隠れ待機児童ママの悲痛な声――「就職先が見つからない」と保活断念、生活はカツカツの地獄

 児童向け絵本作家ののぶみが作詞した「あたしおかあさんだから」。自己犠牲を強いてまで、良き母であろうとする姿が描かれた歌詞に、リアルママたちからの批判や反論がネットをにぎわせたのは記憶に新しい。現在子育てをする女性は、その母親世代とは違い、共働きのケースが多いにもかかわらず、同曲に“子育てする父”の姿がまったく描かれていないのも、物議を醸した原因なのではないか。しかしまだ育児という場面においては、女性側の負担が多いのも事実である。

 そんな子育てママをさらに追い詰めるのが、いまだに解消されていない待機児童問題だが、中には、“隠れ待機児童”も存在しているようだ。「保育園に子どもを入園させたくても、働いていないために点数が足りずに入園できない」「結婚や妊娠によって退職したために復職できる職場がない。でも専業主婦ではいたくない」といった悩みを抱える隠れ待機児童の“ママたち”。今回は、自宅育児を強いられ、負のスパイラルに陥っている“声なき層”に着目。保活は行っているものの、最初から入園すら諦めているため、「保育園落ちた日本死ね!!!」と息巻くこともできない育児ママたちの悲痛な叫びに迫っていく。

ワーママでも専業主婦でもない、隠れ待機児童ママの悲痛な声

 連日、メディアなどでは、復職したくても預け先が見つからない待機児童問題と、そのママたちの声が報じられている。しかし、表立って保活を行っているワーママ以外にも、さまざまな理由で、保育所に入所できていない潜在的待機児童(隠れ待機児童)を抱えるママの存在も無視できない。実にその数、数万人ともいわれている。なぜ、隠れ待機児童のママは生まれてしまうのか。

 元々、育児休暇が取れるような職場で働き、堂々と保活を行えるワーママと、産後は幼稚園に入園するまで育児に専念したいという専業主婦の間に、実は見えない層が存在している。そういった層を、筆者は「マミュート族」と名づけた。これは「ママ」+「ミュート」(TwitterやFacebookの機能で、見たくない相手やフィードを見られなくする機能)の造語であり、転じて“世間には届いていない”という意味合いを込めている。隠れ児童の背景には、「マミュート族」と呼ぶのにふさわしい、声なき声を持つママたちがいるのだ。

 都内で1歳になる娘を育てながら、預け先を探しているという30代の由加里さん(仮名)。彼女は、都内の女子大を卒業後、新卒で入社した生命保険の会社を人間関係のストレスで退社してから、派遣や契約社員など非正規社員として働いてきた。婚活を意識した合コンで知り合ったメーカー勤務の男性と結婚。子どもに恵まれたが、戻りたくても復職できる職場がないことに焦りを感じるという。

「結婚して1年半が過ぎて、なかなか子どもができなくて困っていたんです。ちょうど妊娠が判明した時に、派遣の契約も終了しました。今から働きに出ようにも、キャリア的に正社員は無理だし、子どもを預けたくても無職なので、保育園にも入れない。いつになったらこの状態から抜け出せるのか不安です」

 彼女たちの大半は、「本音は働きたい気持ちがある」が、出産して間もない乳児や、まだ手の掛かる幼児を抱えた状態での就活自体が難しいため、復職を諦めているのが実態だ。

「世帯収入が400万に届かないくらいなので、生活がカツカツ。実は出産してから、自分の服は一度も買っていないんです」と語る。

 満3歳から入園できる幼稚園の入園まで、あと2年。それまでに、再就職し、保育園に入所できる保証はない。

単価600円の記事を書くライター志望の育児ママ

 主婦向け生活情報雑誌のマネー関連記事では、副業や自宅でできるクラウドワークスの紹介が散見される。もうすぐ2歳になる男児の育児をしながら、在宅ライターをしている美幸さん(仮名)も、その1人。

「ネットで見つけたクラウドワークスのサービスを利用して仕事しています。打ち合わせもチャットツールを使っているので、子どもを預けて出かける必要もなく、助かっています」

 彼女が主に書いている内容は、インスタグラムで見かけた人気インスタグラマーの着こなしや、女性雑誌の付録などを紹介するまとめ記事だ。

「アフィリエイト用の記事です。入稿ルールも細かく決まっていて、クラウド上で共有しているエクセルシートを埋めていきます」

 単価が1記事600円程度なので、時間給で考えたらデメリットが多い。しかし、働いている実感を得られるという。「自分が書いた記事をネット見かけると、社会と関わっていると思えて、うれしいんです」と語る。

 とある調査では、保育施設を利用したくてもかなわなかった人のうち4割もの人が、実際には申し込み自体を行っていないという結果が出ている。なんらかの形で保活を行っていても、申し込みをしなければ待機児童の数には含まれない。「一度、区役所に保育園の相談に行ったのですが、仕事のことを詳しく聞かれて諦めました」と語る美幸さんの子どもも、この隠れ待機児童の1人だ。

 在宅ワークを中心としたライター業や、手持ちの一眼レフで撮影した画像のネット販売などを副業としている香織さん(仮名)。出産前までは飲食店のバイトを掛け持ちしてフリーターとして働いていた。現在は1歳半年になる息子の育児をしながら、エンタメ系の記事を書いている。

 テレビウォッチ記事の場合、実際に番組を視聴し、終わったら記事を書く必要がある。原稿料はわずかなため夕飯の準備などが疎かになると、夫から「そんなこと辞めてスーパーのレジでも打ちに行け」と嫌味を言われているそうだ。子育てだけに専念できた時代と違い、価値観が多様化した現代では“専業主婦”は肩身が狭く感じるらしい。

「この前、向かいのアパートでガス漏れがあってサイレンが鳴っていたので通報したら、家に消防士が事情聴取に来て、職業を聞かれたんです。ライターとは言いづらく“主婦”と答えたら、“無職ですね”とはっきり言われて傷つきました」

 ライターをしていることからもわかるように、彼女に働く意思はある。しかし、預け先を見つけてからの就活は不可能なため、再就職ができずにいるのだ。

「専業主婦って、自分からその状況を望んで、子どものことも好きで、四六時中一緒にいたいっていう人のことだと思うんです。私の場合は、元々は働くのが好きだけれど、飲食店の接客業しか経験がないために、なかなか働きに出られないんです」と続けた。

 専業主婦でいられない理由に、経済問題もある。夫の収入だけで暮らしていくには余裕がないため、劣悪な条件の在宅ワークでも受けてしまう傾向があるのだ。

「今は妊娠中から保活をするのが当たり前になっているので、母親学級で出会ったママ友が、“今日は区役所の相談窓口に行ってきた”と語るのを聞くと、羨ましく感じました。やっぱり世間的には、私みたいな状態は無期限の無職ですから」

 区役所の相談窓口に座ることだけでも、憚られるという「マミュート族」。彼女たちは、育児に無関心なパートナーを持ちワンオペ育児に陥っているケースも多い。平日の昼間に児童館や公園に向かうと、保育園にも預けられず行き場のないママたちが、スマホ片手に子どもを遊ばせている光景に出会う。子どもの笑顔の裏で、ママたちは働きたい意思をひた隠しているのかもしれない。
(文=池守りぜね)

「40歳を迎えてラクになった」19歳から10年不倫を繰り返した女の、結婚・出産願望

kameyama-180307 20年近く不倫の取材をしてきたが、このところ「長期不倫」の話を本当によく聞く。短くて8年、あとは12~15年くらいが多い。W不倫の女性にとっては、案外、合理的な関係ではないかと思う半面、独身の場合は「子どもがほしい」「結婚したい」気持ちにどうやって折り合いをつけているのかが気になる。長期不倫の女たちの声を全7回で聞いていく。

第1回:「出産リミットが見えて焦りが」長期不倫8年目、結婚と出産願望で揺れる38歳の岐路

 独身女性と既婚男性の不倫の場合、女性が30代になったところで破局が訪れるケースが多い。やはり「結婚」「出産」を考えると、いつまでも不倫などしていられないと思うのだろう。ただ、別れて独身男性と付き合っても、また不倫関係に戻る女性もいる。

 自分が“不倫”していることにショック

 ハルカさん(41歳・会社員)の最初の恋人は、学生時代、アルバイトをしていた会社の社員だった。

「私、美大だったのでアート系の企画制作をしている会社でよくアルバイトをしていたんですが、そこの社員の方を好きになってしまって。私が19歳のとき、彼は30歳。発想が豊かで、一緒に仕事をしているとすごく勉強になりました。彼が何も言わなかったので、私はてっきり独身だと信じ込んだんです」

 職場というよりアトリエのような事務所は、出入りのフリーランスも多く、自由な雰囲気が漂っていた。

「私は、その彼のアシスタント業務をよくやっていました。2人きりでいることも多かったから、自然と男女関係になったんですが、私が『初めて』だと知ったときに彼がちょっと驚いたんですよ。半年以上たってからかな、『実はどうしても言い出せなかったんだけど、僕は結婚しているんだ』と告げられて。ショックでした。彼と結婚したいとは思っていなかったけど、自分が“不倫”しているなんて……」

 別れた方がいいことはわかっていた。だが、半年以上慣れ親しんだ初めての男性と、すぐに別れることはできなかった。

「今になると好きだったのか執着だったのかわかりませんが、当時は本気で愛していると思っていました。悩んで苦しんで、1週間くらい泣いていたけど、やっぱり別れられないと彼に告げたのを覚えています」

 ハルカさんは覚悟を決めた。嫌いになるまで、この人と付き合っていこう、と。そこに妻への嫉妬も、そして思慮もなかった。若い彼女は初めての“オトナの恋”に突っ走ったのだ。

「この人とは結局、10年続きました。大学を卒業して就職してからも、業界は似ていたのでいろいろ相談したり応援してもらったり。途中で奥さんにバレかけたりもしたけど、彼は私と別れようとはしなかった。ただ、10年たったところで、奥さんがとうとう相手は私だと特定したんです。ひとり暮らしのアパートに怒鳴り込まれて……。そのとき彼が私の部屋にいたものだから修羅場でした」

 妻がハルカさんに殴りかかってきたとき、彼は間に割って入った。だが、顔は妻の方を向いていた。それを見たハルカさんは体中から力が抜けたという。

「結局、彼が見ているのは妻だった、という象徴のような気がして……。後から『妻が君に何をするかわからなかったから、とにかく妻を止めることしか考えていなかった』と言ってましたけど。顔は妻の方を見ていたよね、とは言えなかった。言えないということは、私はこの人を本気で欲しているわけではないんだな、とも思いました。女のところに乗り込んで殴りかかる妻の方が、ずっと本気度が高いですよね」

 もうじき30歳。そろそろ不倫から卒業しようと決意し、ハルカさんは関係を解消した。別れ際、彼が目を真っ赤に潤ませているのを見て、本当にいい恋をしたのだと彼女は深い満足を覚えたそうだ。

 その後は必死で婚活した。結婚相談所に登録すると同時に、友人知人に「結婚したいから紹介して」と宣言。30歳のうちに結婚したいという思いだけが大きくなっていく。

「あんなに好きだった彼と別れたのだから結婚しないと意味がない、と思い込みました。猪突猛進というのでしょうか、こうと思うと一気にそちらに進んでいくんですね、私って。そのときはやみくもに、とにかく結婚しなければいけない、結婚するんだと決めていました」

 結婚相談所でも週に一度の割合で男性に会った。今思うと、デートというよりは“品定め”だったと彼女は笑う。こちらが品定めをしているということは、男性にもそうされているのだ。だが当時は気づかなかった。

「年収は、結婚後の住まいは、親はどこでどうしているのか。それがいつも聞く3大要素でした。年収は高い方がいいし、すでに持ち家があればなおいい。そして、親と同居なんて論外、親が息子に執着していない方が暮らしやすい。つまりは全部、自分にとっていい条件であるかどうかだけ。愛と情を育める相手かどうかなんて、考えもしなかった。それまで10年、好きな人と大事な恋を温めてきたのに。恋愛と結婚は私にとって別物だったのかもしれません。恋人という名の人がいないまま、30歳の誕生日を迎えました。虚しかった」

 30歳のうちに結婚して33歳までに子どもを産む。彼と別れたとき、そう決めたはずだった。だが、結婚には「相手の気持ち」もあると、彼女は考えていなかったらしい。自分が結婚すると決めさえすれば、相手はきっといるはずだと信じていたのだ。

「結婚相談所の相談員さんに、『あなたは条件ばかり気にしているようだけど、相手も女性に求めるものがあるんですよ』とやんわり言われてハッとしたんです。考えてみたら、たぶん私は、一般男性が妻に求めるものを何も持っていないんじゃないか、と。料理がうまいわけでもないし、掃除片づけ大嫌い、仕事は好きだけど専業主夫希望の男性を養えるほどは稼げない。落ち込みました。自分で自分が信じられなくなった。今は笑い話ですが」

 そして、中学時代からの親友に言われた一言にさらにめげたという。親友はこう言ったのだ。「不倫しているときのハルカの方が魅力的だった。結婚結婚って、まなじりを決して騒いでいるハルカはかっこ悪い。なんだかいつも不機嫌だし余裕ないし」と。

「不倫をしているとき、その親友だけには概要を話していたんです。彼女は深く聞かないし、決して私を非難もしなかった。でも、さすがに結婚結婚って騒いでいる私は、本当にかっこ悪かったんでしょうね。『そもそも本当に結婚したいの? 彼と別れたから、結婚という成果を得ないと意味がないって思ってるんじゃないの?』とも言われた。さすが親友ですね。痛いところを突かれました」

 考えるまでもなく、彼女はわかっていた。純粋に「結婚して家庭を持ちたい」わけではないことを。彼と別れたからには、人生の落としどころが結婚しかなかったのだ。おそらく、彼に“幸せな自分”を見せつけたい気持ちもどこかにあっただろう。

 だからといって、今のような展開になるとは彼女自身、思っていなかった。31歳の終わりに、彼女はまた既婚者と恋に落ちてしまうのだ。

「しばらく恋は忘れて仕事に没頭しようと思っていたんです。それなのに、またも仕事関係で知り合った人と……。彼は4歳年上で、当時、結婚して2年、子どもが産まれたばかりでした。『子どもがかわいいんだよね』なんて言いながら私を口説いて。私は私で、最初から家庭があって、その幸せをのろけるような男に悪いヤツはいないはず、なんて思っちゃって。最初の不倫が、既婚であることを隠されていたから、今度は正直な人だわと……」

 自分が特に結婚を望んでいないとわかったから、相手が家庭のことを話しても傷つかなかった。それより、彼への愛情で心がいっぱいになっていたという。

「例の親友にはすぐ勘づかれました。『好きな人、できたでしょ? ハルカの顔が明るいもん』と言われたんです。相手が既婚だと知ったら彼女の顔は曇りましたが。それでも私は、自分が好きだと思える人と付き合っていることの方が重要だと思っていました」

 付き合って3年ほどたったとき、彼に第二子が産まれた。もちろん妻ともセックスしているだろうとわかっていながら、それは少しショックだったと彼女は言う。

 妊娠したいという気持ちとの折り合い

「そこからまた悩み始めちゃって。妻と名のつく人は無条件に妊娠して出産できるんですよね。私も彼の子がほしいと思ったけど、それは許されない。先に結婚した人にだけ子どもを産む権利がある。人生、不平等だなあと。だから彼に言ったんですよ。『私も、あなたの子を産みたい』って。そうしたら彼、ものすごく苦しそうな顔をして、体中から絞り出すように『ごめん』と頭を下げた。それだけは勘弁してほしいということなんでしょう。そのあとぎゅっと抱きしめられて……。『本気で好きだよ』って。女として好きだけど、家族ではないという意味なんだろうと、そのときは受け止めました」

 彼がゴミ箱に捨てていった使用済みのコンドームから精液をスポイトで取りだし、自分の膣に入れたこともある。妊娠したら産もうと思っていた。彼と別れて、ひとりきりで。

「そんな方法では妊娠の確率が低いことはわかっていたけど、それでもやってみる価値はあるかなと半年くらい続けていました。でもある日、そんなことをしている自分が情けなくなってきて……。周りが結婚しているから結婚したいと思い、子どもを産んでいる友達が増えれば子どもがほしいと思って。私は私の人生を生きているのか、と自分にカツを入れたくなりました」

 女性はどうしたって年齢を気にせざるを得ない。特に出産だけはリミットがあるのだから年齢に踊らされるのもやむを得ない。だが、そんな自分にハルカさんは疑問を抱いた。

「今、自分にとって大事なものは何か。そこをきちんと考えようと原点に戻ろうと思ったんです。本当に子どもがほしいのか。仕事でもっとやりたいことがあったんじゃないか。彼と一緒にいるかけがえのない時間を、もっと大事にした方がいいのではないか。いろいろ考えましたね」

 考えに考えた。それでも結論は出なかった。時だけが過ぎていく。そして彼女は40歳を迎えた。

「ふっとラクになったんですよね。すごく正直に言うと、ああ、これで子どもを産みたいと思わなくてすむ、という感じ。ヘンですよね。結局、自分がどうしてもほしかったわけではなく、女の人生一通りやってみたかっただけなんじゃないかな。自分を客観視するとそういう分析ができますね」

 渦中にいるとわからない。だがそこを通り過ぎると何かが見えてくることはある。そして今の彼とも10年が過ぎようとしている。

「10年にわたる不倫を二度もして、家族のいない独身41歳。他人から見たらバカな生き方かもしれません。10年後には私自身、深く後悔しているかもしれない。でも今は充実しています。それでいいかどうかはわからないけど、とりあえず私は今、生きている。それ以上でもそれ以下でもないような気がしています」

 彼女の最後の言葉は、誰にでもあてはまるのかもしれない。後悔するかもしれないとわかっていても、現状を選択するのが今の自分にとって最良であるなら、それは他人と比較してあれこれ考えるべきではないのではないだろうか。それにしても生きていくのは、ただそれだけで大変である。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
1960年東京生まれ。明治大学文学部卒。不倫、結婚、離婚、性をテーマに取材を続けるフリーライター。「All About恋愛・結婚」にて専門家として恋愛コラムを連載中。近著に『アラフォーの傷跡 女40歳の迷い道』(鹿砦社)『人はなぜ不倫をするのか』(SBクリエティブ)ほか、多数。

中学受験は「親のエゴ」「エリート志向」? 親と子の“一筋縄ではいかない”受験事情に迫る

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 読者も、きっと一度は“中学受験”という言葉を聞いたことがあるだろう。あるいは夜も遅い電車の中で、それらしき小学生を見かけた人もいると思う。

 まったく関係しない人は、中学受験親子を「親が子どもに、無理矢理勉強を強いている」と見る向きもあるだろうし、「小市民がヒエラルキーの下剋上を狙って、子どもをエリートに育てようと画策している」と冷笑するかもしれない。あるいは単純に「子どもが可哀想」という感想を持つ人も出るだろう。

 しかし、長年にわたり、中学受験の取材を続けている筆者は、当事者から上記のような声を聞くことは実はかなり少ない。それどころか、結果の如何にかかわらず「やって良かった!」と口にする親子の方が圧倒的多数なのである。

 ただ、そういった心境に至るまでに、中学受験親子がさまざまな葛藤を抱えるのは確か。この連載シリーズでは、そんな中学受験を通して見えてくる親子関係を取り上げるとともに、勉強漬けの毎日で、親にとっても子にとっても、大きなプレッシャーに晒されるはずなのに、“なぜ、最後にはやって良かったと感じる親子が多いのか”ということにも迫ってみたいと思っている。

中学受験熱が冷めないウラ事情

 初回である今回は中学受験というものが、どういう制度なのかを語ってみよう。まず、最近の中学受験の動向を簡単におさらいしてみる。2017年度の首都圏における中学受験者数(私立中高一貫校と公立中高一貫校の総受験者数)は約5万7,000人にのぼったと言われている(大手塾調べ)。これは首都圏(1都3県)の小学6年生の5人に1人が受験したという数字になる。少子化だ、不況だと言われて久しいが、受験者数の数字は16年からは逆に上昇しており、少なくとも、今後数年間、受験熱は落ちないだろうと識者たちは予測している。

 これは20年度から実施される大学入試改革(という未知なるもの)への不安感が大きな要因になっていると考えられており、逆にそれが、新大学入試への対応力が確かだと思われている私立中高一貫校への“期待値”を高めているのだ。

 今、我が国では“大学入試変更”を含めた“教育大改革”のスケジュールが、すでに決定し、進められている。そこで子どもたちが“身に着けるべき力”というのが“学力の3要素”と呼ばれるもので、すなわち、それは「十分な知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協同して学ぶ態度」なのだが、私学の多くが伝統的にそういう学習を行ってきている+これに猛烈な対抗心を燃やした公立中高一貫校の台頭により、結果として、中学受験が下火にならないのである。

 そのほかにも、中学受験熱を押し上げる要因として、高校受験の門戸を閉じる高校が続出しているということもある。特に私学は早めに生徒を確保しておきたいという経営的事情もあり、ここ20年ほどで高校募集を取りやめる学校が増え続け、高校受験での選択肢が限られてしまうという傾向が出てきたのである。

 これらに加え、難関大学合格者ランキングでも圧倒的に私立中高一貫校が名を連ねる現実、高2までの先取りシラバス、非行問題における環境の良さ、充実の設備、豊富な体験、海外留学などの道筋のつきやすさ、高校受験がない分ゆっくりと自分を見つめる時間を得られる、6年間というスパンで育まれる一生ものの友人関係……などというメリットが評価されているという面も大いにある。

 これらがトータルで得られて「お値段、月々6万円(授業料平均)。お子さんにいかがですか、親御さん?」というキャッチで、中学受験業界は親にセールスを仕掛けている次第だ。

 お金の話が出たので、ついでに書くと、中学入試では文科省が定めた小学校学習指導要領の範囲を超える内容も事実上、多く出題されるので、有名校へ専門塾に行かずに合格切符を得るのは至難の技である。そのため、新小学4年生から塾通いを始めるのが一般的になっているが、その費用、6年生までの3年間でおよそ200万円かかってくる。

 その次に私立中高一貫校に行かせると6年間で450~600万円かかる(大学付属校になるともっと高めで、700万円超のところもたくさんある。政府は20年度から年収590万円未満の世帯を対象に私立高校の授業料も実質無償化する方針を打ち出している)。一気に徴収されるわけではないので、年間100万円だと仮定して「あら、私のパート代で私立に行かせることができる!」と頑張る母もたくさんいる。

 これを安いと取るか、高いと取るかは、そのご家庭ごとに違ってくるが、上記のようなことが複雑に絡み合っての“中学受験”という“選択”になるのである。

 なぜ親は子どもに中学受験をさせるのか?

 次に、そもそも親子にとって「中学受験とはなんぞや?」ということを語ってみよう。中学受験は入試なので合否が出る。しかも第一志望に入れる子は5人に1人といわれる世界なので、厳しい戦いではあるのだが、たとえ第一志望校不合格となったとしても、この経験を体感した者たちの多くが、中学受験を無駄とは思っていないのが実情だ。

 それはなぜかといえば、私はやはり“親心”だと感じている。「這えば立て、立てば歩めの親心」という言葉もあるが、我が子が“ゴールデンエイジ※”という年齢を迎えると、親はこれから先、どのような道筋をつけてあげると、我が子がより幸せに生きていけるだろうか……ということを考えるようになるものだ。(※ゴールデンエイジ=小学校高学年の時期を指す。「生物学的臨界期」とも呼ばれ、さまざまな神経回路が形成される時期で、生涯の中で神経系の発達が一番著しい年代と考えられている)

 ある親は我が子にスポーツを本格的に究めさせようとするだろうし、ある親は音楽的才能を伸ばそうとするだろうし、あるいは、この時期はあえて自由にさせておこうとする親もいるだろう。要するに“習い事”というものを考える時期に入るのだ。その数多ある選択肢の1つが中学受験であると、考えられている。

 先述のとおり、教育界では黒船来航くらいの衝撃波が襲っているが、もし数多ある選択肢の中から、中学受験を選んだ親は「いやでござんす(1853)ペリー来航」(←中学受験の年号語呂合わせワード)と呟きながら、親子の受験である中学受験を楽しんでほしいというのが私の本心だ。

 ただ、そうは言っても、今まさに当事者の親子たちには“楽しい”と言っていられない実情もある。次回からは「中学受験を通してみた親子の姿」をつづっていこう。
(鳥居りんこ)

「出産リミットが見えて焦りが」長期不倫8年目、結婚と出産願望で揺れる38歳の岐路

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 20年近く不倫の取材をしてきたが、このところ「長期不倫」の話を本当によく聞く。短くて8年、あとは12~15年くらいが多い。W不倫の女性にとっては、案外、合理的な関係ではないかと思う半面、独身の場合は「子どもがほしい」「結婚したい」気持ちにどうやって折り合いをつけているのかが気になる。長期不倫の女たちの声を全7回で聞いていく。

「 私は完璧にファザコン」

 独身女性が既婚の年上男性と恋に落ちるとき、一般的に指摘されるのが「ファザコン」である。もちろん必ずしもそうとは言えないし個人差もあるが、「私は完璧にファザコン」と断言するのは、北陸地方で育ったナツコさん(38歳)だ。

「私が8歳のとき、両親が離婚したんです。私は父が大好きだった。最後に『お父さんは、どこにいてもナツコのことを見守っているからな』と抱きしめてくれたのが忘れられない。会えると聞いていたのに、実際にはそれから一度も会えなかったんです。私もある程度、大きくなっていたから、本当は母に『お父さんに会いたい』と言いたかったけど、言ってはいけないような気がして」

 どうやら約束していた養育費ももらえなかったようで、母は朝から夜中まで働きづめに働いて、ナツコさんと3歳年下の弟を育ててくれた。そんな母に、父のことは口に出せなかったという。

「私が高校に入ると、母は夜、近くでスナックを始めました。適当に男性と関係をもったりもしていたみたい。夜中に弟が高熱を出して店まで母を呼びに行くと、店が閉まっている。裏口から入ってみたら奥の小部屋から母の喘ぎ声が聞こえたことがあって……」

 ナツコさんは店のカウンターに、弟が熱を出したから早く帰ってくるようにメモを残して帰宅した。母はすぐに帰ってきて、弟を病院に連れていったという。

「悪びれた様子もなかったですね。今思えば、母も寂しかったし、つらかったんでしょう。ただ、あの頃はそんな母が許せなくて、私は早く家を出ようとそればかり考えていた」

 必死で勉強して東京の大学を受験した。奨学金も借りたが、翌年からは無償の奨学金をもらえるほど成績は優秀だった。

 大学を卒業後、ナツコさんは誰もが知る有名企業に就職した。職場で仲間もでき、ようやく独り立ちできたと実感した。

「弟も独立していましたから、実家は母だけになりました。ただ、母もお店を続けていたし、放っておいても1人で楽しく暮らしているようなので、今に至るまで、会うのは年に1回くらいかな」

 仕事を始めて6年目、2年付き合っていた同期の男性と結婚を決めた。そろそろ結婚しようという消極的な理由だった。

「なんとなくね、生きていれば結婚するものだと思っていたし、ちょうどいい時期にちょうどいい人と付き合っていたという感じでした。私、大学時代に短い付き合いがあっただけで、恋愛経験がほとんどないんですよね。だから、同僚の言うがままに付き合って、『結婚しよう』と言われたから結婚するか、と。女として自分に自信がないから、これを逃したら結婚しようと言ってくれる人は出てこないんじゃないかと思っていたし」

 ナツコさんは目鼻立ちのくっきりした美しい人だ。その彼女がそんなコンプレックスを抱えていたとは信じられない。

 ただ、婚約後、彼女は「このまま結婚していいのか」と思うようになった。それは彼の実家を訪ねたときから、じわじわと感じていたことだ。彼の両親と姉夫婦が集まった実家で、彼女は居場所がない思いにかられたのだ。

「家族とか家庭とか、私にはよくわからないんです。父親と母親が笑いながら話している感じ、姉とお父さんが冗談を言い合う光景などが私には衝撃的すぎて……。私には“家庭”なんて作れないんじゃないかと怖くなり、彼に結婚をやめようと言ったんです」

 彼は彼女の両親が離婚したことを、もちろん知っている。「オレたちはオレたちの家庭を作ればいいんだよ。うちの実家を参考にする必要もない」と彼女を励ました。それがまたナツコさんにはプレッシャーになった。

「ヘンな言い方ですが、私は親の離婚にもめげずに頑張っていい学校に入って、いい会社に就職した。自分でそう思っていたんですよね。だけどそこで親への恨みとか、自分の境遇への哀しさとか、そういうものが一気に噴出した。私自身、ずっと我慢して“いい子”として生きてきたことをようやく自覚したんです」

 その結果、彼女はやはり彼と結婚することはできないと感じた。もう少し、「いい子ではない本当の自分」を検証する時期が必要だった。

「結婚はまだ公にしていなかったので社内的には問題ありませんでした。でも会社にいれば、同じ部署ではないけど彼と顔を合わせることもある。会社も辞めたほうがいいのかなと考えていたんです。そんなとき声をかけてくれたのがK部長でした」

 入社したときから、K氏はときおり彼女に声をかけてくれていた。そのK氏が直属の上司になったのはちょうどこの頃。

「どうした、元気ないなと食事に誘ってくれたんです。部長と2人で食事に行くのは初めてでした。ちょっとこじゃれた小料理屋さんの小上がりで、当時、小娘だった私はそんなところに行ったこともなかった。その日は、思い切って全部話しました。部長は『聞いておいてよかった。これからきみには思い切り仕事を頼むことにするよ。忙しくするのが一番だ』ってニッコリしてくれた。そうだ、仕事を頑張ろうと素直に思えました」

 そして彼女はこのとき、決定的な経験をする。焼き魚をきれいに食べられない彼女のために、部長は身だけをとってくれたのだ。

「早く食べなさいと言った部長の顔に、ふっと父親的なものを感じたんです。当時私が28歳、部長は45歳。決して父親ほど年齢が離れているわけではないけど、ああ、お父さんってこういうものか、と。父とは8歳で別れていますが、父はそれほど子どもの面倒見がよくなかったんでしょう。遊んでもらった記憶はあるけど、一緒に食事をした覚えがあまりないんです」

 魚を取ってもらったとき、ナツコさんはふと涙ぐみ、部長を驚かせた。だが部長は何も聞かなかったという。

 それからナツコさんは必死に仕事に取り組んだ。半年足らずで部署内にできたチームリーダーとなり、とある商品を企画開発、それが商品化されてかなり売れた。

「部署で飲み会をしたんですが、帰りに部長が『きみは本当に頑張ってくれた。特別に一杯奢るよ』って笑いながら声をかけてくれて。部長が1人でしか行かないというバーに連れていってくれたんです。実はその日は私の誕生日。店に着いてからそのことを言うと、部長が手を回してくれたんでしょう、途中でケーキが運ばれてきました。店の常連さんたちも一緒に祝ってくれて。うれしくて泣きました。こんな素敵な誕生日は生まれて初めてだったから」

 その日の帰りは彼がタクシーで彼女の自宅まで送ってくれた。

「部長の耳元で囁いたんです。『コーヒーでも飲みませんか』って。部長はしばらく考えていました。『お願い。今日だけでいいから』と私はまた囁きました。誕生日に1人で帰りたくなかった。私はそういう女っぽいことは思わないたちなんですが、その日だけは本当に1人でいたくなかったんです」

 彼女の住むマンション前にタクシーが止まると、部長も黙って一緒に降りた。

「本当にコーヒーを飲んでいろいろおしゃべりして……。でもそのうち私が我慢できなくなって部長にしがみついて、とうとうそういう関係になりました。生まれて初めて続きですけど、部長とひとつになったとき、『生きててよかった』と思った。言ってから、私は結構“消えたい願望”も強かったんだなってわかりました。部長は終わってからもずっと抱きしめていてくれて、それがすごくうれしくて」

 ナツコさんの目が潤んだ。父性と男性性、どちらも部長から感じ取ったのだろう。それが、彼女の部長への信頼感と愛情がずっと続いてきたゆえんではないか。

「それからは公私を使い分けるのが大変でしたけど、仕事上は容赦しないからと部長に言われていたので、それまで以上に必死に仕事をしました。彼には家庭があるから、2人きりで会えるのは月に数回かな。外で食事をしてうちに寄っていくというパターンができあがりました。それまでは会社から見て、私は彼の家とは反対側に住んでいたので、1年たったとき、彼の家の方向に引っ越しました。私のところから彼の家までは2キロくらい。タクシーでも1,000円かからない距離だから、終電がなくなっても大丈夫」

 彼はめったに泊まっていくことはなかったが、彼女が引っ越してからは目論見通り深夜までいることはよくあった。

 彼女は彼を奪い取りたい、などとは考えたこともないという。

「彼のお子さんたちが受験の時期は『子どもたちのケアをしてやりたいから、今月は会えない』と言われたこともあります。奥さんの具合が悪いなんてことも、正直に伝えてくれる。私はもともと、彼の家庭的なところ、お父さん的なところも含めて好きなので、そういうことにまったく嫉妬はないんです。むしろ話してくれてありがたいなと思っていました」

 出産リミットが見えてきて……

 一方で彼も彼女を縛りつけるつもりはないと言ったそうだ。もし好きな人ができたら、いつでも言ってほしいと。自分は絶対に邪魔はしない、と。お互いに相手の気持ちを優先し続けて8年がたった。

「あっという間の8年でした。すぐ10年たってしまうんだろうなと思うけど、最近、少しだけ『このままでいいのかな』と焦燥感みたいなものを感じているところはあります。たぶん出産リミットが見えてきたからでしょうね。学生時代の友達も、ほとんど結婚して子どもがいるから。ただ、私自身、どうしても家庭がほしいのか、子どもがほしいのかと言われるとイエスとは言いがたい。過去のことはもうどうでもいいんですが、家庭の味を知らないところにまだコンプレックスがないわけではないし、自分がいい家庭を作れるとも思えない。そこをたどると、結局、親の離婚にいきついてしまうのだけど、親には親の事情があったと今は思えるから責めるつもりもなくて……。母は相変わらず元気ですよ。田舎のスナックで、70歳になっても、まだ男となんだかんだやっているんじゃないでしょうか(笑)。それでも私を育ててくれたわけだし、今となっては元気でいればいいと笑えますけどね」 

 弟は20代半ばで早くも結婚、今は3児の父として楽しそうに暮らしているという。姉と弟、同じ境遇で育っても家庭観はまったく違う。

「私は……どうするんでしょうね。彼は私にとって理想的な人だけど、人生を一緒に歩めるわけではない。でも人生を一緒に歩むこと自体が幻想かもしれない。幸い、定年まで勤められるから仕事をしながら独身でいるのも悪くないかなと思いつつ、うーん、誰かと暮らすのもいいのかな、と。もうじき39歳、とにかく揺れています」

 揺れているとは言いながら、今は現状に満足感を得ているのだろう。曇りのない笑顔が彼女の内面を表していた。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
1960年東京生まれ。明治大学文学部卒。不倫、結婚、離婚、性をテーマに取材を続けるフリーライター。「All About恋愛・結婚」にて専門家として恋愛コラムを連載中。近著に『アラフォーの傷跡 女40歳の迷い道』(鹿砦社)『人はなぜ不倫をするのか』(SBクリエティブ)ほか、多数。

羽生結弦の強さは文字にも表れていた! 冷静沈着な情熱家の素顔を、プロ筆跡鑑定人が解説

 平昌オリンピック男子フィギュアで、66年ぶりとなる2大会連続での金メダル獲得という“異次元の強さ”を見せた羽生結弦選手。氷上での鬼気迫るような集中力と、一方で、リンクを降りた後のふにゃっとした笑顔や女子力が半端なく高いしぐさのギャップも魅力だ。そんな羽生選手は一体どんな文字を書くのか? 文字から、その強さや愛される秘密が読み取れるのか? 筆跡鑑定人で、筆跡心理学に基づいた書籍『自分のイヤなところは直る! 〜名前を書くだけ〜』(東邦出版)の著者、牧野秀美氏に解説してもらった。

■冷静さと情熱を兼ね備える~努力が苦じゃない人の文字の特徴とは?~

――羽生さんの字は、素人目にはおっとり、繊細、穏やかな印象を受けます。

牧野秀美氏(以下、牧野) 文字から羽生さんを表すとしたら、「冷静沈着な情熱家」でしょうか。「情熱」的な部分も秘められていますよ。

 まず「冷静沈着」ですが、文字は四角く大きさがそろい、接筆(四角い文字の左上の角)が閉じており、感情に左右されない、努力できるコツコツ型であることがわかります。さらに「表」の字など横線の間隔がそろっており、気分や感情に振り回されず、理性でコントロールできる気質であることも見て取れます。

――きちょうめんさが伝わってきますね。

牧野 なお、羽生さんのように大きさのそろった正確な文字を「マス目文字型」といいます。通常、マス目文字の人は、大きさにあまり変化をつけないことが多いのですが、羽生さんの場合は、マス目でありながら、文字の大きさに大小をつけています。

――確かに「羽」の字が大きく、「生」の字は小さいです。

牧野 文字の大きさに変化をつけるタイプは、変化を好む波瀾万丈型で、変化を乗り越え、乗りこなすことに生きがいや充実を感じるタイプです。

 また、今回の文字より以前、2013年頃に書かれた羽生さんの筆跡を見たことがありますが、それと比べると、左右の払いも長くなっています。

――「払い」について、左払いが長い人は、目立ちたがり屋でプレッシャーに強いタイプ、右払いが長い人は自分の感情に執着して入れ込むナルシストタイプということでした。ちなみに、両方長い人が“女優型”とのことですよね。

牧野 はい。左右の「払い」を長くすることで、表現に対する執着も出てきたのではないでしょうか。

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牧野 さらに、羽生さんは体の線が細いですが、文字は横幅が広めで安定感があります。これは、体力があり、体を動かすことをいとわない、あるいはそのように努力してきたことを表しているのです。

――王子様のような顔立ちやスタイルですが、しっかり体育会系でもあるということですね。

牧野 ほかにもハネが強く、文字を直線的に書く人は、「最短距離で目標を達成する」タイプですので、無駄を嫌い、合理的に行動します。

――お騒がせ発言は多いけれど、何かしたのかというとあまり思い出せない泰葉さんは、かなり「ハネない」文字でした。「ハネ」は実行力を表すんですね。

牧野 はい。彼の精神面の強さやストイックな面は、ここからきていると思われます。さらに、横線の間隔がそろっていること(例えば「表」の字)は、演技の緻密さにも関わってきます。これは細かなところによく気がつき、何をやらせても正確で緻密な仕事ができることを表しています。また、物事が整然としている状態を好みます。演技においてもその面が生かされ、人の気付かないところに気付くことができ、それを良く観察して自分のものにすることができるのでしょう。

 そして、羽生さんの大きな特徴として、文字と文字の間隔が広いですよね。これは「落ち着き、何があってもあわてないこと、マイペースであること」の表れです。のんびり屋の人に多い書き方ですが、彼の場合は、自分の時間の流れを崩さない、これを徹底しているのでしょう。

――アスリートには必須の気質ですね。

牧野 あと、へんとつくりの間の間隔が狭い文字「結」と、広い文字「情」が混在しています。これは職人気質で妥協しない頑固な面と、自分と人との違いを受け入れるおおらかな面を表しています。おそらく、羽生さんは「自分はこうだけども、それを周囲には強制しない社会性の豊かさ」があるのでしょう。

 今まで取り上げたのはフィギュアスケーターとしての羽生さんの筆跡です。ほかの資料で見た、彼のプライベートな筆跡は、角の丸い文字があちこちに見受けられます。また、左右の払いも大きめになっています。これらは、真面目な中にも適度に表れるユーモアや茶目っ気、融通性、柔軟性を表しています。

――リンクの外での「かわいい」感じとつながりますね。

牧野 リンクの上では有り余るほどの表現力で私たちを魅了してくれますが、プライベートでは感情を素直に出すことが少し苦手のようです。また、そんなシャイなところが、ファンにとってはたまらなくけなげに映るのでしょう。人よりも多く情報を受け取ることのできる繊細さと緻密さを持ち、それを形にする冷静な分析力、身につける努力をいとわない羽生さんは、間違いなくこれからも伝説を作り続けると思います。
(石徹白未亜)

牧野秀美
筆跡鑑定人。筆跡アドバイザーマスター。筆跡心理学をもとにした鑑定と診断を行う。著書に『自分のイヤなところは直る! ~名前を書くだけ~』(東邦出版)
ほっかいどう筆跡鑑定研究所

「気づいたら12年たっていた」増加する“長期不倫”の背景と事情【長期不倫ルポ】

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 20年近く、不倫と呼ばれる男女の恋愛を取材してきたが、このところ「長期不倫」が目立つようになっている。

 不倫の場合、季節が一巡りしたところ、つまり1年たつと「関係を見つめ直す」人が多い。二度目の四季を迎え、思い出を積み重ねていいのか、という思いに駆られるのだろう。「一緒に桜を見たなあ」という記憶が、「去年はあそこで、今年はここで一緒に見たなあ」と思い出に塗り変わるのだから、二度目の四季は重要だ。それが三度四度と積み重なるうち、どちらかの配偶者に露見したり、家庭の事情に変化があったり、あるいは相手に興味を失ったりと、いろいろあって別れに至ることもある。

 以前だったら、5年付き合っていたら「不倫としては長期」に入った。ところが最近は、5年はまったく珍しくない。二桁の「10年以上」不倫関係にあるという話がかなり耳に入ってくる。

 そこまで続いてしまうには、いくつかのポイントがあるように思う。1つには、携帯からスマホに変わり、2人が連絡を取りやすくなったこと。トークアプリやカップルアプリなどを使うことで、連絡の取りやすさだけではなく、「思い出」を積み重ねやすくなったのだ。

 さらに、女性たちが「恋愛と結婚は別」と公言するようになったこと。独身であれ既婚であれ、相手との結婚を望まない女性が増えた。そのため、不倫関係においてもトラブルが生じにくい。「耐えてじっと待った揚げ句、結婚できないからと死ぬの生きるのと大騒ぎする」というような話は久しく聞かない。

 そもそも若い女性たちは「不倫はコスパが悪すぎる」と言う。だからこそ、既婚男性と付き合う独身女性の中には、同世代のボーイフレンドとも並行して付き合っているケースが少なくない。そうしなければ、「対等な関係」にならないからだそうだ。

 そういう意味では、既婚同士のダブル不倫なら、最初から「対等な関係」である。女性たちは「夫とはセックスしたくないけど、恋はしていたい」と感じている。そして、リーマンショックで実質収入が減って、経済的にも精神的にも余裕がなくなった男性たちは、同世代の女性たちと「心の交流」を図りたいと願った。そんなことからダブル不倫が増えてきた。

 どちらも家庭があるのだから、互いの気持ちをわかりあえる。しかも、そう頻繁に会えるわけではないので、一緒にいる時間を最大限楽しく過ごそうとお互いが心がける。ごくまれに一緒に少し遠出をすると、それが貴重な思い出となる。いつしか8年や10年はたってしまうのだ。

「気づいたら12年がたっていました。10歳だった子どもが大学を卒業したとき、彼との年月にも思いを馳せていた。最初はこんな関係を続けて、バチが当たったらどうしようと思ったこともあったけど、『それぞれ、家庭は家庭で責任をもって頑張っていこう。でも、2人でいるときは愛情だけを育んでいきたい』と彼に言われて……。夫は生活していく上でのパートナーですが、彼は私個人の人生のパートナー。今はそう思っています」

 そう話してくれた40代後半の女性の言葉が忘れられない。

 この2年間、世間では有名人の不倫バッシングがすさまじかった。長期不倫をしている人たちの中には、そんな風潮を恐れる傾向もあった。それでも、彼女たちは自分を信じ、2人の関係を信じた。

「もちろん、いいことをしているなんて思ったことは一度もありません。いつも心のどこかで『この関係はいけない』と思い続けてきた。それでも別れられない、別れたくない。その思いの方が強かったから、10年以上、続いてしまったんでしょうね」

 50歳になる別の女性はそう話してくれた。双方の子どもたちが成人したので、今は時折2人で1泊旅行もするようになった。

「ただ、2人とも離婚する気はありません。配偶者に罪はないし、どちらも家庭がうまくいっていないわけではないので。家庭は家庭、恋愛は恋愛だと私も思っています」

 女性たちがそうやって、ある意味で「割り切る」ことができるようになったため、不倫は「一つの恋愛の形」として定着しつつあるのかもしれない。

 不倫カップルが10組いれば20通りの思いがある。長期不倫の渦中にいる女性たちも、おそらく思いはそれぞれだろう。全て一括りにはできない。来週から、長期間、不倫をしている女性たちの声を連載していきたい。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
1960年東京生まれ。明治大学文学部卒。不倫、結婚、離婚、性をテーマに取材を続けるフリーライター。「All About恋愛・結婚」にて専門家として恋愛コラムを連載中。近著に『アラフォーの傷跡 女40歳の迷い道』(鹿砦社)『人はなぜ不倫をするのか』(SBクリエティブ)ほか、多数。

「発達の遅れを指摘された」保育園にクレームを入れ続けた“モンペママ”の悲痛な叫び

 まさに保活のハイシーズンともいえる2月は、預け先が見つかるまでの苦労話ばかりがよく聞かれるが、実際は保育園に入園してから卒園までの在園期間の方がはるかに長い。前回は、ようやく入れた保育園でモンペママに悩まされ、転園を考えるようになったというママの声を紹介したが、一方で「激戦をくぐり抜けて入園したのだから、大事なわが子になにかあれば一石を投じたい」という思いによって、傍から見ると「モンペママ」になってしまった人もいるようだ。今回は、子どもに発達障害の疑いをかけられたことがきっかけで、「周りが信じられなくなった」と言う男児のママの告白から、東京で育児に励むママたちの悲痛な声に迫っていく。

モンペママが“言わずにはいられない”ワケ

 認可外保育所に3歳の男児を通わせている綾子さん(仮名)は、大手の石油元売り企業に勤務する正社員。仕事を理由に退職はしたくなかったため、妊娠中から保活に励み、0歳児枠で認可保育園に無事入園することができた。産後3カ月で職場に復帰したが、入園許可が届いた時は、もう1年育児休暇を伸ばすか悩んだという。

「34歳で結婚したのですが、なかなか自然妊娠ができなかったんです。気づけば高齢出産といわれる35歳を過ぎて、初産のタイムリミットともいえる40歳になっていました。出産するまでに、自然流産を2回経験しているせいか、息子以上にかわいいものってないですね」

 まだ言葉も話せないような0歳児からの入所が当たり前となった近年、保育園ではトラブルが多い。ある園では、男児より女児が2倍の人数となっているのだが、男児は体格が大きくなると乱暴になるなど、トラブルが起きやすいという理由から、「女児の入園が優先される」というウワサもある。かつて男児は「元気すぎるぐらいがよい」と考えられていたが、現代ではそういうわけにはいかないのだろうか。

 「最初に驚いたのが、保護者会で男児のママたちが“うちの子はやんちゃなのでご迷惑をおかけしてすみません”って謝っていたんです。何もしていないに謝る必要なんてないじゃないですか」と綾子さんは語る。また、子どもに「朝の会の最中にじっとしていられない」「先生の話を聞くことができない」というような傾向があると、園側から発達障害の疑いがあるとして、療育と呼ばれる専門の施設を勧められることもあるという。

 綾子さんの息子も、みんなで読んでいる絵本を奪う、ブロックの片付けができずに放り投げるというような問題行動が多く、園からよく家庭でしつけをするように注意されたそう。そして、追い打ちをかけるように、保育士から療育施設を勧められた。「うちの子は、ちょっと周りよりやんちゃで、戦いごっこ(戦隊ヒーローのまねごと)が好きだったんです。それなのに、“口でおもちゃを貸してって言えないのは、発達の遅れがあります”って言われて、腹が立ちました」と声を荒げる。

 この一件以来、保育園が信頼できなくなったという綾子さん。保育参観の日は、息子の行動よりも、保育士の言葉遣いや、保育室の遊具の片付けが不完全なこと、また給食に乳児向けではない大きさの野菜が入っていることなどに不満を持ち、保育士に伝えるようになった。「連絡帳に書いても改善されないので、園長先生に直訴したんです。園長がまだ30代の女性で、経験不足というか。何を言っても“わかりました”の一言で解決しなかったので、役所の保育課や第三者機関と呼ばれる弁護士にも相談しました」。

 最近では、保育士だけではなく園を運営している親会社や、役所の保育課などにもママからのクレームが相次いでいるそうだ。ネットを使って過去の事例を調べるなど、法的手段について詳しいワーキングママも増えた。中には、ママ同士で情報を共有し園を訴えるケースもあるという。

「息子は個性的なだけで、発達異常なんかじゃないんです。昔は、先生の話を聞かないで遊んでいた子なんて普通にいたじゃないですか。結局、役所の保育課も“少し様子を見ましょう”の一点張りだったので、認可外保育園に転園しました」

 園側やほかのママからすれば、綾子さんも「モンペママ」だろうが、彼女にも“言わずにはいられない”事情がある。「良い園」か「悪い園」を判断するのは、実際に通っている園児ではなく、ママ次第なのだ。

「聞いておきます」の一言で済まされた

 もうすぐ5歳になる女児のママの香住さん(仮名)は、娘を自宅育児している。一人っ子の娘は、気が弱く人見知りで、預けていた保育園でも毎日のように泣いていたという。「誕生日が2月だったので、言葉が出るのが周りよりも遅かったんです。自分の気持ちを言葉で言えなくて、泣いてしまったんだと思います」。

 実は香住さんは不倫の末の略奪婚。10歳年上の夫と前妻の間には小学生になる男児がいるため、養育費を払い続けており、学校行事を夫が見に行くなど交流が続いているそうだ。そのストレスが、娘にも影響してしまったかもしれないと、香住さんは振り返る。

「養育費の負担などもあったので、娘を0歳から預けて復職しました。最初は、小規模保育園に預けて時短勤務していたのですが、2歳の時にたまたま空きが出て認可保育園に転園できたんです」

 待機児童の解消を目的とした小規模保育所は、施設が狭いために、満2歳までの保育しか行わないケースがほとんど。この場合、空きを求めて第二の保活が必要となる。香住さんは、「この時、仕事を辞めて保育園ではなく、幼稚園に転園すればよかったと後悔しています」と語るが、その言葉の裏には、転園先の保育園への不信感があったようだ。

 その保育園は、保育士の目が届く人数だった小規模とは違い、大型保育園のため園児数も多い。また縦割り保育を導入し、2~5歳児までが同じ部屋で合同保育を行っていたという。まだ“ママ”、“クック(靴)”というような単語しか発せられない2歳児にとって、部屋中を走り回る5歳児は、個体差が大きくぶつかった時など危険なケースも想像できる。活発に遊ぶ園児とは違い、仲の良い女児同士で人形遊びのようなままごとを好む香住さんの娘は、何度か園児同士のトラブルに巻き込まれた。

「一緒にお風呂に入った時に、娘の首に引っかき傷ができていたんです。耳の後ろらへんが蹴られたように赤くなっていたことも。迎えに行った時にも保育士から言われなかったので、次の日に担任に聞いたら“昨日は別の保育士が担当だったので聞いておきますね”の一言で済まされたんです」

 それから、園や保育士の事務的な態度が気になりだした。「確かに、保育という仕事はしているのかもしれませんが、それぞれの園児に対してのフォローができていないと感じた」と語る。

 それでも、4歳まで保育園に通い続けたが、ある時、香澄さんの娘が、髪に米粒のようなものを付けて帰ってきた。洗ってもくっついてなかなか取れず、保育園に説明を求めても「ちょっとわかりません。手についていたものがついたのかも」という返答だったという。このことがきっかけで、朝の登園時も娘がぐずるようになり、退園を決意。「園で一緒だったママ友にも相談したのですが“そういうことあるよね”という一言で済まされてしまいました。みんな揉めたり、目立つのが嫌みたいなんです」と落胆する。

 香住さんは「探せばまた見つかるからと、百貨店の仕事も辞めました。それよりも、自分の娘は自分で守るしかないなって気づいたんです。いまは、娘といられる時間の方が大事です」と語る。彼女は、小学校入学までの残り1年を自宅育児で過ごす予定で、その代わりに保護者が同伴できるような習い事を始めるつもりだそうだ。

 彼女もまた、見る人によっては「モンペママ」なのだろうが、子どもを思う気持ちが行き過ぎた結果という面もあるのかもしれない。預かり時間によっては、1日の大半を過ごすことになる保育園に対し、親はどういう姿勢で向かい合うべきか、あらためて考えさせられる。
(文=池守りぜね)

吉岡里帆はなぜ「ウザい」のか? アンチを刺激する理由を、プロ筆跡鑑定人が指摘!

 オリコンが発表した「2017年ブレイク女優ランキング」で1位に選ばれた女優・吉岡里帆。クセのないあっさりとした美貌で、CMでは「ゼクシィ」「ZOZOTOWN」や日清食品「どん兵衛」、ドラマでは『カルテット』『ごめん、愛してる』(TBS系)に出演し、快進撃を続けている一方で、ネットでは「あざとい」「はしゃぎすぎ」「棒演技」という声もある。そんな吉岡の筆跡を、筆跡鑑定人で筆跡心理学に基づいた書籍『自分のイヤなところは直る! 〜名前を書くだけ〜』(東邦出版)の著者・牧野秀美氏に、読み解いてもらった。

■毛筆の字は、筆跡診断には使えない!

――吉岡里帆さんは、書道八段で書道家を目指して大学の書道コースに通っていたという経歴の持ち主です。ネット上でも毛筆の筆跡を多々発見できる彼女は、今までの連載の中では圧倒的な「字ウマ」ですよね。

牧野秀美氏(以下、牧野) ただ、これらはお習字ですので、そのまま診断するわけにはいかないんです。なぜなら、習字のお手本は、「へんとつくりの間の空間が狭い」「ハネが強い」「上への突出が長い」「書き始めはひねる」形がほとんどです。

――確かに「毛筆は、かくあるべし」というイメージは、習字の心得がなくとも、日本で育っていれば、なんとなく共有していますよね。

牧野 これらの「お習字」の特徴が、プライベートの文字には出ていない場合もあります。それは、「お手本の形が自分の心にフィットしていない場合」もあるからです。吉岡さんの文字もまた、毛筆とプライベートの文字の両方に出ている特徴と、毛筆には出ているけれど、プライベートの文字には出ていない特徴があり、ここらへんから彼女の人物像が浮かび上がってきそうです。

【毛筆・プライベートの文字、両方に出ている特徴】
・「左に突出している」(「吉」の字/自分を演出するのが好きな目立ちたがり屋)
・「左払いが長い」(「暑」の字/頭の回転が速く、目立つタイプ)
・「へんとつくりの間の空間が狭い」(「帆」の字/自分の世界を大切にする職人気質)
これらは、彼女の性質をそのまま表しています。

【毛筆には出ているけれど、プライベートの文字には出ていない特徴】
・「上への突出」(「申」の字/リーダー気質)
・「ハネが強い」(「岡」の字/粘り強い)
本来の吉岡さんは、「協調型であっさりしている」のでしょう。

■ソツのない人へのねたみは、確信犯へのねたみよりも根深い!

――毛筆の「愚直」の文字を見ると、雄々しいというか、堂々とした文字ですよね。

牧野 はい。堂々としていて存在感あふれる文字ですが、「自分が、自分が」といった、俗にいう自己主張の「ウザさ」は感じられません。また、力強い字、繊細な字といったように、さまざまな文字を書き分けています。

――確かに、「愚直」の雄々しさと、「暑中お見舞い申し上げます」の繊細な感じは、ぱっと見、別の人が書いたように見えます。

牧野 力強さの中にも繊細さが潜んでいるので、吉岡さんは決して「空気の読めない」タイプではないでしょう。プライベートの文字は上への突出が少ないため、協調型であることがわかります。また、ハネはあっさりですので、切り替えが速く、要領も手際もよいでしょう。頭の回転も速く、素直に自分を表現できる人です。多芸多才、何をやってもそつなくこなすことができる器用な方です。

――ハネといえば、お騒がせ発言をちょくちょくしていた泰葉さんは「ハネなし」文字でした。吉岡さんも、ペンで書かれたプライベートの文字では、ハネが弱めですね。よく見ると、お見舞いの「見」などは、毛筆の割にハネが弱く書かれています。

牧野 ハネが弱い人は、あきらめが早く、打たれ弱い傾向がありますが、吉岡さんの場合は「へんとつくりの間の空間が狭い」職人気質な面から、自分で決めたことは追求するので、責任感を持ってやり遂げるでしょう。

 そして、「空間の使い方」がとても上手です。文字のレイアウトを見ると、「暑中お見舞い申し上げます」の筆跡は、文字配置のバランスや、余白の取り方が、優れていると思います。これは自分の居場所において、周囲と居心地のよい距離感を保つのが得意であることを表しています。吉岡さんの文字には、大物感、女優としての華やかさがありますが、それよりも人間関係力の高さが光ります。関係を取り持つムードメーカー的役割ではなく、自分の気持ちを素直に出すことで、周囲に変な気を使わせない、それが結果として関係を良くしていくといった感じでしょうか。

 “大物”というと、破天荒な一面を持ち合わせていることも、なきにしもあらずですが(松居一代さんしかり、泰葉さんしかり……)。吉岡さんには、そんなタイプとは一線を画す、バランスの良さがあります。

――今までこの連載ではさまざまな女性を取り上げてきましたが、アクやクセや無理が一番ない人なんですね。天然でソツがなく、どこでもうまくやっていけそうな。

牧野 素直なリアクションを自然にとることのできる人や、何をやらせてもできてしまう人に対して、私たちはついつい複雑な感情を持ってしまいがちです。

――かえって「確信犯的にあざとい、ウザい」人のほうが、見る側は安心できますよね。「無理なくうまくいっている人」に対するねたみは、「確信犯的にあざとい、ウザい」人に対するねたみよりもずっと深い業があるでしょうし。

牧野 少なくとも吉岡さんの文字からは「確信犯的なあざとさやウザさ」は、さほど感じられません。ただ、一癖も二癖もある芸能界で生き延びるためには、何か突出したアクやクセがあったほうが目に留まるわけですから、この先どのような方向性でいくかを注目したいです。
(石徹白未亜)

牧野秀美
筆跡鑑定人。筆跡アドバイザー・マスター。筆跡心理学をもとにした鑑定と診断を行う。著書に『自分のイヤなところは直る! 〜名前を書くだけ〜』(東邦出版)
・ほっかいどう筆跡鑑定研究所

“筋トレブーム”の裏側――SNSで「腹筋」「BMI」「走った距離」を見せるアラサー女たち

 新年を迎えると、料理教室や英会話といった習い事や、資格取得へ向けての勉強など、新しいことを始めだす人も多い。特にこの時期には、“正月太り”という言葉があるように、寒い時期の運動不足の解消を狙って“入会金無料”や、“体験レッスン無料”という謳い文句でスポーツジムの勧誘を目にする機会も増えるのではないだろうか。

 いわゆる「ティップネス」や「スポーツオアシス」のような聞き慣れた有名フィットネスジムではなく、最近よく駅前で見かけるのが「24時間営業」のジムである。プールやスタジオなどがない省スペースながら、月額7,000円前後の価格で好きな時間に利用できる利便性が受けて、いま利用客が増加傾向にある。こうしたジムの中には、今年月に国内店舗が300店舗を突破という、驚異的な勢いで店舗数が増え続けているチェーン店も。そんな筋トレブームを支えているのが、実はアラサーに増加している“鍛えたがる女子”たちなのだという。

 24時間営業ジムを利用しているという加奈子さん(仮名)は、「ジム通いを始めるまでは、1日に映画を3本もはしごするなど、元々はインドアの文化系女子でした。それに、食べ歩きが趣味だったため、ラーメンやカレーというような高カロリーの食事を仕事帰りに食べる習慣から、太りがちな食生活をしていたんです。でも、アラサーを過ぎると、ただ痩せるだけでは貧相な体になってしまうため、女性らしいメリハリのあるボディラインを目指してジム通いを始めました」という。

■いまや、女性にとって腹筋はステータス!?

 “鍛えたがる女子”ブームを語る上で、インスタグラムをはじめとするSNSとの関連性も見逃すことはできない。自撮りした腹筋画像とともに、「#腹筋女子」というハッシュタグをつけてSNSに投稿する女子が存在し、昨年12月には、そこから派生した『#腹筋女子 お腹が割れたら人生変わった!』(著:山崎麻央、講談社)という本も出版されている。

 この腹筋自撮りに限らず、いかに自分が筋トレに励んでいるかを投稿する女子も少なくないようで、前出の加奈子さんも、「筋トレを始めるまでは、食事や見に行った映画の感想などをSNSに上げていたのですが、今は週に半分くらいは筋トレ関係の投稿を行うようになりました」と語る。筋トレ関係の投稿は、「記録ログも兼ねている」といい、手帳などに書き込むような感覚でTwitterにツイートすると、ソート機能などを使いチェックイン回数を数えたりするのに便利なのだそう。このようにSNS上には、筋トレを文字化してモチベーションアップするタイプと、実際に鍛えている様子や、腹筋画像を挙げる画像派と二分化される。筋トレの記録ログをツイートするタイプは、元々は文化系や運動嫌いだったタイプの傾向があり、反対に“腹筋女子”は、これまでも自撮り画像や女子会の様子などをアップしていたアクティブなタイプのようだ。

 確かに数年前も、芸能人が通うことで注目が集まった“加圧トレーニング”や、誰でも簡単にできるのがウリだった“体幹トレーニング”も女子の間ではやったが、それと違うのは、いまの“鍛えたがる女子”は、自分が鍛えている過程を隠さず周りにアピールしている点である。

 その背景には、「『痩せている=美しい体』という発想が徐々に薄れ、筋肉質な女性がかっこいいという風潮が出てきたのでは」(加奈子さん)という。“腹筋”や“筋トレ”は1つのステータスとなりつつある。それを実証するかのように、タレントの中村アンや、女優の榮倉奈々、モデルのローラなど、女性のあこがれるタレントとして名前がよく挙がる人たちは、機会があればその美しい腹筋を披露している。 “かわいい”女性像より、“かっこいい”と周りから思われたいと考える女性が増えてきたのかもしれない。

 勤務している会社が法人契約をしているスポーツジムに通っている愛子さん(仮名)は、痩せすぎの体形がコンプレックスだったという。たまたま、格闘技やプロレスを見に行くのが趣味だった職場の同僚に勧められ、一緒にスポーツ観戦をするようになってから、自分も鍛えるようになっていった。これまでは運動嫌いの無趣味で、仕事のあともまっすぐ家に帰るような生活だったが、「ジムでは、早帰りデーなどは同僚女性とジムで一緒になることもあり、成果を出さねばという気持ちになっていく」とのこと。周りにもジム通いが知れ渡っているので、「今日は〇〇を鍛えた!」というような、トレーニングでの成果をSNSに投稿するのも日課になりつつあるという。

 愛子さんは「筋トレは、恋愛や仕事と違い、ある程度自己コントロールで、目標に近づけるのと、数字を可視化できるのが達成感を感じられていい」と話し、実際、
SNS上には、こうした“数字”を投稿するケースも散見される。例えば、インスタグラムやFacebookなどで、「Nike+ Training Club」アプリを使ったトレーニング内容や時間の投稿や、交通機関を使わずにランニングで移動した時間と経路をアップする画像などを見たことがないだろうか? 中には、「#筋トレ女子」や「#筋トレ中」というハッシュタグとともに、BMIや筋肉量を線グラフで表している画面キャプチャを載せる人もいるようである。真面目な女子ほど、筋トレというワークアウトにハマりやすいという面もあるのだろうか。

■もともとのジム愛用者からは苦言も

 一方、筋トレや腹筋など自画撮りや、“数字”はアップしないものの、チェックイン機能を使ってジムにいることを投稿するなど、 “鍛えている”ことを匂わせる投稿も目につく。スタジオ内でのスマホ使用が禁止されているあるスポーツジムでは、それでもどうにかジムに来ているという写真を撮りたいのか、インスタ映えするプールのあるラウンジで、プロテインの入ったグラスを片手に撮影する女子もいるとか。

 そんなブームに乗って増殖しだした“筋トレ女子”のマナーに対して、困り顔の利用客の声も聞こえてくる。3年前から、パーソナルトレーニングができるジムに週3回ペースで通っているアラフォー世代の由香里さん(仮名)は、「最近、にわかな筋トレ女子が増えて、有料で私物を置いておける月極の個人ロッカーの空きがないみたいなんですよ。中には1つの個人ロッカーを仲間内の3人で使っている人も見かけて、マナーが悪くて驚きました」と語る。このジムでは、初心者向けの講座を受けると無料でプロテインが飲めるため、正規会員ではなくスポット利用の会員の中には、プロテイン目的で何度も講座を受けるというツワモノもいるという。

 彼女はマシントレーニングについても苦言を呈す。「使った後に、置いてあるタオルで椅子やマシンに着いた汗を拭いてから移動するというようなマナーを知らないんです。あとマシンを使っている人の目の前に立って、順番待ちしたり。そんな威圧的なことをされたら、気持ちよくトレーニングできないじゃないですか」。このように、マナーを学ぶことなく、あたかも“ファッション”としてといった具合に、筋トレを“アピールする”女子も中には存在しているようだ。

 仕事では責任のあるポジションを任されつつあり、プレッシャーが絶えないといえるアラサー世代。恋愛においても、結婚問題や出産のリミットなど、悩みは尽きない。そんな公私ともに忙しいアラサー女子が、あらゆる方法で“鍛えている”というのをアピールする背景には、頑張っている自分をわかりやすい形で表現できるからかもしれないが、新たな“表現方法”が見つかったときには、ジムから女性が一斉に消えるなんてことも、なきにしもあらずなのではないだろうか。
(文=池守りぜね)

竹内涼真は「あざとい」のか? 真のぶりっこ度&ナルシスト度を、筆跡から読み解く!

 NHKの朝ドラ『ひよっこ』でヒロインの彼氏役を演じて、一躍注目され、その後も『過保護のカホコ』(日本テレビ系)『陸王』(TBS系)など、話題の連続ドラマに出演、富士フイルムやソフトバンクといったCMにも起用され、破竹の勢いが続く竹内涼真。一方で、SNSでの「上目遣い&体育座り」画像投稿が、ネットでは「あざとい」と批判されたりもしている。そんな竹内は、本当に「ぶりっこ」なのだろうか? 竹内の筆跡を、筆跡鑑定人で、筆跡心理学に基づいた書籍『自分のイヤなところは直る!~名前を書くだけ~』(東邦出版)の著者、牧野秀美氏に読み解いてもらった。
■「目立ちたがり屋」だが、「ナルシスト」ではない
――竹内さんの字ですが、「この年頃の青年が書きそうな字」という感じですね。達筆というわけでもないですが、ひどいクセ字というわけでもなく。

牧野秀美氏(以下、牧野) まず、「合」の字で示している「口」部分の左上の角の接筆部分が閉じていることから、考え方は真面目です。ただ、「口」部分の右上の角は丸く、行動面は柔軟です。考えに縛られないので、路線変更や、相手に合わせることが苦痛ではありません。

 次に「合」の字の、払い部分を見てみましょう。左払いが長い人は、目立ちたがり屋でプレッシャーに強いタイプ、右払いが長い人は自分の感情に執着して入れ込むナルシストタイプ。ちなみに、両方長い人が“女優型”です。竹内さんの「合」の字は、左は十分長さを満たしています。しかし、右払いは短く、物事に対してのめり込まず、「ほどほどでいいや」という執着のなさを表しています。

――小池百合子さんの書く「合」の文字は、左右も長さたっぷりの女優型でしたが、それとはかなり違うということですね。

牧野 はい。また、竹内さんは「祭」や「高」などのハネはしっかり書かれているので、努力家であることがわかります。

――お騒がせ発言の多い泰葉さんの字には、ほとんど見られなかったのとは対照的に、「ハネ」がしっかりしていて実行力がありそうですよね。

牧野 はい。ただ、「王」の横線の間隔がバラバラですので、気分に左右されやすい面もありそうです。

■求められる姿を一生懸命演じている?
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――日本女子体育大学で舞踏を学ぶ土屋太鳳さんの字は、口の部分がしっかり大きい「体育会系」文字でした。竹内さんは、高校時代に東京ヴェルディのユースに所属し、プロサッカー選手を目指していたこともあったそうですが、文字も「体育会系」でしょうか?

牧野 「口」の内部空間の大きさは、その人の持つ内面のエネルギーの大きさ、つまり「やる気」を表します。「口」の内部の空間が大きな人は、エネルギーたっぷりです。それは子どもっぽさや、時と場合によってはやぼったく映ることもあります。逆に内部の空間が小さな人は、無駄なエネルギーを使わないために洗練されており、大人っぽいともいえます。ただ、竹内さんの場合、「感」と「謝」の字で「口」の大きさが違います。

――両面が見られる、ということですか?

牧野 両面が見られるのは、「口」の大きさだけではありません。「感謝」の文字を見ると、文字内の空間が広くとられ、のびのびしているのに対し、「陸」「最」の文字は窮屈に書かれています。文字間の空間を広くとる人はこだわりなくなんでも受け入れますが、文字間の空間が狭い人は自分なりの美学があったり、自分の世界を大切にしたりと、自分なりのこだわりを持っています。

 竹内さんは、理想が高く、気難しい面も持っていると思われます。ただ、明るくユーモアがあり、人に合わせる面が強調されて、その難しい部分があまりクローズアップされないのだと思います。

――確かに、「気難しい人だ」という印象は感じさせないですね。

牧野 真面目ゆえに、人から言われたことをまともに受けるのでしょう。仕事関係では、なおさらです。例えば、「俳優」「売れている」「タレント」「お笑いも必要」……などの求められている姿を一生懸命演じているのでは? まだまだ若く、人生経験が未熟なため、引き出しが少なく、おかしな方向に行っていることに気づかないだけなのかもしれません。そこが素朴でもあり、天然っぽいといわれてしまうゆえんなのではないでしょうか。接筆が閉じているせいで、客観的な視点に乏しい面もあります。意外ですが、先に触れた「右払いの短さ」から、ナルシスト要素はゼロです。

――竹内さんは「ぶりっこ」といわれがちな土屋太鳳さんと同様、右払いは短いですが、彼も「私は女優よ(俺は俳優だ)」タイプではないのですね。

牧野 竹内さんは、本来真面目で職人気質、自分の世界を大切にする性格を持っていますが、行動面が柔軟であるために、その自分の世界から一歩出て違う自分を演じることが、抵抗なくできてしまうのだと思います。つまり、「感謝」の丸文字に象徴されるような、一連の「ぶりっこ」といわれてしまう行動は「よかれ」と思って理想に向かって頑張っている姿なのでしょう。

――SNS世代なので、セルフプロデュースに真面目に取り組んでいる、ということかもしれませんね。Twitterでは170万以上のフォロワーがいますし。

牧野 いっそのこと、いいと思ったことをなんでもやってみて、その反応から自分を知ることもできるのではないでしょうか。どんどん経験を積み、迷走しなくても自分らしさを出せる俳優になって活躍してほしいです。
(石徹白未亜)

牧野秀美
筆跡鑑定人。筆跡アドバイザー・マスター。筆跡心理学をもとにした鑑定と診断を行う。著書に『自分のイヤなところは直る!~名前を書くだけ~』(東邦出版)
・ほっかいどう筆跡鑑定研究所