重宝されるのは当然だろう。しかし「恋するフォーチュンクッキー」の歌詞は映画的にもブログ的にも振り切れていない。トラックが良いだけに、その中途半端さが残念だ。  「ポップスの歌詞に意味は不要じゃないか」という冒頭の友人の嘆きについて改めて考える。もはや現代では、音楽に「映画的な感動」も「ブログ的な共感」も求めらていないのかもしれない。私自身もさっき「かわいい女の子たちが元気に歌っていればそれで良い」みたいなことを書いた。もう歌詞なんて全部「明日は明日の風が吹くと思う~」とかでいいのだろう。  しかし、「ポップス」とはポピュラリティの略であり、いつの時代も大衆文化の中心にあるべきだと思う。少なくとも、音楽を愛する読者のみなさんなら、そう信じたいのではないか。阿久悠は「2時間の映画の感動を3分の歌に込めるのが歌謡曲の密度」とも語った。彼がトップ・アイドル、ピンク・レディーに提供した「渚のシンドバット」(1977年)を聴き直してみると、「サーフィンボード小わきにかかえ美女から美女へ」とか「私はいちころでダウンよ」など、平易で簡素な言葉の羅列にすぎない。しかし、そこには確かに滴るような夏の風景が広がっていて、聴く者は熱い恋の情景を予感する。「想像させる力」に溢れている彼の詞を聴けば、いかに現在のJ-POPの歌詞が説明的で直接的かを痛感するだろう。  「リスナーに想像力を喚起させるスキル」と「感動を伝えたいという情熱」をバランス良く併せ持つ作詞家がたくさん登場すれば、J-POPはもうひとつ高い次元で新しい時代を迎えることができるのだろう。 ■山口真木(やまぐち・まき) 大阪出身の27才、OL。ポップスとロックと女の子をこよなく愛する。何かに毒づいてばかりの思春期まっただ中。会社の同僚のターコイズブルーのネイルがどうしても内出血にしか見えず「だいじょうぶっ?!」と叫んだら「なにが?!」と言われてコンタクトをつけながら一分間絶句した、近眼の夏です。

AKB48秋元卒業でチームKはどう変わる? アイドル専門家は「島田晴香がキーパーソン」と指摘

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AKB48『さよならクロール』(KING RECORDS)

【リアルサウンドより】  AKB48の秋元才加が8月28日、東京・秋葉原のAKB48劇場で卒業公演を行った。06年の加入からチームK一筋の秋元は、チームカラーの緑色のサイリウムを振る250人のファンに見送られながら、7年半のアイドル人生にピリオドを打った。篠田麻里子、板野友美に続いて、今夏の卒業が決まっていたメンバーが全員、グループを巣立ったことになる。  秋元は、体育会系で熱いパフォーマンスが持ち味とされる、チームKの主力メンバーとして活躍してきた。2010年3月から2012年10月まではチームKのキャプテンを務め、大島優子がキャプテンに就任してからも、チームKを象徴するキャラクターとして存在感を発揮した。はっきりとものを言う性格で、同期の増田有華や宮澤佐江とはぶつかり合うこともあったが、その一方、“ゴリラキャラ”で笑いを取るなどのユーモアセンスがあり、チームメイトから慕われる存在だった。  今回の秋元の卒業を受けて、ネット上では「チームKといえば秋元才加というイメージだったな」「最後まで熱いパフォーマンスだった! お疲れ様」と秋元の卒業を祝うムードがある一方、「秋元がいないチームKの持ち味ってなに?」「もはや体育会系とは言えないのでは」と、今後のチームKを危ぶむ声もある。  今回の秋元の卒業を専門家はどう見るのか。放送作家であり、アイドル界に詳しいエドボル氏が話す。 「チームKが体育会系というイメージは世間に浸透していますが、実態はかなり変わってきています。2010年に組閣(チームシャッフル)した時点で、チームKはすでに体育会系的な性格をかなり失っていました。現在では、AKBへの対抗意識から生まれた激しさを持っているSKE48の方が、体育会系的なんではないでしょうか。もちろん、現在でも旧チームKの魂が継承されている部分はあると思いますが、現キャプテンの大島優子がかなり違うタイプですからね。大島は率先してチームを鼓舞するというよりも、背中で引っ張っていくタイプなので、秋元が大島をサポートしていた部分があるのではないかと。それでなんとか、チームKらしさは残っているのだと思います」   それでは、秋元が卒業した後のチームKは、このまま体育会系という特色を失っていく一方なのだろうか。 「チームKには、正統派アイドル路線が持ち味であるチームAに対して、異なる特色を打ち出していくという役割があります。それゆえ、旧チームKのようにチームカラーを再構築しなければならない部分もあるでしょう。しかし、キャプテンの大島優子はそういうキャラクターではないので、誰かが秋元の代わりをしなければなりません。そこで注目したいのは、島田晴香です。島田はもともと、チーム4の臨時キャプテンをやっていたこともあり、本人自身もキャプテンに強いこだわりがある。情熱的な性格であり、チームKというものに対する思い入れも非常に強い人間です。もしも秋元が卒業したことによる穴があるとしたら、それを真っ先に埋めようとするのは島田だし、今後間違いなく、チームKのキーパーソンになってくるでしょう。彼女はもちろんのこと、旧チームKから在籍している倉持明日香や小林香菜が頑張らなければ、チームKは『大島優子と愉快な仲間たち』になってしまいかねない。彼女たちの今後の活躍に期待したいですね」  チームKの象徴だった秋元が卒業した後のキーパーソンと目される島田晴香。彼女の動向に注目して損はなさそうだ。 (文=リアルサウンド編集部)

掟ポルシェが語るハロプロの真価 つんく♂サウンドの「特殊性」とは?

20130827-okite.JPG【リアルサウンドより】 アイドル界の論客としても知られる掟ポルシェ氏が、シーンの最前線を語る集中連載第3回。今回は、氏がかねてより絶賛しているハロー! プロジェクトの魅力について、音楽性、キャラクターという二つの観点から分析してもらった。 第1回:ハロプロはソフトレズ容認へ!? 掟ポルシェが語る『アイドルと恋愛』 第2回:BABYMETAL、BiS階段...「規格外のアイドル」が次々登場する背景を掟ポルシェが分析 ――最近、モーニング娘。℃-uteなど、ハロプロ勢の評価が高まっています。 掟ポルシェ(以下、掟):00年代の初頭頃、モーニング娘。は国民的人気を獲得していました。本隊だけでなく、ミニモニ。やタンポポなど、多くのハロプロユニットを成功させたことによって、アイドル冬の時代と言われる、歌うアイドルの人気が低かった十数年間を払拭して、このジャンルに新規参入ファンを大勢取り込んでアイドル歌謡界を復興させた功績は何より大きかった。ハロプロをテレビで見ない日がなかった時代は一度落ち着きましたが、それでもつんく♂さんはかなりの打率でアイドル歌謡曲の佳曲を作り続けていました。その後、AKB48PerfumeももいろクローバーZなど、アイドルに興味のなかった人たちをも熱狂させるアイドルが登場し、種種雑多なアイドル歌謡曲をフラットに見られる今日のような状態になったとき、つんく♂さんにしか出せない独自の味、時代を担うクリエイターとしてあるべき特殊性と異常性に、ようやくみんな気付いてきた、ということかと思います。 ――というと? 掟:他のアイドル歌謡曲にはない、特徴的なオリジナルの手法がいくつもあって、一聴してつんく♂サウンドとわかるんですよ。よく言われる歌割りの細かさなどはその一例として顕著です。歌の基本は短いソロパートの連続になっていて、小節ごとに歌い分けるどころか、曲によっては吐息だけのパートのメンバーがいたり。グループアイドルにあって、各メンバーの声の魅力を知るには、ソロパートの連続で曲を構成されているのが重要なんだと、俺はつんく♂歌謡で思いましたね。しかしながらAKB48があえて基本ユニゾン(=同じメロディを全員で歌うこと)で歌っているのは、俺は秋元さんがつんく♂さんのやらないことをやっていった結果だと思っています。曲の作り方自体は、つんく♂さんはわりと古典的だと思うんですよ。歌謡曲の場合、三曲くらい元ネタがあって、それを合わせてひとつのものにするっていうやり方が常套手段ですが、同じことをやってもつんく♂さんという人間のフィルターがすごく特殊な故に、引用元とまったく違った曲になることが多い。この曲とこの曲とこの曲を合わせて、なんでこういう風に仕上がるの?と。例えば℃-uteの「大きな愛でもてなして」は、ジューシー・フルーツの「ジェニーはご機嫌ななめ」を元ネタにしているとご本人が以前おっしゃってましたが、まったく別な曲として聴こえる。元ネタ曲とは別なポップなものにしてしまう力が凄い。つんく♂さんという人間のフィルターが天才であり独特で、なかなか他のアイドル曲のクリエイターでは替えが効かない存在だということに、世間が気づき始めたんだと思います。

℃-ute「大きな愛でもてなして」(アップフロントワークス)

――00年代半ば以降のつんく♂さんは、正当な評価を受けているとはいえない状況がありました。 掟:つんく♂さん自身は、アイドル歌謡曲というスタンスで面白いことをやりたいという、同じ基本を続けているだけなんだと思うんですよ。アイドル歌謡曲は最新モードの流行音楽を採り入れて、引用したジャンルの洗練を借りるということもよくやります。2000年頃のつんく♂さんは、当時お洒落なポピュラーミュージックの代表だったR&Bをよく採り入れていた。しかしR&Bはうまく歌うことを求められる音楽であるが故に、アイドルとR&Bとの組み合わせだと、R&B側にアイドルの外連味の魅力が飲みこまれてしまいがちになる。アイドルとは何かといえば、一言で乱暴に言い表せば「可愛い」という言葉に置き換えられる。そして可愛いということは、拙いということと似ているところもあり、成熟した歌唱力を求められるR&B歌謡は、その真逆に向かう表現方法であるために、アイドルファンのニーズとすれ違いがあったのかもしれません。 ――だけど今は、また時代と合ってきた? 掟:最近のハロプロ、特にここ1年程モーニング娘。のシングル曲は、今の時代の最新モードであるEDMを基本線にしています。EDMはボーカルの技術を聴かせる音楽ではなく、身体性を第一義にしたダンスミュージック。9期10期加入と、高橋愛、田中れいな卒業で歌唱力のあるメンバーが減り、歌の技術完成度よりもフォーメーションダンスの華麗さで魅せるグループに変わったことも、いい方向に働いているようです。かつてモーニング娘。のファンだったモーヲタで、10年ぶりに現場復帰した話もよく聞きますし、現在のEDM路線は間違っていないと思います。歌唱力が弱くなったからといって、歌声の魅力がなくなったわけではなく、先述したようなアイドルの歌声と外連味の関係から考えれば、逆に純化されわかりやすくなったのではないかと。ハロプロの魅力といえば、つんく♂さんの仮歌が反映されていると思われるヴォーカルライン。歌唱法に独特のクセがあるんですよ。
 ――ダンスミュージックでありながら、ヴォーカルラインに魅力があると。 掟:Juice=Juiceの宮本佳林さんが歌唱指導について語っているインタビューを読んだんですが、言葉の節々に「ン」を入れるように歌うのがその特徴だと。たとえばスペシャル・メニューという単語だったら、「スンペシャルゥン・メンニュゥン」って感じでしょうか。鼻にかける歌い方、ということですね。それがもともとつんく♂さんの持っているクセであり、セクシャルなものを歌詞ではなく歌唱法に滑り込ませてアイドルの魅力を際立たせるという、アイドル歌謡曲の古典的な手法でもあります。ストレートに歌詞にセクシャルを入れ込むと下品になる恐れがあるので、そこはあくまで隠喩にするのが、歌謡曲の常套手段。そして、かつてその見えない制約を破壊したのが秋元康さんで、「セーラー服を脱がさないで」とか、「スカート、ひらり」とか、あくまで“エッチ”に留めるレベルでハッキリ言葉にして歌わせる。その違いも興味深いです。つんく♂さんの歌唱法は古典的ですが、つんく♂さんぐらいそれを徹底しているプロデューサーが他にいないので、現代ではハロプロのお家芸にもなっています。

Juice=Juice 「ロマンスの途中」(アップフロントワークス)

――モーニング娘。は、メンバーもずいぶん入れ替わりました。 掟: 9期10期が歌唱力よりキャラクター重視で採用したところもあり、面白いメンバーがたくさんいて推しきれず、ファンとしては本当に嬉しい悲鳴ですね。佐藤優樹さんと工藤遥さんは、子供が野生をむき出しにしたままで入ってきた感じで、その芸能人らしからぬ自由奔放さが面白い。以前インタビューしたんですが、特に佐藤さんは発言のすべてが理解の範囲を軽く越えていて最高。ご両親の教育方針が独特で、生まれた時からしばらく家庭内では英語で話していたらしいんですよ。お母さんが英語翻訳のお仕事をされていたからだとかで。で、保育園に入った時、佐藤さんは自分の言葉が通じずびっくりした。そこに、ハーフの子が近づいてきて「君の話している言葉は外国語だから日本では通じないよ」と英語で言われて、初めて自分がしゃべっている言葉が母国語ではないことを知った。それ以来、保育園に通い続けて友達と日本語で会話するようになって英語をどんどん忘れていき、いまではまったく話せなくなって、保育園入園してから始めたから日本語も拙いという。インタビュー時に佐藤さんは12歳でしたけど、「トカゲ」を知りませんでしたからね。「一昨年」は「きょきょねん」と言っていて、そこも衝撃を受けました。よくこんな逸材が日本に残ってたなぁと。 ――性格も変わっていると言われていますね。 掟:かなり特殊な育てられ方をしたからなのか、思ったことをそのまま口や顔に出してしまう。後輩で入ってきた小田さくらさんが、佐藤さんに一個だけやめてほしいと懇願したことが「なにか良くないところを指摘されたときに、指摘した人を睨むこと」だという。その話を聞いて、無意識過剰すぎて惚れ惚れしましたね。もうほとんど野生動物。でもアイドルは元来崇拝の対象であって、人間とは真逆の生き物であることが重要だと思っています。彼女は本当に面白いです。アイドルの中に生の人間は見たくないんですよ。瑣末なことで悩んだりしているのは、自分だけでたくさんですから。アイドルには、人間離れしているものを求めている。人として間違っている部分さえ魅力に思わせることが出来る才能を、俺はアイドルだと思っています。アントニオ猪木を眺めているときの気持ちに近いかもですね。 次回に続く (取材・文=編集部)

西野カナは“会えない”ことに憧れている? 『いいとも』でタモリが本人に問い質す

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『Love Collection ~pink~(初回生産限定盤)』(ソニーミュージック)

【リアルサウンドより】  デビュー5周年を記念したベストアルバムの発売を控える西野カナが本日27日、『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングに登場した。  今月9日のミュージックステーションでも顔を合わせたばかりの2人。「痩せた?」「いえ、全然そんなことはないんですけど……」という気さくなトークからスタートしたコーナーだったが、西野が「タモリさんにお伺いしたいことがありまして」と切り出したことで状況は一変。「『いいとも』のディレクターさんから、タモリさんは『西野カナは会えないことに憧れている』とおっしゃっていると聞いたんですけど」と続けた西野に対し、タモリがそれを認めたことで、「西野カナは“会えない”ことに憧れているのではないか?」という議論が勃発した。下記に、その一部始終をお届けしよう。 タモリ:歌を聞いてると、「会えない」という歌詞がよく登場するけど、この時代、メールもあれば電話もあるし、新幹線も車もある。ね? 会おうと思えばいくらでも会えるのに、「会えない、会えない」と言い続けている。それが不思議で、「西野カナちゃんは会えないことに憧れているんじゃないか」と。 西野:憧れてるわけじゃないんですよ! メールがあっても電話があっても、会えて、生でその人を感じられることを超えるのは無理だと思うんです。どんなに時代が発展しても。 タモリ:今は男もすぐ会いに来るでしょう? 西野:いーやぁ! お互い忙しかったらどうですか? 例えば、すっごい遠距離恋愛とか。 タモリ:うーん。でも、そんなには多くないと思うよ。写メ撮って送ればいいじゃない。 西野:えー? でも、写真だったら、顔のデコボコとか分からないじゃないですか。 タモリ:そのうち、写真を撮れば顔のデコボコまで再現する技術ができるかもしれないよ。  ここでいったん、「たしかに、大学に通いながら東京で仕事をするのは忙しかっただろうね。授業を受けて、新幹線で東京へ行ってというのは、大変なことは大変だ」と西野に歩み寄ったタモリ。しかし、すぐに話は戻り、「シングル21枚中、9枚が失恋の歌なんですよ。そのうちの6枚で、会えていない」と具体的な数字を出し、「これは、おかしいんじゃないですか? 圧倒的に会えていない!」と再度、疑問を投げかけた。  すると、西野は「たしかに会えてない」と笑いながら認め、「自分では自覚がなかったんです」と明かした。最近は大学を過ごした名古屋の友人から「久しぶり。会いたくて震える♥」というメールが届くこともあると話し、本人公認の“ネタ”にもなっているようだ。  西野の歌詞に「会いたい」という言葉が多く含まれることは、ネット上では何度も話題になってきた。今回の出演で「なぜ会いたがるのか?」という謎が解けた視聴者も多かったのではないか。 (文=編集部) ■関連情報 Kana Nishino | 西野カナ Official Website

AKBフォーマットを離れた「恋するフォーチュンクッキー」は、歌い継がれる名曲となれるか

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『恋するフォーチュンクッキーType K(初回限定盤) 』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  AKB48が8月21日にリリースした32枚目のシングル『恋するフォーチュンクッキー』。セールス的にも初日で109.6万枚とAKB史上歴代3位のセールスを記録。さらに、楽曲的にも非常に評価も高く、Twitterでは各界の著名人の『恋する~』への評価ツイートをまとめたものが拡散され続けている。  先日の第5回選抜総選挙の結果を受け指原莉乃をセンターに迎えたこの楽曲は、センターの指原のソロ楽曲「それでも好きだよ」で証明済みの鼻にかかる甘ったるいアイドル的な歌声と、オーセンティックなディスコサウンドで、確信的に80年代を意識させた楽曲となっている。専門家からは総じて評価が低いBPM150~160のギターサウンドを基調とした「ポニーテールとシュシュ」「ファーストラビット」などの"AKBフォーマット"的な代表的楽曲とはかけ離れており、特に旧来からの音楽ファンに受け入れられたのは頷ける。  ドームツアーの最終東京ドーム4DAYSでは、板野友美、秋元才加の卒業がメインで、AKBのコンサートでは恒例となっているサプライズ発表は、AKB48グループのすべてのチームでの劇場での新公演スタート日程の発表と現AKBの研究生を昇格させての新生チーム4結成のみ。スポーツ紙の一面を飾るような大きなサプライズ発表はなかった。しかし、この新公演の発表に『恋するフォーチュン・クッキー』へと繋がる鍵がある。  AKBの新劇場公演は、最も近いNMB48のチームNが今年の10月26日。そこから計10公演を約10ヶ月でスタートさせなければならない。1公演17曲を書き下ろさなければならないから、170曲の新曲が10ヶ月で必要となる。限りなく不可能に近いように感じられる数字だが、それを可能にするヒントが『僕の太陽』公演である。2007年7月からの4ヶ月AKB48ひまわり組(チームAとチームKの合同チーム)の劇場公演として、また2011年10月から約1年間は旧チーム4、さらには現在のSKE48チームEなどが行っているこの公演。「僕の太陽」「BINGO!」「夕陽を見ているか?」とシングル曲が中心で構成されている。そして、これらの曲は現在の大きなコンサートでも歌われ続けている。  実は2008年の「大声ダイヤモンド」以前のシングル曲はすべて劇場公演に組み込まれていたが、AKBのブレイク以降、シングルのリリースペースは加速しAKBフォーマットの楽曲が量産されると同時に、劇場公演にシングル曲が組み込まれることはなくなった。それは、オールタイムベストとなりうる曲でなければ劇場公演に組み込むことが難しいことの証明であろう。ならば、新公演ラッシュを迎えるにあたり、シングル楽曲の方向性を徐々に移行して、世代を問わないスタンダード性が強い劇場公演に組み込める楽曲を、という運営方針に変更されたと推測できる。  それを見据えて作られたと考えれば、今年発表された「So Long!」「さよならクロール」がここ数年の同時期の楽曲と比べて多少地味な印象を受けることも納得できる。もちろん劇場公演には現在のAKBファンが盛り上がる"AKBフォーマット"楽曲ももちろん必要だが、今までのシングルでストックは十分である。結果的にオールタイム・ベスト楽曲を生み出すためにAKBが挑戦するこれから先の「未来はそんな悪くない」のではないだろうか。 ■エドボル 放送作家。『妄想科学デパートAKIBANOISE』(TOKYO FM水曜25:00-)『安田大サーカスクロちゃんのIdol St@tion』(目黒FM隔週木20:00-)、『Tokyo Idol Festival2013』(フジテレビNEXT)など、テレビ・ラジオなどの構成を担当。サイゾー、SPA!などでもアイドル関連のインタビューを中心に執筆中。