今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。
「ラン活(ランドセル活動)」という言葉を見かけたことはあるだろうか。小学校入学の準備で「ランドセルを購入すること」を指すが、昔と違ってさまざまな種類のランドセルが市場にあふれる今、納得のいくものを手にするために親は情報収集に奔走し、文字通り“活動”するのだ。SNSでは、ランドセル購入のために展示会に行った様子や購入の記念写真などが、「#ラン活」というタグ付きで、多数アップされている。そんな「ラン活」が、ママ友のグループチャットでも話題になっているという。
首都圏にある保育園に、5歳になる男児を通わせている芳江さん(仮名)は、ママ友とのグループチャットを見ていると、すでにランドセルを購入している家庭が多く、焦りを感じているそうだ。
「通常は、7月くらいがランドセル購入のピークと聞いていたのですが、ママ友から『今年は増税があるから、前倒しで購入している家が多いみたい。ゴールデンウィーク中に購入した方がいいよ』と言われました。とは言いつつ、そんな早くから選ばなくても大丈夫だと思っていたら、百貨店などでは、人気の商品はすでに『ラスト1』の札が……。店員さんも『今日、購入すれば7月に受け渡しができます』と煽ってくるんです。商品によっては、届くのが10月だと、今購入しても増税後の金額になるらしいんですよね。また、男児のランドセル選びって、女児のものと比べて色やデザインに特徴がないので、質や丈夫さなどクオリティ重視になってくるんですが、ママ友から『百貨店の売り場よりランドセル専門店の展示会で探す方がいいかも』とアドバイスされたので、最近は毎週末足を運んでいます。でもやっぱり人気商品はもう売り切れていたり、届くのが来年になったり……悩みは尽きません」
このように、年長の子どもを持つ親たちの間では、「ラン活」がホットワードになっている。芳江さんは「LINEのチャットで、実際の着用画面や展示会の様子が送られてくると『早く選ばなくては……』って焦ってしまいますね。息子は体が小さい方なので、軽いランドセルを希望しているものの、6年使うと思うと、しっかりとした革製がいいのかなと思うこともあります。相場が7~8万円するので、なかなか決められないでいますね」と困惑した表情を見せた。
ランドセルは高額のため、親に代わって祖父母が購入するというケースも多い。しかし、価値観などの違いにより、当事者であるママからは、「祖父母が選んだランドセルにしたくない」との声が聞かれるようだ。幼稚園に5歳になる女児を通わせている彩さん(仮名)は、「ランドセルの購入費は出してもらいたいけれど、選ぶのには口を出してほしくない」という。
「義母はなんでも自分が選んだものではないと嫌なタイプ。地元から出ない生活をしているため、価値観の中心が地元にある大型ショッピングモールなんです。夫の実家に子連れで帰った時、ランドセルの話題になり、『買ってもらえるかも……』と期待したのですが、義母が選んだのは、ショッピングモールのプライベートブランドで、3万円ほどのランドセル。娘が通っている地域の幼稚園では、ランドセルの相場は10万円前後なので、とてもじゃないけれど恥ずかしくて『ここのランドセルはいりません』と言ったら、義母と大喧嘩に! 『どうせ壊れたりするのに、高いものはいらない』と言って、色も無難な赤しか選ばせてくれず、『絶対にここでは買わない』と誓いました。ママ友とのグループチャットで、『ショッピングモールのプライベートブランドはないよね』と愚痴ったら、共感してもらえたのが救いでしたね」
大手百貨店などのランドセル売り場に行くと、有名ブランドとのコラボ商品など、「これがランドセルなのか」と思うような奇抜なデザインのものも多い。取り扱われているランドセルの値段が高額であるため、店員は手袋をはめた状態で商品を取り扱い、子どもが試す際にも、商品に傷をつけないように気を使いながら行うという徹底ぶりだ。
また、特に女児向けのランドセルは、華やかなデザインも多く、パープルや淡いピンクなどのカラーが人気だという。そういった流行を理解していない祖父母世代は、ランドセル選びでも「そんな色のランドセルを背負って行ったら、いじめられてしまう」と口を出してくると言い、ママを悩ませているそうだ。
5歳になる男児を育てる昭美さん(仮名)は、「私のラン活への熱意に、うちの夫が引いている」と語ってくれた。
昭美さんは、春頃からランドセル業者のカタログを取り寄せ、展示会情報をチェックし、実際に展示会やランドセル売り場に足を運ぶようになったという。
「やっぱり6年間使うものなので、ランドセルは『高級なもの』がいいと思いました。実際にランドセルを背負った息子の写真を何枚も撮って、ママ友とのグループチャットに送って意見を聞いたりしていたのですが、夫は『写真を撮るために展示会へ行っているの?』という態度で……。結局、カバン専門店で、コードバンという希少価値の高い革のランドセルを選び、値段は10万円でした。夫は、最初『ゼロが多いのでは』と金額を見直していましたよ」
ランドセル本体以外にも、オプションでイニシャルを入れたり、カバーを購入したりと出費が多く、夫は「息子のランドセルの方が、自分が持っている鞄や腕時計よりも高い」と呆れ果てていたという。
子どもが寝静まった深夜。ママたちはチャットグループに、ランドセル購入報告や、どこで買おうか迷っているなど報告し合っているという。SNSが発達し、目に入る情報が増える中、ランドセル選び一つとっても「これで良かったのか」と不安に思うママは少なくないのだろう。そんなとき、グループチャットでラン活を共有することは、誰かからの「大丈夫」という後押しを欲していることの現われなのかもしれないと感じた。
(池守りぜね)