新型コロナウイルスという国難のさなか、たとえ首相が変わろうとも、大きな変革が期待できそうにない日本。男性優位の政治に不信感は募るばかり。しかし、そんな中で異色の存在となっているのが小池百合子だ。7月の都知事選では次点の候補者に280万票以上の差を付けて再選を果たした。
5月に学歴詐称疑惑に迫ったノンフィクション『女帝 小池百合子』(石井妙子著/文藝春秋)が発売されたが、そのダメージは一切なかったかのような人気ぶりだ。百合子の魅力はいったいなんなのか。『女帝』にハマった女性3人が、A(28歳・墨田区在住)、B(39歳・豊島区在住)、C(35歳・杉並区在住)が語り合う。
派手な服を着てアイドル気取りでイベントに登場
A 都知事2期目に入った百合子だけど、任期途中で国政に復帰するのではないかという説があるね。百合子はかつて「日本初の女性首相になるのでは?」と言われた人なんだよね。都知事選前、百合子のことを詳しく知らなかったので、「このまま百合子を応援していいのか」と思って『女帝』を読んだんだけど、ものすごい野心家だとわかったよ。
B すごいよね。それまで私も、百合子については「頑張ってるおばちゃん」という印象くらいしかなくて。学歴が疑われていることは知っていたけど、それは百合子を敵視している男連中が騒いでるんだろうなという認識だった。
C 2019年9月に豊洲市場で行われた「エビフェス!『海老の日』祭り in 豊洲」に行ったとき、百合子を生で見たんだけど、桜エビ色の派手なジャケットを着て、登場した瞬間に会場がワーッと沸いたことが印象に残ってるんだよね。ゲストにジャニーズのA.B.C-Zも来たんだけど、歓声の大きさは百合子も同じくらいで、本人もあれはアイドル気取りだった! 本書を読んだら、百合子は築地移転に反対する「築地女将さん会」を最初は支持すると言っておきながら、最終的には裏切った立場。よく豊洲に「イエーイ」なんてノリノリで出てこられたなと呆れるよ。
B その姿、目に浮かぶ(笑)。衆議院議員時代の15年にも「池袋ハロウィンコスプレフェス2015」のオープニング・セレモニーに「魔法使いサリー」のコスプレをして出てきて、「魔法使いユリーで~す!」とノリノリで挨拶していたんだって。YouTubeに動画も出てるんだけど、「女帝」を読んで、そういうタレントみたいな仕事が好きな人なんだな〜って。カイロ大学留学時代から、男性たちに囲まれてアイドル的存在だったらしいね。
C ぶりっ子って女だけでなく男も嫌う人がいるけど、そこをうまいこと出さずに、すり寄っていく。そういう人づきあいのうまさ、人を引き寄せる力はもともとあるんだろうなと思った。
B 同じことをやって百合子と同じ結果を残せるかといったら……できないね。私、こんなに「女」 に夢中になったのは木嶋佳苗以来なんだよ。死刑囚と比べるのも申し訳ないけど、女をフルに使って一大事を起こしたという意味では似ていると思う。
C 本書の一番の読みどころとなっている、「カイロ大学を首席で卒業」という学歴の詐称疑惑はどうだった? 「首席」については、18年6月15日の記者会見で「先生から『非常に良い成績だったよ』とアラビア語で言われたのは覚えておりますので、うれしくてそれ(主席)を(自著に)書いたということだと思います」と、勘違いだったと言い訳している。
A そんな小学生みたいな言い訳をするんだと驚いたよ(笑)。都知事が言うことじゃないでしょ。あまりにも、すぎてツッコめない。卒業については、カイロ大学側も卒業したことを公式に認めているものの、大学と癒着しているのではないかという疑惑もくすぶってはいるよね。
B 「アラビア語が堪能」というのが百合子の武器だけど、専門家に言わせたら「中1レベル」。ごく簡単な日常会話レベルとも本書に書いてあるね。これが事実だとして、美智子皇太子妃(当時)とサウジアラビアの商工大臣夫人の通訳に行ってしまう百合子、すごい。普通は怖くて行けないよね? バレたらいろんなものを失ってしまうとか、考えてないのかな。
C それよりも、そこで得られるもののほうが重要だと考えてるんだろうね。百合子は常に攻めてる!
A それで、なんとかなっちゃってるしね……。アラビア語ができると売り込んだことで、テレビの世界に飛びこみ、ほとんど実績もないのに『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京系)の初代メインキャスターに。そうやって、うまくいったのは、女だからだよね? 「カイロ大卒でアラビア語が話せるきれいな女」は、テレビ的に価値になるから、多少経歴が怪しくても、「このまま起用しちゃえ」ということなんだろうね。男だったらもっと徹底的に過去を調べられていたはず。
B アラビア語に加え、ミニスカートとハイヒールを武器にしてキャスターから都知事まで登り詰めたってわけだ。ミニスカートやハイヒールがウケるというのは、ほとんどの女はわかってると思う。ただ、それをやるかやらないかの違い。そして百合子は、何か手にいれるためには差し出せる。その気持ちが私にはわからないし、そこまでして成り上がりたいのはなんで? って思うんだよね。
C ミニスカートとハイヒールで何かを得ても虚しくなるような気がするけど、百合子は全然ならない。環境大臣時代には「クールビズ」を打ち出したり(05年)、自民党の応援歌を作詞してあべ静江に歌わせてCDを作ったり(10年)、「東京アラート」や「密です」といったキャッチーな言葉を作ったり、時流を読んでうまく乗っているところがすごいよね。やってることが、広告代理店っぽいな。ただ、上手なのはイメージ作りだけで、よくよく考えると何しているのかよくわからない(笑)。
B 「政治こそマーケティングであります」と、16年の都知事選のときに訴えていたらしいね。百合子、マーケティング大好きそうだもん。ただ、こないだの都知事選のキャッチコピーは「東京大改革2.0」。「2.0」って、確かにはやってたけど、いまさら!? 「ちょっと百合子、鈍ってきてるんじゃない?」とガックリきたよ。
B そうやって成り上がってきた百合子だけど、本書では「右頬の赤いアザ」がコンプレックスになっていたと何度も書かれているね。私、これはこじつけ感があるように思う。本人は、そんなにネガティブにとらえていたのかな? 著者の思い込みが強いように感じた。
C 中高生時代の写真については「眉よりも細い、小さな眼」と表現していたのに、カイロ大留学時代にルームシェアをしていた「早川さん」が後に百合子の著書の表紙を見たときは「目頭から、くっきりと線の入った大きな二重瞼、粒の揃った白い歯」「早川さんが知る小池百合子とは、あまりにも顔が違って見えた。著者紹介欄を読むと、やはり自分の知る『小池百合子』のようだった」と書かれていて、暗に整形を指摘してたよね。容姿にコンプレックスがあったようにしたいんだろうけど、私もそんなわかりやすい動機で今の百合子が作られたわけではないと思う。
B 母親が「アザがあるから良縁には恵まれない」「手に職を持って自立するように」と強く言っていたというから、自分でも「そんなにヤバいのかな」と思い始めた可能性はあるね。周辺から言われ続けると、呪縛になっちゃうからね。貧乏な庶民なのに、お嬢さん学校の甲南女子中高に入学させられたのは、気の毒だったな。百合子に同情しちゃった。
C 上流階級の生活を知らなかったら憧れることもないのに、学校で本物のお嬢様と机を並べているから野心が爆発したのかな? 本書に登場する甲南の元同級生はみんな「ラージはとにかく英語がペラペラ」「ラージは気遣いの人」と、当時の愛称・ラージで好意的なコメントをしてたのが印象的で。中高時代にすでに英語がペラペラなんて、相当勉強を頑張ったんだろうね。そんな努力家なのに、なぜカイロでは勉強しなかったんだろう?
全員 確かに(笑)!
B オジサンみたいなヒドいことを言うけど、カイロで男を知ったとか……?
C 男と遊びまくったことで、「努力するより女を使ったほうがいい」と味をしめたのかもね。甲南時代の努力を続けていれば、何年かかろうとカイロ大学をちゃんと卒業できただろうに……。
A 百合子の名シーンの一つだと思うのが、阪神淡路大震災で家を失った被災者の女性が窮状を訴えたところ、マニキュアを塗りながら応じて「もうマニキュア、塗り終わったから帰ってくれます?」と言ったというエピソード(1996年)。人情のかけらもなくて震えた。百合子、ホントすごいよね。
全員 すごい。
B 北朝鮮拉致被害者の記者会見が終わった後、被害者家族がいる前で「私のバッグがない」「あったー、私のバッグ、拉致されたかと思った」と言ったというエピソード(02年)もすごい。こんな人がいるんだと信じられない。
全員 すごい(笑)。
B 13年には玉城デニー(当時は衆議院議員、現沖縄県知事)に対して「日本語読めるんですか」「日本語わかるんですか」というとんでもない差別的ヤジを飛ばしている。
C 19年には、東京オリンピックのマラソンについて「涼しい所でと言うなら北方領土で」と発言。散々イメージを大事にしてきた人なのに、なんでそういうことを言うのかが不思議じゃない? 戦略家だけど天然か、よほど他人の心が考えられない人なんだろうね。
B そういえば、小学5年生の時に校内の弁論大会で優勝したときのタイトルが「ウソも方便」だったんでしょ? 小5でその精神が宿ってるって、気合と年季が違う。百合子って、政治家じゃなければ素晴らしいエンターテイナーだと思う。
C 名人芸のようだよね。水俣病関西訴訟最高裁判決で、原告の水俣病患者に対して官僚が作った原稿を棒読みしたり(04年)、沖縄の基地問題については「沖縄のマスコミは理想主義で現実と乖離している」と発言したり(06年)、いろいろと「クズだな」と思うエピソードはあるんだけど、16年の都知事選で石原慎太郎を打ち負かして自民党推薦候補を大敗させたというのを見ると、グッときちゃう。かっこいい。百合子のこと、嫌いになれないんだよね。
――後編につづく(10月11日公開)