『紙の月』に浮かぶ、金と男に溺れる毒婦が求めた「存在する意味」の罪

kaminotuki.jpg
『紙の月』公式サイトより

 NHKで火曜午後10時から放送されているドラマ『紙の月』は、41歳の主婦・梅澤梨花(原田知世)の転落劇だ。物語冒頭、彼女はタイの国境にいる。同じ頃、梨花の母校・聖マティアス女子学院の同窓会では、梨花が銀行で顧客の金を1億円横領して逃亡したことが話題になっていた。うわさによると男に貢いだということだが、真相はわからない。果たして彼女はなぜ、罪を犯したのか。物語は、梨花が犯罪に手を染める経緯を時系列で見せていく一方で、彼女の友達だった岡崎木綿子(水野真紀)と中条亜紀(西田尚美)の視点から、梨花が失踪した理由を推理していく。

 銀行でパートタイムの営業職として働く梨花は、丁寧な応対でお年寄りの顧客から絶大な信頼を得ていた。日常的に100万円単位のお金に触れる生活の中で、お金に関する感覚が麻痺していったのか、無神経な夫の振る舞いに嫌気がさしたのか、それとも、大学生の男との恋が彼女の人生を狂わせたのか――。

言葉の限界と肉体の表現力――『30分だけの愛』で見えた遊川和彦ドラマの誤算

yukawadorama.jpg
『遊川和彦への挑戦状 30分だけの愛』公式サイトより

 『家政婦のミタ』(日本テレビ系)や『純と愛』(NHK)で知られる遊川和彦は、不快な場面をあえて描くことで賛否を巻き起こし、登場人物が激しい感情をぶつけ合う姿を見せることで視聴者を引き込んでいく、挑発的な脚本家だ。近年では作品だけでなく、歯に衣着せぬ発言を繰り広げる本人の面白さにも注目が集まっている。

 そんな遊川の個性そのものを売りにしたのが、1月2日に放送されたスペシャルドラマ『遊川和彦への挑戦状 30分だけの愛』だ。本作は読売テレビ開局55周年を記念して制作された企画で、無茶なお題に対して遊川が挑戦するというバラエティ的な面白さもある作品だった。

『最高の離婚』『ラジオ』ら、2013年ドラマベスト5を選出!

saikourikon.jpg
『最高の離婚』/ポニーキャニオン

 『あまちゃん』(NHK)『半沢直樹』(TBS系)などヒットドラマに恵まれた2013年。『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)などドラマ評論で活躍するライター・成馬零一が2013年のドラマベスト5を選出した。

☆5位 『最高の離婚』(フジテレビ系)

 男女4人の離婚にまつわる騒動を描いた恋愛ドラマ。主演は瑛太、尾野真千子、綾野剛、真木よう子、脚本は坂元裕二、チーフ演出は宮本理江子という布陣だ。宮本は第1話しか演出していないが、全話において演出レベルは高く、『それでも、生きてゆく』、『最後から二番目の恋』(ともにフジテレビ系)で用いられてきた、長回しを多用することで役者の演技を魅せる宮本の方法論は、本作で完成したと言えよう。それは、坂元の脚本も同様だ。デートで食べる料理名から芸能人、音楽の名称まで、あらゆるものの固有名詞を散りばめた会話劇は作品内のリアリティを強固にする一方で、言葉にできないこと、例えば、恋愛感情の機微や唐突に到来する運命のようなものを描き出していた。

“世間”に嫌われると有罪——『リーガルハイ』が暴く、ソーシャル時代の“世間”の怪物性

<p> 『リーガルハイ』(フジテレビ系)は勝つためなら手段を選ばない性格が最悪の弁護士・古美門研介(堺雅人)と、真面目な性格の弁護士・黛真知子(新垣結衣)が主人公の法廷ドラマ。2012年に放送された第一期(当時の名称は『リーガル・ハイ』)の続編に当たる作品で、今回は、争いを好まない人たらしの弁護士・羽生晴樹(岡田将生)が古美門のライバルとして登場した。<br /> </p>

視聴率24%超え『ごちそうさん』が探る、押し付けでも暴力でもない“善意”のあり方

gochisousan_01.jpg
『連続テレビ小説 ごちそうさん Part1』(NHK出版)

 『ごちそうさん』は下半期のNHK朝の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)。上半期の朝ドラ『あまちゃん』(NHK)の影響力があまりに大きすぎたため、逆境からのスタートとなったが、視聴率は第1週から平均視聴率21%を超えており、その後もじわじわと人気が盛り上がり、第11週では平均視聴率24.03%を記録した。

 近年、「朝ドラ」は次々と話題作を生み出している最も勢いのあるドラマ枠だが、一番の枷はヒロインを健気で善良な女性として描かなければならないということだ。舞台設定が多様化し、自由度を広げつつある朝ドラだが、この枷だけは今も変わらない。それ故、ヒロインの見せ方はもっとも脚本家の個性が問われる局面となっている。そんな中、『ごちそうさん』では、朝ドラヒロインの善意そのものが作品のテーマとなっている。

『安堂ロイド』の最終地点――日本のSFアクションの限界と木村拓哉の評価

andoroido.jpg
『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~』(TBS系)公式サイトより

 TBSの日曜劇場で放送されている連続ドラマ『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~』。主演はSMAP・木村拓哉と柴咲コウ。プロデューサーは『ビューティフルライフ』、『GOOD LUCK!!』(ともにTBS系)で木村と組んだ植田博樹だ。
 
 2013年。天才物理科学者・沫嶋黎士(木村)は2113年の未来から派遣されたアンドロイドによって命を奪われる。意気消沈する黎士の恋人・安堂麻陽(柴咲)。そんな彼女の元に黎士と瓜二つのアンドロイド・ARXII-13が現れ、麻陽の命を狙うアンドロイドを倒す。

『長谷川町子物語』が問いかけた、永遠に“生き続ける”キャラクターを生む重み

hasegawamachiko.jpg
『長谷川町子物語~サザエさんが生まれた日~』(フジテレビ系)公式サイトより

 『長谷川町子物語~サザエさんが生まれた日~』(フジテレビ系)は、サザエさん45周年を記念して作られたスペシャルドラマだ。脚本は『四十九日のレシピ』(NHK)や『早海さんと呼ばれる日』(フジテレビ系)を手がけた大島里美。本作は、長谷川町子の自伝的作品であると同時に、漫画『サザエさん』誕生の物語でもある。ドラマには、漫画のモデルとなった人々やエピソードもさりげなく登場する。

 虚実入り混じったアプローチは、水木しげるの妻・武市布枝(作中では村井布美枝)の視点から水木しげるを描くと同時に、作中に水木作品のモデルらしき人やエピソードをうまく盛り込むことで、妖怪のいる戦後史を描いたNHK朝の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『ゲゲゲの女房』のアプローチを思わせる。

『あまちゃん』を咀嚼した手法に賛否が分かれる、『海の上の診療所』の評価

uminoie.jpg
『海の上の診療所』(フジテレビ系)公式サイトより

 フジテレビの月曜9時枠(月9)で放送されている『海の上の診療所』は、瀬戸内海に浮かぶ無医島を回る診療船・海診丸に乗り込んだ医師・瀬崎航太(松田翔太)と看護師の戸神眞子(武井咲)を筆頭とする乗組員たちの物語だ。

 いわゆる医療モノかというと、少し毛色が違う。航太は医師としての腕はいいのだが、美女と出会う度に一目惚れしてしまう軽薄な性格。毎回、美女たちの悩みを医師として解決するが、実は彼女たちには好きな人がいて、航太は振られて落ち込んで終わるという、『男はつらいよ』の寅さんみたいな構造となっている。

“見世物”女優・沢尻エリカの悲劇、ヒューマンドラマ『時計屋の娘』の違和感

tokeiya-sawajiri.jpg
『時計屋の娘』(TBS系)公式サイトより

 ある町で時計店を営む時計職人の秋山守一(國村隼)の元に、若い女がビンテージものの腕時計の修理を頼みにやって来る。宮原リョウ(沢尻エリカ)と名乗った彼女は、かつて秋山の恋人だった国木知花子(木村文乃)の娘だった。リョウは秋山に尋ねる。「あなたは私の父親じゃないですか?」――。

 沢尻エリカ主演の2時間ドラマ『時計屋の娘』(TBS系)は、時代に取り残されつつある老いた時計職人が、かつて愛した女性との思い出を振り返ることで、生きる意思を取り戻していくヒューマンドラマだ。プロデューサーは八木康夫、脚本は映画『復讐するは我にあり』や『楢山節考』の脚本で知られる池端俊策。2人は1年前(2012年)に沢尻エリカ主演で2時間ドラマ『悪女について』(TBS系)を制作し、平成24年度の芸術選奨文部科学大臣賞(放送部門)を受賞している。前作の成功を引き継ぐ形で作られた本作もまた、平成25年度文化庁芸術祭参加作品となっている。

野島伸司の少女への歪な憧憬と中年臭さが融合した、ジャニドラマ『49』の面白さ

49-syori.jpg
『49』(日本テレビ系)公式サイトより

 『49』(フォーティーナイン)は、日本テレビ系の土曜深夜に放送されている学園ドラマだ。銀行員として働く加賀美幹(かがみ・かん)は、離婚届を会社に持ってきた息子の加賀美暖(だん、Sexy Zone・佐藤勝利)が車の事故に遭いそうなところをかばい、命を落としてしまう。しかし幹は、別宅で飼っている猫のランが気がかりだったため、息子に頼み、49日間だけ肉体を借してもらう。暖の体に乗り移った幹は、父親がわからない子どもを身ごもった娘の裕子(野村麻純)や引きこもりがちの暖の生活を知り、現世にいられる49日間を、家族のために過ごそうと奮闘する。

 『49』が放送されている深夜ドラマ枠は、『私立バカレア高校』以降、ジャニーズ事務所出身の若手アイドルが主人公の学園ドラマが放送されている。SMAP・稲垣吾郎主演の『診療中―in the Room―』のような例外はあるにせよ、近年では10代の若手俳優の登竜門として、瑞々しい作品を多く放送し、ドラマファン、アイドルファンから注目されている。とはいえ、深夜に放送されている以上、マイナー枠であることは間違いない。そのゆえ、野島伸司が脚本を書くと知った時には正直驚いた。