『ザ・ノンフィクション』お笑い界の情と情け「はぐれ者で生きていく ~借金とギャンブルと夢の行方~」

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月9日放送のテーマは『はぐれ者で生きていく ~借金とギャンブルと夢の行方~』。落語団体に属さないはぐれ落語家の快楽亭ブラック、そしてその生き方に憧れた弟子、快楽亭ブラ坊の日々。

あらすじ

 フリー落語家の快楽亭ブラ坊、34歳。落語団体に所属していないため、「末廣亭」など寄席の高座には上がれず、落語を披露するのは飲食店やスナックだ。6年同棲していた彼女と折半するはずの家賃は3万円しか払えず、やがてそれすら払えなくなり、別れを告げられ部屋を引き払う。元彼女や愛媛の両親、知り合いから借りた金は総額300万円を超える。借金の原因はギャンブルだ。

 ブラ坊がその破天荒な生き方や落語センスに憧れ、弟子入りした師匠の快楽亭ブラックもまた、ギャンブルでの借金が2000万円を超え、立川談志から除名された過去がある。生き方に共通点はあるが、師匠・ブラックは平成12年には春風亭昇太らとともに文化庁芸術祭賞演芸部門優秀賞を受賞、 今も全国からお座敷がかかり爆笑をかっさらう。一方のブラ坊は客がまったく来ない中で落語をすることもあり、技術にも雲泥の差がある。ギャンブルからも足が洗えず、落語に身の入らない日々が続く。

 そんな中、ブラ坊はまだ師匠から客前での披露について許可を得ていない演目を、勘違いから披露してしまう。それを知ったブラックは、ブログに「破門だ」と怒りを綴るが、ブラ坊にしてみれば、直接言わずブログへ書いたことに不満を抱き、素直に謝れない。二人の関係はギクシャクしたものになる。

謝れないブラ坊が取った行動

 ブラックとブラ坊のすれ違いは、よくある「言った/言わない」が原因ともいえる。どっちかが明確に悪いと言い切れない、ギクシャクした冷戦関係は、職場や家庭にゴマンとあるだろう。こういうとき、下の立場の側が、上の側にとりあえず謝る、という選択肢だってあるはずだが、ブラ坊はすぐに謝らずしばらく考え、やはりブラックから稽古を受けたい、と考えが固まったのちに、謝罪文を携え師匠に詫びていた。

 もちろん、早期解決を試みたほうがいい場合だってあるだろう。時間がたって関係がさらに悪化したり他人を巻き込んで大ごとになったり、取り返しのつかないことになることだってある。しかし、この今回のブラ坊の「納得いかないうちは謝らない」もわかる気がする。納得いかない状態で謝っても、結局何かしこりが残り、それが後々膨らんで、取り返しのつかないことになり、ということもあり得る。どちらが正解と言い切れるものではない。謝るのは難しく、大変だ。

 ブラ坊はブラックに謝る際、ブラックの好物で、小田原でしか買えないと思われる一つ千円もする「夏柑ゼリー」3つと反省文を携え、ブラックの出張先である名古屋へと向かう。そして、関係者を交じえた打ち上げで、酒を飲み上機嫌のブラックが「夏柑ゼリーを持って詫びに来たな」と笑い、二人はようやく和解する。買うのが大変そうなゼリーを携え、東京にいるときでなく、名古屋出張中を狙ってしおらしく謝りに行くあたり、ブラ坊、こう見えてなかなかの策士ではないだろうか。

 番組中、立川一門である落語家、立川志ら玉がブラックを訪ねてきた。ブラックに古典落語を披露し、ブラックから客前で演じる許可を得た。志ら玉の前名は快楽亭ブラ汁 で、もとはブラックの弟子だったのだ。ブラックは談志から除名された際、弟弟子にあたる立川志らくに志ら玉を預ける。

 志ら玉によると、「もう(除名された)ブラックとは、付き合うなと言った人もいるといううわさは聞きましたけど、(立川)志らくは『ブラック兄さんのところに行ってやれよ、たまには帰ってやれよ』と言ってくれたんで」 とのことだ。

 個人的に、志らくといえばMCを務めている情報番組『グッとラック!』(TBS系)のイメージが強く、番組での発言がネットニュースになって炎上してる人、という印象だった。過去には、自分の劇団の手伝いに(落語の)弟子たちが来なかったことで、「全員破門にするか前座に降格するか」とツイートし波紋を呼んだこともあった。落語のイベントならともかく、志らくの劇団の手伝いなら、弟子にしてみれば関係ないとも言える。この一件では、弟子たちに同情してしまった。

 しかし、志ら玉のくだりを知ると、志らくはよくも悪くも情に厚く、その分、他人にも自分と同等の“情”を求めるタイプに思える。それは昭和的でもあり、マッチョ的ではないだろうか。しかしこれは、志らくの性格というより「落語界」、引いては「お笑い界」全体がそういう感覚をベースにしているようにも感じられる。

 ブラック、ブラ坊ともにギャンブル狂というのも、なんとも“マッチョ”だ。お笑いを志す人の中には、そうした空気になじめず苦労する人もいるだろうが、一方で人とのつながりが希薄な個人主義の時代には希少な、情みなぎる世界がたまらない人だっているだろう。そういう人にとって、「お笑い界」は幸せな場所なのかもしれない。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「もう一度 お父さんに逢いたい ~ホストの僕とフィリピンパブ嬢の母~」。大阪のホストクラブで働く日本人の父、フィリピン人の母を持つレオが、一度しか会ったことのない父親を捜す。

『ザ・ノンフィクション』お笑い界の情と情け「はぐれ者で生きていく ~借金とギャンブルと夢の行方~」

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月9日放送のテーマは『はぐれ者で生きていく ~借金とギャンブルと夢の行方~』。落語団体に属さないはぐれ落語家の快楽亭ブラック、そしてその生き方に憧れた弟子、快楽亭ブラ坊の日々。

あらすじ

 フリー落語家の快楽亭ブラ坊、34歳。落語団体に所属していないため、「末廣亭」など寄席の高座には上がれず、落語を披露するのは飲食店やスナックだ。6年同棲していた彼女と折半するはずの家賃は3万円しか払えず、やがてそれすら払えなくなり、別れを告げられ部屋を引き払う。元彼女や愛媛の両親、知り合いから借りた金は総額300万円を超える。借金の原因はギャンブルだ。

 ブラ坊がその破天荒な生き方や落語センスに憧れ、弟子入りした師匠の快楽亭ブラックもまた、ギャンブルでの借金が2000万円を超え、立川談志から除名された過去がある。生き方に共通点はあるが、師匠・ブラックは平成12年には春風亭昇太らとともに文化庁芸術祭賞演芸部門優秀賞を受賞、 今も全国からお座敷がかかり爆笑をかっさらう。一方のブラ坊は客がまったく来ない中で落語をすることもあり、技術にも雲泥の差がある。ギャンブルからも足が洗えず、落語に身の入らない日々が続く。

 そんな中、ブラ坊はまだ師匠から客前での披露について許可を得ていない演目を、勘違いから披露してしまう。それを知ったブラックは、ブログに「破門だ」と怒りを綴るが、ブラ坊にしてみれば、直接言わずブログへ書いたことに不満を抱き、素直に謝れない。二人の関係はギクシャクしたものになる。

謝れないブラ坊が取った行動

 ブラックとブラ坊のすれ違いは、よくある「言った/言わない」が原因ともいえる。どっちかが明確に悪いと言い切れない、ギクシャクした冷戦関係は、職場や家庭にゴマンとあるだろう。こういうとき、下の立場の側が、上の側にとりあえず謝る、という選択肢だってあるはずだが、ブラ坊はすぐに謝らずしばらく考え、やはりブラックから稽古を受けたい、と考えが固まったのちに、謝罪文を携え師匠に詫びていた。

 もちろん、早期解決を試みたほうがいい場合だってあるだろう。時間がたって関係がさらに悪化したり他人を巻き込んで大ごとになったり、取り返しのつかないことになることだってある。しかし、この今回のブラ坊の「納得いかないうちは謝らない」もわかる気がする。納得いかない状態で謝っても、結局何かしこりが残り、それが後々膨らんで、取り返しのつかないことになり、ということもあり得る。どちらが正解と言い切れるものではない。謝るのは難しく、大変だ。

 ブラ坊はブラックに謝る際、ブラックの好物で、小田原でしか買えないと思われる一つ千円もする「夏柑ゼリー」3つと反省文を携え、ブラックの出張先である名古屋へと向かう。そして、関係者を交じえた打ち上げで、酒を飲み上機嫌のブラックが「夏柑ゼリーを持って詫びに来たな」と笑い、二人はようやく和解する。買うのが大変そうなゼリーを携え、東京にいるときでなく、名古屋出張中を狙ってしおらしく謝りに行くあたり、ブラ坊、こう見えてなかなかの策士ではないだろうか。

 番組中、立川一門である落語家、立川志ら玉がブラックを訪ねてきた。ブラックに古典落語を披露し、ブラックから客前で演じる許可を得た。志ら玉の前名は快楽亭ブラ汁 で、もとはブラックの弟子だったのだ。ブラックは談志から除名された際、弟弟子にあたる立川志らくに志ら玉を預ける。

 志ら玉によると、「もう(除名された)ブラックとは、付き合うなと言った人もいるといううわさは聞きましたけど、(立川)志らくは『ブラック兄さんのところに行ってやれよ、たまには帰ってやれよ』と言ってくれたんで」 とのことだ。

 個人的に、志らくといえばMCを務めている情報番組『グッとラック!』(TBS系)のイメージが強く、番組での発言がネットニュースになって炎上してる人、という印象だった。過去には、自分の劇団の手伝いに(落語の)弟子たちが来なかったことで、「全員破門にするか前座に降格するか」とツイートし波紋を呼んだこともあった。落語のイベントならともかく、志らくの劇団の手伝いなら、弟子にしてみれば関係ないとも言える。この一件では、弟子たちに同情してしまった。

 しかし、志ら玉のくだりを知ると、志らくはよくも悪くも情に厚く、その分、他人にも自分と同等の“情”を求めるタイプに思える。それは昭和的でもあり、マッチョ的ではないだろうか。しかしこれは、志らくの性格というより「落語界」、引いては「お笑い界」全体がそういう感覚をベースにしているようにも感じられる。

 ブラック、ブラ坊ともにギャンブル狂というのも、なんとも“マッチョ”だ。お笑いを志す人の中には、そうした空気になじめず苦労する人もいるだろうが、一方で人とのつながりが希薄な個人主義の時代には希少な、情みなぎる世界がたまらない人だっているだろう。そういう人にとって、「お笑い界」は幸せな場所なのかもしれない。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「もう一度 お父さんに逢いたい ~ホストの僕とフィリピンパブ嬢の母~」。大阪のホストクラブで働く日本人の父、フィリピン人の母を持つレオが、一度しか会ったことのない父親を捜す。

【テラスハウスレビュー】凌に振り回されるビビと花……愛華の「高みの見物」感に思うこと

 『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』(Netflix先行配信)公式サイトより 見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録したリアリティ番組『テラスハウス』。現在、Netflixにて「TOKYO 2019-2020」が配信中で、ファンは個性豊かな面々の恋愛模様を、一喜一憂しながら、固唾を呑んで見守っている。そんな『テラハ』を愛する“テラハウォッチャー”が、1月配信分から、グッときた“名(珍)シーン”をピックアップし、思いのままにレビューする。

凌の10分<トパスの10秒(テラスハウス29話)

 プロバスケットボール選手の凌は、プロレスラーの花とモデルのビビ、2人から好意を寄せられている。花のことはあからさまにけん制し始めるが、ビビには思わせぶりとも取れるあいまいな態度を取る。そのため最近の配信では、凌とビビのソファーでのツーショットシーンがやけに長く、29話では合計約10分も続いた。ソファー上で、ビビがアピールし、凌がどっちつかずの表情で受け流す、の繰り返しが、動きのない絵面で続く10分間は長い……。何かにつけ「ビビとは話ができる」と言っている凌だが、それほど面白みある会話ができているようには見えない。

 その一方、リリー・フランキーの付き人、トパスの29話での登場は一瞬。主な発言はキッチンでの「氷嚢、探します。これです。すみません」だけだった。ソファー上の動かない凌の10分より、氷嚢を探すトパスの10秒の方が面白い。

“普通の21歳”を出す愛華(テラスハウス第30話、31話)

 トパスから「明らかにビビちゃんと花ちゃんには持ってない感情を愛華には持ってる」「見た目通りじゃないのが魅力的」と告げられた大学生(休学中)の愛華。「慣れてる子、キャバクラみたいって(視聴者に)言われてるけど、普通の21歳だからさ。それに気付いてくれてうれしい」と喜び、ほぼ両思いな雰囲気に。

 別の日の昼下がり、2人は至近距離でソファーに寝そべり、「はあ、まったり休日」「天気いい」「今日暖かい」「ねっ」と熟年夫婦のような会話を交わし、スマホをいじる。31話でも同じ体勢で寝そべり、「クリスマスソング聞いてた♪」という2人。「ザギンでシースー」発言などなかったように、“普通の21歳”感を出してくる愛華の底はまだ知れない。

 「今起きている全てが自分の責任」「愛は自分の中で作るもの」など、自己啓発書から飛び出してきたようなポジティブ発言が得意なビビ。スタンドアップコメディアン志望の快が、ネタで滑って落ち込んでいると、ビビは「自分の一番悩んでることある? それをテーマにした方が一番熱く話せるじゃん」と相談に乗ろうとする。快が「何で生きてんのか、っていうのが一番多い」と答えると、ビビは「本当にそれ考えてるの!?」と呆れ気にツッコみ、「かっこいいから今言っただけじゃなくて!? 本当にそれを?」と疑いの目を向けていた。

 コメディーのネタにするにしては「何で生きてるのか」は確かにざっくりしすぎているかもしれない。しかし、「何で生きているのか」というそもそもの部分に疑問を持っておらず、「本当にそれ考えてるの!?」と言えちゃうタイプのビビだからこそ、あそこまでポジティブ&正論を誇って生きていけるのかもしれないと納得した。

愛華、高みの見物(テラスハウス第30話、31話)

 ハッキリしない凌に振り回される花とビビ。愛華は「凌くんに聞いちゃおうかな、もう!」と張り切り、凌をプレイルームに呼び出した。凌から、花への気持ちはないこと、ビビに対しても「きれいだと思うし、話ができる。けど、遠距離恋愛する気はない」と進展させる気がないことを聞き出した。

 だが、花とビビの待つ女子部屋に戻ると、「いろんな話、できた~」ととぼけるのみ。花は詳しく知りたがるが、「当事者じゃないから……。でも聞けて良かった」と思わせぶりに言うだけで、花にもビビにも「まだわからないよ、(凌は気持ちを)出してないだけかもしれないじゃん。どうしようっていう段階だと思う」と、なぜか知り得た情報とは逆のことを言って微笑む。

 その表情には、精神的余裕を取り戻した、愛華の“高みの見物”感がよく現れている。その余裕は、トパスから好意を寄せられたこと、また、トパスが「自分を叩く視聴者」に言いたいことを全部代弁してくれたことにより、生まれたものだろう。なんとも素晴らしい表情であった。

 凌は結局、花に対し、“花にもビビにも特別な感情がない”と自分で告げる。だが、ビビには“気持ちはあるけど夢を応援したいから”と別のことを言う。女子3人が部屋にそろい、凌の発言を照らし合わせ、ビビは凌の二枚舌に「マジでヤダ、超腹立つ!」とキレる。

 すると愛華は、凌がテラハに入った理由を「私はもう勝手に売名って思ってるよ」と言い放った。テラハに売名目的なしで入る人はいないと思っていたので、「自分自身もメンバーなのに、売名を堂々と非難する愛華って、逆に何のためにテラハに出たのだろう?」と考え込んでしまった。トパスとの恋がうまくいっていても、愛華の暗躍は続きそう。大いに期待したい。

『ザ・ノンフィクション』不良少女を怒り、叱るという意味『モモコと熱血和尚 おじさん、ありがとう』

根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月2日放送のテーマは『モモコと熱血和尚 おじさん、ありがとう』。家出や反抗を繰り返す中学生、モモコが“熱血和尚”の廣中邦充さんの元で再生するまでを追う。そして、廣中さんと妻・待子さんの人生について。

あらすじ

 愛知県岡崎市にある「平成の駆け込み寺」こと西居院の住職、廣中邦充さんは、非行、虐待、いじめ、引きこもり、薬物依存といったさまざまな事情から親元で暮らせない子どもを、無償で引き取り、更生させてきた。その数20年で1,000人以上。

 九州からやってきた中学2年生のモモコも寺に引き取られる。モモコは親に対しては反抗的な態度をとり、家の壁を殴って壊したりもするが、寺では人懐っこく、勉強にも積極的に取り組むなど一見問題なさそうに過ごす。しかし、休日のたびに派手に化粧をして町に繰り出し、男に自分から声をかける生活を送っていた。モモコが無断で外泊し、廣中さんや寺のほかの子どもたちは方々を探し回る。その後、親によって見つけられたモモコは両親とともに寺に現れ、廣中さんや寺の子どもたち、さらにそれまでモモコにあまり時間を割かなかった父親にも叱られたことで、ようやく変わるきっかけをつかむ。

 廣中さんは2012年にステージ4の肺がんが見つかり、治療をしながらその後も精力的に講演活動を続けるが、17年にがんが脳に転移。19年4月、妻、待子さんや多くの寺の子どもたちに看取られ69歳の生涯を終える。

「誰もてめぇのこと信じなくなるぞ!」という怒り

 廣中さんを主役にした『ザ・ノンフィクション』シリーズは、「おじさん、ありがとう ~ショウとタクマと熱血和尚~」として昨年も放送されている

 この回では、改造学ランなど昭和の雰囲気を色濃く残した古風なヤンキー・ショウが、生気のないヤンキー・タクマの無断外泊に対し、ものすごく怒り、叱っていた。そして今回も、一見明るくソツなく振る舞いながら、町に繰り出し男に声をかけ、挙句に無断外泊するなど危うい行動をとるモモコに対し、寺の先輩格であるマヤは胸ぐらをつかみ「誰もてめぇのこと信じなくなるぞ!」と真剣に怒っていた。モモコは廣中さんにも親にも叱られていたが、姉のような存在であるマヤが叱ったことも効いたのではないだろうか。この寺では、生活を共にする仲間が怒り、叱るのだ。

 廣中さんといい、ショウといいマヤといい、他人がした悪事や迷惑に対し本気に怒り、叱れる人は、愛情のある優しい人だと思う。問題のある人に対し、令和の今、「怒る、叱る」よりも「面倒なやつだから金輪際関わらない」ほうを選択する人は多いだろうし、荒れる自分の子どもに対してすら「関わりたくない」と他人事のように思っている親も、すでに大勢いるだろう。

 廣中さんは講演で大人たちに「担任の先生も教育委員会も、確かに原因はあるかもしれないけども家庭の中にもう一つ大きな原因があるんじゃないだろうか? 自分の大好きな娘や息子が自殺をしてしまうまで気が付かない親は親じゃない!」 と訴えた。いじめられていることを親にだけは知られたくないと隠す子どもも多い。しかし、廣中さんの発言からは、子どもが隠しているようなことでも、親は気にかけ、関わり、気づいてやれなければいけないんだ、という強い思いを感じた。これは生半可な人間が言っても説得力がまるでないだろうが、1,000人を更生させた廣中さんが言うからこそ響く言葉ではないか。

 1,000人以上の子どもを更生させた廣中家では、20年にわたり、常に家には大勢の子どもたちがいた。その環境についてどう思うのか、番組スタッフが廣中さんの妻・待子さんに聞いたところ、「一人になりたいこともあるよ。だけどお父さんと二人だけだったらこの家は寂しいと思うし」「良くもあり悪くもありだ」 と笑っていた。

 待子は廣中さんが闘病中、毎日病院を訪れていた。廣中さんは最晩年、足元もおぼつかなくなってきたが、大勢が集まる説法の場で、「ありがとうって言える、今日はちょうどいい機会なんですよ」 とゆったりとした口調で待子さんに感謝を告げる。待子さんは、番組スタッフに「いずれ人間は亡くなるんだろうけどでも、お父さんは何もなくても何もできなくてもいいから、じっとそこに居(お)って欲しい」 と廣中さんへの思いを話していて、廣中夫妻のお互いへの強く深い愛情を感じた。待子さんあっての廣中さんの超人的な活動だったのだと思う。

 廣中夫妻が問題を抱えた子どもたちや、そしてお互いに対しここまで愛情豊かになれたのは、もともとの性格や仏教の教えもあるのかもしれないが、「人と関わることから逃げない」生活で育まれたものもあるのかもしれない。愛の反対は「無関心」だとマザーテレサも言っている。

 次週のザ・ノンフィクションは『はぐれ者で生きていく ~借金とギャンブルと夢の行方~』。プロの落語家だが、寄席や大ホールの高座に上がることはできず、飲食店やスナックで落語会を開く「落語界の“はぐれ者”」に憧れた、もう一人の「はぐれ者」の話。

『ザ・ノンフィクション』不良少女を怒り、叱るという意味『モモコと熱血和尚 おじさん、ありがとう』

根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月2日放送のテーマは『モモコと熱血和尚 おじさん、ありがとう』。家出や反抗を繰り返す中学生、モモコが“熱血和尚”の廣中邦充さんの元で再生するまでを追う。そして、廣中さんと妻・待子さんの人生について。

あらすじ

 愛知県岡崎市にある「平成の駆け込み寺」こと西居院の住職、廣中邦充さんは、非行、虐待、いじめ、引きこもり、薬物依存といったさまざまな事情から親元で暮らせない子どもを、無償で引き取り、更生させてきた。その数20年で1,000人以上。

 九州からやってきた中学2年生のモモコも寺に引き取られる。モモコは親に対しては反抗的な態度をとり、家の壁を殴って壊したりもするが、寺では人懐っこく、勉強にも積極的に取り組むなど一見問題なさそうに過ごす。しかし、休日のたびに派手に化粧をして町に繰り出し、男に自分から声をかける生活を送っていた。モモコが無断で外泊し、廣中さんや寺のほかの子どもたちは方々を探し回る。その後、親によって見つけられたモモコは両親とともに寺に現れ、廣中さんや寺の子どもたち、さらにそれまでモモコにあまり時間を割かなかった父親にも叱られたことで、ようやく変わるきっかけをつかむ。

 廣中さんは2012年にステージ4の肺がんが見つかり、治療をしながらその後も精力的に講演活動を続けるが、17年にがんが脳に転移。19年4月、妻、待子さんや多くの寺の子どもたちに看取られ69歳の生涯を終える。

「誰もてめぇのこと信じなくなるぞ!」という怒り

 廣中さんを主役にした『ザ・ノンフィクション』シリーズは、「おじさん、ありがとう ~ショウとタクマと熱血和尚~」として昨年も放送されている

 この回では、改造学ランなど昭和の雰囲気を色濃く残した古風なヤンキー・ショウが、生気のないヤンキー・タクマの無断外泊に対し、ものすごく怒り、叱っていた。そして今回も、一見明るくソツなく振る舞いながら、町に繰り出し男に声をかけ、挙句に無断外泊するなど危うい行動をとるモモコに対し、寺の先輩格であるマヤは胸ぐらをつかみ「誰もてめぇのこと信じなくなるぞ!」と真剣に怒っていた。モモコは廣中さんにも親にも叱られていたが、姉のような存在であるマヤが叱ったことも効いたのではないだろうか。この寺では、生活を共にする仲間が怒り、叱るのだ。

 廣中さんといい、ショウといいマヤといい、他人がした悪事や迷惑に対し本気に怒り、叱れる人は、愛情のある優しい人だと思う。問題のある人に対し、令和の今、「怒る、叱る」よりも「面倒なやつだから金輪際関わらない」ほうを選択する人は多いだろうし、荒れる自分の子どもに対してすら「関わりたくない」と他人事のように思っている親も、すでに大勢いるだろう。

 廣中さんは講演で大人たちに「担任の先生も教育委員会も、確かに原因はあるかもしれないけども家庭の中にもう一つ大きな原因があるんじゃないだろうか? 自分の大好きな娘や息子が自殺をしてしまうまで気が付かない親は親じゃない!」 と訴えた。いじめられていることを親にだけは知られたくないと隠す子どもも多い。しかし、廣中さんの発言からは、子どもが隠しているようなことでも、親は気にかけ、関わり、気づいてやれなければいけないんだ、という強い思いを感じた。これは生半可な人間が言っても説得力がまるでないだろうが、1,000人を更生させた廣中さんが言うからこそ響く言葉ではないか。

 1,000人以上の子どもを更生させた廣中家では、20年にわたり、常に家には大勢の子どもたちがいた。その環境についてどう思うのか、番組スタッフが廣中さんの妻・待子さんに聞いたところ、「一人になりたいこともあるよ。だけどお父さんと二人だけだったらこの家は寂しいと思うし」「良くもあり悪くもありだ」 と笑っていた。

 待子は廣中さんが闘病中、毎日病院を訪れていた。廣中さんは最晩年、足元もおぼつかなくなってきたが、大勢が集まる説法の場で、「ありがとうって言える、今日はちょうどいい機会なんですよ」 とゆったりとした口調で待子さんに感謝を告げる。待子さんは、番組スタッフに「いずれ人間は亡くなるんだろうけどでも、お父さんは何もなくても何もできなくてもいいから、じっとそこに居(お)って欲しい」 と廣中さんへの思いを話していて、廣中夫妻のお互いへの強く深い愛情を感じた。待子さんあっての廣中さんの超人的な活動だったのだと思う。

 廣中夫妻が問題を抱えた子どもたちや、そしてお互いに対しここまで愛情豊かになれたのは、もともとの性格や仏教の教えもあるのかもしれないが、「人と関わることから逃げない」生活で育まれたものもあるのかもしれない。愛の反対は「無関心」だとマザーテレサも言っている。

 次週のザ・ノンフィクションは『はぐれ者で生きていく ~借金とギャンブルと夢の行方~』。プロの落語家だが、寄席や大ホールの高座に上がることはできず、飲食店やスナックで落語会を開く「落語界の“はぐれ者”」に憧れた、もう一人の「はぐれ者」の話。

『ザ・ノンフィクション』農家の嫁の反抗期『私って嫁ですか 妻ですか ~農家に嫁いだ友紀子の結婚~』

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。1月19日の放送は「私って嫁ですか 妻ですか ~農家に嫁いだ友紀子の結婚~」。「子どもはつくらない」「農業は手伝わない」と宣言する農家に嫁いだ女性と、その夫の生活を追った。

あらすじ

 岩立友紀子、現在32歳。サラリーマン家庭に育つが、街コンをきっかけに500年続く柏市の専業農家の長男、昌之と結婚し6年。義両親の家の敷地内に建てた夫婦の家で暮らしている。友紀子は「子どもは嫌いでつくる予定はない」「農業は手伝わない」と宣言。農家の男性を対象にした婚活サイトを立ち上げるなど婚活事業に邁進し、さらには婚活バーを昌之の金で開業するも、客が来ず1カ月半で閉店となってしまう。

 そんな友紀子は、徐々に農業を手伝い始め、子どもに関しても人工授精による妊活を始める。4度の人工授精で妊娠はかなわなかったが、由紀子の婚活サイトは15組目の農家夫婦を誕生させた。

農家界の革命児か? 反抗期か?

 番組では友紀子の婚活サイトに登録している米農家の青年が紹介されていた。さわやかで物腰柔らかなイケメンだったが、婚活では苦戦していると話していて「農業男子」の厳しい現実をあらためて感じた。農家の人たちがいなければコンビニで野菜サラダもおにぎりも食べられない。命を支える仕事をしている人たちが、結婚できないという焦燥感や、つらい思いを抱えて生活しているのは切ない。

 しかし、家族総出で農作業する“オールドスタイル”を崩さない農家サイドにも問題はあると思う。「嫁=農作業人員+子づくり要員」は、令和の労働観、ジェンダー観にしてみれば、無理な話と思う女性の方が多いだろう。

 友紀子はそのような中で「家業は手伝わない」「子どもはつくらない」との方針を打ち立てた。オールドスタイルをぶっ壊す革命児なのか、と思ったが、番組後半になって家業を手伝いだし、結婚6年目で妊活も開始する。番組スタッフから、子どもは作らない主義では、と聞かれると、「(子どもは)好きじゃないけど農家に嫁いだ時点でそこは覚悟してますよ 」と話していた。「家業を手伝わない」「子どもをつくらない」との宣言は、新たな農家の妻像を作りだしてやるといった信念より、最初から“イエ(家制度)”に従うのはしゃくだという反抗期のようなものだったのかもしれない。

 しかし人は反抗期を過ぎることで大人になれる。これから農家と婚活サイトを兼業していく……と思いきや、番組の最後、妊活をいったん終了させた友紀子は、ゲストハウスをやりたいと語っていた。昌之に開業資金を出させたバーを1 カ月半で閉店した前科があるにもかかわらず、新たな「事業」を立ち上げるという。友紀子に限らず、猪突猛進タイプは始めるまでは勢いがあるが、続けることが苦手な人が多い。

 昌之は、嫁に来てもらった負い目があるのかもしれないが、とりあえず友紀子に金をあまり渡さないほうがいいのでは、と他人事ながら思う。一方で、なし崩し的に“嫁”にならない友紀子のしぶとさにはたくましさも感じた。

 見たところ岩立夫婦は「猪突猛進で我の強い妻・友紀子と、穏やかで辛抱強い夫・昌之」という構図に映るし、大体の場面ではそうなのだろう。しかし友紀子にだって夫への不満がある。

 友紀子は夫婦間の家事負担について、昌之が担当するはずの家事を行わないため、結局、自分がしていると番組スタッフに話していた。さらに妊活は、当初は自然妊娠を考えていたものの、友紀子が「この日だ」という日を夫に伝えても、今日は無理、疲れたと協力してくれず、それで人工授精になったのだという。

 妊活関係の記事を読むと、「いかに夫のプライドに抵触せず、その日その気になってもらうか」といったものが多い。しかし、そんな妻側だけの努力でいいのだろうか。しかも、岩立夫妻の場合は友紀子ではなく、昌之が子どもを望んでいるのだ。それなのに、「今日は無理」との理由で、手間も費用も、そして友紀子の体にも負担がかかる人工授精を4度も行っている。これでは友紀子の気持ちが妊活から離れ、ゲストハウスという新規事業に向くのも仕方ない気がする。

 感情をあらわにする友紀子のワガママは目立つが、一見穏やかな昌之の「いつの間にか家事負担は妻の方へ」「妊活時の『今日は無理』」というワガママは見えにくい。そしてこれらは昌之固有のワガママというより、少なくない男性が共通して持っているワガママともいえるのではないだろうか。

 こうしたワガママの根底には、少なくない男性が意識的/無意識的に持つ「面倒なことは女がやればいい」という考えを感じさせる。夫たちは、おそらく自分がワガママを言っている自覚すらなく、むしろ妻がうるさいことを言っている程度にしか思っていないのではないか。夫たちのこうした態度に、イラついている妻たちは多いだろう。昌之のこうした無自覚に対し、友紀子が腹を立てることに関しては、大いに応援したい。

『ザ・ノンフィクション』農家の嫁の反抗期『私って嫁ですか 妻ですか ~農家に嫁いだ友紀子の結婚~』

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。1月19日の放送は「私って嫁ですか 妻ですか ~農家に嫁いだ友紀子の結婚~」。「子どもはつくらない」「農業は手伝わない」と宣言する農家に嫁いだ女性と、その夫の生活を追った。

あらすじ

 岩立友紀子、現在32歳。サラリーマン家庭に育つが、街コンをきっかけに500年続く柏市の専業農家の長男、昌之と結婚し6年。義両親の家の敷地内に建てた夫婦の家で暮らしている。友紀子は「子どもは嫌いでつくる予定はない」「農業は手伝わない」と宣言。農家の男性を対象にした婚活サイトを立ち上げるなど婚活事業に邁進し、さらには婚活バーを昌之の金で開業するも、客が来ず1カ月半で閉店となってしまう。

 そんな友紀子は、徐々に農業を手伝い始め、子どもに関しても人工授精による妊活を始める。4度の人工授精で妊娠はかなわなかったが、由紀子の婚活サイトは15組目の農家夫婦を誕生させた。

農家界の革命児か? 反抗期か?

 番組では友紀子の婚活サイトに登録している米農家の青年が紹介されていた。さわやかで物腰柔らかなイケメンだったが、婚活では苦戦していると話していて「農業男子」の厳しい現実をあらためて感じた。農家の人たちがいなければコンビニで野菜サラダもおにぎりも食べられない。命を支える仕事をしている人たちが、結婚できないという焦燥感や、つらい思いを抱えて生活しているのは切ない。

 しかし、家族総出で農作業する“オールドスタイル”を崩さない農家サイドにも問題はあると思う。「嫁=農作業人員+子づくり要員」は、令和の労働観、ジェンダー観にしてみれば、無理な話と思う女性の方が多いだろう。

 友紀子はそのような中で「家業は手伝わない」「子どもはつくらない」との方針を打ち立てた。オールドスタイルをぶっ壊す革命児なのか、と思ったが、番組後半になって家業を手伝いだし、結婚6年目で妊活も開始する。番組スタッフから、子どもは作らない主義では、と聞かれると、「(子どもは)好きじゃないけど農家に嫁いだ時点でそこは覚悟してますよ 」と話していた。「家業を手伝わない」「子どもをつくらない」との宣言は、新たな農家の妻像を作りだしてやるといった信念より、最初から“イエ(家制度)”に従うのはしゃくだという反抗期のようなものだったのかもしれない。

 しかし人は反抗期を過ぎることで大人になれる。これから農家と婚活サイトを兼業していく……と思いきや、番組の最後、妊活をいったん終了させた友紀子は、ゲストハウスをやりたいと語っていた。昌之に開業資金を出させたバーを1 カ月半で閉店した前科があるにもかかわらず、新たな「事業」を立ち上げるという。友紀子に限らず、猪突猛進タイプは始めるまでは勢いがあるが、続けることが苦手な人が多い。

 昌之は、嫁に来てもらった負い目があるのかもしれないが、とりあえず友紀子に金をあまり渡さないほうがいいのでは、と他人事ながら思う。一方で、なし崩し的に“嫁”にならない友紀子のしぶとさにはたくましさも感じた。

 見たところ岩立夫婦は「猪突猛進で我の強い妻・友紀子と、穏やかで辛抱強い夫・昌之」という構図に映るし、大体の場面ではそうなのだろう。しかし友紀子にだって夫への不満がある。

 友紀子は夫婦間の家事負担について、昌之が担当するはずの家事を行わないため、結局、自分がしていると番組スタッフに話していた。さらに妊活は、当初は自然妊娠を考えていたものの、友紀子が「この日だ」という日を夫に伝えても、今日は無理、疲れたと協力してくれず、それで人工授精になったのだという。

 妊活関係の記事を読むと、「いかに夫のプライドに抵触せず、その日その気になってもらうか」といったものが多い。しかし、そんな妻側だけの努力でいいのだろうか。しかも、岩立夫妻の場合は友紀子ではなく、昌之が子どもを望んでいるのだ。それなのに、「今日は無理」との理由で、手間も費用も、そして友紀子の体にも負担がかかる人工授精を4度も行っている。これでは友紀子の気持ちが妊活から離れ、ゲストハウスという新規事業に向くのも仕方ない気がする。

 感情をあらわにする友紀子のワガママは目立つが、一見穏やかな昌之の「いつの間にか家事負担は妻の方へ」「妊活時の『今日は無理』」というワガママは見えにくい。そしてこれらは昌之固有のワガママというより、少なくない男性が共通して持っているワガママともいえるのではないだろうか。

 こうしたワガママの根底には、少なくない男性が意識的/無意識的に持つ「面倒なことは女がやればいい」という考えを感じさせる。夫たちは、おそらく自分がワガママを言っている自覚すらなく、むしろ妻がうるさいことを言っている程度にしか思っていないのではないか。夫たちのこうした態度に、イラついている妻たちは多いだろう。昌之のこうした無自覚に対し、友紀子が腹を立てることに関しては、大いに応援したい。

【テラスハウスレビュー】愛華のモテテク炸裂!? トパスへの「私は陽キャじゃない」発言が“匂う”ワケ

 見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録したリアリティ番組『テラスハウス』。現在、Netflixにて「TOKYO 2019-2020」が配信中で、ファンは個性豊かな面々の恋愛模様を、一喜一憂しながら、固唾を呑んで見守っている。そんな『テラハ』を愛する“テラハウォッチャー”が、年末の配信分から、グッときた“名(珍)シーン”をピックアップし、思いのままにレビューする。

愛華の「私は1軍じゃない」アピール(テラスハウス第28話)

 リリー・フランキーの付き人をしているトパスから、ランチに誘われた大学生(休学中)の愛華。ドライブ中、トパスに「俺は学生時代、(スクールカーストで)4軍、5軍にいた方。愛華ちゃんは1軍にいそう」と振られると、「すごい言われる。見た目派手だからさ、そう思われるんだけど。中身がね、根暗まではいかないけど全然、陽キャじゃないから。意外でしょ?」と嘘くさいことを言い出す。

 前回もトパスが自分自身のことを「人見知り」「暗い」「沈黙が苦じゃない」と話した時、「私も」と同調していた愛華。“暗いし人見知りだけど、見た目で1軍に入っちゃうワタシ”という種族でありたいようだ。愛華自身が思っているほど、見た目も派手じゃないぞと言いたい。

 ランチ中も愛華は、トパスに「自分に自信は全然ない。自分のことに対してはネガティブになっちゃう……」と弱音をこぼし、愛華より断然深い闇を抱えていそうなトパスが、「もっと自信持った方がいいと思う」と励ましていた。

 4軍か5軍のトパスに、1軍にいる(ように見える)自分を励ましてもらうという構図を作り、トパスの優越感と「素のこの人は俺と似てる!」という特別な仲間意識を刺激する――。これも愛華のモテテク、もしくは視聴者への媚びの一つと見た。

愛華をリリー・フランキーが分析(テラスハウス第28話)

 愛華のテクにまんまとハマっているトパス。「気になる子はできたか」と聞くリリーに、「その子(愛華)も人見知りらしくて、陰があって。CA目指してる大学生で、インスタはすごい1軍みたいな写真載せてるんですけど」と、愛華と自分の共通点を挙げる。

 すると、そこは百戦錬磨のリリー。愛華のインスタをちょっと見ただけで、「“友達、吐いて捨てるほどいます”みたいになってるよ。水着の写真もあるじゃん。めっちゃ水着で腰振りながら踊ってっけど? 一番お前と遠い星に住んでない? インスタで虚構の、虚栄の私を演じながらCAになりたいって、相当向上心というか虚栄心の高い人だから、お前と真逆の性格なんじゃないか?」とズバリ分析する。

 トパスが「自分の暗かった高校時代を取り戻すために今、青春を……」と話し出すと、「そういうの一番危険だな。思い残し症候群を回収しようとすると、絶対にどっかで(失敗する)」と予言してみせた。トパスはこの助言をどう捉えたのだろうか。

 酒癖が悪いらしいトパス。1人で飲んで帰宅すると、男子部屋で「俺、東京出てきて友達いないから、こうして6人で共同生活して、たわいもない会話して、俺、うれしいもん」と語り出し、「今まで……人に愛されたっていう、人に愛されてるなっていう実感を感じたことがないからさ。常に愛情に飢えてるの、愛情に、飢えてるの……」と涙まで流し始める。

 その後も、1人でリビングに移動して飲み続ける。女優志望のビビ、プロレスラーの花がやってくると、据わった目で「愛情に飢えてるから。今まで誰かに愛されてるっていう実感を感じたことがないから。やっぱ愛されたことがないと、人を愛することが難しいよ……」と再び“愛に飢えてる”アピールに励む。

 ビビから、「逆だよ、自分の中から愛を生むんだよ。自分で自分を磨いていく。いつまで待つの、誰かに愛されるの。強くなって、自分からその愛を作らないと。トパもね、強いと思うよ。朝イチでお皿洗いとかしてくれるじゃん。それは愛することの一つなんじゃないの?」と眩しすぎるアドバイスをもらい、やっと少し柔らかい表情になったトパス。思った以上に面倒くさい男であるらしい。

トパスの謎ファッション(テラスハウス第28話)

 いつもタートルネックを着ているイメージのトパス。スタジオメンバーからは「スタートレックの船長」とも呼ばれるように。

 そこで初登場から第28話までのファッションを振り返ってみると、黒スウェット→黒ストライプシャツ→黒スウェット→黒タートル→黒タートル→茶タートル→黒Tシャツだった。意外とタートル以外も着ていたが、どれも地味である。

 付き人という職業柄、黒子に徹するという意味合いもあるのかもしれないが、トパスの闇を象徴するようで気になる。今後、プライベートでは黄色や赤を着るトパスが見てみたい。

【テラスハウスレビュー】愛華のモテテク炸裂!? トパスへの「私は陽キャじゃない」発言が“匂う”ワケ

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愛華の「私は1軍じゃない」アピール(テラスハウス第28話)

 リリー・フランキーの付き人をしているトパスから、ランチに誘われた大学生(休学中)の愛華。ドライブ中、トパスに「俺は学生時代、(スクールカーストで)4軍、5軍にいた方。愛華ちゃんは1軍にいそう」と振られると、「すごい言われる。見た目派手だからさ、そう思われるんだけど。中身がね、根暗まではいかないけど全然、陽キャじゃないから。意外でしょ?」と嘘くさいことを言い出す。

 前回もトパスが自分自身のことを「人見知り」「暗い」「沈黙が苦じゃない」と話した時、「私も」と同調していた愛華。“暗いし人見知りだけど、見た目で1軍に入っちゃうワタシ”という種族でありたいようだ。愛華自身が思っているほど、見た目も派手じゃないぞと言いたい。

 ランチ中も愛華は、トパスに「自分に自信は全然ない。自分のことに対してはネガティブになっちゃう……」と弱音をこぼし、愛華より断然深い闇を抱えていそうなトパスが、「もっと自信持った方がいいと思う」と励ましていた。

 4軍か5軍のトパスに、1軍にいる(ように見える)自分を励ましてもらうという構図を作り、トパスの優越感と「素のこの人は俺と似てる!」という特別な仲間意識を刺激する――。これも愛華のモテテク、もしくは視聴者への媚びの一つと見た。

愛華をリリー・フランキーが分析(テラスハウス第28話)

 愛華のテクにまんまとハマっているトパス。「気になる子はできたか」と聞くリリーに、「その子(愛華)も人見知りらしくて、陰があって。CA目指してる大学生で、インスタはすごい1軍みたいな写真載せてるんですけど」と、愛華と自分の共通点を挙げる。

 すると、そこは百戦錬磨のリリー。愛華のインスタをちょっと見ただけで、「“友達、吐いて捨てるほどいます”みたいになってるよ。水着の写真もあるじゃん。めっちゃ水着で腰振りながら踊ってっけど? 一番お前と遠い星に住んでない? インスタで虚構の、虚栄の私を演じながらCAになりたいって、相当向上心というか虚栄心の高い人だから、お前と真逆の性格なんじゃないか?」とズバリ分析する。

 トパスが「自分の暗かった高校時代を取り戻すために今、青春を……」と話し出すと、「そういうの一番危険だな。思い残し症候群を回収しようとすると、絶対にどっかで(失敗する)」と予言してみせた。トパスはこの助言をどう捉えたのだろうか。

 酒癖が悪いらしいトパス。1人で飲んで帰宅すると、男子部屋で「俺、東京出てきて友達いないから、こうして6人で共同生活して、たわいもない会話して、俺、うれしいもん」と語り出し、「今まで……人に愛されたっていう、人に愛されてるなっていう実感を感じたことがないからさ。常に愛情に飢えてるの、愛情に、飢えてるの……」と涙まで流し始める。

 その後も、1人でリビングに移動して飲み続ける。女優志望のビビ、プロレスラーの花がやってくると、据わった目で「愛情に飢えてるから。今まで誰かに愛されてるっていう実感を感じたことがないから。やっぱ愛されたことがないと、人を愛することが難しいよ……」と再び“愛に飢えてる”アピールに励む。

 ビビから、「逆だよ、自分の中から愛を生むんだよ。自分で自分を磨いていく。いつまで待つの、誰かに愛されるの。強くなって、自分からその愛を作らないと。トパもね、強いと思うよ。朝イチでお皿洗いとかしてくれるじゃん。それは愛することの一つなんじゃないの?」と眩しすぎるアドバイスをもらい、やっと少し柔らかい表情になったトパス。思った以上に面倒くさい男であるらしい。

トパスの謎ファッション(テラスハウス第28話)

 いつもタートルネックを着ているイメージのトパス。スタジオメンバーからは「スタートレックの船長」とも呼ばれるように。

 そこで初登場から第28話までのファッションを振り返ってみると、黒スウェット→黒ストライプシャツ→黒スウェット→黒タートル→黒タートル→茶タートル→黒Tシャツだった。意外とタートル以外も着ていたが、どれも地味である。

 付き人という職業柄、黒子に徹するという意味合いもあるのかもしれないが、トパスの闇を象徴するようで気になる。今後、プライベートでは黄色や赤を着るトパスが見てみたい。

ドラマ評論家が選出、2019年「配信オリジナル作品」ベスト3! 『全裸監督』で埋もれた佳作は?

――『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ』(宝島新書)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、2019年の配信オリジナルドラマからベスト3を選出。『全裸監督』以外にも注目作が並んだ。

 2019年の夏にNetflix(ネットフリックス)で配信された『全裸監督』が話題になったことで、定額制動画配信サービスで作られたオリジナル配信ドラマに注目が集まりつつある。有料という敷居の高さがあるため、配信サービスが完全に定着するのはまだまだ先という意見も少なくないが、『全裸監督』のヒット、そしてジャニーズアイドル・嵐の活動休止の背景を追ったドキュメンタリーシリーズがNetflixで独占配信されたことで、以前よりも加入者の増加は間違いないだろう。

 そんな「テレビから配信へ」とプラットホームが移りゆく19年において、『全裸監督』以外で印象的だった国内制作の配信ドラマを3本挙げてみたい。

『夫のちんぽが入らない』(Netflix、FOD)

 まずはNetflixだが、『全裸監督』以前にも良質で見応えもある作品は多数作られていた。ただ、海外マーケットを強く意識して作られた作品というと『全裸監督』のみだと言えよう。又吉直樹の小説をドラマ化した『火花』も、昨年話題となった学園ドラマ『宇宙を駆けるよだか』も優れた作品だったが、「邦画やテレビドラマの良質な作品がNetflixでも見られる」もしくは「テレビで放送することが難しい作品を緊急避難的に配信で放送している」という“撤退戦”に見えてしまうのがつらいところだ。

 今年配信された『夫のちんぽが入らない』も良質な作品だったが『全裸監督』に比べて話題にならなかったのは、良質な邦画を配信で見ているという感触が強すぎて、Netflix配信ならではのオリジナルドラマを打ち出したというイメージが薄かったからではないかと思う。

 NetflixとFOD(フジテレビオンデマンド)で配信された本作は、主婦の作家・こだまの自伝的小説(扶桑社刊)をドラマ化した物語。出版された際に、センセーショナルなタイトルが話題になったことを覚えている方も多いかもしれないが、物語は夫婦の性生活(タイトルの通り、旦那の男性器が大きすぎて挿入できない)の不一致と、子どもができないことに悩む妻の姿を描いたものだ。

 主人公の久美子を演じた石橋菜津美は200人のオーディションで選ばれた女優で、劇中で濡れ場も披露した。監督は『ふがいない僕は空を見た』のタナダユキ。劇中にはタナダが得意とする日本的な悶々としたいやらしさが充満している。印象が若干地味で『全裸監督』の盛り上がりに埋もれてしまった感はあるが、とても見応えのある作品である。

 配信というとNetflixとAmazonプライムの印象が強いが、国内メディアも充実している。Paravi(パラビ)は、TBS、テレビ東京、WOWOWの作品を中心とした国内配信サイトだが、オリジナル作品も定期的に制作している。

 一番の目玉は『ケイゾク』『SPEC』(ともにTBS系)といったカルトミステリーシリーズの最新作『SICK’S~内閣情報調査室特務事項専従係事件簿~』だろう。超能力者が起こした事件を捜査する刑事たちの活躍を描いた本作は、Paraviの目玉作品として現在第3部まで配信されている。しかし謎が謎を呼ぶ展開のため、シリーズが終わるまでは、どう評価していいのかわからないというのが正直な感想だ。

 『SICK’S』を除いて、同じParavi配信作品の中で今年を代表するのは、藤原竜也が主演を務めた『新しい王様』ではないかと思う。物語はアキバ(藤原竜也)と越中(香川照之)という二人の投資家がテレビ局買収を目論むというマネーゲームもの。脚本、演出は『カバチタレ!』(フジテレビ系)や『闇金ウシジマくん』(TBS系)といったお金にまつわるドラマを得意とする山口雅俊。

 アキバのモデルは明らかに堀江貴文で、00年代に起きたフジテレビ買収事件を下敷きにして、保守化するテレビ局を批判するという“テレビの在り方”を問う作品となっていた。

 配信という舞台を与えられた時に、テレビやYouTubeといったメディアを題材にすることが多くなるのは、自分の足元を再確認したいという作り手の不安があるからだろう。

 19年1月期に放送されたフジテレビ系深夜ドラマだが、FOD先行配信された『JOKER×FACE』もそんな作品で、加熱する動画配信者(劇中ではNewTuber)たちの狂騒を描いたダークなドラマだった。物語は謎の動画配信チャンネル「JOKER」を運営する流川(松本穂香)が、リストラされた中年サラリーマンの柳(松尾諭)を操り、アイドルのゴシップやオレオレ詐欺の内幕を暴くような危険な動画の配信を目論むクライム・エンターテインメント。人間の暗部に踏み込んでいく後味の悪いストーリーをクールな映像で見せつつ、ポップでダークな若者向けドラマに仕上がっていた。

 この3本はどれも傑作で是非見てほしい作品だが、不満があるとすれば、「配信ドラマならでは」の映像表現や物語にまでは昇華されていないことだ。それは『全裸監督』にしても同様で、かつてあった先鋭的な映画やドラマの代わりではなく、配信という手段でしか見ることのできないものを見せてほしい。すでに高いクオリティの作品が作れることは証明されたと思うので、今後は“配信でしか作れない”国内ドラマの新境地に期待したい。
(成馬零一)