『Woman』、ディテール描写と緊張感で役者をも追い詰める坂元裕二脚本の妙

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『Woman』公式サイトより

 日本テレビ水曜午後10時枠で新たに始まった『Woman』は、シングルマザーを主人公にしたヒューマンドラマ。脚本は『それでも、生きてゆく』、『最高の離婚』(ともにフジテレビ系)が高い評価を受けた坂元裕二。チーフ演出は『Mother』(日本テレビ系)で坂元と組んだ水田伸生が担当。そして主演は『それでも、生きてゆく』に出演した満島ひかりという盤石の布陣によるスタートだ。

 青柳小春(満島ひかり)は登山家の信(小栗旬)と結婚し、長女の望海(鈴木梨央)と長男の陸(高橋來)をもうける。しかし夫の信は駅のホームで転落事故に遭い、命を落とす。残された小春は1人で2人の子どもを育てることになる。

藤山直美の怪演だけが光った『鬼女』、現実でもドラマでも欠如する“男の視点”

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『木嶋佳苗 法廷証言』(宝島社)

「だました男なんか、1人もいてません。私はただ、あの人らに愛されてしもうただけや」

 次々と男に金を貢がせ、2人の男を殺害した罪で起訴された三崎真由美(藤山直美)は、フリーライターの野元千明(夏川結衣)に向かって、そう語る。

 金曜プレステージ・スペシャルドラマ『鬼女』(フジテレビ系)は、婚活サイトで知り合った男たちを自殺に見せかけて次々と殺した結婚詐欺師・木嶋佳苗の事件をモデルとしている。木嶋の出身地が北海道だったのに対し、三崎の出身地は関西となっており、常に関西弁を使っている設定だ。演じるのは関西の名女優・藤山直美。外見だけならぴったりの人選だろう。

非道さへ不快感と同時に、圧倒的な悪の魅力をえぐり出した『家族ゲーム』

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『家族ゲーム』公式サイトより

 『家族ゲーム』(フジテレビ系)は1981年にすばる文学賞を受賞した同名小説が原作。過去に森田芳光監督・松田優作主演で映画化され、長渕剛主演でテレビドラマ化(TBS系)もされている。沼田家に謎の家庭教師・吉本が訪れることで、家族が翻弄されていくという展開は原作と同様だが、舞台を現代に移し、松田や長渕に象徴される強面で屈強だった吉本のイメージも、嵐の櫻井翔が演じる、軽薄で何を考えているのかわからない、不気味な男に改変されている。

 吉本は、引きこもりの沼田家の次男・茂之(浦上晟周)の家庭教師となり、さまざまな手段を駆使して、茂之を部屋から出して学校へと向かわせる。しかし、学校に戻ってきた茂之に味方はおらず、いじめに遭うこととなる。

 吉本は、茂之のクラスに乗り込み、生徒たちを脅迫して無理やりいじめを解決させるが、陰でいじめは続く。この辺りのいじめ描写は痛々しくて不快ですらあるが、「強者が弱者を踏みにじることの不快感」、それ自体が描きたいことなのだろう。やがて茂之は吉本の教育により、いじめに立ち向かう強い意志を獲得し成長していく。しかし、茂之がいじめられること自体が、吉本があらかじめ裏工作したプログラムであることが繰り返し描かれ、後味の悪さが常に付きまとう。ここで描かれているのは、教育というものが潜在的に抱えている暴力性そのものだ。吉本の巧妙な手口に長男の慎一(神木隆之介)は不信感を抱き、吉本の正体を調べ始める。やがて、ドラマ後半は、沼田家の崩壊と、慎一と吉本の戦いに焦点が移っていく。

『空飛ぶ広報室』、自衛隊への報道姿勢で露呈したドラマのいびつさ

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『空飛ぶ広報室』(TBS系)公式サイトより

 TBS日曜劇場で放送中の『空飛ぶ広報室』は、自衛隊広報室に勤める自衛隊員・空井大祐(綾野剛)とテレビ局のディレクター・稲葉リカ(新垣結衣)のもどかしい恋模様と、仕事にかける熱い想いを描いたドラマだ。

 原作は『図書館戦争』(メディアワークス)と『県庁おもてなし課』(角川書店)が最近映画化された有川浩の同名小説。自衛隊とテレビ報道の在り方という難しいテーマに挑んでいるが、女性にとっての仕事と恋愛を扱っているという面では、ど真ん中のモチーフであり、自衛隊を題材にしたトレンディドラマともいえる。小説は、空井を主人公とした自衛隊広報室の物語が中心となっているが、ドラマ版ではテレビ局が制作している長所を生かして、稲葉の視点が強い。そのため、自衛隊をどういう視点で報道するのか? というマスコミの報道姿勢自体が大きな軸となっている。

『空飛ぶ広報室』、自衛隊への報道姿勢で露呈したドラマのいびつさ

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『空飛ぶ広報室』(TBS系)公式サイトより

 TBS日曜劇場で放送中の『空飛ぶ広報室』は、自衛隊広報室に勤める自衛隊員・空井大祐(綾野剛)とテレビ局のディレクター・稲葉リカ(新垣結衣)のもどかしい恋模様と、仕事にかける熱い想いを描いたドラマだ。

 原作は『図書館戦争』(メディアワークス)と『県庁おもてなし課』(角川書店)が最近映画化された有川浩の同名小説。自衛隊とテレビ報道の在り方という難しいテーマに挑んでいるが、女性にとっての仕事と恋愛を扱っているという面では、ど真ん中のモチーフであり、自衛隊を題材にしたトレンディドラマともいえる。小説は、空井を主人公とした自衛隊広報室の物語が中心となっているが、ドラマ版ではテレビ局が制作している長所を生かして、稲葉の視点が強い。そのため、自衛隊をどういう視点で報道するのか? というマスコミの報道姿勢自体が大きな軸となっている。

アクションドラマ×アイドルの良作『タンクトップファイター』の身体性

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『タンクトップファイター』公式サイトより

 1990年代以降、テレビドラマとアクションシーンは、相性が悪かった。例えば、昔の刑事ドラマは、アクションが中心で派手な爆破シーンや銃撃戦が付き物だったが、『踊る大捜査線』(フジテレビ系)のヒット以降は、アクションは控えめになり『相棒』(テレビ朝日系)などは、完全にミステリードラマとなっている。

 そんなアクションドラマ不遇の中で、人知れず実験が行われているのが深夜ドラマ枠だ。『BAD BOYS J』(日本テレビ系)等のヤンキードラマではアクションがすでに定番化しており、ケンカシーンをどう見せるのかという試行錯誤によって進化を遂げている。また、登場人物がとにかく走りまわる『リアル鬼ごっこTHE ORIGIN』(テレビ埼玉・千葉テレビ放送・テレビ神奈川)もなかなかのクオリティで、一つひとつは低予算で小粒な作品だが、毎回見る度に発見がある。かつて、大量生産されたVシネマの中から三池崇史が生まれたように、いつかアクションドラマから新たな才能が出てくるのではないかと注目している。

歴史を描くあまりにドラマを放置した『八重の桜』、ようやく動き出した物語

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「八重の桜 後編」(NHK出版)

 『八重の桜』(NHK、以下同)の第一話を見た時、すごいものが始まったと思った。本作は「幕末のジャンヌ・ダルク」と呼ばれた新島八重の生涯を描いた大河ドラマ。物語冒頭、福島県・会津の鶴ヶ城では激しい銃撃戦の音が鳴り響いていており、城下のあちこちで火の手が上がっている。そこに突入する土佐藩兵を次々とスペンサー銃で撃ち殺していく八重。無骨な拳銃を構える綾瀬はるかの姿を見た瞬間、「超カッけぇ」と思い、この続きを早く見たいと思い期待に胸を膨らませた。

 しかし、そこからが長かった。

 画面構成(レイアウト)や美術設定における映像レベルの高さに関しては、文句の付けようがないクオリティだろう。チーフ演出を務める加藤拓は超大作『坂の上の雲』の演出を担当していたが、あの作品の二〇三高地での戦争シーンの映像も素晴らしく、おそらく予算規模の面でも国内最高峰の映像だったといえる。大河ドラマは歴史モノが定番化しているため、戦国時代でも幕末でも戦争をどう描くかが必須課題となっている。しかし、今までの大河ドラマは、映像が安っぽく、レイアウトが狭くて建物がセットにしか見えないため、ビジュアル面での不満が大きかった。それがCGの発達と『龍馬伝』以降のプログレッシブ・カメラ等の導入による撮影技術の革新によって、少しずつ改善されていき、『坂の上の雲』で1つの完成を見たといえる。『八重の桜』はその廉価普及版とでも言うような作品だ。1年というタイムスパンで、あのクオリティをどれだけ維持できるのかが今後の課題だが、映像レベルに関しては今のところ高い水準を維持しており、心配は無用だろう。

演出もストーリーも安直な『ラスト・シンデレラ』における三浦春馬の怪物性

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『ラスト・シンデレラ』公式サイトより

 枝葉が幹をへし折り、ぐんぐんと伸びている。フジテレビ系木曜劇場で放送されている『ラスト・シンデレラ』をみていると、そう思う。

 主人公はヘア―サロンの副店長を務める39歳の遠山桜(篠原涼子)。仕事が忙しくて恋愛がご無沙汰の彼女の顎にヒゲが生えるところから、物語がはじまる。桜の同期のヘアサロンの店長・立花凛太郎(藤木直人)とは、お互いに憎まれ口を聴きながらも、信頼関係が出来上がっている友達以上恋人未満の仲。親友の竹内美樹(大塚寧々)は、夫の公平(遠藤章造)とは一年近くセックスレスで、その夫は、実はインポテンツで、桜のもう一人の親友・長谷川志麻(飯島直子)に気持ちが傾いている。物語は彼らアラフォーの男女の人減関係に、24歳の佐伯広斗(三浦春馬)と、23歳の大神千代子(菜々緒)が、絡むというセックス・コメディとなっている。

 妙齢の男女の恋愛模様をコメディタッチで描くというスタイルは、同じ木曜劇場で放送されていた『最後から二番目の恋』を彷彿とさせるが、出来は雲泥の差で、ポップと下品をはき違えた安直な作品だというのが、正直な感想だ。

超能力を性欲とリンクして扱う『みんな!エスパーだよ!』の優しい目線

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『みんな!エスパーだよ!』公式サイトより

 『ヒミズ』や『希望の国』といった問題作を次々と制作している映画界の鬼才・園子温が監督を務め話題なのが、テレビ東京系列の深夜枠・ドラマ24で放送中の『みんな!エスパーだよ!』だ。

 物語の主人公は、『ヒミズ』で主演を務めた染谷将太。心の声が聴こえる超能力「テレパシー」に目覚めた高校生・鴨川嘉郎を演じている。平和で何もない田舎で暮らす人々が次々と超能力者として覚醒し、超能力を正しいことに使おうとする嘉郎と、私利私欲のために力を使おうとする超能力者との戦いを描いたドラマだが、基本的にはコメディであり、園子温作品でいうと『愛のむきだし』中盤のテイストに近い。

 原作は『デトロイト・メタル・シティ』(白泉社)の若杉公徳による同名漫画。原作にある下ネタ全開のテイストを守りつつも、監督の世界観をエロ方面で炸裂させている。園監督の妻としても知られる神楽坂恵は、登場する度に乳を揉まれ、作品内では女子高生が、パンチラを連発する。いわゆるオシャレな下着でなく、80年代ラブコメでいうところの純白のパンティーだ。

無残な結末ほど色気を放つ、弱々しくもえげつない男・長谷川博己の『雲の階段』

<p> 水曜22時はドラマ激戦区だ。この枠にドラマを新設したフジテレビでは『家族ゲーム』が、日本テレビでは『雲の階段』が放送され、毎週どちらを見るか悩ましいところ。初動の話題性においては『家族ゲーム』が一歩リードし、『雲の階段』が、出遅れた感があるが、こちらはこちらで、じわじわと人気が盛り上がってきている。</p> <p> 本作は過疎の離島で無免許医師をやっている相川三郎(長谷川博己)を主人公とする物語だ。三郎は、事務員として勤めている診療所の所長(大友康平)に、医療技術を教えこまれ、無免許ながらも手先の器用さで島の患者たちを診療する日々を送っている。看護師の鈴木明子(稲森いずみ)と恋愛関係にあるが、結婚の意思はなく、流されるままに受け身の人生を送っていた。しかしある日、島に遊びにきた田坂総合病院の令嬢・田坂亜希子(木村文乃)の子宮外妊娠を手術したことで、亜希子に好意を持たれる。それがきっかけとなり、三郎の中にも欲望が芽生え、やがて島から離れて東京に向かう。<br /> </p>