少年犯罪や非行少女は他人事じゃない【刑務所のアイドルPaix2(ペペ)×元レディース・中村すえこ】

 元レディースの総長で少年院送致の経験もある中村すえこさんが監修・監督を務めた教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』が完成、上映会が続いている。映画では、少年院を出院(≒卒業)する直前の4人の少女が中村さんに収容の経緯や今の思いを明かし、一部に再現ドラマも織り込んだ。今回、少年院や刑務所の慰問で「Prisonコンサート」を続けている“刑務所のアイドル”こと女性デュオPaix2(ペペ)のお2人と中村さんが対談。前編では、少年院の少女たちの家庭環境や更生について話を聞いたが、後編では、それぞれの活動を続ける意味と今後について語ってもらった。

(前編はこちら)

■やり直したいと思っている子たちを応援したい

――後編では、映画のお話とともに、中村さんとPaix2(ペペ)のお2人の活動についてもお聞きしたいと思います。作品は商業映画ではなく、クラウドファンディングや寄付を募って資金を集めて「教育映画」として製作されていますね。

中村すえこ(以下、中村) はい。学校などでの上映も目指しているので、入場料は無料です。今後も月に1回ほどのペースで無料上映会を予定しています。

――中村さんは、少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加されて女子少年院での講話を続けていらっしゃるほか、働くシングルマザーで、大学生でもあるんですね。

中村 はい。国内にある9カ所の女子少年院全部に伺いました。「人生、何度でもやり直せるよ。この私だってできたから、大丈夫!」というようなお話をさせていただいています。やり直したいと思っている子たちを応援したいですね。大学では、社会科の高校教員免許を取得するために学んでいます。大学の授業でライフストーリーを語る機会があり、私が少年院時代のことを含めて話した時に、「非行は他人事ではない」と、周りの学生たちにも理解してもらえたんです。直接話すことや映像は伝わるんだなと、改めて思いましたね。

――Paix2(ペペ)のお2人は、全国の少年院や刑務所での「Prisonコンサート」の活動とともに、保護司、矯正支援官としてもご活躍です。

Megumi(井勝めぐみ) はい。2014年に保護司、15年に矯正支援官に就任させていただき、今年は7月から北海道・月形町の「観光典獄」にも任命していただきました。典獄とは所長のことです。

Manami(北尾真奈美) 保護司の仕事を通じて、加害者である受刑者の皆さんと被害者の皆さんとの間にいる「第三者的な立場」が重要だと実感しています。

――なるほど。少年院や刑務所の収容者を励ます時に、被害者の方にも思いをはせられているんですね。「Prisonコンサート」はボランティアで行われているそうですが、採算は合うんですか?

Megumi まったく合いません(笑)。矯正支援官は交通費と宿泊費など実費はいただけますけど、全額を賄えるほどではないんです。

Manami それでも続けているのは、いろんな出会いがあるからですね。出所した方がコンサートに来てくださったり、CDを買ってくださったりすると、「この方は、もう再犯することはないんだな」と思います。

Megumi 私たちの音楽活動を知って、お米を送ってくださる方もいて。コンサートを通じて、人の心の温かさをたくさん知ることもできました。

――すばらしいことですね。お2人は、歌手になる前に、別のお仕事をされていたんですよね。

Manami はい、私は大学の研究室にいて、Megumiは看護師でした。別々に「日本縦断カラオケ選抜歌謡祭」の鳥取大会に出場して、主催者から「デュオでやってみてはどうか」と声をかけられたんです。

――今のマネジャーさんですね。デビュー後は、地元のテレビやラジオに出演されて、「一日警察署長」も務められています。

Manami それで、署長さんから「歌がさわやかだから、刑務所で慰問をしてはどうか」と言われたんです。

――怖くなかったんですか?

Megumi 怖かったというより、最初は刑務所の雰囲気に圧倒されて、とても緊張しました。

Manami 今はだいぶ変わりましたけど、以前はみんな灰色の服装で、色のない世界だったんです。

Megumi 慰問の際、受刑者の皆さんに許されているのは、歌い終わった後の拍手だけ。それ以外は何もしてはいけないので、とても静かで。「私たちがコンサートして、本当によかったのかな」って落ち込みました。でも、あとで感想文をいただいて、「楽しかったんだ……」とわかりました。

中村 それが今では刑務所のアイドルですからね。ストーカーとか、怖い思いはしないんですか(笑)?

Manami・Megumi (2人同時に)今のところはないです(笑)。

Megumi 一般のライブの時に、物販コーナーに黙って1万円札を置いて立ち去っていく人がいて。慌てて追いかけると、「いや、何かの足しにしてください」と言って帰っていかれました。

――その方も、元受刑者さんなのでしょうね。

Megumi たぶんそうだと思います。

中村 でも、1万円札を置いていけるということは、出所後も生活できてるということですよね。

Manami そう思います。刑務所でもらう「作業報奨金」の封筒を、封を切らずに持ってきてくださった方もいらっしゃいます。さすがにいただけなくて、福祉施設に寄付させていただきました。

中村 報奨金はすごいですね(笑)。いろんな方に応援されているんですね。お2人が、お金が目当てじゃないって伝わっているんでしょうね。

――最近の少年犯罪についてもお聞きします。少子化の影響で少年院の収容者数も減り、全国の施設で統廃合が進んでいると報じられていますね。一方で、少年犯罪の件数自体は減っていても、「振り込め詐欺」の受け子などで摘発される子どもたちは増えています。警察庁の調査などによると、刑法犯で摘発された少年は2万3,489人で、戦後最少を更新しています。でも、振り込め詐欺事件で2018年の1年間に摘発された20歳未満の少年は750人、前年の約1.6倍に上り、約8割が現金受け取り役の「受け子」です。

中村 最近の「受け子」にはワルっぽくない、いわゆる普通のイケメンふうの男の子も多いようです。罪の意識がないのでしょうね。建設現場で一日汗を流して働いても1万円にもならないのに、「受け子」なら2万円か3万円くらいにはなりますから、真面目に働く気はなくなりますよ。少女の売春も同じで、短時間で高額のお金をもらえますから、検挙されても、また同じことを繰り返します。摘発の件数は減っていても、再犯者は多いんですね。また、薬物犯罪も増えています。

――警視庁管内での大麻取締法違反の検挙件数は6年連続で増加しており、少女の覚せい剤取締法違反の事案も後を絶たないようですね(警視庁生活安全部少年育成課・平成30年中の「少年育成活動の概況」)。しかし、中村さんと、Paix2(ペペ)のお2人の「失敗しても人生を諦めないで、前を向いて歩いてほしい」というメッセージは、多くの方に伝わっていくと思います。

中村 はい。少年院に入って、社会に出て、また失敗しても諦めないでほしいです。映画にも、そういう思いを込めています。

Manami 私たちも「元気だせよ」をはじめとして、刑務所や少年院だけではなく、いろいろな方への応援歌をたくさん作っているので、ぜひ一般の方にも聴いていただきたいです。

――お2人の夢は、『NHK紅白歌合戦』への出場だそうですね。

Megumi はい、それだけが夢ではありませんが、もしも、そのような機会があれば、刑務所のグラウンドからの中継で出演させてほしいです。紅白は、大みそかの家族だんらんの象徴です。社会の皆さんに、幸せとはどういうことかを考えてもらえる機会になるのではないかと思うからです。塀の中で過ごす人もいれば、家族と過ごす人もいる。幸せの対比を幅広く伝えることができれば、少しでも犯罪の抑止につながるのではないかと思っています。

――ありがとうございました。

Paix2(ペペ)
Manami(マナミ、北尾真奈美)とMegumi(メグミ、井勝めぐみ)によるデュオ。01年に日本コロムビアよりメジャーデビュー。アルバムに『逢えたらいいな』(05年)、著書に『逢えたらいいな―プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり』(12年、鹿砦社)など。デビュー1年前から全国の刑務所や少年院などでの公演「Prisonコンサート」を続け、「受刑者のアイドル」と呼ばれる。14年に保護司、15年に矯正支援官に就任。16年 には「Prisonコンサート」400回の功績に対して法務大臣より感謝状を授与された。ユニット名はフランス語で「平和」を意味するpaix (発音は「ぺ」)を二つ重ねている。2019年7月より北海道・月形町の「月形観光大使(観光典獄)」に就任。「典獄」は「刑務所長」の意。
公式サイト

中村すえこ
ドキュメンタリー教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』監修・監督。15歳で少女たちの暴走族・レディースの総長となり、傷害事件を起こして少年院に1年間収容される。結婚、出産、離婚を経験してシングルマザーとして働きながら、09年に創設された少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加、多くの出院者と交流を続ける。著書『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(08年、ミリオン出版)が『ハードライフ~紫の青春・恋と喧嘩と特攻服~』(関顕嗣監督)として11年に映画化。
『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』公式サイト
法務省東京矯正管区主催上映会
日程:2019年9月22日(日)
場所:矯正研修所講堂(東京都昭島市もくせいの杜2-1-20)
上映時間:上映開始11:10〜中村すえこ舞台挨拶(終了13:10)
入場料:無料
主催:東京矯正管区
問い合わせ:東京矯正管区第三部 048-600-1500

少年犯罪や非行少女は他人事じゃない【刑務所のアイドルPaix2(ペペ)×元レディース・中村すえこ】

 元レディースの総長で少年院送致の経験もある中村すえこさんが監修・監督を務めた教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』が完成、上映会が続いている。映画では、少年院を出院(≒卒業)する直前の4人の少女が中村さんに収容の経緯や今の思いを明かし、一部に再現ドラマも織り込んだ。今回、少年院や刑務所の慰問で「Prisonコンサート」を続けている“刑務所のアイドル”こと女性デュオPaix2(ペペ)のお2人と中村さんが対談。前編では、少年院の少女たちの家庭環境や更生について話を聞いたが、後編では、それぞれの活動を続ける意味と今後について語ってもらった。

(前編はこちら)

■やり直したいと思っている子たちを応援したい

――後編では、映画のお話とともに、中村さんとPaix2(ペペ)のお2人の活動についてもお聞きしたいと思います。作品は商業映画ではなく、クラウドファンディングや寄付を募って資金を集めて「教育映画」として製作されていますね。

中村すえこ(以下、中村) はい。学校などでの上映も目指しているので、入場料は無料です。今後も月に1回ほどのペースで無料上映会を予定しています。

――中村さんは、少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加されて女子少年院での講話を続けていらっしゃるほか、働くシングルマザーで、大学生でもあるんですね。

中村 はい。国内にある9カ所の女子少年院全部に伺いました。「人生、何度でもやり直せるよ。この私だってできたから、大丈夫!」というようなお話をさせていただいています。やり直したいと思っている子たちを応援したいですね。大学では、社会科の高校教員免許を取得するために学んでいます。大学の授業でライフストーリーを語る機会があり、私が少年院時代のことを含めて話した時に、「非行は他人事ではない」と、周りの学生たちにも理解してもらえたんです。直接話すことや映像は伝わるんだなと、改めて思いましたね。

――Paix2(ペペ)のお2人は、全国の少年院や刑務所での「Prisonコンサート」の活動とともに、保護司、矯正支援官としてもご活躍です。

Megumi(井勝めぐみ) はい。2014年に保護司、15年に矯正支援官に就任させていただき、今年は7月から北海道・月形町の「観光典獄」にも任命していただきました。典獄とは所長のことです。

Manami(北尾真奈美) 保護司の仕事を通じて、加害者である受刑者の皆さんと被害者の皆さんとの間にいる「第三者的な立場」が重要だと実感しています。

――なるほど。少年院や刑務所の収容者を励ます時に、被害者の方にも思いをはせられているんですね。「Prisonコンサート」はボランティアで行われているそうですが、採算は合うんですか?

Megumi まったく合いません(笑)。矯正支援官は交通費と宿泊費など実費はいただけますけど、全額を賄えるほどではないんです。

Manami それでも続けているのは、いろんな出会いがあるからですね。出所した方がコンサートに来てくださったり、CDを買ってくださったりすると、「この方は、もう再犯することはないんだな」と思います。

Megumi 私たちの音楽活動を知って、お米を送ってくださる方もいて。コンサートを通じて、人の心の温かさをたくさん知ることもできました。

――すばらしいことですね。お2人は、歌手になる前に、別のお仕事をされていたんですよね。

Manami はい、私は大学の研究室にいて、Megumiは看護師でした。別々に「日本縦断カラオケ選抜歌謡祭」の鳥取大会に出場して、主催者から「デュオでやってみてはどうか」と声をかけられたんです。

――今のマネジャーさんですね。デビュー後は、地元のテレビやラジオに出演されて、「一日警察署長」も務められています。

Manami それで、署長さんから「歌がさわやかだから、刑務所で慰問をしてはどうか」と言われたんです。

――怖くなかったんですか?

Megumi 怖かったというより、最初は刑務所の雰囲気に圧倒されて、とても緊張しました。

Manami 今はだいぶ変わりましたけど、以前はみんな灰色の服装で、色のない世界だったんです。

Megumi 慰問の際、受刑者の皆さんに許されているのは、歌い終わった後の拍手だけ。それ以外は何もしてはいけないので、とても静かで。「私たちがコンサートして、本当によかったのかな」って落ち込みました。でも、あとで感想文をいただいて、「楽しかったんだ……」とわかりました。

中村 それが今では刑務所のアイドルですからね。ストーカーとか、怖い思いはしないんですか(笑)?

Manami・Megumi (2人同時に)今のところはないです(笑)。

Megumi 一般のライブの時に、物販コーナーに黙って1万円札を置いて立ち去っていく人がいて。慌てて追いかけると、「いや、何かの足しにしてください」と言って帰っていかれました。

――その方も、元受刑者さんなのでしょうね。

Megumi たぶんそうだと思います。

中村 でも、1万円札を置いていけるということは、出所後も生活できてるということですよね。

Manami そう思います。刑務所でもらう「作業報奨金」の封筒を、封を切らずに持ってきてくださった方もいらっしゃいます。さすがにいただけなくて、福祉施設に寄付させていただきました。

中村 報奨金はすごいですね(笑)。いろんな方に応援されているんですね。お2人が、お金が目当てじゃないって伝わっているんでしょうね。

――最近の少年犯罪についてもお聞きします。少子化の影響で少年院の収容者数も減り、全国の施設で統廃合が進んでいると報じられていますね。一方で、少年犯罪の件数自体は減っていても、「振り込め詐欺」の受け子などで摘発される子どもたちは増えています。警察庁の調査などによると、刑法犯で摘発された少年は2万3,489人で、戦後最少を更新しています。でも、振り込め詐欺事件で2018年の1年間に摘発された20歳未満の少年は750人、前年の約1.6倍に上り、約8割が現金受け取り役の「受け子」です。

中村 最近の「受け子」にはワルっぽくない、いわゆる普通のイケメンふうの男の子も多いようです。罪の意識がないのでしょうね。建設現場で一日汗を流して働いても1万円にもならないのに、「受け子」なら2万円か3万円くらいにはなりますから、真面目に働く気はなくなりますよ。少女の売春も同じで、短時間で高額のお金をもらえますから、検挙されても、また同じことを繰り返します。摘発の件数は減っていても、再犯者は多いんですね。また、薬物犯罪も増えています。

――警視庁管内での大麻取締法違反の検挙件数は6年連続で増加しており、少女の覚せい剤取締法違反の事案も後を絶たないようですね(警視庁生活安全部少年育成課・平成30年中の「少年育成活動の概況」)。しかし、中村さんと、Paix2(ペペ)のお2人の「失敗しても人生を諦めないで、前を向いて歩いてほしい」というメッセージは、多くの方に伝わっていくと思います。

中村 はい。少年院に入って、社会に出て、また失敗しても諦めないでほしいです。映画にも、そういう思いを込めています。

Manami 私たちも「元気だせよ」をはじめとして、刑務所や少年院だけではなく、いろいろな方への応援歌をたくさん作っているので、ぜひ一般の方にも聴いていただきたいです。

――お2人の夢は、『NHK紅白歌合戦』への出場だそうですね。

Megumi はい、それだけが夢ではありませんが、もしも、そのような機会があれば、刑務所のグラウンドからの中継で出演させてほしいです。紅白は、大みそかの家族だんらんの象徴です。社会の皆さんに、幸せとはどういうことかを考えてもらえる機会になるのではないかと思うからです。塀の中で過ごす人もいれば、家族と過ごす人もいる。幸せの対比を幅広く伝えることができれば、少しでも犯罪の抑止につながるのではないかと思っています。

――ありがとうございました。

Paix2(ペペ)
Manami(マナミ、北尾真奈美)とMegumi(メグミ、井勝めぐみ)によるデュオ。01年に日本コロムビアよりメジャーデビュー。アルバムに『逢えたらいいな』(05年)、著書に『逢えたらいいな―プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり』(12年、鹿砦社)など。デビュー1年前から全国の刑務所や少年院などでの公演「Prisonコンサート」を続け、「受刑者のアイドル」と呼ばれる。14年に保護司、15年に矯正支援官に就任。16年 には「Prisonコンサート」400回の功績に対して法務大臣より感謝状を授与された。ユニット名はフランス語で「平和」を意味するpaix (発音は「ぺ」)を二つ重ねている。2019年7月より北海道・月形町の「月形観光大使(観光典獄)」に就任。「典獄」は「刑務所長」の意。
公式サイト

中村すえこ
ドキュメンタリー教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』監修・監督。15歳で少女たちの暴走族・レディースの総長となり、傷害事件を起こして少年院に1年間収容される。結婚、出産、離婚を経験してシングルマザーとして働きながら、09年に創設された少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加、多くの出院者と交流を続ける。著書『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(08年、ミリオン出版)が『ハードライフ~紫の青春・恋と喧嘩と特攻服~』(関顕嗣監督)として11年に映画化。
『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』公式サイト
法務省東京矯正管区主催上映会
日程:2019年9月22日(日)
場所:矯正研修所講堂(東京都昭島市もくせいの杜2-1-20)
上映時間:上映開始11:10〜中村すえこ舞台挨拶(終了13:10)
入場料:無料
主催:東京矯正管区
問い合わせ:東京矯正管区第三部 048-600-1500

保育園の副園長から「娘の服装」を注意……ママ友LINEでの疎外感が「つらい」現状

今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。


 子どもを保育園に通わせているママにとって、服装や持ち物の悩みは尽きない。近年は、認可や認証など、保育園の種類も細分化されているため、とりあえず一時的に入園し、条件の良い園へと転園を繰り返しているケースや、上の子と下の子が別々の園に通っているケースなどがあるが、それぞれ園によってルールが違うため、ママは混乱してしまうという。

 関東近県にある認可保育園に、3歳になる女児を通わせている舞子さん(仮名)は、子どもの服装が原因でママ友と険悪な雰囲気になってしまったという。

 舞子さんは「うちの子は、2歳までは小規模の認証保育所に通っていました。空きが出た認可保育園に4月から転園できたのですが、そこは認証保育所とは違って、細かなルールが多かったんです。最初にもらう“入園のしおり”みたいなものは、コピーされた数ページの冊子。服装については、枚数など最低限のことしか書いていなかったため、どういう服はNGなのか、わかりませんでした」と、トラブルの発端は園の説明不足にあると語った。

「これまでの園では、チュニックやワンピースも可で、暑い日はノースリーブも大丈夫だったのですが、新しい園は、Tシャツ以外全てNG。散歩など課外活動で汗をかくため、夏は3回ほど着替えもすることもあるとかで、服の数が足りなくなってしまいました。さらに、ボトムも飾りなどがついていないズボンのみで、子どもが好きなスカートとズボンや一体化したスカッツもダメでした。先生から、口頭で注意されただけだったので、しばらくダメな服も着せて登園させていました」

 認可保育園に転園すると、すぐにリーダー格のママから、LINEのグループチャットに招待されたという。もともと、あまりメッセージを送る習慣のなかった舞子さんは、ほとんど読むだけになっているという。

「私は普段、web媒体の編集をしているのですが、土曜も在宅で仕事をしているため忙しく、LINEの通知が頻繁になるのが、正直うっとうしい時もあります……。これまでの小規模保育所では、3歳になるとみんな卒園しなければならないので、あいさつ程度の付き合いだけでした。でも認可保育園では、0歳からずっとクラスのメンバーが固定で持ち上がっているので、結束が固いんですよね」

 LINEの普及によって、ママ友同士も気軽に連絡先を交換できるようになったが、交流自体を避けることができないストレスもあるようだ。

「私はママ友付き合いが面倒なのもあって、保護者会などの行事には参加しない方針でいたんです。だいたい、保護者会の内容はグループチャットで確認できるし、前の園では、全体での保護者会などはなかったので、出席しなくても大丈夫かなと思っていました」

 しかし、今の園では保護者会や意見交換会などの集まりの後に、気の合うママ友同士でランチ会などが行われていたそうだ。

「普段のお迎えではゆっくり話す機会がないので、保護者会の後にママ同士でランチをしたりして情報交換をしているようでした。保護者会で、服装について飾りがあるようなものはダメなど、細かく注意があったため、ランチ会では娘の名前が挙がっていたようです……。お迎えなどで、同じクラスのママと会っても、なんだかよそよそしいなと感じるようになりました」

 保育園の服装は、年齢によっても、園によってもまちまちで、ルールが統一されていない。また同じ園でも、保育士の方針によっては、たとえルールに反した服装であっても、厳しく言われないケースもある。

「保育園は、入園してみないと持ち物や服装などの決まりがわかりづらい部分があり、困っています。先生によっては見て見ぬふりですし、となるとこちらも『これくらい大丈夫でしょ』という思いがあるので、どうしてもNGな服を着せてしまうんです。でも、うちの子が、フリルの付いているカットソーや、ショートパンツを穿いていると、『同じクラスの女児が着たがる』と言って、副園長から『やめてください』と直々に注意されました」

 LINEのグループチャットでは、舞子さんの娘の服装については誰も何も触れないという。彼女は、「それが逆につらいんです」と語った。

 都内で4歳になる男児を育児中の真琴さん(仮名)は、プールの帽子を入れ忘れたため、「息子だけプールに入られなかったのが悔しい」と語った。彼女の息子が通っている保育園は、夏の間、園庭に小さなビニールプールを出して学年ごとにプール遊びをしているという。

「園のプールは、子どものひざ下くらいの水位なので、泳いだりはせず、水浴び程度。今年も猛暑だったため、息子はプールの日をいつも以上に楽しみにしていました。でも、私が水泳帽を入れ忘れてしまった日があり、保育士から『プールには入れないですが、プールサイドでホースを使った水浴びができます』と言われたんです。それなら、まあいいかと思って、帽子を取りに帰る時間がなかったので、息子には『今日は水浴びだけだよ』と伝えました」

 しかし、お迎えに行くと、プールバッグの中身が使われていないことに気付いたという真琴さん。

「息子が通っている園は、先生の入れ替わりが激しくて、朝は補助の先生が対応してくれたんです。その人はルールを理解していなかったようで、実際には、水泳帽がないと水浴びも一切できないようでした。息子は風邪などで入ることができない子と一緒に、部屋で本など読んで過ごしたそうです。あれだけプールを楽しみにしていたのに、別部屋に連れていかれたと知って、思わず、『水浴びはできるって言ったじゃないですか!』と、その場で保育士を問いただしました」

 真琴さんは、2年前からこの園に通っているが、水泳帽に関するルールは初めて聞いたという。

「園側のルールが一転、二転するので、ママ友たちのグループチャットで、『帽子を忘れたら、水浴びもできないっていうルール、聞いたことがありましたか?』と聞いてみたんです。みんなモンペと思われるのが嫌なのか、『そういえばそうだったかも……』とすっきりしない返事ばかりでしたね」

 このように、ルールが明確化されていないため、混乱が生じることは少なくないというが、真琴さんは、グループチャットを見ていると、「保育園を批判するようなことを言う人はあまりいないんだな」と感じたという。幼稚園とは違い、0歳児で入園すると6年間登園する保育園において、「ママたちは、保育園となるべくトラブルを起こしたくないというのが本音かもしれませんね」。

 0歳になる男児と、1歳になる女児を育児中の光代さん(仮名)は、「持ち物が複雑すぎる。準備を夫に任せられないほどです」とため息をつく。

 光代さんが子どもを預けている園では、オムツやスタイ、口拭きタオルなど、全ての持ち物に名前を書かなければならず、前日に準備するのが一苦労だという。

「ママ友が預けている園では、オムツは園が準備したものを使うので、一個一個に名前を書く手間がないそうなんです。お昼寝のシーツも貸してもらえ、荷物も少ない。うちは外遊びの帽子も、昼寝用のシーツも全部持参しなければならず、月曜の朝は、大荷物で自転車がひっくり返りそうなんです。LINEでよく愚痴を聞いてもらってますよ」

 光代さんは、必要なものが入園前にわかれば、今の園を選ばなかったというが、実際は、行きたい園を選んで入園することは、「今の制度上、難しいのでは」と光代さん。園側も人手不足からか、事前に「何が必要か」を保護者にしっかり説明できない面もあるのかもしれない。

 そうなると、ママたちも右往左往してしまうのは致し方ない。情報交換のため、グループチャットをうまく活用できるようになるといいものだが……。
(池守りぜね)

保育園の副園長から「娘の服装」を注意……ママ友LINEでの疎外感が「つらい」現状

今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。


 子どもを保育園に通わせているママにとって、服装や持ち物の悩みは尽きない。近年は、認可や認証など、保育園の種類も細分化されているため、とりあえず一時的に入園し、条件の良い園へと転園を繰り返しているケースや、上の子と下の子が別々の園に通っているケースなどがあるが、それぞれ園によってルールが違うため、ママは混乱してしまうという。

 関東近県にある認可保育園に、3歳になる女児を通わせている舞子さん(仮名)は、子どもの服装が原因でママ友と険悪な雰囲気になってしまったという。

 舞子さんは「うちの子は、2歳までは小規模の認証保育所に通っていました。空きが出た認可保育園に4月から転園できたのですが、そこは認証保育所とは違って、細かなルールが多かったんです。最初にもらう“入園のしおり”みたいなものは、コピーされた数ページの冊子。服装については、枚数など最低限のことしか書いていなかったため、どういう服はNGなのか、わかりませんでした」と、トラブルの発端は園の説明不足にあると語った。

「これまでの園では、チュニックやワンピースも可で、暑い日はノースリーブも大丈夫だったのですが、新しい園は、Tシャツ以外全てNG。散歩など課外活動で汗をかくため、夏は3回ほど着替えもすることもあるとかで、服の数が足りなくなってしまいました。さらに、ボトムも飾りなどがついていないズボンのみで、子どもが好きなスカートとズボンや一体化したスカッツもダメでした。先生から、口頭で注意されただけだったので、しばらくダメな服も着せて登園させていました」

 認可保育園に転園すると、すぐにリーダー格のママから、LINEのグループチャットに招待されたという。もともと、あまりメッセージを送る習慣のなかった舞子さんは、ほとんど読むだけになっているという。

「私は普段、web媒体の編集をしているのですが、土曜も在宅で仕事をしているため忙しく、LINEの通知が頻繁になるのが、正直うっとうしい時もあります……。これまでの小規模保育所では、3歳になるとみんな卒園しなければならないので、あいさつ程度の付き合いだけでした。でも認可保育園では、0歳からずっとクラスのメンバーが固定で持ち上がっているので、結束が固いんですよね」

 LINEの普及によって、ママ友同士も気軽に連絡先を交換できるようになったが、交流自体を避けることができないストレスもあるようだ。

「私はママ友付き合いが面倒なのもあって、保護者会などの行事には参加しない方針でいたんです。だいたい、保護者会の内容はグループチャットで確認できるし、前の園では、全体での保護者会などはなかったので、出席しなくても大丈夫かなと思っていました」

 しかし、今の園では保護者会や意見交換会などの集まりの後に、気の合うママ友同士でランチ会などが行われていたそうだ。

「普段のお迎えではゆっくり話す機会がないので、保護者会の後にママ同士でランチをしたりして情報交換をしているようでした。保護者会で、服装について飾りがあるようなものはダメなど、細かく注意があったため、ランチ会では娘の名前が挙がっていたようです……。お迎えなどで、同じクラスのママと会っても、なんだかよそよそしいなと感じるようになりました」

 保育園の服装は、年齢によっても、園によってもまちまちで、ルールが統一されていない。また同じ園でも、保育士の方針によっては、たとえルールに反した服装であっても、厳しく言われないケースもある。

「保育園は、入園してみないと持ち物や服装などの決まりがわかりづらい部分があり、困っています。先生によっては見て見ぬふりですし、となるとこちらも『これくらい大丈夫でしょ』という思いがあるので、どうしてもNGな服を着せてしまうんです。でも、うちの子が、フリルの付いているカットソーや、ショートパンツを穿いていると、『同じクラスの女児が着たがる』と言って、副園長から『やめてください』と直々に注意されました」

 LINEのグループチャットでは、舞子さんの娘の服装については誰も何も触れないという。彼女は、「それが逆につらいんです」と語った。

 都内で4歳になる男児を育児中の真琴さん(仮名)は、プールの帽子を入れ忘れたため、「息子だけプールに入られなかったのが悔しい」と語った。彼女の息子が通っている保育園は、夏の間、園庭に小さなビニールプールを出して学年ごとにプール遊びをしているという。

「園のプールは、子どものひざ下くらいの水位なので、泳いだりはせず、水浴び程度。今年も猛暑だったため、息子はプールの日をいつも以上に楽しみにしていました。でも、私が水泳帽を入れ忘れてしまった日があり、保育士から『プールには入れないですが、プールサイドでホースを使った水浴びができます』と言われたんです。それなら、まあいいかと思って、帽子を取りに帰る時間がなかったので、息子には『今日は水浴びだけだよ』と伝えました」

 しかし、お迎えに行くと、プールバッグの中身が使われていないことに気付いたという真琴さん。

「息子が通っている園は、先生の入れ替わりが激しくて、朝は補助の先生が対応してくれたんです。その人はルールを理解していなかったようで、実際には、水泳帽がないと水浴びも一切できないようでした。息子は風邪などで入ることができない子と一緒に、部屋で本など読んで過ごしたそうです。あれだけプールを楽しみにしていたのに、別部屋に連れていかれたと知って、思わず、『水浴びはできるって言ったじゃないですか!』と、その場で保育士を問いただしました」

 真琴さんは、2年前からこの園に通っているが、水泳帽に関するルールは初めて聞いたという。

「園側のルールが一転、二転するので、ママ友たちのグループチャットで、『帽子を忘れたら、水浴びもできないっていうルール、聞いたことがありましたか?』と聞いてみたんです。みんなモンペと思われるのが嫌なのか、『そういえばそうだったかも……』とすっきりしない返事ばかりでしたね」

 このように、ルールが明確化されていないため、混乱が生じることは少なくないというが、真琴さんは、グループチャットを見ていると、「保育園を批判するようなことを言う人はあまりいないんだな」と感じたという。幼稚園とは違い、0歳児で入園すると6年間登園する保育園において、「ママたちは、保育園となるべくトラブルを起こしたくないというのが本音かもしれませんね」。

 0歳になる男児と、1歳になる女児を育児中の光代さん(仮名)は、「持ち物が複雑すぎる。準備を夫に任せられないほどです」とため息をつく。

 光代さんが子どもを預けている園では、オムツやスタイ、口拭きタオルなど、全ての持ち物に名前を書かなければならず、前日に準備するのが一苦労だという。

「ママ友が預けている園では、オムツは園が準備したものを使うので、一個一個に名前を書く手間がないそうなんです。お昼寝のシーツも貸してもらえ、荷物も少ない。うちは外遊びの帽子も、昼寝用のシーツも全部持参しなければならず、月曜の朝は、大荷物で自転車がひっくり返りそうなんです。LINEでよく愚痴を聞いてもらってますよ」

 光代さんは、必要なものが入園前にわかれば、今の園を選ばなかったというが、実際は、行きたい園を選んで入園することは、「今の制度上、難しいのでは」と光代さん。園側も人手不足からか、事前に「何が必要か」を保護者にしっかり説明できない面もあるのかもしれない。

 そうなると、ママたちも右往左往してしまうのは致し方ない。情報交換のため、グループチャットをうまく活用できるようになるといいものだが……。
(池守りぜね)

錦戸亮、ジャニーズ退所であの黒歴史再び⁉ 今後の活動に影響を与えそうな2人の男とは?

 関ジャニ∞・錦戸亮が9月末日をもってジャニーズ事務所を退所することになった。

 錦戸は会員サイトで「21年間お世話になったジャニーズ事務所を退所させて頂く運びとなりました。僕なりの形で、僕なりのエンターテイメントとは何なのかを、改めて考え、これからも発信し、恩返しできるよう努めていきたいと思います」と報告。ジャニーズの“圧力”が世間の関心を浴びるなか、今後どんな活動をしていくのか注目が集まっている。

 そんな錦戸には、今後の活動に影響を与えそうな人物が2人いるという。芸能記者が明かす。

「一人は親友である元KAT-TUN・赤西仁。彼はアジア圏で活躍しており、現在はジャニーズ時代よりも高収入を得ている。錦戸がそれに感化された部分はあるようです。そしてもう一人が俳優の山田孝之。錦戸はNetflixで配信されて話題を呼んでいる山田主演のドラマ『全裸監督』に触発されたそうで、会員向けの日記に『憧れに似た嫉妬も交えて…』と感想を綴っています。『ジャニーズのアイドル』という制約からクールなキャラや好青年の役が多かった錦戸ですが、山田のようにあらゆる役を演じられる俳優を目指しているからこその嫉妬でしょう」

 一方で、錦戸は音楽活動にも意欲的だといい、そのことから一部ではあの“黒歴史”の悪夢が甦るのではないかとの心配の声も出ているという。

「赤西と山田は2016年にユニット『JINTAKA』を結成し、デビューシングル『Choo Choo SHITAIN』をリリースしています。発売初週で約2万7000枚を売り上げるも、世間にはまったく浸透しなかった。2人がまともに歌唱しているのは『Choo Choo SHITAIN』というワードのみで、それ以外の部分は『メロメロ』『ワクワク』などの擬音語が繰り返されているのみ。視聴したファンからは批判が殺到したものでした。そんな声が耳に入ったのか、発売記念イベントでは、次曲をバラードにしたい山田とロックにしたい赤西との間に意見の相違があったことを明かし、デビュー即、解散宣言となっています。確かに、赤西つながりで錦戸との『RYOUTAKA』結成なんて可能性もありえそうですが……」(音楽ライター)

 山田と組むのなら、できればドラマや映画にしてもらいたい?

「ケーキもイケメンも小さな物語。今こそ物語が必要」脚本家・小説家、木皿泉インタビュー

 『すいか』『野ブタ。をプロデュース』(ともに日本テレビ系)、『昨夜のカレー、明日のパン』『富士ファミリー』(ともにNHK)など、熱狂的なファンを生んできたドラマの脚本家・木皿泉。放送から十数年という時を経ても、いまだにファンイベントが開催されるほど、その世界観は支持され続けている。そんな木皿泉の新作は、エッセイ集『ぱくりぱくられし』(紀伊國屋書店)。『すいか』に通じる幻の処女作『け・へら・へら』をはじめ、産経新聞などでの連載を収録した作品だ。「木皿泉」とは、妻鹿年季子(めがときこ)と和泉務(いずみつとむ)による夫婦共同執筆で用いられるペンネームだが、今回は妻の妻鹿氏に、処女作執筆時の思いや、現在の女性や人々の抱える“苦しさ”、ひいてはフィクションが持つ力について語ってもらった。

――デビュー作の『け・へら・へら』は昭和62年の作品とのことですが、今の女性もハッとさせられるフレーズが飛び交っていました。元同僚の女性2人が婚活を名目に逃避行する物語を、当時、どのような思いで書かれたのですか?

木皿泉氏(以下、木皿) その頃は、「女の人はこうあるべきだ」みたいな世間からの締め付けが、すごくつらい時代だった。今でこそセックスって、ちょっと安くなっちゃったけど、セックスというもの自体に高値がついていたというか。処女が偉いとか価値があるとか、そういう時代。いつの間にか知らないうちに、自分に値段がついちゃってる感じが、今よりも強かったのかなと思います。これを書いている時は、親が期待している「良き花嫁」みたいなものと、自分との間にギャップを感じていたし、会社で働いていても、いわゆる「OL」と自分は違う。そういうギャップが、すごくつらかったんです。

――適齢期になったら処女のまま結婚して、仕事は辞めるのが正しい、みたいな時代ですね。

木皿 私が内側から見ている自分や、私が求めている自分の姿と世の中が求める自分は違うんだけどなって思ってたんですよ。だから昔は、「自分探し」みたいなのがはやったんですけどね。でも結局、母にしてみたら、そんな小難しいことよりも、「平凡でもいいから、普通に結婚してくれたらいいのに」と。勤め先の会社からしたら、チャチャッと仕事を能率よくやってさえくれればいい。でも、そういうふうに思われていること自体が、私以外のところで自分に価値を付けられているようで嫌だった。私の価値は私がつけたい。一言で言えば、自分の稼いだお金でおいしいものを食べたりとか(笑)、そういうことをしたかったんじゃないのかなって思います。

――自分探しというと、その後しばらくしてから「等身大」という言葉が出てきましたよね。

木皿 はやりましたね。等身大ってコトバ。昔は見栄を張るのが当たり前だったから。でも、今の人たちはみんな等身大なんじゃない? さっきの話の続きになるけど、80年代は内需拡大で物を買わなきゃいけないっていう時代。バブルがあって、自分を実感よりも大きく見せなきゃいけないみたいな、結構、無理していた時代ね。自分の価値をちょっと大きく、それこそ見た目から大きく、強く見せる。だって、肩パットが入っている服を着てたんだから(笑)。

 そういえば、80年代に絶対に買いたくないって思ってたシャネルのネックレスがあって。イケイケでバブリーな人が身につけるような、大きな鎖があったの。フリーハンドで描いたような花の形のものがついたネックレスなんだけど、なんかパワーがあるんですよ。今の時代、逆に面白いなと思って、最近買ってみたのね。それを身につけると、ちょっと自分が偉くなったみたいな気分になる。等身大とは反対に、ちょっと偉そうな感じで歩けるから面白いんですよ(笑)。

――自分を大きく強く見せるために、着るもので気持ちをつくってたんですね。

木皿 ただ、そういう物を身につけていた時代なので、結構無理していたんじゃないかな。この姿は嘘の自分じゃないか? 自分が考える本当の自分は? みたいなものを探していたから「等身大」みたいな言葉がはやったのかなって思いますね。

――今回の本では、いくつかの章にわたって「承認欲求」に触れていましたよね。TwitterなどのSNSとの関わり方も承認欲求と切り離せないのですが、その欲求をコントロールするのが難しくなってきています。

木皿 私の若い頃、80年代の「結婚」っていうのは、まさに承認欲求ですよ。「結婚しない私」っていうのが不安だった。誰かに認めてもらいたいんだけど、誰かに認めてもらうには、結婚しないと認めてもらえない。今だったら、別に結婚しなくてもいいんじゃない? っていうのが一般的になったけれども、承認欲求を求める気持ちはまだ残っている。

 だからフォロワー数といった、「数字」で認められたと感じる。昔の承認欲求は、もっと抽象的なものですよ。なんていうのかな、近所のおばちゃんの評判とか、本当に周囲500メートルくらいの人たちが、自分のことを「良いお嫁さんだね」って言ってくれたら、もうそれでいいんですよね(笑)。それだけで全然生きていけるんですけど。今はもうそういう共同体もないし、結婚したらOKみたいなパスポート、黄門様の印籠みたいなのもないから。そうなると、やっぱりネットで得られる「数」。それがリアルかどうかはわからないし、本当に見てくれているかどうかもわからないけど、「いいね!」っていうのがあれば、とりあえずはOKと思えるから。

――認められたかどうか、目に見える数字で確認してしまうのは仕方ないんでしょうか?

木皿 でも、そんな数字だけの世界っていうのは、人が救いを求めている時には、あんまり助けにはならないんですよね。そうじゃないところでしか救われないから、人間って。何かを目標にがんばっていたりするときに、数字はすごく励みになって役に立つんだけど、いったんレールから外れちゃったりした時に、すごくえげつなく迫ってくるじゃない? それは例えば、視聴率とか本の販売部数といった数字で結果を測る世界と同じで、成果主義というか、そういう感じがしますよね。でも、目に見える数字だけじゃなくて、“ないもの”が支えになったりする時があるわけですよ。

――“ないもの”が支えになる、というのは?

木皿 フィクション、虚構というか。今ここにないものを想像して、それでちょっと心が豊かになったり、慰められたり、「また明日、がんばろうか」って思ったりすることがある。すべてリアルにあるものだけで賄おうとするからつらくなる。今の世界は数字だけの、言ってしまえば本当に身も蓋もないえげつない世界っていうかね、夢も希望も何もないみたいなところで、みんな生きている気がします。

 今のままでは、数字で価値が決められてしまって、本当に良いものもどんどん潰されちゃう。作っても作っても売れない、評価されないとか、商売としてまったく成り立たないとかね。ウチみたいに、商売として成り立てばOKだと思うんですよ、なんとか食べていければ。でも、それも今は難しくなっちゃってる。

――数字を中心に回っている世界に、フィクションがもっと増えると苦しみは和らぐんでしょうか?

木皿 今だって、いっぱいあるじゃないですか。でも、「数字」に太刀打ちできる物語が今はないということです。昔はあったんですよ。でもその物語が崩れたのが「ポストモダン」だと思うんです。家族も潰れるし、学校も病院も効率の悪い所は潰れるしかない。80年代に、こういう時代が来るぞ来るぞとずっと言われ続けてきた。けど、その時はうまくイメージできなかった。なってみて、なるほどこういうことかと思った。

――数字や効率性が優先されすぎた結果、共同体が潰れて物語を持てなくなってしまった。

木皿 やっぱり両方必要なんじゃないかな。小さいフィクションはみんな持っていると思う。その日その日、男前を見たら癒やされる、800円のスイーツで癒やされるっていうのもフィクションだから。特別なデコレーションとか、普段食べないようなチョコレートとか、こんな珍しい果物使ってます、みたいな物語がある。日常の本当にちっちゃなフィクションね。でも、それは傷口に絆創膏を貼るみたいなもので、昔みたいに大きなフィクションはもうない。「働き方改革」で余暇の時間が増えたとしても、夢をみたり希望を持ったりとか、そうしたことが極端になくなってしまっている。

――そういう意味での小さなフィクションは、今の世の中に豊富にありますね。大きなフィクションというのは?

木皿 例えば昔で言うなら「立身出世」ですよね。自分が偉くなって社会的地位も高くなる。地位が高くなって何するのかって言ったら、良い家に住んだりとか車を買ったりとか、交際費がちょっとたくさん使えるようになったから、ちょっと良いところでご飯食べるとか、そんなことしかないわけなんですけどね(笑)。たぶんそういうことに気づいちゃったのね。がんばっても、その程度の幸せなんだって。

 昔のそういう立身出世物語のような、誰もがその目標に向かってがんばるという「大きな物語」がぜんぶ崩れちゃったから、自分たちでその物語を作らなきゃいけない。みんなが信じられる、それは価値があるなぁという物語っていうか。でも、もう同じ物語を日本人全員が持つっていうこと自体が難しくなってるから。いろんな価値観があるからね。

 だから、みんなが安心して暮らせるような、誰にもしわ寄せがいかない、無理なく楽しく生きていけるような、そういう物語をどこかで作っていかないと、逃げ場所がない。イケメンを見たら癒やされるとかは、ほんとにささやかな逃げ場所だと思います。日常よりちょっとだけ盛られた感じのもの。実際にはあり得ないもの。そんなものを見て、ちょっと自分を癒やしたり、明日もがんばろうと活を入れるっていうのかな? なんか今の人たちは、そんな感じがしますね。インスタグラムも、同じなのかなって思いますね。

――インスタグラムはフォロワーの数で承認を得る一方で、手軽なフィクションでもあるんですね。

木皿 フィクションなんですよね。それは日常じゃない私。それはそれでいいんだけど、その日暮らしのバンドエイドみたいなフィクションだから。スイーツとかイケメンとかインスタグラムを絆創膏として貼り続ける中で、何年かたって「ハッ」と気づいた時に、「え! ほんとは何もないんだ」「私を支えてるものって、貯金通帳の金額だけ」とか、そんなふうになった時、「ちょっともう無理」と思う時も来たりするわけよ、人間って不思議なもので(笑)。「お金はこんなに持ってるのに不幸」みたいなことって、多分あると思うの。

 そういう意味じゃ、そのことに少しでも疑問を感じたり、不安を感じたりして、スイーツとかでやっていくのも「もう、いっぱいいっぱいです」みたいな人には、私が書いてるものもバンドエイドのようなものではあるけど、それよりもう少しだけ長く効くフィクションになればいいなって。そのためにやっているような気はします。

――木皿作品が、熱狂的に支持されているのもそうしたところにあるんでしょうね。

木皿 いやでもね、まだ必要な人に届いてないと思ってるんですけどね。私は、舞台やドラマや小説、あとアニメもつくったりしているんです。漫画原作も、話がくればたぶんやる。テレビしか見ない人、本しか読まない人、スマホだけの人とか、みんないろいろですからね。いろんなジャンルでやっていくことは、いろんな人に、自分のつくった物語を「こんなの救いになりませんか?」と提出することだと思っていて。そういう仕事の仕方も悪くないなって思っています。

木皿泉(きさら・いずみ)
和泉務と妻鹿年季子による夫婦脚本家。第22回向田邦子賞を受賞した『すいか』(03年)をはじめ、『野ブタをプロデュース。』(05年)『セクシーボイスアンドロボ』(07年)『Q10』(10年)「富士ファミリー」(16年)などのドラマを手がける。著書は『昨夜のカレー、明日のパン』(河出書房新社)『さざなみのよる』(同)『カゲロボ』(新潮社)など多数。

「ケーキもイケメンも小さな物語。今こそ物語が必要」脚本家・小説家、木皿泉インタビュー

 『すいか』『野ブタ。をプロデュース』(ともに日本テレビ系)、『昨夜のカレー、明日のパン』『富士ファミリー』(ともにNHK)など、熱狂的なファンを生んできたドラマの脚本家・木皿泉。放送から十数年という時を経ても、いまだにファンイベントが開催されるほど、その世界観は支持され続けている。そんな木皿泉の新作は、エッセイ集『ぱくりぱくられし』(紀伊國屋書店)。『すいか』に通じる幻の処女作『け・へら・へら』をはじめ、産経新聞などでの連載を収録した作品だ。「木皿泉」とは、妻鹿年季子(めがときこ)と和泉務(いずみつとむ)による夫婦共同執筆で用いられるペンネームだが、今回は妻の妻鹿氏に、処女作執筆時の思いや、現在の女性や人々の抱える“苦しさ”、ひいてはフィクションが持つ力について語ってもらった。

――デビュー作の『け・へら・へら』は昭和62年の作品とのことですが、今の女性もハッとさせられるフレーズが飛び交っていました。元同僚の女性2人が婚活を名目に逃避行する物語を、当時、どのような思いで書かれたのですか?

木皿泉氏(以下、木皿) その頃は、「女の人はこうあるべきだ」みたいな世間からの締め付けが、すごくつらい時代だった。今でこそセックスって、ちょっと安くなっちゃったけど、セックスというもの自体に高値がついていたというか。処女が偉いとか価値があるとか、そういう時代。いつの間にか知らないうちに、自分に値段がついちゃってる感じが、今よりも強かったのかなと思います。これを書いている時は、親が期待している「良き花嫁」みたいなものと、自分との間にギャップを感じていたし、会社で働いていても、いわゆる「OL」と自分は違う。そういうギャップが、すごくつらかったんです。

――適齢期になったら処女のまま結婚して、仕事は辞めるのが正しい、みたいな時代ですね。

木皿 私が内側から見ている自分や、私が求めている自分の姿と世の中が求める自分は違うんだけどなって思ってたんですよ。だから昔は、「自分探し」みたいなのがはやったんですけどね。でも結局、母にしてみたら、そんな小難しいことよりも、「平凡でもいいから、普通に結婚してくれたらいいのに」と。勤め先の会社からしたら、チャチャッと仕事を能率よくやってさえくれればいい。でも、そういうふうに思われていること自体が、私以外のところで自分に価値を付けられているようで嫌だった。私の価値は私がつけたい。一言で言えば、自分の稼いだお金でおいしいものを食べたりとか(笑)、そういうことをしたかったんじゃないのかなって思います。

――自分探しというと、その後しばらくしてから「等身大」という言葉が出てきましたよね。

木皿 はやりましたね。等身大ってコトバ。昔は見栄を張るのが当たり前だったから。でも、今の人たちはみんな等身大なんじゃない? さっきの話の続きになるけど、80年代は内需拡大で物を買わなきゃいけないっていう時代。バブルがあって、自分を実感よりも大きく見せなきゃいけないみたいな、結構、無理していた時代ね。自分の価値をちょっと大きく、それこそ見た目から大きく、強く見せる。だって、肩パットが入っている服を着てたんだから(笑)。

 そういえば、80年代に絶対に買いたくないって思ってたシャネルのネックレスがあって。イケイケでバブリーな人が身につけるような、大きな鎖があったの。フリーハンドで描いたような花の形のものがついたネックレスなんだけど、なんかパワーがあるんですよ。今の時代、逆に面白いなと思って、最近買ってみたのね。それを身につけると、ちょっと自分が偉くなったみたいな気分になる。等身大とは反対に、ちょっと偉そうな感じで歩けるから面白いんですよ(笑)。

――自分を大きく強く見せるために、着るもので気持ちをつくってたんですね。

木皿 ただ、そういう物を身につけていた時代なので、結構無理していたんじゃないかな。この姿は嘘の自分じゃないか? 自分が考える本当の自分は? みたいなものを探していたから「等身大」みたいな言葉がはやったのかなって思いますね。

――今回の本では、いくつかの章にわたって「承認欲求」に触れていましたよね。TwitterなどのSNSとの関わり方も承認欲求と切り離せないのですが、その欲求をコントロールするのが難しくなってきています。

木皿 私の若い頃、80年代の「結婚」っていうのは、まさに承認欲求ですよ。「結婚しない私」っていうのが不安だった。誰かに認めてもらいたいんだけど、誰かに認めてもらうには、結婚しないと認めてもらえない。今だったら、別に結婚しなくてもいいんじゃない? っていうのが一般的になったけれども、承認欲求を求める気持ちはまだ残っている。

 だからフォロワー数といった、「数字」で認められたと感じる。昔の承認欲求は、もっと抽象的なものですよ。なんていうのかな、近所のおばちゃんの評判とか、本当に周囲500メートルくらいの人たちが、自分のことを「良いお嫁さんだね」って言ってくれたら、もうそれでいいんですよね(笑)。それだけで全然生きていけるんですけど。今はもうそういう共同体もないし、結婚したらOKみたいなパスポート、黄門様の印籠みたいなのもないから。そうなると、やっぱりネットで得られる「数」。それがリアルかどうかはわからないし、本当に見てくれているかどうかもわからないけど、「いいね!」っていうのがあれば、とりあえずはOKと思えるから。

――認められたかどうか、目に見える数字で確認してしまうのは仕方ないんでしょうか?

木皿 でも、そんな数字だけの世界っていうのは、人が救いを求めている時には、あんまり助けにはならないんですよね。そうじゃないところでしか救われないから、人間って。何かを目標にがんばっていたりするときに、数字はすごく励みになって役に立つんだけど、いったんレールから外れちゃったりした時に、すごくえげつなく迫ってくるじゃない? それは例えば、視聴率とか本の販売部数といった数字で結果を測る世界と同じで、成果主義というか、そういう感じがしますよね。でも、目に見える数字だけじゃなくて、“ないもの”が支えになったりする時があるわけですよ。

――“ないもの”が支えになる、というのは?

木皿 フィクション、虚構というか。今ここにないものを想像して、それでちょっと心が豊かになったり、慰められたり、「また明日、がんばろうか」って思ったりすることがある。すべてリアルにあるものだけで賄おうとするからつらくなる。今の世界は数字だけの、言ってしまえば本当に身も蓋もないえげつない世界っていうかね、夢も希望も何もないみたいなところで、みんな生きている気がします。

 今のままでは、数字で価値が決められてしまって、本当に良いものもどんどん潰されちゃう。作っても作っても売れない、評価されないとか、商売としてまったく成り立たないとかね。ウチみたいに、商売として成り立てばOKだと思うんですよ、なんとか食べていければ。でも、それも今は難しくなっちゃってる。

――数字を中心に回っている世界に、フィクションがもっと増えると苦しみは和らぐんでしょうか?

木皿 今だって、いっぱいあるじゃないですか。でも、「数字」に太刀打ちできる物語が今はないということです。昔はあったんですよ。でもその物語が崩れたのが「ポストモダン」だと思うんです。家族も潰れるし、学校も病院も効率の悪い所は潰れるしかない。80年代に、こういう時代が来るぞ来るぞとずっと言われ続けてきた。けど、その時はうまくイメージできなかった。なってみて、なるほどこういうことかと思った。

――数字や効率性が優先されすぎた結果、共同体が潰れて物語を持てなくなってしまった。

木皿 やっぱり両方必要なんじゃないかな。小さいフィクションはみんな持っていると思う。その日その日、男前を見たら癒やされる、800円のスイーツで癒やされるっていうのもフィクションだから。特別なデコレーションとか、普段食べないようなチョコレートとか、こんな珍しい果物使ってます、みたいな物語がある。日常の本当にちっちゃなフィクションね。でも、それは傷口に絆創膏を貼るみたいなもので、昔みたいに大きなフィクションはもうない。「働き方改革」で余暇の時間が増えたとしても、夢をみたり希望を持ったりとか、そうしたことが極端になくなってしまっている。

――そういう意味での小さなフィクションは、今の世の中に豊富にありますね。大きなフィクションというのは?

木皿 例えば昔で言うなら「立身出世」ですよね。自分が偉くなって社会的地位も高くなる。地位が高くなって何するのかって言ったら、良い家に住んだりとか車を買ったりとか、交際費がちょっとたくさん使えるようになったから、ちょっと良いところでご飯食べるとか、そんなことしかないわけなんですけどね(笑)。たぶんそういうことに気づいちゃったのね。がんばっても、その程度の幸せなんだって。

 昔のそういう立身出世物語のような、誰もがその目標に向かってがんばるという「大きな物語」がぜんぶ崩れちゃったから、自分たちでその物語を作らなきゃいけない。みんなが信じられる、それは価値があるなぁという物語っていうか。でも、もう同じ物語を日本人全員が持つっていうこと自体が難しくなってるから。いろんな価値観があるからね。

 だから、みんなが安心して暮らせるような、誰にもしわ寄せがいかない、無理なく楽しく生きていけるような、そういう物語をどこかで作っていかないと、逃げ場所がない。イケメンを見たら癒やされるとかは、ほんとにささやかな逃げ場所だと思います。日常よりちょっとだけ盛られた感じのもの。実際にはあり得ないもの。そんなものを見て、ちょっと自分を癒やしたり、明日もがんばろうと活を入れるっていうのかな? なんか今の人たちは、そんな感じがしますね。インスタグラムも、同じなのかなって思いますね。

――インスタグラムはフォロワーの数で承認を得る一方で、手軽なフィクションでもあるんですね。

木皿 フィクションなんですよね。それは日常じゃない私。それはそれでいいんだけど、その日暮らしのバンドエイドみたいなフィクションだから。スイーツとかイケメンとかインスタグラムを絆創膏として貼り続ける中で、何年かたって「ハッ」と気づいた時に、「え! ほんとは何もないんだ」「私を支えてるものって、貯金通帳の金額だけ」とか、そんなふうになった時、「ちょっともう無理」と思う時も来たりするわけよ、人間って不思議なもので(笑)。「お金はこんなに持ってるのに不幸」みたいなことって、多分あると思うの。

 そういう意味じゃ、そのことに少しでも疑問を感じたり、不安を感じたりして、スイーツとかでやっていくのも「もう、いっぱいいっぱいです」みたいな人には、私が書いてるものもバンドエイドのようなものではあるけど、それよりもう少しだけ長く効くフィクションになればいいなって。そのためにやっているような気はします。

――木皿作品が、熱狂的に支持されているのもそうしたところにあるんでしょうね。

木皿 いやでもね、まだ必要な人に届いてないと思ってるんですけどね。私は、舞台やドラマや小説、あとアニメもつくったりしているんです。漫画原作も、話がくればたぶんやる。テレビしか見ない人、本しか読まない人、スマホだけの人とか、みんないろいろですからね。いろんなジャンルでやっていくことは、いろんな人に、自分のつくった物語を「こんなの救いになりませんか?」と提出することだと思っていて。そういう仕事の仕方も悪くないなって思っています。

木皿泉(きさら・いずみ)
和泉務と妻鹿年季子による夫婦脚本家。第22回向田邦子賞を受賞した『すいか』(03年)をはじめ、『野ブタをプロデュース。』(05年)『セクシーボイスアンドロボ』(07年)『Q10』(10年)「富士ファミリー」(16年)などのドラマを手がける。著書は『昨夜のカレー、明日のパン』(河出書房新社)『さざなみのよる』(同)『カゲロボ』(新潮社)など多数。

元女囚が考える「更生」――北欧の刑務所やピンク色のムショは効果ある?

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■老朽化したムショの建て替え

 最近のムショは世界的にも老人ホーム状態……ゆうのはよく聞きますね。少子高齢化もですが、ムショはお年寄りの「最後の居場所」になってるのとちゃいますかね。私が服役していた頃も、万引専門のおばあちゃんとか、ようけいてました。もちろん子どもは減ってますから、少年院はどんどんなくなってます。悪いコが減っているというよりは、子ども全体が少ないだけですけどね。

 でも、そんなことより、古くなったムショがどんどん建て替えられているというニュースのほうが気になっています。「老朽化」を理由にしていて、防災の意味もあるんでしょうが、テレビで見る限り、めっちゃ快適そうです。ホンマうらやましい……。

■「北風と太陽」は正しい?

 日本のムショもだいぶきれいになってきましたが、快適な刑務所で有名なのは、やっぱり北欧ですね。北欧では死刑はなく、服役囚の人権もちゃんと守られているそうです。ネットには、清潔なトイレやジムなどを備えた快適なムショがいろいろ紹介されています。

 まあ優しいのは初犯だけで、さすがに累犯の懲役には厳しい施設もあるそうです。「こんな豪華な刑務所を、税金を使って造るとはけしからん」的な話もよく聞きますが、皆さんはどう思われますか?

 こういう快適なムショを造る理由は、「罪を犯すような人は、差別や貧困など悲惨な環境で育った」→「こんな人に厳しくするのは逆効果」→「人間らしい生活を送れれば、更生も早い」との考えやそうです。

 これって、子どもの頃に絵本で読んだイソップの「北風と太陽」のお話ですよね。北風と太陽が旅人のコートを脱がせようとするアレです。北風が強い風を吹きつけたら、旅人はコートをぎゅっとつかんで飛ばされないようにしたため、脱がすことはできなかったけど、太陽がぽかぽかと光を当てたら、すぐに脱いだんですね。

 厳しくされたら余計にガンコになりますが、懲役も温かく見守れば優しい人になるそうで、実際に北欧では、日本やアメリカと比べて再犯率もかなり低いそうです。ちなみに、これはカウントの仕方がバラバラなので、簡単な比較はできないそうです(と編集者さんが言うてました)。

 世界では、施設をピンク色にするムショも増えているそうです。ピンク色は攻撃的な気分を弱める効果があるそうです。でも、「子ども部屋か!」と怒る懲役もいるらしいです。罪人のくせに怒る筋合いはないと思いますが、ごっついオッサンがちょこんとピンク色のお部屋に座ってたら、かわいいかもしれません。いやキモいだけか。

 日本のムショは、まだまだ「太陽的なところ」は少ない気がしますね。更生のための教育ではなくて「罰を与える」感がアリアリです。それに、何かにつけて「あなたたちは税金で生活しているのだから」と言われ、真夏でも毎日はお風呂に入れません。お菓子も簡単には食べられないんです。こんな窮屈な生活では、罪を悔い改めることなんてムリです。

 とはいえ、獄中(なか)を見てきた私としては、懲役をただ甘やかすのはどうかとも思います。私が獄中にいてた時も、「私が看守なら絶対にどついてる」と思う懲役は多かったですよ。イジメとか告げ口とか、ひどいもんでした。実際に出所が決まってからは、どついてやりましたけど(笑)。

 「こういう人たちの更生にこそ優しさが大事」と言うのは簡単なのですが、油断してたら調子に乗りますよ。それに、被害者やご遺族の方々は「私たちがこんなに苦しんでるのに、快適な刑務所でぬくぬくと暮らしてるなんて許せない」と思われるのとちゃいますかね。

 更生には優しさとともに、厳しさも必要です。もちろん世間の温かい目は、絶対に必要です。EXIT・兼近大樹さんの「前科暴露」問題が取り沙汰されていますが、今の本人のがんばりを応援したいと思います。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」

※この連載が本になりました!
女子刑務所ライフ!』(イースト・プレス)発売中です。

元女囚が考える「更生」――北欧の刑務所やピンク色のムショは効果ある?

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■老朽化したムショの建て替え

 最近のムショは世界的にも老人ホーム状態……ゆうのはよく聞きますね。少子高齢化もですが、ムショはお年寄りの「最後の居場所」になってるのとちゃいますかね。私が服役していた頃も、万引専門のおばあちゃんとか、ようけいてました。もちろん子どもは減ってますから、少年院はどんどんなくなってます。悪いコが減っているというよりは、子ども全体が少ないだけですけどね。

 でも、そんなことより、古くなったムショがどんどん建て替えられているというニュースのほうが気になっています。「老朽化」を理由にしていて、防災の意味もあるんでしょうが、テレビで見る限り、めっちゃ快適そうです。ホンマうらやましい……。

■「北風と太陽」は正しい?

 日本のムショもだいぶきれいになってきましたが、快適な刑務所で有名なのは、やっぱり北欧ですね。北欧では死刑はなく、服役囚の人権もちゃんと守られているそうです。ネットには、清潔なトイレやジムなどを備えた快適なムショがいろいろ紹介されています。

 まあ優しいのは初犯だけで、さすがに累犯の懲役には厳しい施設もあるそうです。「こんな豪華な刑務所を、税金を使って造るとはけしからん」的な話もよく聞きますが、皆さんはどう思われますか?

 こういう快適なムショを造る理由は、「罪を犯すような人は、差別や貧困など悲惨な環境で育った」→「こんな人に厳しくするのは逆効果」→「人間らしい生活を送れれば、更生も早い」との考えやそうです。

 これって、子どもの頃に絵本で読んだイソップの「北風と太陽」のお話ですよね。北風と太陽が旅人のコートを脱がせようとするアレです。北風が強い風を吹きつけたら、旅人はコートをぎゅっとつかんで飛ばされないようにしたため、脱がすことはできなかったけど、太陽がぽかぽかと光を当てたら、すぐに脱いだんですね。

 厳しくされたら余計にガンコになりますが、懲役も温かく見守れば優しい人になるそうで、実際に北欧では、日本やアメリカと比べて再犯率もかなり低いそうです。ちなみに、これはカウントの仕方がバラバラなので、簡単な比較はできないそうです(と編集者さんが言うてました)。

 世界では、施設をピンク色にするムショも増えているそうです。ピンク色は攻撃的な気分を弱める効果があるそうです。でも、「子ども部屋か!」と怒る懲役もいるらしいです。罪人のくせに怒る筋合いはないと思いますが、ごっついオッサンがちょこんとピンク色のお部屋に座ってたら、かわいいかもしれません。いやキモいだけか。

 日本のムショは、まだまだ「太陽的なところ」は少ない気がしますね。更生のための教育ではなくて「罰を与える」感がアリアリです。それに、何かにつけて「あなたたちは税金で生活しているのだから」と言われ、真夏でも毎日はお風呂に入れません。お菓子も簡単には食べられないんです。こんな窮屈な生活では、罪を悔い改めることなんてムリです。

 とはいえ、獄中(なか)を見てきた私としては、懲役をただ甘やかすのはどうかとも思います。私が獄中にいてた時も、「私が看守なら絶対にどついてる」と思う懲役は多かったですよ。イジメとか告げ口とか、ひどいもんでした。実際に出所が決まってからは、どついてやりましたけど(笑)。

 「こういう人たちの更生にこそ優しさが大事」と言うのは簡単なのですが、油断してたら調子に乗りますよ。それに、被害者やご遺族の方々は「私たちがこんなに苦しんでるのに、快適な刑務所でぬくぬくと暮らしてるなんて許せない」と思われるのとちゃいますかね。

 更生には優しさとともに、厳しさも必要です。もちろん世間の温かい目は、絶対に必要です。EXIT・兼近大樹さんの「前科暴露」問題が取り沙汰されていますが、今の本人のがんばりを応援したいと思います。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」

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中学受験界「大学付属校」人気の落とし穴――「こんなはずではなかった」親たちの強い後悔

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 中学受験界では数年前から「大学付属校」が大人気だ。その理由は2点。1つが2021年度入試から始まる「大学入試改革」、もう1つが国の「私大の入学定員管理厳格化措置」の影響だ。
※私大の入学定員管理厳格化……文部科学省が私大の入学定員の超過に対して、私学助成金の交付をその人数に応じてカットするという措置。東京・名古屋・大阪の三大都市圏に学生が集中するのを抑え、地方へ振り分ける狙いがある。安倍内閣の「地方創生」政策の一環と言われている。

 いまだにハッキリと決まっていない大学入試改革の全容、一方で早慶、MARCHをはじめとした主要私大の“合格者絞り込み”という現実――これらが今、中学受験生の親たちの危機感をダイレクトに煽っているのだ。

 つまり「国の方針ひとつ」で我が子の大学受験がどう転ぶかわからない、という現状がある。しかもその「方針」も迷走していると言えるだろう。ゆえに親たちは、早い段階での「大学合格切符」という「保険」をかけようと躍起になっているのだ。

 広樹君(仮名)の母・貴代さん(仮名)も、この現実に焦った1人だ。

「中学受験をして私立に入学したとして、確かに高校受験はありませんが、高2から大学受験に向けた勉強がスタートするというのは既定路線。であれば、6年一貫教育と言ったって、伸び伸びしていられる時期は少ない。それならば、最初から大学付属狙いの方が広樹のためになるのでは? と思ったんです」

 こうして、貴代さんは、広樹君の受験校を第5志望まで全て大学付属校で埋めたという。そして広樹君は、第5志望校であるN大学付属に合格を決めた。インフルエンザに罹患してしまったため、本来の実力が発揮できなかったそうだ。

 塾の先生はこの結果をとても悔しがり、「広樹はW大系列に入れる実力だから、N大付属には行かず、公立中に進み、高校受験でリベンジしてはどうか?」とアドバイスしたそうだ。

 しかし、貴代さんの強い勧めで、広樹君はN大学付属に入学。本人も最初はリベンジを固く誓っていたそうだが、現在高1の彼は、貴代さんからすると「見る影もない」ほど勉強しないという。

「広樹の学年が特にそうなのかもしれませんが、ほとんどの子が『無理はしない』思考なんですよ。つまり、無理してまで他大を受けないってことですね。浪人にでもなったら、目も当てられないですから……。広樹は『このまま、ぬるま湯に浸って、入れるところに入れればいい』と思っている節があるんです。でも、N大に入るのも、学内基準があるので、意外と難しいんですよね~。塾の先生の言うことを聞いておくべきでした……」

 たいていの大学付属校は、成績順に学部を選べるシステムなので、必ず志望が叶うという保証はない。そもそも、自分の行きたい学部が「その大学にはない」というケースも大いにある。子どもが、「入りたい学部」ではなく、「入れる学部」に自分を合わせるという現実もなきにしもあらずなのだ。

 「大学付属校に入れば安心」という親の「保険」がどこまで通用するかは、実際に子どもが高3になるまで、誰にもわからないというのが実情だろう。

 もう1人、太郎君(仮名)のケースをお伝えしよう。彼は中学受験でE学園とK大付属に合格した。彼の第1志望校はE学園であったが、「保険」を欲する親の犠牲となり、結果的にK大付属のF中学に入学したのだ。

 母である佐代子さん(仮名)は合格直後、筆者にこう言っていた。

「K大付属のF中よ! ほぼ全員がK大に入れるんだから、安心よね。K大なら、どの学部でもいい!」

 太郎君の現在を、先にお伝えしておこう。彼は19歳で、フリーターをしている。学歴的には中卒である。なんでもK大付属の独特のカラーに合わず、入学当初からの強烈な違和感を拭い去ることができなかったそうだ。

 F中はレポート課題が頻繁にあり、未提出者への指導が厳しいことに定評がある。進級基準に満たない者は中学生であっても、容赦なく「肩たたき」(内部進級・進学ができない)される。

 太郎君というより、佐代子さんが最後まで内部進学にこだわったということが災いして、結果的に他高校の受験に失敗。フリースクールに通ったものの、高校卒業資格は取れていない。

 太郎君が自嘲気味に笑いながら、筆者にこう漏らしたことがある。

「あの時、親がE学園に入れてくれたら、こうはなってなかったっす……」

 「大学までエスカレーター」という点だけに飛びつくのは危険だ。大学付属校はとても魅力的な学校であることは確かだが、こういう「落とし穴」があることも、事前に承知しておくべきだろう。

 学校選びは「保険」を第一にするのではなく、子どもの特性を見て「将来、花が咲きやすいであろう環境かどうか」を一番に考えることが重要なのだ。
(鳥居りんこ)