『ザ・ノンフィクション』修業の終了間近に退職したきっかけ「ボクらの丁稚物語2022 ~涙の迷い道と別れ道~ 後編」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月6日の放送は「ボクらの丁稚物語2022 ~涙の迷い道と別れ道~ 後編」。

あらすじ

 横浜市の家具製作会社「秋山木工」では、住み込みで5年間修行する丁稚奉公制度が採用されている。この間、丁稚たちは酒もタバコも恋愛も禁止、携帯電話は私用で使えず、家族への連絡は手書きの手紙だけ。朝は近所の清掃、さらに修行期間中は男性も女性も丸刈りという非常に過酷な生活だ。

 高級ブランド店が注文するような一点ものの家具を作る高度な手加工の技術を身につけられるとあって志望者は後を絶たないが、半数は脱落してしまうという。

 2017年、秋山木工に3人の丁稚が入社する。京都大学を中退して来た、実家が家具製造会社の内藤と造園会社の跡取りである加藤、糖尿病を抱える佐藤だ。

 19年春、そんな3人に2人の後輩が入ってくる。そのうちの一人、山田は秋山社長が「傲慢になる天才」と呼ぶ鼻っ柱の強さで、「何かどうしても上の方々の3人に(17年組)ちょっとどうしても憧れが持てない自分がいて」と不満を口にし、17年組との関係は不和が続く。

 秋山木工は、23歳以下の若手職人が技術を競い合う大会「技能五輪」において入賞常連であり、17年組の直接の先輩にあたる伸吾も銅メダルを獲得している。「打倒秋山木工」を掲げる全国のライバルも多い。

 今回、秋山木工からは佐藤と山田が出場する予定だったが(ほかの17年組は年齢制限で出場できない)、先輩職人から、2人の出場に対し物言いが入る。

 佐藤は遅刻が多く、禁止されている携帯電話を使っていること。山田は言うことを聞かないことなど、2人の生活態度は17年組と山田の不和を呼ぶだけでなく、先輩職人の間でも問題視されていたのだ。これを受けて、秋山社長は初めて「技能五輪」の出場を断念する。

 もともと佐藤は先輩社員の高い技術、仕事ぶりを見て、自分はここまでできないと退職を考えていた。一度実家に帰り、家族からの説得もあり、秋山木工に戻ったという経緯がある。しかし、この不出場で気持ちが折れてしまったのか、5年の修業生活のうち4年半まできたところで、結局退職してしまう。

 番組の最後では、伸吾先輩が修行を終え晴れて職人となった。先輩職人から秋山木工の法被を着せられると、両親は涙していた。

 5年間の修業生活のうち、4年半まで来たところで退職した佐藤だったが、その理由は語られなかった。もちろん、放送されなかっただけの可能性もあるが、『ザ・ノンフィクション』を見ていると自分の気持ちをはっきり言葉にしない、できない人を少なからず見かける。

 精神的に疲れ切って言葉にする労力が残っていないのかもしれないし、言葉では拾いきれないものがあって話さないのかもしれない。

 あるいは、「自分の思いを言葉にする」という習慣がそもそもない人もいるのではないか。男性の場合、女性より自分の感情を言葉として表に出すことに対し、社会的な圧も存在するだろう。

 それでも、心の中にあるなんだかモヤモヤとしたことを、言葉に変換していくのが「考える」ことだと思う。そもそも、言葉にしないと周囲も理解することがより難しくなってしまい、腫れ物に触るように扱われてしまうだろう。しかし『ザ・ノンフィクション』を見ていると、「言葉にできない人」は案外多いのだと思う。

 一方、今回の秋山木工に限った話ではないが、『ザ・ノンフィクション』で若者の就業をテーマにする回では、「親孝行」「親への恩返し」を目的に挙げる出演者が多い。山田もシングルファザーとして自分を育ててくれた父親に恩返しをしたいと話していた。

 親孝行がしたいと話す子どもは、親の苦労を知っているのだろうし、それを意識せずに育つことができた子どもよりも「苦労を知る子ども」だと思う。つらいこともあったろうに、グレないどころか「親孝行がしたい」と話す姿は立派だが、私は違和感というか、何か子どもが無理を抱えているように思える。

 ひとり親など、親が忙しい中で子育てせざるを得なかったとしたら、それは親自身と社会の問題であり、子どもに責任は全くない。今の時代の親は、ほぼすべての親が、親自身の意志で子どもを持ったのだから、恩返しなど考えなくてもいいと思うのだ。

 単純に「親孝行と言うと、年上受けがいいから」という計算や、「家庭と学校しか社会を知らないので、親孝行くらいしか言えない」といった理由のほうが、私には健全に思えてホッとする。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「生きることって… ~山とマタギと私たち~」。秋田県の山村でマタギを営む74歳の鈴木英雄。マタギは自分の代で終わりだと思っていた鈴木のもとに、マタギ希望の若者たちがやってきて……。

『ザ・ノンフィクション』尊敬できない先輩VS扱いづらい後輩「ボクらの丁稚物語2022 ~涙の迷い道と別れ道~ 前編」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月27日の放送は「ボクらの丁稚物語2022 ~涙の迷い道と別れ道~ 前編」。

あらすじ

 横浜市の家具製作会社「秋山木工」では、住み込みで5年間修行する丁稚奉公制度が採用されている。この間、丁稚たちは酒もタバコも恋愛も禁止、携帯電話は私用で使えず、家族への連絡は手紙だけ。朝は近所の清掃、さらに修行期間中は男性も女性も丸刈りという非常に過酷なものだ。

 しかし秋山木工では、高級ブランドショップやホテルなどに納品されるような、一点ものの超高級家具を作る技術を丁稚生活で身につけることができ、過酷な生活ながら丁稚志望者は後を絶たない。だが、半数は脱落してしまうと番組内では伝えられていた。

 2017年、秋山木工に入社した丁稚3人。京都大学を中退して来た、実家が家具製造会社の内藤、造園会社の跡取りの加藤、糖尿病を抱える佐藤だ。

 19年春、そんな3人に2人の後輩が入ってくる。そのうちの一人、山田はシングルファザーとして自分を育ててくれた父親に恩返ししたいと話すも、流されやすい性格だとも言い、入社前に会社側から習得を求められているそろばん3級も合格できていなかった。そんな後輩・山田を教育するミッションが内藤を中心に、17年組に課せられる。

 山田が入社し1年半後、同期入社のもう一人は退職していた。一人になった山田の下に、新しく後輩の丁稚が入ることになり、山田は自分が苦戦したそろばんについて熱心に説いていた。しかし、そんな中で山田が秋山木工から失踪してしまう。

 山田の直属の先輩である17年組は、山田の失踪においても特に慌てていないようで、先輩職人や秋山社長から、後輩の失踪には先輩の責任もあると諭される。内藤は、山田が何か思うところがあることを察していたが、「実際、面倒くさいというか嫌なんですよね。人と話したりするの」と、素直すぎる思いを番組スタッフに話す。

 一方、失踪から戻ってきた山田は、番組スタッフに対し「何かどうしても上の方々の3人に(17年組)ちょっとどうしても憧れが持てない自分がいて」と不満を話し、番組ナレーションではこの構図を「尊敬できない先輩、扱いづらい後輩」と表現していた。なお、失踪理由については語られなかった。

尊敬できない先輩と生意気な後輩

 番組を見る限りだが、17年組の3人はボーッとした感じで、口数も少なく、はた目にも「頼れる」という言葉が出てこない感じだ。だが、この3人に「悪意」は感じられない。

 一方でその3人の後輩にあたる山田は、そんな先輩にいら立っているのが態度に出ていた。番組の最後、新人指導において内藤と山田の意見は正反対となったが、その時の言葉の使い方も、もう少し気を使ったらいいのに、と思うものだった。

 それまでのいろいろな蓄積があってのことだと思うが、それにしても山田は17年組を下に見ている感じがした。「人を下に見る」は、いかなる理由があれど、それを顔や態度に露骨に出すのは、最大級の失礼にあたると思う。

 秋山木工の丁稚生活は過去にも放送されたが、その際は17年組に久保田という同期がいた。久保田も同期の一人を下に見ている感じがして、山田同様に感じが悪いなあと思ったものだ。久保田はその後、秋山木工を退職する。

 丁稚生活は過酷なので、退職理由は山のようにあったとは思うが、人を下に見る態度を取ると、その相手から憎まれるだけでなく、周囲からも疎まれるようになる。その場に居づらくなった、というのも退職の背景にあるのではないかと思う。

▼前回の放送『ザ・ノンフィクション』「ボクらの丁稚物語 ~泣き虫同期 4年の記録~ 前編」

 番組後半ではそんな後輩、山田が失踪するが、17年組は特に心配した素振りも見せず、至って平常通りの生活を送っているように見えた。そんな3人に対し、先輩の職人たちは後輩の山田にもっと気を配らないと、と諭し、秋山社長も山田の失踪に際し、先輩である3人、そして社長自身に一番責任があると話していた。

 しかし、「かわいげのない後輩が失踪した」という状況で、「心配する」ことが17年組にはなんだかしらじらしく感じられたのではないかと察するし、その気持ちは一個人としてはよく理解できる。

 一方で、秋山社長や先輩職人たちの「部下を心配する、部下の行動に対し自分のマネジメント上の責任を感じる」という気持ちも、社会人として理解できる。

 ただ、「厄介な後輩の失踪」という状況は、実際はせいせいしていたとしても、多少心配した素振りぐらいは見せておいたほうがいいのでは、と思う人が多いだろう。

 そんな中でもまったく平常そうな17年組は“心のまま”とも言え、それは幼さでもあるのだが、大抵の大人が社会にもまれ建前を身につけ、いつの間にかなくしてしまう素直さが残っていて、ちょっとまぶしさも感じた。

 次回は今回の続編。17年組と山田の不協和音が増幅していく中、秋山社長は苦渋の決断を下すことになる。

『ザ・ノンフィクション』娘の育児が他人事の母親をどう説得する?「山奥ニートの結婚 ~一緒に赤ちゃん育てませんか~」

 

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月20日の放送は「山奥ニートの結婚 ~一緒に赤ちゃん育てませんか~」。

あらすじ

 和歌山県田辺市、コンビニも病院もない山奥に、シェアハウス「共生舎」がある。暮らしているのは主に20~30代の人たちで、月に2万円の食費、光熱費を払えば家賃はタダ。気になる買い物の面は、アマゾンに注文すれば翌日には届くので、これといった不便もなく、13ある個室は満室だ。

 過疎集落なので、アユの放流など若い人手を必要とする仕事があったり、交通整理のバイトなどで働きつつ生活している人もいる。

 30代のももこは、もともと法律事務の仕事をしていたが、仕事柄人間関係のトラブルを多く目の当たりにすることで人間不信に陥り、自分はひっそりどこか遠くで暮らしたいという思いから、共生舎に移り込み、貯金を切り崩しつつ生活している。

 しかし、共生舎の住人であるアツシと結婚し妊娠。なお、この限界集落において「赤ちゃんが生まれる」は40年ぶりの出来事だという。

 夫のアツシは子どもが生まれるにあたり、病院からの距離や、学校のことも考えて共生舎からの卒業を考えていたが、ももこは共生舎での子育てを希望しており、「子育てが大変だから面倒を見切れない分は、ほかの住人にも見てもらえるかなって」とも話す。

 共生舎の近くで暮らす80代女性、中岡さんは共生舎の住民たちの面倒を見てくれる、頼れるご近所さんだ。実家の親とは折り合いが悪いももこは中岡さんを信頼しており、生まれた娘の名前も、中岡さんの名前から取り「カヨ」にする。

 一方、ももこは家事、育児に対しどこか他人事な態度を取ってばかりで、赤ちゃんの様子を見に訪ねてきた中岡さんにまで沐浴をしてくれるようお願いする。中岡さんは帰り道、番組スタッフを前に親子を案じて涙する。

 番組の最後、中岡さんはももこたち親子を自宅に呼んだ。ももこに対し、もうちょっと育児に対し積極的になってほしいと説得を試みる。ももこは「私が赤ちゃん産むって決めたから、育てるって決めたから、そこは責任取らなきゃいけないなって思います」と話した。

1週間かけて培われた「説得」の力

 中岡さんの「説得」が印象的な回だった。共生舎のそばで一人暮らしをしている中岡さんは、育児に対し他人事、人任せな言動がみられる母親・ももこのことが気が気でなく、番組の最後で態度を改めるよう諭した。

 「他人の行動を変える」というのは、人間の行う行為の中で最も難しいことの一つといってもいいだろう。これが楽にできれば、世の中の上司も親も教師も苦労しない。正論は言った側が気持ちいいだけで、言われた側の反発を招くだけだろう。説教なんてもってのほかだ。

 中岡さんの説得の何が良かったのか考えてみた。もちろん、説得の言葉自体も、「育児に主体的になってほしい」という耳の痛い話を、繊細なももこに気を使って配慮に配慮を重ねた素晴らしい言葉だった。しかし何より、ももこが娘に「カヨ」と名付けたくらい、中岡さんのことを信頼しているという、言葉以前の、関係性が培われているのが、良い説得につながっていたように思った。

 結局、信頼していない相手がいくら口でうまいことを言っても、それは相手には響かない。中岡さんは、ももこたち親子を1週間自宅に寝泊りさせていた。そういった背景も含めての「説得」なのだ。

 中岡さんの説得は完璧なものに見えたが、一方、説得は受け取る側の力も求められる。

 ももこは、出産前に「子育てが大変だから、面倒を見切れない分はほかの住人にも見てもらえるかなって」といった発言をしていた。自分本位すぎて反発を招くから、「言わないでおこう」と普通は考えそうなのに、ももこは開き直ってとかではなく、まったく悪気なさそうに言っていた。

 中岡さんの説得後、番組の最後には、「私が赤ちゃん産むって決めたから、育てるって決めたから、そこは責任取らなきゃいけないなって思います」と殊勝なことを言っていたが、どうにも「子育てが大変だから、面倒を見切れない分はほかの住人にも見てもらえるかなって」のインパクトを受けたあとに聞くと、本当かな? と思ってしまう。

 「責任を取らなきゃ」は、どんな行動を取るべきか見えてこないフワフワしている言葉だが、「ほかの住民にも面倒を見てほしい」は、取るべき行動が明確で、とても実感がこもった言葉に聞こえる。

 ももこの心に、中岡さんの言葉は果たして届いたのだろうか。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は『ボクらの丁稚物語2022 ~涙の迷い道と別れ道~ 前編』。スマホも恋愛も酒も禁止、男女問わず丸刈りという、令和とは思えぬ労働条件のもと5年修行をする「秋山木工」の若者たちを追う。

『ザ・ノンフィクション』暗い世相にまばゆいバブル世代の華やかさ「もう限界かもしれません ~コロナと父娘のラーメン屋~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月13日の放送は「もう限界かもしれません ~コロナと父娘のラーメン屋~」。

あらすじ

 都内屈指のラーメン激戦区、東京・荻窪。35歳のえつ子は、コロナ禍で最初の緊急事態宣言があけた直後の2020年6月、この地で「旨辛麺 かつくに」をオープンさせる。荻窪では少ない、辛みそを売りにしたラーメンだ。

 コロナ収束の見通しが全く立たない難しい時期にあえて開業を選んだのには理由がある。えつ子の父、裕也は埼玉県でキャバクラや飲食店を6店舗運営しており、コロナ前は年商10億円を目標に掲げ4億円は稼いでいたが、売り上げは10分の1に下がってしまったと話す。

 主力の川越にある海鮮居酒屋では夜の時短営業対策でランチを始めるも、客は1日に数人程度、そもそも川越の街に人がいないという。裕也の店であり、えつ子がかつて働いていた狭山のキャバクラは無期限休業中だ。ラーメン店ならばとその可能性に賭けての出店だったのだ。

 かつくにの、7人しか入らないカウンターの店で、えつ子と、元キャバクラの黒服だった菊池は懸命に働くも、テレワークの影響もあり、荻窪の街を歩く人が夜は格段に減ってしまい、店を開けても閉めても赤字の状態が続いてしまう。

 21年5月、えつ子は店頭に「もう限界かもしれません。売る物も(私物)無くなり このままではお店も1カ月もちません。もう限界です。皆様 お客様 どうかお助け下さい  店主えつ子(一部のみ抜粋)」と張り紙を出す。

 えつ子の訴えに、ネット上では同情商法はやめろ、協力金はもらうくせに、などの心無い声も見られたが、店には応援すると客が何人も訪ねていた。

 それでも赤字は続き、えつ子は閉店を決心。しかし、菊池が裕也とえつ子に店の継続を土下座して懇願、10日間の猶予を与えられた。それでも、店を営業するための目標金額の半分に及ばず、かつくには休業となった。

 えつ子は、応援してくれた常連に送る手紙とともに、冷凍ラーメンをセットで送るなど、通販という新たな活路を見いだそうとする姿も伝えられていた。

6店舗のうち5つをたたむ

 えつ子の父、裕也は、屋台から一代で事業を伸ばしたやり手の実業家だ。番組の最後では6店舗あった店舗のうちの5つを閉店や休業状態にする厳しい決断を下す。

 そのうちの一つ、西東京市の海鮮居酒屋の最後の日は、裕也も接客を行い、閉店後は人がいなくなった店に戻っていく背中が映されていた。まったく自分の落ち度ではないコロナという要因で、手塩にかけてきた店をたたまないといけない無念、悔しさを思う。

 番組ではコロナ前、会社が絶好調のころの自社パーティー(裕也50歳の誕生祭)が紹介されていたが、裕也は銀白色の袴姿で、リオのカーニバル風のダンサーたちを大勢従え登場するなど、今の日本からはほとんど失われたように思われた「バブリー」を地で行っていた。そして、これが見ていて爽快なのだ。

 社長室の壁には、家の玄関ドアほどある大きな馬の絵画が飾られ(馬主になりたいと話していた)、部屋にはえつ子の身長くらいありそうな陶磁器のツボ、円形の屏風、金色を基調とした縁起物があった。

 バブル世代は金銭感覚と美的感覚がおかしいと煙たがられることもあるが、一方で、バブル世代には華がある。華やかさ、派手さが、今の先の見えない暗い世相だからこそよりまばゆい。そしその圧倒的な華やかさが、新宿歌舞伎町ではなく、狭山から噴き出していたというのもたまらない。

 裕也の社名「インフィニティ78」の78は七転び八起きが由来だという。先の見えない苦難の中かと思うが、“狭山の帝王”の再起を願う。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「山奥ニートの結婚 ~一緒に赤ちゃん育てませんか~」。和歌山県の山奥で、「働きたくない」20~30代の若者がシェアハウスで共同生活を送っている。そんな理想郷に、現実の象徴でもある「赤ちゃん」がやってきて……。

長瀬智也、『池袋ウエストゲートパーク』以前の未完成な存在感――『白線流し』に刻まれた姿

――ドラマにはいつも時代と生きる“俳優”がいる。『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、“俳優”にスポットを当てて90年代の名作ドラマをレビューする。

 2021年4月にジャニーズ事務所を退所し、芸能界を引退した元TOKIO・長瀬智也。彼が最後に出演した作品は、同年1月期放送の宮藤官九郎脚本ドラマ『俺の家の話』(TBS系)だった。

 俳優としての長瀬を考える時、宮藤との出会いは決定的なものだといえる。2000年に出演した宮藤脚本のドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(同、以下『池袋』)で演じた真島誠の「バカで不器用だが明るく優しい豪快な男」という人物像は、『俺の家の話』で演じた元プロレスラーで親の介護をしながら能楽師を目指す観山寿一まで続く、俳優・長瀬の共通するイメージだ。

 つまり、長瀬は『池袋』で俳優として覚醒したといえるだろう。だが、それ以前の長瀬に俳優として魅力がなかったかというと、そんなことはない。

 宮藤のドラマで見せる演技があまりに強烈で魅力的だったからこそ忘れがちだが、90年代の長瀬には現在とは違う、未完成ゆえの存在感があった。その魅力がもっとも際立っていたのは、1996年の連続ドラマ『白線流し』(フジテレビ系)で長瀬が演じた大河内渉だ。

 本作は、長野県松本市を舞台にした青春群像劇。タイトルの「白線流し」とは、卒業式の日に卒業生が学帽の白線とセーラー服のスカーフを一本に結んで川に流す行事のことで、劇中の高校生たちの絆を示すモチーフとして象徴的に用いられている。

 物語の中心にあるのは、受験を控えた七倉園子(酒井美紀)たち全日制高校に通う高校3年生の焦燥感。大学受験を目前にして将来について思い悩む園子の姿は今見ても生々しい。おそらく、地方の進学校に通っていた真面目な子ほど「これは自分の物語」だと感じていたのではないかと思う。

 一方、長瀬が演じる大河内渉は、昼間は工場で働き、夜は定時制に通う少年。同じ高校に通っていても全日制と定時制だったため、接点がない2人だったが、ふとした偶然で知り合い、少しずつ心が通じ合っていく。

 受験生の鬱屈と同時に描かれるのは、経済格差がもたらす分断だ。これは今見るほうが切実に迫ってくる。

 親が裕福で恵まれた立場にいる全日制の生徒と、働きながら定時制に通う生徒の立場の違いが劇中では強調される。不良が多くガラの悪い定時制の生徒たちは教師から煙たがられており、全日制の生徒から白い目で見られている。逆に定時制の生徒たちは、全日制の生徒を親の金で悠々と青春を謳歌する甘えた奴らだと見下している。

 そんな中、全日制に通う園子たちと定時制に通う渉がお互いの立場を超えて心を通わせていく姿が、本作の見どころだ。

 長瀬が演じる渉は、いつも不機嫌そうにしており、常に人を睨みつけるような表情をしている。まるで自分をとりまく世界の全てを憎んでいるかのようだ。同時にその表情には哀愁があり、彼を見ているだけで切ない感情がこみ上げてくる。渉は自分の気持ちをうまく言葉にできず、常にいら立っているようだ。そんな彼の刺々しい顔は周囲を威嚇し、あらぬ誤解を生んでしまう。

 父親の死後、次から次へと不幸が押し寄せ傷ついた渉は「オレのことはほっといてくれ」と自暴自棄になっていく。そんな渉の姿を見た園子の中には「私が支えてあげなきゃ」と、まるでアイドルを応援するファンのような気持ちが芽生える。放送当時、園子と渉より2歳年上で、すでに受験生ではなかった筆者には、園子の渉に対する恋心が受験勉強からの逃避にしか見えなかった。

 劇中には、園子が受験を間近に控えて、自分には夢や自慢できることが「何もない」と暗鬱とした気持ちになっている場面が繰り返し登場する。だからこそ、家庭の事情と経済的理由で夢を断念してしまった渉を、園子は応援したいと思うようになる。

 渉を心配する園子の優しさに嘘はないと思う。だが、受験を控えた大事な時期に渉のことばかり考えている園子の姿を見ていると、「自分の現実と向き合いたくない」から恋に逃げているように感じ、痛々しくて直視できなかった。だが、すでに大人になった今の立場から見ると、その痛々しさも含めて、10代の時にしか出せない爆発的なエネルギーを感じて圧倒されてしまった。

 なお、『白線流し』は連続ドラマが終わった後、園子や渉のその後を描いたスペシャルドラマが1997年〜2005年の間に5本作られている。定時制を卒業した渉は北海道にある天文台に就職したが、不況の煽りで天文台は閉鎖。その後は、園子と同棲するもホストとして働いていたことがバレて別れたり、青年海外協力隊として渡航したスリランカで知り合った同僚と事実上の結婚をしたりと、波乱万丈の人生を送ることになる。

 20代になっても渉と園子は高校の時以上に迷いながら生きていた。高校時代の2人や、その同級生たちが好きだった視聴者にとって、スペシャルドラマはつらい展開が続くだろう。しかし、続けて見ていると『池袋』が放送された2000年以降、長瀬の芝居が変化しているのがわかって面白い。

 園子役の酒井の素朴な表情もそうだが、『白線流し』は役者の芝居を見せるというよりは、10代の一瞬にしか出せない表情や動きを、まるでドキュメンタリーを撮るかのように追いかけてきた。それは大人になったスペシャルドラマも同様で、だからこそ一番印象に残っているのは物語ではなく、その時々で見せる役者の何気ない表情だった。

 長瀬が演じる渉にそれは強く現れており、次第に渉から刺々しさが消え、どっしりとした優しさが備わっていく姿が何よりドラマチックだ。『池袋』を間に挟み、影のある刺々しい少年だった長瀬が、当たりの柔らかい大人の男へと少しずつ変わっていく姿が『白線流し』には刻まれている。
(成馬零一)

『ザ・ノンフィクション』ほとんど福祉の領域にある不動産業「おせっかい男とワケありな人々~あなたのお家 探します~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月6日の放送は「おせっかい男とワケありな人々~あなたのお家 探します~」。

あらすじ

 アフロの髪形におしゃれなパーカーと、古着屋店員のような見た目の高橋大輔は「おせっかい不動産」の代表だ。おせっかい不動産には店舗も看板もない。神戸市長田区にある介護付きシェアハウスの、高齢者たちがたたずむ大広間の一角でパソコンを立ち上げ仕事をしている。

 このシェアハウスを運営する首藤が高橋と意気投合し、「自分たちの理想の不動産屋をつくろう」と持ち掛けたという。首藤はかつて自分におせっかいをしてくれたおばちゃんと高橋がかぶると話す。おせっかい不動産は、ほかの不動産会社なら断ってしまうような「割に合わない」仕事も引き受ける。

 火事で家を焼け出されてしまった、生活保護で暮らしていた身よりのない福永には新居を探すだけでなく、中古ながら状態のいいテレビや冷蔵庫、さらには家具から包丁まで家財道具一式を調達して引き渡していた。

 病気でほぼ目が見えない一人暮らしの美津子は、当初おせっかい不動産で家を探すも予算の折り合いがつかず公団に入ることになり、高橋の顧客ではなくなったのだが、一度会った縁と、高橋は引っ越しまで手伝う。また、91歳の身寄りのない女性が亡くなった際は、遺品の整理も手伝っていた。

 採算度外視のおせっかい仕事もためらいなく引き受ける一方で、高橋はもともと大手不動産会社の営業マンだった経歴を生かし、数百万円の契約もこなす。

 そんなおせっかい不動産に新人女性、岡崎が加入した。岡崎は今も大阪・西成で日雇い労働者の生活支援を行うNPOで働いており、そもそも首藤の介護施設の手伝いを希望していたが、おせっかい不動産に配属される。当初、おせっかいはありがた迷惑だと思われるのでは、と岡崎は戸惑いを番組スタッフに口にしていた。

 次なるおせっかい不動産の顧客、79歳の橋迫はがんが見つかり、それまで住んでいた風呂なし、水場も共同の2畳の部屋より、もっと環境のいい部屋のほうが良いだろうとソーシャルワーカー経由で依頼が入る。

 この家探しにおいて、ケアマネージャー、ヘルパー、訪問看護が集い、岡崎は「(その中に不動産会社である)おせっかい不動産がいていいんだっていうのはすごくしっくりきました」と腑に落ちた様子で話しており、その後、橋迫をひとり訪ね、生活の様子ごく自然に尋ねる岡崎の姿も放送されていた。

 高橋の本職は不動産業なのだが、おせっかい不動産の採算度外視の仕事を見ていると、これはもう福祉の領域に見える。『ザ・ノンフィクション』では今回に限らず、福祉、社会問題と向き合っている人たちを多く伝えており、今回の高橋でいいな、と思ったのが、数万円するパーカーを着て、髪形もアフロヘアーと金がかかるファッションを決めていたところだ。

 ファッションが好きで、自分のスタイルにこだわりがあるのだろう。「おせっかい不動産」の仕事と「金のかかる個人的な趣味を両立させている」ところが実にいいと思った。

 福祉はどうしても「豊かさ」とのリンクが弱い。というか、そもそも、社会が「豊かさ」を目指す中で「ひずみ」が生まれてしまい、そのひずみによって最低限の社会生活が困難になった人をなんとかしようとするのが福祉なのだと思う。

 そのため、どうしても福祉は「金」と縁遠くなりがちなのだろうが、あらゆる面で余裕がない中、手弁当で人の幸福のために身を削る人というのは、見ていて切なくなるものがある。そんな中で、高橋のファッションへのこだわりや、妻子の待つ家に午後6時には帰るという姿は見ていて安心した。社会を思う気持ちと、自分の楽しみやプライベートを両立させようとする姿に、今の時代の良さを思った。

 高橋は大手不動産会社での経験を生かし、おせっかい以外の不動産業務もこなしていて、番組内は札束が映るような高額案件もあった。福祉や社会問題を生業にしようと志す人は、採算は二の次になりがちな傾向もあるように思うが、それ自体がお金を生み出しにくいからこそ、「金」のことがむしろとても大切なのだと思う。

 番組では、突然亡くなってしまった女性の遺品整理に取り組む様子も伝えられていた。一人暮らしの91歳の女性で、部屋は物が多めだが片付けられており、作りかけの刺繍は虎の全身模様という気合の入ったものだった。高齢ながら、一人生活をきちっと、また、楽しみをもって営んでいたのであろう様子が部屋からしのばれた。

 しかし突然死によって、サイフの置き場所は? 保険証は? という部屋の大捜索が始まる。一人暮らしの場合、家を引き払う必要があるわけで、本人が亡くなったあとも人手や、それに伴い金がいる。

 どうしても生きていると「死んだ後」についてはついふたをしてしまいがちだが、あらためて自分が死んだあと数日は続く「死後の仕事」の備えについて考えてしまった。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は「もう限界かもしれません ~コロナと父娘のラーメン屋~」。「もう限界かもしれません」から始まる張り紙が物議を醸し、話題となった1軒のラーメン店がある。埼玉県を中心に居酒屋、キャバクラを展開する飲食店グループを経営する社長とその娘の苦難について。

オダギリジョーは「テレビドラマの異物」? 朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で注目集める存在感

 現在放送中のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。祖母・母・娘と3世代の女性たちがバトンをつなぐ「ファミリーストーリー」で、昭和から令和まで3つの時代を順番に描いていく。

 1月31日からは「ひなた編」がスタート。 前週まで続いた「るい編」のヒロイン・雉真るい(深津絵里)の娘であるひなた(川栄李奈、幼少時代・新津ちせ)が、どのような人生を歩んでいくのか、今後の展開を楽しみにしている視聴者は多いようで、同日の世帯平均視聴率は番組最高の18.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録した。

 そんな中で今、特に注目を集めている人物といえば、るいの夫であり、ひなたの父親・大月錠一郎だ。「るい編」から引き続きオダギリジョーが演じており、ネット上では連日のように錠一郎の愛称「ジョー」という単語が飛び交っている。

 ジャズトランペット奏者として活躍していたものの、謎の病気によって演奏ができなくなってしまった錠一郎。るいとの結婚を機に京都へ移住し、回転焼屋「大月」を開店するが、店はほぼるいが切り盛りしているため、錠一郎は無職の状態だ。

 2月2日の放送では、るいの第2子妊娠がわかったため、視聴者から「このままじゃ家計がやばい。ジョーは早く働いて!」「回転焼屋だけで家族4人やっていける?」などと心配の声が寄せられた。

 家族の今後を左右する重要な人物を演じるオダギリだが、実は今回が朝ドラ初出演。登場した当初は「朝ドラのイメージないけど、大丈夫?」「オダギリジョーは朝ドラ向きではないような……」といった声も見られたものの、回が進むにつれて「大月錠一郎はオダギリさんにしか演じられないぐらいハマり役!」「昔はクセの強い俳優だと思ってたけど、朝ドラにもピッタリで驚いた」などと、オダギリの演技を評価する声が増えている。

 しかし、かつては“低視聴率男”と言われた時代も。12年4月期に主演した『家族のうた』(フジテレビ系)は、日曜午後9時の放送枠だったにもかかわらず、第4話で3.1%まで落ち込んで打ち切りに。15年10月期には水曜午後11時53分スタートの枠で『おかしの家』の主演を務めたが、こちらも第5話で1.8%を記録するなど、“大爆死”を遂げた。

 そんなオダギリについて、ドラマ評論家の成馬零一氏は以前、サイゾーウーマンのコラムで「テレビドラマにおいて、オダギリの自然な演技は、実は危険な異物なのだ」と評していた。“低視聴率男”から“朝ドラ俳優”として注目を集めるまでの間、オダギリはテレビドラマにおいてどのような存在だったのだろうか? 『カムカムエヴリバディ』で注目を集める今、同記事を再掲する。
(編集部)

(初出:2014年5月14日)

仮面ライダー俳優から個性派へ、アイドル俳優から実力派へ――ドラマでの若手俳優の起用法は、ここ10年で大きく変化した。ジャニーズとイケメン俳優の現在の立ち位置と魅力を、話題の起用作から読み解いていく。

 『極悪がんぼ』(フジテレビ系)、『アリスの棘』(TBS系)、そして『リバースエッジ 大川端探偵社』(テレビ東京)と、今期はオダギリジョーの主演作が三本も続いている。中でもオダギリの個性が、最も生かされているのが『リバースエッジ 大川端探偵社』(以下、『リバースエッジ』)だ。

 本作は「週刊まんがゴラク」(日本文芸社)で連載されている、原作・ひじかた憂峰、作画・たなか亜希夫の同名漫画をドラマ化した作品だ。浅草にある大川端探偵社には、毎回さまざまな依頼人が訪れる。物語は、調査員の村木(オダギリジョー)が依頼を受けて浅草の街をさまようことで、街と人が持つ裏の顔を知るという大人のおとぎ話。監督・脚本は大根仁。テレビ東京のドラマ24ならではの作家性の強い作品に仕上がっている。

 『リバースエッジ』の演技について、オダギリは「テレビブロス」2014年4月26日号(東京ニュース通信社)のインタビューで「説明的な芝居を一切省いて、できるだけ最小限の芝居で伝えることはできないか」と思い、普段よりも「芝居をいかにしないか」ということに気をつけたと語っている。本作におけるオダギリの役割はゲストを生かすホスト役のため、存在を激しく主張しないオダギリの演技は、適材適所だと言える。

 また、同インタビューの中で、オダギリは、テレビドラマは放送時間帯によっては説明的な要素を芝居にプラスすることもあるのに対し、映画の場合は説明的である必要がないので、何も気にしないで演じていると語っている。なるほど、確かに『リバースエッジ』に比べると『アリスの棘』の芝居は、表情の変化や声のトーンによる喜怒哀楽の表現が比較的わかりやすく、演技のさじ加減を微調整しているのがよくわかる。同時にこの発言は今のオダギリが役者として抱えているジレンマを表しているように思える。

 自然体やナチュラルという言葉で表されるような、まるで演技をしていないかのような脱力系の演技ほど素晴らしいという考えには必ずしも同意はしないが、それが映画やテレビドラマにおける役者の演技を語る際の大きな指標となっていることは確かだろう。おそらく浅野忠信あたりから脱力系ナチュラル演技は賞賛されるようになり、松田龍平、加瀬亮といった線が細いイケメン俳優の得意とする演技のパターンとして定着していったのだが、そんなナチュラル演技の頂点に君臨するのがオダギリジョーであることは間違いないだろう。

 そんなオダギリの出世作が『仮面ライダークウガ』(テレビ朝日系)という、本来なら自然体とは真逆の、キャラクターとしての振る舞いが求められる場所だったのは、今考えても面白い。オダギリの成功以降、いわゆる平成『仮面ライダー』シリーズはイケメン俳優の登竜門となっており、綾野剛、佐藤健、菅田将暉、福士蒼汰といった数々の若手スターを輩出する“男の朝ドラ”といでもいうようなドラマ枠となっているが、まずは平成ライダー第一作である『クウガ』が、オダギリのナチュラル演技を許容したことが、大きかったのかもしれない。

 一方、『リバースエッジ』の記者会見で「民放のドラマですごい低視聴率を獲ってゴールデンはもういやだ。テレビでやるなら深夜かWOWOWだと思った」と、オダギリが語ったことが話題となったが、『家族のうた』(フジテレビ系)が低視聴率で打ち切りになったことは、本人の中では苦い黒星となっているのではないかと思う。

 『極悪がんぼ』の刑事役のように、オダギリのナチュラルな演技は群像劇の時には複数のキャラクターの1人として個性が際立つが、主演の場合、脇役や演出が、オダギリの水準に演技のトーンを合わせないと途端にバランスの悪いものとなってしまう。『アリスの棘』の上野樹里との芝居は緊張感のあるやりとりとなっているが、上野以外の役者がオダギリと絡むと、表情の演技が過剰で記号的なことがあからさまにわかってしまう。テレビドラマにおいて、オダギリの自然な演技は、実は危険な異物なのだ。

 『リバースエッジ』は、そんなオダギリの個性を理解した上でリアリティの水準を築き上げているため、画面上の違和感はまったくない。しかし、それがオダギリに対して作り手が遠慮しているように見えて、全てが自己完結した世界に見えてしまうのが惜しい。多くの人が関わるテレビドラマなのだから、役者と作品が激しくぶつかり合うことで生まれる化学変化が見たいと思うのは贅沢なことなのだろうか。

 おそらくオダギリは、今後も『アリスの棘』のジャーナリストや『S―最後の警官―』(TBS系)の国際テロリストのような、出番は少ないが印象に残る役を卒なくこなしながら、映画や深夜ドラマで本当にやりたい仕事を実現するという方向で生きていくのだろう。それは役者としては絶対に負けないクレバーな戦略だが、深夜ドラマという局地戦でしか彼の個性が発揮されない現実に歯がゆさを感じる。日本のテレビドラマはオダギリジョーという才能を、いまだうまく使いこなせていない。
(成馬零一)

『ザ・ノンフィクション』専業主婦希望の婚活で噴き出した本人の問題「結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~後編」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。1月23日の放送は「結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~後編」。

あらすじ

 コロナ禍で2020年の国内婚姻件数は52万5,490組と前年より12.3%も減っている。外出自粛やリモートが出会いの機会を奪っているのだ。

 そんなコロナ禍で「婚活」を始めた、飲食店で働く実家暮らしの31歳の女性・ミナミ。共稼ぎの両親のもとで育ち一人で食事をとることも多かったと話し、専業主婦志望だ。

 恋愛経験のないミナミは結婚相談所「マリーミー」に入会するも、状況は芳しくなく、マリーミー代表、植草美幸による直接指導コース(月3万円)を受ける。植草は8割の利用者を1年以内に成婚させるやり手だ。

 専業主婦志望という条件でなかなか決まりにくかったミナミの婚活だが、資産家の家系で、駅前にマンションを2棟持っている40代の長谷川とは話が弾み、デートを重ねる。しかしその同時期にやりとりを始めた30代の介護士、町田に初恋状態になり、浮かれた様子で番組スタッフに話していた。

 恋心から、当初考えていなかった共働きのライフプランまで植草に披露していたミナミだったが、その後町田の自宅でデートをしたところ、気持ちは一転。町田との交際を終了したいと植草に告げる。

 町田の自宅で、使い込んだ座布団が擦り切れてワタが見えていたり、電球を取り替えておらず部屋が薄暗かったり、一方で(ミナミ的にはあまり価値を置かない)車にお金をかけているなど、リアルな生活状況を知った途端、急速に冷めてしまったようだ。

 一方、長谷川との関係だが、長谷川が親兄弟と同居していること、育った経済的な環境が違いすぎることなどが理由で、ミナミの母親は交際を反対。ミナミの心も揺れる。植草は「(母親がミナミのことを)一人前だと思ってないんだと思う。どっかで飛び出さないとね、自分が」とミナミの背中を押す。

 しかし、長谷川がミナミの実家にあいさつに来ることになった直前、ミナミは番組スタッフに対し「長谷川さんとは交際終了になると思います」と唐突に告げる。

 デートの際、具合が悪くなったミナミに対し、「僕もパニックになることがあるよ」と励ました長谷川の「パニック」という発言に対し、ミナミは持病があるのかと疑い出し、さらに、その疑いは植草への不信、怒りへと変わっていってしまったのだ。

 すっかりだまされた気になり、植草に言いたいことを言ってやると「マリーミー」に向かったミナミだったが、植草に諭され気を取り戻す。だが長谷川との間は交際不成立で終わった。

 先週の前編では、お見合いの席でミナミに「(大卒なのに)ホールの仕事をしているの?」と言った無礼な男性がいて、涙を流すミナミに心無い人もいるものだとミナミに同情した。しかし、後編は前編からうっすら気配があった「ミナミのまずさ」が際立った回で、気遣いのできる長谷川の次なる良縁を願わずにはいられなかった。

 ミナミのまずさは「決めつけの強さ」だ。前編では、長谷川が肌着などをイトーヨーカドーで買うことから「資産家はケチなのかもしれない」と決めつけていたが、この決めつけが後編ではマシになるどころか、悪化する。

 その流れを整理すると、このようになる。

1.デート中に具合の悪くなったミナミに、長谷川が「僕もパニックになることがある」と気遣う。
2.長谷川の「パニック」という発言にミナミが過敏に反応。病気を隠していると疑い、母親に伝えると「騙されているのと一緒だよ」と怒っていたという。植草に対しても、なぜそんな大事なことを教えてくれないのかと怒りが沸騰。
3.植草に怒りの丈をつづったメールを送信する。裏切られた、アンフェア、騙されたなどの記載があった。

 番組を見ていない人が見ると、上の記載は何かを大幅に省いたり、誇張して書いているのではと思うかもしれないが、番組を見た人にはおおむね見たままを書いたことが伝わると思う。そのくらいミナミは決めつけが激しく、さらにその決めつけに基づいて極端な行動に出てしまう。

 「僕もパニックになることがある」と聞いたときに、ミナミは「単に『パニクっちゃうことがある』程度のことじゃないのか?」「とりあえず植草さんに確認してみよう」「仮になんらかのパニックを起こす疾患があったとして、そういったものは結婚相談所では事前に申告し、伝えられるものではないのか?」などの感情の整理をする余裕がないまま、暴発してしまう。「パニック」状態なのはむしろミナミだと思った。

 また、ミナミははっきりした物言いの母親には頭が上がらないようだが、母親は長谷川に会ってもいないのに交際に反対していた。母娘で「決めつけが強い」傾向が似ているように思った。

 そして身近な人がこうだと、もしかしたらミナミは自分が「決めつけが強い」という自覚すらないのかもしれない。イトーヨーカドーの件で、すでに植草にたしなめられていたのに直せてないということは、かなり身についてしまっている思考回路なのだろう。

 番組では、コロナで先の見えない生活の中、結婚相談所には20代前半の女性の入会が続いていると伝えられていた。そのうちの一人は、髪を巻き、薄ピンクを基調にしたワンピースを着用して植草のもとを訪ねていて、婚活とは何かを理解した服装だった。

 その20代女性は40代男性とお見合いし交際しているようだが、植草に相手との年齢差について聞かれたときに、「彼も(自分同様)海外にいた経験があって、年齢差を全く感じない会話ができていたので」と百点満点の答えをしていた。若くしていろいろなことと折り合い、諦め、妥協ができている、ソツのない大人に見えた。植草の手を煩わせず早々に「卒業」していくのではないかと思われる。

 一方のミナミは31歳のわりには幼く、それゆえに理想は高く、決めつけが激しい。しかし、そんなミナミが成婚に至ったらそれはとてもドラマティックだ。

 手ごわい20代ライバルが増える中、ミナミは植草のアドバイスのもと婚活で自己研鑽を重ね大人になり、現実と折り合いをつけ、狭き門である専業主婦になれるのか。

 また、専業主婦になれなくても、座布団のワタや、部屋の電気の暗さ程度で幻滅せずに「この人とやっていきたい」と覚悟を決められるのだろうか。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「おせっかい男とワケありな人々~あなたのお家 探します~」。アフロヘアーの高橋大輔は見た目とは裏腹に不動産会社「おせっかい不動産」の代表だ。彼の担当する客のほとんどは、普通の不動産会社だと断られてしまうような「ワケあり」な人が多いようで……。

『ザ・ノンフィクション』専業主婦志望のハード婚活「結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~前編」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。1月16日の放送は「結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~前編」。

あらすじ

 コロナ禍で2020年の国内婚姻件数は52万5,490組と前年より12.3%も減っている。外出自粛やリモートが、それまで自然にあった出会いの機会を奪っているのだ。

 そんなコロナ禍で「婚活」を始めた飲食店で働く30歳の女性・ミナミ。共稼ぎの両親のもとで育ち一人で食事をとることも多かったと話し、専業主婦志望だ。恋愛経験のないミナミは結婚相談所「マリーミー」に入会するも、状況は芳しくなく、マリーミー代表、植草美幸による直接指導コース(月3万円)を受ける。

 植草は8割の利用者を一年以内に成婚させるやり手で、成婚数は年に100~150件に及ぶ。成婚で植草のもとを「卒業」していった利用者女性は「『恋愛と結婚は別だよ』っていうところから(植草に)教えていただいてすごくありがたかったです」と話す。

 植草は、専業主婦希望のミナミに対し、日本の年収は40年上がっておらず、妻に家にいていいという男性は少数派で、「夢の専業主婦=10%」と厳しい現実を伝える。その上で、ミナミのプロフィール写真を女性らしい服装とヘアメイクにして撮り直す。

 ミナミも家で婚活対策のノートをまとめ、植草の著書を読み、婚活を研究し、お見合いの場ではにこやかに気遣いをしつつ話をしている様子が放送されていた。

 しかし、植草という頼もしいセコンドがついても簡単にうまくいかないのが婚活だ。ミナミは「大卒なのに飲食のホール(の仕事を)やってるの?」と見合い相手から言われ、相談所で涙することもあった。

 一方で、婚活を通じミナミ自身の問題もあぶりだされてくる。不満をため込んで爆発してしまうところや、相手に厳しい評価をしてしまうことだ。

 専業主婦志望という条件でなかなか決まりにくかったミナミの婚活だが、駅前にマンションを2棟持っている40代の長谷川とは話が弾み、デートを重ねていく。夏のデートでは水上バスに乗り、長谷川はミナミへ誕生日プレゼントを渡しと、いい感じの雰囲気に見えたものの、番組最後に「もう一人の方のほうが私としては……」とスタッフにミナミは話す。

 その直前にやりとりを始めた30代の介護士の町田とフィーリングがとても合ったようだが、この場合、専業主婦を叶えるのは難しくなりそうだ。迷うミナミはどう決断を下すのか。

番組を見ている中で、婚活市場の男性に「うわあ」と思ったことがいくつかあった。

1.店員に横柄(ミナミとお見合いした男性)
2.結婚がうまくいかないのを相談員のせいにし暴言メールを送る(植草の話から)
3.「大卒なのに飲食のホールやってるの?」と相手に聞く(ミナミとお見合いした男性)

 「普通の常識的な振る舞い」すらできない層が、婚活市場において少なくないのだろう。

 よく婚活において女性が「普通の男性でいいんです」と話をすることがある。その「普通」とは、年収や見た目とかそういうことよりも、普通に、常識的な、何もすごく思いやりにあふれていなくてもいいから、「最低限のやさしさのあるコミュニケーションができる」というか、人に失礼なことをしない人という意味を含んでいるのではないかと思う。

 髪をせっせと巻いて、休日にお見合いに行き、相手がその「普通のコミュニケーション」すらできないタイプなら心底がっくりきそうだ。

 全国の結婚相談所は連盟があり、登録者を全国の相談所で共有し紹介しあっている。上記のような普通がままならない人はイエローカードを発行し、累積でレッドカードにし「出禁」にすればいいのに、と自分が利用者の立場なら切に願う。しかし、一方でおそらくこういう「本人に問題があって、いつまでも決まらない人」の払う会費が、全国の結婚相談所の運営を支えているのだろうとは思う。

 一方で、ミナミもミナミで婚活を通じ問題点が出てくる。長谷川がTシャツや寝具をイトーヨーカドーで買っていることに対し、ミナミは「資産家はケチが多いというのは本当かもしれない」と植草への相談メールに書いていた。

 長谷川は別にミナミにおごらないわけではない。自分が服を買う店だけで、ここまで勘ぐられたらたまったもんじゃないと長谷川に同情した。

 さらに、それはないなと思ったのが、資産家の息子である長谷川について、ミナミが番組スタッフに発した言葉だ。

 「正直(長谷川が)イヤなわけじゃないんですけど、結局私は労働者として一生懸命働いているわけであって(略)でも相手のその人はもともとお金持ちだから、そこまで自分を追い込んで働いたことあるのかなって思っちゃって。そんな住む世界が違う人とやってけるのかなって」という発言だ。

 「格差社会の不公平」「住む世界が違う人と結婚することの不安」自体はわかるのだが、しかし、そもそも共稼ぎの家庭で育ったミナミは専業主婦志望という前提から、相手は「住む世界が違う」人になるはずなのだ。

 住む世界が違うことになるであろう人を志望しながら、住む世界の違いに不満や不公平感を覚えるなら、一体何がどうなればミナミは満足するのだろう。

 どうにも煮え切らないミナミの態度だったが、それは新たにお見合いをした介護関係の仕事をしている町田への「恋」によりがらっと一変する。

 今回の前編では町田本人は出てこなかったが、町田のことを話すときは明らかに楽しそうだった。町田以外の男性に対しミナミの採点が辛口だったのも相手への「恋力」が低かったからというのもあるのかもしれない。

 一緒にいて楽しい相手というのはなかなかいないのだから、町田にすればいいのにと個人的には思ったが、次回予告で植草は「ここは恋するところではなくて、結婚をするところ」と、浮かれるミナミにぴしゃりと釘を刺していた。

 恋は冷めるので、植草の発言の意図、思いもよくわかるのだが、一方で本格的な男女交際をしたことがなく、恋の力をおそらく初めて知ったミナミが、あえてそれを無視した選択をする、というのもなかなかきつそうだ。

 何より「恋より結婚」で選ばれる男性も気の毒に思う。ミナミはどうするのか。来週の後編が待ち遠しい。

ドラマ評論家が選出「2022年ブレークしそうな若手俳優」ベスト3! ジャニーズから2人ランクイン

――『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ』(宝島新書)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、2022年に活躍が期待される若手イケメン俳優を選出。ジャニーズタレントからは、若手2名の名前が挙がった。

1位:King&Prince・永瀬廉 『おかえりモネ』(NHK)などに出演

 2021年のテレビドラマは、ジャニーズ事務所出身の若手アイドルの躍進が目立った。

 その筆頭が、NHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『おかえりモネ』で鮮烈な印象を残したKing&Prince・永瀬廉だ。彼が演じた「りょーちん」こと及川亮は、東日本大震災で母親を亡くし、父と仮設住宅で暮らしながら、漁師として働いている。

 甘いマスクの持ち主でありながら、漁師という力仕事をしているりょーちんはモテモテだが、本人は謙虚で、周囲の人たちに対し分け隔てなく接する天使のような優しい男の子だ。だが、その優しさの奥には、震災で傷ついた自身の気持ちを、誰とも共有できないという深い絶望と諦めがあった。

 物語終盤、ヒロインのモネ(清原果耶)に「笑わなくていいよ」「大丈夫って言いながら、本当は何って思ってたの?」と聞かれて、「お前に何がわかる?」「そう思ってきたよ! ずっと! 俺以外の全員に!」とりょーちんが感情をあらわにする場面は、本作で一番衝撃を受けた演技だ。

 被災者ゆえに天使のような人間であろうと自分を抑圧し続けてきたりょーちんは、まさにアイドル的な存在で、だからこそ永瀬の芝居には説得力があったのだろう。

 キンプリはもともと若手ジャニーズグループのホープで、平野紫耀を筆頭にドラマ出演は増えており、いつブレークしてもおかしくない状態だった。今回、『おかえりモネ』で永瀬が本格的にブレークしたことで、22年はほかのキンプリメンバーが出演するドラマや映画も一気に増えるのではないかと思う。

 永瀬のほかにも、ジャニーズアイドルの朝ドラ出演も増えている。現在、放送されている『カムカムエヴリバディ』では、ヒロインの初恋の人・雉島稔をSixTONESの松村北斗が好演。王子様的な優しい振る舞いが視聴者の好感を獲得し、序盤の物語を大きく盛り上げた。

 NHK以外の民放局ドラマでもジャニーズアイドルの躍進は目覚ましく、例えば、高校を舞台にした戦隊ヒーローモノの連続ドラマ『ザ・ハイスクール ヒーローズ』(テレビ朝日系)には、ジャニーズJr.内ユニット・美 少年の6人がヒーロー役で出演した。

 もともと、ジャニーズアイドルの層は分厚かったのだが、SMAPや嵐といった先輩の存在感があまりにも強すぎて、世代交代はなかなか進まなかった。だが、21年は特に若いジャニーズアイドルが頭角を表し、世代交代が進んだといえる。中でも深夜ドラマ『夢中さ、きみに。』(MBS)で主演を務めた、なにわ男子・大西流星のインパクトは強烈だった。

 和山やまの同名漫画を映像化した本作は、不思議な青春ドラマで、物語は大西が演じる林美良のエピソードと、若手俳優・高橋文哉が演じる二階堂明のエピソードが交互に展開される。林は自分のことを「かわいい」と思っている変わった少年で、学校にある階段の数をすべて数えたり、教室で干し芋を作ったり、街中にある看板の文字を写真撮影して、SNS上で文章を作るといった「無駄なこと」に夢中になっている。

 何を考えているのかはわからないが、大西の愛くるしい表情もあってか、林は文字通りの意味での天使のような少年で、彼と接した人々はみんな林のことを好きになっていく。SNSをきっかけに林の友人になる松屋めぐみ(福本莉子)の言葉を借りるなら“尊い”存在で、アイドルの大西だからこそ成立する天性のハマリ役だった。

 今年、林以上のハマリ役に出会えれば、俳優としてさらに注目されてるのではないだろうか。

 一方、高橋が演じるもう一人の主人公・二階堂明は、中学の時にモテすぎたことで女性に対して恐怖感を抱いている少年で、わざとダサい眼鏡をかけて陰気なキャラとして振る舞っている。林と同じぐらい極端な設定のキャラクターだが、どこかリアリティが感じられるのは、SNS等で常に他人の評価に晒されている若い子の困難のようなものが内面化されているからであり、その不安を高橋の芝居は掴んでいたといえる。

 そんな高橋は、19~20年に放送された『仮面ライダー ゼロワン』(テレビ朝日系)の主人公・飛電或人を演じており、特撮ファンの間ではすでに知名度は高かった。

 21年は『夢中さ、きみに。』のほかにも、『着飾る恋には理由があって』、『最愛』(ともにTBS系)、『うきわ−友達以上、不倫未満−』(テレビ東京系)と立て続けにドラマ出演をしており、さらに存在感が増したようだ。中でも注目が集まったのは『最愛』で、ある殺人事件の鍵を握る謎に満ちた少年を好演した。

 高橋が演じる役はコメディからシリアスまで幅広く、作品ごとにイメージが変わる。以前から『仮面ライダー』シリーズは若手イケメン俳優の登竜門といわれており、オダギリジョー、佐藤健、菅田将暉、福士蒼汰、吉沢亮、竹内涼真といった俳優を送り出してきた。

 そのため、高橋のブレークも間近だと思われていたが、『最愛』で早くも注目を集めている。22年1月には、連続ドラマ『ドクターホワイト』(フジテレビ系)の出演も決まっており、来年は一気にブレークするのではないかと思う。
(成馬零一)