天然キャラのまなぶが熱血漢に……カミナリの「深すぎるコンビ愛」

テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(3月24~30日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

高田純次「怪物と戦うときは、自分も怪物になったほうがいいんじゃないですか?」

「怪物と戦う者は、自分もそのため怪物とならないように用心するがよい」

 哲学者・ニーチェの言葉である。怪物に勝つための力を得ようとすると、自分が怪物みたいな存在になってしまう。嫌いな人を懲らしめようとすると、自分もまた嫌いな人と同じように振る舞ってしまう。そうならないように気をつけましょう。そんな警句だろうか。

 哲学者や偉人の言葉を聞くと、人はしばしばわかってないのにわかったふりをしてしまう。しかし、28日放送の『世界の哲学者に人生相談』(NHK Eテレ)という番組でこの言葉を聞いた高田純次は、いつもの調子で次のように疑問を呈していた。

「怪物と戦うときは、自分も怪物になったほうがいいんじゃないですか?」

 なるほど、そうかもしれない。ニーチェの名前に臆さない高田のシンプルな疑問。番組で解説役を務める哲学の先生も、返答に苦慮しているように見えた。

 さて、話は少し変って、27日放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で、占いに関する説が検証されていた。題して、「なにやら占い師に傾倒し始めた相方が改名を訴えてきても応じられない説」。怪しい占い師に熱を上げ始めたお笑いコンビの一方が、占い師に助言されたからといって改名を提案したら、相方はどう反応するのか、というドッキリ企画である。

 1組目のターゲットになったのは、若手芸人のカミナリ。幼なじみの石田たくみと竹内まなぶから成るカミナリは、茨城訛りと激しいツッコミを武器にした漫才で、2016年の「M-1グランプリ」の決勝に進出。翌年の「M-1」でも決勝に残った。

 今回ドッキリの仕掛け人となったのは、ツッコミのたくみの方である。たくみはまなぶの目の前で1週間、怪しい数珠をつけ、怪しい水を飲む。埼玉の占い師から買ったという水晶を見せたりもする。そして1週間後、2人きりの部屋でたくみは話し始める。自分だけ、4月から『王様のブランチ』(TBS系)のレギュラー出演が決まった。これを契機に、名前を変えようと思う。「石田たくみ」を「石田夢門」にしようと思う。「夢門」と書いて、「たくみ」と読ませようと思う。なぜか。

「先生が言ってた」

 占いの先生が、平仮名は「あんまり良くない」と言っていた。だからオレは、4月から「夢門」になろうと思う。

 目の前でこんなことを言い始めた相方に、まなぶはどう応じたのか?

 テーブルを挟んで正対するカミナリの2人。占い師に傾倒して「夢門」になろうとしているたくみ(ドッキリの仕掛け人)に対し、まなぶ(ドッキリのターゲット)は最初から「頭おかしいじゃん」と全面否定の姿勢を示す。しかし、たくみは占い師の能力をさらにアピールし始める。

たくみ「これ(数珠)とかさ、先生からもらって1週間だよ。1週間でこんなおっきい(レギュラー番組の)話来たからさ」

まなぶ「違いますよ、それは。キミの努力だから」

たくみ「でも、何もだってしてないし、努力っつうか、ただ……」

まなぶ「いや、してるしてる」

たくみ「ただ普通に生きてただけで……」

まなぶ「してる、してる。芸人って気づきづらいのよ、努力に」

たくみ「そうか?」

まなぶ「そうそうそう。こんなんで決まりません。何度も言うけどオマエの努力なの」

 たくみの目を見て、たくみの言葉を封じるかのように矢継ぎ早に、まなぶは繰り返し説く。キミは努力しているんだ。キミは努力してきたんだ。気づいていないだけなんだ。そんなまなぶの姿をVTRで見ていた浜田が、ツッコミを入れる。

「こいつが(占いの)先生みたいになってるやん」

 松本も「洗脳しようとしてるんちゃう?」と呼応し、笑いを誘う。怪しい占い師の洗脳から相手を解こうとする側が、洗脳しているように見えてしまうという逆説。あるいは、信頼と信仰を区別することの難しさ。まなぶはたくみを幼なじみかつ相方として信頼してきた。しかし、そのたくみが信仰の側に取り込まれようとしている。「夢門」になろうとしている。2人の間の信頼をこれから先にもつなぐために、信仰の側にいるたくみに届く言葉を、まなぶは重ねようとする。こちら側に取り返そうとする。しかしその姿は、別の信仰に取り込もうとしているように傍からは見えてしまう――。

 なるほど、高田純次がニーチェに抗して言うように、怪物を倒すために自分が怪物になる覚悟をしなければならないこともある。たくみは言う。オマエに何かを買えとは言っていない、すべて「オレのことだから」。すると、何かのスイッチが入ったかのように、まなぶは語り始めた。

「いやいや、キミの人生はオレの人生だし、オレの人生はキミの人生なんだよ。一緒に歩んでいくの。ね? そいつが、そんなクソみたいなもの買わされて、つけて信じて、名前改名するとか、ふざけんなと思うよ」

 洗脳された人への対応として、これが適切なのかはよくわからない。けれど、自分が怪物になることに慎重になりすぎるあまり、人それぞれだからと何もしなければ、大切なものを取り戻せなくなるときがあるのかもしれない。相方のために、図らずも怪物のようになってしまうまなぶと、相方を怪物のようにさせてしまうたくみ。カミナリの2人の関係に、深い信頼を感じた。

 27日放送の『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)に、女優の工藤夕貴が出演していた。10代でデビューし、ハリウッド映画にも出演歴がある工藤。近年は、女優業だけでなく農業にも従事している。工藤いわく、「食べ物を自分の手で育てられることが、本来は人間の生活だと思う」。富士山の麓に自宅を構え、自ら開墾した農地で、自給自足に近い生活を送っているのだという。

 番組では、そんな工藤のもとに「大都会東京で迷える女子」を送り込み、2泊3日の農業体験を通じて「女磨き」をさせるというような企画を実施していた。題して、「女を鍛えるネイチャー工藤塾」。今回は(次回があるのかどうか知らないけれど)塾生として、ゆきぽよや藤崎奈々子ら4人の女性タレントが参加していた。

 1日目、まずは畑を耕す。率先してクワを持ち、作業を進める工藤。しかし、慣れない農作業にゆきぽよらは、「しんどい」「腰が痛い」と、すぐに愚痴をこぼしてしまう。そんな塾生に、塾長であるところの工藤は説く。

「なんのために一生懸命ほじくってるって思うかもしれないけど、これが(野菜が)育ってくベッドになる。お母さんでいう子宮みたいな。今こうやって私たちが土を触ってる瞬間に、やっぱり地球とひとつになってるんだよね。アースしてる」

 2日目、田んぼの草刈りをしたり、ドラム缶風呂に入ったりした後、夕食は野外でオーガニックカレー。食後、焚き火を前に工藤は、「明日の朝は、来なきゃよかったと思うかもね」と思わせぶりなことを言う。どうやら、体力的にキツい試練が朝から待っているらしい。不満の声を上げる塾生に、工藤は自説を述べる。なぜ体を追い込むのか。そうすることで、ミトコンドリアが活性化し、体が強くなるからだ。2月に冷たい湖で泳いだって自分は平気だが、それもこれも普段からミトコンドリアを覚醒させているからだ。説明を終わると、工藤は笑いながらこう言った。

「呼んで。ミトコンドリア女優って呼んで」

 3日目、早朝4時から登山が始まる。約2時間の往路、塾長の人生論を聞きながら歩き続けた塾生を山頂で待っていたのは、日の出に照らされた富士山だった。感動の声を上げる塾生。昇る太陽を見ながら、塾長は語る。

「勝手に朝日が昇るんじゃなくて、私たちが回転してるんだからね。宇宙の法則によって回転させられてる」

 自然との共生。自給自足の生活。素晴らしいことだと思う。「子宮」とか「アース」とか「ミトコンドリア」とか「宇宙の法則」とか、なんだか気になるキーワードはある。体力的に追い込まれた塾生に塾長が優しい言葉をかけ、塾生落涙、みたいな展開もあった。個人的にはムムムと思うが、そのあたりはこれ以上ツッコまない。人それぞれだし。

 怪物と戦う者は、怪物にならないように用心しなければならない。ミトコンドリア・ライターになる前に、この件からは早急に目をそらしておこうと思う。

(文=飲用てれび<http://inyou.hatenablog.com/>)

『イッテQ!』、特番対決でも『ポツンと一軒家』に敗北! 『鉄腕DASH!!』の完全復活に期待するしかない!?

 日本テレビきっての人気バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』が、ライバル番組『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)にどうしても勝てなくなってきた。

 3月31日、『イッテQ!』は午後7時から2時間スペシャルを放送し、視聴率は16.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)。かたや、『一軒家』は6時半から2時間半スペシャルをオンエアし、19時から20時54分の間で16.8%を獲得し、『イッテQ!』を0.4ポイント上回った。

 2月24日、『一軒家』が16.4%をマークし、16.3%の『イッテQ!』に初勝利を挙げた。3月3日は『イッテQ!』が18.8%と高視聴率を獲得し、15.9%の『一軒家』に雪辱。同10日は、『一軒家』が番組最高の17.0%を挙げ、16.5%の『イッテQ!』に2度目の勝利。同17日は両番組共休止で、同24日は『一軒家』が16.1%で、16.0%の『イッテQ!』に連勝していた。同31日も『一軒家』が制して、これで3連勝。ここ5回の直接対決で、『イッテQ!』は1勝4敗と負けが込み、もはや『一軒家』が勝つのが当たり前の情勢になってきた。

 同31日の放送内容は、『イッテQ!』が「珍獣ハンターイモトワールドツアー in 南アフリカ」「パパラッチ出川 in アメリカ」「イッテQ遠泳部 in フィリピン」。『一軒家』は群馬県、愛媛県の一軒家を訪ねた後、熊本県を捜索すると、同じ集落に5軒の一軒家があり、元村長と元区長の案内を得て、そのすべてを訪問。それぞれの家庭のドラマに迫り、まさにスペシャルにふさわしい濃い内容だった。

 こうなってくると、番組内容がどうであれ、今後も『イッテQ!』は劣勢を強いられることになりそう。そうなると、王座に返り咲くためには、前番組の視聴率も非常に重要になるだろう。昨年10月、『一軒家』と共にスタートしたテレ朝の『ナニコレ珍百景』(日曜午後6時半)はコンスタントに2ケタをマークし、『一軒家』にいい流れをつくっている。一方、『イッテQ!』の前番組『ザ!鉄腕!DSAH!!』は今年に入って、上昇傾向で、1月20日に木村拓哉が助っ人参戦した際には18.6%の高視聴率をマークした。だが、ハイレベルな数字はなかなか維持できず、直近の3月24日は13.0%まで落ち込んだ。

 現状、『DASH!!』は『珍百景』に上回っているとはいえ、『珍百景』も健闘しており、大差はついていない。この先、『イッテQ!』が『一軒家』との激しい戦いを制していくためには、『DASH!!』が完全復活して、チャンネルを日テレから替えさせないようにする努力も必要になってきそうだ。
(文=田中七男)

日テレ『ZIP!』沈没か? 速水もこみち降板、吉田沙保里起用で見る人がいなくなる!?

 日本テレビ系の朝の情報番組『ZIP!』が、沈没の危機に瀕してしまいそうだ。

 同番組では3月いっぱいで総合司会の川島海荷、金曜メインパーソナリティーの鈴木杏樹、「MOCO’Sキッチン」担当の速水もこみちが降板する。川島の後任には徳島えりかアナ、鈴木の後任には女子レスリング五輪3連覇を果たし、先に現役を引退した吉田沙保里が起用されることが明らかになったが、「もう見ない!」といった声が続出しているという。

「そもそも、『ZIP!』は圧倒的に女性視聴者、特に主婦層に支えられています。それは、イケメンで高学歴、好感度も高い総合司会の桝太一アナに加え、ジャニーズの風間俊介、山下健二郎(三代目J Soul Brothers)、工藤阿須加らが曜日ごとのメインパーソナリティーを務め、速水の料理コーナーがあるからです。速水のコーナーがなくなるだけでも、女性ファンはショックを受けているのに、金曜だけとはいえ、吉田の起用には首をかしげている視聴者が多いようです。吉田は五輪の金メダリストにしては好感度がイマイチで、男性に対してはガツガツ系で知られています。そんな吉田がレギュラー加入するようなら、『金曜は見ない!』と断言する人も出ています」(芸能ライター)

 総合司会が川島から局アナの徳島アナに交代するのは、“経費節減”と見てとれなくもないが、吉田の起用はいちかばちかの冒険。「忙しい朝から吉田なんか見たくない」との声も噴出している。とかく帯番組は視聴習慣に左右されるだけに、金曜だけ他局の番組を見ていれば、そのうち、ほかの曜日も見なくなってしまうのは自明の理だ。

 かつて、民放横並びのトップに立っていた『ZIP!』だが、気がつけば、『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)に抜かれ、『めざましテレビ』(フジテレビ系)の再浮上を許し、現在、民放の同時間帯で3番手に落ちてしまった。こんなことをしていたら、後に続く『あさチャン!』(TBS系)にも逆転される日が来るかもしれない。

(文=田中七男)

『バイキング』は芸人に厳しすぎ!?  大量卒業の一方で、高度なボケを繰り出す小木、岩尾、吉田に高評価

 フジテレビ系ワイドショー『バイキング』から、人気者が次々と姿を消している。月曜日のIKKO、火曜日のサンドウィッチマンとYOUが、この3月をもって曜日レギュラーを卒業したのだ。

「以前はゲストとレギュラー合わせて、コンスタントに5~6人のコメンテーターが出演していた『バイキング』ですが、最近は4人くらいになることも多く、スタジオがちょっと寂しく感じる日もありますね」(テレビ誌記者)

 坂上忍の歯に衣着せぬ意見が持ち味の『バイキング』だが、レギュラーコメンテーターにとっては少々難しい点もあるようだ。

「普通のワイドショーなら、比較的素直にコメントをしていれば問題ないのですが、『バイキング』の場合は、坂上さんから無茶振りをされることも多い。特に芸人さんに対しては、デリケートな事件なんかへのボケを求められることも珍しくない。そこでうまく返せればいいのだけど、仮にスベってしまったら、不謹慎な発言にもなりかねない。正直言って、芸人にとっては相当シビアな番組です。生放送だから、そのまま電波に乗ってしまうし、サンドウィッチマンなんかは卒業でホッとしている部分もあるのではないでしょうか」(制作会社関係者)

 高度なボケを必要とするうえに、炎上する可能性も高いということで、芸人にとってはリスクが高い『バイキング』。だからこそ、過去にも何人もの芸人たちがレギュラーを卒業しているという。

「たとえば、雨上がり決死隊や小籔千豊さん、ケンドーコバヤシさん、友近さんなどは、芸人への負担が大きい番組の方向性と折り合いがつかなかったがゆえに卒業となったといわれています。坂上さんとの関係性がどうということよりも、生放送でこのスタイルの番組に出演するということに対する考え方の違いがあったのではないでしょうか」(同)

 そんななか、坂上からの無茶振りにもしっかりボケで返しているのが、おぎやはぎ・小木博明、フットボールアワー・岩尾望、ブラックマヨネーズ・吉田敬の3人だ。ある構成作家は、こう評する。

「小木さんは飄々とした感じで、本音をズバッと言うタイプ。岩尾さんは、例え話なんかを交えつつ、ボケっぽい感じで正論を言うタイプ。そして、吉田さんは多少不謹慎になりながらも、自分の本能的な意見を言うタイプ。三者三様だけど、それぞれちゃんと笑いにつなげるコメントをしています。決して目立つものではありませんが、3人とも芸人としての高いスキルを確実に見せていて、本当に脱帽です」

 厳しい現場『バイキング』で、しっかりと仕事をこなす芸人たちは、もっと高く評価されるべきなのかもしれない。

『ウルルン』10年ぶり復活! 業界内からも復活待望論が出るワケは?

 TBSのかつての人気番組『世界ウルルン滞在記』が約10年ぶりに特番として復活。視聴者のみならず芸能関係者からも、同番組に熱い視線が注がれている。

 1995年にスタートした『ウルルン』は、芸能人が外国でホームステイし、さまざまなことに挑戦する姿を追うドキュメンタリー番組。厳しい環境で暮らす人々との触れ合い、言葉も分からぬ現地の人とのコミュニケーションの様子、過酷な挑戦であらわになる芸能人の素顔、涙にくれる別れのシーン……見どころの多い番組だったが、番組終了にはさまざまな事情があったという。テレビ情報誌の編集者が語る。

「『ウルルン』は2008年に終わりましたが、番組終了直前に行われた好きな番組アンケートでBEST10に入っており、終了は驚かれました。直接の原因は、視聴率が下落傾向だったからですが、制作費が非常に高い上、TBSには『世界ふしぎ発見!』という似たテイストの番組があったのも理由の1つだったようです。また、07年に行ったリニューアルが大不評だったのも、番組延命に失敗した大きな要因です。新たに司会に加わった久本雅美が番組の雰囲気に合わなかったため、一気に視聴者が離れ、番組構成も二転三転と迷走し、14年の歴史に幕を閉じました」(テレビ情報誌編集者)

 しかし今回10年ぶりに番組が復活すると、ネットには「やっぱり面白い」「また見たい」と、ラブコールが殺到。その思いは芸能関係者も同じのようだ。芸能事務所の関係者が語る。

「『ウルルン』に旅人として出演する芸能人には、好感度が飛躍的に上がるという莫大なメリットがあります。この番組は、芸能事務所が売り出したい若手俳優をブッキングするパターンが出来上がっており、向井理、小栗旬、原田龍二、藤木直人、玉木宏、上地雄輔など、多くの人気俳優が無名時代に出演しています。今回の復活では竹内涼真と松本穂香という、すでに売れっ子の2人が起用されましたが、2人とも確実にファンを増やしたはずで、芸能人としても事務所としても魅力的なコンテンツだということが改めて証明されました。今回のスペシャルでは、小栗旬も『もう1度行きたい』と語っていましたし、TBSにはぜひ復活を検討してもらいたいところです」(芸能事務所関係者)

 平成を代表する名番組は、次の時代に復活できるだろうか。

中条あやみ『白衣の戦士!』は爆死コース!? 4月期ドラマ「大ヒット&大コケ」業界予想

 間もなく各局で4月期の連続ドラマがスタートする。1月期は、菅田将暉主演『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)が全話平均視聴率11.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でトップ成績を収めたが、業界内で注目を集めている4月期ドラマはどの作品なのだろうか。

「まず安定して視聴率が取れそうなのは、TBS日曜午後9時枠で福山雅治が主演を務める『集団左遷!!』でしょう。2013年の『半沢直樹』や14年の『ルーズヴェルト・ゲーム』など数々のヒット作を生み出し、内容も“社会派”の作品が好まれている枠ですが、『集団左遷!!』の原作も作家・江波戸哲夫氏の経済小説。同ドラマで三友銀行蒲田支店の支店長・片岡洋を演じる福山も、フジテレビ系で07~13年にかけてシリーズ化した主演ドラマ『ガリレオ』は高視聴率を連発し、10年に主演したNHK大河ドラマ『龍馬伝』も大好評で、役がハマれば強いです」(テレビ誌ライター)

 このように“安心材料”が揃っているだけに、『集団左遷!!』の視聴率にも期待が寄せられる。

「TBS関係者も、平均14~15%を視野に入れて制作しているのでは。唯一“不安要素”を挙げるとすれば、福山は16年4月期に主演したフジの“月9”ドラマ『ラヴソング』で全話平均8.5%とコケた“前科”があることですが、『集団左遷!!』では、福山の本領が発揮されるはずです」(同)

 次に、『3年A組』と同じ日テレ日曜午後10時30分枠で放送される『あなたの番です』にも、マスコミ間で好意的な声が上がっているという。

「原田知世と田中圭のダブル主演で、マンション住人たちの“交換殺人ゲーム”に巻き込まれる夫婦の姿を描くミステリードラマです。企画・原案は音楽プロデューサーの秋元康氏で、2クール連続、つまり半年にわたって放送されることでも話題になっています。プロットや脚本が非常によくできていると、早くも業界関係者の間で評判になっており、日テレが2クール連続という異例の編成を組んだのもうなずけます」(テレビ局プロデューサー)

 日テレとしては、勝負作である『あなたの番です』の前に、『3年A組』がヒットしてくれたことが、大きな安心となったのかもしれない。

「しかし懸念されるのは、『3年A組』が若手キャスト中心だったのに対し、『あなたの番です』はキャストの年齢層が幅広く、視聴者層も変わってくる点です。とはいえ、18年4月期の『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で大ブレークした田中をはじめ、実力派の役者陣が多く起用されているので、恐らくヒットすることでしょう。昨年の日テレのこの枠で放送された連ドラの視聴率は、軒並み全話平均が1ケタでしたが、『3年A組』に続いて『あなたの番です』でも数字が取れれば、先々も安泰と言えそうです」(同)

 一方、すでに業界内で「コケそう」とウワサされている新ドラマも。

「フジテレビ火曜午後9時枠の『パーフェクトワールド』です。主演・松坂桃李、ヒロイン・山本美月ですが、キャストより脚本が不安視されています。原作は漫画家・有賀リエ氏の同題作品で、18年には三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE・岩田剛典と杉咲花で映画化。そこから満を持してのドラマ化とあって、フジなりの意気込みは感じますが、脚本がとにかく重く、“今ウケるドラマ”とは真逆の路線です」(芸能プロ関係者)

 内容はラブストーリーながら、事故により車椅子生活を送る鮎川樹(松坂)と、高校時代の同級生・川奈つぐみ(山本)の“すれ違い”が描かれるそう。近年、ネット上では「重苦しい連ドラを見るのは疲れる」と言われているだけに、確かに数字が伸び悩みそうな気配もする。

「ちなみに、松坂は18年に主演した映画『不能犯』『娼年』『孤狼の血』でさまざまな賞を受賞するなど、その演技力は評価されていますが、主演ドラマではこれといった代表作がありません。一度数字が落ち込むと、最後まで右肩下がりの“爆死コース”となる可能性が、非常に高いとみられます」(同)

 最後は、日本テレビ水曜午後10時枠の『白衣の戦士!』だ。中条あやみと水川あさみのダブル主演で、今人気の“医療モノ”だが、業界内からはネガティブな意見ばかりが聞こえてくる。

「元ヤンキーの新米看護師・立花はるか(中条)と、婚活中の先輩看護師・三原夏美(水川)の“お仕事コメディ”が繰り広げられるという同作。昨今、ポップでハートウォーミングな作品が好まれるものの、こと医療モノに関しては、シリアス路線が求められています。山下智久主演の人気シリーズ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)もシリアスなストーリーをベースに、人気をキープしていますし。しかし『白衣の戦士!』は“医療モノなのに軽い”ため、あまり話題にもならなそうです」(芸能ライター)

 良い意味でも、悪い意味でも、業界評を裏切る作品はあるだろうか。

『バイキング』坂上忍「DOMMUNE売名行為」発言でブーメラン! ワイドショーの低能ぶりが露呈……

 28日放送の『バイキング』(フジテレビ系)が、ライブストリーミングサイト「DOMMUNE」が配信した5時間にわたる電気グルーヴのプログラムについて取り上げたが、その際の出演者の発言が物議を醸している。

 DOMMUNEでは、先のピエール瀧の逮捕を受け、瀧が関わったCDなどが回収されたり、ワイドショーなどでクラブカルチャー全般について“違法薬物がまん延している悪の巣窟”であるかのような報道がなされていることに異議を唱え、「これまでエレクトロニック・ミュージックの“礼楽”を我々に与え続けてくれた電気グルーヴの産み出した音楽への敬意の表明」として、「電気グルーヴの音楽のみがプレイされるプログラム」を5時間にわたって配信。46万6942ビューを記録し、Twitterトレンド日本1位、世界4位になるなど、大反響を呼んだ。

 これを受け、『バイキング』ではこの件を取り上げたようだが、森公美子は「TwitterでDOMMUNEがトレンド1位って、誰かが『1位を取ろうぜ』って呼びかけたんじゃないですかね?」と発言。MCの坂上忍が「だってさ、ここにいる人でDOMMUNEって誰か知ってる?」と投げかけると、全員首を振り、「うがった見方すると(DOMMUNEの)宣伝なんじゃないですか?」などと言ってのけたのだった。

 これに対し、DOMMUNEファンをはじめ、ネット上は大炎上。「自分が知らない世界は無い世界ってこと?」「これだからワイドショーって嫌い」「無知って恐ろしい」「バイキング見てる人も身の回りにいないし」「テレビが先端の情報を発信する媒体から後追いする媒体に変わっていた事が可視化されてしまったな」「出演者の誰一人DOMMUNEを知らないのになんでこの話題取り上げたのか謎」といった批判が殺到し、TLは大荒れとなった。

「DOMMUNE主宰である宇川直宏さんは、“事実をねじ曲げずに報道するなら”という条件で『バイキング』が本件を取り上げることに承諾したようですが、あまりにもお粗末な内容でしたね。坂上さんはDOMMUNEの企画意図について書かれたパネルを読み上げている時から半笑いで、これも反感を買った一因です。2010年にスタートしたDOMMUNEは“Final Media”をうたい、多種多彩なジャンルのクリエイターらによるトークと、有名DJによるプレイ中継をほぼ毎日行っている。宇川さんのネットワークの広さが最大の魅力で、ミュージシャン、音楽ファン双方からの信頼も厚い。今回の電グルプログラムについても、『よくぞやってくれた!』『最高の夜だった』と伝説の回となっただけに、余計にファンの怒りを買ってしまったのでしょう。この件で『バイキング』は結果的に数字稼ぎにしか興味のないワイドショーの実態をさらした形になりましたが、音楽関係者の間では、宇川さんはこれも“織り込み済み”だったのでは? といわれています」(音楽関係者)

 坂上をはじめ、たびたび出演者の発言が炎上騒ぎとなる『バイキング』だが、せめてもう少し世の中のことを勉強してから発言してほしいものだ。

『ミリオンヒット音楽祭』、ゲストの“歓声”に「うるさすぎ」「静かにして!」と批判続出

 3月26日、演歌歌手がJ-POPのヒット曲を歌う音楽番組『ミリオンヒット音楽祭 演歌の乱』(TBS系)が放送された。歌唱力の高さを見せ付けた演歌歌手のパフォーマンスに、ネット上は大盛り上がりしていたが、一方で「純粋に歌だけ聞きたかった」「歌に声を被せるな!」と不満の声も上がっている。

「同番組は、演歌歌手が持ち歌を封印し、J-POPのミリオンヒット曲を披露するという内容。昨年9月の放送時には、演歌歌手・徳永ゆうきが米津玄師の『Lemon』(2018年)をこぶし混じりに歌い上げ、放送後に行われたアルバム発売イベントで『僕自身、驚いています』とコメントするほど、大反響がありました。今回の放送にも期待を寄せる視聴者は多かったようですが、パフォーマンス中、ひな壇のゲストが間奏で『フ~!』『カッコいい~!』『すごい!』などと叫ぶ演出が大不評。ネット上では『ひな壇の声がうるさすぎる』『歌声にゲストの声被せてくるのだけが残念』『歌ってるときは静かにしてて!』と、苦情が続出していました」(芸能ライター)

 観客の声が話題になった番組といえば、10日に放送された『R-1ぐらんぷり2019』(フジテレビ系)が記憶に新しい。

「日本一のピン芸を決める同番組では、芸人がネタを披露している最中に、観客席から大きすぎる笑い声や、悲鳴に近い甲高い声が響いてくることが多々ありました。これが、視聴者には“雑音”にしか聞こえなかったようで、『笑い声がうるさくて冷める』『全然ネタに集中できない!』『客の声にイライラする……』と批判が噴出。中には『客の声を足してるとしか思えない』『今回の客はサクラか?』と、番組側の“過度な演出”を疑う声までありました」(同)

 いずれにしても、本来の歌やネタが周囲の声にかき消されてしまうという番組の構成に、視聴者の不満は募るばかりのよう。

「今回の『ミリオンヒット音楽祭 演歌の乱』は、歌手の素顔に迫るVTRを挟みながら進行しており、純粋な音楽番組というより、バラエティ番組のテイストが強かったように思います。そのため、歌っている途中でひな壇ゲストの顔がカメラに抜かれたり、声が入る演出になっていたようですが、演歌歌手のパフォーマンスが白熱していたこともあり、『歌だけじっくり聞きたかった! もったいない!』『次もあるなら、芸人の顔も映さず歌ってるところだけが見たいです』といった意見が多く見受けられました。バラエティ色が強い番組よりも、純粋に歌やネタだけを楽しみたい視聴者が多いのかもしれませんね」(同)

 番組自体の評判は悪くないだけに、次回の放送では視聴者の意見を反映し、改善されると期待したい。

『イッテQ!』いよいよヤバくなってきた……イモトアヤコ出演でも『ポツンと一軒家』に敗退!

 ついこの間まで、他局の追随を一切許さなかった日本テレビ系の人気バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』が、いよいよヤバくなってきた。

 24日の同番組の視聴率は16.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)で、テレビ朝日系『ポツンと一軒家』の16.1%に僅差ながら敗れ去った。

 2月24日、『一軒家』は16.4%をマークし、16.3%だった『イッテQ!』に初勝利を収めた。3月3日は『イッテQ!』が18.8%の高視聴率を記録して、15.9%の『一軒家』にリベンジを果たした。だが、10日は『一軒家』が17.0%を挙げて、16.5%の『イッテQ!』に2度目の勝利。17日は両番組とも休止だったが、2週ぶりの対決となった24日も『一軒家』が制した。つまり、この1カ月間の4回の激突で、『一軒家』が3勝1敗で、『イッテQ!』に大きく勝ち越したのだ。

 しかも、24日の『イッテQ!』は、ただ単に負けたというだけではない。この回は、「今夜は世界1周夢の旅…爆笑名場面を一挙紹介!」と題して、「イモトVS中国の叫び王&イギリスのゲップ男&超かわいい珍獣」「出川…世界一悲しい捻挫」「感動…中岡が番組史上最大のオーロラ撮影」などがオンエアされたが、人気のイモトアヤコ出演回で、『一軒家』に負けたダメージは大きい。

 同日、一方の『一軒家』の放送内容は、通常通りで、島根県の山奥で農業を営む80代夫婦が住む古民家と、熊本県の山の中にある焼酎工場が紹介された。

「『一軒家』はスペシャルでもなんでもなく、通常放送。『イッテQ!』はイモト、出川が出演しても、『一軒家』に負けてしまったのですから、日テレのショックは大きいでしょう。『一軒家』は中高年に、『イッテQ!』は若い人に人気で、主たる視聴者層が違うとしても、負けは負け。『一軒家』の人気が若年層にも広がっていけば、その視聴率差はもっと広がってしまいかねません」(テレビ局関係者)

 王座から完全に滑り落ちてしまった『イッテQ!』。てこ入れもさることながら、前後の『ザ!鉄腕!DASH!!』『行列のできる法律相談所』も強化しないと、復権はならないかもしれない。今の『一軒家』の勢いを見ると、そんな気にさえさせられる。

(文=田中七男)

イチロー引退会見に見る、人気芸人たちとの共通点

テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(3月17~23日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

出川哲朗「1人のお笑い、出川哲朗としてスタート立てたんだなって」

 21日、イチローが現役引退を発表した。引退会見でイチローが口にした言葉には、印象深いものが多かった。

 たとえば、野球の魅力について問われたイチローは、こんなことを言っていた。

「団体競技なんですけど、個人競技だってことですかね。チームが勝てばそれでいいかっていうと、全然そうじゃない。個人としても結果を残さないと生きていくことはできない。その厳しさが魅力であることは間違いないですね」

 さて、先週のテレビでは、お笑い芸人の言葉にも印象に残るものが多かった。

 毎週1組のゲストを迎え、芸能人生を振り返るトーク番組『八方・陣内・方正の黄金列伝』(読売テレビ)。その17日の放送に出川哲朗が出演し、リアクション芸人としての半生を回想していた。若いころ、俳優を目指していた出川は、映画専門学校の同級生だったウッチャンナンチャンらと劇団を結成。ウンナン人気に後押しされてバラエティ番組から声がかかるようになり、リアクション芸に携わり始めた。

 そんな出川がターニングポイントのひとつに挙げるのが、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)への出演だ。ここで笑いが取れなかったら、芸人をやめて実家の海苔屋を継ぐ――。芸人仲間にそう伝えた上での挑戦だった。当時、この決意を耳にしたダチョウ倶楽部は心配したという。なぜなら、リアクション芸はチームプレイ。周囲を無視して1人だけ目立とうとすると、ビートたけしに「アイツはわかってない」と思われ、次のゲームから出番がなくなる。出川の決意が悪目立ちという形で裏目に出ないだろうか、と。

 しかし、結果として出川は初登場にして笑いを勝ち取り、爪痕を残す。活躍が評価され、CMに入る前の一言を任された出川は、「たけちゃん、これからもよろしくな」とたけしの肩を叩いた。すると、それを見ていたたけし軍団らが出川を囲み、ボコボコに。その輪の中心で「やめてくださいよ」と言いながらも、出川は感激していた。

「やっとウッチャンナンチャンの仲間の出川哲朗じゃなくて、1人のお笑い、出川哲朗としてスタート立てたんだなって」

 では、身近な芸人にとって、出川のすごさはどこなのか。同じリアクション芸人であるダチョウ倶楽部の肥後と上島は言う。

肥後「1人ですからね、出川さんは」

上島「そこがすごいと思うんですよ。熱湯風呂入るにしても、おでんやるにしてもザリガニやるにしても、1人で処理するでしょ。オレらは3人だからね」

 野球は団体競技であり、個人競技である。そこに野球の厳しさと魅力がある。そうイチローは語った。同じように、リアクション芸も団体芸であり、個人芸である。ピン芸人である出川は、単身でリアクションに挑み、常に結果を残す。しかし、そんな出川が芸人としてようやくスタートラインに立てたと感じたのは、多くの芸人に囲まれ、共にひとつの笑いをつくる、その輪の中心に立つことができたときだった。

 かつて「嫌いな男」や「つまらない芸人」の代表格だった出川は、今では幅広い層に支持される人気者である。同じ芸人からも、いるだけで笑いが保証される存在として信頼が厚い。笑いのアベレージヒッターである出川は、団体芸であり個人芸でもあるリアクション芸の厳しさと魅力を、体現しているのかもしれない。

 28年間のプロ野球人生の中で、何か我慢してきたことはあるか? そう問われたイチローは、「僕、我慢できない人なんですよ」と語った。自分ができること、やりたいことを重ねてきたので、我慢している感覚はない、と。だが、他方でこんなことも言っていた。

「一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それは続けられないと僕は考えているので。地道に進むしかない。進むというか、進むだけではないですよね。後退もしながら。自分がやると決めたことを信じてやっていく。でも、それは正解とは限らないわけですよね。間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけど。でも、そうやって遠回りすることでしか、本当の自分に出会えない」

 ゲストが海外にある思い出の地を再訪し、自身の半生を振り返る『アナザースカイ』(日本テレビ系)。22日の放送では、MCの今田耕司が、若手の頃にダウンタウンらと仕事で来た韓国・釜山を訪れ、自身のこれまでを回想していた。

 大阪での駆け出し時代、すでに若者の間で人気の高かったダウンタウンと一緒に仕事をするようになった今田。当時は、ダウンタウンの子分のように立ち回り、2人の人気をかさに着て「オラオラ!」と偉そうにしていたという。しかし、ダウンタウンが東京に進出し後継番組を任されると、2人のようにうまく番組を回すことができない。天狗になっていた今田は、実力不足を思い知ることとなる。

 では、今田が現在のように数々の番組でMCを任される芸人となったターニングポイントは、どこだったのか? 今田自身、それはわからないという。自分は流されてきただけだ。求められてきたことをやっただけだ。番組を回せるようになったのも、場数を踏んで少しずつ慣れていっただけだ、とそっけない。

 しかし、他方で今田は「我慢」を信条としているとも話す。

「我慢とか、自然体の逆の不自然体っていう言葉を座右の銘にしてるんで。ボクの尊敬する人がそうやったんでしょうね、この世界入って。自由に振る舞ってるように見せてるだけで、やっぱ我慢されてるんやろうなって思いますけどね」

 自分がやりたいことをやり、我慢はしてこなかったというイチロー。尊敬する先輩の後ろ姿を見て、我慢してきたという今田。2人は対照的に見える。しかし、ダウンタウンという高みに憧れて芸人人生をスタートさせた今田は、そこに達せなかった挫折の経験を経て、地道な前進を続けてきた。その積み重ねの末に、周囲を魅了する自分なりのパフォーマンスへとたどり着く。両者の仕事への向き合い方は、案外近いのかもしれない。

 自分の肩書は何か? そう問われて、今田は答える。

「芸人です。漫才やってるわけでもないし、落語をやってるわけでもないから、やっぱり自分の中でちょっと、芸人って言うてええんかなっていうのもあんのよ。葛藤が。タレントなのかな。でも、やっぱり舞台は立っときたいから。やっぱりそこは芸人って言いたい」

 芸人であり続けるために、今日も今田は我慢している。

 イチローは語る。

「人より頑張ることなんてとてもできないんですよね。あくまでも秤(はかり)は自分の中にある。自分なりにその秤を使いながら、自分の限界を見ながら、ちょっと超えていくということを繰り返していく。そうすると、いつの間にか、こんな自分になっているんだっていう状態になって。だから少しずつの積み重ねでしか、自分を超えていけないと思うんですよね」

 23日に、『やすとも×中川家の旅はノープラン2019』(読売テレビ)という番組が放送されていた。姉妹漫才師の海原やすよ・ともこと、兄弟漫才師の中川家の2組が旅をする関西ローカルの番組だ。

 今回は福岡の1泊2日の旅。糸島でインスタ映えする写真を撮ったり、直売所でソフトクリームを食べたり、太宰府天満宮でお参りしたりしていた。内容自体はよくある旅番組の感じなのだけれど、同期でプライベートでも親交があるという4人だけで展開されるトークは、いい感じでゆるい。中川家の弟の礼二が運転する移動中の車内で、兄の剛は普通に寝てたりしたし。

 が、1日目の夜、夕食の塩もつ鍋をつつきながら、後輩芸人から寄せられた質問に答えるコーナーになると、2組の会話は少し真面目なトーンに変わった。「2組が思う天才芸人は誰ですか? 勝てないと思う理由もお聞きしたいです」という質問に答えるときのこと。中川家の音弟・礼二は、次のように語った。

「こうやって質問いただいて悪いけど、無駄な時間やと思う。勝ち負けやなしに、自分のレールをつくったらええやん」

 他人と比べて頑張ることなどできないというイチローが、自分の中の秤を基準にしてきたように、他人と勝ち負けを比べるのは時間の無駄だという中川家もまた、自分たちだけのレールを引いてきた。ネタ選びで最も優先する基準は、自分たちが楽しいかどうか。だから、自分たちのネタがお客さんにハマらなかったとしても、「あきらめへんで」(剛)、「客があきらめるまでやる」(礼二)。

 他人と比べ、他人を超えるのではなく、自分の中の秤に照らし、少しずつ自分を超えていく。その結果、比類なきパフォーマンスに到達する。ときに、仲間とともに。ときに、我慢しながら。出川と今田が現在立っている場所もまた、これまで引いてきた自分だけのレールの先なのだろう。

(文=飲用てれび<http://inyou.hatenablog.com/>)