グリコ・森永事件の犯人を彷彿――万引きGメンがゾッとした「キツネ目の少年」の悪事とは?

 こんにちは、保安員の澄江です。

 今年の夏も、また暑くなりそうですね。商店に訪れるお客さんも、今年は早目に衣替えを済まされたようで、先月あたりから不審者の見極めが容易になってきました。薄着の方が商品を隠す場所が限定されるため、重ね着をする冬場よりも、不審者の存在が目立つようになるのです。

 店内に現れる不審者は、なにも万引きする人ばかりではありません。先月は、とあるスーパーで、清涼飲料水のペットボトルに貼られたQRコード付きのシールを次々と剥がして、商品を損壊する高校生らしきキツネ目の少年を発見しました。なんでも、若者に人気がある女性アイドルグループの限定動画を見ることができるのだそうです。

 犯行の実行現場となったドリンク売場のすぐ脇には、アイドルグループのポスターが貼られており、ジュースに使用されているキャラクターの着ぐるみが、大きなアクションで幼稚園児と思しき姉妹の相手をしています。それにもかかわらず、少年は万引きする時と同じ挙動で3本のペットボトルを手に取り、着ぐるみに背を向けて、ごそごそと不審な動きで商品をいじると、それを売場に戻して立ち去りました。気付かれないよう、少年が戻したペットボトルを確認してみると、貼られていたはずのシールがなくなっています。

 販促品のシールを剥がして持ち去る行為は、それだけでも窃盗罪が成立します。飲料とシールを合わせて、初めて一つの商品と解釈されるために、その商品自体が被害品となるのです。シールが貼られていない商品の多くは売れ残りますし、シール目当てのお客さんから余計なクレームを頂戴することもあるので、商店の頭を悩ませる小さくも煩わしい問題の一つと言えるでしょう。

 何かしたのか確認するべく、そのまま後をつけると、拳を固く握りしめたままドリンク売場を離れた少年は、その足で隣接するフードコートに入っていきました。比較的奥の方の席に着き、手の中にあるシールをテーブルの上に置くと、爪の先を使って、1枚ずつ丁寧に広げて並べています。

(あら、嫌だ……)

 スマホでQRコードを読み取った少年が、件の動画を見始めたところで、背筋に鋭い悪寒が走りました。ものすごく、いやらしい顔をしていたのです。興奮した面持ちで、鼻の下を伸ばしながら食い入るように画面を見つめる少年の姿は、欲望丸出しといった様子で、おぞましいほどでした。声をかけたい気持ちになりましたが、シールを剥がした瞬間は見ることができなかったし、少し怖かったので、やむなく見送った次第です。

 数時間後。巡回中にドリンク売場の前を通りかかると、先ほど見送ったキツネ目の少年が、いつのまにか店内に戻ってきていました。防犯カメラが気になるのか、不自然に天井を見回しています。

(ちょっと怖いけど、今日は万引き犯が挙がってないし、次やったら声をかけよう)

 それからまもなく、同じ手口を用いてペットボトルから4枚のシールを剥ぎ取った少年は、それを握りしめたまま、またしてもフードコートに向かって行きました。今回は、犯行の一部始終を現認できたので、先程と同じ席についた少年が、テーブルの上にシールを並べたところで声をかけます。

「すみません、お店の保安員です。そのシール、ほかにも楽しみにしている人が多くて、剥がされちゃうと困るのよ。ちょっと事務所まで、一緒に来てもらってもいいですか?」
「はあ? そんなことしてねえし。これは、前に買って、持ってきたものなんだけど」
「今日、ここに2回来られて、2回とも同じことされてますよね? いくらなんでも、7本はやりすぎですよ」
「はあ? なにもやってねえし。じゃあ、証拠を見せてよ。防犯カメラとか、ついてるんでしょ?」

 思い切り居直られてしまい、まるで埒が明かないので、仕方なくその場にマネージャーを呼び出して事情を説明します。すると、たまたまドリンクの品出しも担当されていた中野英雄さん似のマネージャーから、ここ数日、毎日のようにシールが剥がされていると、そっと耳打ちされました。

「きっと、全部この子の仕業でしょうから、証拠になる映像を探してみましょう」
「お手数かけて申し訳ございません」

 どちらかといえば、進んで同行に応じた少年に剥がしたシールを持たせて、3人で防災センターに向かいます。防犯カメラの位置を確認していたので、撮られていない自信があるのでしょう。防災センターの応接室に入ってからも、証拠がなかったらどうしてくれるんだと、私を挑発するように大人顔負けのセリフを吐き続けています。

「証拠が出てきたら、どうするか。それも考えておいてくださいね」
「おお、なんでもしますよ。そんなのあるわけねえし」

 実行場所と時間をマネージャーに伝えて、防犯カメラの映像を確認していただいた結果、少年が犯行に及んだ場所の真上に設置されたドーム型の防犯カメラに、犯行の一部始終が収録されていることがわかりました。少なくとも2枚のシールを、ペットボトルから剥がす瞬間が見て取れるというので、証拠としては十分なものといえるでしょう。しかし、警察など司法関係者以外に、防犯カメラの映像を公開していけないという社内規則があるらしく、その映像を確認させることはできません。証拠となり得る映像が見つかったことを少年に告げたマネージャーは、このまま否認を続けるならば警察に通報すると、冷たく言い渡しました。すっかり狼狽した様子を見せて、目に涙をためながら両手の拳を固く握りしめて俯いた少年は、座っているパイプ椅子が音を立てるほどに激しく体を震わせています。すると、突然に顔を上げて、泣き叫ぶように言いました。

「どうせないから、見せられないんだろ? 証拠があるなら、いますぐ見せてみろよ!」
「素直に謝ったら許してあげようと思ったけど、そこまで言うなら仕方ないね」
「やっていないものは、やっていない!」
「わかった。じゃあ、俺もとことん付き合うよ」

 怖いくらいに厳しい顔で席を立ったマネージャーは、目の前にある固定電話の受話器をあげて警察を呼びました。これほどまでに否認を続けるのは、きっと何か理由があるはず。話を聞いてみたい気持ちになりましたが、異様に興奮した面持ちで、わなわなと体を震わせ続ける少年に話しかける勇気もありません。警察が到着するまで一緒にいてもらえるようマネージャーにお願いして、彼の背中に隠れるようにしていると、まもなくして二人の警察官がやって来ました。

「シールだけ剥がして、なにすんだ? ちゃんと買ってから剥がせよ」
「いや、そんなことはしていません。証拠もないのに、ひどい話です」
「じゃあ、このシールは、どうした?」
「これは、前から持っているやつで……」

 少しイラついた様子の警察官が少年の身分を確認すると、少年は17歳の高校生で、この店から歩いて15分ほどのところに両親と暮らしているとのことでした。所持品検査の結果、少年のポケットからは、先ほど持たせたものと別のシールが7枚も出てきましたが、いまだ否認を続けています。痺れを切らして防犯カメラの映像を検証することにした警察官は、マネージャーに頼んで、ペットボトルに貼られたシールをつまんでいる瞬間を再生させ、モニター画面を接写した写真をプリントして少年に提示しました。

「いま見てきたけど、防犯カメラに全部写っていたぞ。もう、いいかげんあきらめろ」
「ごめんなさい! でも、学校には言わないでください! うあーん……」

 決定的な写真を提示され、一瞬にして絶望の表情に変えた少年は、すぐに降参して幼児のごとく号泣しています。店内でペットボトルに手を伸ばす少年の写真は、グリコ・森永事件で公開された手配写真を彷彿させ、キツネ目の男の末裔をみたような気持ちになりました。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

ランドセル選びで義母と大喧嘩、未購入で焦り……ママ友LINEグループを賑わせる「ラン活」

今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。

 「ラン活(ランドセル活動)」という言葉を見かけたことはあるだろうか。小学校入学の準備で「ランドセルを購入すること」を指すが、昔と違ってさまざまな種類のランドセルが市場にあふれる今、納得のいくものを手にするために親は情報収集に奔走し、文字通り“活動”するのだ。SNSでは、ランドセル購入のために展示会に行った様子や購入の記念写真などが、「#ラン活」というタグ付きで、多数アップされている。そんな「ラン活」が、ママ友のグループチャットでも話題になっているという。

 首都圏にある保育園に、5歳になる男児を通わせている芳江さん(仮名)は、ママ友とのグループチャットを見ていると、すでにランドセルを購入している家庭が多く、焦りを感じているそうだ。

「通常は、7月くらいがランドセル購入のピークと聞いていたのですが、ママ友から『今年は増税があるから、前倒しで購入している家が多いみたい。ゴールデンウィーク中に購入した方がいいよ』と言われました。とは言いつつ、そんな早くから選ばなくても大丈夫だと思っていたら、百貨店などでは、人気の商品はすでに『ラスト1』の札が……。店員さんも『今日、購入すれば7月に受け渡しができます』と煽ってくるんです。商品によっては、届くのが10月だと、今購入しても増税後の金額になるらしいんですよね。また、男児のランドセル選びって、女児のものと比べて色やデザインに特徴がないので、質や丈夫さなどクオリティ重視になってくるんですが、ママ友から『百貨店の売り場よりランドセル専門店の展示会で探す方がいいかも』とアドバイスされたので、最近は毎週末足を運んでいます。でもやっぱり人気商品はもう売り切れていたり、届くのが来年になったり……悩みは尽きません」

 このように、年長の子どもを持つ親たちの間では、「ラン活」がホットワードになっている。芳江さんは「LINEのチャットで、実際の着用画面や展示会の様子が送られてくると『早く選ばなくては……』って焦ってしまいますね。息子は体が小さい方なので、軽いランドセルを希望しているものの、6年使うと思うと、しっかりとした革製がいいのかなと思うこともあります。相場が7~8万円するので、なかなか決められないでいますね」と困惑した表情を見せた。

 ランドセルは高額のため、親に代わって祖父母が購入するというケースも多い。しかし、価値観などの違いにより、当事者であるママからは、「祖父母が選んだランドセルにしたくない」との声が聞かれるようだ。幼稚園に5歳になる女児を通わせている彩さん(仮名)は、「ランドセルの購入費は出してもらいたいけれど、選ぶのには口を出してほしくない」という。

「義母はなんでも自分が選んだものではないと嫌なタイプ。地元から出ない生活をしているため、価値観の中心が地元にある大型ショッピングモールなんです。夫の実家に子連れで帰った時、ランドセルの話題になり、『買ってもらえるかも……』と期待したのですが、義母が選んだのは、ショッピングモールのプライベートブランドで、3万円ほどのランドセル。娘が通っている地域の幼稚園では、ランドセルの相場は10万円前後なので、とてもじゃないけれど恥ずかしくて『ここのランドセルはいりません』と言ったら、義母と大喧嘩に! 『どうせ壊れたりするのに、高いものはいらない』と言って、色も無難な赤しか選ばせてくれず、『絶対にここでは買わない』と誓いました。ママ友とのグループチャットで、『ショッピングモールのプライベートブランドはないよね』と愚痴ったら、共感してもらえたのが救いでしたね」

 大手百貨店などのランドセル売り場に行くと、有名ブランドとのコラボ商品など、「これがランドセルなのか」と思うような奇抜なデザインのものも多い。取り扱われているランドセルの値段が高額であるため、店員は手袋をはめた状態で商品を取り扱い、子どもが試す際にも、商品に傷をつけないように気を使いながら行うという徹底ぶりだ。

 また、特に女児向けのランドセルは、華やかなデザインも多く、パープルや淡いピンクなどのカラーが人気だという。そういった流行を理解していない祖父母世代は、ランドセル選びでも「そんな色のランドセルを背負って行ったら、いじめられてしまう」と口を出してくると言い、ママを悩ませているそうだ。

 5歳になる男児を育てる昭美さん(仮名)は、「私のラン活への熱意に、うちの夫が引いている」と語ってくれた。

 昭美さんは、春頃からランドセル業者のカタログを取り寄せ、展示会情報をチェックし、実際に展示会やランドセル売り場に足を運ぶようになったという。

「やっぱり6年間使うものなので、ランドセルは『高級なもの』がいいと思いました。実際にランドセルを背負った息子の写真を何枚も撮って、ママ友とのグループチャットに送って意見を聞いたりしていたのですが、夫は『写真を撮るために展示会へ行っているの?』という態度で……。結局、カバン専門店で、コードバンという希少価値の高い革のランドセルを選び、値段は10万円でした。夫は、最初『ゼロが多いのでは』と金額を見直していましたよ」

 ランドセル本体以外にも、オプションでイニシャルを入れたり、カバーを購入したりと出費が多く、夫は「息子のランドセルの方が、自分が持っている鞄や腕時計よりも高い」と呆れ果てていたという。

 子どもが寝静まった深夜。ママたちはチャットグループに、ランドセル購入報告や、どこで買おうか迷っているなど報告し合っているという。SNSが発達し、目に入る情報が増える中、ランドセル選び一つとっても「これで良かったのか」と不安に思うママは少なくないのだろう。そんなとき、グループチャットでラン活を共有することは、誰かからの「大丈夫」という後押しを欲していることの現われなのかもしれないと感じた。
(池守りぜね)

父は被害者なのに――老人ホーム、認知症の入居者とのトラブル【老いてゆく親と向き合う】

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”

――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。前回に続き、もう少し福田涼子さん(仮名・48)の話を続けたい。

施設長が替わって空気が一変したホーム

 福田さんの両親は有料老人ホームに入居している。実家から近いこと、なにより見学に行ったときに施設長の対応が良かったことが入居の決め手になった。職員や施設長の感じが良くて、そのホームを選んだという人は多い。ただし、大手企業が運営しているホームの場合、施設長は定期的に異動する。施設長が替わると、ホーム全体の雰囲気がガラリと変わることもある。職員の入れ替わりの激しさは介護業界の特徴ではあるが、施設長の異動は入居者に大きな影響を及ぼす。

 福田さんの両親が入居するホームでも同じことが起きた。

「ホームに入居するとき、父は施設長が大変気に入っていました。母がすべての介護を拒否していて苦労していた私たちですが、母にも施設長の人柄が伝わったのでしょう。入浴も、薬も、職員に素直に従っていてびっくりしたくらい。それはそのまま、私たちのホームへの信頼になりました」

 それが、施設長が替わったことで、ホームの空気が一変したのだ。

「新しい施設長は、それまでの施設長とまったく違うタイプで、入居者に対して冷たい気がしてなりません。特に父とはソリが合わず、施設長の言葉にいちいち腹を立てています」

 職員の介護の質や接遇も、目に見えて低下したと福田さんは感じている。リネン交換や着替えの介助などのときに、職員がものを投げて渡すようになった。入居者が職員を呼んでもなかなか来てくれないことも増えていったという。

 父親が特に悩まされたのが、認知症の入居者とのトラブルだった。

「各居室は介護職員が入るために施錠しないことになっているのですが、認知症で徘徊する男性が自室と間違えているのか、頻繁に父の部屋に入ってくるそうなんです。そして父の部屋のものをポケットに入れて持って帰ったり、壊したりするんです。何度も職員に訴えているのに何の対処もしてくれませんでした。ある日、夜中に父の部屋の椅子に座っていたそうです。たまりかねた父が『出ていけ!』と怒鳴ると、父の眼鏡をかけて出て行ったと。ところが、それを父から聞いた施設長は、その男性ではなく父に『なぜ怒鳴ったんですか。彼は何もわからないんだから、あなたが親切に手を取って、あなたの部屋はこちらですよと教えてあげなきゃダメでしょう』と怒ったというんです。父は入居者ですよ。しかも迷惑をかけられた方なのに、謝るどころか逆になぜ怒られなければならないんでしょうか。父も『もうこんなホームにはいたくない。出ていく!』と大騒ぎになりました。出ていっても困るのはこちらなので、結局泣き寝入りだったんですが」

 父親の部屋に勝ってに入ってきていた男性は、その後、廊下で便をしたり、ほかの入居者に暴力をふるったりするようになり、迷惑行為がエスカレートしていった。

「父が言うには、わざとほかの入居者に足をひっかけて転ばせたこともあったそうです。『優しく言い聞かせなさい』と父を怒った施設長も、さすがにこれ以上この男性をホームにおいておくのは危ないと思ったのでしょう。入院するためにホームを退去することになり、ようやく父は安心できるようになりました」

 一方で、ほかの入居者にも変化があった。福田さんの父親が入居してしばらくは、父親と気の合う入居者が何人かいて一緒に囲碁や将棋をしていたが、そうした入居者もほかの施設に移ったり、体調や介護状態が悪化して部屋から出られなくなったりして、今、父親の話し相手はほとんどいなくなったという。

 ホームの活気もなくなっていった。ホーム主催の外出イベントは年に数回開かれているが、参加する人はごくわずか。サークル活動も以前は行われていたが、今はなくなってしまったと福田さんは嘆く。

「いずれはうちの親もそういう道をたどるのはよくわかってはいます。自宅で過ごせなくなった両親をここで介護してくれているのは、本当にありがたいとは思っています。それでも、父のように足腰は弱ってきてはいるものの、頭ははっきりしていて、人とのコミュニケーションなどの社会的なつながりを求めている人に、ホームが何もしてくれないというのは、私が見てもつらいものがあります。楽しみも生きがいも見出せない、そんな居心地の悪い場所が両親の終の棲家となるということに、胸が痛んで仕方ありません」

 父親の意欲がなくなってしまう前に、施設長が替わればまだ間に合うかもしれない。運営側がホームの評判が悪くなったと知れば、施設長を替えて、立て直しを試みることは少なくないからだ。評判の良い施設長が、別のホームからやってきて立て直しに取り組めば、再び生き生きとした暮らしやすいホームになる、という例は多い。そのかわりに、今度はそれまでの施設長が異動したホームが変容していく可能性もあるのだが――。

坂口鈴香(さかぐち・すずか)
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。 

【老いゆく親と向き合う】シリーズ
・父の遺産は1円ももらっていないのに――仲睦まじい姉妹の本音
明るく聡明な母で尊敬していたが――「せん妄」で知った母の本心
認知症の母は壊れてなんかいない。本質があらわになっただけ

【介護をめぐる親子・家族模様】シリーズ

女性向け風俗にハマった“女芸人”の告白! 「きっかけは高橋由伸似の“神ワザ”」

 「女にも性欲」がある――そんな当たり前のことが広く知られるようになり、女性向けセルフプレジャーグッズや、イケメンAV男優が出演するアダルト動画などが、身近な存在になりつつある中、それでも「女性向け風俗」は男性向け風俗に比べ、まだまだ未知の領域かも? そんな中、Twitterやラジオ、インターネット番組で、自らの女性向け風俗の体験談を赤裸々に語っているのがお笑いコンビ・ハナイチゴの関谷友美さん。女性向け風俗の世界を関谷さんに案内してもらいます!

きっかけは共演者からの体験談

 みなさん初めまして。女性向け風俗が大好きなハナイチゴ・関谷です。私が女性向け風俗を知ったきっかけは、テレビ番組の共演者から聞いた話でした。「プロのテクニックを知ると、素人には戻れなくなるよ!」と絶賛するので、性欲よりも「女性向け風俗って、どういうものだろう?」という“未知”なる世界への興味から、風俗店の詳細やサイトを教えてもらったことが始まりです。

 共演者に詳細を教えてもらったものの、なかなか踏み込めず、3カ月間ほど毎日風俗店のホームページを見て過ごす日々が続きましたが、あれは忘れもしない2017年12月23日。通常料金1万5,000円のところ1万円になる「クリスマス割引」というものを見つけたのです! 相変わらず迷っていましたが、楽屋にいた男性芸人に話したところ「絶対行きなよ! 今日、今予約した方がいい!」と後押しされ、その場の“勢い”で初めて予約することになりました……。

ぶっちゃけ「女性向け風俗」ってなに?

 女性向け風俗を知らない人は、“どのような”サービスをしてくれる場所なのか、まったく想像つかないと思います。簡潔に言うとオイルやパウダーを使い、性感マッサージをしてくれるところです。ちなみに「本番行為」は禁止ですからね! 

 基本的にマッサージを行う場所はホテルが多く、マッサージの料金相場はコースにもよりますが60分1万5,000~2万円。自分好みの男性を独り占めして、2万円ちょいって意外とリーズナブルだと思いませんか?

 さて肝心の“どんな男性が来るのか……”ですが、基本的に男性向け風俗と同じで“指名”できます。風俗店のホームページには、セラピストの雰囲気がわかる写真やセクシーな上裸写真に加え、年齢や「細マッチョ」などの体形、さらには「ワイルド系」「アイドル系」「塩顔系」のような容姿のジャンルもプロフィールに記載しているんです。なので、自分好みのセラピストを指名できちゃいます。

 セラピストのプロフィールを隅々までチェックしたら、電話かホームページから予約します。最近はLINEで予約できるお店もありますが、私の場合、初めての利用だったので電話から予約をしました。電話であれば、わからないことや確認したいことなど質問できるので、不安も解消できるかもしれません。男性芸人の中には風俗店で偽名を使う人もいますが、私は初め、緊張のあまり、“関谷友美です”って堂々と本名を名乗っちゃいましたね(笑)。

 初めて風俗を利用した時の話に戻りますが、勢いで予約をしたものの、施術時間が迫るにつれ「美人局みたいな人がやってきて、騙されていたらどうしよう」という恐怖が押し寄せてきます。女性側が先にホテルに入室し、セラピストを待つこともできますが、私はJR阿佐ヶ谷の駅前で待ち合わせることに。「エロいことをしたい」という性欲や不安など、さまざまな感情が混在する中、目の前に現れたのは、指名した通りの「がっちり体形の30代」で、顔は元野球選手の高橋由伸似のイケメン。

 ホテルに入ると、由伸から「バスタオル一枚で出てきてください」とシャワーを浴びるよう促されます。部屋に戻るとベッドの上におもちゃとマッサージオイルなどがズラッと並んでおり、「これがプロの七つ道具か」と圧倒されました。由伸はとてもジェントルマンな接客で、恐怖心はすっかり消え、女性ホルモンがどんどん漲る中、カウンセリング開始です。「無理矢理、嫌なことをされたらどうしよう……」と不安な人もいると思いますが、マッサージ前には、セラピスト(施術をしてくれる男性の総称)によるカウンセリングがあるのでご安心を。その時にNGプレイや不安なこと、もちろん“要望”を伝えるものアリです。

 ついに、お待ちかねのマッサージ90分コースがスタート! 腰にタオルをかけ、うつぶせの状態で“フェザータッチ”のパウダーマッサージが始まります。由伸はエロい表情を浮かべながら「キレイな肌だね」と、とにかく優しく褒めてくれるんです。そして、魚焼きグリルの上の魚のようにひっくり返され、仰向けになった私の胸で開催されるのは“アメ食い競技”。「美乳だね(ハート)」と優しい言葉とともに、胸についたパウダーがセラピストの口に吸われていき、私の“アメ玉”を探し出します。

 その後、脚をマッサージしてくれたのですが、キャンディを舐めるような下使いで、なんと! 指の間をペロペロとされるという……。その時の由伸の獣のような目が忘れられません。「きゃー、恥ずかしい。指を舐められるなら念入りに洗っておけばよかったー」なんて後悔していると、続いては小鳥のようにかわいらしくチュッチュッと全身にキスを施し、いよいよ私の森に指が侵入します! ここまで怒涛の快感です。「プロの技ってこんなに素晴らしいのか……」とびっくりしました。たとえるなら、素人は台風の“暴風雨”、プロは“そよかぜ”のよう。なお、由伸のバッドに目をやると、バッターボックスに立っていました。

 タイマーがピピピっと鳴り、あっという間に夢のひと時は終了です。「一緒にお風呂に入る?」と言ってくれましたが、初回だったので遠慮しておくことに。人気セラピストの由伸は、その後に予約が入っていたため、延長できませんでした。女性向け風俗の醍醐味は、性欲の発散に加えて恋人とのイチャイチャ気分を味わえるところだと知り、これからハマっていくのでした……。

■ハナイチゴ・関谷友美 
太田プロダクション所属の芸人。コンプライアンス小松﨑とハナイチゴというコンビで活躍中。
Twitter/公式ブログ「サブマリンに憧れて

ホストで「一晩1000万円」使った女――担当も驚いた「紙袋に詰まった万札」の出所とは?

 ホストにハマりすぎている女たち――通称“ホス狂い”。「ホストに多額のカネを貢ぐ女」というイメージだけが横行する中、外の世界からはわからない彼女たちの悲喜劇がある。「ホストにハマらなかったら、今頃家が建っていた」という、新宿・歌舞伎町では名の知れたアラサー元風俗嬢ライター・せりなが、ホス狂いの姿を活写する。

 以前、月200万円をホストに使う女の話を書き、その金銭感覚に驚いた人もいるかもしれないが、新宿・歌舞伎町は、一晩で1000万円を使う女も存在する街である。今回は、そんなホス狂いの話をしてみたい。

 ユイさん(仮名)は、歌舞伎町のメンズ・バーで仲良くなった女性だ。年齢は40歳前後で、夫と夜一緒にいたくないから遊んでいるのだそうだ。そしてユイさんは、自分はとある有名ホストのエースなのだ、と私に教えてくれた。

 次にユイさんとバーで飲んだとき、彼女は高いお酒をバンバン注文し、最終的に「高いシャンパンをおろすから貸し切りにして」と言って、実際その通りにしてしまった。その頃の私は、“ホス狂い中級”くらいだったので、正直なところかなりビビった。ホスト漫画に出てくるような人だ。とんでもないお金持ちなのだろうか。そう思った。

 私の驚きを察して、ユイさんは金策の秘密を開示してくれた。

「もうすぐ親族の土地を売ったお金が数千万入ってくる」

 彼女は自慢げにそう言って、担当ホストにも伝えてある、と豪語していた。

 歌舞伎町には、あるのかないのかよくわからない大金の話をする人が掃いて捨てるほどいる。お酒の場でのよくある話、と私も話半分で聞いていた。その後、ユイさんと再会することはなかった。

 しかし、1年後くらいだろうか。ユイさんのことも忘れかけていた頃、彼女の担当ホストと話す機会があった。

「ユイはすごかったよ」

 ホストはユイさんのことをよく覚えていた。まるで、抗争の凶弾に倒れた伝説のヤクザについて語る、下町の老人のような口調であった。
ここから先は、そんな老人――もとい、ホストから聞いた話だ。ユイさんは普段から、毎月200万円以上を使う正真正銘の「エース」だった。しかもツケはせず、毎回ニコニコ現金払いの超優良顧客である。

 ユイさんが結婚していることも彼は知っていた。しかも、相手は指名していた元ホストだと言うから驚きである。担当ホストと結婚する――それは、ホス狂いとしてのゴールと思われがちだが、それでもユイさんは満たされなかった。その後の隠しダンジョンが、ユイさんを待ち受けていたのであろう。もちろん、その「隠しダンジョン」とは、若く、新しいホストのことである。

 ユイさんがどうやってお金を作ってくるのか。担当ホストは、それを知らなかったし、聞こうともしなかった。いや、聞いてはいけないような気がしていたという。このとき、金策の方法を問いただしていたら、二人の関係は終わっていたかもしれない。踏み込まないという信頼関係の形も、この世界には存在しているように思うのだ。

「土地を売って数千万つくれそうだ」

 彼女がそう嬉々として語っていたときも、彼は特別な反応はしなかったそうだ。「目の前にないお金に興味はない」と言っていたが、カッコつけていただけかもしれない。私がもしホストだったら、数千万と聞けば、狸の皮算用を始めてしまう。それがたとえ、話半分にしか過ぎない言葉だったとしても。

 真偽はともかく、土地を売ると聞いてからしばらくたった頃だ。あるとき、ユイさんは「行きたい場所がある」とホストの彼を誘った。行先は、北関東の某県某地方。彼は「観光地でもない場所になんの用事があるのか?」と、疑問を感じながらも同行したそうだ。もともと、毎月のお礼に旅行くらいはリターンするので、大した違和感はなかったという。

「ちょっとここで待っていて」

 彼女に連れられるがまま、たどり着いた先はお寺だった。そういえば、親戚がお寺をやっていると聞いたこともあるような気がする……。しばらすると、彼女が境内から出てきた。両手には紙袋。紙袋には、いっぱいの万札が詰まっていた。

 質素な紙袋のなかにたたずむ大量の福沢諭吉様。さすがに彼はその場では受け取らなかったというが、その偉容(異様)は、ユイさんの決意表明としては、十分だった。その後、同じ月のイベントでのことだ。

 ユイさんは一晩で1000万を使った。さぞかし豪勢なシャンパンタワーだったことだろう。そして残りの紙袋資金はホストへ預け、こう言った。

「しばらくは自分の会計はその中から払うように、毎月の使用金額はあなたに任せる」

 すさまじい、言い値システムである。男前、いや、女前である。ユイさんが渡したお金。それが本当に土地を売った結果、捻出された現金だったのかどうか、ホストは確かめなかったという。確かに、そんな詮索に意味はないだろう。私の勝手な感想ではあるが、ユイさんとホストには、「エースと担当」という強固な信頼関係があったように思うのだ。

 ちなみに、今回の後日談。ユイさんは、最後は夫と関係を修復し、歌舞伎町から去った。「たまに連絡を入れるが、返事はない」と、彼は言っていた。ほんの少し寂しそうに見えたのは、私の願望の現れだろうか。

 ユイさんがホストに使った総額は、1億円近く。それでも、歌舞伎町のホストは彼女にとってひとつの止まり木だったのかもしれない。痛んだ羽を休めて、無事に空へ飛べたなら、それは実りある支出だっただろう。

せりな
新宿・歌舞伎町の元風俗嬢ライター。『マツコが日本の風俗を紐解く』(日本テレビ系)で、 現役時代のプレイ動画を「徹底した商業主義に支配された風俗嬢」 と勝手に流されたが、 ホストに貢いでいたのであながち間違いではない。その他、デリヘル経営に携わるなど、業界では知られた存在。 現在も夜な夜な歌舞伎町の飲み屋に出没している。
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【バックナンバー】
第1回:歌舞伎町の元風俗嬢が語る、愛しき“ホス狂い”たち――「滑稽だけど大真面目」な素顔
第2回:担当ホストに月200万円……OLから風俗嬢になった女が駆け上がった「ホス狂い」の階段
第3回:容姿や年齢より「使った金額」! ホス狂いたちが繰り広げる、担当ホストのエースをめぐる闘争
第4回:Twitterで「担当ホストの本命彼女」を暴露!! ホス狂い界隈を絶望させた“ある女の復讐劇”
第5回:ホストに月200万円使う女は、どんな接客を受けるのか? 究極の接客「本営」の実態
第6回:ホストにハマる女は「まじめ」になる。引きこもり風俗嬢が出会った「ホスト・コミュニティ」
第7回:テレビが取り上げない「毎日ホストに通う女」の実態……シャンパンコールの裏にある光景

「メチャカリ」「エアクロ」注目の洋服レンタルサービスが抱える“落とし穴”とは……?

――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!

 バブル期や高度経済成長期ほどには、人々の洋服への渇望感がなくなっていると感じられる近年。“洋服のビジネス”として、新たに考え出された「レンタルサービス」が、一部で話題になっているようです。

 私事で恐縮ですが、この10年間ほどは、めっきり高い服を買わなくなりました。その理由は、「もうすでにたくさんの服を持っていること(保管場所にも困る)」「低価格ブランドのデザイン性が上がっているため、うまくコーディネイトすれば高いブランドとの見分けがつかないこと」です。

 おまけに洋服関係の仕事を20年以上もやっていると、たいていの洋服は一度か二度見たことがあるので、どんな服を手に取っても、新鮮な感動を得られないというのもあります。この感想は自分のようなオジサン特有のものだとしても、先の2つは多くの消費者が感じていることなのではないでしょうか。

 そんな時代に活用しやすいと思われたのが、洋服のレンタルサービスです。欧米が先行して始めたサービスだと思いますが、我が国では株式会社ストライプインターナショナルの「メチャカリ」や株式会社エアークローゼットの「エアークローゼット」などがその代表だと言えます。

 月額いくらかを払うと、プランによって定められた制限の範囲内で洋服を借り放題というサービスで、「普段は買わない服を試せる」「保管場所がいらない」「ネットで借りられるから楽」「月々の洋服代が抑えられる」などのメリットが謳われていますが、各社の現状を見ていると、大きく成功したとはとても言い難いのです。正直に言うと、私はこのレンタルサービス自体にピンと来ないし、あまり魅力を感じていません。

 これまで、レンタルサービスがなかったわけではありません。例えば結婚式で着用するウエディングドレスやタキシード、パーティードレスなどは、以前からレンタルサービスがありました。と言っても、レンタルサービスそのものが独立した事業ではなく、結婚式場やセレモニーホールの有料オプションという位置づけが大半です。また成人式の着物もレンタルサービスがあります。

 これらの服をレンタルする意味は、とてもわかりやすいものです。ウエディングドレスやタキシード、パーティードレスなどは、通常購入すると高額な上に、生涯に何度も着ません。特にウエディングドレスは、(うまくいけば)生涯にたった一度しか着ないのです。よほど思い入れのある人を除けば、そんな物はレンタルサービスで十分だと考える人が多いのも当然。成人式の着物にしても同様です。買って記念に置いておいてもよいのでしょうが、それこそ、保管場所の問題もありますし、保管方法が間違っていれば、虫食いや変色というリスクもあります。

 しかし、カジュアル服のレンタルというのはどうでしょう。価格も利用頻度も、先に挙げたウエディングドレス等とはまったく異なります。果たして、わざわざ借りる必要があるものなのか。私がピンと来ない、魅力を感じないというのは、「カジュアル服を借りるという必要性」を感じないからです。

 ストライプインターナショナルもエアークローゼットも上場企業ではないので、細かな数字は発表されていませんが、あまり好成績というわけではなさそうです。今年2月にストライプインターナショナル・澤田昌紀部長のインタビューが、ウェブサイト「ファッションスナップドットコム」に掲載されましたが、それによると「有料会員数は1万2000人を突破し、広告宣伝費を除けば、今年度黒字転換している」とあります。スタート3年で有料会員数1万2000人、広告宣伝費を除けば黒字という業績は、ほかのファッションテック系(ITなどを活用してファッション業界を活性化させることを目指したサービス)と比べると、その成長スピードは遅いと言わねばなりません。

 特に「広告宣伝費を除けば」という言葉に着目すると、これはつまり「広告宣伝費を含めるとまだ赤字が続いている」ことになります。実際はいまだに赤字なのです。「メチャカリ」は月額5800円なので、有料会員数1万2000人ということは、返品手数料が1回につき380円かかることを含めても、売上高はどんなに多く見積もっても1億円に満たないと考えられます。月額会費だけなら7000万円弱の売上高にしかなりません。

 またメチャカリよりも注目度の高いエアークローゼットですが、発表されている範囲内では直近の決算では赤字でした。2018年6月期決算では、当期損失9億6676万円に終わっています。さらに17年6月期と比べても当期損失額は5億8,800万円増えているのです。投資が先行しているという状態なのかもしれませんが、決して順調とは言えないのではないでしょうか。

 また会員数は16万人を突破したと報じられていますが、それはあくまで登録会員の数であり、有料会員数は明かされていません。もし、有料会員数が順調に伸びていて、驚くほどに増えているなら、とっくに公開されているのではないかと思います。そのため、うがった見方をすると有料会員数はそれほど増えていないのではとも考えられるのです。

 では、「メチャカリ」にせよ、「エアークローゼット」にせよ、どうして有料会員数が増えにくく、黒字転換しにくいのでしょうか。それは、定額制洋服レンタルサービスという事業が意外にカネがかかるからなのです。

 まず、洋服を送る運賃がかかります。また返ってきた服のクリーニングを含めた補修メンテナンス費用も必要です。さらに会員数が増えれば増えるほど、選んでもらう商品とその枚数を増やさねばなりませんから、手持ちの洋服の在庫は増え、倉庫も拡張し続けなくてはなりません。そうなるともちろん、場所代や倉庫内での人件費なども増えるため、資金繰りに大きな負担をかけることになります。「メチャカリ」も「エアークローゼット」も、まだ生みの苦しみの段階だということになるようです。

 また、レンタルする顧客層も、通常のアパレルブランドがターゲットとするような「ファッションに興味のある層」ではなく、「ファッションに興味のない層」「自分で服を選ぶのが嫌・面倒くさい層」なのだそう。これは当初からそう想定されていたわけではなく、事業が始まってからわかってきたことで、前出の澤田部長が自らインタビューでそう答えていました。

 同社の“本業”は、「アースミュージック&エコロジー」などのアパレル事業ですが、「メチャカリ」はファッションに興味のない層を掘り起こしているから、本業にとってもプラスになっている(本業の新たな顧客をつかんでいる)という考えのようです。確かにその通りとは思いつつも、そういう層が今後爆発的に定額制洋服レンタルサービスに大挙して押し寄せるかというと、私には疑問です。ファッションはおろか、レンタルサービスに対しても興味を示さないままではないかと思います。

 海外も含めてレンタルサービスが、全て失敗に終わるとは思っていませんが、決して明るいブルーオーシャンではないと見ています。今後、どこかの時点で何社かが社会に定着し、さまざまある洋服ビジネスの一形態として落ち着くのではないかと思います。個人的には洋服レンタルサービスが大流行するという未来はまったく見えてきません。
(南充浩)

西野亮廣は“教祖様”なのか――彼を支える、“スピリチュアル”な取り巻きたち

 誰にでも、心が弱ってしまう時はあります。救いを求める先が、信頼できる家族や友人ではないこともあるでしょう。「こうすれば幸せになる」と語りかける心理カウンセラー、スピリチュアリスト、霊能力者。彼らを見ていると、「私を救ってくれそう」「この人たちのようになれるかも」と、次第にそんな気持ちが膨らみ……ちょっと待って! それ、本当に信じて大丈夫? スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコが、無責任なことばかり言っている“教祖様”を、鋭い爪でひっかきます。

 3月23日、近畿大学の卒業式に招かれたお笑いコンビ・キングコングの西野亮廣さんが、卒業生に向けてスピーチを行いました。その模様を収めた動画が、4月中旬にネット上で大きな話題になったことをご存じの方もいるかと思います。

 この動画を見てみると、西野さんは自身が登壇する際、会場が盛り上がらなかったことについて、近大の学生を言葉巧みに責めます。そして「パラパラの拍手でキングコング西野を迎えるのか? それとも、割れんばかりの大歓声でキングコング西野を迎えるのか? 決めるのはあなた方です」と言い、登壇をやり直し。二度目に登場した際には、大きな拍手と指笛が聞こえる中でステージに立ち、「やればできんじゃん!」と絶叫しました。Twitterでは「カルト団体が人を支配する時に“罪悪感”を抱かせる手法と似ている。これに感動した人は危険だ」なんて指摘する人がいて、ギョッとしてしまいました。

 西野さんは卒業生へのメッセージとして、こんな話もしています。

 「時計ってすごく面白くて、長針と短針があって、あいつらは1時間に1回重なるんですよ。(中略)毎時1回は重なるようにできてるんですけど、11時台だけは重ならないの。(中略)次に2つの針が重なるのは12時。鐘が鳴る時ですね。伝えたいメッセージは何かというと、『鐘が鳴る前は報われない時間があるということ』。(中略)でも大丈夫、時計の針は必ず重なる。だから挑戦してください」

 登壇シーンも含めて、「伝説的」「引き込まれるような話術」と絶賛の声がある一方で、「時計の針と人生はまったく違う」といったツッコミもありました。時計の針が重なり、鐘が鳴った瞬間を「報われた」と言っているようですが、人生は時計のように、定期的に報われる瞬間が来るとは限りませんよね。非常に抽象的な例えで“それらしい”ことを言っていますが、冷静になって考えてみると、「あれ?」と引っかかるようなスピーチでした。

西野亮廣を取り巻く“スピリチュアル”な人々

 実は私、つい最近まで西野さんのことを“スピリチュアル系”の人だと思っていました。自分があまりテレビを見ないのと、子宮系界隈や、心理カウンセラー・心屋仁之助氏のファンが、SNSで西野さんのイベントや講演会の告知などをしていたもので……。私が注目する“教祖様”たちの支持層と、彼のファンは親和性がかなり高いのだな、などと勝手に思っていた次第です。実際に、西野さんご本人がこの界隈と関わることもありました。一昨年、スピリチュアル・ブロガーhappy(現在は「さちまる」「竹腰紗智」に改名)が都内で行ったイベント「第1回シンデレラ・プロジェクト」に、西野さんが出演していました。スピ好き女子が2,000人も集まった大イベントで、西野さんはトークゲストとして登場。また、絵本作家・のぶみ氏と対談した『会議を見せるテレビ』(ニコニコ生放送)出演の際には、西野さんがゲストにhappyを呼ぶ親密ぶりでした。

 そんな西野さんのブレーンとして、表立って活躍しているのは、田村有樹子さんという女性です。18年、振り袖の販売・レンタル業者「はれのひ」の詐欺被害にあった新成人のため、西野さんは「あらためて新成人を祝う会」を行っていましたが、これも田村さんの後押しがあったよう。西野さんは同年1月20日に「田村P」と題したブログを更新しており、「成人式の一件に関しては田村Pから『なんとかしてあげたい』という連絡があって、僕は彼女に最大級の恩恵があって、彼女が抱えているストレスは全て解消したいので(それだけの関係を築いてあるので)、アクションを起こした」とつづっています。

 田村さんは、スピ界隈でちょっと有名な天宮玲桜(あまみやれいか)氏と懇意にしていることが、SNSの投稿からわかります。2人はよく一緒に食事をしており(いつも高そうな肉を食べている!)、「大好きなたむママ(編注:田村さん)のお店」に行ったことを、天宮氏がフェイスブックで報告していたことも。ちなみに天宮氏は、「卑弥呼の生まれ変わり」を自称して、パワーストーン販売や高額セミナーなどを行う、まあ、その……ごく一部の人から“崇拝”されている人物と言って差し支えないかと思います。

 西野さんとスピリチュアル系とのつながりの数々は、決して表立っては取り上げられません。そんな中で槍玉に挙げられているのが、10歳の不登校YouTuber「ゆたぼん」との関わりです。心理カウンセラーを自称するゆたぼんの父親は西野さんの大ファンであり、18年4月7日には自身のTwitterで「わが家の長男と長女が5月4日に福岡で開催される西野亮廣さんの講演会に招待して頂きました」と報告。ゆたぼんも、長女・あっちゃんも、西野さんの講演会に「スタッフとして参加した」旨のツイートをしています。

 しかし西野さんはこの件について、5月12日にYouTubeの『毎週キングコング』で公開された動画内で「ゆたぼんなんか知らーん!」「俺のライブに来た“お客さん”が炎上して、なんで俺がコメントすんねん?」と、爆笑しながら彼らとの関係を否定。一方で、あっちゃんのことは覚えているようで、西野ネットワークで全国に展開するファンの集会場のようなスナックを「沖縄でもやっていいですか?」と聞いてきたと説明しています。とはいえ、西野さんに「ただのお客さん」とハシゴを外されたゆたぼんファミリーは、さぞガッカリしたでしょうね。

 スピな人々や少年YouTuberだけでなく、西野さんの動向を手放しで称賛するファンは多数います。その局地的な人気を固めているものが、オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」。月額1,000円で入会でき、西野さんがありがたいお言葉を投稿してくれる「西野亮廣のメモ帳」の閲覧や、コメントの書き込みができるのは会員のみ(あ、これ宣伝になっちゃう……?)。サロンを通じて西野さんファン同士が交流できる場もありますから、そこに自分の居場所を見いだす人も大勢いるでしょう。そんな仲間が「行く」と言うならば西野さん主催のイベントに参加し、「買う」と言うならば著書や商品は我先にと購入したくなるはず。国内最大規模の2万5,000人が集まるサロンとのことですから、西野さんの“ベストセラー”を支えている層が見てきますね。

西野亮廣の評価が二極化している「危うさ」

 西野さんのオンラインサロンは“秘密厳守”だと、入会手続きをするページにはっきり書いてあります。ここで得た情報や会話などを外部に漏らすことは、「クライアントが絡む公開前のプロジェクトをたくさん抱えております」という名目で絶対禁止。これにより、“閉鎖空間”が生まれることになりますが、ちょっと妙な雰囲気が漂ってきませんか。この特別感や高揚に酔う人々が、西野さんの言葉をありがたく聞き、少しずつお金を献上する。そして時にはゆたぼんファミリーのように、団結して労働力にさえなるのです。

 芸能界で培った巧みな話術と豊富な人脈によって信用を集め、会員制コミュニティ内で先鋭化したファンの力を借りながら、定期的にイベントを開催する。斬新で楽しいことをやって話題作りをして、またそこに惹かれた人を囲い込んでサロンが拡大していけば、まるで世間的にすごく支持されているかのように見せることも可能でしょう。

 近大卒業式の西野さんの言動に対して、ネットの反応が「伝説的」「危険だ」とはっきり二極化していたことからも、彼の危うさを感じ取れます。加熱した一部の“信者”が、大きな声を上げて猛烈に誰かを支持する。これはスピリチュアル系自己啓発セミナーの「信者ビジネス」とよく似ていると、私は思うのです。西野さんがやってることって、「革命」なんて気高く輝いて見える言葉で丸め込んでもいいのでしょうか。

 このような活動を続けている限り、本人に悪気はなくても言わば“教祖”たる西野さんは、これからも「胡散臭い」と言われてしまうのでしょう。そうやって自分を売り出したのだから、仕方ありませんし、おそらく本人は本人で「胡散臭い上等」なんでしょうが。

■黒猫ドラネコ
 1983年5月生まれ。性別、職業は非公表。大分県出身、学生時代から大阪で過ごし結婚を機に上京。穏やかで細かい性格。自分勝手な人が嫌い。趣味はスポーツ観戦、カフェ巡り、漫画・アニメ鑑賞など。甘党でお酒よりジュースを好む。ショートスリーパーにつき夜行性。

Twitter/ブログ「黒猫ドラネコのブログ(仮)

第一志望校を横取りされる――! 中学受験生の母が語る、「娘の友達」への黒い感情と後悔

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 “受験”というものは時に残酷である。“定員”が存在するからだ。特に中学受験は“フェアな受験”と呼ばれている。総得点が高い者順に合格通知が届けられる、一発勝負の仕組みなのである。つまり、定員がある以上、塾で同じクラス、模試でも同じくらいの偏差値、しかも志望校も一緒という仲良しの友達同士であったとしても、本番で明暗を分けてしまうことは稀ではない。

 そういう現実があるせいか、親の方がナーバスになり、“隣にいる仲良しのお友達”より、1点でも高い点数を獲得することを、我が子に厳命してしまうケースが後を絶たないのだ。

 ある塾に萌ちゃん(仮名)という優しくおっとりした性格の女の子がいた。1年生から塾に入り、新4年生になるタイミングでその塾の中学受験コースに移行したのだ。成績も優秀で、目指す難関U学園も「このまま努力し続ければ、十分、合格圏内」という位置に付け、5年生の秋を迎えていたという。

 そんな中、塾の同じクラスに葵ちゃん(仮名)という女の子が転入してきた。彼女は帰国生で、明るく活発、しかも華やかなタイプだったためか、すぐさま塾のクラスでも人気者になっていったという。葵ちゃん、萌ちゃんも含めた“4人組仲良しグループ”が結成され、お弁当を食べるのも、トイレに行くのも、駅まで帰るのも、一緒に行動するようになっていったそうだ。

 そうこうしているうちに最終学年を迎え、「志望校調査」が行われる季節になった。仲良し4人組は、自分がどの学校を志望しているのかを、素直に言い合ったそうだ。葵ちゃんは萌ちゃんに影響されたのか、当初は帰国枠を持った別の学校を第1志望校に据えていたのだが、徐々にU学園の虜になり、帰国枠を設定していないU学園を第1志望校にしたという。

 ところが、この話を萌ちゃんから聞いた母・典子さん(仮名)は、「心がモヤモヤした」という。

 というのも、その少し前、「葵ちゃんに可愛い文房具を貸すと返してくれない」という娘の言葉を聞いたからだった。匂い消しゴムやスタンプ、リップ型の修正テープ、シールなどを貸すと、結果として「葵ちゃんの物」になってしまっていたという。

 典子さんは「『返して!』って強く言いなさい!」「可愛い文房具を塾に持っていくのはやめなさい!」と叱ったそうだが、萌ちゃんは「だって……」と言ったっきり、何も答えない様子だったそうだ。

 典子さんは筆者に当時の心境をこう語ってくれた。

「私が勝気な性格なので、文房具を取られているのに黙ったままの娘が情けなかったんです。萌はそれまで、仲良し3人グループの子たちと、すごくうまくいっていたんですが、葵ちゃんが入ったことで、どうもギクシャクした気もして……。そこにきて、葵ちゃんがU学園を第一志望にしたと聞き、志望校まで横取りされてしまった気がしたんですよね」

 典子さんは、葵ちゃんのお母さんが、保護者会で会うたびに「何か情報ない? 帰国だから、よくわからなくて~」と一方的に話かけてくるのも気に入らなかったのだ。

「そういうことも重なって、その苛立ちを萌にぶつけていたのかもしれません」

 勢いずいてしまった典子さんは、萌ちゃんを責めるような言葉を連発するようになったそうだ。

「そんなふうにボーッとしてるから、後から入った葵ちゃんに成績でも抜かれるのよ! 萌は悔しくないの? このままだとU学園には葵ちゃんが合格して、萌は落ちるね」
「文房具のことなんか、どうでもいいのよ! 1点でも葵ちゃんより、いい点数を取りなさい!」

 それは、このところ成績が思うように上がらない萌ちゃんの胸に、「過酷な言葉」として響いたのだろう。萌ちゃんはこれまで以上に自己主張をしなくなり、元気をなくしていったという。

 そんな折、仕事帰りに駅で塾帰りの萌ちゃんと待ち合わせをしていた典子さんは、ある光景を目撃する。「仲良し4人グループ」のはずなのに、明らかに萌ちゃんだけが仲間外れにされているような形で歩いていたのだ。

「やっぱり萌は、いじめられている……!?」

 そう直感した典子さんは、萌ちゃんをピックアップした後に、「萌、久々に女子会しよう!」と、まだ開いているカフェに連れ出したという。

 そこで典子さんは、問わず語りに、萌ちゃんに話をしたそうだ。

「ママが悪かった。ひどい言葉を言ったこと、本当にごめんなさい。萌はずっと我慢していて偉かったし、そんな優しい萌はママの自慢だから。いろいろ言ってしまったけど、ママは葵ちゃんより上の点数を取ること以上に、萌に笑顔でいてほしいと思ってるの。それに、女の子同士の友情っていうのは難しいものだから、嫌な人と無理に付き合う必要はない。もし嫌だったら、志望校の変更もまったく構わないよ。今、萌が頑張っているのは、楽しい中学生活を過ごすため。中学受験をやり続けるならば、何をすべきかをよく考えてみることが大事だと思うよ」

 そして、最後に「文房具くらい、いくらでも買ってやるから、そんなに欲しけりゃくれてやれ!」と言い放ったという。萌ちゃんはこの言葉に笑いだし、久しぶりのケーキセットを頬張りながら、典子さんに向かって「ママ、ありがとう。なんか元気出た!」と言ってくれたそうだ。

 それから、典子さんは塾に出向き「こういう状況なので、よく見てやってほしい」と要望を出し、塾の帰りは必ず、入り口のところまで迎えに行くようにしたという。そして、星空を眺めながら“女同士”の会話をし、歩いて自宅まで帰ることにしたそうだ。

「あの時、萌に『受験をやめてもいいし、転塾も悪くない選択。でも、それを決めるのは萌だよ』って言ったんです。そしたら、萌が出した結論は『受験はやめないし、転塾もしない。このまま、この塾で頑張る』というものでした。おとなしくて、自分の意見も言えないようなタイプの萌は、実はすごく思慮深くて、芯があるってことを実感しましたね」

 そして、この春、結果が出た。萌ちゃんは見事、初志貫徹でU学園に合格。そして葵ちゃんは結局、帰国枠入試で別の学校を受験して早くに合格を決めたため、受験生活からはいち早くリタイアしていた。

 典子さんはこう述懐する。

「葵ちゃんの登場で、萌の成績が下がったような気がして、とにかく葵ちゃん親子が気に入らなかったんです。でも、それを葵ちゃん親子にぶつけることができなくて、その黒い感情を、よりによって萌にぶつける形になって、これは本当に反省しています。でも『雨降って、地固まる』じゃないですが、このことで私たち親子の絆はすごく強まったと思っています。この間萌に『あの時、ママとすっごく仲良しになれた気がした! きっとこれからも一生、仲良しだね?』って言ってもらえて、素直にうれしかったですね」

 結局、子育ての最中、災いを転じて福にできるかどうかは、“子どもの目線に立った”親の力にかかっているということなのかもしれない。
(鳥居りんこ)

「母の日・父の日廃止は神経質」の声も……親も保育士も困惑、保育園“家族イベント”の在り方

保育園、幼稚園、小学校、おけいこ事の教室などでは、日々子どもの保護者と施設側の間でトラブルが発生している。ほんの些細なことでも、自分のこと以上に気になってしまうのが親心というものなのか。わが子のことを思ってとクレームを入れるママもいれば、モンペと呼ばれることを恐れて我慢するママも。そんなトラブル事例とママの葛藤をつづる。

 全国的なイベントとして、いまだ根強く残る「母の日」や「父の日」といった家族イベント。幼稚園や保育園などで、母や父の似顔絵を描かされた記憶がある人も多いと思うが、現在こうした家族イベントは行われることが減ってきているという。その理由は、「シングルマザーやシングルファザーなど、保護者の在り方が多様化してきているため」のようだ。

 関東近県の幼稚園に3歳になる男児を預けている専業主婦の和美さん(仮名)は、園で母の日、父の日イベントがなかったことを不満に感じたそうだ。

「うちの学年には、母子・父子家庭の子どもはいないのですが、数年前から母の日や父の日に、特に何もやっていないようです。理由を聞いてみたら、廃止した当時にシンママがいたから、卒園まで配慮したと。一部の保護者のために、ほかの家庭も合わせるのはおかしいと園側に申し立てたものの、『今後、またそのような保護者の方もいらっしゃるかもしれないので、家族イベントはやらない』という返答でした。私は子どもからの“母の日”のプレゼントや製作を楽しみにしていたのに、その気持ちを踏みにじられた感じがしてショックでした」

 和美さんは、幼稚園や保育園よりも地元にあるショッピングモールなどの方が、家族イベントに積極的だと感じたという。

「知り合いのママ友が通っている保育園も、家族イベントで子どもに絵を描かせる際、ママやパパとは限定せず、『好きな人のことを描いて』と指示するそうです。でもショッピングモールに行くと、普通に“母の日”“父の日”にちなんだ絵の募集があって、知っている家の子どもの絵も多く貼りだされています。わざわざ園が家族イベントを中止する必要がわからないですし、園側が神経質すぎるのではと思ってしまいます」

 都内にある小規模保育所で働いている保育士の愛子さん(仮名)は、園側の家族イベントの扱い方に戸惑ったという。

「うちは繁華街にある、夜間保育も行う保育所なのですが、“ワケあり”の保護者が多いんです。園自体にシンママが何人かいるため、家族イベントは基本的に行わない方針になりました」

 家族イベントは、園側が保護者に個別対応しなければいけないケースも多く、愛子さんは「面倒」と語る。

「例えば、敬老の日に、子どもが描いたイラストのハガキを、それぞれの祖父母宅に送ろうという話になったのですが、保護者の方に確認を取ると、ハガキを送ること自体よく思わない人も多くて、取りやめました。運動会の父親参加競技も、親子競技と名前を変えたものの、運動会自体に来られない保護者もいるので、保育士が代わって競技に参加しなければならず、大変なんですよ」

 一方、4歳になる女児を幼稚園に預けているシンママの千秋さん(仮名)は、「家族イベントを行わないことで、逆に私たち母子が目立ってしまう」と語る。

 千秋さんは、出産してすぐ、夫のDVなどが原因で離婚し、関東近県にある実家に戻った。子どもが小さいうちは、育児に専念したいと思い、就職をしないことを選んだという。

「もともと自分が通っていた幼稚園に入園させました。園長も私のことを覚えてくれていて、シンママだと言うと、心配されました。そして園長が『これも時代の流れだから』といって、父の日イベントだけでなく、紙でのカーネーション製作や、ママの似顔絵などの母の日イベントまで取りやめたんです。周りからは明らかに私のせいだとわかってしまったので、逆に配慮されるのがつらく感じました……」

 保育園も幼稚園も、多様化する子どもたちの家庭環境に、どのように対応すればよいのか模索中だという。都下にある大型保育園で働いている保育士歴10年の薫さん(仮名)は、以前よりも、個別対応すべきことが増えたと漏らす。

「うちの園には、シンママの子もシンパパの子も、事情があって普段は祖父母の家で過ごしている子もいますが、パパママが揃っているというご家庭の保護者から、『家族イベントはなくさないでほしい』という要望があったため、朝の会や帰りの会後の自由時間を使って、子どもには母の日、父の日の製作物を作ってもらいました。本当は、保育時間内にみんなで揃って製作ができれば手間がかからないのですが、一人ひとりに個別に紙で作る花を教えたり、絵を描くのを見守っています」

 彼女は、子どもが一律で同じイベントを行うのは難しくなっているという。

「園側に意見を言うタイプの保護者からは、どんどん『こうしてもらいたい』というクレームが入り、そちらに対応すると、今度はシンママやシンパパにはつらい思いをさせてしまうケースが発生するんです。すると、シンママやシンパパの子どもは、イベントに参加しない傾向が強くなってしまいます。今は個別対応できていますが、これ以上、いろいろなイベントや日常生活でそれぞれの家庭環境や事情を考えた対応を求められると難しいですね」

 統計上では4組に1組は離婚していると言われている現代。今後も、シングルの保護者は増えると予測される。子どもから親への感謝の気持ちを伝えるようなイベントの在り方を、検討する必要があるのかもしれない。
(池守りぜね)

母を置いて仕事に行くのは“虐待”? 仕事とダブルで追い詰められ……【老いてゆく親と向き合う】

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。親を介護する子どもの年齢は幅広い。リタイアした60代もいれば、働き盛りの40~50代ということもある。後者の場合、介護と仕事をどう両立するかは大きな課題となる。

 前回紹介した福田涼子さん(仮名・48)もフルタイムで仕事をしながら母親の介護をしていた。

 認知症の母親に暴言を浴びせ続けられた父親が倒れ入院、退院後は有料老人ホームに入ったため、一人で暮らすようになった母親の介護は福田さんと兄がするしかない。二人は交代で毎日実家に通った。

「仕事帰りに実家に寄って、晩ご飯をつくって母と食べ、朝昼食用に簡単に食べられそうなものをつくって冷蔵庫に入れておきました。失禁で汚れた下着や寝具も大量に放置してあるので、洗濯も大変でした。お風呂にも入っていないので、部屋の中は異臭が充満しています。しかもその間、母はずっと私や兄を攻撃し続けているんです」

 福田さんの介護が大変になった原因は、母親が半日型デイサービスに行く以外、介護サービスをすべて拒否していたことにあった。それだけではない。頻繁に失禁していたがオムツも、入浴も拒否。福田さんが朝昼食用につくり置いていった食事にも手を付けなかったという。

母を置いて仕事に行くのは虐待?

 福田さんには、忘れられない言葉がある。母の介護で疲弊していた福田さんと兄に、ケアマネジャーがこう言ったのだという。

「あなたたちがやっていることは、虐待なんですよ!」

「すべてを拒否している認知症で一人暮らしの母親を放置して、仕事に行っている私たちが悪いんだというんです……」

 ケアマネジャーの言葉は、その職業による正義感から発せられたのかもしれない。しかし、毎日必死に介護を続ける福田さんをひどく傷つけるものだった。

「思わず泣いてしまいました。私が仕事を辞めて介護に専念しなさいということですよね。それができれば苦労はしません。夫は転職したばかりで給料も安いし、私も非正規雇用なので、とても食べていけません。それに、辞めたら次の仕事を探すのは年齢的にもう難しいでしょう」

 福田さんは、ケアマネジャーに強い不信感を持った。しかし、兄の反応は違ったという。

「兄は、ケアマネジャーがそうまで言うのなら、それが真実かもしれないと言っていました。だから、ケアマネジャーを代える必要はないというんです」

 福田さんはそもそもケアマネジャーを代えることができることさえ知らなかったという。そのケアマネジャーも、地域包括支援センターから「お宅の担当はこの人」と指名されていたため、「そういうものだ」と思い込んでいたのだ。

 福田さんは母親からも責められていた。「お前は仕事に行って楽をしている」と。常にそばで世話をやくことのできない娘に苛立っていたのかもしれない。女は家にいて家庭を守るものという観念の強かった母親だから、その言葉も当然だろうと福田さんは反論する気も起きなかった。

 もっとも、福田さんにとっては仕事をすることで四六時中母親と顔を突き合わせずに済むというメリットがあったのは確かだ。そうでなければ、母親の度重なる暴言で倒れてしまった父親のように、ウツになるほど追い詰められていた可能性も十分あっただろう。

 その反面、仕事と介護の両立も母親が言うほど楽なことではない。介護離職が大きな社会問題となっている時代だ。福田さんも例外ではなかった。

 実家に通って洗濯や食事づくりをし、自宅に帰るころには深夜になっていた。夫は「自分は好きなものを食べておくからいいよ」と言ってくれていたとはいえ、自宅の家事もある。数時間寝られればいい、という状態が続いていた。

「でも身体的な疲れはなんとか乗り切れます。極限だったのは精神状態。職場でも余裕がなく、同僚がランチ時に他愛ない話題で盛り上がっていても、その輪の中に入ることができません。私にはテレビを見る時間も余裕もなくて、見ているのは母の汚れ物くらい。何をしても気持ちが晴れることはありませんでした」

ホームに入っているから介護休暇を取る必要はない?

 会社は、福田さんが介護をしていることに理解がなかったわけではなかった。父親が入院したときに5日間介護休暇を取得したが、上司は快く許可してくれたという。

「ただ、あまり長くは休みづらい雰囲気がありました。私はほぼ独立した仕事をしているので、休んでも同僚に影響はないのですが、同僚は腫れ物に触るような感じで、介護のことには触れてきませんでした」

 今は両親ともに有料老人ホームに入り、福田さんは一時期の“介護地獄”の状態を脱することができた。ところが、いまだに社内では窮屈な思いをしているという。

「先日、今年分の介護休暇を申請しようとしたところ、上司から『ご両親はもうホームに入っているのに、なぜ休暇を取る必要があるんですか?』と言われて取得を認めてもらえなかったんです。本来、介護休暇は毎年取得できるはずです。でも上司からこう言われてしまうと反論してまで取得するのはためらわれます。これからは、有給を取りながら対応していくしかないですね」

 福田さんはすっかりあきらめているが、親が施設に入ったからといって、上司が「もう介護休暇は必要ない」と断定するのはおかしなことだ。

「うちの場合、母親が同じホームに入ったことで、また母親からの暴言を受けることになりました。憔悴した父から『助けてコール』が入ると、実家に一時避難させたり、気晴らしに食事に連れて行ったりする必要があるんです。精神的にダメージを受けている父に寄り添ってあげたいし、定期的な通院の付き添いもホームから家族が同行してほしいと言われています。うちの会社では、介護休暇の積み立て制度のようなものも新たに設けられました。取りきれなくて消滅する前年度の有給を介護用として積み立てるという制度らしいのですが、これも今のところ絵に描いた餅です」

 親がホームに入ったからといって、介護が終わったわけではない。福田さんは「その時々で問題は変化するし、なくならない」と感じている。

 制度がいくら充実していても、使えなければ制度がないのと同じ――福田さんの言葉にうなずく人は少なくないはずだ。

坂口鈴香(さかぐち・すずか)
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。 

【老いゆく親と向き合う】シリーズ
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