『バチェロレッテ2』男性メンバー17名を一挙解説! 尾崎美紀さんの“本命度”を大予想!


 婚活サバイバル番組『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン2(Amazon Prime Video)が、7月7日から配信開始となる。同番組は、社会的成功を収めた独身女性(バチェロレッテ)の“真実の愛”を獲得すべく、男性参加者たちがゴージャスなデートを通して自身をアピールしながら、バトルを繰り広げるという恋愛リアリティーショー。

 多くのファンが配信を心待ちにする中、今回、リアリティーショーウォッチャーが、事前に公開されている男性参加者のプロフィールやインタビュー動画から、バチェロレッテの本命になりそうなメンバーを大予想! あわせて、個性的なキャラクターでバトルに波乱を呼びそうな要チェックメンバーを、それぞれ五つ星評価してもらった。

バチェロレッテ・尾崎美紀さんの「経歴」「好きなタイプ」とは?

 2代目バチェロレッテ・尾崎美紀さんは、名古屋出身の29歳。中央大学卒業後にコスメブランドを運営する「DINETTE 株式会社」の代表取締役に。わずか2年で年商15億円を達成し、経済誌「Forbes」では“アジアを代表する30歳未満の起業家30名”にも選ばれているという。

 予告で明かした好きなタイプは、「私のことを好きでいてくれる人」。過去の失敗から「見た目では絶対に選ばないようにしてます」とも語っている。男性メンバーは「どれだけ熱意をアピールできるか」がカギになってきそう。

『バチェロレッテ2』男性メンバー17名の「本命度」を大予想
【バスケ選手、パーソナルトレーナー】

【1】
長谷川惠一(36歳、プロバスケットボール選手)

番組キャッチコピー:「成長する、弱気なオトコ」

<本命度>
★★★☆☆
<波乱を呼びそうな度>★☆☆☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
低い声で「恋愛に……臆病になってます……」と語る人見知りキャラ。バスケも「すごい地味なプレー」と申告する長谷川は、バチェロレッテに積極的にアピールできるのか不安。しかしキャッチコピーの「成長する」に期待。

【2】
中道理央也(24歳、パーソナルトレーナー)

番組キャッチコピー:「甘えとプロテインでできているオトコ」

<本命度>★★★★☆
<波乱を呼びそうな度>★★☆☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
「一番の武器は鍛え上げた肉体です」と語り、上半身を披露していた中道。筋肉と少年っぽいしゃべり方のギャップは、年上のバチェロレッテに可愛がられそう。

【3】
小出翔太(33歳、飲食店経営者)

番組キャッチコピー:「漢気がモテに昇華するオトコ」

<本命度>★★★☆☆
<波乱を呼びそうな度>★★★★★
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
革ジャンにピチピチすぎるジーンズ、ヒゲ、ウェービーなロン毛でツーブロックという“コテコテ”な若手経営者スタイルが印象的。「2年で40人くらい告白された」とのことで、その恋愛テクニックに期待。

【4】
田村一将(33歳、起業家)

番組キャッチコピー:港区、経営者なオトコ

<本命度>★★☆☆☆
<波乱を呼びそうな度>★★★★☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
六本木に出没する「儲かっている」起業家で、理想は「支えてくれて家を守ってくれる人」。起業家のバチェロレッテではなく、専業主婦希望の港区女子とお見合いしたほうがいいのでは……?

【5】
ジェイデン トア マクスウェル(26歳、ラグビー選手)

番組キャッチコピー:安心感、ぬいぐるみ級のオトコ

<本命度>★★★☆☆
<波乱を呼びそうな度>★★☆☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
野性味あふれる外見とソフトな内面が特徴。番組に応募した理由は「ラグビーを忘れて恋愛にコミットする」ため。「ラグビー選手なのに、本業を忘れてしまって大丈夫なのか?」と一抹の不安が。

【6】
佐藤駿(30歳、映像監督)

番組キャッチコピー:謎をクリエイトするオトコ

<本命度>★☆☆☆☆
<波乱を呼びそうな度>★★★★★
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
綾野剛から骨を7~8本抜いたようなミステリアスな雰囲気で、「雪が降った日はサンダルを履く」がポリシーの謎深き男。「僕自身も自分のことが全然わからない」と語る通り、活躍は予測不能だが、波乱は呼びそう?

【7】
阿部大輔(40歳、デザイナー)

番組キャッチコピー:経験値を余裕に変えたいオトコ

<本命度>★★☆☆☆
<波乱を呼びそうな度>★★☆☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
首に赤いバンダナ、ジーンズ生地のシャツ&ジーパンという個性的なファッションセンスを持つ阿部。最年長だが“大人の男性”感は今のところ薄い?

【8】
雲母翔太(27歳、劇団員)

番組キャッチコピー:たぎり散らかってるオトコ

<本命度>★★★★★
<波乱を呼びそうな度>★★★★
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
バチェロレッテについて聞かれ、「かなりタイプ。たぎってます!」「愛してます!」。これまでの恋愛は「空回りが多い」というが、バチェロレッテの好みのタイプには当てはまる。

【9】
平山大(30歳、タクシードライバー)

番組キャッチコピー:操縦不能、自由なオトコ

<本命度>★★☆☆☆
<波乱を呼びそうな度>★★★★☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
「好きな異性はいっぱいいる」「結婚とか付き合うとか契約は好きじゃない」と語る自由人。新しい価値観を持つ人ではなく、“気が多くて軽い男”という印象を与えてしまう可能性も。その点がバチェロレッテの目にどう映るか?

【10】
加藤友哉(24歳、大手外資系IT企業マーケター)

番組キャッチコピー:恋愛OSアップデート済みなオトコ

<本命度>★★★☆☆
<波乱を呼びそうな度>☆☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
加藤いわく「エバンジャライズを伝える仕事」をしていて、バチェロレッテとは「ビジョンとバリューを共有したい」とのこと。よくわからないが、英会話も堪能な尾崎さんとは会話が成立するはず。

【11】
早瀬恭(37歳、会社経営者)

番組キャッチコピー:独身貴族に飽きてきたオトコ

<本命度>★★★★★
<波乱を呼びそうな度>★★★☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
アラフォーながら、豊かな毛量が印象的な早瀬。17人の中で最も落ち着きがありそうな雰囲気。経営者として仕事もできそうなので、バチェロレッテとはお似合いか?

【12】
横山竜之介(35歳、ファッションデザイナー)

番組キャッチコピー:自分探しCollection’22なオトコ

<本命度>★★☆☆☆
<波乱を呼びそうな度>★☆☆☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
虎柄シャツでインタビュー動画に登場するも、虎のような猛々しさはなく「話がヘタ」「(ほかの出演者)みんな怖い」と弱音。主導権を握りたい人には最適だが、バチェロレッテの好みには合わない可能性がある。

【13】
高橋航大(22歳、大学生・アプリ事業運営)

番組キャッチコピー:負けん気は首席なオトコ

<本命度>★★☆☆☆
<波乱を呼びそうな度>★★☆☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
慶應義塾大学のミスターコンテストで第2位、慶應も第2志望だったといい、「もう2位は嫌なんです」とのたまうのは若さゆえか。本命度は低そうだが、この番組に出ることは「足るを知る」きっかけになるかも?

【14】
澤井一希(25歳、モデル)

番組キャッチコピー:人生を笑ってサバイブするオトコ

<本命度>★★★☆☆
<波乱を呼びそうな度>★★☆☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
身長2m、9等身。アフリカ・マリ出身の父親と2人で暮らしていたが、最近、父親が突然帰国して家を失ったそう。恋愛どころではないのでは……と思うが、視聴者視点では応援したくなる人物。

【15】
山邊玲音(30歳、ダンサー・歌手)

番組キャッチコピー:戦略的パリピなオトコ

<本命度>★★★★☆
<波乱を呼びそうな度>★★★☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
「基本モテるんすよ」と語る“百戦錬磨の合コン王”。手の動きが確かにチャラいが、実はネガティブで空気を読めるとのこと。バチェロレッテの心を開けるかもしれない。

【16】
美留町恭兵(36歳、美容師・画家)

番組キャッチコピー:ふんわり、アーティストなオトコ

<本命度>★★★☆☆
<波乱を呼びそうな度>★☆☆☆☆
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
唇の絵が話題を呼び、乃木坂46のCDジャケットに使用されるなど“唇画家”として活躍。印象は薄いが、笑い方がソフトで安心感を抱かせるタイプなので、バチェロレッテの“癒やし”になりそう。

【17】
佐藤マクファーレン優樹(28歳、プロバスケットボール選手)

番組キャッチコピー:恋愛もパワープレイなオトコ

<本命度>★★★★☆
<波乱を呼びそうな度>★★★★★
<リアリティショーウォッチャーによる人物評>
猪突猛進タイプ。「憎めないヤツと言われる」と自ら申告。インタビュー動画中にも唯一、ほかの男性陣から冷めた目線を浴びるシーンが挟まれており、波乱を巻き起こすのは間違いないだろう。

本命度 波乱を呼びそうな度
【1】長谷川惠一
(36歳、プロバスケットボール選手)
★★★☆☆ ★☆☆☆☆
【2】中道理央也
(24歳、パーソナルトレーナー)
★★★★☆ ★★☆☆☆
【3】小出翔太
(33歳、飲食店経営者)
★★★☆☆ ★★★★★
【4】田村一将
(33歳、起業家)
★★☆☆☆ ★★★★☆
【5】ジェイデン トア マクスウェル
(26歳、ラグビー選手)
★★★☆☆ ★★☆☆☆
【6】佐藤駿
(30歳、映像監督)
★☆☆☆☆ ★★★★★
【7】阿部大輔
(40歳、デザイナー)
★★☆☆☆ ★★☆☆☆
【8】雲母翔太
(27歳、劇団員)
★★★★★ ★★★★★
【9】平山大
(30歳、タクシードライバー)
★★☆☆☆ ★★★★☆
【10】加藤友哉
(24歳、大手外資系IT企業マーケター)
★★★☆☆ ★★☆☆☆
【11】早瀬恭
(37歳、会社経営者)
★★★★★ ★★★☆☆
【12】横山竜之介
(35歳、ファッションデザイナー)
★★☆☆☆ ★☆☆☆☆
【13】高橋航大
(22歳、大学生・アプリ事業運営)
★★☆☆☆ ★★☆☆☆
【14】澤井一希
(25歳、モデル)
★★★☆☆ ★★☆☆☆
【15】山邊玲音
(30歳、ダンサー・歌手)
★★★★☆ ★★★☆☆
【16】美留町恭兵
(36歳、美容師・画家)
★★★☆☆ ★☆☆☆☆
【17】佐藤マクファーレン優樹
(28歳、プロバスケットボール選手)
★★★★☆ ★★★★☆

Netflix『ヒヤマケンタロウの妊娠』が“リアル”に感じるワケ――斎藤工の男性妊夫が象徴するものは何か

――『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ』(宝島新書)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、話題の配信ドラマをレビューする。

 現在、動画配信サイト・Netflixで配信されている斎藤工主演のドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』は、男性も妊娠する世界を描いた話題作だ。

 坂井恵理氏による同名漫画(講談社)が原作で、斎藤は広告代理店で働く主人公・桧山健太郎を演じる。桧山は不特定多数のパートナーと気軽に肉体関係を持つ独身生活を送っていたが、ある日突然、妊娠してしまう。

 その後まず描かれるのは、つわりで吐き気を催したり、射乳反射で乳首から母乳が出てきたりといった、体の変化に桧山が困惑する姿。それと同時に描かれるのは、桧山から妊娠を告げられたパートナー・亜希(上野樹里)が取り乱す姿だ。

 仕事が忙しい亜希は、もともと母親になるつもりはなかったが、このまま子どもを持たない人生を過ごすことにも戸惑いがあった。そんな時に妊娠を告げられた亜希がまず口にしたのは、「それって私の子なの? ほかにも会ってる子がいるでしょ」という、いかにも“男”が言いそうな台詞だ。

 実際、桧山は複数の女性と関係を持っているため、亜希の言うことは間違っていない。だが、産む主体が変化すると、男女の思考も入れ替わってしまうということが、本作では最初に描かれている。

 “男性妊夫“としての意識が桧山の中に芽生えていく過程の見せ方も、とてもリアルだ。「今まで見過ごしてきた社会に潜む不公平や偏見を目の当たりにしてゆく」ことを謳う本作は、「もしも、男が妊娠したら?」という特殊な状況を、体の変化だけでなく、中絶手術にまつわる煩わしい手続きや、桧山と亜希が感じる不安なども含めて描き、見ている人に実感させていく。

 中絶を選択しようとした場面で、医師に自分の性生活におけるプライベートなことを報告するよう促されていたが、これには「心がえぐられる」と感じた。そういった妊娠にまつわる一つひとつのシチュエーションに直面し、困惑する桧山の姿が、見る人にもボディブローのように効いてくるのだ。

 このような「個人」の描かれ方に対して、男性が妊娠する「社会」の描かれ方はどうか。劇中では、50年前に第1号の男性妊夫の存在がアメリカで確認されたものの、現在も人数は少なく、ほとんどが堕胎を選択する状況だと語られる。そのため、男性の妊娠に対する偏見は男女ともに強く、生理的嫌悪感を抱く人が多いことも示されている。

 世間の人々は、表立ったひどい差別こそしないものの、男性妊婦との交流がほとんどないこともあって、彼らを偏見に満ちた視線で語ってしまう。この状況は、マイノリティに対して世間の人々が抱いている差別的な目線を、そのままトレースしているように感じる。

 それが強く打ち出されていたのは、亜希が同窓会で一緒に飲んだ地元の男たちが、その場に男性妊夫がいないのをいいことに、彼らについて 「バケモン」「気持ち悪い」「遺伝子に問題がある」と言う場面。この描写を見ていると、男性妊夫という存在を、ある種のマイノリティの象徴として描いていることがよくわかる。

 男性の妊娠という架空の状態を描きながらも、この作品が普遍的な物語だと感じるのは、マイノリティの苦しみとマジョリティが見せる何気ない差別や偏見がリアルに描かれているだからだろう。

 一方、とても現代的だと感じたのは、桧山が男性妊夫というマイノリティの立場を逆手にとって、ビジネスに役立てることだ。

 妊娠が発覚したことで、大手企業の仕事から外された桧山だったが、男性妊夫としての自分を打ち出すことで、広告マンとしても再起を図る。膨らんだおなかを見せた桧山の広告は日本中で話題となり、一躍時の人となる。同時に桧山は、男性妊夫のオンラインサロンを無料で立ち上げ、世間の偏見に立ち向かおうとする。

 妊娠を武器にして成り上がろうとする桧山の姿は、社会的使命感と功名心が入り混じった複雑なもので、誰もが他者評価に晒されるSNS社会を戯画化しているようにも見える。

 現代はポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)への配慮が求められる時代で、マイノリティに対する意識が高い作品ほど評価されるようになってきた。しかしその結果、映画やドラマは多様性や格差、貧困、フェミニズム、LGBTQ、SDGs、有害な男らしさといった現代的なテーマをどれだけ盛り込み、最適解を提示できるかという、商業上の“ゲーム”になっているように思う。そのことに対して、もっとも敏感な映像プラットフォームがNetflixだ。

 『ヒヤマケンタロウの妊娠』が作られた背景にも、ポリコレに対する意識の高さが商業的アピールにつながるという計算があったのだろう。正直、その戦略があからさますぎて、困惑する瞬間が本作には何度もある。

 しかし一方で、ポリコレが商業利用されている現状を、広告マンの桧山が姙娠を武器に再起を図ろうとする姿と重ねて描くことで、マイノリティをめぐる言説がゲームとして消費されている状況を、作り手自身が自己批判しているようにも感じた。

 さて、最終話に印象的な場面がある。無事出産した桧山が育休を取る際に、“子どもができてキャリアを中断することは下方修正ではない。人間的にスキルアップし、この経験が反映される日が来る”といったことを、女性社員に向かって高揚気味に語るのだが、彼女たちに「それ、カッコつけて言うほどのことじゃないよ?」「私ら普通にそうだから」「ヒロイックになってる時点で、まだまだですね」と言われ、笑われるのだ。

 このやりとりは、桧山が直面したことは特殊な出来事ではなく、「女性にとっては普通のことなのだ」と、視聴者に対して釘を刺しているように感じた。

 ヒヤマケンタロウを英雄にしてはいけない。なぜなら彼の背後には、今も出産・育児をめぐる問題で悩んでいる多くの女性がいるのだ――おそらくそれこそが、本作が一番伝えたかったことなのだろう。
(成馬零一)

『ザ・ノンフィクション』「やりたいことで生きていく」という機運の弊害「都会を捨てた若者たち 後編 ~27歳の決断~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月26日の放送は「都会を捨てた若者たち 後編 ~27歳の決断~」。

あらすじ

 栃木県那須町にある非電化工房では自然と調和した暮らしを目指し、自分の力で生きていく技術を学ぶ。代表の藤村靖之氏は1年限定で住み込みの弟子を取っており、現在は20代の5人が弟子として暮らしている。

 弟子の一人、27歳の大地は非電化工房の同期の他メンバーとの交流を避け、夕食も別に取る。大地は4歳で野球を始めたが甲子園出場の夢はかなわず、大学卒業後は大手ハウスメーカーに就職し、営業マンとして働く。しかし1年ほどで退職し、今度は人材系のベンチャー企業に入社するが、そこも自主退社。

 何も手にしていないという思いから、非電化工房への弟子入りを決めたと話すが、目的がはっきりあるわけではないようだ。そんな大地に対し、藤村氏は山の開拓を一例として出し、大地は乗り気になっていく。

 そんな大地に彼女ができる。非電化工房で暮らす同い年の樹乃香だ。樹乃香は大学で人権、環境問題を学び、生活支援のNPOで働くも、毎朝の満員電車の生活に慣れなかったようで、弟子入り生活をしながら、地元山梨で非電化カフェの開業を目指している。

 人付き合いに苦手意識のある大地は、当初、弟子生活の終了後は樹乃香と生活の拠点を別にしたいと番組スタッフに話していたが、樹乃香は大地と生活を共にしたいと考えていた。しかし一方で、大地の目指す山の開拓生活での同居は無理かもしれないとも思い、大地に話を切り出せない。

 しかし、修行生活が終盤に差し迫ったころ、樹乃香の父親にがんが発覚する。ログハウスビルダーだった父親とともにカフェを作りたいとの思いがあった樹乃香は、大地と話し合う。大地は山を探しつつも、まずは樹乃香のカフェを手伝う選択をする。

 大地は弟子生活において同期との交流を避け、入居して7カ月で行われた非電化工房の対外向けのイベントでは、自分の担当であったポンプの準備を怠り、藤村氏にたしなめられていた。そのときは、すっかり意気消沈して「退去のシミュレーション」を番組スタッフの前でするほどだったが、弟子生活の最後のほうでは人と交流を持つようになり、1年滞在した非電化工房を去るときは「辞めなくてよかった」と涙していた。

▼前編はこちらから

『ザ・ノンフィクション』「好きなことで生きていく」という機運の弊害

 「地元山梨でカフェを開く」という樹乃香の夢を手伝うことにした大地だが、これはいい決断だと思った。番組の前後編を見ても、大地の夢である「山の開拓」への熱意、情熱の度合いがよくわからなかったからだ。

 実際に山探しのため自治体に電話をかけたり、すでに山を開拓して暮らしている人のもとを訪ねるなど具体的に行動もしているのだが、なぜか「すごくやりたい」ように見えなかった。もともと「山の開拓」も大地自らが言い出したものではなく、藤村氏の一提案だ。

 非電化工房の修業生活を1年間行ってきたというのもあり、大地には「非電化系の目標を見つけないと」という焦りもあったのかもしれない。ただ、やりたいものを無理やり探すよりも「自分よりやりたいことが明確な人を手伝う」ほうが、無理がないように思う。

 今の世の中、終身雇用などはすっかりアテにならなくなってきており、その代わりに「好きなこと、やりたいことで生きていく」という機運は、特に若年層を中心に高まっているように思う。このこと自体はいいことのように思うが、一方で「好きなこと、やりたいことを見つけて、それで生きていかないとダメ」、さらには「会社勤めは社畜、搾取される」という思考も一部で強まっているような気がする。

 しかし、そこまで行くのは極端な考えだ。若い大地も、こういった固定観念に振り回されていた面があるのかもしれない。

 大地は「(いろんな人とうまくやれ、かつカフェといういろんな人が来る環境を作りたい樹乃香に対し)僕はいろんな人が来るとしんどいから」 と、退去後に樹乃香と生活を共にすることに消極的だった。

 大地の自己認識は「人付き合いがしんどい」ようだが、しかし、前後編を見る限り、大地はむしろ人付き合いに積極的な人のように見えた。番組スタッフの前でもおしゃべりだ。

樹乃香と付き合ったなれそめを聞かれた際、「褒め上手だから」と話し、藤村氏に山の開拓を提案されると気を良くしたり、逆に藤村氏にたしなめられたときは退去を検討するほど落ち込むなど、大地は人から言われたことに影響を受けやすい。

 本当に人付き合いが苦手なら、人の話に耳を傾けたりなど人と関わろうとしないし、彼女をつくろうとも思わないだろう。そもそも大地は新卒で大手ハウスメーカーの営業マンだったが、大手の人事が採用、配属する人に「人付き合いが苦手な人」はいないはずだ。

 大地は、「人付き合いが苦手」というほどではなく、「人に対し愛想よく振る舞うこともできるし、気の合う人とは仲良くしたいが、人付き合いの煩わしさはなるべく避けたい」程度に見える。それなら私もそうだし、世の中の多数派とすら言っていい。

 「ぱっと見そうかもしれないが、本当の自分はそうではない」という考えもあるかもしれないが、「ぱっと見そう映る」というのも、その人の立派な実態のひとつだ。ぱっと見は人付き合いに積極的に見える大地は、自然を相手に開拓生活をするよりも、接客のほうが向いているように見えたし、その点でもカフェ経営はいい進路だと思う。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「人力車に魅せられて ~夢と涙の浅草物語~」。浅草観光の名物ともいえる人力車。10社以上がしのぎを削る中で「東京力車」は女性俥夫も多く活躍している。俥夫を目指す若者たちを見つめる。

『ザ・ノンフィクション』お父さんみたいにならないで、という母親の呪い「都会を捨てた若者たち 前編 ~27歳の迷い道~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月19日の放送は「都会を捨てた若者たち 前編 ~27歳の迷い道~」。

あらすじ

 栃木県那須町にある非電化工房では自然と調和した暮らしを目指し、自分の力で生きていく技術を学ぶ。代表の藤村靖之氏は一年限定で住み込みの弟子を取っており、現在は20代の5人が弟子として暮らしている。夜は昼の間ソーラー充電で得たわずかな明かりのみだ。

 弟子の一人、27歳の大地は非電化工房の同期の他のメンバーとの交流を避け、夕食も別に取る。だが「人嫌い」「人が苦手」という感じではなく、スタッフとはむしろ人当りよく話し、非電化工房の同期たちが誘ってくれるのを待っているような節も感じさせる。

 そんな大地を番組ナレーションは「相当こじらせているようです」と伝えていた。大地はYouTubeで非電化工房での暮らしを配信していて、そこで欲しいものリストも掲載しており、その中には「彼女」の文字もある。

 大地は4歳で野球を始め、野球の強豪高校に進むも甲子園出場の夢はかなわず、大学ではアメフトへ転身するも、結局レギュラーになれなかったという。その後、東証一部上場のハウスメーカーに就職し営業マンとして働くも1年ほどで退職。人材ベンチャーに転職するも、自分に自信をなくしてしまい、メンタルクリニックで「うつ症状」と言われ退職する。

 大地は幼いころから競争生活を過ごしてきたものの、何も手にしていないことから非電化工房への弟子入りを決めたと話すが、非電化工房での目的がはっきりあるわけではないようだ。そんな大地に対し、藤村氏は山への開拓を一例として出し、大地は乗り気になっていく。

 そんな大地に彼女ができる。非電化工房で暮らす同い年の樹乃香だ。樹乃香は大学で人権、環境問題を学び、生活支援のNPOで働くも、毎朝の満員電車の生活に慣れなかったようで、弟子入り生活をしながら非電化カフェの開業を目指している。

 そのような中で大地の父親が非電化工房を訪ね、稲刈りに参加する。大地は樹乃香を父親に紹介。その後、居酒屋で父と息子は和やかに話すが、父親は大地が席を立った際に、番組スタッフを前に、自分の仕事を手伝ってほしいことや、彼女ができたのに好き勝手やっていていいのか、という気持ちを吐露する。

『ザ・ノンフィクション』番組最後に大地が見せた変化

 番組最後2分、午後2時50分すぎからが怒濤の展開だったように思う。

 それまでの番組中の大地は目の前の非電化工房の同期とは自分から打ち解けようとしないが、それは孤高を貫くというよりは「誘われ待ち」な感じで、さらに人付き合いは苦手と言いつつYouTubeという人付き合いには積極的だ。

 さらには非電化工房に身を置きながらも、やりたいことがはっきりあるわけでもなく、さらに彼女は欲しいしと、どうも浮ついた感じに見えた。

 しかし番組最後、大地が父親と居酒屋で飲みながら話した内容には実感がこもっていた。抜粋したい。

大地「作業着を着て帰ってくる父親(大地の父親は大型シャッターの職人)が嫌だった。『スーツを着ている人が会社員』っていうイメージがあった。そっちの人の方がカッコいいとずっと思っていて、母親にも『ああいう現場仕事じゃなくてホワイトカラーでいてね』って言われていた。『大学にも行かせるから一流のいい会社に入れ』って」

大地父「お母さんそんなふうなの、マジか」

 その後、大地は会社員時代に現場実習で職人の姿を見ることがあり、現場仕事をカッコイイと思うようになったと話した後、照れくさかったのか席を立つ。この発言は番組中の大地の言動の中で一番実感がこもっていたように聞こえた。

 大地は自分でもよくわかっていない「やりたいこと」を探すよりも、自分がすでに実感として持っている仕事観をベースに仕事を探したほうがいいのではないだろうか。

『ザ・ノンフィクション』「お父さんみたいにはならないでね」という母親の呪い

 先の大地の発言から、大地の母は、大地に「お父さんみたいにはならないでね」と言葉をかけていたわけだが、これは子どもにとってかなりの呪いだと思う。こう発言するに至ったまでの「母の言い分」も当然あるだろうが、それは夫婦で話し合うことであり、子どもに言うことではない。

 「お父さんみたいにはならないでね」という母の発言は単独だけでもかなりのインパクトだが、大地の家の場合、父は大地に仕事を継いでほしいのだ。大地は「俺みたいになってほしい」と「お父さんみたいにならないで」の板挟み状態にある。

 夫婦間で矛盾したメッセージを子どもに発信しているのが問題なのではない。たとえ矛盾していても、大地の前で両親それぞれが、自分たちは仕事についてこう思っているがその上で大地は自分で考えればいい、と言えばむしろそれは非常に有意義な家族の時間になると思う。

 大地の家の場合、母は父への不満を本人には直接言えず、代わりに大地に「お父さんのようにならないで」と告げ、父は父で大地に仕事を継いでほしいと言えないし、妻がそこまで自分に対し不満を持っていたことに気づけない。

 意見の矛盾が問題なのではなく、言いたいことを直接当事者に言えない、相手の不満に気づけないというコミュニケーション不足が問題のように思う。

 大地の父母は大地のYouTubeをチェックし、行く末を案じているし、大地の父は非電化工房の稲刈りを手伝いに来ている。夫婦仲、家族仲は悪くないように見えるのだが、肝心な点においては「コミュニケーションを避けている」感じがした。

 ぱっと見の仲はいいのだが、言えば軋轢が起きそうなこと、気まずくなりそうなこと、しかしだからこそ大切なことはどうも話せない——と言う家庭は、大地の家に限らないように思う。「話し合い」が苦手で「察してほしい」という風潮が根強い日本では、むしろこういう家庭のほうが多いのではないだろうか。面倒なことにふたをしたい気持ちはわかるが、ふたをすることで生まれる弊害もある。

 来週は今週の続編。残り半年を切った非電化工房での弟子生活。27歳のカップルが出した結論とは。

木村拓哉、“封印”されたドラマ『ギフト』の魅力――今とは違うダークヒーローとしての存在感

――ドラマにはいつも時代と生きる“俳優”がいる。『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、“俳優”にスポットを当てて90年代の名作ドラマをレビューする。

 1997年に放送されたドラマ『ギフト』(フジテレビ系)は、木村拓哉演じる記憶喪失の青年・早坂由紀夫が「届け屋」として、依頼人から受け取ったさまざまな荷物を届ける1話完結の物語だ。

 由紀夫が届ける謎の荷物の背後に、複雑な人間ドラマが絡み合う大きな事件が存在し、最終的に意外な結末を迎えるというのが各話の流れ。萩原健一主演の『傷だらけの天使』や、松田優作主演の『探偵物語』(どちらも日本テレビ系)といった、1970年代に放送された男臭い探偵モノのドラマを、当時大人気アイドルの木村で撮るというコンセプトが前面に押し出された作品となっていた。

 同時に、記憶喪失の由紀夫は事件を解決するごとに過去の記憶が少しずつ蘇り、最終的に本当の自分と対峙することになるため、「自分探し」的な要素も打ち出された。心理学がブームとなり、「心の時代」と言われていた90年代らしい作品だとも感じる。

 由紀夫は届け屋として都内を走り回るのだが、GUCCIのスーツを着てクロスバイクで疾走する木村の姿が実にカッコいい。ほかにも、ストップウォッチやポラロイドカメラといった小道具の持ち方、葉巻を咥える時に見せるさりげない仕草や台詞回しが、どれも魅力的だ。

 今では「何をやってもキムタク」と揶揄されることもあるが、当時の木村の演技はとても自然なものとして視聴者の目に映った。少しだるそうな台詞の言い回しや軽妙な身のこなしは、90年代の若者の振る舞いがそのままドラマの中に入ってきたかのような衝撃があった。

 クールなトーンでしゃべっているかと思うと、突然、怒鳴りつけるといった緩急のある芝居も魅力的で、木村の一つひとつの仕草から目が離せない。そして何より感じるのは、男臭くもありながら中性的でセクシーという、木村にしか出せない圧倒的な色気である。

 物語の冒頭、由紀夫は51億円を横領した代議士・岸和田のマンションにあるクローゼットの中から発見される。血まみれで丸裸の木村がクローゼットから転がり落ちる場面はとてもセクシーで、当時の木村が担っていた、少年のようでも少女のようでもある中性的な色気をワンシーンで表現した名場面といえる。

 この色気は、ワイルドな男臭さが魅力の萩原や松田には出せないもので、映画『太陽を盗んだ男』やドラマ『悪魔のようなあいつ』(TBS系)で主演を務めた沢田研二のダーティーな色気を彷彿とさせた。なお、沢田は『ギフト』の最終話、写真で出演している。おそらく作り手の意識の中に、当時の木村と沢田を重ねているところがあったのだろう。

 つまり『ギフト』の木村には、萩原、松田、沢田が過去に見せた魅力が投影されているのだが、90年代の木村主演ドラマが面白いのは、作品ごとに作り手が木村に演じさせたい魅力的な男性像が微妙に違うことだ。

 『その時、ハートは盗まれた』『あすなろ白書』『ロングバケーション』(すべてフジテレビ系)といった、北川悦吏子氏の脚本で木村が演じた役は、優等生で気弱な青年。どちらかというと、少女漫画の王子様的な存在だった。対して『若者のすべて』(同)や『人生は上々だ』(TBS系)で木村が演じた役はワイルドなチンピラ風で、男が惚れる男の風貌であった。

 『ギフト』はどちらかというと後者だが、全裸で登場する冒頭の場面を筆頭に、とてもセクシーな存在として描かれた。同時に、普通の人が躊ちょするような、反社会的で危険な行為ですらクールにこなす、ダークヒーローとしての魅力も強くにじみ出ていた。しかしこれが、のちに作品を悲劇に巻き込んでしまう。

 最終話、記憶喪失だった由紀夫の過去がついに明らかになる。本当の由紀夫は「溝口武弘」という悪党で、仲間のチンピラとともにケンカやセックスに明け暮れており、護身用にバタフライナイフを持ち歩いている危険な男であった。

 『ギフト』放送終了後の98年。13歳の少年がバタフライナイフで教師を刺殺する事件が起きた。少年は同作でナイフを使う木村の姿を「カッコいい」と思い、自身も購入したのだと語った。これにより同作は“封印”され、各テレビ局で再放送が中止に。2019年にDVD-BOXが発売されるまで幻の作品となっていた。

 13歳の少年がカッコいいと思った木村の姿は、早坂由紀夫ではなく溝口武弘だったのだろう。何かあるとナイフをチラつかせて相手を威嚇する溝口の振る舞いを、作り手は「否定すべき弱さ」として描いていたのだが、木村が演じたことで、クールでカッコいいダークヒーローとしての魅力が備わってしまった。

 溝口がバタフライナイフを取り出す時の仕草は確かにカッコよくて、残念ながらこれは否定できない。このあたりはフィクションの難しいところで、作り手の意図が曲解されて視聴者に届いてしまった悲劇だと今は感じる。

 『ギフト』の事件がどの程度、その後の仕事に影響したのかは定かではないが、木村の演じる役は徐々に保守化していった。

 2001年に型破りの若手検事を演じた『HERO』(フジテレビ系)を筆頭に、木村はカリスマ美容師、パイロット、社長、総理大臣といった華やかな職業の主人公を務めるようになり、同時に“正統派ヒーロー路線”へと変わった。しかし、『ギフト』がお蔵入りせずに、ダークヒーロー路線の木村主演ドラマが作られ続けていたら、今とは違うダーティーな姿がもっと見られたかもしれないと思うと、まことに残念だ。

 今年、木村は50歳となる。当時の色気は90年代の木村にしか出せないものだが、歳を重ねた今だからこそできる老獪な悪役を、そろそろ演じる頃ではないかと『ギフト』を見返して思う。
(成馬零一)

『ザ・ノンフィクション』善意の人は、時に厄介「うちにおいでよ ~居候たちの家~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月5日の放送は「うちにおいでよ ~居候たちの家~」。

あらすじ

 東京中野区で暮らす森川家は、40代の義明と愛の夫婦に小学校5年生を筆頭に3人の子どもがいる5人家族。そこに、2人の居候、コウジとユリも暮らしている。

 1年前から森川家に世話になっている29歳のコウジは、親に医学部に入ることを強いられていたそうで、有名大学の医学部には合格したものの、そこで燃え尽きてしまう。大学は卒業したが、医師国家試験は受けていないという。開設したブログでは、親への不満をつづっている。コウジと愛はとあるイベントの会場で知り合い、愛が家に呼び寄せた。コウジは森川家で食器洗いを担当しているが、生活費は入れていない。

 30歳のユリは、裕福な家庭に育ち名門大学を出て大手広告代理店に就職するも、週5日電車に乗って通うのが自分には合わないと3カ月で辞めて、海外へ飛び出す。その後、結婚相手を見つけたが親の反対にあい、別の相手と結婚するもすぐに離婚と、波瀾万丈な20代を送る。

 自分の親に対し複雑な心境を抱えるユリとコウジは意気投合。ユリは妊娠し、3カ月前に愛はユリも家に呼ぶ。愛が居候を住まわせるのは今に始まったことではなく、過去にも愛に声を掛けられて居候を始めた男性がいて、家を出た後もいまだに交流は続いている。

 4LDKで7人が暮らす日々で生活費がかさむ中、愛は香港から来た11歳の明希を新たな家族として迎える。香港人だった明希の母親と愛はママ友の間柄で、シングルマザーとして子育てしていた明希の母親だったが、2年前に病気で亡くなってしまう。明希の父親とは連絡がつかず、香港の祖父母の家に明希は迎えられるも、言葉の壁などがあり、折り合いはうまくいかなかったという。それを知った愛が引き取ったのだ。

 当初、愛は明希と養子縁組をする予定だったが、養子縁組は誰を養子にするか里親側は選べない仕組みであるため断念。一方でこのままだと、明希に手術の必要などがあった際に同意書へサインができないため、愛は明希の未成年後見人になるべく動く。

 愛がこれほど人の世話を焼くのは、愛自身が16歳で歌手になるため上京した際に、多くの人に世話になったからだと話す。一方、森川家はいよいよ人が増えてしまい、愛に促される形でユリとコウジはユリの家から金を借り、新居に移る。

 番組の最後ではユリとコウジの間に子どもが誕生。愛も無事、明希の未成年後見人になった。

 誰しも親に対して、大なり小なり複雑な感情はあると思うが、ユリとコウジのそれは30歳、29歳という年齢からするとかなり根深いものだった。その感情を抱くまでに、親子で葛藤があったのだろうし、特に医者になることを親に強いられてきたコウジの場合、教育虐待の可能性もあったのでは、と想像できる。

 一方で、現在のコウジは森川家に生活費も入れない居候だ。明希を引き取り、森川家が手狭になっているのだがら、「僕らはそろそろ出ていきますね。お世話になりました」くらいコウジには言ってほしかったが、煮え切らずぐずぐずしていて、出ていくのも愛に促され、ようやく、といった姿勢に見えた。

 また、2人が森川家を出るとき、餞別に森川夫妻はお金を渡していたが、コウジとユリが用意していたのは「手紙」。生活費すら入れていなかったのだから、せめて菓子折りくらい用意すればいいのにと思った。

 カットされていただけで実は渡していたり、また、森川家側が出産でこれから入り用だから餞別はいらないと事前に伝えていたことを願うが、本当に手紙以外何も渡していなかったのなら、2人には「お世話になった人とのお別れに用意するモノ」を考えたことが、今までなかったのかもしれない。一般的な就労経験があれば、教えられずとも身についていることのようにも思う。

 コウジとユリは親との葛藤を抱え、自分探しに奔走した20代を送ったように見えるが、一方で、社会における年相応の常識を身につけることはなかったのだろう。こうした姿に幼さを感じる。

 なお、コウジは大学時代に受験しなかった医師国家試験に改めてチャレンジしようとしている。河合塾のデータでは、国家試験の合格率を出身大学別にまとめたページがあるが、明らかにどの大学も新卒者の合格率が高く、既卒者の合格率は5割程度まで落ちるケースも多い。

 学生時代の勢いや流れに乗らないと、一気にハードになってしまうのだろう。コウジがもし医者になるなら、「最後の壁」はかなり高そうだ。

 困った人に手を差し伸べる愛が、「善意の人」なのはよくわかる。夫婦関係や家庭に関することは、当事者たちが納得していれば、他人がとやかく言うことではないが、しかし自分が夫・義明の立場なら、居候を迎え入れる家は気が休まらず、しんどいだろうと思う。

 しかも厄介なのは、愛のような「善意の人」の意見や行動には、周囲も「NO」が言いづらいという点だ。善意に基づいた意見のため、それを断ると心ない人間のように思えてしまう。

 また、善意の人自身にも、自分の考えは善意ゆえに、まさか相手が「NO」とは言わないだろう、という強引さもあるのではないだろうか。これは、善意の人本人ですら無自覚かもしれない。善意の人は善意ゆえに、悪意ある人より時に厄介なのではないかと思う。

 森川家にいる子どもや明希は思春期を迎える。家に自分のスペースが欲しくなるだろうし、何より義明だって一人になりたいときはあるだろう。愛の善意に基づく居候の受け入れは、これからもあるかもしれないが、もし家族は少しでも嫌だったら、はっきりNOを伝えていいと思う。

 善意が大切なように、嫌だ、困る、と思う気持ちだって大切だ。

『ザ・ノンフィクション』タニマチや太客、人脈で生きる歌手「27歳 流しの歌姫 ~夢のステージに立ちたくて~」

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。5月29日の放送は「27歳 流しの歌姫 ~夢のステージに立ちたくて~」。

あらすじ

 流しの歌手、27歳のかとうあいは日本中のスナックやクラブなどに飛び込み営業を行う生活を7年続けている。4万軒に飛び込みをして1万軒に断られたと明るく話す。

 そんなあいの夢は日本武道館での単独ライブだ。大阪の音楽専門学校に通っていたため当初の夢は大阪城ホールだったが、老若男女が知っている日本武道館に変更したとのこと。

 夢の実現のため、あいは流しを通じ人脈を構築していく。銀座の会員制ラウンジのママはあいの夢実現に向けた決起集会を開き、高級シャンパンは80本ほどはけたという。また、経営者たちの支援も得て、18社があいの夢をサポートしている。

 あいは並外れたバイタリティを見せる一方で、抜けている面もある。飲食のバイトもクビになり音楽しか続かなかったと話すが、本業である音楽も専門学校時代に路上で歌うことに夢中になってしまい、授業がおろそかになって今も楽譜が読めないという。

 高音域の歌唱も苦手で、番組内でチョイスしていたカラオケ曲も「栄光の架橋」(ゆず)「Srory」(AI)など、比較的音域狭めでローテンポのバラード調の曲が多く、小岩での流しでも「壊れかけのRadio」(徳永英明)を入れようとしたところ、店からもっと盛り上がる曲を、とリクエストされていた。また、あいはギターなど楽器を弾くわけでもなく、オリジナル曲も乏しい。

 夢の会場だった日本武道館についても調べが甘かったようで、当初、業者を通じ4000万円弱で2022年12月12日に開催ができるとあいは思っていたようだが、実は会場を押さえてなかったことが後から判明。業者とあいが電話で話す様子が番組で放送されていたが、あいの言葉を業者は「うん、うん」と返しており、子ども扱いしているようにも見えた。

 傷心のあいは島根の実家に一時帰省するも、母親からオリジナル曲がないこと、(人を集めるには)代表曲が世に認められる必要があること、生で歌を聞きたいと思える人物であることを発信する必要があること、魅力があるから世に出られること、一方、チップ生活で7年過ごすのは憧れるというより変な人だと思われる、と正論を説かれる。

 母親は番組スタッフに対し、「(あいは)甘いなと思います。(略)周りのことを考えずに自分がやりたいからどうだから、それで突っ走る感じ。とにかくお金があれば何でもできると思っている。お金だけじゃない部分もあるじゃないですか。そういう部分が(あいには)見えない」と案じる。

 結局、武道館の手配は別の業者に頼んだものの、実績がないとダメだと断られてしまった。しかし、あいは諦めておらず、雇われママとなり金策を進める一方で、武道館規模(1万人)の会場でのライブを行い、実績を積むことで武道館を目指すと話す。

 武道館のために流し生活を7年続けて1000万円貯めたこともすごいが、流しの活動を通じ、そこで「社長さん」たちというタニマチになってくれる太客との人脈を築いたことはさらにすごい。あいの「武道館」という夢は現実味に欠けるが、一方で「どんな小さな箱でもいいからまず単独ライブをしたいんです」では、社長さんたちも「じゃあ自分でやれば」となってしまうだろう。武道館だからこそタニマチがつくのだ。

 歌手志望で、YouTubeやTikTokで自分の歌動画をいくつも上げている人を大勢見かける。一方で、これは「やろうと思えば、誰でも、いつでも、すぐに、お金をかけずに、家でもできる」手軽なことだ。だから大勢がしていることであり、その中で頭角を現すのはとても難易度が高い。並外れた個性や魅力や歌唱力が求められ、デビューどころか、1いいね、1チャンネル登録をもらうのですら楽ではないだろう。

 一方で、「タニマチを見つける」という努力をしている歌手志願者となると、その数は激減するだろう。そもそも、歌手志望者はオーディションやコンテストを通じた事務所所属を目標にする人が多いと思われ、自費出版のような「自費武道館」は思いもよらない選択だ。「実現可能性」を別にして考えれば、あいの目のつけどころはユニークだ。

 大勢の歌手志願者が「人気を取らねば」と思う中で、あいは「人脈」に目を付けている。「人気」は結局のところ人頼りだが、「人脈」は自分の努力次第でなんとか増やすことができる。そして、人脈づくりはあいの長所であるめげなさ、物怖じのしなさ、人懐っこさが活用できる領域に思える。

 武道館に向け努力はしているし、「人脈」を狙うのもいい目の付け所だと思うが、その他のあいの「努力の方向性」においては、問題が山積しているように見えた。 

 そもそも、武道館は結婚式場のように金があれば借りられる会場ではないのでは、と思うし、代表曲もないのにとも思うが、そうした「そもそも」の部分は、あいの母親が言い尽くしている。現実味の欠けるあいに、この冷静な母親がいてよかった。

 なお、日本武道館のホームページを見てみたが、「会場をご利用になられたい方へ」といった項目・ページはやはり見つからなかった(見つかれば、あいも苦労しないだろう)。日本武道館の問い合わせ窓口として「武道振興事業」はあるが、「コンサート、興行向け」と思われるものがない。そもそも、「武道」館であり、アーティストの聖地と化しているものの、その名の通り武道のためにつくられた硬派な会場なのだ。

 一方で、あいが当初想定していた大阪城ホールや、また関東圏で大型コンサートが開かれるときの会場の一つ、幕張メッセは「主催者向け」ページが存在する。1万人規模会場で公演を行い、武道館に向けての実績をつくると話していたあいは、この違いをどう思っているのだろうか。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「うちにおいでよ ~居候たちの家~」。都内で暮らす森川家は、夫婦、子ども3人以外に「居候」がいる。居候たちはなぜ居候をし、森川家はなぜ居候を招き入れるのか?

織田裕二、『踊る大捜査線』随一の名場面で見せた魅力――シリアスとコメディを同時にこなす姿に期待すること

――ドラマにはいつも時代と生きる“俳優”がいる。『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、“俳優”にスポットを当てて90年代の名作ドラマをレビューする。

 1997年に放送された刑事ドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系、以下『踊る』)は、織田裕二演じる、脱サラして警察官になった主人公・青島俊作が、お台場の湾岸署に配属される場面から始まる。

 署に到着すると殺人事件が起こり、青島は現場へ向かう。しかし、捜査を仕切っているのは本庁のエリート刑事たちで、所轄の青島は雑用ばかり任され、自由に捜査をさせてもらえない――といった展開が繰り広げられる。

 同作は、ケレン味のある映像や音楽の使い方、細かい設定や小ネタが無数に散りばめられていて、何度も見返したくなる情報量の多さが特徴だ。これは、90年代にテレビ東京系ほかで放送された『新世紀エヴァンゲリオン』などのロボットアニメの魅力を積極的に取り入れたものとなっていた。

 また、湾岸署を舞台に複数のエピソードが同時に進行していき、その様子を同時に追いかけていくカメラワークは、海外ドラマ『ER緊急救命室』の影響が強くうかがえた。

 その結果、『踊る』は実写とアニメの魅力を兼ね備えたドラマとしても人気作になったといえるが、一番の肝は「正義のヒーロー」ではなく、組織のしがらみの中で翻弄される公務員として警察官を描いたことにあるだろう。

 劇場映画第1作『踊る大捜査線THE MOVIE』(98年)に登場した青島の台詞「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」に象徴される、会議室(本庁)と現場(所轄)の対立こそが、本作が描こうとしたテーマなのだ。

 もともと、コンピューター会社の営業マンだった青島は、会社組織にうんざりして警察官になった。しかし、正義感が強く被害者救済を第一に考える青島のやり方は、規律を第一にする警察組織とは相性が悪く、いつも衝突してしまう。

 劇中では、本庁は「本店」、所轄署は「支店」と呼ばれる。本店から来た警察官僚にゴマをする署長たちの姿を見て、青島は“サラリーマンみたいだ”と失望するが、皮肉なことに、サラリーマン時代に培った営業力こそが、青島にとって最大の武器となっていく。

 そんな青島を演じた織田は、87年に公開された映画『湘南爆走族』で俳優デビュー。その後、『十九歳』(89年、NHK)や『予備校ブギ』(90年、TBS系)といった若者向け青春ドラマに出演する。思春期のいら立ちを抱える不良に見えるが、人懐っこい愛嬌もある青年という二枚目半のキャラクターが受けて、主演作が増えていった。

 そして、91年に主演を務めた恋愛ドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)が大ヒットし、織田は俳優として本格的にブレーク。本作で演じた永尾完治は、ヒロインの赤名リカ(鈴木保奈美)に翻弄される優柔不断な青年で、等身大の普通の若者を演じられることも織田の魅力だった。

 その後は、医療ドラマ『振り返れば奴がいる』(93年、同)の傲慢な天才医師・司馬江太郎や、リーガルドラマ『正義は勝つ』(95年、同)で勝つためなら手段を選ばない弁護士・高岡淳平といったダーティーヒーローを演じる。一方、コメディドラマ『お金がない!』(94年、同)では、借金を返済して兄弟を守るために外資系保険会社で働く青年・萩原健太郎を好演。

 シリアスもコメディもこなし、二枚目半の普通の好青年も演じられるというのが、デビュー時から続く織田の魅力だが、『踊る』の青島には、これまで演じてきた全てのキャラクターの要素が込められていた。

 織田の魅力を語る上で欠かせないのは、『踊る』の第6話だ。

 麻薬密売の捜査をする過程で青島は、父親を殺害された過去を持つ柏木雪乃(水野美紀)と再会する。事件のショックで一時、口が聞けなくなった雪乃を青島は懸命にケアしていたが、ロサンゼルス留学時代の雪乃の元恋人・岩瀬修(布川敏和)が麻薬の売人だったため、彼女も関係者だと疑われて、任意同行させられる。取り調べで雪乃は、麻薬の売買とは無関係だと主張するが、警視庁から来た刑事たちに連れていかれそうになってしまう。

 そこで青島の表情は豹変し「柏木雪乃!」「やっぱ、お前、そういう女だったんだ」「ヤク中なんだろ、お前」といったひどい言葉を投げつける。怒った雪乃は青島をビンタ。気まずい沈黙が流れた後、青島は笑って「みなさん、見ましたね?」「職務質問中に暴行を受けました。公務執行妨害で君を逮捕する」と言って、雪乃を逮捕したのだ。

 青島が先に雪乃を逮捕してしまえば、起訴するまでの48時間は湾岸署で勾留でき、本庁が手を出すことはできない。その後、青島は48時間以内に岩瀬を逮捕しようと奔走するのだが、ルールに縛られていた青島がルールを逆手に取り、自分にとっての正義を貫こうとした『踊る』随一の名場面である。

 また、突然、雪乃を罵倒する青島の表情の変化は実に見事で、シリアスとコメディを同時にこなす織田にしかできない芝居だった。

 続く第7話。岩瀬とつながりのある女性の職場を知った青島は、営業マンの振りをしてその女性に会いに行く。偽名と嘘の商談目的を理由にしてスルスルと社内に入り、社員から女性の素行を聞き出していくさまは実に軽妙で、刑事というよりは詐欺師のようだであった。この6~7話で、青島のキャラクターは完成したといえるだろう。

 違法スレスレの捜査を飄々と行う一方で、事件の被害者に優しく寄り添う親しみやすさがあり、自分なりの正義を貫こうとする青島は、正義のヒーローでなくても、新しい時代のヒーローだったのだ。

 また、『踊る』はアニメやインターネットといった、当時はまだ社会の偏見が強かったオタク的なものを、当たり前の文化として受け止めている姿も印象的だ。当時視聴していて、自分と地続きの世界を生きている青年が、テレビの中にいると感じられた。この地続き感があったからこそ、『踊る』と織田は多くの視聴者に受け入れられたのだろう。

 現在、織田は54歳。近年はエリート弁護士を演じた『SUITS/スーツ』(2018年&20年、フジテレビ系)や、銀行の頭取を演じた『監査役 野崎修平』(20年、WOWOW)といった社会的立場の高いシリアスな役が続いており、青島のような親しみやすいキャラクターを演じる機会はなくなっている。昔と同じものを求めるつもりはないが、今の織田だからこそできる新しい庶民派ヒーローを、いつか演じてほしいものである。
(成馬零一)

『ザ・ノンフィクション』29歳、西船橋キャバクラ嬢の決断「夜の街で輝きたくて… ~闘う女たちの見る夢~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。5月22日の放送は「夜の街で輝きたくて… ~闘う女たちの見る夢~」。

あらすじ

 西船橋のキャバクラで働くMelty 輝(メルティー きら)29歳。番組スタッフが取材を始めた2021年6月は緊急事態宣言の真っ只中で、輝の月収は15万円まで落ち込んだという。ほかの事業をと、フランチャイズの歯のホワイトニングサロンを開くも順調とは言えない状況のようだ。

 輝は銚子市で育ち、学生時代はバレーボールに熱中、26歳から始めたキックボクシングは週6でジムに通う熱の入れようで、アマチュア大会への出場経験もある。高校卒業後に地元銚子のスナックで夜の仕事を始め、その後千葉、西船橋へと移る。

 かつては売れっ子だった輝だが、キャバクラでは世代交代も進み、29歳という年齢的な限界も感じている中、「ナイトクイーングランプリ」へエントリーする。これは、スナックやキャバクラなどで働く従業員のコンテストで、容姿だけでなく人としての魅力、個性、生き方も評価されるものだ。

 ナイトクイーングランプリを主催した一般社団法人 日本水商売協会の代表、甲賀香織自身もキャバクラ、クラブでの勤務経験がある元ナイトワーカーだ。夜の仕事はコロナ禍で叩かれやすいと話し、2020年4月、国のコロナ支援から飲食接待業を除外しないでほしいと自民党に直訴していた。

 ナイトクイーングランプリにエントリーしている21歳の胡蝶美蘭は、新宿歌舞伎町の人気店で働くキャバクラ嬢で、10万円超のシャンパンを次々と入れる常連客を多く持つ売れっ子だ。

 美蘭は19歳で結婚、その後離婚し、シングルマザーとして2歳の息子を育てている。息子は出勤前に職場近くの24時間託児所に預け出勤し、シングルマザーであることは隠していないと話す。

 エントリー総数120名から30人に絞られる予選を輝、美蘭ともに通過。決勝では、ほかのナイトワーカーたちがドレスアップした姿で出る中、輝はキックボクシングのウェア、グローブ姿で自己PRを行った。結果、美蘭はローズ部門ルーキークラスでグランプリ、輝は同部門レジェンドクラスの準グランプリを受賞する。

 21年12月、アマチュアキックボクシングの全国大会で輝は優勝。ナイトクイーングランプリの受賞で踏ん切りもついたのか、プロのキックボクサーへ転身を決意し、勤め先のキャバクラでは送別会が行われていた。

 『ザ・ノンフィクション』の持ち味の一つに、今回のようなキャバ嬢やホストの「ナイトワーカーもの」がある。ただ、20年春から続くコロナ禍で、それまで恒例だった「ホストもの」はめっきり放送されなくなっている。

 この2年で放送されたナイトワーカーものは、コロナ禍で全く人が来ない状況にあえぐ従業員や経営者、あるいは転職を志す人を追ったものだった。だが、今回は人が街に戻り始めている中の放送で、テーマもコロナ以外が題材とあって、かつての『ザ・ノンフィクション』らしい、実家に帰ったときのような懐かしい安心感があった。

『ザ・ノンフィクション』日本水商売協会は「何のため?」

 日本水商売協会は一般社団法人で、設立は2018年とコロナ前になる。協会のホームページを見たり、番組内での甲賀の発言を聞くと、ナイトワーカーの従業員たちのイメージ向上が目的なのだろうというのは察する。

 しかし、「同業者にさえその思いをわかってもらうのは簡単ではありません」とナレーションで伝えられた通り、甲賀が訪ねたホストクラブのオーナーは、「(日本水商売協会とは)何のために? って思いましたもんね」と不思議そうに話していた。

 これは、日本水商売協会が具体的にどんな活動をしているのかよくわからない、というのもあるように思う。

 以前、「水商売の女性が昼職を目指すためのセカンドキャリア支援」を行う団体の活動を別のドキュメント番組で見たことがある。この団体の場合は「誰に対し何をするか」が明確だったが、それに比べると、日本水商売協会はホームページを見ても、業界イメージの向上のためにどういった事業を行うのか、というところが漠然としているように見える。

 ただ、設立から間もない状況で「コロナ」という水商売業界全体を根底から揺るがすトピックがあり、訪問する店舗にCO2センサー(換気状況が良好か測定できる)を設置するなどコロナ対策にかかりきりで、事業展開を考えられなかったのかもしれない。

 コロナが落ち着いたあと、日本水商売協会はナイトクイーングランプリ以外にどのような活動を始めるのだろう。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「27歳 流しの歌姫 ~夢のステージに立ちたくて~」。夜の店に飛び込みで入って歌を歌い、客からチップをもらうという「流し」の生活を7年続けてきた27歳の歌手のあい。あいの夢は日本武道館でのワンマンライブというものだが……。

『ザ・ノンフィクション』ヤングケアラーとしての日々の終わり「NYフェスティバル2022受賞記念 ボクと父ちゃんの記憶 ~別れのあと 家族の再会~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。5月15日の放送は「NYフェスティバル2022受賞記念 ボクと父ちゃんの記憶 ~別れのあと 家族の再会~」。

あらすじ

 2021年10月に放送された同作と、家族の「その後」について伝える。昨年の放送内容は、国際メディアコンクール「ニューヨークフェスティバル」のドキュメンタリー・普遍的関心部門で銅賞を受賞した。

千葉県南東部、緑豊かな睦沢町で暮らす高校3年生の大介は、若年性アルツハイマー型認知症になった父親を日常的に介護している「ヤングケアラー」だ。

 大介の父親、佳秀はもともと東京で映像制作の仕事をしており、多忙な日々を送っていた。1999年、43歳で再婚したときから、大切な約束を忘れてしまうなど仕事でミスが出始めたという。

 2003年に大介が産まれるが、このころには車で出勤したのに、それを忘れ電車で帰ってくるなど日常生活にも影響が出始める。大介が2歳、佳秀が50歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断される。

 病気の進行を遅らせるため、一家は千葉に越して仕事を減らす。大介が幼いころは心身とも安定していた佳秀だったが、大介が中学校、大介の下の妹たちが小学校に上がるころから、症状は坂道を転がるように悪化していく。

 21年夏、取材を始めたころの佳秀は、会話がほぼ成り立たず、トイレも一人で行けないため日中はデイサービスに通っていた。機嫌のいいときはにこやかだが、唐突に腹を立てることもある。妻・京子が働いて一家を支えており、仕事で帰宅が遅くなるときは、大介が佳秀を寝かしつける様子も映されていた。

 京子は大介を介護の助け手にしていることに悩んでおり、佳秀を受け入れてくれる施設を探す。しかし、コロナ禍の状況であり、さらに、コロナがなくてもインフルエンザなどの感染症を防ぐため、希望する施設は11月から4月までは面会謝絶だという。

 一度、施設に入れたら、もう佳秀から家族の記憶は完全になくなってしまうだろうとためらいもあったようだが、京子は施設に入れることを決断する。

 京子の決断を聞いた大介は、「(佳秀には)入ってほしくはなかったけど、お母さんが限界だからね」と、便まみれになっていた佳秀を京子が介護していたことをスタッフに話す。

 21年夏、施設に行く当日、涙をこらえハンドルを握る京子と、父親を見つめる大介の横で、状況を把握できていないのであろう佳秀はただニコニコしていた。

 施設に預けてから半年以上がたった22年5月。佳秀の誕生日に家族はケーキを差し入れしようと施設を訪ねる。コロナ予防のため直接の面会はかなわなかったが、談話室のような場所にいる佳秀とガラスサッシ越しに再会ができた。ただ、佳秀が目の前にいる人々を家族と認識できたかどうかは、今一つわからない状況だった。

 今回に限らないが、近年の『ザ・ノンフィクション』は、映像に映る実際の会話や雰囲気をそっちのけにして、ナレーションが「美談」に誘導していると思うことがある。

 今回では、佳秀が入る介護施設に到着したシーンでの「誰も望まないのに、車はやっぱり父ちゃんが入る介護施設に到着」というナレーション。そして、番組最後「いつかまた(家族)一緒に暮らせる日を信じて」との言葉。

 すでに会話がままならず、おむつをしていても便まみれになってしまうことがある佳秀を施設に預けることで、正直、家族には「ほっとする」気持ちも、そしてそんな感情を持つことへの罪悪感もあるように想像する。

 子どもたち3人は、周囲の同級生たちと比べ「父親の世話をする」という壮絶な思春期を送ってきた。その日々への思いや、また、佳秀との悲喜こもごもの思い出だってあるだろう。

 ナレーションの全体は「施設に預けたくない、家族一緒に過ごしたい」というテイストでまとめられてたが、ナレーションがそう伝えるほどに、実際に映し出されている映像からは、もっと複雑な状況を感じざるを得なくなった。

 今作は国際的な賞を受賞したとあり、そうなるとこの美談調の方針が番組として強まるのかもしれない。『ザ・ノンフィクション』の持ち味は生々しさだと思うので、個人的には美談調ではないほうが好きだが、今の時代だとかつての表現は「侮辱的・差別的だ」と反発が起こることも考えられる。「美談調」は時代への対処なのかもしれない。

 今回の放送を見て、「自分の認知が危うくなったら、どうしてほしいのか」という意思を事前に伝えておくことの大切さについて考えた。「自分が死んだらどうしてほしいのか」よりも重要な意思表示だと思う。

 認知症はある日突然そうなるのではなく、徐々に進行していく病なのだから、症状が悪化したとき周囲にどうしてほしいか、佳秀が事前に意思表示しておく、あるいは家族が本人の意思を確認しておけばよかったのではないだろうか(残していたのかもしれないが、番組内では触れられていなかった)。

 自分の子どもたちの10代が、ヤングケアラーとして費やされる可能性について、病状が悪化する前の佳秀はどこまで自覚的だったのだろう。そして、このことについて夫婦でどこまで話し合えていたのだろうか。少なくとも子どもが負う責任ではないと思う。

 そしてこれは佳秀に限らず、私も含め多くの人に関わる話だ。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計のよると、20年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人いるという。

 その中で、「認知がさらに悪化したときに自分はどうありたいか」という“意志”を周囲に伝えている、伝えていた人はどのくらいいるのだろう。

 次週は『夜の街で輝きたくて… ~闘う女たちの見る夢~』。西船橋のキャバクラで働く29歳の輝(きら)は18歳からキャバクラ一筋。コロナ禍、若いキャバ嬢が台頭する中、輝はあるコンテストへの出場を決意する。