『ザ・ノンフィクション』笑顔を取り戻した、元不登校児の双子「私が守りたいもの~北の大地 牧場一家の12年~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月28日の放送は「私が守りたいもの~北の大地 牧場一家の12年~」。

あらすじ

 北海道道央の新冠町(にいかっぷちょう)で、競走馬を育てる牧場の家に嫁いだ美和。美和は札幌で生まれ育ち、職場のパチンコ店で同僚だった弘明と出会う。弘明は家業の牧場を継ぐことに迷いもあったようだが、美和が後押しするような形で実家に戻ることになる。

 命と向き合う仕事に休みなどなく、早朝から深夜まで重労働が続き、美和も最初は馬房で泣くこともあったと話す。番組が取材を開始した2009年、美和は2人の幼い子どもを育てながら牧場でも働いていたが、長引く不況で競争馬は売れず、そのような中でデビューした馬も初レースは最下位と、生活は芳しくない状況だった。

 悪いことは続き、優秀な馬をたくさん産んでくれた牝馬が放牧中に足を骨折してしまう。馬にとって、脚の骨折は致命的なものだという。残りの足に負担がかかり、やがて蹄は腐り、体を支えきれなくなった馬は苦しみながら死んでいくため、安楽死を選ばざるを得ないというのだ。

 その馬は優しい性格で、当初、馬がまだ怖かった美和が初めて触れた馬でもあった。美和、弘明は涙にくれながら愛馬の最期を馬房で看取る。

 時が流れ17年、幼児だった2人の息子は中学1年生、小学校6年生まで成長していた。かつて経営が苦しかった牧場も、生産馬たちの活躍で安定する中、美和は知り合いの子どもを自宅に引き取ることを決める。1年間不登校が続く双子の兄妹だが、実は弘明の両親も家出中の子どもを1~2カ月牧場で預かることがあったそうだ。

 兄妹の父親が体調を崩し、母親がつきっきりで看病をする状況で、兄が登校を拒否するようになり、妹もそれに続いて行けなくなってしまったという。兄妹は北海道の生活に最初は慣れず、しかし帰りたいと美和や弘明には言えず、大阪の親にLINEで訴えていたものの、諭されていたようだ。

 しかし、子どもの順応力の高さからか、徐々に兄妹に笑顔が見られるようになり、「楽しい」とカメラの前で話していた。それから半年後の小学校卒業の後、2人は大阪に戻ることになり、別れの日は大林ファームに同級生や担任が訪れ、美和も涙にくれる中での別れとなった。

 さらに時が流れ、21年。牧場はコロナの影響も大きく受けず、美和の息子2人も17 歳、16歳となり、長男は牧場を継ぐ意向を見せる。一方、次男は反抗期中だと美和はぼやく。番組の最後、美和は息子たちや双子たちが帰りたいと思ったときに帰って来られるよう、この土地(大林ファーム)だけは守りたい、と話していた。

 不登校の兄妹が、なぜ学校に行けなくなってしまったのか、元気になった2人の口から聞いてみたかったなと思う。父親の病気が一つのトリガーだったとは思うのだが、それだけだったのだろうか。

 この兄妹に限らず、不登校の原因には謎が多い。いじめや、周囲になじめなかったり、軽んじられているなどの明確な要因があるとは限らず、本人ですらなぜ学校に行けないかわからない、説明できないケースもある。

 兄妹の母も、先に不登校になった兄のほうはそれまで学校に楽しんで通っており、最初に「行きたくない」と言われたときに違和感があったと振り返る。しかし同時に、「目がどんどん死んでいく」様子も目の当たりにしたという。

 大人であっても、「生きづらい」ときに何か一つだけがトリガーになっているというケースは少なく、さまざまな人間関係や、本人の物事の捉え方などが複雑にこんがらがっている。おそらく、子どもの不登校も実態は似ているのではないだろうか。

 なぜだか本人もよくわからないくらいこんがらがっているから苦しいのだろうし、「なぜ」の答え探しに費やす気力はもうないのだろう。

 不登校で今まさに「なぜ」を考える余裕のない人に「なぜ」を聞くのは酷だと思うが、一方で、不登校状態に区切りがついた人(場合によっては「学校に行けるようになった」だけに限らないかもしれない)には、なぜ登校できなくなったのか聞いたほうが、別の人のヒントになるようにも思う。美和のように他人を献身的に世話し、愛情をかけてくれる人はそうはいないのだ。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「笑顔の一枚とあなたの記憶 ~家族へのおくりもの~」。東京・中野にある写真スタジオ「素顔館」は、遺影写真専門の写真館だ。もともとは数々の受賞歴のある広告カメラマンだった館主、能津喜代房はなぜ遺影を専門に撮るようになったのか?

天才肌の友人に「なんで私なんかと……」劣等感を抱く生徒に、黒木が仕掛けた友情『二月の勝者-絶対合格の教室-』

中学受験をリアルに描く連続ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系、土曜午後10時~)。舞台は、スーパー塾講師・黒木蔵人(柳楽優弥)が校長を務める中堅中学受験塾「桜花ゼミナール吉祥寺校」。11月13日放送の第5話では、成績トップの生徒・島津順(羽村仁成)が父親(金子貴俊)から「教育虐待」ともいえる恫喝に晒されていることが明らかになった。Twitter上では父親の暴君ぶりに恐怖や憤りのコメントが続出。一方で、順と海斗(伊藤駿太)の友情に胸を打たれた視聴者も多かった。

あらすじ

 11月20日放送の第6話では、桜花の講師たちの憩いの場であるスナック「井の頭ボウル」オーナーの一人娘で、黒木とも知り合いの大森紗良(住田萌乃)が桜花にやってきた。

 紗良は制服でも私服でもよい自由な校風の二葉女子学院(実存する雙葉中学校と女子学院中学校をかけ合わせて表現したと思われる)に通っている。Aクラスで学校は不登校の柴田まるみ(玉野るな)は、紗良から二葉女子学院の話を聞き、自由な校風に憧れを抱く。

 二葉女子学院は偏差値65の難関校だが、まるみは自習室を使うほど勉強に意欲的になり、桜花の夏合宿への参加を決め、成績上位者のΩクラス選抜テストにも見事合格。今回、Ωクラスに入れたのは、まるみと、第5話でクローズアップされた海斗だった。

 夏合宿では、Ωクラス入りしたばかりのまるみに、おしゃれが大好きで明るい性格の直江樹里(野澤しおり)が話しかける。フレンドリーな樹里に戸惑いつつも徐々に打ち解けていくまるみだが、Ωクラスの授業のスピードや、自分と同じ学校を志望する樹里の算数の才覚に圧倒されてしまい、夏合宿から帰宅すると母の前で大号泣する。

 外向的で算数問題をパズル感覚で解いていく天才肌の樹里と、内向的で丁寧に努力するまるみ。一緒に自習している時、まるみは「なんでまるっきり逆の私なんかと……」「私、樹里と違う!」と、羨望や劣等感をぶちまけて、飛び出してしまう。

 まるみを追いかけた樹里は「まるみは伸びしろしかないじゃん!」と叫び、樹里もまた、努力家でΩクラスに上がってきたまるみに尊敬の念を持っていた。お互いの気持ちをぶつけ合った2人は、一緒に二葉女子学院を目指すことを約束する。

まるみと樹里の「化学反応」を仕掛けた黒木

 前回の第5話に続き、第6話も、11~12歳という年齢の子どもたちにとって「友達」という存在が、良くも悪くも、いかに大きくて重要なものであるかを再認識させられるようなエピソードだった。

 まるみと樹里や、第5話の順と海斗のように、お互いを認め合える関係は理想的であり、頼もしくて、微笑ましい。言わずもがな、Twitter上ではまるみと樹里の友情に大喝采で、「泣ける」「合格してほしい」などのコメントが相次いだ。

 まるみに二葉女子学院の話を聞かせることを紗良に依頼し、夏合宿の部屋割りや授業の席替えを決定したのは、すべて黒木だ。黒木は、まるみと樹里という「タイプの違う2人のかけ合わせ」に「大きな化学反応を期待」し、きっかけを与えていた。

 振り返ると、今回のまるみと樹里にしろ、これまでスポットが当たった生徒たちにしろ、黒木から情報や言葉は与えられるものの、行動しているのは生徒自らの印象だ。11~12歳の子どもが「自分で決める」ことの重要性を、黒木はよく知っているのだろうな、と見ていて思う。

 黒木のバックボーンも徐々に明らかになりつつある。かつて不登校児だった紗良は近所の無料塾に通い、そこで黒木と出会い中学受験を勧められたのだという。おそらく繁華街のビルの一室で営まれている無料塾「スターフィッシュ」のことだろう。

 これまでの放送でも黒木や紗良がスターフィッシュを訪れる場面が幾度かあった。黒木は髪やネクタイを崩し、表情も豊かで、桜花で校長として辣腕を振るうときとは随分と様子が違った。

 中学受験塾に通う生徒たちの親を「ATM」と言ってはばからず、塾講師は教育者ではなく「サービス業」とも言い切る黒木。しかし、大手名門塾「ルトワック」を辞めて敢えて中堅中学受験塾「桜花ゼミナール」の校長に就いたことと、お忍びで無料塾を訪れ勉強を教えていることは、彼の中で密接なつながりがあるのだろう。

 11月27日放送の第7話では、塾に通いながらも遊んでばかりの男子生徒にスポットが当たる予定だ。

反町隆史の名を不動にした学園ドラマ『GTO』に見る、『相棒』に至る俳優イメージとは?

――ドラマにはいつも時代と生きる“俳優”がいる。『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、“俳優”にスポットを当てて90年代の名作ドラマをレビューする。

 『相棒』(テレビ朝日系)のSeason20がスタートした。本作は、特命係という窓際部署に所属する頭のキレる刑事・杉下右京(水谷豊)と相棒となる刑事の掛け合いが魅力の人気刑事ドラマだが、現在、4代目相棒の冠城亘を演じているのが反町隆史である。

 冠城は法務省から出向してきたキャリア官僚出身の刑事で、普段は飄々としているが、利用できるものはなんでも利用する合理主義者。しかし、奥底には強い正義感を抱えている。そんな冠城を、反町は落ち着いたトーンで好演しているのだが、エリート官僚出身の刑事を反町が演じると知った時は意外だった。筆者にとって反町はエリートとは真逆の存在で、『GTO』(フジテレビ系)の破天荒なヤンキー教師・鬼塚英吉だったからだ。

 「週刊少年マガジン」(講談社)で藤沢とおるが連載していた同名漫画を1998年にドラマ化した本作は、武蔵野聖林学苑の非常勤として採用された鬼塚が主人公。彼が受け持つこととなった2年4組は問題児ばかり集まったクラスで、過去の担任は生徒から陰湿なイジメを受けて全員辞めていた。

 鬼塚も生徒からの嫌がらせを受けて退職に追い込まれそうになるのだが、元不良で暴走族のリーダーだったため、生徒たちの嫌がらせを飄々とかわし、やがて信頼を獲得していく。正面からクソ真面目に説教するのではなく、一緒に悪ノリして学園生活を楽しみながら、生徒たちの心に深く寄り添っていく鬼塚は、今までの学園ドラマにはいない新しい教師だった。

 脚本は、後に『女王の教室』や『家政婦のミタ』(いずれも日本テレビ系)を手掛ける遊川和彦が担当。遊川は80年代後半からテレビドラマを執筆する脚本家で、『オヨビでない奴!』や『予備校ブギ』(いずれもTBS系)といったコメディテイストのドラマを得意とする脚本家だった。しかし、90年代に入るとバブル崩壊以降の殺伐とした日本の世相に呼応する形で作風も変化。『真昼の月』(同)や『魔女の条件』(同)といったシリアスなドラマを手掛けるようになっていく。

 この『GTO』も、モチーフはとてもシリアスで重たいものだ。登場する高校生たちには90年代に問題になっていた援助交際(少女売春)を行う女子高生や、一見、真面目な優等生に見えるが影で陰湿なイジメに加担する生徒が登場。ナイフを持って暴れる生徒は“キレる若者”のイメージを反映させており、彼らと大人は「どう向き合うべきか?」というテーマが打ち出されていた。

 また、『GTO』は遊川が手掛けた数少ない原作モノのドラマだが、80年代のコメディ作家としての遊川と、90年代以降のハードな作風の遊川の2つの要素が混ざっていることが、今見ると興味深い。『女王の教室』で展開された、普通の人々の中に1人だけ物理法則を無視した漫画のキャラクターのような存在がいて、トリックスターとして周囲を翻弄するという作劇手法を、遊川が初めて自覚的に用いたのである。

 原作が漫画ということを差し引いても鬼塚の行動は超人的で、親子のわだかまりを解消するために生徒の家に乗り込んで、突然、部屋の壁を破壊したり、屋上から飛び降りた生徒をダイビングキャッチで受け止めるといった常識はずれの行動を見せる。

 鬼塚の超人的な振る舞いは本作の魅力であると同時に限界でもあり、「所詮はファンタジーだ」と思わないでもない。ただ、このあたりの描写はおそらく確信犯で、遊川たち製作者の目線は、別の場所にあったのではないかと思う。

 たとえば、スチュワーデス(キャビンアテンダント)の夢に敗れて、つなぎの仕事として教師を選んだ冬月あずさ(松嶋菜々子)の中途半端さに対して鬼塚が説教する場面は、生徒と向き合う時以上に真に迫っていた。おそらく遊川たち作り手は、冬月と同世代の大人の視聴者にこそメッセージを送りたかったのではないかと思う。保身に走るあまり生徒と向き合えない冬月たち教師が、鬼塚と出会ったことで自身の仕事に情熱を見出していく姿こそが、本作最大の見どころである。

 なお、冬月を演じた松嶋菜々子と反町は2001年に結婚している。当時は驚いたが、2人の楽しい掛け合いを見返すと「そりゃあ、お互い好きになるよなぁ」と納得する。

 元々、反町はジャニーズ事務所に所属して本名の野口隆史で活動していた。1994年に研音に移籍して以降は芸名の反町隆史として活動するようになり、同年に放送されたドラマ『毎度、ゴメンなさぁい』で俳優デビュー。その後は『未成年』(いずれもTBS系)や『竜馬におまかせ!』(日本テレビ系)といったドラマに出演し、97年の『バージンロード』と『ビーチボーイズ』(いずれもフジテレビ系)で主演を務めるようになる。

 当時の反町は、男らしさを全面に打ち出した体育会系の肉体派でありながら、クールで飄々としていて暑苦しさがないという、絶妙なバランスの青年を演じることが多かった。 『GTO』はその集大成で、“俳優・反町隆史”の名を不動のものとしたドラマである。『相棒』の冠城亘に至る俳優・反町のイメージは、鬼塚英吉を演じたことで完成したといっていいだろう。

 『GTO』から23年がたち、当時20代後半の青年だった反町も47歳となり、落ち着いた中年男性を演じるようになった。『相棒』の冠城役はすでに6年目で歴代最長の“相棒”となっているのは、役と本人の相性が良かったのだろう。演じる役は元不良の教師から元キャリア官僚の刑事へと変わったが、鬼塚で確立した「飄々とした軽い佇まいの奥に熱い正義感を抱えている男」というイメージは、今も変わらない。
(成馬零一)

『ザ・ノンフィクション』話すことは破天荒ではなく普通だった談志「切なくていじらしくてメチャクチャなパパ~家族が映した最期の立川談志~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月21日の放送は「切なくていじらしくてメチャクチャなパパ~家族が映した最期の立川談志~」。

あらすじ

 番組放送日である2021年11月21日の10年前に、ちょうど75歳で亡くなった落語家・立川談志。談志は63歳から晩年まで自分の様子をビデオに収めており、それはテープで750本、1000時間に及ぶ。息子でマネジャーの慎太郎が撮影したものもあれば、談志自身が自撮りしたものもある。いずれお金になるかも、という目論見もあったようだ。

 談志は天才と呼ばれた落語家で、一度聞いた落語はすぐに覚えたという。師匠であってもずけずけ言う怖いもの知らずの性格は若いころから変わらず、47歳で落語協会を脱退し立川流を創設した(門下には立川志の輔、立川談春、立川志らくなど)。ビートたけしも弟子であり、ビデオでは和田アキ子、森繁久彌、石原慎太郎と飲む姿など、幅広い交友関係も映されていた。

 談志は61歳で食道がんになり、映像では自分の老いについて話したものも多い。皮膚のたるみ、増える白髪、体臭の変化(体の中から腐っているのでは、と形容していた)などの体の変化もあれば、イラついたり、不安定になったり、何を見てもつまらなく感じたり、人に会うのもイヤになっていくなど精神状態の変化もあった。

 調子は年々悪化していき、2010年に喉頭がんが再発、声はどんどんかすれたものになっていく。声帯を取れば完治の可能性もあると言われたものの、落語家の命である声を失いたくない談志はそれを断る。

 最晩年となった11年、最後の高座は咳込みながらのものだったが、「咳を拾うたびに(自分の前にある)マイクが遠ざかっていってないか」とネタにして座を沸かす。

 その後、呼吸を確保するため気管の切開手術を行うが、手術後、ベッドで寝そべった状態のまま、声帯を取っていないか家族に筆談で確認するほど、談志は落語家であることにこだわった。

 ただ、この手術で声帯は取らなかったものの、がんの進行により最期の日々においては、声を失ってしまっていたようだ。番組最後では話せなくなった談志と妻の則子が、かつて家族が暮らした新宿のマンションの非常階段で2人寄り添う姿が映されていた。

談志の言っている「内容」は案外普通

 談志についてほぼ知らず、談志の落語も見たことがなく、「破天荒だとよく紹介されていた落語家」くらいの認識しかなかった。今回の放送では、さぞぶっ飛んだことを言うのだろうと思ったが、公開された映像を見る限り、談志がしゃべっている内容は主に「老いるのはイヤだ」という、包み隠さず率直で、しかしごく普通なことのように思った(本当に破天荒な内容は放送できなかった可能性もあるが)。

 少なくとも今回の映像において、談志の言っている「内容」は案外普通だった。しかし、自撮りで談志が一人ひたすらしゃべっている映像を見ると、不思議と非凡なことに聞こてくる。なにかすごいことを言っているのではないか、と思わず耳を傾けたくなる。自撮りで一人、自宅で心置きなくしゃべっているときも、落語家としての立川談志が憑依しているように見えた。

 話す内容は、老いということについて、自虐的な笑いに昇華することはさほどせず、率直にネガティブな気持ちを話していることが多い。それなのに不思議と悲痛な感じがなく、言葉が音楽のように軽やかに流れていき、聞いていて心地よさすら感じる。

 それは、その「しゃべり方」によるものだろう。とにかく話している調子や繰り出される音が心地よいのだ。個性的なキャラクターで人気を博した人かと思ったが、しゃべりを極めた技術の人でもあったのだ。落語家としての談志のすごさを感じた。

 談志の十八番である「芝浜」など、落語自体がすでに台本のあるジャンルだ(創作落語もあるが)。落語が好きな人はオチを知っている落語を何度も聞くし、寄席に何度も足を運ぶ。ネタバレしていても楽しめる、というのは考えてみればすごい芸術だ。落語は「何を話すか」ではなく「どう話すか」が求められ、談志はその天才だったのだろうと、今回の放送で思い知った。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は『私が守りたいもの~北の大地 牧場一家の12年~』。札幌で生まれ育った美和(当時34歳)が嫁いだのは、北海道・新冠町の競走馬を育てる小さな牧場。命と向き合う休みなしの過酷な日々と、美和が預かった不登校の子どもたちについて。

父親の暴君ぶりが「教育虐待」? 過去問を解けない子どもに激高、母親を罵倒! 『二月の勝者』第4話

 中学受験をリアルに描く連続ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系、土曜午後10時~)。11月6日放送の第4話では、スーパー塾講師・黒木蔵人(柳楽優弥)が校長を務める中堅中学受験塾「桜花ゼミナール吉祥寺校」に通う男子生徒の母親が、非協力的な夫にブチ切れ。「課金ゲーム上等!!!」をはじめとする母親の台詞は、Twitter上でも「名言」「これが母親の狂気か」と話題沸騰だった。

あらすじ

 11月13日放送の第5話では、「中学受験の天王山」と呼ばれる夏期講習がスタート。夏休み中6年生の生徒たちはほぼ毎日塾に通い、午後1時から8時まで授業。自習室も朝9時から開いており、1日中塾にこもって勉強する子も少なくない。

 ちなみに、桜花ゼミナールは成績上位順にΩ・A・Rの3クラスに分かれており、クラス分けはテストの点数によって決定される。中学受験では、本人の努力は評価されず、入試の「点数評価」によって合否が判断されるため、「ここでは目に見えないもので評価することは本人のためにもならない」と黒木は言う。

 自習室では、Ωクラス成績トップの島津順(羽村仁成)とAクラスの上杉海斗(伊藤駿太)が取っ組み合いのケンカに。発端は、順が海斗に対して「偏差値60以下の学校なんて学校じゃない」「そんなところ目指しているなんてまじゴミだし」と暴言を吐いたこと。黒木は、 「悪いのがどちらかを裁くのは塾の仕事ではありません」「塾では道徳という科目は教えていません」と口にし、翌日からΩクラス専用の自習室を用意するという、一見ドライな対応を取った。

 順の家庭では、父親・弘(金子貴俊)が桜花の勉強方法や宿題を否定し、自己流の勉強方法を息子に強要。順と母親・優子(遠藤久美子)は怯えて暮らしていた。父親が用意した偏差値54の学校の過去問題を順は半分もこなせなかったが、夏の段階で、過去問の合格ラインを超えるのはそもそも難しい。しかし父親は激高し、壁に問題集を投げつけ、母親にも怒りを向ける。翌日、順は塾をサボり、桜花は大騒ぎに。

 順を見つけたのは、居所に心当たりのあった海斗だった。海斗は桜花に来る前は大手名門塾「ルトワック」に在籍しており、双子の弟は今もルトワックの最上位Sクラスにいる。自分は親に期待されていないのだと諦観気味の海斗と、そんな海斗を目の敵のようにしていた順は、それぞれの本音を打ち明けることで、心を通わせる。

 第5話放送中からTwitterでは、「教育虐待」「DVだろこれ」「モラハラ親父」「通報案件」など、順の父親の振る舞いに恐怖や憤りを訴える書き込みが続出。「島津くん、こんなのストレスフルすぎるよ〜」「こんな父親、受験勉強の邪魔でしかないわ」と、順の置かれた状況を慮るコメントも散見された。

 一方、「最高」「いい関係」との声が相次いだのが、順と海斗がお堂で互いの気持ちを明かし、友情を育む場面だ。最初はケンカをしていた2人だけあって、「この2人の関係最高じゃん!」「めちゃくちゃ良いライバルになりそう」「2人とも頑張れ!」と、多くの視聴者が胸を熱くしたようだ。

 しかし、父親は順が見つかっても、相変わらず息子や母親を罵倒。順が友達と話していたと言えば「ただでさえ時間がないっていうのに、バカの相手をしている場合じゃないだろ」と吐き捨てる。そんな父親に順は「僕の友達をバカって言うな」と反発し、海斗には「待っているからな、Ωで」とエール。夏期講習中に行われるΩクラス選抜テストをクリアすれば、海斗はΩクラスに上がれる。

 順は海斗に、4年生になる時に受けたルトワックの入塾テストでSクラス落ちしたことが悔しく「桜花で一番になってやる」と思ったことを明かしていた。行方不明事件を受け、嫌なら塾も受験もやめてもいいという母親に、順は「やめない」「やめたらママがパパにいじめられる」と言ってもいたが、母親のためだけに勉強を続けているわけではないのだろう。

 黒木は今回も、要所要所で新人の佐倉麻衣(井上真央)をはじめとする塾講師たちに的確な指示を出していた。夏の段階で過去問をやらせることは、無茶な勉強法であり、 「かえって自信を失わせ動揺させるだけ」と順の母親を指導する場面もあった。

 第1話~第4話までと違い、今回の第5話は生徒を取り巻く問題は解決せず、父親が改心しないままだった。つまり、島津家の状況が変わったわけではない。「どうすればいいんでしょう」と尋ねる麻衣に、黒木は「これ以上のことは何もできません」「我々たかが塾講師に他人の家庭の中にまで踏み込む権限はありません」と返答。黒木は某学園ドラマのように、生徒の家庭の問題に首を突っ込み、親に説教したりはしない。少なくとも現段階では。 

 島津家の行く末が気がかりだが、11月20日放送の第6話では、Ωクラス選抜テストの結果が発表される。タイプの異なる女子生徒2人の友情による化学反応の模様が描かれる予定だ。

『二月の勝者』母親の「課金ゲーム上等!!」ブチギレが「名言!」「これが狂気か」と大反響! 中学受験めぐる夫婦の地雷

 中学受験をリアルに描く連続ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系、土曜午後10時~)。第3話では、中堅中学受験塾「桜花ゼミナール吉祥寺校」の校長でスーパー塾講師の黒木蔵人(柳楽優弥)が、転塾を考える成績優秀な女子生徒花恋を言葉巧みに慰留。黒木の口説き文句に魅せられた視聴者が相次ぎ、ネット上では「恋に落ちちゃうでしょ!」「私が花恋なら、初恋が黒木先生になってた」といった声が寄せられた。

あらすじ

 11月6日放送の第4話では、校長の黒木が講師たちに、ゴールデンウィーク特別講習について6年生全員の申し込みをノルマとして課す。ちなみに、5日間にわたって開催されるゴールデンウィーク講習の費用は5万3,000円。通常授業の月謝だけでも4万5,000円と高額で、夏期講習になれば18万2,000円、夏合宿(宿泊費、食費込み)等々を含めると、6年生の親が塾に落とす金は年間で約132万円に及ぶとのこと。

 今回スポットが当たったのは、最下位のRクラスに在籍する武田勇人(守永伊吹)の家庭。母・香織(星野真里)は勇人にGW特別講習を受けさせたいと考える。しかし、父・正人(塚本高史)はスマホの課金ゲームに夢中で、妻の話にまともに取り合わず、受験を控える息子を旅行やゲームに誘導。父親も呼ばれた塾の面談も「お前の仕事みたいに替えが利くわけじゃないんだよ」ときつい言葉で拒否する。

 黒木から、「武田夫妻の地雷を踏みつけ爆発させる」よう指令を受けたAクラス担任の桂歌子(瀧内公美)は、面談で武田家の様子を言い当て、香織の苦労をいたわった上で、「夫婦の意見は一致していないと中学受験は失敗します!」「ご主人に負けてはいけません」「勇人くんの合格が、いえ、一生がかかっているんですから!」と熱弁。

 触発された香織は、残業をして塾代を払うと正人に話すが、「いいカモ」「資本主義の奴隷」「リアル課金ゲーム」と揶揄され、課金ゲームから目を離さない正人についにブチギレた。

「ふざけてんのはどっちよっ! 何がいいカモよ……あんたこそ、こんなのにばっか課金して!」
「どうせなら、私たちの子どもに課金してよっ! 自分の子どもをクッソ強いキャラに育ててよ! 勇人にどんな敵でもラスボスでも倒せるような、クッソ強い武器持たせてよ!」

「課金ゲーム上等―――――!!!」

 肝心の勇人はというと、黒木の策略によって受験勉強のモチベーションが向上。GW特別講習の申し込みでしぶしぶ桜花を訪れた正人もまた、黒木から中学受験を「課金ゲーム」にたとえられたことで、我が子への「課金」に納得した。

 これで、黒木が合格に必要だと初回で語っていた、父親の「経済力」と母親の「狂気」が出揃った。

 ついに見せつけられた、子どもの中学受験を控えた母親の「狂気」。今回登場した勇人の母・香織の場合、「狂気」の背景には、夫への怒りのみならず、自身の学歴コンプレックスもあるように思う。販売スタッフとして働く香織は、子どもがいることに加え高卒の学歴がハンデとなり、大卒だがミスの多い店長に軽んじられていた。

 だからこそ、我が子には将来的に不利にならないだけの学歴を備えてほしいと考え、塾代のために残業を引き受け、弁当作りなどの受験に必要なサポートも一人で担う。

 4話終盤、香織は店長試験に挑戦すると笑顔で同僚に語っていたが、ありとあらゆることを両立させようとする姿勢もまた「狂気」が裏打ちされているのかもしれない。

 香織の絶叫は、ネット上でも大反響で「ゲームに課金するなら子どもにお金を使うべき、って名言! 母親よく言った!」「ダメパパをまくしたてたところ最高すぎた! しまいには『課金ゲーム上等!』って痛快だわー」と支持する声が相次いだ。

 特に、「中学受験は課金ゲーム」のたとえは、「至極真っ当」「めちゃくちゃ納得」「あながち間違っていない」「しっくりきすぎて、これから使っちゃいそう」と視聴者も納得した様子。また、「これが母親の狂気ってやつか……」と黒木がかねがね口にしていた合格の条件を目の当たりにして、驚いたような声も。

 4話終盤では、黒木の「子どもは、大人が思っている以上に子どもで、思っている以上に大人です」との台詞も印象的だった。

 Rクラスの中でも算数の成績が振るわない勇人ら数名に、黒木は模擬試験の問題の前半のみを解くように指示した。すると、焦らずに問題に取り組んだことにより、ケアレスミスが減り、点数も上がった勇人は、宿題で答えを写すズルをしなくなった。

 11、12歳にもなれば子ども自身がいろいろな考えを持ち、周囲に認められたい、頑張りたい、自信をつけたいと思うことも多いだろう。ただし、内面にある「やる気」や「意欲」をどう表現すればよいのか、具体的にどういうことを頑張れば、自分の望む結果や自信につながるのか、その道筋を立てるのはまだまだ難しい。

 中学受験は「課金ゲーム」、子どもは「金脈」、親は「ATM」と歯に衣も着せぬ物言いをする黒木だが、子どもの繊細な内面をよく見ている人物なのだ。

小学生の親を演じる役者も豪華

 11月13日放送の第5話でクローズアップされるのは、最上位のΩクラスの中でもトップ成績の島津順(羽村仁成)の家庭問題。順の父親役を金子貴俊が、母親役を遠藤久美子が演じるという。

 今回の4話では、勇人の母親役を星野が、父親役を塚本が演じていた。『二月の勝者』メインキャストである柳楽・井上真央・NEWSの加藤シゲアキにもいえることだが、彼らの10代の頃の活躍を知る視聴者としては、小学生の保護者や先生の役を演じていること自体が感慨深かったりもする。

『ザ・ノンフィクション』さよなら、おめでとう、が軽く言える関係が持つ癒やし「『おかえり』の声が聞きたくて ~歌舞伎町 真夜中の処方箋~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月7日の放送は「『おかえり』の声が聞きたくて ~歌舞伎町 真夜中の処方箋~」。

あらすじ

 歌舞伎町にある、夜だけ開く「ニュクス薬局」。ビルの1階にあるニュクス薬局以外のテナントは全てホストクラブで、店が静かだと階下、階上から深夜シャンパンコールの声が漏れ聞こえることもあるという。「ニュクス」はギリシャ神話の夜の女神の名前だ。

 薬局を訪れる客の8割は女性で、ほとんどが夜の街で働く人たちだ。店主の中沢宏昭は彼女たちから「歌舞伎町のお父さん」と慕われ、彼女たちの話を穏やかな表情で聞いている。そんな中沢のもとを訪ねる女性たちを見つめる。

 23歳の智花は正社員で販売の仕事をしているが、気持ちの浮き沈みが激しく高校生のときから心療内科に通っている。むなしさから酒に逃げてしまうと話し、歌舞伎町のホストクラブに通い、泥酔状態で薬局に来ることもある。ホストクラブに通う資金のため夜職も始め、働きづめだ。

 病院から智花に処方された薬は1週間分しかなく、これは医師が1週間以上放置できない状態だと診ている可能性があると、中沢は状況を案ずる。過去に中沢の店を訪ねていた女性の中には、自ら命を絶った人もいたという。

 34歳のひろみは、初回取材時、ひどくぐったりと疲れた様子で薬局の椅子に座っていた。ひろみは大学卒業後に就職するも、パワハラがひどい職場で調子を崩してしまい、現在は仕事を辞め、生活保護で暮らしている。パニック発作があるため、外出は病院と食品の買い物、中沢の薬局に行く月2回だけだ。2週間ぶりの外出で気が張っている中、中沢との会話で、ほっとしていくひろみの様子が伝えられていた。

 23歳のアヤは、歌舞伎町で男と暮らしていたが、日々財布から金を抜かれていたそうで、その総額は100万円以上にも及ぶようだ。「何だったんだろうね、この2年間は」と苦笑いを浮かべ、男との別れを機に歌舞伎町から離れる決断をしたという。中沢にさよならを告げるために店を訪ね、元気で、と言葉を交わす。

 歌舞伎町は新型コロナウイルス感染症の感染拡大において、矢面に立たされた街でもあり、ニュクス薬局も売り上げが前年の半分になってしまった月もあったという。さらには物件の契約更新がかなわず、中沢は薬局の業務後、新店舗を探す忙しい日々を過ごす。

 幸い今の物件から1分程度のところに新しい物件を借りられたものの、元がタピオカ店だったため改装費用だけでかなりかかってしまい、引っ越し作業は中沢自ら行っていた。

 移転当日、智花は薬局を訪ねて移転祝いを渡す。智花は一時、オーバードーズで救急搬送されるなど不安定な状況も続いていたが、今は夜職もやめ、途切れがちだった通院もまた開始しているという。中沢が自分の話を聞いてくれたことが、それらのきっかけになったようだ。

 ニュクス薬局を訪れる客の中には、中沢が薬を出すこと=中沢は自分の症状を把握している、という安心感から、智花のように深刻な悩みを相談する人もいるが、一方で気安いおしゃべり、世間話をしに立ち寄るケースもあるようだ。今回は後者に注目したい。

 番組を見ていて印象的だったのが、歌舞伎町から去るアヤが、最後にニュクス薬局を訪ねるくだりだ。アヤは男と2年暮らしたものの、金を抜き取られていたようで、最後は自分が街から出ていく状況だったわけだが、最後に中沢という「さよなら」を告げる人がいてよかったなと思う。

 中沢の誕生日に、若い女性2人がネームプレートつきのケーキを差し入れていたのもいいシーンだった。中沢もうれしかったと思うが、女性客も、誕生日だからケーキを買って持っていったら喜ぶだろう、せっかくだからケーキにネームプレートを乗せようと話しているときは楽しかったと思う。そう思い合える人がいる人生は豊かだ。

 家族やウマがあう友達など、ディープになった人間関係はそのディープさゆえに、相手に期待してしまうことが増え、それがストレスになったり、相手を嫌いになってしまうことすらある。

 たとえば、「引っ越すんです」と馴染みの人から聞いたときに「なんで教えてくれなかったの」とならずに「お元気で」と見送れる、ライトな、ちょっとした人間関係は想像以上に人を救っている。特に心が疲れていたり、弱っているときほど、ライトな人間関係のほんのりとした温かさは沁みると思う。

 今はSNSがあるので、ぱっと見コミュニケーションが盛んで、人間関係に不自由しない時代のように見えるが、そんなことはなく、それだけでは埋まらない穴はやはりあると、中沢と女性たちの会話シーンを見て思った。

 SNSの発言は「みんなへ」「世間へ」「所属しているグループへ」など複数に向けられたものか、「ひとりごと」だろう。一方、「対面でのやりとり」は、「あなた」だけに向けられたものになり、手を伸ばせば届く位置に実際に相手がいる。

 たとえ、それがちょっとしたおしゃべりや、それこそ挨拶のようなものであっても、「手を伸ばせば届く位置にいるあなたと私だけのやりとり」ということ自体が、時に強く人を癒やし、慰めている。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「切なくて いじらしくて メチャクチャなパパ~家族が映した最期の立川談志~」。落語家初の参院議員になり、また落語協会を脱退し立川流を創設、家元になるなど破天荒な生き方を貫いた立川談志。

 晩年には落語家の命である声を気管切開で失っていた。没後10年、マネジャーを務めた長男が12年にわたり撮影していた談志の姿を見つめる。

成績トップ2の生徒がテストで最下位転落、自傷行為……黒木がかけた“再起の言葉”『二月の勝者-絶対合格の教室-』

 中学受験をリアルに描く連続ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系、土曜午後10時~)。第2話では、中堅中学受験塾「桜花ゼミナール吉祥寺校」の下位クラスに在籍する鉄道好きの生徒・加藤匠(山城琉飛)が、校長でスーパー塾講師の黒木蔵人(柳楽優弥)の戦略によって受験に意欲を持つ様子が描かれた。「塾は営利目的の企業」とはばからない黒木だが、成績不振の生徒を「できない子」と決めつけずにやる気を引き出す手腕は見事だった。

第3話あらすじ

 第3話では、最上位のΩクラスに在籍する前田花恋(田中絆菜)が、黒木の古巣・大手名門塾「ルトワック」への転塾を考え、体験授業を受ける。桜花ゼミナール吉祥寺校ではトップを争う花恋も、ルトワックの授業速度には苦戦し、テストの点数は最下位。講師から名前を覚えてもらえず、「その他大勢」の扱いをされる。

 負けん気の強い花恋は「落ちこぼれになんかなりたくない」と奮起し、医師の母親(高岡早紀)の忠告を無視して深夜遅くまで机に向かうが、知らず知らずのうちにシャーペンで自分の太ももを傷つけていた。

 花恋の転塾情報を聞いても静観していた黒木だが、花恋の自傷行為を知ると、「そろそろなのかもしれませんね」と始動。学校をサボり、疲れ切った表情で街を歩く花恋の前に現れると、疲労回復の効果があると甘酒を差し出し、花恋の顔色の悪さを気にかける。

 「あたし、自分で頑張りたくてやっていることなのに、何で止められなきゃいけないの!」と食ってかかる花恋に、黒木は「ほんとにそうだよね」と共感し、花恋の心の叫びを代弁してみせる。

「勉強ができる子は何で褒めてもらえないんだろう? リレーの選手に選ばれたらすっごく褒めてもらえるのに。合唱コンクールでピアノ弾いたらクラスのヒーローなのに。クラスで一番足が速いとか、一番に逆上がりできた子みたいに、クラスで一番勉強できると褒めてくれればいいのに。文化祭で劇の主役に選ばれた子みたいに、運動会で応援団のリーダーやった子みたいに、私を褒めてって、思うよね」

 黒木は目線を花恋の高さに合わせ、そのまま“セールストーク”を展開する。「花恋にはトップが似合っている」「その他大勢の中なんて花恋の居場所じゃない」「花恋は女王になれるところでしか輝けない。花恋は女王様だ。少なくとも僕や桜花にとっては。花恋の席、まだ空けて待っているよ」と。

 自分の気持ちを受け止めて的確に言い表し、居場所を用意してくれる黒木の“揺さぶり”を受け、花恋は桜花ゼミナールに復帰した。黒木は最初から、花恋には競争を煽るルトワックより褒めて伸ばす桜花のほうが適していると見抜いていたが、花恋自身が納得できるタイミングを計り、声をかけたのだ。

 前回、下位のRクラスの生徒をマンツーマン指導する新人講師の佐倉麻衣(井上真央)に、「ひいき」ではないかといら立ちをあらわにしていた花恋。ともすれば、「人の気持ちのわからない、かわいげのない子」に見られかねないが、花恋のいら立ちの裏には、「認めてほしい」「褒めてほしい」という切実な気持ちが潜んでいたのだろう。

 小学6年生、11~12歳の子どもは失敗や間違いを犯すし、「その子が欲しいものと必要なものは必ずしも一致しない」と黒木は言う。競争心や上昇志向の強い花恋は一見、名門塾・ルトワックの環境が向いているようにも見える。

 しかし、学校では優秀さが仇となり、同級生や教師に疎まれている花恋にとって、本当に必要なものは、勉強が得意な自分を受け入れ、褒め、大切に扱ってくれるような居場所と安心感だったのだろう。

 であれば、優秀な生徒たちに競争心を煽って追い込みをかける名門塾より、褒めて伸ばしてくれる桜花のほうが好ましい。桜花には、勉強が得意な花恋を慕う女友達だっている。黒木にかけられた言葉もまた、花恋の「必要なもの」が詰まっていたのだと思う。

 ただ厄介なのは、大人の側も、必ずしも冷静に、子どもの「必要なもの」を見抜けるとは限らないところだ。現実には、子どもが欲したにせよ、親などの大人の判断で与えるにせよ、子どもにとって「必要なもの」だと判断して与えたはずが、どうやら違っていた、という展開だってあり得る。

 黒木は「育つ環境を見紛えず提供していく。大人たちがその経験から慎重に子どもたちの手を引いてやらなければ」とも言っていたが、スーパー塾講師の彼とて、恐らくこれまでの経験の積み重ねがあって、桜花の生徒たちに必要な言葉や環境を見抜けるようになったのだろう。

 第4話では、子どもの受験をめぐり価値観の一致しない夫婦の「地雷」を黒木が踏みつけ、爆発する模様が描かれる予定だ。

『ザ・ノンフィクション』かき揚げでケンカする介護のリアル「愛する人、見送る私 ~看護師僧侶と3つの家族~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。10月31日の放送は「愛する人、見送る私 ~看護師僧侶と3つの家族~」。

あらすじ

 「看護師僧侶」の玉置妙憂(57歳)。もともと事務の仕事をしていたが、息子のアレルギーをきっかけに看護師になった。47歳のときに夫に末期のすい臓がんが見つかり、最期を自宅で迎えることを希望したため、休職して夫を看取る。その後、僧侶となり、現在は緩和ケア病棟や自宅で最期を迎える人やその家族の話を聞き、寄り添っている。

 精神的に不安定な状況のある患者や家族の話を静かに聞き、寄り添う玉置には宗教的なバックボーンのある人ならではの風格を感じさせるが、一方、自身が夫を看取った日々については「リアルってもっとすごくやっぱりドロドロで」「そんなにきれいな話じゃなかった」と話し、言い合いをし、ケンカもして、夫の話を聞こえないフリをしたこともあったいう。

 番組スタッフから「(自身のこのような活動は)仕事という感覚なのか」と聞かれた玉置は「使命」と話すが、“自分のため”になってしまうから「生きがい」ではないと話す。玉置が通う緩和ケア病棟の医師は、キリスト教の国では神父が緩和ケア病棟を訪ね患者の声を聞いていることから、日本もそうなれば、と玉木の活動に期待を寄せていた。

 番組では、玉置が関わった家族の日々を見つめる。

 大久保家は73歳の妻、悦子に末期のすい臓がんが見つかり、余命は半年と告げられる。それから5カ月が経過し、同い年の夫の一は自宅で看取ることに当初前向きではなかったようだが、悦子が自宅で亡くなることを希望したため、一も覚悟が決まっていたようだった。

 一方、なかなかそうスッキリと割り切れず、困惑の中で日々を送る家族もいる。湘南で暮らす81歳の美津江は度重なる骨折で寝たきりだが、最後は自宅で迎えたいと家で生活している。美津江自身が夫を6年自宅で介護していたが、夫は最期、病院で亡くなったそうで、病院に行かせてしまった後悔もあるようだった。

 美津江は「(介護施設に)行ったほうが家族が楽できるから『行け』って言われてんだけど行きたくないのあたし。ここにいたい。死ぬ時ぐらい楽に死にたいよね」と話しており、正直、家族は負担なようだ。美津江の娘の一人、恵美子も週2回実家に通い母親を介護するが、些細なことでケンカになってしまうこともある。

 玉置は、「もともと家ってクローズド(閉鎖的)なもの、だから入りづらいし、家族も外に向かってヘルプを出しにくい。だから闇は深まるよね、そうなると。それがいいとか悪いとかではなくて、そういうものなんだと思う。ただそこへ入り込んでいって風穴を開けるっていうのかな。それは必要だと思う」と話す。

 玉置や理学療法士など、外部の人間が美津江宅を訪ねることで、家族は少し「ガス抜き」ができているようだった。

 また、29歳で結婚後、9カ月で夫を亡くした女性は、その後8年間自宅で引きこもる生活を続けている。玉置が家を訪ねた際も、昼間からストロング系の缶チューハイを飲み、酩酊していた。一緒に暮らす女性の母親は、「(娘が)今まで誰にも話さないようなことを妙憂さんには全部お話ができる。本当に私としては救われる思いです」と話す。

 番組の最後では、大久保家にスタッフが再訪していた。悦子は自宅で3カ月過ごし、一に看取られたという。そんな一は、悦子の写真を撮るのを趣味にしていて、夫婦が歩んできた日々をうかがわせる多くの写真や動画が番組でも紹介された。

 新婚時代、映画スターのようにしっかりポーズを決めて写る若かりし頃の悦子から、おそらく中学に入学したてで、首回りがだぼだぼの学ランを着た孫と一緒に笑って写っている悦子。最後となった1枚は、好物のモンブランを前にリビングで笑顔を浮かべる悦子だった。

 番組の最後、大久保夫妻が歩んだ歴史が多くの写真や動画で紹介された数分間は、涙腺が刺激されてしまった。『ザ・ノンフィクション』のテーマソング「サンサーラ」ではなく、明治安田生命のCMソングである小田和正の楽曲が脳内で再生される映像だった。

 写真があると、あのときあんなことがあったと思い出すきっかけになる。1枚の写真で10年以上前のことを、その時の日差しや空気の様子まで鮮明に思い出したりもする。というより、写真がないと思い出を結構忘れてしまうのだ。

 中年以降になると、きっかけがないとなかなか写真を撮る機会もないが、もっと写真を残したいと思った。これは老後の自分があんなこともあったな、と笑顔で思い出せるように、というのもあるが、むしろ、写真がないと老後の自分が、自分の人生を空白のように感じてしまうかもしれず、そんな絶望を防ぎたい、という思いのほうが強い。

かき揚げでケンカになる介護のリアル

 大久保家は美しい「見送り」「見送られ」だったが、一方で、美津江、恵美子母娘の口ゲンカ生活には非常にリアルさを感じた。

 あるときの母娘のケンカは「かき揚げ」がきっかけだった。恵美子の姉(美津江にとっては娘)が作ったかき揚げがバラバラと崩れてしまう出来だったようで、美津江は、それに対し何度もしつこく、くどくどと不満を言い続ける。

 一方の恵美子も「やってくれた好意を受け取ればいい」と反発し、そして美津江もさらに意固地となって悪循環に陥っていた。かき揚げでケンカになるという些細さが、非常にリアルだ。

 美津江、恵美子母娘はケンカについて、このようなことを話していた。

娘「お互いに言いたいことを言ってケンカしても、それが楽しいんだね」
母「生きてるからぶつかり合いもあるし」「今が最高。本当だよ」

 この言葉だけ聞くと、まるで2人の不良が河原で殴り合った後に理解し合って一件落着したような雰囲気だが、これからも介護の日々は続くのであり、問題解決とはいかない。恵美子は少し自分に言い聞かせているようにも見えた。

 この母娘はどちらも「言いたいことは我慢しない」ように見え、それでケンカが絶えないように思えた。「言いたいことも言えない」よりはまだいいのかもしれないが、それでもケンカがあまりに頻繁に起こるようでは疲れてしまう。かき揚げが導火線になるほど消耗している、ということなのだろう。

 この家に玉置や美津江のリハビリを行う理学療法士など、「家に来る第三者」がいてよかったと思う。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「『おかえり』の声が聞きたくて ~歌舞伎町 真夜中の処方箋~」新宿歌舞伎町には夜8時に開店する薬局がある。客の8割は女性で、ほとんどが「夜の街」で働く人たちだ。店主の中沢宏昭と、中沢のもとを訪ねる女性たちについて。

『二月の勝者-絶対合格の教室-』成績下位の生徒を「できない子だと思ったことはありません」と語る黒木の理論

 中学受験をリアルに描く連続ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系、土曜午後10時~)。第1話では、中堅中学受験塾「桜花ゼミナール吉祥寺校」の新校長に赴任したスーパー塾講師の黒木蔵人(柳楽優弥)が、「全員を第一志望校に合格させる」と高らかに宣言。黒木の「合格のために最も必要なものは、父親の経済力と母親の狂気」という強烈で過激な言葉は、圧巻だった。

あらすじ

 桜花ゼミナールでは、成績順・3クラス別で授業が行われるが、下位のRクラスはやる気のない生徒が多い。黒木はRクラスを担当する新人塾講師の佐倉麻衣(井上真央)に、Rクラスは「お客さん」で「不良債権」だから、「一生懸命にならなくていい」「楽しくお勉強させてください」と指導する。

 「できない子どもの気持ちがわからないのか」と納得のいかない佐倉は、成績が振るわず、授業中もぼんやりしているRクラスの加藤匠(山城琉飛)を気にかけ、マンツーマン指導を行うが匠の反応はイマイチ。しかし、匠がいつも電車が通る時刻に窓の外を見ていることを知った黒木は、匠と彼の両親との面談をセッティングする。

 面談で黒木から気持ちを聞かれ、「自分の時間がほしい」と答えた匠は、黒木に鉄道の動画を見せられると急に顔つきが変わり、目を輝かせて見入った。さらに動画に映る鉄道ジオラマを作ったのがある私立中学の鉄道研究会だと知ると、学校のパンフレットにも目を通し、「この学校東海道線で通えるじゃん! こっちは下北乗り換え、やばすぎだよ!」とテンションを上げ、両親に「鉄研のある中学校に行きたい!」と宣言。

 匠の偏差値を知る両親は難色を示すが、黒木は匠の答案を見せ、客観的事実から匠の「できるところ」を挙げていく。点数自体は平均点に及ばないが、鉄道好きの匠は地理分野や旅人算など鉄道に関係する問題は点数が取れているのだ。

「そもそもこれだけ記憶力があればほかの科目でも飛躍的な成績の伸びが期待できる」
「匠さんが受験に向いていないというのは皆さんの不安が作り出した幻想。単なる誤解にすぎません」
「匠さんは決してできないお子さんではありません」

 また、入塾してからの2年間、弁当作りや健康管理やプリント整理等のサポートを続けてきた母親にもねぎらいの言葉をかけた。面接に訪れた段階で両親は、匠に受験は向いていない、これ以上無理をさせたくないと退塾の意向だった。

 しかし黒木の手腕により、この親子を取り巻く状況は180度変わった。「鉄研のある学校」が存在するという情報を知ることで目標を得た匠は、授業をしっかり受けるようになった。子どもは情報弱者なのだと痛感するエピソードでもある。

 Rクラスの生徒たちを「お客さん」「不良債権」と称していた黒木だが、成績下位の子を切り捨てる意図ではなかったようだ。黒木は佐倉に「勉強が楽しくなければ中学受験は成功しない。あなたは子どもたちに勉強の苦しさだけを伝えていたのではないですか」と問いかけ、さらに、こう続けた。

「あなたは私に、できない子の気持ちがわからないのかとお尋ねになりましたが、私は誰一人として『できない子』だと思ったことはありません」
「子どもを切り捨てることはできないと言いながら本心は無理だと思っている。違いますか?」

 黒木のこれらの言葉には、佐倉のみならず、普段の生活で子どもと関わることのある視聴者もハッとさせられたのではないか。

 元中学教師で良心的な人柄の佐倉は、「できない子」に寄り添い、励まし、応援する。それらは佐倉の善意なのだろうが、しかし、そもそも自分のことを「できない子」扱いする大人になんて、子どもは心を開かない。

 大人が子どもとの関係構築に行き詰まった時、大人はまず、自分がその子を「どんな子だと思っているのか」を自問するべきなのかもしれない。

 第1話に続いて、鋭い言葉を投げかけた黒木。塾は「営利目的の企業」とも言う黒木だが、どうやら「お客さん」である生徒の将来をぞんざいに考えているわけではないと見られる。30日放送の第3話では、成績上位のΩクラスに在籍する「できる子」にスポットが当てられる。