池江璃花子の白血病公表でマスコミの家族取材に疑問 小林麻央の乳がん公表時と同じことが繰り返されている

今月12日、水泳選手の池江璃花子は自身のツイッターで「白血病」と診断されたことを公表した。それを受け、「デイリー新潮」がすぐさま池江選手の祖母の自宅を訪問し取材したとの記事を公開している。

取材に対して池江選手の祖母は以下のように答え、何度も「生きて欲しい」という言葉を口にしていたそうだ。

<水泳なんてやんなくていいから、とにかく長生きして、私より先に逝っちゃうなんて、いやだから、とにかく長生きしてほしいです>
<オリンピックなんて、もう出なくていい。生きてくれさえすれば。私が死ぬ前に死んでほしくない>

 しかし、「マスコミが家族の自宅に押しかける」ということへ否定的な声も出ている。

マスコミが家族の自宅に押しかけること自体問題がある
 「デイリー新潮」の取材に対して、池江選手の祖母は素直な思いのたけを話してくれたようだが、玄関の周りを心配そうに歩きながら「昨日から私、ダメなんだよね」と話す場面もあったようで、精神的に不安定な状態ということは想像に難くない。突然の告知に、池江選手自身のみならず家族も動揺しているはずだ。そのような状態の家族への取材行為自体が、家族や池江選手を傷つけることになりかねない。

 2016年に小林麻央さんが乳がんを公表した際も、マスコミが家族の元を取材し「がんのステージ」などを何度も聞くといったことがあった。病気に関してはよりプライバシー性の高い個人情報であり報道にも慎重さが求められるが、デリカシーのないマスコミの態度に一般市民からもネット上で「プライバシーの侵害だ」と多くの非難が噴出したことは記憶に新しい。

 池江選手の場合も、トップアスリートだけに報道合戦の過熱が心配されるが、報道自体が彼女や家族に精神的負担をかけ闘病の障害になる可能性もある。そっとしておくことが望ましいのではないか。

 

桜田義孝五輪担当相は池江選手の白血病に「本当にがっかりしている」
 一方で、政治家からもデリカシーに欠ける言葉があった。

 池江選手は現在18歳。昨年の大会では日本新記録を次々と更新し、若きエースとして2020年の東京オリンピックへの出場も期待されていた。桜田義孝五輪担当相は池江選手の白血病公表に関して「がっかり」と発言し、炎上している。

 桜田氏は12日、都内で記者団の質問に対して「日本が誇る素晴らしい選手」「治療に専念して元気な姿に戻ってほしい」と池江選手を気遣いながらも、「本当にがっかりしている」「1人リードする選手がいると、みんなつられて全体が盛り上がるので、その盛り上がりが若干、下火にならないか心配している」と発言した。

 桜田氏の「がっかり」発言からは、選手を「メダルを取るための道具」「五輪を盛り上げる駒」としか見ていないことがうかがえ、ネット上でも「人格を疑う」「辞任して欲しい」といった批判が多く見られる。

 池江選手の白血病公表に関して、競泳選手である萩野公介氏は「僕たちができることは、いい泳ぎをして、彼女にいいニュースを届けることが最大限のこと。頑張ろうという気持ちになりました」と、よりいっそう自分たちが頑張るとの決意を語った。同じく入江陵介氏も「リカコが休養してる競泳チームが弱くなったって思われないように頑張るね」と自身のインスタグラムに投稿している。桜田氏の「下火にならないか心配している」という発言は、他の水泳選手に対しても非常に失礼だろう。

南青山だけじゃない! 今度は京都で「福祉施設建設計画」が炎上中

 東京は港区の南青山で、区が計画していた児童相談所とDVシェルターに対して、一部住民が猛烈な反対の声を上げて、注目を集めた事件。これは、わずかな住民や不動産業者が、資産価値が下がることを危惧して、あたかも多くの住民が反対しているという印象操作をしようとしたものだということが、明らかになりつつある。

 つまり、ほとんどの区民は行政の方針に一定の理解を示しているのだ。ところが、今後は京都府で「行政は何をやっているんだ?」という事態が起こっている。

 それが京都市が建設を予定しているホームレスの救護施設をめぐる問題だ。京都市では、2016年に、それまでホームレス更生施設だった「京都市中央保護所」を廃止。代替施設を「民設民営」で整備することを決めた。

 この施設は、応募した民間事業者の所有地に建設が決まったが、その施設の場所が問題になったのだ。

 京都市というと、どうしても京都駅から北側を想像しがちだが、建設予定地は、それよりもはるか南の向日市との市境ギリギリにある。それも、東海道新幹線高架と名神高速道路に挟まれており、住所の上では京都市だが、住宅街も最寄り駅も向日市にある、事実上は向日市の土地なのである。

 あたかも「迷惑施設」を隣の市に押しつけるかのようなやり方に、向日市側の住民は猛反発。それでも、京都市は計画を撤回する様子を一切見せていない。

 このような京都市のやり方は専門家にはどう映っているのか。福祉行政に明るいケースワーカーに話を聞いたところ、こんな指摘が。

「本来、ホームレス支援施設というのは、社会復帰を目指すためのもののハズです。ところが、予定地は駅からも遠く、名神や新幹線に挟まれた、捨て地のような場所。臭いものには蓋をすればいい、観光都市の影の部分が見えるような気がします」

 京都の人々の真のえげつなさを見てしまったような気がする。
(文=大居候)

南青山だけじゃない! 今度は京都で「福祉施設建設計画」が炎上中

 東京は港区の南青山で、区が計画していた児童相談所とDVシェルターに対して、一部住民が猛烈な反対の声を上げて、注目を集めた事件。これは、わずかな住民や不動産業者が、資産価値が下がることを危惧して、あたかも多くの住民が反対しているという印象操作をしようとしたものだということが、明らかになりつつある。

 つまり、ほとんどの区民は行政の方針に一定の理解を示しているのだ。ところが、今後は京都府で「行政は何をやっているんだ?」という事態が起こっている。

 それが京都市が建設を予定しているホームレスの救護施設をめぐる問題だ。京都市では、2016年に、それまでホームレス更生施設だった「京都市中央保護所」を廃止。代替施設を「民設民営」で整備することを決めた。

 この施設は、応募した民間事業者の所有地に建設が決まったが、その施設の場所が問題になったのだ。

 京都市というと、どうしても京都駅から北側を想像しがちだが、建設予定地は、それよりもはるか南の向日市との市境ギリギリにある。それも、東海道新幹線高架と名神高速道路に挟まれており、住所の上では京都市だが、住宅街も最寄り駅も向日市にある、事実上は向日市の土地なのである。

 あたかも「迷惑施設」を隣の市に押しつけるかのようなやり方に、向日市側の住民は猛反発。それでも、京都市は計画を撤回する様子を一切見せていない。

 このような京都市のやり方は専門家にはどう映っているのか。福祉行政に明るいケースワーカーに話を聞いたところ、こんな指摘が。

「本来、ホームレス支援施設というのは、社会復帰を目指すためのもののハズです。ところが、予定地は駅からも遠く、名神や新幹線に挟まれた、捨て地のような場所。臭いものには蓋をすればいい、観光都市の影の部分が見えるような気がします」

 京都の人々の真のえげつなさを見てしまったような気がする。
(文=大居候)

ひっそり開通している築地~豊海新ルート、歩いてる人がやたらと多い謎

 なんだかんだあったけど、ひとまずは定着しつつある豊洲市場。それに伴って、交通ルートも変わりつつある。

 豊洲市場の開場で大きく変化したと感じるのは、都営バス。これまで、新橋駅~築地市場を走っていたバスの路線は変更され、豊洲市場まで直通するようになった。このバス、市場を利用する人のために早朝から運行されているもの。だが、途中の晴海や勝どき住民にとっては、一種の改悪。これまで、同地の都営バス新橋駅行きは、銀座経由だったのだが、それがなくなってしまったのだ。

 おかげで「いつものように乗ったら……」と、不満げな顔をする人は絶えない。

 そんな交通網の変化だが、今後、晴海にできるオリンピック選手村。さらに、湾岸の再開発に合わせて整備が進みそうだ。

 その中でも目玉になっているのが環状二号線の建設である。既に豊洲市場移転を見越して架橋は完了していた、築地と豊海の間にかかる「築地大橋」。移転が延期になったことで長らく放置されていたこの橋も、築地市場が移転したことで、ようやく開通している。

 とはいえ、現在は暫定開通。なにしろ築地市場の解体は、まだ始まったばかりのため、道路と接続する部分をようやく切り拓いたといった状況。写真の通り、車道も歩道部分も、よく見なければとても橋へと至るルートになっているとはわからない。特に、歩道のほうは浜離宮方面に迂回路があるだけで、探すのも一苦労だ。

 ただ、そんな橋の利用者は多い。というのも、豊海方面への最短ルートとなっているからだ。これまで、豊海方面へは、勝どき橋を通らなければ到達することができなかった。この橋の完成で、かなりショートカットできるようになったというわけだ。

 その開通によって、変化しているのは不動産の広告。マンションも増えた豊海方面だが、
交通の便ゆえに、イマイチ感があった。だが、そんな豊海のマンションは「勝どき」と称して、強気の値段で販売されるようになっている。

 今後、この新ルートにはバスの開通、あるいは路面電車が建設される計画もある。東京オリンピック後の湾岸の開発が進めば、新たな幹線になることも予測されている。そんな築地大橋には、かつての舛添要一東京都知事による揮毫(きごう)が。いろいろあったけど、橋に名前を残せてよかった……?
(文=昼間たかし) 

高齢者、空き室増加で”スラム化”も!? 都内に乱立するマンション群に異変……

 2020年の東京五輪パラリンピックを控え、値上がりを続ける不動産市場。ここ数年、都内では高層マンションの建設ラッシュが続いてきたが、今年に入ってようやくその流れにも陰りが見え始めた。

「不動産業者の間でささやかれる『2019年問題』です。今年は世帯総数のピークアウトが起こるとされており、国内需要の低下が予想される。加えて、税制改正や過去の事例から、投資目的で所有する外国人投資家による『売り』も加速するとみられている。不動産価格が一気に下落するのではと、警戒感が高まっているのです」(不動産アナリスト)

 その一方、業界内ではもうひとつのリスク要因として注目されているのが、管理面の問題である。管理がおろそかになることによって生じる「スラム化」の懸念が、マンション住民を直撃する恐れがあるというのだ。

「住民の高齢化や、人口減の影響を受けた空き室の増加により、管理の行き届かないマンションが急増する可能性が高いんです。都内の多くのマンションで、住民による自治機能の空洞化が加速し、居住空間の荒廃が進む危険にさらされています」(同)

 すでにその兆候が、都内のあちこちのマンションで現れ始めている。そのひとつが、都内の湾岸地域に建つ1棟のマンションだ。住民の会社員男性(40)はこう訴える。

「今年に入って、理事に選任されて、理事会に初めて出席したんです。そこで理事長から聞いた話にがくぜんとしました」

 男性が築30年の中古マンションを購入したのは、約3年前。霞が関の職場にも近く、全面リフォームされた部屋はきれいで日当たりもよく、「住み心地は抜群」だった。住居そのものへの不満はなかったものの、落とし穴は「部屋の外」に潜んでいた。

「最大の問題は、理事会が管理する予算が逼迫していること。理事長によると、本来10年間で5,000万円積み立てていたはずの修繕積立金が、わずか3,000万円しか残っていなかったというのです」(同)

 原因を探っていくと、管理会社が修繕積立金から資金を無断流用していたことが判明。理事長が管理会社の担当者を問い詰めると、とんでもない実態が明らかになった。

「そもそも割高に設定されていた管理費を賄うため、不足分を修繕積立金から抜いていたのです。しかも、管理会社側は『このままでは建物の修繕ができない』として、管理費と積立金のさらなる値上げを要求してきました」(同)

 管理会社の対応に疑問を感じた理事長は、知り合いの不動産店を通じて別の業者に相談。交渉の結果、管理会社を変更することで、値上げという事態は避けられたという。

「あのまま管理会社の言うなりだったら、どうなっていたことか……。たまたま理事長がしっかりした人で、今回は最悪の事態は免れましたが、現在の住民の多くは高齢者で、今後の理事会の運営には不安も残る。今後もここに住み続けるべきか、真剣に悩んでいます」(同)

 ただ、マンション事情に詳しい不動産ジャーナリストによると「修繕積立金の収支をクリアにしていない管理会社は多く、同様の問題は都内の多くのマンションで起き得る」という。

 都内に乱立するマンション群にも、暗い影が迫りつつあるようだ。

高齢者、空き室増加で”スラム化”も!? 都内に乱立するマンション群に異変……

 2020年の東京五輪パラリンピックを控え、値上がりを続ける不動産市場。ここ数年、都内では高層マンションの建設ラッシュが続いてきたが、今年に入ってようやくその流れにも陰りが見え始めた。

「不動産業者の間でささやかれる『2019年問題』です。今年は世帯総数のピークアウトが起こるとされており、国内需要の低下が予想される。加えて、税制改正や過去の事例から、投資目的で所有する外国人投資家による『売り』も加速するとみられている。不動産価格が一気に下落するのではと、警戒感が高まっているのです」(不動産アナリスト)

 その一方、業界内ではもうひとつのリスク要因として注目されているのが、管理面の問題である。管理がおろそかになることによって生じる「スラム化」の懸念が、マンション住民を直撃する恐れがあるというのだ。

「住民の高齢化や、人口減の影響を受けた空き室の増加により、管理の行き届かないマンションが急増する可能性が高いんです。都内の多くのマンションで、住民による自治機能の空洞化が加速し、居住空間の荒廃が進む危険にさらされています」(同)

 すでにその兆候が、都内のあちこちのマンションで現れ始めている。そのひとつが、都内の湾岸地域に建つ1棟のマンションだ。住民の会社員男性(40)はこう訴える。

「今年に入って、理事に選任されて、理事会に初めて出席したんです。そこで理事長から聞いた話にがくぜんとしました」

 男性が築30年の中古マンションを購入したのは、約3年前。霞が関の職場にも近く、全面リフォームされた部屋はきれいで日当たりもよく、「住み心地は抜群」だった。住居そのものへの不満はなかったものの、落とし穴は「部屋の外」に潜んでいた。

「最大の問題は、理事会が管理する予算が逼迫していること。理事長によると、本来10年間で5,000万円積み立てていたはずの修繕積立金が、わずか3,000万円しか残っていなかったというのです」(同)

 原因を探っていくと、管理会社が修繕積立金から資金を無断流用していたことが判明。理事長が管理会社の担当者を問い詰めると、とんでもない実態が明らかになった。

「そもそも割高に設定されていた管理費を賄うため、不足分を修繕積立金から抜いていたのです。しかも、管理会社側は『このままでは建物の修繕ができない』として、管理費と積立金のさらなる値上げを要求してきました」(同)

 管理会社の対応に疑問を感じた理事長は、知り合いの不動産店を通じて別の業者に相談。交渉の結果、管理会社を変更することで、値上げという事態は避けられたという。

「あのまま管理会社の言うなりだったら、どうなっていたことか……。たまたま理事長がしっかりした人で、今回は最悪の事態は免れましたが、現在の住民の多くは高齢者で、今後の理事会の運営には不安も残る。今後もここに住み続けるべきか、真剣に悩んでいます」(同)

 ただ、マンション事情に詳しい不動産ジャーナリストによると「修繕積立金の収支をクリアにしていない管理会社は多く、同様の問題は都内の多くのマンションで起き得る」という。

 都内に乱立するマンション群にも、暗い影が迫りつつあるようだ。

モバイルバッテリー投げ売り祭りが終了 今後価格はどうなるのか……?

 1月下旬、モバイルバッテリーがタダ同然の価格で店頭に並ぶ騒ぎが起きた。2月1日から、モバイルバッテリーも電気用品安全法の規制対象となり、この法律で義務付けられたPSEマークの表示がないモバイルバッテリーの販売が禁止されることになったためだ。

 このため、店頭やネット通販ではモバイルバッテリーの投げ売りが行われた。禁止まであと数日となった月末には、以前は数千円で販売されていたモバイルバッテリーが、100円で売られるまでに価格が下落したのである。

 もう二度とはこないモバイルバッテリーの激安祭り。その原因となった法改正が実施された理由は、相次ぐモバイルバッテリーの発火事故である。これまでも、モバイルバッテリーの中身であるリチウムイオン蓄電池は、PSEマークが義務付けられていた。だが、モバイルバッテリー本体自体は対象外。そこに近年、モバイルバッテリーの発火事故が相次いだことが原因だ。

 2017年の製品評価技術基盤機構の発表では、12年に19件だったモバイルバッテリーや、ノートパソコンなどの発火事故は16年には108件と5倍増し。そうした機器を使用する人が増加したことで、事故も増えていることが明らかになった。たかが、モバイルバッテリーの発火と甘く見てはいけない。リチウムイオンバッテリーの発火が原因で飛行機が墜落した事例だってあるからだ。

 今回は法改正によって投げ売りされたモバイルバッテリー。あまりの売れ行きに、しばらくは売れない時期が続くのではなかろうか。

「安さに飛びついているのは、だいたいは事情がわかっている人です。実は値引き商品は、PSEマークがないだけで利用に支障がないものがほとんど。2月以降、型番そのままにPSEマークだけ追加される製品も多いと思われます。法律が変わって販売できなくなるイコール危険だと考える人も多いですから、それなりに知識がある人しか、手出しをしていない印象でした。なので特需が終わったからといって売れなくなるということはないでしょう」(量販店店員)

 なお、電気用品安全法はネットオークションなどの販売者も対象。なので、在庫を大量に買い込んでいる人が、ヤフオクやメルカリで売ることはできないので、念のため。
(文=是枝了以)

セレブ家庭で虐待は起こらない? 南青山児相建設計画、元児童福祉司が語る「反対派」の盲点

 昨年末、東京都港区が南青山に、児童相談所(以下、児相)を含む複合施設「港区子ども家庭総合支援センター(仮称)」を建設予定であることに対し、一部の住民が猛反発する住民説明会の様子が、連日テレビで取り上げられ話題となった。

 反対派から挙がった声は、主に「青山のブランドイメージを損なう」というもので、そのほかには「児童相談所の子どもが、南青山に住む幸せな家族を見たとき、自分の家族とのギャップに苦しむのではないか」など、保護される子どもの家庭と南青山という一等地に住む家庭との格差を懸念するものもあった。世間では「選民思想丸出し」「あまりにも心が狭い」「逆に南青山の価値を下げている」といった批判が飛び交うことになったが、こうした反対派の背景には、「児童虐待は貧困家庭で起こるもの」「セレブ家庭と児童虐待は無関係」といった意識があるのではないだろうか。

 事実、児童虐待と貧困は密接につながっていると感じさせるニュースは後を絶たないが、本当に“裕福な家庭で児童虐待は起こらない”と言い切れるのか。今回、江戸川大学こどもコミュニケーション学科特任教授で、児相にて児童心理司、児童福祉司を務めた経歴も持つ金井雅子先生にこの疑問についてお聞きするとともに、南青山児相建設問題で浮き彫りになった「世間の児相に対する勘違い」や、虐待件数増加の背景などについても語っていただいた。

児相を“知らない”ことが問題

――まず、今回の南青山児相建設問題をどのように受け止めましたか。

金井雅子先生(以下、金井) 反対住民の「貧困家庭の子どもがセレブ家庭を見るのはかわいそう」といった声を耳にしたとき、やはり児相について“知らない”ことが住民の不安を大きくしているのだろうと感じました。一時保護している子どもは、その子の身の安全を図るために、保護されている場所を秘匿するのが今の流れです。そのため、むやみに出歩くなど人目に触れるようなことはしないんです。そのようなことが周知されていなかったため、反対派から見当違いな発言が相次いだのでしょう。

――なぜ正しい情報が伝わっていなかったのでしょうか?

金井 南青山のある港区では、子ども家庭支援センターがそれほど機能していなかったのかもしれませんね。日ごろから地域と深く関わっている区では、住民の理解度も高く、「ぜひ作ってほしい」との声も聞かれるくらいですから、恐らくそのような下地がなかったのだと思います。また、本来は説明会で丁寧なやりとりを行えば、住民の不安の多くを取り除けるはずなのですが、今回はそれが不十分だったのではないでしょうか。さらに、都内の一等地である「南青山」という地域性から、マスコミだけでなく世間もこの問題に注目し、問題が大きくなっていったのではないかと思います。

――これまでも似たような問題はあったのでしょうか。

金井 そうなんです。現在、江東区枝川にある江東児相は、墨田区にあった児相が移転したものなのですが、当初、墨田区内での移転が計画されていました。しかし、建設候補地近隣の商店街などから猛反発があったため、今の場所へ落ち着いたという経緯があります。児相は、子どもたちにとって必要なものとわかってはいるものの、「自分の住む地域には作ってほしくない」と思われてしまう建物なのかな、という気がしますね。とはいえ、今回南青山で話題になったことから、世間の児相への関心も高まったようなので、ある意味では良かったと捉えています。

――2016年に児童福祉法が改正され、東京23区でも児相を設置できるようになりました。その背景には、やはり虐待対応件数が年々増加していることも関係しているのでしょうか。

金井 統計で虐待対応件数が年々増加の一途を辿っているからといって、単に“虐待する親が増えている”というわけではないんですよ。ここ30年ほどで虐待がクローズアップされるようになって、いわゆる「泣き声通告」が増え、以前は見過ごされていた虐待が顕在化したことで統計上の数字が上がるという、いわば数字マジックの側面もあるのです。また、これまでは経過を見ていたケースでも、不安要素が少しでもあれば一時保護や施設入所につなぐなど、児相や子ども家庭支援センター、警察などの対応も変わってきています。

 なお、それは虐待の種類にもいえることです。虐待は、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、性的虐待の4つに分けられ、以前は身体的虐待とネグレクトが圧倒的に多かったのですが、2003年の虐待防止法の改正で「DVの目撃」が心理的虐待にカウントされるようになってからは、心理的虐待が一気に増えました。

――統計上の数字が絶対ではないんですね。

金井 虐待は、例えば「身体的虐待だけ」「ネグレクトだけ」といった形ではなく、「身体的虐待とネグレクトが同時に」というように、複合して起こることが多いのですが、統計上は「主に身体的虐待」もしくは「主にネグレクト」という、どちらかの形でカウントされます。また、例えば暴行による虐待でも、父親からなら「主に身体的虐待」となるのに対し、母親の恋人からであれば、母親が恋人の暴力を見過ごしたとして「主にネグレクト」と分類されるんですよ。「泣き声通告」にしても、ご近所トラブルによる嫌がらせや、親権争いで有利になりたい父親が妻を貶めるために、“嘘の通告”をすることもあるので、数字ではなく、内情にきちんと目を向けることが大切です。

――世間では「貧困家庭に虐待が多い」という認識も強いのですが、実際に統計データなどは出ているのでしょうか。

金井 もともと児相が、虐待を虐待として統計を取り出したのが1990年からなんです。それまで虐待は、家庭の経済的問題を背景とする「養護問題」に分類されていたので、そうした背景から、家庭の経済状況と虐待が密接に関連づけられるようになったのでしょう。しかし、実は、経済問題と虐待に関するエビデンスや論文はそれほど多くないので、実際のところは何とも言えないのが現状なんです。虐待はさまざまな要因が重なって起きるものであり、貧困か裕福かの二元論で語れるものではないと思います。裕福な家庭でも、「この子のせいで自分のキャリアを犠牲にした」と感じて子どもに愛情を持てないとか、子育て能力が低かったり、うつ病などできちんと養育できないという親御さんはいますからね。

 ただ、虐待は、その程度によって「軽度・中度・重度」に分けられるのですが、貧困家庭では、経済的な問題から親が気持ちにゆとりを持てず、虐待が重症化しやすい傾向はあると思います。ニュースで取り上げられるのも、そのようなケースが多いので、イコールで見られやすいのでしょう。

――逆に、裕福な家庭の虐待はあまり表面化しないですよね。

金井 経済的なゆとりがあるぶん虐待が重度化するリスクが低いというのもありますが、社会的地位や権力のある男性が家庭内DVを働く、そしてそれを子どもが目撃する……という話を聞くことはよくあります。そういった人たちは、体裁を気にしてバレないようにうまく取り繕いますし、周囲も「まさか」と思っているので、介入や通告がされにくく、表面化しづらいという面も大きいです。妻がケガで受診したり、夫から逃げ出したりして初めて明るみになるケースも少なくないんですよ。

――表面化しづらいと、虐待のダメージも深刻化しやすいのでは。

金井 DVを目の当たりにした子どもは不安定になりやすく、家庭内暴力に走ったり、不登校になったり、わざと親を困らせたりといった形で症状を出してくることも多いです。以前、母親と密着状態になった幼児が、母親の気を引きつけたい一心で、首を吊るマネをしたこともありました。また、女の子の場合では、鬱になった母親の代わりとして、母親の“母親役”を担ってしまう“偽成熟”になるなど、両親の離婚後に問題が出てくることも多々あります。心理的虐待(DVの目撃)は、両親の離婚や一時保護をすれば解決すると思われがちですが、後々まで子どもに大きな影響を与えるので、早期に発見して、軽度のうちにケアしなければなりません。

――裕福な家庭は、両親がエリートな場合も多く、子どもへの過度な期待が、虐待につながるのでは……と想像してしまうのですが。

金井 名門校に入れたいとか、親の仕事を継がせたいとか、親の希望から勉強などを強要するケースはあるでしょう。それによって「できないから叩く」「ごはんをあげない」などとエスカレートしていっても、親は子どものためだと思っているので、虐待している認識がないのも特徴です。また、子ども自身が自分の夢だと思い込んでしまって、「やらなきゃいけない」「叩かれるのは自分が悪いから」などと受け止めていることも多いです。

 以前、一見、経済的な問題を抱えているようには見えない、仲のいい普通のご家庭の父親が、「娘を海外の有名スポーツチームに入れる」という夢を持ち、毎日過度な練習を娘にさせていたというケースがありました。そのスポーツチームは、男性しか入れないので、現実問題として実現不可能な夢なのですが、それでも娘さんに練習を強要していたのです。練習はエスカレートしていき、できないとゴハンを食べさせなかったり、暴力をふるったりしていたらしく、娘さんの異変に気付いた学校からの通告で一時保護したのですが、よくよく話を聞いてみると、父親は自分の実家で家庭内暴力を働いて親にお金を支援させていたこともわかりました。これもまた、経済的要因よりも、成熟しきらないまま親になったことで、このような虐待が起こってしまったのだと思います。

――やはり父親に虐待との認識はなかったのでしょうか。

金井 なかったですね。娘さんもそのような環境で育ったために、「私はこのスポーツが好きだからもっと練習したい、家にいたい」と言っていて、「そのチームに入らなくても、このスポーツを続けることはできるよ」と、まずは呪縛から解かないと、なかなか一時保護もできないほどでした。この家族に限らず、このようなケースでは、虐待だとわかってもらえないことには次のステップへ進めないので、一時保護をして親子分離することが、親の言う通りにしなくても良い事を子どもに気づかせると共に「大変なことをしていたんだ」と親にも気づいてもらえるきっかけになることも多いです。

――やはり虐待は経済状況に関係なく、どこの家庭でも起こりうるということですね。

金井 虐待でもっとも多いのは、実の母親によるものなんです。主な要因は育児不安やストレスの蓄積ですが、育児能力が不十分で養育できないとか、精神疾患や産後鬱でネグレクトしてしまうケースも多いです。また、望まない妊娠だったり、保護者自身のパーソナリティに問題があったりして、我が子に愛情が持てず、そこの葛藤から「愛情が持てないのは、この子が悪いからだ」と子どもに責任を転嫁して虐待に至ることもあります。そのほかにも、すごく手のかかる子どもで親がうまく関われなかったり、夫が育児を手伝ってくれなかったり、ステップファミリーや内縁の夫がいるなど家庭環境が複雑だったりすることから、虐待に発展することもあります。つまり、虐待のリスク要因はさまざまなので、誰しも、自分がそうなる可能性があるということです。虐待する親は特別な人間だと思われがちですが、誰にでも起こりうることです。多くの人が「自分の問題」として受け止めてくれたらと思います。

――大きな質問ですが、虐待のない社会にするためにはどうしたらいいのでしょうか?

金井 臨床をやってきた身としてまず思うのは、虐待の連鎖を断ち切ることです。そのためには、虐待を受けている子どもを早くその環境から救い出し、安定した環境でケアを行い、いつか結婚して子どもを持ったときに、きちんと育てられるようしていかなければなりません。また、子どもが育つ環境として、親が暴力をふるったり罵ったりするシーンを見るのはダメージが大きいので、DVをしている親の治療や教育も大切です。予防として、中学高校くらいの教育の中でも、適切な異性との関わり方などをもっと取り上げて、男女共に学ぶべきではないかと感じています。

――一方で、私たちが日常的にできることはあるでしょうか?

金井 虐待を受けている子どもが出すSOSに気づいてあげることです。そのためにも、「よその家のこと」にせず、気になる親子がいたら声をかけるとか、お節介をしていってほしいと思います。最近はそういった風潮も出てきていますが、もっと必要かなと感じるので。

 誰にだって虐待しそうになる瞬間はあるはずなので、それ自体を責める必要はありません。それより、どうやったら解決できるかなど、周りのサポートによるところが大きい問題を、みんなで考えていかなければならないと思います。例えば赤ちゃんが何をしても泣きやまなくて困っているとき、「大人だってなんとなく泣きたくなる時があるし、赤ちゃんも同じだよ」って声をかけてもらえたら、安心するじゃないですか。そういうサポートがなく虐待に至るケースが少なくないので、「頼れる人がいないのかな」「サポートが必要そうだな」と感じたら、積極的に声かけをしていってほしいですね。
(取材・文=千葉こころ)

金井雅子(かない・まさこ)
江戸川大学こどもコミュニケーション学科特任教授。心理職で入都後、主に児童相談所等で児童心理司、児童福祉司として児童福祉の第一線で勤務。

また新潮!!「男性への逆差別」に女性専用者やレディースデイを持ち出すお門違い

 昨年、「新潮45」のトンデモ記事が大炎上し、休刊となった。だが新潮社内部では、果たしてこのとき受けた批判を真摯に検討したのだろうか。というのは、現在発売中の「週刊新潮」2019年2月14日号で、またもトンチンカンな寄稿を掲載しているからだ。

 <特別読物 語られざる「逆差別」に「男もつらいよ」>と題されたその記事。著者は、共同親権運動ネットワーク運営委員・宗像充氏だ。いわく、「#Me Too」運動ブームで、女性やLGBTの権利擁護は“花盛り”だが、男性は“逆差別”にさらされているという。

 <実は、男性だって「男性」ゆえの生きづらさで悩んでいる>というが、その例としては公共交通機関の「女性専用車両/席」の問題や、「レディースデー」への不満。痴漢啓発のポスターに対して「男は全員性的異常者と言われているようで怖い」という声や、高速バスで女性の隣の席だったが運転手が気を利かせたのか女性が他の席へ移動し「何だか自分が汚いもののように感じます」という男性の声を紹介している。

 また、妻から夫への「逆DV」や、女性から男性への性暴力はなかなか問題化されず、泣き寝入りしている男性も多いこと。性の悩みは「男らしさ」と直結しやすいこと。稼ぎの少ない男が自信をなくしてしまうこと。家庭ではイクメンを求められること。危険を伴う仕事や肉体労働は主に男性が担うことが常識となっていることも、男性への差別であり女性を優遇する措置であること。男性への要求が増大する社会で、男性は家庭と会社の板挟みになり、つらいのだという。

 なるほど、「男もつらい」のだろう。しかし「痴漢」をはじめとした性犯罪にかんして言えば、なぜ「痴漢」ではなく「女性専用車両」を批判するのかさっぱりわからない。宗像氏は<確かに痴漢対策で、男性をすべて排除するというのは、「男性=痴漢」と決めつけているようなものだ。女性専用車両が設置され始めてから20年ほどが経つが、痴漢減少に効果があったとの有意なデータはない。これでは、単に男性を性犯罪者と見なす偏見を強化しているだけのようにも思える。>と説く。

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 しかし現に痴漢被害は存在しており、女性専用車両は被害経験者にとって有効な施策だ。残念なことに痴漢行為をはたらく卑劣な人間は存在する。多くの男性が恐れる「痴漢冤罪」も、痴漢のせいで発生している。全ての男性が性犯罪者でないことは自明だが、ならば「被害者たる女性の問題」に矮小化せず、社会問題として性犯罪を撲滅するよう“性犯罪加害者ではない男性も”働きかけるべきだろう。痴漢は男vs女の問題ではなく、性犯罪vs社会の問題だ。

 であれば「女性ばかり権利を擁護されてずるい」とやっかむのではなく、男性も「男らしさ」の押し付けに抗い、権利を主張してはどうだろうか。「人間らしく働く権利」「家庭に回帰する権利」「育児する権利」「男らしさを拒絶する権利」「専業主夫になる権利」「寿退社する権利」「危険な仕事を回避する権利」など、様々な権利を主張すべきだ。

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 Wezzyでは、日本社会において「女性問題」とされている妊娠・出産・育児や、子育て期の労働について、「男性の問題でもある」と繰り返し伝えてきた。たとえばワンオペ育児、つまり家庭での負担が女性に偏ってしまう問題や、女性が昇進したくともマミートラックにのせられてしまう問題など、「働く女性」につきまとう困難は、労働現場において「男性的な働き方」を要請されるがために発生している。

 では「男性的な働き方」とは何か。会社に滅私奉公し、出世を目指し、残業し、家族を養うべく働く……まさに「男はつらいよ」だろう。けれどそのような働き方自体、多くの男性のワークライフバランスを損ない、家庭生活を犠牲にさせ、自由を奪っている。会社に雑に扱われている男性たちはもっと怒っていい。もちろん、家庭で「もっと家のことにコミットしてほしい」と訴える妻に「俺だってつらいんだ」などと応酬するのではなく、会社にだ。

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 セクハラやパワハラについても同様だ。セクハラ回避のために女性を飲み会から排除することが「ハラミ会」というワードで話題になったが、では男性同士であれば下ネタもセクハラもありなのか。女性部下にはセクハラを気にして丁重に扱うが、男性部下であれば雑に扱っていいのか。相手の尊厳を傷つけるような無礼な行為は、男女の別なく、あってはならないだろう。

 記事であげられた事例で唯一もっともだと納得したのは、2016年9月、民進党代表選の候補者討論会で、玉木雄一郎議員が涙ながらに訴えた一幕の後、蓮舫議員が「男なら泣くな!」と注意し会場から笑いが漏れた……という件を男性差別だと糾弾している箇所だ。「男らしさ=強さ」を押し付け、その枠組みから外れた男性を嘲笑することは、あってはならない。

 美容意識の高い男性も、性行為に貪欲でない男性も、女性への興味を持たない男性も、泣き虫の男性も、ピンクを好きな男性も、食の細い男性も、料理上手な男性も、スイーツが好きな男性も、キャラもの好きな男性も、決して恥ずかしいことではない。「気遣いができる」「過ちを認めて素直に謝罪できる」などの要素は“男らしくない”と忌避する人もいるかもしれないが、とんでもない、美徳だろう。「男はかくあるべし」などという規範は、「女性らしさ」の規範同様、廃れていい。

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 一方で、多くの医大入試において、男性受験者が下駄をはかされていた事例をはじめ、男女の賃金格差など、社会構造的に「男が女よりも上位である」と見なされてきたことは事実だ。「男性差別」を撤廃するなら、やはり「女性問題」とされてきた事柄を、男性も含めた「社会問題」として捉え、男性優位を前提として築かれてきたこの社会の制度改正を訴えていく必要がある。

 繰り返すが、これは男vs女の話ではない。人間を雑に扱い、個人の権利を尊重しない、日本の社会構造の問題だ。

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また新潮!!「男性への逆差別」に女性専用者やレディースデイを持ち出すお門違い

 昨年、「新潮45」のトンデモ記事が大炎上し、休刊となった。だが新潮社内部では、果たしてこのとき受けた批判を真摯に検討したのだろうか。というのは、現在発売中の「週刊新潮」2019年2月14日号で、またもトンチンカンな寄稿を掲載しているからだ。

 <特別読物 語られざる「逆差別」に「男もつらいよ」>と題されたその記事。著者は、共同親権運動ネットワーク運営委員・宗像充氏だ。いわく、「#Me Too」運動ブームで、女性やLGBTの権利擁護は“花盛り”だが、男性は“逆差別”にさらされているという。

 <実は、男性だって「男性」ゆえの生きづらさで悩んでいる>というが、その例としては公共交通機関の「女性専用車両/席」の問題や、「レディースデー」への不満。痴漢啓発のポスターに対して「男は全員性的異常者と言われているようで怖い」という声や、高速バスで女性の隣の席だったが運転手が気を利かせたのか女性が他の席へ移動し「何だか自分が汚いもののように感じます」という男性の声を紹介している。

 また、妻から夫への「逆DV」や、女性から男性への性暴力はなかなか問題化されず、泣き寝入りしている男性も多いこと。性の悩みは「男らしさ」と直結しやすいこと。稼ぎの少ない男が自信をなくしてしまうこと。家庭ではイクメンを求められること。危険を伴う仕事や肉体労働は主に男性が担うことが常識となっていることも、男性への差別であり女性を優遇する措置であること。男性への要求が増大する社会で、男性は家庭と会社の板挟みになり、つらいのだという。

 なるほど、「男もつらい」のだろう。しかし「痴漢」をはじめとした性犯罪にかんして言えば、なぜ「痴漢」ではなく「女性専用車両」を批判するのかさっぱりわからない。宗像氏は<確かに痴漢対策で、男性をすべて排除するというのは、「男性=痴漢」と決めつけているようなものだ。女性専用車両が設置され始めてから20年ほどが経つが、痴漢減少に効果があったとの有意なデータはない。これでは、単に男性を性犯罪者と見なす偏見を強化しているだけのようにも思える。>と説く。

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 しかし現に痴漢被害は存在しており、女性専用車両は被害経験者にとって有効な施策だ。残念なことに痴漢行為をはたらく卑劣な人間は存在する。多くの男性が恐れる「痴漢冤罪」も、痴漢のせいで発生している。全ての男性が性犯罪者でないことは自明だが、ならば「被害者たる女性の問題」に矮小化せず、社会問題として性犯罪を撲滅するよう“性犯罪加害者ではない男性も”働きかけるべきだろう。痴漢は男vs女の問題ではなく、性犯罪vs社会の問題だ。

 であれば「女性ばかり権利を擁護されてずるい」とやっかむのではなく、男性も「男らしさ」の押し付けに抗い、権利を主張してはどうだろうか。「人間らしく働く権利」「家庭に回帰する権利」「育児する権利」「男らしさを拒絶する権利」「専業主夫になる権利」「寿退社する権利」「危険な仕事を回避する権利」など、様々な権利を主張すべきだ。

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 Wezzyでは、日本社会において「女性問題」とされている妊娠・出産・育児や、子育て期の労働について、「男性の問題でもある」と繰り返し伝えてきた。たとえばワンオペ育児、つまり家庭での負担が女性に偏ってしまう問題や、女性が昇進したくともマミートラックにのせられてしまう問題など、「働く女性」につきまとう困難は、労働現場において「男性的な働き方」を要請されるがために発生している。

 では「男性的な働き方」とは何か。会社に滅私奉公し、出世を目指し、残業し、家族を養うべく働く……まさに「男はつらいよ」だろう。けれどそのような働き方自体、多くの男性のワークライフバランスを損ない、家庭生活を犠牲にさせ、自由を奪っている。会社に雑に扱われている男性たちはもっと怒っていい。もちろん、家庭で「もっと家のことにコミットしてほしい」と訴える妻に「俺だってつらいんだ」などと応酬するのではなく、会社にだ。

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 セクハラやパワハラについても同様だ。セクハラ回避のために女性を飲み会から排除することが「ハラミ会」というワードで話題になったが、では男性同士であれば下ネタもセクハラもありなのか。女性部下にはセクハラを気にして丁重に扱うが、男性部下であれば雑に扱っていいのか。相手の尊厳を傷つけるような無礼な行為は、男女の別なく、あってはならないだろう。

 記事であげられた事例で唯一もっともだと納得したのは、2016年9月、民進党代表選の候補者討論会で、玉木雄一郎議員が涙ながらに訴えた一幕の後、蓮舫議員が「男なら泣くな!」と注意し会場から笑いが漏れた……という件を男性差別だと糾弾している箇所だ。「男らしさ=強さ」を押し付け、その枠組みから外れた男性を嘲笑することは、あってはならない。

 美容意識の高い男性も、性行為に貪欲でない男性も、女性への興味を持たない男性も、泣き虫の男性も、ピンクを好きな男性も、食の細い男性も、料理上手な男性も、スイーツが好きな男性も、キャラもの好きな男性も、決して恥ずかしいことではない。「気遣いができる」「過ちを認めて素直に謝罪できる」などの要素は“男らしくない”と忌避する人もいるかもしれないが、とんでもない、美徳だろう。「男はかくあるべし」などという規範は、「女性らしさ」の規範同様、廃れていい。

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 一方で、多くの医大入試において、男性受験者が下駄をはかされていた事例をはじめ、男女の賃金格差など、社会構造的に「男が女よりも上位である」と見なされてきたことは事実だ。「男性差別」を撤廃するなら、やはり「女性問題」とされてきた事柄を、男性も含めた「社会問題」として捉え、男性優位を前提として築かれてきたこの社会の制度改正を訴えていく必要がある。

 繰り返すが、これは男vs女の話ではない。人間を雑に扱い、個人の権利を尊重しない、日本の社会構造の問題だ。

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