【テラスハウスレビュー】ケニー、莉咲子に仕掛けた「テラハ史上最もダサいキス」を考察

 見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録したリアリティ番組『テラスハウス』。現在、Netflixにて「TOKYO 2019-2020」が配信中で、ファンは個性豊かな面々の恋愛模様を、一喜一憂しながら、固唾を呑んで見守っている。そんな『テラハ』を愛する“テラハウォッチャー”が、8月後半の配信分から、グッときた“名(珍)シーン”をピックアップし、思いのままにレビューする。

流佳、マーベル俳優への近道を発見(テラスハウス第13話)

 “マーベル俳優になりたいかもしれない”という夢を語っていたアルバイトの流佳。イラストレーターの香織から、「(夢に近付くために)バイト変えるの?」と聞かれると、下北沢にマーベルファンが集うバーを見つけたと報告し、「明日行ってみる(キリッ)」と得意げに話した。

 引き気味の香織が、「将来やりたいかもしれないところと近いバイトだといいよね。自分の今後のためになりそうなことに就けるといいよね」とやんわり諭すが、流佳は「でもそこはアメコミのバーだから。普通のバーだったら俺、行かないもん。アベンジャーズの看板があるバーだから」と珍しく反論する。どうやら、本気で「マーベルファンの集うバーに出入りすることが、マーベル俳優への第一歩だ。そんなバーを見つけた俺、よくやった」と思っているようだった。

 別に「夢がないこと」や「大きすぎる夢を見ること」がダメとは思わないけれど、流佳の場合は発想がハタチにしても幼なすぎて(尊敬する人は「仲直りさせたから」という理由で坂本龍馬、あこがれの人はヒカキン等)、心配になる。まずはバーでも何でもいいから、社会勉強をしてほしい。

ケニー、車がまさかのスクールバス(テラスハウス第13話)

 フィットネストレーナーの莉咲子に告白したバンド「SPiCYSOL」のボーカル・ケニー。しかし、莉咲子からは「とっても好きだなとは思うけど、たくさんたくさん知らないと私は付き合うっていう確信に至らない。だからまだわからない」と保留にされてしまう(莉咲子からもめちゃくちゃ好き好きアピールをしていたのに!?)。

 後日、2人はドライブデートに出かけるが、その際にケニーが乗ってきたマイカーは、「SCHOOL BUS」という看板がついたレトロでバカでかいキャンピングカーだった。「かっこいいだろ、これに乗ってる俺!」が出すぎていて、恥ずかしい。助手席がない作りで、莉咲子は運転席と離れた後部座席に座らせられ、声を張ってケニーと会話していた。とても疲れそうである。

 連れていかれた先も、台風が通過したかどうかというタイミングにもかかわらず海。車中でケニーはなぜか「海、入れます!」と断言していたものの、案の定、海は大荒れで眺めるだけだった。

 ケニーは、荒れた海を前に、まもなくテラハを卒業する意思を莉咲子に告げ、さらに「莉咲子の人生にとって、俺が必要な男かどうか考えてみて」と再告白した。「今決めろって言われたら、そこまでの気持ちではない」と、また振られるが、まだあきらめない。

 ケニーは、テラハメンバーを招待した「SPiCYSOL」のワンマンライブの最後に、「この人(莉咲子)にピッタリな曲になってました。その人にエールを、次の曲で送ってもいいかな」と話し、莉咲子を思って書いたという新曲「After Tonight」を披露してみせた。莉咲子は涙ぐんで、腕組みしながら聞きいっていたが……。

 ……いやいやいや、ライブに来てくれたほかのお客さんの気持ちを考えてみてくださいよ。ワンマンに来るくらい応援してくれているファンの前で、1人の女のため作った曲を自分に酔って歌うという茶番。これで曲が良ければまだ「彼女が創作意欲をかき立ててくれてるのね!」と少し許せるけれど、歌詞もメロディーも、特に印象に残らない薄っぺらさ。これでファンを辞めた人、何人いるだろうか。以前、「悩んだらファンのために頑張る」とドヤ顔で語っていたケニー。ファンのことを考えたら、一番やっちゃいけないことをやったのでは。

 ステージ上での動作や、その前に歌っていたケニー作詞曲「Sex On Fire」の歌詞も、恥ずかしくてまともに画面を見られなかった。いや、ベタベタなバラードで声張って「Sex On Fire」って……。

ケニー、キスがダサい(テラスハウス第13話)

 ケニーの自己陶酔バラードでヒロインモードに入ってしまった莉咲子は、泣きながら「すごい好きだったよ、好きだよ、好きだった、わかんないわかんないわかんない、行かないでとか言っていいなら、すごい言ってる。行かないで」と迷ゼリフを披露。これで「行ける!」と思ったらしいケニー、またしても莉咲子を呼び出し、「俺がテラハを出るまでにもう一度考え直して」と告げる。まだ引っ張る気である。往生際の悪さもダサい。

 さらにケニーはその後、莉咲子を待ち構えてキスを迫る。拒絶しているところを捕らえ、むりやりしようとするが逃げられて空振りし、頬のあたりにかろうじて唇を寄せていた。なんというダサさ! テラハ史上最もダサいキスに認定したい。

『ザ・ノンフィクション』、『24時間テレビ』の裏で放送した障害者ドキュメントの意味

NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。8月25日放送のテーマは「ある日 娘は障がい者になった ~車椅子のアイドルと家族の1年~」。事故で車いす生活となった仮面女子・猪狩ともかが再びステージに立つまでの日々を追っている。

あらすじ

 研修生を経て 25 歳で激しいパフォーマンスが売りのアイドルグループ・仮面女子の正規 メンバーとなった猪狩ともか。それからおよそ 1 年後の 2018 年春、レッスンへ行く途中に、強風で倒れてきた湯島聖堂(東京・文京区)の看板の下敷きになってしまう。この事故で、脊髄を損傷し車 椅子生活を送ることになる。家族の支えや事務所の協力もあり「車椅子アイドル」として 復帰し、世間の注目を集める一方で、「見世物」など心ない中傷も受ける。後遺症の体調 不良もある中、それでもステージに立ち続け、さらに自分の活動を支える父親の負担を減らそうと、自身も車の運転を始める。ともかは、バリアフリー対応の神社へ家族旅行に出かけるなど活動的に日々を過ごす。

障がい者は明るく、前向きでないといけない?

 ともかは番組内でほぼ笑顔だったが「(自分は)明るいところしか出しちゃいけない気 がして。うまくマイナスのものが吐き出せなくなっちゃって。明るくいなきゃとか。嫌な 自分がいっぱい出てきてるんですよね、最近」と一度だけ涙す

 アイドルだから、そして、たくさんの人に支えてもらい生活しているのだから「マイナ スな感情を出してはいけない」と考え、苦しんでいるのかもしれない。不慮の事故で車い す生活になっただけでもつらいはずなのに、こうした呪縛にまでかかっているのだ。そし て、これは少なくない障害者の胸にも刺さっている“第二の矢”なのだろうかと思う。合宿に途中参加するも、リハーサルの最中に体調不良で嘔吐し、仮面女子の元気な歌がずっと聞こえ続ける体育館の片隅で、布団にくるまり寝ているともかの無念を思うと切なかった。

 今回の放送は、裏で日本テレビが『24時間テレビ~愛は地球を救う~』を放送してい たが、『24時間テレビ』における障がい者の報じ方は美談調が多く、それに対する批判 も多い。一方ここ数年、NHK Eテレの情報番組『バリバラ』は『24 時間テレビ』の裏で「検証!『障害者×感動』の方程式」「2.4 時間テレビ 愛の不自由、」といったテーマを掲げ、障害者の“本音”を伝える内容をぶつけて放送している。

 『24時間テレビ』への批判は私も同調するところはあるし、尺稼ぎにしか見えないマラソンはなくして『12時間テレビ』にすればいいのにとも思うが、一方、毎年約 8~9 億 円ほどの募金を集めているという実績もある。そしてホームページでは、その使い道も詳 細に報告されている。

 特にネット上では、『24時間テレビ』にしらけている人ほど意見を発信する傾向がある ため批判的な反応が目立つものの、実際は、美談に涙する人や、走るいとうあさこを見て コンビニにおつりを募金する人が多数存在し、それが相当な金額になっている現実がある。

 美談と本音、どちらか一方のみが「正解」ではないが、選択肢があるのは“豊かさ”といえるだろう。その点で『24 時間テレビ』と『バリバラ』は、いいコンビともいえる。そして今年はさらに、ともかがいた。

 ともかの番組内容は、美談や本音ともまた違い、淡々と日々を追っていた。脊髄損傷になると尿意も感じなくなり、数時間おきと決めてトイレへ行かないといけないことや、原因のわ からない体調不良にもなること。バリアフリー化が進んでいるとはいえ、電車などの公共 交通機関は車椅子生活では気兼ねしたり、不便なことも多いということ。これらは、すべて今回番組を通じて知った。

 今回『ザ・ノンフィクション』がともかの回を『24時間テレビ』の裏に当てたのは、 きっと『バリバラ』同様に“狙った”のだろう。その結果、日テレ、NHK、フジテレビの3局が8月25日に障害に関する番組を放送した。この“超党派”によって、これまで「明るいところしか出しちゃいけない」番組しかなかったところから、そうでない伝え方ができている。数が増えれば、またさまざまな伝え方が増えていくはずだ。

 『24時間テレビ』が放送される8月は、日本人にとって原爆が投下された終戦の月であり 「戦争」をテーマにした番組が多く放送される月でもある。気が重い、暗くなる、つらい、 と避ける人も多いし、私自身見ないことの方が多い。それでも、それら番組によって「今年もこの時期が来た」と戦争についてわずかでも思いを馳せることはあるだけに、その流れだけはなくなってほしくない。

 『24時間テレビ』は8月の最終週の週末に放送されることが多い。そして、それに合わせ他局が障害の番組を同日に放送する流れが今後さらに加速していけば、8月が戦争の困難の中 生きた人や命を落とした人に思いを馳せるのと同様に、今、障害を抱え、困難の中生き ている人に対して思い、考える月になっていけるのかもしれない。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は「サ母さん 帰ってきてほしいんだ ~フィリピンパブ嬢の母とボク~」フィリピンパブで働く女性とその客である日本人男性の間に生まれた2人の青年による漫才コンビ「ぱろぱろ」。同じ境遇の2人が抱えるそれぞれの家族の問題について。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

【テラスハウスレビュー】最年少・流佳、「かわいい~」では済まされなくなってきたおバカ言動

 見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録したリアリティ番組『テラスハウス』。現在、Netflixにて「TOKYO 2019-2020」が配信中で、ファンは個性豊かな面々の恋愛模様を、一喜一憂しながら、固唾を呑んで見守っている。そんな『テラハ』を愛する“テラハウォッチャー”が、8月の前半配信分から、グッときた“名(珍)シーン”をピックアップし、思いのままにレビューする。

流佳、夢はマーベル俳優(テラスハウス第11~12話)

 以前、将来の目標を「ヒーローになりたい、マーベルが好き」と言っていたアルバイトの流佳。第11話では、イラストレーターの香織にあらためて将来について聞かれると、「今はいろんな考えが頭の中ごちゃごちゃしてる。何からどうやればいいかわかんなくなって。最初の動きが。今思ってんのは、スタントマンじゃないんすよ」と言い出す。「ヒーローになりたい」は冗談や何かの例えでなく、本気で「マーベル映画に俳優として出る」ことを指しているという衝撃の事実が明らかになった。

 その場にいた香織以外のメンバーも、これには「ロバート・ダウニー・Jrってこと?」「俳優さん!?」と驚く。流佳は「そうそう。かっこいい人にはなりたいなって、すごいあこがれを持ってる」と平然と話したが、「俳優さんとしてマーベルを見てるの?」「英語は?」「演技の勉強は?」「どんなふうにかなえようとしてる?」と詰められると、口をつぐんでしまった。

 また12話では、女優の春花に尊敬する人物を聞かれ、マーベルヒーローを挙げるのかと思いきや「坂本龍馬とか」。理由を問われると、「えーと、自分がぁ、危ないとわかってんのにぃ、自分の足でぇ、いろんなとこまわってぇ、仲直りさせた」と幼稚園児のような回答を披露した。

 最年少20歳といえども、さすがに「かわいい~」では済まされないレベルであることがわかってきた。マーベルにも坂本龍馬にも罪はないのに、ただただ流佳の幼さ(おバカさ)を強調するアイテムになってしまい、気の毒である。

 マルチクリエーターを目指す俳優の翔平は、ピンク映画『バージン協奏曲』の撮影へ。ソープランドのようなセットで、全裸の翔平が、パンティー1枚の女優さんと絡み合うシーンの撮影風景が放送された。その時間なんと70秒間! さすがNetflix! 

 結構、濃厚なシーンだったが、スタジオの山ちゃん(南海キャンディーズ・山里亮太)は「やっぱり聖南とノアの方がうまいな~」との感想。確かに、軽井沢編でモデルのノア&聖南が繰り広げた伝説の“騎乗位キスからのラブホ行き”の方が断然リアルで、生々しいエロさがあった。

 しかし翔平のこのシーン、地上波での放送ではカットされるかもしれないので、要チェックです(翔平の濡れ場に興味のある方には)。

流佳、戦慄の手料理(テラスハウス第11話)

 将来の目標の甘さや普段の生活態度について、春花とバンド「SPiCYSOL」のボーカル・ケニーにお説教をされた流佳。おバカだけれど根が素直な流佳は、自立の第一歩として「俺、これから料理してみる、いっぱい!」と心を決めた。

 「カルボナーラ風パスタにする予定です」とキッチンに立ったが、パスタを茹でているお湯の中に溶き卵を入れるという謎の暴挙。さらにその鍋の上で、ブロッコリーをキッチンバサミでチョキチョキして直接インした。味付けをした様子もない。見守っていた春花に「味がしない。味がしないって、失敗なんですかね?」と不思議そうに言っていたが、結局おかわりまでして完食していた。

 お説教にも腐らず第一歩を踏み出した流佳、えらいぞ! と思いつつ、「なぜレシピ検索をしなかったのだろう」「カルボナーラに卵が入ることだけは知っていたのはなぜだろう」と流佳への謎は深まった。

 ケニーは、香織に「ネット掲示板で見たんだけど」と、“春花がフィットネストレーナーの莉咲子のインスタをブロックした疑惑”を相談。「春花がふっかけてるようにしか見えない」「春花が怖い」と、ネット掲示板の情報にかなり影響を受けているようだった。

 結局、香織に促される形になった春花が、莉咲子に「フォローを外そうと思ったら間違ってブロックしちゃった」と、説明して表面上は解決したのだが、この一件で露呈したのは春花の怖さでも何でもなく、「ケニーはネット掲示板を細かくチェックしている」「しかも、かなり影響を受けている」という、アーティストとしては何となくダサい事実だった。

ケニー、謎の選曲(テラスハウス第12話)

 莉咲子に煮え切らない態度を取っていたケニーだが、翔平には「莉咲子が好き」と明かし、次のデートでは、夕日が見える逗子の海でサップをして告白しようと計画していた(治りかけではあるものの、骨盤を骨折している莉咲子をサップに連れ出そうとする神経は、よくわからない)。

 結局、サップは台風予報のため断念したのだが、別の日の昼間、テラハのプールサイドで2人きりになり、かなりいい雰囲気になったケニーと莉咲子。ケニーは、「じゃあ夕日をプレゼントしてあげられなかったかわりに、歌をプレゼントしてあげよっか、今の気持ち」とギターを持ち出してきた。

 この流れで行くなら、わかりやすいラブソングか!? と期待したものの、ケニーが弾き語りしたのは七尾旅人の「サーカスナイト」だった。素敵な曲です。でも、なぜ今、このような変化球を? ここは以前ライブで歌っていたベタベタな自作ラブソング「Coral」でもよかったのでは……。

 その夜、ケニーはあらためて莉咲子に「前は莉咲子のこと気になるって言ってたけど、今はかなり好き」と告白。莉咲子は「とってもうれしい。けど、あんまりうまく反応できない」と微妙な表情になったところで、第12話は終了。ケニーは今ごろ、ネット掲示板で自分の告白に対する評価を熱心にチェックしていることだろう。

『ザ・ノンフィクション』美奈子はイライラしたい人の“絶対的アイドル”「新・漂流家族 2019夏 ~美奈子と夫と8人の子供~」

NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。8月11、18日放送のテーマは「新・漂流家族 2019夏 ~美奈子と夫と8人の子供~」。大人気シリーズが2週にわたって放送された。

あらすじ

 『痛快!ビッグダディ』シリーズ(テレビ朝日系)で一躍有名になった美奈子の4度目の結婚相手は、元プロレスラーの佐々木義人。義人は収入安定のためバス運転手に転職し、結婚4年で2人の子どもが生まれた。幼い子どもたちは大家族で楽しそうに暮らしているが、思春期を迎えた長男星音(しおん)と長女の乃愛琉(のえる)はともに高校を中退してしまう。佐川急便で契約社員となった乃愛琉が着実な生活を送る一方で、星音はバイト探しにも身が入らない。高校を辞めてバイトも辞めたことを義人に叱責された星音は、普通科の高校に行きたかったのに、美奈子に金銭面のことを言われたために、普通科高校の進学を諦め通信制の高校を選んだのだと明かす。ぎくしゃくしていた家族は、1泊旅行をすることで久しぶりに少し話すきっかけを得て、番組は星音が新たなバイト先を探す姿で終わる。

長男に謝罪を求める美奈子と、謝る義父

 私は大家族モノが昔から苦手で、見ることを避けていた。その理由は「子どもが(特に上の子どもが)かわいそうだから」だ。そのため『ビッグダディ』系譜の「漂流家族」も今回初めて見たのだが、懸念していた「(特に上の子どもが)かわいそう」を直撃していて、すっかり暗い気持ちになっている。

 長男・星音は働きながら学ぼうと、通信高校に入学し料理人コースに進んだものの中退。義父・義人との話し合いの中で、自分が納得して学校を決めたんだろと叱責されると、「普通科高校に行きたくて、お金がどうのこうのって(美奈子に)言われたから、自分で稼いで行ける学校にした」 と話し、結婚したてでお金なかったと言われたのだと、涙しながら話す。義人はこの話を聞いて「それは知らなかった、ごめんね」と謝っている。

 学費が出せないという事情の裏には、事故や病気といったやむを得ないケースもあるだろうが、「結婚したてでお金がなかった」ことは「やむを得ない」とは思えない。 この家の場合、どう考えても子どもをこさえすぎていることが経済的困窮につながっているように見えるのだ。今の時代、 「普通科高校に行くこと」に大して意味はないように思うが、「行きたくても高校に行かせてもらえなかった」では、まったく話が変わってくる。

 星音はアルバイトを無断欠勤の上退職してしまうなど自堕落な生活を続け、美奈子は「迷惑かけたことくらい謝れ、ちゃんと顔見て」と叱る。指摘はもっともなのだが、それよりも美奈子が先に星音へ普通科高校の進学を断念させたことを謝るのが先だろうと思ってしまう。しかし星音はそれを美奈子に言い出せず、その関係性に美奈子の“毒親”の影を感じてしまった。威力の強い毒親は自分を顧みないし、それを子どもは事前に悟って諦めてしまうのだろう。長男の星音もそうだし、長女の乃愛琉からもそんなあきらめを感じてしまう。

 佐々木家の子どもは、幼い子は多くの兄弟に囲まれ屈託なく楽しそうなのだが、思春期を過ぎた子どもは、目にどこか諦めの色が見えるようになる。そうさせていることについて、おそらく何も感じてないのであろう美奈子にイライラしてしまった。

 すっかりげんなりして、イラついてしまった「漂流家族」だが、この番組はファンも多い。ファンはどう思っているのかネットを見てみたところ「怒っている」人が多く、ようやく合点した。私は下世話な番組でニヤニヤしたいのだが、「漂流家族」は美奈子に対して怒りの感情を呼び起こす番組だ。

 そして、「ニヤニヤしたい」より「怒りたい」の方が、人気のあるコンテンツなのだろう。ワイドショーで大したネタのない日は、トップニュースが「モンスタークレーマーの実態」「近所のトラブルメーカー」みたいなのが紹介されることもある。私は見たくないが、これも「怒りたい」「イライラしたい」ニーズの根強さと言える。

 美奈子の公式ブログやTwitterコメント欄は「怒り派」「説教したい派」の人が大勢いたが、息子に進学を諦めさせる美奈子が、そういった赤の他人の声に応えるわけがないと思う。私は美奈子に対し関心を寄せる気になれないが、「怒り派」の人たちにしてみれば美奈子は「イライラさせてくれ、説教させてくれ」という欲望を持つ少なくない人の期待を裏切らない、絶対的アイドルなのだろう。

 次回のザ・ノンフィクションは「ある日 娘は障がい者になった ~車椅子のアイドルと家族の1年~」。強風で飛ばされた看板にぶつかるという事故で車椅子生活となったアイドル・猪狩ともか。車椅子アイドルとして活動を続ける彼女と家族の生活を追う。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂 

『テラスハウス』軽井沢編……「最高傑作」の呼び声高いシリーズの名シーン紹介【ネタバレ注意】

 2012年からフジテレビで放送が開始され、現在最新シリーズ東京編が、Netflixで先行配信中のリアリティ番組『テラスハウス』。見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録するという内容で、そこで繰り広げられる恋愛・友情模様に、多くの視聴者が虜となり、特に一昨年から昨年にかけて放送された軽井沢編『テラスハウス OPENING NEW DOORS』は、米「TIME」誌が発表した『2018年のベストテレビ番組10(The 10 Best TV Shows of 2018)』で6位に選出されるという大快挙を達成した。

 テラハファンの間では“シリーズ最高傑作”とも称されるこの軽井沢編は、現在でもNetflixで視聴可能。そこで今回、サイゾーウーマンで過去に配信した軽井沢編のレビューをもとに、「名場面」をプレイバックしていく。特に注目を集めたメンバーは、モデルの島袋聖奈(しまぶくろ・せいな)、パイロット志望でモデルの石倉ノア(いしくら・のあ)、会社員の河野聡太(こうの・そうた)、大学生の田中優衣(たなか・ゆい)、1年生の木佐貫まや(きさぬき・まや)、モデルの谷川りさこ(たにがわ・りさこ)、元プロサッカー選手の福田愛大(ふくだ・あいお)、4人組ロックバンドのゲスの極み乙女。のベーシスト・“休日課長”こと和田理生(わだ・まさお)。

聖奈&ノア~テラスハウス史上最高に生々しい!? モデルカップルの「騎乗位キス」
 軽井沢編で3年ぶり4度目のテラハ参戦となったモデルの聖南は、パイロット志望のモデル・ノアと恋仲に。デートで暗がりのバーに入ると、酒癖の悪い2人は見事に酔っ払い、音を立ててキスを始める。それは終わる気配がなく、聖南はついにノアの膝にまたがる騎乗位スタイルで、ベロベロやり出したのだった。その長さに、スタジオのトリンドル玲奈も「キスに飽きた」と呆れ気味。タクシーに乗り込むと、ノアは「すみません、近くのホテルで」。テラハ史上最高に生々しいシーンが生まれ、ネットには「気持ち悪い」とドン引きの声が噴出していた。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2018/10/post_204983_1.html

聡太~「自意識過剰な中学生感」テラスハウスメンバーも「え?」
 IT系会社員の聡太は、25歳にしてバツイチ子持ちなのだが、自意識過剰な中学生男子感が漂う人物。ドライブに誘われただけで「え? 足ってこと?」、ジェラートをジェラと略した若者に「ジェラートね。ジェラって何?」など、いちいち面倒くさい発言をしてくるのは、いきがった中学生を思い起こさせる。さらに、自分がバツイチ子持ちであるという告白の仕方にも一癖ある。会話の中に「俺、〇〇の歳には子どもいたね」という決め台詞をさらりと仕込み、相手の「え?」を引き出してドヤ顔を見せる。「中学時代、こういう子いたわ~」と、人を酸っぱい気持ちにさせることのできる、貴重な25歳として注目を浴びた。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2018/11/post_207934_1.html

聡太~「自意識過剰なデートの誘い方」にテラスハウスメンバーが戦慄
 聡太は、その独特なデートの誘い方でも注目された。狙っているモデルのりさこと2人きりになると、「良かったら全然、俺のメガネ選ぶデートに誘っても、全然。俺に似合うメガネを選ぶ会を」と言い出し、どうやらデートに誘いたいが、「いつでも追われる俺!」という自意識が邪魔をする様子。利沙子が「どういうこと?」と困惑していると、聡太は「違う違う、俺のメガネを選ぶっていう? そういうデートはすぐ作れるんで、直近で。直近でデートを作るとしたら俺のメガネを……みたいな会はある、全然。一応そこの席は空いてるんで。タイミングが合えば」と上から目線で続け、利沙子をドン引きさせた。スタジオの山ちゃん(山里亮太)にも「聡太先生!」「天才」「喜劇王の誕生」「嫉妬に狂いそう」と言わしめる名シーンとなった。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2018/12/post_211333_1.html

聡太~テラスハウス史に残る「自意識過剰で失恋」の妙味 
 自意識過剰からくるオモシロ行動で「天才喜劇王・聡太先生」の異名を取った聡太は、「俺に似合うメガネを選ぶ会」という名のデートにりさこを誘うも、「聡太くんは自分に合うメガネを自分が一番わかってそうだから、りさこが会に参加しても無駄だな~って。迷ったら写メ送って」と、テラハ史に残る無残なお断りをされてしまった。プライドが許さない聡太は、「うん、たぶん(写メは送らず)自分で買ってくると思うけどね。オーケーオーケー、了解しました! ……っていう話だけなんで」と余裕ぶる。その様子を気まずそうに見守っていたほかの女子メンバーに気付いた聡太は、「違う違う、いつ行くか決めてなかったから『行ける日あんの? ないならないで自分で買うよ~』みたいな話でした!」と言い訳し、「ワハハハ」とむなしい笑い声を上げながら去っていった。その後、りさこ以外に、専門学生のまやにもフラれた形となった聡太は、突然テラハ卒業を決意。「これ以上は俺のイメージを壊せない」と判断したのだろうか。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2019/01/post_215683_1.html

優衣~テラスハウスNo.1「清純キャラ」大崩壊までの“伏線”
 堂々と「処女」を宣言してテラハ入りした大学生の優衣。当初は、テラハNo.1「清純キャラ」として視聴者の間でも人気があったが、ある事件によって、そのキャラが大崩壊した。りさこと結託し、まやをハブっていた優衣だが、今度はりさこの陰口で、まやと意気投合。2人は女子部屋で「りっちゃん(りさこ)はテラスハウスに本心で住んでいないように見える」と、りさこを責め始めた。なんでも、りさこは入居当初、元サッカー選手の愛大に「カメラが回っていなところで『次のデートで手つないでいいよ』と言っていた」という疑惑があり、つまり、りさこがカメラの回っていないところで、愛大に「二人の恋が進んでいると思わせる演技をしよう」と持ちかけたのではないかというのである。しかしその後、優衣がカメラの回っていないところで、愛大とキス、さらにセックスにまで及ぼうとしていたことが明るみに。そのことをりさこから問い詰められるという“ド修羅場”に発展した。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2019/02/post_219240_1.html

まや~テラスハウス最終回で不安になった「まさおの失恋」に爆笑する人間性
 軽井沢編には、ゲスの極み乙女。のベーシスト・まさおも参戦。りさこに恋をして、夜景のきれいな港で「付き合いたい、大好きです」と告白をするが、「まさおさんが気持ちを伝えてくれてからずっと考えてて、今の今まで、さっきのさっきまで考えてて。でも……何回も考えてんけど、まさおさんのことを恋愛感情で見ることができひんかった」と振られてしまう。翌日、テラスハウスに帰ったまさおは、まやに失恋を報告。まやは「え、振られたの~? アハハハ、めっちゃ笑っちゃった! アハハハハハ!」と、なぜか爆笑。まさおが「振られた瞬間に汽笛が鳴ったんだ」と続けると、「え、めっちゃおもしろ~い! アハハハハ!」とはしゃいでいた。まやの脳内が心配になる。だが“いい人”まさおは、「すっきりしたかも」と微笑んでいた。まさおに素敵な人が見つかることを祈らずにはいられない。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2019/02/post_220599_1.html

『テラスハウス』軽井沢編……「最高傑作」の呼び声高いシリーズの名シーン紹介【ネタバレ注意】

 2012年からフジテレビで放送が開始され、現在最新シリーズ東京編が、Netflixで先行配信中のリアリティ番組『テラスハウス』。見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録するという内容で、そこで繰り広げられる恋愛・友情模様に、多くの視聴者が虜となり、特に一昨年から昨年にかけて放送された軽井沢編『テラスハウス OPENING NEW DOORS』は、米「TIME」誌が発表した『2018年のベストテレビ番組10(The 10 Best TV Shows of 2018)』で6位に選出されるという大快挙を達成した。

 テラハファンの間では“シリーズ最高傑作”とも称されるこの軽井沢編は、現在でもNetflixで視聴可能。そこで今回、サイゾーウーマンで過去に配信した軽井沢編のレビューをもとに、「名場面」をプレイバックしていく。特に注目を集めたメンバーは、モデルの島袋聖奈(しまぶくろ・せいな)、パイロット志望でモデルの石倉ノア(いしくら・のあ)、会社員の河野聡太(こうの・そうた)、大学生の田中優衣(たなか・ゆい)、1年生の木佐貫まや(きさぬき・まや)、モデルの谷川りさこ(たにがわ・りさこ)、元プロサッカー選手の福田愛大(ふくだ・あいお)、4人組ロックバンドのゲスの極み乙女。のベーシスト・“休日課長”こと和田理生(わだ・まさお)。

聖奈&ノア~テラスハウス史上最高に生々しい!? モデルカップルの「騎乗位キス」
 軽井沢編で3年ぶり4度目のテラハ参戦となったモデルの聖南は、パイロット志望のモデル・ノアと恋仲に。デートで暗がりのバーに入ると、酒癖の悪い2人は見事に酔っ払い、音を立ててキスを始める。それは終わる気配がなく、聖南はついにノアの膝にまたがる騎乗位スタイルで、ベロベロやり出したのだった。その長さに、スタジオのトリンドル玲奈も「キスに飽きた」と呆れ気味。タクシーに乗り込むと、ノアは「すみません、近くのホテルで」。テラハ史上最高に生々しいシーンが生まれ、ネットには「気持ち悪い」とドン引きの声が噴出していた。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2018/10/post_204983_1.html

聡太~「自意識過剰な中学生感」テラスハウスメンバーも「え?」
 IT系会社員の聡太は、25歳にしてバツイチ子持ちなのだが、自意識過剰な中学生男子感が漂う人物。ドライブに誘われただけで「え? 足ってこと?」、ジェラートをジェラと略した若者に「ジェラートね。ジェラって何?」など、いちいち面倒くさい発言をしてくるのは、いきがった中学生を思い起こさせる。さらに、自分がバツイチ子持ちであるという告白の仕方にも一癖ある。会話の中に「俺、〇〇の歳には子どもいたね」という決め台詞をさらりと仕込み、相手の「え?」を引き出してドヤ顔を見せる。「中学時代、こういう子いたわ~」と、人を酸っぱい気持ちにさせることのできる、貴重な25歳として注目を浴びた。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2018/11/post_207934_1.html

聡太~「自意識過剰なデートの誘い方」にテラスハウスメンバーが戦慄
 聡太は、その独特なデートの誘い方でも注目された。狙っているモデルのりさこと2人きりになると、「良かったら全然、俺のメガネ選ぶデートに誘っても、全然。俺に似合うメガネを選ぶ会を」と言い出し、どうやらデートに誘いたいが、「いつでも追われる俺!」という自意識が邪魔をする様子。利沙子が「どういうこと?」と困惑していると、聡太は「違う違う、俺のメガネを選ぶっていう? そういうデートはすぐ作れるんで、直近で。直近でデートを作るとしたら俺のメガネを……みたいな会はある、全然。一応そこの席は空いてるんで。タイミングが合えば」と上から目線で続け、利沙子をドン引きさせた。スタジオの山ちゃん(山里亮太)にも「聡太先生!」「天才」「喜劇王の誕生」「嫉妬に狂いそう」と言わしめる名シーンとなった。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2018/12/post_211333_1.html

聡太~テラスハウス史に残る「自意識過剰で失恋」の妙味 
 自意識過剰からくるオモシロ行動で「天才喜劇王・聡太先生」の異名を取った聡太は、「俺に似合うメガネを選ぶ会」という名のデートにりさこを誘うも、「聡太くんは自分に合うメガネを自分が一番わかってそうだから、りさこが会に参加しても無駄だな~って。迷ったら写メ送って」と、テラハ史に残る無残なお断りをされてしまった。プライドが許さない聡太は、「うん、たぶん(写メは送らず)自分で買ってくると思うけどね。オーケーオーケー、了解しました! ……っていう話だけなんで」と余裕ぶる。その様子を気まずそうに見守っていたほかの女子メンバーに気付いた聡太は、「違う違う、いつ行くか決めてなかったから『行ける日あんの? ないならないで自分で買うよ~』みたいな話でした!」と言い訳し、「ワハハハ」とむなしい笑い声を上げながら去っていった。その後、りさこ以外に、専門学生のまやにもフラれた形となった聡太は、突然テラハ卒業を決意。「これ以上は俺のイメージを壊せない」と判断したのだろうか。

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優衣~テラスハウスNo.1「清純キャラ」大崩壊までの“伏線”
 堂々と「処女」を宣言してテラハ入りした大学生の優衣。当初は、テラハNo.1「清純キャラ」として視聴者の間でも人気があったが、ある事件によって、そのキャラが大崩壊した。りさこと結託し、まやをハブっていた優衣だが、今度はりさこの陰口で、まやと意気投合。2人は女子部屋で「りっちゃん(りさこ)はテラスハウスに本心で住んでいないように見える」と、りさこを責め始めた。なんでも、りさこは入居当初、元サッカー選手の愛大に「カメラが回っていなところで『次のデートで手つないでいいよ』と言っていた」という疑惑があり、つまり、りさこがカメラの回っていないところで、愛大に「二人の恋が進んでいると思わせる演技をしよう」と持ちかけたのではないかというのである。しかしその後、優衣がカメラの回っていないところで、愛大とキス、さらにセックスにまで及ぼうとしていたことが明るみに。そのことをりさこから問い詰められるという“ド修羅場”に発展した。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2019/02/post_219240_1.html

まや~テラスハウス最終回で不安になった「まさおの失恋」に爆笑する人間性
 軽井沢編には、ゲスの極み乙女。のベーシスト・まさおも参戦。りさこに恋をして、夜景のきれいな港で「付き合いたい、大好きです」と告白をするが、「まさおさんが気持ちを伝えてくれてからずっと考えてて、今の今まで、さっきのさっきまで考えてて。でも……何回も考えてんけど、まさおさんのことを恋愛感情で見ることができひんかった」と振られてしまう。翌日、テラスハウスに帰ったまさおは、まやに失恋を報告。まやは「え、振られたの~? アハハハ、めっちゃ笑っちゃった! アハハハハハ!」と、なぜか爆笑。まさおが「振られた瞬間に汽笛が鳴ったんだ」と続けると、「え、めっちゃおもしろ~い! アハハハハ!」とはしゃいでいた。まやの脳内が心配になる。だが“いい人”まさおは、「すっきりしたかも」と微笑んでいた。まさおに素敵な人が見つかることを祈らずにはいられない。

(詳しくはこちら)https://www.cyzowoman.com/2019/02/post_220599_1.html

『ザ・ノンフィクション』貫禄と純粋が同居する大人の魅力『一人で生きていても… ~女60代 シェアハウス始めました~』

NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。8月4日放送のテーマは「一人で生きていても… ~女60代 シェアハウス始めました~」。格安シェアハウス運営で貧困を見つめた元杉並区議が議員に返り咲くまでを追う。

あらすじ

 完全無所属で杉並区の区議会議員を3期連続で勤めた奥村たえこ(62)は落選を機にシェアハウス運営を始める。敷金礼金なし、保証金なしでも即日入居できる家賃2万円からの格安シェアハウスは、DV夫から逃げ出した女性のシェルター的役割も果たす一方、住民の家賃滞納や夜逃げなど困難も付きまとう。シェアハウス運営と並行し、たえこは杉並区議会議員補欠選挙に立候補、落選でもめげずに2019年の杉並区議会議員選挙に再度立候補し当選。返り咲きを果たす。

大人の貫禄とピュアな情熱が同居するたえこの魅力

 今回のタイトルは『一人で生きていても… ~女60代 シェアハウス始めました~』。これだけだと、バックグラウンドのない60代女性が、一念発起しシェアハウス運営にチャレンジしてみた、という内容をイメージするが全く違っていた。主人公たえこのスケールがとにかくデカいのだ。

 今回の話は、過去に3期12年を全うした区議が政治の世界に返り咲く話であり、シェアハウスは「おまけ」的位置づけに思える。シェアハウスを運営することで目の当たりにした“リアルな貧困”が、政界から引退したつもりでいたたえこを再び、政治に向かわせたのかもしれない。

 たえこを慕い、自身も世田谷区議を目指す岩井祐樹(37)は、たえこを「かっこいい」と言っていた。確かに、たえこはとんでもなくカッコいい。情熱があり賢く、口先ばっかりでも頭でっかちでもない“行動の人”だ。それでいながら偉そうな感じもないし、女性議員と聞いてつい想像してしまいがちな、クセやアクもない。

 まるで隙のないスーパーウーマンのようだが、そうでもなく、大工仕事など苦手な分野は手を抜くし、酒が好きで馴染みの居酒屋ではレバーを頼んでご満悦だったり、根っからのキティラーだったりと、愛嬌があるのだ。実際に経験を積んでいかないと身に着けられない大人ならではの“貫禄”と、社会をよりよくしていきたいという“純粋な気持ち”がいい感じに同居している。最後、返り咲いた議会の壇上で質問をしている姿は堂々としていて痺れてしまった。

 駅前で政治活動をしているご高齢の方たちに出くわすことがある。それらは、見ているこちらが切なくなってしまうような物悲しいものが多い。言っていることは正義なのだろうが、正義だからこそ伝わりにくく、そこに工夫が必要なのだとは全く思ってなさそうな“鈍感さ”が、物悲しいのだ。

 一方、たえこが区議選の街頭演説をしていると、晩御飯を差し入れする人や、区議時代の頑張りを知っていて応援すると話す人もいた。「社会的にいいことをしているのに誰も関心を寄せてくれない」と感じる人は、たえこの魅力に学ぶところは多いと思う。

 そんなたえこは、寝返りすら打てないような狭いボロアパートに住み、冬は暖房のない室温8度の部屋でマフラーをぐるぐる巻いて生活している。結構ハードな状況といえるのだが、たえこはケロッとしているので、全然つらそうに見えないし、彼女なりに工夫して暮らしているのがわかる。

 しかし、そんなたえことて、シェアハウスの入居者が家賃滞納の揚げ句、汚した食器もそのままで夜逃げしたときは、当然だがガックリきていた。金銭的に苦しい状況にある人を支援するシェアハウスの運営では、こうした事態は避けられないだろう。心が折れるようなことが連続して起こっては、たえこの魅力である明るさも蝕まれていくように思う。たえこの仕事がシェアハウス一本でなく、区議会議員という“両輪”になって本当によかったと思う。

区議を借金で断念した岩井――日本の選挙の問題点「供託金」とは

 たえこは区議に返り咲いたが、一方でたえこを慕い、一時期は世田谷区議会議員への出馬も検討した37歳の岩井は、熟考の末、出馬を最終的に断念する。「出馬するだけで100万円を超えるお金がかかり」とナレーションでは触れられており、過去に一度出馬し落選した岩井は、その際の借金がまだ残っている。妻からは「意欲とかだけではやっていけない」と言われ、友人も「一概にがんばれ、やれと言えない」と話していた。二人とも冷たいわけではなく、岩井の状況を心配しているのだ。

 この「100万円以上」は選挙活動にかかるもろもろの費用もあるだろうが、それ以前に「供託金」の問題もある。過去に日本の選挙の問題点について『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)等の著書がある長嶺超輝氏にインタビューをしたことがある。そこで挙げられたのが供託金だ。

 長嶺氏によると「選挙運動の費用とは別に、衆院選の場合は、供託金として1人300万円かかります。これは世界一高いといわれており、ヨーロッパは数万円くらいです。アメリカやフランスなど、そもそも供託金制度がない国もあります」とのこと。なお世田谷区のホームぺージを見ると、区議会選挙における供託金は30万円だった。

 人口構成的に高齢者優遇になる問題点はあれど、日本においては18歳以上であれば投票はできる。しかしこの供託金問題を考えると「出馬する側」の自由度はまだまだ低い。特に「貧困の解消」をテーマにしている政治家の卵たちは岩井のように自身も貧困で苦しんだ経験を持つ人も多いはずであり、供託金という制度はそういう人たちをふるいにかけているとも言える。

 選挙の問題としてクローズアップされがちな「投票率を上げること」に躍起になっている人もいるが、あまり成果が出ていないのは投票率が物語っている。それよりも供託金を減らしてさまざまな人が出馬しやすい環境を作る方が、結果的には政治に関心を持つ人が増えるのではないだろうか。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は『新・漂流家族 2019夏 ~美奈子と夫と8人の子供~ 前編』。説明不要の超人気シリーズ、美奈子の夏。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

【テラスハウスレビュー】ケニーは何がしたいのか? 莉咲子とのラブストーリーに募る疑惑

 見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録したリアリティ番組『テラスハウス』。現在、Netflixにて「TOKYO 2019-2020」が配信中で、ファンは個性豊かな面々の恋愛模様を、一喜一憂しながら、固唾を呑んで見守っている。そんな『テラハ』を愛する“テラハウォッチャー”が、7月後半の配信分から、グッときた“名(珍)シーン”をピックアップし、思いのままにレビューする。

春花VS莉咲子、互いの喫煙をバラし合う(第9話)

 思いを寄せるバンド「SPiCYSOL」のボーカル、ケニーをめぐってバトルするフィットネストレーナーの莉咲子&女優の春花。前回、莉咲子が春花の片思いをケニーに知らせてしまう形になり、ついに二人きりの女子部屋で直接対決となった。

 莉咲子が「(春花の)被害者ヅラが半端なくてダルい」と言い放つと、春花も頭に血が上った様子。「私は莉咲子ちゃんの秘密だって守ってるじゃん、タバコ吸ってることとか。自分、フィットネスだから隠してるんでしょ?」と突然、今回の件とはまったく関係のない莉咲子の喫煙習慣を暴露した。

 莉咲子はすかさず、「タバコ吸ってんじゃん、自分も」と言い返し、春花の喫煙も明らかに。「私、別に隠してないもん!」と強がっていた春花だが、女優業はイメージ商売。喫煙のイメージが今後のキャスティングに響くかもしれないとは、考えないのだろうか(すでに売れている女優ならまだしも……)。どっちもどっちのケンカだが、その点では、顧客に与えるイメージを考慮して喫煙を隠していた莉咲子との差を感じてしまった。

 春花との口論に嫌気が差した莉咲子。午前2時にもかかわらず、「遊びに行ってくる」とケニーに告げ、渋谷のクラブ「エッグマン」に繰り出した。

 そのことをケニーから知らされたアルバイト・流佳は、「大丈夫なの? この時間に家出て。この時間から会える友達いるの? 電車ないよ」と莉咲子の身を本気で案じ、「ケニーさんついてってくださいよ、そういう時。ダメすぎるっしょ、一人は」とケニーに物申した。

 10歳以上年下の流佳に説教されたケニーは、「ここで俺がついて行ったら余計、春花と莉咲子がこじれるじゃん」と言い訳したものの、流佳は「この時間に女の子がクラブ行っていいの? ダメな時間でしょ、今が一番。俺、迎え行きますよ、一人だったらさすがに。ダメだと思う、俺は」とキッパリ言い切った。

 いつもクネクネニヤニヤしている流佳に、こんな男気があったなんて! と見直した一方で、午前2時のクラブってそんなに恐ろしい場所なのか……と都会の闇も感じたシーンだった。

流佳、デートでおごられる(第10話)

 流佳は、「香織さんっていう人間のこれからを見たい」という理由で惹かれている、8歳年上のイラストレーター・香織とデートにこぎ着けた。新宿の世界堂へ行ったのち、流佳は「お礼したいんでご飯行きません?」と食事に誘うことにも成功。テラハに住んでから「卵かけご飯デビュー」した香織のために、流佳は卵かけご飯がおいしい店をリサーチして連れていったのだが、お会計は香織が担当。

 流佳は「香織さん待って、俺が……」と止めるものの、「さすがにハタチの子に……大丈夫です」と、やんわり拒否されてしまう。「えー、ダメっすよ……お礼なのに」と弱々しい声を出し、頭を抱える流佳だが、最後まで自分の財布を取り出すことはなかった。おごられ慣れている女子がよくやるパターン。本当に払う気、あったのだろうか。流佳、今こそ男気を見せるところだったのでは!?

 莉咲子に「気になっている」とは伝えたものの、煮え切らない態度をとっているケニー。ある夜、莉咲子を誘って2人で雑貨店「ZARA HOME」に行くと、屋上を飾り付けるキャンドルや間接照明を購入。さらにハンモック型ソファを設置したり、白い布でスクリーンを作ったりと、屋上をホームシアターに改造した。

 そこで隣り合って映画鑑賞するケニーと莉咲子。かなりムーディーな空間で、2人の体も密着しているが、肝心なことは何も言い出さないケニー。業を煮やした莉咲子が、言葉を引き出そうとあれこれ水を向けるが、ケニーは「うーん、そういうことね」「だよな」「そうだね」などの気のない相槌でかわすのみだった。

 ケニーは、絵になる空間を自ら演出し、そこに自分と女子を置いて、「自分が主人公のいい感じの映像」、つまり「自分のプロモーション映像」を撮らせたかったのではないか。確かに画はロマンチックだったけれど、莉咲子に対して何をしたいのかわからないケニーの態度は、逆プロモーションだったのでは……。

翔平、『バージン放浪記』出演へ(第10話)

 このところ、特に仕事をしていないように見えていたマルチクリエーターを目指す俳優の翔平。久々に俳優業が決まったらしく、春花に「今日ね、ピンク映画が決まって」と報告した。

 「ちょっとエッチな映画。おっぱい丸出しだし。ガッツリ絡みよ」と言って、見せた台本には『バージン放浪記』なるタイトルが。中身には、ここには書けない単語や行為が並んでいた。

 テラハ初日にスタジオメンバーから「AV男優っぽい」と言われていた翔平。このピンク映画がハマれば、ついに、打ち込めるジャンルを一つに絞ることができるのかもしれない。行く末がどうなるか未知すぎるが、ちょっと楽しみでもある。

『ザ・ノンフィクション』言動が演技っぽい人種とラーメン「天国のあなたへ…~「ラーメンの鬼」の背中を追って~」

 NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月28日放送のテーマは「天国のあなたへ… ~「ラーメンの鬼」の背中を追って~」。ラーメンの鬼と呼ばれた、今は亡き佐野実による、“幻のレシピ”再現に弟子が挑む。

あらすじ

 イタリアンとラーメンを融合させたラーメン店「ドゥエ イタリアン」を営むラーメンシェフ・石塚和生。ラーメンの鬼と呼ばれた「志那そばや」創業者・佐野実の弟子でもある。石塚は佐野から亡くなる直前に託されたレシピを再現し、佐野の妻・しおりからお墨付きをもらうも、メニューとして提供は行わない決断をする。

アツい感情を優先するフィーリング経営

 ラーメンに携わる人間は、よく言えば“アツく”、悪く言えば“演技っぽく”なりやすい。「ラーメンの鬼」こと佐野がラーメン指導を行っていたテレビ番組に『ガチンコ!』(TBS系)があるが、「鬼店主に弟子がビシビシしごかれる飲食ジャンル」というと、やはりラーメンが最も座りがいいように思う。

 麺の湯切りを「天空落とし」と言ったり、ラーメン店主のスタイルが示し合わせたように「頭にタオル」「作務衣系の服」「腕組みで写真撮影」であるところなど、明確な世界観があるようだ。そんな“ポーズ”はいいから、ただ食わせてくれ、というラーメンファンもいるだろうが、一方でこういうラーメンの持つ世界に魅せられているファンも多いと思う。

 今回は、主人公の石塚と、亡き佐野実の妻、しおりの二人が中心の内容だったが、両者ともアツく、かつ“演技性”を感じる人で、それがラーメンというテーマと絶妙にマッチしていた。石塚が、幻のレシピのラーメンを再現した際、二人はこんなやりとりをしている。

石塚 「親父(佐野)の顔が見えたでしょ」
しおり「これを食べたら泣けてくるよ 会いたいを超えて」
(中略)
石塚「『子どもみたいな考え方でラーメン屋はいいんだよ』(と、佐野さんから)メッセージをもらいました」

 臆面なく、こういうことを言い合える二人だ。当人たちには感動的でアツいやりとりなのだろうが、どうにも演技っぽさを感じてしまった。

 石塚がラーメン屋をやるなら、持ち前の“演技っぽさ”を生かして、シャツのボタンはがっつり開けてイタリアンシェフのポーズを取りつつ、味にはとことん真面目なラーメンシェフ、が正解だと思うが、この人のダメなところは経営もやっているところだろう。

 経営企画や売上管理などといったビジネス分野に関しては本人もまるでダメ、と言っており、過去には展開していた店を全店潰した苦い経験もある。にもかかわらず、今回も怒涛の出店計画を続けた結果、三軒茶屋店はわずか半年で閉めてしまうことになる。閉店日、石塚は店を見たくないのか閑散とした店を娘に任せ、他店の手伝いに終始していた。反省したのかと思ったら、番組の最後には、自分の青春の地である吉祥寺にまた出店しており、まったく懲りていない。この人の下では働きたくないと力強く思える“フィーリング経営者”だ。

 佐野の幻のラーメンレシピを再現したというときも、しおりのお墨付きをもらったというのに、結局石塚はそれを、「お金を取ってしまうと、全部壊れちゃうような気がする」「あれ(幻のレシピ)は何かの時にしおりさんが食べて(佐野さんを)思い出してくれたら」 と本人的にはロマンティックなつもりなのだろうが、見ている側にしてみれば今一つよくわからないことを言って、メニューとして提供しなかった。放送されたら客も来るだろうに、フィーリングで動くのは経営者としてどうなのかと思う。

 しかし、佐野の幻レシピは利尻昆布やブランド鶏肉などの材料を、鍋にホントに入るのかと思うほどふんだんに使うものだったと放送されていたので、もしかして石塚は、店で出そうとすると採算に見合わないという、純粋な経営的判断を下したうえで、自分のキザなキャラを生かして「全部壊れちゃう」みたいな言い訳をしたのかもしれない。そうであれば、経営センスを感じるのだが。

ラーメンの世界なら演技性も魅力に

 日本人は、世界においては比較的“演技性”の薄い民族だと思う。外国人の観光客が思い切りポーズを決めて撮影している姿を見て、引き気味になる人も多いだろう。他人の“演技性”に敏感なため、それが過剰な人は嘲笑やいじめの対象にもなりかねない。

 石塚やしおりといった演技がかってしまう人は、日本において堅い業種の会社勤めなどは向かないだろうが、ラーメンの世界では、それが人を引き付ける「カリスマ性」に変化するのではないか。弱点と思われがちな気質が、武器に変わる瞬間だろう。

 たいていの日本人が、そうした言動は恥ずかしくてできないのと同様に、彼らにとって「演技っぽくしない(冷めたように振る舞う)」ことは、苦痛のはずだ。そう思えば、石塚やしおりが、ラーメンの世界で生きていくのは己の持ち味を生かした道といえるだろう。

 最後になるが、ラーメン丼が手元に置かれることを「着丼」としおりは表現していたので、通ぶって使ってみるのも一興かもしれない。

 次回のザ・ノンフィクションは『一人で生きていても… ~女60代 シェアハウス始めました~』。高円寺で元区議会議員の奥山たえこが経済的に困窮する人のため、家賃2万円のシェアハウスを始める。家賃滞納などトラブルの続出にたえこが下した決断とは?

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

『ザ・ノンフィクション』おしゃれメシに変わる公的施設の懐かしい味「社長と竜造 葛西臨海公園物語」

 NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月21日放送のテーマは「社長と竜造 葛西臨海公園物語」。国内外に飲食店を運営するゼットンが社運をかけた葛西臨海プロジェクトに挑む。

あらすじ:社運をかけた一大プロジェクトに抜てきされる

 ゼットンが挑む葛西臨海公園プロジェクトは、BBQ広場とレストランのリニューアル、無料休憩所のカフェへの改修、BBQ施設の立ち上げ、さらにガーデンウェディング施設といった5つにわたる大掛かりなものだ。ゼットン・鈴木伸典社長から突如、責任者に抜てきされた松山竜造は、通常の店舗運営も行いながらも、この大型プロジェクトに取り組むことになる。

「とりあえず終わってよかったね」に残るモヤモヤ

 まず思ったのは、この社運をかけたプロジェクトに竜造が取り組むなら、竜造が普段行っている13店舗もの飲食店の運営 (うち一店舗はリニューアルも含む)という通常業務は、ほかの誰かに任せられなかったのだろうか、ということだ。通常業務と新規プロジェクトを並列して走らせる竜造は、番組内でスケジュールをすっぽかすミスをしており、迂闊な自分を責めていた。しかし、これほど忙しければうっかりミスも起きるだろう。

 社長及び上層部もしくは企業風土が、通常業務を「ほかの人に任せるのを許さなかった」というならブラックだと思うが、竜造自身が「任せなかった、任せたくなかった」のかもしれない。もし後者の場合なら、竜造は自分のすっぽかしのミスを責めるより、人を使う立場の自分が、仕事を背負いすぎてしまうことを責めた方がいいのではないかとも思う。

 番組は、忙しかったけど無事終わって良かった、これからも頑張ろう、という社長と竜造による美談といった形で終わった。しかし、どうも見ていて違和感があった。仕事が終わったタイミングで、またこんな大変な目に遭わないため、今後何をしていくべきか? と反省することなく、「とりあえず終わってよかったね」で済ませてしまう。それは、別にゼットンに限らず、多くの会社が似たようなことをしているのだが。

 そんな社長は、創業家の跡取りでなく、たたき上げで社長になったやり手だ。竜造へのダメ出しは、感覚的ではなく理屈がちゃんと通るものだった。

 例えば、メイン利用層は幼い子どもを連れて公園に遊びに来る母親であろうカフェにおいて、竜造が開発したセットメニューは「ピザ、フライドポテト、フライドチキン」。そこに、コールスローサラダをつけるように指摘するなど、ごもっともなのだ。確かに、竜造の考えた組み合わせではカラオケで出てくる「おつまみセット」すぎる。

 社長の風貌は、糸井重里をベースに萩原流行をちょい足しして2で割ったような感じで、明るく染めた髪とピタッとした明るい色のジャケットを着こなす姿は、メディアで紹介されるような“ギラギラ”とした港区の社長そのものの佇まいだ。番組を見る限り、社員の多くも「ザ・港区」な感じだったが、一方の竜造はどこかのほほんとしており、社運をかけたプロジェクトに抜てきされても「やるぞ!」と燃え上がるわけでもなく、むしろ明らかに困っていた。

 どこかおっとりした竜造は、咲くべき場所が違うのではないのかとも思えたが、「ザ・港区」な社長と、そういう社員が多いギラギラした会社だからこそ、そうじゃない社員がいるのは、ゼットンのためにもいいのだろう。社長も、竜造の優しさやホスピタリティを評価していた。会社への愛情や忠誠心はありつつも、会社のカラーとは少し違う人という存在は、組織に多様性をもたらす貴重な存在なのだと思う。

 今回の葛西臨海公園以外にも、公的な機関にゼットンのような民間資本が入る流れは進んでいくのだろう。レストラン運営に慣れた会社が入ることで、フルーツが乗ったインスタ映えするパンケーキや、ケチャップでなくグレイビーソースのかかったハンバーグなど、今どきで、味もいいメニューが、価格設定も絶妙に計算された上で展開されるのだと思う。

 しかし私は、大型病院や市役所や学校など「公」の要素が強い施設の、そっけないメシが結構好きだ。

 小学生の頃、市民プールにいった後、併設の小さな喫茶コーナーで月見うどん(200円)を食べるのが楽しみだった。よそったあと卵を落とすので全然卵が煮えていない、あの月見うどんを思うと、夏場はかき氷が出ていたとか、金髪の男の子が描かれた日世のアイスコーンの箱が店の端に積まれていたとか、塩素のにおいや屋内プールの生暖かい空気の感じや更衣室にあった赤いすのこなど、次々と記憶がよみがえっていく。今も市役所や病院などに行く用事があると、あのうまくもないが安くて懐かしい、そっけない“公メシ”を郷愁に誘われ食べてしまう。

 しかし、それらは絶滅危惧種だ。ゼットンのような民間資本が入ることで「うまくもないが安くて懐かしい」公メシは、うまいが安くはなく、でも「最新の流行とニーズをくんだおしゃれメシ」へとアップデートされていくのだ。

 私にとって「公メシ」は過去へつながる扉だ。家で食べた母の料理も懐かしいのだが、外食の懐かしさはまた特有で独特だ。変化が目まぐるしいこの時代、食事環境もアップデートの連続で育つ今の子どもは、数十年後に思い出し、グッと来たり、ほっとするような「懐かしい外食」があるのだろうかと思う。大きなお世話だが少し気になった。

 次回の『ザ・ノンフィクション』もテーマは飲食運営の『天国のあなたへ… ~「ラーメンの鬼」の背中を追って~』。ラーメンシェフと呼ばれた石塚和生、58歳。国外出店など一時期は多店舗運営をしていたが、不運な事故も重なり経営者から職人へと戻る。師匠から託されたレシピで再起を図るが、果たしてラーメンは完成するのか?

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂