『ザ・ノンフィクション』聞く耳を持たない父の息子は……「話を聞いてくれる人 ~空っぽの僕が生きる意味~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。9月11日の放送は「話を聞いてくれる人 ~空っぽの僕が生きる意味~」。

あらすじ

 名古屋駅前で夜、2017年から「聞き屋」として、人の話を無償で聞いているディーン・カワウソこと水野怜恩。雨の日以外は聞き屋としての活動を続けており、2021年は300日以上名古屋駅前にいたという。

 聞き屋の客層は10~70代と多様だ。話を聞いてほしい人が相席状態になることも多く、客同士で話が盛り上がることもある。

 聞き屋の常連もいる。28歳のいおりは精神的な病を抱えており、ハイ状態になると買い物を止められなくなってしまう。食べるものにも事欠くこともあり、水野は別の客からもらったペットボトルのミルクティーをいおりに渡していた。

 水野自身は実家暮らしで、アルバイトを週一でしているものの生活を賄えるほどではなく、会社員時代の貯金を切り崩している。残高が100万円を切りそうになっている通帳も映されていた。

 水野は大学卒業後、大手パンメーカーに勤めるも、転勤辞令が出され退職。その後、旅先の横浜で別の聞き屋に出会い、地元名古屋で自身も聞き屋をしてみたところ、初めて人生でやりがいを感じたという。今後は占い師としての活動を模索しているようで、人気占い師の元を訪ねる様子も伝えられていた。

 水野の両親は息子の将来を心配していて、特に父親は息子に対し口うるさいところもあったようだ。母親はそんな夫(水野にしてみれば父親)に不満があるようで、「すごく(息子に対し)口出しするんですよ」「私も息子と同じ気持ちありますし」「そういう流れがあって『もういい』『口も聞きたくない』って」と番組スタッフに話していたが、その最中に父親が「もういい」と母親を制するシーンも映されていた。

 番組の最後で、常連のいおりは世話になっているお礼にと水野の名刺を作って手渡す。水野の聞き屋としての客は5,000人を超えたと伝えられていた。

『ザ・ノンフィクション』家族の話を聞かない父

 水野の父親は番組スタッフへの対応は丁寧だったが、「外面はいいものの、家族の話は聞かない」ように見え、また、母親は口数の多いマシンガントークタイプに見えた。

 水野の父親は家族に対し“聞く耳を持たないタイプ”にも見受けられたが、ただ、年代が上になるとこういった傾向のある男性は珍しくないようにも思う。

 そんな、話を聞かない父親の息子が聞き屋になる。「親の期待に応える」「親に反発し、別の道を行く」にしろ、やはり子どもの進路にとって、親の影響というのは大きいと思った。

 客の話を淡々と聞く水野は、よい聞き手と思われるが、「え?」と疑問を抱いたシーンが後半にあった。自身の将来について番組スタッフから聞かれた際のやりとりを抜粋する。

「(夢は)ジャニーズデビューとか、コヤッキースタジオ(都市伝説情報を発信しているYouTubeチャンネル)に入るとか、YouTuberですね」
「(それに対し何かしているか、というスタッフの問いに対し)何もしてないですよ、あくまで、それは、小学生の夢みたいなものですけど」

 別に水野はウケを狙って言った体ではない。水野は年齢を非公表としているが、大学卒業後メーカーで3年働き、2017年から聞き屋をはじめて5年とあり、見た目の雰囲気からも30歳くらいかとみられる。本当にジャニーズになりたい、というより、いわゆる世間的な「30にもなったら落ち着いて……」という風潮に反発したい気持ちの表れのように見えた。

 この強気さは、水野のおそらくアラサーという年齢によるところもあると思う。この若さで自分のやっていることが評価されているのなら、発言も強気になるだろう。水野は著書『名古屋で見かける聞き屋の謎』(マーキュリー出版)もあり、今回『ザ・ノンフィクション』から取材された、というのも自信につながったはずだ。

『ザ・ノンフィクション』30歳のころは見えなかった“年齢”という要素

 なお、「働かずに生きていく」の元祖的存在であり、シェアハウスのムーブメントを作った人でもあるphaについても過去にザ・ノンフィクションでは取り上げていたが、phaは40歳で11年運営してきたシェアハウスを解散している。

 解散の原因について「年齢的なものもあるかもしれないですね。若いころは劣悪な環境で暮らしてること自体楽しかったりするけれど、だんだんただなんかキツくなってくる。飽きてくるというかしんどくなってくるみたいな」と話していた。

 30歳のころはむしろ楽しめていたことが「中年の危機」を迎える40歳になると心境が変わってきて、きつくなってくる、というのは私自身42歳なのでよくわかる。ただこれは30歳のころにはわかりようもない感覚ではある。水野はどんな40歳になるのだろう。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「ボクと父ちゃんの記憶2022前編~母の涙と父のいない家~」。50歳の時に、若年性アルツハイマー型認知症と診断された「父ちゃん」。認知症が悪化し、施設に入ったあとの家族の1年を見つめる。

『ザ・ノンフィクション』箱根と京都、芸者の違い「母と娘の芸者物語 ~箱根で生きる女たち~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。8月28日の放送は「母と娘の芸者物語 ~箱根で生きる女たち~」。

あらすじ

 通常、国内外から年間2000万人が訪れる箱根には置屋が31軒あり、約150人の芸者が所属している。32歳の茶々は3代続く芸者の家系で、自宅は母の温味(あつみ)が経営する置屋「喜田見(きたみ)」(「喜」は「七」を三つ重ねた字が正式表記)を兼ねている。

 茶々は当初芸者になるつもりはなかったものの、特にやりたいこともなく、高校卒業後温味の勧めでなんとなく芸者になったと話すが、それから14年、今では踊りの稽古もつけており、自分もいずれ温味のように置屋を出し、箱根の街を盛り上げたいと話す。

 しかし、2020年4月に新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が出され、にぎわっていた箱根の街から人が消える。お座敷もなくなり、茶々は2カ月間全く仕事がなかったと話す。なお、頼みの補助金もいわゆる水商売は当初、対象外だったそうだ。

 緊急事態宣言が明けた同年7月、置屋の女将たちで構成される箱根湯本芸能組合(湯本見番)も街を盛り上げようと踊りのイベントを開くものの、人がまだ箱根に戻っておらず、なじみ客がひとり来ただけ、という状況だった。

 その後もGoToキャンペーンなどで人が少し戻ったかと思えば、またも緊急事態宣言が発令され、コロナの感染状況に翻弄される日々が続く。そんな状況で30人の芸者が箱根の街を去ったという。

 一方、この状況で飛び込んでくる新人もいる。別の置屋のるか(20歳)は茶々同様、母親のひさ芽が置屋を営んでいるが、当初は芸者になる気はなかったようだ。しかし語学留学先のアメリカで日本文化の良さを知り芸者になる決心をする。ただコロナでお座敷がなく、同年12月には小田原の土産店で働くるかの姿があった。

 出口の見えない状況が1年以上も続く中、21年9月、茶々は当初の目標であった置屋としての独立を決意する。茶々は女将である温味にもう少し芸者として貢献してから独立したいという思いがあったようだが、当の温味は茶々の決断をむしろ後押ししたようで「(現状に)負けてほしくない、やるとなればものすごくできる子だと信じているので」と太鼓判を押す。

 21年9月、茶々は新たな置屋を開き、かつて温味のもとで働いていた芸者、いち路が茶々のもとで働くことになる。箱根に客足も戻りつつある21年末、女将となった茶々を見て、温味は「茶々ちゃんも楽しいんじゃないですかね、今。それを見ている私も楽しいです」と笑っていた。

 少し前に『ザ・ノンフィクション』恒例シリーズとなる京都の「舞妓物語」が放送された。同じ芸者がテーマでありながら、京都回がずいぶん暗かったのに対し、この箱根回は明るい印象だった。

 ただ、今回の場合は土地柄以前に、芸者の置かれた「境遇の違い」がある。箱根の茶々とるかは、母親が芸者かつ置屋の女将をしている2世であるのに対し、京都の舞妓たちは、地方から舞妓に憧れ京都にやってきていた。この違いは大きいように思う。

 茶々もるかも幼少の頃から芸者を目指していたわけではなかったようだが、自宅が置屋で、その風景を見ながら育ったことで、仕事上の大変さや喜びをおのずと理解していたのだろう。

 理想と現実のギャップに「こんなはずでは」とあとから悩むことは、京都の舞妓たちよりは少なかったのではないかと思う。それが箱根の明るさにつながっているように見えた。

 京都の暗さ、箱根の明るさの背景には、こうした境遇の違いのほかに、芸者の就業形態の違いも多分にあるように思った。

 京都の場合、舞妓になるには年齢的な都合から中卒で飛び込まないといけない。一方、箱根の茶々もるかも高校を卒業してから、この世界に入ることを決めている。

 中卒か高卒か、の違いは大きいように思う。学歴もあるが、それ以前に15歳から18歳の頃は価値観が劇的に変貌していく期間といえるだろう。同じ年月でも、35歳から38歳までとは全く意味合いや重みが違うように感じる。

 もちろん、15歳で舞妓の道を選んだ少女にとって、それは当時全力の決断だっただろうが、その年齢で一生涯に関わる大きな決意をするのは、令和の現代社会においては早すぎるように思える。

 京都の舞妓が暗い印象を抱かせる背景には「退路を断つ決断を早くにした」という点が関係していると思う。「舞妓を目指さなければ今頃……」と、選ばなかった道を想像することもあるだろう。

 高校に進学したところで、とりたてて大したことのない日常が過ぎていくのかもしれない。しかし、その「とりたてて大したことのない日常」を過ごしたか過ごしていないかの違いは、その年頃にとって非常に大きいと思う。

 京都と箱根の比較で話が終始したが、温味・茶々親子はコロナの大変な中でもよく笑い、気っ風がよくて、爽やかな親子だった。ひさ芽・るか親子も同じで、今回『ザ・ノンフィクション』としてはレア中のレアである「親子の仲がいい」回となっていた。

『ザ・ノンフィクション』28歳、自分探しの旅の結末「彼女が旅に出る理由 ~すれ違う母と娘の行方~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。8月21日の放送は「彼女が旅に出る理由 ~すれ違う母と娘の行方~」。

あらすじ

 28歳のミサトは、21歳で有名老舗ホテルに就職したものの2年で退職。その後、広告代理店2社に勤めるも会社勤めが合わなかったようで、27歳から車で全国を回る旅の日々を送っている。

 旅先で出会った友人たちのもとを訪ねながら、お金のかからない暮らしを模索しており、「今まで飼い慣らされてきた、社会に。自分の意志で行動してると思ってもできていなくて、それに気づいていなくて、それに気づいたんですよ」と、旅の手応えを話す。

 一方、ミサトの母親は「今までさ、お金のかかるような暮らしをしてたじゃない? 身の丈よりいいものを欲しがってたしさ。急にその反対になったとしても理解できないのよ、お母さんは」と娘の180度の心変わりに戸惑う。

 ミサトは、帰省時に近所の目を気にする母親から庭を散歩するな、と言われたことも面白くないようだった。一方で、旅に出ている間もミサトの携帯電話代は母親が支払っており、実家からまた旅に出る際は小遣いをもらっていた。

 当初は、お金のかからない生活を送ることに強気だったミサトも、貯金が減っていくのに伴い威勢もなくなってくる。冬の大阪では一日一食で、エンジンをかけられない駐車場で毛布にくるまる車中泊の生活を送っていた。そんな暮らしの中でミサトは、Twitterで「1年間無一文になって天から地へと落ちて?お金の無い生活を味わう実験したけど、それなりに大変でしたマジで。」と発信している。

 生活のため大分県のネギ農家で働くことにしたミサトだが、ミサトの母親は住む予定の古民家の窓が壊れているといった話を聞いて心配する。その言葉にミサトは、「自分の人生を生きてないから他人に干渉したくなるんだよ。ウワサ話したりとか他人の目気にして生きたりとか」と突っぱねる。

 大分での生活をスタートさせたミサトは、番組スタッフに「一番大切にしなきゃいけない人を大切にできていないので、大切にできたらいいなと思うんですけど、なかなか……」と、おそらく母親への思いを話す。

 1年2カ月の旅を経て、ようやく定住したかに思えた大分だったが、番組の最後でミサトが体調を崩して農家の仕事を辞めたとナレーションだけで伝えられていた。

『ザ・ノンフィクション』自然派の若者、話す内容の特徴とは

 番組スタッフがミサトとその母に出会ったのは、以前に放送された非電化工房回の撮影がきっかけだったいう。

 実際、今回の放送で映った自然派の若者は、『ザ・ノンフィクション』らしい人材の宝庫に見えた。番組内のミサトやミサトが会った人たちの発言を抜粋したい。

「生きる意味とかみんなわからないまま生きてて、私は最近それにやっと気づくことができて」(ミサト)

「俺から見ても同年代の若者見てると『もうちょっとちゃんとしろよ』って思うし」
「別にお金はどうでもいいんだよね。1万円札あるじゃん、あのことを『お金』と呼ぶの超オモロイよね、紙じゃん、ただの」(ミサトが訪れたエコビレッジにいた若者)

 本人たちは、自らの心の発露に任せて口にしているのだろうが、その発言はどこかで習ったのかと思うくらい、共通点があるように思う。たとえば、この2点だ。

・働くこと、現代社会、同世代の若者などをディスる
・周りの人間とは異なり、自分たちはわかっていて意識が高いという目線

 彼らの言葉は、良くも悪くも特別なものではなく、若者が持ちがちな“万能感”に加えて、“自然派”という足場を得たことで口をついて出たものだろう。

 これらの若者は5年後どうなっているのだろう。それこそミサトが憧れ涙した、ヒッピーからアップルを興したスティーブ・ジョブズのようなスターとなるのか、自分のこの発言を黒歴史として恥ずかしがるのか、中高年になっても変わらず周囲をディスっているのか。

『ザ・ノンフィクション』“生活”が苦手な人々

 ミサトは幼少期のころ「不思議な子だね」と周囲から言われ、先生からは「時と場(を選びなさい)」と注意されていたと話し、KYだったと幼少期を振り返る。また、大人になってからは、職場を転々としている。

 そんなミサトも、ようやく居場所を得た自然派の世界で万能感に酔いしれていたものの、金という現実が追いかけてくる。定住しようとした大分のネギ農家も辞めてしまったという。

 学校や職場で日々を送る――ミサトはそんな一般的な“生活”が苦手なのだろう。『ザ・ノンフィクション』を見ていると、同じように社会生活がかなり苦手そうな人がよく出てくる。ただでさえ「働くこと」は楽ではないが、日々を過ごすことが苦手な人にとっては働くことのハードルはますます高いものになるだろう。

 番組では元タレント・坂口杏里を取り上げた回もあったが、坂口はミサト以上に日々の生活が苦手そうだった。人生を年表にすると、短期間で何もそこまで、と思うほどイベントが目白押しで、周囲にしてみたら地に足がついておらず、極端で、行き当たりばったりで、反省がないように見える。それはミサトも同じで、しかし本人にしてみれば、その一つひとつが人生をより良くしていきたいという、誠実で真面目な決断の積み重ねなのだろう。その決断と結果のズレは気の毒に思う。

 次週は「母と娘の芸者物語 ~箱根で生きる女たち~」。箱根芸者の伝統もコロナを前に岐路を迎え……。

『ザ・ノンフィクション』暴力を振るい介護施設から出禁に……「ありのままでいいじゃない ~いしいさん家の人々~後編」 

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。8月7日の放送は「ありのままでいいじゃない ~いしいさん家の人々~後編」。

あらすじ

 介護業界でも異色の施設と呼ばれる、千葉県の宅幼老所「いしいさん家」。認知症や統合失調症など、暴力・暴言といった問題行動を理由に他施設から「お断り」された人たちが集まっている。

 「いしいさん家」を運営する石井英寿は大手介護企業に就職するも、効率重視の施設運営に違和感を覚え、いしいさん家を16年前に立ち上げる。

 石井は「暴言・暴力とか、唾を吐いたりとか、そういった人たちを向精神薬とか、薬で抑えつけられちゃっている人とか、縛られている人も見てきたので、いっぱい。80~90歳でそんな人生の最後でいいのか」「(薬を)抜いちゃおうよ、『ありのままのその人でいいでしょ』というのが根本にあって」と話す。

 いしいさん家ではスタッフと利用者はほぼ同数と、手厚い介護をしているが、「ありのまま」を受け入れる施設スタッフの苦労は相当なもので、スタッフの手には生傷が絶えない。

 デイサービスでいしいさん家を利用する、46歳の2児の父親で統合失調症のヤマピーは、普段は穏やかだが、ふとしたことで態度が一変、激昂する性質だ。ヤマピーは医師である父親からの暴力、暴言がひどかったといい、事あるごとにその話をスタッフに延々とする。ヤマピーの“もっと話を聞いてほしい”という不満は日に日に強くなっていき、それをたしなめたスタッフの福田に対し、アザが残るほどの暴力を振るってしまう。

 福田をはじめ5人のスタッフがいしいさん家から去り、石井が月に20日夜勤を行う過酷な勤務体制になる。ヤマピーはいしいさん家から出禁になり、自宅でも外でも大暴れして、警察官も振り切ってしまうような有様で、妻に家を追い出され、実家に身を寄せている。

 石井は、妻であり共に施設を運営する香子にも、外出の目的を伝えないまま姿を消すことがある。そのため、スタッフは石井ではなく香子へ不満を伝えている状況で、こうした声を聞こうとしない夫について、「彼は天狗になっていた。『威張らずいこうね』『おごらずいこうね』ということだけ伝えた」と香子は話す。

 そこで、石井は全職員を集めたミーティングをあえて外部施設を借りて行う。会は和やかな雰囲気で進んだものの、その最後に石井はヤマピーの再受け入れを提案し、ミーティング会場はどよめく。石井、もしくは妻の香子がいるときだけヤマピーを受け入れ、スタッフに手を出したら支援をやめるという前提で受け入れることになったものの、スタッフの一人が思いもかけない提案をする。

 それは、もとは介護職だったヤマピーに、施設利用者としてではなくボランティアとしていしいさん家に参画してもらう、というものだった。その意外すぎる提案にヤマピー自身も困惑気味で、当初は何もせず施設の片隅に座っていたが、番組の最後では介助の手伝いをしているシーンも映されていた。

 いしいさん家は代表・石井の信念に基づいて設立され、また石井自身が率先して働いている状況だ。それゆえ、ほかの職員が何か思いや不満があっても自然と「言わせない」雰囲気が出来上がっていたのだと思う。

 いしいさん家を辞めた福田は、石井について「最終的には石井さんの考えに基づいている。一切誰にも手を出させない、自分のやり方を貫く」「職員がどれだけの疲弊と工夫をして、それを石井さんは『わかっている』と言うけど……」と胸中を話していた。

 結局は、自分のしたいようにしたい石井は、典型的なワンマン経営者に見えた。事業を軌道に乗せていくようなときは、ワンマンならではのパワフルさが必要なようにも思う。信念もパワーもない人は、そもそも経営者の器ではないだろう。

 人を率いる立場で成功している人には「他人の意見なんて聞かない」という、ワンマン的な、我の強さを感じさせる人が少なからずいて、石井もそのタイプに見えた。ただワンマン経営者は、順調なときはいいが、逆風には弱いのではないか。ワンマンゆえに、経営者自身が「逆風だ」と感じたとき、組織はピンチに陥ってしまうように思う。

 今回、石井はスタッフが5人離脱する大逆風を経験し、周りの声に耳を傾けるようになったかに見えた。ところが、まさかのヤマピー再受け入れを自分の意思で通しており、いしいさん家は良くも悪くも、 やはり石井の影響が非常に強い組織に見えた。

 一方、出禁が解かれ、いしいさん家に戻ったヤマピーは、顔にモザイクがかかっていても「ウキウキしている」のが伝わる声色だった。しかし、ケアされる側でなく、「ケアする側に回る」というまさかの条件に、当初は文字通り頭を抱えていた。

番組の最後では介助の手伝いをしようとする様子が映っていたが、ヤマピーは『ザ・ノンフィクション』の前後編だけでも十二分にやらかしており、素直に「めでたしめでたし」とはいかなそうな感じもする。

 ただ、この「ケアされる側だと思っていた人をケアする側に回す」という逆転の発想には、希望を感じた。ヤマピーを見て、「私はかわいそうな被害者で、だから周囲は自分をケアしてほしい。自分の話を聞いてほしい」という自己憐憫(じこれんびん)の感情を四六時中抱えているのは、非常に生きづらそうだと思ったし、終わりがないようにも思った。

 終わりなき自己憐憫から目をそらさせる、という意味でも、ケアされる人をケアする人にする、ということへの可能性に期待する。その後の、いしいさん家も見たい。

『バチェロレッテ2』ep.10、視聴者パニックの“結末”も――尾崎美紀さんの説明が腑に落ちたワケ

 7月7日から配信開始となった、婚活サバイバル番組『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン2(Amazon Prime Video)。同番組は、社会的成功を収めた独身女性(バチェロレッテ)の“真実の愛”を獲得すべく、男性参加者たちがゴージャスなデートを通して自身をアピールしながら、バトルを繰り広げるという恋愛リアリティーショー。

 今回のバチェロレッテは、コスメブランドを運営する「DINETTE 株式会社」の代表取締役・尾崎美紀さん。“真実の愛”を探す旅を終えた尾崎さんと男性メンバーたちが一堂に会したエピソード10を、リアリティーショーウォッチャーがレビューする。

※本記事は『バチェロレッテ2』エピソード10のネタバレを含みます

『バチェロレッテ2』ep.10、まさかの脱落の理由が明らかに

 エピソード9で最終回を迎え、エピソード10ではスペシャルトークショー「アフターファイナルローズ~私が鎧を脱いだ理由~」が配信された。参加した全男性メンバーと尾崎さんがそろい、ファイナルローズを贈られ最後の1人に選ばれた佐藤マクファーレン優樹さん(28歳、バスケットボール選手)、最後に脱落した長谷川惠一さん(36歳、バスケットボール選手)も登場した。

 エピソード9で大半の視聴者の予想に反し、マクファーレンさんを選んだ尾崎さん。「え! なんで? なにがあった!?」とパニックに陥ったままの視聴者も多かったのでは。

 今回、MCのナインティナイン、SHELLYから「どうして長谷川さんじゃなかったのか?」と聞かれた尾崎さんは、「ご両親にお会いしたときに『今までの惠一とほんとに違うね』と言ってらっしゃって。変わってくれたのがすごいうれしいけど、その前の部分は知らないから、もし付き合った後に『違ったな』ってなるのも嫌だった」と告白。「そこまで信じきるまでには時間が足りなかった」と涙を浮かべながら語った。

 理由を聞くと、一理ある。尾崎さんが「変わる前の長谷川さんは具体的にどんな人だったのか」と掘り下げて質問すればよかったのでは……と思わないでもないが、そうする時間はなかったということのようだ。

 ファイナルローズを渡すギリギリまで、どちらにするか迷っていたという尾崎さん。「一番自然体でいられたのは惠一だったかなと、ずっと思ってます。ジャグジーのとき(ep.4)は惠一が一番好きで、惠一にしようって決めてました」と語るなど、未練も感じさせる言葉も出て、視聴者をヤキモキさせた。

 その後、ファイナルローズに選ばれたマクファーレンさんも登場。本編のときより髪が短くなって、スッキリさわやかな印象に。「(尾崎さんから)毎週毎週、『髪短いほうがいいな』とか、『ヒゲないほうがいいな』って言われて……」と、すっかり尾崎さん好みに改造されている様子で微笑ましい。

 本編ではグイグイ気持ちを伝える強気キャラだったが、今はすっかり、尾崎さんの尻に敷かれていて、「パワーバランス的に美紀、ワン(犬)ズ、僕です」とのこと。エピソード9ではかなり警戒されていた尾崎さんの愛犬・ぷにちゃんも「慣れてきた」そうで、仲は深まっているようだ。

 尾崎さんは、マクファーレンさんを選んだ決め手について、「初対面から旅が終わるまでずっと気持ちを伝え続けてくれた。最初は絶対ウソだって思って、薄く聞こえていたんですけど、量や行動でほんとだなって伝えられるたびに思えた。お母様とお話したときも『優樹は絶対にウソをつかない。好きなことにまっすぐ』ってお話しされていて、ほんとなんだろうなって思えた」と語った。

 長谷川さんを落とした理由も、マクファーレンさんを選んだ理由も、それぞれの家族の言葉にあったとエピソード10で理解でき、やっとこの結末が腑に落ちた。

 本編では、盛り上げ役として時にヒール扱いの場面もあったマクファーレンさんだが、実際には男性メンバーに慕われていることも判明。

 マクファーレンさんにストールンローズでデートのチャンスを奪われた中道理央也さん(24歳、パーソナルトレーナー)は、「シンプルに言葉として伝えるっているのは、なかなかできることじゃないので、マクファーはかっこいい」と称えた。

 また、意外だったのは、マクファーレンさんと一番仲が良かったというメンバーが、マクファーレンさんと対極なふんわりキャラの“クゥちゃん”こと美留町恭兵さん(36歳、美容師・画家)だったこと。

 美留町さんが、「マクファーとは一番、毎晩話していたんで。ちょっと1人になりたいときもあって、『ごめん、今日は1人になりたいから部屋に戻って』みたいに、ちょっと強めに言っちゃったときがあったんです。次の日『クゥちゃん、部屋に戻ってとか言うんだもん』ってすねてて。かわいいとこあるなって」と語ったとき、個人的にはエピソード10にして初めて涙がこぼれた。

『バチェロレッテ2』は、盛り上がりに欠けたのか!?

 今シーズンの男性陣は、尾崎さんがよく言っていたように「温かい人」がそろっていた。男性陣のマクファーレンさんへの祝福を見ても、それは伝わってくる。その分、派手な展開には欠け、マクファーレンさんがヒール役と盛り上げ役、さらにはファイナルローズを全部担った部分があるものの、男性陣の友情が育まれていく様子や、マクファーレンさんの裏表ないまっすぐな性格が徐々にわかっていく過程を、心穏やかに見ることができた。

 トーク回を除くと、『バチェロレッテ2』は実質8エピソード。あまりにも少ない! もっと尾崎さんの鎧を脱がしてくれ! 男性陣の面白い部分をもっと見せてくれ! と感じつつも、こういう誰も傷つけないリアリティー番組もいいかもしれない……と思えたシーズンだった。『バチェロレッテ3』も期待しています!

『ザ・ノンフィクション』暴言・暴力も「ありのまま」の異色介護「ありのままでいいじゃない ~いしいさん家の人々~前編」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月31日の放送は「ありのままでいいじゃない ~いしいさん家の人々~前編」。

あらすじ

 介護業界でも異色の施設と呼ばれる、千葉県の宅幼老所「いしいさん家」。認知症や統合失調症など、暴力・暴言といった問題行動を理由に他施設から「お断り」された人たちが集まっている。

 「いしいさん家」を運営する石井英寿は高校時代のボランティア活動をきっかけに介護の仕事に触れ、大学卒業後大手介護企業に就職するも、午前中50人の入居者を入浴させるなどの効率重視の施設運営に違和感を覚え、いしいさん家を16年前に立ち上げる。

 石井は「暴言・暴力とか、唾を吐いたりとか、そういった人たちを向精神薬とか、薬で抑えつけられちゃっている人とか、縛られている人も見てきたので、いっぱい。80~90歳でそんな人生の最後でいいのか」「(薬を)抜いちゃおうよ、『ありのままのその人でいいでしょ』というのが根本にあって」と話す。

 スタッフと利用者はほぼ同数と、手厚い介護をしているが、「ありのまま」を受け入れる施設スタッフの苦労は相当なもので、スタッフの手には生傷が絶えない。また、会計士からは経費をコントロールするよう言われるが、スタッフの人件費だけは削るわけにはいかない。

 番組スタッフのカメラが気に食わなかった様子の70代の認知症患者・タマエは「バカ野郎」が口癖で、デイサービスでいしいさん家を利用している。タマエの扱いを心得たスタッフは機嫌の悪いタマエを車に入れる。ドライブと歌が好きなタマエは、車に乗って音楽を流すと先ほどの不機嫌からきれいさっぱり、上機嫌な様子になっていた。

 夜はタマエの夫、カズオがタマエを介護している。少し目を離すとタマエは徘徊してしまうようで、慣れた様子でタマエを車で探していた。カズオはタマエを特別養護老人ホームに入れなかった理由として、特養だと外に出させず、食事が終わったらすぐ睡眠薬を飲ませて、という生活がかわいそうだと思って、と話す。

 デイサービスの利用者、46歳の2児の父親で統合失調症のヤマピーは、普段はピアノ演奏で周りを楽しませるほど穏やかだが、ふとしたことで態度が一変、激昂してしまう。ヤマピーは医師である父親からの暴力、暴言がひどかったようで、自尊心を傷つけられたそうだが、事あるごとにその話をスタッフに延々とする。

 家庭でも、隣人があいさつしてくれないと妻に不満をこぼす。家でも大声で騒ぎ、パジャマ姿でバットを持って外に出たときには、警察を呼んで大変だったと、子どもが話していた。

 ヤマピーの「もっと話を聞いてほしい」という不満は日に日に強くなっていき、金額はいくらでもいいから自分専用の専属スタッフをつけてほしいと施設側に要求。発言がエスカレートしていくヤマピーをたしなめていたスタッフの福田は、「(ヤマピーが)ケガをさせなきゃいいなと思う、誰かにね」と話す。

 しかしその不安は的中してしまい、福田自身がヤマピーからアザが残るほどの暴力を振るわれる。番組の最後では福田が石井に不満を伝えるシーンが放送されていた。

 関係者以外にとっては「見なかったこと」になりがちな、認知症や精神障害などの患者とそれを支える人たちにスポットを当て、それら人々の行動を映すだけでなく、その人の歩んできた来歴や家族の状況、支える介護スタッフたちの貢献や苦労も丁寧に追っている良回だった。

 そんな良回だったものの、一点よくわからなかったのが、番組最後の石井と福田の話し合いだ。番組の構成的には、ヤマピーから上腕にアザが出るほどの暴力を振るわれ、福田が石井に話し合いの場を求めている、という流れだったので、福田がヤマピーからの暴力でいろいろ嫌になってしまったのか、と思われた(その気持ちはとてもよくわかる)。

 しかし、そこでの福田の意見は断片的に紹介されており、「今までの理念と反する方向に行ってるってみんなが言っていて」「前の理念と違うのであれば私たちは(スタッフは)辞めなきゃいけないのか」という意見もあった。これら発言への石井の言葉は一切取り上げられず、ただ福田の意見だけで終わっていた。「前の理念」とは何だったのか。これは後編で明らかになるのだろうか。

『ザ・ノンフィクション』介護業界から見た問題は?

 また、個人的には介護業界の人が今回の放送をどう見るか知りたい。番組を見る限り、いしいさん家側が介護業界では異色、という伝えられ方だったが、「ノーマル」側の介護業界の人は、いしいさん家側にどのような問題を感じ取るのだろう。

 昼の情報番組のトップニュースが「介護施設のとんでもない実態、身体拘束される入居者たち!」といった内容だったことがあった。暴れるから、対処として縛り付けているのだろうとその時も思ったし、今回番組で、生傷の絶えないスタッフの手を見て、 やむを得ず縛り付けているケースもあるのだろうと思った。

 しかし、よく実態を知らない人間が一端だけをとらえて大騒ぎをすると、物事の本質を見誤る。介護業界に携わる人、精神医療に携わる人の、今回の番組の感想を知りたい。

 次週は今週の続編。石井と福田の決断とは。

『バチェロレッテ2』ep.9、尾崎美紀さんが最後に選んだ男性は? 意外な結末に視聴者がひっくり返った

 7月7日から配信開始となった、婚活サバイバル番組『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン2(Amazon Prime Video)。同番組は、社会的成功を収めた独身女性(バチェロレッテ)の“真実の愛”を獲得すべく、男性参加者たちがゴージャスなデートを通して自身をアピールしながら、バトルを繰り広げるという恋愛リアリティーショー。

 今回のバチェロレッテは、コスメブランドを運営する「DINETTE 株式会社」の代表取締役・尾崎美紀さん。最後のローズセレモニーが行われ、尾崎さんの“運命の相手”がわかったエピソード9を、リアリティーショーウォッチャーがレビューする。

※本記事は『バチェロレッテ2』エピソード9のネタバレを含みます

『バチェロレッテ2』ep.9、尾崎美紀さん母のするどい質問

 ついに最後の1人が決まるエピソード9。残っている佐藤マクファーレン優樹さん(28歳、バスケットボール選手)、長谷川惠一さん(36歳、バスケットボール選手)の2人が、それぞれ尾崎さんの母親と対面した。

 なんとも上品な雰囲気のお母様。事前に「やはり、自分自身も家族も心が豊かになれるような経済力もあってほしい」と語っていたように、男性の経済面を心配している様子。長谷川さんに「本業は?」「スポーツはいくつまでやられる? そのあとは?」、マクファーレンさんに「引退後はどうされる?」など、するどい質問を投げかけた。尾崎さんが紅茶を入れる手がガタガタ震えるなど緊張感があった。

 別れ際、長谷川さんには「お元気で」、マクファーレンさんには「さようなら」と言っていたお母様。その使い分けに、何か意味は込められていたのだろうか。

『バチェロレッテ2』ep.9、尾崎さんの愛犬に嫌われるマクファーレンさん

 マクファーレンさんとの最後のデートは、それぞれの愛犬を交えた公園デートからスタート。「4人全員が楽しめるデートになったらいいな」と挑んだマクファーレンさんだったが、尾崎さんの愛犬・ぷにちゃんは彼を警戒。マクファーレンさんが抱っこしようとすると「グルルル」と唸って全力で拒否し、視線も合わせようとしない。「大丈夫、時間かければいいんだよ。心配しないで」と前向きに語るマクファーレンさんだが、少し悲しそうな表情。今作で唯一見た、マクファーレンさんの弱気な顔だった。

 その後、尾崎さんが宿泊しているホテルへ。そこで尾崎さんは、中学時代にいじめられ、円形脱毛症になった時期があると打ち明けた。「そのとき家族が悲しんでる姿を見て、あんまりみんなに心配かけたくないなと思って、強くいなきゃなと思って今まで来た」とのこと。

 この旅でのテーマを「鎧を脱ぐ」と言っていた尾崎さん。鎧は経営者になってからでなく、中学時代からまとっていたようだ。マクファーレンさんは「いいんだよ弱くても。何があっても味方でいるし、誰よりもそばで誰よりも愛する」と受け止めていた。

 最後はホテルのロビーにあったピアノで「エリーゼのために」を弾いてみせたマクファーレンさん。尾崎さんは腕組みをして聞き、「おお上手~」「すごいじゃん」とピアノの先生的コメントだったが、果たして心に届いたのだろうか。

 長谷川さんとのデートは、パーソナルトレーニングと、おにぎり作り。終始、和やかな雰囲気で、尾崎さんが自然体で楽しんでいることが伝わってくる。特におにぎり作りの様子は、すでに新婚の仲良し夫婦のよう。

 最後は、長谷川さんが旅の間つけていた日記を尾崎さんに見せ、本気度をアピール。さらに旅の間、尾崎さんへのメッセージを書き加えてきたバスケットボールに「Will you marry me?」と書いて渡し、「美紀も弱さを俺には見せてほしい」と伝えた。

『バチェロレッテ2』ep.9、ラストローズの意外な結末

 最後のローズセレモニーは、東京スカイツリーで行われた。発表の直前、男性2人の前から一度立ち去り、焦らす演出をしてみせた尾崎さん。ラストローズを渡したのは、マクファーレンさんだった。

 長谷川さんと過ごしているとき、尾崎さんが終始リラックスしていたことから、SNSでは、長谷川さんを選ぶと予想する人が大半だった。そんな中での、この意外すぎる結末に視聴者は皆ひっくり返ったようだが、“尾崎さんと出会って変われた自分”を主にアピールした長谷川さんと、“とにかく尾崎さんを愛している!”とアピールしたマクファーレンさん……尾崎さんが求めていたのは、無償の一貫した愛をくれる存在だったのかもしれない。

 尾崎さんはマクファーレンさんを選んだ理由について、「いつも気づいたらそばにいてくれて、たくさん愛を伝えてくれた。人を信じるのっていいなって久しぶりに思えたし、一緒にいて安心する」と語った。「鎧を脱ぐ」というテーマにこだわってきた尾崎さん。マクファーレンさんの裏表ないまっすぐな性格と、ストレートな愛の言葉のシャワーは、尾崎さんがこれから安心して鎧を脱ぐために必要なものだったのかも。

 振り返れば、エピソード1からファーストインプレッションローズをゲットしていたマクファーレンさん。「人生はゴールのない短距離走だ」が人生のモットーだと言っていた通り、常に全力疾走で最初から最後まで番組を盛り上げた立役者だった。どうぞお幸せに!

『ザ・ノンフィクション』親への禍根とゴミ屋敷「片付けられない部屋 ~ゴミの中に埋もれた思い出~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月24日の放送は「片付けられない部屋 ~ゴミの中に埋もれた思い出~」。

あらすじ

 26歳のみずきが暮らす都内の家賃3万8,000円のワンルームは、膝の高さほどのゴミであふれている。牛乳パックや食品の容器、ペットボトル。茶碗も洗わず使い、食卓にあるグラスはまだらのような模様がついているが、使ったまま放置して生えたカビのためだ。

 そのような生活でもみずきは洋服の洗濯だけは欠かさず、洗濯機置き場のない部屋ながら、小型の洗濯機を無理矢理設置している。部屋に並ぶ服はフリル、リボンなどがあしらわれたパステルカラーのソフトロリータ系だ。

 みずきは、東京大学の研究者であった両親が学生のときに、長男として生まれた。母について「私がいるせいで父と結婚する羽目になった」「ことあるごとに『私(みずき)の面倒をみたくない』みたいにヒステリーを起こすというか、泣き叫んでいたことがよくあったんですよ。嫌だったんだろうな、邪魔だったんだろうな、人生において私が」と過酷な幼少期を話す。友達と遊ぶことも許されず、勉強漬けの生活だったようだ。

 中学生になり両親は離婚、2014年、みずきは現役で東京大学に合格し、研究員を目指すも、このころから自分の容姿に違和感を抱くようになる。鏡も見られなくなるような生活は、女性用の服を着ることで心が落ち着き、それ以来、みずきは女装し生活を送っている。

 その後、大学院まで進んだが中退。女性服への思い入れから、みずきは現在10代に人気のアパレルブランドで働いている。会社の社長は、みずきのように女性の服を着たい男性も少なくないとのことで、「会社としてもリンクするところがある」とみずきを雇った理由を話す。

 一方で、母親からは「公務員を目指すと約束したはずです」「嘘だったんですね」「間違っていたのかもしれないけれど、そう思って教育には糸目をつけなかったつもりでした(みずきを)不幸にしようと思ったわけではなかったです」「心底がっかりしました」とLINEが届き、音信不通の状態のようだ。みずきは人とのつながりに不安を抱えており、それがモノをため込むゴミ屋敷の原因になっているのかもしれない。

 そのような中で、友人のみくも手伝い、みずきは部屋の片づけを始める。地層のように積まれたごみからは、潰れた黒いランドセルや、みずきが以前付き合っていた女性が残したヘアケア用品などが発掘される。

 その女性とはSNSで知り合い、交際後は文通を中心にやりとりしていたものの、一方的に別れを告げられてしまったようだ。みずきは、その女性に2年越しに思いをつづって投函するも、返事は来なかったと伝えられた。

 ごみの地層からは、みずきが5歳のころの小さな手形も出てきて、そこには記憶になかった母親からの優しい言葉が書かれた手紙が添えられていた。幼いみずきの成長写真や家族写真が載ったアルバムも発掘され、「大事にされていたときもあったんだろうな。僕の存在がしんどいものだったのは間違いないが、かわいがられてはいた。(母親にとって)もっとどうでもいいものだと思っていた。そうでもないのかな」とみずきは話す。

 その後、みずきの部屋は片付いた状態が続き、社長は会社が主催するファッションショーのモデルにみずきを抜てきする。

 以前も『ザ・ノンフィクション』では、医学部に入れようとする親に育てられ、医学部に入ったあとは燃え尽きたようになってしまった青年が出てきた。教育虐待のようなことをされた自分の境遇をブログでつづる29歳の男性で、みずきと境遇が似ていたと思う。

 その29歳の青年も、26歳のみずきも、現在の心を占める筆頭の存在が「(自分へ関心を向けてくれなかった)親」に見えた。20代という貴重な時期に、親に対するモヤモヤ、イライラが心の大部分を占めている状況はとてももったいないように思う。かといって、親を忘れて幸せに生きろ、というのも、できるならすでにやっているはずだ。自分で折り合いをつけない限り、先へ進むことはできないのだろう。

 心の大半に「親」が居座っていると、今の生活に気が回らなくなっていく支障もあると思う。29歳の青年は居候生活をしていたが、彼女が妊娠し、どう見ても居候のままでは今後暮らしていけない状況でも、家を出る決断を下せずにいた。一方、みずきは部屋中にゴミが堆積していて、友人・みくが明らかにゴミだと判断して捨てているものすら気になり、確認せずにはいられないようだった。

 親との間に残った禍根は、その子どもの未来や現在に、さまざまな影響を玉突き事故のように起こしているように見える。しかし、彼らの親が改心するとも思いにくく、また、万が一謝られたとしても、それで十数年来の禍根が水に流せるものなのだろうか、とも思う。親へのわだかまりを残し生きる20代の二人は、10年後、どんな30代になっているのだろう。

 親との間には溝があるみずきだが、部屋の片づけを手伝ってくれるみくがおり、勤務先の社長も女性服を着たい男性客の気持ちを知りたいという思いでみずきを採用するなど、「職場の社長」と「友人」という、ピンポイントの人間関係はむしろ恵まれているようにも見えた。

 一方で、みずきは会社の同僚とは一緒にご飯を食べることもなく、「誘われ待ち」な状況のようだ。番組を見た限りだが、みずきの人間関係は「極めて薄い(同僚たち)」か、もしくは、「かなり濃い(みく、社長、親、別れた彼女)」の2択のようにも見えた。

 みずきは日常的に女装をしているので、人付き合いは、そんな自分をさらす覚悟とワンセットになりがちで、おのずと濃いものになるのだろう。

 一方で、『ザ・ノンフィクション』を見ていると、重すぎない、寄りかかりすぎない「ちょっとした、ほんのりとした、ほのかな人間関係」が結構、人を救っていると思うことがある。腹を割って話すディープな関係だけが人間関係ではないし、ディープであればあるほど相手へ期待も増え、それゆえに失望しやすいところもある。

 昨日見たテレビやスターバックスの新作など、ほど良い距離で他愛もない世間話ができる人がみずきに増えればいいなと思う。

 次回は「ありのままでいいじゃない ~いしいさん家の人々~前編」。千葉県の「いしいさん家」は、認知症や統合失調症などの患者を預かる介護施設。多くの患者は暴力・暴言といった問題行動が激しく、ほかの施設からお断りされた人たちだ。スタッフの我慢も限界を迎え……。

『バチェロレッテ2』ep.8、「え~」「ありがと~」「うれしい」尾崎美紀さんの気になるリアクション

 7月7日から配信開始となった、婚活サバイバル番組『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン2(Amazon Prime Video)。同番組は、社会的成功を収めた独身女性(バチェロレッテ)の“真実の愛”を獲得すべく、男性参加者たちがゴージャスなデートを通して自身をアピールしながら、バトルを繰り広げるという恋愛リアリティーショー。

 今回のバチェロレッテは、コスメブランドを運営する「DINETTE 株式会社」の代表取締役・尾崎美紀さん。最終回直前の特別トークショーとして、尾崎さんと脱落した男性メンバーが一堂に会したエピソード8を、リアリティーショーウォッチャーがレビューする。

※本記事は『バチェロレッテ2』エピソード8のネタバレを含みます

『バチェロレッテ2』ep.8、あの早瀬さんがしゃべった!

 エピソード8として配信されたのは、最終回直前の特別トークショー「傷心男の溢れる本音! 大激白SP」。2代目バチェロレッテの尾崎美紀さんと、エピソード7までで敗れ去った男性メンバーがスタジオに集結し、MCのナインティナイン、SHELLYと共にトークを繰り広げた。

 まず注目したのが、早瀬恭さん(37歳、会社経営者)。落ち着いた物腰で語学も堪能と、事前インタビュー動画の印象はかなり良かった彼だが、エピソード1で早々に脱落。しかも登場&自己紹介シーン、カクテルパーティーでの様子もほぼカットされており、視聴者の間では「早瀬さんを映せないような問題が何か起きたのでは」と臆測が流れるほどだった。謎めいた早瀬さんの人気は高まるばかりで、ネット上では早期退場を惜しむ視聴者による「チーム早瀬」なるものまで誕生している。

 そんな早瀬さん、今回のトークも全カットされてしまうのか!? と思いきや、しゃべった! MCに「尾崎さんに名前覚えてもらってる自信は?」と聞かれ、「美紀さんは絶対覚えてます」と言った早瀬さん! 発言はほとんどそれだけだったが、「クララが立った!」くらいの喜びを感じた。

『バチェロレッテ2』ep.8、「え~」「うれし~い」「ありがと~」で片づけられた似顔絵

 エピソード5で落とされた美留町恭兵さん(36歳、美容師・画家)も、芸術センスと穏やかな信念を持ち、視聴者人気の高い1人だった。本編では尾崎さんの絵を制作していたが、完成した作品を見せられないまま脱落となっていた。

 今回、その作品を持って来てくれた美留町さん。バラに囲まれた尾崎さんが描かれた作品だったが、それを見た尾崎さんの反応は「え~」「ありがと~」「うれしい」の3種類。なんともアッサリしたものだった。これまで、男性メンバーからプレゼントを贈られても、ほぼその3語で乗り切っていた印象の尾崎さん。「鎧を脱ぐ」がこの旅のテーマと語っていたが、まだ緊張しているような!? 最終回ではどうか尾崎さんの鎧が脱げますように――。

 エピソード6で脱落した阿部大輔さん(40歳、デザイナー)は、実はラッパー「SENZUI」として活動していた時期があると、本編では見せなかった新たな一面を告白。「叶えていきたいあなたの夢 笑ってる目 泣いてる目 どんな瞬間だってメモリデイ」など、韻を踏んだ自作ラップを披露してみせた。

 尾崎さんの目には涙が浮かんでいたので、生で聞くと心を動かされるラップのようだ。SENZUIの由来は故郷・岡山にある「仙隋山」とのこと。インスタグラムの自己紹介文によれば司会業もしているらしく、引き出しがまだまだ多そうな阿部さんへの興味が募る。

『バチェロレッテ2』ep.8、“温かいジェイ”の具体例がやっと語られる

 エピソード7で惜しくも脱落したジェイデン トア マクスウェル(26歳、ラグビー選手)も登場。本編で、ことあるごとに「ジェイは温かい人」と繰り返していた尾崎さん。ジェイデンさんが実際に温かい人であろうことは、画面越しでも一目で伝わる。だが、尾崎さんがジェイに対し、何を根拠に、そんなに温かい温かいと繰り返し感じたのかが、視聴者にあまり伝わって来ていなかったのも事実。

 それがやっと今回、ほかの男性メンバーから「ライバルだけど要所要所でアドバイスをくれる。一番刺さったのが“Live in the moment”。旅の環境では“ああすればよかった、こうすればよかった“と思いがちだけど、今を生きようと。哲学的に優れた人だなと思う」(加藤友哉さん、24歳、大手外資系IT企業マーケター)、「ジェイは自分が不安な時も誰かのそばで声をかけてくれる」(小出翔太さん、33歳、飲食店経営者)など具体的なエピソードが語られ、やっと温かさの正体がつかめた気がした。

 ちなみに尾崎さん、今回も「ジェイは温かくて……」を2回繰り出していた。それほどに「温かい人」を落として選ぶ最後の1人は誰なのか、最終回に注目したい。

『バチェロレッテ2』ep.7、尾崎美紀さんは「イジられたいタイプ」? 最後に選ぶ男性メンバーを予想

 7月7日から配信開始となった、婚活サバイバル番組『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン2(Amazon Prime Video)。同番組は、社会的成功を収めた独身女性(バチェロレッテ)の“真実の愛”を獲得すべく、男性参加者たちがゴージャスなデートを通して自身をアピールしながら、バトルを繰り広げるという恋愛リアリティーショー。

 今回のバチェロレッテは、コスメブランドを運営する「DINETTE 株式会社」の代表取締役・尾崎美紀さん。勝ち残った3人の男性の家族と尾崎さんが対面を果たしたエピソード7を、リアリティーショーウォッチャーがレビューする。

※本記事は『バチェロレッテ2』エピソード7のネタバレを含みます

『バチェロレッテ2』ep.7、ジェイデンさんのからあげの食べ方に注目

 エピソード6でジェイデン トア マクスウェルさん(26歳、ラグビー選手)、佐藤マクファーレン優樹さん(28歳、バスケットボール選手)、長谷川惠一さん(36歳、バスケットボール選手)の3人まで絞られた男性陣。今回のエピソード7では日本に帰国し、それぞれの家族や大切な人にバチェロレッテ・尾崎さんを紹介するデートが行われた。

 ジェイデンさんは、12歳から付き合いがあるという千葉のホストファミリー宅へ尾崎さんを招待し、“日本のお母さん・お兄さん”を紹介。尾崎さんの「真実の愛って何だと思いますか」という少々唐突な質問に、お母さんは「真実の愛ってそう大それた言葉ではなくて、普通の和やかに過ごすこの時間が一番大事なもの」と名言を残した。

 また、ジェイデンさんの大好物であるからあげが食卓に。マヨネーズとケチャップを混ぜたソースをつけて食べるジェイデンさん。尾崎さんは「なんか……ほんとにおいしいのかな?」と笑っていたが、おいしくないわけがない! ぜひ、あの場で尾崎さんにも食べてみてほしかった。

『バチェロレッテ2』ep.7、マクファーレンさんの好感度また上がる!?

 マクファーレンさんは、バスケのコートでチームGM・二郎さん、自宅らしき場所で愛犬・にょんちゃん、さらにビデオ通話で、仕事のため海外にいるという母親を紹介した。

 今回の旅で、目標(尾崎さん)に向かって一直線だったマクファーレンさんだが、二郎さんとお母さんから語られるマクファーレンさん像を聞くと、仕事や人生に対しても同じ姿勢で臨んでいるようだ。

 熱量に引かれたり、周囲に誤解されたりすることもあったようだが、それは何事にも真剣に取り組んでいるからこそ――と明らかに。甘い愛の言葉をスラスラ言えるマクファーレンさんが、意外と生きるのに不器用なタイプであるとわかり、前話に引き続き好感度がアップした視聴者も多いかもしれない。

 長谷川さんは故郷・新潟に尾崎さんを招待。料亭で父親・母親・弟・弟の奥さん(義妹)がそろった食事会を行った。義理の妹さんから「惠一」と呼ばれていた長谷川さん。親しまれる人物であることが伝わってくる。

 さらにその義理の妹さん、尾崎さんから「仕事でオファーしてもらったことがある」そうで、「びっくりして固まっちゃった!」と偶然の再会に驚いていた。彼女はインフルエンサー的な職に就いているのか!? と興味が募った。

 食事会の後、2人きりになったタイミングで、長谷川さんは「これから俺だけを見てほしい。俺を信じてそばにいてほしい」と、ほぼプロポーズ。真剣な思いを伝えていた。最初のカクテルパーティーでは、緊張のあまり尾崎さんに話しかけることもできなかった長谷川さん。この激変ぶりには尾崎さんもさぞ驚いていただろう。

『バチェロレッテ2』ep.7、気になる脱落理由

 最後はローズセレモニー。今回脱落する1人は、ジェイデンさんと発表された。涙を流す尾崎さんに、ジェイデンさんは「大丈夫。美紀さんは大丈夫」と優しく声を掛けていた。このセリフ、ジェイデンさんが母国にいる実の母親とテレビ電話をするシーンで、思わず泣いてしまったとき、お母さんが彼にかけていた言葉「あなたは大丈夫」とまったく同じ。優しさとは、こうやって受け継がれるのだなと胸が熱くなる。

 尾崎さんは、ジェイデンさんを選ばなかった理由を「何かが足りないわけではない」と言いつつ、「残りの2人のほうが上回った」とも語った。非常に抽象的で、尾崎さんが何度も「脱ぎたい」と言っている“心の鎧”の存在を感じてしまった。

 「尾崎さん、そんな抽象的な理由じゃ納得できないぞ!」というジェイデンファンもいるのでは? と思い、筆者なりに脱落理由を考察してみることに。その結果“ジェイデンさん本人に足りない部分はない”というのは、尾崎さんの本心だろうと推測。では何がほかの2人より下回ったのかといえば、思い当たるのは、今回のデートで会わせた“大切な人”の人数だった。

 ジェイデンさんは2人(お母さん、お兄さん)、マクファーレンさんは2人と1匹(二郎さん、お母さん、にょんちゃん)、長谷川さんは4人(お母さん、お父さん、弟、義妹)。これまでの傾向から、わかりやすいアプローチに弱いと判明している尾崎さん。今回コミュニケーションを取れた“大切な人”の数が多いほど、心を動かされる回数も単純に多かったのかもしれない。

 ほかにあるとすれば、からあげの食べ方だろうか。こってり好きには知らない人はいない、からあげ×マヨ×ケチャップのおいしさ。それを尾崎さんが「ほんとにおいしいのかな?」と言ったのは、食の好みが合わないということだ。結婚相手としては大事な部分なので、この結果はジェイデンさんにとってもよかったのだと思いたい。

 残るはマクファーレンさんと長谷川さんのバスケ選手コンビとなった。次回のエピソード8では、ついに最後の1人(ファイナルローズ)が決定することとなる。

 今のところ、優勢なのは長谷川さんだと予想。エピソード7で会わせた“大切な人”の人数がマクファーレンさんより多かった……という点に加え、2人でいるときに尾崎さんが楽しそうなことが大きな理由だ。

 マクファーレンさんは常に女神を崇めるかのごとく尾崎さんに接するが、長谷川さんは時に尾崎さんの運動オンチな面などをイジッてみせる。長谷川さんからツッコまれた時の尾崎さんは、いつもよりリラックスした笑顔を見せており、プライベートでの尾崎さんは、崇拝されるよりイジられるほうがラクなタイプなのかもしれない。だとすれば結婚相手としては長谷川さんのほうが向いているように思えるが――。果たしてどちらが選ばれるのだろうか。