中学受験に「父親」は必要ない? 試験本番、夫に「綺麗ごと言わないで!」と激怒した妻の告白

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“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 前回のコラムでは、中学受験が夫婦のすれ違いを生み、“離婚”にまで発展したケースをご紹介した。我が子のために良かれと思った中学受験が、まさかの“家族崩壊”を引き起こすという事実。読者の中には「中学受験=怖い」という感想を持った方もおられたかもしれない。

 しかし、物事は常に表裏一体。同じことを経験しても、人によっては真逆の展開が待っていることもある。今回は反対に中学受験をしたことにより、夫婦の絆が強まった由佳さん(47歳)のケースを紹介したいと思う。

夫は「何もしないくせに、いいとこ取り」

 由佳さんにはひとり娘がいるのだが、その懐妊までの日々は決して平穏なものではなく、長い間、不妊治療をしていたという。夫婦の総意で「子どもを持ちたい」という選択をしたはずなのに、気が付けば由佳さんの方に治療の負荷がかかっており、毎月の医者が決めた“家族計画実行日”は、夫婦共々、気が重い作業になり果てていたそうだ。

 そして7年の歳月がたち、人工授精が成功し、めでたく春香ちゃんが誕生する。由佳さんは春香ちゃんの子育てについてこう語ってくれた。

「春香は切迫流産、切迫早産、未熟児という形での出産になったため、私は普通の母親以上に子育てにはナーバスだったかもしれません。とにかく、『この命を失わないようにしなければ!』と必死だったのです。正直、主人のことは二の次、三の次くらいの位置づけでした。主人はそのことに対して、特段、文句を言ったことはありませんが、やはり心の中では不満もあったことと思います」

 家庭内は、完全に由佳さん・春香ちゃんの“女性軍”と夫に分かれ、特に子育てに関しては、春香ちゃんの習い事ひとつとっても、由佳さんの独断で決められていたそうだ。

「主人には全て“相談”というよりも“事後報告”でした。『春香は私がきちんと育てなければ!』って思い込んでいたのです。中学受験という選択も、私が1人で決定したようなもの。主人は同学年の中でも小柄で体力もない春香に、中学受験は負担だと思っていたようですが、私の熱意に負けてか特別な反対はしませんでした。今、思えば、私がヒートアップして、春香に『どうして同じミスをするの?』『そんなやる気のない態度で合格できると思っているの?』というような不用意な言葉かけをした時、主人は春香を慰めたり、会社の帰りに『ご褒美』と言ってはデザートを買って来てくれたりしていました。でも、余裕がなかった私はそういう主人に感謝をするどころか『何もしないくせに、いいとこ取りばかりして!』って苦々しく思っていたのです」

 由佳さんはこの頃、夫のやることなすこと全てが癇に障り、喧嘩にはならないものの、夫婦間の会話は、ほどんどなくなったそう。そのため、夫を“毎日帰ってくるよその人”のような感覚で見ていたそうだ。

不合格続きで泣き喚く妻に、夫が提案したこと

 やがて、春香ちゃんも6年生になり、2月1日の受験本番を迎える。もともと、とても優しくおっとりした性格の春香ちゃんにとっては、本番のプレッシャーが重すぎたのか連戦連敗で1つの合格証書も受け取れずに、ついに2月4日の朝を迎えてしまった。

 意気消沈する春香ちゃんと、泣き喚く由佳さんを見た夫が、「今日は家族みんなで受験会場に行こう」と言ったそうだ。

 受験の合格者には定員があるので、“椅子取りゲーム”のような側面がある。東京・神奈川の中学受験で言うと、受験回数を重ねるごとに合格定員はドンドンと減っていくのだ。春香ちゃんの2月4日の受験校は20名定員に200名が押し寄せる状態であったという。

 受験日程後半の受験会場ではよくある光景なのだが、泣き出してしまう子や鼻血が止まらない子などもいて、その光景に親の方が参ってしまうことがある。由佳さんは春香ちゃんを送り出した後、その場に留まることできず、夫と一緒に学校近くのカフェで待機することにしたのだそうだ。

 カフェで涙が止まらない由佳さん。しかし夫から「みんなで頑張ってやってきて良かったね」と告げられ、驚いて「そんな綺麗ごとを言わないで! 春香は今、全落ち状態なのよ? なんで受験なんてやったんだろう? 小さな春香にこんな思いをさせてしまって……。私が悪かったと思ってる……」と反論したという。

 由佳さんは、当時のことを振り返り、その時に夫から言われた言葉を一生忘れないと語る。

「主人は私にこう言ったんです。『やって良かったじゃないか! この経験は決して無駄にはならない。君には本当に感謝しているよ』」

 その時、由佳さんの脳裏には走馬灯のように春香ちゃんが生まれてからの日々が浮かんできたそうだ。そして、そこにはいつも、春香ちゃんへの愛情を示してくれると共に、由佳さんを大切にしてくれている夫がいることに気が付いたというのだ。由佳さんは筆者にこう教えてくれた。

「私はあの時、合格か不合格かしか考えることができなくなっていましたね。春香……もっと言うと、私たち家族が受験を目標にしたからこそ、手にできたいろいろな宝物のことを忘れていました。夫は合格とか不合格という単なる“結果”ではなく、もっと大きなことを考えてくれていたんですよね」

 由佳さんとしては「母と娘2人で挑んだ」と思っていた中学受験。しかしこの時、夫が父親として、春香ちゃんにどう接していたかを思い返したという。

「主人は春香に『目標に向かってコツコツと努力すること』『自分で習得した知識は誰にも奪われないこと』『勉強するのはつらいこともあるけど、ワクワクすること』を折につけ、話して聞かせていたんです。エキサイトする私をいつも一歩引いたところで落ち着いて見ていてくれて春香の成績が下がろうとも、やっている姿勢を評価してくれていたってことに、私はようやく気が付いたんです。その時、やっと、主人と結婚して良かったって、この人が春香のパパで良かったって、本当にそう思えて、これからは主人を大切にしていこうって決心しました」

 由佳さんは、春香ちゃんの受験を待つカフェで、夫に「ありがとう」と伝えたという。こんなに素直に感謝の気持ちを伝えることができたのは、結婚以来初めてだったそうだ。

 その後、春香ちゃんは見事に2月4日の受験校に合格した。筆者が春香ちゃんに、入学後のご両親の仲を聞いたところ、笑顔でこう教えてくれた。

「もう勝手にやって! ってくらい仲いいです(笑)」

 中学受験ではこのように「雨降って地固まる」ということもよくある話。要は、物事はどう捉えるかで天と地ほども差が開くという証明でもある。これが“中学受験”の怖さでもあるし、奥深さでもあると筆者は思っている。
(鳥居りんこ)

中学受験に「父親」は必要ない? 試験本番、夫に「綺麗ごと言わないで!」と激怒した妻の告白

chugakuzyuken07

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 前回のコラムでは、中学受験が夫婦のすれ違いを生み、“離婚”にまで発展したケースをご紹介した。我が子のために良かれと思った中学受験が、まさかの“家族崩壊”を引き起こすという事実。読者の中には「中学受験=怖い」という感想を持った方もおられたかもしれない。

 しかし、物事は常に表裏一体。同じことを経験しても、人によっては真逆の展開が待っていることもある。今回は反対に中学受験をしたことにより、夫婦の絆が強まった由佳さん(47歳)のケースを紹介したいと思う。

夫は「何もしないくせに、いいとこ取り」

 由佳さんにはひとり娘がいるのだが、その懐妊までの日々は決して平穏なものではなく、長い間、不妊治療をしていたという。夫婦の総意で「子どもを持ちたい」という選択をしたはずなのに、気が付けば由佳さんの方に治療の負荷がかかっており、毎月の医者が決めた“家族計画実行日”は、夫婦共々、気が重い作業になり果てていたそうだ。

 そして7年の歳月がたち、人工授精が成功し、めでたく春香ちゃんが誕生する。由佳さんは春香ちゃんの子育てについてこう語ってくれた。

「春香は切迫流産、切迫早産、未熟児という形での出産になったため、私は普通の母親以上に子育てにはナーバスだったかもしれません。とにかく、『この命を失わないようにしなければ!』と必死だったのです。正直、主人のことは二の次、三の次くらいの位置づけでした。主人はそのことに対して、特段、文句を言ったことはありませんが、やはり心の中では不満もあったことと思います」

 家庭内は、完全に由佳さん・春香ちゃんの“女性軍”と夫に分かれ、特に子育てに関しては、春香ちゃんの習い事ひとつとっても、由佳さんの独断で決められていたそうだ。

「主人には全て“相談”というよりも“事後報告”でした。『春香は私がきちんと育てなければ!』って思い込んでいたのです。中学受験という選択も、私が1人で決定したようなもの。主人は同学年の中でも小柄で体力もない春香に、中学受験は負担だと思っていたようですが、私の熱意に負けてか特別な反対はしませんでした。今、思えば、私がヒートアップして、春香に『どうして同じミスをするの?』『そんなやる気のない態度で合格できると思っているの?』というような不用意な言葉かけをした時、主人は春香を慰めたり、会社の帰りに『ご褒美』と言ってはデザートを買って来てくれたりしていました。でも、余裕がなかった私はそういう主人に感謝をするどころか『何もしないくせに、いいとこ取りばかりして!』って苦々しく思っていたのです」

 由佳さんはこの頃、夫のやることなすこと全てが癇に障り、喧嘩にはならないものの、夫婦間の会話は、ほどんどなくなったそう。そのため、夫を“毎日帰ってくるよその人”のような感覚で見ていたそうだ。

不合格続きで泣き喚く妻に、夫が提案したこと

 やがて、春香ちゃんも6年生になり、2月1日の受験本番を迎える。もともと、とても優しくおっとりした性格の春香ちゃんにとっては、本番のプレッシャーが重すぎたのか連戦連敗で1つの合格証書も受け取れずに、ついに2月4日の朝を迎えてしまった。

 意気消沈する春香ちゃんと、泣き喚く由佳さんを見た夫が、「今日は家族みんなで受験会場に行こう」と言ったそうだ。

 受験の合格者には定員があるので、“椅子取りゲーム”のような側面がある。東京・神奈川の中学受験で言うと、受験回数を重ねるごとに合格定員はドンドンと減っていくのだ。春香ちゃんの2月4日の受験校は20名定員に200名が押し寄せる状態であったという。

 受験日程後半の受験会場ではよくある光景なのだが、泣き出してしまう子や鼻血が止まらない子などもいて、その光景に親の方が参ってしまうことがある。由佳さんは春香ちゃんを送り出した後、その場に留まることできず、夫と一緒に学校近くのカフェで待機することにしたのだそうだ。

 カフェで涙が止まらない由佳さん。しかし夫から「みんなで頑張ってやってきて良かったね」と告げられ、驚いて「そんな綺麗ごとを言わないで! 春香は今、全落ち状態なのよ? なんで受験なんてやったんだろう? 小さな春香にこんな思いをさせてしまって……。私が悪かったと思ってる……」と反論したという。

 由佳さんは、当時のことを振り返り、その時に夫から言われた言葉を一生忘れないと語る。

「主人は私にこう言ったんです。『やって良かったじゃないか! この経験は決して無駄にはならない。君には本当に感謝しているよ』」

 その時、由佳さんの脳裏には走馬灯のように春香ちゃんが生まれてからの日々が浮かんできたそうだ。そして、そこにはいつも、春香ちゃんへの愛情を示してくれると共に、由佳さんを大切にしてくれている夫がいることに気が付いたというのだ。由佳さんは筆者にこう教えてくれた。

「私はあの時、合格か不合格かしか考えることができなくなっていましたね。春香……もっと言うと、私たち家族が受験を目標にしたからこそ、手にできたいろいろな宝物のことを忘れていました。夫は合格とか不合格という単なる“結果”ではなく、もっと大きなことを考えてくれていたんですよね」

 由佳さんとしては「母と娘2人で挑んだ」と思っていた中学受験。しかしこの時、夫が父親として、春香ちゃんにどう接していたかを思い返したという。

「主人は春香に『目標に向かってコツコツと努力すること』『自分で習得した知識は誰にも奪われないこと』『勉強するのはつらいこともあるけど、ワクワクすること』を折につけ、話して聞かせていたんです。エキサイトする私をいつも一歩引いたところで落ち着いて見ていてくれて春香の成績が下がろうとも、やっている姿勢を評価してくれていたってことに、私はようやく気が付いたんです。その時、やっと、主人と結婚して良かったって、この人が春香のパパで良かったって、本当にそう思えて、これからは主人を大切にしていこうって決心しました」

 由佳さんは、春香ちゃんの受験を待つカフェで、夫に「ありがとう」と伝えたという。こんなに素直に感謝の気持ちを伝えることができたのは、結婚以来初めてだったそうだ。

 その後、春香ちゃんは見事に2月4日の受験校に合格した。筆者が春香ちゃんに、入学後のご両親の仲を聞いたところ、笑顔でこう教えてくれた。

「もう勝手にやって! ってくらい仲いいです(笑)」

 中学受験ではこのように「雨降って地固まる」ということもよくある話。要は、物事はどう捉えるかで天と地ほども差が開くという証明でもある。これが“中学受験”の怖さでもあるし、奥深さでもあると筆者は思っている。
(鳥居りんこ)

犯人は、まさかの店長! 万引きGメンが大型スーパーで驚愕「高額商品を車に積み込んで……」

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 みなさん、こんにちは。万引きGメンの智美です。意外と知られていませんが、私たち保安員は万引きだけでなく、スリや置き引き、痴漢、盗撮、異物混入、器物損壊、内部不正など、あらゆる店内犯罪を摘発対象にしています。レジ不正に手を染めたり、自店商品を勝手に持ち去る従業員を内偵、検挙することもあれば、商品に対する異物混入事件などの警戒に当たることも珍しくありません。

<オンナ万引きGメン日誌バックナンバー>
オンナ万引きGメンが見た、「万引き凶悪地帯」――特攻服の少年&ブラジル人との死闘
勤務中にラブホへ行ったバツイチヤンママ保安員! 「変わった人が多い」万引きGメンの素顔
初日からカップ酒ドロボー捕捉! 保安員のセンスがあるのは20人に1人?

 今までに一番衝撃を受けたのは、大型スーパーの店長自らが多数の高額商品を駐車場まで持ち出して、自分の車に積み込んでいるところを現認したことでした。内部不正が発覚した場合、何かの間違いがあると大事になるのですぐに捕まえることはせず、クライアントの担当者に一連の行動を報告して判断を仰ぎます。それから対象者の行動を把握するために内偵を入れて証拠を固め、対象者の上司など本部の方に立ち会ってもらう形で声をかけるのです。

 ちなみに内部不正の摘発は、さまざまな事情から別契約となります。深夜に及ぶことが多く、長期にわたって複数人の派遣が必要なケースも多いので、通常料金より割高になってしまうのは言うまでもありません。

 内偵初日。ベテランの先輩と現場に入った私は、駐車場が一望できる場所に身を潜めて、店長の車を見守ることになりました。ベテランの先輩は駐車場出口の近くでエレベーターの動きを監視し、立ち会い担当の常務さんは、店の近くに車を停めて私たちからの連絡を待っています。以前、私が目撃した時と同じように多数の商品を持ち出していたら部長に通報して、店長が商品を車に積み込むと同時に声をかけるという段取りです。

 閉店のアナウンスが終わり、全ての照明が落とされると、まもなく事態は動きました。大量の商品を載せたカートを押した店長が、真っ暗な店内から駐車場に出てきて、躊躇することなく自分の車に商品を積み込み始めたのです。先輩が連絡を入れてまもなく、常務さんのクラウンが猛スピードで駐車場に入ってきて、店長の車に横付けされました。刑事ドラマさながらの光景にドキドキしながら、私も店長のそばに駆け寄ります。

「お疲れさん」
「ひっ! 部、部長……」

 私たちが見守る中、部長さんに声をかけられた店長は、ひどく慌てた様子でトランクの扉を閉めました。でも、まだカートに残っている商品は、どうにも隠しきれません。否応なく事務所に連行された店長は、体を震わせながら犯行を認めると、机の下に潜り込んで泣き始めました。穴があったら入りたいというのは、まさにこのことだと、妙に感心してしまいました。

 今回の被害品は、テレビや炊飯器などの家電製品を始め、ビタミン剤を中心とした医薬品や人気の基礎化粧品、高級調理器具、ゲームソフトなど計24点にのぼりました。被害総額は15万円を超えており、警察を呼べば逮捕確実な状況にあるといえるでしょう。

「君、今夜だけじゃないよな? 正直に言えば警察沙汰だけは勘弁してやるが、どうだ? 言っておくが、証拠もたくさんあるぞ」
「申し訳ありません。弁償しますので警察だけは……」

 金を払えば許されるという問題ではないと、いつもは万引き犯に厳しく接している店長が、彼らと同じセリフを吐ける心境がわかりません。結局、涙ながらに過去の犯行も白状した店長は、被害弁償を約束した書面を交わすことで警察への通報は免れましたが、その場で懲戒解雇処分の通告を受け、後日には損害賠償請求訴訟を起こされました。長期にわたって換金率の高い商品ばかりを盗んでいたため、その被害は過大で、自宅を売却して清算したそうです。その後、風のうわさで自殺してしまったと聞き、少しだけ胸が痛みました。
(文=智美、監修=伊東ゆう)

セクハラは「脳の病気」!?  異常な性欲おじさんが、1年後“真人間”に変化したワケ

(前回はこちら) 

どうも、紫帆です。都内の某飲み屋街で小さなバーを経営している私が、夜毎の営業中に目撃したクソ客・変な客・珍事件について、お話させていただきますね。さて、今宵のお客さまは――

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出禁ギリギリ! 性欲たぎる”セクハラおじさん”

「ここ、カラオケあるの? 1曲いくら?」

 そう言いながら入ってきたおじさんは、たぎる性欲がオーラとして可視化されているようでした。還暦前にしては少々可愛らしいチャイナ・ブルーを飲みながら、カラオケも歌わず、わたしを質問攻めにしてくる性欲おじさん。

「エッチな顔してるね。AV出てた?」

「いくら出したらエッチしてくれる?」

「こういう店に1人で来る女の人って、エッチ誘ったらすぐしてくれるのかなあ?」

 すべての発言に「エッチ」という単語を入れずにはいられない病気かなんかでしょうか。ほかのお客さんとの会話などおかまいなしに、大声でたたみかけてきます。オーセンティックなバーであれば、即出禁レベルでしょう。こちらとしてもやや辟易して、「どこの店でもそんな調子なんですか?」と聞いてみると

「そうなんだよ、俺、性欲がすごいんだよ! ストリップ大好きでよく見に行くんだけど、一度、ポラの撮影(注:ストリップでは公演後にストリップダンサーさんのポラロイドを撮ることができます。1枚1,000円ほど)で嬢のオ××コ触ろうとして、劇場出禁になっちゃったんだよ!」

と一切悪びれることのない強制わいせつ未遂告白。この正直さが、わたしの店ではギリギリ出禁にならない点でもあるのですが……。

 それからというもの、週1ペースで通ってくるようになった性欲おじさん。毎度、初回と同様のテンションかつ大声で「エッチしたい!」「エッチさせて!」「エッチできるかも!」とまくし立てるため、落ち着いてグラスを傾けたいお客さまは彼が来ると撤収してしまいます。それを補って余りあるほど飲み代を落としてくれればいいのですが、クソ客の御多分に漏れずケチ。お酒もさして強くないのでしょうが、ロングカクテルかビールを1~2杯。「1杯、いただいてもいいですか?」と水を向けても、自分が飲んでいる瓶ビールを少し分けてくる程度。何かやらかしたらこれ幸いと引導を渡してやる――機を窺っていたところ、ある時期からぱったりと来店がなくなりました。

 ほかにセクハラターゲットでも見つけたのだろうと、しばらくは存在自体を忘れ平穏な夜を過ごしていました。が、1年以上たったある日、性欲おじさんは再び姿を現したのです。

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「ママひさしぶり。俺のこと覚えてる? まあ、1杯飲んでよ」

 あのケチだった性欲おじさんが、自分からお酒をおごる……だと? 久しぶりの来襲にどう応戦しようかと身構えていたわたしは、完全に肩透かしを食らいます。いただいたウイスキー越しにおじさんの様子を観察していると、以前どす黒く彼を覆っていた性欲オーラが消え、明らかに温和になっていることがわかりました。しかも、ほかのお客さまと普通のテンションで会話をしているではないですか!

 いったい何が彼を変えたのか? 困惑した表情を察したのか、おじさんが口を開きました。

「俺、変わったでしょ? 実は1年前、脳の病気で倒れてさ。手術したら人格変わったみたいなんだ」

 衝撃の告白――ですが、どこか腑に落ちるところもあります。性欲おじさんは「手術したら人格が変わった」と言いましたが、異常なまでに性にアグレッシブで、他人の話を遮ってまで自分の話をまくし立てる以前のあの状態は、脳の疾患によるものだったのではないでしょうか。病気が発覚し手術をしたことで、本来の穏やかな性格を取り戻したと考えるほうが自然です。

 かくして、あらためて常連となった性欲おじさん。かつての性欲ほどではありませんが、今もストリップ好きは健在(ダンサーさんを気遣いながら、しっかりお金を落とす良客になったようですよ)。当バーでは「ちょっとエッチなおじさん」として、そこそこ愛される存在となったのでした。

 

(隔週金曜日・次回は6月22日更新)

プロフィール
浮川紫帆(うきがわ・しほ)
東京都内の繁華街の一角でバーを経営する30代バツイチ女性。ママ歴は6年。好きなお酒はマカストロングのお湯割り。

(イラスト=ドルショック竹下)

イケメンはどこに消えた!? 場末のスナックで泥酔する“小太りオージー”と悪夢の一夜

 「山芋ちんこ」を乗り越え、やっと出会えた運命の人――。

 それは、外国人バーにて捨て身の「生け捕り作戦」(=ナンパ)でゲットした、アレックス・ペティファー似の奇跡のイケメンオーストラリア男子、エリックであります!

前回はこちら:「外国人バー」で捨て身のナンパ大作戦!? オーストラリアの英語講師とカラオケで運命の出会い

奇跡のイケメンと待望の再会! 場末スナックで待つ彼は……

 帰りの電車の中で、別れ際にハグされた時の彼の甘い香りを反すうしつつ「昨日は楽しかった。また会いたい」とメールすると、彼からは「僕もだよ! 次に会えるのを楽しみにしている」という返事。

 ああ、これから恋が始まるんだなあ、とうきうきしながら眠りについたのですが、しかし、その後エリックにメールを送っても返事はこず……。そりゃそうか、あんな上玉、そんな簡単に落ちないよなあ、と半ば諦め、気持ちを切り替えつつ新たな出会いを求めて、地道に外国人出会い系サイトを流す日々を過ごしていました。

 それから数カ月たったある冬の日の夜、なんと突然、エリックからメールが!

 「今から君に会いたい」と、言うではありませんか!!

 友人と飲んでいた帰りで、今ひとりでいるんだけど、一緒に飲まないか……というお誘い。場所はどこかと尋ねると、なんと私の自宅からチャリで行ける距離なので「すぐ行く!」と返事をしつつ、風呂へ。だって、「そういう流れ」になってもおかしくないし……! 

 あの奇跡のイケメンに会える! と胸を高鳴らせて念入りに化粧をし、勝負下着をつけ、首筋に香水をふり、チャリで彼のもとに向かったのです。

 彼が「寒いので先にお店に入ってる」と言うのでその場所を探してみると、そこはオバちゃんママがカウンターにいる、いわゆる「スナック」。

「えええ!? 近くにバーもあるのに、なんでまた……。外国人イケメンが昭和風スナックなんて笑える〜」なんて、ちょっとズレてるところも微笑ましく思いながら、お店のカウンターに座っている彼を見つけ、声をかけました。

 彼がこちらを振り向いた瞬間……

「誰!? このブサメン!!!!!」

6イラスト-600

 そこには、アレックス・ペティファーのかけらもない、ちょい小太りブサ外国人が。しかもネクタイやシャツをだらしなくゆるめ、ベロベロに酔っている!!  わ、私、コレと待ち合わせてたのか。コレのために、ソッコーで風呂とか入ってお化粧して……? アレックス・ペティファーはいずこに……?

 絶望しかない頭を絞って考えました。いったい何が起こっているのか……。

 そうか! エリックに出会った頃は、山芋デヴィットくらいしか、まともに外国人男子の顔を見たことがなかった! 

 出会い系サイトを流しているうちに目が肥えて、今の私にはエリックがブサメンにしかみえなくなってしまった? ……いや、エリックは最初からブサメンだったのに、私の“外専女子”として未熟だった審美眼が、イケメンと判断してしまったのか……。

 我に返れば、場末感漂うスナックに、ブサメンと2人。

 60代くらいのオバちゃんママはニヤニヤして「お友達?」と聞いてくるし、恥ずかしいやら、悲しいやら、自己嫌悪やら。もう……とにかくこの場を去りたい!! と思い、エリックに会計させて店外へ出たのでした。

 そうはしたものの、季節は冬。夜は寒いし、道端にエリックを放ってもおけないので、やっぱり酔いを覚まさせてから帰そうと、近くの小さなダーツバーへ寄ることに。千鳥足気味のエリックを連れていき、2人でカウンターに座ると、なんとヤツはそのまま眠り始めたではないですか。

 「ちょっと、起きてよ、寝るんだったらもう帰ろうよ」と言いながら何度も体をゆするけど、起きない……。周りの若者客の「なにあの女? ガイジン酔わせてアレしようってか」的な視線がキツく、泣きそうになる。

 あまりにもつらいので、もう家に帰そう、と外に出てタクシーに乗せると、奴は「君も来てよ」と言ってきた。

 「はあ!?」と思いつつも、ここまできたんだからただでは帰れん、と自分でもよくわからない意地でついていくことに。

 エリックの住まいは5DKのマンションの一室、いわゆる「シェアハウス」――。

 いったいこれからどうなるんだ、そして私はどうしたいんだと、車内で悶々としながら向かったのでした。

(隔週火曜日・次回は6月19日更新)


<著者プロフィール>

音咲椿(おとさき・つばき)
男性向けグラビア誌編集長を経て、ポット出版社刊「女の子×女の子のためのエロチックブック・Carmilla」にてイラスト・漫画家デビュー。
単行本「イケメン外国人たちとベッドで異文化交流した結果。」(ぶんか社刊)好評発売・配信中。テレビ出演多数。


 

イケメンはどこに消えた!? 場末のスナックで泥酔する“小太りオージー”と悪夢の一夜

 「山芋ちんこ」を乗り越え、やっと出会えた運命の人――。

 それは、外国人バーにて捨て身の「生け捕り作戦」(=ナンパ)でゲットした、アレックス・ペティファー似の奇跡のイケメンオーストラリア男子、エリックであります!

前回はこちら:「外国人バー」で捨て身のナンパ大作戦!? オーストラリアの英語講師とカラオケで運命の出会い

奇跡のイケメンと待望の再会! 場末スナックで待つ彼は……

 帰りの電車の中で、別れ際にハグされた時の彼の甘い香りを反すうしつつ「昨日は楽しかった。また会いたい」とメールすると、彼からは「僕もだよ! 次に会えるのを楽しみにしている」という返事。

 ああ、これから恋が始まるんだなあ、とうきうきしながら眠りについたのですが、しかし、その後エリックにメールを送っても返事はこず……。そりゃそうか、あんな上玉、そんな簡単に落ちないよなあ、と半ば諦め、気持ちを切り替えつつ新たな出会いを求めて、地道に外国人出会い系サイトを流す日々を過ごしていました。

 それから数カ月たったある冬の日の夜、なんと突然、エリックからメールが!

 「今から君に会いたい」と、言うではありませんか!!

 友人と飲んでいた帰りで、今ひとりでいるんだけど、一緒に飲まないか……というお誘い。場所はどこかと尋ねると、なんと私の自宅からチャリで行ける距離なので「すぐ行く!」と返事をしつつ、風呂へ。だって、「そういう流れ」になってもおかしくないし……! 

 あの奇跡のイケメンに会える! と胸を高鳴らせて念入りに化粧をし、勝負下着をつけ、首筋に香水をふり、チャリで彼のもとに向かったのです。

 彼が「寒いので先にお店に入ってる」と言うのでその場所を探してみると、そこはオバちゃんママがカウンターにいる、いわゆる「スナック」。

「えええ!? 近くにバーもあるのに、なんでまた……。外国人イケメンが昭和風スナックなんて笑える〜」なんて、ちょっとズレてるところも微笑ましく思いながら、お店のカウンターに座っている彼を見つけ、声をかけました。

 彼がこちらを振り向いた瞬間……

「誰!? このブサメン!!!!!」

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 そこには、アレックス・ペティファーのかけらもない、ちょい小太りブサ外国人が。しかもネクタイやシャツをだらしなくゆるめ、ベロベロに酔っている!!  わ、私、コレと待ち合わせてたのか。コレのために、ソッコーで風呂とか入ってお化粧して……? アレックス・ペティファーはいずこに……?

 絶望しかない頭を絞って考えました。いったい何が起こっているのか……。

 そうか! エリックに出会った頃は、山芋デヴィットくらいしか、まともに外国人男子の顔を見たことがなかった! 

 出会い系サイトを流しているうちに目が肥えて、今の私にはエリックがブサメンにしかみえなくなってしまった? ……いや、エリックは最初からブサメンだったのに、私の“外専女子”として未熟だった審美眼が、イケメンと判断してしまったのか……。

 我に返れば、場末感漂うスナックに、ブサメンと2人。

 60代くらいのオバちゃんママはニヤニヤして「お友達?」と聞いてくるし、恥ずかしいやら、悲しいやら、自己嫌悪やら。もう……とにかくこの場を去りたい!! と思い、エリックに会計させて店外へ出たのでした。

 そうはしたものの、季節は冬。夜は寒いし、道端にエリックを放ってもおけないので、やっぱり酔いを覚まさせてから帰そうと、近くの小さなダーツバーへ寄ることに。千鳥足気味のエリックを連れていき、2人でカウンターに座ると、なんとヤツはそのまま眠り始めたではないですか。

 「ちょっと、起きてよ、寝るんだったらもう帰ろうよ」と言いながら何度も体をゆするけど、起きない……。周りの若者客の「なにあの女? ガイジン酔わせてアレしようってか」的な視線がキツく、泣きそうになる。

 あまりにもつらいので、もう家に帰そう、と外に出てタクシーに乗せると、奴は「君も来てよ」と言ってきた。

 「はあ!?」と思いつつも、ここまできたんだからただでは帰れん、と自分でもよくわからない意地でついていくことに。

 エリックの住まいは5DKのマンションの一室、いわゆる「シェアハウス」――。

 いったいこれからどうなるんだ、そして私はどうしたいんだと、車内で悶々としながら向かったのでした。

(隔週火曜日・次回は6月19日更新)


<著者プロフィール>

音咲椿(おとさき・つばき)
男性向けグラビア誌編集長を経て、ポット出版社刊「女の子×女の子のためのエロチックブック・Carmilla」にてイラスト・漫画家デビュー。
単行本「イケメン外国人たちとベッドで異文化交流した結果。」(ぶんか社刊)好評発売・配信中。テレビ出演多数。


 

“妊娠順番制”は仕方ないのか? 保護者と保育士双方が語る、「人員不足」による保育園崩壊

保育園、幼稚園、小学校、おけいこ事の教室などでは、日々子どもの保護者と施設側の間でトラブルが発生している。ほんの些細なことでも、自分のこと以上に気になってしまうのが親心というものなのか。わが子のことを思ってとクレームを入れるママもいれば、モンペと呼ばれることを恐れて我慢するママも。そんなトラブル事例とママの葛藤をつづる。

 少子化と叫ばれて久しい現代だが、幼児教育無償化への動きや、保育士不足で閉園に追い込まれた保育園など、“保育”をめぐるニュースを目にしない日はない。そんな中、保活が済んで一安心のママたちにとって、新たなトラブルが発生しだすのが5月の終わりから6月頃だという。昨年、新設したばかりの大型保育園に2歳児の娘を転園させた友理香さん(仮名)は、こう語る。

「新設園に転園したのは、来年あたりに2人目を計画していたから。家の近くだし、大型園なら下の子と一緒に通わせやすいし、娘もまだ2歳なので、元の園のお友達と離れても大丈夫そうだと思ったんです」

 母親側にはメリットが多いと感じていた転園だが、元の園と比べると新しい園は、保育士の経験不足、人員不足からくるトラブルが頻発しているという。

「新設のため、保育士がかき集められた感じでした。どの保育士も、みんな初めての園なのでわからないことが多く、エプロンやタオルなどの持ち物の案内も保育士によって違い、後から買い足したりしなくてはならず、困り果てています」

 さらに、友理香さんの娘が入園した後、立て続けに保育士が数名辞めてしまったという。そのため、もともとは2歳児クラスの担任だった保育士が、欠員の出た学年の担任をせざるを得なくなり、学年の途中で担任が変わる事態となった。

「2歳児クラスの先生は2人いて、そのうち1人がベテランだったのですが、別のクラスに異動。残った先生は、まだ2年目の若い女性で、何を聞いても頼りない。せっかく、子どもたちも先生や環境に慣れてきたのに、急な担任替えで“ここに預けていて大丈夫だろうか”と不安な気持ちになりました。中には登園のたびに泣き出す園児もいて、一時期、乳幼児クラスはパニック状態でしたね」

 保育士が変わることで起こるトラブルも数多い。友理香さんの場合は、同じクラスに娘と似た名前の女児がいるという。娘を迎えに行った時に、保育士が何度か名前を言い間違えるのが気になって「『うちの子は〇〇ですよ、気を付けてください』とやんわりと言ったら、『みんなの前で叱られた』と、若い女性の先生が泣き出してしまったんです。まるでモンペ扱いされたみたいで気分が悪くなったのですが、すぐにその先生は、園長先生にたしなめられていました」。

 まだ先生も慣れていないから……とは思いつつ、どうしても“自分の子は特別”と感じてしまう親は多いだろう。それが、保育士と保護者の間での行き違いを生む原因になっているのかもしれない。

 一方で保育士にとっても、人員不足は大きな悩みのタネになっているようだ。今年4月から認証保育園で保育士として働くようになったばかりの香織さん(仮名)は、早くも転職を考えているという。

「専門学校に在学中に、小規模保育園に2週間ほど研修で働きました。その時は、周りの先生たちも優しく、子どももおとなしい子ばかりで、『これなら大丈夫そう』と感じたんです。実際に就職すると、保育士の数が足りておらず、1年目から副担任という役割を与えられて、残業しないと終わらないほどの業務量。上の先生から頼まれると断れなくて、土日は園の壁面飾りを持ち帰りで作ったり、生徒20人分の創作グッズを準備したり。とてもこの給与ではやっていられないって感じています」

 保育園には、保護者会や個人面談など、親と関わらなければならない行事や、運動会、クリスマス会というような年1回の大型イベントがあるので、通常業務以外の業務も多い。保育士の思わぬ退職があると、その分を残りの保育士たちでカバーしなければならない。

「途中で、担任するクラスが変わることもあります。その際に困るのが、園児たちの名前なんです。持ち上がりなら新たに覚えなくてもよいのですが、年度の途中でクラスが変わってしまうと、新しいクラスの園児たちの名前を10人以上覚えなければならなくてとても大変。今は、個人情報保護法がうるさく、うちの園では名札が禁止で、まだきちんと言葉を話せない乳児だと、誰が誰なのかわからなくなることも。それから、園児ごとに、お昼寝に使うタオルケット、下着など持ち物の特徴を把握するのも大変なので、入れ間違いや紛失が発生して、親からクレームが入ることもあります」

 保護者側からすると、相手が新人なのかベテランなのかは関係なく、“保育士は全ての園児を把握している”という態度で、園側にクレームを入れてくる傾向があるそう。迎えの時に、保育士から、子ども同士のトラブルやちょっとしたケガなどを報告されると、「もっと詳しく」「相手はどの子ですか」などと食い下がる保護者は少なくないというが、「それも、保育士が全てを把握してると思っているからでしょう。でも、新人が副担を任せられるような人員不足の状況下では、なぜ子ども同士が喧嘩したのか、どういったタイミングでのケガだったのかなど、その詳細を全て把握しきれません」。

 トラブルの現場を見ていなかった新人が、保護者からの質問に対し、うっかり「わからないです」と答え、園長にまでクレームが入ったこともあるという。保育士の人員確保は、子どもや保護者だけでなく、園側にとっても重要なことなのだ。

 保育士不足と言われている背景には、待機児童対策で、保育園の開園に保育士の数が追いつていない現状がある。私立保育園で事務をしている高橋さん(仮名)は、保育士不足に頭を悩ませている。

「実は、連休明けの5月から6月は、保育士の退職が相次ぐ時期なんです。特に4月に働き始めた保育士が『辞めたい』と感じるケースが多く、この時期はあらかじめ予防線として求人を出しています」

 年度途中の退職を防ぐために、結婚や妊娠というような保育士の予定は、入社前に確認することも暗黙のルールとなっている。少し前に、新聞の投書欄で話題となった「保育士の妊娠順番制」も存在しているが、最近では守れないため退職を選ぶ保育士も多いという。

「『園が保育士の妊娠の順番を決めるなんてあり得ない』と批判されていますが、園側にも背に腹は変えられない事情があります。子どもの育児を親に変わって行うので、できれば責任持って、1年は担任をしてもらいたい。そのために、本人の妊娠や結婚の予定は、園でも把握するようにしているんです。しかし、中には順番を守れず、退職していくケースも多い。その場合、園に来づらいのか引継ぎをせず急に辞めていくので、雇う側も厳しく言うしかないんです」

 この園では、妊娠や育児休暇を取る保育士が重なったため、これ以上、妊娠する者が出たらシフトを組むことができないという事態に陥ったことがあった。そのため、契約更新のたびに結婚や妊娠の有無を確認しているという。辞めていった保育士の中には「自分の子どもが欲しいから」という女性もいたそうだ。働きたい女性が増えて、保育園のニーズが高まる中、保育士は子どもを生んで働くのが難しい時代。保育士の人員確保が、園だけの課題になっている現状では、なかなか少子化問題は解決しそうにない。
(池守りぜね)

 

アイドル界にも存在する? 大石理乃が苦言を呈して話題の「SSWおじさん」その生態と心理とは

 最近、駅前の広場などで、フォークギターを持ち、自作の曲を歌う女の子をよく見かける。

 いわゆる“アイドル”とは違うのだろうが、意外に(といっては失礼だが)可愛い子も多く、それなりにファンもついているようだ。実際、ライブハウスなどでは、彼女たちのような“シンガーソングライター”が多く活動しており、ひとつの文化となりつつある。

 5月11日、そんなシンガーソングライターの一人、大石理乃によるツイートが大きな話題となった。語られていたのは、女性ミュージシャンの現場に現れる「SSW(シンガーソングライター)おじさん」についてだ。

 彼女によれば、「SSWおじさん」には、上記のような特徴があり、「私なんかよりもめっちゃ才能あるのにアイドルオタクやSSWおじさんに適応できなくて消えていったシンガーソングライター女子がたくさんいるのが残念だなって思う」とも述べている。

 実際、このSSWおじさんが問題となる行動をしてしまう背景には、どのような心理があるのだろうか。

 まず、人間の中には、「自分の知識をひけらかしたい」という欲求がある。突き詰めていけば、「こんなに物知りですごい」と思われたかったり、「実は才能がある」と見られたいという、「承認欲求」のひとつだと思われる。

 SSWおじさんの年代を考えると、彼らが若い頃のフォークソングブームや、その後のバンドブームなどで、実際に音楽を「かじって」いる人が多い。そんな人たちが、自分の音楽知識を披露する相手として、不運にも彼女らが選ばれてしまったということだ。

 お互いの知識を自慢し合ったり、アイドルやアーティストの批評をするというのは、ヲタクの楽しみ方のひとつではあるだろう。テレビを見ていて、いわゆる「マニア」の人たちが驚くべき知識量と見解を披露していることはよくあることだ。なので、その行動自体を批判するつもりはない。

 ただ、それらは、自分の好きな対象に向けるのではなく、同じ対象を好きなヲタク同士で話せばいいと思う。演者は、その人の表現方法でパフォーマンスをし、ファンはその姿を好きになるのが美しいと思うのだ。

 次に挙げられる理由として、一般の会社などにも多いのだが、人を批判したり、説教をしたりという行為自体が好きな人というのが存在するという点だ。そういう人が、会社などで妙な権力を持ってしまうと、部下にあたる人はたまったものではない。昨今、パワハラやセクハラ問題が大きく取り沙汰されるようになったとはいえ、弱い立場にキツくあたる人は、まだまだいる。

 ライブでの力関係は、必ずしも「客>演者」ではないはずなのだが、まだそれほど多くはないファンを無下にすることもできず、悩んでしまうアーティストもいるのだろう。

 もうひとつ、環境的な問題もある。ライブの後に自作のCDを手売りしたり、その際にファンと話をしたりするという、「地下アイドル+ミュージシャン」のようなスタンスの文化は、そこに生まれるルールなどがまだ固まりきっていないのだ。

 いいにつけ悪いにつけ、ここ最近のアイドルブーム以降、“アイドル現場”というのは常に注目される存在となった。それにより、何か問題が起きれば、他のヲタクがそれをネットで拡散し、当事者を批判するというサイクルで、顕在化してきたのである。

 事実、アイドル現場ではもうずっと以前から、問題のある行動をする人たちを指す「厄介」という言葉が流布している。運営や他のファンがそのように認識することで、現場のルールというものが形作られているのだ。

 そんなアイドル現場でも、多かれ少なかれ、アイドルや運営に批判的なことを言うヲタクはいる。もちろん、本当に相手のことを考えての苦言やアドバイスであれば、それなりに意味のあることだろう(ただし、私は個人的にはそれでも余計な口出しをすべきではないと思っている。嫌なことがあるのであれば、その現場に来なければいいだけのことだ)。

 しかし、ただ“批判したいがための批判”は、お互い何の得にもならない。

 では、相手のためになる助言とそうでない助言との差は、どこにあるのだろうか?

 端的に言ってしまえば、“そこに愛情が介在するかどうか”である。本当に相手のことを思っての言葉なのかどうか、そこが重要なのだ。ただ単に自分の好みと違うことをしたから文句を言うのか、5年先、10年先まで見越して、「今こうしておいたほうが絶対に良くなる」との思いからアドバイスをするのか、その差は大きい。

 それぞれが楽しめる現場を作るために、アイドルやアーティストのファンの人たちには、「厄介」な存在にはなってほしくない。だから、もし相手に何か言いたいことがあったとしても、まずは一度、それが本当に相手のためになるのかどうかを考えてみてほしい。あなたのためにやり方を変えることによって、それをいいと思っていたファンを減らしてしまう可能性もあるのだ。

 そして、もしこの記事をSSWおじさんに困っているアーティストが見ていたとするなら、ある程度ドライに対応することも、やむを得ないことだと知ってもらいたい。本当に、ファンを平等に扱うためには、その場の対応だけではなく、先々多くのファンを獲得した時のことまで考えるべきなのだ。日本人は、とかく「聞き流す」というスキルが不足している人が多い。ビジネスで成功している人ほど、聞き流すことが上手いものだ。

 それにしても、この世界では、次から次へとよくいろんな「厄介」が出てくるものだ思う。厄介な存在を乗り越え、演じる者と見る者の思いが調和し、少しずつファンの輪が広がっていく現場は楽しいものだ。そんな場所が、少しでも多くなるよう、願わずにはいられない。

(文=プレヤード)

アイドル界にも存在する? 大石理乃が苦言を呈して話題の「SSWおじさん」その生態と心理とは

 最近、駅前の広場などで、フォークギターを持ち、自作の曲を歌う女の子をよく見かける。

 いわゆる“アイドル”とは違うのだろうが、意外に(といっては失礼だが)可愛い子も多く、それなりにファンもついているようだ。実際、ライブハウスなどでは、彼女たちのような“シンガーソングライター”が多く活動しており、ひとつの文化となりつつある。

 5月11日、そんなシンガーソングライターの一人、大石理乃によるツイートが大きな話題となった。語られていたのは、女性ミュージシャンの現場に現れる「SSW(シンガーソングライター)おじさん」についてだ。

 彼女によれば、「SSWおじさん」には、上記のような特徴があり、「私なんかよりもめっちゃ才能あるのにアイドルオタクやSSWおじさんに適応できなくて消えていったシンガーソングライター女子がたくさんいるのが残念だなって思う」とも述べている。

 実際、このSSWおじさんが問題となる行動をしてしまう背景には、どのような心理があるのだろうか。

 まず、人間の中には、「自分の知識をひけらかしたい」という欲求がある。突き詰めていけば、「こんなに物知りですごい」と思われたかったり、「実は才能がある」と見られたいという、「承認欲求」のひとつだと思われる。

 SSWおじさんの年代を考えると、彼らが若い頃のフォークソングブームや、その後のバンドブームなどで、実際に音楽を「かじって」いる人が多い。そんな人たちが、自分の音楽知識を披露する相手として、不運にも彼女らが選ばれてしまったということだ。

 お互いの知識を自慢し合ったり、アイドルやアーティストの批評をするというのは、ヲタクの楽しみ方のひとつではあるだろう。テレビを見ていて、いわゆる「マニア」の人たちが驚くべき知識量と見解を披露していることはよくあることだ。なので、その行動自体を批判するつもりはない。

 ただ、それらは、自分の好きな対象に向けるのではなく、同じ対象を好きなヲタク同士で話せばいいと思う。演者は、その人の表現方法でパフォーマンスをし、ファンはその姿を好きになるのが美しいと思うのだ。

 次に挙げられる理由として、一般の会社などにも多いのだが、人を批判したり、説教をしたりという行為自体が好きな人というのが存在するという点だ。そういう人が、会社などで妙な権力を持ってしまうと、部下にあたる人はたまったものではない。昨今、パワハラやセクハラ問題が大きく取り沙汰されるようになったとはいえ、弱い立場にキツくあたる人は、まだまだいる。

 ライブでの力関係は、必ずしも「客>演者」ではないはずなのだが、まだそれほど多くはないファンを無下にすることもできず、悩んでしまうアーティストもいるのだろう。

 もうひとつ、環境的な問題もある。ライブの後に自作のCDを手売りしたり、その際にファンと話をしたりするという、「地下アイドル+ミュージシャン」のようなスタンスの文化は、そこに生まれるルールなどがまだ固まりきっていないのだ。

 いいにつけ悪いにつけ、ここ最近のアイドルブーム以降、“アイドル現場”というのは常に注目される存在となった。それにより、何か問題が起きれば、他のヲタクがそれをネットで拡散し、当事者を批判するというサイクルで、顕在化してきたのである。

 事実、アイドル現場ではもうずっと以前から、問題のある行動をする人たちを指す「厄介」という言葉が流布している。運営や他のファンがそのように認識することで、現場のルールというものが形作られているのだ。

 そんなアイドル現場でも、多かれ少なかれ、アイドルや運営に批判的なことを言うヲタクはいる。もちろん、本当に相手のことを考えての苦言やアドバイスであれば、それなりに意味のあることだろう(ただし、私は個人的にはそれでも余計な口出しをすべきではないと思っている。嫌なことがあるのであれば、その現場に来なければいいだけのことだ)。

 しかし、ただ“批判したいがための批判”は、お互い何の得にもならない。

 では、相手のためになる助言とそうでない助言との差は、どこにあるのだろうか?

 端的に言ってしまえば、“そこに愛情が介在するかどうか”である。本当に相手のことを思っての言葉なのかどうか、そこが重要なのだ。ただ単に自分の好みと違うことをしたから文句を言うのか、5年先、10年先まで見越して、「今こうしておいたほうが絶対に良くなる」との思いからアドバイスをするのか、その差は大きい。

 それぞれが楽しめる現場を作るために、アイドルやアーティストのファンの人たちには、「厄介」な存在にはなってほしくない。だから、もし相手に何か言いたいことがあったとしても、まずは一度、それが本当に相手のためになるのかどうかを考えてみてほしい。あなたのためにやり方を変えることによって、それをいいと思っていたファンを減らしてしまう可能性もあるのだ。

 そして、もしこの記事をSSWおじさんに困っているアーティストが見ていたとするなら、ある程度ドライに対応することも、やむを得ないことだと知ってもらいたい。本当に、ファンを平等に扱うためには、その場の対応だけではなく、先々多くのファンを獲得した時のことまで考えるべきなのだ。日本人は、とかく「聞き流す」というスキルが不足している人が多い。ビジネスで成功している人ほど、聞き流すことが上手いものだ。

 それにしても、この世界では、次から次へとよくいろんな「厄介」が出てくるものだ思う。厄介な存在を乗り越え、演じる者と見る者の思いが調和し、少しずつファンの輪が広がっていく現場は楽しいものだ。そんな場所が、少しでも多くなるよう、願わずにはいられない。

(文=プレヤード)

「こんな偏差値、本当に俺の子か?」中学受験生の母が、“無理解な夫”との離婚を決めたワケ

chugakuzyuken06

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 「中学受験をすると離婚が増える」とは筆者が放った格言であるが、現実問題として、中学受験は、子どもとの“親子関係”よりも、むしろ“夫婦関係”の方にダイレクトに影響を及ぼすものだと確信している。

 中学受験は、今や《ファミリープロジェクト》の観を呈する。一朝一夕では太刀打ちできないものと化しているため、数年にわたる“一家総出の一大プロジェクト”として立ち向かうことが、もはや普通になっているのだ。家族一丸での中学受験は、喩えるならば“戦場”に近いものがあると感じる。知識という武器を得て、実際に志望校という難敵に挑む“兵士”は子どもなのだが、そこには後方支援をする部隊がいなければ、とてもじゃないが戦いを続行することは不可能だ。

 後方支援活動は多岐にわたるが、夫婦のどちらかが“安全地帯”にいて、我関せずの姿勢を崩さなかったり、逆に“戦にまったく関係しない問題”を起こした日には、“兵士”の士気に関わりかねない。後方支援任務に孤軍奮闘するその夫婦の片割れの怒りは、とどまるところを知らないだろう。

「バカは何やってもバカ」と言い放った夫に怒り

 タケル君の母・みどりさんも、子どもの中学受験に対する夫婦間の温度差に悩まされた過去を持つ。彼女はある名門中高一貫校出身で、その良さを肌身で感じていたため、「自分に子どもが生まれたら、是非とも中学受験をさせよう」と、昔から心に決めていたそうだ。

 しかし、みどりさんの夫は「公立中学→公立高校→国立大学」という経歴の持ち主で、塾に通った経験はなく、どちらかと言えば、中学受験には反対派の立場であったらしい。

 みどりさんは筆者に、当時の様子をこう語ってくれた。

「確かに夫は『12歳に受験は不要』と言っていて、『もし、どうしてもと言うのならば反対はしないが、その代わり、金も出さない。俺に迷惑をかけない範囲でやってくれ』というスタンスでした。でも、夫が育った田舎の中学とは違い、この地域は、学区の中学が荒れていて、そのせいか中学受験熱が高い。息子のタケルも『あの(公立)中学には行きたくない』と言っていたんですよ。でも夫にいくら今時の事情を話しても、一切、聞く耳は持たなかったですね。それで、私も働いているので、タケルの学費くらいは自分の稼ぎでどうにかできるだろうと思い、塾に通わせ始めたんです」

 しかし、タケル君の成績は思うようには伸びてくれず、そこで、みどりさんはタケル君の家庭教師役も買って出て、深夜まで弱点科目の補強に勤しむ毎日だったという。

「私も契約社員とはいえ、フルタイムで働いていたので、タケルの勉強を見て、家事も仕事もとなると、オーバーワーク気味になってしまい……。家庭は常にギスギスした雰囲気で満ちていました」

 みどりさんは何度か夫に「日曜日は家事をまとめてやりたいから、模試の付き添いくらいはやってほしい」と頼んだそうだが、夫の返事はいつも「俺に迷惑はかけないって約束だよな?」だったそうだ。そして、妻子を残し、平気で趣味のゴルフに出かけていたという。

 そして、タケル君が6年生の12月、みどりさんにとっては決定打となる事件が起こる。

「夫がタケルの模試の結果を見て、『塾に行っててこれか!?』と、せせら笑ったんです。『バカは何やってもバカなんだよ。やるだけ無駄!』とまで言ってきて、何もしないくせに、私と息子を蔑むような態度を取る夫が許せませんでした。当然、私は『タケルはこんなに頑張っているのに、その言い方はないでしょう?』って猛抗議したんですが、そしたら、偏差値が何たるかを知りもしないくせに、『こんな偏差値、俺は取ったこともない。本当にコイツは俺の子か?』って」

 そのまま夫婦は大喧嘩に発展したそうだが、一方でタケル君は “今が大詰めの時”ということをわかっていたらしく、戦火に巻き込まれることなく自室に消えて、その日も淡々と課題をこなしていたそうだ。

 しかし、夫婦の諍いはそれだけにとどまらなかった。いよいよ受験本番が始まると、みどりさんにとっては許しがたい夫の言動が炸裂したのだという。タケル君が快進撃を見せて、本命校以外にも超難関校であるK学園に合格を決めた時、なんと夫が「タケル、良くやった! すごいじゃないか? さすがパパの子だ!!」と発言したそうだ。

 「タケル! K学園に行くよな? 当然、K学園だよ!」と言いながら、勝手に入学手続きをしようとした夫に、心底、みどりさんは嫌悪感を抱いたという。

「タケルは、自分で『僕はS学園に行きたい』とずっと言っていて、そのためにこの3年間、努力をし続けていたんです。それを中学受験の偏差値が何たるかも知らない夫がいきなり出て来て、まるで己の手柄のように言うんですから、軽蔑を通り越して、どこか違う星の人が何かを吠えているくらいにしか思えませんでしたね……」

 結局、タケル君は父親の猛反対を押し切って、S学園に入学し、念願だった部活動に勤しみ青春を謳歌しているのだが、みどりさんとその夫は、タケル君の中学入学早々に離婚している。

受験が離婚の引き金になったことは否めないが……

 筆者が、高校生になったタケル君に当時のことを聞いたところ、彼はこんな胸の内を明かしてくれた。

「そうですね、夫婦喧嘩はしょっちゅうだったんで『ああ、また始まった』っていう印象しかないです。なるべく、火の粉をかぶらないようにしないといけないので、逆に当時は勉強に集中する道しか思い付かなかったんです。これは僕の場合だけかもしれないですけどね(笑)」

 タケル君いわく、当時、「親父は会社で責任あるポジションに付いたばかりでプレッシャーもあったと思います」という。

「疲れて帰って来ても、テレビをつけてはいけないとか、そんな雰囲気でしたから、家庭で安らげないのは、親父にとってきつかったのかもしれません。離婚がショックだったか、ですか? それは、まあ、そうですが、今では両親とも落ち着いて、顔を合わせても喧嘩はしませんし、2人の仲は以前より格段に良いので助かっています。2人が別れたとしても、僕にとっての両親には違いない。受験が引き金になったことは否めませんが、僕はどちらかの親が悪いとも、ましてや受験が悪いとも思っていません。これからも、僕は親父ともお袋とも仲良くやっていきますし、2人とも大事にしたいと思います」

 夫婦のことは夫婦にしかわからないものであるが、中学受験は時として「夫婦の踏み絵」と化すことがある。タケル君のように“大人の対応”をしてくれる子ばかりではないので、やはり中学受験に踏み切る前に、予想される負担などを十分に考慮しつつ、夫婦間でコンセンサスを得なければならないと、筆者は警鐘を鳴らしたいと思っている。
(鳥居りんこ)