『ザ・ノンフィクション』おしゃれメシに変わる公的施設の懐かしい味「社長と竜造 葛西臨海公園物語」

 NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月21日放送のテーマは「社長と竜造 葛西臨海公園物語」。国内外に飲食店を運営するゼットンが社運をかけた葛西臨海プロジェクトに挑む。

あらすじ:社運をかけた一大プロジェクトに抜てきされる

 ゼットンが挑む葛西臨海公園プロジェクトは、BBQ広場とレストランのリニューアル、無料休憩所のカフェへの改修、BBQ施設の立ち上げ、さらにガーデンウェディング施設といった5つにわたる大掛かりなものだ。ゼットン・鈴木伸典社長から突如、責任者に抜てきされた松山竜造は、通常の店舗運営も行いながらも、この大型プロジェクトに取り組むことになる。

「とりあえず終わってよかったね」に残るモヤモヤ

 まず思ったのは、この社運をかけたプロジェクトに竜造が取り組むなら、竜造が普段行っている13店舗もの飲食店の運営 (うち一店舗はリニューアルも含む)という通常業務は、ほかの誰かに任せられなかったのだろうか、ということだ。通常業務と新規プロジェクトを並列して走らせる竜造は、番組内でスケジュールをすっぽかすミスをしており、迂闊な自分を責めていた。しかし、これほど忙しければうっかりミスも起きるだろう。

 社長及び上層部もしくは企業風土が、通常業務を「ほかの人に任せるのを許さなかった」というならブラックだと思うが、竜造自身が「任せなかった、任せたくなかった」のかもしれない。もし後者の場合なら、竜造は自分のすっぽかしのミスを責めるより、人を使う立場の自分が、仕事を背負いすぎてしまうことを責めた方がいいのではないかとも思う。

 番組は、忙しかったけど無事終わって良かった、これからも頑張ろう、という社長と竜造による美談といった形で終わった。しかし、どうも見ていて違和感があった。仕事が終わったタイミングで、またこんな大変な目に遭わないため、今後何をしていくべきか? と反省することなく、「とりあえず終わってよかったね」で済ませてしまう。それは、別にゼットンに限らず、多くの会社が似たようなことをしているのだが。

 そんな社長は、創業家の跡取りでなく、たたき上げで社長になったやり手だ。竜造へのダメ出しは、感覚的ではなく理屈がちゃんと通るものだった。

 例えば、メイン利用層は幼い子どもを連れて公園に遊びに来る母親であろうカフェにおいて、竜造が開発したセットメニューは「ピザ、フライドポテト、フライドチキン」。そこに、コールスローサラダをつけるように指摘するなど、ごもっともなのだ。確かに、竜造の考えた組み合わせではカラオケで出てくる「おつまみセット」すぎる。

 社長の風貌は、糸井重里をベースに萩原流行をちょい足しして2で割ったような感じで、明るく染めた髪とピタッとした明るい色のジャケットを着こなす姿は、メディアで紹介されるような“ギラギラ”とした港区の社長そのものの佇まいだ。番組を見る限り、社員の多くも「ザ・港区」な感じだったが、一方の竜造はどこかのほほんとしており、社運をかけたプロジェクトに抜てきされても「やるぞ!」と燃え上がるわけでもなく、むしろ明らかに困っていた。

 どこかおっとりした竜造は、咲くべき場所が違うのではないのかとも思えたが、「ザ・港区」な社長と、そういう社員が多いギラギラした会社だからこそ、そうじゃない社員がいるのは、ゼットンのためにもいいのだろう。社長も、竜造の優しさやホスピタリティを評価していた。会社への愛情や忠誠心はありつつも、会社のカラーとは少し違う人という存在は、組織に多様性をもたらす貴重な存在なのだと思う。

 今回の葛西臨海公園以外にも、公的な機関にゼットンのような民間資本が入る流れは進んでいくのだろう。レストラン運営に慣れた会社が入ることで、フルーツが乗ったインスタ映えするパンケーキや、ケチャップでなくグレイビーソースのかかったハンバーグなど、今どきで、味もいいメニューが、価格設定も絶妙に計算された上で展開されるのだと思う。

 しかし私は、大型病院や市役所や学校など「公」の要素が強い施設の、そっけないメシが結構好きだ。

 小学生の頃、市民プールにいった後、併設の小さな喫茶コーナーで月見うどん(200円)を食べるのが楽しみだった。よそったあと卵を落とすので全然卵が煮えていない、あの月見うどんを思うと、夏場はかき氷が出ていたとか、金髪の男の子が描かれた日世のアイスコーンの箱が店の端に積まれていたとか、塩素のにおいや屋内プールの生暖かい空気の感じや更衣室にあった赤いすのこなど、次々と記憶がよみがえっていく。今も市役所や病院などに行く用事があると、あのうまくもないが安くて懐かしい、そっけない“公メシ”を郷愁に誘われ食べてしまう。

 しかし、それらは絶滅危惧種だ。ゼットンのような民間資本が入ることで「うまくもないが安くて懐かしい」公メシは、うまいが安くはなく、でも「最新の流行とニーズをくんだおしゃれメシ」へとアップデートされていくのだ。

 私にとって「公メシ」は過去へつながる扉だ。家で食べた母の料理も懐かしいのだが、外食の懐かしさはまた特有で独特だ。変化が目まぐるしいこの時代、食事環境もアップデートの連続で育つ今の子どもは、数十年後に思い出し、グッと来たり、ほっとするような「懐かしい外食」があるのだろうかと思う。大きなお世話だが少し気になった。

 次回の『ザ・ノンフィクション』もテーマは飲食運営の『天国のあなたへ… ~「ラーメンの鬼」の背中を追って~』。ラーメンシェフと呼ばれた石塚和生、58歳。国外出店など一時期は多店舗運営をしていたが、不運な事故も重なり経営者から職人へと戻る。師匠から託されたレシピで再起を図るが、果たしてラーメンは完成するのか?

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

【テラスハウスレビュー】春花VS莉咲子勃発――「姫気質」女と「自称サバサバ」女は水と油!?

 見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録したリアリティ番組『テラスハウス』。現在、Netflixにて「TOKYO 2019-2020」が配信中で、ファンは個性豊かな面々の恋愛模様を、一喜一憂しながら、固唾を呑んで見守っている。そんな『テラハ』を愛する“テラハウォッチャー”が、7月前半の配信分から、グッときた“名(珍)シーン”をピックアップし、思いのままにレビューする。

香織、人知れずストレスが蓄積(第7話)

 女優の春花とフィットネストレーナーの莉咲子は二人とも、バンド「SPiCYSOL」のボーカル、ケニーのことが気になっている。女子最年長の28歳でイラストレーターの香織は、二人のお姉さん的存在となり、それぞれから相談を受けていた。

 いつも穏やかな笑顔を浮かべ、的確かつ当たり障りのない相槌を打つ香織だったが、この板挟み状態に、実は結構ストレスが溜まっていたらしい。

 俳優の翔平と二人になったタイミングで、「やりづらい、生活が」と本心を吐露し、「(二人の言い分を)スポンジのようにずっと吸収してるだけ。で、だんだん『こいつ、聞くだけでつまんねぇな』って思われて、捨てられていくのを待ってる」と、疲れた笑顔で話した。その本心を二人の前では微塵も出さない香織、実は最も恐ろしい女性かもしれない。

春花、自分主演・脚本・演出で説教(第7話)

 リビングでのくつろぎ中、酔った勢いで「明日のライブ、やる気ない」とこぼしたケニー。その一言を、春花は聞き逃さなかった。後日、二人で食事に行くと、春花は「本当、注意したかったの。酔ってたから覚えてないかもしれないけど」と、お説教を始めた。ケニーの顔を人差し指で指しながら説教する姿は、結構恐い。

 ケニーは素直に謝った後で、「超正直に言うよ。今のバンドに満足してない。ライブしてても面白くない」と告白。すると春花、待ってましたとばかりに「わかる、すごいわかる!」と共感。「でもさ、ケニーくんがもっと有名になって、もっと多くのファンができたときに、自分のやりたい音楽をやっても受け入れてもらえるじゃん。って思ったら今は頑張れない?」と、現状は何の解決にもならない薄っぺらなキレイ事で励ます。一旦、この話題が終わった後も、「話は戻るけど、私、スルーしなくてすごい良かった!」と満足気だった。

 どうやら春花の中では、「ケニーの仕事観を注意する→本音を聞いて共感を示す→励ます→二人の絆が深まる」という“ヒロイン=自分”の台本だったようで、それをやや強引にではあるがやり遂げることができ、自己満足した様子だった。自作の台本にばかり集中し、ケニーの本心を見ていなかったようにも見えるのだが……。

 家族で北海道観光に行くため、テラスハウスを数日留守にしたアルバイトの流佳。以前は春花が気になると言っていたのだが、その旅行中に何らかの心境の変化があったらしく、翔平を呼び出し、「香織さんは、二人(春花と莉咲子)とは別なんすよ」と香織が気になると急に言い出した。

 「結構、めちゃめちゃリスペクトしてるんすよ俺、仕事面で。めちゃめちゃかっこいいって思って。なんか、こういう人の人生見てみたいなとか考えちゃって。香織さんっていう人間の、これからを見たい」と、神妙に目を閉じ、頷きながら話す流佳。一体、何目線だろうか。プロデューサー目線? いや、ただのファン目線にも思える。

 さらに「自分も絵を描きたい」まで言い出し、それをダシに香織を誘うことに。女子部屋までの階段を這いつくばって上り、部屋の前でぶつぶつと誘い文句の練習をし、躊躇してからノックし、体をくねらせつつ「オ、オレ、絵、描きたくって、でもエグ、エグ(絵具?)じゃない、何だったっけ。絵の道具、ソレを、一緒に買いに行きたいから、行ってほしい、いいですか?」。 

 この一連の行動に、YOUとトリンドル玲奈を中心にスタジオメンバーは「かわいー!」と大盛り上がりだったが、流佳のルックス抜きで行動だけ見ると「キモい」以外の何ものでもない。下心込みの「ちょっと絵描いてみたい」くらいの軽い気持ちで、プロのイラストレーターに「エグ」とやらを見繕ってもらうというのも、本当に香織の仕事をリスペクトしているのならできないような図々しい行動にも感じる。 

 しかし、「行きましょう。私も買いたいものがあるから、ちょうどよかった」と笑顔で応じる香織。やはり大人である。

姫体質VS自称サバサバ、ついに激突(第8話)

 春花は同年代の友人が少なく、普段は春花いわく「友達」のオジサンたちに囲まれてちやほやされる“サークルの姫寄り”のタイプ。一方の莉咲子は、「女だから女と一緒にいなきゃいけないわけじゃないと思う」と話す自称サバサバ女子で、テラハ内でも女子より男子と過ごす時間が長い“ナチュラルな紅一点”タイプ。もともと互いの存在が気に食わないようで、好きな人が被ったことで余計に対立が激化してきた。

 夜、リビングで3人になったケニー、春花、莉咲子。春花が突然「ケニーくんは一番緊張する~」と思わせぶりな発言をすると、莉咲子はそのカマトトっぷりが気に食わなかったらしく、「それは男として見ているからじゃないの? だって好きな人とは緊張するよ、莉咲子は」とズバリ指摘する。

 笑って流せばいいものを、硬直して戸惑う春花。気まずくなったケニーがトイレに逃げてしまうと、春花は「気になってるの知ってるでしょ? だから緊張するんだけど、言ってほしくなかった」とキレる。「言ってほしくなかった? ごめんなさい、わかんねー、人の気持ちって(笑)」と開き直る莉咲子――。

 ここで春花は、莉咲子とやり合うのではなく、なぜか「ケニーくんと話してきていい?」と言い出し、莉咲子をキッと一睨みしてからケニーのいる男子部屋へ。二人きりになると、ここぞとばかりに涙をこぼして見せた。さすが女優!

 デリカシー皆無の自称サバサバ・莉咲子と、普段オジサンにばかりちやほやされているが故に同年代のノリに疎く、自分の幼さや重さに気付けていない春花。どっちもどっちなバトルだが、この二人に挟まれる香織が最も気の毒である。次回、ケニーの反応にも注目したい。

『ザ・ノンフィクション』なにが三次郎をそこまで銭湯に駆り立てるのか「ボクは梅湯の三次郎~野望編~」

 NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月14日放送のテーマは「ボクは梅湯の三次郎~野望編~」。京都で廃業寸前の銭湯を人気店に復活させた男が二号店に挑む。

あらすじ:廃業寸前の銭湯を軌道に乗せた三次郎、「野望」の二号店へ

 大学時代に銭湯に魅了され、全国の銭湯を巡った湊三次郎は廃業寸前の京都「サウナの梅湯」を25歳で引き継ぐ。3年後、梅湯を軌道に乗せた三次郎は、二店舗目として滋賀県大津で店主が亡くなり休業していた銭湯「都湯」の経営にも乗り出す。三次郎とスタッフたちの奮闘の日々を追う。

銭湯に行ったことがなくても、なぜか懐かしい

 私は「スーパー銭湯」や「スパ」は行ったことがあるが、三次郎が経営するような「銭湯」には一度も行ったことがない。近所にないからだ。東京都のサイトを見ても、平成17年に1,025軒あった銭湯は、平成29年には562軒とほぼ半減している。

 銭湯は都道府県ごとに入場料の規定があり、梅湯、都湯のある京都府と滋賀県の入浴料は大人430円だ。なお一例だが、全国でスーパー銭湯を運営する「極楽湯」奈良店は入館料440円(店舗ごとに料金が異なる)で、ほぼ銭湯と同額。金額が同等であれば、設備が充実している方が魅力的に思えるものだが、その点、銭湯はスーパー銭湯やスパに比べて見劣りしてしまうだろう。

 一方で、スーパー銭湯やスパにない銭湯ならではの魅力は、そのレトロ感だ。「レトロ風」に新しく作られた観光施設は薄っぺらさがあるが、梅湯も都湯も昭和の面影が残る本物のレトロだ。新興住宅地に育ち、銭湯に一度も行ったことがない私ですら、梅湯の外壁にある「サウナの梅湯」というネオンが、夜空にほんのり光っているのを見たとき、心の中の「三丁目の夕日」がくすぐられグッときてしまった。

 「経験したことのないものを懐かしく感じる」とは不思議な感覚だが、これこそ銭湯が共通したイメージを想起させる「文化」であることの表れなのだろう。

「人の上に立ち、目的の意識付けを図り、仕事を他人に任せる」というマネジメント業務は苦労の多い仕事だ。三次郎自身も、人に指示するより自分でやった方が楽と話していたが、二店舗運営となるとそうはいかない。さらに三次郎の野望は二店舗にとどまらず、同じく銭湯で働く弟とともに、後継者問題で経営が立ち行かなくなっている全国の銭湯を積極的に「引き取る」方針で、番組内では東京まで遠征もしていた。

 そのような中、三次郎は新規スタッフを自分の銭湯の顧客や、銭湯イベントで知り合った人からスカウトする形にしていた。単に予算上の都合かもしれないが、求人サイトに広告掲載はしていない。「イチから求人」はリスキーだ。口だけ調子のいいことをいう人などゴマンとおり、たいていの組織に「なぜあんなのを採ったのか」という人材の一人や二人はいるだろう。面接以外の場で、すでに数回話したことのある人であれば、そういった残念なケースは防ぎやすくなる。

 番組内で、三次郎のスタッフが一番「しでかしていた」のは、深夜シフトの若手スタッフ・陸が無断で早退し たときだ。陸は、まだあどけないと言っていいほど表情など若く、自分を雇用した三次郎のことを「先輩っていう感じでも上司って感じでもない、ここをやってくれている人」 と屈託なく話す様子も、しみじみ若い。

 三次郎は無断早退に激怒しクビにしようとしていたが、陸は銭湯を辞めたくないと話し、その後も働いている姿が放送で確認できた。陸の若さに免じ、三次郎は「一発アウト」としなかったのだろう。この経験は若い陸にも、できれば自ら動きたい派の三次郎にも、貴重なものになったのではないだろうか。

 25歳の女性スタッフ・藤内 は、女将候補として三次郎にも期待されていたが、兼業していたため都湯への参画が十分にできず、てきぱき動いているスタッフと自分を比較し落ち込むこともあった。しかし、番組の最後には当初苦戦していたボイラーも手慣れた様子で操作するなど成長を遂げていた。

 番組の最後で、三次郎は藤内のことを「やる気がすごくあり、思いが強い人がいるっていうのは強いですよね」 と評価していた。「思いだけが空回りする」ケースもなくはないが、しかし仕事は最終的には思いの強さがモノを言う。やる気がないことにはどうしようもないのだ。

 そして思いの強さは三次郎がダントツで、半端なく強い。都湯の経営が不振と知ればビラを配り、銭湯の前でプラカードを掲げて通行人に声を掛け続け、かたや全国の銭湯に提携できないか飛び込み営業に行く。邪険にされることも多いというが、めげていない。放送を見る限り、三次郎のもとに集まったスタッフが大きな問題を起こさなかったのも、この三次郎の銭湯への並々ならぬ思いが伝わっていたからではないだろうか。

 しかし、何が三次郎をそこまで銭湯に駆り立てるのだろう。そもそも「減っている」業界なのだから、金銭的なうまみはあまりないはずだ。滅びゆく文化をなんとか継承したいという熱意、若手銭湯界の旗手として、培ってきた日々への自負や誇り、そして銭湯愛がそうさせているのだろうが、気になることもあった。番組終盤、スタッフと花見をしているとき以外、三次郎にほぼ笑顔はなかったことだ。

もともと表情があまり出ない人のようにも見えたし、何よりボロボロの銭湯を補修しながら、素人のスタッフを引き連れての経営なので、ヘラヘラしてる余裕などないのかもしれない。しかし笑わない三次郎が、スタッフとシェアして暮らす散らかった家で、ふりかけご飯を食べ、休日をほぼ持たず黙々と銭湯の仕事をこなしていく日々に、「銭湯への愛」を超え「銭湯への執念」めいたものを感じてしまった。仕事で名を残す人になるには、ここまでしないといけないのだろう。

 次回の『ザ・ノンフィクション』も仕事をテーマにした『社長と竜造 葛西臨海公園物語』。飲食店運営会社が社運をかけた葛西臨海公園プロジェクトに挑む。竜造の出す企画に、ことごとくダメ出しする社長の真意とは?

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

『ザ・ノンフィクション』五輪という夢と呪い「運命を背負い続けて~柔道家族 朝飛家の6年~」

 NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月7日放送のテーマは「運命を背負い続けて~柔道家族 朝飛家の6年~」。1964年の東京五輪から3代続く柔道一族の悲願「五輪出場」を目指す日々。

あらすじ:3代続く柔道一族の「五輪出場」への悲願

 横浜で50年続く歴史ある柔道教室・朝飛道場。道場を開いた朝飛速夫は1964年の東京五輪でコーチを務めるも、無差別級の決勝で日本人選手の敗北を目の当たりにし、息子・大を五輪柔道選手に育て上げようと決意。しかし、早くに他界してしまう。遺志を引き継いだ大は、全日本選手権に出場するも五輪への夢はかなわず、夢は大の子どもの三人姉弟に託される。

「楽しいとはちょっと違う」の切実さ

 昔は半べそをかいていたがたくましく成長した長姉・七海と、三人姉弟の真ん中らしくマイペースな次姉・真実、パワフルな姉二人の影でおとなしい末っ子の太陽。道場の卒業式ではきょうだいでコントをするなど、和やかな家族だ。

以前、私がスキーに行ったとき、小学生くらいの息子を連れた父親がいた。子どもをプロのスキーヤーにしたいようで、父親は息子をかなりヒステリックに叱りつけ、息子はずっとうつむいていた。「毒親だ……」と雪山で気がめいってしまった。子どもは親の代理戦争の駒ではない。この一件があって以来「スポーツ父子鷹もの」を見ると身構えるようになっていたが、今回の朝飛家は穏やかな雰囲気で安心した。

 「毒親家庭」では、モンスターとなった母親と、家庭の問題に無関心な父親がペアになっているケースが多いように思うが、スポーツ系の「毒親家庭」は立場が逆転し、父親がモンスターに、母親は父親を止められない無力な存在となるように思う。しかし、朝飛家はそうではない。親子間で軽口をたたき合う姿は「柔道一家」の言葉で想起されるイメージより、ずっとカジュアルだ。

 子どもたちへの指導も、ナレーションでは「厳しく指導する」みたいに言われていたが、理屈のある叱り方であり、理不尽さは感じられない。また、印象的だったのは、大が「親の仇になっちゃいけないんですけどね、子どもたちの人生がね」と話していたことだ。

 しかし親子仲が悪くないといっても、「五輪を目指す」以上、子どもたち3人は普通の子どもが送る青春とは全く異質のストイックな10代、20代を過ごすことになる。

 七海は五輪代表の強化選手に選ばれるも、各階級で五輪に出られるのは1名のみ。柔道は日本の“お家芸”ゆえ強敵がひしめく中、ただ勝つだけではなく、勝ち続けなければ代表の座を射止めることはできない。そして、七海の五輪出場は絶望的になってしまう。大きな目標を失い、膝のケガを負い、大に止められても振り切って練習に参加していた姿が気の毒だった。五輪を目指すのは楽しいか、というスタッフの質問に、「いろんな気持ちになることがあるので、一言で楽しいというのはちょっと違うかなって」と七海は笑って話す。「楽しいです!」と偽った気持ちを答えることなく、率直に心境を表した七海の姿に、やせ我慢、根性、忍耐が美徳とされていた昔のスポーツ界からの進化を感じた。

 あらためて思うが五輪は残酷だ。4年に一度のため、選手としてのピークが五輪のタイミングに合わずに涙をのんだ人もいただろうし、選手として絶好調でありながらも、くだらない政治のしがらみの巻き添えを食らい、出場がかなわないことだってあるだろう。

 テニスやゴルフでは「4大大会」が毎年行われ、こういった大会も含めたシーズンでの獲得賞金総額で賞金王を争う。賞金王を逃しても、「4大大会」に出場することの栄誉や注目度は大きく、勝ち上がる姿は盛んに報じられる。サッカーは、五輪よりワールドカップの方が注目を集めているし、野球にはWBCがあるが、なによりプロ野球や高校野球といった国内大会の方が関心度は高いのではないか。つまり“五輪は大切な大会だけれど、それがすべてではない”スポーツはある。

 柔道も「世界柔道選手権大会」は毎年開催されているし、五輪と同等かそれ以上の権威ある大会とされているようだ。しかし、朝飛家においては「五輪以外の大会は五輪のための通過点(だから、勝ち続けないといけない)」のように見ていて感じた。他大会で優勝しようが、結局4年に1回、各階級1人しか選ばれない五輪に出られないとダメ、というのは、もはや呪いのようにすら思える。

 そして、これは何も朝飛家に限らず「五輪以外は五輪に選ばれるための通過点」、もっと極端に言ってしまえば「五輪以外は大会に非ず」と考えている競技者や、競技者の親、指導者はほかにもたくさんいるだろう。この厄介な呪いは、競技を観戦するファンを増やすことが地味ながらも「五輪だけではない」につながる道を開くようにも思える。ファンが増えれば「五輪以外」だって育つのではないか。先に上げたテニス、ゴルフ、サッカー、野球はファンが多いスポーツだ。

 基本的にその競技をやってみれば観戦も楽しめるようになるが、あらゆるスポーツをやるわけにもいかない。そこで重要なのは解説ではないだろうか。解説者は、競技者にしかわからない競技の奥深い魅力や、選手が考えていることなど観戦のポイントを一般視聴者に伝えるのが仕事だと思う。しかし、その出来も解説者によって大きく異なる。ダメな例としては、選手が結婚したとか子どもの名前とか、そんなことばかり話すタイプがある。「初心者はどこを見ればいいのか」「競技経験者のための上級解説」など、「スポーツの魅力を伝える」側にできることはたくさんあるように思えるし、それが競技者たちの「五輪の呪い」を解く一助になるのではないだろうか。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は「ボクは梅湯の三次郎~野望編~」。廃業寸前だった銭湯「サウナの梅湯」を25歳で引き継いだ湊三次郎。梅湯を人気店に育てあげ、2軒目の銭湯運営という「野望」を抱くが、個性豊かなスタッフのマネジメントに四苦八苦……、そんな奮闘の日々を追う。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

『ザ・ノンフィクション』彼女から目を離せない理由「ワケあって…坂口杏里」

NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月30日放送のテーマは『ワケあって…坂口杏里』借金、AV、芸能界引退発表からの復帰など、あわただしい半生を送る坂口杏里の今を追う。

あらすじ:あわただしい人生を送る坂口杏里の「今」

 女優・坂口良子の娘として17歳で芸能界デビューをした坂口杏里。おバカ系タレントとして人気を博するが、2013年に母が亡くなり、ホストクラブ通いから借金、AV出演、交際相手のホストとの金銭トラブルから恐喝未遂と生活は荒れる。現在は、借金の返済のため夜の仕事を行いながら芸能界復帰を目指している。そんな坂口杏里の今を『ザ・ノンフィクション』の女性ディレクターが見つめた。

杏里の「ワケ」を年表で見る

 28歳にしてすでに常人の数倍は「ワケ」を蓄積させている坂口について、番組等を参考に年表を作った。

1991年 誕生
94年 両親が離婚
2008年 芸能界デビュー。母であり女優の坂口良子はバラエティで「親子売り」に精を出し娘の売り込みに励む
13年 坂口良子死去。その後ホストクラブ通いが始まる
16年 AVデビュー
17年 交際相手のホストとの金銭トラブルにより恐喝未遂容疑で書類送検(のちに不起訴)/自身のSNSで芸能界引退を発表
18年 浅草ロック座でストリッパーデビューの予定も、直前降板。マスコミでは坂口杏里のドタキャンという論調で報じられたが、本人は『ザ・ノンフィクション』内で否定。

 番組によると18年6月時点で借金は1300万円以上。現在は夜の仕事をしながら芸能界復帰を希望しており、番組の最後では他番組に一部出演する姿も映されていた。

杏里から目が離せない人がこれだけ多い理由

 番組を見ていて、杏里は「自分がどうなりたいか」が自分でもよくわかっていないのではないかと、もどかしかった。「芸能界に復帰したい」とは番組内で本人も話しており、それは明確な意志なのだが、一方で、どういった芸能人になりたいのか、具体的にどういう人が目標で、ライバルは誰なのか、どんな番組に出たいのか、という具体像は見ている限りまったく出てこなかった。

 音楽をやりたいとバンドメンバーを公募したものの、番組内のライブで歌っていたのはカバー曲であり(オリジナル曲を放送してくれなかったのかもしれないが)、坂口良子の大ファンである杉作J太郎に呼ばれてイベントに参加し、盛況だったものの、その後の放送を見る限り「サブカルおじさんにターゲットを絞った」というふうでもないように見える。

 イベント内で杉作は「(マスコミの記事に)山ほど坂口杏里って名前は出てくるんだけど(そこに)あなたの意見は載ってないじゃないですか。それがもうかわいそうで」と話していた。杉作の言葉は優しい。当然、杏里にもマスコミへの意見はあるだろう。しかしそれ以上の、「私はこういう芸能人になりたい」という意志が番組を見る限り見えないし、本人にも具体像が見えてないように感じるのだ。番組の最後で母・坂口良子の命日に墓前で報告した際も「頑張る」「一所懸命」という言葉は頻出するのだが、「何を」「どのように」頑張るのかは出てこなかった。

 これでは気持ちばかりが空回りする日々が続いてしまう。番組内で、杏里はいつもYouTubeを見ていると話していたが、動画を見る時間で自分の今後を考えてほしいともどかしくて頭を掻いていたら、視聴者の気持ちを代弁するように「今の彼女を見て迷走していると思う人は多いと思います。それでも、生きることすらを投げ出そうとした時期を乗り越えて、迷いながらも走る姿を応援したい、これが私の正直な気持ちです」とディレクターのナレーションがあり、ハッとした。

 坂口杏里は生きるのがヘタだ。しかし一方で、強い意志や目標があり、要領がよく、杉作J太郎という人物に食らいつき、サブカルおじさんたちを手玉に取るアイドルになってやらんと抜け目なさを発揮できていたら、それはもう坂口杏里ではないし、そんな姿はさっぱり想像もつかない。

 そんな「ビックリするほど生きるのがヘタ」なところが、他芸能人にはない坂口杏里の強烈な、真似のできない魅力なのだ。それは本人にしてみたら、おそらく不本意な注目のされ方なのだろうが、一部のマスコミ、そしてその先にいる一部の人たちの心をつかんで離さないのだろう。「心をつかんで離さない」ことをできる芸能人など、そうはいない。坂口杏里には換えのきかない「スター性」があるのだ。

 しかしながらその「スター性」は「不安定さ」の上に成り立つというのが悩ましい。芸能界に限らず、漫画や文章などの分野においても、若い世代で精神的な不安定さを刺激的な作品に昇華させ、人気を博したクリエイターが、その後売れたりすると「安定して作品がつまんなくなった」と悪口を言われたりする。「不安定の上の魅力」を長期間貫くことは厳しいのだ。

 一方で、こういった不安定さを魅力に変える人々は「嫉妬」「コンプレックス」「被害者意識」がガソリンになっている人がほとんどのように、私には思える。だからこそ、満たされるとガス欠になって魅力を失うのだろうが、坂口杏里には、それら要素が私には見えない。彼女にある不安定さの根源は、そこではないように思えるのだ。つくづく坂口杏里は、唯一で、独特な人だ。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は「運命を背負い続けて~柔道家族 朝飛家の6年~」。祖父から東京オリンピックの夢を託された柔道一家、6年の軌跡。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

『ザ・ノンフィクション』彼女から目を離せない理由「ワケあって…坂口杏里」

NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月30日放送のテーマは『ワケあって…坂口杏里』借金、AV、芸能界引退発表からの復帰など、あわただしい半生を送る坂口杏里の今を追う。

あらすじ:あわただしい人生を送る坂口杏里の「今」

 女優・坂口良子の娘として17歳で芸能界デビューをした坂口杏里。おバカ系タレントとして人気を博するが、2013年に母が亡くなり、ホストクラブ通いから借金、AV出演、交際相手のホストとの金銭トラブルから恐喝未遂と生活は荒れる。現在は、借金の返済のため夜の仕事を行いながら芸能界復帰を目指している。そんな坂口杏里の今を『ザ・ノンフィクション』の女性ディレクターが見つめた。

杏里の「ワケ」を年表で見る

 28歳にしてすでに常人の数倍は「ワケ」を蓄積させている坂口について、番組等を参考に年表を作った。

1991年 誕生
94年 両親が離婚
2008年 芸能界デビュー。母であり女優の坂口良子はバラエティで「親子売り」に精を出し娘の売り込みに励む
13年 坂口良子死去。その後ホストクラブ通いが始まる
16年 AVデビュー
17年 交際相手のホストとの金銭トラブルにより恐喝未遂容疑で書類送検(のちに不起訴)/自身のSNSで芸能界引退を発表
18年 浅草ロック座でストリッパーデビューの予定も、直前降板。マスコミでは坂口杏里のドタキャンという論調で報じられたが、本人は『ザ・ノンフィクション』内で否定。

 番組によると18年6月時点で借金は1300万円以上。現在は夜の仕事をしながら芸能界復帰を希望しており、番組の最後では他番組に一部出演する姿も映されていた。

杏里から目が離せない人がこれだけ多い理由

 番組を見ていて、杏里は「自分がどうなりたいか」が自分でもよくわかっていないのではないかと、もどかしかった。「芸能界に復帰したい」とは番組内で本人も話しており、それは明確な意志なのだが、一方で、どういった芸能人になりたいのか、具体的にどういう人が目標で、ライバルは誰なのか、どんな番組に出たいのか、という具体像は見ている限りまったく出てこなかった。

 音楽をやりたいとバンドメンバーを公募したものの、番組内のライブで歌っていたのはカバー曲であり(オリジナル曲を放送してくれなかったのかもしれないが)、坂口良子の大ファンである杉作J太郎に呼ばれてイベントに参加し、盛況だったものの、その後の放送を見る限り「サブカルおじさんにターゲットを絞った」というふうでもないように見える。

 イベント内で杉作は「(マスコミの記事に)山ほど坂口杏里って名前は出てくるんだけど(そこに)あなたの意見は載ってないじゃないですか。それがもうかわいそうで」と話していた。杉作の言葉は優しい。当然、杏里にもマスコミへの意見はあるだろう。しかしそれ以上の、「私はこういう芸能人になりたい」という意志が番組を見る限り見えないし、本人にも具体像が見えてないように感じるのだ。番組の最後で母・坂口良子の命日に墓前で報告した際も「頑張る」「一所懸命」という言葉は頻出するのだが、「何を」「どのように」頑張るのかは出てこなかった。

 これでは気持ちばかりが空回りする日々が続いてしまう。番組内で、杏里はいつもYouTubeを見ていると話していたが、動画を見る時間で自分の今後を考えてほしいともどかしくて頭を掻いていたら、視聴者の気持ちを代弁するように「今の彼女を見て迷走していると思う人は多いと思います。それでも、生きることすらを投げ出そうとした時期を乗り越えて、迷いながらも走る姿を応援したい、これが私の正直な気持ちです」とディレクターのナレーションがあり、ハッとした。

 坂口杏里は生きるのがヘタだ。しかし一方で、強い意志や目標があり、要領がよく、杉作J太郎という人物に食らいつき、サブカルおじさんたちを手玉に取るアイドルになってやらんと抜け目なさを発揮できていたら、それはもう坂口杏里ではないし、そんな姿はさっぱり想像もつかない。

 そんな「ビックリするほど生きるのがヘタ」なところが、他芸能人にはない坂口杏里の強烈な、真似のできない魅力なのだ。それは本人にしてみたら、おそらく不本意な注目のされ方なのだろうが、一部のマスコミ、そしてその先にいる一部の人たちの心をつかんで離さないのだろう。「心をつかんで離さない」ことをできる芸能人など、そうはいない。坂口杏里には換えのきかない「スター性」があるのだ。

 しかしながらその「スター性」は「不安定さ」の上に成り立つというのが悩ましい。芸能界に限らず、漫画や文章などの分野においても、若い世代で精神的な不安定さを刺激的な作品に昇華させ、人気を博したクリエイターが、その後売れたりすると「安定して作品がつまんなくなった」と悪口を言われたりする。「不安定の上の魅力」を長期間貫くことは厳しいのだ。

 一方で、こういった不安定さを魅力に変える人々は「嫉妬」「コンプレックス」「被害者意識」がガソリンになっている人がほとんどのように、私には思える。だからこそ、満たされるとガス欠になって魅力を失うのだろうが、坂口杏里には、それら要素が私には見えない。彼女にある不安定さの根源は、そこではないように思えるのだ。つくづく坂口杏里は、唯一で、独特な人だ。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は「運命を背負い続けて~柔道家族 朝飛家の6年~」。祖父から東京オリンピックの夢を託された柔道一家、6年の軌跡。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

【テラスハウスレビュー】なぜケニーは突然モテ始めたのか? 女子メンバーの心境変化を考察

 見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録したリアリティ番組『テラスハウス』。現在、Netflixにて「TOKYO 2019-2020」が配信中で、ファンは個性豊かな面々の恋愛模様を、一喜一憂しながら、固唾を呑んで見守っている。そんな『テラハ』を愛する“テラハウォッチャー”が、6月後半の配信分から、グッときた“名(珍)シーン”をピックアップし、思いのままにレビューする。

莉咲子の告白、なかったことに(第5話)

 アルバイトの流佳に、第4話の終わりで「付き合って」と軽い告白をしていたフィットネストレーナーの莉咲子。その後、テラハ配信が1週お休みだったので、「どうなるの!?」とヤキモキしながら第5話の配信を待った視聴者も多いのでは。

 言ったあとで「寝ぼけてた」と莉咲子はごましていたものの、「付き合って」なんて立派な告白。いつも目にかかる前髪を邪魔そうにしながらヘラヘラしている流佳が、どのように答えたのか? 二人の関係は進展するのか!? ……と、ものすごく楽しみにしていたが、第5話はメンバー6人がリビングに揃って、新元号「令和」になる瞬間を祝う場面からスタート。その後も、「付き合って」後の流佳の反応が放送されることはなかった。拍子抜けである。

 もしかして現代のモテる若者にとって、あれくらいの軽い「付き合って」はよくあることなのだろうか。こちらの感覚が間違っていたのだろうか、と急に不安が襲ってきた。現代の若者を知るためにも、テラハを見続けたいものだ。

 自称・マルチクリエーターで俳優の翔平。仕事観やタトゥーのたくさん入った腕は個性派ではあるものの、流佳の相談に乗るなど面倒見がよく、料理も得意でメンバーによく作ってあげたりと、なんだかんだ慕われている様子だ。

 テラハのリビングには、外出先などを記す連絡ボードがあるのだが、第5話でふと映ったボードにあったのは、「愛犬に線香をあげに実家行ってきます 翔平」の文字だった。これを見た瞬間「翔平、モテる!」と確信した。「実家行ってきます」だけで足りるところを、わざわざ細かい理由を書くのは少しあざとい気はするものの、「愛犬」「線香」「実家」とノスタルジーを刺激する言葉を自然と連ねてくる翔平、これは天然のやり手である。

 第6話終了時点ではイラストレーターの香織から好意を寄せられているが、この先、さらにモテていく可能性を感じさせる一文だった。

歌詞が意外と「純恋歌」(第5話)

 ミュージシャンのケニー(健司)がボーカルを務めるバンド、SPiCYSOLのライブを見に行ったメンバーたち。そこで歌われたのが、ケニー作詞のバラード曲「Coral」だった。

 ケニーやほかのバンドメンバーのカジュアルオシャレな雰囲気から、「軽井沢編」に出演したShohey率いるバンド「THREE1989」(スリー)のような、メロウな感じの曲かなと予想したが、まったく違った。

 その歌詞は、どこか湘南乃風の「純恋歌」を思わせるほどド直球。ファンキーモンキーベイビーズのヒット曲の数々っぽくもある。良いか悪いかは別にして、ケニーのテラハでの落ち着いた感じとはイメージが違う。

 これを女性メンバーはどう受け取るのか、気になるシーンとなった。

 第2話で、仕事観の違いで「天ぷら事変」なる論争を起こしていた翔平と、女優の春花。二人は今回、翔平の誘いでゴルフの打ちっぱなしに出かけ、帰りにラーメン屋へ。そこで春花が「前に話したとき、すごい全否定しちゃったから傷付いちゃったかなって」と、切り出すと、翔平は「全然大丈夫だよ。仕事の話に限らず、そういう意見をもらえたほうがありがたい」とにこやかに返し、無事に和解した。

 その後も、翔平が「今26歳で、役者でバコーンっていく感じもないし、いけるとも思わない」と弱音もこぼすと、春花が「別に無理って決めつけなくてもいいと思う。私も結構、このままやっていけるのかな? って思ったりする。でも人のことはいつも応援したくなっちゃう」と励ますなど、絆は深まった様子だった。

 どうも今回の「東京編」メンバーには、明らかな”嫌なヤツ”が不在。「軽井沢編」で繰り広げられたドロドロの人間関係トラブルは、今のところ起こりそうにない。

ケニーがモテ期(第6話)

 第6話後半になった途端、ケニーがモテ始めた。女子3人での恋愛トーク中、莉咲子が「ケニーさんといると、めっちゃホッとするんだよね。男の人として見られる人。将来の話とかを唯一できる人かも」と言うと、春花も「流佳はかわいいから最初はすごい見ちゃってたけど、最近やっぱりケニーくんがしゃべってて楽しい。一番今、一緒にいて楽しいなってすごい思う。何か一番男らしく見える」と打ち明けた。

 第5話時点では、莉咲子も春花も流佳を好きそうな感じだったのに、何が起こったのだろうか。5~6話で流佳とケニーがしていたことを振り返ってみると、少し謎は解けた。流佳が頻繁に髪形を変え(茶髪を黒髪に→前髪を極わずかにカット→翔平のアドバイスでワックスベタ付けのセンター分け)ていた頃、ケニーはライブで歌声を披露したり、新曲のレコーディングをしたりしていた。やはり女性は、働く男に惹かれるのかもしれない。もしくは「純恋歌」ふうの歌詞も、良い方に働いたのかも。

 ケニーを巡る莉咲子と春花の駆け引きに注目したい。

【テラスハウスレビュー】なぜケニーは突然モテ始めたのか? 女子メンバーの心境変化を考察

 見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録したリアリティ番組『テラスハウス』。現在、Netflixにて「TOKYO 2019-2020」が配信中で、ファンは個性豊かな面々の恋愛模様を、一喜一憂しながら、固唾を呑んで見守っている。そんな『テラハ』を愛する“テラハウォッチャー”が、6月後半の配信分から、グッときた“名(珍)シーン”をピックアップし、思いのままにレビューする。

莉咲子の告白、なかったことに(第5話)

 アルバイトの流佳に、第4話の終わりで「付き合って」と軽い告白をしていたフィットネストレーナーの莉咲子。その後、テラハ配信が1週お休みだったので、「どうなるの!?」とヤキモキしながら第5話の配信を待った視聴者も多いのでは。

 言ったあとで「寝ぼけてた」と莉咲子はごましていたものの、「付き合って」なんて立派な告白。いつも目にかかる前髪を邪魔そうにしながらヘラヘラしている流佳が、どのように答えたのか? 二人の関係は進展するのか!? ……と、ものすごく楽しみにしていたが、第5話はメンバー6人がリビングに揃って、新元号「令和」になる瞬間を祝う場面からスタート。その後も、「付き合って」後の流佳の反応が放送されることはなかった。拍子抜けである。

 もしかして現代のモテる若者にとって、あれくらいの軽い「付き合って」はよくあることなのだろうか。こちらの感覚が間違っていたのだろうか、と急に不安が襲ってきた。現代の若者を知るためにも、テラハを見続けたいものだ。

 自称・マルチクリエーターで俳優の翔平。仕事観やタトゥーのたくさん入った腕は個性派ではあるものの、流佳の相談に乗るなど面倒見がよく、料理も得意でメンバーによく作ってあげたりと、なんだかんだ慕われている様子だ。

 テラハのリビングには、外出先などを記す連絡ボードがあるのだが、第5話でふと映ったボードにあったのは、「愛犬に線香をあげに実家行ってきます 翔平」の文字だった。これを見た瞬間「翔平、モテる!」と確信した。「実家行ってきます」だけで足りるところを、わざわざ細かい理由を書くのは少しあざとい気はするものの、「愛犬」「線香」「実家」とノスタルジーを刺激する言葉を自然と連ねてくる翔平、これは天然のやり手である。

 第6話終了時点ではイラストレーターの香織から好意を寄せられているが、この先、さらにモテていく可能性を感じさせる一文だった。

歌詞が意外と「純恋歌」(第5話)

 ミュージシャンのケニー(健司)がボーカルを務めるバンド、SPiCYSOLのライブを見に行ったメンバーたち。そこで歌われたのが、ケニー作詞のバラード曲「Coral」だった。

 ケニーやほかのバンドメンバーのカジュアルオシャレな雰囲気から、「軽井沢編」に出演したShohey率いるバンド「THREE1989」(スリー)のような、メロウな感じの曲かなと予想したが、まったく違った。

 その歌詞は、どこか湘南乃風の「純恋歌」を思わせるほどド直球。ファンキーモンキーベイビーズのヒット曲の数々っぽくもある。良いか悪いかは別にして、ケニーのテラハでの落ち着いた感じとはイメージが違う。

 これを女性メンバーはどう受け取るのか、気になるシーンとなった。

 第2話で、仕事観の違いで「天ぷら事変」なる論争を起こしていた翔平と、女優の春花。二人は今回、翔平の誘いでゴルフの打ちっぱなしに出かけ、帰りにラーメン屋へ。そこで春花が「前に話したとき、すごい全否定しちゃったから傷付いちゃったかなって」と、切り出すと、翔平は「全然大丈夫だよ。仕事の話に限らず、そういう意見をもらえたほうがありがたい」とにこやかに返し、無事に和解した。

 その後も、翔平が「今26歳で、役者でバコーンっていく感じもないし、いけるとも思わない」と弱音もこぼすと、春花が「別に無理って決めつけなくてもいいと思う。私も結構、このままやっていけるのかな? って思ったりする。でも人のことはいつも応援したくなっちゃう」と励ますなど、絆は深まった様子だった。

 どうも今回の「東京編」メンバーには、明らかな”嫌なヤツ”が不在。「軽井沢編」で繰り広げられたドロドロの人間関係トラブルは、今のところ起こりそうにない。

ケニーがモテ期(第6話)

 第6話後半になった途端、ケニーがモテ始めた。女子3人での恋愛トーク中、莉咲子が「ケニーさんといると、めっちゃホッとするんだよね。男の人として見られる人。将来の話とかを唯一できる人かも」と言うと、春花も「流佳はかわいいから最初はすごい見ちゃってたけど、最近やっぱりケニーくんがしゃべってて楽しい。一番今、一緒にいて楽しいなってすごい思う。何か一番男らしく見える」と打ち明けた。

 第5話時点では、莉咲子も春花も流佳を好きそうな感じだったのに、何が起こったのだろうか。5~6話で流佳とケニーがしていたことを振り返ってみると、少し謎は解けた。流佳が頻繁に髪形を変え(茶髪を黒髪に→前髪を極わずかにカット→翔平のアドバイスでワックスベタ付けのセンター分け)ていた頃、ケニーはライブで歌声を披露したり、新曲のレコーディングをしたりしていた。やはり女性は、働く男に惹かれるのかもしれない。もしくは「純恋歌」ふうの歌詞も、良い方に働いたのかも。

 ケニーを巡る莉咲子と春花の駆け引きに注目したい。

『ザ・ノンフィクション』整形オーディションで整形しないという決断「シンデレラになりたくて…2019」

NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月23日放送のテーマは「シンデレラになりたくて…2019(後編)」。先週に引き続き整形オーディションに懸ける二人の女性を追う。

あらすじ:整形シンデレラに懸ける二人の女性が下した異なる決断

 出場者は無料で美容整形が受けられ、さらにグランプリ受賞者には賞金300万円が贈られる湘南美容クリニック主催の『整形シンデレラオーディション』。第4回の応募者の一人、麻莉亜はひき逃げ事故に遭い、顔と足に負った傷痕を整形で目立たなくするために応募する。発達障害を抱えるりおは、自分を変えたいという思いで応募するが、合宿を通じ、整形を選ばなくても自分は変われるのではないかと手術を辞退しオーディションを終える。

「変化」を求めたりおは、手術なしでも変わったことに気づいた

 『整形シンデレラ』の応募者のうち、無料で美容整形手術を受けられるのはわずか10人。最終審査では、合宿を通じ20人が10人に絞られたが、番組途中のナレーションでは「(『Rakuten GirlsAward』 の)ランウェイを歩くことができるのは手術を受けた8人中5人」 とあった。つまり、りお以外にももう一人、手術を受けられる権利を獲得したものの、最終的に辞退した人がいたのだろう。

 このコンテストに出る以上、無料で手術ができる代わりに「美容整形手術を受けたことを公表する」ハードルもある。ここ数年で、美容整形の関連配信をメインにしたユーチューバーも増えているが、だからといって、誰もが整形を明かせるかは別問題だろう。りおが辞退を医師に告げたときに、医師は「手術は一番モヤモヤした気持ちで突入しちゃうのが一番ダメなんですよ」 と、手術しないで幸せな人生を送れるならそれでいいと、りおの決断を肯定していた。

 発達障害を抱えるりおは、中学生から不登校になり通信制の高校を中退、現在はニートで、コスプレの趣味以外ではパソコンの前に座る生活を送っている。今は家から一歩も外に出なくても、ネットを通じ最新の情報を入手できるし、人と交流することだってできる。

 できるのだが一方で、実際に生の人に会って話したりコミュニケーションを取る機会がないと、人はなかなか成長しづらいというのはよくわかる。私自身、ネットという居場所にホッとしている一人として、リアルがよくてネットがダメという気はないし、精神的にギリギリの状況にある人にとって、ネットがセーフティーネットになっている事実もわかる。しかしネットにはリアルに比べ、何かの場数が踏めず、それが「幼さ」とつながっているということもわかるのだ。

 生の人間とのコミュニケーションは面倒や鬱陶しいこと、イヤになるようなことも多い。中学で不登校になったりおにも、そういった苦労はあっただろうと推測する。一緒に暮らす父親との仲は良好なようだが、おそらく他人と話しをする機会はあまり多くなかったはずだ。

 そんな中、『整形シンデレラオーディション』での合宿、医師とのカウンセリング、そしてこの番組の取材を通じ、人と話しを重ねたことは、りおにとって自分を見つめ直す絶好の機会だったのではないだろうか。そしてその機会を通じて成長し、整形以外にも変わるためにできることがある、という結論に至ったのだろう。

 「実際に人と話す」というのは、万能薬だとつくづく思う。もちろん、安心して話せる環境であることが大前提だが。

 「顔」は美において残酷なほど重要な要素だが、一方で立っているときや歩いているときの佇まいも、美しさの大切な要素の一つだろう。今回の番組を見ていて、麻莉亜の「立っている姿や歩く姿」は頭一つ抜きん出て美しかった。

 麻莉亜は小学校から高校まで新体操をしていたのだ。インターハイ出場経験もあり現在はコーチもしている 。もともとのスタイルもいいのだが、佇まいもしなやかで美しかった。綺麗な身のこなしを競技生活の中で叩き込まれ、何度も何度も体に染み込ませていったのであろう年月を感じさせた。

 前週登場した、モデルを目指す叶華もアイドルをしている七海も「見られる自分」への意識は普通の女子よりあるだろうし、所作にも人一倍気を配っているだろうが、麻莉亜には年季の違いを感じた。コンプレックスがあると、つい目、鼻、口などその部位に意識が行きがちだが、他人の目にまず入るのは、もっと「引き」の、面積の大きいものだ。その人を表す一番大きな面積を持つ「姿勢」は、しみじみと大事だと思う。

 ところで、前後編と番組を見ていて一つ心配だったのが、「せっかく無料で手術ができるのだし」といった思いから、整形が必要以上にエスカレートしないかという点だ。企画がそもそも『整形シンデレラ』である以上、歯の矯正のみといったマイナーチェンジだけの志願者はおそらく選ばれないだろう(歯だけなら、そもそも矯正歯科のモニターという手もある)。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は『ワケあって…坂口杏里』。まだ28歳なのに「ワケあって」という言葉がこんなに似合う人を私は知らない。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

『ザ・ノンフィクション』整形オーディションに賭ける二人の女性「シンデレラになりたくて…2019」

NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月16日放送のテーマは「シンデレラになりたくて…2019(前編)」。整形オーディションに賭ける二人の女性を追う。

あらすじ:『整形シンデレラ』に賭ける二人の女性

 出場者は無料で美容整形が受けられ、さらにグランプリ受賞者には賞金300万円が贈られる湘南美容クリニック主催の『整形シンデレラオーディション』。第4回の応募者の一人、七海は地下アイドルをしている。二重のりを使った瞼のメイクに手間がかかり、何度もやり直すとメイクだけで2~3時間かかることも。モデルを目指す叶華は歯並びが気になり、アルバイトは「マスクができるから」という理由で歯科医院を選んでいる。二人と、その家族を交えながら、整形前後の様子を伝える。

“感じのいい”七海と叶華が抱える容姿コンプレックス

 整形は『ザ・ノンフィクション』十八番のテーマであり、今年3月には美容外科医に密着した「あなたの顔、治します。」が放送され、有村藍里も患者として登場している。

 七海も叶華も家族仲が良好で安心して見ていられた。「幼少の頃から親に容姿を蔑まれていた」「親が整形に猛反対している」といった家族間での“地獄”がなく、よかったと思う。

 叶華はずっと歯並びを直したかったものの、費用を気にして母親に言い出せず、『整形シンデレラ』出場をきっかけに伝えることができた。母親は、初めて悩みの根深さを知り「申し訳ない気持ちがありました。小学5年生くらいまでのときに(矯正を)やってあげていたらこんな気持ちはしなかったのかな」と話していた。

 七海は弟が3人おり、整形費用を地下アイドル活動で賄おうと思っていたが厳しく、『整形シンデレラ』への応募を決意する。容姿のコンプレックスは時に、それが原因で嫉妬心の塊になったり、愚痴や文句ばかりになったりと、精神面に暗い影を落とすこともあると思うが、七海や叶華にはそうした部分が感じられず、二人とも家族の気持ちを気遣うなど感じがいい。年齢が若いため、まだスレていないのもあるかもしれない(湘南美容外科ホームページによると、七海は21歳、叶華は20歳)。

 『整形シンデレラ』において、整形手術を無料で受けられるのは、応募者のうちわずか10人と、かなりの狭き門だ。応募者は書類審査と面接で20人に絞られ、その後、3泊4日の合宿審査が行われる。そこで、「本当に整形が必要か」などさまざまに審査された後、最終的に10人が選ばれる。

 まったくの推測だが、この合宿の過程で「メンタル面が危うい」と判断された者は落とされるのではないだろうか。感情が安定している七海と叶華を見ていて思う。しかし、容姿の苦しみはメンタル面に相当“刺さる”ものであり、とても感じよくなどしてられない人もいるはずだと、想像して思いを馳せてしまった。

 今回の整形で、叶華も、また幼少期に白血病になり抗がん剤の影響で歯が黄色っぽくなってしまった七海も、自分の歯を削り、その上に白く整った歯を被せる「セラミック矯正」を行っている。自分の身の回りを見ても、セラミックではないが、大人になってから歯の矯正をした人は結構いる。

 歯を被せる「セラミック矯正」という手段があることはいいことだし、芸能界など「美で食っていく道」を目指すならやる必要もあるだろう。でもそうでないなら、自分の歯で食べていけるに越したことはないと思う。

 私自身は、歯並び以前にそもそも歯が貧弱で、死に急ぐように永久歯になり、それも次々と虫歯になり、幼少期から奥歯はほぼ詰め物だった。年齢を重ねるにつれ、詰め物のない真っ白な奥歯を持った大人を見ると育ちの良さを感じ、自分の不摂生が恥ずかしくなる。

 つくづく、子どもにしょうもない習い事をやらせるくらいなら、歯並びの悪い子は幼いうちに矯正してやる、虫歯にならない歯の磨き方を幼少期に叩き込んでやる、それが親心だと伝えたい。叶華がそうだったが、親にしてみれば愛嬌に思えるような子供の歯並びの悪さは、当人にとって深刻な悩みだったりするのだ。

『整形シンデレラ』と『ダイアナプロポーションコンテスト』

 『整形シンデレラ』で、一つ残念な点は、応募資格者が30歳以下なところだ。

 私は以前、補整下着で有名な“プロポーションづくり”のダイアナによる全国コンテスト『年代別ゴールデンプロポーションコンテスト』を見に行ったことがある(“自分のため”のキレイを認める――美容コンテストに咲く女たちの「キレイ!」の声)

 こちらでは20代、30代、40代、50代、60代以上と世代別で表彰が行われ、それがとてもよかった。まず、「美」は若い人のためだけのものではない、という姿勢がいいし、世代別にすることで、それぞれの世代に「美しさ」はあるというメッセージがきっちり伝わった。

 『整形シンデレラ』の対象が30歳までというのは、「経済的に余裕のない若年層に選択肢を与えたい」「若い世代にもっと来院してほしい」といった意図があるかもしれないが、個人的には中年、シニア部門設立を期待したい。

 次回の『ザ・ノンフィクション』も引き続き『シンデレラになりたくて…2019(後編)』。ひき逃げ事故に遭い顔や体に傷を負ってしまった母親と、発達障害を抱えるコスプレイヤー二人に焦点を当てる。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂